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2020年11月8日日曜日

中国の国連ハイジャック作戦―【私の論評】国連に変わる新たな複数の国際組織をつくれ(゚д゚)!

 中国の国連ハイジャック作戦


【まとめ】

・中国が多数の国連機関トップ占め、中国有利に影響力を強めている。

・米「独裁を守る多国間主義」と非難。中国影響力抑止する措置展開。

・国連が中国にハイジャックされるなら、日本も認識の転換迫られる。


中国が国際連合の多様な機関の主導権を握り、国連全体を自国に有利な方向へ動かそうとする活動がますます顕著となってきた。アメリカ政府は中国の苛酷な人権弾圧までが国連で許容されることにもなりかねないこの国連ハイジャック作戦の阻止に力を注いでいる。 

だが果たして中国のこの影響力拡大をどこまで防げるのか。そのせめぎあいは国連重視を過度なまでにうたってきた日本政府にとっても注意せざるをえない展開である。

中国は現在、国連専門機関合計15のうち国連食糧農業機関(FAO)国連工業開発機関(UNIDO)国際電気通信連合(ITU)国際民間航空機関(ICAO)の4つに中国人の最高責任者を送り込んでいる。

なぜ国連で影響力を強くすることが中国にとって重要なのか。

2020年夏、香港での中国の弾圧を非難する決議案が国連人権理事会に提出された。イギリス、その他の民主主義諸国が主体の決議案だった。だがほぼ同時にキューバなど非民主主義の傾向の強い諸国による香港についての別の決議案が出された。その内容は香港に関して結局、中国政府を弁護する趣旨だった。

二つの決議案が同時期に個別に採決された。イギリス主導の中国非難の決議案は人権理事会で27ヵ国の賛成票を得た。キューバ主導の中国弁護の決議案は53ヵ国の賛成票を得た。中国政府による人権弾圧や国際公約違反が明白であっても、その中国の動きを非難するよりも弁護する国が二倍ほども存在するのである。この事実は中国の人権弾圧への国連全体による非難を消してしまうことになる。

中国は新型コロナウイルス大感染でも国連機関である世界保健機関(WHO)の支持を得て、国際的な糾弾を薄めることができた。中国から経済援助をふんだんに得たエチオピアのテドロス・アドノム元外相が事務局長だったWHOはコロナ発生に際しては中国政府の意向を忠実に受けて、発生自体を秘密にする隠蔽工作に完全に加わったのだ。

中国は国連やその関連機関の効用を十分に認識して、ここ数年、各種国連機関のトップの座を自国の代表が得るよう工作を重ねてきた。その結果がいまの4機関の実績なのだ。その工作は露骨である。

2019年6月のFAOの事務局長選では中国の屈冬玉候補が圧勝したが、その背後では中国代表たちが票を投じる多くの国の政府に対して債務の取り消しや輸出の停止などアメとムチとの激しい勧誘や威迫をかけたことが伝えられている。

2020年3月には国連専門機関の世界知的所有権機関(WIPO)の事務局長選挙が実施された。中国はこの選挙でも自国民の王彬穎氏を強く推し、中国にとって5番目の国連機関のトップポストを獲得しそうな気配だった。

だが実際の選挙では対抗馬のシンガポール知的財産権庁長官のダレン・タン氏が選出された。アメリカ政府が介入し、強力な反中国のロビー工作を進めた結果だった。シンガポール代表に反中国票のすべてを集めるために他の諸国の候補を辞退させての勝利だった。

このように国連でのアメリカの動きは重要である。トランプ政権はすでにWHOなどから脱退しているが、なお逆に介入しての中国阻止の活動も進めてきた。こうしたアメリカ政府の国連での中国抑止の政策と活動についてトランプ政権の国連大使ケリー・クラフト氏が10月21日、報告を発表した。アメリカの新聞ニューヨーク・ポストへの寄稿論文という形だった。

トランプ政権の国連大使ケリー・クラフト氏

そのクラフト大使の報告の骨子を紹介して、アメリカの国連での中国への対抗策に光をあてよう。クラフト大使はまず国連での中国の活動について以下の諸点を述べた。

・中国は国連安全保障理事会の常任メンバーの地位を利用してシリアベネズエライランなどの圧政政権を守ってきた。

・中国は国連で中国への債務を抱えた諸国に圧力をかけて、国連の人権理事会や総会で中国政府の弾圧行動を賞賛する声明に署名をさせてきた。

・国連に勤務する中国人は国際公務員として中立を保つはずなのに、国際民間航空機関(ICAO)の 柳芳事務局長はその地位を利用して台湾を国際民間航空から排除するためのサイバー攻撃などに参加した。

・国際電気通信連合(ITU)の趙厚麟事務局長はアメリカの反対する中国政府の「一帯一路」構想を推進し、中国軍部と密着するファーウェイ社の事業拡大を支援する言動をとった。

クラフト大使はこうした中国の動きへのアメリカ政府としての反対を明確にしたうえで、アメリカ側が実際にとってきた措置について次のように述べた。

アメリカ政府は2020年6月、国連の新たな政治宣言の草案に中国の提案による「習近平思想」という表現があることに反対し、最小限30ヵ国の賛同を得て、その削除に成功
した。

・今年9月、クラフト大使はニューヨークの台湾政府事務所の代表と1対1の会談をして、台湾の国連機関へのかかわりを強めることを協議した。国連を舞台とするアメリカと台湾の政府代表のこの種の会談は初めてだった。

・アメリカ政府は国連の各種の場で中国政府によるウイグル人などの民族弾圧に抗議を続ける一方、今年10月にはウイグル香港、チベットでの中国の弾圧を非難するドイツとイギリスの共同声明を支援して、共同署名国を39ヵ国に拡大することに成功した。

・アメリカ政府は多国間主義から離脱するのではなく、人権、民主主義、法の支配に依拠する多国間主義が破壊されることを防止し、破壊された部分を修復することに全力をあげているのだ。

・アメリカは一部の国連機関から離脱したが、当面、修復が困難とみなした機関からの脱退であり、修復が可能な機関に対しては関与を続けて、その改善に努める。多国間主義も独裁的な覇権を促進するようになれば、意味がない。

・この戦いは決してアメリカと中国との闘争ではない。世界の市民に寄与する民主的な多国間主義システムと独裁を守る多国間主義システムとの闘いなのだ。アメリカにとっては独裁的な政権の下で苦しむ人々のための闘いである。

以上のようなクラフト大使の言明はトランプ政権の対外姿勢を一国主義と断じ、国際問題への関与を拒むという非難への反論だともいえよう。

しかしトランプ政権の国連大使のこうした言明は中国が国連機関への影響力行使を強めている実態をまず指摘しているという点で日本にとっても重要な警告だともいえる。人権や民主主義を基調とする国連の機能が共産党独裁支配の中国にハイジャックされるような事態となれば、戦後の日本の国連への認識も根本からの変革を迫られるだろう。

***この記事は日本戦略研究フォーラムの古森義久氏の連載コラム「内外抗論」からの転載です。

【私の論評】国連に変わる新たな複数の国際組織をつくれ(゚д゚)!

上の記事にもある通り戦後の日本の国連への認識も根本からの変革を迫られる可能性が大きくなってきました。そもそも、国際連合とは「United Nations」であり、これは直訳する「連合国」であり、元々は第二次世界大戦の「連合国」を意味しており、国連憲章には、未だに敵国条項が存在しています。

敵国条項とは、国連憲章第53条、第77条1項b、第107条に規定されています。その内容を端的に言えば、第二次大戦中に連合国の敵国であった国が、戦争の結果確定した事項に反したり、侵略政策を再現する行動等を起こした場合、国際連合加盟国や地域安全保障機構は、安保理の許可がなくとも当該国に対して軍事制裁を科すことができる、としています。

つまり、あらゆる紛争を国連に預けることを規定した、国連憲章51条の規定には縛られず、敵国条項に該当する国が起こした紛争に対して、自由に軍事制裁を課する事が容認されるのです。さらに言えば、これらの条文は敵国が敵国でなくなる状態について言及していません。

そのため旧敵国を永久に無法者と宣言したのも同様であり、旧敵国との紛争については平和的に解決義務すら負わされていないとされています。従って、敵国が起こした軍事行動に対しては話し合いなど必要なく、有無を言わせず軍事的に叩き潰してもよろしいということになります。

一方、国連憲章第2章では、主権平等の原則を謳っており、この敵国条項の規定は国連の基本趣旨に反し、特定の国を差別していることになります。


では、いったい敵国はどのように定義されているのでしょうか。敵国とは1945年4月サンフランシスコで開かれた連合国の会議で、連合国憲章が完成したことに由来しています。

国際連合の英語名UNITED NATIONSは、戦時同盟国と同じであり、そこには連合国の団結を戦後も維持し、「米国方式」での国際秩序維持を図るとの発想があったのです。従ってサンフランシスコ会議で憲章に署名した米国、イギリス、フランス、ソ連、中華民国を含むUNITED NATIONSの原加盟国51カ国、すなわち第2次世界大戦で連合国に敵対していた国が敵対国となります。

これに対する日本政府の見解では、当時の枢軸国であった大日本帝国、ドイツ(現ドイツ連邦共和国)、イタリア王国(現イタリア共和国)、ブルガリア王国(現ブルガリア共和国)、ハンガリー王国(現ハンガリー)、ルーマニア王国(現ルーマニア)、フィンランド共和国がこれに相当するとしています。

一方、タイ王国は連合国と交戦した国ではありますが、この対象に含まれていません。またオーストリアは当時ドイツに、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国はそれぞれ日本にそれぞれ併合されていましたが、旧敵国には含まれないという見方が一般的です。

