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2022年8月14日日曜日

トランプ前大統領に〝スパイ容疑〟機密文書11件を押収 「捜査は不当」と大激怒 「共和党潰し」の声も 「韓国のようで、異例ずくめ」―【私の論評】米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わる(゚д゚)!

トランプ前大統領に〝スパイ容疑〟機密文書11件を押収 「捜査は不当」と大激怒 「共和党潰し」の声も 「韓国のようで、異例ずくめ」

マルアラーゴ

 ドナルド・トランプ前米大統領に、スパイ法違反容疑が直撃している。米連邦捜査局(FBI)は、トランプ氏が退任時に重要な国家機密を持ち出した容疑で、フロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」の家宅捜索を行い、11件もの機密文書を押収していたという。FBIによる、前大統領への強制捜査は極めて異例で、2024年の次期大統領選への出馬に意欲を示しているトランプ氏は捜査は不当だなどと激怒している。まるで隣国のような騒動だが、一体何が起きているのか。


 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)や、米紙ワシントン・ポスト(同)などの報道によると、FBIは8日、フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」の家宅捜索を行い、11点の書類などを押収した。捜索時は、トランプ氏は不在だったという。

 容疑は、国立公文書館(NARA)に引き渡すことが義務付けられている大統領在任中の機密文書を、トランプ氏側が保管しているというもの。フロリダ州の連邦裁判所が、捜索令状や付属文書を公開した。

 約20箱分の押収物品には、米国の最高機密文書にあたる文書も含まれているといい、押収品のリストには、写真がまとめられたバインダー、手書きのメモなどのほか、フランス大統領に関する情報と分類されたものもあった。

 トランプ氏は家宅捜索を受け、「すべて機密解除された文書だ」と反論する声明を発表した。「(マールアラーゴは)現在、包囲され、捜索され、占拠されている」「関連する政府機関と協力しており、この抜き打ちの家宅捜索は必要でも適切でもなかった」と、怒りをぶちまけた。

 ワシントン・ポストは、今回の捜索について、核兵器に関連する機密文書を捜すためだったが、実際に押収したかは不明だと報じている。

 核兵器に関する機微な情報が含まれる文書は、限られた政府関係者しか触れることができない。もし、トランプ氏が外部に持ち出して機密漏洩(ろうえい)があれば、敵対国を利するうえ、他国の不安も招くという指摘がある。

 こうしたなか、メリック・ガーランド司法長官は11日の記者会見で、「捜索令状を申請する決定は、私自身が承認した」と明言した。容疑については明かさなかったが、「前大統領が捜索を公に認めたことや、公益性」を考慮して、捜査状況を公表したと説明した。

 今回の捜索をめぐっては、支持率低下が著しいジョー・バイデン大統領(民主党)の政権側が、11月の中間選挙や次期大統領選を見据えながら、「トランプ潰し」「共和党潰し」を狙ったとの指摘もある。バイデン氏は2020年の大統領選で、共和党候補のトランプ氏を接戦の末、破った。

 共和党の一部や、トランプ支持者は「FBIの政治利用」と猛烈に批判しているが、ガーランド氏は先の会見で、「司法省がこのような決定を軽々しく行うことはない」と強調した。

 トランプ支持者とみられる人物の過激事件も発生した。

 米中西部オハイオ州シンシナティのFBI事務所に11日、武装した男が侵入を試みて逃走、警察との銃撃戦の末、射殺された。男はトランプ氏の熱烈な支持者だったとみられる。

■島田教授「政争の一面」

 トランプ氏は、大統領在任中も過激な言動で注目を集め、熱狂的な支持者らが連邦議会議事堂に乱入する事件も起きている。今回のFBIの捜索への報復を叫ぶ声も一部で強まっており、緊張が高まっている。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「今回の捜査は、政争の一面がある。背景には、バイデン氏の次男、ハンター氏が役員を務めていたウクライナ企業などから得た報酬をめぐる疑惑がある。米議会では、共和党がハンター疑惑を徹底追及する構えで、その前にバイデン氏側が政敵に攻撃を仕掛けたかたちだ。大統領が退任時に文書を持ち出すことは過去にもあり、さまざまな手続きで適正な管理が行われてきた。捜査の是非で米国世論が分断され、党派で激しく対立している。辞めた大統領を捜査する動きは、さながら韓国のようで、異例ずくめだ」と語っている。

【私の論評】米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わる(゚д゚)!


米連邦捜査局(FBI)が8日、ドナルド・トランプ前大統領のフロリダ州パームビーチ「マールアラーゴ」別荘を家宅捜索したのに続き、10日(現地時間)には検察がトランプ氏を呼んで捜査しました。

そもそも、自分が大統領時代の公文書を、退任してからも、一定期間保管しているというのは、トランプ氏だけではなく、自らが関わった外交上の問題などについて曖昧な部分を確認して、何か新たな問題が発生したとき備え等や、将来の回想録などの準備として、歴代の大統領が実施してきたことです。オバマ氏もそうしていました。

今回のこのような暴挙によって246年の米国史上初めて元大統領が刑事起訴される可能性が高まり、マールアラーゴとニューヨークのトランプタワーなどではバイデン大統領の支持者とトランプ氏の支持者がそれぞれ賛否デモを行いました。

FBIによる強制捜査を受けて、トランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」には複数の支持者が集まった。8日

ニューヨークタイムズ(NYT)・CNBCなどによると、トランプ氏はこの日、ニューヨーク州の検察当局で行われた約6時間ほど調査で「自身の証人になることを強要されてはならない」という修正憲法第5条を根拠に黙秘権を行使しました。トランプ氏はすべての質問に「同じ(Same Answer)」という言葉を440回以上繰り返したといいます。

トランプ氏は調査前に立場を表明し「人種差別論者のニューヨーク州司法長官に会うことになった」とし「米国史上最大の魔女狩りの一環」と主張しました。民主党支持者の黒人女性レティシア・ジェームズ・ニューヨーク州司法長官が政治的な理由で自身を標的捜査するという意味です。

ニューヨーク州の検察当局は、トランプ一家が保有不動産の資産価値を脱税のために縮小し、銀行の融資を受ける過程では膨らませたという容疑を過去3年間にわたり捜査してきました。

捜査をめぐり米メディアの意見も分かれました。ワシントンポストのコラムニスト、イシャン・サルア氏は9日、「米国、元指導者を捜査する民主国家に合流」というコラムで「米国に前例がないだけで、健全な民主主義国家が元指導者を調査して有罪で収監するのは正常」とし「誰も法の上に存在しないというのは民主主義国家の基本」と指摘しました。

続いて韓国の李明博(イ・ミョンバク)朴槿恵(パク・クネ)元大統領に対する処罰に言及しながら「韓国は米国のように政治的に二極化したが、元大統領に対する怒りを眠らせ、保守から進歩、また保守への平和で民主的な政権交代を成し遂げた」とし「米国人はこれに注目すべき」と強調しました。ブルームバーグ通信のコッシュ氏は「元国家首班が法の審判台に立つのは民主主義の尺度になる」と評価しました。

李明博元大統領(左)と朴槿恵元大統領

一方、ウォールストリートジャーナル(WSJ)はこの日、[FBIの危険なトランプ捜索」と題した社説で「家宅捜索が11月の中間選挙を約90日後に控えて行われ、政治的な目的が疑われる」とし「ガーランド司法長官が米国を危険な道に導いている」と批判しました。

WSJは「トランプ氏が容疑を晴らすことになれば『殉教者』のイメージで2024年の大統領選挙に出馬し、自身に否定的だった共和党員の支持まで受けることができるだろう」と予想しました。NYTも「トランプ氏が『魔女狩りされた殉教者』イメージを固めるかもしれない」とし「今回の捜査が『弱者』である前大統領に対する政治報復として映り、支持層結集の好材料になる可能性がある」と指摘しました。

今年の米中間選挙は11月8日に行われ、連邦議会の選挙では上院の100議席のうち35議席と下院の435議席すべてが改選される予定で、現在、上下両院ともに主導権を握る与党・民主党が議席を維持できるかが最大の焦点です。

ただ、バイデン大統領の支持率は今月4日時点の各種世論調査の平均で39.6%と、アメリカ国内で続く記録的なインフレなどを背景に低迷しています。


中間選挙は歴史的に政権与党に厳しい結果になることが多く、今回も与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がっています。

米国では物価の高騰が市民生活を直撃し、国民の不満がバイデン政権に向かっていて、特定の支持政党がないいわゆる無党派層や民主党支持層の間でも支持が揺らいでいます。

中間選挙で与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がるなか、攻勢を強めているのが共和党のトランプ前大統領です。

220人以上の候補者に推薦を出して勢力を広めつつ、共和党内の「反トランプ派」には「刺客候補」をぶつけて再選を阻んできました。近く、2年後の大統領選に向けた出馬宣言をするかどうかも注目されています。

 「また1人、弾劾(だんがい)者を倒した」。今月10日、トランプ氏は祝福の言葉をSNSに投稿しました。

ワシントン州における下院議員候補を決める予備選で、7選を狙った共和党のボイトラー下院議員が敗れたためだ。代わって当選したのは、トランプ氏が送り込んだ「刺客候補」でした。

昨年1月の議会襲撃事件を受け、民主党はトランプ氏の弾劾(だんがい)訴追を提案しました。これに共和党から賛成した下院議員が10人。これらの議員が「裏切り者」として狙い撃ちにされているのです。

