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2020年3月7日土曜日

前例のない大胆政策…安倍政権は「消費減税」決断を! 財務省は必死に抵抗するだろうが…ここが政権の「正念場」だ―【私の論評】積極財政と金融緩和政策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!


安倍総理

新型コロナウイルスが、世界と日本の経済に大打撃を及ぼしそうだ。株価はすでに急落している。これから、実体経済に波及するのは避けられない。どう対応すべきか。

 結論から先に言えば、私は昨年10月、10%に引き上げた消費税率を元の8%に戻すべきだ、と思う。財務省は必死で抵抗するだろうが、今回の事態はそれほど深刻、かつ前例がない。安倍晋三政権の英断を望みたい。

 多くの読者は、いくらなんでも増税したばかりの消費税を減税するとは「あり得ない」と思われるかもしれない。だが、私は単に自分が期待するだけでなく、「首相の政治判断としても、十分あり得る」と思っている。

 なぜなら、安倍首相は2月29日の記者会見で、次のように語っていた。

 「各地の主要な株式市場において、軒並み株価が大きく下落するなど、世界経済の動向も十分に注視しながら、そのインパクトに見合うだけの必要かつ十分な経済財政政策を行っていく」

 この「インパクトに見合うだけの政策」というフレーズは、私の記憶にない。安倍政権は「コロナ・ショック」がどれほどひどくなっても、それに見合う景気刺激策を展開する決意なのだ。そんな刺激策は減税しかない。

 これまで、日本で景気下支えと言えば、大型公共投資のような歳出拡大策ばかりが展開されてきた。だが、本来は歳出拡大だけでなく、減税もある。実際、ドナルド・トランプ政権を含め、米国では減税が多用されている。

 日本が減税に消極的なのは、財務省が抵抗するからだ。彼らは大きな声で言わないが、「予算のバラマキ」こそが権力の源泉になっている。減税すれば、それだけ原資が小さくなるので、彼らは必死で抵抗するのだ。

 だが、今回の事態は、財務省の都合に耳を傾けているような場合ではない。コロナ・ショックは、2008年のリーマン・ショックを上回る可能性もある。2月27日には、米国のダウ平均株価が過去最大の下げ幅を記録した。

 危機の終わりが見えないどころか、日本も米国も試練は始まったばかりなのだ。リーマンは金融の危機だったが、今回は金融にとどまらず、個人消費、設備投資はもちろん、製造業のサプライチェーンも直撃している。

 加えて、中国、北朝鮮、韓国の政権基盤も揺さぶっている。私は目を覚ますたびに「今日は何が起きているか」と緊張感に襲われる。人々の不安と恐怖は、とてつもなく大きい。そんな心細さはリーマンの時もなかった。

 そうであれば、安倍政権は前例のない大胆な政策で対応すべきだ。言葉ではなく、行動で「政府は国民とともにある」と訴える必要がある。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)がマイナス成長に陥ったのは、消費増税が原因だった。減税は増税の誤りを正す結果にもなる。

 最悪なのは、不十分で小出しの対応である。対応に失敗すれば、夏の東京五輪・パラリンピックは吹っ飛び、政権の足元も危うくなるだろう。ここが「本当の正念場」だ。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

【私の論評】積極財政と金融緩和策の両輪で、増税と武漢肺炎による景気低迷に対処せよ(゚д゚)!

武漢肺炎の猛威はすさまじく、北海道では感染者はとうとう90人を超えました、100人を超えるのも間近いでしょう。これにともなう、経済的損失も凄まじいものになるでしょう。

週明けに発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産の改定値について、民間の調査会社の間では、年率でマイナス6.3%だった速報段階から下方修正され、マイナス幅がさらに拡大するという予測が多くなっています。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は、先月の速報段階では、消費税率の引き上げなどの影響で物価の変動を除いた実質でマイナス1.6%、年率に換算してマイナス6.3%となりました。

去年10月から12月までのGDPの伸び率は速報値では−6.3%だったが
このGDPについて、最新の統計を反映した改定値が、週明け9日に発表される予定です。

民間の調査会社など11社の予測によりますと改定値は、実質でマイナス1.6%からマイナス2.0%、年率換算ではマイナス6.1%からマイナス7.9%となりました。

11社のうち10社は、速報段階から下方修正されマイナス幅がさらに拡大するとしています。

これは、最新の統計で企業の設備投資が下振れしたためで、2社は前回、6年前の消費税率の引き上げ直後の年率マイナス7.4%よりも落ち込みが大きくなると予測しています。

もうすでに、景気後退局面に入っている可能性もあります。ちなみに、景気後退局面とは一般的に、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションとみなします。日本経済はすでに景気後退局面に入っている恐れもあります。

これは、武漢肺炎前の数字です。さらに、1月から3月までのGDPも新型コロナウイルスの感染拡大の影響でマイナスになるという予測も出ていて、そうなれば、日本は間違いなく景気後退局面に入ることになります。そうして、これはほぼ確実です。

すぐにでも、消費税減税をしたほうが良いのは言うまでもありません。消費税減税をするにしても、8%未満にするには、法的手続きが必要です。それには、ある程度時間がかかります。

しかし、すぐにできる方法があります。それは、消費税10%はそのままにして、全品軽減税率8%を適用することです。これなら、すぐにできます。これを実行するには、法律を変える必要はありません。安倍政権はまずはこれを速やかに実施すべきでしょう。


さらに、必要とあれば8%未満にできるようにするために新たな法律づくりに着手すべきでしょう。

積極財政には、減税の他にも様々な方法があります。例えば、香港で実施されたように、国民に対する現金の一律支給や、所得減税や社会保険料の減免も考えられます。公共事業の増額もあります。さらには、期限付きのクーポンの支給などもあります。

さらに、今の国債マイナス金利の環境を生かして、政府がマイナス金利で国債発行し、それをそのままマイナス金利で民間に貸し出す「緊急融資制度」を行うということもできます。武漢肺炎で損失を被った個人や企業はマイナス金利で一定額借入できるようにするという方法もあります。

日銀も、武漢肺炎がなかった時期ですら、物価目標を達成できなかったのですか、今後はイールドカーブ・コントロールなどはやめて、異次元の緩和に戻ってもらいたいものです。
中央銀行の資産は金融緩和の度合いに比例する、日銀は緩和しなかったことがわかる

このブログでは何度か掲載してきたように、リーマン・ショックのときには、欧米等が大規模な緩和に踏み切ったにもかかわらず、日銀はほとんど緩和をしなかったために、デフレが深刻化し、円高になりました。

そのため、震源地の米国や悪影響を受けた英国などではいち早く不況から立ち直ったのですが、日本一人だけがなかなか不況から立ち直れず、一人負けの状態になりました。

今回の武漢肺炎による景気に落ち込みは、リーマン・ショック時より酷いことになる可能性は高いです。日銀は、リーマン・ショック時の失敗を繰り返さないように、すみやかに従来の異次元緩和に踏み切るべきです。そうして、それを維持する旨をすぐ公表すべきです。

政府が景気後退局面からの脱出や武漢肺炎対策等のため、国債増発を通じて政府支出を増加させると、長期の市場金利に上昇圧力が加わり、これが次第に民間投資などを抑制するメカニズムが働きます。これに対して、政府支出が拡大するもとでも、中央銀行が市場金利の上昇を抑制すれば、民間投資などへのマイナスの影響は限られ、景気刺激効果の強まりが期待できます。

今般の、景気後退局面と武漢肺炎による経済活動の低下というダブルパンチに対処するためには、政府の積極財政と日銀の緩和政策の両輪で対処するしか方法はないのです。

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2019年4月11日木曜日

安倍首相、ついに“消費増税凍結+衆参W選”決断か!? 4月に訪米する『隠された理由』とは…―【私の論評】日米首脳会談で消費税凍結が決まる(゚д゚)!


ついに安倍首相は決断するのか

安倍晋三首相が「衆参ダブル選」を決断する公算が出てきた。夏の参院選の前哨戦となる統一地方選前半戦の焦点、北海道知事選で与党系候補が「野党統一候補」に大勝したうえ、新元号「令和(れいわ)」に国民の好感が広がり、内閣支持率が急浮上しているのだ。秋には消費税増税があり、来年には東京五輪・パラリンピックが控える。残りの任期などを考えれば、勝負に打って出るタイミングは多くない。浮上した「7月21日」の日程。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は「増税延期+衆参ダブル選」の可能性を指摘している。

 長谷川氏の注目すべき解説は後述するとして、政府・与党幹部から最近、気になる発言が相次いでいる。

 安倍首相の懐刀、菅義偉官房長官は3月31日、ラジオ日本の番組で、「衆参ダブル選は『99%ない』と言えるかもしれないが、『100%ない』とは言えない」と語った。

 菅氏は翌日の新元号発表で一躍時の人になった。安倍内閣の支持率は最高で9・5ポイント(共同通信、前月比)も上がり、52・8%になった。

 7日投開票の北海道知事選は「与党系候補vs野党統一候補」の激突だったが、野党共闘とは形ばかりで、内実はバラバラだった。9日告示の衆院大阪12区補選でも、共産党前職を「無所属」候補として出馬させる「奇策」を使ってまで、野党共闘にこだわったが、立憲民主党や国民民主党は「自主投票」で、ほころびが生じている。

 野党は、夏の参院選で勝敗のカギを握る「1人区」の候補者調整が統一選後半戦(21日投開票)後にずれ込むなど、準備が遅れたままだ。国民民主党と自由党との合併協議も難航している。

 安倍首相には“好機到来”というしかない。

 自民党の閣僚経験者は「野党が連携不足で、体たらくなのはチャンスだ。今後4年間かけ、憲法改正に腰を据えて挑むためには、リスクはあっても、衆参ダブル選がいい。相乗効果も出る」との本音が漏れてきた。

 安倍首相と距離を置く自民党の古賀誠元幹事長も8日夜、BS日テレ番組で「衆参ダブル選はやるべきだ。これを逸したら、衆院解散を打って出るタイミングは難しくなる」と肯定的な発言をした。

 世界経済の先行き不安が広がるなか、予定通りに今年10月に消費税率が10%に上がれば、景気の落ち込みが予想される。来年夏の東京五輪・パラリンピック以降になると、野党共闘への時間的余裕を与える。

