2017年6月23日金曜日

《zak女の雄叫び お題は「選」》身の毛もよだつ女性代議士の「絶叫暴言」「暴行障害」報道―【私の論評】コミュニケーションの原則を知らない組織人が増えた(゚д゚)!


日刊工業新聞創刊100周年記念で祝辞を述べる当時文部科学政務官・豊田真由子氏(2015/11/16)
「このハゲーーー!」「違うだろーーー!」

 自民党の豊田真由子前文部科学政務官(衆院埼玉4区)が自らを乗せた車を運転中だった元秘書を大声でののしり、顔などをげんこつで数回殴って打撲を負わせていたと、22日発売の週刊新潮が報じた。同日朝から複数のワイドショーがこれを取り上げた。同日午後、豊田氏は離党届を党本部に事務所を通じて提出。今後、大きな問題に発展しそうだ。

 新潮によると、元秘書は豊田氏から最初に暴力を振われた日に「鉄パイプで頭を砕いてやろうか」「お前の娘にも気概が及ぶ」と告げられた。身の危険を感じた元秘書は翌日、万が一に備えて車内のやりとりをICレコーダーで録音。新潮はこの音声の一部をインターネットの動画投稿サイトで公開している。

 ゾッとするのは、ミュージカル風の抑揚を付けた歌を交えて言い放ったというこの言葉だ。

 「お前の娘が通り魔に強姦されて死んだと。いや犯すつもりはなかったんです、合意の上です、殺すつもりはなかったんですと。腹立たない?」

 「(元秘書の)娘が顔がぐしゃぐしゃになって頭がぐしゃぐしゃ、脳みそ飛び出て車にひき殺されても、そんなつもりがなかったんですで済むと思ってんなら同じこと言い続けろ」

 国会議員が秘書に暴言を吐いたり暴力を振ったりしたという週刊誌報道は珍しくない。だが、これほど戦慄を覚えた記事は初めてだ。永田町ではもともと秘書への当たりが強いことで有名だったが、まさかここまでとは…。党内には「これはアウト。離党は免れないだろう」(ブログ管理人注:昨日離党済)との声もある。

 豊田氏は、自民党が政権を奪還した2012年の衆院選で政界入り。追い風が続いた14年の衆院選で2度目の当選を果たした「魔の2回生」の一人だ。自身も過去、天皇、皇后両陛下が都内で主催された春の園遊会に、本来は入場が認められない母親を連れて入場したと報じられたことがある。ピンクのスーツと巻き髪がトレードマークだ。

 同期の不祥事は枚挙にいとまがない。金銭トラブルで離党した武藤貴也氏(滋賀4区)▽妻の妊娠中の不倫が発覚し議員辞職した宮崎謙介氏(京都3区)▽「マスコミを懲らしめる」などの舌禍を繰り返している大西英男氏(東京16区)▽路上キスを撮られた中川郁子元農林水産政務官(北海道11区)と門博文氏(比例近畿ブロック)▽台風の被災地視察をめぐる言動で内閣府兼復興政務官を辞任した務台俊介氏(長野2区)▽不倫相手との“海外挙式”などを報じられ経済産業政務官を辞任した中川俊直氏(広島4区)…。

 なぜ「魔の2回生」にスキャンダルが続出するのか。その要因として度々指摘されるのは、1994年成立の改正政治改革関連法で衆院選に導入された小選挙区制の弊害だ。

 中選挙区時代を知る自民党重鎮は「小選挙区制は大嫌い。振り子のように振れるから育つ人も育たないし、追い風が続くと淘汰(とうた)されるべき人も淘汰されない」と苦い表情を浮かべる。

 新人議員の頃から悪評判が多かった豊田氏が2期目の当選を果たした際は、当時の党選対幹部も「『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』というが、なぜ彼女が勝てたのか分からない」と首をひねっていた。

 とはいえ、中選挙区制が見直されたのも「派閥間選挙となりがちで派閥政治の弊害を生む」などのデメリットが指摘されたからに他ならない。万能な選挙制度はない。一人一人の有権者が現行制度のもとで、最善の選択と信じる候補や政党に票を投じるしかないのだ。彼女を信じて票を投じた埼玉4区の有権者は今、何を思うのだろう。(蜂)


 永田町で政界を取材するアラサー記者。

【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。6月のお題は「選」 です。

【私の論評】コミュニケーションの原則を知らない組織人が増えた(゚д゚)!


ブログ冒頭の記事では、今回の事件の原因に関して「小選挙区の弊害」しか語られていません。無論これも重要な原因の1つになってはいるとは思います。しかし、私自身はそれだけではないと思います。

この背景には、昔から日本人が得意としてきた、コミュニケーションとか、それを体現してきた惻隠の情などという感情が日本人から消えつつあるという背景もあるのではないかと思います。

そもそも、惻隠の情という言葉も最近では死語に近くなってきています。これは、元々は孟子の言葉です。 孟子は、親の子を思う心を、「惻隠の情」とし、これを社会生活の全てに及ぼすように説きました。 相手の心情を深く理解する事を意味します。 これは、孟子の師である孔子の「仁」に通じ、日本人は弱者を守り、親孝行するなど全て「惻隠の情」から来ていました。

豊田真由子議員に少なくとも惻隠の情なるものがあれば、今回のこのような事件はなかったかもしれません。

それにしても、現在の日本ではこの「惻隠の情」が消え失せたのではないかと思われるような事が多々あります。たとえば、学校内でのイジメとか、そのイジメを無視する学校の先生をはじめとする大人。あるいは、ブラック企業におけるいわゆる悪質なパワハラなど、例をあげればきりがありません。

私自身は、元々は日本人は他国の人々に比較すれば、コミュニケーション能力に長けており、それが日本の様々な面で強みになってきたと思っていました。

しかし、最近の日本においては、「おもてなし」に代表されるように、コミュニケーションに長けている面もありながら、それが徹底的に欠けていると思わざるを得ないような、今回のような事件も散見されます。

私自身は、コミュニケーション能力の欠如を今のまま放置しておけば、日本の将来の産業競争力なども衰退するのではないかと危惧しています。日本では、コミュニケーション障害が目だようになってきましたが、一方米国では、随分前から職場で本当に必要なのは、情報ではなく、コミュニケーションであるということが主張され、コミュニケーションを重視する気風が高まっていました。

