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2018年4月25日水曜日

北朝鮮に騙されるな! 核兵器開発は完了した―【私の論評】北朝鮮だけでなく米国も時間稼ぎをしてきたという現実を見逃すな(゚д゚)!

北朝鮮に騙されるな! 核兵器開発は完了した

米国の朝鮮半島専門家が明かす北朝鮮の悪魔の交渉術



北朝鮮の国旗


 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が4月20日、核兵器や長距離ミサイルの実験中止を宣言した。日本や米国を含む国際社会の大方は、北朝鮮の核兵器破棄、つまり非核化が前進するとして、この宣言を歓迎している。

 しかし、現実はまったく違うと強調したい。北朝鮮の声明をざっと読むだけでも、実は核武装の完成の宣言であることがすぐに分かる。「核の兵器化」が完了したから、核実験は中止すると述べているのだ。非核化とは正反対の宣言なのである。

 北朝鮮のこうした言動と国際社会の反応をみると、これまでの北朝鮮の欺瞞の交渉術の巧みさが想起される。1990年代以来、ワシントンで北朝鮮の核武装と米国の反応を取材し報道してきた私にとっては、不吉な予感さえ覚えさせられるのだ。

宣言の中身は「核の兵器化の完結」

 北朝鮮の今回の核実験中止宣言は、核兵器の放棄にはなにも触れていない。非核についてはまったく言及していないのだ。

 金正恩委員長の報告は、冒頭に近い部分で以下のように述べていた。

「核戦力の建設を5年に満たない短期間に達成した勝利は、並進路線の偉大な勝利である。(中略) 経済と核建設を並進させる路線が示した課題が貫徹された。

 核開発の全工程が、科学的に、順次行われたし、運搬攻撃手段の開発も科学的に行われ、核の兵器化の完結が検証された」

 また、同時に発表された北朝鮮労働党中央委員会総会の決定書要旨には、次の記述があった。

「並進路線の過程で核実験や運搬手段(弾道ミサイル)開発の事業を順次行い、核の兵器化を実現したことを厳粛に宣言する」

 要するに、北朝鮮は「核の兵器化の完結」を宣言したのである。だからもう核の実験も長距離弾道ミサイルの実験も必要がないということなのだ。これは非核化とは正反対の宣言である。米国が期待する北朝鮮の核兵器の「完全で検証可能で不可逆的な破棄」とはまったく逆なのだ。

 北朝鮮の核問題に関する表明や誓約が虚構であり、欺瞞だった実例はこれまでにもあった。1994年の米朝核枠組み合意では、核放棄をはっきり約束しながら密かにウラニウムでの核爆弾製造を続けていた。また、2005年には6カ国協議で「すべての核兵器と核計画を放棄する」ことを公約しながら、その直後に北朝鮮当局は「軽水炉の提供がなければ、核放棄は論じられない」という逆転の声明を発している。

繰り返される「悪魔のサイクル」

 こうした北朝鮮の過去の言動パターンを踏まえて今回の展開を見ていると、以下のような論評を思い出した。

「北朝鮮は得たいものを得るために、協定や条約を結ぶことではなく、そのための前段階の交渉プロセスから利益を引き出す」

 この言葉は、米国政府を代表して北朝鮮との裏交渉に長年かかわったチャック・ダウンズ氏の2005年のコメントである。前記の6カ国協議での北朝鮮の誓約破りを考察して発せられた論評だった。

チャック・ダウンズ氏

 ダウンズ氏は国防総省などの政府機関での活動のほか、民間の「北朝鮮人権委員会」のトップも務めた朝鮮半島情勢の専門家である。私がダウンズ氏のこの言葉を想起したのは、今の状況がこの「前段階の交渉プロセス」に合致するからだ。

 周知のように金正恩委員長はまもなく韓国の大統領との南北会談と、米国大統領との米朝会談に臨む姿勢をみせている。その両首脳会談に備えての水面下の「前段階の交渉プロセス」が、まさに今なのだ。

 ダウンズ氏は1990年代末に『北朝鮮の交渉術』という本を出している。そのなかで北朝鮮の対外交渉術として、相手に「楽観」「幻滅」「失望」という心理状態を順番に抱かせる「悪魔のサイクル」という特徴を指摘していた。

 悪魔のサイクルについて同氏は次のように説明する。

 「北朝鮮は自国の政策の基本が変化したように振る舞い、相手国に有利となりそうな寛容な態度を示唆する。相手が楽観へと転じ前に出てくると、自国が欲する制裁解除や経済援助を取りつける。だが、その後に態度を急変させ、相手を幻滅させる。北朝鮮はさらに交渉の事実上の打ち切りまでに至り、相手を失望させる。相手は最悪の状態のなかで、やがてまた北朝鮮の軟化を期待し、楽観への道を歩むことになる」

 簡単にいえば、相手を揺さぶって、騙し、取りたいものだけを取るという、したたかな交渉術だというのだった。

 ダウンズ氏がこうした考察を私に語ってからすでに十余年経ったが、また同じ歴史が繰り返されようとしているということだ。北朝鮮への楽観が生まれつつある今の日本でも、さらには米国でも念頭に入れておくべき分析だろう。

【私の論評】北朝鮮だけでなく米国も時間稼ぎをしてきたという現実を見逃すな(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、古森氏が主張する"宣言の中身は「核の兵器化の完結」"という読みは全く正しいと思います。

これに関しては、この記事でも同じ読みを掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮が核実験場を廃棄、ICBM発射中止 党中央委総会で決定―【私の論評】米朝首脳会談は決裂するか、最初から開催されない可能性が高まった(゚д゚)!
20日、平壌で開かれた朝鮮労働党の中央委員会総会で挙手する金正恩党委員長

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では朝鮮労働党の中央委員会総会での核に関する決定を以下のように解釈しました。
① 核の兵器化が完結した現在、検証はすでに終了している。当面は、もう実験の必要はない。 
② 従って発射実験は不要。核実験場も閉鎖する。
 もう、核兵器は実戦配備ずみなので、当面実験の必要もなく、発射実験は不要であり、核実験場の閉鎖するということです。

金正恩の発言は、このようにしか受取りようがありません。日本や米国を含む国際社会の大方は、北朝鮮の核兵器破棄、つまり非核化が前進するとして、この宣言を歓迎しているというのは大きな間違いです。

どうしてこのようなことになるかといえば、もうすでに、日米特に日米の世論は北朝鮮の悪魔のサイクルに取り込まれつつあるからでしょう。

そうして、この記事では、以下のような結論を下しました。
私の感触では、これでさらに米朝首脳会談は決裂するか、そもそも最初から開催されない可能性が高まったと思います。それに続く日朝会談も同じ運命をたどるかもしれません。
トランプ政権は当然のことながら、過去に何度もだまされてきたのですから、いわゆる悪魔のサイクルについても気づいているでしょう。

だまされたふりをして、北朝鮮の様子を探っているというのが、事実でしょう。米国は北朝鮮がリビア方式の核廃棄に応じない限り、制裁をさらに強化するか、軍事攻撃も辞さない構えです。

リビア方式で北朝鮮が、核を廃棄することを確約し、実際にそれを実行しているところを何らかの方式で直接監視出来ない限り、米国は一切妥協しないでしょう。それに対して、金正恩は核を廃棄するつもりは全くありません。だから、悪魔のサイクルをまわして、米国を籠絡しようとするでしょう。

しかし、トランプ政権はその籠絡には乗らず、核放棄を米国の監視下で行う以外には、核放棄をしたとはみなさないと宣言することでしょう。

これは、もう水と油です。どこかで決裂するのは目にみえています。米国は制裁強化を続け、北朝鮮の体制を崩壊に導くか、それで崩壊しなければ、まずは爆撃等により核関連施設を破壊することになるでしょう。

北朝鮮は、自分たちが時間稼ぎをしているつもりでいるかもしれませんが、同時に米国も時間稼ぎをしているということを忘れているかもしれません。

米国の時間稼ぎとは何かといえば、戦争に突入するための準備のための時間稼ぎです。

いま、米海軍全体の6割の艦船が西太平洋に展開しています。

嘉手納、横田、三沢、岩国、そして韓国・烏山の米軍基地は輸送機、戦闘機、戦略爆撃機で満杯になっています。空爆が近づいている証拠です。

攻撃の直前に、どうしてもやらなければならないのは国連決議です。総会決議までは無理でも、40〜50カ国が参加する拡大安保理で「北朝鮮の核・ミサイル開発は世界の脅威だから軍事行動をとる」と決議することになるでしょう。

そうして、米国の最初の攻撃は、ラージ・ウォー(大きな戦争)にはならないでしょう。マネージド・スモール・ウォー(管理された小さな戦争)を急いでやって、アメリカはさっさと撤退し、被害を最小限度にすることでしょう。

アメリカのマティス国防長官は、「ソウルや東京に被害が発生しない、民間人が犠牲にならない作戦計画はある」と断言していました。実際、米国はそのような戦争を実行するでしょう。

現在の戦争は最先端の電子攪乱戦です。サージカル・アタック(外科手術的攻撃)といいますが、外科手術の前に麻酔を打つように、北朝鮮の通信網、コンピュータ・ネットワーク、そして電力施設を麻痺させてから空爆に踏み切ることになるでしょう。

北に、反撃の余力はありません。まずは、通常の先進国にみられる、防空体制というものが北朝鮮にはありません。迎撃機も旧式です。米国の空爆、ミサイル攻撃に対して北朝鮮はなすすべがないでしょう。

米軍は最初から最大のサルボー・ファイヤー(一斉爆撃)をかけることになるでしょう。2000発以上のトマホーク巡航ミサイルで核関連施設をはじめ、700カ所以上のターゲットをピンポイント攻撃することになるでしょう。

標的情報は偵察衛星、U-2偵察機、最先端の無人偵察機グローバルホークで24時間監視しています。さらにエシュロン(通信傍受システム)で北朝鮮の有線・無線の通信を傍聴して暗号解読までしています。まさに、この体制を築くために米国は時間稼ぎをしていたのです。これによって、米国のサージカル・アタックが可能になるのです。

