2024年3月29日金曜日

日本弱くし隣国富ませる「再エネ賦課金」即廃止せよ 河野氏答弁に批判噴出、問題の本質は中国「ロゴマーク付き資料」ではない―【私の論評】内閣府の再エネTFは重大な決定をさせてはならない、ただのド素人集団

有本香の以読制毒

まとめ
  • 内閣府のタスクフォースでの中国国営企業のロゴマーク使用問題について河野太郎規制改革担当相の国会答弁が問題視される
  • エネルギー政策への中国の浸透に対する警鐘と再エネ偏重の問題点について指摘
  • 鹿児島県伊佐市のメガソーラーでの爆発・火災事故を通じて太陽光発電のリスク強調
  •  総務省の調査で全国の自治体の4割超が太陽光発電施設に起因するトラブルを抱えていることが明らかに
  • 以上のような欺瞞を廃するには「再エネ村」の食い扶持を止めるしかない。

河野太郎

 再生可能エネルギーの規制見直しを目指す内閣府のタスクフォースで、中国国営企業のロゴ入り資料が使用されいたのは大問題である。この会議の重要人物である河野太郎規制改革担当相が、国会での追及に対して「所管外」と答弁を繰り返し、回答を避けたことをネット上で批判されている。

 しかし、この問題の本質は「ロゴ入り資料」ではなく、日本のエネルギー政策への中国の影響力の浸透にあるにもかかわらず、大手メディアがその本質を論じることを避けている。その理由として、経済産業省主導の再生可能エネルギーへの転換の流れで、メディアが関連企業からの広告収入を意識していることが考えられる。

 筆者自身は長年、日本の「再生可能エネルギー偏重」政策に警鐘を鳴らし続けてきた。この政策に反対する5つの理由を挙げ。

 1つ目は環境破壊の問題、2つ目は天候次第で電力供給が不安定になること、3つ目は電気代の値上がり、4つ目は中国製の太陽光パネルの多くが強制労働の産物とされていること、5つ目はインフラ事業ながら外資規制がないことである。

 さらに、鹿児島県の大規模太陽光発電所で発生した爆発火災事故の事例は、全国で設置が拡大する太陽光パネルの危険性を改めて示している。また、総務省の調査で、自治体の4割超が太陽光パネルに関するトラブルを抱えている。主なトラブルとして4点を挙げている。具体的には、工事中の土砂流出、事業者の住民説明不足、工事内容の相違、稼働後の連絡がつかないことなどである。

 最後に、日本保守党が再生可能エネルギー賦課金の廃止を重点政策に掲げていること、国民民主党も同様の法案を出していることに言及し、この賦課金制度が日本を貧しくし中国を助ける結果になっていると批判。欺瞞(ぎまん)をやめさせ、「再生可能エネルギー村」への給付を止めることが必要だ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】内閣府の再エネTFは重大な決定をさせてはならない、ただのド素人集団

まとめ
  • 太陽光発電の経済合理性には大きな問題があり、初期投資コストが高く、安定した電力供給が困難である。
  • 設置場所の確保や環境負荷など多くの根本的な欠陥があり、従来の安価で安定的な発電方式に太刀打ちできない状況にある。
  • 火災や水害、地震などの自然災害に対する脆弱性が極めて高く、適切な対策が不十分である。
  • 発電事業者は火災や浸水、地震に対するリスクを過小評価し、十分な対策を講じていない。
  • 内閣府のTFでは、専門知識や経験に欠ける素人がエネルギー政策や技術の決定に関与しており、重大な問題点が見過ごされている可能性がある。
太陽光発電は現状、従来の発電方式と比べて決して経済合理性があるとは言えません。大きな欠陥が存在するのです。

第一に、初期投資コストが極めて高額になることが大きな障壁となっています。太陽電池モジュールやシステム設備の費用がかさみ、発電コストに大きく影響します。

第二に、発電の不確実性が極めて高いことが問題です。日射量の変動により出力が大きく変動し、安定した電力供給が困難です。夜間は全く発電できず、電力需要とのミスマッチが深刻です。

さらに、設置場所の確保が課題となります。パネルには広大な面積が必要で、適地の確保が難しい上に、土地の有効活用ができません。

加えて、CO2排出量はゼロでも、製造時やパネル廃棄時の環境負荷を考慮すれば、決して完全に環境に優しいとは言えないでしょう。

このように、高コスト、不安定出力、設置面積の確保、環境負荷など、太陽光発電には多くの根本的な欠陥があり、経済合理性に乏しいと言わざるを得ません。現状では、従来の安価で安定的な発電方式に太刀打ちできる水準には程遠い状況だと言えるでしょう。

このことは、最近ではネットなどで広く拡散され、多くの人が知るところとなっています。

さらに、上の記事にもあるとおり、鹿児島県の大規模太陽光発電所で発生した爆発火災事故の事例が火事になった場合の危険性を示しています。

太陽光パネル火災

太陽光発電システムは、火災のリスクがゼロとは言えません。太陽電池モジュール自体は不燃性の素材で作られていますが、ケーブルの被覆や接続箱など、一部に可燃性の部品が使われているためです。

設置が不適切であったり、部品が劣化すると、電気的な故障から発火する恐れがあります。また、落雷や外部からの発火源に曝されれば、可燃部分に燃え移る危険性もあります。

さらに、太陽光発電システムには直流から交流への変換装置(パワーコンディショナー)が備わっています。この変換器に不具合があると過熱し、出火に至るリスクがあります。系統連系型の場合は、電力会社側の系統トラブルの影響を受ける可能性もあります。

そのため、太陽光パネルを安全に運用するには、適切な設計と施工、定期的な点検とメンテナンスが重要になります。配線やアース処理を適正に行い、部品の経年劣化に注意を払う必要があります。

さらに、避雷設備を設置したり、直流側と交流側の配線を分離するなどの対策で、万が一の火災に備える必要があります。監視体制を整備し、早期発見と初期消火が可能な環境作りも求められます。

さらに、太陽光パネルが火災になった場合の対処についても適切な措置がなされているとは言い難い状況にあります。

発電事業者は、太陽光パネルの火災リスクを過小評価し、適切な対策を怠っている状況がみられます。万が一火災が起きた場合の対処方法にも、重大な欠陥があると言わざるを得ません。

初期消火が極めて困難なことが最大の問題です。太陽電池モジュール自体は不燃性ですが、周辺の可燃物に燃え移ると通電火災となり、消火活動がきわめて危険になります。日中はパネルから高電圧の直流電流が流れ続け、消防隊員が感電する恐れさえあります。一般的な消火設備や方法が通用しない特殊な火災なのです。

