2014年11月23日日曜日

こども版国の借金は永遠に続けられるの?―【私の論評】政府の借金は永遠にできるわけもない!インフレターゲット政策の是非を問い、政治主導のための第一歩を実現するのが、今回の選挙の争点の本質であることを認識せよ(゚д゚)!

こども版国の借金は永遠に続けられるの?

池田 信夫

安倍首相は衆議院を解散して、12月14日に総選挙が行なわれることになりました。彼は8%の消費税を10%にふやすことを先送りし、それについて「国民に信を問う」というのですが、先送りに反対している党は一つもありません。増税は争点になっていないのに、何を問うんでしょうか。

まぁそれはいいとしましょう。こうして増税を先送りしていると、1000兆円を超えた国の借金はどんどん増えますが、安倍さんは「景気が回復したら税収もふえるので心配ない」といっています。これは本当でしょうか?

どんな会社でも、金を貸してくれる人がいるかぎり借金は続けられます。国の場合は倒産して金が返せなくなるということは考えられないので、国債を返すとき、あらたに国債を発行して返せばいいのです。これは浜田宏一さん(内閣官房参与)のいうようにネズミ講の一種です。

ネズミ講は、バーナード・マドフのように「元本保証でいい配当を出します」といってお金を集め、高い配当を出す代わりに元本を食いつぶすものです。景気のいいときはどんどん新しい人がお金を出すので、みんなに高い配当を出すことができます。

でもリーマンショックみたいな事件で抜ける人が増えると、資金ぐりがゆきづまります。清算すると、お金はほとんどなくなっています。お金を運用しないで利益として分配してしまったので、残った人の出資金は返ってきません。

このようなネズミ講は詐欺ですが、国がやると犯罪にはなりません。税金を負担する納税者がいなくなるとネズミ講は終わりますが、みなさんのような新しい納税者から税金を取れば、国の借金は回ります。問題は、それを負担する納税者が無限に出てくるかということです。

もちろん日本の人口は有限で、しかもこれから30年で働く人は30%以上へります。その結果、一人あたりの国民負担はふえます。このまま負担がふえつづけると、2050年には図のように国民負担率は7割になります。つまりよい子のみなさんが大人になったころは、給料の7割が税金や社会保険料にとられ、可処分所得(税引き後の所得)は今の半分になるのです。


国民負担の予想(左軸は兆円、右軸は%)


みなさんの世代は、今より絶対的に貧しくなります。みなさんのおじいさんの世代の借りたお金を、みなさんの世代が返すからです。わかりやすくいうと、おじいさんは孫のクレジットカードを使って買い物してるみたいなものです。おじいさんのもらうお金は払った税金などよりひとり5000万円ぐらい多く、みなさんは5000万円ぐらい少なくなります。

いま増税を先送りすると、将来のみなさんの税負担はもっとふえます。安倍さんは「景気がよくなったら借金を返す」といっていますが、ひとり1億円もある差を景気がよくなるだけで埋めることはできません。

でも所得の7割が国に食われるようになる前に、国債が売れなくなるでしょう。日本の貯蓄より国債のほうが多くなるからです。そうすると金利が上がり、国債が暴落します。その結果、ひどいインフレになると、実質債務(物価で割った借金)がへります。

どこの国も、そうやって借金を踏み倒してきたのです。インフレは困ったことですが、みなさんの負担は軽くなります。ネズミ講をつづけるよりはましかもしれません。

【私の論評】政府の借金は永遠にできるわけもない!インフレターゲット政策の是非を問い、政治主導のための第一歩を実現するのが、今回の選挙の争点の本質であることを認識せよ(゚д゚)!

まさしく、池田氏のおっしゃる通り、国というか(この言い方は間違い)、政府の借金は永遠には続けられません。それは、どう考えてもはっきりしすぎています。

もし、このまま増税をしてしまい、その増税により日本経済がさらに落ち込めば、税収が減ります。税収が減ってしまえば、政府がさらに大量に国債を発行して国民から借金をしなければならなくなります。だからといって、また増税すれば、ますます景気が落ち込み、さらに政府は借金を重ねるこになります。

そうして、上記で池田氏が語っているようなことが、現実になってしまいます。そのようなことは、どこかで断ち切る必要があります。

ここで、突然話題を変えます。少し、話が飛んだようにも思われるかもしれませんが、後で話はきちんとつながるので、我慢して読んで下さい。

ここで、「日銀は国債をいくら購入してもインフレにならない」と仮定します。これは物価・金利の動向を全く気にすることなく市中の国債や新発国債を全て日銀が買い取り、マネーサプライを増加させたとしてもインフレが生じないことを意味します。

この仮定が正しいとすれば政府は物価や金利の上昇を全く気にせずして無限に国債発行を続けることが可能となり、財政支出を全て国債発行で賄うことができるとともに、さらに巨額の財政赤字を解消することも可能になり、無税国家が成立することになります。

ただし、現実には無税国家は成立しないため「日銀は国債をいくら購入してもインフレにはならない」という命題は誤りです。つまり、「インフレターゲット政策を行えばインフレになる」のです。

インフレターゲット政策は、アメリカでも導入され、効果をあげた政策である

デフレや、過度のインフレは、正常な経済循環から逸脱した、経済の病です。これを放置しておくことはできません。

今の日本は、16年間もデフレです。これから脱却するためには、インフレターゲット政策を行う必要があります。これを実施して、そのまま放置しておれば、過度のインフレになります。しかし、そうなる前に、金融引締め、増税などの対策を行えば、過度のインフレ(ハイパー・インフレ)になることはありません。

最後に池田氏のこの記事の、最後の部分を補っておきます。

過度のインフレは困ったことですが、緩やかなインフレであれば、みなさんの負担はかなり軽くなります。ネズミ講をこれからも続けるよりははるかに良いことです。デフレにおいては、こうした負担が過度に重かったとも言い換えることもできます。

今回の選挙の争点は、池田氏が語るよにう、増税が争点ではありません。上記で述べたインフレターゲット政策をすべきか、すべきでないかを国民に信を問うというのが、本質です。増税するしないは、この本質論の以前の、目先のテクニカルな部分の争点に過ぎません。

だからこそ、安倍総理は、今回の解散を「アベノミクス解散」と命名しています。特に、与党の増税推進派の皆さんや、野党の皆さんは、この本質を見失わないようにしていただきたいものです。

インフレターゲット政策が功を奏して、日本がデフレから脱却できて、緩やかなインフレになれば、国民の消費も増え、国民所得も劇的に増えます。国民所得が劇的に増えるということは、税収の源が増えることであり、税収も増えます。



これで、政府は無限に国債を発行し続けて、国民が借金をし続ける必要もなくなります。ただし、政府の借金と、個人の借金は、性質が全く異なります。個人が借金すると、お金が消えてなくなるだけですが、政府の借金は、違います。

政府が10兆円の借金をしたとします。そのお金は、政府がいろいろな対策に使うわけです。そうすると、そのお金は、政府の機関や民間機企業にまわり、いろいろなことに遣われます。そうすると、れが、国民の賃金にもなります。そうしてそのお金は、また税収として政府に戻ってくるわけです。

企業も同じですが、全く借金をしない組織というのは、一見良いようにもみえますが、その実新しいことに挑戦もしていないということです。だから、健全な企業が何らかの借金をするのは、新たなことに挑戦していることの証であるということでもあります。

それと、同じく、政府も多少の借金をしているというのがあたり前であり、世界中のまともで健全な国の政府は借金があるのがあたり前です。その借金が多すぎかどうかが問題なのであり、全く借金がなく、真っ黒の政府というのは、何も新しいことに挑戦しない怠け者政府であるということもできます。

だから、日本政府も多少の借金があるくらいが良いです。全く借金のない国家というのは、怠慢政府か、政府と為政者の金か区別のつかないような、独裁国家であるというのが通り相場です。

いずれにしても、デフレをそのまま放置してね景気を良くせずに、単に増税と国債だけで国庫を賄おうとすれば、池田氏が語る最悪の状況が現実のものとなり、いずれハイパーインフレがおこり、国民が大きなつけを払わなければならなくなります。



しかし、今からインフレターゲット政策を行い、デフレを克服しておけば、そのようなことには絶対になりません。なぜそのようなことが言えるかといえば、日本はもともと豊な国であり、政府は借金をしていまいますが、日本国そのものは、対外金融純資産(要するに日本が外国に貸しつけているお金)は、過去20年以上にもわたって、世界一です。その額は、260兆円を超えます。

