2016年10月6日木曜日

北の幹部2人、日本に亡命希望か 北京で脱北、正恩氏の健康状態知る人物か―【私の論評】正恩激太りの正体は、米国の報復に対する極度の恐れか?

北の幹部2人、日本に亡命希望か 北京で脱北、正恩氏の健康状態知る人物か

北の幹部の日本亡命によって金正恩氏の激太りの原因がつまびらかになる可能性も?
韓国紙、中央日報は5日、消息筋の話として、北京駐在の北朝鮮代表部の幹部2人が9月末に脱北し、家族とともに日本への亡命を求めたと報じた。日中両国が扱いを協議しているが、亡命先は確定していないとしている。一方、聯合ニュースは同日、幹部が韓国への亡命を望んでいるとの消息筋の話を伝えており、情報が錯綜(さくそう)している。

 菅義偉官房長官は5日午前の記者会見で、「報道にあるような日本への亡命を希望する北朝鮮人が日本大使館に接触したという事実はなく、日本への亡命を希望する北朝鮮人がいるとも承知していない」と否定した。

 中央日報によると、亡命を希望している一人は北京の代表部で代表の肩書を持つ保健省出身の幹部。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の健康管理に関連する薬品や医療設備の調達、導入を担当してきたという。もう一人は、北京代表部の幹部とした。

 記事では、保健省出身の幹部が9月28日に妻、娘とともに北朝鮮当局の管理下から逃れたとし、消息筋が「家族は日本大使館側と接触し、日本行きのための手続きを進めたと聞いている」と説明したと紹介した。

 亡命希望先が日本である理由については、幹部の親戚(しんせき)が日本にいるため、希望しているとした。記事では「北の外交の心臓部である北京で脱北・亡命事態が生じたという点で、平壌当局の衝撃は大きいはず」との韓国政府当局者の分析も伝えている。

【私の論評】正恩激太りの正体は、米国の報復に対する極度の恐れか?

北朝鮮のレストランで、金正恩氏(右)
核兵器やミサイル開発で国際社会に妥協を見せようとしない正恩氏ですが、ストレスや太りすぎによる健康不安を抱えていることは、韓国の情報機関も報告しています。朝鮮半島情勢を左右しかねない問題だけに、報道の真偽に注目が集まりそうです。

中央日報によれば、この件の保健省出身の幹部A氏は、烽火診療所、南山病院、赤十字病院を管轄する保健省1局の出身。北京の北朝鮮代表部に駐在していましたが、9月28日に日本大使館側と接触し、妻と娘を連れて日本へ亡命する意思を伝えたといいます。ただ、亡命先を巡っては現在、韓国と日本で「綱引き」を繰り広げている模様です。

韓国ではなく日本行きを望むのは、「日本に親戚がいるため」とされており、1950年代からの「帰国運動」で北朝鮮へ渡った、元在日朝鮮人の家系の出なのかもしれません。

A氏はこれまで、正恩氏の健康とかかわる医薬品や医療機器の調達を担当してきたといいます。ならば、正恩氏の健康状態についてもかなりの分析材料を得ている可能性が高いです。

韓国の国家情報院(国情院)は7月1日、韓国国会で開かれた情報委員会の懸案報告で正恩氏の体重が130キロと見られるとの分析を示しました。

国情院によれば、金正恩氏の体重は「2012年に初めて登場したときは90キロだったが、2014年には120キロに、そして最近では130キロまで増えたと推定される」といいます。

写真左は、2012年ころはじめてメディアに登場した頃の金正恩氏、右は最近の同氏
独裁者として贅を尽くしていることが肥満の原因とも思われますが、それにしても、あまりの変化です。

気になるのは、正恩氏が公開処刑の嵐を始めた時期と、急激に肥満度が高まる時期が一致する点です。

恐怖政治を激化させる中で、なんらかの猜疑心やストレス、プレッシャーにさい悩まされたことが極度の肥満をもたらした可能性は充分にあります。

国情院も、不眠症や身辺の脅威のために暴飲暴食に走り、成人病にかかっている可能性を指摘しています。トイレひとつとっても、普通の人と同じ生活ができない不便さも影響していると思われます。

ところかまわずタバコを吸う金正恩氏
火気厳禁の化学工場の現地指導でもタバコを吸うなど、一見やりたい放題の金正恩氏ですが、たとえ急に便意を催したとしても出先のトイレを気軽に使えません。その理由は大きく分けて三つあります。

一つ目は、神格化された存在である最高指導者が、用を足している姿を他人に見られてはならないからです。金正恩氏の乗る1号列車には、金正恩氏専用のトイレ専用車が連結されているくらいです。

トイレ専用車は「神聖不可侵」なスペースで「北朝鮮の実質的なナンバー2の黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏ですら、このトイレを使ったら銃殺されかねない」と、情報筋は明かしています。

二つ目は、警護上の理由です。

金正恩氏が外部のトイレを使うことは絶対にありえません。普段とは違い、朝のトイレに行かなかったり、移動中にトイレに行くとなると、警護体制に変更が生じるため、護衛員たちは緊張状態に置かれます。

また、金正恩氏は高速道路を使って移動する際にはベンツを使用するのですが、便意を催したとしても勝手に車から降りて、トイレ専用車に移動するわけにはいきません。そこで、車内で小便用の「おまる」を使用するといいます。

三つ目は、金正恩氏の健康上の理由です。

最高指導者の健康をチェックするには「便」の状態をチェックする必要があります。しかし、外部のトイレを使うとそれもできなくなります。

金正恩氏のトイレ問題を全面的に取り仕切っているのは、護衛総局です。国家機密中の機密であるだけに、護衛総局の要員にとって最もきわめて敏感な問題だといいます。さらには核・ミサイル問題とからみ、「米国から狙われている」との思いからくる緊張もあるでしょう。

北朝鮮のプール 北朝鮮のサイトより
米国は、韓国に金正恩斬首のための専門部隊を駐留させているくらいです。これについては、このブログにも掲載したことがあります。また、アメリカの最新鋭のステルス爆撃機をグァムに新たに配備したりしています。それどころか、アメリカはICBMの発射実験なども行い、北朝鮮を牽制しています。これについても、このブログに掲載したことがあります。

いつ、自分めがけて、斬首部隊がパラシュートで大量に降りてきたりするかもしれないとか、不意に爆撃されたりとか、CIAの陰謀により暗殺されるかもしれないという恐怖があるのは間違いありません。

しかしそもそも、それらは元々は、自分のまいた種です。正恩氏は自分の身の安全と健康、北東アジアの平和と安全がつながっていることを、早く理解した方が良いです。このままでは、米国が屈服するはるか以前に本格的に自分の健康を害してしまうことになります。

以上は、多くが憶測です。しかし、保健省出身の幹部A氏が日本に亡命するということが本決まりになり実際に日本に来た場合、このあたりの状況が明らかにされるに違いありません。

また、拉致被害者に関する新たな情報ももたらされるかもしれません。

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2016年10月5日水曜日

テロリスト扱い?軍人はこんなにヒラリーが嫌い 大詰めの大統領選、軍人票がトランプを押し上げる―【私の論評】トランプの暴言は軍人・保守派に対する強烈なメッセージだった(゚д゚)!

テロリスト扱い?軍人はこんなにヒラリーが嫌い 大詰めの大統領選、軍人票がトランプを押し上げる

米フロリダ州オーランドで開かれた選挙集会で演説する米大統領選民主党
候補のヒラリー・クリントン前国務長官(2016年9月21日撮影、資料写真)
大詰めの大統領選、軍人票がトランプを押し上げる

いよいよ大詰めを迎えている米大統領選挙。ここに来て、米軍内部の最新の世論調査結果が公開された。

その内容は驚くべきものだった。共和党のドナルド・トランプ候補、リバタリアン党のゲーリー・ジョンソン候補が米兵の熱烈な支持を受けており、民主党のヒラリー・クリントン候補は三番手だというのだ。おまけに支持率は2人の半分しかない。

この調査結果は何を意味しているのだろうか。

 将校たちの間ではジョンソン候補が第一位
ゲーリー・ジョンソン氏
 9月21日に公表された、米軍向け軍事紙「Military Times」とシラキュース大学による、2200人の米兵を対象とした共同調査によれば、トランプ候補に投票すると答えた割合は37.6%、ジョンソン候補36.5%、ヒラリー候補16.3%、緑の党のスタイン候補は1.2%、その他3.2%、いずれの候補にも投票しないという答は約5%だった。

将校団と下士官・兵隊では支持する候補が異なっている。幹部である将校たちの間では、なんとジョンソン候補が第1位の38.6%、クリントン候補が27.9%、トランプ候補は26%の支持率だった。他方、下士官・兵隊の間ではトランプ候補の人気が高い。トランプ候補が39.8%、ジョンソン候補が36.1%、クリントン候補が14.1%である。