さて、コミュニケーションというと、日本では「ホウレンソウ」などということが言われていて、まめに「報告・連絡・相談」すれば、コミュニケーションが図られるなどと言われていますが、私はそうではないと思います。「ホウレンソウ」をかなり、まめに行っていてもコミュニケーションは成り立っていないことも十分あり得ると思っています。

経営学の大家ドラッカー氏
コミュニケーションについて経営学の大家ドラッカー氏は以下のように語っています。
上司の言動、些細な言葉じり、癖や習慣までが、計算され意図されたものと受け取られる。(『エッセンシャル・マネジメント』)
階層ごとに、ものの見方があって当然です。さもなければ仕事は行なわれません。しかし、階層ごとにものの見方があまりに違うため、同じことを話していても気づかないことや、逆に反対のことを話していながら、同じことを話していると錯覚することがあまりに多いのです。

コミュニケーションを成立させるのは受け手です。コミュニケーションの内容を発する者ではありません。彼は発するだけである。聞く者がいなければコミュニケーションは成立しないのです。

ドラッカーは「大工と話すときは、大工の言葉を使え」とのソクラテスの言葉を引用しています。コミュニケーションは受け手の言葉を使わなければ成立しないのです。受け手の経験に基づいた言葉を使わなければならないのです。

コミュニケーションを成立させるには受け手が何を見ているかを知らなければなりません。その原因を知らなければならないのです。

人の心は期待していないものを知覚することに抵抗し、期待しているものを知覚できないことに抵抗します。
受け手が期待しているものを知ることなく、コミュニケーションを行うことはできない。期待を知って初めてその期待を利用できる。あるいはまた、受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを認めさせるためのショックの必要を知る。(『エッセンシャル・マネジメント』)
まさに、今回の事件においては、豊田真由子議員は、彼女の政策秘書の期待しているものを知ることもなく、秘書に対して覚醒のためのショックを与えようと「罵詈雑言」を並べ立てたのでしょう。

相手の期待していることを理解しなければ、たいていは相談しようが、報告をしようが受けようが、相談しようが、何をしても結局何も伝わりません。豊田真由子議員は、こうしたことを何回も繰り返してきたにもかかわらず、結局秘書と話が通じないため、このようなことになってしまったのでしょう。

では、相手の期待を知るためにはどうすれば良いのでしょう。それには、ドラッカー氏も言っているようにまずは、「コミュニケーションとは、私からあなたへ、あなたから私へと一方的に伝わるのではない」ということを理解しなければならないです。このあたりを理解していない人が豊田議員をはじめ、最近ではあまりにも多すぎです。

コミュニケーションとはそうではなくて、「私達の中の一人から私達の中のもう一人」に伝わるものなのです。ですから、普段から「私達」という関係を築いておかなければ、コミュニケーションは成り立たないのです。

そうして、普段から「私達」といえる関係を構築して、コミュニケーションが成り立っていれば、たとえ何かの理由でかなり叱責したとしても、それが正当なものであれば、全く関係がこじれるなどということはありません。

このことを忘れている人が多いです。そうして、「私達」という関係を築くためには、ドラッカー氏は「目標管理」を第一にあげています。しかし、私はそれも重要だと思いますが、これはドラッカー氏も否定はしていませんが、「経験の共有」が一番だと思います。

親しい人などとは、コミニケーションが通じやすいことが多いものですが、これは知らず知らずのうちに、その親しい人と過去において「経験の共有」を積み重ねてきたからに他なりません。

一昔前の政治家、特に大物政治家といわれる人たちは、この「経験の共有」ということをここぞというときに徹底的に実行したようです。そのため、彼らはしばしば「人たらし」と呼ばれることがあります。

その典型例でもある田中角栄氏の例を以下にあげておきます。

田中角栄氏

《人たらし事例1》
田中派の一回生議員が美人局に遭い、解決のために多額の金銭が必要となってしまった。様々なツテに頼ったがどうしても100万円(現在の価値では3倍以上)足りない。 
選挙を終えたばかりで借金のあった議員は万策尽き、田中の事務所に電話をかけて借金の申し込みをした。 
事情を聞いた田中から「分かった。すぐに金を用意するから取りに来るように」と言われ、急いで事務所に向かうと、田中本人は急用で外出していた。
その議員は留守番の秘書から大きな書類袋を受け取り、その中身を確認すると300万円が入っており、同封されたメモには以下のように書かれていた。
「トラブルは必ず解決しろ。以下のように行動しなさい。 
 1. 100万円を使ってトラブルを解決すること。
 2. 100万円を使って世話になった人に飯を奢ること。
 3. 残りの100万円は万一のトラブルの為に取って置くように。
以上、これらの金は全て返却は無用である」
その議員は感涙し、後々まで田中への忠誠を守り通した。


《人たらし事例2》
大蔵大臣時代、1963年度の所得税法改正の審議の際、担当官僚の大蔵省主税局税制第一課長であった山下元利のミスで、誤った税率表を使っていた。

審議中であったために、訂正は不可能であったうえ、大事な箇所にも誤りがあり、その税率表を作成した役人たちは青くなっていた。

これをマスコミや他の党が黙っているはずがなかったが、山下がこのことを辞表を忍ばせ田中の元に訪れると、笑いながら「そんなことで辞表は出さなくていい」と改定表を持ち、堂々と「先日提出の表には間違いがございます」と何食わぬ顔で訂正した。野党もマスコミも沈黙したままであった。

もちろん田中が裏で手を回したのは言うまでもない。このように責任をかぶるということをためらわずし、想像もできないアイデアを出すため、田中を慕った官僚は非常に多い。
このような事例は昔の政治家や大物経営者には良くあったことです。田中角栄氏にも、他も様々な事例があります。それについては、以下のリンクからご覧下さい。
「田中角栄」人たらし伝説 
さて、 コミュニケーションを円滑にするためには、ドラッカーを語っているように「受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを認めさせるためのショックの必要を知る」事が重要です。

このショックといえば、私達にとって一番身近な例は「叱る」ということです。最近は、この「叱る」ということがうまくできない人が多くなったと思います。豊田真由子議員の今回の事例は、まさにこの「叱る」ということに大失敗したということです。