確かに貧乏国であれば、インフレターゲット政策をとっても、何をしていても限界があり、何をしても、池田氏の言っているような暗い未来しかないかもしれません。

しかし、日本はそんな国ではありません。もともと、相当豊な国です。そんな豊な国が、デフレで消費が落ち込みとんでもないことになっているだけです。それは、日本がもともと豊な国であることから、確実に立て直すことができます。

デフレは悪いことばかり、一人あたりのGDPも落ち込むばかり・・・・・

池田氏が、語っている未来を現実のものにしないためにも、日本では、直近では、インフレターゲット政策を確実に行い、デフレを脱却する必要があります。そうして、それに一番反対しているのが、財務省です。そうして、上の記事の池田氏も、インフレターゲット政策でインフレにはならないと主張しています。

財務省は、国民生活などは二の次で、何が何でも増税すべきという方針を貫いてきました。今回の選挙は、こうした財務省の方針に安倍総理が突きつけたということも意味しています。

増税するしないは目先のテクニカルな問題に過ぎず、その本質は、現状のインフレターゲット政策をどうするかが問題であり、さらに将来的には、このような方針は、財務省が決めるのではなく、国民に選ばれた国会や、政府が決めるべきという政治主導を実現するための第一歩でもあるのです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年11月22日土曜日

「米国の抑止力、とりわけ日本に対するそれを低下させる」中国軍の戦力増強に危機感-米委員会が年次報告書―【私の論評】国内の増税見送り、解散総選挙で見逃され勝ちな世界の動き、アメリカ議会の動きを見逃すな!アメリカは、日本の改憲を望んでいることを忘れるな(゚д゚)!

「米国の抑止力、とりわけ日本に対するそれを低下させる」中国軍の戦力増強に危機感-米委員会が年次報告書

海岸防衛から大洋海軍を目指す中国海軍
米連邦議会の超党派の諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」は20日、中国の軍事力増強に強く警鐘を鳴らす年次報告書を発表した。

報告書は、米国に「新型大国関係」の構築を呼びかける中国が、現実には東シナ海上空に防空識別圏を設定し、南シナ海で軍事用滑走路を建設するなど、着々と覇権を拡大している事実を直視。「習近平国家主席には、高いレベルの緊張を引き起こす意思があることは明らかだ」と非難した。

さらに、中国の行動パターンは「対中関係を和らげるために東アジアの同盟国を見捨てるのか、あるいは中国の侵略から同盟国を守って中国との潜在的な対立に直面するのか」を米国に迫ることが特徴だとし、強い警戒感を示している。

具体的な軍事力の脅威としては、中国の向こう3~5年の核戦力は、多弾頭型の大陸間弾道弾(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が開発、配備されるなど、大幅に増強されるとの見通しを表明。

今後5~10年間で、軍事衛星の保有数が増加し、他国の軍事衛星を破壊する能力も向上して、「米国を脅かしうる」と指摘した。また、2020年までに、アジア太平洋地域に展開する潜水艦とミサイル搭載艦の数は、351隻にのぼるとの予測を示した。

報告書は、こうした中国の脅威に対処するため、米国の地域におけるリバランス(再均衡)戦略を維持し、その進(しん)捗(ちょく)状況を検証することや、日本の集団的自衛権行使を後押しすることなどを提言している。

この記事は、要約記事です。詳細は、こちらから(゚д゚)!

【私の論評】国内の増税見送り、解散総選挙で見逃され勝ちな世界の動き、アメリカ議会の動きを見逃すな!アメリカは、日本の改憲を望んでいることを忘れるな(゚д゚)!

国内では、増税見送り、解散総選挙ということで、マスコミも国民もこのことにばかり目がいきがちではありますが、やはりバランス良く国内外のことを見ていく必要があります。

その中で、この報道はかなり重要であると考えましたので、掲載させていただくこととしました。

まずは、上の記事を読む上で、アメリカの軍事力について忘れてはならないことを掲載しておきます。それは、アメリカの国防予算です。以下にアメリカの国防予算の推移について掲載します。


この、グラフを見てもわかるように、アメリカの国防予算は、減少傾向です。

米国防総省(ペンタゴン)のヘーゲル国防長官は本年2月24日、陸軍の兵力を現在の約52万人から44万─45万人規模に削減、実現すれば、米陸軍の規模は第2次世界大戦に参戦する前の規模に縮小すると発表しました。今後10年間で約1兆ドル(約102兆円)の歳出を削減する案を模索中で、2015年度の国防予算は約4960億ドル(約51兆円)といいます。

今年の3月1日、オバマ大統領は予算管理法(Budget Control Act)によって規定されていた「sequestration」条項の発動に追い込まれました。

この「sequestration」という用語は、多くのアメリカ国民にとってもなじみの薄い言葉であり、もちろん日本ではさらに聞きなれない言葉です。英和辞典にはこの単語の訳語として「隔離、流罪、隠遁、(法)係争物第三者保管、財産仮差し押さえ、接収、(医)腐骨化、(化)金属イオン封鎖」といった訳語が列挙されていますが、今回発動された「sequestration」には、「強制歳出削減」あるいは「自動歳出削減」といった訳語が与えられています(本稿では「強制削減」と呼称します)。

強制削減は、アメリカにおいて史上初めて実施されることになりました。そのため、その本当の影響はなかなか理解しにくいと言われています。

アメリカでは、今回の強制削減の発動は金融・経済界ではすでに織り込み済みであり、アメリカや世界の株式市場や経済動向に対する影響はそれほど深刻なものではないといった見方がなされています。しかし、最大の削減対象となる国防関係は極めて甚大な影響を受けることになり、アメリカ軍事戦略そのものの修正を余儀なくされかねない状況に直面しています。

国防費に対する強制削減は、国防省ならびに各軍をはじめとする国防関連予算全体に対しての削減措置です。その削減総額は2013年度国防予算に対してはおよそ850億ドル(=およそ8兆750億円)、強制削減措置が続く2020年度までの10年間でおよそ1兆2000億ドル(=およそ114兆円)という巨額に達していました。

ちなみに、このアメリカ国防費の削減額がいかに巨大なものかというと、安倍政権になって1000億円ほど増額された2013年度の日本の国防予算がおよそ4兆7000億円であるから、2013年度の国防費強制削減額だけでも日本の国防費のおよそ2倍、10年間の国防費強制削減額は日本の国防予算のおよそ24年分強に相当します。まさに巨額です。

そうして、今後アメリカの軍事費は、今後10年間は、減ることはあっても増えることはありません。

一方、中国の軍事費はどうかといえば、皆さんご存知のように、絶対額はどんどん伸ばしています。それは、グラフでも明らかです。


日本の国防費を2004年あたりで、追い越しています。しかし、GDP比でみていくと、さらに異なる見方ができます。





たいへん興味深いことに、日本がほぼ1%で推移しているのに対し中国はほぼ2%で推移していることが見て取れます。

これは3~6%で推移している米国やロシヤ、3%前後で推移している韓国やインドよりも低い数値なのです。

中国軍事費の財源全体は、表に出ている国防費の2倍以上ともいわれていますので、このグラフでもって断定的な分析は避けるべきでしょうが、ひとつだけ確信的に判断できることは、中国がその国力に比較して突出して軍事費を膨張させているわけではないということです。

やはり、近年の急速な経済発展に呼応して、軍事費を増加させてきたということです。特に、無理をしなくても、過去においては軍事費を楽に伸ばすことができたということです。

ただし、絶対額はかなり伸長しているということであり、しかも楽に伸ばしてきたということを考えると脅威であることには変わりありません。

上記では、米国と中国自体は比較していませんが、絶対額で比較するとどうなるか、その表を掲載します。



このグラフをみると、中国の軍事予算は、アメリカの1/4です。しかし、この数字は、考え方次第で様々な読み方ができます。

中国は、確かにアメリカの1/4の軍事費ではありますが、守備範囲が全く異なります。アメリカは場合によっては、地球の裏側にまで、軍隊を送り込むことがあり得ますが、中国は主に自国内と、その周辺にしか軍隊を派遣しません。最近では、東シナ海などに進出していますが、それでも、アメリカから比較すれば、守備範囲はかなり狭いです。

これは、大東亜戦争のときの日米を比較すると、良く理解できます。日本は、太平洋方面にだけ軍隊を派遣すれば良かったのですが、米国は大西洋と太平洋の両方、それにヨーロッパの内陸にまで、軍隊を派遣しなければなりませんでした。