これらの点からすれば、戦勝国とは1945年のUNITED NATIONS憲章成立時に署名した国に限定されることになり、この時国家として存在さえしていなかった中華人民共和国と韓国・北朝鮮は戦勝国としての資格を持っていないことになります。

日本が国連に加盟したのは1956年、以来延々60年にわたって国連外交を政策の重要な柱として優等生的な役割を果たしてきたことは、多くの日本人の間ではほぼ常識となっているでしょう。

たとえば、直近の国連向け加盟国負担金の割合を見ても、そのことは一目瞭然です。2018年までは、日本が米国についで2位でした。2019年からは日本が第三位で中国が第二位となっています。

これは国連安保理常任理事国のイギリス、フランス、ロシアよりも多いです。

当然のことながら、日本は多額を負担しながら、敵国条項が存在する状態に抗議を続け、1995年の第50回国連総会では憲章特別委員会による旧敵国条項の改正削除が賛成155、反対0、棄権3で採択され、同条項の削除が正式に約束されました。

しかし、憲章改正には安保理常任理事会5カ国を含む加盟国3分の2以上に批准されたうえでの発行となっており、これらの国が批准するかどうかは各国の自由です。敵国条項は死文化しているとして、敗戦国とされた日本、ドイツなどの国以外にはあまり関心を持たれず、実際の国連活動には支障がないとされているますが、昨今の事情はこのような見方を許さなくなってきています

戦後70年をファシスト日本に勝利した戦勝記念として大々的にアピールする中国の存在がそれです。事実、中国は国連の場で尖閣諸島を巡る問題に関して「第二次大戦の敗戦国が戦勝国中国の領土を占領するなどもってのほかだ」(2012年9月27日)と日本を名指しで非難しているのです。

つまり中国は、国連の場で暗に敵国条項を意識した発言を行ったわけです。スプラトリー諸島の埋め立ての例を挙げるまでもなく、東シナ海での尖閣に対する領海侵犯、さらには勝手に防空識別圏を設定するなど、国際海洋法などの国際法をことごとく無視してきた中国が、70年前の条文を案に持ち出してきたのてす。

1945年の終戦当時、成立もしていなかった中華人民共和国が国連敵国条項を持ち出して、自らを戦勝国と位置付けるカードとして使っているわけです。事実上は死文化していると言われていても、敵国条項は未だに削除されていません。

このような論理を持ち出してくる中国は、国連の場において戦勝国の資格のない自己矛盾もお構いなく、日本国家の選択肢を狭めようとするばかりでなく、国連安保理の常任理事国である限り、いつでも敵国条項を持ち出して、日本の安保理常任理事国就任の道を閉ざす口実になるのです。

もう第二次世界大戦が終了してから、70年以上も経過しています。国連そのものが制度疲労を起こしているのです。

中国は、国連では侵略的な態度で、できるだけ多くの権利を得ようとしているのです。加盟国は、自国および他国の利益を守る姿勢が必要です。まさに、日本も日本の利益、他国の利益を守る姿勢を堅持するべきです。

もともと「国連」とは世界平和を目的として作られたものではなく、戦争遂行の為の攻守同盟がその本質です。

「国連」が、世界的な環境問題や貧困問題や人権問題に関しても全く無力であるのは、当然の帰結です。

1945年に成立した世界的レジームを固定化し、それに伴う既得権益の維持を最大の目的として存在しているのが「国連」である以上、そもそも「国連」は、世界の人類全体の利益の為に活動する動機を持ちません。

「国連」が世界の環境問題や貧困問題や人権問題について何かをやっているように見えるのは、単なるアリバイ作りに過ぎません。

それぞれの国よって、状況が異なり全体主義国も、自由主義国も、富める国も貧しい国も包含する現在の「国連」は、「世界平和」「環境保全」「人権擁護」といった普遍的価値観には馴染みません。

ましてや、未だに敵国条項を温存している「国連」では、紛争をもたらす事はあっても、「世界平和」など実現し得るはずもありません

また、全体主義国家もその構成要素として複数加盟している「国連」では、「人権擁護」など到底不可能ですし、国連の活動の眼中に「人権擁護」など重要なものとは写っていないのは当然のことです。様々な矛盾があるのに「1945年の原状変更を認めない」というのが、「国連」の国際官僚の至上命題なのです。

「国連」が、「1945年レジーム」の固定化を最大目的とする以上、貧困問題も環境問題も人権問題も、全て既存の状態のまま「固定化」されるのが必然的帰結です。

今や、「新しい国際組織」が必要なのです。現在の「国連」に代わる、新たな世界組織が必要です。価値観や文化や経済発展の度合いが異なる国々が「戦勝国」の築いた一つの国際組織に収まるという事自体が最初から無理なことだったのです。

第二次世界大戦中の"United Nations"のポスター

複数の国際組織をつくり、互いに競争し、さらにはその複数の組織のいかなる組織も永劫不滅ではなく、場合によっては消滅し、他の組織に吸収されることもあるような新たな秩序を形成していくべきと思います。

さらに、これら複数の組織には、当該組織における理念を尊重した行動をとることを条件に、他国の影響を受けることなく、各々の国が国民の意思で自由に加盟したり、離脱したりできるようにすべきです。

またこれは、ブロック経済を意味するのではなく、自由貿易はこれからも実行していくべきでしょう。さらには、ある国際組織が別の国際組織を手助けすることも可能にすべきです。

理念が未来永劫不変でありしかも、一つしか存在しない組織など、最初から腐敗し、何もできなくなってしまうのは最初からわかりきっています。腐敗した組織は、中国の影響も浸透しやすいです。もう現在の国連は用済みだと思います。

そのようなことは、日本の社会を考えても分かります、もし日本という国に一つしか民間企業がなければどういうことになるでしょうか。あるいは、日本政府が各地の自治体なしで、すべてを直轄したらどうなるのでしょうか。おそらく、何もできないし、組織を維持することが目的となり、すぐに腐敗することでしょう。

国際機関はもとより、あらゆる組織が社会の機関です。組織が存在するのは、組織それ自体のためではありません。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためです。組織は目的ではなく手段です。したがって問題は、その組織は何かではありません。その組織は何をなすべきか、あげるべき成果は何かです。

国際機関もすべきこと、あげるべき成果は、種々様々です、「国連」という一つの組織がすべてを実行するのは不可能です。であれば、すべきごと、あげるべき成果にもとづき、複数の国際機関が存在するのは、当然のことです。

国際的な活動は当該国の政府が主体となるのではなく経験や実績のある国際的活動をするNGOやNPO等が実行部隊の主体となるべきであって、国際組織、それも複数の国際組織はそれを適正に統治するというのが正しい姿だと思います。適正に統治できない国際組織は消えるしかないのです。消す仕組みもつくっておくべきでしょう。

また、国際的なニーズは、時間とともに変わっていきます。ニーズなどに適応できない組織も、消す仕組みをつくり、新たなニーズがでてきたときには、新しい国際組織を設立する仕組みを構築すべきでしょう。

統治とは、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことです。社会のエネルギーを結集することです。問題を浮かびあがらせることです。選択を提示することです。

無数のNGOやNPOができあがって、あちこちで独自に無秩序に行動すれば、様々な混乱や、場合によっては、かえって不利益をもたらすことすらあり得ます。そういうことがないように統治するのが、国際組織の本来実行すべき仕事だと私は思います。

また、国際組織は自らの理念にもとづき行動し、理念にあわない国は、最終的には排除できる仕組みもつべきです。ただし、国は排除しても、社会は排除できないという仕組みをつくっておくべきでしょう。

そうなると、全体主義の国の政府は排除できても、社会は排除しないということになり、全体主義国家はこれを内政干渉などと受け取るでしょうが、この問題は行動しながら考えていくしかないでしょう。しかし、それでも、今の国連よりははるかにましになるでしょう。

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2020年10月15日木曜日

日本のメディアが絶対に報道しないジョー・バイデン米民主党大統領候補の恐るべき正体(立沢賢一)―【私の論評】日本は次期米大統領が誰になって転んでもただで起きるべきではない(゚д゚)!

日本のメディアが絶対に報道しないジョー・バイデン米民主党大統領候補の恐るべき正体(立沢賢一)

トランプ大統領

アメリカのメディアの大半が「反トランプ派」

本年11月に行われる米国大統領選挙はメデイアの影響を強烈に受けます。

米国において、ワシントンポスト紙やニューヨークタイムズ紙などの新聞や、CNN、NBC、ABC、CBSなどのテレビを中心とするメインストリート・メディアは、全て反トランプ派のメディアです。

トランプ大統領に好意的なメディアはオーストラリアのメディア王・ルパート・マードックが設立したFOXテレビくらいです。

日本を含めた海外のメディアは米国のメインストリーム・メディアの翻訳バージョンのニュースばかりを配信していますから、かなり反トランプの色彩が濃い、偏見に満ち溢れた情報が日本では大量に流れていると言って良いでしょう。

その辺に関しては私が過去に配信したYouTube動画をご視聴頂ければ理解が深まると思います。

因みに、監視機関「メディア・リサーチ・センター(Media Research Center)」のプロジェクトである「ニュースバスターズ(NewsBusters)」は6月1日~7月31日までのABC、CBS、NBCによる夕方のニュースを分析しました。その結果、トランプ大統領に関する報道時間は512分で、バイデン候補の58分の9倍でした。

同センターの分析によりますと、大統領に対する評価的陳述の668件のうち634件つまり95%が否定的で、これに対してバイデン候補は12件のうち4件が否定的でした。

これはトランプ大統領のネガテイブな報道はバイデンの158倍以上という事実をあらわしていますが、流石にやり過ぎ感満載と言うべきでしょう。

トランプ大統領が6/22にオクラホマ州で開催した集会では、トランプ大統領から槍玉にあげられているtiktokのユーザーが、この集会に欠席する前提で、大量のチケットをオンラインで予約し、実際の参加者を減らしていたことがわかっています。

因みに、この集会には100万件以上もの参加申し込みがありましたが、上述のような意図的なキャンセルがあったおかげで、実際には19,000人しか参加しなかったのです。

それ故に、SNSが今年の大統領選における大切な武器の1つであるのは間違いないと言えるのです。

蛇足ですが、日本で皆さんがもし総理大臣だとして、一つのテレビ局以外の全てのメデイアが皆さんの足を引っ張る報道しかしないとしたら、それはフェアなメディアのあり方だと思われますか?

