2025年10月20日月曜日

日本初の女性総理、高市早苗──失われた保守を取り戻す“新しい夜明け”

まとめ

  • 長年の公明連立体制が終焉し、自民党と維新の連立合意により、高市早苗氏の女性首相誕生が現実味を帯び、日本政治は大きな転換点を迎えた。
  • 最近の産経新聞を含むマスコミの次の選挙での「自民大敗」予測は石破政権と公明連立を前提とした古い分析であり、現実とは異なる。今見るべきは、高市体制が安倍政権期の保守票をどれだけ奪還できるかである。
  • 自民党は2021年から2024年にかけて、選挙区で約675万票、比例で約533万票を失ったが、高市総理誕生によって票の回復が期待される。
  • 市場は高市総裁誕生を受けて株高・円安で反応し、「高市トレード」と呼ばれる現象が起き、政策の方向性明確化への期待が強まっている。
  • 日本初の女性首相誕生は、単なる象徴ではなく政治と社会の意識を引き上げる歴史的契機であり、政局ではなく政策の中身で評価すべき時が来ている。

自由民主党と日本維新の会が連立に大筋合意し、国会の首相指名で高市早苗総裁が日本初の女性首相に就く可能性がかなり高まった。公明党との長期連立が解消された直後の再編であり、従来の政局方程式を塗り替える出来事である。報道ベースでも「LDP×維新」の枠組みは具体化しており、女性首相誕生に現実味が出た。(Reuters)
 
1️⃣「同時選+自民大敗」予測は前提が古い。見るべきは“票の奪還力”だ


一部マスコミで語られる高市政権成立直後に「衆参同時選なら自民大敗」という予測は、石破政権+公明連立という前提に立つ話であり、現下の「自民×維新」前提とは土台が違う。前提が変われば票の流れも変わる。問題は「どこと組むか」だけではない。安倍政権期に積み上げた厚い保守票がどれだけ戻るか、すなわち“奪還力”である。

数字で比較する。まず小選挙区(選挙区)票。2017年総選挙(安倍政権)での比較は割愛し、より直近で母集団が近い2021年総選挙(安倍退陣後・岸田下)と2024年総選挙(石破下)を並べる。自民の選挙区票は2021年が27,626,235票、2024年が20,867,762票。約675万票減だ。大票田の選挙区で票が大きく薄くなった現実は重い。(ウィキペディア)

次に比例代表(全国集計で傾向が読みやすい)票。2021年が19,914,883票(得票率34.66%)、2024年が14,582,690票(同26.73%)。約533万票減、得票率で約8ポイント低下だ。ここでしばしば混同される「2086万票」という数字は**2024年の“選挙区票”**であり、比例票と比較するとミスリードになる。比例で見れば、石破期は2021年比で明確に票を落とした。(ウィキペディア)

この減点幅は、公明の組織票の出し入れだけで吸収できる規模ではない。安倍期には、公明が仮に離れても自民単体の保守基礎票で相当部分をカバーできる強さがあった。石破期はそこが剥がれた。ゆえに、維新との再編で“自民の芯の票”を呼び戻せるかが焦点だ。今回の枠組みは、そのための現実的な回路になり得る。
 
2️⃣市場は素直だ。高市観測で株は上がり、円は緩む

市場は政治の善悪ではなく、政策の見通しに反応する。高市総裁誕生が確実視された10月6日、日経平均は48,000円超えの史上高値圏に急伸した。財政拡大と金融緩和の継続が意識された格好だ。為替は円安方向に振れ、「高市トレード(株高・円安)」の呼称まで出た。(Reuters)


もっと足元を見る。10月20日(月)午前、アジア株は日本主導で上昇し、日経平均は約1.5%高で推移した。背景には「LDP×維新」の大筋合意報道と、米利下げ観測が重なったことがある。円はやや弱含み。市場は新体制を“成長期待”で先取りしている。(Reuters)

参考までに、石破辞任周辺(9月上旬)の相場感だ。9月9日、日経平均は取引時間中に44,000台を一時突破した後、円高と利食いで反落して引けた。政治不確実性と政策期待が綱引きする局面でも、相場は水準を切り上げる力を見せていた。(Reuters)

要するに、市場は「混乱」ではなく「設計図の明確化」を好む。女性首相の誕生と与党再編は、政策の方向を読みやすくする。株はそれに反応しているだけだ。
 
3️⃣結論──初の女性首相は祝福して迎えるべきだ


政治は結果だ。票は数字で語る。2021→2024で自民は選挙区で約675万票減、比例で約533万票減。この現実を直視したうえで、高市新体制がどれだけ“芯の票”を呼び戻すかが勝負である。市場は既に“期待”で動き始めた。ならば我々も素直に喜べばよい。日本初の女性首相は、社会の意識を一段押し上げる。政局の勝ち負けに矮小化せず、国の設計図をどう描くかで評価すべきだ。私は、誕生を歓迎する。
 
主要出典
  • 連立合意報道・女性首相誕生観測、為替反応など:Reuters(2025年10月19–20日配信)。(Reuters)
  • 10月20日午前のアジア株・日経の上昇(約1.5%):Reuters(2025年10月20日)。(Reuters)
  • 10月6日の「48,000超」・“高市トレード”:Reuters(2025年10月6日)。(Reuters)
  • 9月9日の「44,000台一時突破」後の反落:Reuters(2025年9月9日)。(Reuters)
  • 2021・2024総選挙の得票(選挙区・比例)公式結果:Wikipedia「2021 Japanese general election」「2024 Japanese general election」該当セクション(出典は総務省開示の集計に依拠)。(ウィキペディア)
※本文中の数値はいずれも上記ソースの該当箇所をもとに統一した。選挙区票と比例票は性格が異なるため、比較は同一区分どうしで行った。

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2025年10月19日日曜日

日本の沈黙が終わる――高市政権が斬る“中国の見えない支配”


まとめ

  • 高市政権の成立は、日本が「情報主権国家」として再出発する転換点であり、岸田・石破政権が放置してきた中国の情報操作や政治工作に正面から切り込む契機となる。
  • 高市政権が目指す「スパイ取締法」は、これまで存在しなかったスパイ行為そのものを処罰するための法的枠組みであり、防止法制の欠落を補うものとなる。
  • 日本では、外交接触の非公表や報道抑制、サイバー被害の遅延公表など「空白証拠(negative evidence)」が相次ぎ、中国の統一戦線工作の痕跡を示している。
  • メディアと政治の構造的な親中依存が情報空白を生み、報道機関は経済的利害で自己検閲を行い、政治家は選挙や地元経済を理由に中国への配慮を続けてきた。
  • 高市政権がこの沈黙の連鎖を断ち切り、スパイ取締法を制定すれば、日本は真の主権国家として再生し、中国共産党が最も恐れる未来が現実のものとなる。

1️⃣高市政権の成立──情報主権国家への転換点


高市政権の成立は、日本政治の分岐点である。岸田、石破両政権の時代、日本政府は「中国を刺激しない」という口実のもと、サイバー侵入や情報操作、政治的影響工作といった国家安全保障上の脅威を見て見ぬふりをしてきた。だが、高市早苗の登場はその沈黙を破り、長く放置された“情報空白”を埋める方向へと日本を導くだろう。

新政権は、外務省、警察庁、防衛省、内閣情報調査室に分散していた情報を一元化し、これまで「証拠がない」とされてきた領域の構造を明らかにするはずだ。なぜ証拠が残らなかったのか、なぜ情報が公にされなかったのか――その「沈黙の理由」こそが、日本の情報主権を侵してきた真の問題である。

米国ではFBIや司法省が、中国による産業スパイ活動や政治資金工作を立て続けに摘発した。オーストラリアでも外国干渉防止法の制定を契機に、中国系団体による政界浸透が国会で暴露された。高市政権の情報公開は、これらの流れを日本にもたらすことになる。報道機関や政党、宗教団体、経済団体などを経由して進められてきた中国の“静かな影響工作”が、いよいよ白日の下にさらされるだろう。

この動きの先に見えてくるのが「スパイ取締法」である。世間で語られる「スパイ防止法」という言葉は誤解を生む。なぜなら、日本にはすでに情報漏洩を防ぐための防衛秘密保護法や自衛隊法、国家公務員法、特定秘密保護法といった法体系が存在するからだ。欠点はあるにせよ、情報を“防ぐ”仕組みはある。だが、存在しないのは“行為そのもの”を裁く法律である。すなわち、外国勢力によるスパイ行為を直接取り締まり、刑罰を科す法的枠組みがないのだ。高市政権が構想するのは、まさにこの「スパイ取締法」である。防止ではなく、実際に行われたスパイ行為を処罰するための国家の武器である。

これこそが、中国共産党が高市政権を最も恐れる理由だ。高市政権の誕生は、中国が日本社会に張り巡らせてきた影響ネットワークを可視化し、法的に破壊する流れを生む。工作の要は「秘匿」である。情報公開とスパイ取締法の制定は、その秘密の構造を根こそぎ破壊する。沈黙の裏に潜んでいた“影の構造”は、ついに光の下に引き出されるだろう。
 
2️⃣「空白証拠」が語る影響工作の構造

呉中国大使(左)と懇談する斉藤公明党代表(4月16日 公明党のサイトより)

中国の統一戦線工作は、痕跡を残さないことを前提としている。したがって、日本側で本来あるはずの記録や発表が消えている場合、それ自体が“工作の痕跡”となりうる。以下は近年確認された主な「空白証拠(negative evidence)」である。最新のものから順に並べた。