こういうことを考えると、日本が米国と戦争をしたのは、全く無謀という考えは成り立たなくなります。太平洋方面の軍事力を考えると、空母や、戦艦の数でも、日本が圧倒的に有利だったことが理解できます。

そもそも、大東亜戦争の直前といえば、日本の海軍も陸軍も、圧倒的に強くて、アメリカはもちろんのこと、ソ連も手出しができないという状況でした。特に、関東軍や、連合艦隊などは、世界一といっても良いくらいの強力な軍隊でした。

そのため、大東亜戦争は決して無謀な戦いではなかったと主張する人もいます。それは、日本人だけではなくアメリカ人でもそういう人もいます。ただし、日本には米内光政と山本五十六という一般には英雄と考えられている軍人ではあるものの、その実体は愚将であったため、当時の絶対国防圏をはるかに超えて戦線を拡大してしまいました。これが、大東亜戦争敗北の最も大きな敗因の一つです。

米内光政と山本五十六

だから、識者の中には、日本が絶対国防圏を守っていれば、無論米国に勝利して、米国本土に侵攻するなどのことはないにしても、有利な条件で講和を結ぶこともできたという人も多いです。

昔から、軍事力は距離の二乗に反比例するといわれていました。これは、核戦争などを除けば、今も当てはまる原則です。

だから、守備範囲の広い、アメリカと中国の軍事力を軍事費だけで比較することはできません。

とはいいながら、同じ軍事費であっても、アメリカや日本の場合は、かなり技術力がありますが、中国は技術力で劣っているため、まだまだ及ばないと考えるのが妥当です。

特に、海軍力は圧倒的に技術的に劣っているため、中国が空母を持ったとか、艦船の数を増やしたとはいっても、今でも日本の自衛隊とも互角に戦えない状況です。

以下に、中国と日本の戦力の比較の表をあげておきます。




これも、数字の上でいうと、中国が圧倒的に有利ですが、さりとて日本は中国への侵攻の意図もありませんから、中国と比較するとかなり守備範囲が狭いです。中国の場合は、国内で頻繁に暴動が発生するため、その鎮圧のためにも人民解放軍を派遣する必要があります。そうして、国土が広いです。また、最近では、東シナ海などにも進出しています。

また、軍事技術には天と地ほどの差があります。特に、海軍では圧倒的に大きな開きがあります。中国海軍の「遼寧」など、ぼろ船に過ぎず、実際に空母としては役にたちません。おそらく、こんな空母を持つくらいなら、イージス艦一隻を持ったほうが、はるかに戦力になります。

また、このブログにもしばしば述べたように、日本の対潜哨戒能力は、世界一の水準であるため、実際に戦争になれば、中国の艦艇や、潜水艦は日本の海上自衛隊にとても太刀打ちできないです。すぐに、海の藻屑と消えてしまうでしょう。だから、実際に戦争になれば、中国の艦艇は、中国の港を一歩も出られないという状況になります。

航空兵力も、中国は最近では、航空機そのものの性能は良くなってきましたが、航空兵力全体をみると、哨戒能力など格段に劣るため、これも日本の航空自衛隊などに太刀打ちできません。

陸上においても、日本が中国本土に侵攻するというのなら話は別ですが、日本の領土で日本の陸上自衛隊と戦うということになば、全く非力です。

以上のようなことから、中国は脅威ではありますが、それが今日明日の問題であるといするのは全くの間違いです。

しかし、今後10年後はどうなるかわかりません。特に、アメリカの国防予算が今後10年間は、削減され続けるをことを考えれば、アジアの中で、局地的には中国にとって有利なるようなところが、いくつか出てくることも十分考えられます。もう、そのようなことは、未だ小規模ながら、すでに起こっています。

こうした現実的な脅威に、米国はもとより、日本も対処しなればなりません。特に、軍事費が大幅に削減されるアメリカにおいては、日本がもっとアジア地域において、存在感を発揮してもらい、アジア方面における米国の負担を少しでも減らしというのは、全く自然な流れです。

だからこそ、ブログ冒頭のように、米委員会が年次報告書を出し、日本の集団的自衛権行使を後押しすることなどを提言しているのです。

戦後70年を経て、米国は日本に対する見方が変わってきたようです。大東亜戦争直後には、「恐ろしい国」であり、どこまでも弱体化すべき対象であったものが、中国の台頭により、「中国に対抗する同盟国」という見方に変わってきたのです。

それは、ブログ冒頭の記事にみられるように、アメリカ議会で顕著になってきた動きですが、実はこのような動きは前からありました。

実は、すでに数年前から、アメリカ議会では日本憲法改正派が、大勢を占めるようになっていました。これに関しては、このブログにも以前掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
「日本は憲法改正せよ」が米国議会で多数派に―【私の論評】憲法を改正するか、中国の属国になるか、アメリカの51番目の州になるか、あなたはどの道を選択しますか?

GHQによる日本国憲法草案

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、2010年12月9日にこのブログに掲載したこの記事では、米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになったことを掲載しました。

この現実は日本の護憲派にはショックでしょう。しかし、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのです。

日本の憲法を改正するか否かはあくまで日本独自の判断によるというのが正論です。しかし、日本の防衛が米国という同盟パートナーに大幅に依存し、しかも日本の憲法がかつて米国側により起草されたという事実を見れば、どうしても米国の意向が重視されてきた側面は否めないと思います。

ブログ冒頭の、アメリカ議会の報告書に関する記事や、アメリカ議会が日本の改憲を認めているということは、今後の安倍総理の「戦後体制からの脱却」という政治課題を追求していく上で、かなりの追い風になると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか(゚д゚)!

【関連記事】

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2014年11月21日金曜日

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で―【私の論評】ブルームバーグ日本語版記事から抜け落ちた部分の意味を理解せよ!今回の安倍総理の増税見送り、解散・総選挙は、財務省に挑戦状を叩きつけたのだ(゚д゚)!

クルーグマン氏が決定的役割-安倍首相の増税延期の決断で

ボールクルーグマン博士
11月21日(ブルームバーグ):ノーベル経済学賞受賞者、ポール・クルーグマン氏の訪日予定を耳にした際、本田悦朗内閣官房参与は、再増税をめぐる議論を慎重派に有利な方向に導く好機が到来したと思った。

安倍晋三首相にとって、消費税率を2015年10月に10%に引き上げることの是非を決断する期限が近づきつつあった。今年4月の8%への引き上げの影響で、日本の景気は四半期ベースとして世界的な金融危機以降で最も深刻 な落ち込みに見舞われ、その後の回復の足取りもおぼつかない状況だった。

安倍首相と30年来の知己である本田氏(59)は、4月の増税反対に続き、15年の増税延期を首相に助言。そこに登場することになったのが、自身のコラムで日本の増税延期が必要な理由を説いていたクルーグマン氏だった。

本田氏は20日、オフィスを構える首相官邸でインタビューに応じ、「あれが安倍総理の決断を決定づけたと思う。クルーグマンはクルーグマンでした。すごくパワフルだった。歴史的なミーティングと呼べるものだった」と、首相とクルーグマン氏の会談を振り返った。

助っ人

帝国ホテルから官邸への高級車の車内で本田氏は、安倍首相との会談がいかに重要かをクルーグマン氏(61)に説明した。増税延期で首相を説得する手助けをクルーグマン氏にしてもらえる可能性があった。  クルーグマン氏は今月6日の首相との会談について、自身が首相の決断に及ぼした役割の大きさには控えめな態度を示す。同氏は20日の電話インタビューで「首相の質問には明確に答えられたと願う。私がこれまで書いてきたようなことうまく説明できたと思うが、首相の考えにどこまで影響があったかは分からない」と話した。その上で、増税延期の決定を「歓迎する」と語った。

海外の著名経済学者の助けを借りたいと考えていた本田氏は、クルーグマン氏が東京での講演のため訪日することを偶然知った。「クルーグマンならと思っていたが、ミーティングのためにわざわざ日本に来てれくれないと思っていたら、たまたま日本に来ることを聞いてこれを使わない手はないと思った」と明かす本田氏は、首相とクルーグマン氏の20分間の会談のお膳立てに成功。会談は予定時間の倍近くに及んだ。

