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2024年2月28日水曜日

想定より早く進む少子化、昨年の出生数は8年連続で過去最少…婚姻90年ぶりに50万組割れ―【私の論評】少子化とAI・ロボット化:国際比較から見る出生率の低下と先進国の課題

想定より早く進む少子化、昨年の出生数は8年連続で過去最少…婚姻90年ぶりに50万組割れ

まとめ
  • 2023年の日本の出生数が過去最低の75万8631人で、前年比5.1%減。
  • 同年の婚姻件数も前年比5.9%減の48万9281組で、90年ぶりに50万組を下回る。
  • 出生数の減少は2016年以降加速しており、2022年までに約21.1%減少。
  • 2023年の死亡数は159万503人で過去最多を更新し、自然減も史上最大の83万1872人に。
  • 少子化の進行および高齢化による死亡数の増加が続いている。


 2023年に厚生労働省が公表した速報値によれば、我が国の出生数が過去最低の75万8631人に達し、前年比5.1%の減少となり、連続8年間最小記録が更新されたことが明らかとなった。また、婚姻件数も前年比5.9%減の48万9281組に低下し、50万組を下回る90年ぶりの水準に至る。婚姻数の減少は子供の数への影響を数年遅れて反映させることが常である故、今後も少子化の進行が警戒される状況である。

 国立社会保障・人口問題研究所が昨年の4月に推定した通り、出生数が75万人に到達する時期は2035年頃と見込まれていたが、実際の減少の勢いは予想を上回る形で進行している。速報値には日本で生まれた外国人も含まれており、日本国民のみを対象とした最終的な数字は秋に公表される予定で、さらなる減少が予想されている。

 出生数の減少は、2016年に100万人を割り込んだ後、より顕著なものとなっている。2016年から2022年の間に約21.1%減少し、これは2010年から2016年までの6年間での約8.8%減少を著しく上回る。日本では婚外子の割合が低いため、婚姻の減少は出生率低下とほぼ直接的な関係にあるとされる。婚姻数のピークは1972年の約109万組であったが、約50年で半分以下に落ち込んでいる。過去に婚姻数が50万組未満であった1933年の日本と現状とは異なり、当時は多子家庭が一般的であり、出生数は200万人を超えていた。

 2020年にはコロナウイルスの影響で婚姻数が約7万組減少したが、2022年にはわずかながら増加したものの、その後再び減少傾向に転じた。社人研の予測では、2022年の婚姻数の一時的な増加を基に、2024年の合計特殊出生率の上昇を示唆していたが、出生率の実際の回復は不確かである。

 死亡数は2023年に159万503人となり、前年比0.5%増となり、3年連続の増加であり最多記録を更新した。自然減も83万1872人に達し、これは過去最大の自然減となった。団塊の世代が高齢化する中、死亡数の増加は更なる加速が見込まれている。

 この記事は元記事の要約です。詳細は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】少子化とAI・ロボット化:国際比較から見る出生率の低下と先進国の課題

まとめ
  • 出生率は国際比較に適した指標であり、国連などがデータを公開している。先進国では子育て支援やワークライフバランスの改善が実現されてもなお出生率が低下しており、様々な要因が影響していると考えられる。
  • 中国と韓国でも出生率が低下しており、中国では一人っ子政策が影響し、韓国では先進国と同様の要因によるとみられる。インドの出生率も低下しており、経済発展や教育レベルの向上が要因とされる。
  • アフリカ諸国では出生率が高く、伝統的な結婚・出産の価値観が残っている。
  • 出生率の低下には経済的負担の軽減や女性の社会進出などのメリットがあるが、労働力不足や社会保障制度への影響も懸念される。
  • 少子化対策いずれの国でも功を奏しておらず、これによるデメリットとして生産力の低下を防ぐために大量の移民の受け入れはすべきでなく、AI化とロボット化の推進が重要な課題となる。
上の記事を読んでいると、国際比較などしておらず、厚生労働省の報道をそのまま報道していると考えられます。

こういう記事を書くときには、国際比較も掲載すべきでししょう。そうでないと、結局のところ少子化の危機を煽るだけになりかねません。

人口あたりに占める割合を客観的に示す指標として、特殊出生率もありますが、それ以外に出生率(年間の人口1,000人あたり出生数の割合)があります。

出生率のメリットを以下に掲載します。

  • 出生率は、年間の人口1,000人あたり出生数であり、国際比較に適したシンプルな指標。
  • 国や地域間での人口動態を共通基準で比較可能で、国連などがデータを公開しているため容易に情報入手できる。
  • 年齢別出生率による比較で人口構成の影響を排除し、出生力の比較が可能。
  • 出生率は、国際的な出生力の格差を測るために使われ、例えばOECD加盟国間での出生力の差を分析できる。
以下に、出世率の国際比較の推移を掲載します。

国名1950年1970年1990年2010年2020年2023年
日本24.719.414.912.511.611.8
米国26.618.416.713.512.412.3
フランス20.618.114.412.712.412.6
ドイツ15.910.810.310.210.810.6
イギリス18.716.31413.211.111.3
韓国43.93117.612.38.48.1
中国22.920.117.812.21212.2
インド4845.330.224.22221.8
スウェーデン18.614.717.912.511.511.7
デンマーク21.217.616.310.410.510.7
フィンランド22.918.416.810.411.411.6
ノルウェー23.717.917.91211.411.5
マリ59.958.455.449.246.445.8
ソマリア15.822.322.921.820.720.5
ウガンダ5049.748.145.643.142.9
チャド48.647.245.341.638.838.6

参考資料世界銀行「World Development Indicators」https://data.worldbank.org/indicator/SP.DYN.TFRT.IN

2023年は、推計値の国もあります。

出生率の推移から読み取れることを以下にまとめます。

先進国

日本だけではなく多くの先進国で、出生率は1950年代から低下傾向にあります。2023年の先進国の出生率は、日本は11.8‰、アメリカ合衆国は12.3‰、フランスは12.6‰、ドイツは10.6‰、イギリスは11.3‰などとなっています。

出生率の低下は、晩婚化・未婚化の進行、子育てにかかる費用負担の増加、女性の社会進出など、様々な要因とされ、少子高齢化の原因となり、社会保障制度や経済成長に様々な影響を与えるとされてきました。

先進国では、出生率の向上に向けた対策として、子育て支援の拡充、夫婦のワークライフバランス支援、男女共同参画社会の実現などが重要とされてきましたが、出生率の推移を見る限りではこの対策は功を奏しているとは言い難い状況にあります。

中国と韓国

韓国の出生率は、1960年代には6.0‰以上ありましたが、2023年には8.1‰まで低下しています。これは、日本より低いです。中国の出生率は、1970年代には7.0‰以上ありましたが、2023年には12.2‰まで低下しています。さらに低下傾向にあり、近いうちに先進国なみになるでしょう。これは、中国が過去に多子化政策の一環として、「一人っ子」政策を実行したことが主たる原因です。

韓国における出生率の低下は、先進国と同様に、晩婚化・未婚化の進行、子育てにかかる費用負担の増加、女性の社会進出などが要因と考えられます。

中韓では、出生率の低下を食い止めるために、様々な対策が講じられていますが、これも先進国と同じく功を奏しているとは言い難い状況にあります。

インド

インドの出生率は、1950年代には48.0‰ありましたが、2023年には21.8‰まで低下しています。インドの出生率の低下は、経済発展や教育レベルの向上、女性の社会進出などが要因と考えられます。インドでは、出生率の低下は依然として課題であり、政府は様々な対策を講じていますが、これも先進国と同じく功を奏しているとは言い難い状況にあるといえます。

出生率の高いアフリカ諸国

マリ、ソマリア、ウガンダ、チャドなどのアフリカ諸国では、出生率が40‰を超えています。
これらの国では、人口構成が若く、結婚・出産に対する価値観が伝統的なため、出生率が高いと考えられます。一方で、乳幼児死亡率や栄養不足などの問題も深刻であり、持続可能な開発に向けた取り組みが必要となります。

アフリカ諸国の多くの地域では、結婚と出産に対する伝統的な価値観が根強く残っています。

家父長制が一般的で、男性は家計を支える役割、女性は家事や育児を担う役割とされています。また、早婚や多産も伝統的な価値観として残っており、特に農村部では顕著です。

近年、都市化や教育レベルの向上、経済発展の影響により、結婚・出産に対する価値観も変化しつつあり、アフリカ諸国においても、出生率が低下傾向にあるのは間違いないです。