トランプ大統領は億万長者です。どちらかと言えば、米国の中産階級よりも、グローバリストに遥かに近い立場にあるにもかかわらず、何故グローバリストを敵にまわして大統領になり続けるのでしょうか?

トランプ大統領がそんなことをしなくても裕福に暮らしていける身分にあるにも関わらず、人生最期の時間を、本来自分とはあまり関係ない中産階級の人たちの生活を良くするために使おうという意味はどこにあるのでしょうか?

なぜ「初期の認知症」のバイデン氏が民主党の大統領候補になったのか

バイデン候補は77歳。米国のZogbyの調査によれば、米国の有権者の実に55%が「バイデンは初期の認知症である」と感じているようで、若者になるとその比率は60%を超えています。

若くて有能な人材で豊富なはずの米国で1973年から47年間も議員生活をして別段実績を出して来なかった老人政治家が、何故このタイミングで米国大統領候補になったのでしょう?

バイデン候補以外の候補者は社会主義派のバーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン、億万長者のマイケル・ブルムバーグ、LGBTのピート・ブティジェッジ、中道・穏健派ですが無名のエイミー・クロプシャーでした。

しかし、2016年のヒラリークリントンの時のように、別格な候補者は居ませんでした。従いまして、結果的には、消去法で候補者を選ぶことになったようです。

黒人とのハーフであるオバマ元大統領や初の女性大統領候補のヒラリークリントンの様に民主党はこれまで話題性のある候補者を選出していることから、LGBT代表のピート・ブティジェッジを当初は押していました。

ところがまだLGBTの大統領を選出するには時代が早かったようで、ブティジェッジ氏は票を伸ばせず撃沈しました。続くバーニー・サンダースとエリザベス・ウォーレンは社会主義思想が強すぎてやはり同様に無理と判断しました。ウォール街出身のマイケル・ブルムバーグは知名度もあり、個人資産が全米トップ11にランクする富豪ですので、資産を使って大統領になることが期待されましたが、出馬表明が遅すぎたため撤退しました。

結果、残ったのがバイデンなのです。

メディアは当初、バイデン候補をけなしていましたが、急遽、持ち上げまくるようになり、現在に至っています。

日本のメディアが絶対に書かないバイデン候補の正体

バイデン候補は、いわゆる「叩けば埃が出る」ような人だと言われています。

バイデン候補だけでなく、息子のハンター・バイデンも灰色の人物であり、要するにバイデン一家は問題一家だとも言えるのです。

それではどのような灰色の事案がバイデン候補の周りに見られるのかをここで紹介します。

1) バイデン候補の息子ハンターが、国防総省の定める「戦略的競争相手」である中国の企業に、積極的に投資していることが注目されていました。

バイデン候補は、息子ハンターが上海の未公開株投資会社BHRパートナーズの取締役を辞任したと発表しましたが、専門家の分析によれば、ハンターはまだ420万ドルの資産を保有しています。

2) バイデン候補が副大統領時代に、ハンターがウクライナエネルギー企業プリスマ社の取締役として2014-2019年に毎月5万ドルの給与を受けていました。

3) 倫理を監視するNPO団体・国家法律政策センター(National Legal and Policy Center、NLPC)は5月21日、教育省へ文書を提出したと発表しました。

NLPCは、バイデン・センターが過去3年間で「中国から受け取っている7000万ドル以上の資金のうち、2200万ドルは匿名」であり、情報の開示と全面的な調査を要求しています。

バイデン・センターとは、ペンシルベニア大学にバイデン氏が創設した公共政策提言組織です。公的記録によりますと、バイデン・センターは開設以来、中国から多額の寄付を受けていて、2018年の1件の寄付は「匿名」からで、総額1450万ドルでした。

ハンター・バイデン氏

4) バイデン候補自身の複数のセクハラ疑惑

などなどです。

「スキャンダルのデパート」バイデン候補がなぜ大統領候補になるのか?

バイデン候補が大統領選挙で勝利した場合、彼は米中貿易摩擦縮小、TPP導入、学生ローン負担減少、オバマケア継続、再生可能エネルギー需要増加、国境廃止による米国への移民増加、中国の通信機器大手・ファーウェイへの制裁解除、イラン制裁解除、公共投資減少などを推進すると表明しています。

まさに、トランプ大統領が強力に進めた政策の多くが反転することになります。

また、議会の反対もありますから可能かどうかはわかりませんが、バイデン候補は中国への経済制裁を解除する意向も口にしています。

つまり、彼が大統領になれば、グローバリスト(無国籍企業の宝庫であるシリコンバレーや国際金融資本家のるつぼであるウォール街やその他大企業群)は皆、恩恵を受けることができるのです。

ですから、バイデン候補はこうした利益受益者たちから凄まじい金額の選挙資金を受けていると言われています。

その証拠にバイデン候補はテレビCMに2億2000万ドル、デジタル広告に6000万ドルの予算をあてていると表明しています。

一方、トランプは現職の大統領にも拘らず、僅か1億4700万ドルに過ぎません。その額はバイデン候補の半分程度に過ぎないのです。

11月の米国大統領選はグローバリストとナショナリストとの戦争

11月の米国大統領選はバイデン候補の後ろ盾となって国境を無くそうとしているグローバリストVS豊かになれない米国中産階級の支持を得たトランプ大統領をはじめとするナショナリストの戦いです。

そして、万が一、バイデン候補が勝利した暁には、米国はグローバリストの餌食となり米国衰退のスピードが急速になると言われています。

それでもトランプ大統領が勝利する?

バイデン候補はほぼ1年近くのあいだ、全国的な世論調査でトランプ大統領に対してずっとリードしつづけてきました。

ここ最近ではバイデン候補の支持率は50%前後で、トランプ大統領に10ポイントもの差をつけることもありました。

しかし、これはメディアによってかなり歪められた結果であるとも考えられます。

投票日までまだ1カ月以上ありますが、メディアが正しい情報を報道していない中、果たして米国民に正しい決断が出来るのかが問題です。

これに関しては、以前私はYoutubeの動画を配信しましたので是非、ご視聴ください。



現在、多くの方々がバイデン候補の当選を予測しているようですが、私はトランプ大統領が再選すると確信しています。

そうでなければ、グローバリストの餌食となった米国民の未来は間違いなく暗黒化するからです。

たとえ多くのメディアに大多数の米国民が騙されているとしても、彼らは本能的にバイデン候補を大統領にしてはいけないと分かっている、と私は信じています。

日本のメディアによって情報統制されている皆さんには嘘のように聴こえるかも知れませんが、トランプ大統領は米国民にとって一筋の希望の光なのです。

立沢賢一(たつざわ・けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

Youtube https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/

投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

【私の論評】日本は次期米大統領が誰になっても、転んでもただで起きるべきではない(゚д゚)!

米国大統領選において日本のメディアのほとんどは、常に民主党のジョー・バイデンのリードが伝えられています。

米国のテレビ局は、バイデン派とトランプ派にはっきりと分かれて報道し、中立という立場はないようです。

冒頭の記事にもあり、私がこのブログも以前から掲載してきたように、米国のメディアのうち大手新聞は全部がリベラル派で、バイデン推しです。大手テレビ局は、foxTVのみが、保守派であとは全部がリベラル派です。

日本のテレビ局のすべてはリベラル派で、新聞は産経新聞だけが保守派であとはすべてがリベラル派です。そのためもあってか、日本のメディアを観ていると、トランプ大統領がいかにも悪辣な人物に思えてくる偏向報道ぶりです。

米国のテレビ局のように露骨ではないですが、バイデンに好意的です。

さて、問題の対中政策ですが、多くの識者が、たとえバイデンが勝ち民主党政権になっても、対中強硬策は変わらないと予想しています。

確かに、中国はアメリカの覇権に挑戦しているわけなので、それを跳ね返すのは超党派の方針のはずです。しかし、本当にそうでしょうか?