9月21日に公表された、米軍向け軍事紙「Military Times」とシラキュース大学による、2200人の米兵を対象とした共同調査によれば、トランプ候補に投票すると答えた割合は37.6%、ジョンソン候補36.5%、ヒラリー候補16.3%、緑の党のスタイン候補は1.2%、その他3.2%、いずれの候補にも投票しないという答は約5%だった。

将校団と下士官・兵隊では支持する候補が異なっている。幹部である将校たちの間では、なんとジョンソン候補が第1位の38.6%、クリントン候補が27.9%、トランプ候補は26%の支持率だった。他方、下士官・兵隊の間ではトランプ候補の人気が高い。トランプ候補が39.8%、ジョンソン候補が36.1%、クリントン候補が14.1%である。

軍種ごとに見ると、陸軍はトランプ候補が40.6%、ジョンソン候補が35.6%、ヒラリー候補が14.2%と、トランプの人気とヒラリーの不人気が目立った。海兵隊はさらに強烈で、トランプ候補が50.4%、ジョンソン候補が26.7%、ヒラリー候補が10.2%となった。

一方、海軍と空軍はジョンソン候補を強く支持している。海軍はジョンソン候補が42.3%、トランプ候補が28.4%、ヒラリー候補が21.2%。空軍はジョンソン候補が37.8%、トランプ候補が34.8%、ヒラリー候補が18.3%となった。

 際立つヒラリー候補の不人気ぶり

これらの結果が示しているのは、ヒラリー候補の飛び抜けた不人気ぶりである。

ジョンソン候補は、内政面はともかく、外交や安全保障面は不得手である。実際、ニュース番組で、内戦中のシリア・アレッポの人道危機を尋ねられた際に、「アレッポって何?」と答えたことは記憶に新しい(注:アレッポは、現在シリア政府軍とロシア軍に空爆を受けているシリア北部の都市)。

また、この調査の少し前の7月、トランプ候補は、息子がイラクで米兵として戦死したムスリム夫妻を中傷した。トランプ候補の発言は英雄の遺族を批判するものとして、激しい世論の指弾を受けた。米軍将兵にとっても許しがたい事件だった。

それでもなお、多くの米軍人がヒラリーよりもジョンソンとトランプを支持しているのだ。いかにヒラリー候補の人気がないかがお分かりいただけよう。

 ヒラリーは米国の「内なる脅威」?

 実際、米軍人のヒラリーへのネガティブな評価を裏付ける騒動も発生している。

今年8月、フォート・レオナード・ウッド陸軍基地の部隊が教育用に作成したパワーポイント資料が大問題となった。作戦上の機密保護に関する教育資料として作られたものだが、米国の「内なる脅威」の1人してヒラリー候補の名前が挙がっていたのである。

他に脅威とされていたのは、米国の情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン、ウィキリークスに大量の機密文書を漏洩させたチェルシー・マニング元上等兵、テキサス州フォートフッド陸軍基地で13人を殺害したニダル・ハッサン、2013年にワシントン海軍工廠で12人を殺害したアーロン・アレクシス、不倫および情報漏えい事件を起こしたペトレイアス元陸軍大将などである。そうしたいわくつきの人物たちと同列で、メール問題を引き起こしたヒラリー候補はやり玉に挙げられていた。

司令部の「TRADOC」(米陸軍訓練協議コマンド:訓練や戦術を開発する組織)は「本件はあくまで現場の人間による逸脱であり、陸軍としての見解ではない」と弁解した。だが、1部隊が作った1枚のスライドについてわざわざTRADOCがコメントしたことに、本件の事態の大きさが表れている。

 接戦州は軍人票でトランプ候補が有利に?

そもそも、軍人の票は大統領選挙に対してどのような影響力をもっているのだろうか。

近年では、米軍人の選挙に与える影響はそれほど多くないという主張がある。現役および予備役兵が投票者集団の1%に過ぎないからだ。実際、過去の大統領選挙でも、2008年のマケイン候補、2012年のロムニー候補は、オバマ大統領よりも多くの軍人の支持を得ていたが敗北している。

しかし、大統領選の雌雄を決するのは接戦州である。要するに、民主党の金城湯池たるカリフォルニア州等や、共和党のそれであるテキサス州等ではなく、双方の支持が拮抗しているフロリダ州やペンシルベニア州等が戦略的に重要だということである。

この点で見た場合、「Military Times」が指摘するように、今回の大統領選挙に軍人票が与える影響は大きいと見なすべきである。フロリダ州やヴァージニア州のような選挙人の数が多い接戦州には、数多くの軍人が居住しており、有権者に占める割合が大きいからだ。

 そして、これらの州ではトランプ候補とヒラリー候補の激戦が続いている。その意味で、これまでに述べたような米軍内部のヒラリー嫌悪は注目しておく必要があるだろう。

 ヒラリー候補は決して「優勢」ではない

軍人に限らず、ヒラリー支持からジョンソン支持に転じる米国人は増えているようである。

コロラド州、ネバダ州、ヴァージニア州といった接戦州の最近の世論調査では、ヒラリー候補の票がジョンソン候補に吸収されてしまっている傾向が出ている。また、サンダースを支持していた若者票がジョンソン候補に流れているとの分析も出てきている。

特にニューメキシコ州の最新の調査では衝撃的な結果が出ている。9月27~29日の最新の世論調査では、ヒラリー候補35%、トランプ候補31%、ジョンソン候補24%、スタイン候補2%となっている。ジョンソン候補が24%も獲得していることも驚きだが、より注目すべきは、民主党の勢力が強いこの州でヒラリー候補とトランプ候補が競っていることである。

しかも、このジョンソン候補の高い支持率の背景には、この地域のヒスパニック系の票を集めていることがあるという。要するに、この州ではヒラリー候補の票がジョンソン候補に奪われた結果、接戦になっているのである。

そして最近になって民主党がジョンソン候補を標的としたネガティブキャンペーンを開始したことも、注目に値する。大統領選挙が佳境を迎えたこの時期は、少しでも共和党候補に対する攻撃に集中すべきであり、普段ならば歯牙にもかけないリバタリアン党候補を相手にする余裕はないはずだ。にもかかわらず、あえてジョンソン候補を攻撃するのは、それだけ票を奪われているという危機感があるのだろう。

実際、オバマ大統領も9月28日のラジオインタビューで、「ジョンソン候補やスタイン候補に投票することは、トランプ候補に投票することと同義である」と発言している。これは裏を返せば、オバマ大統領も、ヒラリー候補の票がジョンソン候補に喰われていると認識していることを物語っている発言だと言ってよい。

日本の報道では、ジョンソン候補はほとんど注意を払われず、ヒラリー候補の優勢ばかりが伝えられる。だが、以上で見てきたように、実際はヒラリー候補の選挙戦は巨象が薄氷を踏むが如きの危ういものなのである(ヒラリー候補には健康不安説もある)。

筆者は昨年末よりトランプ候補優勢を主張してきたが、やはり、最終的にトランプ候補が大統領になる可能性はまだ高いのではないだろうか。少なくとも、ヒラリー候補が「優勢」とは言い難い。今回の米軍人を対象とした世論調査を見て、その思いはさらに強くなった。

【私の論評】トランプの暴言は軍人・保守派に対する強烈なメッセージだった(゚д゚)!

さて上の記事を見ると、アメリカの軍人の多くが、クリントンを蛇蝎の如く嫌っていることがよくわかります。軍人の多くはクリントンを支持していないことは明らかです。

ただし、上の記事では、トランプ氏が大統領になる可能性が高いことの理由として、「州やヴァージニア州のような選挙人の数が多い接戦州には、数多くの軍人が居住しており、有権者に占める割合が大きいからだ」としています。しかし、私はそれだけではないと思っています。

なぜ私がそう思うのか、それには日本と異なるアメリカのメディアの特殊事情を知っていただく必要があります。

メディアというと、日本のそれは報道姿勢がどこか狂っていて、リベラルや左翼ばかりが幅を効かせています。ただし、それも最近は変わりつつあり、保守の意見も結構通るようになりつあります。

しかし、この状況は、アメリカでは大きく異なります。実はアメリカでは、リベラルや左翼のがマスコミや言論界のほとんどを牛耳っていて、保守が10とすると、リベラル+左派が 90という状況です。

これについては、以下の動画をご覧いただけせば、おわかりいただけるものと思います。



この動画を視聴していただければ、いかにアメリカのマスコミや、言論界がとんでもないことになっているのかお分かりになると思います。アメリカのマスコミの状況日本のマスコミや言論界よりも酷い状況にあり、かなり偏向していると見るべきです。

このアメリカの状況を動画でも語られていたよう、大手新聞のほとんどがリベラル・左派であり、日本にたとえると、産経新聞は存在せず、朝日や毎日新聞のような新聞ばかりと言っても過言ではない状況です。他に、保守系の新聞もあるにはあるのですが、どれも弱小なものです。

テレビもほとんどがそうです。大手テレビ放送局もほとんどすべてが、リベラル・左派であり、唯一の例外がFOXTVです。後の保守系テレビ局は弱小なところばかりです。

このようなことから、日本人の多くは、アメリカの半分しか見ていない状況に置かれているといっても過言ではないのです。

アメリカにも保守派も多くて、おそらく半分くらいは存在するのでしょうが、メディアの9割はリベラル・左派であるため、アメリカ国内の報道はほとんどがリベラル・左派の独壇場でそれらの見方が幅を効かせています。