10人のうち、予備選を勝ち抜いて11月の中間選挙に出馬できる議員は2人にとどまります。3人は予備選で「刺客」に敗れ、4人は不出馬を決めました。

そして最後の1人が、リズ・チェイニー下院議員だ。ブッシュ(子)政権の副大統領だったディック・チェイニー氏を父に持ち、自らも過去3回の選挙で圧勝してきました。

ところがトランプ氏を批判したことで状況は一変しました。16日に投開票されるワイオミング州予備選に向けて、世論調査では「刺客候補」にリードを許す苦しい展開となっています。

リズ・チェイニー氏

中間選挙をめぐり、トランプ氏は刺客候補を含む220人以上(上下院、州知事選など)の候補者たちに推薦を出してきました。

このようなトランプ氏の動きに、脅威をいだき、とにかくトランプ大統領再選絶対阻止の構えのなかで、今回のスパイ法違反容疑の件が浮上してきています。これは、露骨なトランプ叩きの一環と断言しても良いでしょう。

民主党のどのレベルがこのようなことを実行する決定をしたのか、わかりませんか、相当ハイレベルなところでの決定であることは間違いなです。そうでないと、FBIや司法省を動かすことはできません。

しかし、このようなことをしても、トランプ氏をスパイ容疑で逮捕するのは、かなり難しいでしょう。なにしろ、トランプ氏は大統領のときに、スパイなどの取締を強化した張本人です。そのような人物を、スパイ容疑で逮捕するのは至難の業でしょう。

ただ、民主党はそれを認識した上で、そのようなことをした可能性が高いです。このブログでも指摘したように、民主党はそのようなことは不可能と知った上で、トランプ氏を弾劾しようとしました。これは、当然のことながら失敗しました。

そのようなことをなぜしたのかとえば、弾劾できるできないは別にして、トランプ氏にマイナスのイメージを植え付けようとしたのでしょう。とにかく、トランプ氏大統領再選の芽を摘んでおきたいというのが本音でしょう。

民主党は、トランプ氏を本気でスパイ容疑で逮捕させようとしているわけではないのでしょう。本気だとすれば、弾劾の時のように相当いかれていると言わざるを得ません。これも、やはりトランプ氏にマイナスのイメージを植え付ける一環だと考えられます。

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2024年3月2日土曜日

トランプ政権の対日の日本側の錯誤―【私の論評】「反トランプ錯乱症候群」からFOXニュースの変遷まで: 米国政治とメディアの舞台裏

トランプ政権の対日の日本側の錯誤

まとめ
  • 米大統領選予備選で、トランプ支持陣営から「反トランプ錯乱症候群」という言葉が発せられる。
  • トランプ政権下、日本側の一部の同大統領が理不尽で強硬な要求を突きつけるという予測は、錯誤だった。
  • 日本の「識者」がトランプ氏の片言隻句(へんげんせきく)を切り取り、悪い方向への絵図を描く悪習は終わりにすべき。

 アメリカの大統領選予備選で、トランプ支持者から「反トランプ錯乱症候群」と呼ばれる激しい論議が生じている。この言葉は、トランプ氏への嫌悪からくる感情的な悪口が事実に基づかずに拡散している傾向を指し、トランプ支持層からの反撃の一環とされている。特に、日本のメディアでは「もしトラ」現象として、次期トランプ政権が北大西洋条約機構(NATO)からの撤退や日米同盟の破棄の可能性が広がっているという予測が取り上げられている。

 しかしこのような主張を裏付けるためには、トランプ政権が過去4年間にどのような政策を取ってきたかを検証する必要がある。トランプ大統領の在任中においてNATOからの離脱政策が実際に採用されたかどうか、また日本との関係において自動車や為替問題で要求や抗議が行われたかどうかを見るべきである。

 まず、NATOに関しては、トランプ大統領は離脱の方針を取ることはなく、西欧諸国に対しては防衛費の増額を促すなど姿勢を見せた。日本においても、トランプ政権は日米同盟を強化し、安倍首相との関係は緊密で安定していた。日本側の一部識者がトランプ政権に対して無責任かつ的外れな予測を立ており、それが反トランプ錯乱症候群の一端である可能性がある。

 具体的には、自動車や為替問題に関しては、日本の一部メディアが予測した厳しい要求や抗議が実際には行われなかった。トランプ大統領は日本に対して自動車貿易や為替政策についての要求を行わず、逆に在日米軍駐留経費についてはジェームズ・マティス国防長官が日本の負担を称賛する発言を行った。

 以上のようなトランプ政権に対する日本側の対応は無責任かつ錯誤であり、これも反トランプ錯乱症候群の一例といえるだろう。日本の「識者」がトランプ氏の片言隻句を切り取り、悪い方向への絵図を描くという定型だろう。そんな悪習はそろそろ終わりにすべき時期である。

この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】「反トランプ錯乱症候群」からFOXニュースの変遷まで: 米国政治とメディアの舞台裏

まとめ
  • 「反トランプ錯乱症候群」とは、トランプ批判者が感情的で非合理な攻撃を行う傾向を指す言葉。「人種差別主義者」などの過剰な攻撃が挙げられ、感情に基づく嫌悪が正当な反対意見を超えている。
  • 米国のメディアは大手新聞はすべてリベラル系、大手テレビ局はFOXだけが例外的に保守系だったが、最近これが変質し、バイデン勝利早期宣言が保守派離れを引き起こす可能性が指摘されている。
  • 名物司会者のタッカー・カールソンがFOXを離れ、プーチンインタビューを通じて反ロシア姿勢に反発する一部の保守派の立場を示唆。
  • トランプのロシア観は複雑で変動的。戦略的な視点からロシアを利用しようとする姿勢が見られる。
  • 米国の大手メディアはリベラル系であり、FOXも左傾化が指摘される。日本のメディアは主に米国大手メディアの報道を流し、保守派視点の情報不足が懸念される。
  • 現代ではAIや翻訳技術を駆使して、米国の情報を容易に入手可能であり、米国の保守系メディアにもアクセスすべき

トランプ反対派の抗議活動に耳を塞ぐトランプ支持派

「反トランプ錯乱症候群」とは、英語では"Anti-Trump Derangement Syndrome(ATDS)"であり、ドナルド・トランプ前米大統領に対して誇張されたり非合理的な批判をするある人々の傾向を指す言葉です。

この言葉は、トランプ支持者によって、事実の分析よりもむしろ感情や敵意に駆り立てられたと見なされるトランプに対する言過ぎた攻撃を特徴付けるのに使われます。

「反トランプ錯乱症候群」に関する主なポイントは以下の通りです。

このフレーズは、トランプに非合理的に敵対的な人々を揶揄するものであり、トランプへの嫌悪に目がくらんでいるために、根拠のない暴言を吐く傾向を含意しています。
  • 文章で例示されているのは、「トランプは人種差別主義者だ」、「トランプは民主主義の脅威だ」、「トランプはヒトラーに似ている」、「トランプはナルシストだ」といった主張です。他にも、トランプへの感情的な反発から、彼の全ての言動を否定的に解釈すること。 たとえば「トランプが言ったことはすべて間違っている。」と決めつける。トランプ支持者すべてを「教育程度が低い」などとステレオタイプ化することなど。
  • この症候群は、トランプに対する強い嫌悪感から、正常な判断力を失うほどの強い敵意や拒絶反応が引き起こされることによるものです。
  • これは、トランプの政策や行為への合理的な反対意見というよりは、トランプへの非合理的な「嫌悪」として、トランプ批判を一蹴するのに用いられます。
要約すると、「反トランプ錯乱症候群」は、トランプの批判者が彼を嫌悪するあまり、事実が裏付ける以上の歪められた、根拠のない攻撃をすることを意味しています。

以前このブログでも指摘したように、米国のメディアは大手新聞は、すべてリベラル系であり、大手テレビ局もほとんどがリベラル系です。従来はFOXTVが唯一保守系ともいわれてきましたが、最近ではそうでもないと指摘する人もいます。

FOXニュースに関して、従来の保守的な立場からの変化が指摘される理由には以下のようなものが考えられます。
  • トランプ政権批判のコメンテーターを多く起用するようになった。保守派の論客が減っている。
  • 2020年の大統領選で、FOXは早い段階でバイデンの当選を宣言。トランプ陣営の不正論を批判的に報道。
  • 視聴者からの反発で、保守派の視聴者がFOXから離れているとの指摘がある。
  • 社内での性的暴行告発事件で保守的な社風への批判が高まった。
  • 保守派論客の一部がFOXを「裏切り」と非難し、新保守系メディアに移籍する動きが出ている。
  • FOXの親会社が経営権売却で左派寄りの方針転換を懸念する声がある。
このように、FOXの保守的立場の変質を示唆する動きがあるとされています。保守派からの批判を招く一方、リベラル層への訴求を強める動きが見て取れると指摘されています。

これは、FOX TVを退局した元キャスターであるタッカー・カールソンがプーチン大統領にインタビューしたことでも顕となりました。FOXの保守的立場の変化とこのことには以下のような関係があると考えられます。
  • タッカー・カールソンは2022年12月にFOXを退局し、新保守系メディアのThe Blazeに移籍しました。彼がFOXを去ったのは、FOXの保守的立場の変化に失望したためとされます。
  • タッカー・カールソンは、2023年2月にロシアのプーチン大統領にインタビューを行い、その映像がThe Blazeで放送されました。プーチンインタビューは、FOXの反ロシア的報道姿勢への反発の表れと見られます。
  • 保守系の視聴者の中にはロシア寄りの姿勢を支持するものも多いとみられ、それとのギャップがFOXの変化を示唆しているようです。
  • プーチン氏への同情的インタビューは、FOXの反ロシア姿勢へのアンチテーゼを提示しようとしたものと受け取られています。
  • タッカー・カールソンは保守系メディアへ移籍しており、FOXでの発言の自由が制限されたことへの不満があるようです。
  • FOXの親ロシア派保守派の立場放棄が、元キャスターの行動の背景にあるようです。
このように、元キャスターの行動はFOXの保守的立場の変更と無関係ではないと考えられ、その変化を象徴する出来事の一つと言えそうです。