年月日 関係者・機関 概要 空白・異例性・注記
2025年10月10 公明党/自民党連立 公明党が自民党との連立離脱を表明。 直前に中国大使と与党代表の非公表接触。政治構造の変化が数日内に発生。
2025年10月6日 公明党代表 斉藤鉄夫 ↔ 呉江浩 駐日中国大使 国会内で面会。外務省も中国大使館も公式発表せず。本人は内容を「外交問題で話せない」と発言。 高市総裁選直前。儀典案件の非発表は極めて異例。統戦工作を疑わせる。
2025年8月 警察庁・内閣サイバーセキュリティセンター(NISC) 中国系グループ「MirrorFace」による官民ネット侵入を公表。 侵入は前年から継続。事案把握から発表まで約半年の空白。外交的配慮の可能性。
2024年12月 外務省 ALPS処理水をめぐる中国の情報操作に抗議。 抗議文は非公開、報道も限定。説明不足が際立つ。
2024年8月 外務省/中国外交部 上川外相発言を中国が改変し公表、日本が抗議。 外交文書の逐語記録が欠落。検証不能の空白。
2024年5月 経済団体(経団連・商工会議所など) 訪中団が帰国後に声明や詳細報告を出さず沈黙。 例年なら大きく報道される案件が、今回は極端に扱いが小さい。
2023年11月 中国大使館/地方議員 中国大使館主催の友好イベントに地方議員多数出席。 名簿非公開、外務省も「把握していない」と回答。統一戦線の典型構造。

これらの空白は、偶然ではない。表向きは静かでも、裏では情報誘導や報道抑制が進行していた。斉藤鉄夫と呉江浩の面会、直後の公明党連立離脱、防衛省・外務省のトーン変更――これら一連の流れは、点ではなく線で結ばれる。中国は「記録を残さない外交」「非公的チャネル」「友好名目の統戦」を駆使し、日本国内に情報の空白地帯を作ってきたのだ。

警察庁とNISCの報告によると、中国系ハッカー集団MirrorFace、BlackTech、Volt Typhoonが日本の官公庁や防衛産業に侵入していた事実も確認された。日本政府が中国を名指ししたのは初めてであり、国家ぐるみの諜報活動が裏付けられた。さらに、外務省と米国務省が2023年12月に結んだ「対外情報操作対処覚書(MOC)」は、中国の情報操作を警戒対象と明記している。これらはすでに“戦略的脅威”として認識されている証拠である。
 
3️⃣メディアの沈黙と政治の親中構造──情報空白を生む温床

日本の情報空白は、マスコミと政治の構造的問題にも根を持つ。まずメディアは、中国との経済的結びつきに縛られている。新聞・テレビは中国関連企業の広告収入に依存し、現地取材には中国政府の許可が必要だ。結果として「中国を刺激しない報道方針」が暗黙のルールとなり、批判的報道が避けられる。ALPS処理水をめぐる中国の虚報に対しても、国内主要メディアの反論は控えめだった。こうした経済的依存と報道制約が、“静かな協力”という形で現れる。

政治家の側にも、長年にわたり形成されてきた親中構造がある。与野党を問わず、地元経済や観光業への配慮、選挙支援などの理由から、中国との摩擦を避けようとする議員は多い。こうした“穏健”姿勢が、統一戦線工作に付け入る隙を与えてきた。政策判断が鈍り、外交姿勢が弱腰になる背景には、この構造的親中傾向がある。


高市政権は、この沈黙の連鎖を断ち切らなければならない。情報公開とは、単に文書を開示することではない。報じられなかった事実を掘り起こし、誰が沈黙を選んだのかを明らかにすることである。その先にこそ、日本が「情報主権国家」として再生する道がある。

空白の中にこそ工作の痕跡があり、沈黙の背後にこそ意図が潜む。高市政権の成立は、この沈黙と空白を終わらせる第一歩だ。情報の可視化が進むほど、国民は「なぜ報じられなかったのか」「なぜ記録が残っていないのか」という問いに向き合うことになる。高市政権は、その問いに真正面から答える政権となるだろう。そして、その過程で制定される「スパイ取締法」は、日本が真の主権国家として再生するための決定的な一線を画すことになる。中国共産党にとって、それは最も避けたい未来であり、高市早苗という政治家を恐れる最大の理由である。

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2025年10月18日土曜日

OpenAIとOracle提携が示す世界の現実――高市政権が挑むAI安全保障と日本再生の道


まとめ

  • OpenAIとOracleの提携は、AI覇権をめぐる米国主導の戦略的同盟であり、両社の連携は国家インフラ強化とAI安全保障の一環である。
  • 米国はAI技術と半導体を防衛資産と位置づけ、高性能GPUや製造装置の対中輸出を制限し、規制の恒久化を進めている。
  • アメリカは技術・制度・物流監視の三層で「知能封鎖線」を築き、AI覇権の支配構造を同盟国中心に固めつつある。
  • 日本はAI開発で遅れを取ってきたが、富岳、省電力チップ、量子技術など独自の強みを持ち、国家戦略次第で再興可能な基盤を備えている。
  • 高市政権の発足により、AIを防衛・経済・教育の柱とする国家戦略が動き出し、親中派の退潮とスパイ防止法の整備によって情報主権の確立が期待される。

1️⃣米国が仕掛けたAIインフラ戦争


いま、人工知能の世界で新しい同盟が生まれつつある。OpenAIとOracle――一方はChatGPTで世界を席巻したAIの旗手、もう一方は長年企業システムを支えてきた巨大IT企業である。両社の提携は、単なる業務提携ではない。AIをめぐる国際的な覇権競争の中で、演算能力という武器を共有する戦略的同盟である。

OpenAIはこれまで、Microsoftのクラウド基盤「Azure」を主に利用してきた。しかし、ChatGPTや次世代モデルGPT-5の開発に伴い、膨大な演算能力が必要になり、Azureだけでは対応しきれなくなった。そこで選ばれたのがOracleだ。OpenAIは現在、MicrosoftとOracleの両方を活用する「二重クラウド体制」を取り、計算資源を分散させている。

2024年6月、Microsoft・OpenAI・Oracleの三社は「Azure AIをOracle Cloud Infrastructure(OCI)上で運用する協業」を発表した。これにより、世界最大級のAI学習基盤が事実上連携することになった。2025年には、テキサス州で進む巨大データセンター構想「Stargate」計画にOracleが正式参加し、AI用サーバーの共同構築を進めている。NVIDIA製GPUを採用した新拠点が稼働を始めたとの報道もあり、アメリカ国内のAI開発基盤はかつてない規模で強化されつつある。

この流れは、単なる企業の判断ではない。アメリカ政府が推進するAI安全保障政策の一環である。米国はAIを「次世代の核抑止力」に準ずる存在と見なし、AI技術とその運用インフラを米国内と同盟国に限定する構想を進めている。OpenAIとOracleの連携は、その戦略の中心を担う“民間部隊”と言ってよい。
 
2️⃣半導体を封じる知能戦──米中冷戦の新局面

米中間で激化する「技術冷戦」

この動きの背景には、米中間で激化する「技術冷戦」がある。2022年以降、アメリカはAI開発に必要な高性能半導体の中国向け輸出を段階的に制限してきた。NVIDIAのA100やH100などのAI用GPU、さらには性能を落とした代替モデルまで輸出禁止の対象となった。加えて、半導体製造装置を扱うオランダのASMLや日本の東京エレクトロンにも協力を要請し、中国への先端露光装置の供給を事実上封じている。

2025年には、さらに規制が強化された。米商務省は制裁対象企業の子会社や関連会社を自動的に規制下に置く新ルールを導入し、抜け道を塞いだ。また、AIチップの出荷経路を追跡できる仕組みが試験的に導入され、制裁逃れをリアルタイムで監視できる体制が整えられつつある。NVIDIAのCEO、ジェンセン・フアンは「中国市場での売上が激減した」と述べており、規制の実効性はすでに数字に現れている。中国も対抗措置として、アメリカ製チップの通関検査を強化しているが、流れを逆転させることはできていない。

米議会では、これらの輸出規制を国防権限法(NDAA)に恒久的に組み込む動きが進んでいる。つまり、AIと半導体はもはや「貿易品」ではなく、国家防衛の一部として扱われているのだ。アメリカは、技術、制度、物流監視の三層で「知能の封鎖線」を築き上げ、AI覇権を守る構えを明確にしている。OpenAIとOracleの提携は、その中で生まれた「情報の要塞化」政策の象徴である。
 
3️⃣高市政権とAI安全保障──日本が再び立ち上がる時

一方、日本のAI開発は長く遅れを取ってきた。大規模言語モデルの研究は欧米や中国に後れを取り、データセンターの電力、用地、人材のいずれも不足している。だが、我が国にも希望はある。スーパーコンピュータ「富岳」、省電力型AIチップ、量子計算の応用研究など、世界的に評価される分野が少なくない。技術そのものは劣っていない。問題は、国家戦略としての意思が欠けていたことである。


主要パーツやソフトウエアが国内で開発された純国産量子コンピューター

その転機となるのが、高市早苗政権の発足である。高市氏は自民党総裁就任直後から、AIを防衛、経済、教育の柱に据える方針を明言した。AI予算の拡充、電力網の再設計、大学と企業の連携による人材育成、そして防衛技術との統合研究など、省庁横断の政策が動き始めている。高市政権の特徴は、理念ではなく実行である。AIを語る多くの政治家が夢物語を並べるなかで、彼女は国家の生存戦略としてAIを位置づけている。

さらに重要なのは、親中派の退潮である。これまで政治や官界には、中国との関係を優先し、機微な技術情報を軽視する空気があった。しかし、高市政権の誕生によってその流れは変わる。経産省、防衛省、警察庁の連携が再構築され、情報漏洩に対する監視体制が強化されつつある。加えて、国会ではスパイ防止法の制定が現実味を帯びてきた。これが実現すれば、日本はようやく先進国として当然の安全保障体制を整えることになる。

アメリカの半導体規制、OpenAIとOracleの提携、そして日本のAI安全保障構想。これらはいずれも一つの方向を示している。AIはもはや便利な道具ではなく、国家を守る「知能の盾」である。電力を確保し、半導体を守り、情報を制する国だけが次の時代の主権を握る。高市政権が進めるAI戦略は、その第一歩である。我が国が再び技術立国として立ち上がるのか、それとも情報従属国として沈むのか。その答えは、いま始まったAI安全保障の行方にかかっている。

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世界標準で挑む円安と物価の舵取り――高市×本田が選ぶ現実的な道 2025年10月10日
円安と物価の動きを世界基準の視点から読み解く。高市政権が直面する経済安全保障の課題と、AI・金融政策の連携を展望する。

高市早苗総裁誕生──メディアに抗う盾、保守派と国民が築く「国民覚醒の環」 2025年10月5日
高市総裁就任により、自民党内外の保守勢力が結集。メディアの偏向報道に抗い、国民覚醒の流れを政治運動として具現化する姿を描く。

