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2020年3月7日土曜日

前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


安倍総理

新型コロナウイルスが、世界と日本の経済に大打撃を及ぼしそうだ。株価はすでに急落している。これから、実体経済に波及するのは避けられない。どう対応すべきか。

 結論から先に言えば、私は昨年10月、10%に引き上げた消費税率を元の8%に戻すべきだ、と思う。財務省は必死で抵抗するだろうが、今回の事態はそれほど深刻、かつ前例がない。安倍晋三政権の英断を望みたい。

 多くの読者は、いくらなんでも増税したばかりの消費税を減税するとは「あり得ない」と思われるかもしれない。だが、私は単に自分が期待するだけでなく、「首相の政治判断としても、十分あり得る」と思っている。

 なぜなら、安倍首相は2月29日の記者会見で、次のように語っていた。

 「各地の主要な株式市場において、軒並み株価が大きく下落するなど、世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」

 この「インパクトに見合うだけの政策」というフレーズは、私の記憶にない。安倍政権は「コロナ・ショック」がどれほどひどくなっても、それに見合う景気刺激策を展開する決意なのだ。そんな刺激策は減税しかない。

 これまで、日本で景気下支えと言えば、大型公共投資のような歳出拡大策ばかりが展開されてきた。だが、本来は歳出拡大だけでなく、減税もある。実際、ドナルド・トランプ政権を含め、米国では減税が多用されている。

 日本が減税に消極的なのは、財務省が抵抗するからだ。彼らは大きな声で言わないが、「予算のバラマキ」こそが権力の源泉になっている。減税すれば、それだけ原資が小さくなるので、彼らは必死で抵抗するのだ。

 だが、今回の事態は、財務省の都合に耳を傾けているような場合ではない。コロナ・ショックは、2008年のリーマン・ショックを上回る可能性もある。2月27日には、米国のダウ平均株価が過去最大の下げ幅を記録した。

 危機の終わりが見えないどころか、日本も米国も試練は始まったばかりなのだ。リーマンは金融の危機だったが、今回は金融にとどまらず、個人消費、設備投資はもちろん、製造業のサプライチェーンも直撃している。

 加えて、中国、北朝鮮、韓国の政権基盤も揺さぶっている。私は目を覚ますたびに「今日は何が起きているか」と緊張感に襲われる。人々の不安と恐怖は、とてつもなく大きい。そんな心細さはリーマンの時もなかった。

 そうであれば、安倍政権は前例のない大胆な政策で対応すべきだ。言葉ではなく、行動で「政府は国民とともにある」と訴える必要がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥ったのは、消費増税が原因だった。減税は増税の誤りを正す結果にもなる。

 最悪なのは、不十分で小出しの対応である。対応に失敗すれば、夏の東京五輪・パラリンピックは吹っ飛び、政権の足元も危うくなるだろう。ここが「本当の正念場」だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】積極財政と金融緩和策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!

武漢肺炎の猛威はすさまじく、北海道では感染者はとうとう90人を超えました、100人を超えるのも間近いでしょう。これにともなう、経済的損失も凄まじいものになるでしょう。

週明けに発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値について、民間の調査会社の間では、年率でマイナス6.3%だった速報段階から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大するという予測が多くなっています。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は、先月の速報段階では、消費税率の引き上げなどの影響で物価の変動を除いた実質でマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は速報値では−6.3%だったが
このGDPについて、最新の統計を反映した改定値が、週明け9日に発表される予定です。

民間の調査会社など11社の予測によりますと改定値は、実質でマイナス1.6%からマイナス2.0%、年率換算ではマイナス6.1%からマイナス7.9%となりました。

11社のうち10社は、速報段階から下方修正されマイナス幅がさらに拡大するとしています。

これは、最新の統計で企業の設備投資が下振れしたためで、2社は前回、6年前の消費税率の引き上げ直後の年率マイナス7.4%よりも落ち込みが大きくなると予測しています。

もうすでに、景気後退局面に入っている可能性もあります。ちなみに、景気後退局面とは一般的に、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。日本経済はすでに景気後退局面に入っている恐れもあります。

これは、武漢肺炎前の数字です。さらに、1月から3月までのGDPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナスになるという予測も出ていて、そうなれば、日本は間違いなく景気後退局面に入ることになります。そうして、これはほぼ確実です。

すぐにでも、消費税減税をしたほうが良いのは言うまでもありません。消費税減税をするにしても、8%未満にするには、法的手続きが必要です。それには、ある程度時間がかかります。

しかし、すぐにできる方法があります。それは、消費税10%はそのままにして、全品軽減税率8%を適用することです。これなら、すぐにできます。これを実行するには、法律を変える必要はありません。安倍政権はまずはこれを速やかに実施すべきでしょう。


さらに、必要とあれば8%未満にできるようにするために新たな法律づくりに着手すべきでしょう。

積極財政には、減税の他にも様々な方法があります。例えば、香港で実施されたように、国民に対する現金の一律支給や、所得減税や社会保険料の減免も考えられます。公共事業の増額もあります。さらには、期限付きのクーポンの支給などもあります。

さらに、今の国債マイナス金利の環境を生かして、政府がマイナス金利で国債発行し、それをそのままマイナス金利で民間に貸し出す「緊急融資制度」を行うということもできます。武漢肺炎で損失を被った個人や企業はマイナス金利で一定額借入できるようにするという方法もあります。

日銀も、武漢肺炎がなかった時期ですら、物価目標を達成できなかったのですか、今後はイールドカーブ・コントロールなどはやめて、異次元の緩和に戻ってもらいたいものです。
中央銀行の資産は金融緩和の度合いに比例する、日銀は緩和しなかったことがわかる

このブログでは何度か掲載してきたように、リーマン・ショックのときには、欧米等が大規模な緩和に踏み切ったにもかかわらず、日銀はほとんど緩和をしなかったために、デフレが深刻化し、円高になりました。

そのため、震源地の米国や悪影響を受けた英国などではいち早く不況から立ち直ったのですが、日本一人だけがなかなか不況から立ち直れず、一人負けの状態になりました。

今回の武漢肺炎による景気に落ち込みは、リーマン・ショック時より酷いことになる可能性は高いです。日銀は、リーマン・ショック時の失敗を繰り返さないように、すみやかに従来の異次元緩和に踏み切るべきです。そうして、それを維持する旨をすぐ公表すべきです。

政府が景気後退局面からの脱出や武漢肺炎対策等のため、国債増発を通じて政府支出を増加させると、長期の市場金利に上昇圧力が加わり、これが次第に民間投資などを抑制するメカニズムが働きます。これに対して、政府支出が拡大するもとでも、中央銀行が市場金利の上昇を抑制すれば、民間投資などへのマイナスの影響は限られ、景気刺激効果の強まりが期待できます。

今般の、景気後退局面と武漢肺炎による経済活動の低下というダブルパンチに対処するためには、政府の積極財政と日銀の緩和政策の両輪で対処するしか方法はないのです。

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2019年3月2日土曜日

韓国・文大統領大誤算!米朝決裂で韓国『三・一』に冷や水で… 政権の求心力低下は確実 識者「米は韓国にも締め付け強める」 ―【私の論評】米国にとって現状維持は、中国と対峙するには好都合(゚д゚)!