一般的な水消火設備を配備しているだけでは全く意味がありません。水が太陽電池パネルに掛かれば、漏電の危険が高まり、火災がかえって拡大する恐れがあります。消火用水の使用は、太陽光発電所の電気系統を完全に遮断した上でなければなりません。

しかし発電事業者は、このような電気的リスクへの認識が欠如しています。消防隊に対して適切な情報提供や指示ができていないばかりか、発電所構内にも、水以外の専用の消火設備や資機材を備えていないのが実情です。

出火を防ぐための監視態勢が不十分であり、早期発見と通報がなされないおそれがあります。消防隊に速やかに連絡し、太陽電池アレイ周辺の電源を自らシャットダウンすることさえ怠っている場合があります。

さらに、消防隊に対して、発電所の構造や電気系統に関する十分な情報提供もなされていません。適切な消火活動がとれず、事態を悪化させかねません。火災後の設備の絶縁状態やアースの確認、適切な廃棄処理も怠られがちです。

このように、太陽光発電所における火災対策は、発電事業者の理解不足と体制の不備から、極めて不十分であり、重大な問題があると指摘せざるを得ません。火災リスクへの真摯な取り組みが求められています。

太陽光発電設備には、水害時に重大な危険が伴うことを指摘せざるをえません。

最大の問題は、浸水した太陽電池モジュールからの感電リスクです。パネルには高電圧の直流電流が流れており、水没すると漏電し、周囲の水域で感電事故が発生する可能性があります。しかし多くの事業者は、この危険性を軽視していると言わざるをえません。

さらに、洪水で太陽電池アレイが流されたり、架台が傾斜して崩壊する恐れもあります。がれき混じりの流水によって、パネルやケーブルが破損し、電気トラブルや漏電火災に至るリスクがあるのです。

加えて、変圧器やパワーコンディショナーなどの電気設備が浸水すれば、内部の絶縁不良や地絡など、深刻な電気的危険が発生します。しかし設備の防水対策が不十分な例が多く、水害に無防備な状態にあります。

一旦トラブルが起きれば、高電圧の直流電源があるために、作業員が感電する危険があり、復旧作業は極めて困難になります。

このように太陽光発電所は浸水の危険性が非常に高く、水害対策が必須です。しかし現状では、その認識が発電事業者に欠如しており、適切な対策がなされていないのが実情であり、極めて深刻な問題があると指摘せざるをえません。

太陽光発電設備には、地震発生時に重大な危険が伴うことを厳しく指摘せざるを得ません。

最大の問題は、太陽電池アレイの落下・転倒による人的被害のリスクです。アレイは高所に大量の重量物が並んでおり、地震の揺れで支持構造物が破損すれば、パネル自体や架台がそのまま落下する恐れがあります。事故時の死傷者発生は避けられません。しかし多くの事業者は、この落下リスクを軽視し、適切な落下防止対策を怠っているのが実情です。

さらに、地震による停電時に、太陽電池アレイは発電を続けるため、高電圧の電流が流れ続けます。配線や接続箱等に被害があれば、感電や漏電火災が発生する危険性があります。ところが、停電対策の認識が発電事業者に欠如しており、絶縁やアース対策が不十分なケースが多々あります。

加えて、変圧器などの電気設備が地震で損壊すれば、絶縁不良や地絡が生じ、重大な電気事故に繋がります。しかしこれらの設備の耐震性が不十分な上、専門的な点検や保守体制が整っていないのが実状です。

発電所周辺で地すべりや液状化が起これば、アレイ基礎の沈下や傾斜が起こり、設備の破損や漏電に繋がるリスクもあります。しかし、こうした自然災害への対策が発電事業者から等閑視されているのが実情です。

このように地震対策は極めて不十分であり、発電事業者の安全意識と危機管理体制の欠如が、重大な人的被害や電気事故に繋がる深刻なリスクを生んでいると言わざるを得ません。厳しい指摘と早急な是正が不可欠です。

このように、経済合理性が低く、火災、水害、地震など日本の自然災害に対する脆弱性が極めて高い太陽光発電は、現状では本格的な実用化に向いていないと言えます。


太陽光パネルの水害時の注意喚起

実験施設レベルであれば別ですが、一般の発電所などで実用的に活用するのは避けるべきでしょう。

初期コストが高止まりしており、発電コストが他の方式に見合わない。さらに自然災害リスクへの対策が全く不十分で、火災、浸水、落下などの重大事故が常に潜在しています。経済性と安全性の双方で、致命的な欠陥があるのが実情です。

このような状況下で無理に実用化を推し進めれば、莫大なコストがかかり、重大事故の危険にさらされかねません。したがって、技術の更なる改善と環境整備を待つべきであり、現時点での一般的な実用化は控えるべきと言えるでしょう。

太陽光発電の経済性と安全性に関する深刻な課題について、思いが至らない人はエネルギー政策やエネルギー技術に関する素人だと言えます。発電コストの妥当性検証、電力システム運用、電気設備の安全基準、自然災害リスク評価、エネルギー政策立案など、様々な専門分野の知見が不可欠ですが、素人にはそうした専門性を欠いています。そのため、太陽光発電をめぐる本質的な問題点を過小評価し、的確な判断ができないのです。

発電コストが他の方式に見合うのか、電力供給の安定化に何が必要か、設備の安全確保にはどのような対策が求められるのか、災害リスクへの対応力は十分かなど、さまざまな観点から専門的な検証が欠かせません。

しかし素人には、そうした高度な課題への理解が欠如しているのが実情です。エネルギーシステムの経済合理性と災害レジリエンスの両立は、きわめて高度な技術的・政策的挑戦であり、その本質を把握できるのはエネルギー分野の専門家だけなのです。

したがって、太陽光発電実用化の阻害要因について、専門知識と経験を持たない素人が的確に判断することは難しく、様々な リスクを看過してしまう危険性が常にあると言わざるを得ません。

大林ミカ氏が議長を務めた、内閣府の再生可能エネルギー規制等の見直しに関するタスクフォースは、実際のところ、エネルギー政策や発電技術の専門性に乏しい素人集団であると評さざるを得ません。

エネルギー問題のド素人大林ミカ氏

経済産業省の審議会など、これまでエネルギー政策の実務に携わってきた有識者や技術者は参加しておらず、一般市民や再エネ推進派が多数を占めています。発電コストの検証、系統運用の技術的課題、設備の安全基準、災害リスク管理などについて、十分な専門知識と経験を持つ人材が不在です。

つまり、このタスクフォースは、本質的な技術的・経済的な観点から見れば、あくまで素人集団にすぎず、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの実用化にまつわる重大な課題を、適切に把握し判断できる専門性を欠いているのが実情です。