高市早苗の登場は国民覚醒の第一歩──常若の国・日本再生への視座 2025年10月6日
理念を軸に立ち上がった高市氏の政治姿勢を考察。派閥を超えた信念の政治が、国民覚醒と日本再生の出発点となることを論じる。

ラピダスに5900億円 半導体で追加支援―経産省 2024年4月1日
経産省が半導体産業に巨額支援を決定。AI・量子技術の基盤強化を狙うこの政策は、OpenAI×Oracle提携にも通じる「技術主権」の潮流を示している。


2025年10月17日金曜日

オールド・メディアも中共も止められぬ──日本の現実主義が導く総理、高市早苗


まとめ

  • 高市早苗氏の首相就任は、制度上も数の上でも既定路線である。憲法第67条による衆議院の優越の原理により、自民党が多数を握る限り、総裁=首相となる構図は動かない。自民・維新などの連携で安定多数を確保できる見込みであり、高市政権の成立は時間の問題である。
  • 公明党の連立離脱は、自民党にとって痛手ではない。むしろ長年の“足かせ”が外れ、保守本流が自由に政策を展開できる環境が整った。公明の影響力はすでに低下しており、離脱は保守再生の契機となった。
  • 野党共闘は現実的に成立しない。立憲民主、共産、れいわ、参政、国民、公明、維新といった政党は理念も政策も異なり、選挙区の利害も交わらない。仮にどのような形で数合わせの共闘が成立しても、細川政権や民主党政権のように、内部矛盾で短期間に崩壊するのは目に見えている。
  • 中国共産党は情報戦によって高市政権の誕生を阻止しようとしている。国営メディアは「高市政権は不安定」との印象を広め、公明党の離脱を利用して不確実性を煽っている。しかし、日本の議院内閣制の仕組みは堅牢であり、こうした外部の揺さぶりが政治の現実を変えることはできない。
  • 高市政権の成立は既成事実であり、議論の焦点は「誕生するか否か」ではなく、「誕生後に何を為すか」に移っている。マスコミの印象操作や中共の干渉を超えて、日本の現実主義が最終的に選んだのは、高市早苗というリーダーである。

1️⃣制度と数が示す必然――高市早苗の首相就任は時間の問題

オールドメディアは、高市総理誕生が危ういかのように扱うが・・・・

日本の政治制度は極めて明快である。自民党が衆議院で多数を握っている限り、その総裁が内閣総理大臣に就く。これが戦後政治の常識であり、憲法第67条に定められた「衆議院の優越」がその根拠だ。仮に参議院が異なる人物を指名しても、最終的に衆議院の決定が優先される。したがって、自民党総裁となった時点で、首相就任はほぼ既定の事実といえる。

議席の構図を見ても、その必然は明らかだ。自民党は196議席、維新の会が35議席で合わせて231票。過半数233までわずかに2票足りないが、国民民主党の27議席が加われば258票となり、安定多数を確保する。かつて連立を組んでいた公明党は、今回の政局で事実上離脱の道を選んだ。だが、連立を解消しても自民党の政権基盤が崩れるわけではない。むしろ、公明党の影響力が弱まったことで、保守本流が自由に政策を進められる環境が整ったともいえる。

仮に維新が離反したとしても、立憲民主、共産、れいわ、参政、国民、そして公明といった野党・中間勢力が完全に一致して対抗することは、現実的に不可能だ。公明党は中国とのパイプを重視する一方で、信者基盤の安定を最優先するため、他の野党勢力との理念的共闘には踏み込めない。立憲や共産のような左派的政策とも相容れず、宗教団体を背景とする党が共産党と肩を並べるなど到底あり得ない。

結果として、仮に「反高市連合」が形作られたとしても、それは一時的な選挙互助会にすぎない。春を迎える頃には必ず内部矛盾で崩壊するだろう。過去の野党連立がそのことを証明している。1993年の細川連立政権は七党一会派の連携で自民党を追い出したが、わずか8か月で瓦解した。続く羽田政権も2か月で崩壊し、政権を奪還したのは結局自民党だった。民主党政権も同じである。鳩山、菅、野田の三代が迷走を重ね、3年3か月で終焉した。与党勢力は分裂と離党を繰り返し、今では当時の面影すらない。理念の異なる政党が一時的に手を結んでも、やがて内部対立で自壊する――それが日本政治の現実である。
 
2️⃣中国共産党の情報工作――見えない圧力の正体

近年、中国共産党が日本の政局に干渉しようとする動きが明確になってきた。高市早苗氏が自民党総裁に選ばれた直後、、中国国営紙「環球時報(Global Times)」は、「日本は歴史と台湾問題での約束を守るべきだ」と警告しつつ、「公明党離脱で高市の首班就任は不確実」と報じた。

環球時報紙面
この報道は、表面上は政治分析の体裁を取っているが、実際には「高市政権は不安定である」という印象を日本国内外に植え付けようとする情報操作の一環だと見られている。さらに同紙は、「中国の干渉説はデマ」とする記事を素早く掲載した。だが、これは議論の焦点をぼかし、干渉の可能性そのものを曖昧にするための常套手段である。

こうした動きは、日本国内の政党構成とも密接に絡んでいる。中国は、公明党を通じて日本政界との非公式な接点を維持してきた。中国政府関係者との交流会や訪中団など、公明党が仲介役となるケースは過去にも多い。高市氏のように対中強硬路線を掲げる指導者が登場すれば、そのルートが遮断されることになるため、中国としては阻止に動くのは当然の反応といえる。

このような情報工作は国際的にも確認されている。2023年、米メタ社は中国発の大規模な偽情報ネットワークを摘発した。アジア全域を標的としたもので、日本もその影響圏に含まれていた。アメリカのCSISやイギリスのIISSなどのシンクタンクも、中国がサイバー攻撃、宣伝、経済圧力を組み合わせた「認知戦」を展開していると指摘している。

日本の防衛白書にもこうした情報戦の存在が明記されており、中国が政治・世論・経済を一体化させた“静かな圧力”を日常的に行使していることがうかがえる。自国にとって都合の悪い政治家、つまり対中強硬派の台頭を抑えようとするのが彼らの狙いであり、高市氏はまさにその標的である。

しかし、外部勢力がどれほど情報操作を仕掛けても、日本の政治制度を揺るがすことはできない。日本は議院内閣制の国であり、最終的な決定権は国会の多数決にある。中国が情報空間でどれほど揺さぶりをかけても、衆議院の優越という制度の壁はびくともしない。高市総理の誕生を阻止することは不可能であり、彼らの情報戦はただの雑音に過ぎない。
 
3️⃣事実は動かない――高市政権誕生は既定路線

それにもかかわらず、国内のマスコミは「政局が流動化」「連立が不透明」といった報道を繰り返している。あたかも高市総理誕生が危ういかのように装っているが、これは明らかな印象操作である。真実を直視せず、政治の現実を認めようとしない報道姿勢は、駄々をこねる子供のようだ。

オールドメディアは日々「政局が流動化」「連立が不透明」といった報道を繰返している

「泣く子と地頭には勝てぬ」ということわざがあるが、それは過去の時代の比喩に過ぎない。いまの日本では、いくら泣き叫んでも事実は動かない。高市早苗という政治家の登場は、まさにその現実を象徴している。

公明党の離脱は、むしろ時代の転換点となった。かつて自民党と長く手を組んできたが、その影響力は年々低下していた。今回の離脱劇は、保守陣営が依存から脱し、真の自立を取り戻す契機になったといえる。連立を失っても、自民党の基盤は揺らいでいない。むしろ、政策決定の自由度が高まり、高市政権はより明確な国家像を描くことができる。

マスコミがどれほど抵抗しても、よほどの突発事態が起きない限り、高市総理の誕生は確実である。もはや、「高市政権は成立するのか」と議論すること自体が時間の無駄だ。制度、議席、そして政治の現実――どれを取っても結論は一つである。

問うべきは「なるかならないか」ではない。高市政権が誕生したあと、この国をどう導くのか。そこにこそ、日本の未来が懸かっている。



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2025年10月16日木曜日

倶知安が危ない――外国人住宅が町を呑み込む、日本の主権喪失の始まり


まとめ

  • 倶知安町(くっちゃんちょう:人口約1万5,000人)で、町人口の約1割にあたる1,200人規模の外国人労働者宿舎建設が進められており、町の構造そのものを変える規模の開発となっている。
  • 行政手続きは形式上適正だったが、情報公開と説明会が遅れ、住民が気づいた時には許可が下りる直前で、実質的な住民参加が欠けていた。
  • 鈴木直道知事は「多文化共生」を掲げて開発を推進したが、これは西欧で失敗したグローバリズム政策の再現であり、地域社会を不安定化させるとして批判されている。
  • 住民が早い段階で計画に気づき、農業委員会と連携して反対運動を展開していれば、道庁の判断を覆せた可能性があり、情報公開の遅れが抗議の機会を奪った。
  • 高市政権の誕生は、行き過ぎたグローバリズムに歯止めをかけ、国家と地方の共同体を守る防波堤となり得る存在となろう。

1️⃣倶知安町で進む外国人労働者住宅計画の全貌

倶知安外国人住宅について報道する地元のTV

北海道倶知安町で進む外国人労働者向け住宅街の開発計画が、地元に激しい波紋を広げている。場所は南6東2の農地約2.7ヘクタール。最大1,200人が暮らす30棟規模の共同住宅が計画され、北海道は10月16日付で農地転用を正式に許可する見通しだ。

倶知安町は人口およそ1万5,000人(2025年現在)ほどの小規模な町で、農業と観光が主要産業である。冬季にはニセコエリアのスキー客を目当てに世界中から観光客が訪れ、外国人比率はすでに町人口の一割を超えるとも言われている。そんな小さな町に、1,200人規模の外国人労働者宿舎が一度に建設されれば、実に町人口の1割近い新住民が短期間で流入する計算になる。この計画が地域社会に与える衝撃は、単なる「住宅建設」の域をはるかに超えている。町の規模を考えれば、文字どおり町の構造そのものが変わってしまう可能性があるのだ。