そうして、日本のメディアもリベラル・左派が大勢を占めているのと、あまりの勉強不足で、たとえば、金融や経済に関しては、ほとんど日銀や財務省の発表を吟味をすることもなく、そのまま垂れ流すという体たらくであるため、アメリカで大勢を占めている内容しか日本では報道されないのです。

だから、大統領選挙戦の報道においても、多くの日本人はアメリカの現実の半分しか見ていないというが実体です。

このようなことから、日本ではクリントン優勢という報道がまかり通っているわけです。日本では、もう半分は埋没されてほとんど顧みられないわけです。

トランプ氏
しかし、ブログ冒頭の記事の内容は、日本ではこの埋没された部分であり、それが報道されている珍しい記事であるといえます。幹部である将校たちは、ジョンソン候補を支持、下士官・兵はトランプ支持が多いそうですが、人数的にみれば当然のことながら、下士官・兵のほうが圧倒的に多いです。

そうして、これがトランプ氏のあの暴言の謎を解く鍵になるかもしれません。アメリカの軍人は日本人の感覚からすると、かなり口が汚いです。特に新兵に対する訓練時の教育での教官は口が汚いです。

アメリカの軍人は口が汚い

たとえば、「フルメタルジャケット」という映画に出てくる、ハートマン先任軍曹の訓練兵に対する口のききかたは、以下のようなものです。

「口でクソたれる前と後に『サー』と言え! 分かったかウジ虫ども!」
Sir,Yes Sir!

「ふざけるな! 大だせ! タマ落としたか!」

Sir,Yes Sir
貴様らは厳しいを嫌う!だが憎めば、それだけ学ぶ!

は厳しいがだ!人種差別許さん黒豚ユダ、イタを、は見下さん!
すべて―
等に―     
―価値がない!
以下にフルメタルジャケットのハートマン先任軍曹の動画を掲載します。


この軍曹の口のききかたからすれば、トランプの暴言など霞んでしまうほどです。私は、トランプ氏は、軍人や保守層に訴えるため、あのような暴言をはいたのだと思います。これは、軟なリベラル・左派には出来ない芸当です。あれこそ、軍人に受ける言葉遣いなのです。

トランプ氏は数々のいわゆる暴言で、アメリカの軍人や保守層に以下のようなメッセージを発信したのです。
「てめぇら、アメリカがリベラル・左翼に乗っ取られてもいいのか、俺は厳しいが公平だ!人種差別は許さん!黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん!すべて―平等に―リベラル・左派に屈するようでは価値がない!」
無論、周到に計算した上で、場合によっては、ネガティブに受け取られないというリスクをおかしてまで、強力に訴えたのです。そうして、自分はリベラル・左派とは全く異なる保守派であることを強烈にアピールしたのです。

日本なら、自衛隊でもこのような口のききかたをすれば、パワハラと言われるかもしれません。しかし、このくらいのことで、打ちひしがれていては無論強い兵隊にはなれないのです。何しろ米兵はいつ、地獄のような最前線に立つかもわからないのです。

ブログ冒頭の記事にも掲載されているのですが、軍人の人数は確かにアメリカの人口のごく一部に過ぎません。しかし、軍人というとアメリカに限らず、職業柄、保守系や保守的な考えの人が多いです。だから、彼らの意見が、アメリカの保守層の考えを代表しているとみることもできます。

この半分の保守層がトランプ候補とジョンソン候補を推していると見ることができます。そうして、実際の選挙となれば、ジョンソン候補にはほとんど勝ち目がないので、この保守層多くがトランプ氏を支持することになると見込まれます。

そうなれば、トランプ氏が大統領になる可能性は、大きいです。まかり間違って、ヒラリーが大統領になったとしても、アメリカの半分を占める保守層を無視するわけにはいかないでしょう。

いずれにせよ、大統領選挙のみにかかわらず、私達は、アメリカのメデイアはかなり偏っているので、アメリカの半分しか報道しないことを理解し、もう半分のアメリカの現実も見るべきことを忘れてはならないです。

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2016年10月4日火曜日

【「慰安婦」日韓合意】「外交的欠礼だ」 謝罪の手紙拒否、韓国に当惑と反発広がる―【私の論評】韓国が金融緩和をするしないかにより、日韓関係は大きく変わる(゚д゚)!


衆院予算委員会で答弁する安倍晋三首相=3日午前、国会・衆院第1委員室

 安倍晋三首相が3日の衆院予算委員会で、慰安婦問題での日韓合意に関し、韓国の元慰安婦支援財団が求める首相による謝罪の手紙を出すことを「毛頭考えていない」と表明したことに対し、韓国で当惑と反発がくすぶっている。

 韓国外務省報道官は4日の定例記者会見で、安倍首相の発言に関する報道陣の質問に、「言及は自制する」と答えた。報道官は先月29日の会見で、「韓国政府としても、日本側が慰安婦被害者の方々の心の傷を癒す、感性に訴える追加的な措置をとるよう期待している」と述べ、謝罪の手紙を事実上求めていた。

 このため、4日の会見では、安倍首相の発言を「外交的欠礼だとの評価も(韓国では)ある」と韓国メディアの記者が指摘し、韓国政府の立場を何度もただした。報道官は、「(日韓の)合意の精神と趣旨を尊重し、被害者(である元慰安婦の女性)らの名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しが速やかになされるよう、日本側と協力していく」と繰り返し答えるにとどめた。

 韓国政府としては、国内で高まる反発に日本政府が理解を示すよう期待しているとみられる。韓国メディアからは、安倍首相の発言に「合意に基づく謝罪の真意を疑わざるを得ない」などと反発も出ている。

 日韓合意では、安倍首相の「心からのおわびと反省の気持ち」が表明されたが、謝罪の手紙を出すことは盛り込まれていない。韓国政府も「合意文にあるそれ以上、以下でもない」(韓国外務省報道官)との立場だ。

 日韓は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認済みだ。問題が蒸し返されるのを日本が懸念していることは韓国政府も分かっており、国内世論との板挟みとなっている。

【私の論評】韓国が金融緩和するしないかにより、日韓関係は大きく変わる(゚д゚)!


日韓合意をしたということで、ごういした直後から安倍総理は安倍首相は昨年12月29日、「今後、この問題について一切言わない。次の日韓首脳会談でももう触れない。そのことは電話会談でも言っておいた。昨日(28日の日韓合意)をもってすべて終わりだ。もう謝罪もしない」「ここまでやった上で約束を破ったら、韓国は国際社会の一員として終わる」と述べています。

日韓合意をするにおいては、日本側も韓国側にある程度譲歩したので、日本側でも日韓合意に反対する人々も結構いました。私自身も、当初は反対ではあったのですが、考えてみると、一度合意をしたという実績を作ったのですから、確かに韓国側が何をいってきたにしても、今後をそれにまともに対応する必要などありません。

ましてや、政府ではない組織が何かを言ってきたにしても、全く無視で良いです。これに対して、少しでも応えるようなことをすれば、またこの問題の蒸し返しになるだけです。

これは、国を個人にたとえて言うなら、日本が韓国に対して慰安婦問題に関して、言質をとったようなものです。今後、韓国の政府以外の組織が慰安婦問題に関して、何かを言ってくれば、すべからく無視で良いでしょう。まかり間違って韓国政府が何か言ってくるようなことがあれば、「その問題については日韓合意で片がついています」ということで良いです。


これは、政府から民間からあらゆる層でそのような対応で良いです。まともに取り合う必要など全くないです。韓国政府から言質をとったということで、これは最上の外交カードになります。

政府以外の団体が、「慰安婦問題」を蒸し返したり、慰安婦像をどこかに建てるということにでもなれば、すべて「日韓合意」で片付けることができます。それを無視して、韓国側が何かをすれば、韓国は国際社会の一員としては認められなくなります。

そうして、日本では他方では、通貨スワップという韓国に対するこれまた、強力な外交カードを得ました。日本政府は、韓国政府に対して通貨スワップをちらつかせながら、要求をつきつけることもできます。これを利用しない手はありません。


日本との「通貨交換(スワップ)協定」再開を狙う韓国で、締結額が500億ドル(約5兆円)規模の巨額になるとの観測が浮上している。経済指標が、国際通貨基金(IMF)の管理下に入った1990年代の危機当時の水準まで悪化しており、日本のマネーをあてにするしかない韓国当局の願望も透けてみえます。 

通貨スワップは、外貨不足に陥った際に、ドルなどを融通し合う仕組み。日韓の協定は2001年に締結されたのですが、昨年2月に反日姿勢を強めた韓国側が一方的に打ち切りました。