そのため、タスクフォースが提言する規制緩和案には、経済合理性や災害リスク、電力システムへの影響など、避けて通れない重大な問題点が看過されてしまう可能性が極めて高いと危惧されます。エネルギー政策は、国民生活や産業活動に重大な影響を及ぼし得るだけに、素人的な発想からは適切な政策は導き出せないと言わざるをえません。

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2024年3月28日木曜日

「誤解受け不安にさせたのは当然」中国企業ロゴ問題で辞任の大林ミカ氏、会見主なやりとり―【私の論評】[重大警告]自民党エネルギー政策への中国の影響力浸透の疑惑 - 大林氏中国企業ロゴ問題で国家安全保障上の深刻な懸念

「誤解受け不安にさせたのは当然」中国企業ロゴ問題で辞任の大林ミカ氏、会見主なやりとり

まとめ
  • 問題発覚の端緒は、内閣府TFに提出された資料に中国国営電力会社のロゴマークが入っていたこと。
  • 大林氏は、ロゴマークの存在に気付かなかったことを謝罪し、TF委員を辞任。
  • 大野氏は、財団と国家電網公司との金銭的な関係は存在しないと説明。
  • 本件は、日本のエネルギー政策の透明性や安全保障に関わる問題として注目。財団は疑惑を払拭できるかどうかが焦点。
  • 財団は国家電網公司主導の組織「GEIDCO」に加盟していた。財団は太陽光発電のコスト削減等、日本のエネルギー転換に向けた提案を行っていた。
大野輝之常務理事

問題発覚

2024年3月、内閣府の再生可能エネルギー規制見直しを目指すタスクフォース(TF)に提出された資料に、中国国営電力会社「国家電網公司」のロゴマークが入っていることが発覚した。この問題を受け、資料を提出した公益財団法人「自然エネルギー財団」の大林ミカ事業局長と大野輝之常務理事が27日、記者会見を開き、経緯と説明を行った。

大林氏の説明と謝罪

大林氏は、ロゴマークの存在に気付かなかったことを謝罪し、TF委員を辞任した。大林氏によると、資料は複数の外部研究者から提供されたもので、ロゴマークは資料の隅に小さく表示されていたため、確認が行き届かなかったとのことだ。

大林氏は、「多くの方々に大きな懸念を抱かせる結果となって大変申し訳なく思っております。深く反省しております。」と述べた。

大野氏の説明

大野氏は、財団と国家電網公司との間に金銭的な関係は存在せず、今回の件は単純なミスであったと説明した。大野氏によると、財団は国際的なエネルギー問題に関する研究活動の一環として、国家電網公司を含む様々な機関と情報交換を行っており、今回の資料もその過程で作成されたとだ。

大野氏は、「財団と中国企業・政府の金銭的、資本的、人的関係は一切ございません。今回の件は、他国の影響下にあるとか、国のエネルギー政策をゆがめているとか、そういったことは一切無縁のことです。」と強調した。

影響と今後の見通し

今回の問題は、日本のエネルギー政策の透明性や安全保障に関わる問題として、大きな注目を集めている。斎藤健経済産業相は、財団との関係を調査するとしているほか、財団は太陽光パネルの中国依存問題や国際送電網の必要性などについて、説明責任を果たしていく必要がある。

今後の見通しとしては、財団が疑惑を払拭できるかどうかが焦点となり、調査結果次第では財団の活動に影響が出る可能性もある。

追加情報
  • 大林氏は、河野太郎規制改革担当大臣からTF委員に推薦されていた。
  • 財団は、2016年から国家電網公司が主導する国際的な組織「グローバル・エネルギー・インターコネクション発展協力機構(GEIDCO)」に加盟していた。
  • 財団は、太陽光発電のコスト削減や洋上風力発電の導入促進など、日本のエネルギー転換に向けた様々な提案を行っている。
 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】[重大警告]自民党エネルギー政策への中国の影響力浸透の疑惑 - 大林氏中国企業ロゴ問題で国家安全保障上の深刻な懸念

まとめ
  • 大林氏の中国企業ロゴ問題は、政府の政策決定プロセスへの中国の不当な影響力行使が危惧される重大な国家安全保障上の問題である。
  • メンバー選定時に国家安全保障リスクの綿密な審査が欠けていた。大林氏のような外国の利益を優先するメンバーを選任したことは重大な失態である。
  • エネルギー政策決定において、中国などの他国からの不当な働きかけを完全に排除することは困難であり、これまでそうした観点が欠けていた。
  • 政府は委員選考基準の徹底的見直しと、国家安全保障を最優先するガバナンス体制の確立が急務である。一切の例外を許さず、徹底した対策が不可欠。
  • 河野大臣による調査には利益相反の問題があり、第三者委員会による独立した徹底調査と国会追及、さらには司法の場での真相究明は避けられない課題となるだろう

大林ミカ氏(右)と福島瑞穂氏(左)

大林氏の中国企業ロゴ問題は、極めて深刻な国家安全保障上の懸念があり、政府の対応には重大な責任があります。

大林氏が環境エネルギー政策に関する重要な内閣府タスクフォースのメンバーだったことは由々しき問題です。大林氏は中国企業の意向に沿った動きをしていたとの疑惑があり、政府の政策決定プロセスに対する中国の影響力行使が危惧されます。このようなメンバーを選任したことは、国家安全保障を守る上で看過できない重大な失態です。

メンバー選定には徹底したセキュリティチェックが必要不可欠でした。単に再生可能エネルギーの専門家という観点のみならず、国家安全保障リスクの観点からの綿密な審査が欠けていたことは明白です。政府の諮問委員等に外国の利益を優先するような人物があってはなりません。選任責任者には厳しい責任追及が必要不可欠です。

加えて、エネルギー政策そのものへの中国を初めとする他国からの不当な働きかけのリスクにも目を向ける必要があります。再生可能エネルギー政策については、中国など他国の政治的・経済的な思惑が絡んでくる可能性があり、その影響を完全に排除することは至難の業です。その意味で、これまでの政策決定プロセスには国家安全保障への配慮が大きく欠けていたと言わざるを得ません。

このような重大な事態が起きたことを受け、政府は委員選考基準の徹底的な見直しと、国家安全保障リスクに万全を期する新たなガバナンス体制の確立を急ぐ必要があります。国益を最優先し、外国の不当な影響力を排除するための仕組みを整備しなければなりません。

委員選考におけるセキュリティクリアランス導入なども検討課題でしょう。二度とこのような事態を引き起こさぬよう、政府全体で国家安全保障体制の再構築に全力を尽くす必要があります。国民の命と安全を守ることが最優先されるべきであり、そのためには一切の例外を許容してはならず、徹底した対策が不可欠なのです。