しかし、ショックを与えるのは、何も「叱る」ことばかりではありません。たとえば《人たらし事例2》の山下元利の事例もショックです。当時の山下氏からすれば、それこそ烈火のごとく叱責を受けるものと覚悟していたと思います。ところが、実際に田中角栄氏を訪れると、叱責どころか、笑顔で、その間違いの責任を田中角栄氏が負ったということは、大ショックだったと思います。このようなことを通じて、田中角栄氏と山下氏とのコミュニケーションはかなり深まったと思います。

ショックを与えるにしても、いつも「叱る」ってぱかりというのではなく、コミュニケーションの達人たちは、このように臨機応変に「ショック」を与えてきたのです。

そうして、あのプーチンにも人たらしの一面があることは、このブログでも最近掲載したばかりです。やはり、政治家には「人たらし」の一面がなければ、大成しないのでしょう。

政敵を次々と暗殺するプーチンにすら人たらしいの一面がある
それにしても、このようなコミュニケーションの達人になるにはどうしたら良いのでしょうか。それは、やはり相手に対してまずは愛情がなければできないことです。豊田真由子議員は、政策秘書といえば、自分の身内であるという意識に欠けていたと思います。

そうして、愛情だけでも、うまくはいかないこともあるものです。まずは、人の見方が幼稚であれば、たとえ相手に愛情を持っていたとしても、たいていはうまくはいきません。

さて、人の見方とはどういうことでしょうか。それは、結論からいえば、人の弱みではなく、強みに着目するということです。ドラッカー氏も人の強みを活かすという考え方が、組織には必要だと以下のように語っています。
人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは、費用であり、脅威である。
しかし人は、これらのことゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。
企業の管理職の中にも、部下などの弱みばかりに着目するひともいます。しかし、そういう人は最初はうまくいっているように見えても、長期的には必ず失敗しています。

普通の人は、高校を卒業したあたり年齢で、大体その人強みや弱みは特定されてしまいます。その後、いくら弱みを是正しようとしてもほとんどできるものではありません。しかし、強みに関しては、さらに大きく伸びる可能性を秘めています。

だからこそ、企業などの組織では、人の弱みを是正することばかりに時間を割いていては、全く資源の無駄遣いになるのです。弱みに関しては、他の人にやらせるようにするか、それが重大な問題になることを避ける程度に是正し、後は強みを伸ばすことに集中したほうがよほど建設的なのです。

豊田真由子氏は、ここでも勘違いしていたものと思います。政策秘書をあれだけ、「叱る」わけですから、やはり政策秘書側にも何らかの弱みがあったものと思います。であれば、その弱みは、他の人にやらせるか、それが不可能であれば、何か手順を1つ加えるなどして、システムを構築して、間違いが発生しないようにするなど手立てをして、政策秘書に関しては、強みの部分を多いに発揮できる体制を整えるべきだったのです。

以上述べたことは、組織の中の大原則です。これを無視する人は、組織人としては成功しません。豊田真由子氏はこの原則をことごとく、違えたままで来て、ここに来て大失敗したということです。

豊田真由子氏は、自民党の議員として自民党という組織に属していますし、国会という組織の一員です。さらには、小さいながらも事務所という組織を構えた組織人です。組織人であれば、やはり上記のようなコミュニケーションの原則は、かつての大物政治家のようにうまくはできなくても、知ってはおくべきだったでしょう。これ身につけてさえいれば、最低今回のような事態は避けられたと思います。

与党議員も、豊田氏のようにコミュニケーション不足で辞任などに追い込まれる議員が増えているようですが、野党議員もそれこそ、有権者とのコミュニケーションに失敗し、支持率は低迷したままです。

それにしても、今の日本、政治家であれば当然のことながら、これらの原則をわきまえているべきなのに、そうではない豊田真由子という人物が出てきたということは恐るべき事実です。政治家も官僚もそれに企業人ですらこれらの原則への意識が希薄になっているのではないかと思います。

だとしたら、今後の日本が心配です。

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2017年6月22日木曜日

【守旧派官僚の闇】「加計問題は何が悪いか分からない」外務省や宮内庁もたがが外れていないか 八幡和郎―【私の論評】加計問題を日本の政治主導の夜明けにつなげよ(゚д゚)!

【守旧派官僚の闇】「加計問題は何が悪いか分からない」外務省や宮内庁もたがが外れていないか 八幡和郎

 官僚は不法な政治介入に屈すべきでないし、シンクタンク的に多様な選択肢を発信することも期待されている。しかし、国家組織として、たがが外れていると思うことは、文部科学省に限らずある。(夕刊フジ)

 外務省の韓国・釜山総領事が慰安婦像設置に抗議して本国召還されたことを、酒の席で批判して「事実上の更迭か」といわれている。


 そんな発言が外部にもれては、相手国に断固たる態度を示す効果が台無しになる。酒で酔っていて発言を覚えていないような人物は、あのポストには不適任だ。外務省には専門語学ごとのグループがあって、相手国に嫌われたら仕事にならないとはいえ情けない。

 天皇陛下のご譲位とか、秋篠宮家の長女、眞子さまがご婚約の準備を進められているといった重大ニュースが、NHKの特定記者のスクープという形で連続して流出し、宮内庁が追認する事態が続いている。立憲君主制の根本に関わる不祥事だと思う。

天皇陛下ご譲位、眞子さまご婚約準備のスクープを行った、NHK社会部の橋口和人・宮内庁キャップ
 私は、欧州の王室事情について『世界の王室うんちく大全』(平凡社新書)を出版しているが、欧州で同様のスクープが続けば、国政を揺るがすスキャンダルとして非難ごうごうとなるだろう。

 最後に「森友・加計学園」問題に戻る。霞が関OBの間で、ほぼ衆目一致しているのは、「森友問題はプチ・スキャンダルだが、加計問題は何が悪いか分からない」ということだ。

 ただし、私は国民が「怪しい」と思ったり、強い官邸に官僚の不満が鬱積する気持ちは理解できる。疑惑の原因になっている、日本的システムの問題は大改革すべきだと思う。

 まず、官僚の人事について、各省庁の仲間内順送り人事から、政治の意向も加味していこうとしたことは正しい。ただ、政治の意向も反映させる一方、公務員の専門職としての中立性と活力を保つためには、大臣補佐官など政治的ポストと、一般ポストの区別をすべきだ。