ところが韓国経済が失速すると韓国側からスワップ必要論が浮上、今年8月末の日韓財務対話で、韓国側が呼びかけて再開に向けて議論することで合意しました。

そんななか、韓国の経済メディア、ソウル経済は、韓国の企画財政部(財務省に相当)の関係者の話として、新たな日韓スワップが「500億ドル以上の大規模になる可能性が高い」と明らかにしたと報じました。

これが実現すれば、欧州の財政危機を背景に700億ドル(約7兆円)まで拡大した11年当時に匹敵する規模になります。

韓国が現在結んでいる最大の通貨スワップ協定は中国との540億ドル(約5兆4000億円)規模です。日本は中国を牽制(けんせい)するためには、同規模のスワップ協定を結ぶことになるというのです。

韓国は米軍の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備を決めたため中国と関係が非常に悪化しており、中国が韓流スターを排除する「禁韓令」など、韓国に対する制裁の姿勢を強めました。韓国のスワップ協定の約半分を中国の人民元が占めるという危うい状況も続いています。

巨額のスワップ締結論が先走って報じられる背景には、韓国経済の窮状があります。8月の青年失業率は9・3%と、IMF危機時の1999年以来の高水準です。長期失業者の割合や、格付けを引き下げられた企業の数や製造業の稼働率も90年代後半の水準に接近しています。

米国の年内追加利上げがあれば、韓国からの資金流出が現実味を帯びることになります。恥も外聞も捨てて日本に泣きつくしかないのが実情です。

民主党政権のとき日本は通貨スワップの枠組みを拡大したことがあるが、
当時も今も事実上日本から韓国への支援であることには変わりない。
それにしても、その後日韓通貨スワップが正式に再開したというニュースは未だ流れていません。現在折衝中なのでしょう。いずれ、発表されるとは思います。

しかし、このブログでも以前掲載したように、通貨スワップを再開したとしても、今のままの韓国であれば、韓国経済にとって一時しのぎに過ぎません。せっかく、通貨スワップをしても韓国は通貨危機に陥ることになります。

それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
韓国で日本との通貨スワップ再開論 協定終了のいきさつを棚上げ?―【私の論評】リフレ派皆無の韓国を通貨スワップで助けても全く無意味(゚д゚)!
日本はなぜ、20年近くにも及ぶほど正しい経済政策を取れなかったのでしょうか。簡単にいうと、それは財務省は積極財政をすべきときに緊縮財政を行い続け、日本銀行は、金融緩和をすべきときに、金融引き締めを行いつづけたからです。

日銀は、金融政策の間違いを、財務省は財政政策の間違いを頑として認めず、あろうことか、それを政治家やマスコミ、多くの経済学者までもがそれを許容してきたからです。
すでに2014年あたりから、韓国の経済指標は日本の失われた20年の時代と同じような兆候
同じようなことが今の韓国経済にもあてはまります。問題の本質は、総需要不足であり、構造改革は問題解決になり得ないどころか、解決を遅らせるだけで、「害」をもたらす政策以外の何ものでもありません。 
韓国銀行(日本の日銀にあたる韓国の中央銀行)は度重なる金利低下を実施しています。しかし、韓国銀行は金融緩和をせずにこれを実施しているので、為替レート市場では一貫してウォン高が進行しています。これが韓国の代表的な企業の国際競争力を著しく低下させていることには疑いの余地はありません。 
では、なぜ韓国は大胆な金融緩和政策を採用できないのでしょうか。田中秀臣氏などのリフレ派からみると、韓国政府や韓国銀行は、大胆な金融緩和を行えば、一挙にウォン安が加速し、ウォン建て資産の魅力は急減することを恐れているとみなしているようです。

そうなると、海外の投資家たちは韓国市場から投資を引き揚げ、株価なども大幅に下落してしまうことを恐れているというのです。しかし、私はそれだけが原因では無いと思います。

元々、韓国の個人消費は、GDPの50%程度しかなく、これはかなり低い水準です。日本などの先進国では、これが60%台であるのが普通です。米国では、これが70%にも及びます。日本は失われた20年でデフレ・スパイラルどん底に沈んでいるときですら、60%近くを維持していました。 
極端なグローバル化で歪な韓国経


どうしてそのような構造になったのかといえば、極端なグローバル化を進めた結果です。しかし、韓国政府は低い個人消費を伸ばそうという意識はないようです。だからこそ、金融緩和などには、無関心なのでしょう。 
しかし、現状をそのまま放置しておけば、過去の日本の失われた20年のように、韓国経済は長期停滞に埋没していくのは必定です。これを打開するためには、個人消費を伸ばす政策を採用すべきです。それを実行するには、金融緩和は不可欠です。

そうして、構造改革をするというのなら、何をさておいても、内需を拡大することを優先すべきです。そのためには、金融緩和、積極財政は欠かせません。
日本には、韓国が大胆な金融緩和を行えないのは、日韓スワップ協定などで潤沢なドル資金を韓国に融通する枠組みに欠けているからだ、と指摘する人もいます。確かに、その側面はあるかもしれません。しかし、これよりよりもはるかに深刻なのは、朴政権と韓国銀行に蔓延している間違った構造改革政策です。
さてこの記事では、通貨スワップなどしなくても、韓国が金融緩和をすれば、経済が良くなるはずと主張しました。

しかし、日韓通貨スワップなしに、韓国が異次元の包括的金融緩和を行えば、急激なウォン安に見舞われることになり、日本のように金融的にはるかに韓国よりも恵まれ、さらに内需が元々大きい日本では円安程度ですんだものが、韓国の場合は、ウォンの大暴落ということになり、海外から食料や原材料を輸入することができず、韓国経済が大打撃を被るということが考えられます。

そうなるとやはり通貨スワップを再開して、日本側が韓国に対して大量に円を融通すれば、韓国は海外から食料や原材料を融通することができ、韓国経済はソフトランディングができます。

しかし、もし韓国がかつての日本のようにデフレに見舞われても金融緩和をせず、積極財政をしないということにでもなれば、日本が大量の円を融通したにしても、一時しのぎにすぎず、結局韓国経済は崩壊して、第二の通貨危機を招くことになります。

その場合、韓国は先の通貨危機においてもそうであったように、また自国の通貨危機を日本のせいにすることになります。

これでは、日本としては、全く無意味というかかえってマイナスです。

そんなことを防ぐためにこそ、日本は韓国に対して金融緩和ならびに積極財政を迫るべきです。無論、このようなことは、内政干渉になるので、韓国側は受け入れないかもしれません。

しかし、そうなれば、日本としては日韓通貨スワップを再開せずに、韓国に自滅してもらえば良いのです。

なぜ、私がこのようなことを言うかといえば、せっかく通貨スワップで助けるというのなら、一時しのぎに終わらせず、韓国経済が金融緩和と積極財政で、韓国経済を立ち直らせるべきであると考えるからです。

慰安婦問題が複雑化した理由の一つは、過去の日本政府の不味さがあったのは確かです。しかし、より根本的な問題は、韓国の経済の低迷です。韓国では、経済が比較的良かった時代でも経済がいびつで、日本よりかなり格差がありましたが、韓国政府は過去においてもまともな経済対策をすることなく、国民の不満をそらすために、慰安婦問題で日本を悪者にしたててきたという点は否めません。

過去の韓国政府は、まともな経済対策もせず内需を蔑ろにし、グローバル化を強力に進め、慰安婦問題で日本を糾弾するということを繰り返してきました。その結果が、今日の韓国の窮状を招いてしまいました。

ヘル朝鮮を報道するテレビ番組の画像 ハングル:헬조선、漢字:헬朝鮮、発音:ヘルチョソン
最近は、さらなる韓国経済の低迷により、韓国の格差問題は日本などとは比較の対象にもならない程深刻です。若者の間では、このあまりの酷さに「ヘル(地獄)朝鮮」という言葉が流行っているくらいです。このような状況では、韓国内でも不満を持つ人達がさらに増え、左翼が暗躍しさらにその不満を煽り、とんでもない状況になりかねません。

しかし、経済がかなり良くなれば、あるいはその見込みがたてば戦後に池田内閣が所得倍増計画を実行した後には、日本から当時のソ連の影響が消え去ったという実例があるように、韓国内でも、左翼の暗躍は影を潜め、慰安婦問題も沈静化することでしょう。

もし、韓国がそもそも金融緩和を一切しないというのなら、日韓通貨スワップをもってしても、韓国経済は立ち直ることはできません。そうなると、第二の通貨危機を招き、日本は、通貨スワップで韓国を助けるにもかかわらず、韓国から恨まれることになります。

日本は、中途半端をすべきではありません。最初から通貨スワップ再開をしないか、再開をするなら、韓国政府に金融緩和と積極財政を実施することを確約してから再開するかのいずれかです。他の選択肢はありません。

01年10月12日の日銀の政策決定会合で、速水優日銀総裁は「皆が価格が下がるのはデフレで大変だと大騒ぎされるのはどうかと思う」と、いわゆる「よいデフレ論」を展開し、山口泰副総裁や三木利夫審議委員は同調していました。その後、日本人は「よいデフレ」などというものはあり得ないということを塗炭の苦しみを経て、嫌というほど思い知らされました。

韓国内では、過去の日本のように、現在「よいデフレ論」が大手新聞などで論じられています。いずれにせよ、韓国が金融緩和に踏み切るか切らないかにより、日韓関係は大きく変わるのは間違いありません。

日本では、単純に日韓通貨スワップ反対とする人も多いようですが、このような側面を見逃すべきではありません。

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2016年10月3日月曜日

蓮舫・野田氏が相手なら、次の選挙で「自民党300議席」は堅そうだ―【私の論評】岡田氏より超強力な安倍政権の助っ人蓮舫・野田氏で民進自滅(゚д゚)!