この土地はもともと農地であり、町の農業委員会は7月31日、「地域農業に悪影響を及ぼす」として反対意見を北海道知事に提出した。しかし、8月25日、北海道農業会議が「許可相当」と判断。これを受け、町農業委員会は意見を「転用やむを得ない」に変更し、道が最終的に許可へと踏み切る流れになった。

一方で、住民の反対は根強い。9月には4,000人を超える反対署名が道に提出された。周辺には保育園や小中学校、住宅街が密集しており、住民からは「交通渋滞」「ごみ問題」「治安の悪化」といった不安の声が相次いでいる。町議会でも9月定例会で複数の議員がこの問題を取り上げ、農業委員会の判断経緯、下水処理施設の容量、冬期の交通安全などを町長に質した。

倶知安町議会の広報によれば、7月には住民が結成した反対団体と議会の広報広聴特別委員会が懇談会を開き、住民側は「町中心部に1,200人規模の宿舎を建てるのは無理がある」と主張した。議会側も「住民の不安を真摯に受け止める必要がある」と応じている。

この計画は「外国人労働者向け」と銘打たれているが、法的に日本人の入居を禁じる規定はない。事業者が倶知安やニセコ地域のホテル、スキー場で働く外国人従業員を主な入居対象と想定しているだけで、あくまで「運用上の限定」に過ぎない。実際、こうした宿舎は雇用契約に基づく滞在者に限られるため、一般住民の入居は想定されていないのが実情だ。

しかし、こうした「外国人専用」的な集住地が生まれれば、地域の分断や文化的摩擦が避けられないという懸念がある。短期滞在者が頻繁に入れ替わることで、地域コミュニティの結びつきが弱まり、防災や自治の仕組みも崩れかねない。

問題は、住民が「町中心部は不適」と主張しても、現時点で代替地の具体案が示されていない点だ。町内の開発可能地は限られており、山林や農地が大半を占める。倶知安駅周辺はすでに商業・住宅地として密集しているため、1,200人規模の宿舎を新たに受け入れる余地はほとんどない。南側や東側の農地区域に移せば、また新たな農地転用が必要となり、結局は同じ問題が再燃する。

ただし、代替地の検討が不可能というわけではない。ニセコ連峰の裾野には、既に開発が進んでいない未利用地が点在しており、上下水道などのインフラを拡張すれば、宿舎群の分散配置も可能とみられている。町中心部の近隣小学校や保育園の通学圏外に配置すれば、生活圏の衝突も抑えられるだろう。つまり、「町中心部では無理だ」という住民の主張は感情論ではなく、都市計画上の現実に根ざしたものなのである。
 
2️⃣道の許可と鈴木知事への批判

SNSの記事に添付されていた画像

農地転用の権限は北海道知事にある。今回の申請は後志総合振興局が担当し、農地法第4条・第5条に基づく手続きで進められた。道の手続き上は法に則ったものだが、問題はその「中身」である。

倶知安町には開発時に地域説明会を開き、議事録を公開する制度がある。だが、今回の計画については、住民がその存在を知ったときにはすでに手続きがかなり進んでいた。公告期間は短く、専門的な用語が多かったため、多くの住民が内容を理解できなかった。説明会の開催も遅れ、「気づいたときには許可が出ていた」という声が上がる。手続き上の形式は整っていても、住民との意思疎通が欠けていたことは否めない。

それにもかかわらず、鈴木直道知事は開発を強行した。彼は「地方創生」「多文化共生」を掲げ、外国人労働者の受け入れを道の発展戦略の一環として推し進めている。しかし、今回のように町の農業委員会が全会一致で反対した案件を、道が押し切って許可したことは、地方自治を軽視する姿勢と受け止められている。

道庁は「法的要件を満たしている」と繰り返すばかりで、治安、インフラ、地域社会への影響といった根本的な問題への検証を怠った。知事としての説明責任を果たしているとは到底言えない。

本来、「多文化共生」は理想的な響きを持つが、現実には西欧諸国でことごとく失敗した政策である。ドイツ、フランス、スウェーデンでは、移民と現地社会の対立が激化し、治安の悪化や教育崩壊を招いた。いま世界では、グローバリズムの弊害が明確に認識され、各国が方向転換を始めている。その潮流のなかで、鈴木知事が「多文化共生」を掲げ続ける姿勢は、もはや時代遅れであり、有害ですらある。

倶知安の問題は、単なる地域開発ではない。国家としての一体性を守れるかどうかという、根本的な問いを突きつけている。鈴木知事は若手知事として注目を浴びてきたが、今回の判断は「北海道の開発優先、地域社会切り捨て」と批判されている。特に倶知安のような観光地では、外国人労働者の存在が不可欠である一方、受け入れ方を誤れば地域の秩序が崩壊する。その現実を直視せず、住民との対話を怠った知事の責任は重い。
 
3️⃣開発がもたらす社会的リスクと、住民が取るべき対応

もしこの計画が実行されれば、倶知安の地域社会には深刻な影響が及ぶだろう。もともと町の人口はわずか1万5,000人ほど。そこへ1,200人もの新住民が一度に流入するとなれば、町の構造は根本から変わる。上下水道、交通、学校、医療――どの分野にも過負荷が生じるのは明らかである。これは一地域の問題ではなく、「小規模自治体が多文化圧力に耐えられるか」という全国的な試金石になる。

第一に、地域コミュニティの分断である。短期滞在の労働者が大量に流入すれば、自治会や近隣の協力関係は崩れ、防災や治安維持の仕組みも弱体化する。

第二に、治安と衛生の悪化だ。シフト勤務が多いため夜間の騒音が増え、ゴミ出しルールの違反も起きやすい。人口密度の急上昇は、下水処理や交通網への負担を急速に高め、生活環境を悪化させる。

第三に、土地価格の高騰による地元経済の歪みだ。外国人向け住宅の建設ラッシュで地価が上がり、若い世代や子育て世帯が町を離れる恐れがある。さらに、運営が外部企業に委託されれば、利益は地域に還元されず、町の活力は失われていく。


倶知安町

そして何より、文化的摩擦である。宗教や生活習慣の違いが、無理解のまま混ざれば衝突を生む。異文化理解の体制が整わないまま受け入れを拡大すれば、「外国人専用地区」が事実上形成され、町が二重構造になる危険さえある。

この問題は、農地転用や建設の是非を超えて、地域社会の未来を左右する課題だ。農地を守り、地域経済を支えながら、真に持続可能な共生をどう築くか――それを問う責任は、北海道庁と鈴木知事自身にある。

自分の自治体で同様の計画が進んでいないかを確認するには、まず市町村のホームページで「開発許可」「農地転用」「都市計画変更」「環境影響評価」などの公告・縦覧情報を確認することだ。これらは誰でも閲覧できる公的情報である。加えて、「農業委員会」「都市計画課」「建築指導課」に問い合わせれば、近隣での大規模開発計画を把握できる。

また、都道府県の公報や総合振興局の公式サイトでも、農地転用や環境審査の結果が掲載されている。さらに、地元議会の議事録を検索し、「外国人」「宿舎」「農地転用」などの語を入力すれば、議論の有無を確認できる。

こうした情報を定期的に確認しておけば、倶知安町のように「知らぬ間に開発が進んでいた」という事態を防ぐことができる。自治体によって公開速度に差はあるが、公告、議会記録、説明会の三つを追うことが、市民が地域を守る最も確実な方法である。

そして、この倶知安町の事例でも、もし住民が早い段階で計画の存在に気づき、大きな反対運動を組織していれば、道の判断を覆せた可能性はあった。実際、農業委員会が初期段階で「反対」の姿勢を明確にしていた時期に、町民の声が強く結集していれば、道庁側も政治的リスクを考慮せざるを得なかったはずだ。ところが、情報公開が遅れ、周知の時期が後ろ倒しになったことで、住民の抗議は手続きの終盤にずれ込み、事実上の「追認」しかできなかった。つまり、行政の形式的な透明性が保たれていても、実質的な住民参加がなければ、地域の意思は政策決定に反映されない。倶知安町の教訓は、まさにそこにある。

さらに言えば、このような地方の「静かな構造変化」を防ぐためには、国家としての方向転換が不可欠だ。高市政権の誕生は、その意味で日本にとって大きな転機となる可能性を秘めている。高市総理が掲げる「国家の独立と国益重視」の姿勢は、グローバリズムに流されてきた日本政治の歪みを正す第一歩である。無制限な外国人労働受け入れや多文化主義を「善」とする風潮に歯止めをかけ、地方の文化と共同体を守る政策へ舵を切ることができるかどうか――それこそが今、日本が試されている分岐点なのだ。高市政権の誕生は、倶知安のような小さな町が再び「日本の原風景」を取り戻すための、防波堤となるであろう。

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2025年10月15日水曜日

来るべき高市政権が直視する『現実』──“インフレで景気好調”という幻想を砕く、円安と物価の真実


まとめ

  • 現在の日本のインフレは明確にコストプッシュ型であり、円安・輸入コスト・人件費の上昇が主因である。日銀もその事実を公式に認めている。
  • コアコアCPIは2023年以降3%前後で高止まりしており、エネルギー補助を差し引いても物価の基調上昇が続いている。これは構造的なコスト上昇を示している。
  • 食料、外食、サービスが物価押し上げの中心であり、耐久財やエネルギーは逆に下押し要因となっている。生活必需品と人件費の上昇が物価の軸だ。
  • 利上げによる需要抑制は逆効果であり、企業のコストを増やし物価上昇を助長する危険がある。求められるのは生産性向上と供給制約の緩和である。
  • 高市総裁誕生前後には「インフレは好景気の証」などの偽情報が流布される恐れがある。データと事実に基づいて冷静に経済を読む姿勢が不可欠である。

1️⃣インフレの実像──「コストプッシュ型ではない」という幻想
 
いま、日本の物価上昇を「需要主導」と決めつける論が蔓延している。しかし、それは現実を見ない幻想にすぎない。物価を押し上げている主因は、原材料高、円安、輸入コスト、そして人件費の上昇という供給サイドの圧力である。
 
総務省の統計によれば、2025年8月の全国消費者物価指数(CPI)で、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは前年同月比3.3%。一方、米国のコアCPIは3.1%。数値上は近いが、性質はまったく異なる。アメリカのインフレが賃金と需要に引きずられたデマンドプル型であるのに対し、日本のインフレは典型的なコストプッシュ型である。
  