タッカー・カールソン氏

以下にプーチンに対するタッカー・カールソンのインタビューの概要を掲載します。
  • 2023年2月にロシアのモスクワで行われた。ロシアによるウクライナ侵攻について、プーチンは「特別軍事作戦」の正当性を主張。
  • NATOの東方拡大がロシアを脅かしたとの立場を表明。
  • カールソンはウクライナへの意見介入を避け、プーチンの主張を傾聴する姿勢だった。
  • 西側メディアの対ロシア報道の偏向性を問題視する発言があった。
  • ロシア寄りの保守派の立場を代弁する役割をカールソンが担った。
  • 友好的な雰囲気の中で1時間以上にわたり対談が行われた。
  • カールソンはFOXニュースでの発言の自由を求めて辞めた経緯があり、その意味でも象徴的なインタビューとなった。
保守派のロシア観については以下のように整理できます。
  • 保守派の一部には親ロシア的な人々がいるが、保守派全体が親ロシアとは限らない。リベラル派を敵視することから、ロシアを戦略的な同盟相手と見る向きがある。
  • ロシアの伝統的価値観を重視する保守派が、プーチン体制を評価する場合がある。国粋主義的な保守派にとって、西側諸国よりもロシアの方が味方と見えることがある。
  • 一方で、冷戦時代の反共的姿勢を重視する保守派も依然として多く、親ロシアとは限らない。
  • トランプ派と旧来の共和党保守派とでも見方が異なる。保守派内でも親ロシア派と反ロシア派に分かれることがある。
概して、保守派の一部にロシア寄りの傾向があると言えますが、保守派全体が一様に親ロシアとは言い切れないのが実情だと考えられます。

トランプ氏のロシア観については、親ロシア的というよりは複雑であいまいな面があると言えます。大統領在任中は、対ロ制裁を強化する一方、プーチンとの個人的な関係構築を目指しました。
  • NATOへの批判的な言動があり、ロシアの警戒感を和らげる狙いがあったとされる。ただし、軍事面では対ロシアの警戒姿勢は緩めませんでした。
  • 大統領選に際しては、ロシアによる選挙介入を疑いましたが、後にロシア寄りの言動もありました。
  • ウクライナ侵攻後はプーチンを「天才」と持ち上げるなど、親ロシア的な言動が目立ちました。ただ一方で、ウクライナ支援も訴えており、立場は一貫していません。
  • 戦略的にロシアを利用する意図が強く、イデオロギー的な親ロシアではないとみられます。
このように、トランプのロシア観は状況に応じて変化する側面が大きく、単純な親ロシアとは言い難いです。

私自身は、保守派を自認していますが、ロシアは未だウクライナと交戦中であり、ロシアを支持するにしても、批判するにしても、それは戦後になって情報が十分に集まった段階で行うべきであり、現時点で、それを表明したり、ロシアを支持したりする姿勢をみせれば、それはロシアに利用されるだけだと思います。

ただしFOXニュースの保守的立場の変質を示唆する動きとして、ロシア観以外にも以下の点が挙げられます。
  • トランプ元大統領に批判的なコメンテーターを多く起用するようになったこと
  • 2020年の大統領選で、他の保守系メディアより早い段階でバイデン勝利を宣言したこと
  • 気候変動問題の重要性を訴える番組が増え、保守層の反発を招いており、さらに人種や性的マイノリティー問題でのリベラル寄りの姿勢が目立つようになったこと
  • 視聴者からの批判で、保守派の視聴者が減少傾向にあること
  • 社内の性的少数者への配慮を強化し、保守的な企業文化を改める改革していること
このように報道姿勢や社内運営の面で、FOXの左傾化されつつある兆候がみられ、保守派メディアとしての色合いが薄れていると言えます。


この傾向が強まりつつある現在、大手テレビ局も、大手新聞もほぼすべてがリベラル系ということがいえ、このような状況では、「反トランプ錯乱症候群」が強まることはあっても弱まることはないでしょう。

日本のメディアのトランプ報道は、米国の大手メディアの内容をそのまま垂れ流す傾向があり、それでは、真のトランプ像や、少なくとも米国の人口の半分くらいは存在する保守派の考えなどは、日本のメデイアは報道しないということになります。

それでは、日本では、メディアの報道をみている限りでは、米国の半分しか見ていないことになり、後の半分のことはわからないということになります。

「反トランプ錯乱症候群」になることを防ぐためには、自ら米国の情報を仕入れて判断するしかなさそうです。ただ、従来と比較すれば、生成AIなどで、すぐに翻訳できようになった現在では、その敷居は従来よりはかなり低くなったといえます。

アメリカの保守系メディアは、政治的な視点や思想によって分類されます。以下はいくつかの代表的な保守系メディアです。

  1. The Blaze: 保守派の視点を提供するメディアで、元フォックスニュースのホストであるグレン・ベックが設立しました
  2. The Drudge Report: ウェブベースの保守系ニュースアグリゲーターで、政治的な話題をカバーしています
  3. Newsmax: 保守的な視点を持つニュースサイトで、政治、経済、社会問題などを報じています2

これらのメディアは、保守派の視点を提供する一部の選択肢ですが、アメリカのメディアは多様であり、さまざまな意見や視点を反映しています。

ただ、日本のメディアだけに頼っていては、米国という国を正しく理解することはできません。米国の保守系メディアの情報も参照することをおすすめします。

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2024年2月12日月曜日

「もしトラ」は日本の大チャンス 〝米国第一〟で軍事支援に消極的、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会もたらす―【私の論評】日本の真の独立を促すとみられる、トランプ外交の真実

 長谷川幸洋「ニュースの核心」

「もしトラ」は日本の大チャンス 〝米国第一〟で軍事支援に消極的、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会もたらす


まとめ
  • トランプ前大統領が再選されれば、日本には大きな影響があり、政策逆転の可能性がある。
  • トランプ氏は輸入品に関税をかける考えを示しており、これが日本の自動車産業に打撃を与える可能性がある。
  • 中国との貿易においてもトランプ氏は強硬策を採ると予想され、対中政策では民主党との一致が見られる。
  • 安全保障面では、トランプ氏が米国第一主義を重視し、日本に積極的な軍事的関与を求める可能性が高いとされている。
  • トランプ政権下で日本は自力で国を守る「真の独立国」に向けた大きな機会を得る可能性がある。

 もしドナルド・トランプ前大統領が再び米国の大統領になった場合、日本にはどのような影響があるのか。トランプ氏が大統領選で優位に立っている状況であるため、この「もしトラ」の問題は現実味を帯びてきている。私は、この状況が日本にとって大改革のチャンスとなると考えている。

 政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」の平均値によると、2024年2月6日時点でトランプ氏は現職のジョー・バイデン大統領を2.1ポイント引き離している。個別の調査を見ても、最近ではほとんどがトランプ氏が優勢となっている。

 もしトランプ氏が勝利すれば、バイデン政権が進めてきた政策の相当部分が覆されることは避けられない。

 例えば、トランプ氏は「米国への輸入品に一律10%の関税を課す」と公言しています。日本が輸出する自動車に10%の関税が課されれば、自動車メーカーにとっては打撃となるだろう。

 ただし、ノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏は「それでも米国の貿易赤字は解消しない」と指摘している。高額な輸入品を購入することを強いられる米国の消費者にも不利な影響があるとされており、実際にどのような結果になるかは不透明だ。

 中国との貿易に関しては、ワシントン・ポスト紙が「トランプ氏が60%を超える関税を課す可能性がある」と報じ、トランプ氏自身もFOXの番組で「それ以上になるかもしれない」と述べている。また、「最恵国待遇」という他国との差別しない原則を取り消す可能性も噂されている。

 対中強硬策は、民主党との一致点が少ない中で唯一一致する分野だ。米中経済の切り離し(デカップリング)は、前政権よりも一層進むだろう。

 日本にとって最も重要な問題は安全保障だ。

 中国の習近平政権は、台湾への武力侵攻を選択肢として捨てていない。武力行使に至らなくても、臨検や海上封鎖などの措置を取る可能性がある場合、トランプ氏はどのような行動を取るのだろうか。

 トランプ氏自身は具体的な対応策について明言は避けているが、日本に対しては「積極的な軍事的関与を求める可能性が非常に高い」と考えられている。なぜなら、トランプ氏の最重要課題は「アメリカ・ファースト」だからだ。

 アメリカを最優先する考え方を日本に当てはめると、「台湾を失うことで日本が深刻な打撃を受ける」という結論になります。そのため、「日本が台湾の防衛に全力を尽くすべきだ」という考え方が生まれるのだ。

 これは大きなチャンスだ。

 第2次トランプ政権は、日本が「アメリカの従属国」の立場から脱却し、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会をもたらすだろう。バイデン政権の下で防衛費増額に踏み切った岸田文雄政権だが、「トランプ復活」の場合、それだけでは足りないかもしれない。台湾の防衛のために、憲法改正を求める可能性もあるだろう。実際、2016年には日本と韓国の核武装についても言及していた。