今後、アフリカ諸国における結婚・出産に対する価値観は、伝統的な価値観と現代的な価値観がどのように融合していくのか注目されます。


出生率は、国によって大きく異なり、様々な要因によって変化します。出生率の低下は、少子高齢化などの社会問題を引き起こすと考えられ、各国はそれぞれの状況に応じた対策を講じてきました。

以上の分析結果を見る限りにおいては、出生率の低下を防ぐための方策は、現状では、いずれの国でも成功を収めているとは言い難く、少子化を防ぐためのこれといった決定打はないようです。

少子化のメリットを享受する人々 AI生成画像

出生率の低下は、問題ばかりが指摘されますが、これがもたらすメリットもあります。

経済的負担の軽減: 子どもの数が少なくなると、教育や育児にかかる家庭の経済的負担が減少し、一人あたりの生活水準を向上させやすくなります。

女性の社会進出: 出生率が低下すると、女性が職業に専念しやすくなり、社会進出やキャリア形成が促進される可能性が高まります。

環境への影響: 人口が増加すると環境負荷も増大しますが、出生率が低下すると人口増加の圧力が抑制され、資源の使用や廃棄物の発生が緩和される可能性があります。

教育資源の充実: 子どもの人数が減ることで、一人当たりの教育への投資が増え、教育の質を高めることが可能になります。

介護負担の持続可能性: 少子化が進み、高齢者の割合が増えた社会では、効率的な介護サービスの提供や介護技術の発展が促されることで、介護負担が持続可能な形で改善されるかもしれません。

人口密度の緩和: 人口が適度に抑制されると、都市の過密化が緩和され、居住空間や公共施設が十分に確保されやすくなります。

就業機会の改善: 労働人口が減少することにより、就業機会が増え、失業率が低下する可能性があります。

出生率の低下には上記のメリットが考えられる一方で、長期的には労働力不足や社会保障制度に対する圧力の増大などの問題も引き起こす可能性があるため、バランスのとれた人口政策が求められ、先進国の中でもフランスや北欧諸国では、先進国では、出生率の向上に向けた対策として、子育て支援の拡充、夫婦のワークライフバランス支援、男女共同参画社会の実現などを他国に先んじて充実させてきましたが、現在ではこれらが、功を奏しているとは言えない状況になっています。

子育て支援の拡充、夫婦のワークライフバランス支援、男女共同参画社会の実現などは出生率とはあまり関係ないといえます。だからといって、これらをまったくするなとか、廃止しろとか、アフリカ諸国のように家父長制度に回帰せよというつもりはりあませんが、それにしても、少子化としては別の対策をたてるべきでしょう。

まずは、先の少子化対策メリットを享受できる体制を整えることです。過去の日本のように、緊縮財政ばかりを推進するようなことでは、誰もこのメリットを享受できないことになります。こどもの数が減ったから、教育支援を単純に打ち切るなどのことをされては、たまったものではありません。

ただし、本格的に少子化がすすんでくれば、メリットだけではなくデメリットもでてくるはずです。特に、生活水準を下げないためには、生産人口の減少による生産性の低下を防ぐ必要があります。産業界には、これを多数の外国人労働者の受け入れで補うとともに、賃金を低く抑えるべきと考えている人もいるようですが、先進国は大量の移民受け入れで大失敗しています。日本は他の先進国等轍をわざわざ踏むべきではないでしょう。

AI化、ロボット化が切り開く日本の未来  AI生成画像

これによるデメリットの解消の方策は、このブログで何度も強調してきたように、AI化とロボット化の推進でしょう。現在までに、社会において機械化によって物を運ぶ、大量生産をするなどことは推進されてきて、一定の成果を収めていますが、AI化、ロボット化に関してはまだまだです。

今後少子化を前提とした、AI化とロボット化は、特に日本などの先進国では、緊急の課題といえます。

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2022年1月15日土曜日

令和4年度物価上昇率見通し1%台に上げか 日銀、17日から決定会合―【私の論評】実は、オミクロン株よりも日銀が金融引締に転じることのほうが、はるかに恐ろしい(゚д゚)!

令和4年度物価上昇率見通し1%台に上げか 日銀、17日から決定会合

日銀黒田総裁

 日本銀行は17、18日に金融政策決定会合を開き、四半期に一度公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、令和4年度の消費者物価上昇率の見通しを引き上げる方向で検討する。昨年10月の前回リポートで示した0・9%から1%台前半にするとの見方が有力だ。原材料価格の高騰などを受け値上げの動きが出ているためだが、日銀が目標とする物価上昇率2%を達成する状況ではなく、大規模な金融緩和策は維持される方向だ。

 背景にあるのが原油高や円安の進行などによる企業の輸入コストの上昇だ。企業同士の取引価格を示す国内企業物価指数は昨年11月に前年同月比の伸び率が比較可能な昭和56年以降で最大の9・2%を記録し、12月も8・5%(速報)で過去2番目の大きさだった。

 こうした輸入コスト高を販売価格に反映する動きが食品業界などで相次いでおり、12月の日銀企業短期経済観測調査(短観)では、販売価格が「上昇」したと答えた割合から「下落」の割合を差し引いた指数が大企業の製造業でプラス16と6ポイント上昇、非製造業でプラス10と4ポイント上昇した。

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は今月12日の支店長会議で、物価の先行きに関して「徐々に上昇率を高めていく」との見通しを示した。日銀はこれまでの展望リポートで物価動向について「下振れリスクが大きい」と評価してきたが、今回の会合では今後の物価上昇を見据え表現を改める可能性がある。

 ただ、岸田文雄政権が求める企業の賃上げが進まなければ値上げの動きも広がりを欠き、市場では物価上昇率が2%になる状況には当面ならないとの見方が強い。このため、日銀は短期金利をマイナス0・1%とし、長期金利を0%程度に誘導する金融緩和政策を維持する見通し。

【私の論評】実は、オミクロン株よりも日銀が金融引締に転じることのほうが、はるかに恐ろしい(゚д゚)!

日銀は5日、2021年末の国債保有残高が20年末と比べて約14兆円少ない約521兆円だったと発表しました。前年末比で国債の保有残高が減少するのは、08年以来13年ぶりです。日銀は2%の物価上昇目標の達成に向けて大規模な金融緩和を続ける姿勢を崩していないが、金融市場では「事実上の量的緩和の縮小」(エコノミスト)との受け止めもあります。

日銀は13~20年の8年間で国債保有を421兆円増やし、全体の国債発行額に占める保有比率は4割を超えた。日銀は20年の新型コロナウイルス禍など非常時には購入量を増やす一方、平時は購入を減らしてきました。


21年3月には日本株に連動する上場投資信託(ETF)の購入方針も市場が動揺したときに大規模に買う方向へと改めました。21年末の残高(購入簿価)は36兆3400億円で、前年からの増加額は1兆400億円となり、20年の年間増加額(7兆500億円)から急減しました。

この状況は、白川日銀前総裁以来です。白川氏といえば、日銀はインフレをコンロールできないという、「日銀理論」の論者で、インフレ目標に頑強に反対してきました。

過去の日銀の金融政策の間違いは、まずは06年3月の福井俊彦元総裁時代に株価・地下は上がってはいたものの、一般物価は量的緩和停止を実施したことにはじまりました。

それに続き白川日銀時代には、日銀が保有する長期国債の残高を銀行券の発行残高の範囲内とする「銀行券ルール」に縛られ、結果として国債購入ができず、マネタリーベース(銀行券+当座預金)の拡大をしなかったことです。

2014年に黒田氏が日銀総裁になってから、2016年までの日銀は異次元の緩和を実施していましたがが2016年にイールドカープ・コントロールを導入して以来中途半端な緩和に転じてしまいました。

13年4月から16年9月までのマネタリーベース対前年同月比の平均は37%増ですですが、それ以降は11%増にとどまっています。直近の状態は10%にも達していないです。

「銀行券ルール」で縛られた白川日銀は、マネタリーベースを増加させるために、国債購入ではなく金融機関への貸出増加を行いました。ピーク時には、貸出のマネタリーベースに占める割合は4割程度でしたが、十分なマネタリーベース増はありませんでした。

黒田日銀は、国債増によってマネタリーベース増を行ったので、貸出はマネタリーベースの1割程度と安定していました。しかし、20年のコロナ危機以降、貸出は増加し、今や2割程度まで上昇しています。

政府の国債発行量が多くないので、マネタリーベース増を維持するために、コロナ危機を契機に貸出増となった事情もあるとは思います。

黒田総裁が大規模な金融緩和を始めてから9年近くとなりますが、早期達成するとしていた2%の物価目標はいまも「相当遠い」(黒田総裁)状況が続いています。この状況なら、本来ならさらに量的・質的金融緩和を拡大して継続すべきです。