 現在の衆院議員の任期は2021年秋まであるが、さまざまな条件を考えると、解散を打つタイミングは限られてくるのだ。

 安倍首相は5月中旬ごろまでには、今年1~3月期のGDP(国内総生産)や市場動向などをにらみ、消費税増税の最終決断を下すとみられる。


 立憲民主党会派の岡田克也元外相は3日、「自民党が強いというよりも、野党が弱い。景気の先行きが不透明ななかで、野党をつぶしにかかるダブル選はあるかもしれない」と記者団に警戒感を隠さなかった。

 前出の閣僚経験者も「令和元年に、いきなりの増税で景気が悪くなるのもどうか。もし、安倍首相が『増税凍結・延期』を決断すれば、その是非がダブル選の『大義』になるかもしれない」と語る。

 一連の動きを、どう分析すべきか。

 夕刊フジで人気連載「ニュースの核心」(金曜掲載)を担当するジャーナリストの長谷川氏は、安倍首相が今月22日から29日まで8日間、フランス、イタリア、スロバキア、ベルギー、米国、カナダの6カ国を歴訪することに注目する。

 6月に大阪で行われるG20(20カ国・地域)首脳会議(サミット)の成功に向けて「緊密な協力を確認する」といい、米国ではドナルド・トランプ大統領と首脳会談を行う方向というが、これが不可解なのだ。

 「トランプ氏は5月末に国賓として来日する。その前に会いに行くのは『別の隠された理由』があるのではないか。内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査など、経済の各種統計は悪化している。米中貿易戦争や、英国のEU(欧州連合)離脱など、世界経済の懸念材料は山積している。安倍首相はG20で議長を務め、『世界経済の成長・安定のために頑張ろう』と各国首脳に呼びかけるが、日本が消費税増税を断行すれば、世界経済悪化の引き金を引きかねない。トランプ氏と4月末に会談して、米中貿易戦争の見極めをして、増税延期に踏み切るつもりではないか」

 ここで、安倍首相が世界経済を守るために「増税延期の是非」などを掲げて、衆参ダブル選に打って出る可能性が浮上してくる。2014年衆院選と同じ構図だ。

 通常国会は延長しなければ6月26日で閉会となる。今回改選組の参院議員の任期満了は7月28日のため、7月中の参院選が不可欠だ。

 もし、会期末の衆院解散となると、公選法の「40日以内」の規定から、衆参ダブル選の選択肢は「7月21日」に絞られてくる。

 長谷川氏は「増税延期は4月中にも発表される可能性もある。新天皇が即位された令和元年に、景気を悪化させることは、政治指導者として避けるのではないか。衆参ダブル選の可能性は十分ある」と語っている。

【私の論評】日米首脳会談で消費税凍結が決まる(゚д゚)!

4月5日の米有力経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル上で、今年10月に予定されている日本の消費増税は日本経済の足枷になるどころか、「自傷行為に近い」との厳しい指摘がなされました。これについては、このブログにも掲載しました。

皆さんご存知のように、私は安倍総理を支持しています。なぜかというと、中国の「反日統一共同戦線戦略」を「無力化」することに成功したからです。今、日韓、日ロ関係が再び悪化していますが、それは多分に相手側に問題があり、外交は概ね成功していると思います。特に、過去の政権と比較すれば、かなり良い線を行っています。

さらに、金融政策に関しては最近は、実質的な引き締め状況ではありますが、それにしても過去の政権のときに比較すれば、緩和状況を続けており、雇用は劇的に改善されました。そのため、私は、安倍政権を支持しています。しかし、内政に関しては、いろいろいいたいことがあります。

たとえば、消費税引き上げについてはこのブログの読者ならご存知のように、私は大昔から大反対しています。

いままで日本の消費税は、3回変わってきました。1989年、消費税導入。税率3%に。翌年、バブルが崩壊しました。これは、日銀が本来インフレでもないのに、土地や株価の値上がりを一般物価の値上がりと勘違いして、金融引き締めに転じたのが、最初の引き金でしたが、それに消費税増税が追い打ちをかけました。

1997年4月、消費税率を3%から5%に引き上げ。これが、日本経済に「とどめ」を刺しました。このち直後から日本経済は完璧にデフレに投入しました。96年のGDP成長率は3.1%でした。今の感覚でいえば、「かなり良い感じ」です。しかし、消費税が導入された1997年は、1.07%。98年:1.13%、99年:0.25%。

これについて、「アジア通貨危機のせいだ」とか「ロシアのデフォルトのせいだ」という人もいます。確かにそういう要因もあるでしょう。しかし、他の国々は、97年98年の危機から速やかに脱却しました。日本だけ「暗黒時代」が長引きました。明らかに消費税引き上げが原因です。

消費税をあげても、税収はさほど上がってはいない。それは、増税によって
個人消費が減ってGDPの成長が鈍化したためである。

安倍さんが総理になられた2013年には、日本経済は、久々に「イケイケ」でした。といっても、この年のGDP成長率は2%。私たちは、どれほど「低成長」「無成長」に慣れてしまったのかということです。

2014年4月、消費税率が8%まで引き上げられました。この年のGDP成長率は、0.38%。アベノミクスは、いきなり「大鈍化」してしまいました。2015年は1.35%、2016年0.96%、2017年1.74%、2018年1.14%。1%台の成長では、本来は「好景気」などとはいえません。

世界経済、去年から米中貿易戦争の影響で暗雲が漂いはじめています。米国による対中国経済冷戦により、特に中国経済が落ち込みをみせています。そして、日本企業にも影響がでてきています。日本電産の永守さんは「リーマン級だ!」とおっしゃっています。

すでにIMFも、米中貿易戦争が原因で世界経済は悪化すると予測しています。明らかに景気が悪化していく未来が見えているのに、日本は消費税をあげようというのです。愚かとしか言いようがないです。病人にドロップキックをくらわすようなものです。ウォール・ストリート・ジャーナルも、その愚かさを指摘しているのです。

先にも掲載したように、5日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で、日本で10月に実施される消費税増税が経済をさらに悪化させる「自傷行為」になるとの見方を示しました。

同紙は、日本の直近の経済指標が低調な上、米中貿易摩擦などで世界的に成長が鈍化し、逆風になっているとするとともに、8年目に突入するアベノミクスは「完全には実現しておらず、投資や生産性への重しになっている」と指摘しました。

同感です。世界的には、米中貿易戦争とブレグジット。日本国内では、消費税率引き上げとオリンピックバブル終焉。悪材料がたくさんあります。

ウォール・ストリート・ジャーナルは本日以下のような記事を掲載しました。
アベノミクス第二の矢を折る消費増税
 日本経済は減速しているが、政府は消費税率の引き上げに踏み切りそうだ。むしろ増税を撤回し、ここ数年の経済発展を維持すべきだ。 
 調査データや消費者態度指数、機械受注統計はいずれも、日本経済がここ何年かで最もぜい弱な状態にあることを示唆している。その一因は中国の減速だ。 
 それにもかかわらず、安倍晋三首相は人口高齢化に伴う社会保障費用の増加に対応するため、10月に消費税を8%から10%へ引き上げなければならないと主張している。2014年に実施した前回の消費税増税がリセッション(景気後退)入りの引き金を引いたことなどお構いなしだ。 
 アベノミクスの第二の矢である財政刺激策は、盛んに議論されたが全く威力を発揮していない。国内総生産(GDP)に対する政府債務残高の比率は安倍氏が内閣総理大臣に返り咲いた12年以降、ほとんど変化していない。安倍氏は今や、第二の矢を自身の足元に放つリスクを冒している。 
 日本が引き続き直面している最大のリスクは成長停滞であって、政府債務の負担ではない。物価変動の影響を含む名目成長率は、第2次安倍政権の初期に改善したものの、その後は実質的にゼロ成長に鈍化した。 
 一方、債務返済コストはGDPのわずか1%程度にとどまる。現在は国債の半分近くを日銀が保有しているため、投資家の動揺を発端に債務を巡るパニックに陥る可能性は一段と低くなっている。 
 日本政府は欧州が犯した過ちを回避すべきだ。欧州は成長鈍化に対する有効策を講じることに後ろ向きで、マクロ経済の政策決定が中国政府の動きに影響されている。 
 確かに、日本では企業利益など他の歳入源に比べ消費税率は低い。だが政策転換は景気が好調な時に、全体的な財政政策を引き締めることなくゆっくりと進めるべきだ。キャッシュレス決済のポイント還元など、増税時の景気対策として打ち出された措置は不十分だろう。 
 中国を震源とする世界的な景気減速に見舞われた16年、安倍氏は消費増税の延期という適切な判断を下した。日本には今一度、誤った増税を棚上げする余地がある。
米国の有力経済紙がこのような記事を二度にわたって掲載しているわけですから、日本が消費税増税を断行すれば、世界経済悪化の引き金を引きかねないことをトランプ政権も十二分に理解しているのではないでしょうか。

冒頭の記事にもあるように、安倍総理は、トランプ氏と4月末に会談して、米中貿易戦争の見極めをして、増税延期に踏み切るつもりではないでしょうか。

4月のトランプ・安倍会談では当然消費税も話題に・・・・

安倍総理には、せめて消費税率を据え置きにし、できれば、消費減税をして消費税を5%に戻していただき、日本経済を救っていただきたいと思います。

私としては、5%の次は、3%に、3%の次は消費税ゼロにし、その後経済の動向をみて、本当にインフレ懸念が起こったときに3%の消費税にするなどして、これをもって日本の財政政策を機動的な財政政策に根本からつくりかえていただきたいと思います。

減税で、経済成長が実現されれば、税収も増え、これに対して批判をする識者もいなくなるでしょう。さらに、金融政策もぬかりなく、現状実質的に引き締め状況になっている金融政策に関しても、果敢に挑戦し、量的緩和をさらに実行して、日本を再び成長軌道にもどしていただきたいものです。

そうして、いつまでもまともなマクロ経済政策ができない状況を終わりにしていただきたいです。だれが、日銀の総裁になろうが、財務省の次官が誰になろうが、だいたいまともなマクロ経済政策が実施できるように、システムを根底から変えていただきたいです。

それができれば、安倍政権は絶大な支持を受けて、憲法改正もかなりやりやすい状況になるでしょう。増税をすれば、これとは全く反対の状況となり、憲法改正は遠のくことになります。

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不安出ずる国、日本の消費増税(ウォール・ストリート・ジャーナル)―【私の論評】WSJの記事には、間違いもあるが概ね正しい。増税はすべきでない(゚д゚)!