河野大臣

河野大臣は、自然エネルギー財団と中国特定企業のつながりを調査開始するとしていますが、河野大臣は、当事者であり、第三者委員会などが調査ないと、証拠隠滅、都合の良い調査結果への改ざんなどのおそれがあります。

利益相反が発生する可能性が高く、証拠の隠蔽や事実の歪曲が行われかねません。政権を守る立場から、有利な結果に誘導されるリスクも排除できません。

このように重大な国家安全保障上の懸念がある問題については、政府からは完全に独立した第三者委員会による徹底した調査が必須条件です。専門家、有識者、野党等から構成される委員会が、何の制約もなく自由に調査できる環境を整える必要があります。

さらに、この問題は国会においても厳しく追及され、政府の対応が十分か徹底した検証がなされるべきです。国会審議を通じて、独立した第三者調査の実施や、再発防止に向けた抜本的な対策を政府に求めていくことが重要となります。

国家安全保障が最優先されるべき問題だけに、政府内部の調査だけでは到底不十分であり、外部の厳しい目線による徹底した真相究明が不可欠なのです。この問題をきちんと国民に説明する accountability(説明責任)を果たすため、政府による開示と透明性が強く求められます。

最近の再エネ関係の一連の事件をふりかえると、一つの流れがみえてきます。

衆議院15区補欠選挙に出馬を表明した経済産業省の元事務次官で収賄事件で逮捕・起訴された秋元司氏

2022年3月、秋元司氏(元経産次官)は中国の半導体メーカーから現金を受け取った疑いで、東京地検特捜部に賄賂受領の容疑で逮捕されました。

当時の経済産業次官という要職にありながら、中国企業から金銭的利益を受けていたとすれば、日本のエネルギー政策をはじめとする産業政策決定に影響を与えた可能性が指摘されています。

この秋元司氏の逮捕事件は、自民党のエネルギー政策決定プロセスへの中国の不当な影響力浸透の疑惑を象徴する、きわめて重大な事件と位置付けられています。

秋元氏の逮捕を端緒に、自民党内の「親中派」問題がクローズアップされ、エネルギー政策をはじめとする様々な政策決定過程への中国の介入の疑惑が次々と浮上してきた背景があります。

まず、秋元氏の逮捕事件は、自民党のエネルギー政策決定プロセスへの中国の影響力浸透の疑惑を象徴する、重要な出来事だったということを意味しています。

つまり、秋元氏が中国企業から賄賂を受け取っていたとすれば、エネルギー政策の立案過程そのものに中国の思惑や利益が不当に反映されていた可能性が高くなります。秋元氏はエネルギー政策の中枢にいた人物だったため、この事件は自民党内の「親中派」問題の深刻さを物語る、象徴的な出来事と言えるのです。

自民党のエネルギー政策決定システムが中国の影響下にあったのではないかという重大な疑惑を、秋元氏の逮捕が可視化したと捉えることができます。そのため、この事件は自民党内の「親中派」問題の広がりと深刻さを示す、きわめて重要な「象徴」的な事件だと言えるでしょう。

今後、この問題の全容解明に向けて、秋元氏の逮捕事件の背景と真相が徹底的に追及されていくことになります。

続いて三浦前外務審議官(三浦瑠麗氏の夫三浦清志氏)の逮捕では、在職中に中国企業のコンサルタントを務めていた疑惑が浮上し、外務省の重要ポストにいた人物が中国の影響下にあった恐れが出てきました。機密情報漏洩の可能性も指摘されています。

三浦瑠麗、清志夫妻

さらに、大樹生命倫理研究所の家宅捜索は、この団体が中国政府の意向を受けて新疆ウイグル地区の人権侵害実態を隠蔽・歪曲していたとの疑惑があり、中国の人権問題を矮小化する動きにつながっていたものと見られています。

そして今回の自然エネルギー財団の問題では、財団と中国の国営石炭火力発電企業の深いつながりが明るみに出ました。再生可能エネルギー推進を掲げる財団と火力発電企業の関係は不自然であり、中国の石炭利権に加え、エネルギー政策決定への影響力行使の懸念が指摘されています。 

加えて、自民党の最高顧問だった二階氏が中国企業に過度に接近していたことも批判されており、最高レベルでさえ中国寄りの姿勢があったことがうかがえます。


二階氏

このように、自民党内にはさまざまな形で中国の影響力が浸透しており、政策決定の要所にいた人物と中国側との癒着が次々と露呈してきました。政権そのものが中国寄りだった可能性さえ指摘される事態となっているのです。

このため、徹底した調査と真相解明が必須となっています。国会を含めた様々な場で、この問題が厳しく追及されていくでしょう。自民党や政権の正統性にかかわる重大問題だけに、決して曖昧な対応は許されません。第三者委員会の設置など、しっかりとした対策が求められています。

この一連の事件については、第三者委員会による調査のみならず、司法当局による捜査・裁判に委ねられる部分が出てくる可能性が高いと思われます。

すでに、秋元元経産次官と三浦元外務審議官の両氏は、それぞれ賄賂受領とスパイ行為の疑いで逮捕・起訴されています。今後、事件の深掘りが進めば、さらに関係者の刑事責任が問われるケースが出てくるかもしれません。

また、大樹生命倫理研究所への家宅捜索でも、新疆ウイグル地区の人権侵害実態隠蔽の疑いが持たれており、この問題には法的な責任追及の対象となる違法行為があった可能性があります。

さらに、自然エネルギー財団と中国企業の不透明な関係については、エネルギー政策決定への不当な影響力行使があったのかどうか、司法の場で徹底的に検証される必要がある重要な論点です。

つまり、この問題には国家安全保障や機密漏洩、人権侵害隠蔽などの極めて重大な犯罪が絡んでいる可能性があり、そうした場合には司法当局による厳正な捜査と裁判が求められます。

第三者委員会による事実解明と並行して、関係者の法的責任については、徹底した司法プロセスを経る必要があるでしょう。政権や権力の中枢部にかかわる重大事犯である以上、国民への説明責任を果たすためにも、司法の場での真相究明は避けられない課題と言えるでしょう。

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2024年3月27日水曜日

次期戦闘機の第三国輸出解禁が必要な理由 議論が深まるAUKUSのあり方、日本も取り残されるな―【私の論評】日本の選択―武器輸出解禁で防衛力強化、TPPをWTOルールとし国際ルールをリードせよ