 この状況は大きなチャンスだ。第2次トランプ政権が実現すれば、日本は他国に頼らずに自ら国を守る能力を高めることができるだろう。

【私の論評】日本の真の独立を促すとみられる、トランプ外交の真実

まとめ
  • トランプ政権は中国に対する強硬姿勢やイスラエル・アラブ諸国の和平交渉成功、ISISへの迅速な対応、COVID対策の渡航制限などで外交で成果を上げた。
  • バイデン政権は中国に対してソフトな態度を取り、イラン核合意やパリ協定への再参加を模索するが、批判も受けている。
  • トランプ政権はNATOの防衛費増額要求やロシアへの軍事力強化で国際的な安全保障に影響を与えた。
  • バイデン政権は価値観外交を推進し、外交において硬直した姿勢が目立つ。批判もあり、外交政策の一貫性が問われている。
  • 第2次トランプ政権が実現すれば、日本は従属から脱却し、自立国としての機会を得る可能性が高まる。

トランプ氏が大統領になる直前にマスコミは、外交経験のないトランプ氏の外交を危ぶむ声が多かったのですが、現実はそうではありませんでした。トランプ氏の外交を以下にふりかえっておきます。

習近平

 以前もこのブログに掲載したことですが、トランプは中国に対して強硬路線をとり、不公正な貿易慣行に対処させた最初の大統領です。バイデンはすでにトランプの関税の一部を撤回し、中国に対してよりソフトな態度をとっています。

トランプの政策は功を奏し、中国に交渉を迫っていたのですが、バイデンの弱腰は中国を増長させることになるでしょう。

トランプはイスラエルとアラブ諸国との歴史的な和平交渉を仲介しました。バイデンはすでにイスラエルとアラブ諸国関係を緊張させています。トランプは、何十年もの間、他国から遠ざかっていた中東での外交的突破口を開き、懐疑論者が間違っていたことを証明しました。

 トランプは記録的な速さでISISのカリフ制国家を壊滅させました。ISISはオバマ-バイデン政権下で急成長し、トランプはその混乱を一掃しなければなりませんでした。トランプは軍を解き放ち、ISISを迅速に粉砕し、イスラム過激派のテロに対する強さを示しました。

 バイデンは、イラン核合意やパリ協定といった不公正な取引に再び参加しようとしています。トランプは、米国に不利なこれらの取引から当然のごとく脱退しました。

バイデンは、これらの取引に再び参加することで、影響力を失い、見返りも何も得られないでしょう。

トランプはメディアからの批判にもかかわらず、COVIDの蔓延を遅らせる渡航禁止措置をとりました。バイデンはこの禁止措置を「外国人嫌い」と呼びましたが、賢明な措置であることが証明されました。

バイデンの政策がボリティカル・コレクトネスによって推進されているように見えるのに対して、トランプは命を救う可能性の高い厳しい決断を早期に下しました。


バイデンやオバマのより伝統的な政治的アプローチよりも、トランプの堂々とした「アメリカ・ファースト」政策がより良い結果を生んだことは明らかです。それは、米国にとってもその同盟国にとってもそうでした。

メディアはトランプを脅威として描いていますが、彼の政策は世界における米国の地位を強化し、敵対国に責任を負わせ、外交政策で大きな勝利を収めました。トランプの外交は、世界の舞台で米国の影響力を低下させるバイデンの外交よりはるかに優れています。全体として、トランプ氏のリーダーシップのほうが、米国とその同盟国はより安全で安心できる環境をもたらしたといえます。弱い米国は、米国だけではなく、日本含む同盟国にとっても不利益をもたらすのです。

バイデン氏は政治家として外交経験も豊富なので、トランプ政権からバイデン政権に変わったとき、多くの識者は、トランプよりはバイデンのほうがまともな外交をするだろうと、安堵の声を漏らす向きも多かったのですが、現実はどうだったでしょうか。バイデン外交は失敗続きだったといっても過言ではありません。

バイデンが副大統領をつとめたオバマ大統領は外交経験に乏しく、外交の中心はバイデンが担っていました。ところが、オバマ政権で国防長官だったロバート・ゲイツはバイデンについて「過去40年、ほぼ全ての主要な外交、国家安全保障問題で間違っていた」と回顧録で切り捨てています。

「誤り」として挙げられるのはイラク戦争への対応のほか、国連決議に基づいていた1991年の湾岸戦争への反対、2011年のイラク撤退でテロ組織の台頭を許したと批判されていること、アフガニスタンへの増派反対などがあります

米企業公共政策研究所の外交政策専門家コリ・シェイクも、バイデン外交について「軍事力をいつどのように使うかという一貫した哲学に欠けている」と米誌アトランティックへの寄稿で批判しています。

バイデンが大統領になってからは、価値観外交を推進し、それが故に硬直した外交姿勢になっている面は否めません。トランプは元々実業家であり、物事を流動的にとらえ、実利の面からものごとをとらえる傾向があるため、特定の政治信条にとらわれることはありません。

一方、米国は2021年8月の米軍アフガニスタンからの撤退そのものは正しい判断ではありましたがそれにしても、撤退の仕方そのものは失敗でした。、ロシアのウクライナ侵攻の直前には、米軍は直接介入はしないとわざわざ公表し、プーチンに免罪符を与えたものと勘違いされ、結局ロシアを後押ししてしまったといわれても仕方ない状況をうみだしました。

大統領専用機のタラップを降りるバイデン大統領

「もしトラ」が現実になれば、トランプはバイデンとは異なり、現実的で流動的な政策を実行するでしょう。

2018年のトランプ大統領の欧州訪問で北大西洋条約機構(NATO)の首脳会談に出席したトランプ大統領は、NATOの欧州側加盟国に防衛費の増額を強く要求しました。加盟各国は最低限、GDP(国内総生産)2%の防衛費支出をするという約束を守れ、という要求でした。

トランプ氏のこの要求は、NATOを壊す動きだとして広く報道されました。トランプ氏はきわめて衝動的であり、米欧同盟の破壊につながるという批判もおおくありました。

しかし実際には、トランプ氏は「NATO諸国の防衛費負担の増大」を2016年4月の大統領候補として初の外交演説で第1の公約として挙げていました。当時から一貫して変わらない「公正な負担を」という政策なのです。これは国民から広く支持を得ている政策であり、オバマ前政権もこの政策を推していました。

また、トランプ大統領は「NATO体制の維持と強化」も政策として掲げてきました。2017年末から今年初頭にかけてトランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」でも、大統領として明言しています。米国が主体となって進めるNATOの維持や強化は、今回のNATO首脳会議での共同声明でも確認されました。トランプ大統領はNATO堅持を主張した上で公正な負担を求めたのです。

ロシア政策にしても、トランプ大統領は前記の「国家安全保障戦略」や「国家防衛戦略」の中で、ロシアをはっきりと米国主導の国際秩序を侵食し、破壊することを企図する危険国家として位置づけてきました。トランプ大統領はプーチン大統領と握手はしても、ロシアのクリミア奪取を許してはいませんでした。ロシアへの経済制裁もまったく緩めませんでした。

トランプ政権のロシアへの基本姿勢は、軍事力の強化によっても明らかだったといえます。トランプ大統領は2017年9月の国連演説で「原則に基づく現実主義」という理念を掲げ、国家主権に基づく「力による平和」という政策を語りました。それとともに、潜在敵であるロシアや中国の膨張を抑えるために、軍事力を大幅に強化し始めました。トランプ政権の2018年度の国防予算は、前年度から13%増加し、GDPの4%ほどに達しています。

今日ロシアがウクライナに侵攻したことを考えると、トランプのこうしたNATOへの働きかけは正しかったといえます。

トランプ氏は今月10日、南部サウスカロライナ州での集会で、過去のNATO首脳との会合を振り返ったとみられる中で、「ある大国」の大統領から「われわれが(軍事費を十分に)払わないまま、ロシアの攻撃を受けたら、あなたは守ってくれるか」と尋ねられたと紹介。「いや守らない。むしろしたいようにするよう彼ら(ロシア)に勧める。払わないと駄目だ」と答えたと語ったとされ、現在のホワイトハウスはこれを批判しています。

しかし、「払わないと駄目」という発言からもわかるように、これはNATO堅持を主張した上で公正な負担を求めた従来の姿勢を崩していないと受け取るのが妥当だと考えられます。



このようなトランプ氏です。もし大統領になった場合、中国に対する不沈空母ともいえる日本を堅持するする姿勢は崩さないでしょうが、日本も応分の対応を求めてくるでしょうし、場合によっては、日本政府の親中・媚中的な姿勢にも苦言を呈するかもしれません。

長谷川氏の主張するように、第2次トランプ政権は、日本が「アメリカの従属国」の立場から脱却し、自力で国を守る「真の独立国」に近づく機会をもたらすことになる可能性は高いです。

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2023年8月29日火曜日

トランプ陣営、逮捕時の顔写真をグッズに 10億円集める―【私の論評】米国保守派は、すでに米国を再び偉大にするための準備を整えた(゚д゚)!

トランプ陣営、逮捕時の顔写真をグッズに 10億円集める

まとめ
  • トランプ陣営は、ジョージア州の選挙結果を覆そうと企てた容疑で起訴されて以来、多額の資金を集めている。
  • グッズの販売や支持者からの寄付で資金を集めている。
  • 選挙陣営はこの資金を法廷弁護費用と2024年の大統領選挙に備えるために使っている。



 ドナルド・トランプ前米大統領の選挙キャンペーンは、1月24日にジョージア州アトランタの拘置所で警察に写真を撮られて以来、710万ドルを集めた。

 この資金の多くは、前大統領のしかめっ面をあしらったマグカップやTシャツ、飲み物を冷やす容器などの商品の販売によるものだ。

 トランプ氏は、2020年の大統領選挙でジョージア州の選挙結果を覆そうと企てた罪で起訴され、20万ドルの保釈保証金を支払って保釈された。

 彼は来年の大統領選挙に向けたキャンペーンを展開するなか、他にも3つの訴因で起訴されている。

 前大統領はすべての容疑を否認し、起訴は政治的な動機によるものだと主張している。

 起訴をめぐる関心の高まりは、前大統領の支持者を活気づかせたようだ。

 ジョージア州での起訴と議会攻撃から3週間ほどで、選挙キャンペーンは2000万ドル近くを集めた。

 ジョージア州フルトン郡の拘置所に出頭し逮捕された直後の25日には、418万ドルを集めた。元大統領が24時間で集めた選挙資金としては最高額とみられる。

 陣営はオンラインストアで商品を販売し、支持者に支援を求めるメッセージを送っている。
前大統領は24日、2021年1月以来初めてX(旧ツイッター)に投稿した。逮捕時の顔写真で「選挙妨害。決して降伏しない!」とキャプションを添え、自身のウェブサイトのアドレスを掲載した。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】米国保守派は、すでに米国を再び偉大にするための準備を整えた(゚д゚)!