会談に同席した本田氏によると、クルーグマン氏は冒頭、アベノミクスを高く評価。唯一の問題は消費増税だと訴えた。会談が終わるまでには、首相は延期を決めるだろうと本田氏は確信を持ったという。

官邸での会談

やはり会談に臨んだ浜田宏一内閣官房参与は18日のインタビューで、「安倍首相はクルーグマン氏の説明をとても注意深く聞いていた」と振り返り、「恐らく首相の決断を手助けしたのではないか」との認識を示した。

安倍首相はNHKで「先般、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン教授と話した」と言明。「彼の意見は、アベノミクスを支持する。しかし今度の消費税引き上げは慎重にいくべきだ。そうしなければ景気が腰折れしてしまう。となればデフレから脱却できず、経済再生、財政再建もおぼつかないという話だった。私もその通りだと思う」と述べた。

クルーグマン氏は17年4月の10%への引き上げをめぐっては、「ある時点で歳入の拡大を図る必要がある点は理解する」とした上で、「私としては『インフレ率が2%程度に達してから引き上げる』といった条件付きの延期の方が望ましいと考えるが、そうした可能性がないことも理解している」と語った。

原題:Abe Listening to Krugman After Tokyo Limo Ride on Abenomics Fate(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 藤岡 徹tfujioka1@bloomberg.net;ロンドン Simon Kennedyskennedy4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Christopher Ansteycanstey@bloomberg.net Brett Miller更新日時: 2014/11/21 13:21 JST

【私の論評】ブルームバーグ日本語版記事から抜け落ちた部分の意味を理解せよ!今回の安倍総理の増税見送り、解散・総選挙は、財務省に挑戦状を叩きつけたのだ(゚д゚)!

さて、このブルームバーグの記事の英語の元文には、実は日本語版には掲載されていないことが盛り込まれていた。

それに関しては、前田敦司氏が、ツイートしていますので、そのツイートを以下に掲載します。
確かに、英語版をみると、リフレ派頭脳集団の前に、増税させじと財務省の官僚らが、たちはだかっていたことが掲載されています。

日本語版の最後に(抜粋)とことわってありますし、記者・編集者は英語版も抜粋日本語も同じ人たちによるものです。

さて、これを私達は、どのように解釈すれば良いのでしょうか。これは、昨日のこのブログをご覧いただければ、良くご理解いただけると思うので、その記事のURLを以下に掲載します。
【衆院選】首相はなぜ解散を決断したのか 幻となった4月総選挙 決断を早めたのは…―【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、昨年の増税政局においては、新聞は安倍総理が、「増税決断」を正式に発表する前から、どの新聞も例外なく各紙一斉に「安倍総理、増税決断」と報道する異様な自体が発生していました。

そうして、政治家のほとんどが増税推進派となり、識者も増税一色という異様な状況のなかで、安倍総理は増税を決断せざるをえなかったことを掲載しました。そうして、日本のほとんどの勢力が「増税一色」で固まった背景には、財務省の増税キャンペーンがあったことを掲載しました。

これを掲載した後で、この記事は、以下のように結びました。
今から、思えば、安倍総理は8%増税も本当はやりたくなかったということが良くわかります。それは、今年の動きを見れば、はっきりしています。そうして、本当は、去年の9月でも増税は阻止できたはずです。法律の条文など、一日もあればかえられます。
しかし、昨年は財務省の木下康司を筆頭にする、増税推進派の恐喝により、特に自民党の幹部をはじめとする、政治家が徹底的に「増税容認」を固めてしまいました。身動きがとれなくなってしまった安倍総理は、長期政権や、まだまだやり残したことを成就するためにも、「増税の決断」をセざるを得なかったのです。
その木下氏は、実は強大な権力を持つ、財務省の権化のような存在であり、これについては、上念司氏が、わかりやすく解説していますので、その動画を以下に掲載します。

木下氏は、財務次官だったときには、繰越予算など、憲法解釈上認められないはずなのに、つるの一声でそれを実現してしまいました。この動画でも、上念氏が述べているように、このようなことは、総理大臣でも出来ないことです。日本には、このような国民の選挙で選ばれた議員による国会や、政府の他に、財務省の一部の人間や、一部のOBなどによる大きな影の強力な権力集団があるということです。
その影の権力集団が、昨年に続き、今年も増税恐喝を続け、他省庁の官僚はもとより、政治家やマスコミを「増税容認」で固めてしまおうとしたのですが、さすがに、そうはいかなかったというのが、今年の流れです。
そもそも、世論が7割がた、増税に反対なのに、無理に増税に踏切るという事自体が、異常です。昨年は、安倍総理としては、解散総選挙というわけにもいかず、増税に踏み切らざるを得ませんでした。ゆくゆくは、20%増税も視野に入れている財務省は最早、政府の一下部機関とはいえません。破壊的革命集団とでも呼ぶのが相応しいと思います。
20%増税などしてしまえば、日本経済も国民も疲弊してどうしようもなくなることははっきりしています。しかし、そんなことはお構いなしに、財務省はいずれそれを実現しようとしています。これでは、破壊的革命集団と呼ぶ以外に適切な名称などありません。
これは、見方を変えてみれば、単なる日本経済や財政、デフレに関することだけではなく、安倍総理の第二の権力への挑戦とみてとるべきです。 
そうして、この挑戦は、すぐに結果がでるものではありません。長きにわたって、展開されることになると思います。 
さて、あなたは、どちらに与しますか。正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側ですか、それとも影の権力ですか。 
私としては、無論のこととして、正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側にたちます。
それにしても、安倍総理の増税見送り、解散・総選挙宣言!ようやっと、日本でも正当ではない権力に立ち向かう総理大臣がでてきたということで、この部分では財務省に一矢報いたということで、勝利と見て良いのではないでしょうか。 
ただし、これからも戦いは長く続きます。影の権力が日本よりなくならない限りこの戦いは終わりません。 
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
このように、今回の安倍総理の増税見送り、解散総選挙は、財務省に対する宣戦布告でもあったのです。それを昨日も掲載したのですが、これでは憶測にすぎなかったものです。しかし、本日の上のブルームバーグの記事、それに日本語版などで、掲載されなかった部分があるというこの事実。

なぜ、英語版では掲載して、多くの英語圏の人々に読んでもらっても良いものが、日本国内版ではカットされるのかということの裏を読んでいただければ、ご理解いただけるのではないかと思います。

なぜか日本では、財務省現役とOBの一部の人間が、全部とはいいませんか、選挙で選ばれた国会議員や、内閣よりも、多方面にわたって、強力な権力を持っています。

たとえば、上の動画でも上念氏が説明しているように、財務省は今年の春に、予算の繰越をできるようにしましたが、法解釈上これは本来なら安倍総理でも一存ではできません。しかるべき正当な手続きの後でないとできることではありません。しかし、当時の木下康司財務次官は、鶴の一声でこれをやってのけました。

日本では、まだ、こうした権力の二重構造があるのです。こうした二重構造に挑戦しようとしたのが、故中川氏でした。

中川氏は、財務省の特別予算というおそろしく複雑怪奇な仕組みに切り込み、財務省の埋蔵金ということをいいだしました。中川氏も財務省の権力に挑戦しようとしたのでしょうが、その志は誠に残念ながら中途でついえてしまいしまた。この志を引き継いでいるのが、安倍総理です。

左より、高橋はるみ北海道知事、安倍晋三氏、在りし日の中川一郎氏
安倍総理の今回の増税見送り、解散・総選挙は、こうした二重権力廃止への挑戦を宣言をしたということです。いかに財務省とはいえども、官僚が表だって、10%増税を実行することはできません。それに、選挙によって正式な手続きを経た後に、民主的な手続きよって、誕生している総理に対して、あれこれ指図もできません。

財務省の権力は、あくまでも間接的なものです。日本国の財布の紐を握っているということで、それを利用して、ありとあらゆる手段を使って、他省庁や、政治家に圧力をかけ、自分たちにとって都合のよいように政治を動かしていくというのが彼らのやり方です。

それは、増税政局もそうでした。財務省は、昨年も今年も同じく、ご説明資料を持って、政治家やマスコミを回っていました。とはいいながら、その内容は、まさに恐喝でした。増税しないと、あれはできないぞ、これもできないぞという脅しです。安倍総理が何らかの行動にも出なければ、今年も昨年と同じように、増税が決まっていたことでしょう。