蓮舫・野田氏が相手なら、次の選挙で「自民党300議席」は堅そうだ 「早期解散」一番の根拠はコレ!?

  解散は、3年以内にやれば与党が勝つ

12月に予定されているプーチン大統領の来日や、TPP法案成立を受けて「1月解散に踏み切る」との観測が噴出している。公明党の山口代表が来年1月の通常国会冒頭での解散を拒まない姿勢を示したから、永田町では解散風が吹き始めた。

公明党が早期解散を容認しているのは、来年7月に実施される東京都議選と衆院選がかぶらないようにしたいためだと思われる。

また、先の国会で衆院選の1票の格差是正と議員定数10減のための改正公職選挙法が成立したことも大きい。小選挙区を「0増6減」、比例代表を「0増4減」することが決まり、衆院の定数は465議席となる。

ただし、区割りには時間を要するために、来年6月以降にならないと、新たな区割りでの衆院選はできないと見られている。現職の衆院議員はこれまでの区割りで選挙をしたいと望むだろう。

上記のことから、衆院選は5月までに行われる公算が強い。このスケジュールは、過去の衆院選を見てもわかる。衆院任期は4年であるが、戦後任期がまっとうされたのは、1976年12月の1回しかない。それ以外は任期満了の前に解散総選挙が行われている。

間接民主主義は、民意を反映するために、一定期間で選挙を行う必要がある。これまでの衆院の平均任期は2年9ヵ月なので、2年を過ぎれば、いつ総選挙があっても不思議ではない、ということだ。

中曽根政権以降を見ると、3年以上経過して解散した例が8回と多い。2年以上3年未満で解散したのは、1986年7月、2005年9月、2014年12月と3回しかない。ただし、この3回ともに与党の圧勝であった。3年以上経過するともろもろの問題が生じて追い込まれる感があり、与党に分が悪いことが多いようだ。


来年1月になると、前回の解散から2年超が経過することになるし、早めの解散のほうが与党は勝利しやすいということもあり、1月解散風が吹いているわけだ。

  実は蓮舫は脅威のハズだった…が

もちろん解散が行われるかどうかは、野党の力量にも依存する。その意味で、蓮舫氏が新代表となった民進党がどれだけの勢いを得られるかに注目が集まっていた。

女性党首ということで、相当な脅威になると与党は見ていたはずだ。ところが、民進党人事の過程で、その化けの皮がはがれてしまった。


自民党にしてみれば、蓮舫代表以下、「若手、イケメン、女性集団」で執行部を固められたら、政策の中身はともかくとして、見栄えの良さで人気を奪われ、苦しかったかも知れない。しかし、フタを開けてみれば幹事長に就任したのはなんと野田佳彦氏だった。

蓮舫代表にしてみれば、自分が参院議員なので、衆院対策で野田氏に頼るしかなかったのだろう。だが、野田幹事長は民主党政権転落の引き金を引いた張本人。さすがに民進党内でも異論が続出し、誰も幹部になりたがらなかった。

はっきり言えば、蓮舫民進党は党内人事につまずいてしまったわけだ。人事ができない政治家は、そもそもダメなのである。

人事だけではない。蓮舫民進党は、政策もダメダメである。

蓮舫代表は二重国籍問題での対応に不手際が目立った。そこに加えて、野田幹事長が緊縮財政、増税指向にこだわっている。財務省は民主党時代に野田氏を完全に「財務省色」に染めたために、今なお財務省の主張を繰り返しているのだ。

しかも、「シロアリ(税金にたかる省庁や業者)を退治することが消費増税の前提」といいながら、それを翻して民主党をぶっ壊した人だ。さらに先の国会代表質問で、安倍政権の二度にわたる消費増税延期を激しく批判した。まさに、民進党は出だしから満身創痍である。


  「消費税」を争点にすれば、いつでも解散できる

先の国会代表質問と、それに対する安倍総理の答弁をみれば、民進党が政策でまったくダメなのは、一目瞭然である。

蓮舫代表と野田幹事長の質問と、安倍総理の答えを並べると以下の通りだ。

「憲法草案を撤回しろ」→「撤回しない。民進党も草案をだせ」
「アベノミクスは失敗」→「民主党の時より、雇用がよく、税収もアップ」
「消費増税の先送りは矛盾・誤魔化しだ」→「国民の信を得た」
「政府の児童手当は効果が薄い」→「民主党の時は1円もあげられなかった」
「年金運用は失敗」→「短期的にみてはいけない。民主党の時よりもいい」

このように反論されることはこれまでに何回もあったが、民進党は学習効果がなく、なんとかのひとつ覚えのように同じ質問を繰り返し、同じように論破されている。

実は、こうしたこりない民進党の質問は、安倍政権の絶好のアシストになっている。

消費増税についての質問で「延期は国民の信を得た」と答弁していることは、もし民進党が消費増税を公約にする場合(野田幹事長である限りその可能性がきわめて高い)、消費増税を実施するか凍結するかを、総選挙の争点にできる。

1月冒頭解散が行われるかどうかは、北方領土について何らかの進展があるかどうかに依拠する部分が大きい。筆者もその予感があるが、交渉は相手があるので、どうなるかはわからない。

しかし、野田前首相が民進党の幹事長である限り、消費増税を争点にして安倍政権は総選挙を仕掛けることができる。つまり、北方領土に進展があれば1月解散の可能性があるが、進展がなくても、消費増税を争点にすれば総選挙ができる、ということだ。

  解散は、今年11月!?

もし、今解散したら、衆院選はどうなるだろうか。

過去の本コラムで使った「青木率(=内閣(不)支持率+政党支持率。この数字を使えば、大体の選挙の結果が予測できる。青木幹雄・元参議院が好んで用いたそうで、こう呼ばれている)」を使って、自民党の獲得議席を予想してみよう。

最近の世論調査では、青木率は100に近い。


これを過去の衆院選直前の青木率と自民獲得議席の関係を使うと、300議席に達しそうである。


こうした状況であるなら、安倍総理はいつもで解散したいと思っているはずだ。勝てるチャンスに勝っておくというのが勝負の鉄則である。

今国会は、9月26日に招集され、11月30日までの会期である。安倍総理の重要な外交日程は、11月19-20日にペルーで開催されるAPEC。そこプーチン大統領と会い、12月15日に山口で再び会談する。

すると、かなりアクロバティックな案ではあるが、11月21日(先勝)にペルーから帰国後に解散し、プーチン会談の前の12月11日(大安)に投開票という、羽生結弦の4回転ループのような超難儀の技も考えることができる。

これは、ちょうど2年前の2014年11月21日解散、12月14日投開票で衆院選が行われたときと同様な選挙日程である。

解散は総理の専権事項であるので、いつ行われるのかは誰にもわからない。政治の格言で、「みんなが解散というときには解散なし」というものがある。その意味では1月解散に限定して考えるより、上のような奇抜なスケジュールを含めて、いつでも解散があり得る状態になっている、と見るべきだろう。

蓮舫新代表率いる民進党が現体制を維持するなら、なおさらである。

【私の論評】岡田氏より超強力な安倍政権の助っ人蓮舫氏、野田氏で民進自滅(゚д゚)!