 また、時の政権と違う考えの官僚は重要ポストから外れるが、身分や待遇は失わないようなシステムが望ましい。欧州諸国ではそうなっている。

 行政には、政治的判断が入って構わないと思う。だが、日本では、基準や分析を政治的結論に合わせる悪弊がある。この文化を、客観的な分析をきちんと示したうえで、「政治判断としてこうした」と胸を張っていい。あとは、国民や住民の選挙や言論を通じての評価に立ち向かうという、透明性の高い文化に変えるべきだと思う。

 そうしたことが、政治主導を適切に実現していくために不可欠なのだ。

 ■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に『世界と日本がわかる 最強の世界史』(扶桑社新書)、『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)など多数。

【私の論評】加計問題を日本の政治主導の夜明けにつなげよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、八幡氏が主張するように、官僚は不法な政治介入に屈すべきでないし、シンクタンク的に多様な選択肢を発信することも期待されています。ところが、各省庁は、国家組織として、たがが外れているとしか考えられないような行動をとることがしばしばあります。

そうして、それは八幡氏が主張するように、文科省だけではなく、外務省や宮内庁もたがが外れていますが、その最たるものは財務省です。

財務省は、従来から消費税増税をすべきとの主張を繰り返し、大増税キャンペーンを展開していました。政治家や識者に対しては、ご説明資料を持参した官僚が、増税すべきであるというレクチャーを徹底しました。新聞各社等には軽減税率をちらつかせ、増税キャンペーンに同調させるという荒業までやってのけました。

そうして2013年には、「8%増税による日本経済への影響は軽微」というキャチフレーズで、マスコミ、識者、野党政治家はもとより自民党政治家の大半も、増税推進派に取り込み、四面楚歌に追い込まれた安倍総理はやむなく「8%増税」を決断するに至りました。

ところが、実際に2013年に増税をしてみると、個人賞はかつてないほどのL字型の落ち込みをみせて、GDPはマイナスになり、8%増税による日本経済への影響は甚大なものとなりました。

2014年11月頃には消費税率の10%への引き上げをめぐって、永田町が大きく揺れていました。この問題はさすがに、8%増税の大失敗に懲りた安倍首相により、再増税の延期と衆議院の解散総選挙という形で決着をみました。

そうして、増税は延期されたのですが、その後も現在に至るまで、個人消費は伸びず、デフレに戻りかねないような状況です。今や8%増税は大失敗であり、その悪影響は甚大であることが誰の目に明らかになりました。

これについては、以前でもこのブログに掲載したことがあります。詳細を知りたい方は、以下のリンクをご覧になって下さい。
なぜ日本の「実質GDP成長率」は韓国以下のままなのか?―【私の論評】緊縮会計をやめて消費税も5%に戻せ(゚д゚)!

予算や税の取り扱いは時として内閣の命運を左右する大きな問題となります。あらためて言うまでもなく、かつての大蔵省は衆目の一致する「最強官庁」でした。しかし、バブル崩壊と政治改革の流れの中で、大蔵省は1990年代に大きな危機に直面することとなりました。

大蔵省はなぜ追いつめられたのでしょうか。その理由の一端は、不良債権問題への対応の過程で厳しい批判にさらされたことにあります。住専(住宅金融専門会社)処理のための公的資金の投入は、世論の強い反発を招きました。

東京協和信用組合と安全信用組合の二信組事件に関連して発覚した大蔵省幹部の過剰接待問題は、「最強官庁」の権威と信用を大きく傷つけました。もう一つの理由は、永田町に行革を旗印とするさまざまな「改革派」が出現し、大蔵省改革が大きな政治課題となったことです。こうした中で銀行局と証券局の所掌事務の大半を総理府(現内閣府)に移管する「財金分離」が行われ、大蔵省は「解体」されました。

このような動きの底流には、1955年体制が崩壊していく過程で政と官の役割の再規定が行われ、官邸主導型の政治システムへの志向が強まったという政治環境の変化があります。

この流れに乗り、経済財政諮問会議を舞台装置として官邸主導の政策運営を体現したのが小泉純一郎内閣ですが、財務省はここで従来のビジネスモデルからの転換を迫られることになりました。

旧大蔵省の表札

それは、非公式の場での調整をもとに落とし所を探り、利害関係者への根回しを通じて政策形成を図る旧大蔵省の流儀から、公開の場で「財務省案」を提示して、世論の支持をバックに政策を実現させていく新たな手法への移行です。しかし、「大蔵官僚から財務官僚への試行錯誤と意識改革」は「官邸主導の波に煽られて、曲折をたどらざるをえなかった」。

民主党政権の誕生後、内閣や与党との間合いの取り方に苦慮していた財務省は、「財務省の組織内候補」と揶揄された野田佳彦首相のもとで政権との一体感を取り戻し、消費増税への具体的な道筋をつけることに成功しました。

しかし、財務省から距離を置く安倍晋三首相の登場で、再び試行錯誤を迫られています。2017年4月に予定されている再増税も、現時点では延期が確定しています。14年春からの8%増税では、財務省に負けた安倍総理ですが、現状では、選挙という手段に頼らず10%増税の延期を決めた安倍総理が勝利しているようです。官邸と「最強官庁」の関係は、この先どのように変化していくのでしょう。

こうした文脈の中で、いわゆる加計問題が発生したのです。加計問題では、簡単に言ってしまえば、天下り斡旋で責任をとって辞任した前川前文科次官が、憤懣やる方なく官邸に対して新聞社などのマスコミの力を借り反旗を翻しあわよくば、倒閣につなげようとしたことが発端でした。

前川前文科次官
これに民進党などの野党がのって、いわゆる怪文書(発信者も、発信番号もない、何の目的で発信されたかもわからない文書)をもとに、政府を追求しましたが、当然のことながら、民間会社などでもこのような文書で代表取締役を辞任に追い込むことは最初から全く不可能なことがわかりきっているのと同じように、もともと倒閣など全く無理筋というものです。

財務省をはじめとして、各省庁の官僚らは、これらの一連の動きを注意深く見守っていることでしょう。特に、天下り斡旋問題で、前川前文科次官が、責任をとって辞任せざるを得なくなったことには、多くの官僚が大パニックを起こしたことでしょう。これは、安倍政権による官僚に対する最初の大打撃でした。

その後の加計問題に関しては、実はのほとんどの官僚がいわゆる怪文書に関して、それなりに知識があるし、そもそも一般に公開されている戦略特区ワーキング・グループの議事録を読めば、文科省は課長級の会合でも官邸側に理屈や論理的に完膚無きまでに負けており、いわゆる怪文書の日付の頃には到底「総理のご意向」を発する必要性など全くなかったことを理解していることでしょう。