2019年2月2日土曜日

トランプ氏、米のみの制限を認めず 「全核保有国の新条約を」INF破棄で―【私の論評】今回の破棄は、日本の安保にも関わる重要な決断(゚д゚)!

トランプ氏、米のみの制限を認めず 「全核保有国の新条約を」INF破棄で

演説前に眉を整えるトランプ大統領=1日,ホワイトハウス

    トランプ米大統領は1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄を同日発表したことに関連し、ホワイトハウスで記者団に対し、「全ての核保有国を集めて新しい条約を結ぶ方が(米露2国間よりも)はるかにましだし、見てみたい」と述べた。

 トランプ氏は一方で、「条約は全ての国が順守しなければならないが、一部の国は条約など存在しないかのような振る舞いをする」と指摘し、ロシアのINF条約違反を批判した。

 同氏はその上で、「全ての国が同意する新条約ができたとしても、他国が条約を守らない一方で米国の行動が制限され、不利な立場に陥るようなことがあってはならない」と強調した。

 一方、トランプ政権高官は1日の電話記者会見で、米国が条約破棄を2日に通告し、6カ月後に失効するまでの期間が「ロシアが条約を順守する唯一にして最後のチャンスだ」と訴えた。ただ、これまでにロシアは条約を順守する意向を示していないとしている。

 同高官はまた、2021年2月に期限を迎える米露の新戦略兵器削減条約(新START)の延長の是非について、関係省庁が検討を始めたことを明らかにした。新STARTは、米露が合意すれば5年間の延長が可能となる。

【私の論評】今回のINF破棄は、日本の安保にも関わる重要な決断(゚д゚)!

トランプ大統領の決定は単なる無謀な核軍拡競争につながり、日本、そして世界にとって迷惑なものなのでしょうか。 

この認識は、はっきりいって間違いです。なぜなら、ソ連時代は極東になかった中距離核ミサイルが、今では北朝鮮と中国に100基以上も存在するようになっているからです。

東アジアの核戦力配置図 クリックすると拡大します

1987年の合意以降、米ソ双方は中距離核ミサイルをかなり撤廃しました。ところがその後、周辺諸国の各配備によりロシアが割を食うことが増えたのです。そして今では日米にとっても、「中国の中距離核ミサイル」という新たな要因が登場しているます。

双方とも相手を表向きは「お前こそ条約に違反して中距離核ミサイルを開発しているではないか」と非難していますが、1987年の合意見直しは、今や米ロ双方にとって必要になったのです。

1987年の合意後、ロシア周辺の諸国が中距離核ミサイルの開発・配備を始めたのです。それは、中国、イラン、北朝鮮による、米国を狙う長距離核ミサイル開発の途上の成果でもあったし、パキスタン、インド(そしておそらくイスラエルのもの)等紛争を抱える隣国を狙ったものでもありました。これは、直接ロシアを狙ったものではありませんが、ロシアにとって脅威になったのはいうまでもありません。

ロシアはこれらの国と紛争になった場合、米国向けの長距離核ミサイルICBMを使うわけにはいかないです。と言うのは、これが発射された瞬間、上空の米国の衛星が探知して、米国はこれを米国向けのものと誤認、対応した行動をとってくるからです。

こうしてロシアは、中国やイランの核ミサイルに対して抑止手段を持たない状況に陥ったのです。中ロは準同盟国同士と言っても、互いに信用はしていません。今でもロシア軍は、極東・シベリア方面での演習では、「国境を越えて押し寄せる大軍」に対して戦術核兵器(小型で都市は破壊できないが、大軍を一度に無力化できる)を使用するシナリオを使っています。

これに加えてブッシュ政権のチェイニー副大統領は、東欧諸国に「イランのミサイルを撃ち落とすため」と称して、ミサイル防御ミサイル(MD)の配備を始める構えを見せました。

これは防御と言いながら、実質的にはかつて廃棄したパーシング2ミサイルの技術を使ったミサイルで、容易にロシアを標的とした中距離核ミサイルとなり得るとロシアは判断したようです。

カリーブルを発射したロシアの駆逐艦

「ロシアが秘密裏にINF開発のための実験をしている」と米国が言い始めたのはこの頃、つまり2000年代初頭のことです。ロシアはそれを否定しつつ、実は開発にはげみ、その成果は中距離巡航ミサイル「カリーブル」等として実りました。

カリーブルは2017年12月、ボルガ河口のロシア軍艦から発射され(1987年のINF全廃条約は「陸上」配備のものしか規制していません。水上から撃てば違反ではない、という理屈)、みごとはるか遠くのシリアに着弾したとされています。

今やロシアは中距離核ミサイルを再び手に入れて、これを極東に配備すれば中国、北朝鮮、韓国、グアム、日本を射程に収めることができるようになったのです。

米オバマ前大統領は国防支出を削減、特に核兵器の近代化を止めました。その間、ロシアは、中距離核兵器だけでなく、長距離核戦力を制限する新START条約の枠内ではありましたが、長距離ICBM、潜水艦発射の長距離SLBMの近代化を着々と進めました。経済力のないロシア(GDPは韓国と同程度)は、核戦力でしか米国との同等性を確保できないからです。

だからトランプは大統領に就任早々、核軍備充実を公約のようにして言及し続けてきました。今回のINF全廃条約脱退は、ボルトン大統領安全保障問題補佐官等、かつてのチェイニー副大統領のラインを受け継ぐ超保守派の進言によるものとも言われています。

しかし、これはトランプ自身の信念を反映していると見られ、たとえこの先ボルトンが更迭されても政策の大元は揺るがないでしょう。

すると、米国の新型中距離核ミサイルはまたドイツ等西欧諸国に配備されることになり、轟然たる反米、反核運動を引き起こすのでしょうか。 

おそらくそうはならないでしょう。と言うのは、中距離の核弾頭つき巡航ミサイルや弾道ミサイルは冷戦時代に米国がそうしていたように、西側原潜に搭載して、北極海に潜航させておけば、ロシアを牽制することができるからです。

だからこそ、昨年10月27年ぶりに、米軍空母が北極海で演習し、力をロシアに誇示したのでしょう。これまでも長距離核ミサイルを搭載した原潜の潜航海域を確保することは、米国、ソ連・ロシア、そして中国(南シナ海がその海域にあたる)にとって重要な問題でしたが、今度は中距離核ミサイル搭載原潜の潜航海域を確保することが必要になっているのです。

昨年北極海で演習した米空母ハリー・S・トルーマン

冷戦時代には、ソ連のINFが極東に配備されなかったことで、ソ連の核の脅威は日本には直接及びことはありませんでした。

しかし現在の最大の問題は、北朝鮮の核は言うに及ばず、中国保有の中距離核ミサイルです。

後者は100発を越えるものと推定されていて、中国軍による台湾武力統合などの有事には、日本が米軍を支援するのを止めるため、中国は中距離核ミサイルで日本の戦略拠点、米軍、自衛隊の基地を狙うことでしょう。

こういう時に、「お前が撃つなら、俺も撃つぞ」と言って中国を思いとどまらせることのできる抑止用の核兵器は、今、西太平洋の米軍にわずかしかありません。

かつてはトマホークという核弾頭つき巡航ミサイルが米国原潜等に配備されていたのだですが、これはブッシュ時代の決定でオバマ政権が廃棄してしまったままになっているのです。

これでは、日本は有事に米国との同盟義務を果たすことはできず、米国は日本を見捨てて裸のままに放置することになるでしょう。中国は日本に中立の地位を認めることなく、政治・経済・軍事、あらゆる面で服属を求めてくるでしょう。

そうなると、日本も核抑止力を強化せざるを得ないです。しかし、日本本土に米国の中距離核ミサイルを配備することは、ドイツ以上に難しいです。それに陸上に核ミサイルを配備することは、敵の先制・報復攻撃を容易にして、危険です。

いま米国が開発しようとしている、トマホーク巡航ミサイル新型は海中の潜水艦、あるいはグアムの爆撃機や戦闘機に装備するのが妥当です。

しかし、米国は日本に開発の費用分担を求めてくるでしょう。それは当然のことです。このままでは日本は、中国の属国になってしまう可能性もあります。

しかし日本を守ることは、米国の利益にもなります。在日の米軍基地は、米軍が西太平洋、そしてインド洋方面に展開するに当たって、不可欠の補修・兵站基地となっていますし、日本や西欧等の同盟国が、中国やロシアの中距離核ミサイルに脅されて次々に同盟関係から「脱退」したら、米国は本当の裸の王様になってしまうからです。日本は費用を分担するが、何か見返りに米国から獲得しておくべきでしょう。

ドイツには、昔から米国が置いている「戦術」核弾頭が今でも数十発あるが、これはDual Keyと言って、実戦に使用する時にはドイツ、米国両国政府の合意が必要になっています。ドイツ政府も、これの使用を積極的に米国に発議できるようになっているのです。そして米政府はドイツ政府の了解なしには、これを使用できないです。日本もこのような権利を得るべきです。

そして将来的には、日本も核兵器を開発する可能性の余地を残すのです。その「可能性」自体が抑止力になります。インドが、核ミサイルを保有していながら米国と原子力協力協定を結んでいることを念頭に置くべきです。

なお、中ロ両国周辺の海域は、米国原潜からの中距離核ミサイル発射拠点として、中ロ両国にとって戦略的意味を増していくことになるでしょう。米空母が北極海でわざわざ演習するのは、そういう意味を持っているのです。

長距離の戦略核兵器については、米ロ双方とも増強・近代化というトレンドは中距離核戦力と同じですが、こちらの方は別の条約が機能しており、長距離とは別の問題となります。2021年には失効するので、更新が必要となります。

いずれにしても、今回のロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄は、トランプがやみくもに核増強に突っ走ろうとしている等という単純な話ではないのです。

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2016年12月15日木曜日

衆院解散 1月見送り 安倍晋三首相決断、来秋以降―【私の論評】蓮舫・民進党の体たらくと財務省の弱体化で安倍首相は政局運営がやりやすい(゚д゚)!