韓国・文大統領大誤算!米朝決裂で韓国『三・一』に冷や水で… 政権の求心力低下は確実 識者「米は韓国にも締め付け強める」 

米朝決裂であてのはずれた文在寅

 米朝首脳会談の決裂を受け、北朝鮮と韓国が窮地に追い込まれた。ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の「見せかけの非核化」方針を見透かして席を蹴ったため、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が熱望した経済制裁解除や、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「三・一運動」100周年に合わせて期待した南北共同事業の再開は水泡に帰したのだ。正恩氏の国内権威は失墜し、「米朝の仲介役」を自任した文氏の求心力も低下する。危機を脱して、好機を得たともいえる日米両国。今後の展開次第では、南北朝鮮は「地獄」を見ることになりかねない。

 「国連安全保障理事会決議に基づく制裁の一部を解除すれば、寧辺(ニョンビョン)の核施設を永久に廃棄すると提案したが、米側が応じなかった」

 北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は1日未明、ベトナムの首都ハノイで緊急記者会見し、こう説明した。



 北朝鮮の閣僚による異例の記者会見は、決裂した米朝首脳会談後、トランプ氏が「北朝鮮は経済制裁の全面解除を要求してきた」と明かしたことへの反論だった。会談失敗の責任を、正恩氏からトランプ政権になすりつけようとしていることがうかがえた。

 会見に同席した崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は「部分的な解除さえ難しいとする米側の反応をみて、(正恩氏が)交渉への意欲を少し失ったのではないかと感じた」と語り、国内外に向けて、最高権力者の威信を守ろうと必死の様子だった。

 今回の米朝首脳会談で、北朝鮮は「米国と合意可能」とみていた。

 正恩氏のベトナム訪問を、同国メディアに出発時点から報じさせていたうえ、朝鮮中央通信は2月28日、正恩氏が「今回の会談でみんなが喜ぶ立派な結果が出るだろう、最善を尽くすという意義深い言葉を述べた」と伝えていた。

 ところが、その期待はあえなく消えた。

 トランプ氏が非核化に向けた具体的措置を求めたのに対し、正恩氏が経済制裁の全面解除を迫ったため、トランプ氏は当初予定していた共同合意文書への署名を見送り、会談を終了した。

 首脳会談の決裂に伴い、正恩氏は何の見返りも得られないまま、帰国することになった。

 国際社会による制裁で、北朝鮮は相当追い詰められている。2月には国連に食糧支援を要請するほどの困窮ぶりだ。国内で正恩氏への不満が高まっているとの情報もある。

 正恩氏の外交的失敗で制裁が維持されたため、最高権力者としての権威失墜は避けられそうにないのだ。

 今回の会談結果に、米朝の「仲介役」を自任していた韓国・文政権も狼狽(ろうばい)している。

 韓国・聯合ニュースが2月28日に《朝鮮半島情勢「視界ゼロ」 米朝首脳会談が「制裁」問題で決裂》という見出しで伝えたことからも、韓国政府の焦りが感じられる。

 同ニュースは別の記事で、「韓国政府の当局者は戸惑いを隠せずにいる。今回の会談が成功すれば、合意に対北朝鮮制裁緩和に関する内容が盛り込まれ、制裁が足かせとなっている南北経済協力に転機が訪れると期待していたためだ」と指摘した。

そもそも、米朝首脳会談は、文大統領が「北朝鮮には非核化の意思がある」と確約したため、米国も乗り出した。

 トランプ政権は、文政権の異常な「反日行動」や、左翼主義的な態度に不信感を抱えていたが、北朝鮮とのパイプ役として一定の節度を保ちながら対応してきた。

 今回の首脳会談決裂を受け、仲介役である文政権の責任も問われかねない。国内的にも、北朝鮮問題で支持率を保っていたため、求心力低下は確実だ。

 対照的に、日本は土壇場で危機を脱する結果となった。

 トランプ政権は当初、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の廃棄で妥協するとの見方があり、その場合、日本を射程におさめる中距離弾道ミサイル「ノドン」などが残るとみられていたからだ。

 日本政府としては「バッド・ディール(悪い合意)よりは、ノー・ディール(無合意)の方が良い」という方向で米国と調整してきた。会談決裂で「御の字」なのだ。

 日本の悲願である拉致問題についても、トランプ氏は今回、正恩氏に2回提起したという。安倍晋三首相は今回の結果を評価し、「トランプ氏の決断を全面的に支持する」と述べた。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「今回のトランプ氏の決断は、米国の保守派からも評価され始めている。一方、正恩氏は、トランプ氏をうまくだませると思っていたようだが、土壇場での逆転で、手ぶらで帰ることになった。トランプ政権は『制裁の抜け穴をふさぐ』という意味で、北朝鮮への圧力を強化し、同時に文政権にも締め付けを強めていくだろう」と話した。

【私の論評】米国にとって現状維持は、中国と対峙するには好都合(゚д゚)!

冒頭の記事では、"日本政府としては「バッド・ディール(悪い合意)よりは、ノー・ディール(無合意)の方が良い」という方向で米国と調整してきた。会談決裂で「御の字」なのだ"とありますが、これは米政府としても「御の字」であったと思います。


No deal is better than a bad deal

北朝鮮は、外見は中国を後ろ盾にしてはいますが、その実中国の干渉されることをかなり嫌っています。金正男の暗殺や、叔父で後見役、張成沢氏の粛清はその現れです。

韓国は、中国に従属する姿勢を前からみせていましたが、米国が中国に冷戦を挑んでいる現在もその姿勢は変えていません。

この状態で、北朝鮮が核をあっさり全部手放ばなすことになれば、朝鮮半島全体が中国の覇権の及ぶ地域となることは明らかです。これは、米国にとってみれば、最悪です。そうして、38度線が、対馬になる日本にとっても最悪です。

もし今回北朝鮮が米国の言うとおりに、全面的な核廃棄を合意した場合、米国は、米国の管理のもとに北朝鮮手放させるつもりだった思います。まずは、米国に到達するICBMを廃棄させ、冷戦で中国が弱った頃合いをみはからい、中距離を廃棄させ、最終的に中国が体制を変えるか、他国に影響を及ぼせないくらいに経済が弱体化すれば、短距離も廃棄させたかもしれません。

しかし、これを米国が北朝鮮に実施させた場合、多くの国々から非難されることになったことでしょう。特に、日本は危機にさらされ続けるということで日米関係は悪くなったかもしれません。さらに、多くの先進国から米国が北朝鮮の言いなりになっていると印象を持たれかなり非難されることになったかもしれません。

しかし、今回の交渉決裂により、悪いのは北朝鮮ということになりました。米国は、他国から非難されることなく、北朝鮮の意思で北の核を温存させ、中国の朝鮮半島への浸透を防ぐことに成功したのです。まさに、「バッド・ディール(悪い合意)よりは、ノー・ディール(無合意)の方が良い」という結果になったのです。

しかし、今回の会議にボルトンが同行したということ自体が、今回の交渉が最初からノー・ディールになる可能性が高かったと見るべきです。

ボルトンはトランプ政権に参加する以前の昨年2月、米ウォールストリート・ジャーナル紙に「北朝鮮への先制攻撃に関する法的検証」という意見記事を投稿しました。「bomb them(爆撃しろ)」の異名を取るボルトンが交渉テーブルに着いた以上、トランプがより強硬になったとしても不思議ではないです。

ハノイでの米朝会談2日目、突然ボルトン(左端)が
着席したときから、外交専門家たちは不安を募らせていた

第2回米朝会談の結果に一部の専門家たちはひどく失望しているようですが、あまり悲観的な見方に傾くことはないと思います。トランプと金正恩は交渉テーブルからは去りましたが、両国の交渉をつなぐ橋を完璧に壊したわけではありません。

米朝両国にとってもこの交渉を崩壊させない方が有益です。今後数週間~数カ月の焦点は、米朝両国が過去8カ月間維持してきた均衡を引き続き維持できるか、そして今後の交渉で米朝間の溝を埋めて非核化を進展させることができるかです。

米国にとってはこの均衡を維持できれば、中国に対峙している現状では、悪くはない状況です。中国にとっては最悪でしょう。米国の最大の課題は中国つぶし、北朝鮮はその従属関数でしかないのです。

米国にとっては、韓国も従属関数でしかありません。韓国が、今後中国に従属する姿勢を強めなければ、放置するでしょうし、そうでなければ、締め付けることになるでしょう。

そうして、そもそも米国の対中冷戦によって、中国が体制を変えたり、あるいは、他国に影響を及ぼせないほど弱体化すれば、北朝鮮問題というより朝鮮半島問題はだまっていても自ずと解決することになるでしょう。ただし、それには少なくとも10年、長ければ20年くらいかかるかもしれません。

その間北朝鮮が、制裁に耐え続けることができれば、今のまま均衡が保たれるでしょうが、それはかなりあやしいです。

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2018年4月5日木曜日

希望の党と民進党が元サヤに収まり、立民が合流しない奇妙な状態 野党に政権を委ねられない不幸―【私の論評】景気回復への道を明示することができない連合も野党も今のままでは凋落していくだけ(゚д゚)!