日銀の「経済・物価情勢の展望」(2025年7月公表)は、物価上昇の主因を「円安に伴う輸入価格の上昇や食料価格の上振れ」と明記している。つまり、中央銀行自身がコストプッシュを認めているのだ。
 
【グラフ1】コアコアCPI(生鮮食品・エネルギー除く)の推移

クックすると拡大します
 
このグラフが示す通り、コアコアCPIは2023年以降、ほぼ3%前後で高止まりしている。エネルギー補助金が電気・ガス価格を抑えてもなお、物価は上がり続けている。つまり、景気過熱でも消費増でもなく、構造的なコスト上昇が物価を押し上げているのである。

2️⃣データが語る「物価構造」の真相
 
【グラフ2】日本の品目別CPI寄与度:2024年8月と2025年8月の比較

クリックすると拡大します


上の図を見れば一目で分かる。食料(生鮮除く)の寄与度は1.45→1.90ポイントへ上昇し、外食も0.18→0.21ポイントへ増加。サービス全体は0.44→0.80ポイントと倍増している。物価の主役はもはやガソリンや電気代ではなく、「食」と「人」である。つまり、食料価格の高止まりと人件費の上昇が、物価上昇の主軸を占めている。

耐久財は−0.01ポイントとマイナス寄与。旺盛な需要があるなら、ここが上がるはずだが、実際は下がっている。エネルギーの押し下げ効果も−0.52→−0.27ポイントへと縮小し、補助金の効果は薄れつつある。
 
【グラフ3】CPI寄与度の変化(2025年8月−2024年8月)
 

 
上の図は、その一年間の変化を示したものだ。プラス側に大きく動いているのは食料、エネルギー、そしてサービスである。一方、耐久財はマイナス側に沈み、外食のプラス寄与はわずかだ。これこそ、コストプッシュ型インフレの典型的な姿である。
 
さらに、円安による輸入物価の下落幅は、2025年8月の−3.9%から9月には−0.8%へ縮小している(日本銀行・企業物価指数)。つまり、コストの下押し効果は消えつつあり、再び上昇圧力が強まっている。
 
「需要主導」という解釈は、これらのデータに真っ向から反する。消費需要は弱い。賃上げはあっても、それは物価上昇に追いつくための防衛的な動きであり、需要拡大の結果ではない。企業は高まる輸入コストや物流費を価格に転嫁せざるを得ず、その波がじわじわと生活全体を覆っている。
 
この構造は、もはや「一時的」でも「外的要因」でもない。企業は今後のコスト上昇を見越して値上げを先行させ、賃金交渉やインフレ期待を通じて再び価格に跳ね返る。まさにコストプッシュ型の自己増幅サイクルである。
 
したがって、「今のインフレはもはやコストプッシュではない」という言説は、事実無根だ。日銀の統計、総務省の寄与度データ、そして輸入物価の推移。どこをどう見ても、供給サイドの影響が物価を支配している。
 
もしこの現実を無視して利上げを急げば、景気は冷え込み、企業の資金繰りは悪化する。結果として、さらなる値上げを誘発するという悪循環に陥る。
 
日本経済の現状は、明確にコストプッシュ型インフレである。円安、輸入コスト、人件費の上昇という三重苦が物価を押し上げている。必要なのは金融引き締めではない。供給制約を緩和し、生産性を高める政策こそが求められている。

3️⃣高市総理誕生をめぐる“情報操作”への警鐘


高市総理誕生前後には、こうした経済認識を意図的に歪める情報が必ず流されるだろう。「インフレは好景気の証」「日銀は利上げを急げ」――この種の論調は、しばしば政治的・経済的意図を帯びている。

私たちは、そうした偽情報に踊らされてはならない。経済の実像を直視せず、他者の思惑に乗れば、政策判断を誤り、国民生活に深刻な傷を残す。日本経済を動かすのは、見出しでも空気でもない。事実とデータである。

冷静な判断を失えば、真の敵は見えなくなる。これを高市氏はすでに見抜いており、いずれ必ず成立するであろう高市政権が向き合おうとしている課題は、虚飾に満ちた経済論ではなく、数字の裏にある現実だ。

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2025年10月14日火曜日

高市総理誕生の遅れが我が国を危うくする──決断なき政治が日本を沈める


まとめ

  • 高市早苗氏の総理誕生が遅れている。理由は党内抗争、連立調整の難航、メディアの妨害。
  • その間にも国際情勢は激変し、台湾有事、中国の軍拡、ロシア・北朝鮮の挑発が進行。
  • 米国はすでに次の同盟ステージへ。日本の政治の停滞は「同盟のリスク」となりつつある。
  • 国内では物価高と賃金低迷、外国人犯罪の質的変化、エネルギー高が進む。円安は本来、輸出で利点にもなりうるが、家計防衛策が欠けている。
  • 政治の空白が続けば、日本は世界に取り残される。高市政権の誕生こそが、日本再起動の「起点」である。

1️⃣政局の迷走と「決断の空白」
 
高市早苗氏の総理誕生が遅れるかもしれない。理由は明白である。党内の一部保守派が結集を急ぐ一方、非主流派の抵抗と連立調整の難航、さらにメディアによる意図的なネガティブ報道が重なっている。派閥の思惑と権力闘争が絡み合い、政権誕生のタイミングを押し下げているのである。だが、その間にも、国際情勢は激変している。


中国は台湾への圧力を強め、アメリカは同盟国との役割分担を再構築しつつ、アジア太平洋での抑止体制を固めている。ロシアは北方領土周辺で軍事演習を繰り返し、北朝鮮は極超音速ミサイルの発射を重ねている。中東ではイランが代理勢力を操り、イスラエルとの小競り合いが火種を抱えたまま拡大している。危機の季節は、すでに目前に迫っているのだ。
 
2️⃣世界が動く中で、立ち止まる日本
 
中国の新空母「福建」

東アジアの海は荒れている。中国の空母「山東」と「福建」が南シナ海から出撃し、台湾周辺で同時演習を行った。これは単なる示威ではない。海空一体の運用能力を誇示し、台湾封鎖を想定した作戦行動の訓練である。米国防総省も「実戦想定の包囲訓練」と警鐘を鳴らした。アメリカはフィリピン・バサ空軍基地を再整備し、台湾と南シナ海を結ぶ補給線の強化に踏み切った。我が国が政局に足を取られている間に、同盟国は次の段階へ進んでいる。

ワシントンでは、日米同盟の即応性を評価する報告が複数存在する。その一つが、アメリカ議会調査局(CRS)が2021年12月3日に発表した「Political Transition in Tokyo」である(CRS Report for Congress, IF10199)。この報告は日本の政権交代が日米同盟に与える影響を分析し、指導者交替が同盟の継戦能力に「一時的空白」を生む危険性を指摘している。こうした分析は、現在の「総理誕生の遅れ」が単なる国内問題にとどまらず、国際安全保障上のリスクとして認識され得ることを意味している。
 
3️⃣内憂外患──止まった政治が国を蝕む

内側でも、我が国は限界に近づいている。物価はじわじわと上がり続け、国民生活は目に見えぬ圧迫を受けている。電気代・ガソリン代・食料品の「隠れ値上げ」。実質賃金は二年以上にわたりマイナスが続く。統計の安定とは裏腹に、庶民の暮らしは確実に苦しくなっている。

外国人労働者の急増は社会の歪みを広げている。地方都市では技能実習生が集中する地区が事実上の外国人街と化し、学校や医療機関では通訳が常駐しなければならない状況だ。統合政策は後手に回り、文化摩擦が日常化している。警察庁の統計によれば、令和5年中の来日外国人による刑法犯検挙件数のうち共犯事件の割合は38.7%で、日本人の3倍に達した(警察庁「令和6年版警察白書」)。さらに、来日外国人犯罪の罪種別構成では、窃盗・詐欺などの組織化が顕著になっている。

令和6年の全国における来日外国人犯罪の検挙件数は、21,794件に上った。これは九州管区警察が同年の地域別統計で明示した公式数値である(九州管区警察局統計資料)。ただし、この数字は速報値であり、最終確定値では若干の修正が入る可能性がある。だが、重要なのは件数そのものではない。

犯罪の“質”が変わっているということだ。越境的ネットワークを持つ多国籍犯罪グループがSNSや暗号通貨を使い、詐欺・密輸・不法送金を同時に展開している。統計では測れない犯罪の多層化が、我が国の治安の根を静かに侵食している。さらに、西欧諸国の移民政策は、明らかに間違いであったことが認識されつつある。統計数値だけを根拠として、外国人犯罪そのものがあまり増えていないからといって、外国人問題はないと結論づけるには無理がありすぎる。

外国人問題は参院選で争点となった これは無視すべきではない

こうした内外の危機が同時に進行するなか、政治だけが立ち止まっている。経済は金融市場の信認を揺らぎ始め、円相場は150円前後の水準で推移している。円安そのものは輸出を促し、製造業にとって追い風となる。だが同時に、輸入価格の高騰を招き、エネルギーや食料のコストが家計を直撃している。求められているのは、円安を「恐れる」政策ではなく、「活かす」政策だ。企業の輸出力を支えつつ、家計への負担を和らげる。財政出動と減税を軸に、国力を底上げする経済運営が不可欠である。

国内外の投資家は、高市政権がどんな経済・外交の道筋を描くのかに注目している。誕生が遅れれば遅れるほど、信頼の空白が広がる。市場は冷酷だ。躊躇は許されない。

政治が止まれば、世界は一歩先へ進む。高市早苗が総理として立つ日は、単なる政権交代ではない。我が国を再起動させる転換点である。外交も経済も安全保障も、もはや先送りはできない。遅れは許されない。時間を失うことこそ、国家の最大の敗北である。高市総理誕生は、衆院選、参院選で示された、国民の声でもある。

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報道の偏向に抗し、保守派と国民の新しい連帯の萌芽を論じる。

世界が霊性を取り戻し始めた──日本こそ千年の祈りを継ぐ国だ 2025年9月30日
世界的な霊性回帰の潮流の中で、日本文化と精神の再評価を訴える。

2025年10月13日月曜日

財務省支配の終焉へ――高市早苗が挑む“自民税調改革”