衆院解散 1月見送り 安倍晋三首相決断、来秋以降

最近の安倍首相
 安倍晋三首相(自民党総裁)は、来年1月の衆院解散を見送る方針を固めた。各種情勢調査の結果を分析した結果、現状で衆院選を実施すれば、自民、公明両党で3分の2超を有する現有議席を割り込む公算が大きく、衆院任期2年弱を残して勝負を打つメリットはないと判断した。来夏は東京都議選が予定されているため、次期衆院選は来秋以降にずれ込む見通し。

 首相は、年末か来年1月の衆院解散を選択肢の一つとして、自民党の古屋圭司選対委員長に所属議員の集票力などを調査・分析するよう内々に指示していた。若手議員の一部差し替えも検討したが、民進、共産両党などが共闘して各選挙区の候補者を一本化した場合、自民党の現有議席(292議席)を割り込み、与党の議席数が3分の2を下回る可能性が大きいことが分かった。

 加えて、衆院任期を2年近く残して厳冬期に衆院選に踏み切れば「党利党略で国民を振り回すな」という批判が強まりかねない。首相はこのような情勢を総合的に勘案し、1月解散を見送った。首相は周囲に「1月の解散はない。メリットはない」と語った。

 来年の通常国会では、平成29年度予算案などに加え、天皇陛下の譲位に関する法整備など重要案件を抱えている。米英伊比など各国で首脳交代が相次いでいることもあり、首相は今後、外交・安全保障や内政などの政治課題に全力を傾注する構え。

 首相の悲願である憲法改正に関する審議は来秋の臨時国会以降に持ち越されることになる。このため、憲法改正の本格審議を前に、首相が来秋に衆院解散するかどうかが政局の焦点となる。合わせて日本維新の会など第三極勢力の動きが活発化する可能性がある。

 ただ、民進党の支持率は低迷を続けている上、蓮舫代表が「二重国籍」問題を抱えていることもあり、与党内では早期解散を望む声は少なくない。来年の通常国会冒頭で28年度第3次補正予算案を成立させ、速やかに解散すべきだという意見もくすぶっている。

【私の論評】蓮舫・民進党の体たらくと財務省の弱体化で安倍首相は政局運営がやりやすい(゚д゚)!

首相の来年早々の衆院解散については、このブログでも何度か掲載し、昨日の記事にもその話題に触れました。昨日の私の結論は来年早々の解散はないであろうとのものでした。昨日この話を掲載した途端に本日産経のこの報道が本日の夕方5時にあったので、本日はこの記事を掲載し、解説を加えることとしました。

なお、この首相の来年1月の衆院解散見送りの報道は、いまのところは新聞では、産経新聞だけのよううです。テレビなどでもほとんど報道されていません。

昨日のこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
GDP下方修正を読み解く 再びデフレ突入の瀬戸際も「600兆円」は達成可能―【私の論評】来年こそは安倍首相が財務省無視で、積極財政を推し進める(゚д゚)!
 
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、昨日の記事では、以下で述べる背景から、来年早々の衆院解散はないであろうと結論づけました。
①次の選挙戦で野党共闘が実施されれば、与党は議席をかなり多く失う可能性がある。
➁蓮舫民進党の体たらくと、強力だった政治集団財務省の弱体化により、安倍総理として政局を含めてかなりいろいろなことがやりやすくなった。
以上の二点から、来年早々の衆院解散はないであろうと結論を下しました。ただし、今から考えると、世界情勢の変化なども大きく影響を与えたと思います。ブログ冒頭の記事には掲載されていませんが、米国の大統領かトランプ氏に決まったこと、そうしてお隣韓国で朴槿恵政権が死に体になっていることも影響したと思います。

ところで、注目を集めた党首討論で安倍総理にこてんぱんにやられ、論理的に言い返せなくなった蓮舫氏はヒステリックに安倍総理を「嘘つき」「逃げる」「答えない」などとブーメランな言葉を吐きまくりました。

そのときの様子が風刺画になって、現在ネット上で実に的確であると話題になっています。その風刺画を以下に掲載します。




ブーメランを投げるどころか間髪入れずに自分の頭にぶち込む蓮舫氏の様子はまさに現実であった討論の様子そのもののようです。対する安倍総理は唖然としており、理解できない言行を繰り返す蓮舫氏に驚いています。

この風刺画をつくったのは絵を描くのが趣味というTwitterユーザーの「ヒカル@zwSZkh6wB2p5F9J」さん。投稿はあっという間に話題になり、即日3,000リツイートを超えて拡散されました。

党首討論など、普通はあまり話題にならないのですが、蓮舫氏の党首討論での振る舞い、発言があまりに上記を逸していたので、ネット上でもかなり話題になっています。

蓮舫氏は未だに二重国籍問題に関しては、はっきりさせず、未だに不明瞭です。そのためか、以下のようなピコ蓮舫の風刺画もネット上に人気を博しています。残念ながらこれを作成した方は誰なのか不明です。


このような時期には、選挙をするというより、安定的な政局運営をすべきと首相は判断したのだと考えられます。蓮舫氏は安倍政権の強力なチアリーダーをやってくれているのですから、確かにこれを利用しない手はないと思います。

そうして、上の記事に掲載してあるように、首相の悲願である憲法改正に関する審議は来秋の臨時国会以降に持ち越されることになりそうです。

そうなると、憲法改正に関する審議をするために、安倍政権が何をすべきかが、見えてきます。

それは、憲法改正審議の直前までに、なるべく内閣支持率を上げることです。そのためにできることのうち、最もやりやすくてかつ、効果のあるものは、やはり経済対策です。



これに関しては、この記事でも掲載したように、金融政策においてはさらなる量的緩和の拡大で、失業率を2.7%くらいまでにすることです。そうして、金融政策の効き目にはある程度のタイムラグがあり、来年秋ころまでにすぐに効果は出ない可能性もあるので、やはり、強力な積極財政政策を打ち出すことが考えられます。

過去を振り返ってみると、安倍政権における経済対策は、金融緩和はうまくいき、雇用状況はかなり良くなっていますが、残念ながら、財政政策においては、8%増税を実施してしまったため、その悪影響が未だに続いており、GDPの伸びは低迷していて、デフレに逆戻りしそうな状況にあります。

残念ながら、安倍政権が成立してからも、なぜか大規模な積極財政策は見送られるどころか、増税して、その悪影響を避けるために、補正予算を組むなどという、なんともちぐはぐな経済対策が行われるという有様でした。

この状況は何が何でも変えなければなりません。変えなければ、健忘改正までに経済を上向かせるようなことは到底無理です。大規模な28年度第3次補正予算案を打ち出すのは当然のこととして、消費税増税の悪影響の克服関しては、減税などの積極財政を打ち出すべきです。

安倍首相が、財務省の意向など完全無視して、選挙で民意を問うこともなく、安倍政権の裁量でこれを実行することができれば、経済はかなり上向き、憲法改正審議もうまくことが期待できます。

来年、安倍総理がまさに、財務省とは関係なく、政治主導でどの程度の積極財政ができるかによって、憲法改正への道が開かれる開かれないかの分水嶺になります。

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2016年12月6日火曜日

【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…―【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!

【スクープ最前線】トランプ氏「中国敵対」決断 台湾に急接近、習近平氏は大恥かかされ…

台湾の蔡英文総統との電話会談で中国を牽制したトランプ次期米大統領
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
ドナルド・トランプ次期米大統領が、中国への強烈な対抗姿勢を示した。台湾の蔡英文総統と電撃的な電話協議を行い、「経済、政治、安全保障面での緊密な結びつき」を確認したうえ、フィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談で意気投合したのだ。トランプ氏は「アンチ・チャイナ」の急先鋒(せんぽう)だっただけに、戦略的に行動した可能性が高い。習近平国家主席率いる中国は衝撃を受け、「対中激突」や「孤立化」を恐れている。

 「トランプ氏は間違いなく『対中強硬策』を決意した。一連の行動は、オバマ政権の救いがたい『対中弱腰外交』との決別宣言だ。違う言い方をすれば、中国に対する宣戦布告だ」

 米軍関係者は語った。

 中国に2日、超ド級の衝撃が走った。冒頭で触れたように、トランプ氏が、台湾独立志向が強く中国が目の敵にしている蔡氏と、通訳抜きで10分以上、電話協議を行ったからだ。トランプ氏は、蔡氏を「The President of Taiwan(台湾総統)と呼んだ」ことも堂々と公表した。

 米国は1979年の米中国交正常化以来、中国の主張する「1つの中国」政策を受け入れてきた。表向き、台湾を国として認めず、米大統領も次期米大統領も台湾総統とは接触しない-という慣例を厳守してきた。

 トランプ氏はこれを一方的に破ったのだ。まさに中国にケンカを売ったかたちといえる。「中台統一」をもくろむ中国からすれば、驚天動地の裏切り行為だ。

台湾の蔡英文総統
 中国の王毅外相は3日、「台湾側のくだらない小細工だ」「米国政府が堅持してきた『1つの中国』政策を変えることはできない」と、蔡氏を批判したという。香港フェニックステレビが伝えた。中国外務省も同日、米政府とトランプ氏に厳重抗議した。

 だが、旧知の外務省関係者は次のように語る。

 「トランプ氏は確信犯だ。オバマ氏率いるホワイトハウスにも一切知らせなかった。中国の抗議も無視して、ツイッターで『米国は台湾に何十億ドルもの兵器を売りながら、私がお祝いの電話を受けてはいけないとは興味深い』と開き直った。蔡氏を、独立国家の元首に使用する『President』と呼んだのもわざとだ。トランプ氏は米中関係悪化を恐れていない。いかに習氏を攻撃できるか、周到に計算して動いている。

 実は、中国がトランプ、蔡両氏の電話協議に激怒した3日、中国共産党の機関紙「人民日報」は1面で、習氏とキッシンジャー元米国務長官が笑顔で握手する写真を掲載した。記事は前日の会談を報じたもので、習氏は『(トランプ政権と)安定した発展を継続したい』と表明を出していた。世界各国が注視するなか、笑い物だ。大恥をかかされた。