希望の党と民進党が元サヤに収まり、立民が合流しない奇妙な状態 野党に政権を委ねられない不幸

代議士会に臨む希望の党の玉木雄一郎代表=3月29日午後、国会内

 希望の党が民進党との合流に向け、分党について協議すると報じられた。民進党も新党結成構想について全会一致で了解を得たという。衆院で野党第1党の立憲民主党を含め、展望はあるのだろうか。説明を追加

 希望と民進の協議に関する報道を見たとき、筆者はエープリルフールの冗談かと思ったくらいだが、関係者は「新しい民主党」に真剣なようだ。その時点で、一般人と感覚がずれていると思う。

 今からわずか半年前、昨年10月の総選挙で、小池百合子都知事が立ち上げた当初の希望の党は台風の目となり、その人気目当てに民進は分裂した。

昨年10月、希望の党の立ち上げ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 いち早く駆け込んだ人は希望、入りたかったが小池氏が「排除」したので入れなかった人が立民、そのままの人が民進-と大ざっぱに分けられる。このときの分裂は、結局選挙目当てが最大の動機だったのは間違いない。

 ところが、小池氏が、「排除」発言で大きくこけて、希望は伸びなかった。総選挙後に希望は、創設者だが既に人気がなくなった小池氏を「排除」した。「排除」の過程で、希望と立民をかろうじて分けていた、リアルな安全保障や憲法改正について、どちらも変わらなくなっていった。

 変節は有権者に見透かされており、次期総選挙では希望の消滅は確実との見方もある。そのような情勢で、希望と民進の合流話が出てきているのだが、やはりこれも「選挙互助会」を作りたいということだ。半年の間に、こうした分裂や再編を繰り返せば、有権者の信頼を失うだけだろう。

 それでも、希望と民進は合流するだろう。というのは、両者は今のままではじり貧だからだ。衆議院の勢力をみると、希望51、民進12(党籍を持っている無所属)、立民55である。ここで、希望と民進が合流すれば、立民を抜いて衆院で野党第1党になる。

 そうなると、立民はどうするのか。財務省による文書改竄(かいざん)問題などでは野党6党で一致団結している。野党6党とは、立民、希望、民進、共産、自由、社民の各党だが、共産を除く5党は、一般の有権者から見れば、もはや政策の違いがわかりにくい。

 希望と民進の合流がうまくいけば、その次には立民も合流してもおかしくない。民進分裂の原因であった小池氏がもういないので、元の鞘に収まっても不思議ではない。

 とはいえ、立民は合流話に乗らないだろう。というのは、小池氏の「排除」発言によって、結果として勢いを増したので、「排除」した側の希望には乗れないからだ。昨年の総選挙の際、希望と立民について「偽装分裂」との見方もあり、やはりそうだったのかといわれないためという理由もあるだろう。

 となると、似たもの同士の希望と立民が合流しないという、政治的には奇妙な状態となる。

 政策はどうでもよく目先の選挙だけで右往左往する野党に、有権者はとても政権を委ねられない。これは日本の民主主義にとって不幸なことだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】景気回復への道を明示することができない連合も野党も今のままでは凋落していくだけ(゚д゚)!

希望、立民、民進党の行動を考えるには、やはり労組の動きを理解しないと十分に理解できないと思います。

その中でも、連合とこれらの党の関係を理解すべきです。連合(正式名称:日本労働組合総連合会)は、1960年代後半から繰り返し志向されてきた社会党系の日本労働組合総評議会(総評=社会党右派を中心に中間派・左派を含む)、民社党系の全日本労働総同盟(同盟)、中間派だった中立労働組合連絡会議(中立労連)、全国産業別労働組合連合(新産別)の労働4団体の統一によって結成されたものです。

但し、1986年の「日本社会党の新宣言」採択まで長くマルクス・レーニン主義を掲げ、自衛隊違憲・解消、日米安保反対、非武装中立、日の丸・君が代反対、脱原発を主張した社会党系の総評(公務員労組中心、日教組・自治労など)と、民主社会主義と反共を掲げ、自衛隊や日米安保、日の丸・君が代、原発に賛成していた民社党系の同盟(民間労組中心)とは水と油の関係であり、基本政策のすり合わせをしないままに行われた統一でもありました。

当該4団体等による「労働戦線統一」の動きは、1982年12月14日の全日本民間労働組合協議会(全民労協。初代議長は竪山利文・電機労連委員長)の結成により大きく進展しました。

全民労協が1986年11月の第5回総会で翌年秋の連合体移行を確定したことを受け、まず同盟が1987年1月の第23回年次大会で解散方針を決定し、総評、中立労連、新産別の3団体も秋までに「連合」への合流を決定しました。


1989年11月21日、東京厚生年金会館で日本労働組合総連合会の結成大会を開き、初代会長に情報通信産業労働組合連合会(情報通信労連)委員長・山岸章を選出しました。 総評系産別を加えて78産別、組合員約800万人を結集させ、労働4団体等の統一を完成させました。なお、山岸は“労働戦線統一の功績”により2000年4月に勲一等瑞宝章を受章しました。

山岸章氏

他方、連合の発足を「労働界の右翼的再編」「反共・労使協調路線」と攻撃する日本共産党系の「統一労組懇」等は、これに対抗して連合結成と同じ1989年11月21日に全国労働組合総連合(全労連)を、総評左派系(社会党左派系)の一部は12月9日に全国労働組合連絡協議会(全労協)を結成しました。

さて、この連合は昨年衆院選で特定の政党を支援せず、立憲民主党や希望の党(結党メンバーを除く)、無所属で戦った民進党出身者らを個別に推薦し、このうち99人が当選しました。


しかし選挙戦では連合傘下の産別労組のうち、自治労など左派色の強い旧総評系が立憲民主党、自動車総連など旧同盟系が希望の党の支援を目立たせるなど、組織に長年潜んでいた対立構図も浮き上がりました。

希望の党で当選した民進党出身の衆院議員は「連合から推薦を受けたが自治労などはほとんど現場で動かなかった」と打ち明けています。

立民、希望、民進3党がそれぞれ地方組織をどう構築するのかも見通せず、高い集票力を持つ連合の組織力は宙に浮いたままです。今年の通常国会では連合が強いこだわりを持つ「働き方改革」の関連法案も審議される見通しで、神津氏らは焦りを募らせています。

希望の党は小池元代表の「排除発言」だけでコケたというわけではない。その背後になは何が?

さて、ここであれだけ台風の目になった希望の党がなぜ選挙戦中でコケてしまったのか、もう一度振り返っておきます。ブログ冒頭の記事では、小池氏が、「排除」発言で大きくコケてしまったとありますが、無論表面的にはそのような面もありますが、それだけではありません。

何と言っても、まずは、希望の党の公約に示された経済政策があまりにもお粗末であったことと、希望の党が改憲勢力でもあることから、希望の党が躍進すれば、国会で改憲勢力がさらに大きな勢力を占めることに危機を抱いた、マスコミが選挙戦途中から希望の党を徹底的に叩きはじめたことの両方によるでしょう。

それでも、経済政策がまともであれば、いくらマスコミが叩いたとしても、保守派などでも擁護する人がでてきた可能性がありますが、あまりに酷い経済政策であったためその動きもなかったことが致命的になったと考えられます。

その、希望の党の経済政策を以下にあげておきます。

希望の党の政策集『私たちが目指す「希望への道」』には、消費税増税について「凍結する」と明記しているのですが、同時にこう書いていたのです。
「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す『ユリノミクス』を断行する」「日銀の大規模金融緩和は当面維持した上で、円滑な出口戦略を政府日銀一体となって模索する」。
大規模な金融緩和によって現在の景気回復があるのに、その金融緩和を止める方向を模索するというのです。しかも「財政出動」にも否定的です。仮にこうした「緊縮財政」政策が採用されたら、日本は再び不景気へと転落し、再びデフレスパイラルのどん底に沈みことが予想される内容でした。

特にひどいのが「内部留保」課税でした。政策集には「300兆円もの大企業の内部留保に課税することにより、配当機会を通じた株式市場の活性化、雇用創出、設備投資増加をもたらす」とあります。