ポンペオ氏

ポンペオ国務長官が、CIA長官であったときの今年1月23日、ワシントン市内の政策研究機関で講演しました。ポンペオ氏は北朝鮮の金正恩体制による核・弾道ミサイル開発の目的について、米国からの抑止力確保や体制維持にとどまらず、「自らの主導による朝鮮半島の再統一という究極の目標に向けて核兵器を活用しようとしている」との認識を明らかにしました。

ポンペオ氏は、もし北朝鮮が米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に成功したとすれば、「次なる必然的な段階」は、北朝鮮がICBMを量産して「複数発を米本土に同時に発射できる能力を確保することだ」と指摘しました。

また、北朝鮮によるミサイル開発の進展状況について、「ほんの数カ月先」に米本土を攻撃可能になるとの認識を示しました。その上で「私たちは、今から1年後も『北朝鮮が米本土攻撃能力を確保するのは数カ月先だ』と言うことができるように取り組むことだ」と述べ、外交や制裁圧力などを通じて北朝鮮にさらなる核実験やミサイル発射に踏み切らせないようにする方針を示唆しました。

同氏はさらに、米情報機関による北朝鮮関連の情報収集能力がこの1年間で大幅に向上していると強調しました。

この発言からもわかるように、米国も過去1年間時間稼ぎをしていたのです。だからこそ、過去においては空母打撃群を3つ同時に朝鮮半島沖に派遣したりして、圧力をかけたのですが、軍事攻撃にはいたらなかったのです。

この時間稼ぎをせずに、すぐに軍事攻撃をしていたら、大きな戦争になりそれこそ韓国や日本にも大きな被害がでるとともに、北の軍事力が温存され泥沼化していたかもしれません。それを防ぐために、時間稼ぎをしてきたのです。

この時間稼ぎによって得られた情報そのものや、情報収集能力は一般人の想像をはるかに超えたものになっていると思います。核関連施設の位置はもとより、通信施設の場所や、インフラ関連情報、武器や人員の配置などを含め、ありとあらゆる情報が蓄積されるだけでなく、日々更新されていることでしょう。

今の米国は、北朝鮮をサイバー攻撃によって、北朝鮮社会を機能不全に陥れることも可能だと思います。機能不全に陥ったところをピンポイントで攻撃して、核関連施設のすべてを破壊することも可能です。

今後の米朝の交渉にもよりますが、ポンペオ氏の発言からも、まさに夏くらまでに、米国が北朝鮮を軍事攻撃するような事態が生じても全くおかしなことではないといえます。

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2018年5月20日日曜日

北非核化へ「リビア方式」ならぬ「トランプ方式」浮上 藤井氏「北朝鮮は墓穴を掘った」―【私の論評】金正恩の判断一つで、金王朝の運命が決まる(゚д゚)!

北非核化へ「リビア方式」ならぬ「トランプ方式」浮上 藤井氏「北朝鮮は墓穴を掘った」

トランプ氏の北朝鮮への圧力はさらに強まるか  写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の「完全非核化」に向け、ドナルド・トランプ米政権が新たに「トランプ方式」を打ち出した。これまで、リビアのカダフィ政権から大量破壊兵器放棄を勝ち取った「リビア方式」が提唱されていたが、北朝鮮が猛反発していた。ただ、専門家は、核開発能力を奪う点では変わりはないとの見方を示している。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権は確実に追い込まれつつある。

 「われわれが北朝鮮について考えるとき、リビア方式はモデルとはしない。(北朝鮮に適用する方式では)正恩氏が国を運営し、国家はとても豊かになるだろう」

 トランプ大統領は17日(米国時間)、記者団にこう語った。サラ・サンダース大統領報道官も前日、「非核化に向けた定型の方式があるわけではない。これはトランプ大統領方式だ」と述べた。

 核放棄を果たした後に見返りを与える「リビア方式」については、「死に神」の異名を持つ、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が北朝鮮への適用に意欲を示していた。

死神の異名を持つジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

 しかし、正恩氏側は体制崩壊の恐怖から反発を強めた。リビアの独裁者、カダフィ大佐は核放棄後、反体制派に殺害されている。北朝鮮は、6月12日にシンガポールで予定されている米朝首脳会談中止の可能性を示唆し、ボルトン氏を名指しで批判する談話も出した。

 「リビア方式」に変わる「トランプ方式」はどのような内容なのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「北朝鮮の核爆発装置を取り上げるだけではなく、核開発能力を奪うことに関しては『リビア方式』と同じだろう。リビアの場合、カダフィ大佐が殺されたということもあり、北朝鮮が気も悪くするので、それを気遣った表現ではないか。期間などで若干の柔軟性はあるかもしれない」と語る。

 トランプ政権が「リビア方式」にこだわらない姿勢を示したことで、一部メディアでは「北朝鮮に妥協する恐れがある」との見方も出ている。

 だが、藤井氏は「北朝鮮は自ら墓穴を掘った。今回の対応は、トランプ氏の顔に泥を塗ったことになる。北朝鮮の恫喝(どうかつ)は、米国、トランプ氏には通じない。トランプ氏の北朝鮮に対する目は余計厳しくなったはずだ」と否定した。

【私の論評】今後の金正恩の判断一つで、金王朝の運命が決まる(゚д゚)!

米国は北朝鮮の核放棄に関しては「リビア方式」を求めてきていました。これは、十分可能なはずです。ロシア等の後ろ盾のいなかったリビアでは核放棄後に、最高指導者のカダフィ氏が殺害されましたが、北朝鮮の場合、中国が後ろ盾にいるため、リビアの二の舞いはないと考えられます。
カダフィ大佐と、カダフィー・ガールズと呼ばれた
カダフィーの身辺警護の女性たち

ただし、中国は対米貿易交渉で、対米黒字を1年間で2000億ドル(約22兆円)も減少させることを要求されるなど理不尽な二国間交渉を強いられていますが、自国有利のために北朝鮮を「売る」ことも考えられます。
ただし「売る」相手は米国なのですから、そうなれば米国は北朝鮮の後ろ盾のような役回りをせざるをえなくなるわけですから、いずれにしてもリビアとは状況が同じです。
それに、北朝鮮からすれば、中国が仮に北を米国に売ろうとした場合、北朝鮮の建国にかかわったソ連後継者であるロシアに後ろ盾になってもらうことも考えられます。この点でも、リビアとは異なるわけです。
さらに、リビアには強力な反政府勢力がいましたが、北朝鮮にはそのような勢力が国内にあるわけではないですから、やはりリビアとは状況が異なるわけです。
以上のようにリビア方式に難色を示すのは、ある意味全く北朝鮮、金正恩の都合にすぎないわけであり、このようなことにトランプ政権が左右されるはずもありません。
もし、金正恩がリビアのカダフィ大佐と同じような運命をたどるとしたら、米軍による斬首しかありません。
それに、トランプ米大統領は北朝鮮の揺さぶりを「会談が実現しなければ次のステップへいく」と切り捨てました。次のステップとは軍事オプションです。このため北朝鮮にとって「米朝首脳会談を蹴る」選択肢は限りなくゼロに近くなったと見るべきです。

また今回の北朝鮮の瀬戸際外交は歴代米政府による「不名誉な過去」を想起させ、過去との決別を宣言しているトランプ政府を結束させたようです。一方、日朝関係者の間では、「米朝首脳会談の後に日朝首脳会談も視野に入った」との情報が出始めています。

北朝鮮側が米朝首脳会談の席につかないまま会談自体を拒否すれば、米政権が「次のステップ」に進むことが明白になったことで金正恩氏に首脳会談を蹴る選択肢はなくなりました。

非核化をめぐって米朝が決裂すれば、日朝会談の実現は困難になりますが、継続協議ならば日朝首脳会談が開催される可能性は高いです。日本にとっては拉致問題が最優先ですが、北朝鮮は日本との『過去の清算』が大きいです。

金正恩氏は4月末の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領に「いつでも日本と対話する用意がある」と応じました。しかし、その後も北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判を続けています。

さらに今月12日、唐突に『この世の万事は決して日本の欲望に従うものではない』(朝鮮中央通信)との論評を発表、日本の拉致問題について「解決済み」との立場を強調しました。拉致問題についての言及は今年1月24日以来で、注目されました。論評では加藤勝信拉致担当相や菅義偉官房長官も批判しました。

金正恩氏は4月末の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領に「いつでも日本と対話する用意がある」と応じました。だが、その後も北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判を続けています。

北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判

さらに今月12日、唐突に『この世の万事は決して日本の欲望に従うものではない』(朝鮮中央通信)との論評を発表、日本の拉致問題について「解決済み」との立場を強調しました。拉致問題についての言及は今年1月24日以来で、注目されました。論評では加藤勝信拉致担当相や菅義偉官房長官も批判しました。

しかし、北朝鮮が全く日朝交渉に興味がないのなら、そもそも日本について言及する必要性などないはずです。これは、いま日本を攻撃することにより、日本国内にある「バスに乗り遅れる論」や「日本だけカヤの外」といった安倍政権批判に乗じ、日朝交渉のハードルを意図して意識して上げているとしかとりようがありません。これは北朝鮮が得意とする心理戦の常套手段です。

朝鮮中央通信の12日の論評でも「過去の清算だけが日本の未来を保証する」と国交正常化交渉への期待を顕にしています。

トランプ大統領は米朝首脳会談で日本の拉致問題を取り上げる意向を示しており、米朝首脳会談と日朝首脳会談は連携して進む可能性もあります。

北朝鮮の体制は共産主義と名ばかりで、実体は金王朝である

いずれにせよ、北朝鮮は金正恩の判断一つで、米軍に斬首されて金王朝が絶たれるか、存続できるかの分水嶺にあることだけは確かです。

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2019年1月21日月曜日

照射問題に見る韓国軍艦の不自然な行動 文在寅氏は北朝鮮の言いなりか―【私の論評】南北統一の虚妄より、北の核が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいることに注目せよ(゚д゚)!