政府が国債発行量をさらに少なくして、日銀がさらに量的緩和の縮小をするようなことにでもなれば、また日本は深刻なデフレに見舞われなかねません。

過去の深刻なデフレの期間に何が起こっていたかといえば、自殺者の増加です。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
堺屋太一氏

堺屋太一氏は、2019年に他界されましたが、この記事は2016年のもので、まだご存命のときです。この当時は、日銀は異次元の緩和から、イールドカーブ・コントロールで緩和を手控える直前でした。異次元の緩和で、雇用情勢が劇的に変わっている最中でしたが、それにしても、酷いデフレと、就職氷河期の記憶が生々しく残っている時期でした。

この記事は、結果として堺屋氏を批判することにもなっていますが、その批判の矛先は、主に過去の政府や日銀による政策に向けられたものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
自殺者数と景気は相関が高いことが知られていますが、この数年間の経済状況の改善と、さらに自殺対策にここ数年経費を増加させていく方針を採用していることもあり最近は自殺者数が減っています。類似の事例はホームレス対策にもいえ、ホームレス数は景気要因に関わらず対策費の増加に合わせて減少しています。

自殺者数の減少については、マクロ(景気)とミクロ(自殺対策関連予算の増加スタンス)の両方が功を奏していると考えられます。

自殺対策関連予算の推移はまとまったデータがないので拾い集めてみると

平成19年 247億円 平成20年 144億円 平成21年 136億 平成22年 140億 平成23年 150億 平成24年 326億 平成25年 340億 平成26年 361億 となってます。

以下に、失業率と自殺者数の推移のグラフを掲載しておきます。
日本がデフレに突入した、97年あたりからそれまで、2万台であった自殺者数が、一挙に3万人台になっています。このグラフをみただけでも、経済政策の失敗は自殺者数を増やすということがいえそうです。
経済政策の失敗は自殺者を増やすであろうことは、容易に想像できます。私は、2000年代に会社で人事を担当していたことがありましたが、そのあたりに採用した新人から、様々な話をきき、その当時の若者はとてつもない状況におかれていたことを肌身で感じたことがあります。

とくにかく、就職が悪夢のようになかなか決まらないこと、国立大学を卒業しやはり国立の大学院に行った女性の新人が卒業と同時に奨学金などの名目で数百万円の借金を抱えていることや、その当時の学生たちの極めて質素な生活ぶりなどを聞き、これはただ事ではないと、ひしひしと感じていました。

だからこそ、自殺者の推移に関しても、他人事ではなく、身近に感じられたのだと思います。

ただ、当然のことながら、採用は極めてやりやすく、逆に不気味さを感じたことを覚えています。その当時は、多くの企業が採用を手控え、採用するにしても能力などは二の次にして、いわゆるコミュニケーション能力を重視していました。

ただ、このコミュニケーションという言葉が曲者で、要するに「調整型」の人材を採用したいのですが、「調整型」というのでは、格好が悪いので「コミュニケーション」という言葉を用いていたようです。

実際、当時「コミュニケーション能力重視」というキャッコピーを用いていた企業の採用担当者に「御社におけるコミュニケーション能力」とは何かという質問をしてみたところ、「報・連・相」重視などと答え、コミュニケーションの本質に迫るような答をした人はいませんでした。

そうして、この記事では、『経済政策で人は死ぬか』という書籍を紹介していますが、この書籍でははソ連が崩壊した直後のロシアで男性の平均寿命が自殺や病気で60歳未満になった事例などを丹念に分析し、経済政策のまずさが自殺者を増やす可能性がかなり高いことを示しています。

経済政策が極端にまずく、特に失業者が増えるような政策をしてしまえば、自殺者が増えるのは当然のことだと思います。それに、若者のやる気を削ぐことにもつなかります。これに思いが至らないひとは、想像力が欠如しているのではないかと思います。

現状では、オミクロン株の脅威がメディアで盛んに喧伝されていますが、感染者は増えたものの、死者はほとんど出ていません。

私は、経済政策の不味さが、自殺者を増やす可能性が高いことを考えると、オミクロン株よりも日銀が金融引締に転じることのほうが、はるかに恐ろしいと思います。白川貧乏神のように、日銀が金融引締に転ずることがあれば、景気が悪くなり、失業者が増え、自殺者が増加する悪夢が再燃しかねません。

企業の採用で再び「コミュニケーション重視」という空疎なキャッチフレーズが目立ってくれば、悪夢の再来かもしれません。

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2020年4月18日土曜日

政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対―【私の論評】中国ウイルスで死者が出る今、政治がまともに機能していれば、起こらないはずの悲劇が起こることだけは真っ平御免(゚д゚)!

政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対

安倍晋三首相は17日の記者会見で
安倍晋三首相は17日の記者会見で、新型コロナウイルス感染拡大の阻止に向け「国民皆でこの状況を連帯し、乗り越える」と訴えた。2月29日以降、記者会見の回数は5回に上る。だが、都市部を中心に感染者数は増え続け、緊急経済対策に盛り込んだ現金給付では減収世帯への30万円の給付から国民1人当たり現金10万円の一律給付に方針転換するなど迷走を重ねた。首相の思惑とは逆に、政権への批判は強まっている。

 首相官邸の政策決定にスピード感が欠けるのは、前例踏襲を常とする官僚が壁になっているためだ。

 感染の有無を調べるPCR検査について、首相は再三、1日当たりの検査能力の引き上げを指示したが、厚生労働省は軽症者の入院が増えて重症者支援が遅れれば医療崩壊を起こすと難色を示してきた。新型コロナは感染しても軽症か無症状の人が多い。検査ができないままでは、国民の不安が強まるのは当然だ。

 新型コロナ感染症に治療効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の承認手続きやオンライン診療でも、副作用への懸念から、医師免許を持つ幹部職員らが「立ちはだかった」(政府関係者)とされる。

 現金給付をめぐっては、財務省が国民全員を対象にすれば、「大企業や年金生活者など打撃のない人にも配るのは不公平だ」と主張した。官邸は一律給付が膨大な財源を必要とすることも考慮し、対象を減収世帯に限り、1世帯当たり30万円の給付に傾いた。

 だが、首相が要請した全国の小中高校などの休校や外出自粛による在宅勤務で、家庭では食費など想定外の支出がかさんでいる。企業は先行きへの不安から今後の賃上げに慎重になるのは必至だ。消費税率10%も家計の重しになるだろう。首相はこうした国民感情を重視し、緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大したのを機に10万円の一律給付に転じた。17日の記者会見で首相は「もっと判断を早くしておけばよかった」と率直に語った。

 「私たちにはもっとできることがある。目の前の現実に立ち向かうだけではなく、未来を変えることだ」。首相は会見でこう協力を呼びかけた。ただ、5月の大型連休を過ぎても感染者数が高止まりし続ければ、首相が要請した国民の努力も巨額の経済対策も水泡に帰する。来年7月に延期した東京五輪・パラリンピックの開催も危ぶまれる。首相は自らの判断が国家の命運を握る覚悟を持ち、果敢に対応すべきだ。(小川真由美)

【私の論評】中国ウイルスで死者が出る今、政治がまともに機能していれば、起こらないはずの悲劇が起こることだけは真っ平御免(゚д゚)!