内部留保とは、そもそも法人税(国税)と事業所税(地方税)を払った後の残りです。これに課税するのは二重課税であり、租税原則に反するものです。

しかもこの内部留保は、必ずしも現金として手元に残っているわけではなく、設備拡充や技術開発などの再投資に回されている場合が多です。ただし内部留保が積み上がり、現預金の比率が高くなってきていることも事実ではありました。このため、麻生財務大臣のように「金利のつかない金を貯めて何をするのか。給与や設備投資に回したらどうか」と問題視する声もありました。

そもそも企業が設備投資を拡大しないのは、2014年に消費税を8%にあげて個人消費を縮小させてしまったからです。よって政府がなすべきことは個人消費を拡大する政策、つまり消費税減税と、日銀による更なる金融緩和による環境整備であるはずです。

ところが希望の党は、大企業に対して「設備投資を拡大しないのなら内部留保に課税するぞ」と恫喝する政策を打ち出したのです。内部留保を積み上げる大企業に対して罰金を課そうという発想は社会主義特有のものであり、極めて恐ろしいものでした。これでは、保守層は反対にまわるのも無理はありませんでした。

もしこの内部留保課税が具体化するならば、優良企業は国外へと逃げ出すことになったでしょう。そしてそれは、雇用環境の悪化をもたらすだけでした。これでは、『私たちが目指す「希望への道」』ならぬ、『私たちが目指す「地獄への道」』と言っても良いような内容でした。

希望の党の公約。特に経済政策を読み込むと、それは恐ろしい内容だった

枝野幸男代表の「立憲民主党」の選挙公約における経済政策も、金融政策や財政政策には見るべきものがありませんでした。「所得税・相続税、金融課税を含め、再分配機能の強化」と、金持ちに対する税金を上げて、その一部を貧困層に配る典型的な「社会主義政策」が掲載されているぐらいでした。

企業や金持ちに対する課税強化では、景気は回復しません。そして景気が回復しなければ、福祉を充実させる財源も捻出できません。立憲民主党は、民主党政権時代になぜ景気が低迷したのか、なぜ社会保障を充実させることができなかったのか、まったく学んでいないようでした。

現在の希望の党、立憲民主党、民進党とも、希望の党がなぜ勢いを失ってしまったのかその根本原因を全く理解していないようです。そうして、最初から筋悪の「森友問題」に拘泥し、政局においてすらも何の成果もあげられていません。労働者の生活を脅かす増税キャンペーンを長年にわたって行ってきた財務省に矛先を向ければ、まだ何とかなったのかもしれませんが、とにかく「疑惑」の追求で決定打に欠いて、ワイドショー民にすら飽きられて埋没してしまいました。

デフレ期には、適切な金融政策と政府による財政出動、そして民間企業の活動を阻害する「規制」の緩和で自由な企業活動を支援し、個人消費を拡大することこそが景気回復への道であるはずです。そうして、景気回復によって一番の受益者になるのは、他ならぬ労働組合を組織している労働者でもあることに気づくべきです。

この点について、野党だけではなく、連合自体も気づくべきです。そうして、景気回復への道を明示することができない連合も野党も今のままでは凋落していくだけになることでしょう。無論今の野党に政権を担わせることもできません。

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2017年3月25日土曜日

【トランプ政権】オバマケア代替法案を撤回 最重要公約、政権に大打撃―【私の論評】元々米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではない(゚д゚)!


オバマケア代替法案の撤回を受けホワイトハウスで対応するトランプ米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
ライアン米下院議長は24日、本会議での採決を予定していた医療保険制度改革(オバマケア)の改廃法案を撤回すると発表した。可決に必要な賛成票を固められなかったためで、オバマケアは当面存続する。オバマケア改廃は大統領選挙での最重要公約だっただけに、就任早々に大打撃を受けた形だ。

 ライアン氏は24日、記者会見で「残念な日になった」と述べて失望を表明。オバマケアの制度が一部で維持されることに不満を示してきた党内強硬派から十分な賛成を引き出せなかったことを認め、「近い将来はオバマケアは存続する」と述べた。

 一方、トランプ氏もホワイトハウスで記者会見し、保険料が上昇傾向にあるオバマケアは「自壊させておけばいい」と述べ、その責任は民主党にあると強調した。また今後は「税制改革に向かうだろう」とした。

 トランプ氏は選挙戦でオバマケア改廃を最重要公約とし、ビジネスで培った「交渉術」で実現させると宣言。改廃法案発表後はライアン氏のほか、下院議員の経験が長いペンス副大統領やプライス厚生長官らも総動員して票固めに躍起となった。しかし賛成票は可決に必要な216人に10人程度届かなかった模様で、共和党議員237人から多くの造反者が出たようだ。

 改廃法案撤回は就任後に目立った成果を残せていないトランプ氏にとって手痛い失敗。さらに共和党もホワイトハウスと上下両院を握りながら悲願のオバマケア改廃を実現できず、統治能力不足を露呈する結果になった。トランプ氏が思うままに政権を運営できるわけではないことが明らかになった形で、今後、支持層のトランプ離れが進む恐れがある。

【私の論評】元々米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではない(゚д゚)!

オバマケア代替法案は撤回される運びとなりました。オバマケア改廃に関しては、日本ではトランプ大統領が最重要公約としたことと、議会では共和党が僅差とはいえ多数派となっていることから、日本では議会を通るだろうし、通らなければトランプ大統領にとっては、大きな失点でブログ冒頭の記事にもあるとおり、支持層のトランプ離れが進むことを予期した人も多いのではないかと思います。


しかし、私はこれは完璧に間違いであると思っています。まずは、改廃法案の撤回直後の現状はどうなっているのか見てみましょう。

以下にロイターの記事を引用します。
オバマケア代替法案撤回:識者はこうみる
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
●減税など実行可能な案件に着手可能
<ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメント(ボストン)のシニアポートフォリオマネジャー、マーガレット・パテル氏>
市場ではトランプ政権が医療保健問題に完全に手足を縛られ、身動きできなくなるのではないかとの懸念が出ていた。医療保健問題がこうした形でクリアされたことで、規制改革や減税などそれほど複雑ではなく実行可能な案件に着手できると、市場では楽観的な見方が出ているのではないか。
これほど複雑で大きな費用が絡む案件が棚上げにされたことはプラス方向の動きのように見える。今後、減税のようにそれほど難しくない案件に歩を進めることができる。 
●議会はトランプ氏の思い通りには動かず
<DRWトレーディングの市場ストラテジスト、ルー・ブライアン氏>
最も重要なのは、トランプ米大統領と議会の関係に関する見方を変えるという点だ。過去数カ月は、議会はトランプ大統領が求めることは何でもやるといった印象があった。しかし、明らかにこうした状況ではなくなるだろう。
以下は、項目だけあげておきます。 
●株価への影響は限定的に

●次の焦点は税制改革、市場は前進好感

●市場反応前向き、道筋明確化に期待
今回の件は、市場関係者らはあまり大きな影響があるとは思っていないようです。しかし、どうしてこのようなことが言えるのでしょうか。それは、市場関係者などなら当然知っているというか常識的なことで、日本では意外と知られいないことがあります。本日はそれについて掲載します。

まずは第一点目として、アメリカの政治は二大政党制であり、今回のように政権交代があったとき、前政権と現政権の政治があまりにも異なった場合、とてつもなく混乱することになります。そのような混乱を避けるため、アメリカの政治では継続性の原則が貫かれています。


継続性の原則とは、たとえ政権交代したとしても、現政権は前政権の政策を6割〜7割は引き継ぎ、後の4割から3割で、新政権の色を出すというような政治手法のことをいいます。

この継続性の原則から、オバマケアはオバマ政権の最重要政策であり、これが政治の継続性の原則から、たとえ政権交代したとても、そのまま引き継がれるのは、不自然なことではありません。むしろ、オバマケアに賛成した人々も多数存在したことから、政権交代したからといつて、すぐに廃止されたのでは、いたずらに混乱を助長することになったかもしれません。

当面は、オバマケアを実施し、はっきりと不都合なことが起こった場合、再度国民に十分に説明をしてコンセンサスを得た上で、オバマケアの改廃案を議会に諮るというというようにしたほうが、混乱を避けることができると思います。