握手した習近平(左)とキッシンジャー(右)
 トランプ氏が将来の「中国制圧」に向けて仕掛けた工作は、これだけではない。以下、複数の米軍、米情報関係者から得た情報だ。

 まず、英国のキム・ダロク駐米大使が1日、日本に派遣している英空軍最新鋭戦闘機「タイフーン」を近々、南シナ海での「航空の自由」作戦に参加させると、ワシントンで開かれたシンポジウムで明かした。ダロク氏はさらに、2020年に就役する空母2隻を太平洋に派遣する意向を発表し、「米政府と目標(対中政策)を共有する」と宣言したのだ。

 「トランプ陣営の仕掛けだ。主役は、国防長官に指名したジェームズ・マティス元中央軍司令官(退役海兵隊大将)と、安全保障担当補佐官に指名されたマイケル・フリン元国家情報局長(退役陸軍中将)の2人だろう。ともに『戦場の英雄』で『対中強硬派』、そして強烈な『反オバマ』だ。オバマ時代、南・東シナ海で中国に好き勝手させた屈辱の8年間を取り戻すつもりだ」

 そして、トランプ氏は2日、フィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談をしていたのである。

フィリピンのドゥテルテ大統領
 ドゥテルテ氏はこれまで、オバマ氏を「売春婦の息子」と罵倒し、米国との決別宣言までしていた。そのドゥテルテ氏が会談後、「(トランプ氏に)親密さを感じた。われわれと米国の絆は確かなものだと伝えた」と大喜びして、態度を一変させた。なぜか。

 「トランプ氏が、ドゥテルテ氏の麻薬犯罪対策について『成功を祈っている』と語ったことが大きい。ドゥテルテ氏は、CIA(米中央情報局)の失脚・暗殺工作におびえていた。次期米大統領が直接電話したことで、それがなくなった。南シナ海の対中戦勝利のために、米国はドゥテルテ氏をとり戻す」

 トランプ氏の大統領就任は来年1月20日だが、すでに経済問題や、外交・安保問題などで、激しく動いている。

 私(加賀)は、夕刊フジ(11月22日発行号)で、トランプ氏について《中国との『通貨戦争』『貿易戦争』『全面戦争』も辞さない、対中強硬政策を決断した》という最新情報を報告した。

 国際情勢が予想以上に緊迫化している。日本は総力を挙げて情報収集に努め、万全を期さなければならない。休んでいる暇などない。 

 ■加賀孝英(かが・こうえい)

【私の論評】トランプ新大統領が中国を屈服させるのはこんなに簡単(゚д゚)!

トランプ氏まだ大統領に就任していませんが、着々と対中国封じ込め戦略の準備をすすめています。上に掲載されているのはまさにその事実です。

トランプ氏は続々と反中派と連携を深める行動をしていますが、中国とは一切そのようなことはしていません。

これまでの、オバマや民主党の中国接近、宥和政策、二国間関係を重視する政策とは180度転換したため、中国政府は恐慌状態に陥っていることでしょう。

しかし、中国はさらにこれからとてつもない末路が待っていることにまだ気づいていないかもしれません。


超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

これに関しては、一昔前にある中国の高官が穀物の需要が増えたり、減ったりする中国の状況を「中国人の胃はゴムボールのようである」と語っていたことがあります。要するに、穀物需要がかなり減ったり、増えたりしても、中国は何とかなることを強調したかったのでしょう。

現実には、そんな馬鹿な話があるはずもなく、貧困層は穀物が手に入らず飢え死にしていたというのが実情でしょう。しかし、それは今から数十年も前のことで、今ではそのようなことはあり得ないでしょう。現状では、中国の貧困層でも何とか食欲を満たす穀物は手に入れられる状態になっていることでしょう。


実際最近では中国が突如、近年世界の穀物輸入国上位に躍り出てきました。2013年~14年期、中国の穀物輸入量は2,200万トンという膨大な量になりました。2006年の時点では、ま中国では穀物が余り、1,000万トンが輸出されていたというのに、何がこの激変をもたらしたのでしょうか?

2006年以来、中国の穀物消費量は年間1,700万トンの勢いで増大し続けている年間1,700万トンというと、大局的に見れば、オーストラリアの小麦年間収穫量2,400万トンに匹敵します。

人口増加は鈍化しているにもかかわらず、穀物の消費量がこれほど増加しているのは、主に、膨大な数の中国人の食生活レベルが向上し、より多くの穀物が飼料として必要な肉や牛乳、卵を消費しているからです。

2013年、世界全体で推定1億700万トンの豚肉が消費されました。そのうちの半分を消費したのが中国でした。人口14億人の中国は現在、米国全体で消費される豚肉の6倍を消費しています。

とはいえ、中国で近年、豚肉消費量が急増しているものの、中国人一人当たりの食肉全体の消費量は年間合計54キロ程度で、米国の約107キロの半分にすぎません。しかしながら、中国人も世界中の多くの人々と同じように、米国人のようなライフスタイルに憧れています。

中国江蘇省の豚肉売り場、価格は上昇し続けている
中国人が米国人と同量の肉を消費するには、食肉の供給量を年間約8,000万トンから1億6,000万トンへとほぼ倍増させる必要があります。1キロの豚肉を作るにはその3倍から4倍の穀物が必要なので、豚肉をさらに8,000万トン供給するとなると、少なくとも2億4,000万トンの飼料用穀物が必要になります。

それだけの穀物がどこから来るのでしょうか。中国では、帯水層が枯渇するにつれて、農業用の灌漑用水が失われつつあります。たとえば、中国の小麦生産量の半分とトウモロコシ生産量の1/3を産出する華北平原では、地下水の水位が急激に低下しており、年間約3メートル低下する地域もあるほどです。

その一方で水は農業以外の目的に利用されるようになり、農耕地は減少して住宅用地や工業用地に姿を変えています。穀物生産高はすでに世界有数レベルに達しており、中国が国内生産高をこれ以上増やす潜在能力は限られています。

2013年に中国のコングロマリットが世界最大の養豚・豚肉加工企業、米国のスミスフィールド・フーズ社を買収したのは、まさに豚肉を確保する手段の一つでした。

また、中国政府がトウモロコシと引き換えに30億ドル(約3,090億円)の融資契約をウクライナ政府と結んだのも、ウクライナ企業と土地利用の交渉を行ったのも、その一環です。こうした中国の動きは、私たち人類すべてに影響を与える食糧不足がもたらした新たな地政学を実証したものです。

このようなときに、米国に金融制裁を実施されたら、食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が終わらなければ、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるだけです。

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなることでしょう。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

そうして頼みの綱の軍事力は、米軍と対峙できるような力はありません。このブログにも何度か掲載してきたように、日本の自衛隊が中国本土に侵略することにでもなれば、中国本土決戦ということになり、中国が勝つ見込みはあります。

しかし、例えば尖閣諸島などのように、中国側が海軍力や空軍力を用いて尖閣のような他国の領土に侵略しようとした場合、軍事的には、中国が勝つ見込みは全くありません。そのなことは、中国政府の幹部らが一番良くわかっているので、尖閣で日本と本格的に対峙することはいまのところ避けているです。そうでなければ、今頃尖閣はとうに中国のものになっています。

かつて中国が、チベットやモンゴル、トルキスタン国などに侵略したときとは、全く事情が異なります。どの地域に侵攻しようとしても、必ず米国、日本とその他周辺諸国が、連携して中国を牽制してそのようなことはさせません。
支那建国当時の版図 満州、ウイグル、内蒙古、チベットも外国だった
軍事的にも勝つ見込みは全くなく、さらに強力な金融制裁などされてしまえば、現代中国の人民はかつの人民のように穀物需要が減っても、それを甘受するなどということはありません。

ただでさえ、中国では建国以来毎年暴動が2万件あり、2010年あたりからは、平均10万件に達していといわれている国です。

その時には、暴動ではすまないでしょう。内乱になり、収拾がつかなくなり、いくつかの国に分裂するしかなくなります。

トランプ新大統領は、このようなことも視野に入れていると思います。まずは、軽い金融制裁により様子見をして、それでも中国の態度が改められなければ、さらに強化し、中国はとんでもない状況に追い込まれることになります。それでも、態度が改められなければらなる金融制裁の強化、最後の最後には軍事力に訴えることになります。

それも、段階を踏んてすこしずつ強化していくことでしょう。


中国は、早めにこのようなことを自覚して、南シナ海や東シナ海での暴挙をやめるべきです。そうでないと、本当にとんでもないことになります。

オバマと違って、トランプ大統領にとっては、中国を屈服させるのはこんなに簡単なのです。というより、米国の実力をもってすれば、元々かなり簡単なことなのですが、オバマ大統領がそれを実行してこなかったため、中国が増長したというのが現状です。ごく最近の中国を一言で表現すれば、「身の程知らず」だったということです。大統領就任中に、かなりのところまでこれを実施するというのがトランプ氏の腹です。

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2014年11月21日金曜日

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で―【私の論評】ブルームバーグ日本語版記事から抜け落ちた部分の意味を理解せよ!今回の安倍総理の増税見送り、解散・総選挙は、財務省に挑戦状を叩きつけたのだ(゚д゚)!