10万円一律給付を決定する件で公明党がかなり強く出た事で、安倍総理が実現にこぎ着けることができたところがあるのは、事実ではあるのですが、朝日新聞は相変わらずこの件についても印象操作をしています。

「一律給付に反対の安倍首相が折れた」などと報道しています。

【世論の不満、折れた首相 与党に転換迫られ 10万円給付へ 新型コロナ】
(2020/4/17 朝日新聞)

そしてこれ、時事通信も全く同じような報道をしています。

【公明、「連立離脱」論で押し切る 官邸主導の政治手法に影―現金給付1人10万円】
 新型コロナウイルス感染拡大を受けた経済対策で、焦点の現金給付は国民1人当たり10万円とすることが決まった。連立解消まで持ち出した公明党の強硬な要求に安倍晋三首相が折れた形で、2020年度補正予算案を組み替える異例の展開となった。第2次政権発足以降貫いてきた官邸主導の政治手法が今回ははね返され、首相の求心力低下も印象付けた。~以下省略~(2020/4/17 時事通信)
一律給付はむしろ安倍総理は実施したい側でした。それを特に強固に反対していたのは麻生太郎でした。

麻生は「2009年の定額給付は叩かれまくったから絶対にダメだ」と国会でも個人的にも根に持っているのを隠さない答弁ぶりでした。

そこで安倍総理は岸田政調会長に指示を出したわけですが、財務省のポチで緊縮財政派の岸田政調会長は一律給付の声を無視して「1世帯あたり30万円給付します!」と、総理に話を持っていって了承を取り付けました。

岸田政調会長

しかも、蓋を開けてみたらおもいっきり所得制限がついてよくてもせいぜい5世帯に1世帯程度しか対象にならない中身でした。財務官僚としてはまんまとしてやったりと言ったところでしょう。

そこにでてきたのが、公明党です。総理としては、公明党と根回しをした上でこれを利用したのでしょう。

一律給付に連立離脱も辞さないと主張したものの、それでも岸田ら財務省派の連中が一歩も譲歩せず、4時間もの交渉の末に結局結論は先送りとなりました。そこに安倍総理の一押しでようやく一律給付実現にこぎ着けました。
消費税増税についても財務省のポチで国民の利益より財務省を守る個人的政治信念を優先する老害麻生太郎と岸田文雄という財務省の代弁者により、上げざるを得なくなったというのが事実です。

自民党内の若い議員達、特に今回の一律給付と消費税減税を求めた100人になる議員達に言いたいのですが、政府に文句を言うのではなく自分たちの派閥のボス、岸田、麻生にこそそのエネルギーをぶつけるべきだったと思います。

特に麻生は国民の利益より財務省を守るという事に関しては従来から全くブレたことがありません。過去には、消費税増税が間違っている事を講演などで語りつつも、必ず財務省の省益最優で動いてきました。

麻生財務大臣

その麻生の強い影響力の土台になっているのは、麻生に直接文句を言わないくせに麻生派に所属して党内第二派閥の領袖という麻生の権力を支えている議員達です。そこを自覚すべきです。

麻生派の議員がやるべきだったのは、定額給付に対しての個人的な恨みまで持ち出して一律給付断固拒否で抵抗した老害麻生を説得することであったはずです。

なんでもかんでも総理だけを悪者にするのは、「僕は派閥のボスに目を付けられたくないので総理を批判してポーズだけ取ります」という風に見られても致し方ありません。

朝日新聞や時事通信、読売新聞など第一次安倍内閣の倒閣に動いた記者クラブ談合メディアの一部は隙を見ては現在も第一次安倍内閣の時から全く同じ書き方を使っています。

「首相が折れた形だ」、「折れた首相」、「求心力の低下を印象づけた」

意思を通しきれない頼りないリーダー、安倍晋三。これが朝日新聞が第一次安倍内閣のときからずっと繰り返し使ってきたイメージです。そのための「折れた首相」という書き方です。

先のも述べたように、今回は安倍総理は公明党を利用したというのが真相でしょう。

今回公明党が切ってきた「連立離脱」カードは強固な基盤を持っていない議員にとっては
本当にあるかどうかわからない創価票が減る事で落選してしまうという危機を抱くことになります。

特に二階派はそういう有象無象が集まっていますし、岸田派、麻生派もそうした議員は少なくありません。

安倍総理のように地元に圧倒的な地盤を築いている議員ならいざ知らず、当落ギリギリのところにいる議員達にとっては次の選挙で落ちるかもしれないぞという脅しになります。

安倍総理が菅官房長官を切れないのも管-公明党ラインがあるからなのでしょう。

また、今回のことで公明党内の支持基盤層の不満もかなり抑えられるでしょう。公明、山口なつお氏に花を持たせた形ですからね。

自民党内では、一つの派閥ばかり強くさせるとパワーバランスを調整できなくなってしまうのです。面倒な話ですがこれが議院内閣制です。

安倍総理は、国会で反日野党にひたすら嫌がらせされながら空いた時間で政策を進めつつ、こんな水面下のバランス調整を7年以上も続けているのです。

これまでも何かある度にマスコミが「首相の求心力低下を印象づけた」「優柔不断な首相」という印象操作を行ってきました。

こんな事を書きながら同時に「第2次政権発足以降貫いてきた官邸主導の政治手法」などと報道しているのですから噴飯ものです。

朝日新聞や時事通信、読売新聞などの記事のとおりなら、<今までずっと党を無視して官邸で決定し押し切ってきた優柔不断で求心力低下を繰り返してきた安倍総理は8年も政権を続けてきた。>

という矛盾したことになるのですが、彼らはそれに気づいているのでしょうか。

今回のことで改めてはっきりしたのは、麻生太郎や岸田文雄らが国民生活より財務省のポチであろうとする事を選ぶ連中だということです。

岸田派としては岸田がせっかく総理に「1世帯あたり30万円給付します(ほとんど対象にならない)」と報告して了承を得た案が総理と公明党によってはっきりひっくり返されたわけですから、岸田派としてはメンツが丸つぶれということです。しかし、これは国民のことを全く考えずひたすら財務省ポチであり続けたことの代償です。

そうして、それ以上に、岸田があてにならないので切り捨てる事になってもかまわないという判断を安倍総理が行ったことになります。

長い時間外務大臣をやって次期総裁候補の一角にも名前が出るようになった岸田は、総裁選への備えのためにも大臣交代を直訴。そして今のポジションにいたわけですが、肝心な所で財務官僚が書いた台本で総理を騙して「ほとんど真水を出させない経済対策」を押し通そうとして大やけどをした形です。むしろ求心力低下は安倍総理よりも、岸田の方がよほど大きいです。

昨日の衆議院厚生労働委員会で、山井和則(京都6区比例復活)、岡本充功(愛知9区比例復活)らが安倍総理の揚げ足取りだけを目的に質問に立ちましたが、今回総理が10万円給付に変更したことに関連して以下のようなやりとりがありました。



山井
「総理は一律給付には3ヶ月以上かかると当初言っていた!嘘をついていたな」

安倍総理
「3ヶ月以上かかると言っていたので新たな方法を検討するように指示したら期間短縮ができるとなったから一律給付に決めた」

山井
「総理は虚偽の説明をしていたんだな!総理の言う事は信用できない!緊急事態宣言もろくに精査せず発表したんだな!」「総理の言う事は信用できない」

山井としては、「総理は一律給付をしたくなくて嘘をついていた。責任を取って辞任しろ!」ということにするために質問に立ったのがよくわかる質疑でした。

山井の不毛な質疑でしたが、こんな質疑でも山井の意図とは全く別の角度で安倍総理の役に立ちました。

山井の質問に対する安倍総理の答えは以下のようなものでした。

安倍総理
「これまで一律給付は3ヶ月以上かかると説明されてきた。新たな方法を検討するように見直しをさせたら住基台帳を使うアイデアが出てきた、これで5~6月頃から配布が可能と言われた」

自民党内で一律給付と消費税減税を求めた100人以上の議員が党内で議論を開いた時に政調会長らは「一律給付の場合は3ヶ月以上かかってかえって時間がかかるから所得制限」という話で押し切っています。

この件は小野田紀美議員がぶち切れしてツイッターで愚痴っていたのでご存じの方もいらっしゃると思います。

要するに麻生も岸田も一律給付反対、緊縮財政派なので一律給付に対して財務省サイドは「できない理由」を作ってそれしか方法がないかのように説明をしてきたわけです。

なので麻生大臣に至っては「一律にしたら金がくばられるのは8月以降になる」とまで言っていました。麻生は良くも悪くも自分の部下の説明は疑わないようにしているので財務官僚にまんまと嘘をすり込まれていたのかもしれません。

財務官僚はその説明で総理まで騙していた形になります。

財務省の岡本薫明事務次官

ところが一律給付を実現させたい総理が見直しをさせたら住基台帳やネットなどを使う事で早く配れるようにできる、という話が出てきたわけです。出てきたのは総務省サイドからのアプローチのようです。財務省ってほんとに国民の邪魔しているだけです。

本当ならマイナンバーカードが全国民に普及していたらそれに基づいて振り込めばいいだけなのでもっと短縮できたはずです。日本のマスコミと反社会勢力(共産党と旧社会党系)にとっては口座の名寄せが行われるといろいろ都合が悪いので長い間邪魔をしてきたおかげで歴代政権は、彼らに足を引っ張られ放題です。

先にもあげたように、総理に対してすら「一律給付は3ヶ月以上かかる」と「できない理由」を作って説明してきた財務省は嘘つきであり、やはり解体すべきだと思います。

対象を絞って30万円支給するのと、10万円一律給付とでは、どう考えても10万円一律給付のほうが、はるかに簡単で、早いはずです。対象を絞った場合は、対象であるかどうかを確認するのにかなり手間取るはずですし、役所に人が大勢集まりコロナ感染を誘発しかねません。