でも、今年は、いろいろな人が、財務省の増税推進の間違いについて、新聞は報道しなくても、徹底的にサイトなどのメディアに掲載するなどのことで、その真相ははっりきとはわからなくても、間違いであること、自分たちにとっても、良くないことであることが、理解され、多くの人達が増税に反対でした。

ここを突いたのが、安倍総理です。解散総選挙して、圧倒的多数を勝ち得ることができば、財務省とて、これを無視するわけにはいきません。そうして、安倍総理は無論、こんなことは見通していましたし、10%増税など実行すれば、経済がかなり落ち込み、安倍政権どころか、自民党政権も危うくなるということに気づいていました。

だから、クルーグマン氏の訪問と、安倍総理に対するアドバイスは、あくまでコーチング的なものであったと思います。コンサルティングなどとは異なり、コーチングでは、コーチングを受ける側に、考えて自ら問題を解決する力をつけさせるのが最終的なゴールです。クルーグマン氏も、すでに安倍総理が持っている答えを後押ししたということです。

それに、こうしたノーベル学者のアドバイス内容を公表することにより、対外的なアピールに使うという目的もあったでしょう。そもそも、クルーグマン氏は学者です。日本の経済について、経済的な観点からアドバイスはできても、日本に政局に対するアドバイスはできません。

アメリカの政局なら、それなりに理解していて、特にブッシュ政権に対する批判は、かなり辛口で辛辣でしたが、日本の政局についてはそんなに詳しくないし、他国の財務省を手ひどく批判するわけにもいきません。それに、ここ最近の増税論議などは、経済理論や、理屈など完璧に脇においた次元であり、政局そのものでした。

ただし、今回の安倍総理の挑戦は、これから長く続くであろう、最初の一回です。しかし、安倍総理には、今回のことを忘れてほしくはありません。それは、民意が自分の側についていれば、財務省も手出しはできないし、出せば大やけどをするということです。

以上のようなことは、全く表には出ないので、多くの人が知らないですし、マスコミも報道しません。水面下での戦いです。ただし、いずれ財務省の敗北が濃厚になった場合は、報道されるようになるかもしれません。しかし、今のところは、財務省がまだまだ優勢なので、しばらくは表には出てこないでしょう。

いずれにせよ、日本のような先進国において、権力の二重構造があってはならないはずです。この二重構造を廃することが、本当の意味での政治主導です。民主党がやろうとした、政治主導など、最初から間違っていました。事業仕分けや、官僚の天下りばかり追求したとしても、元を絶たなけれは、政治主導はいつまでたっても成就しません。

このような観点や背景から、増税政局、マスコミの報道姿勢、政治家の行動をみると、様々なことが浮かび上がってきます。しかし、このような観点がなければ、日本の政治、政局は全くみえてきません。今回の選挙の大義は何かなどと、まだ馬鹿なことを言っている政治家や、マスコミ関係者が大勢いますが、かれらは政局もまともに、見ることができない大馬鹿者だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どうおもわれますか?

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2014年11月20日木曜日

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増税見送り、解散総選挙を表明する安倍総理
「民主党はそんなに解散したいのか?」

10月下旬、安倍晋三首相はこうつぶやいた。

当初、無風と思われていた秋の臨時国会は荒れに荒れた。9月に民主党幹事長に就任した枝野幸男氏が「私が首相だったら年内解散だ」と吹聴し、解散封じに向け、スキャンダル国会を仕掛けてきたからだ。

国会は空転し、10月20日には小渕優子経済産業相、松島みどり法相がダブル辞任に追い込まれた。それでも閣僚の追及は止まらない。「撃ち方やめ」を模索していた首相だが、ついに反撃に出た。

10月30日の衆院予算委員会。首相は、質問に立った枝野氏とJR総連、革マル派の関係を逆に追及した。腹の中は半ば年内解散に傾いていた。

そして外遊を目前に控えた11月7日。野党側の出席拒否により衆院厚生労働委で90分間も「待ちぼうけ」を食らった首相は一気に動いた。自民党の谷垣禎一幹事長、公明党の山口那津男代表と相次いで官邸で会い、年内解散を念頭に置いていることを伝えた。

そもそも首相は年内解散など想定していなかった。平成24年12月の就任当初は「300近い自民党の議席は大切にしないといけない」と周囲に語り、28年夏の衆参ダブル選挙を軸に政権構想を練っていた。

考えが変わったのは、昨年秋、臨時国会で特定秘密保護法の審議を通じ、野党と一部メディアの激しい批判にさらされてからだ。さらに今年の通常国会では、集団的自衛権行使の政府解釈変更で再び批判を受けた。

首相は、解釈変更に伴う安保関連法案を秋の臨時国会に提出するのを見送り、27年の通常国会への提出を決めた。

首相は周囲にこう漏らした。「やはり政権の求心力が持つのは長くて3年かな…」

ここで首相が模索したのは27年度予算案成立直後の解散、来年4月の衆院選だった。統一地方選と同時に衆院選を打つことで国と地方の両方で自民、公明両党に勝利をもたらそうと考えたのだ。

この構想を漏らしたのは菅義偉官房長官らごく少数の側近だけ。中には「秋の臨時国会には懸案がないから」と年内解散への前倒しを促す声もあったが、「任期2年で解散はできないよ」と一向に興味を示さなかった。

もう一つ、年内解散に向け、首相の背中を押した組織がある。財務省だ。首相が消費税再増税の先送りに傾きつつあるとの情報を得た財務省は組織を挙げて説得工作に乗り出し、自民党議員は次々に切り崩されていった。首相は苦々しげに周囲にこう漏らした。

「財務省はおれに政局を仕掛けているのか?」

解散風が吹き始めると財務省はさらに工作活動を活発化させ、ついに首相の後見人である森喜朗元首相にも先送りを思いとどまらせるよう泣きついた。森氏は「なんで俺のところに来るんだ。麻生太郎副総理に言えばいいじゃないか」といなしたが、外遊先でこれを聞いた首相は怒りを爆発させた。

「ぐずぐずしてたら政局になってしまう。もはや一刻の猶予もない…」(副編集長 石橋文登)

【私の論評】産経新聞ですらのってしまった昨年の総理増税決断の虚偽報道!今年は破壊的革命集団財務省が、安倍総理の解散時期をはやめた、その意味するところは?

上の記事、あまり長くもないものなので全文掲載させていただきました。この記事は、憶測記事にすぎないです。無論これから、私が掲載する内容も憶測にすぎないのですが、それでも産経新聞の憶測よりは、はるかにましです。

なぜ、そのようなことを言うかといえば、昨年の安倍総理の増税決断の公表の前に、日本のほぼすべてのメディアが、「安倍総理増税決断」という報道をしており、産経新聞もそのような報道をしていたからです。

さて、昨年の、9月を振り返ってみましよう。

主要各紙は昨年9月21日までに、安倍晋三首相が来春の消費増税を「決断」したことを1面トップで相次いで報じました。しかし、安倍首相はこの時点では、まだ一言も「増税を決断した」とは語っていなかったことが明らかになっています。安倍総理が、増税決断の表明をしたのは、昨年10月1日のことであり、それまでは、一言も「増税を決断した」などとは語っていません。

この間、菅義偉官房長官は少なくとも3度の公式会見で「安倍首相はまだ決断していない」と指摘していました。これは、このブログにも記事として掲載しました。その記事のURLを以下に掲載します。
消費税増税決定と報道したマスコミの梯子を華麗に外す菅官房長官―【私の論評】外国勢に嫌われようと、増税派に嫌われようと、安倍総理はまた優雅に梯子を外せ(゚д゚)!
昨年は、財務省とマスコミの梯子を華麗に外せなかった安倍総理だが今年は?