第3次安倍政権発足後初の大型国政選挙となる第24回参院選は7月10日、投開票されました。自民、公明両党は自民党総裁の安倍晋三首相が勝敗ラインとした改選過半数の61議席を超え、自民党の27年ぶりの単独過半数獲得しました。首相が目指す憲法改正に賛同する改憲勢力は、非改選と合わせ国会発議に必要な全議席の3分の2(162議席)以上の議席を得ることになりました。国政選挙に4回連続で勝利した安倍首相の党内での求心力はより高まり、戦後最長となる長期政権も見えてきました。

安倍首相は6月、麻生太郎財務相(75)らの反対を押し切り、来年4月に予定していた消費税10%への引き上げを19年10月まで2年半延期を決定。衆参同日選も視野にあったのですが参院選一本に絞り、アベノミクスを軸とする経済政策を最大の争点とし必勝を期していました。

それにしても、この選挙どうして、このような結果になったかといえば、以前このブログでも述べたように誰あろう、選挙当時の民進党の岡田代表自信が安倍政権の強力な助っ人になっていたからです。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
自民、27年ぶり単独過半数獲得も 参院選議席予測 浅川博忠氏 ―【私の論評】実は、岡田民進党代表こそ安倍政権の真の救世主だ(゚д゚)!
この記事は、本年6月23日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、岡田代表が安倍政権の強力な助っ人であることを示した部分を以下に引用します。
それにしても、なぜこのようなことになるかといえば、上の記事で浅川氏は、「浅川氏は「代替案を示さず、批判ばかりしているように見える民進党の低迷に助けられている。民主党政権時代の悪いイメージがまだ国民の間に残っており、国民は安倍政権に安心感を持っている」と語っています。 
その意味では、まさに民進党の岡田代表は自公政権の救世主であるともいえます。後世の歴史家は首相官邸が機密費を使って傀儡に仕立てたスパイであると疑うかもしれません。

安倍政権の本当の救世主岡田民進党代表
そもそも、岡田氏が自発的にスパイと同じ動きをしているのか、それとも誰かに操られているのかは、理解不能です。しかし、これだけは言えます。岡田克也氏ある限り、安倍自民党内閣は安泰であると! 
安倍内閣は三角大福の時代なら政権即死に至るような致命的な多くの政治的失敗を繰り返してきました。最近では、甘利経済産業大臣辞任は記憶に新しいです。しかし、その機会をことごとく岡田氏は生かせませんでした。 
また、アベノミクス批判でも、岡田代表は、8%増税の大失敗を徹底的に追求すれば良かったのに、反対のような、賛成のようなどっちつかずの批判の仕方で、この安倍政権最大の大失敗を全く生かすことができませんでした。また、金融政策は大成功しているにもかかわらず、それを批判し、多くの国民を惑わせました。
そうして、安倍自民党内閣は支持率を向上させ、「一強」状態です。にもかかわらず、護憲派野党結集のための新党で、引き続き不人気の岡田氏が参議院選挙まで代表を務めるというのですから、なんという僥倖なのでしょうか。 
もはや、安倍首相に「憲法改正をしてください」と言わんばかりです。よほどの変わり者でない限り、いくら現状の政策に不満があっても、岡田氏との二択ならば迷うことなく安倍自民党を選ぶことでしょう。 
そうして、岡田氏は自分で気づいているかどうかはわかりませんが、安倍首相は憲法改正をするなどとははっきり言っていないにもかかわらず、「安倍政権は憲法改正をする」と事あるごとに語っています。これは、まるで国民への「憲法改正」のスポークスマンです。 
国民の側としては、岡田スポークスマンが「安倍首相は憲法改正」をすると力強く語っているわけですから、安倍総理が参院選の後に憲法改正をしたしても多くの国民は、「そんなことは知らなかった」ということにはならないわけです。
この勢いだと、参議院選挙では、連立与党の自民党と公明党に加え、おおさか維新の会と日本のこころを足せば、三分の二の議席を超えるかもしれません。実際、上の予測表ではぎりぎりでそうなっています。 
岡田克也氏のおかげで、敗戦後初めて憲法改正が現実味を帯びてきたのです。何と素晴らしいことではありませんか。
私としては、このような岡田代表が代表を辞任するということで、残念至極なのですが、安倍晋三首相はどこまで、運が良いのでしょうか、あの蓮舫氏や野田氏が岡田氏をさらに上回るような、安倍政権の強力な助っ人に変身してしまったのですから驚きです。

その内容については、ブログ冒頭の記事に十分書かれているので、ここではあまり解説しませんが、ただ一つ加えるとすれば、蓮舫氏の二重国籍問題です。

蓮舫・野田で民進党は自滅(゚д゚)!
これについても、このブログでは何度か詳細を掲載してきたので、ここで詳しくは解説しません。

しかし、はっきり言うと、蓮舫氏は法律違反の疑いが濃厚です。法務省は先月15日、民進党の蓮舫新代表のいわゆる“二重国籍”問題に関連して、一般論として日本国籍取得後も台湾籍を残していた場合、二重国籍状態が生じ国籍法違反に当たる可能性があるとの見解を明らかにしました。 

法務省は15日、「日本の国籍事務では台湾出身者に中国の法律は適用していない」との見解を公表しました。これは中国の法律が「外国籍を取得した時点で自動的に中国籍を失う」と定めていることを念頭に、台湾出身の人が国籍を自動的に失うわけではないとの見解を示したものです。 

一方で、日本の国籍法は二重国籍の人についてどちらかの国籍選択義務に加え、日本国籍を選んだ場合の外国籍離脱努力義務を定めていて、日本国籍を取得した後も台湾籍を残していた場合、二重国籍状態が生じ、国籍法違反に当たる可能性があるといいます。 

これについて、日本維新の会の下地幹郎、足立康史両氏が3日の衆院予算委員会で質問に立ち、蓮舫代表のいわゆる「二重国籍」問題のほか、憲法改正、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などに後ろ向きな民進党を徹底的に糾弾しました。これからも、このような糾弾は続き、蓮舫氏や民進党にも相当なダメージになることは避けられません。


さて、安倍総理は3月の参院予算委で憲法改正について「私の在任中に成し遂げたい」と語っていましたが選挙戦ではほとんど言及せず、呼応するように閣僚らも憲法問題を封印しました。しかし、憲法改正は、安倍首相の祖父・岸信介元首相からの悲願です。

自民が衆参ともに過半数を占めたことで、公明に対して気配りは減軽され、政権に安定感が増しました。求心力がより高まる安倍首相に、もう一つの大きな野望も見えてきたようです。「超長期政権」の樹立です。首相の自民総裁任期は2018年9月まで。解散などがなければ、任期切れの3か月後に衆院選が行われます。現状、有力なポスト安倍は見当たらず、総裁任期を延長して、安倍首相の続投を推す声が高まりそうです。6月初旬、稲田朋美政調会長(57)も「安倍首相が(18年9月以降も)首相を続けている可能性は十分ある」と期待感を示していました。

「4年後には東京で再び五輪・パラリンピックが開催される。必ず成功させ、その先を見据えながら、新しい国造りへの挑戦を始めたい」。首相は1月4日の年頭記者会見で長期政権へ並々ならぬ意欲を示していました。党本部によると、現在の党則では総裁任期は1期3年2期までですが、党大会で議決されれば党則を変更することができます。

ただし1955年の結党以来、総裁任期を延長したのは、86年に「死んだふり解散」によるダブル選で圧勝した中曽根康弘元首相(1年延長)だけです。あの小泉純一郎元首相もやりませんでした。仮に安倍首相が任期を1年延長すると、戦後最長となる2798日の在任記録を持つ大叔父の佐藤栄作元首相を抜くことになります。さらに2年延長なら、20年東京五輪・パラリンピックを見届けることができます。

憲法改正と東京五輪・パラリンピック。2つの大目標を見据え、民進党蓮舫代表と野田幹事長という岡田氏よりもさらに強力な助っ人を得て、安倍首相は大総理への道を一歩踏み出したようです。

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臨時国会も安倍政権VS財務省 民進党の本音は消費増税優先か―【私の論評】元々財務省の使い捨て政党民進党にはその自覚がない(゚д゚)!




2016年10月2日日曜日

日銀への大きな不満?為替介入を嫌がる財務省、その判断は間違いです―【私の論評】増税キャンペーンして、為替介入をしない財務省は国民の敵(゚д゚)!

日銀への大きな不満?為替介入を嫌がる財務省、その判断は間違いです 突然「外債購入論」が浮上したワケ

ドクターZ

日銀の外債購入については正しく報道されることは滅多にない。写真はブログ管理人挿入。
以下、写真、図表ともにブログ管理人挿入。

  そもそも外債購入は可能か?

今年9月に入り、日銀の「外債購入論」が浮上してきている。日銀による現行の金融緩和政策の限界を打破する「秘策」と期待されているというが、実際にはどのような意味を持つのか。

日銀が外債を購入することによって、まず市場へ円資金を供給することができる。加えて、外債を買う過程で円を下落させる効果がある。前者で現行の日銀の金融緩和政策にプラスに働き、後者で財務省が行う「為替介入」と同様の効果もある。

この為替介入であるが、財務省の権限ということになっているため、外債購入は「法律的に難しい」といわれることがある。しかし、あまり報道されていないことであるが、外債購入自体は日銀法上では「可能」ではある。日銀法40条1項では〈日銀は自ら、または国の代理人として、外貨債権の売買ができる〉となっている。

さらに、同条2項では〈為替相場の安定を目的とするものについては国の代理人として行う〉とある。つまり、日銀法上、日銀は自ら外貨債権の売買を行うことは可能だが、為替介入目的の場合は国(財務省)の代理人として行う必要がある。

そもそも為替介入が十分な効果を生むには、財務省と日銀の連携が重要になってくるというのが経済界の「常識」。'04年の急激な円高危機の際に行われた大規模な為替介入が一例だ。

このとき、財務省はドル買いの原資となる証券を発行、日銀がそれを購入する形で進められた。これは、財務省の権限である為替介入と日銀の国債購入という「合わせ技」で、学問的には「非不胎化介入」と呼ばれるものだ。財務省は1日1兆円規模の円売りドル買いの為替介入、日銀は国債買いオペを行った結果、円安と金融緩和の効果をもたらした。

