日米豪印首脳会合に臨む(左から)オーストラリアのアルバニージー首相、バイデン米大統領、 岸田文雄首相、インドのモディ首相=24日午前、首相官邸 |
中国外務省アジア局長が24日夜、日本の駐中国特命全権公使を呼び出した。
日本側は「一方的な中国側の行動に対して懸念を表明し、適切な行動を強く求めた」と明らかにした。また中国とロシアの爆撃機が24日に日本周辺を共同飛行したことに対し重大な懸念も伝えた。中国側は「正常な活動で、どの国も対象にしていない」と応じたという。
にもかかわらず、これに対して中国がなぜこのような反応を示すのでしょうか。
それは、中国がQuadがいずれNATOのような軍事同盟になることを恐れているからでしょう。一方で中国は、バイデン大統領が日本に来てからの一連の動きや、台湾問題も含めて、クアッドに対しては神経を使っています。
中国と共同飛行した爆撃機と同型のロシアのTU95爆撃機 |
中国は、以前は日本を見下していました。実際に、1994 年中国の当時の李鵬首相が、オーストラリアを訪問した時に、当時の オーストラリアのジョン・ハワード首相に向かって 「い まの日本の繁栄は一時的なものであだ花です。 その繁栄を創ってきた世代の日本人がもう すぐこの世からいなくなりますから、20 年もしたら国として存在していないのではないで しょうか。 中国か韓国、 あるいは朝鮮の属国にでもなっているかもしれません」 という 発言をしました。
ただ、インド太平洋地域には、懸念材料もあります。
中国の王毅外相は、4月に安全保障協定を締結した南太平洋のソロモン諸島を訪問し、両国関係を強化し「中国と島しょ国との協力の手本にしたい」と強調しました。
王毅外相は今月26日、8カ国歴訪の最初の訪問国となるソロモン諸島でソガバレ首相らと会談し「ソロモン諸島の主権と安全、領土保全を断固支持する」と述べ、「できる限りのあらゆる支援を行う」とアピールしました。
また、マネレ外相との会談では両国関係を「中国と島しょ国との協力の手本にしたい」と強調し、ソロモンとの協力関係を他の南太平洋の島しょ国にも広げる考えを示しました。「中国の軍事基地を建設する意図はない」と強調しました。また、協定はソロモン諸島の治安能力を高めるのが目的で、他の国と対抗するためのものではないと説明しました。
周辺国などからの中国の軍事拠点化が進むとの懸念をあえて否定した形です。
ソガバレ首相はまた、「一つの中国」原則を堅持すると述べ、台湾問題で中国政府の立場を指示する姿勢を示しました。
ソロモン諸島、中国が治安支援 警察関係者受け入れ―【私の論評】一人ひとりの国民が豊かになるために、ソロモン諸島は、民主的な道を歩むべき(゚д゚)!
ソロモン諸島の海岸 |
中国は、国全体では、GDPは世界第二といわれていますが、個人ベース(個人所得≒一人あたりのGDP)ではこの程度(10000ドル、日本円で100万円程度) です。そのため、以前このブログで中東欧諸国と中国の関係に関して述べたように、中国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無なのです。
そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。
一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。
ただ、中国は独裁者やそれに追随する一部の富裕層が儲けるノウハウを持っているのは確かであり、ソロモン諸島の為政者が、独裁者となり自分とこれに追随する富裕層が大儲けするという道を選ぶ可能性はあります。
ただ、一人ひとりの国民が豊かになる道を選びたいなら、やはり民主的な国家を目指すべきです。その場合は、急速に民主化をすすめた台湾が参考になります。このブログにも何回か掲載したように、先進国が豊かになったのは、民主化をすすめたからです。民主化をすすめなかった国は、たとえ経済発展しても、10000万ドル前後あたりで頭打ちになります。これは、中進国の罠と呼ばれています。
Quadが今より軍事的な色合いを深めたり、日豪印などが、NATOに加入するようなことがあったとすれば、中国もソロモン諸島などと構築する枠組みを軍事的なものにして、ソロモン諸島に中国の軍事基地をつくるかもしれません。
しかし、考えてみてください。Quadに比較すれば、中国がたとえこれに対抗するするためにインド太平洋で新たな枠組みを作ったとします。それにいくつかの国が加入するかもしれません。たとえば、仏領ニューカレドニアが独立して、この枠組みに参加するかもしれません。しかし、ニューカレドニアの一人あたりのGDPは中国を超えており、東欧諸国がそうであったように、結局中国からはなれていくことでしょう。
そうして、残るは一人あたりのGDPが10000万ドル前後以下の貧乏国にばかりになります。これはロシアなど旧ソ連6カ国でつくる軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)に所属している国々を想起させます。これらの国々の首脳会議が16日、モスクワで開かれました。
ザシ事務局長によると、ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻について説明したのですが、CSTOの侵攻への参加は議論されなかったといいます。同盟強化を目指すロシアに対し、加盟国間の思惑の違いも取りざたされており、ロシアの孤立が浮き彫りになりました。ちなみに、CSTOの加盟国はロシア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アルメニアです。これらの国々の共通点は、ロシアも含めて一人あたりのGDPが10000万ドル前後よりも低いということです。ロシアだけが、10,126.72ドルですが、それにしてもこれからは、これを下回ることはあっても伸びる見込みはありません。