このように菅官房長官が「安倍総理増税決断」という報道を再三にわたって、否定したにもかかわらず、各紙は、すでに増税を既定路線とみなしていました。私自身も、この記事を掲載した時点では、まだ「増税見送り」もあり得ると考えていました。

安倍首相は最終的には、増税の決断をしそれを公表したのではありますが、この間の増税「決断」報道の経緯の異常ぶりは、歴史に残すためにも記録にとどめておく必要があります。以下に、その記録を掲載します。

まず、主要メディアの報道をざっと振り返っておきます。実際には、これ以外も、多くの報道がありましたが、代表的なもののみにとどめます。報道に間違いがなければ、安倍首相は11日から20日にかけて、少なくとも4度(11日、12日、18日、20日)にわたり「決断」を繰り返したことになります。
安倍首相は11日、消費税率を来年4月に現行の5%から8%に予定通り引き上げる意向を固めた。出典:読売新聞9月12日付朝刊1面「消費税 来年4月8% 首相、意向固める 経済対策に5兆円」
安倍晋三首相が、来年4月に消費税率を5%から8%へ予定通り引き上げる方針を固めたことが12日分かった。出典:共同通信9月12日「消費増税 来年4月8%に 首相、10月1日表明へ」
安倍晋三首相は12日、現行5%の消費税率を、消費増税関連法に沿って2014年4月に8%に引き上げる意向を固めた。出典:時事通信9月12日「消費税、来年4月に8%=経済対策5兆円で下支え=安倍首相、来月1日にも表明」
安倍晋三首相は、現行5%の消費税率を、来年4月に8%へ予定通り引き上げる方針を固めた。出典:毎日新聞9月12日付夕刊1面「消費増税 来年4月8% 安倍首相『環境整う』判断 経済対策、5兆円規模検討」
安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年4月に8%に引き上げることを決断した。出典:産経新聞9月19日付朝刊1面「消費税来春8%、首相決断 法人減税の具体策検討指示」
安倍晋三首相は来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針を固めた。(…)複数の政府関係者が19日、明らかにした。出典:日本経済新聞9月19日付夕刊1面「消費税来春8% 首相決断 法人減税が決着、復興税廃止前倒し 来月1日表明」
安倍晋三首相は20日、来年4月に消費税率を現在の5%から8%に予定通り引き上げることを決断した。出典:朝日新聞9月21日付朝刊1面「首相、消費税引き上げを決断 来年4月から8%に」
安倍首相は10月1日の発表の前までは、自らの肉声で「決断」の意思を表示したわけではありません。仮に会見等の場で表明していれば「~を表明した」と報じられるし、一部の関係者に伝達していれば「決断したことを~に伝えた」と報じられるのが普通です。しかし、昨年はどのメディアも「表明」「伝達」いずれの事実も報じておらず、「意向を固めた」「決断した」といった表現で報じていました。

「意向」とか「決断」とかいう内面的事実を、メディアは一体どのように確認したというのでしょうか。さまざまな周辺情報(増税に備えた経済政策の検討を指示した等)から「決断している可能性が高い」と推測できるからといって、「決断した」と断定していいはずはなかったはずです。

もし、「決断」の裏付けを取れたなら、その根拠となる事実関係や、ソース(情報源)を読者に示してしかるべきでした。ところが、各紙の「決断」報道は、日経新聞だけが「複数の政府関係者によると」と書いたほかは、全くソースについて触れていませんでした。

単に「安倍首相は…決断した」とだけ書いて、根拠やソースは何も書かなかったのです。ソース情報は、読者に報道内容の信ぴょう性や情報源の意図を知る重要な手がかりとなるものです。それを全く示さない記事は、「メディアが書いたものだから信じなさい」と一方的に事実認識を押しつけているとみられても仕方がないです。

こうした「出所不明記事」は英字紙では記事として扱ってもらえず「ゴミ箱行き」となるそうです(『官報複合体』講談社)。仮に「政府関係者によると」と表記したとしても、あまりに漠然としすぎていてソースを示したとはいえないです。

そうして、安倍総理が「増税を決断」した後の新聞報道といえば、増税推進の印象操作の記事などが目立ちました。

日経の巧妙な「世論調査という名の世論操作」
日本経済新聞2013年8月26日付朝刊1面
日本経済新聞が、昨年9月24日付朝刊1面トップで、同紙が実施した「社長100人アンケート」の結果で、2014年4月からの消費増税を前提に1年後の国内景気を聞いたところ、現在より上向くという回答が41・4%に達したと報じました。記事は、大見出しで「景気『増税後も改善』4割」と掲げ、リード(記事冒頭の要約)で「設備投資が増え個人消費も底堅いとみており、増税前の駆け込み需要の反動による影響は限定的との見方が多い。経営者が景気先行きに気であることが浮き彫りになった」と分析していました。

実は、日経新聞はこの記事の前にも、消費増税に関する世論調査でミスリードの疑いが極めて強い記事を載せていました。

8月26日付朝刊で、自社の世論調査の結果について「消費増税 7割超が容認」との見出しをつけて1面で報道。リードも「消費増税の税率引き上げを容認する声が7割を超えた」と伝えていました。来春の消費増税が予定通り行われるかどうかが焦点となる中、この見出しやリードは「来春の消費増税」に「7割超」が容認する結果が出たとの印象を与えるものでした。

ところが、共同通信が25日発表した世論調査によると、予定通りの消費増税に賛成は22%でした。改めて日経の世論調査を確認したところ、日経が「容認」として報じた「7割超」は「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」の55%を足し合わせた数字でした。そもそも質問は「予定どおり引き上げるべきか?」であり、それに対して「引き上げるべき」の回答は17%にすぎなかったのです。記事本文をきちんと読めば書いてあるが、見出しとリードだけ読んでは分からないようになっていました。

日経は7月にも同様の世論調査を行っていましたが、このときも「予定通り引き上げるべきだ」が11%、「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」は58%。日経がいう「増税容認」は69%、ほぼ7割でした。つまり、7月の調査と8月の調査は、増税自体を容認しているかどうかいう点ではほぼ同じ結果で、それ自体既報であってニュースですらなかったのです。ニュースでないことを見出しとリードにとる代わりに、回答者の意見(7月の58%、8月の55%)は、見出しでもリードでも伝えなかったです。

この世論調査報道に対しては、元日本経済新聞編集委員の田村秀男氏(現・産経新聞編集委員兼論説委員)も、「世論調査という名の世論操作」「増税に世論を導くための典型的な印象操作」「データをねじ曲げてまで世論誘導を図る今の日経の報道姿勢」「官報以下」と古巣をこき下ろしていました。

それにしても、今年は昨年と比較すれば、総理が決断する前から、「総理増税決断」などという報道はありませんでした。

これは、どうしてなのでしょうか。私としては、やはり今年は昨年と同じ轍を踏むことを避けるため、安倍総理や、官邸サイドがかなり神経を尖らせ、財務省側を牽制していたのだと思います。

それに関しては、産経新聞の内容を読んでいても、それを感じさせる記載が見られます。

上の記事でいえば、
「財務省はおれに政局を仕掛けているのか?」 
 解散風が吹き始めると財務省はさらに工作活動を活発化させ、ついに首相の後見人である森喜朗元首相にも先送りを思いとどまらせるよう泣きついた。森氏は「なんで俺のところに来るんだ。麻生太郎副総理に言えばいいじゃないか」といなしたが、外遊先でこれを聞いた首相は怒りを爆発させた。 
 「ぐずぐずしてたら政局になってしまう。もはや一刻の猶予もない…」
という件です。
また、他の記事でもそうしたことがうかがえるものがあります。それは、先日このブログにも掲載しました。その記事のURLを以下に掲載します。
景気後退局面か GDP速報値大幅減が示唆 消費増税で深刻な経済悪化を招いた財務省の罪―【私の論評】日本人が、アルゼンチンタンゴを踊るようになる前に、破壊的革命集団財務省分割消滅こそが、日本の安定成長をもたらす(゚д゚)!
田中秀臣氏
詳細はこの記事をご覧いただくものとして。この記事には、以下の産経新聞の記事を引用しました。
消費税率再引き上げ 財務省「予定通り」に固執し、官邸激怒
この記事から一部のみ以下に引用させていただきます。
 消費税率10%への再引き上げをめぐり、財務省が来年10月から予定通りに実施するよう固執し、自民党議員に「ご説明」に回った。これに対し官邸サイドは、「増税容認」で固めてしまおうとする動きだとして激怒、安倍晋三首相が衆院解散・総選挙を決意した遠因とされている。
この産経新聞記事では、財務省が「増税容認」で固めてしまおうという動きに官邸サイドが激怒し安倍晋三首相が衆院解散・総選挙を決意した遠因としていますが、私自身は、そうではなくて、これ自体が主因であるとみています。

10月20日には小渕優子経済産業相、松島みどり法相がダブル辞任に追い込まれたことが年末解散総選挙に大きく影響したとされてはいますが、これ自体は、自民党サイドのコントロールが良かったせいか、直後には支持率はおちたものの、その後は50%近くの支持率を保っていました。