次期戦闘機の第三国輸出解禁が必要な理由 議論が深まるAUKUSのあり方、日本も取り残されるな

岡崎研究所

まとめ
  • AUKUSはアメリカ、イギリス、オーストラリアの安全保障枠組みであり、オーストラリアが原子力潜水艦を取得する計画を含む。
  • AUKUSの実現可能性には疑問があり、特にオーストラリアの米国への依存度や将来の政治的姿勢に関する不安がある。
  • AUKUSの影響が地域の安定に及ぼす可能性がある。特に、アジア太平洋地域における軍事的緊張の増大や中国との関係悪化が懸念されている。
  • 日本との関係において、AUKUSがどのような影響を与えるかが焦点となっており、次期戦闘機の第三国輸出解禁の必要性が強調されている。
  • AUKUSに対する議論は様々な側面から展開されており、地域の安全保障における重要性や実現可能性に関する懸念が存在している。

 2024年2月26日の英フィナンシャル・タイムズ紙の記事は、AUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリア間の安全保障枠組み)に対する議論と、それが日本に及ぼす影響に焦点を当てている。

 AUKUSは、オーストラリアがアメリカやイギリスから原子力潜水艦を取得することを含む、地域安全保障の新たなアプローチを提案している。この枠組みは、太平洋地域における中国の台頭に対抗する戦略の一部として位置づけられている。しかし、その実現にはいくつかの懸念がある。

 まず、AUKUSの実現可能性に関する懸念がある。特に、オーストラリアが太平洋地域における米国の主導権を支えるという決断が持続的かどうかについて疑問が投げかけられている。また、AUKUSの政治的な面でも不安があり、将来の米国政権がこの枠組みにどのような姿勢を取るかに関する懸念がある。

 さらに、AUKUSが地域の安定に与える影響にも焦点が当てられている。特に、アジア太平洋地域における軍事的緊張の増大や、中国との関係悪化の可能性に対する懸念がある。このような懸念から、AUKUSが地域の安全保障状況をどのように変化させるかが注目されている。

 さらに、日本との関係においても、AUKUSがどのような影響を与えるかが焦点となっている。特に、日本が次期戦闘機の第三国輸出解禁を求める理由や、その重要性が強調されている。日本がAUKUSに取り残されることを避けるためには、これらの問題に対する適切な対応が求められる。

 総じて、AUKUSに対する議論はさまざまな側面から展開されている。地域の安全保障における重要な枠組みとして期待される一方で、その実現可能性や地域の安定への影響に対する懸念も根強く存在している。日本との関係においても、これらの問題に対する適切な対応が求められていることが明確に示されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本の選択―武器輸出解禁で防衛力強化、TPPをWTOルールとし国際ルールをリードせよ

まとめ
  • 一国家だけでは安全保障を完全に確保することが困難な時代となり、同盟国との協力関係が不可欠
  • 価値観を共有する民主主義国家同士が防衛面で手を携えることが、費用対効果と相互信頼の面で合理的
  • 日本が次期戦闘機の輸出を解禁しないと、最新軍事技術から取り残されるリスクがある
  • 輸出解禁で同盟国との武器移転が可能になれば、共同開発によるコスト削減や運用の効率化が期待できる
  • TPPで確立した新ルールをWTOに反映させることで、日本が経済面でも国際ルール作りを主導できる
今日の国際情勢を見れば、一国家だけで安全保障を完全に確保することは極めて困難です。ますます高度化する軍事技術、さらには経済的・財政的制約から、各国は防衛面での同盟関係の重要性を増してきています。

とりわけ価値観を共有する民主主義国家同士が手を携えることが、費用対効果や相互の信頼関係の観点から合理的であると考えられています。このような流れは今後さらに加速していくことが予想されます。

そうした中で、日本が次期主力戦闘機の輸出を解禁しないことには大きなリスクがあります。AUKUSなどの先進国間の防衛協力の枠組みから取り残され、最新の軍事技術情報から遠ざかってしまう恐れがあるのです。

日英伊の共同開発の戦闘機 AI生成画像

高性能な戦闘機の開発には莫大な費用がかかり、一国だけの力では限界があります。同盟国との技術共有なくしては、日本の防衛産業の国際競争力は低下し、いずれは遅れをとってしまうでしょう。

一方で、輸出解禁により同盟国との武器移転が可能になれば、防衛装備品の共同開発が進み、大量生産によるコスト削減や相互運用性の向上など、大きなメリットが生まれます。開発当初から設計の共有や人材交流など、防衛分野での緊密な協力関係が構築できるようになるのです。単なる物資の移転にとどまらず、同盟国間の絆を一層強固なものとすることにつながります。

さらに重要な点は、輸出解禁を機に、日本が国際社会での武器移転ルール作りに積極的に関与できるようになることです。現在、先進国主導で新たな枠組み作りが進められていますが、武器を輸出しない国では発言力に限界があります。

輸出を解禁すれば、日本の価値観や考え方を国際ルールに反映させやすくなり、地域の平和と安定に貢献できるはずです。   

もちろん、武器輸出には慎重な対応が求められます。輸出先の選別や使用用途の制限など、厳格な輸出管理体制を整備する必要があります。しかし、そうした課題をクリアできれば、輸出解禁は日本の防衛産業の活性化や同盟国との信頼関係強化に大きく寄与するでしょう。

AUKUSを中心とした同盟国間の協力関係をより緊密なものとし、新時代の安全保障体制の構築に日本が中心的な役割を果たせるよう、次期戦闘機輸出解禁の重要性は計り知れないものがあると言えます。

日本は米国が離脱したTPPを主導し、自由で公正な経済ルールづくりに尽力してきました。

TPPは関税撤廃などの伝統的な貿易自由化に加え、労働、環境、電子商取引など、21世紀型の新しいルール作りを目指す経済連携協定です。投資家対国家紛争解決制度(ISDS)の見直しなど、従来の枠組みを超えた先進的な内容が盛り込まれています。

拡大TPP参加国

そうした経験と実績を生かし、日本がTPPで構築したルールをWTO(World Trade Organization)の多角的な枠組みに反映させていくことは、極めて有望な選択肢だと言えます。

WTOルールはかつての時代の産物であり、デジタル化の進展やサービス貿易の拡大など、現代の経済実態に必ずしも適合していない面があります。TPPのような21世紀型ルールを導入することで、WTO自体を時代に適ったものへと進化させられるからです。

もちろん、加盟国の利害対立から、WTOでのルール改革は容易ではありません。しかし、日本が主導してTPPで確立した新しいルールを足がかりに、徐々にWTOのルール見直しを働きかけていくことは有力な戦略オプションとなり得ます。

そうすれば、日本は単に同盟国との防衛協力関係を深めるだけでなく、経済面でも国際ルール作りの主導権を握れるようになります。安全保障と経済、両面でグローバルな影響力を高められるはずです。