バイデンは中国が知的財産を盗んでいることは認めていますが、現在の対中関税は撤廃し、WHOにも復帰すると言っています。それでいて、どうやって中国の攻勢を止めるのか具体策は述べません。この点では、トランプ氏とは対照的です。

「中国は態度を改めなければならない」等とは言うのですが、一体どうやって改めさせるのか、よくわかりません。本人も自分で何を言っているのか、本当にわかっているのか定かでない印象は、SNSの動画を見ても十分わかります。

これではトランプ嫌いやバイデン推しの人たちも心配になるわけです。確かに米国においては中国の脅威については、超党派で理解されているようではあります。

しかし、ここで問題なのは、その脅威にどう対処するかです。ひとつの考え方が、中国に関与しながらも望ましい方向へ誘導することです。

一方、トランプ政権が推進しているのが、デカップリグです。つまり、中国と関わらないようにするという政策です。

最近、ポンペイオ国務長官が『クリーンネットワーク』という構想を発表しました。通信ネットワークから中国企業を徹底的に排除するという政策です。

ファーウェイなど中国企業による情報の抜き取りリスクを考えれば当然の措置ですが、まさにデカップリング政策です。

バイデンは、中国のリスクを理解していると言いながら、中国に関与しながらも望ましい方向へ誘導する立場(エンゲージメント派)のようです。

このブログにも掲載したように、2018年に習近平が「米国を頂点とする現在の世国際秩序を中国が塗り替えていく」と公表して以来、米国では天安門事件以降のエンゲージメント政策が完全に失敗したという前提に立って、現在の対中強硬策があるのですが、どうもバイデンは、時計の針を2年前に戻してしまおうと考えているようです。

エンゲージメント派というと体裁は良いですが、一言で言ってしまえば、中国市場で散々金儲けに励みながら、中国が豊かになって行けば自分たちと同じような自由主義的な資本主義に移行し、自分たちに脅威を与えることはないだろうと勝手に楽観視していただけです。それが完璧に間違いであったことは、すでに白日の下に晒されたと言って良いです。

サイレント・インベージョンの著者であるクライブ・ハミルトン教授は、マレイキ・オールバーグ氏との共著『Hidden Hand (隠れた手)』で、バイデンについて以下のように記述しています。

クライブ・ハミルトン教授

●2019年5月、ジョー・バイデンは、中国がアメリカにとって戦略的脅威であるという考えを嘲笑することで、民主党の大統領候補の他の全ての候補者とは一線を画した。

●バイデンは長年、中国に対してソフトなアプローチを採用していた。

●2013年12月にバイデン副大統領が中国を公式訪問した際には、息子のハンターがエアフォース2に搭乗していた。

●バイデンが中国の指導者とソフトな外交をしている間、息子のハンターは別の種類の会議をしていた。

●そして、渡航から 2 週間も経たないうちに、2013年6月にジョン・ケリーの継嗣子を含む他の2人の実業家と一緒に設立したハンターの会社は、プライベート・エクイティの経験が乏しいにもかかわらず、中国政府が運営する中国銀行を筆頭株主とするファンドBHRパートナーズを開設するための契約を最終決定した。
バイデンセンターについては、冒頭の記事にも掲載されています。これがバイデンとその息子のチャイナ・エンゲージメントです。バイデンはこれらを失いたくないのかもしれません。そうであれば、バイデンこそ自由主義諸国にとって最大のリスクになり得ます。

では今後、日本はどうしたら良いのでしょうか。仮に最悪バイデンが大統領になったとしても、米国議会や司法当局は、ほとんどが反エンゲージメント派です。日本は、相対的自立度を高めながらも、米国議会との連携を強め、さらに豪印との連携を強めていくべきです。

先日もこのブログに掲載したように、日米豪印外相が日本で会合を開催しました。マイク・ポンペオ米国務長官は10月6日、中国共産党政権に対抗するため、米国・日本・オーストラリア・インドによる4カ国安保対話(Quad、クアッド)を公式化し、拡大する意思を示しました。連携を深めていくことが重要です。

この対話は元々は安倍元総理大臣が呼びかけたものです。そうして米国は、これに他国も加えて将来的にはアジア版NATOにしていく構想もあります。

バイデンが何かの間違いで大統領になった場合は、日本が旗振り役となって、アジア版NATOを推進していくべきです。日本は、米国が抜けたTPPも推進して成立させたこともあります。日本ならきっとできます。

バイデンが大統領になれば、おそらく最初に言い出した米国は、TPPに再加入することが予想されます。これが、バイデンが大統領になったときの唯一の良い点かもしれません。ただし、トランプが大統領になった場合は、日本は米国を再度TPPに加入させるべく努力し、そうさせるべきです。

中国は今のままでは、TPPに加盟することはできません。これに参加するには、中国は体制を変えなければならず、それを実行すれば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊する恐れもあるからです。

中国が加入できないTPPは、経済的に中国を囲い込むことにもなります。これをトランプ大統領に理解させべきです。

トランプが大統領になってしばくらくしてから、米国は日本に対して過大な要求をしなくなりました。従来の米国は、理不尽ともいえるような過大な要求をしたこともありましたが、それは影を潜めました。

トランプ大統領も、中国が国際秩序を塗り替えると表明する前までは、時には過大・理不尽とも思える要求をしましたが、結局それはことごとく実現されませんでした。それは、米国にとっては中国という米国が中心となって構築してきた国際秩序を塗り替えようとするとんでもないことを考える国がでてきたことと、やはり安倍前総理大臣の力が大きいです。

国際ルールに沿った形で、自由貿易を推進し、紛争などに介入することもなく世界平和に貢献してきた日本は国際秩序を塗り替えようとまでは考えていないのは明白です。中国のように米国を毀損することなどあり得ず、むしろ米国にとって最も頼りになる同盟国です。

安倍総理(当時)とトランプ大統領

安倍前総理が築いた太いパイプもあり、そのことをトランプ氏はやっと理解できたようです。ここで、バイデンが大統領になり時計の針を2年前に戻ってしまえば、バイデン政権が中国に対しては現在よりは寛容になり、日本対しては、しばらく影を潜めていた過大で理不尽な要求をしてくる可能性が大です。

現状を考えると、日本にとっては、いや世界にとってバイデンよりもトランプのほうが良いです。しかし、米メディアはトランプ氏を「狂ったピエロ」のように報道し、日本のメディアも右に習えです。

しかし、たとえバイデンが大統領になったとしても、日本は米国議会、豪、印と結束して、これをはねのけ、バイデンがデカップリングを進めざるを得ないようにすべきです。

トランプが大統領になって、中国への制裁が一段落すれば、また日本に対する過大で理不尽な要求がでてくるようになるかもしれません。しかし、それに対しても菅政権が安倍政権のレガシーを引き継ぎ、たくみに対処し、米国との良い関係をさらに強くしていくべきです。

日本は、誰が次期大統領になって転んでもただで起きるべきではありません。

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2019年6月3日月曜日

消費増税のために財務省が繰り出す「屁理屈」をすべて論破しよう―【私の論評】財務省の既存の手口、新たな手口に惑わされるな(゚д゚)!

消費増税のために財務省が繰り出す「屁理屈」をすべて論破しよう

「大地震発生で財政破綻するから」…?

高橋洋一氏

財政の「正論」に消費税は不要である

これまで、財務省は消費税を増税するために、いろいろな理屈を言ってきた。

今から30年くらい前には、(1)直間比率の是正だった。これは理屈というより、単に消費税を導入したいという願望だ。税金を直接税と間接税に分けても、その比率は国によって様々であるので、最適比率を探そうとしても無駄だからだ。

次には(2)財政破綻だ。財務省は、国の借金残高がこれまで急増していることを理由に、表だって「財政破綻する」とまでは断言しないものの、いろいろな局面で「ポチ」を使って、陰に陽に財政破綻論を国民に吹き込んでいる。

しかし、本コラムで再三述べているように、「借金」だけではなく「資産」を考慮しないと、本当の財政状況は理解できない。

そこで、市場で取引されているCDS(クレジットデフォルトスワップ。日本国債の「保険料」みたいなもの)から、現在の日本の財政破綻確率を推計すると、今後5年間で1%程度と、ほぼ無視できる低さなのだ。このあたりに興味のある方は、昨年10月15日付けの本コラム「IMFが公表した日本の財政『衝撃レポート』の中身を分析する」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978)等を参照していただきたい。

その次に財務省が消費増税の理由として出してきたのが、(3)社会保障のため、というものだ。しかし、これも本コラムで繰り返し述べてきたように、社会保障の財源には社会保険料をあてるのが筋だ。

なにしろ、消費税を社会保障目的税とする国はない。社会保険料が究極の「社会保障目的税」なのだから。もちろん、すべての人に社会保険料を払わせるのは不適当なので、それが払えない人の分は累進所得税によって賄う。

財政に関する「正論」には、消費税などどこにも出てこない。

例えば社会保障を充実させたいなら、現在放置されている社会保険料の徴収漏れについて対策を打つことがまず先決だ。

その具体策が、世界の多くの国がやっているのに、日本ではやっていない「歳入庁」の創設である。歳入庁を、こちらも海外と比べて遅ればせながら導入された、「マイナンバー制度」による所得の捕捉と組み合わせることが重要だろう。

筆者は、かつて第一次安倍政権において歳入庁を創設しようとして、財務省の猛烈な反対にあった。

その理由は、「国税庁を財務省の配下におけなくなると、財務省からの天下りに支障が出る」という実に情けないもので、愕然とさせられた。彼ら財務官僚は、口では偉そうに国家を語るが、その本音は自己保身でしかないことがわかり、興ざめしたものだ。

「大地震」という新たな理屈

(1)直間比率の是正、(2)財政破綻、(3)社会保障という「消費税増税のための理屈」それぞれの間違いを指摘してきたが、ここに最近、新たに4つ目として「大地震の可能性」も加わったようだ。

もっともこれは、いつものように財務省が前面に出ることはない。財務省は「ポチ」と言われる、自らの言いなりになるマスコミ人や学者を駆使するのだ。

まずはマスコミ人だ。筆者は、5月26日放送のBS朝日の「激論!クロスファイア」において、原真人・朝日新聞編集委員と討論した。

そこで原氏は、近い将来の大地震発生確率の高さに触れて、財政破綻の可能性を主張した。YouTubeなどを探せば、この時の状況がわかる(例えば、https://www.youtube.com/watch?v=n1bPxAVTX6w&list=PLZNNFTj6GlEP_zYOlpNykSJy7gtQaYlGW )。

筆者は、「財政破綻がリスクであると言うなら、確率として表現すべきだ」と指摘したが、原氏は一切説明できなかった。もちろん筆者は、「財政破綻の確率は今後5年以内で1%程度、一方で首都直下地震の確率は今後5年以内に1割強だから、桁がひとつ違う」と数字を挙げて説明した。