   「国益」を損ないかねない

では、いまなぜ外債購入論が急浮上しているかというと、現在の財務省が為替介入にまったくもって消極的であるからだ。

今年6月に英国のEU離脱が決定したとき、ドル円相場は1日で7円(約7%)もの変動があった。過去のデータを見ると、2週間で7%程度の為替変動が20年に一度の出来事。今回は1日で7%だったから、まさに未曽有の事態であった。それでも動かなかった財務省に、日銀は不満を持っている。

もちろん、為替介入にも注意すべき点はある。それは、円安のときも円高のときも、特定の為替水準の維持を意図してはいけないということだ。あくまで急激な変動に対してブレーキをかけるのが為替介入の目的である。

財務省が為替介入に消極的な理由はまったく不透明だが、下手するとこの姿勢は「国益」を損ないかねない。というのも、為替介入はヘッジファンドにとって絶好の「攻め時」となる。日本は小泉政権時代にその攻防をしのぎ切った経験があるが、今の財務省は当時のような対策が取れないように見える。これでは海外からなめられても仕方ない。

以上のことを踏まえると、外債購入論が浮上するのも当然のこと。ただし、今後も財務省が為替介入しないことに固執するなら、「財務省の為替介入権限を日銀に移管する」という過激な議論も出てくる。これには法改正が必要だが、その際には財務省の外為利権のはく奪を目論む政治家が躍起になるだろう。

『週刊現代』2016年10月8日号より

【私の論評】増税キャンペーンして、為替介入をしない財務省は国民の敵(゚д゚)!


日銀の外債購入については、高橋洋一氏が過去に興味深い記事をZAKZAKに掲載しています。

その記事のタイトルを以下に掲載します。
【日本の解き方】葬り去られた外債購入構想…日銀の実像 - 政治・社会 - ZAKZAK 
この記事は、2012年2月5日のものです。この記事残念ながら、すでにZAKZAKからは消去されています。ただし、私自身が別途その内容を保存しておきましたので、そこから下に引用させていただきます。
1月31日に公表された2001年下期の日銀金融政策委員会議事録に興味深いことが書かれている。中原伸之審議委員が同年11月16日、日銀による外債購入を提案していたことは知られていたが、それ以前の10月、須田美矢子審議委員、植田和男審議委員、中原真審議委員らが賛同していたことが明らかにされた。 
当時、アメリカの同時多発テロなどで景気が悪化していたので、竹中平蔵経済財政担当相は「一歩踏み込んだ金融政策に私たちは大変、期待している」と述べていた。 
そうした中、同年3月からの量的緩和について日銀は半信半疑だった。もともと00年8月のゼロ金利解除が間違いだったにもかかわらず、量的緩和に追い込まれたという被害者意識が日銀にあったのだ。 
議事録でも、01年10月12日の会合で、速水優日銀総裁は「皆が価格が下がるのはデフレで大変だと大騒ぎされるのはどうかと思う」と、いわゆる「よいデフレ論」を展開し、山口泰副総裁や三木利夫審議委員は同調していた。 
本来良いデフレなど存在しない。デフレは経済にとってすべからく悪である。
中原伸之審議委員は、(個別の商品などの価格である)「相対価格」と(いろいろな物やサービスの値段を平均した)「一般物価」の混同であると正論を示しているが、当時の日銀執行部はデフレの認識が甘かった。そのため、量的緩和政策を自己否定するかのように、量の拡大には消極的だった。 
そこで「緩和の姿勢をアピールすることが大事だ」ということで、外債購入が検討されたようだ。はじめに取り上げたのは、8月会合で財政規律を重要視して長期国債の買いオペに否定的な須田審議委員だ。外債なら問題ないからだ。 
しかし、日銀による外債購入構想は、あっけなく財務省の前に敗れた。為替の所管は財務省であるので、日銀による外債購入は財務省の権限を侵すという論理だ。 
11月16日の会合で表明された藤井秀人財務省総括審議官による日銀法の解釈に対して、政策委員会メンバーは無力だった。実際、日銀は外貨債を保有しているが、財務省の為替権限を侵さないように外貨で購入したものであって、円で購入したものはなかった。 
しかし、この構想は後の04年の大規模介入(いわゆる「テーラー・溝口介入」)につながっている。財務省が為券(政府短期証券)を発行して外債を購入し、ゼロ金利を維持するために日銀は財務省が発行した為券を購入する。 
その結果、外債購入という需給関係(一時効果)から、また日銀が為券購入によってマネタリーベースが拡大すること(永続効果)から、円安になる。実際に円安になったのは、介入の効果ではなく量的緩和の効果である。 
他に、注目すべきは、9月18日の会合で竹中大臣が中央銀行の独立性には「目標」と「手段」の2つあると問題提起したが、日銀に無視されたことだった。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
金融政策決定会合の議事録は、各金融政策決定会合から10年を経過した後に、半年分(1月から6月分、7月から12月分)ごとにとりまとめて、年2回公表しています。個々の公表予定日は、事前に公表しています。誰でも閲覧できます。

さて、為替介入というと、財務省管轄の特別会計である、外国為替資金特別会計を思い出します。これは、政府が行う外国為替等の売買に関し、その円滑かつ機動的な運営を確保するため外国為替資金が設置されるとともに、その運営に伴って生じる外国為替等の売買、運用収入等の状況を区分し経理するために設置された特別会計です。

外為資金として127.9兆円(2013.3末)。このうち外貨債権は103兆円(証券は99.5兆円、貸付3.5兆円)です。ちなみに、外貨証券の満期は1年以下1割、1年超5年以下6割、5年超3割)となっています。一方、外貨負債はありません。ということは、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスです。ざっくりみると、2014年度外為資金での円安による評価益は20兆円程度あったものと推定されます。

その他にも、多くの特別会計があります。その代表的なものを以下に掲載します。

まずは、国債整理基金特別会計。一般会計又は特別会計からの繰入資金等を財源として公債、借入金等の償還及び利子等の支払いを行う経理を一般会計と区分するために設置された特別会計です。定率繰入れ等の形で一般会計から資金を繰り入れ、普通国債等の将来の償還財源として備える「減債基金」の役割もあります。

この「減債基金」は、先進国で日本しかありません。他の先進国では昔はありましたが、公債市場が大きくなって整備されると償還財源はその都度借換債で調達するので、「減債基金」はなくなったのです。そういえば、民間会社で社債の「減債基金」もありません。将来の借金償還のために、さらに借金をする必要などないのです。

この観点から見ると、2015年度予算の11.6兆円の定率繰入は過大な計上であり、不要である。また、利払費が9.7兆円ある。しかし、この積算金利は1.8%と過大だ。おそらく2兆円くらいは過大計上だったでしょう。

次に労働保険特別会計。労災保険と雇用保険を経理するために設置された特別会計です。労災保険は、業務上の事由等による労働者の負傷等に対して迅速かつ公正な保護をするための保険給付及び被災労働者の社会復帰の促進等を図るための社会復帰促進等事業を行うもの、雇用保険は、労働者の失業中の生活の安定、再就職の促進等を図るための失業等給付及び雇用機会の増大等を図るための雇用保険二事業を行うものです。

2013年度の労働保険特別会計財務書類をみると、雇用勘定のバランスシートで7.1兆円の資産負債差額があります。いわゆる埋蔵金です。これは、高めの雇用保険料にもかかわらず失業保険給付が少ないために生じたものです。本来国民に還元すべきでした。

税収の2/3が特別会計という、この官僚のやりたい放題の構図。
このような国は他にない。この状況は今でも変わっていない。
かつて、「母屋(一般会計)ではおかゆで、離れ(特別会計)ではすきやき」といわれたことがあります。これは今でも妥当しています。

財務省は、これらの特別会計を積んでいるだけで、有効利用はしません。特にブログ冒頭の記事でも指摘されている、財務省の為替介入をして円安になったにしても、円安は資産を膨らませるだけであり、政府財政にとっては確実にプラスです。そうして、ざっくりみると、2014年度外為資金での円安による評価益は20兆円程度あったものと推定できます。

この頃は円安傾向ですから、為替介入など全く必要ではなく、本来ならここから、20兆円ほど他に融通したとしても良かったはずです。

2014年度といえば、8%増税をした年度です。財務省としては、8%増税をして景気が冷え込むことは、予め予想出来たはずですから、最初から増税しなようにするか、少なくともこの20兆円を景気対策に使うことはできたはずです。しかし、現実にはこれには程遠いものとなり、実際増税後景気は落ち込み未だに回復していません。

政府による為替介入を実行するためにこそ、外国為替資金特別会計が存在する

さらに、2016年に入ってから、円高気味の傾向が続いていますが、財務省は為替加入を行なうこともなく、そのため外国為替資金特別会計を使うこともなく溜め込んでいるだけです。

こんなことが許されて良いものなのでしょうか。許されて良いはずがありません。だからこそ、ブログ冒頭の記事のように、日銀による外債購入論が浮上するのも当然のことです。

そうして、今後も財務省が為替介入しないことに固執するなら、「財務省の為替介入権限を日銀に移管する」という過激な議論も出てくるのも当然のことです。そうして、その際に財務省の外為利権のはく奪を目論む政治家が躍起になるのは目に見えています。

まさに、増税キャンペーンは熱心にして、為替介入はしない財務省は国民の敵と言っても差し支えないと思います。

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2016年10月1日土曜日

【朝日新聞研究】戦後日本は本当に「平和国家」だったのか 単に戦争をしなかったというだけ―【私の論評】国民が拉致されたままの日本のどこが平和なのか?