自由貿易を旗印に、公正なグローバルスタンダードを主導することは、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現にも大きく寄与するでしょう。武器移転だけでなく、経済連携でも日本が主導的役割を果たすことが、平和で安定した国際秩序の確立につながると考えられます。

日本の三文芝居のような政局 AI生成画像

現在日本は、選択を迫られているといえます。と同時に、これは日本にとって次の飛躍への大きなチャンスでもあります。残念ながら、今の日本は、政治が停滞しており、この選択のチャンスを活かせるのかどうか心許ない状況にあります。

心ある政治家や、官僚は現状の政治の三文芝居のような停滞状況は別にして、将来の日本を形作るための準備を怠りなくすすめていただきたいです。

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2024年3月26日火曜日

【コラム】異例の規模の日銀リーク、真剣な調査を-リーディー&モス―【私の論評】日本の情報漏えい:日銀スキャンダルから浮かび上がる情報セキュリティーの深刻な課題

【コラム】異例の規模の日銀リーク、真剣な調査を-リーディー&モス

まとめ
  • 政策決定の正式発表前の国内メディア報道がルーティン化
  • 情報セキュリティーの甘さを露呈、国会の調査必要

日銀

 日本銀行の金融政策決定会合の内容が、会合開催前から国内メディアに詳細を報じられるなど、情報漏えいの問題が深刻な事態となっている。3月の会合では、具体的な政策変更内容が事前にかなり詳しく報道されたほか、会合の模様までもが伝えられるスキャンダラスな事態となった。このように日銀の機密情報が外部に漏れ出すケースが後を絶たない。

 日銀側は、情報管理については厳格なルールを設けていると説明するが、実際には何らかの経路で機密情報が漏えいしている実態がある。機密漏えいによって、市場でかく乱が起きたり、数十億ドル規模の資金の動きに影響が及ぶ可能性もあり、中央銀行として極めて望ましくない事態である。日銀の情報管理体制の脆弱さを露呈する形となり、その信頼性を揺るがしかねない。

 他の主要中央銀行でも情報漏えいの事例はあり、米連邦準備制度理事会(FRB)でも、過去にFOMC議事要旨を一部に先行公開したり、メンバー自身が不適切な株取引をしたりする問題が発覚している。しかし、日銀の事例はそれを上回る極端なケースであり、他に例を見ない深刻な水準にある。

 このため、日銀は情報セキュリティーの重要性を真剣に認識し、今回の一連の漏えい事案の原因を徹底的に調査することが必要不可欠である。そして再発防止に向け、実効性のある対策を遅滞なく講じなければならない。日銀の信頼性が大きく揺らがれかねないという、極めて重大な問題となっているからである。

 国会でも情報漏えいへの対応が改めて問われており、岸田首相が日銀に回答を求めるべき時となっている。日銀が機密情報の取り扱いにおいて、国際的な水準を満たしていないのであれば、そのことが「ファイブアイズ」からの除外理由になっているとの指摘もある。国家の金融の最高権威機関としての体制を早急に立て直す必要がある。

【私の論評】日本の情報漏えい:日銀スキャンダルから浮かび上がる情報セキュリティーの深刻な課題

まとめ
  • 日本の情報セキュリティーに対する認識の甘さは、日銀スキャンダルを通じて明らかになった。
  • 機密漏えいは先進国でも重大な問題であり、過去に米国のFRBでも類似の事例があった。
  • 日銀の情報漏えいは、金融政策に影響を与える重大な問題である。
  • 日本政府の機密情報の取り扱いにも問題があり、再生可能エネルギー政策などで露呈されている。
  • 日本の情報漏えいは国際社会で信頼を損ない、情報セキュリティーの向上が喫緊の課題である。

日銀植田総裁

日本の情報セキュリティーに対する認識の甘さは、今回の日銀スキャンダルを見ても無残な有様です。機密漏えいへの危機感が大きく欠如していると言わざるを得ません。

先進国では、機密情報の不正な漏えいは到底許されるものではありません。米国でも過去に、連邦準備制度理事会(FRB)の重要文書が一部に先行して漏えいした事例がありました。これは死活問題とみなされ、大騒ぎになりました。ベター・マーケッツのデニス・ケレハーCEOは「FRBの情報管理体制はあまりにも脆弱だ。このようなことが起こり得たことが不可解だ」と痛烈に批判しています。

さらに、パンデミック時に一部のFRB当局者が内部情報を利用して不適切な株取引を行った問題が発覚すると、ローゼングレン・ボストン連銀総裁やカプラン・ダラス連銀総裁は辞任に追い込まれました。クラリダFRB副議長も任期切れ直前に辞任を余儀なくされています。機密漏えいは、重大な責任問題になり得るのです。

一方、今回の日銀の事態は、先進国の常識から見れば背筋が凍るようなスキャンダルです。緊急の金融政策決定の詳細内容が、会合の開始前から国内メディアにリークされていたのですから。これでは日銀の情報管理体制が板挟みの隙間から機密が次々と漏れ出す、無防備な状態であることが分かります。

重大な機密漏えいにもかかわらず、日銀は「報道各社がそれぞれの見方を示したもの」などと、全く無防備な対応しかできていません。まさに機密の取り扱いがずさんな有様です。国の重要機密がこれでは氷山の一角にすぎず、実際にはもっと深刻な事態なのかもしれません。

日銀の機密が無残にも漏えいしていることは、金融政策が国民生活に直結する中央銀行として、重大かつ深刻な問題です。これでは、我々国民の金利負担や年金運用への打撃を防ぐこともできません。日本人一人一人が、機密漏えいの重大性をもっと自覚し、危機感を持つ必要があるでしょう。

内閣府のタスクフォースでの資料の透かしにあった中国国営企業のロゴマーク

さらに、日本政府の機密情報の取り扱いにも、大きな問題があると指摘せざるを得ません。

再生可能エネルギー政策に関する内閣府のタスクフォースで、民間構成員から提出された資料に中国国営企業のロゴマークが入っていたという事態は重大です。さらに、経済産業省と金融庁の会議体でも同様に中国企業のロゴ入り資料が使用されていたことが分かり、政府の情報管理がずさんな実態が露呈しました。

これらは要するに、外国企業の関与が疑わしい資料が、政府の重要な政策検討の場で平然と利用されていた、ということです。政府としての機密保持意識が教科書通りにまったく欠如していたと言えます。

国家の重要政策の検討過程において、中国などの外国勢力に情報を筒抜けにされてはなりません。それは主権国家としての誇りに関わる重大問題であり、機密漏えいへの危機意識の欠如が改めて暴かれた形です。