まとめ

  • 自民党税調は、党の政策機関を装いながら実際には財務省の意向をそのまま受け入れる“増税装置”と化しており、国民の生活や景気を無視して増税を当然視してきた。
  • 「税制改正は年に一度しか行えない」という慣習は法律ではなく、自民党内部のルールにすぎない。この制度疲労が、政治の判断力と機動性を奪い、国の経済運営を麻痺させている。
  • 税調の仕組みを民間企業に置き換えれば、価格改定や給与改定などの重要な意思決定を年一度に制限するようなもので、経営判断が遅れ倒産に至るほどの愚行である。国の税制がこれと同じ構造で動いているのは異常だ。
  • 財務省と税調の共依存が、政治の意思を奪い続けてきた。「財政健全化」という名のもとに官僚が政治を操り、政治は国民のためではなく財務省の都合のために存在するようになってしまった。
  • 高市早苗改革は、この構造を断ち切り、政治が主導して税調を動かす体制を取り戻す戦いである。財務省支配を終わらせ、政治を国民の手に取り戻す――それが高市改革の真の目的である。

1️⃣年に一度しか動かない税制――異常な慣習の実態

自民党の高市早苗総裁は12日、X(旧ツイッター)で党税制調査会の人事に言及した。小林鷹之政調会長に「スタイルそのものをガラッと変えてほしい」と指示したと明かした。

自民党の税制調査会、いわゆる税調は、戦後政治の中で最も閉ざされた組織の一つだ。表向きは党の政策機関だが、実際は財務省の出先機関である。国民経済よりも官僚の論理を優先し、景気や生活の苦しさなど意に介さず、増税を当然のように推し進めてきた。国民のための機関ではなく、財務官僚の理屈を守るための装置と化しているのが現実だ。

税制改正の手順も、半ば儀式のように毎年繰り返されてきた。

この流れが続くうちに、「税制改正は年に一度しかできない」という奇妙奇天烈な慣習が定着した。しかし、そんな法律などどこにもない。税制改正法案は通常国会でも臨時国会でも提出できる。つまり、年に一度というのは自民党内のルールにすぎず、法的な根拠など存在しない。

この党内ルールが国家の税制を縛り、経済政策の機動性を奪ってきた。年に一度しか税を見直せない仕組みなど、民間企業で言えば愚行そのものである。

新製品の発売を半年も検討している間に、競合他社が先に市場を奪う。にもかかわらず、「次の会議は来年だから対応できない」と放置すれば、企業は即座に破綻する。税調のやっていることは、まさにそれと同じだ。

商品価格の改定は年に一度しかできないとか、従業員の給与も福利厚生も年に一度しか変えらない、あるいは新規事業の立ち上げには半年を要するとか、不採算事業の撤退すら役員会の多数決を待たねばならないというようなものだ。そんな会社は外部環境の変化に耐えられず、経営効率を失って競争から脱落する。だが日本は、国家の税制でその愚を堂々と繰り返してきたのだ。

2️⃣財務省と税調の共依存――“増税装置”の正体

この「年一回ルール」は、民主主義国家として異常である。米国では大統領が、英国では財務大臣が、必要に応じていつでも税制改正法案を提出できる。多くの先進国では、年に複数回の改正が当たり前だ。ところが日本では、財務省と自民党税調が互いに寄りかかり合い、政治の意思よりも官僚の都合が優先されてきた。


自民党の宮沢洋一税調会長=2025年5月15日、東京・永田町の自民党本部

本来、税調は国民生活を守るためにあるはずだ。だが現実は、財務省の意向を代弁するだけの“増税装置”に堕している。経済が冷え込もうが、物価が上がろうが、「財政健全化」の名のもとに増税を強行する。その背後には、財務省の影響下にある税調幹部の存在がある。自民党税制調査会長宮沢洋一氏はその典型だ。ネット上では財政緊縮派の「ラスボス」と評された。これはすでに解任の見通しとされている。

こうして政治は官僚の下請けとなり、国民の暮らしは後回しにされてきた。財務官僚の理屈が国家を動かす限り、国民の豊かさなど回復するはずがない。

3️⃣高市改革の挑戦――政治が国民のために決断する国家へ

この閉塞を破ろうとしているのが、高市早苗総裁である。彼女は就任直後、小林鷹之政調会長に「スタイルそのものを変えてほしい」と指示した。財務省出身者で固めた体制を崩し、国会議員が主体となる開かれた税調へと作り替える――その決意は明確だった。

会見する高市早苗・新総裁

高市氏は言う。「議員は税制で達成したい目標を示し、官僚はそれを制度として形にする」。これは単なる人事刷新ではない。政治が官僚から主導権を取り戻すという、戦後政治の根本改革である。

彼女の狙いは、税調を“財務省の出先機関”から“政治の中枢機関”へと変えることだ。税調が政治に従う時代を築き、政治が税調を動かす構造を作り出す。その先にこそ、迅速で柔軟な政策運営がある。物価高が進めば即座に減税し、景気が冷えればすぐに立て直せる――そうした政治の即応力を取り戻すことが、高市改革の真の目的である。

この改革を成功させるためには、二つの要素が欠かせない。

第一に、政治が官僚に依存しない知的基盤を築くことだ。議員や民間の専門家が自ら税制案を作れる独立シンクタンクを党内に設ける必要がある。

第二に、透明性を高めることである。税調の審議過程を原則公開とし、どの議員がどんな意見を述べたのかを国民が確認できるようにする。それが実現すれば、税調は国民に開かれた真の政策機関となる。

税制は国家の骨格であり、政治の力の源泉だ。そこに財務省の論理が居座り続ける限り、日本の政治はいつまでたっても官僚の下請けに過ぎない。

高市早苗が挑む税調改革は、単なる減税論ではない。政治が再び国民のために決断する国家へと戻す闘いである。霞が関の都合ではなく、国民の暮らしの時間で政治を動かす――その一歩を踏み出したのが、高市改革の真の意味である。

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2025年10月12日日曜日

トランプ訪日──「高市外交」に試練どころか追い風


まとめ

  • 高市政権への移行は既定路線:石破首相の辞任により、自民党総裁に選出された高市早苗への政権移行は既定路線であり、最悪国会での指名が遅れても来春までには高市政権が正式発足する見通し。
  • 野党連合の暫定政権は一時的現象:公明党離脱後の数合わせで野党連合政権が成立する可能性はあるが、政策・理念の不一致により長続きせず、次の選挙で自民党が政権に復帰する公算が大きい。
  • トランプの100%関税政策が世界経済を再編:EV、半導体、鉄鋼など中国の主要輸出品に最大100%の関税が課され、米中経済は完全分断へ。変動相場制の日本と違い、固定相場の中国は為替調整ができず、直接打撃を受ける。
  • 日本はサプライチェーン再構築の中心に浮上:米国は日本との半導体協力を進めており、技術力と政治安定を武器に日本企業が新経済秩序の要となる。高市外交の「経済主権」構想が現実のものとなりつつある。
  • 高市外交は圧力を機会に変える戦略外交:トランプの要求を逆手に取り、防衛生産体制の強化、エネルギー分野の国際規格策定、日米投資協力へと転化。高市外交は安倍路線を継承し、日米同盟を新たな段階へ導く。

1️⃣高市総裁誕生をめぐる政局の実相――一時的混乱を超えて


「トランプ訪日は高市外交の試練」と騒ぐ報道がある。だが、その見立ては的外れだ。実際には、トランプの再登場と彼の掲げる対中政策こそが、高市早苗の現実主義外交を後押しする追い風となっている。

現時点で石破茂は総理の座にあるものの、すでに辞任を表明済みだ。自民党総裁には高市早苗が選出され、政権は移行段階に入っている。国会での総理指名を残すのみであり、実務面ではすでに「高市体制」が動き始めている。

ただし、公明党が連立を離脱したことで、国会での首班指名選挙は混迷している。野党が一時的に結束し、高市の指名を阻止しようとする“数合わせ”の構図が浮上している。理論上、別の人物が一時的に首相に指名される可能性はある。しかし、その確率は極めて低い。党内の力学、世論、国際環境のいずれを見ても、高市以外の選択肢は長続きしない。

仮に野党連合による暫定政権が誕生したとしても、それは烏合の衆による一時的現象にすぎない。理念も政策も共有できぬまま、短命で終わることは明らかだ。

世論もそれを裏付けている。外交・防衛・経済の一貫性を最も高く評価されているのは高市早苗であり、保守層の支持はすでに固まっている。仮に野党主導の内閣が成立しても、次の総選挙では自民党が確実に議席を取り戻すだろう。そして、政権の座に戻るのは高市内閣である。

国会での指名が訪日前に間に合わずとも、それは一時的な遅延にすぎない。数合わせによる暫定政権が成立したとしても、**来春までには高市政権が正式に発足する見通しだ。長期的に見れば、安倍政権以来の骨太な保守政権として定着することはほぼ確実である。
 
2️⃣100%関税がもたらす経済地殻変動――為替体制の差が運命を分ける


高市外交の真価が問われるのは、トランプが再び仕掛ける対中経済政策の荒波の中においてだ。トランプは2024年の選挙戦で、中国からの輸入品に最大100%の関税を課す方針を明確に打ち出した。これは単なる選挙用のレトリックではない。米通商代表部(USTR)の報告書でも、既存の制裁関税(平均25%)を抜本的に引き上げる可能性が明記されている。対象は、EV、バッテリー、半導体、通信機器、鉄鋼、アルミ、そして再エネ関連部品など、中国の主要輸出産業のほぼ全域に及ぶ。

この「100%関税」は、米中経済の完全な分断を意味する。加えて、トランプは中国以外の国にも一律10%の関税を課す構想を語っており、世界の貿易秩序は再編を迫られる。サプライチェーンは再構築され、各国は経済安全保障の名の下に、自国主導の産業体制を築かざるを得なくなる。

このとき重要なのが、各国の為替制度だ。変動相場制の国々では、関税上昇に伴う通貨安が自動的な緩衝材となり、輸出の打撃を和らげる。日本や韓国、台湾は為替の柔軟性を活かしてダメージを軽減できる。