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で

ボールクルーグマン博士
11月21日(ブルームバーグ):ノーベル経済学賞受賞者、ポール・クルーグマン氏の訪日予定を耳にした際、本田悦朗内閣官房参与は、再増税をめぐる議論を慎重派に有利な方向に導く好機が到来したと思った。

安倍晋三首相にとって、消費税率を2015年10月に10%に引き上げることの是非を決断する期限が近づきつつあった。今年4月の8%への引き上げの影響で、日本の景気は四半期ベースとして世界的な金融危機以降で最も深刻 な落ち込みに見舞われ、その後の回復の足取りもおぼつかない状況だった。

安倍首相と30年来の知己である本田氏(59)は、4月の増税反対に続き、15年の増税延期を首相に助言。そこに登場することになったのが、自身のコラムで日本の増税延期が必要な理由を説いていたクルーグマン氏だった。

本田氏は20日、オフィスを構える首相官邸でインタビューに応じ、「あれが安倍総理の決断を決定づけたと思う。クルーグマンはクルーグマンでした。すごくパワフルだった。歴史的なミーティングと呼べるものだった」と、首相とクルーグマン氏の会談を振り返った。

助っ人

帝国ホテルから官邸への高級車の車内で本田氏は、安倍首相との会談がいかに重要かをクルーグマン氏(61)に説明した。増税延期で首相を説得する手助けをクルーグマン氏にしてもらえる可能性があった。  クルーグマン氏は今月6日の首相との会談について、自身が首相の決断に及ぼした役割の大きさには控えめな態度を示す。同氏は20日の電話インタビューで「首相の質問には明確に答えられたと願う。私がこれまで書いてきたようなことうまく説明できたと思うが、首相の考えにどこまで影響があったかは分からない」と話した。その上で、増税延期の決定を「歓迎する」と語った。

海外の著名経済学者の助けを借りたいと考えていた本田氏は、クルーグマン氏が東京での講演のため訪日することを偶然知った。「クルーグマンならと思っていたが、ミーティングのためにわざわざ日本に来てれくれないと思っていたら、たまたま日本に来ることを聞いてこれを使わない手はないと思った」と明かす本田氏は、首相とクルーグマン氏の20分間の会談のお膳立てに成功。会談は予定時間の倍近くに及んだ。

会談に同席した本田氏によると、クルーグマン氏は冒頭、アベノミクスを高く評価。唯一の問題は消費増税だと訴えた。会談が終わるまでには、首相は延期を決めるだろうと本田氏は確信を持ったという。

官邸での会談

やはり会談に臨んだ浜田宏一内閣官房参与は18日のインタビューで、「安倍首相はクルーグマン氏の説明をとても注意深く聞いていた」と振り返り、「恐らく首相の決断を手助けしたのではないか」との認識を示した。

安倍首相はNHKで「先般、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン教授と話した」と言明。「彼の意見は、アベノミクスを支持する。しかし今度の消費税引き上げは慎重にいくべきだ。そうしなければ景気が腰折れしてしまう。となればデフレから脱却できず、経済再生、財政再建もおぼつかないという話だった。私もその通りだと思う」と述べた。

クルーグマン氏は17年4月の10%への引き上げをめぐっては、「ある時点で歳入の拡大を図る必要がある点は理解する」とした上で、「私としては『インフレ率が2%程度に達してから引き上げる』といった条件付きの延期の方が望ましいと考えるが、そうした可能性がないことも理解している」と語った。

原題:Abe Listening to Krugman After Tokyo Limo Ride on Abenomics Fate(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 藤岡 徹tfujioka1@bloomberg.net;ロンドン Simon Kennedyskennedy4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Christopher Ansteycanstey@bloomberg.net Brett Miller更新日時: 2014/11/21 13:21 JST

【私の論評】ブルームバーグ日本語版記事から抜け落ちた部分の意味を理解せよ!今回の安倍総理の増税見送り、解散・総選挙は、財務省に挑戦状を叩きつけたのだ(゚д゚)!

さて、このブルームバーグの記事の英語の元文には、実は日本語版には掲載されていないことが盛り込まれていた。

それに関しては、前田敦司氏が、ツイートしていますので、そのツイートを以下に掲載します。
確かに、英語版をみると、リフレ派頭脳集団の前に、増税させじと財務省の官僚らが、たちはだかっていたことが掲載されています。

日本語版の最後に(抜粋)とことわってありますし、記者・編集者は英語版も抜粋日本語も同じ人たちによるものです。

さて、これを私達は、どのように解釈すれば良いのでしょうか。これは、昨日のこのブログをご覧いただければ、良くご理解いただけると思うので、その記事のURLを以下に掲載します。
【衆院選】首相はなぜ解散を決断したのか 幻となった4月総選挙 決断を早めたのは…―【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、昨年の増税政局においては、新聞は安倍総理が、「増税決断」を正式に発表する前から、どの新聞も例外なく各紙一斉に「安倍総理、増税決断」と報道する異様な自体が発生していました。

そうして、政治家のほとんどが増税推進派となり、識者も増税一色という異様な状況のなかで、安倍総理は増税を決断せざるをえなかったことを掲載しました。そうして、日本のほとんどの勢力が「増税一色」で固まった背景には、財務省の増税キャンペーンがあったことを掲載しました。

これを掲載した後で、この記事は、以下のように結びました。
今から、思えば、安倍総理は8%増税も本当はやりたくなかったということが良くわかります。それは、今年の動きを見れば、はっきりしています。そうして、本当は、去年の9月でも増税は阻止できたはずです。法律の条文など、一日もあればかえられます。
しかし、昨年は財務省の木下康司を筆頭にする、増税推進派の恐喝により、特に自民党の幹部をはじめとする、政治家が徹底的に「増税容認」を固めてしまいました。身動きがとれなくなってしまった安倍総理は、長期政権や、まだまだやり残したことを成就するためにも、「増税の決断」をセざるを得なかったのです。
その木下氏は、実は強大な権力を持つ、財務省の権化のような存在であり、これについては、上念司氏が、わかりやすく解説していますので、その動画を以下に掲載します。

木下氏は、財務次官だったときには、繰越予算など、憲法解釈上認められないはずなのに、つるの一声でそれを実現してしまいました。この動画でも、上念氏が述べているように、このようなことは、総理大臣でも出来ないことです。日本には、このような国民の選挙で選ばれた議員による国会や、政府の他に、財務省の一部の人間や、一部のOBなどによる大きな影の強力な権力集団があるということです。
その影の権力集団が、昨年に続き、今年も増税恐喝を続け、他省庁の官僚はもとより、政治家やマスコミを「増税容認」で固めてしまおうとしたのですが、さすがに、そうはいかなかったというのが、今年の流れです。
そもそも、世論が7割がた、増税に反対なのに、無理に増税に踏切るという事自体が、異常です。昨年は、安倍総理としては、解散総選挙というわけにもいかず、増税に踏み切らざるを得ませんでした。ゆくゆくは、20%増税も視野に入れている財務省は最早、政府の一下部機関とはいえません。破壊的革命集団とでも呼ぶのが相応しいと思います。
20%増税などしてしまえば、日本経済も国民も疲弊してどうしようもなくなることははっきりしています。しかし、そんなことはお構いなしに、財務省はいずれそれを実現しようとしています。これでは、破壊的革命集団と呼ぶ以外に適切な名称などありません。
これは、見方を変えてみれば、単なる日本経済や財政、デフレに関することだけではなく、安倍総理の第二の権力への挑戦とみてとるべきです。 
そうして、この挑戦は、すぐに結果がでるものではありません。長きにわたって、展開されることになると思います。 
さて、あなたは、どちらに与しますか。正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側ですか、それとも影の権力ですか。 
私としては、無論のこととして、正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側にたちます。
それにしても、安倍総理の増税見送り、解散・総選挙宣言!ようやっと、日本でも正当ではない権力に立ち向かう総理大臣がでてきたということで、この部分では財務省に一矢報いたということで、勝利と見て良いのではないでしょうか。 
ただし、これからも戦いは長く続きます。影の権力が日本よりなくならない限りこの戦いは終わりません。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
このように、今回の安倍総理の増税見送り、解散総選挙は、財務省に対する宣戦布告でもあったのです。それを昨日も掲載したのですが、これでは憶測にすぎなかったものです。しかし、本日の上のブルームバーグの記事、それに日本語版などで、掲載されなかった部分があるというこの事実。

なぜ、英語版では掲載して、多くの英語圏の人々に読んでもらっても良いものが、日本国内版ではカットされるのかということの裏を読んでいただければ、ご理解いただけるのではないかと思います。

なぜか日本では、財務省現役とOBの一部の人間が、全部とはいいませんか、選挙で選ばれた国会議員や、内閣よりも、多方面にわたって、強力な権力を持っています。

たとえば、上の動画でも上念氏が説明しているように、財務省は今年の春に、予算の繰越をできるようにしましたが、法解釈上これは本来なら安倍総理でも一存ではできません。しかるべき正当な手続きの後でないとできることではありません。しかし、当時の木下康司財務次官は、鶴の一声でこれをやってのけました。

日本では、まだ、こうした権力の二重構造があるのです。こうした二重構造に挑戦しようとしたのが、故中川氏でした。

中川氏は、財務省の特別予算というおそろしく複雑怪奇な仕組みに切り込み、財務省の埋蔵金ということをいいだしました。中川氏も財務省の権力に挑戦しようとしたのでしょうが、その志は誠に残念ながら中途でついえてしまいしまた。この志を引き継いでいるのが、安倍総理です。

左より、高橋はるみ北海道知事、安倍晋三氏、在りし日の中川一郎氏
安倍総理の今回の増税見送り、解散・総選挙は、こうした二重権力廃止への挑戦を宣言をしたということです。いかに財務省とはいえども、官僚が表だって、10%増税を実行することはできません。それに、選挙によって正式な手続きを経た後に、民主的な手続きよって、誕生している総理に対して、あれこれ指図もできません。

財務省の権力は、あくまでも間接的なものです。日本国の財布の紐を握っているということで、それを利用して、ありとあらゆる手段を使って、他省庁や、政治家に圧力をかけ、自分たちにとって都合のよいように政治を動かしていくというのが彼らのやり方です。

それは、増税政局もそうでした。財務省は、昨年も今年も同じく、ご説明資料を持って、政治家やマスコミを回っていました。とはいいながら、その内容は、まさに恐喝でした。増税しないと、あれはできないぞ、これもできないぞという脅しです。安倍総理が何らかの行動にも出なければ、今年も昨年と同じように、増税が決まっていたことでしょう。

でも、今年は、いろいろな人が、財務省の増税推進の間違いについて、新聞は報道しなくても、徹底的にサイトなどのメディアに掲載するなどのことで、その真相ははっりきとはわからなくても、間違いであること、自分たちにとっても、良くないことであることが、理解され、多くの人達が増税に反対でした。

ここを突いたのが、安倍総理です。解散総選挙して、圧倒的多数を勝ち得ることができば、財務省とて、これを無視するわけにはいきません。そうして、安倍総理は無論、こんなことは見通していましたし、10%増税など実行すれば、経済がかなり落ち込み、安倍政権どころか、自民党政権も危うくなるということに気づいていました。