第二点目としては、米大統領は平時には、世界最弱の権力者であるという事実です。この事実は以前から米国内では周知の事実であり、そのため今回のように議会の反対にあって、欠局オバマケア代替法案を撤回せざるをえなくなっても、それですぐに、支持者から統治能力不足などと認識されるわけではありません。

米国の大統領は平時には、世界最弱の権力者であることについては以前このブログでも何度か掲載しました。その記事の一つのリンクを以下に掲載します。
米国議会で高まってきた「日本は憲法改正せよ」の声―【私の論評】米国大統領は平時には世界“最弱”の権力者である理由とは?
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
では米国の大統領は、あらゆる権力を行使できる万能のリーダーなのかというとそうではありません。米国は、厳格な三権分立制度を採用しており、行政、立法、司法の権限が完全に分離しています。行政府の長である大統領は選挙によって国民から選ばれますから、議会に対して責任を負うことなく大統領としての職務を遂行できます。しかし、立法に関する権限は一切持っておらず、大統領は議会が作った法律に従って行政権を行使するしかありません(拒否権を発動することは可能)。 
これに対して日本や英国は議院内閣制を採用しており、首相は国会議員の中から選ばれ、内閣は国会に対して責任を負っています。日本の場合には毎年の予算について、行政府が予算案を提出し、議会はそれを審議するという立場ですが、米国の場合、行政府に予算の提出権はありません。大統領は予算教書という形で要望を議会に告げるだけで、実際の予算に関する権限は議会が握っています。 
また、戦争を遂行する権利も実は大統領は保有していません。米国の大統領は軍隊の最高指揮官ですが、宣戦布告を行う権利は議会に付与されており、大統領が戦争を遂行するには、議会からの「授権」が必要です。このように米国では、三権分立が明確になされてまいす。 
残念なことに、我が国では小学校から大学まで、三権分立が近代法治国家に共通する普遍的な憲法上の原理」であるかのように教えています。それは間違った常識です。
三権分立とは、モンテスキューというフランスの哲学者が、ジョージ3世(在位1760~1820年)時代のイギリスを「おお、三権分立だ、すばらしい!」と勘違いして発明してしまった概念です。
モンテスキュー
本人は「発見」したと思い込んでいましたが、それはモンテスキューの頭の中で作り上げられた妄想に過ぎませんでした。 
三権分立をまともに実行してしまっている国は、世界の文明国の中でアメリカ合衆国ただ1国です。そうして、いつまでたってもモンテスキューの母国でもあるフランスを含む、他の文明国がアメリカの真似をしないのは、三権分立が欠陥制度だからです。 
そうして、アメリカ大統領は「世界“最弱”の権力者」とも言われています。アメリカ大統領が最弱、特に平時には最弱であることは世界の比較憲法学の常識です。ただし、議会が戦争をすることを受け入れた場合には、戦争を遂行するために権限が大統領に集中するようになっています。 
そのため、日本などでは多くの人が戦争時の米国大統領のように、平時でも大統領に強力な権限が集中していると考えるのだと思います。でも現実は違います。米国大統領は、平時には世界で最弱の権力者なのです。ただし、これは米国自体の国力などとは別問題です。あくまで、米国の大統領は、他国と権力者と比較すれば、相対的に権力が弱いということです。
以上のように、モンテスキューの妄想である、三権分立を現在でも信奉してその通りにしている米国では大統領は平時においては、世界最弱権力者なのです。そうして、このような米国でも、平時において最も権力が強いのは司法だといわれています。このような仕組みは、一見良いことばかりのように見えますが、その実平時における変革期などには、足かせになることも多いです。

さらに第三点目としては、米国では大統領選挙の公約をそれも重点公約を全部実行しなくても、さほど避難されることもないという事実があるからです。

たとえば、TPPですが、トランプ氏はTPPを離脱することを公約にあげました。そうして、それを実行しました。しかし、たとえこれを実行しなかったとしても、あまり問題にはならなかったたでしょう。

なぜなら、過去に大統領選においてFTAやEPAに関して、大統領選のときには反対の意思を表明しておきながら、大統領になったらこれを批准した大統領などいくらでも存在するからです。実際、アメリカの大統領選挙の公約は守られないことが、しばしばありますし。だからといって、大きな問題になったこともありません。

以上の三点から、もともと米国では政権交代をしたからといって、極端に変わるということはないのです。もし、政権交代するたびに極端に変わってしまったら、確かに国内は混乱してしまうでしょう。

今回オバマケア代替法案は撤回されましたが、もともと米国では大統領が思うがままに政権を運営できるわけではないので、これだけをもって、トランプ大統領の統治能力が低いとみなすことはできません。また、これは多くの米国民が知っていることです。

そうして、今後はどうなるかといえば、外交や安全保証については、オバマ氏が大統領就任中には、失敗に失敗を重ねてきたことはあまりに明白なので、議会側もあの大失敗を繰り返さないためにも、トランプ大統領に賛成する率が高いです。

オバマ氏の八年間の変化
さらに、オバマの経済対策については、確かに金融政策は成功しましたが、それでも国民の不満はつのり、これは最悪期からの回復が均等に起こらなかったことと関係ありそうです。暴落した株式や不動産の急回復で富裕層の資産価値や所得は大きく好転しました。半面、多数の一般の人々は、V字回復から取り残されました。求職活動そのものをあきらめてしまった人、二度と持ち家に住めなくなった人も少なくありません。

オバマ氏自身、さよなら演説で認めたように、回復から取り残された人々は、政府は強者しか相手にしない、と不信感を募らせたのでしょう。

そのため、議会も経済面においてもトランプ大統領に期待するところが大きいと思います。特に減税には、大きな期待を寄せているようですから、きっとこの政策には賛同すると思います。

以上から考えれば、オバマケア代替法案の撤回をもって、トランプ大統領の統治能力不足を懸念するには、全くあたらないと思います。もっと長い目で見る必要があります。

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2017年2月21日火曜日

【民進・パワハラ議員】「人事評価下げてやる」「お前をクビにできる」…後藤祐一衆院議員、防衛省女性官僚に威圧的な言動連発―【私の論評】民進党は見ていると疲れて「面倒くさい」存在に成り果てた(゚д゚)!


馬鹿を通り越した、愚鈍な民進党の後藤祐一衆院議員
南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報問題をめぐり、追及を強める民進党に身内の失態が判明した。稲田朋美防衛相が21日の記者会見で、民進党の後藤祐一衆院議員が防衛省の30代の女性職員に威圧的な言動をしたとして抗議したことを明らかにした。後藤氏も同日、会見を開いて事実関係を認めた上で防衛省に謝罪したと説明したが、稲田氏の辞任を要求している民進党にとって痛手になりそうだ。

 後藤氏の説明によると後藤氏は16日夜、衆院予算委員会の質疑に絡み、衆院議員会館の自室で同省の官僚数人から説明を受けた。

 安倍晋三首相が確認したとする野田佳彦政権当時の日報を出すよう求めた後藤氏に対し、防衛省側は「首相に提出した資料」として現地からの簡潔な報告書を提出した。納得しない後藤氏が日報の存在を繰り返し確かめた際、トラブルに発展した。

 防衛省関係者によると、後藤氏は数時間にわたり、大声を上げたり、机をたたいて抗議した。特に女性官僚には「人事評価を下げてやる」「お前をクビにできる」などと、高圧的な態度で接したという。

 後藤氏の不適切な言動を聞いた稲田氏は激怒し、一時は翌17日の衆院予算委員会で抗議することも検討した。結局、後藤氏は予算委の質疑前に防衛省幹部に謝罪し、民進党の山井和則国対委員長は後藤氏に厳重注意した。

 稲田氏は21日の記者会見で「かなり脅迫、威圧的な言動だった。あってはならないことだ」と批判した。山井氏も記者団に「礼儀と節度を持って接することが必要だ」と苦言を呈した。

 後藤氏は衆院予算委で日報問題を集中的に質問しており、民進を含む4野党は日報問題をめぐる対応が不十分だとして稲田氏に辞任を要求している。

 追及の先頭に立つ後藤氏の失態だけに、民進党の小川勝也参院幹事長は21日の記者会見で「大臣に厳しい質問をするのは当然だが、説明に来る職員への過剰な暴言や態度は許されない」と語った。

 日本維新の会の馬場伸幸幹事長も「国会議員として全国民の手本となるよう率先することが求められる時代だけに、非常に遺憾だ」と述べた。

 後藤氏は平成27年、泥酔した状態でタクシー運転手に釣り銭をめぐり「受け取る法的根拠は何か」などと詰めより、警察に通報される騒動を起こしている。

【私の論評】民進党は見ていると疲れて「面倒くさい」存在に成り果てた(゚д゚)!