【朝日新聞研究】戦後日本は本当に「平和国家」だったのか 単に戦争をしなかったというだけ

国立歴史民俗博物館の山田康弘教授
朝日新聞の8月30日朝刊のオピニオン欄「異議あり」に、「『縄文時代』はつくられた幻想に過ぎない」と題する、先史学者で国立歴史民俗博物館の山田康弘教授へのインタビュー記事が掲載されていた。

 縄文時代は戦後、稲作が開始された弥生時代と比較して、原始的な遅れた貧しい時代だと考えられてきた。「しかし70年代になると、縄文のイメージは大きく変わります。縄文は貧しいどころか、豊かな時代だったという見方が出てくるんです」と、山田氏はいう。

 その要因は、発掘調査が数多く行われたうえ、旧国鉄の旅行キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」にみられる日本再発見の時代風潮、芸術家の岡本太郎氏らの提示した「縄文ポピュリズム」などであった。

岡本太郎氏
 山田氏は「縄文のイメージは、考古学的な発見とそれぞれの時代の空気があいまってつくられてきたものです。見たい歴史を見た、いわば日本人の共同幻想だったのです」といい、以下のように結論付ける。

 「縄文に限らず、ある時代の一側面だけを切り取って、優劣をつけるのは、様々な意味で危険です。『縄文は遅れていた』『縄文はすばらしかった』と簡単に言ってしまうのではなく、多様な面をもっと知ってほしいですね」

 インタビューした記者も、次のように記している。

 「人は『見たい歴史』を見てしまうと山田さんは言う。縄文だけでなく、私たちは江戸時代や明治時代にも『見たい歴史』を見ているのかもしれない。『○○時代はこうだった』という思い込みの危うさを痛感させられた」

 日本の歴史の各時代の中で、私が最も幻想だと感じるのは、一番最近の「戦後日本」である。それは朝日新聞に代表される、昨年、安全保障法制に反対した人々によって、「平和国家」であると表現される。しかし、戦後日本は本当に平和国家であったのか。日米安保条約によって守られて、単に戦争をしなかったというだけでは、本当の平和国家ではないだろう。それこそ「見たい歴史」を見ているだけではないのか。

 ところで、戦後日本においては「東洋のスイス」になることが理想とされた。だが、その声はいつの間にか消えてしまった。スイスの真の姿が、次第に知られてきたからである。ヨーロッパの真ん中にありながら、スイスは永世中立国として、第1次世界大戦にも、第2次世界大戦にも巻き込まれなかった。

 同じ永世中立国でも、ベルギーとルクセンブルクは、第1次でも第2次でも、ドイツに侵略された。第2次大戦で中立を宣言したオランダやデンマーク、ノルウェーも、ドイツに侵略されて中立を守れなかった。

 スイスにそれができたのは、「武装独立」と「国民皆兵制」を国防戦略の基本に据えるなど、国民が強固な国防意識を待って軍備を整え、侵略者にその気を起こさせなかったからである。自力で平和を守れる国こそが真の平和国家である。

 酒井信彦(さかい・のぶひこ)


【私の論評】国民が拉致されたままの日本のどこが平和なのか?

確かに、戦後日本が「平和国家」であったなどということは幻想に過ぎません。しかし、それは酒井信彦氏のブログ冒頭の記事で語っておられるように、戦争をしなかつただけということだけではなく、北朝鮮による拉致被害が生じていてそれに日本が対処してこなかったことでも、とても平和であったとなどは口が裂けてもいえません。

「拉致国民大集会」でスピーチをする横田早紀江さん(中央)
「日本の平和を守ろうと、みんなが口にします。けれども、いまの日本が平和なのでしょうか。北朝鮮に拉致された被害者の日本国民が放置され、しかも生存をかけて戦っている以上、いまの日本は平和ではありません」

姉のるみ子さんを北朝鮮工作員に拉致された増元照明氏は、9月17日、東京都千代田区の砂防会館別館で開催された「拉致国民大集会」でこう語りました。

拉致国民大集会の正式の名称は「最終決戦は続いている!制裁と国際連携で全員救出実現を!国民大集会」です。「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)が主催したこの集会に、安倍晋三首相をはじめ各政党の代表や全国知事会の代表、地方議会の代表、一般支援者など合計1000人が集まりました。

集会では、横田早紀江さんも北朝鮮に拉致された娘への思いを切々と語りました。

「娘のめぐみが北朝鮮工作員に拉致されてから、もう39年です。この間、めぐみは日本からの救出を待ち続けてきたはずです。大韓航空機を爆破した金賢姫元工作員から北朝鮮でのめぐみの様子を聞いたとき、『めぐみさんはいつも君が代を大きな声で歌っていました』と教えてくれました」

早紀江さんはさらに熱を込めてこうも語りました。

「めぐみは日本という国家への思いを込めて、君が代を歌い続けたのでしょう。日本が、やがて必ず自分を北朝鮮から救出してくれる。究極には日本という国家を信じていたのだと思います。ひたすらめぐみは北朝鮮で待ち続けた。しかし日本はその期待に応えていません。日本人にとって国家とはなんなのでしょうか」

早紀江さんは日本という国家への期待を表明する一方で、日本が国家として自国民の救出に乗り出さないことへのいらだちを隠しません。

増元照明さんと横田早紀江さんが日本国のあり方を非難するのもきわめて当然のことです。国家にとって自国民を守ることは最も基本的な責務のはずです。

しかし、日本はこの最も基本的な責務を果たしていません。北朝鮮という隣の国家に日本国民が拉致され、長い年月、囚われとなっている事実が分かっていても、救い出すことができません。究極的な政治的・経済的制裁を加えて北朝鮮と対決し解放を迫ることはないし、まして他国にように軍事手段を使って自国民の生命を保護することは最初から禁じられています。

北朝鮮拉致問題の「救う会」「家族会」らが開いた国民大集会で、安倍晋三
首相と握手する横田滋さん。右は曽我ひとみさん=9日午後、東京都文京区

今回の大集会は新たな決議を採択して閉会した。その決議内容を以下に記しておきます。

(1)北朝鮮は、今すぐ、被害者全員を返せ。全被害者を返すための実質的協議に応ぜよ。

(2)政府は、核・ミサイル問題と切り離して被害者帰国を先行させるための実質的協議を最優先で実現せよ。

(3)立法府は、北朝鮮のようなテロ集団を支える活動をわが国内で行うことを阻止する新法を作れ。

「拉致問題を核・ミサイル問題と切り離して最優先」というのはこれまでと異なる表現でした。つまり「拉致問題の解決を先行してほしい」ということです。この点にも拉致被害者家族たちの切なる思いがあふれ出ていると言えます。


北朝鮮に拉致された可能性のあるのは、上のチャートにあるように、拉致被害者だけではありません。特定失踪者も、拉致の疑いがあります。

このような厳しい現実があるにもかかわらず、昨年、朝日新聞をはじめとする安全保障法制に反対した人々によって、「平和国家」と呼ばれる日本は、本当に平和であるといえるでしょうか。

私は、全く「平和国家」などとは言えないと思います。

拉致された日本人を救う手立てははるはずです。1997年アルバニアでは国民の間で流行していたネズミ講が破綻し、財産を失った国民が暴徒化するという事態に発展しました。

この動乱で、自国の在留住民の身辺を案じた国際社会による救出作戦(オペレーション・アルバ、オペレーション・リベレ、オペレーション・シルバーウェイク)が実行されました。しかし、紛争が長期化しアルバニア難民が発生すると、イタリア・ドイツ・アメリカを主導とした治安回復作戦(オペレーション・サンライズ)が開始されました。作戦によって暴動は鎮圧されて治安は回復したましたが、同年の総選挙でサリ・ベリシャ政権は退陣に追い込まれました。

1997年アルバニア動乱でアメリカ合衆国による自国民救出
このときドイツもアルバニア在住の自国民保護のため、国防軍を派遣。ドイツ人だけでなく、日本を含む他国民も救出しました。

このことによって国際社会はドイツが軍事的にも主体的に行動することを是認するようになりました。自国民保護をきっかけに、ドイツは国際政治の中で重要なプレーヤーになることになったのです。

しかし、日本の自衛隊は未だにそのようなことができない状況にあります。昨年朝日新聞をはじめとして、安全保障法制に反対した人々によって、「平和国家」とされた日本の現実はこのようなものなのです。このような現状は、何が何でも変更して、日本が真の「平和国家」になるべきであると思うのは、私だけでしょうか?

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