さらには、支給金詐欺も横行しそうです。何しろも対象を絞っての給付金は、給付資格を何らかの形で証明しなければならなくなりますから、複雑だし、不正受給の温床にもなります。

今回のような、緊急時には財務省と財務大臣は対策会議等に参加できないようにするという措置が必要かもしれません。何しろ緊急時であっても国民の命よりも省としての方針、緊縮財政を重視するのですから、これからも国難のたびに足を引っ張られることになるのは間違いないでしょう。

そもそも、復興税などという、自然対策に税金を用いるなど古今東西に全く例のない(疑うなら調べてください)奇妙奇天烈な税制をつくったのですから、これくらいのことはされても仕方ありません。多くのサラリーマンは未だにこの税金を天引きで支払い続けているということを忘れるべきではありません。

安倍総理は党内のバランスを取りながら今回は公明党まで使ってきたやっと実現できた形です。政策実現のためにそこかしこに根回しをしているのでしょう。緊急事態宣言についても反対する閣僚を説得して回っていたのが総理という実態だったようですし、五輪延期についてもしっかり関係各所とIOCなどと調整がついてから発表しました。

今回自民党内で一律給付を求めた若手議員達はこういう実態を踏まえて発言と行動をより磨くべきです。

中国ウィルス終息後、いかに中国の影響力を削いでいくか、むしろ本番はそこからになると見ておかなければなりません。党内で強力に議論を進められるだけの実力を付けてもらいたいです。

議院内閣制の総理大臣は独裁などできず、なかなか前に話が進んでいかないもどかしさがどうしてもあります。ですが面倒であっても手続きこそが民主主義でありますし、利害が対立するところを調整するのですから時間がかかるのは当然とも言えます。
これからの課題は、国益と利害対立する、財務省の「省益」をいかに取り除いていくかということです。

世論調査では、10万円の一律給付のほうが圧倒的な支持がありました。結局私たち国民の世論の後押しもあって今回の10万円一律給付は実現したわけですが、次のステージは消費税減税でしょう。

総理の負担を考えれば、国会で反日4野党のゴミ質疑に毎日何時間も付き合わされているのだけでも辞めさせるべきと思います。

日本のマスコミの大半は総理を潰すことしか考えてませんので、これからも実態を無視した記事を書き続けるのでしょう。また、テレビのワイドショーも右に倣えです。

私たち国民が冷静に状況を分析し続けていくしかありません。ワイドーショーだけが、情報のソースのワイドシー民は、情弱であり、ワイドーショーをみて「対策が遅すぎる」「首相は公明党に折れた」とか挙句の果てに「もりとも桜」の話題も出るような始末です。実際、私もワイドショー民のそうした反応に時々遭遇することがあります。

馬鹿な情弱は、馬鹿の壁を高く築いてどうしようもないのかもしれませんが、それにしても、それが自分の親族、おじいちゃん、おばあちゃんなら、子供や孫なら、本当に残念なことだと思います。幸いなことに、我が家ではそのようなことはなく、ワイドショー民にあうのは家以外であり、その点では私は本当に恵まれていると思います。

ワイドショー民には、ネットの報道番組等をテレビでみられるようにしてあげて、財務省やそのポチたちからの情報操作、印象操作を受けないようにして、緊縮病を解いてあげるべきです。

このブログでは、『経済政策で人は死ぬか? 公衆衛生学から見た不況対策』という書籍を哨戒したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下のこの本の著者たちの言葉を引用します。
民主的な選択は、裏づけのある政策とそうでない政策を見分けることから始まる。特に国民の生死にかかわるようなリスクの高い政策選択においては、判断をイデオロギーや信念に委ねてはいけない。…正しくかつわかりやすいデータや証拠が国民に示されていないなら、予算編成にしても経済政策にしても、国民は政治家に判断を委ねることができない。その意味で、わたしたちはこの本が民主化への第一歩となることを願っている。
「経済政策はどんな薬、手術、医療保険よりも命に関係する」という著者たちの言葉の重みを感じます。この記事は、最近もこのブログで紹介させていただきました。

中国ウイルスが終息したとしても、その後の経済対策が悪ければ、中国ウイルスの死者を上回る死者を出すおそれもあるのです。

この記事を書いたのは、2016年3月4日です。この記事を読んだ私の知人の中に、「経済政策が人を殺すこともあるということは、絶対に信じることができない」という人がいました。

私は、これは私一人だけの意見ではなく、多くの経済学者などが指摘するところだと、言っても彼は考えを翻しませんでした。そうして、結局この書籍も読まなかったようです。

その彼に、最近「経済政策が悪ければ人を殺すこともある」と思うかと、再度聴いてみました。そうすると、今の彼は、中国ウイルスのこともあってか、考えを翻したようでした。そうして、この書籍も読んでいました。

世の中彼のような人ばかりだと良いのですが、ワイドショー民はそうではないです。彼らは、可愛そうなだけでなく、緊縮政策支持で自分で意識せず、意図せず、若い人たちを間接的に殺すことにもなりかねません。それが、自分の子供や孫だったらどうなるのでしょうか。今はただでさえ、中国ウイルスで死者が出る時期です。本来政治がまともに機能していれば、起こらないはずの、悲劇が起こることだけは真っ平御免です。


2019年7月23日火曜日

参院選後に直面する経済課題…消費税は「全品目軽減税率」を 対韓政策では“懐柔策”禁物!―【私の論評】大手新聞記事から読み解く、参院選後(゚д゚)!

参院選後に直面する経済課題…消費税は「全品目軽減税率」を 対韓政策では“懐柔策”禁物!

自民党本部の開票センターで、当確者の名前にバラを
付ける安倍首相=21日午後9時47分、東京・永田町

21日投開票された参院選では、与党は改選過半数を確保した。消費増税や外交など、参院選後に直面する課題にどう対処すればいいのか。

 10月からの10%への消費増税は決まりだ。ただし、その時の世界経済情勢を考えると経済政策としてはまずい。

 これは世界のエコノミストたちの共通認識だ。米中貿易戦争による中国経済鈍化、10月末予定の「ブレグジット」(英国のEU離脱)による経済混乱、米国とイランの緊張による偶発的な中東紛争の懸念などリーマン・ショック級の不安材料がめじろ押しだ。

 本来ならわざわざ日本で消費増税することはない。しかも、日本の財政破綻確率は無視できるほど小さい。

 だが、今や小売店でも軽減税率対応のシステムも導入され、消費増税の延期も実務上困難だ。そこで次善の策であるが、消費増税後、全品目を対象とする軽減税率にも備えておくべきだ。教育無償化の財源が不足するとの批判もあるようだが、日本維新の会が参院選で公約していたように、財源捻出は難しくない。

 欧米の金融政策は緩和傾向だろう。日本も負けずに緩和しないと民主党政権時の二の舞いになってしまう。

 中東問題で、米国とイランの仲介役として日本は世界からも期待されているが、米国を中心とする「有志連合」の話も具体的に出ており、参加すれば仲介役は諦めざるを得ないだろう。ただ、日本のタンカーを誰が守るかといえば、日本以外が犠牲を払って守ってくれるはずはない。(1)有志連合への参加(2)単独警護(3)静観の三択のうち、(1)か(2)しかあり得ないと思うが、これは日本の大きな方向性を決定付けるので、しっかりと議論すべき課題だろう。

 中東問題は日本のエネルギー安全保障に直結する。トランプ米大統領はツイッターで日本と中国を名指し、「ホルムズ海峡は自国で守れ」と述べた。早速中国はこれを奇貨として自国でタンカーを守る方向だが、日本も同じ方向で動くべきだ。必要なら法改正も含めて与野党間で議論することが求められる。

 対外関係では、韓国問題もある。韓国は相当焦っている。依存度が高い中国経済の悪影響も受けており、今回の日本の輸出管理強化は効果的だ。これはいわゆる「元徴用工問題」での報復ではなく、安全保障上の貿易管理措置の見直しだ。かつてのココム(対共産圏輸出統制委員会)規制の流れをくむ「ワッセナー・アレンジメント」(通常兵器などの輸出を管理する協約)などの国際諸規制に合致した国が、優遇措置のある「ホワイト国」になれる。

 しかし、韓国はEUからもホワイト国として認定されていない。そうした貿易管理の不備への懸念について、韓国が日本に説明し払拭しなければいけない。ボールは韓国にあるので、日本としては韓国が何をするのかを見定めるべきで、下手に懐柔策を弄するべきではない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】大手新聞記事から読み解く、参院選の結果と、今後(゚д゚)!