特に財務省の官僚などは、愚かなマスコミとは違い、WGの議事録を読んだ上で、文科官僚の無様な敗北に至った過程を理解し、やはり最低の官庁文科省であると優越感に浸っていたに違いありません。それほど、文科省の戦略特区WGでの敗北は無様なものです。とはいつつ、文科省官僚も官僚としては身内なので、財務省官僚としては複雑な心境だったに違いありません。

さて、この国家組織として、たがが外れた文科省ですが、加計問題が一旦沈静化したら、政府としては、やはり徹底的に追求すべきでしょう。この問題を放置しておけば、他の象徴の官僚たちにしめしがつきません。特に財務省はそうです。

これを機会に文科省の徹底的な組織改革をはかるべきでしょう。どの程度にするかは、政府の裁量のまかせるものとして、その過程で、国民にも十分説明を行い、国民の支持を受けた形で、実施すべきでしょう。

霞が関の省庁における組織的な天下りは、野党やメディアにとって「絶対悪」だったはずです。特に、今年1月に発覚した文科省の組織的天下り斡旋(あっせん)問題は、人事課や事務次官にまで再就職先の情報が共有される、非常に悪質な国家公務員法違反でした。

この事実を再度掘り下げ、このような体質が、本当は存在すらしなかった加計問題のような問題を生み出す温床になったことを多くの国民に理解させた上で、文科省の大外科手術に挑むべきです。

そうして、文科省の外科手術に成功したら、他の官庁の外科手術にも挑戦すべきです。特に、財務省に関しては、以前このブログにも掲載したような外科手術を実行すべきです。


財務省の狙いは10%増税でととまるものではありません。最終的には消費税20%を目標としていることでしょう。現在は安倍総理に負けたようにおとなしくはしていますが、あわよくば「アベノミクス失敗」の世論などを盛り上げ、安倍政権を死滅させ、次の政権で10%増税で、またかつて、民主党政権を飼い殺しにしたように、飼い殺しをし、そして次の政権も飼い殺しにし、20%増税を成就するまで飼い殺しを続けるつもりでしょう。

まるで、革命集団のような財務省を改革にするには、生易しいことでは不可能です。大蔵省を財務省と日銀とに分割したように、さらに財務省を分割するべきという意見もありますが、それでは手ぬるいです。

財務省は、単純に分割すると、10年くらいかけて他省庁に植民地を拡大する手段に使います。実際、白川元日銀総裁以前の日銀は、財務省の植民地のような有様でした。そうして、日銀は金融引締めを継続し、財務省は増税などの緊縮財政を継続し、日本経済をデフレ・スパイラルのどん底に沈めました。

このようなことを防ぐ意味合いで、まずは公的金融部門の廃止を実施し、つぎに財務官僚が目下においている他官庁の下部組織に財務省を分割の上に編入すべきです。こうすることにより、まで革命政治集団であるかのような財務省は、本来あるべき姿の政府の下部組織という本来の姿になると思います。



このように、財務省解体に成功したときに、はじめて日本の「政治主導」の夜明けが始まることでしょう。かつての民主党は政権の座にあったときに、「政治主導」を標榜して、「事業仕分け」などを実施しましたが、結局何もできませんでした。

それどころか、実はあの「事業仕分け」は財務省主導でした。民主党の政治家らが、国民の顔色を伺い、「財務省が作った資料を見ながら」仕わけ作業をしていたテレビを見たときには、私はテレビのやらせを番組を見ているようで苦笑してしまいました。

しかも、民主党は先にものべたように、「財務省の組織内候補」と揶揄された野田佳彦首相のもとで政権との一体感を取り戻し、消費増税への具体的な道筋をつけることに成功しました。

そうして、この体質は、今の民進党にも受け継がれています。民進党の新代表選のときに、候補者であった、蓮舫氏、前川氏、玉木氏の三人は、三人とも増税を強調していました。これでは、「政治主導」どころか、「財務省主導」です。ですから、私は、民進党を以前から「財務省の使い捨て政党」と揶揄しているのです。

そうして、これは当たり前のど真ん中の話なのです。国民の信託を受けた政治家による政府が、政治の中心になるべきであり、政治家が日本国の方針を定めるのが本筋であって、官僚は、それに直接関わってはいけないのです。

官僚が日本国の方針を定めることに関わるとしたら、それはあくまでシンクタンク的に多様な偏りのない選択肢を発信し政治家を補佐することです。これは、許されることどころか、奨励されるくらいですが、官僚は絶対に日本国の方針を定めることに直接関わってはいけないのです。

この当たり前のど真ん中を当たり前にやろうということが、「真の政治主導」なのです。

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2017年6月21日水曜日

メディアのトランプ叩きが過熱しすぎて危険水域に―【私の論評】今こそ日米双方の保守派の連携が重要(゚д゚)!

メディアのトランプ叩きが過熱しすぎて危険水域に

大物政治評論家が「米国の国力が衰える」と警告

2017年6月14i日 トランプ大統領 写真はブログ管理人掲載 以下同じ
 米国の大手メディアのトランプ政権に対する非難キャンペーンは激しさを増す一方である。

 反トランプ陣営の記者やコラムニストから、テレビキャスター、芸能人までもが放送禁止まがいの罵詈雑言をトランプ氏に浴びせる。トランプ氏の生首のイメージをネット上でばらまく。トランプ暗殺を想起させる舞台劇を上演する──。

コメディアンのキャッシー・グリフィンがネット上に晒した写真
 こんな動向に対して、保守系の大物の政治評論家がこの状態はきわめて危険だとして、メディア界に沈静を求める警告を発した。

   テレビ番組も舞台劇もトランプ攻撃

 この警告は大手紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の女性政治コラムニスト、ペギー・ヌーナン氏により6月15日の同紙に発表された。

女性政治コラムニスト、ペギー・ヌーナン氏
「誰もが激怒している、それは危険だ」(Rage Is All the Rage, and It’s Dangerous)というタイトルのこのコラムは、ワシントンを主要舞台とする米国の分裂と対立が近年に例のないほど険悪になったとして、「トランプ支持層とトランプ憎悪層の対決」に焦点を合わせていた。