「後藤氏は数時間にわたり、大声を上げたり、机をたたいて抗議した」という事自体が、かなり異常です。普通なら、他にも資料があることを指摘して、それを持ってくるようにいえばそれですむはずです。ものの10分、最大でも30分もあればすむことです。それが、数時間というのですから、驚きです。余程の粘着気質としか言いようがないです。

さらに、輪をかけ、"特に女性官僚には「人事評価を下げてやる」「お前をクビにできる」などと、高圧的な態度で接した"というのは、とても尋常とは思えません。精神に異常をきたしているのではないでしょうか。

南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊の派遣部隊が昨年7月に作成した日報をめぐり、衆院予算委員会で野党による追及が続いています。15日には民進、共産、自由、社民の4野党が稲田朋美防衛相の辞任を求める方針で一致しました。

確かに、当初は「不存在」とされた日報が再調査で見つかった経緯自体は粗末ではありました。もっとも、再調査を指示したのは稲田氏であり、日報が見つかったのは当初は調査範囲外だった端末なので、隠蔽(いんぺい)との指摘はあたらないでしよう。

民進党は、日報に記載された「戦闘」という文言を問題視しています。PKO参加の前提となる紛争当事者間の停戦合意は崩れているという主張です。

後藤議員は、国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の安全などに関しては、昨年も同じようなことを追求していました。以下は、そのときのテレビ報道のスチル画面です。



しかし、ここで民進党が触れない事実があります。旧民主党の野田佳彦内閣時代の平成24年春、隣国のスーダン軍が国境を越えて南スーダンを空爆し、他国のPKO部隊に被害が出るなどしました。そして当時の報告にも「戦闘」と記されていました。

それでも野田内閣は自衛隊の派遣を継続しました。このとき自民党の佐藤正久参院議員の質問主意書には「主として(PKOの)活動地域外で発生し、規模も限定されている」と答え、武力紛争を否定しています。

いつものブーメラン芸ですが、本当に懲りないとしかいいようがありません。彼らが安全保障関連法の廃止を要求したときも、同党幹部らがかつて集団的自衛権の必要性を主張していたことが次々と指摘されていました。

民進党が稲田氏を追及している最中の12日には、北朝鮮が新型の弾道ミサイルを発射しました。それでも2日後の国会では防衛相を相手に日報の話ばかりでした。さらに、金正男氏殺害事件後の16日に、後藤議員は女性自衛官に対して腹いせをしている始末です。

国家意識も、国防意識もない、後藤議員はもとより、国民の生命財産に関わる重大事を脇に置く民進党に政権を担う資格はありません。ありていにいえば、馬鹿です、アホです。

こんなざまですから、民進党の支持率は下がり続けるのです。私自身は、本来野党はこのままであってはいけないと思います。

しかし、民進党は「政権や権力と戦うのが使命」であるとの考え方に固執しているのではないでしょうか。政策論争そっちのけで、くだらない議論をするのはやめるべきでしょう。

民進党は、「政権や権力と戦うのが使命」という呪縛から逃れて自由な発想をすべき時にきているのではないでしょうか。そうでなければ、ますます支持率がさがり、限界的な存在になるだけです。

民進党は、なぜ安倍総理が、金融緩和政策など西欧ならば左翼的ともみられる政策をとったのか、理解すべきです。

国民は、民進党はあまりにも「政権や権力と戦うこと」を前面に強くしかも安易に打ち出しすぎて、多くの国民からは暑苦しい存在に成り果てていることに気づくべきです。

最近では、民進党の議員で国会での質問をみていると、暑苦しいどころか、見ていると疲れてくる「面倒くさい」存在に成り果てています。

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2016年11月23日水曜日

【正論】「反朴デモ」の首謀者・親北派が政権を握ることを阻止できるか 東京基督教大学教授・西岡力―【私の論評】日本メディアの朴槿恵スキャンダル報道は、単純に鵜呑みにすれば馬鹿になるだけ(゚д゚)!

【正論】「反朴デモ」の首謀者・親北派が政権を握ることを阻止できるか 東京基督教大学教授・西岡力

東京基督教大学教授・西岡力氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
 韓国の自由民主主義体制が揺れている。親北左派政権が誕生し、韓米同盟が解消されて米軍が撤退し、半島全体が中国共産党と北朝鮮世襲独裁政権の影響下に入る可能性もゼロではない。

 ≪本質を欠く朴スキャンダル報道≫

 朴槿恵大統領スキャンダルに関する大量の報道は、重要な2つの論点を欠落させている。第1に大規模なデモを主催している勢力が過激な親北反体制派であることがほとんど伝えられていない。第2に半島全体の政治スペクトラム(各政治勢力の配置)の中で事件を位置づける見方がほとんどない。その結果、韓国の自由民主主義体制が重大な危機を迎えているという事態の本質が分からない。

 第1の点から論じよう。2015年11月に、過激な反体制運動を行ってきた労組である全国民主労働組合総連盟(民主労総)や、農民団体など50以上が集まって「民衆総決起闘争本部」が結成された。国家保安法に基づき「利敵団体」と規定された北朝鮮とつながる3つの極左団体「祖国統一汎民族連合南側本部」「民族自主平和統一中央会議」「民主民生平和統一主権連帯」が含まれている。

その「民衆総決起闘争本部」が今年のデモを計画していたところ、崔順実スキャンダルが発覚したため急遽(きゅうきょ)、鉄パイプなどを使わないソフト路線に切り替えて、10月29日から毎週土曜日に集会とデモを行っている。11月12日と19日の集会とデモは「朴槿恵政権退陣非常国民運動」が主催したが、前記闘争本部に「参与連帯」「民主社会のための弁護士会(民弁)」「韓国女性団体連合」「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」など1500団体が加わった連合組織だ。特記すべきは、野党はそこに入っていないということだ。

 私が現場で取材した12日の集会でも、参加した野党の幹部や次期大統領有力候補らは司会者が名前を紹介しただけで、壇上にあがって演説することはなかった。壇上で演説したのは、挺対協女性代表、「416の約束(セウォル号事件)国民連帯」女性活動家、ソウル大学病院女性労組員、民弁弁護士などで、崔順実問題についてはほとんど言及せず、朴槿恵政権の対日外交、経済政策などを取り上げて激しい糾弾演説を行った。

 ≪左に偏った半島の政治勢力≫

 「朴槿恵は下野せよ、朴槿恵を下獄させよ」というフレーズが繰り返し出てくる集会の主題歌「これが国か」を作詞・作曲した尹ミンソク氏は、1992年に北朝鮮工作員が作った地下党の傘下組織に加入し、金日成を称(たた)える歌を作ったことをはじめ、これまで4回、国家保安法違反で逮捕された親北活動家である。

尹ミンソク
 半島全体の政治勢力の配置を概観すると、一番左端に金一家の世襲独裁政権がある。国連人権理事会調査委員会はこの政権はヒトラーやポル・ポトに匹敵する「人道に対する罪」を犯していると指摘した。その独裁政権は官営媒体やネットサイトを使って「朴槿恵退陣闘争を進めよ」と煽(あお)っている。

 闘争本部はそのすぐ隣あたりに位置する。運動方針が北朝鮮の煽動(せんどう)とほぼ一致している。なお昨年1月には北朝鮮系ネットサイトで崔順実被告と朴槿恵大統領の関係についての「白書」が公開されていた。

 野党は闘争本部よりは少し右だが親北であることは間違いない。第1野党の文在寅前代表は盧武鉉政権で大統領秘書室長をしていたとき、国連北朝鮮人権決議に賛成してもよいかと北朝鮮に事前に問い合わせ、否定的回答があったので棄権させたという。当時の外相が最近出した回顧録で暴露した。