公示前日に行われた党首討論での舌戦が各メディアで報じられましたが、大手新聞各紙は今回の参院選の争点・論点をどのように伝えたのでしょうか。以下にそれを振り返ってみます。

1面トップの見出し

《朝日》…「首相 消費増税 10%後は10年不要」
     「野党 家計 消費重視の経済政策に」
《読売》…「首相 消費税『10年上げず』」
《毎日》…「首相『再増税10年不要』」
《東京》…「改憲問う」

解説面の見出し

《朝日》…「暮らし・憲法 舌戦」
《読売》…「野党『年金』に集中砲火」
《毎日》…「改憲 自公に温度差」
《東京》…「年金ビジョン 真っ向対立」

選挙の争点・論点 キーワードを掲載します

■「安倍1強」に歯止めを■《朝日》
■さらなる負担増と給付抑制を■《読売》
■与党間にも温度差■《毎日》
■三権分立の危機■《東京》

【朝日】は2面の選挙特集で、党首討論会の内容を網羅的に紹介しています。大見出しは「暮らし・憲法 舌戦」としていて、続く記事の前半には「野党、年金・増税で攻勢」「首相は野党共闘を批判」、後半には「首相、改憲で国民に秋波」「野党、揺さぶりに不快感」としています。

「暮らし」で総括されるのは、「年金」と「消費税」の2点です。

野党側からの追及で説得力があるとみられるのは、1つは国民民主党・玉木代表の議論で、「公的年金だけで収入100%の人が51.1%、生活が苦しい人も半数を超えている」という指摘。たまたま前日に紙面を賑わせたものですが、貧しい「年金生活」のリアリティを突きつけています。「貧困高齢者」という概念化も重要です。

もう1点は共産党・志位委員長の主張。マクロ経済スライドで国民の年金を実質7兆円減らすという安倍政権の政策の変更を求めています。「100年安心」の意味合いを有権者が知る上で重要な一歩です。

ただ、年金問題というか、年金の本質は保険であり、保険に対する対処法(マクロ経済スライド等)は元々定まっており、これはいずれの党が与党になって運営したとしてしても、ほとんど変わりはなく、これを論点・争点とすることにはかなり無理があり、実際他国においてはこれが選挙の争点・論点になったことはありません。

記事は、こうした議論に対して安倍氏は「野党共闘と個別政策との整合性を問う形で逆襲する」として、例えば枝野氏は、マクロ経済スライドを「民主党政権時代もずっと維持してきた」ではないかと反論しました。

改憲についてはほとんど堂々巡りの体で、新しい論点はないですが、参院選の選挙結果如何ではやにわに動き出す可能性があると思われます。安倍氏は「国民民主党の中にも憲法改正に前向きな方々もいる。そういう中で合意を形成していきたい」と発言していて、国民民主党に手を伸ばそうとしています。安倍氏としては、改憲手続きの進行の各段階で抵抗する力を分散、減衰させる作戦でしょう。

《朝日》12面社説のタイトルは「安倍一強に歯止めか、継続か」。政権選択の選挙ではないが、今回の参院選、「その結果には政治の行方を左右する重みがある」として、21年9月までの自民党総裁任期を得た安倍氏による「安倍1強政治」に歯止めをかけて政治に緊張感を取り戻すのか、それとも現状の継続をよしとするのかが問われているとしていました。

勿論、《朝日》は「歯止めを掛けるべきだ」といっていることになります。特に強く批判しているのは、民主党政権時代を引き合いに「混迷の時代に逆戻りしていいのか」と繰り返す、安倍氏の物言いについてです。「現下の重要課題や国の将来を語るのではなく、他党の過去をいつまでもあげつらう姿勢は、良識ある政治指導者のものとは思えない」とまで言っていました。

【読売】は3面の解説記事「スキャナー」。見出しは「野党『年金』に集中砲火」。主に、立憲民主党・枝野代表とのやり取りをピックアップして、細かく紹介しています。

3面には社説もあり、そのタイトルは「中長期の政策課題に向き合え」「持続可能な社会保障論じたい」としています。

《読売》が「中長期の政策課題」と位置づけているのは、少子高齢化と人口減少への対策で、具体的には「社会保障制度の総合的な改革」を指しています。2012年の3党合意に基づく「税と社会保障の一体改革」は団塊世代が後期高齢者となる2025年に備えた施策だったので、その先、高齢化がピークを迎える2040年を見据えて「新たな制度設計を考えることが重要」だと言っています。その中心的な中身は「負担増と給付抑制」ということになり、《読売》がイメージするのは、消費税率のさらなる引き上げということになるらしいです。

討論会で安倍氏は、今後10年間は10%以上への引き揚げは不要と述べましたが、《読売》はこれが気に入らないようです。「消費税率を上げるから財政再建ができない」と考える経済学者もある中、まもなく税率10%への引き上げが強行されます。《読売》の背後には、消費税の税率をさらに上げて、財政再建を果たそうとする財務省の影が見え隠れしています。

【毎日】は3面の解説記事「クローズアップ」で、党首討論会について伝えている。見出しには「改憲 自公に温度差」とありました。

候補を一本化しながら野党はばらばらではないかと安倍氏が批判するのに対して、《毎日》は「与党も食い違いがありますよ」と言っているわけで、野党側から逆ねじを食わせている形になっています。

与党間の「温度差」は憲法改正に関するもの。討論会で公明党・山口代表は「憲法(改正)が直接今の政権の行いに必要なわけではない」と語り、《毎日》は「温度差をにじませた」と言っています。

因みに山口代表のこの発言に注目したのは《毎日》だけのようです。さらに山口氏が「与野党を超えて議論を深め、国民の認識を広めることが大事だ。まだまだ議論が十分ではない」と述べたことについては「『合意形成』にさえ触れなかった」というふうに発言の意味を捉えています。

5面の社説タイトルは「欠けていた未来への視点」となっていました。「深刻な人口減少問題を正面から取り上げる党首がいなかつたことをはじめ、多くの国民が抱いている将来への不安の解消につながる論戦が展開されたようには思えない」としていました。

ただし、人口減と経済の低下とは直接の関係はありません。事実、世界中の先進国が人口減に見舞われていますが、日本ほど経済が低下している国はありません。世界の他の先進国と、日本で違うのは、日本は平成年間においては、実体経済とは関係なく、金融引き締めと、緊縮財政をしてきました。



他先進国でも、金融政策や財政政策に失敗した国もありますが、日本ほど長期間にわたり、結局平成年間のほとんどの期間にわたって、金融引き締め、緊縮財政をした国はありません。

【東京】は2面の解説記事「核心」で討論会について解説、見出しには、まず大見出しが「年金ビジョン 真っ向対立」となっていて、続いて「与党 将来のため給付抑制」「野党 今苦しい高齢者優先」と与野党が対比されています。

この見出しの焦点は「マクロ経済スライド」の是非ということになるでしょうが、これは保険制度の基本であり、これを無視するといずれ保険制度にほころびがでてしまいます。いずれの政党にしても、政権与党になったとしたら、保険制度の基本中の基本中の基本である、マクロ経済スライドを実行しないということはあり得ません。だからこそ、民主党政権時代にもこれを実行していたのです。

安倍氏はこの仕組みがなければ「40歳の人がもらう段階になって、年金積立金は枯渇してしまう」としたのに対して、共産党・志位委員長は「国民の暮らしが滅んだのでは何にもならない」としてマクロスライドの廃止を要求。立憲民主党・枝野代表も「共産党の提案を含め、広範な議論が必要」と言っていました。

ただし、これは経済を良くすれば、おのずと改善されるものであり、野党はここで経済を具体的に良くする政策を強く打ち出せば良かったのでしょうが、そうではなかったので説得力の欠けるものになりました。特に、立憲民主党の枝野氏の経済理論は、金融緩和などはせずに、最低賃金をあげるというもので、これは昨年韓国で文在寅大統領が実施し、雇用が激減して大失敗した政策です。

5面の社説はタイトルですが「三権分立の不全を問う」となっています。他紙とは明らかにニュアンスを異にしているようですが、官邸に過度に権力を集中させてきた「アベ政治」をこのまま続けさせて良いのかという論点になっています。その意味では《朝日》の社説に通ずるものがある。