このように、日銀の情報漏えい問題に加え、再生可能エネルギー政策をめぐるタスクフォースなどでの機密情報の取り扱いの杜撰さが明らかになったことで、日本政府全体の情報管理態勢が極めて脆弱であることが露呈しました。

国家の機密を守り、情報セキュリティーを確保することは、主権国家として最低限の責務です。政府は機密情報の取り扱いルールを徹底し、情報管理の重要性に対する意識改革を緊急に行う必要があります。国民一人一人も、政府の怠慢により国益が損なわれかねないことを強く自覚し、厳しく追及していく姿勢が求められます。

確かに、今回の一連の情報漏えい、機密情報管理の怠慢は、日本国内ではあまり深刻に受け止められていないかもしれません。しかし、海外から見れば、これらは日本の情報セキュリティーに対する甘い姿勢を示す重大な問題であり、厳しく糾弾されるべきです。

日本銀行の金融政策決定内容が事前に漏えいしたスキャンダル、さらには政府の重要会議で外国企業のロゴ入り資料が使用されていたことは、機密保持意識の欠如を示す有り余る証拠です。これでは、日本が高度な機密情報を適切に取り扱う能力があるとは到底言えません。

こうした杜撰な情報管理態勢こそが、日本が国際的な情報共有の枠組み「ファイブアイズ」から除外されている大きな理由なのです。高度な機密情報を漏らしてはならない同盟国から、日本は信用されていないのが実情なのです。

five eyes

国家の機密を守り、情報セキュリティーを確保することは、主権国家として最低限の責務です。それができない日本は、世界から「機密漏えいの心配がある」と遠慮され、重要な情報から疎外されているのが現状なのです。

このように、海外から見れば、日本の情報管理の甘さは看過できない重大問題であり、強く糾弾されるべきことは明らかです。日本が国際社会から一流の主権国家として信頼されるためには、情報セキュリティー対策を抜本的に見直し、機密保持意識を徹底して高める必要があります。そうでなければ、先進国から完全に疎外され、取り返しのつかない事態になりかねません。

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2024年3月25日月曜日

マイナス金利解除は「完全にタイミングを間違えた」…!政府がこの体たらくで、日銀はやりたい放題になっている―【私の論評】日銀のマイナス金利解除は時期尚早 - 物価と経済データから検証

マイナス金利解除は「完全にタイミングを間違えた」…!政府がこの体たらくで、日銀はやりたい放題になっている

まとめ
  • 日銀のマイナス金利解除の理由付け(2%のインフレ目標が持続的に実現)は不十分である。インフレ率が一時的に2%を超えただけでは金融引き締めの理由にならない。
  • 金融政策は物価のみならず雇用など経済全体を勘案すべきだが、日銀はその原則に反している。欧米では5%程度までインフレ率が高くても引き締めを行わなかった。
  • 日銀の決定のタイミングと情報リークには問題があり、一部金融業界への利益誘導の可能性がある。日銀と金融機関の癒着が疑われる。
  • 政府が日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、増税などの締め付け政策が予想される。
  • 米国FRBは経済状況を総合的に判断し政策変更を見送った。日銀はFRBの慎重な姿勢を見習うべきだった。
日銀

 日銀は3月19日、マイナス金利政策を解除する決定を行った。その理由として「2%のインフレ目標が持続的に実現できる状況に至った」と説明している。しかし、この理由付けには根本的な問題がある。

 金融政策は単にインフレ率だけでなく、雇用など経済全体の動向を勘案して判断すべきである。一時的にインフレ率が2%を超えただけで急いで金融引き締めに走るのは、「ビハインド・ザ・カーブ」という金融政策の基本的な考え方に反する。実際、欧米でもインフレ率が5%程度までは金融引き締めを行わなかった。

 日銀の今回の決定のタイミングや、一部への情報リークの疑惑には大きな問題がある。日銀は政府の影響下にあり、情報リークは金融業界への利益誘導につながりかねない。これは日銀と金融機関の癒着ぐあいの表れとも受け取れる。

 一方、米国FRBは経済の現状を総合的に判断し、政策変更は見送った。インフレ率が2%を上回っていても、その時点での引き締めは控えている。日銀はこうしたFRBの慎重な姿勢を見習う必要があるだろう。

 実のところ、今回の日銀の決定には、政府による財政健全化への動きとリンクしている側面もある。政府は日銀の動きを金融正常化の口実に利用しようとしており、今後は増税などの締め付け政策が打ち出される可能性が高い。

 つまり、日銀の今回の判断は、経済状況を十分に踏まえたものではなく、政府の思惑が背景にあるのではないかと危惧される。性急な金融引き締めは、かえって日本経済に冷や水を浴びせかねない。日銀は独立性を発揮し、慎重に対応すべきであった。

【私の論評】日銀のマイナス金利解除は時期尚早 - 物価と経済データから検証
まとめ
  • 日本のコアコアCPI(食料品・エネルギーを除く物価上昇率)は他国と比べて顕著に低い水準にある。
  • 日本のCPI(総合物価上昇率)も他国と比べるとさほど高くない。
  • 米国では2022年から積極的な利上げを行っているが、日本はまだ緩和的な金融政策を継続中。
  • 日本が米国に追随してマイナス金利解除を急ぐと、為替・物価・企業活動・金融市場に悪影響がある可能性。
  • 日銀は政府と連携し、現状に即した慎重な金融政策運営が求められる。
このブログでは、過去のコアコアCPIの推移の国際比較や米国と日本の対比等から現状では利上げ(マイナス金利解除)などすべきではないことを指摘してきました。

その時に論拠としたのは、コアコアCPIの表だけでしたが、CPIの表も同時に示さないと、日銀やマスコミの得体のしれないおかしげな説明ともあいまって、多くの人が理解しにくいのではないかと思いましたので、本日CPIも表であげようと思います。

以下はCPI(総合物価指数)の上昇率の国際比較です

2020年~2023年12月時点の総合CPI上昇率の国際比較

国名2020年2021年2022年2023年2024年予想
アメリカ1.20%7.00%8.60%7.10%4.00%
日本-0.60%0.00%2.50%2.30%1.50%
ドイツ0.50%3.10%7.90%8.70%6.00%
イギリス0.90%2.50%9.00%10.70%7.50%
フランス0.50%1.60%5.20%6.20%4.50%
イタリア0.00%1.90%8.00%12.80%8.50%
カナダ0.70%3.40%6.80%6.30%4.30%

CPIで比較しても、日本の物価上昇率は他国と比較すれば、さほどでないことがわかります。CPI情緒率だけを根拠に、マイナス金利政策の解除をマスコミ等は支持しているようですが、以下の表をご覧いただければ、その根拠は脆弱であることがわかります。