しかし、中国はほぼ固定相場制に近い為替管理を続けている。人民元の対ドル相場を厳しく統制しているため、通貨安による調整が働かず、関税ショックの影響を直接受ける構造にある。結果として、中国経済は他の貿易国に比べてより深刻な打撃を受けることになる。

この構造変化の中で、日本の立ち位置は一段と高まる。米中分断が進むほど、日本は高い技術力と安定した政治基盤を持つ信頼の同盟国として浮上する。米商務省はすでに日本との半導体分野での共同投資スキームを検討しており、信越化学や東京エレクトロンなど、日本企業が新しい経済秩序の要となる可能性が高い。

関税政策は同時に、日本に構造転換を迫る。中国依存から脱し、国内回帰とインド・ASEANへの生産分散を進めることで、真の「経済主権」を確立する契機となる。それは高市外交の掲げる理念と完全に一致している。
 
3️⃣圧力を機会に変える戦略外交――「高市外交」こそ次の安倍路線

日米首脳会談は、壁ではなく「追い風」

トランプは再び日本に防衛費増額や貿易是正を求めるだろう。だが、それを恐れる必要はない。外交とは、圧力をどう転化するかの技術である。

安倍政権も同じ局面を経験した。トランプ流交渉を逆手に取り、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という理念を共有し、日米同盟をかつてないほど強固なものにした。高市外交はその延長線上にある。

防衛費増を技術開発と防衛生産体制の強化につなげ、自動車関税を電動車・水素エネルギー分野の国際規格策定に転化する。そして、対中制裁を日米の共同投資と日本優先の供給網構築へと導く。まさに「受け身の外交」から「戦略外交」への転換である。

米USTRの政策見直し、米商務省の対日協力、そして台湾有事を背景に高まるFOIPの重要性――いずれも高市外交の方向性を裏付けている。

結局のところ、トランプ訪日を「試練」と見るのは表面的だ。実際には、米中対立の新局面で、日本がどのように国家戦略を構築するかを試される場である。野党連合政権が形式上その舞台に立つとしても、それは一時的なものにすぎず、外交の本筋はすでに高市外交の設計図に沿って動いている。

100%関税という時代の荒波が、経済主権と技術主権を掲げる高市外交を国家戦略の中心へ押し上げている。トランプ訪日は、その試練ではなく、新しい日米同盟の幕開けである。

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日本はもう迷わない──高市政権とトランプが開く“再生の扉” 2025年10月8日
トランプ再登場を機に、日米同盟の再構築と経済主権の確立を論じる。高市政権の外交・安全保障構想を「再生の扉」と位置づけ、日本が進むべき現実的な戦略を提示している。

SNSは若者だけのものではない──高市総裁誕生が示す“情報空間の成熟” 2025年10月7日
SNS世代を超えた保守層の結束を分析。中高年層が政治情報空間で主導権を握りつつある現象を、高市総裁誕生と重ね合わせ、国民の意識変化を描く。

高市早苗総裁誕生──メディアに抗う盾、保守派と国民が築く「国民覚醒の環」 2025年10月5日
報道の偏向を跳ね返した高市総裁の登場を「国民覚醒の象徴」として捉える。メディアの歪みを乗り越え、保守派と有権者が一体となった新しい政治運動の萌芽を描く。

世界が霊性を取り戻し始めた──日本こそ千年の祈りを継ぐ国だ 2025年9月30日
グローバル化の混乱の中で「霊性の復権」が進む世界の潮流を分析。日本の祈りの文化を、国家再生の精神的支柱として再評価する論考。

奈良の鹿騒動──高市早苗氏発言切り取り報道と拡散、日本の霊性を無視した攻撃 2025年9月29日
高市氏の発言をめぐる切り取り報道を検証。報道倫理の欠如と「日本の霊性」軽視の構造を指摘し、マスメディアの責任を問う内容。

2025年10月11日土曜日

日本列島総不況が生んだ自公連立に別れを──国家再生の号砲を鳴せ

 まとめ

  • 自公連立解消は必然:公明の対中志向の強まり(10/6の中国大使面会報道)と、10/10の離脱通告が“理念乖離”を可視化。長年の共依存構造が終わった。
  • 不況は人災:1988–1990のコアコアCPIは年+1.01%/+2.50%/+2.65%で物価暴騰はなし。実態は資産(地価・株価)バブルだったのに、日銀が実体過熱と誤認して引き締め、信用収縮を招いた。
  • 誤った政策が連立依存を生んだ:金融・財政を同時に締め、景気を冷やし続けた結果、自民は単独で安定多数を得にくくなり、選挙互助としての自公連立に依存した。
  • 構造的ゆがみ(国交相の“指定席”):公明が長期にわたり国交相を占め、公共事業のゲートを握ったことで、中立性や配分の歪み、レギュラトリー・キャプチャーの懸念が恒常化。
  • 処方箋は経済成長:連立という延命装置に頼らず、金融緩和+積極財政と供給制約の緩和、減税の組み合わせで経済成長軌道へ。成果で支持を得れば、連立は不要になる。

公明党が自民党との連立解消を正式に宣言した。四半世紀続いた「自公体制」は終わった。

離脱通告の数日前、10月6日に斉藤鉄夫代表が国会内で呉江浩・駐日中国大使と面会したと日経報道の要旨を引く複数記事が伝え、10月10日の自公首脳会談で離脱が通告された[1]。時系列は、公明党の対中志向の強まりと、連立の理念的乖離を象徴する出来事である。これは単なる政局ではない。日本政治を縛ってきた“共依存”の終わりだ。

この連立は当初から「政権安定」を名目に組まれた。しかし、その安定は国民経済の活力を犠牲にし、誤った政策を温存する装置に変質した。なぜ連立が必要になり、なぜ終わらざるを得なかったのか。本稿で道筋を示す。

1️⃣日本列島総不況が生んだ「自立喪失の政治」
 
1990年代初頭の資産バブル崩壊は、自民党政治の地盤を直撃した。地価と株価が崩れ、都市の中間層や地方の建設業、農業団体など従来の支持層は傷んだ。結果、自民が単独で安定多数を取りにくい体質になった。これが後の連立依存の土壌である。

日本経済は1992年以降「失われた10年」に沈んだ。強調すべきは、これは循環的景気後退ではなく政策による人災だという点だ。

当時の実体物価は「狂乱物価」ではない。コアコアCPI(食料・エネルギー除く)の年平均上昇率は、1988年+1.01%、1989年+2.50%、1990年+2.65%で小幅にとどまっていた[2]。高騰していたのは土地と株価という資産価格で、物価本体の暴騰ではない。にもかかわらず、日銀は実体の過熱と誤認し、急速な金融引き締めに踏み込んだ。これが資産バブルの崩壊を誘発し、信用収縮と過剰債務の連鎖を拡大させた。CPIの定義・接続は総務省統計の公開資料で確認できる[3]。


崩壊後も金融は引き締め基調が続き、政府は不況期に増税と歳出抑制で需要を冷やした。金融と財政が同時にブレーキという失策で、倒産と雇用不安が全国に広がった。これが文字通りの「日本列島総不況」であり、自民の支持基盤を破壊し、選挙での連立依存を不可避にした。

しかも解決は難しくなかった。本来は大胆な金融緩和と積極財政を同時に回せばよかった。それを官僚は「財政規律」や「インフレ懸念」で押しとどめ、政治も連立で延命を選んで誤りを温存した。

2000年代には「構造改革」論が台頭し、デフレ下で需要をさらに冷やして停滞を長引かせた。正しいマクロ政策(緩和+積極財政)を阻害したという意味で、ここが決定的な失敗である。

2️⃣「自自公」から始まった政権延命の構造
 
現在の自公は1999年の「自自公連立」に始まる。小渕恵三内閣の下、自民・自由・公明の三党体制が組まれ、参院の数不足を補って法案通過を容易にした。狙いは理念一致ではなく数による安定である。

自自公連立政権に向けた3党首会談を前に握手する(左から)小沢一郎自由党党首、小渕恵三首相、神崎武法公明党代表=1999年10月、首相官邸

しかし自由党との関係は持たなかった。2000年に小沢一郎が連立を離脱。自由党の一部は連立維持のため「保守党」を結成して残留し、のちに「保守新党」(2002年)を経て自民に吸収された。こうして自民+公明の二党体制が定着し、20年以上続いた。

公明の母体・創価学会の動員力は強い。小選挙区で1~2%の差が当落を分ける現実の中で、自民は公明の票を前提に選挙を組み立てるようになった。ここで自公の本質は、「政策連携」より選挙互助となった。理念を削り、延命装置としての連立だけが残った。最初から間違った連立だったと言わざるを得ない。

この構造的依存が長期化する中で、国政の重要ポストにも歪みが出た。とりわけ国土交通相の「長期専有」は象徴的だ。第二次安倍政権以降、太田昭宏(2012–2015)→石井啓一(2015–2019)→赤羽一嘉(2019–2021)→斉藤鉄夫(2021–2024)と公明党が連続で国交相を務め、その前にも北側一雄(2004–2006)・冬柴鐵三(2006–2008)ら公明出身の大臣が続いた[4][5]。主要紙はこのポストを「公明の指定席」と表現してきた[6]。

ポスト固定化は継続性という利点と引き換えに、①調達・公共事業を所管する巨大省庁の“政治的囲い込み”、②交通・都市開発における政策中立性への疑念、③公共事業配分の政治的バランスの歪みという統治リスクを恒常化させた。いわゆる土建国家の議論から見ても、特定政党が公共事業のゲートを握り続ける配置は、規制俘虜(レギュラトリー・キャプチャー)や利権化の温床になりやすい[7][8][9]。結果として、本来のマクロ政策転換(金融緩和と積極財政)が、所管利害の論理に吸収・希釈される副作用が生じた。

3️⃣共依存の崩壊と再生への道
 
不況が長引くほど有権者は“安定”を求め、自民は公明という“安定装置”に依存した。経済不安定→連立依存の鎖は二十余年続いたが、2020年代半ばに綻び始めた。

公明はこの間に変質した。かつては中道・福祉重視を掲げたが、近年は対中融和の姿勢を強め、訪中団派遣や政党交流を重ねた。香港や新疆など人権案件では慎重に終始し、防衛・経済安保で自民の対中警戒路線と乖離が目立った。連立の理念的基盤は内側から侵食されたのである。