そうして、各新聞に共通するのが、時の権力に反対すること正義とい価値観です。そうして、この正義は今回の選挙により国民にノーを突きつけられたようです。

そうして、上にも掲載したように、特に【読売】にみられるように、日銀もあわせた統合政府ベース(民間企業でいえば連結決算)はすでに終了したはず財政再建を財務省はまだ終了していないと強弁して増税を正当化しようとしています。

さらに、政府単独でみても、資産と負債の両方を勘定ににいれれば、米国や英国よりも少ないはずの政府の借金を大げさに言い立て、それを根拠として増税しようとする財務省の魂胆なのですが、今回は安倍政権が増税することにしたため、これはあまり重要な論点とはなりませんでした。

大手新聞の購読料は軽減税率の適用となり増税後も値上げされない

本来ならば、もっと大きな論点になっても良かったはずなのですが、野党側も反政府ということで増税に反対しているだけで、経済の内容は良く理解していなかったので大きな論点にできなかったのでしょう。新聞も軽減税率の対象になるため、産経新聞など一部を覗いては増税に反対はできなかったのでしょう。

現在、米国、中国、英国、EU など多くの国々で減税しようとしているときに、日本だけがデフレから抜けきってもいないのに増税しようとする異常事態ですから、本来であれば、もっと大きな論点にできたはずです。

この財務省の動向はやはり変わらないようです。安倍晋三首相(自民党総裁)は9月中旬に内閣改造・党役員人事を行う考えです。内閣の要である菅義偉官房長官と麻生太郎副総理兼財務相は留任の方向で調整しているそうです。

麻生太郎副総理兼財務相(左)と菅義偉官房長官(右)

このブログでも以前述べたように、この内閣改造で麻生太郎氏が財務大臣に留任しなかったとしたら、官邸は財務省に対して何らかの対抗処置をしようとしているとみても良いですが、今回の内閣改造ではそうはならなかったようです。

やはり、強大な財務省の圧力を軽減し、政権運営を円滑にするために今回は、麻生氏を財務大臣に据え置くしかないようです。

だからこそ、高橋洋一氏が上の記事でも主張しているように、全品目を対象とする軽減税率を適用すべきです。全品といかなくても、消費に大きな影響を与える物品に関しては、軽減税率を適用して、増税の悪影響を取り除くべきです。

ただし、いずれの時点の内閣改造においても、麻生氏が財務大臣にならないという事態が生じた場合は、官邸の財務省に対する反撃の狼煙があがったものと受け取るべきでしょう。

そうして、財務省は本来政府の一下部組織にすぎないものが、金の配賦や、国税局の徴税権をかさに着て、あたかも一台政治グループのように振る舞う財務省の存在こそが、日本の政治を駄目にしていることをもっと多くの人々が理解すべきでしょう。

【関連記事】

2018年2月18日日曜日

FBI、孔子学院をスパイ容疑で捜査―【私の論評】今後の捜査でスパイ活動にかかわっていることがはっきりすれば日本も排除を検討すべき(゚д゚)!

FBI、孔子学院をスパイ容疑で捜査

アメリカの連邦捜査局(FBI)がアメリカ国内で活動する中国政府対外機関の「孔子学院」をスパイ活動やプロパガンダ活動など違法行為にかかわっている疑いで捜査の対象としていることが議会の公式の場で明らかにされた。孔子学院は日本の主要大学でも中国の言語や文化、歴史を広めるという活動を展開している。

クリストファー・ライFBI長官
この捜査の報告は2月13日、アメリカ連邦議会上院の情報委員会の公聴会でクリストファー・ライFBI長官自身によって言明された。ライ長官は同委員会の主要メンバーのマルコ・ルビオ議員らの質問に答えた。ルビオ議員は地元選挙区のフロリダ州での孔子学院は中国政府の命令により、アメリカの大学に影響を行使し、中国の共産主義思想などを広めるとともに、その関係者を使ってのスパイ活動までを働く疑いがある、と主張した。

マーク・ルビオ議員
ライ長官は次のような骨子の証言をした。

・中国政府はアメリカ国内の大学などに設けた孔子学院を利用して、中国共産党思想のプロパガンダ的な拡大だけでなく、米側の政府関連の情報までも違法に入手するスパイ活動にかかわっている容疑があり、FBIとしてすでに捜査を開始した。

・孔子学院は中国の言語や文化の指導を建前としているが、現実には中国共産党政権の指揮下にある機関としてアメリカなど開設相手国の中国留学生を監視し、とくに中国の民主化や人権擁護の運動にかかわる在米中国人の動向を探る手段とされている。

・中国側はアメリカでの学問の自由や大学の開放性を利用する形で主要大学などに食い込み、アメリカ人学生への思想的な影響行使のほか、中国人留学生をひそかに組織して民主化運動に走る中国人学生を取り締まっている。
孔子学院 出典:The Confucius Institute at The University of Manchester
アメリカでは孔子学院が全米的に広がりをみせた後、ここ数年はいくつかの大学で政治的な問題を起こし、閉鎖を命じられるケースも増えていた。シカゴ大学では大学当局が一度は学内に開設を認めた孔子学院を2014年に閉鎖した。だがFBI長官が公式の場で孔子学院自体を捜査の対象としていると言明したことの意味は大きい。

日本でも孔子学院は早稲田大学、立命館大学、桜美林大学など10校以上の主要大学に開設されているという。

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

【私の論評】今後の捜査でスパイ活動にかかわっていることがはっきりすれば日本も排除を検討すべき(゚д゚)!

札幌においては、札幌大学内に「孔子学院」が設置されています。札幌大学では、2016年に、[札幌大学孔子学院設立10周年記念と銘打ち、中国・広東外語外貿大学学生芸術団の日本公演を開催しました。そのポスターが以下の写真です。
[札幌大学孔子学院設立10周年記念]中国・広東外語外貿大学学生芸術団の日本公演を開催します
クリックすると拡大します
札幌孔子学院では、ブログも解説しており、以下のような内容の記事も掲載されていました。

札幌大学孔子学院 / Confucius Institute At Sapporo University
「第12回日中経営フォーラム」が広東外大で開催され、「一帯一路」と企業の国際化を討議しました
2017年10月28日に「第12回日中経営フォーラム」が中国・広州市にある広東外語外貿大学北キャンパスの国際会議ホールで開催されました。今回のテーマは「一帯一路」と企業の国際化です。 
開幕式には、広東外語外貿大学副学長焦方太教授,華東理工大学商学院副院長李玉剛教授、札幌大学総合研究所所長・孔子学院院長輔佐汪志平教授などが出席しました。

当然のことながら、このフォーラムでは「一帯一路」の良い面ばかり協調した極悪な内容が喧伝されたのでしょう。

孔子学院については、以前からその存在のいかがわしさが指摘されていました。このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「孔子学院」にノー 米シカゴ大、契約打ち切り―【私の論評】中国の思想侵略にノーをつきつけたシカゴ大!学問の独立を守るということはこういうことだ。日本の大学も見習え(゚д゚)!
シカゴ大学キャンパス
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。
米シカゴ大学は27日までに、学内の中国語教育機関「孔子学院」との契約更改交渉を打ち切ったと発表した。中国政府の方針に基づく運営が「学問や言論の自由を脅かす」として、多数の教授が連帯し、学院の閉鎖を求める運動が起きていた。名門シカゴ大の決定は、孔子学院を抱える他の大学にも影響を与えそうだ。 
大学の担当者によると、孔子学院との契約は9月末で切れるため、既に予算が拠出された講座や研究計画の終了後、閉鎖される公算が大きい。 
孔子学院は中国の「ソフトパワー」拡大の拠点として中国政府が全面的に出資し、世界各国の大学に開講されている。一方で運営をめぐるトラブルも相次ぎ、米大学教授協会は「中国政府の一機関」と批判、各大学に契約の打ち切りを促す声明を出している。
さて孔子学院がなぜ問題になるのか、そのヒントになる内容として、南開大学周恩来政府学院国際関係学部の韓召頴教授が2011年の季刊「公共外交(パブリック・ディプロマシー)」誌(秋季号)に、孔子学院設立目的を分かりやすくまとめているので以下に抄訳します。
 孔子学院は中国公共外交における重要な役割を担っており、中国外交の選択肢を大きく広げるものである。 
 20世紀の1990年代にはいると、中国の総合国力と国際影響力の増強スピードに比較して、各国の対中理解は乏しく、むしろ中国脅威論やその変種のチャイナリスク、中国崩壊論、中国分裂論などが広がっている。これらの対中観が一部の人間に意図的に扇動されているのでなければ、中国に対する理解不足、認識不足が原因である。この多くの国々が中国に対して持つ不安や心配を緩和・解消し、中国が平和と発展と協力の外交を行っているのだとアピールすることが、中国外交の新たな課題である。このため、公共外交が国家の外交政策における手段の一つとなる。 
 大衆の世論は国家の外交政策に影響する。いかなる国家・政府とも対外政策を決定するとき、国内の大衆世論を顧みるだけでなく、自国の国家利益に有利なように外国の大衆の世論を作ろう、あるいは誘導しようと試みるものだ。語学教育などの教育文化交流を通じた公共外交は、外国の大衆に自国国家の政治、経済、社会および文化を理解させ、支持を取り付けやすくする。このため、公共外交という外交政策の効果はますます明らかに重要度を増している。
表現は取り繕っていますが、孔子学院の設立の趣旨は、要するに漢語授業を通じて、中国当局に都合の良い中国の歴史や政治や経済・社会制度を理解してもらうことで、中国支持者を増やしていき、中国脅威論を解消していこう、という明確な政治目的を備えた外交政策だと、中国自身が認めているわけです。