 ヌーナン氏は1980年代にレーガン大統領のスピーチライターを務めた政治学者で、長年、米国メディア界で活躍してきた大物政治評論家でもある。基本的な政治傾向は保守だが穏健派で、トランプ政権に対しても頻繁に批判を述べてきた。

ヌーナン氏は本コラムで、最近の以下のような出来事は大衆扇動的で明らかに一線を超えていると指摘する。

・CNNテレビの娯楽番組に定期出演する女性コメディアン、キャシー・グリフィン氏は、5月30日、トランプ大統領の生首をぶら下げる映像をツイッターなどで流した。

・6月中旬、ニューヨーク市で上演中の舞台劇「ジュリアス・シーザー」では、暗殺されるシーザーをトランプ氏に似せる演出があった。

ニューヨーク市で上演中の舞台劇「ジュリアス・シーザー」
 ヌーナン氏は反トランプの憎悪をこうしてあおるのは行き過ぎであり、危険だという。さらに報道の分野でも、トランプ叩きは過熱している。

・CBSテレビのニュース関連番組に定期的に出演する著名な評論家兼コメディアンのスティーブン・コルベア氏は、放映中にトランプ氏をロシアのプーチン大統領の性器に関連付ける発言をした。

スティーブン・コルベア氏
・CNNテレビの司会役が、トランプ氏に「シット(くそ)」という汚い言葉をぶつけた。

トランプ氏に「シット(くそ)」という汚い言葉をぶつけたレザ・アスラン
・MSNBCテレビの報道キャスターが、「トランプ大統領は自分の政治目的のためにテロ犯罪をわざと起こさせようと挑発している」と断言した。

問題となったMSNBテレビの報道番組
 ヌーナン氏は以上のような実例をあげて、懸念を表明した。民主党寄りの芸能人やキャスターが政治的な理由でトランプ大統領の政策を非難するのは正当化できるとしても、明らかな偏見や不公正をメディアの客観性や中立性を放棄して表現することは、危険な暴力行為をも扇動することになる、と警告した。その危険な暴力行為の実例としては、6月14日にワシントン郊外で起きた、反トランプの中年男性による共和党議員たちに対する射撃事件が挙げられるという。

共和党議員たちに対する射撃事件の犯人
 同氏はさらに、米国内でイデオロギーや政策をめぐって激しい対立が起き、その結果、米国全体が政治的に分極化することを憂慮する。現在の米国の主要メディアのトランプ大統領への攻撃は、激怒や憎悪をあまりにむき出しにしており、「その温度を下げるべきだ」と訴えた。

   このままでは米国全体が危機に

6月16日、ワシントンを拠点とする保守系のインターネット新聞「ワシントン・フリー・ビーコン」も、この種のトランプ叩きの現状を伝える記事を掲載した。

民主党系弁護士のジャミー・ゴアリック氏が、トランプ大統領の娘、イバンカさんとその夫のジャレッド・クシュナー氏のロシア関連疑惑での弁護を引き受けた。そのことが民主党勢力から裏切り行為のように激しく非難されているという実態を伝える記事だった。

ジャミー・ゴアリック氏
 弁護士の弁護引き受けは政治党派の別を越えてなされるのが自然である。ところが「ワシントン・ポスト」などはゴアリック弁護士がクシュナー夫妻を弁護するのは不当な行為として断じている。ワシントン・フリー・ビーコンの記事は、その種の非難は一線を越えていると批判した。

こうしたトランプ政権と反トランプ陣営(民主党と大手メディアの連合)との対決は一体どこまでエスカレートするのか。ヌーナン氏のコラム記事は、「トランプ大統領に敵対する側はこのあたりで冷静にならないと、米国全体が危機に瀕し、国力が衰えることにもなる」と警告していた。

【私の論評】今こそ日米双方の保守派の連携が重要(゚д゚)!

米国のこの状況、憂慮すべき状況です。そうして、この状況はなぜ起こっているのか、日本国内ではなかなか理解されないことですが、米国のある一面を理解していれば、それは容易に理解できることです。

それに関しては、このブログでも過去に何度か掲載させていだたきました。要するに、米国のメディアの9割は、リベラル・左派系であるということです。保守系メディアは1割に過ぎません。

米国メディアはリベラル・左派が圧倒的に多い
新聞に関しては大手はすべてが、リベラル・左派系です。これは、日本にたとえると、産経新聞は存在せず、朝日新聞や毎日新聞のようなリベラル・左派系の新聞しか存在位しないようなものです。

テレビは、大手は保守系のフォックスTVを除き後はすべてが、リベラル・左派です。この状況は数十年前から続いていました。

最近では、ネットが発達したとはいえ、まだまだ既存メディアの影響はかなり大きいです。しかし、メディアがこのような状況ですから、米国にも現実には人口の約半分くらいは存在するであろう、保守派の声はかき消されことになります。

少なくとも、テレビを視聴したり、新聞を購読する限りにおいては、リベラル・左派の考え方や、イデオロギーが世の中の主流ということになっていたのです。そうして、保守派がいくら自己主張をしても、その声は大きな声となって他の人々に聴かれたりそれが影響力を持つようにはならなかったのです。

そうして、日本など米国以外の国でも米国といえば、リベラル・左派のメディアなどによってもたらされる情報によって米国を判断していたので、多くの日本人は米国保守の存在を知らず、米国の半分しか見ていなかったというのが実態でした。私達の多くは、現実の米国の半分しかみていなかったといっても過言ではありません。

日本のメディアも多くが、リベラル・左派で占められていることから、日本でも米国メディアの報道細のまま垂れ流すようなことをしていたため、米大統領選などもまとに報道できませんでした。それは、今でもかわらず、トランプ氏に対するネガティブな報道姿勢は今でもかわっていません。

このようなことが長く続いたことから、米国の保守派は何十年にもわたって、無視され続けてきたのです。そうして、保守派自身も自分たちはマイノリティーだと長い間思わされてきました。だから、彼らの多くは、自分の主張は腹の中にしまいこみ、ひっそりと生きてきたのです。

何しろ、メデイアに影響されて、学校でも多くの職場でも、ありとあらゆるところで、リベラル・左派的なものの見方や考え方が優勢であり、そのような中で保守派が保守的な考え方や、イデオロギーを開陳すれば、まわりから野蛮であるとか、粗野であるとそしられることになるので、保守派はあまり自分たちの考え方を開陳できなかったのです。