照射問題に見る韓国軍艦の不自然な行動 文在寅氏は北朝鮮の言いなりか




レーダー照射問題:韓国軍艦のとった不自然な行動

 日本の排他的経済水域内で、北朝鮮の漁船らしき木造船を救助するのに、北朝鮮の海軍警備艇や民間船舶ではなく、韓国の軍艦・警備艦が向かった。

 北朝鮮は、排水量1000トン以上の貨物船などの民間船舶を170隻以上、フリゲート艦、コルベット艦、哨戒艦、高速艇および警備艇の海軍戦闘艦艇約200隻を保有している。

 これらの艦船が本来救出に来るべきなのだが、そうではなかった。

救助に派遣されたのは韓国の最新鋭艦

 1993年5月に、ノドンミサイルとみられる発射実験が行われた際に、その観測支援のためにフリゲート艦とコルベット艦の2隻が日本海に展開したことがある。

 本来、この木造船を救助する必要があるならば、今回もその当時と同様に、軍艦あるいは民間船舶を派遣するのが普通だろう。

 しかし、なぜか韓国が、韓国海洋警察の警備艇に加え、海軍駆逐艦までも派遣した。

 北朝鮮の木造船を捜索するため、派遣された警備艇の参峰号は、韓国最大で最新の警備艇(排水量約6300トン、韓国は2隻保有)だ。

 駆逐艦の広開土大王(クァンゲトデワン)は、韓国で最初に建造された駆逐艦で約4000トンだ。

 木造の小船を大型艦艇が挟み込んで救助しているというのは、常識ではあり得ない不思議な光景である。

 韓国の大型の軍艦と警備艇が、日本海の真ん中よりも日本に近い位置にいた木造船をしかもレーダーには映らない木造船をどのようにして発見したのか。それが疑問である。

北朝鮮のアナログステルス戦闘機

 詳しく説明すると、レーダー波を金属製の航空機に当てると電波が反射して戻ってくるが、木材の場合はレーダー波を反射しない。

 軍事専門家は、北朝鮮特殊部隊を空輸する木材と布で作られた輸送機「An-2」を、皮肉を込めて「アナログステルス戦闘機」と呼ぶ。

 この木造船がSOSの救助信号を発信した可能性もあるが、海上保安庁も海上自衛隊も確認していないという。

 韓国が発表した北朝鮮の木造船の映像をよく見ると、イカ釣り用の電球が並ぶ上に、前方のマストから後方のマストにかけて、AM通信(モールス通信)用のケーブルらしきものがかけられている。

韓国側が発表した映像から

 北朝鮮の木造船は、モールス通信を使用して本国に救助を依頼したのではないだろうか。

 また映像を見ると、その木造船は、沈みかけていない。漂流する原因は、燃料切れだと推測される。

 私は、韓国の大型艦は北朝鮮の木造船に燃料を渡していると判断している。
救助に向かう燃料がない北朝鮮

 韓国が、沈没しそうな木造船と漁民を救助しているというのならば、漁民を救助している写真やその木造船をロープで曳行している写真を発表すべきだろう。

 大きな疑惑がいくつも生じるのは当然のことである。

 私の推測では、北朝鮮の小型木造船は、燃料切れを起こし、本国に燃料補給の救助を求めた。

 だが、北朝鮮は漁船を救助するために、海軍警備艇や民間船舶を派遣するための燃料がない。

 また、海軍軍艦はポンコツで500キロも離れた日本海の中央まで移動して帰投することができない。

 このような理由から、北朝鮮金正恩委員長は、韓国に支援を依頼した。

 北朝鮮としては、金正恩委員長の要求を何でも聞き入れる文在寅大統領に頼めば、すぐに引き受けてくれるだろうという予想通りになった。

いまや金正恩の言いなり、文在寅大統領

 金正恩が頼めば、文大統領は「北朝鮮は非核化をします。国連制裁を解除すべきだ」と欧州諸国を駆けずり回る。

 「自国の漁船を救助してほしい」と頼めば、大型軍艦や警備艇を派遣する。韓国文在寅大統領は、いまや北朝鮮の言いなりのようだ。

 そのことと、南北の陸と海上の境界の障害が徐々に取り除かれていること、南北の融和行事などを合わせると、南北の統一は近いと見てほぼ間違いないのではないか。

 だが、その統一は韓国主導による連邦制ではなく、北朝鮮が韓国を呑みこむ占領という形で行われるのではないか考えられる。

(これについては、軍事情報戦略研究所朝鮮半島分析チーム「可能性が高くなりつつある北朝鮮による半島統一」『JBPress(2018年12月3日)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54805』で詳細に分析している)

【私の論評】南北統一の虚妄より、北の核が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいることに注目せよ(゚д゚)!

冒頭の記事では、南北統一のことがいわれています。そうして、その統一は韓国によるものではなく、北朝鮮による半島統一ということがいわれています。

このように多くのメディアで、南北統一が当然のようにいわていますが、南北統一は解決策なのでしょうか、あるいはそれこそが問題なのでしょうか。北朝鮮と韓国の最近の緊張緩和によって、1950年代から分断している南北の統一に新たな可能性が浮上しているのは事実です。

統一という言葉は、東西ドイツを隔てるベルリンの壁が崩壊して家族が再会し、軍が武装解除したときのことを思い起こさせます。

韓国と北朝鮮は平和的な統一を繰り返し訴え、韓国で開催された昨年の平昌冬季五輪では統一旗を掲げて共に入場行進を行いました。また最近にK─POP歌手らの一行が北朝鮮を訪問した際、彼らは北朝鮮人と手をつなぎ、「われらの願いは統一」を歌いました。

「少女時代」のソヒョンが、北朝鮮芸術団と共に感動のステージを披露し、話題を呼んだ。
2018年2月12日11日、国立劇場ヘオルム劇場で開催された北朝鮮芸術団「三池淵管弦楽団」
のソウル公演に、白いワンピースに身を包んだソヒョンがサプライズ登場。

ところが、70年にわたり緊張状態が続く朝鮮半島において、「統一」の理念ははますます複雑さを増し、非現実的だと考えられるようになりました。両国の格差がかつてないほど広がる中、少なくとも韓国ではそのように捉えられていると、専門家や当局者は言います。

韓国はテクノロジーが発達し、民主主義の下で活気に満ちた主要経済大国となりました。一方、北朝鮮は金一族の支配下にあり、個人の自由がほとんどない、貧しく孤立した国です。

1990年に再統一した東西ドイツとは異なり、朝鮮半島の分断はいまだ解決されていない同胞同士の内戦に基づいてます。韓国と北朝鮮は朝鮮戦争を終結するための平和条約に署名しておらず、お互いをまだ正式に認めていません。

過去には、北朝鮮の独裁政権が崩壊し、韓国に吸収されるという前提に基づいた統一計画を描く韓国の指導者もいました。しかしリベラルな文政権はそうしたアプローチを和らげ、最終的に統一へとつながるであろう和解と平和的共存を強調しています。

韓国では、統一を支持する世論も低下しています。韓国政府系シンクタンク・韓国統一研究院(KINU)の調査によると、2014年には70%近くが統一が必要と回答したのに対し、現在は58%に低下しています。1969年に政府が実施した別の調査では、90%が統一を支持すると答えていました。

統一にかかる費用は最大5兆ドル(約550兆円)と試算されており、そのほとんどが韓国の肩にのしかかることになります。

一昨年7月にベルリンで行ったスピーチの中で、文大統領は「朝鮮半島平和構想」について説明。北朝鮮の崩壊を望まない、吸収による統一を追求しない、人為的な方法による統一を追求しない、ことを明らかにしました。

「求めているのは平和だけだ」と、同大統領は語りました。

一昨年7月にベルリンでスピーチした、文大統領
両国とも、統一についてそれぞれの憲法で明記しており、北朝鮮は「国家の最重要課題」と表現しています。

韓国統一省のように、北朝鮮にも「祖国平和統一委員会」があります。北朝鮮からの報道を集めたウェブサイト「KCNAウオッチ」の記事をロイターが分析したところによると、国営メディアは2010年以降、統一について2700回以上言及しています。

北朝鮮は昨年1月、声明で「国内外にいる全ての朝鮮人」に共通の目的を目指すことを呼びかけ、「お互いの誤解と不信感を払拭(ふっしょく)し、全ての同胞が自身の責任と国家統一の原動力という役割を果たすべく、南北間における連絡や移動、協力や交流を広範囲で可能にしよう」と訴えました。

北朝鮮人は、韓国にいても北朝鮮にいても統一を支持しているようです。韓国にいる脱北者の95%以上が統一を支持すると回答しています。

北朝鮮「建国の父」である金日成主席は1993年、祖国統一のための「10大綱領」を発表。その中には、国境は開放しつつ、2つの政治体制を残す提案が含まれていました。

北朝鮮は1970年代まで、憲法でソウルを首都と主張していました。一方、韓国は現在に至るまで、北朝鮮に占拠されたままだとする「以北五道」に象徴的な知事を任命しています。

昨年4月25日、南北統一は解決策なのか、あるいはそれこそが問題なのか、北朝鮮と韓国の最近の緊張緩和によって、1950年代から分断している南北の統一に新たな可能性が浮上していました。

「統一は結局、非核化であろうと人権問題であろうと、あるいは、単に南北間で安定したコミュニケーションを築くことであろうと、喫緊の短期目標の多くを達成困難にする」と、韓国シンクタンク「峨山(アサン)政策研究所」のベン・フォーニー研究員は語りました。

開城(ケソン)工業団地

両国は、開城(ケソン)工業団地のような小規模の協力でさえ、問題にぶつかってきました。北朝鮮の核兵器開発を巡る緊張が高まる中、2016年に閉鎖されるまで、この工業団地では両国の労働者が共に働いていました。

最近では、両国は離散家族の連絡事業再開で合意には至りませんでした。

不信感は根強いです。朝鮮半島を支配するための長期計画の一環として、北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は核兵器を開発したと、一部の韓国人と米国人は信じ続けているようです。一方の北朝鮮は、韓国の駐留米軍について、金氏の転覆を狙った侵略部隊だと懸念しています。