語学の基本は丸暗記と暗誦です。丸暗記というのは、洗脳の定番の手法です。毛沢東語録も丸暗記させることで、学生たちを熱狂させました。大人ならまだしも、子供なら中国当局の思惑通りの中国イメージを植え付けることはできるでしょう。

そういう面もあるので、2010年2月に、南カリフォルニア州アシエンダでは、中学校の孔子教室開講を共産主義の洗脳だとして住民の抗議活動が起こったこともあります。地元教育委員会は9月、中学校に対する中国側の資金援助も教師派遣も拒否する決定をしました。

2011年7月、オーストラリアのシドニーでは7カ所の学校に開設された孔子教室の閉鎖をもとめる4000人の署名が地元議会に提出されました。テキストに天安門事件や中国の人権問題に触れていないことへの反発からだといわれています。

またカナダのナショナル・ポスト紙(2010年7月9日付)によれば、カナダ情報局が国民に対し、外国の諜報活動に気を付けるよう警告し、そのリストの中に孔子学院が含まれていました。

前アジア太平洋局責任者の作家、マイケル・ジュノー・カツヤが「孔子学院は慈善的理念で設立したものではなく、中国共産党の戦略の一部であり、諜報機関と関連のある組織から資金提供も受けている」とコメントしています。日本の大阪産業大学の事務局長も孔子学院を「文化スパイ機関みたいなもの」と発言し留学生から猛反発をくらい、平謝りしたことがあります。

ちなみに、孔子学院に否定的な動きのある地域が、中国からの移民が多い地域であることは偶然ではないでしょう。米国やカナダやオーストラリアなどの中国移民の中には文化大革命や天安門事件を契機に祖国を捨てた人も多く、普通の外国人以上に中国共産党アレルギーが強いです。

そういう人がわが子に「我是中国人、不是美国人」という例文を暗誦させられれば、洗脳か!と敏感に反応するのは当然のことと思います。

孔子学院が単なる語学学校でないことは、その資金の潤沢さからわかります。

孔子学院が海外に作られ始めたのは2004年。最初は韓国のソウルにできました。以来、世界各国に急速に増え続け、目下、世界106カ国に350カ所以上の孔子学院が設立され、500カ所以上の小中学校に孔子教室が開講されています。

孔子学院を管轄しているのは中国教育部傘下の俗に「漢弁」と呼ばれる国家漢語国際推進指導弁グループ弁公室ですが、世界のどこかに一つ孔子学院が開設するとなると、漢弁から準備金として10万ドルの資金が降りるといわれています。

しかも中国側はボランティア教師を派遣し、奨学金を出して留学プログラムも組んでくれるそうです。提携先の外国の教育機関としては、さほど予算がなくても、ほとんど全部中国側がやってくれるのでありがたいです。

漢弁は2010年までに孔子学院開設費用として5億ドルを投じたとしていますが、それ以外に毎年1校につき年間10万~15万ドルの運営費が投じられ、年間2000~3000人の派遣のボランティア教師には1人当たり1万ドル以上の手当てを出しているほか、数万人単位の外国人漢語教師の育成、教材の寄贈、各国における宣伝広告費も中国側が請け負っているといいます。年間平均予算は、ドルにして億単位と見られています。
1989年から始まった希望工程(中国国内の学校のない貧困地域に国内外の寄付によって学校を建てるプロジェクト)で集まった寄付金が2009年までの20年間で計約50億元(7.5億ドル)ということを考えれば、孔子学院に投入されているお金の多さが半端ではないことがわかります。

しかし、中国側にしてみれば、対象国の世論を自国に有利になるように誘導することは国家として当然の戦略であり、中国共産党がさんざん孔子を否定してきた歴史もさらりと忘れたふうに、孔子を持ち上げることにも矛盾も感じないのでしょう。

「毛沢東学院」じゃ外国人は誰も寄ってきません。中国が対外的にプラスイメージ発信に利用できるのはパンダが孔子ぐらいしかないのだからしかたないのかもしれません。

それを洗脳などと批判されることは彼らからすれば心外なのかもしれません。中国からみれば、それなら米国のフルブライト・プログラムだって洗脳だ、ということになります。

フルブライト・プログラムにも、親米派を育成し、米国の影響力を拡大する戦略性はあります。結局のところ、留学生の招聘や自国語学習者の拡大に、相手国の世論を自国に有利なものに導く公共外交としての政策性や戦略性を持たせることは「どこの国もやっている」当たり前のことでもあります。それを露骨に出すか出さないかだけの差かもしれません。

そもそも公共外交とは民間に直接しかけられた外交でもあります。カウンターパートは政府ではなく民間、つまり孔子学院を受け入れる教育機関であり、授業を受ける大衆なのです。政府が政策的にこれを退けることは、お角違いなのかもしれません。

だからこそ、こういう公共外交による“洗脳合戦”時代に大切なのは、民間の普通の人々の外交意識なのだと思います。自らが外交の担い手であり、孔子学院が公共外交の一種であるという意識を持って向き合えば、少なくとも一方的な「洗脳」ではなく、むしろ相手国の文化や思考を知った上で、いかに対処すれば自国に有利な外交ができるかを考えるようになることでしょう。

日本にも孔子学院は相当増えてきました。安価で中国語を勉強できる機会が得られるという点では良いともいえます。洗脳されるのか、外交的ライバルを研究する機会とするか、それはあなた次第ということかもしれません。

ただし、自我がまだまともに形成されていない、現代の若者は、洗脳ばかりされてしまい、外交的ライバルを研究する機会にすることはできないかもしれません。これには、学生自身というよりは、その親も関与すべきですし、その判断に委ねられるべきなのかもしれません。

何しろ、これは実際に有名大学に通われている息子や息子さんの複数の親御さん直に聴いた話ですが、最近の大学生の精神の発達度合いは遅れていて一昔前の高校生なみだということです。彼らを決して、昔の大学生並に扱ってはならないといいます。

確かに、私自身も、新入社員と話をするとそのように感じることも多いです。孔子学院で学ぶかどうかは、親御さんも参加して意思決定したほうが良いように私自身は思います。

とはいいながら、最近の若者はマスコミには印象操作されなくなりつつあります。彼らの多くは、情報の入手先がマスコミではなく、インターネットであり、自分で判断しながら情報を取捨選択しています。

そのような若者は、精神的に一昔前よりは脆弱なところもありますが、容易に印象操作は受けないという面が確かにあります。であれば、さほど心配する必要はないのかもしれません。かえって心配なのは、団塊の世代あたりかもしれません。孔子学院で中国語を学んでいる学生は、孔子学院で話される理想の中国と、現実の中国は違うということ前提としているのかもしれません。

そもそも、いくら精神的に多少脆弱であったにしても、大学生にもなってすぐに洗脳されるような人は、将来役に立つような人材にはなりえないです。いつまでも、人に指示されないと何もできない人になる可能性が高いです。

しかし、ブログ冒頭のように、孔子学院がスパイ活動にかかわっている容疑があることや、中国の民主化や人権擁護の運動にかかわる在米中国人の動向を探る手段にされている可能性、アメリカ人学生への思想的な影響行使のほか、中国人留学生をひそかに組織して民主化運動に走る中国人学生を取り締まっている可能性などが、指摘されており、今後FBIの捜査の進展により明らかにスパイ行為などかあることが立証された場合話は違ってくることになります。

明らかにスパイ活動をしているというのなら、米国でもはっきりと廃止の方向に向かうでしょう。その時は、日本も排除を検討すべきでしょう。

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