まとめ
  • 米国の保守派は、リベラルメディアと民主党の攻撃に反発し、トランプ大統領の支持を結集。
  • トランプ大統領に対する魔女狩り的な攻撃が続いたが、多くの場面で彼の無実が示された。
  • リベラルメディアや民主党はトランプを人種差別主義者や反移民として描こうと試みたが、支持者はその試みを見抜く。
  • 2024年選挙でトランプ大統領の再選が期待され、保守派は国を再び偉大にしようとする準備を進めている。

以下は、米国の保守派の立場にたったものです。日本のメディア報道とはかけ離れていて、違和感を感じる人もいるかもしれませんが、この保守派の見方を知らないと米国の真の姿は浮かんできません。それは、日本にたとえると、朝日新聞や毎日新聞やテレビなどを視聴しただけで、日本を理解するようなものです。

米国の大手メディアのうち大手新聞はすべてリベラルであり、大手テレビ局はFOXTVを除き、他はリベラルです。そのため、米国では保守派が何かを言ってもかき消されてしまいます。しかし、トランプ大統領が登場した事実が、米国有権者の少なくとも半分は保守層であることを示しています。そうでなければ、トランプ大統領は生まれてはいなかったはずです。

リベラルメディアが報道する内容で米国を判断することは、米国の半分を無視することと同じです。



どうやらリベラル派の愚か者たちは、トランプ元大統領に対する芝居じみた告発で保守派の術中にはまったようです。米国の保守派は、レーガン以来の偉大な大統領に対する彼らの中傷キャンペーンには我慢ならないでしょう。

芝居じみた告発 AI生成画像

この芝居じみた告発によってリベラル派が得たものは、トランプ大統領の支持層を結集させ、2024年に向けてトランプの選挙資金を増やしただけのようです。トランプ元大統領はこの魔女狩りからこれまで以上に強く立ち上がり、民主党はトランプ氏を貶めたことを後悔することでしょう。

リベラル・メディアはトランプ氏への攻撃を継続し続け、トランプ氏の支持者はそれをリベラルメディアがトランプ大統領を貶めようとしている証左と見ているようです。米国の保守派は真実を知っているようです。

リベラル・メディアと民主党は、トランプ大統領が就任する前から、トランプ大統領に対する魔女狩りを繰り返してきました。

ロシアとのトランプ氏との共謀をめぐるロバート・ムラー特別捜査官の調査は、トランプ氏の2016年の大統領選勝利を委縮させるために作られた完全なデマでした。2年の歳月と数百万ドルの税金を費やした後、ミューラーは共謀の証拠を発見できませんでした。(出典 ミューラー・レポート )

ロバート・ムラー特別捜査官

ウクライナとの電話をめぐる弾劾は、下院民主党による根拠のない権力の乱用でした。通話記録と上院での無罪判決で確認されたように、トランプ氏は何も悪いことはしていません。(出典 ウクライナとの通話記録と上院弾劾裁判) 

ニューヨーク検事総長のトランプ・オーガニゼーションに対する捜査は、政治的な意図をもったものでした。トランプ氏のビジネスは合法的に運営されており、これはトランプ氏を中傷しようとしているだけのようです。結局、 何年にもわたる捜査にもかかわらず、今のところ法的な告発はありません。

米主要大手メディアは、トランプ大統領がシャーロッツビルの白人至上主義者を "とても立派な人たち "と呼んだという嘘を流しました。トランプ氏は彼らを非難しました。しかし、メディアは彼の言葉を捻じ曲げ、彼を人種差別主義者として描きました。(出典 トランプ大統領の発言全文 )

民主党とメディアは、トランプが反移民で人種差別主義者であるという誤ったシナリオを押し付けてきました。実際、トランプ氏は合法的な移民を支持し、人種差別を非難しています。民主党とメディアは、自分たちの嘘を裏付けるために、彼の言葉を彼らの都合の良いように切り取りしています。(出典 合法的移民と人種差別に関するトランプ氏自身の発言)。

民主党は、虚偽のスティール文書に基づいてトランプ陣営をスパイするために不適切なFISA令状を取得し、法制度を乱用しました。これは政治的利益の得ることが目的の市民的自由への重大な侵害でした。(出典 司法省監察官によるFISA令状の濫用に関する報告書)。

スティール文書を作成したクリストファー・スティール氏

以上のように、魔女狩りのリストは枚挙にいとまがありません。民主党とリベラルメディアは、トランプ大統領を失脚させるためには手段を選ばないです。しかし、多く米国民は彼らの策略を見抜くことができ、結局真実と正義は勝つことでしょう。

トランプ氏が多くの国民に愛されているのは、彼がありのままを語り、自分たちのために戦ってくれると感じているからです。トランプ元大統領が、国境の安全確保、雇用の回復、沼の掃き出しといった重要な問題に集中している限り、2024年に勝利するのは確実でしょう。

民主党は今回の起訴劇で本性を現しましたが、多くの米国民はそれを忘れないでしょう。トランプ大統領は米国を再び偉大な国にしようとしています。トランプ元大統領が善戦を続ける限り、2024年は彼のものです。民主党は眠れる巨人を目覚めさせてしまったようです。米国保守派は、すでに米国を再び偉大にするための準備を整えたようです。

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2021年10月22日金曜日

トランプ氏が独自SNS立ち上げ、合併相手のSPAC350%超急騰―【私の論評】2024年に、大統領に返り咲くこともあり得るトランプ氏(゚д゚)!

トランプ氏が独自SNS立ち上げ、合併相手のSPAC350%超急騰


トランプ前米大統領が自身の新会社と特別買収目的会社(SPAC)の合併を活用して独自ソーシャルメディアを立ち上げると発表したことを受け、合併対象のSPAC、デジタル・ワールド・アクイジション・コープがナスダック市場で350%超値上がりした。

新会社のトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)は来月にソーシャルメディア「TRUTH Social」のベータ版の試験運用を始め、2022年第1・四半期から一般の利用を開始する計画を明らかにした。

デジタル・ワールドは一時、上昇幅を400%超に拡大。終値は356.8%高の45.50ドルで、時価総額は14億7000万ドルと、20日の3億2100万ドルから急増した。ナスダックの売買高トップとなった。

トランプ氏は今年1月6日の支持者らによる議会議事堂占拠事件を受け、交流サイト(SNS)大手のツイッターとフェイスブックのアカウントが停止された。トランプ氏は議会占拠の前に支持者らに、昨年の大統領選で不正があったと改めて訴える扇動的な演説をしていた。

トランプ氏はソーシャルメディア立ち上げに関する発表文で「間もなく私の考えを共有し、巨大テックに対抗できることに興奮している」と表明した。

【私の論評】2024年に、大統領に返り咲くこともあり得るトランプ氏(゚д゚)!

トランプ氏は、ネットワーク発表の声明で以下のように述べました。

「私はビッグテックの独裁に抵抗するためにTRUTH SocialとTMTGを設立しました。我々が暮らす世界では、タリバンがツイッターで大きな存在感を持つ一方で、みなさんの好きな米国大統領が沈黙させられています。これは容認できません。私は間もなくTRUTH Socialで自分の最初のTRUTHを発信できることに興奮しています」

新メディアグループは、「Deal or No Deal」「America’s Got Talent」といった人気番組のエグゼクティブ・プロデューサーで、1,000時間以上のネットワークとケーブルテレビをプロデュースしてきたスコット・St・ジョンをトップに選びました。

スコット・St・ジョン氏

ソーシャルメディアGETTRのCEOでありトランプ氏の最側近とみられているジェイソン・ミラーは、トランプ氏が新たな取り組みに着手したことを支持しました。

「トランプ大統領、ソーシャルメディアの口論への復帰おめでとうございます!これでフェイスブックとツイッターはさらに市場占有率を失うでしょう。トランプ大統領は常に偉大な取引交渉者でしたが、我々は取引に折り合いをつけることができませんでした」とミラーは声明で述べました。

ジェイソン・ミラー氏

ネットワークは「全ての人に発言権を与える」という目的で作られている、とトランプは述べました。

第45代大統領は、サブスクリプション形式のニュース・エンターテインメント・プラットフォームも立ち上げると述べました。

バイデン米大統領の支持率が低迷する中、2024年の大統領選への再出馬を示唆するトランプ前大統領が勢いを示しています。

「バイデン政権下のたった9カ月で、不法移民や麻薬密売業者が国境を支配し、インフレが経済を襲い、中国には雇用を奪われ、アフガニスタンはタリバンが支配した」。トランプ氏は9日のアイオワ州での集会で、バイデン氏の一連の政策を批判しました。