だから、クルーグマン氏の訪問と、安倍総理に対するアドバイスは、あくまでコーチング的なものであったと思います。コンサルティングなどとは異なり、コーチングでは、コーチングを受ける側に、考えて自ら問題を解決する力をつけさせるのが最終的なゴールです。クルーグマン氏も、すでに安倍総理が持っている答えを後押ししたということです。

それに、こうしたノーベル学者のアドバイス内容を公表することにより、対外的なアピールに使うという目的もあったでしょう。そもそも、クルーグマン氏は学者です。日本の経済について、経済的な観点からアドバイスはできても、日本に政局に対するアドバイスはできません。

アメリカの政局なら、それなりに理解していて、特にブッシュ政権に対する批判は、かなり辛口で辛辣でしたが、日本の政局についてはそんなに詳しくないし、他国の財務省を手ひどく批判するわけにもいきません。それに、ここ最近の増税論議などは、経済理論や、理屈など完璧に脇においた次元であり、政局そのものでした。

ただし、今回の安倍総理の挑戦は、これから長く続くであろう、最初の一回です。しかし、安倍総理には、今回のことを忘れてほしくはありません。それは、民意が自分の側についていれば、財務省も手出しはできないし、出せば大やけどをするということです。

以上のようなことは、全く表には出ないので、多くの人が知らないですし、マスコミも報道しません。水面下での戦いです。ただし、いずれ財務省の敗北が濃厚になった場合は、報道されるようになるかもしれません。しかし、今のところは、財務省がまだまだ優勢なので、しばらくは表には出てこないでしょう。

いずれにせよ、日本のような先進国において、権力の二重構造があってはならないはずです。この二重構造を廃することが、本当の意味での政治主導です。民主党がやろうとした、政治主導など、最初から間違っていました。事業仕分けや、官僚の天下りばかり追求したとしても、元を絶たなけれは、政治主導はいつまでたっても成就しません。

このような観点や背景から、増税政局、マスコミの報道姿勢、政治家の行動をみると、様々なことが浮かび上がってきます。しかし、このような観点がなければ、日本の政治、政局は全くみえてきません。今回の選挙の大義は何かなどと、まだ馬鹿なことを言っている政治家や、マスコミ関係者が大勢いますが、かれらは政局もまともに、見ることができない大馬鹿者だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どうおもわれますか?

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2014年11月20日木曜日

【衆院選】首相はなぜ解散を決断したのか 幻となった4月総選挙 決断を早めたのは…―【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?


増税見送り、解散総選挙を表明する安倍総理
「民主党はそんなに解散したいのか?」

10月下旬、安倍晋三首相はこうつぶやいた。

当初、無風と思われていた秋の臨時国会は荒れに荒れた。9月に民主党幹事長に就任した枝野幸男氏が「私が首相だったら年内解散だ」と吹聴し、解散封じに向け、スキャンダル国会を仕掛けてきたからだ。

国会は空転し、10月20日には小渕優子経済産業相、松島みどり法相がダブル辞任に追い込まれた。それでも閣僚の追及は止まらない。「撃ち方やめ」を模索していた首相だが、ついに反撃に出た。

10月30日の衆院予算委員会。首相は、質問に立った枝野氏とJR総連、革マル派の関係を逆に追及した。腹の中は半ば年内解散に傾いていた。

そして外遊を目前に控えた11月7日。野党側の出席拒否により衆院厚生労働委で90分間も「待ちぼうけ」を食らった首相は一気に動いた。自民党の谷垣禎一幹事長、公明党の山口那津男代表と相次いで官邸で会い、年内解散を念頭に置いていることを伝えた。

そもそも首相は年内解散など想定していなかった。平成24年12月の就任当初は「300近い自民党の議席は大切にしないといけない」と周囲に語り、28年夏の衆参ダブル選挙を軸に政権構想を練っていた。

考えが変わったのは、昨年秋、臨時国会で特定秘密保護法の審議を通じ、野党と一部メディアの激しい批判にさらされてからだ。さらに今年の通常国会では、集団的自衛権行使の政府解釈変更で再び批判を受けた。

首相は、解釈変更に伴う安保関連法案を秋の臨時国会に提出するのを見送り、27年の通常国会への提出を決めた。

首相は周囲にこう漏らした。「やはり政権の求心力が持つのは長くて3年かな…」

ここで首相が模索したのは27年度予算案成立直後の解散、来年4月の衆院選だった。統一地方選と同時に衆院選を打つことで国と地方の両方で自民、公明両党に勝利をもたらそうと考えたのだ。

この構想を漏らしたのは菅義偉官房長官らごく少数の側近だけ。中には「秋の臨時国会には懸案がないから」と年内解散への前倒しを促す声もあったが、「任期2年で解散はできないよ」と一向に興味を示さなかった。

もう一つ、年内解散に向け、首相の背中を押した組織がある。財務省だ。首相が消費税再増税の先送りに傾きつつあるとの情報を得た財務省は組織を挙げて説得工作に乗り出し、自民党議員は次々に切り崩されていった。首相は苦々しげに周囲にこう漏らした。

「財務省はおれに政局を仕掛けているのか?」

解散風が吹き始めると財務省はさらに工作活動を活発化させ、ついに首相の後見人である森喜朗元首相にも先送りを思いとどまらせるよう泣きついた。森氏は「なんで俺のところに来るんだ。麻生太郎副総理に言えばいいじゃないか」といなしたが、外遊先でこれを聞いた首相は怒りを爆発させた。

「ぐずぐずしてたら政局になってしまう。もはや一刻の猶予もない…」(副編集長 石橋文登)

【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?

上の記事、あまり長くもないものなので全文掲載させていただきました。この記事は、憶測記事にすぎないです。無論これから、私が掲載する内容も憶測にすぎないのですが、それでも産経新聞の憶測よりは、はるかにましです。

なぜ、そのようなことを言うかといえば、昨年の安倍総理の増税決断の公表の前に、日本のほぼすべてのメディアが、「安倍総理増税決断」という報道をしており、産経新聞もそのような報道をしていたからです。

さて、昨年の、9月を振り返ってみましよう。

主要各紙は昨年9月21日までに、安倍晋三首相が来春の消費増税を「決断」したことを1面トップで相次いで報じました。しかし、安倍首相はこの時点では、まだ一言も「増税を決断した」とは語っていなかったことが明らかになっています。安倍総理が、増税決断の表明をしたのは、昨年10月1日のことであり、それまでは、一言も「増税を決断した」などとは語っていません。

この間、菅義偉官房長官は少なくとも3度の公式会見で「安倍首相はまだ決断していない」と指摘していました。これは、このブログにも記事として掲載しました。その記事のURLを以下に掲載します。
消費税増税決定と報道したマスコミの梯子を華麗に外す菅官房長官―【私の論評】外国勢に嫌われようと、増税派に嫌われようと、安倍総理はまた優雅に梯子を外せ(゚д゚)!
昨年は、財務省とマスコミの梯子を華麗に外せなかった安倍総理だが今年は?

このように菅官房長官が「安倍総理増税決断」という報道を再三にわたって、否定したにもかかわらず、各紙は、すでに増税を既定路線とみなしていました。私自身も、この記事を掲載した時点では、まだ「増税見送り」もあり得ると考えていました。

安倍首相は最終的には、増税の決断をしそれを公表したのではありますが、この間の増税「決断」報道の経緯の異常ぶりは、歴史に残すためにも記録にとどめておく必要があります。以下に、その記録を掲載します。

まず、主要メディアの報道をざっと振り返っておきます。実際には、これ以外も、多くの報道がありましたが、代表的なもののみにとどめます。報道に間違いがなければ、安倍首相は11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになります。
安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。出典:読売新聞9月12日付朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」
安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。出典:共同通信9月12日「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」
安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率を、消費増税関連法に沿って2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた。出典:時事通信9月12日「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え=安倍首相、来月1日にも表明」
安倍晋三首相は、現行5%の消費税率を、来年4月に8%へ予定通り引き上げる方針を固めた。出典:毎日新聞9月12日付夕刊1面「消費増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」
安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年4月に8%に引き上げることを決断した。出典:産経新聞9月19日付朝刊1面「消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示」
安倍晋三首相は来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針を固めた。(…)複数の政府関係者が19日、明らかにした。出典:日本経済新聞9月19日付夕刊1面「消費税来春8% 首相決断 法人減税が決着、復興税廃止前倒し 来月1日表明」
安倍晋三首相は20日、来年4月に消費税率を現在の5%から8%に予定通り引き上げることを決断した。出典:朝日新聞9月21日付朝刊1面「首相、消費税引き上げを決断 来年4月から8%に」
安倍首相は10月1日の発表の前までは、自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではありません。仮に会見等の場で表明していれば「~を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを~に伝えた」と報じられるのが普通です。しかし、昨年はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていました。

「意向」とか「決断」とかいう内面的事実を、メディアは一体どのように確認したというのでしょうか。さまざまな周辺情報(増税に備えた経済政策の検討を指示した等)から「決断している可能性が高い」と推測できるからといって、「決断した」と断定していいはずはなかったはずです。

もし、「決断」の裏付けを取れたなら、その根拠となる事実関係や、ソース(情報源)を読者に示してしかるべきでした。ところが、各紙の「決断」報道は、日経新聞だけが「複数の政府関係者によると」と書いたほかは、全くソースについて触れていませんでした。

単に「安倍首相は…決断した」とだけ書いて、根拠やソースは何も書かなかったのです。ソース情報は、読者に報道内容の信ぴょう性や情報源の意図を知る重要な手がかりとなるものです。それを全く示さない記事は、「メディアが書いたものだから信じなさい」と一方的に事実認識を押しつけているとみられても仕方がないです。

こうした「出所不明記事」は英字紙では記事として扱ってもらえず「ゴミ箱行き」となるそうです(『官報複合体』講談社)。仮に「政府関係者によると」と表記したとしても、あまりに漠然としすぎていてソースを示したとはいえないです。