1990年に東西ドイツが統一したとき、朝鮮半島のモデルになることを期待する向きもありました。

しかし、東西ドイツの場合は内戦を経験しておらず、東ドイツは北朝鮮と比べて国民に対する統制がはるかに弱かったと、元韓国統一省の当局者は2016年のリポートで指摘しました。さらに、東ドイツは核武装はしていませんでした。

最も大きな障害は、金正恩氏自身かもしれないです。平和的な統一に必要な妥協を受け入れる動機が、同氏にはほとんどないと専門家は言います。韓国も、同氏に実権を許すような取り決めに合意する可能性は低いです。

北朝鮮を独立国として、また米同盟国である韓国との間の緩衝地帯として維持することに、中国も既得権を有しています。

長期的に見れば、完全な統一を強硬に求めることを放棄すれば、両国は関係を修復できる可能性があると、朝鮮半島情勢について複数の著書があるマイケル・ブリーン氏は指摘しています。

「矛盾しているようだが、統一はある種、ロマンチックで、健全で、民族主義的な夢として考えられている」と同氏は言う。「だが実際には、問題の多くはそこから生じている」

そもそも、統一後を考えた場合、金正恩にとって、韓国人が1番のリスクになります。北朝鮮と違い韓国人には将軍様への敬意などはなく、気に入らなければデモとクーデターで彼を攻撃する存在に豹変します。結果、アラブの春以降のアラブや中東が再現されることになります。

北朝鮮の核とミサイル廃棄と南北統一は別問題です。 米国としては、本土に届き中東に渡る可能性がある核とミサイルは絶対許せないです。周辺諸国も北朝鮮の難民を望んでいないです。一方北朝鮮は、国の枠組みは変えたくないです。その金体制維持に最も邪魔なものは自由や人権、南北で人の往来が始まれば政権が脅かされることになります。

他国は朝鮮半島の統一を望んでいません。しかし、当事者間の問題であり、関与はしないだけのことです。 中国、ロシア、日本、米国、どこにも積極的なメリットはなく、投資リスクも大きいです。北朝鮮が今のまま、自由化を進める方がメリットが大きいし、衝突リスクも低いです。

それに、以前も述べたように、現在のように北が核を持っている状況は、中国の影響が半島に及ぶことを防いでいます。北の核は中国にとっても脅威なのです。そうして、北朝鮮は中国から完全独立を希求しています。韓国は、中国に従属する道を選びました。

この状況は、米国にとって良い状況です。ただし、北朝鮮が米国を脅かす核ミサイルを開発せず、開発したものがあれば、破棄し、中東に核を渡さないことを約束すれば、中国を睨む米国にとって現状は最善といっても良い状態です。

以上のようなことから、半島情勢をみるときには、南北統一が近いなどという見方はしないほうが良いでしょう。そんなことよりも、北朝鮮の核が結果として、半島への中国への浸透を防ぐ役割もしていることに注目すべきです。

北朝鮮が核を開発していなければ、今頃北朝鮮は中国の傀儡政権であったか、そこまでいかなくても、完璧に中国の意図に沿って動く国であったことは間違いないです。

その場合、韓国は中国の従属国ですから、統一は現状よりはやりやすかったと思います。ただし、統一とはいっても中国の傀儡国家として統一ということになるでしょう。日本としては、対馬のすぐ先が、中国の傀儡国家という状況になります。

それよりは、北により中国からの浸透が防がれてる状況のなかで、韓国が中途半端な中国の従属国であるという現在の状況のほうが日本にとってもよりましであるといえます。

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2018年5月30日水曜日

朝鮮半島の"再属国化"を狙う習近平の誤算―【私の論評】「習近平皇帝」を抑え込むためトランプは金正恩という駒を駆使している(゚д゚)!

朝鮮半島の"再属国化"を狙う習近平の誤算

歴史的には"隷属関係"が当然だが…

開催が不透明な状況にある米朝首脳会談。混乱の背景について、著述家の宇山卓栄氏は「北朝鮮の後ろ盾として介入姿勢を強める中国を、アメリカが牽制したのだろう」とみる。その構図を読み解くには、123年ぶりに朝鮮半島の「属国化」を狙う習近平と、中国を利用しつつ干渉は避けたい金正恩という、両国の約2000年の歴史についての知識が必要だ――。

正恩(左)率いる北朝鮮の属国化を目論む習近平(右)だが。5月に開かれた2度目の中朝首脳会談にて

2000年に及ぶ隷属関係

5月24日、トランプ米大統領は突如、米朝首脳会談の中止を表明しました。それに先立つ22日、同大統領は金正恩・朝鮮労働党委員長が、習近平・中国国家主席と2回目の会談をしてから「態度が少し変わった。気に入らない」と発言しています。

27日、トランプ大統領は再び会談に応じると表明しました。会談の主導権はアメリカにあると、明確に示した格好です。24日の会談中止表明は、北朝鮮への介入を急激に進めつつある中国への、アメリカの牽制だったと考えられます。

漢の武帝が紀元前108年、楽浪郡を朝鮮に設置して以来、朝鮮半島は約2000年間、中国の属国でした。高麗(こうらい)王朝の前半に一時期、独立を維持したことがありましたが、朝鮮はその歴史のほとんどにおいて、中国に隷属させられていたのです。

下関条約

日清戦争後の1895年、下関条約により、日本は清(しん)王朝に、朝鮮の独立を承認させます。日本は中国の朝鮮に対する属国支配の長い歴史を断ち切りました。それから123年の時を経た現在、中国は朝鮮半島を再び属国にしようとする野心を隠しません。

中国が目論む二つのステップ

中国は10年~20年くらいの時間をかけて、朝鮮の再属国化を実現することを考えているようにみます。第1段階では、経済支援を通じ、北朝鮮を中国資本の傘下に組み入れます。北朝鮮の立場を強化したうえで、第2段階として、北朝鮮に南北朝鮮の連邦制統一を主導させます。韓国に文在寅政権のような左派政権が現れたことも、赤化統一の追い風になっています。

この二つの段階を経て、中国は朝鮮半島への支配を復権させることができます。普通に考えれば、妄想のように思えるかもしれませんが、中国はこういう妄想を実行する(実行した)国であることをよく認識しておかねばなりません。

2018年の3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で、2期10年の国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正が承認され、習近平主席が独裁権を固めました。習主席は、いわゆる「習近平思想」を国の指針として憲法に盛り込み、中国の国益拡大を狙っています。中国の世界戦略は、これまでのフェーズとは全く違う段階に入っているのです。

中国とむしろ距離を置いてきた歴代「金王朝」

とはいえ北朝鮮のほうは、簡単に中国の支配下に組み込まれる気はないようです。

中国は以前から、北朝鮮を中国資本の傘下に組み入れようと画策し、北朝鮮に「改革開放」を迫ってきました。金正恩委員長の父の金正日は、2000年5月の最初の電撃訪中以降、2011年までに合計8回、訪中しています。その度ごとに、江沢民や胡錦濤は上海の経済特区を金正日に見学させるなどして、共産主義体制を維持しながら資本主義的な市場開放を行うことは可能だと示し、北朝鮮も中国にならって改革開放路線を歩むべきと説得しました。

金正日

しかし、金正日はこれを拒否し続けました。表向きは、「経済の自由化は政治の自由化を求める危険な動きとなる」ということでしたが、実際には「中国の介入を受けるのがイヤだ」ということだったのでしょう。

金正恩も露骨に中国を嫌い、中国を「1000年の宿敵」と呼んでいました。これは前述のように、朝鮮が長年中国の属国であった歴史的経緯を踏まえての発言です(歴史的な事実に基づけば、「2000年の宿敵」と言わなければならないところですが)。さらに2013年には、親中派の代表格で、改革開放を推進しようとしていた叔父の張成沢(チャン・ソンテク)を処刑します。これ以降、北朝鮮と中国との関係は急速に冷え込みました。

そこへトランプ大統領が登場し、北朝鮮への圧力政策を進めたことで、北朝鮮は窮地に陥ります。中国はこれを好機と見なしました。北朝鮮のクビが絞まれば絞まるほど、中国の差し伸べる「救いの手」は高く売れるからです。

習近平と金正恩は何を話し合ったのか?

ところが、北朝鮮は簡単には中国の「救いの手」を握りませんでした。北朝鮮は韓国を仲介にして、アメリカへ抱き付いたのです。この抱き付き作戦が予想以上に効果を発揮し、3月8日、トランプ大統領は米朝首脳会談の開催を決めました。

この一連の動きに焦ったのが中国です。中国は、北朝鮮が窮すれば自分たちのところへ頭を下げに来るはずだとタカをくくっていましたが、見事に当てが外れました。3月と5月に、習主席は金正恩と2回にわたって会談。3月の会談は中国側が金正恩を招聘(しょうへい)したもので、5月の会談も中国側の招聘で行われたとみて間違いないと思います。中国は北朝鮮という暴れ馬の手綱を握ろうと必死なのです。

この2回の首脳会談で、中国は北朝鮮に譲歩し、北朝鮮に有利な合意が形成されたことでしょう。これは、アメリカと中国をてんびんにかける北朝鮮の二股外交です。中国が金正日時代から求めている改革開放路線は是認されたものの、「カネも出す、口も出す」とはいかず、「口も出す」部分について、中国は大幅に制約をかけられたとみるべきです。

よくありがちな「北朝鮮が中国に泣きついた」論では、実態を捉えることはできません。北朝鮮はわれわれが考える以上に、外交技術に長(た)けた国です(北朝鮮は、外交官だけは処刑しない)。貧弱な小国でありながら、これまでも、アメリカや中国などの大国に外交上伍(ご)してきました。転んでもタダでは起きないのです。韓国の文在寅政権などが扱える相手でないことだけは確かです。 ただ、トランプ大統領が首脳会談の中止を表明した5月24日以降は、北朝鮮もトランプ大統領にはかなわないと思ったことでしょう。