24年に共和党の候補指名争いの初戦が行われる同州での演説は、トランプ氏が次期大統領選に出馬するとの観測により一層現実味を与えました。

トランプ氏は出馬について明言はしていないですが、保守系メディアとのインタビューで、「医師による悪い診断か何か」だけが、トランプ氏の出馬を妨げるものだとし、その意思を強く示唆。また、同氏と頻繁に会話を交わしているという元補佐官ジェイソン・ミラー氏は米メディアとのインタビューで、出馬の可能性は「99~100%の間」だと述べ、ほぼ間違いないとの見方を示しました。

トランプ氏が勢いづく背景には、バイデン氏の支持率低迷があります。政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の最新世論調査の平均値(18日時点)によると、支持率が43・7%に対し、不支持率が52・1%。就任当初は、支持が不支持を20ポイント近く上回っていたが、大きく逆転した。アフガンからの米軍撤退の不手際やインフレ懸念、メキシコ国境における不法移民の急増が打撃となっている。

これに対して、トランプ氏は各種世論調査で支持を高めている。デモイン・レジスター紙などが先月中旬にアイオワ州で実施した世論調査によると、過去最高となる53%がトランプ氏に対して「好意的」だとし、45%が「好意的でない」と回答しました。

また、ラスムセン社が先月下旬に実施した世論調査によると、仮に今、大統領選が行われた場合、トランプ氏に投票するとした人が51%だったのに対し、バイデン氏は41%。民主党支持者の約5人に1人がトランプ氏に投票するとしました。


世論調査専門家のジョン・ゾグビー氏は、10ポイント差という結果は実態よりも「少し大きい」との見解を示しつつも、「就任からわずか9カ月で、(バイデン氏への)投票に後悔している人が多くいる」と指摘しています。

日本のマスコミは、トランプ氏を、まるで狂ったピエロのように報道しますが、それは米国のメディアの受け売りにすぎないです。このブログでは何度か掲載ましたが、米国メディアは大手新聞は全部リベラル派で湿られています。テレビはFOXTVのみが保守系で、あとはすべてリベラル派です。リベラル派メディアはトランプ氏のことを悪く言うのは当然です。

米国のメディアを鵜呑みにしたり、米国メディアの垂れ流しをする日本のメディアの報道をみて、トランプ氏を狂ったピエロのように考えるのは間違いです。

トランプ氏のことを、批判は聞かず、自分の主張だけをまくし立てると考える人も多いです。しかし大手メディアは、トランプの主張をとりあげないどころかネガティブな報道ばかりします。そのためトランプがSNSで主張すると、今度はSNSがトランプ氏のアカウント停止するという有様です。

これだけ、自分の主張を述べることを制限されれば、主張できる機会があれば、自分の主張をまくしたてるというのもうなずけます。誰もが、自分の主張する機会を制限されれば、そうなるのではないでしょうか。

「TRUTH Social」が稼働して、トランプ氏が自分の主張を存分に語ることができるようになれは、トランプ氏が自分の主張をまくしたてるということはなくなるのではないかと思います。トランプ氏のいままで一般にはあまり知られていなかった一面が明らかになるかもしれません。

2024年に、トランプ氏が大統領に返り咲くことも十分あり得るとみておくべきです。

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2022年2月2日水曜日

トランプのPACが2021年下半期に5100万ドルを集める―【私の論評】トランプは2024年大統領選挙の有力な候補者である(゚д゚)!

トランプのPACが2021年下半期に5100万ドルを集める

<引用元:FOXニュース 2022.1.31-2.1
トランプのPACは1億2200万ドル以上の現金を手中に
29日にテキサス州コンロ―の集会で話しをするトランプ前大統領
トランプのセーブアメリカ政治活動委員会(PAC)による1月31日の発表によると、トランプ前大統領のPACは2021年下半期に5100万ドルの資金を集めており、PACは1億2200万ドル以上の現金を手にしている。

「トランプ前大統領が前代未聞のペースで資金集めを継続していることから、2022年以降の共和党の未来は、おそらく米国の歴史上で引き続き最強となることがわかる―MAGA運動は浸透している!」と発表には書かれていた。

さらにセーブアメリカPACは、集めた全資金には、トランプのプラットフォームに向けたり、トランプの似顔絵や推薦を使用したりして他のキャンペーンで集めた数億ドルは含まれていないと指摘した。

「ドナルド・J・トランプ大統領は、継続して共和党の未来を獲得し明確にする政治団体を作り上げた」とトランプの広報担当部長テイラー・ブドビックは声明で述べた。

「トランプ大統領は、彼の指導力の必要性がかつてないほどに重要になる中で11月以降を見据えて非常に良い位置にある」とブドビックは続けた。

だがトランプが2021年下半期に集めた5100万ドルは、前大統領が同年の上半期に集めた8200万ドルから著しく減少した。

トランプは2024年の大統領選再出馬をほのめかしているが、今のところ正式な発表は控えている。先週はトランプが「45代及び47代」の米国大統領となるだろうと述べた動画が浮上した。先週土曜日のテキサス州コンロ―でのセーブアメリカ大会で、トランプはもし自身が再度大統領となったら2021年1月6日の議事堂暴動に参加して収監された人々に恩赦を与えると示唆した。

「もし私が出馬して勝ったら、あの1月6日の人々を公平に扱うだろう」とトランプは、多くがワシントンDCに収監されている暴動参加者について述べた。

「そしてもし恩赦が必要なら、恩赦を与えるだろう。なぜなら非常に不公平な扱いを受けているからだ」とトランプは続けた。
【私の論評】トランプは2024年大統領選挙の有力な候補者である(゚д゚)!

日本では、ほとんど報道されませんが、ドナルド・トランプ前大統領は29日にテキサス州コンロ―の集会で1万人を超える参加者に話し、バイデン政権の外交政策と「不正な」2020年選挙を批判しました。


以下に要旨のみを掲載します。
毎日、バイデンの無能さが米国を危機にさらしている。みなさんご存知の通り、私が大統領だったら、プーチンとロシアがウクライナにやっていることは決して起こらず、可能性すらなかった。
とトランプは、ウクライナ国境で高まるロシアの侵攻に言及しました。

トランプはジョー・バイデン大統領のアフガニスタン撤退も批判し、米国は850億ドル相当の軍装備品をタリバンに与えたと指摘しました。トランプは、バイデンの政策は「本物の第三次世界大戦の危険」を作り出していると主張しました。

また前大統領は、バイデンのCOVID-19パンデミック対応について話し、
米国人が全てのCOVID関連の義務化から独立を宣言する時だ。
と主張しました。

トランプはさらに、「不正な」2020年選挙と民主党が今月初めに提案して失敗に終わった選挙権法案を批判しました。
我々の国を真に取り戻すためには、あらゆる問題の中で最も重要な事を解決しなければならない。自由で、公平で、正直な選挙を守ることだ。2020年選挙は不正操作されたのであり、誰もがそれを知っている。他の誰よりもそれを知っているのは誰か分かるだろうか?民主党だ。 
ちょうど昨日、素晴らしいペンシルベニア州で我々は大勝利した。全州の裁判所は、盗まれた選挙の直前に民主党によって導入された弁解なき郵便投票行為は、違法であり著しく憲法に違反していると判決を下した。それゆえに我々が州で勝利していたのだと確信している。
トランプはこう続けました。
我々はウィスコンシン州でも大きな訴訟に勝利した。本当に不正が盛んで、裁判官はドロップ・ボックス、彼らは鍵付きボックスと呼ぶが我々は鍵なしボックスと呼んでいるのだが、それが違法だと判決を下した。それらは違法だった。何万票も。それが違法だという判決が出た。
トランプはまた2022年と2024年の「レッド・ウェーブ」を呼びかけました。

2024年の大統領選挙には、トランプ前大統領が共和党の候補として出馬する可能性が高いですし、そうでなくてもトランプ氏寄りの人が出てくる可能性は否定できないです。

最近、有力候補としてメディアで名前が上がり始めたのは、フロリダ州のデサンティス知事です。彼はもともと、トランプ氏の支持を得てフロリダ州の知事になっています。ただし、大統領選挙に名乗りを上げるかは定かではないし、彼自身は現在、トランプ氏とは微妙な距離を保っているようです。

フロリダ州 ディサンティス知事

仮にトランプ氏が出馬するならば、彼に勝てる人はいないてしょう。しかし、仮に出ない場合、昨年11月のバージニア州知事選挙が参考になります。

バージニア州知事選では、トランプ氏が支持を表明した共和党の実業家グレン・ヤンキン氏が勝利しました。いまやトランプの支持を得ることは、共和党の中で勝ち残るためには有効な手段なっているのです。

たとえば、トランプ支持者が納得するような候補者を立て、予備選の段階ではトランプの支持を全面に出しておき、選挙本戦ではトランプを隠して、トランプ色を薄めるような戦略も考えられます。そうすれば、トランプが嫌いな人や無党派層の票も取り込めるので、選挙で勝てるのです。

グレン・ヤンキン氏

では、バイデンはどうなのかといえば、年齢から言っても懐疑的にならざるをえないです。

トランプ前大統領は70歳で大統領に就任し最年長でしたが、その後、78歳で就任したバイデン大統領がその記録を塗り替えています。バイデン大統領は現在79歳で、現役大統領として最高齢記録を更新しました。2024年に仮に選挙に勝利したとすると、2期目の就任時には、82歳になります。

それにバイデン大統領のスピーチ能力にも心配がある。彼がアドリブで話す時には、ファクトの間違いが多いと指摘されているいます。たとえば彼は、自分が10代の頃、公民権運動に関連して逮捕されたということをしばしばスピーチの中で披露していのですが、彼が逮捕されたという記録は確認できない上、逮捕されたとされる場所も曖昧で、当時の年齢についても13歳という時もあれば15歳と発言する時もあるのです。