この程度のことであれば、ブログ冒頭の記事のように解散・総選挙までしなくても4月の総選挙で十分対処出来たものと思います。

しかしながら、財務省の横槍は、さすがに安倍総理も腹にすえかねたし、それに4月まで放置しておけば、またぞろ、昨年のような財務省の大増税キャンペーンによって、「増勢容認」にマスコミも、自民党内の政治家も固められて、身動きがとれなくなると判断した安倍総理がもともと、解散総選挙のシナリオもあったのですが、それを今の時期に決断する大きな判断材料になったものと推察します。

とにかく、昨年の財務省のキャンペーンは凄まじいものがありました。キャンペーンどころか、昨年も今年も、「増税しないと大変なことになるぞ」という恐喝でした。

この恐喝の首謀者は、このブログでも過去に何度か指摘してきたように、木下康司元財務次官てす。この木下康司を中心とした、!財務省「花の54年組」4人衆です。

これについては、このブログでも掲載したことがありますので、その記事のURLを以下に掲載します。
この国は俺たちのためにある そこどけ!財務省「花の54年組」4人衆のお通りだ 加藤勝信・木下康司・香川俊介・田中一穂―【私の論評】アベノミクスを完遂するために、安部総理が財務省対策の深謀遠慮を巡らしてそれを実行できなければ、この国は終わるかもしれない(゚д゚)!
財務省「花の54年組」4人衆 加藤勝信(左上) 木下康司(右上)
香川俊介(下右) 田中一穂(右下)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では以下のように締めくくりました。
しかし、現実には、官僚、大多数の政治家、マスコミが束になって、安部総理の行方を幾重にも阻み増税路線を貫こうとしています。しかし、これらに対抗する世論が盛り上がれば、これらを阻止することも可能です。
結局のところ、財務省は昨年通り必死の増税恐喝を各方面に徹底したのですが、さすがに、国民も馬鹿ではないので、だんだんとこの財務省の恐喝に関して、マスコミはスルーしたものの、サイトなどでじんわりとではありますが、確実に広がっていったのだと思います。

そうして、いわゆる識者以外の人々も、増税は見送りするのが当然のという認識が深まっていったのだと思います。

それは、昨年の異常なまでの、増税包囲網と、今年の差をみれば良く理解できます。昨年と何も変わらなければ、今年も同じような流れになったはずです。

これを意図して、意識して広めた人々も大勢います。私も、その一人です。10%増税は何が何でも、見送りすべきとの記事は、昨年の8%増税が決まった直後から、頻繁に掲載をはじめていました。こうした努力が、少しずつ浸透し、安倍総理の財務省の意図を砕く、増税阻止のための解散・総選挙へと踏み切らせたのだと思います。

今から、思えば、安倍総理は8%増税も本当はやりたくなかったということが良くわかります。それは、今年の動きを見れば、はっきりしています。そうして、本当は、去年の9月でも増税は阻止できたはずです。法律の条文など、一日もあればかえられます。

しかし、昨年は財務省の木下康司を筆頭にする、増税推進派の恐喝により、特に自民党の幹部をはじめとする、政治家が徹底的に「増税容認」を固めてしまいました。身動きがとれなくなってしまった安倍総理は、長期政権や、まだまだやり残したことを成就するためにも、「増税の決断」をセざるを得なかったのです。

その木下氏は、実は強大な権力を持つ、財務省の権化のような存在であり、これについては、上念司氏が、わかりやすく解説していますので、その動画を以下に掲載します。



木下氏は、財務次官だったときには、繰越予算など、憲法解釈上認められないはずなのに、つるの一声でそれを実現してしまいました。この動画でも、上念氏が述べているように、このようなことは、総理大臣でも出来ないことです。日本には、このような国民の選挙で選ばれた議員による国会や、政府の他に、財務省の一部の人間や、一部のOBなどによる大きな影の強力な権力集団があるということです。

その影の権力集団が、昨年に続き、今年も増税恐喝を続け、他省庁の官僚はもとより、政治家やマスコミを「増税容認」で固めてしまおうとしたのですが、さすがに、そうはいかなかったというのが、今年の流れです。

そもそも、世論が7割がた、増税に反対なのに、無理に増税に踏切るという事自体が、異常です。昨年は、安倍総理としては、解散総選挙というわけにもいかず、増税に踏み切らざるを得ませんでした。ゆくゆくは、20%増税も視野に入れている財務省は最早、政府の一下部機関とはいえません。破壊的革命集団とでも呼ぶのが相応しいと思います。

20%増税などしてしまえば、日本経済も国民も疲弊してどうしようもなくなることははっきりしています。しかし、そんなことはお構いなしに、財務省はいずれそれを実現しようとしています。これでは、破壊的革命集団と呼ぶ以外に適切な名称などありません。

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そうして、この挑戦は、すぐに結果がでるものではありません。長きにわたって、展開されることになると思います。

さて、あなたは、どちらに与しますか。正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側ですか、それとも影の権力ですか。

私としては、無論のこととして、正当な手続きを踏んだ、安倍総理の側にたちます。

それにしても、安倍総理の増税見送り、解散・総選挙宣言!ようやっと、日本でも正当ではない権力に立ち向かう総理大臣がでてきたということで、この部分では財務省に一矢報いたということで、勝利と見て良いのではないでしょうか。

ただし、これからも戦いは長く続きます。影の権力が日本よりなくならない限りこの戦いは終わりません。

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2014年11月19日水曜日

財務省に敗北感濃く 財政健全化 巻き返し狙う―【私の論評】増税見送り、解散選挙だけでは財務省の勝利!その後も続々登場する隠し球が安倍総理にはある!まともな経済対策のできる国になるためにも世論を盛り上げよう(゚д゚)!

財務省に敗北感濃く 財政健全化 巻き返し狙う

増税見送り、解散総選挙を記者会見で公表した安倍総理大臣



 安倍晋三首相が消費税再増税の延期を正式に表明したことで、来年10月の消費税10%への引き上げを目指してきた財務省の“敗北”が確定した。ただ、1千兆円という世界最悪の債務残高を抱える日本が、財政健全化の手綱を緩めることは許されない状況は変わらない。財務省は平成32年度の財政健全化目標に照準を合わせ、消費税10%超への引き上げをも見据え始めた。

「完敗だ…」。今月中旬、ある財務省幹部は大きく肩を落とした。12日、産経新聞が「消費再増税1年半延期」と報じて以降、各紙も相次いで再増税延期を報道。財務省が総力戦で目指してきた再増税の可能性は大きくしぼんだ。

財務省は官邸に対し、再増税を延期すれば、安倍政権の看板政策である子育て支援策が不可能になると再三、訴えてきた。同省幹部が自民党の若手議員や大学教授はおろか、雑誌編集者など財政に“門外漢”の人にも財政健全化と消費税再増税の必要性を説いて回った結果、再増税実現に大きな手応えを感じていた。

さらに10月31日、日銀が同日追加緩和を決め、日経平均株価は大きく跳ね上がった。黒田東(はる)彦(ひこ)総裁は元財務官で、再増税による財政再建の重要性を力説してきた経緯がある。「市場は再増税を評価している。安倍首相も無視はできない」(幹部)。財務省内には楽観ムードすら漂っていた。

しかし、結論は全く逆だった。ある幹部は「戦略ミスだった」とこぼす。経済情勢次第で増税を停止できる「景気条項」の撤廃を勝ち取ったのが唯一の収穫で、敗北感は濃い。

ただ、再増税は延期されたが、財政の立て直しには消費税の再増税は避けられない。消費税率を10%に引き上げても、32年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は11兆円の赤字が残る。この赤字を消費税で穴埋めするには、さらに4%程度の引き上げが必要になる計算だ。

財務相の諮問機関である財政制度等審議会は今年5月、来年夏までに今後5年間の財政健全化の具体的な工程を示すよう求めている。財務省幹部は「次の勝負はここだ」と話し、財政健全化目標を“錦の御旗”に、消費税再増税へのリベンジを果たそうとしている。(小川真由美)

【私の論評】増税見送り、解散選挙だけでは財務省の勝利!その後も続々登場する隠し球が安倍総理にはある!まともな経済対策のできる国になるためにも世論を盛り上げよう(゚д゚)!