金日成による朝鮮戦争後の「親中派」粛清

中国は北朝鮮との経済連携を進めていきさえすれば、いずれ北朝鮮を中国資本の傘下に収めることができるという長期的な戦略を描いているでしょうし、それを対アメリカの外交カードに利用することもできます。そこで、まずは北朝鮮と経済連携をすることを急いだのです。習主席は5月16日、北朝鮮の訪中使節団に対し、「金正恩委員長と2度も会い、両国の関係発展の共通の認識を持つことができた」と述べました。

しかし、過去に、中国は北朝鮮に痛い目に合わされています。1950年に勃発した朝鮮戦争で、中国は北朝鮮を支援しました。戦後、毛沢東は北朝鮮への影響力を強め、属国にしてしまおうともくろんでいましたが、失敗します。中国は北朝鮮内の「延安派」と呼ばれる親中派の一派と連携していましたが(延安は1930年代後半の中国共産党の本拠地)、金日成はスターリン批判(1956年)以降の中ソ対立の隙を突いて、延安派を速やかに処刑していきました。

1959年、毛沢東の大躍進政策に対する批判が巻き起こり、中国指導部で内部紛争が生じたとき(彭徳懐の失脚)、金日成は「延安派」を完全に根絶やしにしました。中国は混乱に巻き込まれている間に、北朝鮮支配の足場を失ってしまったのです。中国共産党の対北朝鮮政策は、このように失敗続きでした。

北朝鮮は金日成時代と同じように、中国を都合よく利用しつつ中国の影響力は断つという方法を、今後模索していくと思われます。今日の習政権が、経済連携を通じて北朝鮮という暴れ馬の手綱を完全に握ることができると考えているなら、大きなしっぺ返しを食らうでしょう。中国の「朝鮮属国化構想」を阻止するうえで最も大きな力を発揮するのは、アメリカではなく北朝鮮かもしれません。

「二股外交」はどこまで通用するか

もっとも、アメリカと中国の両方を利用しようとする北朝鮮の二股外交が、トランプ政権にどこまで通用するかはわかりません。

北朝鮮はこれまで、中国の支援を背景にアメリカに対して強気なアプローチを展開し、ペンス副大統領を罵倒までして揺さぶりをかけていました。ところが、トランプ大統領が突然会談中止を表明したことで、北朝鮮のこうしたアプローチはピシャリと退けられました。同時に、裏で策動していた中国の影響力も、一定のレベルで低下しました。

会談中止の発表直後、中国の「環球時報」は「信義にもとる行為」などという言葉を使って、トランプ大統領を批判する記事を掲載しました。一方で、同じ記事内では「アメリカが北朝鮮に対する軍事的圧力を高めないことを望む」と記され、中国のアメリカに対する屈服をうかがわせる内容となっています。

北朝鮮問題はその本質において、アメリカと中国の二大国の駆け引きであり、「米中冷戦」と呼ぶべき現在の危機構造の一部として存在しています。アメリカにとって、北朝鮮に譲歩することは、中国に譲歩することと同じなのです。「ドラゴンスレイヤー」と呼ばれる対中強硬派で占められたトランプ政権の中枢は、そのことを最もよく理解しています。

宇山卓栄(うやま・たくえい)
著作家。1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。おもな著書に、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『経済を読み解くための宗教史』(KADOKAWA)、『世界史は99%、経済でつくられる』(育鵬社)、『「民族」で読み解く世界史』(日本実業出版社)などがある。

【私の論評】「習近平皇帝」を抑え込むためトランプは金正恩という駒を駆使している(゚д゚)!

トランプ大統領は東シナ海を中国の内海にはさせない

アメリカの最終的な北朝鮮問題に関する、目標が、朝鮮半島の「非核化」(denuclearization)、朝鮮戦争の「終結」(the conclusion of the peace treaty)にあるとは思えません。 

なぜなら、北朝鮮問題は、アメリカという世界唯一のスーパーパワー(=hegemon:世界覇権国)にとっては、そこまで大きな死活問題ではないはずです。核とICBMを持ったからといっても、経済制裁(=兵糧攻め)でいずれ干上がるのですから、平和条約など結ばないで放置しておいてもいいのです。

しかし、相手が中国となると話は違ってきます。中国はアメリカの世界覇権に挑戦し、建国100周年の2049年までに、アメリカを凌ぐ「世界覇権国」になることを宣言しています。これを「中国の夢」(中国梦)と言いますが、そんなことが実現したら、世界はどうなるでしょうか。


ブログ冒頭の記事にもあるように、習近平国家主席は憲法を改正して“終身皇帝”となり、「中華民族の偉大なる復興」を目指して着々と政策を進めています。AIIB(アジアインフラ投資銀行)も「一帯一路」構想も、みなそのための布石です。いまや、南シナ海は、7つの人工島により中国の「内海」となってしまったことは、世界中が知るところです。

自由と人権を無視した“中華秩序”(新冊封体制)が、世界秩序になる、そんな世界が実現して良いはずはありません。

結局北朝鮮問題とはは、中国の世界覇権への挑戦問題とセットなのです。米国としては、中国の夢を打ち砕くためにも、北朝鮮の体制保持を認めることはできないのです。できれば潰したいのです。そうすれば、中華秩序は韓半島に及ばなくなり、東シナ海を南シナ海と同じように中国の内海化されずにすみます。

ドラゴン・スレイヤーが跋扈するトランプ政権

本当の外交は、表面で進行している状況とはと必ずしも一致しているわけではありませか。トランプ大統領が米朝会談をどのように位置付けているかはわかりません。単なる「外交ショー」、「ディール」としているなら、追い詰められた金正恩が「CVID」(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)を約束するだけで、体制保証と制裁解除を見返りに与えるかもしれないです。

しかし、そうだとしても、それは「罠」です。アメリカがOKとする非核化までに時間がかかると困るのは、北朝鮮のほうだからです。

北朝鮮は少しでも非核化達成の時期を長引かせます。そうして、段階的に援助を引き出し、うまくいけば核を隠し持とうとするだろうという「見方」が大勢を占めているようです。しかし、そんなことをすれば、経済制裁は解除されず、北朝鮮は完全に干上がります。それはアメリカにとっては思う壺で、そのうちに北朝鮮内に内乱を起こさせ、体制を転覆させることができるでしょう。

アメリカの最終目標は、朝鮮半島の非核化ではなく、金正恩をイラクのサダム・フセイン、リビアのカダフィと同じく、この世から葬ることと考えるべきです。

そうして、“朝貢国”である北朝鮮の背後にいる“冊封国”中国にプレッシャーを与えること。これが、アメリカの本当の狙いでしょう。

トランプは、今年になって政権内を「強硬派」(hawk)で固めました。ハーバート・マクマスターの代わりにやってきたジョン・ボルトン補佐官(安全保障担当)は、「悪魔の化身」(the devil incarnate)と、「狂犬」(mad dog)と称されるジェームズ・マティス国防長官から言われる人物です。

ジョン・ポルトン補佐官

ヘンリー・キッシンジャーやジェームズ・ベーカーなど共和党の歴代国務長官のバックサポートを受け、「平和は力によって達成できる」(=交渉や条約では達成できない)と信じています。かつて、「国連などというものはない。あるのは国際社会だけで、それは唯一のスーパーパワーたるアメリカによって率いられる」と発言したことがあります。

水面下交渉のため2度、平壌に行ったマイク・ポンペオ国務長官も、完全な強硬派です。ボルトンもポンペオもかつて北朝鮮に対しては、予防戦争をやって体制を崩壊させるべきだと発言していました。

対北朝鮮ばかりか対中国を見ても、トランプ政権内には「対中強硬派」(ドラゴン・スレイヤー:dragon slayer)がそろっています。制裁関税に反対して政権を去った大統領国家経済諮問委員会のゲリー・コーン委員長に代わったのが、ラリー・クドロオ氏。アンチ・チャイナの代表的論客で、中国へ高関税を課すのは「当然の罰だ」と言う人物です。

さらに、商務長官のウィルバー・ロス氏、国家通商会議のピーター・ナヴァロ氏、そしてUSTR(アメリカ合衆国通商代表)のロバート・ライトハイザー氏も、対中強硬派である。とくにナヴァロは「アメリカの災難はすべて中国によってもたらされている」と言ってはばかりません。

このようなトランプ政権が、非核化だけで北朝鮮を生かし続けるるはずがありません。 いくら核を捨てようと、彼らは暴力と恐怖で国民を支配する独裁体制を維持し続けます。これから人々を解放することが本当の平和の達成であり、かつまた、アメリカ覇権(パクス・アメリカーナ)を維持することです。

要するに、米朝会談をきっかけとして、いずれ北朝鮮を国家として葬り、中国の力を削いでいくこと、これが、いまのアメリカの国家目標でしょう。これが、トランプ氏の本音でしょう。

トランプ大統領は金正恩をがんじがらめに

13日、ポンペオ国務長官は、アメリカの民間企業による北朝鮮への投資を認めるかもしれないと、『FOX』のニュース番組で発言しました。また、アメリカの投資家が北朝鮮のエネルギー供給網構築を支援できるかもしれないとも述べました。

ボルトン補佐官もまた、『ABC』の番組で、非核化の証拠が得られれば、アメリカは北朝鮮に民間投資を導き、経済を繁栄させる用意があると、ポンペオと同様の話をしました。

これは金正恩に対する「CVID」に同意せよというメッセージであり、「撒き餌」でしょう。この餌に食いつかせれば、あとはアメリカの思惑通りにできます。ところが、金正恩
は、中国に行き、習近平と会談しました。

トランプ大統領は27日、元駐韓国米大使で現在は駐フィリピン米大使を務めるソン・キム氏が率いる米国実務者代表団を北朝鮮に派遣しました。ソン・キム氏は長年にわたり北朝鮮の核問題を担当してきました。

同行者の中には、国家安全保障会議(NSC)のフッカー朝鮮部長のほかに、ランディ・シュライバー国防次官補らがいました。ランディ・シュラ-イバー次官補は、このブログでも紹介したことがありますが、強烈な反中派です。