やりとりを見てもらえばわかると思うのだが、原氏の論は苦しい。財政破綻のリスクと言い募りながら、具体的なことが言えないのだ。司会者の田原総一郎氏からも「しっかりして」と言われていた。

原氏のツイッターには、「先の日曜深夜に放映されたBS朝日『激論クロスファイア』で、リフレ派の中心、高橋洋一氏と初めて討論した。都合のいいデータと数字、解釈だけ持ち出して議論してくるのにはうんざり。」と書いてある。

筆者の論拠が「都合のいいデータと数字、解釈」であるなら反論も簡単なはずだが、原氏はそれができなかった。当該ツイートのコメント欄を見ても、原氏に対して辛辣なものばかりだ(https://twitter.com/makotoha/status/1133562158011129856)。


なお原氏は、番組の中で資料を使っていたが、その内容は財務省の資料そのものであった。筆者は番組収録中にすでに気がついていたが、財務省の資料そのものを、出典も明記せずに使うのは、マスコミ人としても問題だろう。



その資料の内容についても指摘しておきたい。

原氏は「戦争による財政破綻と今の状況が似ている」と言いたかったようだが、まったく違う。まず、(1)財務省資料には政府資産の額が書かれていない。戦争期には実質的に政府資産がなかったが、現在は資産がたっぷりあるという点で、事情が異なっている。

また、(2)社会の生産力も大きく異なる。戦争期の日本は生産手段を破壊され、生産力がほぼ皆無という状況に追い込まれているが、今は技術に支えられた生産力があり、これまたまったく事情が異なる。そもそも、戦時中〜戦後に酷いインフレになるのは日本に限らず、どこの国でも見られる現象だ。

なお、(1)直間比率の是正、(2)財政破綻、(3)社会保障それぞれについての筆者の詳しい見解は、政策カフェ「高橋洋一教授出演!「消費増税 賛否両論」(優子の部屋 特別版)」(https://www.youtube.com/watch?v=vBHJp4QKBXs)でまとめているのでご覧いただきたい。

東日本大震災の教訓

次に、学者にも、大震災を理由に消費増税を主張する人が出てきた。

吉川洋・立正大学長は、「首都直下、南海トラフなどの大地震も財政破綻の引き金になり得るとみて、これに備えるためにも地道な財政再建が必要であり、原則消費増税を実施すべきだ」と主張する(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-30/PS9RQK6TTDS301)。

大震災対応の一般論について考えてみよう。

仮に、大震災が500年に1度発生するとしよう。事前の対策としては建物などの減震・免震が考えられるが、これはインフラ整備のため、長期国債発行で賄われる。事後対応としてもやはり国債発行により復興対策が行われるが、大震災発生の確率から考えれば500年債、500年償還とするのが適切だ。

いずれにしても、増税は悪手だ。というのも、増税が大震災の経済ショックを増幅するダブルパンチになるからである。

こうした話は、経済学の大学院レベルの課税平準化理論の簡単な応用問題だ。しかし、実際に東日本大震災が発生した際、民主党政権下では財務省の主導により、復興対策費用は復興増税で賄われ、長期国債は発行されず課税平準化理論は無視された。

もちろん筆者は、2011年3月14日付本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2254)や4月18日付本コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463)などで復興増税を批判した。

しかし、日本の主流派経済学者は、ほとんど全員が東日本大震災後の復興増税に賛同した。その賛同者リストは、今でも見ることができる(http://www3.grips.ac.jp/~t-ito/j_fukkou2011_list.htm)。この愚策のために、いまや日本の大学の経済学の講義では、まともな理論を教えられなくなってしまった。

吉川氏の意見は、東日本大震災後の愚かな政策を再び実行しようと唱えているわけで、筆者にとっては信じがたい。
なお吉川氏は、2014年の消費増税前、その影響について「軽微だ」と述べ、予想を外している。実際には増税後に景気動向指数が低下し、誰の目にも景気悪化は明らかだった。
ところが、景気の「山」や「谷」を判断する、内閣府の景気動向指数研究会も「消費増税による景気悪化はなかった」としている。この景気動向指数研究会の座長は、実は吉川氏だった。さもありなんという話だ。

消費増税の理由に、(4)大地震の可能性を持ち出すのは筋悪だ。上に書いたように、そもそも震災対応は増税によるべきでない。さらに、大地震は今後30年間で7割の確率、今後5年以内では1割強の確率で発生するといわれ、そのリスクは財政破綻の確率1%程度に比べて桁違いに大きい。これは、大地震でも財政破綻など起こらないことを意味する。

もし本当に、この「財政破綻の確率は1%」が間違いだと思うなら、市場でCDS(クレジットデフォルトスワップ)を購入すれば、確実に儲けられる。大地震論法を採用している人はCDSを買っているのだろうか。そうした行動をせずに、財政破綻だけ主張することを、一般的には「煽り」という。
財務省に「直接対決」を申し込むと…

筆者は、これまで上記のような「消費増税のための理屈」がいかにバカバカしいかについて、様々な場で書いたり、話したりしてきた。

ただし、こうした手法はまどろっこしいので、「増税の理屈の『発信元』と思われる財務省に直接言えばいいのではないか」と思うに至った。幸いなことに、政策NPO「万年野党」が運営協力している政策カフェで、財務省による「訪問講座」(https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/houmon.php)を使った企画が出てきた(https://twitter.com/seisaku_cafe/status/1133953980457934848)。
【どうなる消費増税?】7/1 19時~,『財務省出張講座』を依頼中です。
政策カフェチャンネルでは前回,不要論の高橋洋一先生@YoichiTakahashiのお話を伺いました。次回は財務省のご担当者からお話を伺ってみたいと思っています。動画配信他,会場参加の申込も受付ける予定です。
(準備が整い次第受付開始)

財務省による「訪問講座」とは、「税の仕組みや税を取り巻く状況等の説明、意見交換を目的として、皆さんの集まりや勉強会、職場研修、ゼミ、中学・高校の授業等に(財務省)職員が訪問して話す」というものである。そこに筆者が参加すれば、財務官僚とじかに「意見交換」ができる。

しかし財務省は、「YouTube等の不特定多数が視聴される媒体等への出席はご遠慮させて頂いております」とし、拒否してきた(https://twitter.com/seisaku_cafe/status/1134468192892416000)。


なお、高橋洋一先生をお招きした会の動画は、こちらからご覧頂けます。https://youtu.be/vBHJp4QKBXs 
【調整報告1-1】財務省さんから残念ながら「Youtube等の不特定多数が視聴される媒体等への出席はご遠慮させて頂いております」とのご回答を頂きました。
(続く)
税に関する議論は広く国民に共有されるべきはずなのに、財務省自ら、不特定多数が視聴する「もっともオープンな場」を避けるとは実に情けない。

【私の論評】財務省の既存の手口、新たな手口に惑わされるな(゚д゚)!

上の記事でも、クロスファイア 「高橋洋一 ✕ 原真人」のリンクが貼ってありましたが、同じクロスファイアの番組でも、小沢一郎が出演している「選挙」関連のものにリンクされていたので、以下に正しいリンクを貼っておきます。


この動画、勝ち負けで判断したくはないですしそれ以前の話ではあるのですが、高橋教授の完封勝利です。 高橋教授は確率に基づく数字を提示しているのですが、原氏は何らの数字的な根拠を示されていないです。 反対の意思表示を示すのであるならばそれなりに数字で表して説明しないと議論以前の問題です。

上の高橋洋一の記事と、この動画をご覧いただければ、現在の日本経済の諸問題が明らかになると思います。

この記事に改めて、何かを新たに付け加えることもありませんが、しいて付け加えるとすれば、上の記事の中にある課税平準化理論という言葉の意味をさらに詳細に理解しやす形で付け加えようと思います。

これは、高橋洋一氏はあまりも当然のことなので、詳しく説明する必要もないと判断したのでしょう。私自信も、当然のことだとは思うのですが、周りの人に聞いてみると地震の復興を税金で行うべきか、国債をもちいるべきなのか、あやふやな人が結構いたので。今回はこれについて説明しようと思います。

結論からいうと、これは高橋洋一氏も語るように、国債を用いるべきなのですが、その正解をいえるためには、課税平準化理論の意味を知っていることが前提となります。

大震災が起こったときに、その復興などに増税で賄うような国はないです。日本の復興税だけが、世界の例外です。古今東西にこれだけが、唯一の例外です。ただし、古代はどうだったのか、あるいは聞いたことがない国に地域まで絶対なかったとはいえませんので、誰かご存知の方がいらっしゃいましたら是非教えていただきたいです。無論その結果も含めて教えていただきたいです。

しかし、ネットで調べた限りではそのような国は古今東西ありませんでした。繰り返しいいますが、日本だけが例外です。このようなときには、長期国債を使うのがマクロ経済学上のセオリーです。「課税の標準化(タックス・スムージング)」という理論があるように、課税のインパクトは薄く伸ばして緩和させるのが基本です。

仮に百年に一度の震災だとすれば、震災の経済に与えるショックを百年にわたって広く薄く負担し、軽減させるため、百年債を発行して100分の1ずつ償還します。それが世界中の財政の常識です。これを否定する人は世界中に誰もいません。いるとすれば、日本の財務省の官僚か、財務省の走狗に成り果てたエコノミストや識者だけでしょう。

なぜそのようなことをするかといえば、世代間の不公平を是正するためです。百年に一度の地震に関して復興税で復興してしまえば、地震が発生した世代にだけ負担が重くのしかかります。