さらに、10月6日に斉藤代表が国会内で呉江浩・中国大使と面会したとの日経報道の要旨を引用するまとめ記事が出ており、4日後の10月10日に自公首脳会談で離脱通告が行われた[1]。

そして2025年10月10日、公明は連立離脱を正式表明した。主要外電・経済紙も相次いで速報し、国政の大きな転換点となった[10][11][12]。

公明党斉藤哲夫代表と会談する自民党高市早苗総裁(10日、国会内)

これから自民は「票の装置」に頼らず、価値観と政策で結ぶ連携に向かうべきだ。理想は、そもそも単独過半を取り切るだけの経済成果で支持を固めることにある。バブル崩壊後の日本は、景気低迷→支持率低下→連立依存という負の連鎖にあった。

裏返せば、成長軌道に戻せば連立は要らない。安定は選挙互助ではなく、賃金・雇用・投資が回る現実の繁栄から生まれる。

結論は明快だ。自公解消は「不況が生んだ共依存政治」の終わりであり、民主政治が自立を取り戻す通過儀礼である。政治の自立を支える最強の処方箋は経済成長だ。金融緩和と機動的・積極的財政、供給制約を外す規制改革、家計・投資減税を組み合わせ、当たり前のマクロ政策を回せば、票は政策成果に回帰する。延命装置としての連立はいらない。誇りある政治はそこから始まる。高市政権はその道を選択するだろう。ただ、高市政権が長期政権にならなければ、時間がかかるかもしれないが、他党がこれを目指すだろう。確かなのは、もしそうなれば、それは自民党でも公明党でも無いということだ。

【関連記事】 

長寿大国の崩壊を防げ──金融無策と投資放棄が国を滅ぼす 2025年9月15日
少子高齢化の下で公共・医療・人材への投資が細り、実質成長力が落ちている現状を点検。金融緩和の継続と大胆な国内投資で“長寿=衰退”の誤った連鎖を断つべき。

インフラ更新を先送りする緊縮と、短期の費用便益(B/C)偏重が安全を脅かしたと指摘。維持更新投資の平準化と、リスクを織り込む評価設計への転換を訴える。
高校無償化の是非を、財源・制度設計・安全保障の観点から再検討。技能実習や越境医療との連動リスクに触れ、家計支援と国益を両立させる制度改良を提案。

自公の選挙協力が崩れた場合のリスクと「組織票」の実態を整理し、経済成長で勝つ必要性を示す。 

「統合政府」の視点から積極財政の正当性を明快に解説。 

株価回復を手掛かりに、インフレ目標・財政協調による成長路線の有効性を示す。

参考・出典(脚注番号対応)

[1]「10月6日・国会内での大使面会」報道ベース(※日経本文は有料)
https://search.yahoo.co.jp/realtime/search/matome/0e53a70f5c7c45e5b390b6f6dc74103b-1759861209

[2]FRED(OECD系列)“Consumer Price Index: OECD Groups: All Items Non-Food Non-Energy: Total for Japan(Annual)”
https://fred.stlouisfed.org/series/CPGRLE01JPA657N

[3]総務省統計局「消費者物価指数(CPI) 結果・時系列データ」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html

[4]首相官邸:歴代大臣プロフィール(例)— 斉藤鉄夫/赤羽一嘉/石井啓一
斉藤:https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/meibo/daijin/saito_tetsuo.html
赤羽:https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/meibo/daijin/akaba_kazuyoshi.html
石井:https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/meibo_a/daijin/ishii_keiichi.html

[5]国会・公的機関記録(例)— 北側一雄/冬柴鐵三(差し替え版)

[6]毎日新聞「10年以上『指定席』 公明が国交相ポストにこだわるワケ」(2023/8/18)
https://mainichi.jp/articles/20230815/k00/00m/010/259000c
J-CAST「国交相はなぜ『公明党』が独占しているのか」(2020/9/19)
https://www.j-cast.com/2020/09/19394785.html?p=all

[7]East Asia Forum “From people to concrete: reviving Japan’s ‘construction state’ politics”(2013/2/26)
https://eastasiaforum.org/2013/02/26/from-people-to-concrete-reviving-japans-construction-state-politics/

[8]Gavan McCormack “The State of the Japanese State – Chapter 6: The Construction State”(書籍章案内)
https://www.cambridge.org/core/books/state-of-the-japanese-state/construction-state/A280C00E070DA119C87086A8BFF17060

[9]Jeffrey Broadbent “The institutional roots of the Japanese construction state”(ASIEN, 2002, PDF)
https://d-nb.info/1371264538/34

[10]AP “Japan’s Komeito Party withdraws from ruling coalition”(2025/10/10)
https://apnews.com/article/e9fe611e8868f6ce3ad8241dff7965ff

[11]Financial Times “Komeito quits Japan’s ruling coalition”(2025/10/10)
https://www.ft.com/content/d621cdce-051c-4e47-99a3-2ad408232cfa

[12]Wall Street Journal “Japan’s Komeito Party Withdraws From Ruling Coalition”(2025/10/10)
https://www.wsj.com/world/asia/japans-komeito-party-withdraws-from-ruling-coalition-0315bdd6


2025年10月10日金曜日

世界標準で挑む円安と物価の舵取り――高市×本田が選ぶ現実的な道


まとめ
  • 高市氏経済顧問本田悦朗氏はロイターのインタビューで「日銀の追加利上げには慎重であるべきだ」と表明し、高市政権の“成長を冷やすな”という方針シグナルを示した。
  • 物価はコストプッシュ色が強い局面で、2025年8月のCPIは前年比+2.7%、コアコアCPIは+3.3%、一方で失業率は2.6%と低水準だが実質賃金の回復が鈍く、需要主導(デマンドプル)とは言い難い。
  • いま利上げを急ぐと資金繰り悪化で投資・賃上げの芽を摘み、内需を冷やすリスクが大きい――「インフレの量ではなく質を見よ」というのが本田氏の核心。
  • 円安は輸出に追い風だが行き過ぎれば物価押し上げ要因を強めるため、「円安を活かしつつ物価を制御する」精緻な舵取りと政府・日銀の協調が不可欠。
  • 目指すべきは世界標準のマクロ経済理論に沿う「高圧経済」的運営で、失業率低下と適度な物価上昇を許容しつつ成長率を重視し、需要が物価を牽引する健全な循環を作ること。
1️⃣高市政権の出発点と本田悦朗の警鐘
 
本田悦朗氏

高市早苗新総裁の誕生により、日本経済の針路は新たな局面に入った。市場は息を潜めて見ている。その最中、注目を集めたのが高市氏の経済顧問であり「アベノミクスの理論設計者」として知られる本田悦朗・京都大学客員教授の発言だ。彼はロイターのインタビューに応じ、「日銀の追加利上げには慎重であるべきだ」と語った。これは単なる学者の意見ではない。政権がどの方向に舵を切るのかを示す“方針表明”である。

本田氏は「日本経済はまだ内需の自律的回復が弱い。利上げを急げば成長の芽を摘む」と警告した。同趣旨は他媒体にも波及し、年内利上げ観測に対する市場の見方にも影響した。要は「成長を冷やすな」という明確な哲学である。

2️⃣数字に隠れた“質”を見る
 

インフレには二つある。原材料や輸入コストが主因のコストプッシュ・インフレと、需要と雇用が牽引するデマンドプル・インフレだ。前者は生活を圧迫し、後者は成長を促す。日本はいま、明らかに前者寄りである。

総務省の最新公表では、2025年8月の全国CPIは前年比+2.7%、コアコアCPIは+3.3%。見た目の伸びはあるが、内需の自律的拡大というより、補助縮小や輸入コストの波が混じる非連続の上昇だ※1。雇用面も、一見堅調だが“質”を見誤ってはならない。2025年8月の完全失業率(季節調整値)は2.6%。失業率は低い一方、実質賃金の回復は鈍い。名目賃金が伸びても、物価に追いつかなければ家計の購買力は削られる※2。

この局面で利上げを急げば、企業の資金繰りを圧迫し、ようやく立ち上がりつつある投資と賃上げの芽を摘む。重要なのは“インフレの量ではなく質”だ。賃金と需要が伴わない物価上昇は、庶民の暮らしを痛めるだけである。

同時に、円安は輸出には追い風だが、行き過ぎればコストプッシュ要因を強める。高市政権が進める半導体・エネルギーなどの戦略投資は円安の追い風を活かせるが、為替の暴走は許されない。求められるのは、「円安を生かしつつ物価を制御する」という難しい舵取りである。
※1 総務省統計局「消費者物価指数 全国 2025年8月分(PDF)」:コアコアCPI+3.3%等の詳細を確認できる。
※2 総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2025年8月分」:完全失業率2.6%など最新概要。
3️⃣世界標準の理論と「高圧経済」
 
本田氏の慎重論は“金融緩和の継続”にとどまらない。世界標準のマクロ経済理論に基づく考え方だ。その中核にあるのが「高圧経済(High-Pressure Economy)」である。景気をあえて温かく保ち、企業に賃上げと投資を促すことで、潜在成長率そのものを高めるという発想だ。失業率の低下と適度な物価上昇を許容し、すぐ経済を冷やすのではなくしばらくは温めて成長を作る。

バイデン政権下のイエレン財務長官も高圧経済政策を実施

この思想は日本独自の奇策ではない。需要と雇用を同時に押し上げ、デフレからの確実な離陸をめざすという骨格は、先進国が共有してきた“常道”である。過去の日銀は、黒田総裁の中期を除けば、この路線から外れがちだった。上田総裁下も、引き締め志向が強くなりつつあるように見える。高市政権と本田氏の立場は、その流れに対する明確な反論だ。「世界標準の経済運営を日本に取り戻す」という意思表明である。

コアコアCPIが2〜3%台でも、賃金が伴わなければ“偽りの好況”だ。ここで利上げを急げば内需は冷える。必要なのはインフレ率ではなく成長率を見る政策である。国民所得を押し上げ、需要が物価を引っ張る健全な循環をつくること。高市政権の使命は、単なる金利調整ではない。問われているのは「国家として、どの未来を描くか」という覚悟である。
高市政権の政治的基盤と支持構造を整理し、経済運営の「現実の受け皿」を描く

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