また、カマラ・ハリス副大統領のことを過去何度も、「ハリス大統領」と言い間違えていることでも有名です。1月中旬に、1月6日の議会占拠1周年を記念した式で演説をした時にも、「先週、ハリス大統領と私は……」と述べ、訂正もしませんでした。

これらは、大きなミスではないかもしれないですが、1度や2度ならず複数回も間違えるとなれば、一国の大統領としての資質を問われても仕方がないです。

バイデン大統領(左)とカマラ・ハリス副大統領(右)

一方、ハリス副大統領の大統領候補の可能性ですが、残念ながら1年目の彼女の功績はほとんどない上、担当した移民問題でも、昨年6月の中南米訪問で「(移民はアメリカとの)国境に来ないで」と発言してしまいました。彼女の支持率は低いです。

他にもピート・ブティジェッジ運輸長官、テキサス出身のベト・オルーク元下院議員などの名前が出ることもありますが、まだまだ民主党の候補の方は不透明です。

NBCテレビによりますと、トランプ氏がこれまでに支持を表明している候補者は現職を含めおよそ90人いて、今年の中間選挙でこうした候補者たちが当選するかどうかが、トランプ氏の影響力を測る試金石になるとして注目されています。現時点では、トランプ氏は次期大統領選挙での有力な候補者と言って間違いないです。

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2019年11月17日日曜日

弾劾世論調査:トランプ支持率が50%に回復―【私の論評】日本の腑抜け野党によく似てきた米民主党だが、それでも日本の野党よりはましだ(゚д゚)!

弾劾世論調査:トランプ支持率が50%に回復

<引用元:ワシントン・エグザミナー 2019.11.15

ラスムセンレポートによる毎日の大統領追跡調査によると、トランプ大統領の支持率が弾劾で上昇している。

大統領に対する毎日の評価は、下院弾劾公聴会の初日の13日以降、4ポイント上昇した。



ラスムセンの調査分析によると、「大統領の総合支持率は、下院弾劾公聴会初日の13日以降上昇をたどっている。13日朝は46パーセントだったが翌日には48パーセントに上がり、現在50パーセントとなっている。現在の調査の3晩分のうち2晩分は大々的に報道された公聴会後のものである」。

バラク・オバマ大統領は1期目のこの時点で49パーセントの支持率だった。

調査結果ではトランプの仕事ぶりに49パーセントが不支持を示している。

※なお、RealClearPoliticsによる各世論調査平均でも同様の傾向が見られる。



【私の論評】日本の腑抜け野党によく似てきた米民主党だが、それでも日本の野党よりはましだ(゚д゚)!

米民主党が問題視しているトランプ大統領の言動とは、「ウクライナが必要とする武器の供与を餌に、バイデン候補が副大統領当時に同氏の息子がウクライナ企業から多額の報酬を受け取っていたかどうかを調べることを強要した」というものです。

この話の最大の弱点は、トランプ大統領がウクライナの要求する武器の供与を、ウクライナからの調査結果を受け取っていないにもかかわらず既に実行していたことです。

次に、内部告発にあった7月25日の電話会議を始点として考えると、武器の供与が9月下旬で2カ月のタイムラグがあります。

つまり、ゼレンスキー大統領が合理的人間で、トランプ大統領が明確に要求していたとするならば、ゼレンスキー大統領が2カ月間も調査を放置していたにもかかわらず、ということは、トランプ大統領の要求を無視したにもかかわらず、武器が供与されたことになります。

ここで重要なのは、米国の外交官やCIA職員、大使などが大統領の意思をどう忖度(そんたく)したか、また彼らがトランプ大統領の意思としてゼレンスキー大統領に調査を求めようとしていたと感じていたか、ということではありません。トランプ大統領が実際に調査依頼を自分で考え、具体的に指示したかです。頭で考えていたかもしれない、ということではありません。

トランプ大統領が民主党の申し立て通りに調査報告を交換条件としていたとするならば、その条件が満たされないうちに武器を供与したことの理由づけが難しいです。いまのところこの点で、トランプ大統領に不利となるような証言が出てはいるものの、決定的な証拠は出てきていません。

トランプ大統領に「フェイク・ニュースを流すフェイク・メディア」とばかにされてきた大方の米メディアはトランプ大統領について、自分の利益を最優先し、何でも自分で一度に実現できると考え、しかも自分の意見を頻繁に変える気まぐれ屋と批判してきました。また、衝動的で自分の希望が通らなければ取引を中止する傲慢さを持っているとも批判しています。

トランプ大統領(下端)と支持者ら

ティラーソン前国務長官を筆頭に、トランプ政権を去った人々の多くは大統領の頭は小学生レベルで、アイデアを彼らに語っても次の瞬間にはそれを覆して別のことを言う、またはなかったことにするいい加減な人間だと批判しました。

一方、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏によれば、トランプ大統領は就任から現在までに300回、ウクライナ疑惑の内部告発がなされてからの1カ月ほどで45回、「魔女狩りだ」と連呼したとのことです。同時に彼は人々はことの真偽にかかわらず、メッセージの反復発信で信用するという研究結果も付け加えています。トランプ陣営からすれば、トランプの「魔女狩り」ツイートこそがリスク回避戦術なのです。 

一般に伝えられているトランプ大統領の性格を考えれば、民主党が主張しているような思惑を持ち、それを周囲に漏らした可能性はあります。ただ、しばらくしてその考えを変えて、指示はせず、行動にも移さなかったのかもしれないです。

また、ゼレンスキー大統領に調査の見返りという条件を提示していたならば、多くの米国メディアが報道するように、トランプ大統領が偏執的な性格というのが本当であれば、から2カ月も黙って待っていることはできないでしょうし、要求を無視されてプライドを傷つけられた大統領がウクライナに武器を売る判断をすることはあり得ないでしょう。

結局のところ、現段階でトランプ大統領の弾劾が成功すると考えるのは、かなり困難だという結論に落ち着きます。

さらに、以前このブログでも掲載したように、米国では大統領の弾劾そのものがもともと難しいのです。その記事のリンクを以下に掲載します。

民主党へのしっぺ返しもあるトランプ弾劾調査―【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!

ニクソン大統領
詳細は、この記事をご覧いただく
民主的な選挙で選ばれた大統領を政治的な動機で糾弾し解任しようとする弾劾措置への反発は、米国民の間で従来から根強いものがありました。だからこそ民主党のペロシ議員は、昨年11月の中間選挙前も、「ロシア疑惑」が高まったそれ以前の時期でも、弾劾への動きには一貫して反対してきたのです。
さらに、この記事では、かつてニクソン大統領が弾劾されそうになって辞任したときのことも掲載しています。
ニクソン大統領のウォーターゲート事件がありましたが、あのときニクソン氏は、弾劾されそうになったため自ら辞任しました。 
なぜ弾劾されそうになったかと言うと、当時の共和党の議員が彼を見捨てたからです。そこで、これはもう万事休すだということで辞任したのです。
現状のトランプ大統領は、とてもそのようなことにはなりそうもありません。

これは、過去にもこのブログで述べたことですが、トランプ大統領を、ロシア疑惑と、ウクライナ疑惑の二回にわたって、弾劾しようとした米民主党は、相当追い詰められているるとみるべきです。

そうして、最近の米民主党は日本の野党に良く似てきたと思います。

トランプ政権の経済差政策は、特に雇用政策がうまくいっているし他の経済指標も悪くはありません。この点で、民主党はトランプ政権を批判できることはあまりありません。

さらに、安全保障に関しても同様です。 むしろ、オバマ政権では軍縮してきたため、米軍に負の遺産を残したのですが、トランプ政権がそれを立て直しつつある状況です。この点でも、民主党は共和党を批判できません。

さらには、中国への対峙は超党派で行われていることなので、民主党はこれを批判できません。

要するに、現状では米民主党は、あまり米共和党を批判することができないです。だから、トランプ氏個人の資質を問題としているのです。

米民主党ならびに米リベラルメディアは、トランプ氏は政治家としての資質がないことを喧伝してきましたが、彼らの忘れていることがあります。

それは、多くの米国民はオバマやクリントンなどの、既存の政治家には失望したからこそ、生粋の政治家ではない実業家のトランプ氏を選んだのです。

生粋の実業家であれば、既存の政治家や、政治家とは反りが合わないのは当然のことです。実業家では、いわゆる朝令暮改は当たり前のことです。朝に正しいと考えていたことを、夕方には改めることは良くあることです。そうでなければ、企業は厳しい環境を生き抜いていけません。既存の政治家や、官僚にはできない芸当です。

このような資質は、ティラーソン前国務長官を筆頭に、トランプ政権を去った人々の多くには、いい加減な人間だと写ったのかもしれません。さらに、このような資質は、民主党や米リベラル・メディアにとっても、格好の攻撃材料だったに違いありません。

しかし、いくらトランプ氏の資質を煽ったところで、トランプ氏は一向に動じる気配がないため、米民主党はとうとう禁じ手ともいえる、大統領弾劾に動き出したのです。それも、二度もです。

この動きは、日本の野党にも似たところがあります。日本の野党は、「もりかけ」問題に拘泥しましたが、これは最初から、倒閣に結びつけようというのは、無理筋というものでした。

現在は、「桜を見る会」をやり玉にあげていますが、これも無理筋でしょう。しかし、日本のリベラル・メディアはここぞとばかり、安倍政権を批判していますが、これも倒閣には結びつけようもありません。「桜を見る会」を野党とメディアが糾弾しはじめてから、安倍政権の支持率があがるという始末です。



これは、米民主党が、トランプ氏への弾劾の動きを強めた途端にトランプ大統領の支持率が上がったことと、良く似ています。

それでも、米民主党のほうが、まだましかもしれません。なぜなら、安倍政権は、トランプ政権と比較すると、増税するなど経済政策はトランプ政権の逆をやっており、安全保障、外交でも習近平を国賓として招くというような米国と比べると信じがたいことをしています。

言ってみれば、現在の安倍政権は、残念ながらつつきどころは満載です。もし、米民主党が日本の野党だとしたら、勢いづき、安倍政権を批判するだけでなく、様々な政策論争を展開してるでしょう。特に、米国と比較するとまるで、一大政治集団のように振る舞う財務省を徹底的に批判することでしょう。

しかし、日本の野党はそのようなことはせずに、「桜を見る会」をやり玉にあげています。これでは、万年野党の地位を打開することなど、永遠にできないでしょう。情けない限りです。

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2023年4月5日水曜日

トランプ氏、法廷で無罪主張 34の罪状も「違法なことは何もしていない」「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」―【私の論評】起訴でかなり有利になりつつあるトランプの大統領選戦(゚д゚)!