 第2野党の幹部、朴智元氏は金大中政権時代、南北首脳会談実現の対価として4億5千万ドルの外貨を北朝鮮に送金した事件で逮捕され、実刑判決を受けている。

 ≪自由民主主義を守れるかが焦点≫

 その少し右に与党セヌリ党が位置するが、親朴槿恵派と非朴槿恵派に割れ、内紛を繰り返して4月の総選挙で敗北した。その右に退役軍人や教会などを背景にする保守勢力が配置される。

 保守系有力新聞の朝鮮日報や三星財閥系の中央日報などが左派新聞と競うように暴露合戦を続け、国民の大部分が朴槿恵大統領への失望と怒りを募らせたことは確かだ。しかし、朴槿恵政権がこの間、北朝鮮と国内の親北左派に対して毅然(きぜん)たる対応をとってきたことは保守派から評価されている。

 19日のデモは12日に比べて動員が落ちた。数万人のデモ隊が大統領官邸を囲む中で大統領が辞任を強制されるという「革命的状況」はほぼなくなった。今後は憲法秩序の下で、特別検事の捜査と国会での弾劾審議が進むだろう。

 その間に保守陣営が、朴槿恵大統領の崔順実被告との非正常な関係は批判するが、政権の保守的政策は維持発展させるという立場を整理できるかが勝負だ。それができれば、落ち着きを取り戻した国民に親北左派か自由民主主義派かという選択を示して次期大統領選挙で勝てる可能性も十分ある。焦点は親北左派が政権を握ることを韓国の保守が阻止できるかだ。(東京基督教大学教授・西岡力 にしおか つとむ)

【私の論評】日本メディアの朴槿恵スキャンダル報道は、単純に鵜呑みにすれば馬鹿になるだけ(゚д゚)!

韓国では、日々北朝鮮からの浸透の脅威にさらされています。北朝鮮と韓国は国境を接しており、様々な方法をつかって、北朝鮮の工作員が韓国に侵入し、ことあるごとに政府転覆工作を図っています。

過去においては、北朝鮮の指令を受ける地下党組織員出身の韓明淑、金正日の海外秘密資金口座へ4億5000万ドルを不法送金した事件の主謀者の朴智元、左翼革命資金を用意するための強盗傷害犯だった李学永(写真下)が民主統合党の議員として国会に入っていました。

李学永
彼らが歌う党歌は、スパイ事件連累者が作詞し、金日成称賛歌の作曲家が曲を作っていました。韓国マスコミは、このような驚天動地の事実を韓国の国民に知らせてきませんでした。

にもかかわらず、「国民の知る権利」云々する民主党出入り記者たちは記者に偽装した工作員かもしれません。 韓国では、個人的な信念のために事実を隠蔽する者らは地位の上下を問わず、マスコミから追放してこそメディア界が浄化されるとの声が高まっていました。

ジョージ・オーウェルは、「1足す1は2だと言える体制は自由が護れる」と言いましたが、そういう言論の自由を与えても偏向した北の体制に売り払ってしまう記者たちが韓国の自由主義体制を崩壊させることにもなりかねません。韓国の多くの記者たちは「自由の敵」なのです。
李哲禹
民主統合党の党歌が独裁者称賛歌のブログ冒頭の記事にもでてきた、作曲家尹ミンソク、によって作曲された事実を故意に黙殺する記者たちは民主統合党や党歌の作詞家李哲禹(写真上)、や作曲家と理念的な同志なのでしょうか? それとも左翼が怖くて彼らに不利な記事は国民に知らせないのでしょうか? まさに、「党歌事件」は韓国のマスコミの左傾化を告発する事件だったのです。

以上のように韓国マスコミは左傾化しています。だからこそ、ブログ冒頭の西岡氏がかたるように、韓国のマスコミは、朴槿恵大統領スキャンダル報道をするにしても、大規模なデモを主催している勢力が過激な親北反体制派であることがほとんど伝えていないし、半島全体の政治スペクトラム(各政治勢力の配置)の中で事件を位置づける見方がほとんどないのです。

その結果、韓国の自由民主主義体制が重大な危機を迎えているという事態の本質が韓国民も分からないのです。

そうして、日本のマスコミは、左傾化した韓国マスコミの内容を日本国内で垂れ流すのみです。そうして、この構造は次期米国大統領トランプ氏の報道においても同じ構造でした。

このブログに何度か掲載してきたように、米国のマスコミは、リベラル・左派系が90%を占めており、保守系マスコミは10%を占めるに過ぎず、保守系が何かを主張しても、リベラル・左派系の大声によってかき消されるというのが実体でした。

この構造を脇に置いたとしても、韓国・日本のメディアには大問題があります。それについては、このブログにも最近掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
韓国「反・朴槿恵」狂騒 “犯罪者は晒し者に”の社会力学とは―【私の論評】大統領による統治システムは何度も同じ間違いを繰り返した、最早個人の倫理問題ではない(゚д゚)!
朴槿恵大統領の辞任を求めるデモ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、韓国においては過去に何度となく、大統領が海外逃亡をしたり、暗殺されたり、自殺したり、不正に関わっていたことがあることを掲載しました。

これだけ不祥事がつづているわけですから、韓国の大統領による統治のシステムは、欠陥があるとみて間違いありません。であれば、朴槿恵大統領のみを主に倫理的な観点から追求していたとしても問題は解決しないはずです。

これは、最早個人の問題ではなく、システムの問題なのです。であれば、大統領制による統治のシステムの問題点を改善したり、改革したりすることが、問題の根本的な解決になるはずです。

18日、米華字メディア・多維網は記事「THAAD配備に訪日、朴槿恵大統領の頼みの綱とは」を
掲載した。死に体と揶揄される朴槿惠大統領だが、THAAD配備や日本とのGSOMIA締結など
外交については着々と業務を進めている。資料写真。
しかし、韓国では、もっぱら朴槿恵氏自身の倫理的側面が追求されるのみです。これでは、全く何の解決にもならないどころか、北朝鮮側に朴槿恵スキャンダルを利用され、それこそ、西岡氏が主張するように、韓米同盟が解消されて米軍が撤退し、半島全体が中国共産党と北朝鮮世襲独裁政権の影響下に入る可能性もでてきます。

もし、韓国メディアや日本メディアなど、韓国の大統領による統治のシステムの問題点を明らかにするという姿勢で臨んでいれば、当然のことながら、その過程で西岡氏が主張しているように、大規模なデモを主催している勢力が過激な親北反体制派であり、これに対処する方法をどうすべきかとか、半島全体の政治スペクトラム(各政治勢力の配置)の中で事件を位置づける見方ができていたものと思います。

韓国メディアがそのようなことができないにしても、日本のメデイアは本来韓国から少し離れている日本にいるわけですから、記者などに現地取材をさせることをするにしても、もっと違った角度から取材して客観的に報道できたはずです。

しかしながら、米国大統領選挙の報道でも、そのようなことができなかった左下(左傾化しているだけなく、能力が低いということ)のマスコミには、韓国の朴槿恵スキャンダルにおいても、それは不可能なのでしょう。

それにしても、日本の新聞やテレビなどの朴槿恵スキャンダル報道など全く視聴する価値がないどころか、視聴して単純に鵜呑みにしていれば、馬鹿になるだけということは、確かなようです。

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2016年4月22日金曜日

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と―【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

【お金は知っている】菅直人政権時の無為無策を繰り返してはいけない 増税は論外、公共投資を粛々と

九州の熊本・阿蘇地方の地下奥深くから入った亀裂は四国、本州へと伸びる兆候を示している。この美しい国土は荒々しい地球の営みの賜物(たまもの)である現実を改めて知らされた。

であれば、なおさらのこと、わが国では人々の安全と利便を確保するインフラの修復と再整備が世界でも抜きんでて重要だ。その役割は主として政府が受け持つ。

グラフは1995年1月の阪神淡路大震災と2011年3月の東日本大震災以降の公共投資と国内総生産(GDP)の前年比実質増減率を比較しながら推移を追っている。これをみると、当時の政権がどのくらい迅速に震災後の復旧に当たったか、成果はどうか、その結果、景気はどうなったかの見当がつく。