復興では、様々なインフラを整備します。その多くは、地震が起こった時の世代だけではなくその後の世代も使い続けます。だからこそ、百年債を発行して、毎年広く世代間で平準化し、地震に遭遇した時代の世代や他世代の負担を減らすのです。国債は、次世代につけをまわすなどのことは全くの詭弁以外の何者でもありません。そうではなく、せだいか復興税など、全くこの「課税標準化理論」からすれば、矛盾にみちみちています。

結局のところ、財務省は増税できるなら、何で良いようです。経済理論などを捻じ曲げても、国民生活が悪くなろうが、とにかく増税さえできれば、自分たちの勝ちと考えているようです。

さて、このようなことを考えているうちに、最近の財務省増税に向けての動きがもう一つあったことを思い出しました。

それは、GWも明け直後からいきなり朝日新聞を利用した財務省のMMT派への攻撃が始まったことです。朝日新聞が5月7日以下のような記事を掲載しました。一部を引用します。
「MMT」に気をつけろ! 財務省が異端理論に警戒警報
 財政の破綻(はたん)など起きっこないから、政府はもっと借金してもっとお金を使え――米国で注目を集める「MMT」(Modern Monetary Theory=現代金融理論)と呼ばれる経済理論が、日本の政治家の間にも広まり始めている。政府が膨大な借金を抱えても問題はない、と説くこの理論は米国で主流派経済学者から「異端」視され、論争を巻き起こしている。これまで消費増税を2度延期し、財政再建目標の達成時期も先送りしてきた日本では、一見心地よく聞こえそうなMMTはどう受け止められていくのだろうか。 
 4月22日午後、東京・永田町の衆院議員会館の会議室に、10人あまりの国会議員が集まった。自民党の若手議員らが日本の財政問題などを考えるために立ち上げた「日本の未来を考える勉強会」の会合。テーマは「MMT」だ。 
 この会でMMTが取り上げられるのは、一昨年以降、これで3回目という。最近、MMTの提唱者のニューヨーク州立大教授、ステファニー・ケルトン氏のインタビューが報じられるなど、日本のメディアでもMMTが取り上げられ始め、勉強会の参加者の一人は「世界が、我々に追いついてきたね」と誇らしげだ。(後略)』
後略部で、「評論家」の中野剛志氏について、わざわざ「現役の経産官僚でありながら」と書いている時点で、悪意というか「攻撃の意思」むき出しです。

ちなみに、財務官僚はMMTについて、「(MMTは)要するに、いっぱいお金を使いたい人が言っているだけ。論評に値しない。(経済政策の)手詰まり感の現れだろう」(ある財務省幹部)と、予想通り「論評に値しない」と切り捨てています。

論評に値しないならば、無視すればいいのに、そうすることもできないようです。

議論になったら負けるので、MMT派(というか反・緊縮財政派)に対する個人攻撃、誹謗中傷や、ストローマン・プロパガンダ、権威・プロパガンダ等々で貶め、潰そうとしてきているわけです。

私自身は、MMTに関しては、もしある国が有する生産性能力を超えてまで、過剰に貨幣を増やせば、当然過剰なインフレになるのは明らかなので、この点一点をもっても、かなり懐疑的です。政府の借金についても、このブログにも述べているように、無論現状の日本はそのような状況ではないではないので、心配する必要もないですが、際限なく借金しても問題がないという考え方には賛同はできません。

やはり、一昨日にも掲載した、「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています。プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」という考え方には、多いに賛成です。

そうして、この考えは、何もMMTなる理論でなくても、既存のマクロ経済学で十分に説明できます。だから、なせMMTなる理論を持ち出すのかその意味がわかりません。さらに、困ったこととには、MMT派の人々は、その理論を数式用いて説明していません。

MMTにはモデルがなく滋賀って数式もないです。そのためか、主張する人によって中身が変わります。これでは議論のしようがないです。これについては、以下の動画をご覧いただくとご理解いただけるものと思います。



以上のようなことから、欧米でもまともな経済学者はMMTに関してはほとんど相手にしていないというのが実情です。

それにしても、この財務省の動きは気になります。今後も、MMT派に対する様々な攻撃(特に、スキャンダル系)が続くものと思います。

この動きは、財務省による増税キャンペーンにも関係あるのではないかと思います。結局のところ、MMTを批判することによって、既存のマクロ経済の理論まで否定して、増税のための根拠に仕立てる魂胆ではないかと思うのです。

興味深いことに、朝日新聞は菅官房長官が顧問の「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」についても取り上げています。(自民党の20人超の有志議員で構成)

政府の負債(国の借金ではない)、具体的には国債・財投債の内、すでに46%が日銀保有しています。

【2018年末時点 日本国債・財投債所有者別内訳(総計は1013兆円)】


日銀が保有する国債について、政府は返済負担や利払い負担がありません(子会社ですから)。

日本銀行の株式の55%は、日本政府が所有しています。日本銀行は歴とした日本政府の子会社です。日本銀行のホームページには、
本銀行は、特別の法律(日本銀行法)により設立され、設立に関し行政庁の認可が必要な「認可法人」と位置付けられています。日本銀行は株式会社ではなく、また株主総会もありません。
と、書かれていますが、何しろ日本銀行は「株式」を東証JASDAQに上場しているのです。現時点で、日本銀行の株価は一株36,000円程度で、単位株式数が100株なので、誰でも360万円ほどで日銀の株主になれます。ただし、日銀は日本政府の純然たる子会社であるため、株主になってもあまり意味はありません。

株式市場に株式を上場しておきながら、「株式会社ではない」など通るはずがありません(ならば、上場するな、という話)。少なくとも、会計上、日銀は疑いようもなく政府の子会社なのです。

この手の「事実」やMMTの考え方などは全く別にして、既存のマクロ経済学で十分に説明がつきます。そうして、これは早急に国民が共有しなければなりません。

ちなみに、「政府紙幣及び無利子国債の発行を検討する議員連盟」の「無利子国債」は、無期限無利子国債だと思いますが、確かに日銀保有の国債を新規の「無期限無利子国債」と交換してしまえば、政府の負債は実質はもちろん、名目でも消滅します。

もっとも、そんな面倒なことをしなくても、単に「日銀保有国債について、政府の債務不履行はあり得ない(当たり前)」という認識を国民や政治家が持てば住む話です(別に、無期限無利子国債の発行に反対しているわけではないですが)。黒田総裁が国会で発言すれば、財務省も反論できません。

自国通貨建て国債のデフォルトはあり得ない」(ただし先進国などのまともな経済)という、当たり前の真実を国民が早急に共有し、日本の財政破綻の可能性はゼロであることを前提に財政拡大に転じるべきです。

そうして、財務省のMMT批判については、その動向も今後も見守っていこうと思います。

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2018年10月7日日曜日

沖縄県知事選の結果は「民主主義国家」の皮肉!? 今後は中国の「間接侵略」が一段と進行するだろう ―【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!



玉城氏は、普天間飛行場の危険を放置するのか?
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

沖縄県知事選は、元自由党衆院議員の玉城(たまき)デニー氏が、約8万票の大差で圧勝した。玉城氏は、名護市辺野古にある米軍キャンプ・シュワブを拡張して、米軍普天間飛行場(宜野湾市)を移設する計画について「断固阻止する」と公約している。

 以前も指摘したが、「国防は国の専権事項」というのが世界の常識だ。自治体の首長や住民が国防問題を左右できる日本の現状は、法制度に不備があるという意味だ。国会は怠慢過ぎないか。

 そもそも、市街地にある普天間飛行場は危険だからと、沖縄県民が移設を望んだのだ。日米両政府はその希望を聞き入れて移設を推進してきた。

 今回の選挙結果は「沖縄県民が普天間移設の希望を撤回し、固定化を望んだ」と解釈することも可能だが、本当にそれで良いのだろうか。

 実は、辺野古よりも普天間の方が、米軍にとって使い勝手がいい。例えば、標高75メートルの高台にある普天間は、辺野古と比べて津波や高波の影響を受けにくい。さらに、V字型に配置される辺野古の2本の滑走路は、いずれも1200メートルと短いが、普天間はボーイング747も離着陸可能な2700メートルである。

 普天間飛行場は市街地の真ん中にあり、「世界一危険」だと言われてきた。私も長年そう信じていたが、詳しく調べてみると、1945年の設置から現在まで、普天間に関わる航空機事故で死傷した日本人は1人もいない。

ちなみに、2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故では、搭乗者5人のうち2人死亡、3人が負傷し、地上でも1人死亡、2人が負傷した。普天間が世界一危険であれば、調布は宇宙一危険なのか?

2015年に東京都調布飛行場近くで発生した小型機墜落事故

 04年、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したときも、乗員3人が負傷したが、日本人の死傷者は1人も出ていない。

 もちろん過去に、普天間飛行場を拠点とする米軍機の事故が何度も発生し、多数の米兵が死亡・行方不明になったことは事実だ。彼らは日米安保条約に基づく任務中の事故により、日米両国のために命を落とした英雄である。基地反対派だけでなく、日本はこの事実を軽視していないか。

 先週のコラムで私は「沖縄県知事選の本質は、米中代理戦争だ」と指摘した。結果的に、米国が敗北し、中華人民共和国(PRC)が勝利した。

 共産主義国として国民に参政権を認めない国が、民主主義国の選挙制度を利用して勝負に勝つとは皮肉な話だ。今後、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろう。もし、「琉球独立」が実現したら、協力した沖縄県民は、参政権に加えて人権まで失う「究極の皮肉」が実現する。 

 ■ケント・ギルバート 米カリフォルニア州弁護士、タレント。1952年、米アイダホ州生まれ。71年に初来日。著書に『儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇』(講談社+α新書)、『トランプ大統領が嗤う日本人の傾向と対策』(産経新聞出版)、『日本覚醒』(宝島社)など。

【私の論評】日本でも、米国議会の「米中経済安保調査委員会」を超党派で設立して、中共の化けの皮をはがせ(゚д゚)!