その彼が、いまや板門店の北朝鮮側施設「統一郭」にいて北朝鮮の対米外交を担当する崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官らと、実務者レベルの話し合いをしていたのです。話し合いは29日まで続いたとされています。

同時にトランプ大統領はシンガポールにヘイギン米大統領次席補佐官ら一行を派遣し、北朝鮮との間で米朝首脳会談開催の調整に当たらせています。北朝鮮側からは金正恩委員長の執事(秘書室長格)とされているキム・チャンソン国務委員会部長が参加。

彼は北京経由でシンガポール入りしました。キム・チャンソン部長は5月24日に北京に到着し、26日に帰国した人物です。その間に、トランプ大統領の米朝首脳会談中止宣言が出されました。

北朝鮮とシンガポールで米朝実務者レベルが会談するという状況にいきなり追い込まれた金正恩委員長としては、まさか習近平に助けを求めに行くことなどできはしないでしょう。

おまけにトランプ大統領は27日にツイッターで「北朝鮮には素晴らしい潜在力があり、いつか偉大な経済・金融国家になるだろう。金委員長と私はこの点で認識が一致している」とつぶやいています。「北朝鮮が核放棄に応じれば、北朝鮮がこれまでにない経済発展を遂げることができる」とも言い、金正恩委員長の心を刺激しています。

金正恩は「だとすれば、いっそのこと、中国ではなくアメリカ側に付いてしまった方が得かもしれない」と心ひそかに思ったかもしれません。

トランプは、5月16日に北朝鮮が南北閣僚級会談をドタキャンしたり、「米朝首脳会談だって考え直さなければならない」などと「デカイ態度」を示し始めたことを、「金正恩が習近平と二度目の会談をしてからのことだ」と言い始め、5月7日と8日の大連会談に疑義を挟み始めました。

そうして、トランプ大統領は5月16日以降の北朝鮮の態度の変化を「中国のせい」にしておいて、それもちらつかせながら米朝首脳会談を中止しました。

これに対して、金正恩は、米朝首脳会談復活となれば、この段階でさらに習近平にSOSを出せぱ、きっとトランプがまた機嫌を悪くして「中止する」と言い出しかねないと考えたに違いありません。金正恩としては、腹の中ではどんなことをしてでも米朝首脳会談を成功させたいと考えているでしょうから、彼はもう訪中はできません。。

おまけに板門店とシンガポールの挟み撃ちで米朝実務者レベルの会談に急に追い込まれた状況で、習近平に会いに行くなどしたら、トランプの逆鱗に触れることになります。

こうして金正恩をまず、「がんじがらめにして習近平に会わせないようにする」ことに、トランプは成功したのです。

金正恩をがんじがらめにしたトランプ大統領

こうなると、習近平としては、もう何もできないです。自ら積極的に「さあ、北京にいらっしゃい」とは言えないのです。

トランプ氏は、金正恩の豹変を「中国のせい」ではないことを知りながら、あえて「中国のせい」にしたのです。

さらに、5月26日の今年に入ってから第2回目の南北首脳会談のあと、文在寅大統領は米朝首脳会談のあと「南北米」で朝鮮戦争の終戦協定に入ってもいいと27日に語りました。

となると、朝鮮戦争で最も多くの兵士を参戦させ、また多くの犠牲者を出した中国は、その終戦協定という平和体制への移行に発言力を持てなくなってしまいます。

しかし「米朝は対話のテーブルに着け」と言い続けてきたのは中国です。今まさにそのテーブルに着こうとしているのですから、中国としては文句が言える筋合いではありません。こうしてトランプは、習近平の口をも閉ざさせてしまったのです。

これが十分に練り上げた戦略として編み出されたものか、あるいはトランプのビジネスマンとしての「勘」が、結果的にここまで行ってしまったのかは、わからないです。いずれにしても、トランプの圧勝です。

もしトランプが北朝鮮の「完全な非核化の程度」に満足して莫大な経済支援をしたとすれば、金正恩なら、「習近平からトランプに乗り換える」くらいのことは、やるかもしれないです。

どんなに中朝軍事同盟があり、中朝蜜月を演じたとしても、それはアメリカへの威嚇であって、その威嚇が必要となくなれば、中国は「いざという時の後ろ盾」程度の位置づけになり、存在感を失うことになるでしょう。

こうして、「中国の覇権」を抑え込むために、トランプは十分に金正恩という駒を駆使しているのかもしれないです。

中国に対抗することが米国の長期戦略に

先に、トランプ大統領の目標は、「朝鮮を国家として葬り」と掲載しましたが、これは何も軍事作戦だけを意味するものではありません。

北朝鮮の体制を転換させ、いずれ民主化させるということもありえます。そのほうが、経済的にも、恵まれることになります。そうして、そのときには、北朝鮮は米国にとって軍事的にも経済的にも、対中国の最前線基地になっているかもしれません。

一方、北朝鮮があくまで、体制転換を望まないというなら、その時には徹底的に制裁をして、軍事力も用いて、北の現体制を潰し、新たな政権を樹立させるかもしれません。

トランプ大統領としては、場合によってどのような道も選べるように、強烈なタカ派を重用しつつ、中国に対抗できる体制を整えたのです。そうして、中国に対抗していくことを米国の国家戦略に据えたのです。

そうして、この戦略は習近平が、習近平国家主席は憲法を改正して“終身皇帝”となり、「中華民族の偉大なる復興」を目指して着々と政策を進めている現在、たとえポスト・トランプが誰になろうと、民主党政権に政権交代したとしても、引き継がれることでしょう。その意味で、少し前までの米国と現在の米国は根本的に変わってしまったのです。

これから米国がどのように変わったにしても、習近平皇帝の意のままにはさせないということで、米国は一致団結することでしょう。

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2017年2月12日日曜日

日米首脳 北朝鮮を非難 トランプ大統領“100%日本とともに”―【私の論評】北ミサイル発射は、日本の拉致被害者問題とも無縁ではない(゚д゚)!

日米首脳 北朝鮮を非難 トランプ大統領“100%日本とともに”



安倍総理大臣は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けてアメリカのトランプ大統領と共同で声明を発表し、断じて容認できないと非難するとともに、日米両国が緊密に連携し、対応を強化していくことで一致したことを明らかにしました。また、トランプ大統領は「すべての人は、アメリカが、日本と100%ともにあることを知るべきだ」と述べました。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて、安倍総理大臣とアメリカのトランプ大統領は、夕食会のあと、日本時間の午後0時半すぎ、滞在先のフロリダ州の大統領の別荘で共同で声明を発表しました。

この中で、安倍総理大臣は「北朝鮮のミサイル発射は断じて容認できない。北朝鮮は、国連決議を完全に順守すべきだ。先ほど、トランプ大統領との首脳会談で米国は常に100%、日本とともにあると明言した。トランプ大統領はその意思を示すために私の隣に立っている」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「私とトランプ大統領は日米同盟をさらに緊密化し、強化していくことで完全に一致した」と述べました。

また、トランプ大統領は「すべての人は、アメリカが偉大な同盟国、日本と100%ともにあることを知るべきだ」と述べ、日本と緊密に連携して北朝鮮に対処していく考えを強調しました。

トランプ大統領は前日の記者会見で、「北朝鮮の核やミサイルの脅威からの防衛は極めて高い優先事項だ」と述べ、北朝鮮の核やミサイルの開発への対応に優先的に取り組んでいく考えを明らかにしていました。

【私の論評】北ミサイル発射は、日本の拉致被害者問題とも無縁ではない(゚д゚)!

韓国軍合同参謀本部などによると、北朝鮮は日本時間の12日午前7時55分ごろ、北西部の平安北道・亀城から弾道ミサイル1発を発射しました。ミサイルは最高高度約550キロに達し、約500キロ飛行して日本海に落下。日本の防衛省関係者は、射程約1300キロの「ノドン」との見方を示し、高い高度に打ち上げて迎撃を難しくする「ロフテッド軌道」がとられた可能性もあると指摘しました。一方、韓国軍は「ムスダン」(射程2500~4000キロ)改良型の可能性が高いと発表しました。

北朝鮮の中距離弾道弾ノドン
トランプ政権の発足後、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したのは初めてです。日米首脳会談に合わせ、弾道ミサイルの能力を誇示し、日米をけん制する狙いがあるもようです。16日に故金正日総書記の誕生日を控え、国威発揚を図る意図もあったとみられます。

米戦略軍も北朝鮮による「中距離ないし準中距離」の弾道ミサイル発射を確認したと発表。声明で「米戦略軍と北方軍・北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)、太平洋軍は引き続き北朝鮮による挑発を警戒し、安全確保に向け日韓両国と緊密に連携していく」と表明しました。

菅義偉官房長官は12日午前、臨時に記者会見し、「日米首脳会談直後だったことを考えても、わが国や地域への明らかな挑発行為だ」と強調。北朝鮮に厳重に抗議したことを明らかにしました。船舶や航空機への被害は確認されていません。
安倍首相は関係省庁に対し、情報収集・分析に全力を挙げ、不測の事態に備えて万全の態勢を取るよう指示した。

さて、ここで日本ではなせが分析も報道もほとんどされないのですが、なぜ北朝鮮はあのようにミサイルを連発し、そうして本日このタイミングでミサイルを発射したのでしょうか。


それは、まずは北朝鮮が米国と本気で戦争をしようなどとは思っていないということを理解しなければなりません。

上の北朝鮮弾道見入るの推定射程を見ると、今のところ北朝鮮からは米国全土を射程に収めてはいません。これに対して米国の弾道ミサイルは全世界を射程に納めています。無論、北朝鮮も米国本土から攻撃可能です。それも、40年前のICBMで十分に可能です。さらに、北朝鮮にはこれを防ぐ手立てはありません。

また、米軍はSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)でも、北朝鮮をいつでも攻撃可能です。そうして、北朝鮮にはこれを防ぐ手立てはありません。