トランプ氏、法廷で無罪主張 34の罪状も「違法なことは何もしていない」「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」

4日、罪状認否のため、米ニューヨークの裁判所に出廷したトランプ前大統領

 米ニューヨーク州の大陪審に起訴されたトランプ前大統領(76)は4日午後(日本時間5日未明)、ニューヨーク市内の裁判所で罪状認否に臨んだ。ビジネス記録を改竄(かいざん)したなどとして34の罪状に問われたが全て無罪を主張した。トランプ氏はSNSで「違法なことは何もしていない」と主張した。

 トランプ氏は2016年大統領選の投票日の直前、一族企業の弁護士を通じて、不倫相手のポルノ女優に13万ドル(約1700万円)を支払ったとされる。起訴内容によると、自らの当選に不利になる情報を有権者に隠す目的で、一族企業の事業記録を繰り返し改竄したという。

 捜査責任者のブラッグ地方検事は記者会見で「16年大統領選の公正さを損なう行為だ」と述べた。ただ、ブラッグ氏は民主党候補として地方検事選に当選しており、トランプ氏は、検察の捜査は「政治的迫害だ」と訴えてきた。

 ロイターによると、罪状を合わせると100年を超える懲役刑となるが、有罪になっても実際の懲役刑ははるかに短くなる公算が大きい。また、有罪の場合も大統領選に出馬可能との見方も強い。

 政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日時点の共和党候補の各社世論調査の平均支持率は、トランプ氏が50・8%で2位のデサンティス氏(24・6%)を引き離している。

 罪状認否を終えたトランプ氏は、プライベートジェット機でフロリダ州の私邸マールアラーゴに戻って支持者らを前に演説した。トランプ氏は「犯罪者は大陪審の情報をリークした検事の方だ」「これは捜査ではなく迫害だ」と強調した。

【私の論評】起訴でかなり有利になりつつあるトランプの大統領選挙戦(゚д゚)!

以下に検察に出頭したトランプ前大統領の演説を同時通訳付きノーカットで掲載します。同時通訳つきです。


トランプ前大統領の起訴は、前代未聞の出来事です。ニューヨーク州の大陪審がトランプ前大統領を起訴したのです。アメリカの歴史上、大統領経験者が起訴されるのは初めてです。

マンハッタンにある司法当局の前には多くのメディアが駆け付けました。米メディアだけでなく、世界各国のメディアが詰め掛けました。

マンハッタン地区検察は2016年の大統領選に絡み、トランプ前大統領の捜査を続けてきました。不倫関係にあったと主張する元ポルノ女優に対する口止め料の支払いと、そのもみ消しを図った疑惑の捜査です。

トランプ前大統領は大統領選の直前、不倫関係が明らかになることを懸念し、ダニエルズさんに13万ドル、日本円にしておよそ1700万円を支払った疑いが掛けられています。大陪審の決定を受け、トランプ前大統領は声明を出しました。

 トランプ前大統領の声明:「これは歴史上、最大レベルの政治的迫害と選挙妨害だ」

一方、米・メディアによると、ニューヨーク市警はすべての警察官に対し「制服着用のうえ、31日の午前7時に出勤するよう」命じました。

ニューヨーク市警が警戒するのは、トランプ支持者による連邦議会襲撃の再来です。トランプ前大統領の別荘近くには支持者らが集まっていました。

 トランプ支持者:「こんな告発が本当にまかり通ると思うの?本当に年を取った馬面の嘘で、トランプ氏を大統領選から排除できると思うの?ほんの一瞬でも信じられません」

支持者が発した馬面という言葉。トランプ前大統領が不倫相手とされる女性を揶揄(やゆ)した表現です。

 トランプ前大統領:「馬面を好きになったことなどない。ひどいってほどじゃないが、そんなことはありえない。我々には素晴らしいファーストレディーがいる」

起訴を歓迎する声も聞かれました。

人類史上、経験がないので今後どう展開するかは、まるでシナリオのないドラマです。劇場型の政治の幕がトランプ氏ではなく、民主党側から切って落とされたという状況といえると思います。ドナルド・トランプ前米大統領は4日、ニューヨーク・マンハッタン地区の刑事裁判所で罪状認否に臨み、無罪を主張しました。

その直後に公開された起訴状によると、トランプは3人の女性との不倫関係を隠すために行った一連の口止め料支払いをめぐり、重罪となる第一級ビジネス記録改ざん34件の罪に問われています。

捜査を指揮したNY州のマンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事は2021年初めの選挙でマンハッタン地区の主任検事に選ばれましたが、選挙戦では一貫して「自分が検察官になれば必ずドナルド・トランプを有罪にする」と宣言していました。

NY州のマンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事

犯罪の裏付けの前に、まず特定人物への法的懲罰を公約にしていたのです。またブラッグ氏が選挙戦に際して、トランプ攻撃で知られる大富豪のジョージ・ソロス氏が100万ドルを寄付したリベラル派政治団体から42万ドルの献金を受けていたことも、共和党側からの非難の対象となっていました。

 実はスキャンダルの口止め料を払っただけでは違法にはならいため、この案件はブラッグ氏の前任の検事が捜査をしたものの途中で放棄しています。また7年前の口止め料の支払いは、たとえ違法部分を含んでいても時効となる可能性も高いです。 

ブラッグ検事は、おそらくトランプ氏側が口止め料支払いに伴い、選挙活動やビジネスの資金の流れの記録を改ざんしたことや、真実を述べないことなどを「重罪」扱いする見通しが強いですが、共和党側からすればこれは列記とした政治的捜査となります。

トランプ前大統領は来年の大統領選への出馬を表明していますが。こうした問題を逆手に取って自分の支持者、共和党の支持者たちをも巻き込んで熱狂を巻き起こして、さらに寄付金も豊富に集めて、今後の大統領選挙の勢いにこれを変えていこうとしています。

実際、イーロン・マスク氏は以下のようにツイートしていました。


マスク氏は、トランプ前大統領が逮捕された場合、彼は「地滑り的に再選されるだろう」と予測しているのです。

トランプ前大統領が起訴されることで、選挙戦が有利になると考える人は、以下のようなことを論拠としているとみられます。

彼の支持層を結集させることができる: トランプ氏の支持者の中には、起訴を政治的動機に基づく攻撃とみなし、選挙戦でトランプ氏を支持する気運が高まる可能性があります。また、支持者の中には、起訴を政治的な意図による攻撃とみなし、選挙戦での支持を強める可能性があります。

他の問題から目をそらす可能性: トランプ氏が起訴されれば、メディアや世間は法的手続きに集中し、他の候補者が掲げている問題には目を向けなくなるかもしれません。これにより、他の候補者から注目を集めることで、トランプ氏が有利になる可能性があります。

彼を被害者として見せることができる: トランプ氏はこれまで、自らを魔女狩りの被害者として描いてきましたが、起訴されれば、このイメージをさらに強めることができます。トランプ氏は、自らを魔女狩りの被害者として描いており、起訴されれば、このイメージをさらに強めることができるでしょう。

このような傾向は、すでにみられています。

たとえば、上の記事にもある通り、政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、4日時点の共和党候補の各社世論調査の平均支持率は、トランプ氏が50.8%で2位のデサンティス氏(24.6%)を引き離しています。

起訴が決まる前の米クイニピアック大学の世論調査によれば、共和党の指名争いではトランプがデサンティスを46%対32%でリードしていました。トランプ起訴によって、その差がさらに広まりました。

デサンテスの支持率が低いのは、ウクライナ戦争の見方によるものとみられています。デサンティス・フロリダ州知事のウクライナ戦争についての発言が物議を醸していました。米ワシントンポスト紙コラムニストのヘンリー・オルセンは、3月16日付の論説‘Ron DeSantis’s stance on Ukraine is a serious political blunder’で、「ウクライナ戦争でウクライナを支援してロシアに対抗することは米国の国家利益ではない」とするデサンティスの立場は政治的失策である、と論じています。

実際、このような考え方が、共和党の大勢を占めていた時期もあります。しかし、ウクライナ戦争が長引いた最近ではそれも変わっています。

トランプ氏は、このような問題に関しては、柔軟に対応できますし、過去にもそうしてきました。たとえば、選挙戦においては「アメリカ・ファースト」などといい、米国が世界から孤立する道を選ぶのではないかと危惧されながら、実際に蓋をあけてみると、かなりまともな外交を実践していました。

共和党内で、有利に選挙戦をすすめてきた、トランプ氏は今回の起訴で、さらに民主党に対しても有利になるとみられます。

日本のマスメディアはなぜか反トランプ報道一色ですが、それが一方に偏した魔女狩り的なものになっているかもしれないとの視点を、持つべきです。

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