ケント・ギルバート氏は、PRCの「間接侵略」が一段と進行するだろうと警告していますが、これについては米国ですでに警告を発していました。それも、オバマ政権末期の時点で発していました。

沖縄では中国が米軍基地反対運動をあおり、米軍へのスパイ活動を展開している。このようなショッキングな警告が米国議会の政策諮問の有力機関からすでに二年前に、発せられていました。中国は長期戦略として日米同盟を骨抜きにすることを図り、その具体策として沖縄での米軍基地反対運動へのひそかな支援や米軍の活動への秘密裡の軍事諜報工作を展開しているのだそうです。

沖縄基地反対運動

米国側の政府や議会の関連機関が日米同盟の光や影、虚や実について論じ、内外への注意を喚起するという作業は長年、続いてきました。ところが沖縄での米軍基地問題に関して中国の干渉を正面から指摘したという実例はきわめて珍しいです。米国側としてはそれだけ沖縄での中国の動きを危険視するにいたったということでしょう。日本側としては日米同盟の堅固な保持を望む限り、その警告を真剣に受けとめざるを得ないでしょう

日米同盟はこのところ全体として一段と堅固になりながらも、なお沖縄での在日米軍基地への反対運動は複雑な振動を広げています。まるで強壮な人間のノドに刺さったトゲのように、全身の機能こそ低下させないまでも、中枢部につながる神経を悩ませ、痛みをさらに拡大させかねない危険な兆候をみせているといえるでしょう。

沖縄の米軍基地の基盤が揺らげば揺らぐほど、日米同盟の平時有事の効用が減ることになります。日本への侵略や攻撃を未然に抑えるための抑止力が減ることになるからです。また朝鮮半島や台湾海峡という東アジアの不安定地域への米軍の出動能力を落とし、中国に対する力の均衡を崩すことにもつながるわけです。

沖縄あるいは日本全体を拠点とする米国の軍事力が弱くなることを最も歓迎するのは誰でしょうか。いまや東アジア、西太平洋の全域で米国の軍事的な存在を後退させようとする中国が米軍弱化の最大の受益者であることは明白です。

中国がそのためにソフト、ハード両面での多様な措置をとっていることは歴然ですが、二年前までは沖縄での反米軍基地運動への中国の関与は提起されることはまずありませんでした。しかも中国の対沖縄工作の最終目的は日米同盟分断だというのです。

「沖縄と中国」というこの重大な結びつきを新たに提起したのは米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関です。この委員会は2000年に新たな法律により、「米中両国間の経済と貿易の関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを調査して、議会と政府に政策上の勧告をする」ことを目的に常設されました。議会の上下両院の有力議員たちが選ぶ12人の委員(コミッショナー)が主体となり、米中関係を背景に中国側の軍事や外交の実態を調査するわけです。

各委員は中国の軍事、経済、外交などに詳しい専門家のほか、諜報活動や安保政策の研究者、実務家が主になります。最近まで政府や軍の枢要部に就いていた前官僚や前軍人、さらには上下両院で長年、活躍してきた前議員たちも委員を務めます。そしてそのときそのときの実際の中国の動き、米中関係の変動に合わせて、テーマをしぼり、さらなる専門家を証人として招いて、公聴会を開くのです。

同委員会は毎年、その活動成果をまとめて、年次報告書を発表する。その内容は詳細かつ膨大となります。最終的には米国の政府と議会に対中政策に関する提言をするわけです。同委員会の事務局も中国や軍事、諜報に関する知識の抱負なスタッフで固められ、特定テーマについての報告書を委員たちとの共同作業で定期的に発表しています。

米国の中国研究はこのように国政レベルできわめて広範かつ具体的なアプローチが多いです。中国の多様な動向のなかでも米国側が最も真剣な注意を向けるのはやはり軍事動向だといえます。この米中経済安保委員会はまさに中国の軍事動向と経済動向の関連を継続的に調べているのです。



米国議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」が沖縄と中国のからみに関しての調査結果をこのほど明らかにしたのは 「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」 と題する報告書の中でした。

合計16ページのこの報告書が警告する沖縄での中国の動きを米国の戦略全体の中で位置づけるために、まずこの報告書の主眼についての記述を紹介します。
中国は東アジア、西太平洋地域でもし軍事衝突が起きた場合の中国人民解放軍の米軍に対する脆弱性を減らすために、その種の衝突への米国側の軍事対応を抑える、あるいは遅らせるための『接近阻止』または『領域否定』の能力を構築することを継続している。 中国側は同時に軍事衝突が起きる前の非軍事的選択肢を含むその他の措置も推進している。それらの措置とは米国側の戦略的な地位、行動の自由、作戦の余地を侵食することを意図する試みである。
要するに中国はアジアでの米軍の軍事能力を削ぐことに最大の努力を傾けているというのです。その米軍能力の削減のための工作とは必ずしも軍事手段には限らないです。一連の非軍事的な措置もあるというのです。同報告書がその非軍事的措置としてあげるのが以下の三種類の動きでした。
・関与
・威圧
・同盟分断
以上、三種の中国側の戦術はみなアジアでの米軍の弱体化、同時に中国軍の強化を狙いとしています。その戦術の標的は米国と同時に日本などその同盟諸国により鋭く照準が絞られていまなす。本稿の主題である沖縄に対する中国の工作はその中の「同盟分断」の戦術に含まれていました。

では中国はなぜアジアでの米軍の能力の弱化にこれほど必死になるのでしょうか。その点については同報告書は以下の骨子の理由をあげていました。
中国人民解放軍幹部が軍科学院の刊行物などに発表した論文類は中国がアジア、西太平洋で 『歴史上の正当な傑出した立場』 に戻るためには、米国がアジアの同盟諸国とともに、有事に中国の軍事能力を抑えこもうとする態勢を崩す必要がある、と主張している。
以上の記述での中国にとっての「歴史上の正当な傑出した立場」というのは明らかに 「屈辱の世紀」 前の清朝以前の中華帝国王朝時代のグローバルな威勢、ということでしょう。その過去の栄光の復活というわけです。

この概念は習近平国家主席が唱える「中国の夢」とか「中華民族の偉大な復興」というような政治標語とも一致しています。「平和的台頭」という表面は穏やかなスローガンの背後にはいまの中華人民共和国を過去の王朝時代のような世界帝國ふうに復活させようというギラギラした野望が存在している、と米国側の専門家集団による同報告書はみているのです。

この「野望」は2016年、南シナ海での中国の海洋覇権追求に関して国際仲裁裁判所が「根拠なし」と裁定した「九段線」にもあらわとなっていました。「南シナ海は古代から九段線の区画により歴史的に中国の領海だった」という時代錯誤の中国政府の主張は、「歴史上の正当な傑出した立場」の反映なのです。ただし現代の世界ではその正当性はないのです。ちなみに、この「九段線」なるものはルトワックの『中国4.0』という書籍によれば、中華民国の将官が酔っ払って何の根拠もなく地図に描いたものとされています。

中国が主張する九段線

しかし中国側からすれば、その「正当な傑出した立場」の構築や達成には米国、とくにアジア駐留の前方展開の米軍の存在が最大の障害となります。

この点の中国側の軍事的な認識を米中経済安保調査委員会の同報告書は以下のように総括していました。
中国軍幹部たちは、米国が中国の正当な進出を阻もうとして、その中国封じ込めのためにアジアの北地域では日本と韓国、南地域ではオーストラリアとフィリピンを拠点とする軍事基地システムを築き、グアム島をその中核とし、中国深部を長距離の戦略兵器で攻撃ができるようにしている、とみている。
だからこそ中国にとっては米国がアジアで構築してきた一連の同盟関係とその軍事態勢は有事平時を問わず、敵視や反発の主対象となるわけです。

同報告書は中国側のそのアジアでの米軍の能力を弱めるための対米、反米そして対米国同盟諸国への非軍事的手段の基本的な特徴について以下のように解説していました。
中国人民解放軍の最高幹部たちは各種の論文で『戦争は単に軍事力の競合ではなく、政治、経済、外交、文化などを含めての総合的な競い合いだ』と繰り返し主張している。 つまり政治、経済、外交、文化などの非軍事的要因が軍事作戦を直接、間接に支えなければ勝利は得られないという考え方なのだ。
だから米軍のアジアでの中国のかかわる紛争への介入を阻むためには単に軍事力だけでなく、米国の政治システムや同盟相手の諸国の対米依存や対米信頼を弱めるための外交、情報、経済などのテコが必要となる。その種のテコには貿易協定や友好外交などから賄賂的な経済利権の付与も含まれてくる。
つまりは非常に広範で多様な手段による米軍の能力削減、そして同盟の骨抜きという意図なのです。中国側のその種の意図による具体的な活動が前述の三戦術「関与」「威圧」 「同盟分断」だというわけなのです。

その三戦術のうち対沖縄工作が含まれた「同盟分断」を詳述する前に「関与」と「威圧」について報告書の概略を紹介しておきます。
【関与】 
中国はタイやパキスタンとの経済協力を深め、軍事協力へと発展させ、中国海軍の現地での港湾使用などで、米軍に対する軍事能力を高めている。オーストラリアやタイとの合同軍事演習を実施して、両国の米国との安全保障協力を複雑にする。 韓国との経済のきずなを強めて、安保面でも韓国の米国との密着を緩める。
  【威圧】
中国はフィリピンとのスカーボロ環礁での衝突の際、フィリピン産バナナの輸入を規制した。日本との尖閣諸島近海での衝突の際はレアアース(希土類)の対日輸出を規制した。いずれも経済的懲罰という威圧行動だった。尖閣付近では海警の艦艇の背後に海軍艦艇を配備し、軍事力行使の威圧をかける。中国はベトナムの排他的経済水域(EEZ)での一方的な石油掘削作業でも軍事的な威圧をした。この種の威圧はいずれも米軍の抑止力を減らす意図を持つ。
「米中経済安保調査委員会」の同報告書はそのうえで3戦術の最後の【同盟分断】に触れて、そのなかの主要項目として「沖縄」をあげていました。