なのになぜミサイルを連発するのでしょうか。それを解き明かすには、北朝鮮とイランの関係を思い起こす必要があります。イランは、以前から北朝鮮から核に関する技術を導入していた形跡があります。それに関しては、本日は本題ではないのでここで詳細は説明しません。

北朝鮮は意味もなく、ミサイルを連発しているわけではありません。良い悪いは別にして、彼らは彼らの思惑と戦略にもとづいてそれを実行しているのです。

そうして、彼らの思惑や、戦略の究極の目的は、何とかして米国に自分たちに振り向かせ、支那、ロシア、日本を抜きにして、直接対話をして、北朝鮮にとって有利な状況を創りだすことです。

そのための外交カード、交渉条件を北朝鮮にとって有利になるように核開発をし、弾道弾の開発もしているのです。

そうして、米国がいつまでも、北朝鮮と直接対話しなければ、北朝鮮としては各技術をイラクなどにビジネスとして販売してしまうかもしれないということを米国に見つけているのです。

北朝鮮の核やミサイルの技術は、米国に比較すると格段に劣りますが、それでもイランにこれらを提供すれば、イランからは米国全土が北朝鮮製の核ミサイルが射程距離内に収まってしまいます。

北朝鮮としては、米国が直接対話をしないならば、いずれはこれをイランに売りさばくということを外交カードとするため、盛んにミサイルを連発しているというわけです。

それと、日米首脳会談のまっただ中に北朝鮮がミサイルを発射したことには、これだけではなく、別の意味もありそうです。

それは、現在米国人が一人北朝鮮に拉致されていることがわかっています。韓国の拉致被害者家族でつくる「戦後拉北者被害家族連合会」の崔成龍理事長は今月7日、2004年に中国で失踪し、北朝鮮に拉致された疑いが指摘されている米国人男性デービッド・スネドン氏について、トランプ米政権が韓国で情報収集をしていると明らかにしました。

デービッド・スネドン氏
米国ではオバマ政権も情報を集めていたのですが表立った動きはしませんでした。北朝鮮はスネドン氏の拉致疑惑を全面的に否定しています。

スネドン氏については、中国雲南省から国境を接するミャンマーに拉致されて平壌に移送され、その後現地の女性と結婚し「ユン・ボンス」と名乗っているとの情報を、昨年8月に崔氏が北朝鮮内の消息筋から得たと明らかにしていました。

北朝鮮としては、米国人さらに日本の拉致被害者などの情報を明らかにすること、さらにいずれ解放し、日米返還することも取引条件の一つとすることの意味もこめて、今回のミサイル発射を実施した可能性があります。

トランプ次期大統領は5月17日に英ロイター通信とのインタビューで「金正恩と北朝鮮核問題について対話することに何ら問題はない」と金正恩委員長との首脳会談に意欲を示す発言を行っていました。

対立候補のヒラリー・クリントン氏から「加虐的独裁者を擁護するのか」と噛みつかれても、翌6月のアトランタでの遊説で「金正恩氏と会うため自分が訪朝することはない」と釘を刺しながらも「話し合うのがなぜだめなのか」と前言を撤回しませんでした。さらに「金正恩氏が米国に来るのなら会う。会議テーブルに腰掛けてハンバーガーを食べながら、もっといい核交渉を行う」と言い切りました。

実際、トランプ、金正恩会談が実現したとすれば、当然のことながら、デービッド・スネドン氏に関する話し合いもなされることになると思います。その時に、日本や韓国の拉致被害者に関する話し合いも当然行われることになるでしょう。

そうなると、拉致被害者問題解決の端緒になる可能性もあります。ただし、これはいまのところ、憶測に過ぎません。オバマ政権の末期には、韓国に金正恩斬首舞台を設置しています。今後この方面からもトランプ大統領の動静を見極めていく必要があります。



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2016年4月10日日曜日

朝鮮大学校、在校生が激減…最盛期の4割に 総連陰り就職厳しく 北の兵器開発は学校ぐるみで支援―【私の論評】北朝鮮への技術情報の駄々漏れや主体思想を併せ持つ日本の公職者の養成許すまじ(゚д゚)!

朝鮮大学校、在校生が激減…最盛期の4割に 総連陰り就職厳しく 北の兵器開発は学校ぐるみで支援

朝鮮人大学校のキャンパス
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の影響下にある朝鮮大学校(東京都小平市)在校生が最盛期の4割にあたる約600人に激減したことが9日、分かった。朝鮮総連関係者が明らかにした。核開発を主導した金正日総書記、金正恩第1書記父子を絶対視した偏向教育への反発が進む一方、卒業生や教授の一部は北朝鮮の兵器開発を後押しする朝鮮総連傘下の在日本朝鮮人科学技術協会(科協)に所属していることも判明。10日に入学式とともに、創立60周年の節目を迎える同大は組織強化を図る構えで、政府が動向監視を強めている。

関係者によると、昭和31年に開校した朝鮮大学校は民族教育の最高学府と位置づけられ、朝鮮総連幹部職員や朝鮮学校教員を養成。当初、60人余りでスタートした在校生は平成に入ると1500人台まで増えた。 

ところが、核・ミサイルによる軍事的挑発を繰り返す北朝鮮への盲従を強いたり、総連の弱体化で傘下組織への就職が困難になったりしたことから受験生が激減。平成27年度の定員は1220人だったが、実際は約600人しか集まらなかった。教職員数も減少の一途をたどり、財政難が影響して平均月給は約10万円にまで減っている。


一方、科協の現・元幹部の多くは同大理工学部出身者で占められ、一部の現職教授も所属するなど大学ぐるみで支援。加えて、同大は在校生に対し、金一族への忠誠を誓う団体「在日本朝鮮青年同盟」への加入を義務づけて思想も厳しくチェックしている。16日に金日成主席の誕生日祝賀行事を行うほか、国際シンポジウムなど60周年記念行事を相次ぎ開催する予定で、思想教育を通じた締め付けを強化している。

これに対し政府は2月、核実験と弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮への制裁として、科協に在籍歴のある元同大男性教員の訪朝後の再入国を原則禁止にして警戒を強化している。さらに警視庁公安部は同月、経営学部の元副学部長を詐欺容疑で逮捕。同副学部長は、北朝鮮の指示で韓国での工作を主導した疑いがあり、同大のスパイ活動の拠点化が懸念されている。東京地検は起訴猶予とした。

同大と朝鮮総連は産経新聞の取材に対し「内部事情は話せない」などとしている。



朝鮮大学校 昭和31年に創設され、34年に現在の東京都小平市に移転。政治経済、文学歴史、理工など8学部や研究所を備える。文部科学省所管の大学ではなく東京都が認可する各種学校。張炳泰(チャン・ビョンテ)学長は、北朝鮮の国会議員にあたる最高人民会議代議員も兼ねる。

朝鮮大学校 張炳泰(チャン・ビョンテ)学長

【私の論評】北朝鮮への技術情報の駄々漏れや主体思想を併せ持つ日本の公職者の養成許すまじ(゚д゚)!

在日本朝鮮人総連合会が運営する朝鮮大学校(東京都小平市)が、今年で60周年を迎えるに際して、朝鮮の金正恩第一書記は10日、朝鮮大学校の教職員と学生に祝賀文を送っりました。朝鮮中央通信が同日、報じました。

金正恩氏は、祝賀文で「朝鮮大学校が歩んできた60年の歴史は総聯(朝鮮総聯)の次代教育事業に対する白頭山の不世出の偉人たちの空より高く、太陽より温かい崇高な同胞愛、民族愛の歴史であり、民主主義的民族権利と民族教育事業のための総聯の活動家と在日同胞の愛国献身の歴史である」と述べました。

また「朝鮮大学校の卒業生は愛国・愛族のバトンを継いで在日朝鮮人運動の発展において中核的役割を立派に果たしてきた」としながら、「世界に唯一無二の海外同胞大学である朝鮮大学校はまことに、祖国と民族の大きな誇り、自負であり、総聯と在日同胞の貴重な富である」と強調しました。

朝鮮中央通信の報道全文は次のとおりです。


金正恩元帥が朝鮮大学校の教職員と学生に祝賀文 
【平壌4月10日発朝鮮中央通信】金正恩元帥が、創立60周年を迎える朝鮮大学校の教職員と学生に10日、祝賀文を送った。 
金正恩元帥は祝賀文で、朝鮮大学校が歩んできた60年の歴史は総聯(朝鮮総聯)の次代教育事業に対する白頭山の不世出の偉人たちの空より高く、太陽より温かい崇高な同胞愛、民族愛の歴史であり、民主主義的民族権利と民族教育事業のための総聯の活動家と在日同胞の愛国献身の歴史であると強調した。 
金日成主席は戦後復興建設の困難な時期、日本の中心に朝鮮大学校を建てるようにしたその時から生涯の最後の時期まで、総聯と朝鮮大学校の強化発展のためにあらゆる愛と恩情を惜しみなく施したと明らかにした。 
世界に唯一無二の海外同胞大学である朝鮮大学校はまことに、祖国と民族の大きな誇り、自負であり、総聯と在日同胞の貴重な富であると強調した。 
金正恩元帥は、朝鮮大学校が主席と総書記が意図し、願っていた通り、総聯愛国偉業の未来を担っていく頼もしい継承者を立派に育てることによって、チュチェの在日朝鮮人運動の百年の大計をしっかりと裏付けていくとの信頼を表した。
この報道を読んでいるだけでも、朝鮮大学校が対日工作活動に関わっているか良く理解できます。

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以下に平成27年版 警察白書より、北朝鮮に関わる部分のみ掲載します。
対北朝鮮措置に関係する違法行為の取締り 
我が国は、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験を受けて、国際連合安全保障理事会決議に基づく措置(武器等の輸出入の禁止、人的往来の禁止等)のほか、我が国独自の措置(北朝鮮籍船舶の入港禁止措置(人道目的のものを除く。)、北朝鮮との間の全ての品目の輸出入禁止等)を実施している。警察では、対北朝鮮措置の実効性を確保するため、対北朝鮮措置に関係する違法行為に対し、徹底した取締りを行うこととしており、平成27年4月までに、34件検挙している。