阪神淡路大震災当時は自民、社会、新党さきがけの連立による村山富市(社会党出身)政権で、震災当初の対応は大きくもたついた。しかし、震災の3カ月以降はインフラ復興・復旧のための公共投資が着々と進められるようになった。公共投資による経済への波及効果で景気のほうは下支えされていく。

対照的なのが東日本大震災時である。民主党の菅直人政権は4月に有識者による「復興構想会議」という首相の諮問機関を立ち上げたが、主要議題は復興のための財源をどうするかだ。同会議は財務官僚に牛耳られ、増税が真っ先に話し合われた。
伊藤元重(左)と伊藤隆敏(右)
 これに合わせて、財務省の受けの良い東大の伊藤元重、伊藤隆敏両教授が復興財源のための消費税増税を提唱し、日経新聞の「経済教室」欄を通じて主だった大学教授から賛同の署名を集めた。民主党政権は復興財源を所得税・法人税増税、そして消費税増税構想を12年の3党合意へと結実させていく。

肝心の公共投資はどうか。遅々として進まず、わずかに伸びたのは翌年になってからだが、それも一時的だった。「福島原発事故処理に手間取った」とか、「急激な復旧工事のために人手不足になった」などの言い訳はあるだろうが、データが示すのは公共投資の驚くべき停滞ぶりである。戦後未曾有の大災厄に対し政権の無為無策はおろか、政権が大震災後の大災害を引き起こしたと批判されても仕方あるまい。


もともと「コンクリートから人へ」という触れ込みで政権を奪取した民主党は公共投資をネガティブにとらえ、その削減を財務官僚に丸投げしていた。財務官僚は渡りに船とばかり、菅政権、続いて野田佳彦政権を洗脳し、増税と緊縮路線に乗せた。経済が停滞するのは当たり前で、実質ゼロ成長が続いていく。

今回の熊本大震災では、以上の失敗の教訓を安倍晋三政権がどう生かすかである。危機対応はさすがに素早いし、自衛隊の出動、米軍の協力とぬかりない。

財務官僚はどうか。非常識にも、復興財源のためにも予定通り消費税増税せよという世論誘導を仕掛けるのだろうか。今回はさすがに御用学者や御用メディアは沈黙しているのだが。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】熊本震災復興は復興税ではなく国債発行を!東日本震災復興の過ちを繰り返すな(゚д゚)!

熊本震災の惨状
震災からの復興を復興税で賄うなど、本当に言語道断のとんでもないやり方です。このようなことをした国など古今東西を問わず、あのときの日本以外には存在しません。これは、はっきり言い切ります。

震災からの復興には通常は、建設国債などの国債で賄われるのが普通です。建設国債とは、財政法第4条において「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定されており、この規定に基づいて、建設国債が発行できるとしています。四条国債という別名は財政法第4条を根拠にしていることからです。

建設国債が財政法で発行が可能なのは、建設される公共施設は後世にも残って国民に利用できるためです。建設国債は、後世に残らない事務経費や人件費に充てることはできません。日本では建設国債は1966年から発行されています。2000年8月3日、森喜朗内閣下で、IT関連費等も建設国債で調達できるように財政法4条を見直す方針が決められました。

なぜ、復興のための財源には、復興税などの税金ではなくて、建設国債などの国債が用いられるかといえば、それは世代間の負担の格差を平準化するためです。復興税などの税で震災などの復興を賄うとすれば、震災など受けた当の世代にばかり負担がしわ寄せされるからです。

こんなことは、経済学を学んだ人なら、すぐ間違いとわかる政策です。上で説明したように、課税の平準化理論というものがあり、例えば百年の一度の災害であれば、100年債を発行して、毎年100分の一ずつ負担するのが正しい政策です。

復興税で復興を賄うとすれば、後の世代のために、震災などで大きな被害を受けた現在の世代だけが、復興のための税を負担するということになり、その負担はあまりに多すぎます。だからこそ、震災などの自然災害などの大規模な災害のときには、建設国債などの国債で賄うのが常識です。

こんなことは、別にマクロ経済学など学んでいなくても、常識で理解できる範囲です。にもかかわらず、結局上の記事のように、復興財源は、復興税と消費税で賄うなどというとんでもないことが、企図され、実行に移されたのです。

復興税の概要はどのようなものだったか、以下にチャートを掲載します。


デフレの真っ最中で、しかも大規模な震災と津波による被害に見舞われているときに、こんな愚かなことが実行され、その後8%増税も実行されたわけですから、いつまでたっても、デフレからなかなか脱却できないのは、当たり前のことです。

田村秀男氏によるブログ冒頭の記事の内容のような記事は、以前にもこのブログに掲載しました。その時は、まだ熊本地震が発生していないときでした。その記事のリンクを以下に掲載します。
増税勢力はこうして東日本大震災を「利用」した~あの非情なやり方を忘れてはいけない―【私の論評】財務省、政治家、メディアの総力を結集した悪辣ショック・ドクトリンに幻惑されるな(゚д゚)!
東日本震災の被災地にかがみこむ若い女性
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、復興税制を推進したり、賛同したりした愚かな経済学者どものリスも掲載しました。この経済学者どもは、日本では主流といわれる、東京大学を頂点とした、日本の経済学主流派のグループです。

本当に情けないです。財務省主導の増税キンペーンにすっかりのせられて、復興税なる奇妙奇天烈、摩訶不思議な税を導入し、それだけにあきたらず、8%増税、10%増税まで提唱したというのですから、もう、世も末です。

財務省の頼みとあらば、まともな経済学説を曲げてでも、ありえないような経済政策を導入する片棒をかつぐというのですから、まともではないです。

この記事でも、掲載してありましたが、東日本大震災の復興が満足に進んでいません。その上、今度は熊本地震です。


多くの民間人や、芸能人や、一般の人からも、熊本復興のために様々な考えが表明されています。しかし、こういう善意によるせっかくの試みも、政府の復興への対応が、まずければ全体として停滞してしまうことになります。

財務省や、上記の頭のいかれた経済学者どは、熊本地震の復興にも、復興税の導入とか、10%増税などといいかねません。このような稚拙な言論に騙されるべきではありません。

それは、全くの間違いです。8%増税でも甚大な被害があったにもかかわらず、さらなる熊本のための復興税導入とか、10%増税どしてしまえば、その結果は破滅的なことになります。

熊本の復興は、そんなことをさせるわけにはいきません。阪神淡路大震災以上の復興政策を実行するべきです。そのためには、復興には建設国債などの国債を用いて対処すべきです。償還期間は最低でも数十年にすべきです。

これ以上国債発行などというと、将来の世代の負担に押し付けることになるという、これまた、財務省の洗脳された人々が、財政破綻するなどとのたまったり、信じこんだりするでしょうが、それは全くの間違いであることも、このブログで掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に国債が暴落する可能性はかなり低いことを示した部分のみ掲載します。
   日本の現状をいえば、グロス (総合計)の債務残高(大部分が国債)は1100兆円程度であるが、ネット(正味)でみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。 
 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。 
 こうした基礎データが頭に入っていないとしたら、高度な議論をしているようにみえても上滑りになってしまう。
 財政破綻の文献をみれば、国債の投資家が国内か海外かは、破綻するかどうかと基本的には無関係である。日本国債の外国人保有比率が上昇したことで、金利の振れ幅が大きいとの指摘も破綻問題とは関係がない。国債残高をネットや統合政府でみれば、たいした数字ではないので、暴落の可能性はさほど高くないだろう。
日本の借金は、このようにさほどでもありません。日本の国債は、暴落するどころか、金利はゼロに限りなく近く、場合によってはマイナス金利になることもあります。このような状況では、国債が暴落するなどのことは考えられず、復興に国債をあてたとしても、財政破たんするとか、将来の世代に過大なつけを回すなどの考えは、当てはまりません。

以上のようなことから、今回の熊本震災による復興は復興税ではなく国債によるべきであり、東日本震災復興の過ちを繰り返すべきではありません。

今後の政治課題は、10%増税は見送りは当然のこととして、熊本震災復興そうして、未だ停滞している東日本大震災復興にも、国債を用いて十分な財源を確保して、一日も早く復興を成し遂げることです。

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