ブログの冒頭の記事を読まれて、皆さんはどうお感じになりますか。財務省は、敗北したのでしょうか。私は、この記事を書いた記者は、現実を良く理解していないと思います。むしろ私は、今回の勝者は、財務省であるとさえ思っています。

まずは安倍総理の会見前から、何がどうなれば安倍総理の勝ち、どうなれば財務省の勝ちということを定めておいた上で、判定するということにすれば、この試みはうまくいったでしょうが、この記事を掲載した記者はそのようなことはしておらず、後追いで財務省の官僚などから取材して記事を書いているのでしょうが、それでは真実は見えてきません。

それどころか、財務省の敗北を強く印象付けようという財務官僚の意図に乗ってしまい、財務省のスポークスマンのような役割をしてしまっています。これでは、まともな報道とはいえません。

私が、知っている限り、会見前から勝利の基準を定めた上で、判定をしていたのは、憲政史家の倉山満氏だけだったと思います。しかも、倉山氏はそれを口で語るだけではなく、文章でそれを示していました。その上で、今回の会見において、安倍総理が勝利したのか、財務省が勝利したのか、明確に判定しています。倉山氏の写真と、その記事のURLを以下に掲載します。

倉山満氏
安倍首相記者会見を聞いて~罠にかかったのは誰か?
 安倍首相が
・増税延期
・解散総選挙
・一年半後の増税確定(景気弾力条項の削除)
を明言。
 会見が始まり円高が進み、時間外取引の株価も下がった。
安倍首相、インフレ期待の概念を理解していなかったか軽視しすぎたか。
安倍さんは2年前に市場を味方につけて政権に就いたが、今回は背を向けられた。
安倍支持者は盲目的に「大義がある」などと言わず、この意味を本気で考えろ。
 私は10月3日に書いた。
一、延期ならず、そのまま来年10%。          →大敗北
二、延期されるものの、一年半後に増税が確定。   →負け確定
三、景気条項は引き継いだまま延期の法律を通す。 →引き分け
四、10%を停止する。                   →勝利
五、8%から5%に戻す                   →大勝利
 結局、安倍首相は「二」を選んだ。
財務省は倉山兵団への戦術的敗北を、より大きな戦場を選び取り返したと言える。
さすが、見事な戦略ではある。
 しかし、日本国民に勝ったと言えるかな?
悪いが、こちらも3日の時点とは比較にならないほど戦略的優位を拡大しているのだ。
 実は「景気弾力条項撤廃」だけではなく、「半年の延期」をやってくれた方がよかったとすら思う。笑
この罠、意味が分かるかな?誰がわからせてやるか。笑
 日本を守ろうとする代議士の方々は大迷惑だが、その分、私のような選挙に関係のない人間は選挙後を見据えた動きをさせてもらう。
 あえて言おう。
 財務省よ。罠にかかったな!
 どちらが正しいか、わかるのはXか月後だ。
倉山氏が書いているように、今回の記者会見においては、安倍総理の「負け確定」ということです。しかしながら、倉山氏は財務省は国民に勝ったわけではなく、罠にかかったと語っています。私もそう思います。

さて、多くの新聞などは、こうした判定はしていないですし、大義がどうのと述べているものがほとんどで、これはこのブログ冒頭の記事のようなものであり、何ら事実を報道したことにはならず、雑音とみなして良いものです。

まずは、高橋洋一氏は以下のようにツイートしています。
このツイートの通りと思います、大義がどうのこうのというマスコミや識者は、最初から問題外です。高橋洋一氏は、今回の記者会見に関して述べているのは、これくらいです。まだまだ、この先どうなるかわからないし、まだ情報も集まってこないので、いろいろと明言することは避けているのだと思います。

田中秀臣氏は以下のようなツイートをしています。結構発言が多いです。
景気条項の件については、やはりこれは財務省側の勝利であると考えられているようです。その他、いくつかの特にリフレ派と言われる人々のツイートをみていましたが、記者会見の内容については、ほとんどツイートしていないか、事実を淡々とツイートしているというような内容でした。

これらのツイートなどをみていると、やはり今回は財務省の勝ちのようではありますが、実はまだ隠し球があるように思えます。

この隠し球については、以前にもこのブログに掲載したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
政府月例経済報告に異議あり!消費税増税の悪影響を認めたくない政府に騙される政治家とマスコミ―【私の論評】財務省はジレンマに陥っている。安部総理と、そのブレーンは肉を切らせて骨を断つ戦略を実行している(゚д゚)!これこそが隠し球かも?
「肉を切らせて骨を断つ」という戦法は日本で古から知られているものである

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、今回の増税見送り、解散総選挙は、大方の人にとってはサプライズなのでしょうが、この後にもいくつかサプライズがあるかもしれません。

この記事(今年7月時点)に私が掲載した、安倍政権の歩む二つの道を以下に再掲させていただきます。
 今後安倍政権には、二つの道があります。
一つ目の道としては、景気対策をすぐに推進することです。確かに、国民のことを考えると、景気を良くしたほうが良いに決まっています。しかし、今すぐそれを実行してしまえば、10月に増税派に格好の増税推進の大義名分を与えてしまうことにもなりかねません。
そうして、来年の10%増税が、なされてしまえば、来年は今年よりもさらに景気が落ち込み、日本はとんでもないことになります。失われた20年が、40年になってしまう可能性も高いです。
第ニの道としては、直近の経済が悪くても、来年の増税を今度こそ阻止し、その後に先程述べた、再配分的な所得税減税や、給付政策を実行して、経済を上向かせるという道です。
これにより、日本経済はデフレから脱却できる可能性が高まることになります。おそらく、これを実行すれば、市場関係者も好感して、最初は株価もあがり、かなり経済指標も良くなり、丁度安倍政権が誕生したときの、衆議院議員選挙の直前のときのように安倍政権にとって追い風となることでしょう。
私としては、安倍総理および、そのブレーンたちは、第二の道を選んでいるのだと思います。
まさに、安倍総理は、「肉を切らせて骨を断つ戦略」を実行しつつあるのだと思います。だからこそ、リフレの論客たちもこのことを理解して、現状では様子見をしているのだと思います。
さて、この一つ目の道は、安倍総理の解散・総選挙によって、国民の信を問うという形で完全に回避されました。これ自体も今から考えれば、隠し球だったと思います。安倍総理は、もうこの時点から、解散総選挙もありという考えだったと思います。

そうして、安倍政権は第二の道を選ぶことになると思います。現状では、8%増税の悪影響は顕著です。いくら10%増税を見送ったにしても、この悪影響からは免れません。とてつもない大きな危機から脱したというだけて、未だ危機は続いているわけです。

さて、財務省は、こうした動きに反発して、いずれ20%増税を確実なものにしようと考え画策します。財務省は、将来の20%増税を確かなものにするため、景気条項を排除させることに大成功しました。彼らにとっては、これを確かなものにするたには、現状の増税見送りなどは、さして重要なことではないのです。

財務省の高級官僚たちは、今は勝利の美酒に酔っているかもしれません。しかし、彼らは蟻の一穴という言葉を忘れています。

財務省の立場からすれば、本当は、何が何でも、今回は増税に踏み切らせるべきでした。それができなかったということは、後でボディブローのように、効いてくることになります。

今回の選挙で、議席を過半数以上(おそらく、これどころではない)とることができれば、まずは国民に安倍総理の信任は得られたということで、自民党増税派議員も、あからさまに安倍総理の行動を妨害できくなくなります。

そうなると、増税しても、それに対して経済対策をすぐに打つことができるようになります。そうして、それを実行することでしょう。そのうち、国民の大多数もこのやり方のおかしなことに気づくはずです。増税して、経済対策を打つくらいなら、最初から増税しないほうが良いということに気づくはずです。もう、半分気付きはじめています。

そうして、こうした世論を背景に、安倍総理はいずれ増税の意思決定を完全に財務省からとりあげ、独自で決められるようにすることになると思います。

そのときに、おそまきながら、日本政府は、日銀や、財務省の官僚主導による経済対策ではなく、政治主導によるまともな経済対策ができるようになります。これが、政治主導の本質です。民主党がやろうとしてた、政治主導などは単なるお遊びで、話にも何もなりませんでした。

私は、倉山氏が語っている罠とは、このことだと思っています。

いずれにせよ、今後安倍総理の繰り出すサプライズ、解散・総選挙にかぎらず、でてくるはずです。しかし、安倍総理がサプライズを次から次へと打ち出すには、圧倒的に国民から支持されている政権という立場がなければ、なかなかできるものではありません。私達が、世論を盛り上げていく必要があります。

それにしても、その動きは近いです。今のところ、私も様子見というとこですが、何か新たな動きが出てくれば、また、ブログに掲載させていただきます。

よろしくお願いします。

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