 以下に以前このブログに掲載したコアコアCPI(食料品、エネルギー除く) 上昇率の国際比較を掲載します。日本は他国と比較すると明らかに低成長です。

2020年〜直近までの先進国のコアコアCPI

国名2020年2021年2022年2023年2024年予想
アメリカ1.40%2.30%4.70%3.90%3.40%
日本0.00%0.10%0.60%0.70%0.80%
ドイツ0.70%1.90%3.30%2.60%2.30%
イギリス1.20%2.10%5.90%4.10%3.60%
フランス0.50%1.60%2.80%2.20%1.80%
イタリア0.00%1.20%3.80%3.10%2.80%
カナダ1.70%2.20%4.30%3.70%3.20%

参考資料:

以下に日米CPI(総合物価指数)比較と米国の金利政策を併記した表を掲載します。
日米の四半期毎の失業率とCPIの推移 (前年比)
四半期米国 失業率日本 失業率米国 CPI日本 CPI米国 金利政策
201913.70%2.30%2.10%0.40%-
23.60%2.20%2.00%0.30%-
33.50%2.10%1.90%0.20%7月:0.25%↓
43.50%2.10%2.00%0.30%9月:0.25%↓
202013.50%2.20%2.20%0.40%11月:0.25%↓
214.70%2.60%1.20%0.10%-
37.90%3.00%1.70%0.10%-
46.70%2.90%1.20%0.00%-
202116.30%2.80%1.40%-0.10%-
26.00%2.70%2.60%0.00%-
35.40%2.80%3.00%0.10%-
44.20%2.90%4.00%0.20%-
202213.80%2.70%7.50%2.40%3月:0.25%↑
23.60%2.60%8.50%2.50%5月:0.50%↑
33.50%2.50%9.10%2.60%7月:0.75%↑
43.70%2.50%8.00%2.70%9月:0.75%↑
202313.90%2.40%7.30%2.60%11月:0.50%↑
23.80%2.30%7.00%2.50%12月:0.50%↑
33.60%2.20%6.70%2.40%-
43.50%2.10%6.50%2.30%-
202413.40%2.00%6.30%2.20%-

米国経済は、2020年3月の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによる景気悪化から回復し、現在はインフレ懸念が強まっています。

FRBは、景気拡大を維持するために金融緩和政策を実施していました。2019年7月から2020年3月にかけて、政策金利であるフェデラルファンドレートを7段階で計1.5%引き下げ、0.00%~0.25%に設定しました。

しかし、2021年後半から、消費者物価指数(CPI)の上昇率が加速し、インフレ懸念が強まりました。2021年12月には前年比7.0%上昇し、40年ぶりの高水準となりました。

これを受け、FRBは2022年3月から利上げを開始しました。2023年12月までに7回、計4.25%の利上げを行い、政策金利は4.25%~4.50%となっています。

FRBがインフレ抑制を過度に重視し、景気後退を招く可能性を指摘しています。失業率が依然として低水準(2023年12月は3.5%)であることを根拠に、景気過熱の懸念は限定的でしょう。

以下に以前このブログに掲載した日米コアコアCPI(総合物価指数)比較と米国の金利政策を併記した表を再掲載します。 

日米の四半期毎の失業率とコアコアCPIの推移 (前年比)

四半期米国 失業率日本 失業率米国 コアコアCPI日本 コアコアCPI米国 金利政策
201913.70%2.30%2.30%0.50%-
23.60%2.20%2.10%0.40%-
33.50%2.10%2.00%0.30%7月:0.25%↓
43.50%2.10%2.10%0.40%9月:0.25%↓
202013.50%2.20%2.00%0.50%11月:0.25%↓
214.70%2.60%1.20%0.20%-
37.90%3.00%1.70%0.20%-
46.70%2.90%1.30%0.10%-
202116.30%2.80%1.50%0.00%-
26.00%2.70%2.10%0.10%-
35.40%2.80%3.10%0.20%-
44.20%2.90%4.10%0.30%-
202213.80%2.70%6.00%0.40%3月:0.25%↑
23.60%2.60%7.00%0.50%5月:0.50%↑
33.50%2.50%8.20%0.60%7月:0.75%↑
43.70%2.50%7.10%0.70%9月:0.75%↑
202313.90%2.40%6.50%0.80%11月:0.50%↑
23.80%2.30%6.20%0.70%12月:0.50%↑
33.60%2.20%5.90%0.60%-
43.50%2.10%5.70%0.50%-
202413.40%2.00%5.60%0.40%-

情報源

失業率

  • 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 雇用統計 
  • 日本: 総務省統計局 - 労働力調査 ([無効な URL を削除しました])

コアコアCPIとCPI

  • 米国: 米国労働統計局 (BLS) - 消費者物価指数 
  • 日本: 総務省統計局 - 家計調査 

コアコアCPIに関する分析は、以下の記事で行っていますのです。こちらをご覧になってください。
マイナス金利解除に2人反対=審議委員の中村、野口氏―日銀―【私の論評】金融政策の効果発現に時間はかかる - 日本経済の過ちと教訓
日銀植田総裁

現在、米国経済は堅調な成長を続けており、高インフレに直面していますが、日本経済はまだ緩やかな回復段階にあり、低インフレ環境が続いています。このような状況下で、日本銀行がマイナス金利政策の解除を急ぐべきではない理由が複数あります。

第一に、米国の積極的な利上げによる金利差の拡大が円安を招き、輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を高め、家計や企業の負担を一層増す恐れがあります。特に、エネルギー価格の高止まりは消費を大きく抑制し、景気回復の足かせになりかねません。

第二に、マイナス金利解除は企業の資金調達コストを押し上げ、設備投資の手控えにつながる可能性があります。日本企業の設備投資は既に低迷しており、これ以上の投資減退は将来の経済成長を阻害するリスクがあります。

第三に、長期金利の急上昇は債券市場や株式市場に混乱をもたらし、金融市場を不安定化させる恐れがあります。金融市場の混乱は、その影響が実体経済に波及するため避けるべきです。

第四に、日銀は政府と連携し、財政出動による景気刺激策とあわせて金融緩和を維持することが求められます。金融政策と財政政策の適切な組み合わせが、よりスムーズな経済運営につながります。

このように、為替、物価、企業活動、金融市場、政策運営の面から検討すると、現時点でマイナス金利解除に踏み切るのは時期尚早と言えます。日本銀行には経済の現状をより丁寧に分析し、米国との政策の違いを踏まえた上で、慎重に金融政策の調整を図るべきでした。

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