注目されるのは、同じ「同盟分断」の章では米国の同盟諸国の国名をあげて、国別の実態を報告しているのに対し、日本の場合は、日本という国名ではなく「沖縄」だけを特記している点でした。中国の日本に対する同盟分断戦術はいまのところ沖縄に集中しているという認識の反映のようなのです。その記述は以下のような趣旨でした。
【同盟分断】
中国は日本を日米同盟から離反させ、中国に譲歩させるための戦術として経済的威圧を試みたが、ほとんど成功しなかった。日本へのレアアースの輸出禁止や中国市場での日本製品ボイコットなどは効果をあげず、日本は尖閣諸島問題でも譲歩をせず、逆に他のアジア諸国との安保協力を強め、米国からは尖閣防衛への支援の言明を得た。
中国はだから沖縄への工作に対日戦術の重点をおくようになったというわけです。
中国軍部はとくに沖縄駐留の米軍が有する遠隔地への兵力投入能力を深刻に懸念しており、その弱体化を多角的な方法で図っている。
沖縄には周知のように米軍の海兵隊の精鋭が駐留しています。第3海兵遠征軍と呼ばれる部隊は海兵空陸機動部隊とも称され、空と海の両方から遠隔地での紛争や危機にも対応て、展開できます。多様な軍事作戦任務や地域の安全保障協力活動が可能であり、有事や緊急事態へスピーディーに出動できます。米軍全体でも最も実践的な遠征即応部隊としての自立作戦能力を備えているともいわれます。

沖縄の米海兵隊

まさに中国側からすれば大きな脅威というわけです。だからその戦力、能力をあらゆる手段を使って削ぐことは中国にとっての重要な戦略目標ということになります。

同報告書は次のようにも述べていました。
中国は沖縄米軍の弱体化の一端として特定の機関や投資家を使い、沖縄の米軍基地の近くに不動産を購入している。
報告書はこの中国側による沖縄の不動産購入について脚注で「中国工作員が米軍基地近くに米軍関係者居住用のビルを買い、管理して、管理者用のカギで米軍関係者世帯宅に侵入して、軍事機密を盗もうとしている」という日本側の一部で報道された情報を引用していました。

米国の政府や議会の報告書では米側独自の秘密情報を公開することはまずないですが、一般のマスコミ情報の引用とか確認という形で同種の情報を出すことがよくあります。つまり米側の独自の判断でも事実と認めた場合の「引用」となるわけです。

そして報告書はこんどは引用ではなく、同報告作成者側の自主的な記述としてさらに以下の諸点を述べていました。
中国は沖縄に米軍の軍事情報を集めるための中国軍の諜報工作員と日本側の米軍基地反対運動をあおるための政治工作員を送りこみ、日米両国の離反を企図している。
沖縄での中国の諜報工作員たちは米軍基地を常時ひそかに監視して、米軍の軍事活動の詳細をモニターするほか、米軍の自衛隊との連携の実態をも調べている。
中国の政治工作員は沖縄住民の米軍基地に対する不満や怒りを扇動することに努める。そのために中国側関係者が沖縄の米軍基地反対の集会やデモに実際に参加することもよくある。その結果、沖縄住民の反米感情をあおり、日米同盟への懐疑を強め、日米間の安保協力をこじれさせることを企図している。
同報告書は中国側の沖縄でのこうした動きをはっきりと 「スパイ活(Espionage)」とか「扇動(Agitation)」と呼び、そうした行動が将来も続けられるという見通しを明言していました。このへんはこの記述以上に詳細で具体的な情報こそ示されないものの、明らかに米国当局独自の事実関係把握に基づく報告であり、警告だといえます。

米中経済安保調査委員会の同報告書はさらに中国側の沖縄領有権の主張や沖縄内部での独立運動についても衝撃的な指摘をしていました。

要するに中国は自国の主権は尖閣諸島だけでなく、沖縄全体に及ぶと主張し、その領土拡張の野望は沖縄にも向けられている、というのです。報告書の記述を以下に掲載します。
中国はまた沖縄の独立運動をも地元の親中国勢力をあおって支援するだけでなく、中国側工作員自身が運動に参加し、推進している。
中国の学者や軍人たちは『日本は沖縄の主権を有していない』という主張を各種論文などで表明してきた。同時に中国は日本側の沖縄県の尖閣諸島の施政権をも実際の侵入行動で否定し続けてきた。この動きも日本側の懸念や不安を増し、沖縄独立運動が勢いを増す効果を発揮する。
確かに中国政府は日本の沖縄に対する主権を公式に認めたことがないです。中国が沖縄の領有権を有すると政府が公式に言明することもないですが、中国政府の代表である学者や軍人が対外的に「沖縄中国領」論を発信している事実はあまりに歴然としているのです。同報告書はこうした点での中国側のトリックの実例として以下のようなことも述べていました。
中国の官営ニュースメディアは『琉球での2006年の住民投票では住民の75%が日本からの独立を望むという結果が出た』という報道を流した。しかし現実にはその種の住民投票は実施されてはいない。沖縄住民の多数派は日本領に留まることを欲している。
中国側の官営メディアがこの種の虚報を流すことは年来の中国のプロパガンダ工作ではよくある事例です。この虚報の背後にすけてみえるのは、中国がやがては沖縄も自国領土だと宣言するようになる展望だといえます。

米中経済安保調査委員会の「アジア太平洋での米軍の前方展開を抑える中国の試み」という題の同報告書は中国の沖縄に対する活動について以上のように述べて、中国側のその目的はすべて日米同盟にくさびを打ちこみ、日米の離反を図って、米軍の沖縄などでの軍事能力を骨抜きにすることだと分析していました。

とくに中国側の領土拡張の狙いが単に尖閣諸島だけでなく沖縄本島などにも及んでいるという指摘、さらには中国側がすでに沖縄の内部に工作員を送りこんで、軍事、政治の両面で日米の連携をかき乱しているという警告は日本側としても重大に受けとめねばならないでしょう。

中国による日米同盟への揺さぶり工作では同報告書が日韓関係についても警鐘を鳴らしている点をも最後に付記しておきます。中国がアジアでの米国の存在を後退させる戦術の一環として日本と韓国との対立をもあおっている、というのです

日本も韓国もいうまでもなく、ともに米国の同盟国です。米国を中心に日韓両国が安保面で緊密な連携を保てば、米軍の抑止力は効果を発揮します。日韓両国が逆に対立し、距離をおいていれば、米軍の効用も減ってしまいます。中国にとっては東アジアでの米軍の能力の減殺という目的の下に、日本と韓国との間の摩擦や対立を広げる戦略をも進めてきたというのはごく自然です。同報告書は以下の諸点を指摘していました。
中国は日韓両国間の対立の原因となっている竹島問題に関して同島を軍事占領する韓国の立場を支持して、日本側の領有権主張を『日本の危険なナショナリズムの高揚』などとして非難してきた。
中国は日韓両国間の慰安婦問題のような第二次大戦にかかわる歴史認識問題に対して韓国側の主張を支持し、日本側の態度を非難する形の言動を示して、日韓間の歴史問題解決を遅らせてきた。
中国は日本の自衛隊の能力向上や役割拡大への韓国側の懸念に同調を示して、韓国側の対日不信をあおり、米国が期待するような米韓両国間の安全保障協力の推進を阻もうとしてきた。
米国の議会機関が指摘する中国の日韓離反工作も中国の沖縄への介入と目的を一致させる反日、反米のしたたかな謀略活動だともいえるでしょう。日本側としても硬軟両面でのそれ以上にしたたかな反撃が欠かせないでしょう。

安倍総理は、総理に着任する直前に、「安全保障のダイヤモンド」という論文を国際NPO団体PROJECT SYNDICATEに発表しました。この内容は、単純に言ってしまうと多国間の連携による中国封じ込め政策です。

そうして、安倍総理はこの論文の内容を実現するため全方位外交を展開し、安全保障のダイヤモンド構想を現実のものとしてきました。これは、中国にとって大きな脅威だと思います。

ただし、この内容は、未だにほとんどのマスコミで報道されることはありません。沖縄の危機についても、産経新聞などは例外としてほとんど報道されません。テレビ局ではどこも報道しません。

この状況は何としても打開しなければなりません。これを打開するには、まずは日本でも米国議会に設置された「米中経済安保調査委員会」という機関と同じような機関をつくるべきです。

中国に親和的なリベラル・左派が多数派を占める米国のマスコミや共和党が大きな力を持っていたオバマ政権末期にこの委員会は設立されています。

そうして、このブログでも以前掲載したように、米国議会のこの「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、今年の8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書が公開されていますが、これを期に米国議会では中国をあからさまに擁護する議員は、ほとんどいなくなりました。

その記事のリンクを以下に掲載します。
【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを引用します。
中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。 
なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。 
とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。 
これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。 
そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。 
日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。
日本でも、このような委員会を超党派で設立して、中国の沖縄での工作活動を表沙汰にして、中共の化けの皮をはがせば、日本でも中国を擁護するような国会議員などいなくなります。それでも、産経新聞などの一部を除いては、それを報道しないでしょうが、政府が積極的にSNSなどで公表するようにすれば、いずれ日本も米国と同じようになり、マスコミも政治家も中国をあからさに擁護する者はいなくなるでしょう。

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