しかし、トランプ氏の登場によって、それは変わったのです。それまでも、草の根保守の運動はあって、保守層も自分たちは決してマイノリティーではないことに気づきつつはあったのですが、トランプ氏が大統領選に出馬し、選挙運動をはじめてから、かなり状況が変わってきました。

大統領選挙戦中のトランプ氏
多くの保守層も、選挙運動に参加し、トランプ大統領が登場すれば、自分たちの主張も多くの人達に理解されるようになるに違いないという希望を持ちました。そうして、実際保守派は決してマイノリティーではないことをトランプ大統領の登場によって示したのです。

ところが、米国メディアの大勢がリベラル・左派であるという本質はトランプ大統領が登場した今も変わりはありません。

米国メディアは当然のことながら、連日反トランプ的立場から報道します。そうして、リベラル・左派は選挙の結果などはすっかり忘れて、米国の保守層のことなどは忘れ、自分たちが、主流なのになぜ、トランプ政権なのだ。トランプ氏が大統領であることは大きな間違いだと思い込む、輩も多数出てくることになります。

リベラル・左派は明確に大統領選挙の結果示された、米国の人口の半分は存在する保守層の存在を忘れ、自分たちの考えだけが主流であり絶対に正しいのだという考えに凝り固まり、勘違いする馬鹿者もでてきたので、ブログ冒頭の記事のようなとんでもない状況が発生したのです。

先にも述べたようにこの状況は、憂慮すべきことです。ヌーナン氏の「トランプ大統領に敵対する側はこのあたりで冷静にならないと、米国全体が危機に瀕し、国力が衰えることにもなる」という警告はまさに正鵠を射たものです。

それにしても、この状況、米国ほど酷くはないものの、日本も似たり寄ったりの状況にあると思います。選挙結果からみると、日本のリベラル・左派はマイノリティーであるのは、間違いありません。しかし、彼らはメディアのほとんどがリベラル・左派であることから、自分たちを過大評価して、自分たちこそ世の中の主流であり、自分たちの考え方や、イデオロギーこそが、世の中の中心であり、絶対善であるかのように思っています。

日本では、一昨年、国会議員が誰もいない国会を取り囲んで、多数の国民が参加するデモが開催されました。デモに何人いたのかわからないし、こういう類の主催者発表はだいたいあてにならないので、多数、としておくのが良いでしょう。

このデモに参加した政治学者の山口二郎氏が次のように述べていました。
「安倍に言いたい!お前は人間じゃない!叩き斬ってやる」
動画で見る限り、物理的に叩き斬るとはいっておらず、「民主主義の仕組みで」と留保している点は、まあ、ほっとしたのですが、それにしても穏やかな話ではありません。



しかし、良く考えてみると、「叩き切る」云々という部分よりも、前半の「安倍に言いたい!お前は人間じゃない!」という叫びの方が、危険な叫びだと思えます。

山口二郎氏によれば、安保法案を推進する安倍総理は「人間じゃない」ということになるのでしょうが、この論理に従えば、安保法案を支持する国民も「人間じゃない」ということになってくるでしょう。

実際に、山口氏は、ツイッターで次のように呟いています。
「今日は、学者の会の会見、日弁連の会見、日比谷野音の集会とデモに参加し、一日中安保法制反対を叫んだ。日本政治の目下の対立軸は、文明対野蛮、道理対無理、知性対反知性である。日本に生きる人間が人間であり続けたいならば、安保法制に反対しなければならない。」2015年8月26日
山口氏の論理に従えば、安保法案に反対する人間が「文明」であり、「道理」であり、「知性」であるのです。その逆に安保法案に賛成する人間は「野蛮」であり、「無理」であり、「反知性」だというのです。そして、安保法案に反対する人間こそが、「人間が人間であり続けたい」と願う人だというのです。ここでは明らかにされていないのですが、安保法案に反対する人間は「人間が人間であり続けることを拒む」存在だということになります。

今月は、戦争反対、人権擁護を目的とする市民団体のリーダーが、自らのTwitterにおいて
#安倍を吊るせ
というハッシュタグを作成しました。

安倍とは安倍晋三総理大臣のことであり、安倍首相は彼らのイデオロギーにとって敵であると見なされているからのようです。以下に、そのツイートを掲載します。


政治に関与する人間は、自らの「正義」に陶酔するあまり、敵対者を「悪魔化」する傾向があります。これは、古来からかわることのない「正義の狂気」です。古来より、往々にして、正義が人を殺してきました。ロベスピエール、レーニンといった革命家は、自らの正義に酔い痴れ、敵対者を悪魔化し、大量虐殺を肯定しました。

いまから50年以上も前に、哲学者アイザイア・バーリンは、自分の掲げる理念を他人に強要して、正義の社会が実現すると考える「積極的自由」の思想が、数多くの虐殺を繰り返してきたと指摘しています。バーリンの指摘から50年の歳月が過ぎても、自らの正義に陶酔する人間が存在し続けています。これは、日米に限らず、世界中に存在しているのだと思います。

アザイア・バーリン
私は安保法案に賛成する一人ですが、勿論、人間です。安保法案に賛成する人々も、反対する人々とおなじ人間だ。意見が異なるだけです。米国の保守派とリベラル・左派も無論両方とも人間です。意見が異なるだけです。

どんな場合でも、敵対者を「悪魔化」、「非人間化」して攻撃するような愚かな真似はすべきでないです。反対の声をあげるなら、頭を冷やして、冷静に反対の声をあげるべきです。そうでないと、多くの人の賛同を得ることはできません。

結局、トランプ大統領に対して、いくらネガティブ・キャンペーンをはったにしても、何も変わることはないでしょう。

日本では、そもそも何が問題なのかもわからない「森友・加計学園問題」で、ネガティブ・キャンペーンが行われましたが、与党の支持率は若干下がったものの、野党の支持率は変わりません。おそらく、短期間で、与党の支持率はまた戻ることでしょう。

それにしても、日米ともにいわゆるリベラル・左派の行動には問題が多いです。このまま、日米が国内のリベラル・左派の動向にばかり振り回されているようでは、トランプ大統領や安倍総理にに敵対する側はこのあたりで冷静にならないと、日米両国全体が危機に瀕し、国力が衰えることにもなりかねないです。

しかし、リベラル・左派の人々は日米とも、保守派とまともに語り合おうとはしないようです。であれば、日米の保守派は互いに歩みより、まずはコミュニケーションを密にして、いずれ相互連携を強めていくようにすべきと思います。

思えば、戦前からそうして戦後ずっと、マスメディア、学界を始めとして、左翼の台頭を許してきた日米両国です。双方の保守派は今なお分断されたままで、日本国内には、アメリカの本当の姿を知るための、正しい情報が入ってきません。米国にも、日本の真の姿を知るための情報は少ないです。

日米は、同盟国であり、アジアの平和を守るためにも協力が欠かせない間柄です。日米の保守派は、真の姿をお互いに知り合うべきなのです。
日米双方の保守派の連携によって、思っても見なかったような、展開がみられるようよになるかもしれません。

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2017年6月20日火曜日

小池百合子都知事、「豊洲に市場移転」「築地を再開発」の基本方針表明―【私の論評】築地は売却すべき、都が資産をもって事業をしても大失敗するだけ(゚д゚)!