そうして、安倍総理が「増税を決断」した後の新聞報道といえば、増税推進の印象操作の記事などが目立ちました。

日経の巧妙な「世論調査という名の世論操作」
日本経済新聞2013年8月26日付朝刊1面
日本経済新聞が、昨年9月24日付朝刊1面トップで、同紙が実施した「社長100人アンケート」の結果で、2014年4月からの消費増税を前提に1年後の国内景気を聞いたところ、現在より上向くという回答が41・4%に達したと報じました。記事は、大見出しで「景気『増税後も改善』4割」と掲げ、リード(記事冒頭の要約)で「設備投資が増え個人消費も底堅いとみており、増税前の駆け込み需要の反動による影響は限定的との見方が多い。経営者が景気先行きに気であることが浮き彫りになった」と分析していました。

実は、日経新聞はこの記事の前にも、消費増税に関する世論調査でミスリードの疑いが極めて強い記事を載せていました。

8月26日付朝刊で、自社の世論調査の結果について「消費増税 7割超が容認」との見出しをつけて1面で報道。リードも「消費増税の税率引き上げを容認する声が7割を超えた」と伝えていました。来春の消費増税が予定通り行われるかどうかが焦点となる中、この見出しやリードは「来春の消費増税」に「7割超」が容認する結果が出たとの印象を与えるものでした。

ところが、共同通信が25日発表した世論調査によると、予定通りの消費増税に賛成は22%でした。改めて日経の世論調査を確認したところ、日経が「容認」として報じた「7割超」は「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」の55%を足し合わせた数字でした。そもそも質問は「予定どおり引き上げるべきか?」であり、それに対して「引き上げるべき」の回答は17%にすぎなかったのです。記事本文をきちんと読めば書いてあるが、見出しとリードだけ読んでは分からないようになっていました。

日経は7月にも同様の世論調査を行っていましたが、このときも「予定通り引き上げるべきだ」が11%、「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」は58%。日経がいう「増税容認」は69%、ほぼ7割でした。つまり、7月の調査と8月の調査は、増税自体を容認しているかどうかいう点ではほぼ同じ結果で、それ自体既報であってニュースですらなかったのです。ニュースでないことを見出しとリードにとる代わりに、回答者の意見(7月の58%、8月の55%)は、見出しでもリードでも伝えなかったです。

この世論調査報道に対しては、元日本経済新聞編集委員の田村秀男氏(現・産経新聞編集委員兼論説委員)も、「世論調査という名の世論操作」「増税に世論を導くための典型的な印象操作」「データをねじ曲げてまで世論誘導を図る今の日経の報道姿勢」「官報以下」と古巣をこき下ろしていました。

それにしても、今年は昨年と比較すれば、総理が決断する前から、「総理増税決断」などという報道はありませんでした。

これは、どうしてなのでしょうか。私としては、やはり今年は昨年と同じ轍を踏むことを避けるため、安倍総理や、官邸サイドがかなり神経を尖らせ、財務省側を牽制していたのだと思います。

それに関しては、産経新聞の内容を読んでいても、それを感じさせる記載が見られます。

上の記事でいえば、
「財務省はおれに政局を仕掛けているのか?」 
 解散風が吹き始めると財務省はさらに工作活動を活発化させ、ついに首相の後見人である森喜朗元首相にも先送りを思いとどまらせるよう泣きついた。森氏は「なんで俺のところに来るんだ。麻生太郎副総理に言えばいいじゃないか」といなしたが、外遊先でこれを聞いた首相は怒りを爆発させた。 
 「ぐずぐずしてたら政局になってしまう。もはや一刻の猶予もない…」
という件です。
また、他の記事でもそうしたことがうかがえるものがあります。それは、先日このブログにも掲載しました。その記事のURLを以下に掲載します。
景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪―【私の論評】日本人が、アルゼンチンタンゴを踊るようになる前に、破壊的革命集団財務省分割消滅こそが、日本の安定成長をもたらす(゚д゚)!
田中秀臣氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして。この記事には、以下の産経新聞の記事を引用しました。
消費税率再引き上げ 財務省「予定通り」に固執し、官邸激怒
この記事から一部のみ以下に引用させていただきます。
 消費税率10%への再引き上げをめぐり、財務省が来年10月から予定通りに実施するよう固執し、自民党議員に「ご説明」に回った。これに対し官邸サイドは、「増税容認」で固めてしまおうとする動きだとして激怒、安倍晋三首相が衆院解散・総選挙を決意した遠因とされている。
この産経新聞記事では、財務省が「増税容認」で固めてしまおうという動きに官邸サイドが激怒し安倍晋三首相が衆院解散・総選挙を決意した遠因としていますが、私自身は、そうではなくて、これ自体が主因であるとみています。

10月20日には小渕優子経済産業相、松島みどり法相がダブル辞任に追い込まれたことが年末解散総選挙に大きく影響したとされてはいますが、これ自体は、自民党サイドのコントロールが良かったせいか、直後には支持率はおちたものの、その後は50%近くの支持率を保っていました。

この程度のことであれば、ブログ冒頭の記事のように解散・総選挙までしなくても4月の総選挙で十分対処出来たものと思います。

しかしながら、財務省の横槍は、さすがに安倍総理も腹にすえかねたし、それに4月まで放置しておけば、またぞろ、昨年のような財務省の大増税キャンペーンによって、「増勢容認」にマスコミも、自民党内の政治家も固められて、身動きがとれなくなると判断した安倍総理がもともと、解散総選挙のシナリオもあったのですが、それを今の時期に決断する大きな判断材料になったものと推察します。

とにかく、昨年の財務省のキャンペーンは凄まじいものがありました。キャンペーンどころか、昨年も今年も、「増税しないと大変なことになるぞ」という恐喝でした。

この恐喝の首謀者は、このブログでも過去に何度か指摘してきたように、木下康司元財務次官てす。この木下康司を中心とした、!財務省「花の54年組」4人衆です。

これについては、このブログでも掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
この国は俺たちのためにある そこどけ!財務省「花の54年組」4人衆のお通りだ 加藤勝信・木下康司・香川俊介・田中一穂―【私の論評】アベノミクスを完遂するために、安部総理が財務省対策の深謀遠慮を巡らしてそれを実行できなければ、この国は終わるかもしれない(゚д゚)!
財務省「花の54年組」4人衆 加藤勝信(左上) 木下康司(右上)
香川俊介(下右) 田中一穂(右下)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では以下のように締めくくりました。
しかし、現実には、官僚、大多数の政治家、マスコミが束になって、安部総理の行方を幾重にも阻み増税路線を貫こうとしています。しかし、これらに対抗する世論が盛り上がれば、これらを阻止することも可能です。
結局のところ、財務省は昨年通り必死の増税恐喝を各方面に徹底したのですが、さすがに、国民も馬鹿ではないので、だんだんとこの財務省の恐喝に関して、マスコミはスルーしたものの、サイトなどでじんわりとではありますが、確実に広がっていったのだと思います。

そうして、いわゆる識者以外の人々も、増税は見送りするのが当然のという認識が深まっていったのだと思います。

それは、昨年の異常なまでの、増税包囲網と、今年の差をみれば良く理解できます。昨年と何も変わらなければ、今年も同じような流れになったはずです。

これを意図して、意識して広めた人々も大勢います。私も、その一人です。10%増税は何が何でも、見送りすべきとの記事は、昨年の8%増税が決まった直後から、頻繁に掲載をはじめていました。こうした努力が、少しずつ浸透し、安倍総理の財務省の意図を砕く、増税阻止のための解散・総選挙へと踏み切らせたのだと思います。

今から、思えば、安倍総理は8%増税も本当はやりたくなかったということが良くわかります。それは、今年の動きを見れば、はっきりしています。そうして、本当は、去年の9月でも増税は阻止できたはずです。法律の条文など、一日もあればかえられます。

しかし、昨年は財務省の木下康司を筆頭にする、増税推進派の恐喝により、特に自民党の幹部をはじめとする、政治家が徹底的に「増税容認」を固めてしまいました。身動きがとれなくなってしまった安倍総理は、長期政権や、まだまだやり残したことを成就するためにも、「増税の決断」をセざるを得なかったのです。

その木下氏は、実は強大な権力を持つ、財務省の権化のような存在であり、これについては、上念司氏が、わかりやすく解説していますので、その動画を以下に掲載します。



木下氏は、財務次官だったときには、繰越予算など、憲法解釈上認められないはずなのに、つるの一声でそれを実現してしまいました。この動画でも、上念氏が述べているように、このようなことは、総理大臣でも出来ないことです。日本には、このような国民の選挙で選ばれた議員による国会や、政府の他に、財務省の一部の人間や、一部のOBなどによる大きな影の強力な権力集団があるということです。

その影の権力集団が、昨年に続き、今年も増税恐喝を続け、他省庁の官僚はもとより、政治家やマスコミを「増税容認」で固めてしまおうとしたのですが、さすがに、そうはいかなかったというのが、今年の流れです。

そもそも、世論が7割がた、増税に反対なのに、無理に増税に踏切るという事自体が、異常です。昨年は、安倍総理としては、解散総選挙というわけにもいかず、増税に踏み切らざるを得ませんでした。ゆくゆくは、20%増税も視野に入れている財務省は最早、政府の一下部機関とはいえません。破壊的革命集団とでも呼ぶのが相応しいと思います。

20%増税などしてしまえば、日本経済も国民も疲弊してどうしようもなくなることははっきりしています。しかし、そんなことはお構いなしに、財務省はいずれそれを実現しようとしています。これでは、破壊的革命集団と呼ぶ以外に適切な名称などありません。

これは、見方を変えてみれば、単なる日本経済や財政、デフレに関することだけではなく、安倍総理の第二の権力への挑戦とみてとるべきです。

そうして、この挑戦は、すぐに結果がでるものではありません。長きにわたって、展開されることになると思います。

さて、あなたは、どちらに与しますか。正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側ですか、それとも影の権力ですか。

私としては、無論のこととして、正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側にたちます。

それにしても、安倍総理の増税見送り、解散・総選挙宣言!ようやっと、日本でも正当ではない権力に立ち向かう総理大臣がでてきたということで、この部分では財務省に一矢報いたということで、勝利と見て良いのではないでしょうか。

ただし、これからも戦いは長く続きます。影の権力が日本よりなくならない限りこの戦いは終わりません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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