事例
貿易会社役員(47)らは、21年6月18日から北朝鮮を仕向地とした全ての貨物の輸出禁止措置がとられていたにもかかわらず、25年6月、卓球用品等(輸出申告価格約258万円)を、経済産業大臣の承認を受けないで、香港を経由して北朝鮮に輸出した。26年8月、同役員らを外為法違反(無承認輸出)等で逮捕した(大阪)。
平成27年度版の警察白書では、北朝鮮の扱いが小さくなって、以上のことしか掲載されていません。おそらく、対日制裁が効を奏して、大きな事案はなくなったせいだと思います。

同じく、警察庁が出した公文書『先端科学技術等をねらった対日有害活動2006年(18年)10月18日現在には、北朝鮮に関する事例を以下のように掲載しています。
1 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件 
 警察は、これまでに北朝鮮関係の大量破壊兵器関連物資等の不正輸出事件を七件検挙しており、これらの事件を通じて、濃縮ウランの製造に転用可能な直流安定化電源及び周波数変換器(インバーター)、生物兵器の製造に転用可能な凍結乾燥機等の大量破壊兵器関連物資を始め、潜水具、化学物質、コンピュータ関連部品等が北朝鮮に不正に輸出され、又は輸出が企てられていたことが明らかになっています。 
具体的な検挙事例は、次のとおりです(キャッチオール規制に係る事件については5頁の「大量破壊兵器関連物資等の不正輸出対策」の項目参照)。
①シンクロ・スコープ等不正輸出事件(1987年(昭和62年)静岡) 
  対北朝鮮貿易商社の幹部らが、北朝鮮軍の資機材調達機関等から工作を受け、ココム(注3)の規制対象品で、外国為替及び外国貿易管理法(現「外国為替及び外国貿易法」、以下「外為法」という。)等により輸出が規制されているシンクロ・スコープ等の輸出契約を北朝鮮内の貿易会社と締結し、1985年(昭和60年)10月から1986年(61年)8月にかけて数回にわたって、通商産業大臣(当時)の承認を受けることなく、かつ、税関長に虚偽Tの輸出申告をし、又は税関長の許可を受けないで、北朝鮮に不正に輸出した事件です。 
②集積回路等不正輸出事件(1989年(平成元年)新潟  
 在日朝鮮人の商工連幹部が、1988年(63年)9月、北朝鮮を訪れる際、ココムの規制対象品で、外為法等により輸出が規制されているパーソナルコンピュータ、IC(集積回路)等を日用品と偽って輸出申告し、通商産業大臣(当時)及び税関長の輸出許可を受けないで、北朝鮮の貨客船で不正に輸出しようとした事件です。
③フッ化ナトリウム等不正輸出事件1996年(平成8年)兵庫) 
 対北朝鮮貿易商社の社員が、化学兵器であるサリンの原料としても使用可能で、外為法により輸出が規制されているフッ化ナトリウム及びフッ化水素酸を、通商産業大臣(当時)の許可を受けないで、1996年(平成8年)1月及び同年2月に、大阪港及び神戸港に入港中の北朝鮮船籍の船舶にそれぞれ託送品として積み込み、北朝鮮に不正に輸出した事件です。 
④スクーバ用ダブルバルブ不正輸出事件(1998年(平成10年)警視庁)
   対北朝鮮貿易商社の役員らが、1996年(8年)3月から同年10月にかけて数回にわたって、軍事転用が可能で、外為法により輸出が規制されている非磁性のスクーバ用高圧空気容器用ダブルバルブ(潜水用具の部分品)を、通商産業大臣(当時)の許可を受けないで、万景峰92号で北朝鮮に不正に輸出した事件です。 
2 北朝鮮に関連するその他の事件 
①ジェット・ミル調達動向の判明 
 警視庁が2003年(15年)6月に検挙した機械メーカーによるイラン向けミサイル関連貨物不正輸出事件では、押収資料から、同メーカーが数回にわたって、北朝鮮にジェット・ミル及び周辺機器の輸出を行っており、このうち1994年(6年)3月には、科協を仲介させ、北朝鮮内の塗料会社あてに新潟港から万景峰92号で輸出したことが明らかとなっています。 
 なお、この事案については、判明時に公訴の時効が完成していました。
②科協幹部による薬事法違反事件 
 警視庁は、2005年(17年)10月、薬事法違反の容疑で、科協の幹部2人を逮捕するとともに、関係箇所を捜索しました。その際、当該幹部の経営するソフトウェア会社の事務所から、防衛庁に関する資料が発見され、その一部に防衛上の秘密に当たる可能性のある記載が認められました。 
注3:対共産圏輸出統制委員会。東西冷戦を背景に、1949年(昭和24年)、共産圏への戦略物資・技術の移転を防止することを目的に設立。1994年(平成6年)に廃止。
朝鮮大学校法律学科を卒業2014年に弁護士資格を取得した金銘愛弁護士(法律学科8期生・28)
 警察庁の資料では、平成27年4月までに、34件の検挙の実績があるとのことですが、これは氷山の一角に過ぎないと思います。

朝鮮大学校の脅威は、科学技術の剽窃だけではありません。その他の分野での脅威もあります。たとえば、同校からの日本の法曹界などへの進出があげられます。

1999年、朝鮮大学校政治経済学部に法律学科が創設されてから17年。昨年も6年連続となる弁護士(1人)と司法書士(3人)の合格者が出るなど、朝鮮のチュチェ思想を併せ持つ、法律専門家たちが同学部から数多く輩出されてきました。現在、法律学科の司法試験合格者は15人(男子8人、女子7人)、司法書士試験合格者は8人(男子6人、女子2人)に及んでいます。

本来、朝鮮大学校など正規の大学でもないのですから、ここの卒業者が司法試験受験資格を持つこと事態が奇異です。日本の法曹界に入るなら、本来なら、日本の大学・大学院で日本の教育を受けた人に対してのみ、受験資格を与えるべきものと思います。そもそも、朝鮮大学校は、文部科学省から大学としての認可を受けていないため、法律上は各種学校です。

朝鮮大学校創立60周年記念 大祝祭のポスター

本来ならば、日本の大学の法科大学院を含めて、すべての大学院などに進学できること事態が異常です。

各種学校とは、学校教育法昭和22年法律第26号)の第134条に基づいて、「学校教育法の第1条に規定される学校」(一条校)以外で、学校教育に類する教育を行うもので、所定の要件を満たす教育施設のことである。各種学校は、公立のものは都道府県の教育委員会が認可し、私立のものは都道府県知事が認可する。

では、実際に各種学校はどうのようなものかといえば、具体的には、予備校等、服飾・料理関係の学校、看護系の学校、事務関係の学校、語学関係の学校、自動車教習所、宗教関係の学校などです。

このような学校では、ほとんどが日本の法科大学院を含めた、大学院の受験資格など有していません。にもかかわらず、朝鮮大学校に認めるのは、非常に奇異なことです。

以下に朝鮮大学校の校歌の動画とその歌詞を掲載します。


錦繍江山、我が国に社会主義の花が咲き、海越えこの地の上に我が大学は高く聳え立てり。白頭霊峰の変わらぬ気性は武蔵野見下ろし、祖国の栄光誇るが如き、その名も朝鮮大学。 
若き胸に希望を抱き学び舎に入らば、祖国愛に満ち溢れ暖かく抱いてくれる。鋼鉄の手足に、火を吹くが如く勇気湧き、我らが心臓、紅き心臓は炎高く燃ゆるなり。 
社会主義たる我が国の誇り高き民族文化を、学びゆく我等には革命伝統は灯台なり。怨讐米帝討ち払い、祖国統一成し遂げ、地上の楽園を築きゆく、その任務は大きく重し。 
若き胸に希望を抱き学び舎に入らば、祖国愛に満ち溢れ暖かく抱いてくれる。鋼鉄の手足に、火を吹くが如く勇気湧き、我らが心臓、紅き心臓は炎高く燃ゆるなり。 
億千万年の長き日々、空高くに浮かび続け、遍く天下を見渡す日よ、月よ、問おう。 
広く広き大地の上に優雅に館を建て、海外の子女に教養与える、このような国がまたとあるだろうか。若き胸に希望を抱き学び舎に入らば、祖国愛に満ち溢れ暖かく抱いてくれる。鋼鉄の手足に、火を吹くが如く勇気湧き、我らが心臓、紅き心臓は炎高く燃ゆるなり
 この歌詞の内容を見ている限り、まるで朝鮮にある学校の歌詞のようです。日本や日本の社会を意識した内容には全く欠けています。

それは、それで良いと思います。ただし、朝鮮学校の教育方針がそういうことであれば、日本社会とは関係なくそうして欲しいです。日本の大学のように弁護士受験資格が得られるとか、日本の技術を吸収するなどはすべきではありません。

朝鮮大学校ので就学して、得られる資格は、すべて北朝鮮での得られる資格のみとすべきです。また、日本の先端技術など吸収せず、北朝鮮独自の技術のみで、朝鮮大学校の教育をすべきです。


民主党政権においては、人権擁護法案の制定が画策されていましたが、これは人権侵害救済法案・人権救済機関設置法案であり、それに続く人権委員会設置法案でもありました。これは、成立せずに事無きを得ましたが、この法案が出来上がると、現在存在する法システムなど度外視した、とんでもない事態がおきることが想定されます。これにも、朝鮮の工作が絡んでいるとみるべきです。これには、当然のことながら、朝鮮大学校も絡んでいるとみなすべきです。

日本側も、そのようにみなしして、朝鮮大学校にまるで日本の大学であるかのような特例はすべて剥奪すべきです。

そうして、一日もはやくスパイ防止法を成立させて、朝鮮大学校や、その関係者たちを厳しく査察すべきです。

日本の技術によってつくられる、北朝鮮のミサイルや核兵器で日本が脅かされたり、などという本末転倒な馬鹿げた事態は早急になくすべきです。また、チュチェ思想あわせもつ、弁護士や公認会計士などの日本の公的資格を持つ人間が育成される機会なども絶つべきです。

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