小池百合子都知事、「豊洲に市場移転」「築地を再開発」の基本方針表明

築地市場の豊洲移転問題で会見する小池百合子都知事=20日午後、都庁
 築地市場(東京都中央区)の豊洲市場(江東区)への移転問題で、小池百合子知事は20日午後、臨時の記者会見を開き、中央卸売市場を豊洲に移転する基本方針を表明した。一方、築地市場については「築地ブランドを守っていく」として、5年後をめどに市場機能を残した「食のテーマパーク」とする再開発を行い、築地に戻ることを希望する仲卸などの業者を支援するとした。

 豊洲市場については「新たな中央卸売市場だ」と明言した上で、冷凍冷蔵・物流・加工などの機能強化を図っていくとした。東京ガスの工場跡地に整備された同市場の開場条件となっていた汚染の「無害化」は達成されていないが、追加対策を実施していくとした。

 小池氏は会見で「築地と豊洲を両立させることが最も賢い(お金の)使い道だ」と述べた。一方で、そのための工程、予算、財源などについては今後、検討していくとした。

 小池氏が昨年8月に築地市場の移転延期を表明して以来、都政の懸案となった市場問題で、豊洲、築地の双方を活用する小池氏の基本方針が示された。23日告示の都議選をめぐり、小池氏と対立する自民党が公約として豊洲への早期移転実現を掲げ、小池氏と連携する公明党は選挙前の決断を求めており、選挙情勢にも影響を与えそうだ。

 東京ガスの工場跡地に整備された豊洲市場をめぐっては、環境基準超えの有害物質が検出された地下水への対応が焦点だった。都の追加対策は、(1)地下水をくみ上げ、浄化する地下水管理システムの機能強化で中長期的に水質改善を図る(2)気化した有害物質が建物の地下空洞に侵入して1階部分に入ることを防ぐため換気設備などを設置する-などとしている。

 小池氏は豊洲の汚染対策に加えて市場会計の持続可能性も重視し、築地のブランド力と好立地に注目。都は小池氏の指示で、築地の跡地を売却せずに民間に長期間貸し出し、日本の食文化の発信拠点などとして活用する案を検討してきた。

【私の論評】築地は売却すべき、都が資産をもって事業をしても大失敗するだけ(゚д゚)!

小池知事は、サンクコストという言葉の定義に関して、間違って理解していて、その間違いにもどいたサンクコストの忌避方法が、今回の小池氏「豊洲に市場移転」「築地を再開発」という基本方針であると考えられます。

1月14日に開かれた専門家会議では、都が実施した豊洲市場の地下水モニタリング調査の結果、最大で環境基準の79倍のベンゼンが検出され、シアンが数十カ所で検出さました。



しかしそもそも、この「環境基準」は飲料水の基準であり、地下水を飲まない豊洲市場では何の問題もありません。もともと去年11月に築地から移転する予定だったのを小池百合子知事が「都民の不安」を理由に延期したのですが、出てきたのは風評被害だけでした。

そもそも「基準値」には、飲用水の基準とは別に工場が下水に流す際の「排水基準」があり、排水基準の場合、飲用水基準より10~100倍の濃度まで許容されています。
9月末に豊洲の地下水モニタリングでベンゼンとヒ素が『基準値超え』と報じられましたが、これはハードルが高い飲用水基準を超えたということです。排水基準から見れば全く問題がない値でした。
建物下でもない場所の地下水で、市場の仲卸業者ですら触れもしない水なのに“生涯にわたって飲み続けて大丈夫か”というレベルの基準でチェックがなされていることをどれだけの人がわかっているのか甚だ疑問です。

これを受けて、小池知事は「豊洲には既に6000億円つぎ込んでいるがどうするのか」という毎日新聞の質問に「豊洲という場所に決めたことには私自身、もともと疑義がある。サンクコストにならないためにどうすべきか客観的、現実的に考えていくべきだ」と答えていました。

これが「豊洲への移転をやめると6000億円の投資が無駄になる」という意味だとすると、小池知事はサンクコスト(埋没費用)の意味を取り違えています。サンクコストとは投資が終わって回収できない費用のことであり、6000億円はすでにサンクコストです。だから、「サンクコストにならないためにどうすべきか」という問いはありえないのです。
確かにサンクコストが問題になる場合もあります。「これだけ費用をかけたから、もう少し出費することによってこれまで払った費用が丸々損しないで済む」、と考えて赤字の事業が続けられることもあります。しかしこの経営判断は、「損している上に、もっと大損しよう」と判断しているのと同義です。過去に使ってしまって回収できないお金は既にサンクコストです。

人が行動した結果、その際に生じたコストが、後の意思決定に影響することをサンク・コスト効果と言います。図で示すと以下のようになります。


サンクコストに打ち勝つためには「勇気を伴うあきらめ」が必要なのも事実です。しかし、豊洲の移転問題はまた別です。豊洲に移転して、赤字続きでどうしようもないとか、それが今から確実に予想されるいうのなら、わかりますが、そうではありません。

それに、豊洲問題に関しては、確証バイアスの影響もあったものと思います。確証バイアス(かくしょうバイアス、英: Confirmation bias)とは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことです。

豊洲でも、環境問題に執着するあまり、本来飲みもしない地下水を検査し、環境基準に適合しないなどとされましたが、豊洲の地下水元々使用しないものです。豊洲近辺は、不動産でもかなり人気があり、高層のタワーマンションなどもすぐに完売するほどの盛況です。

無論、この高層タワーマンションに住む人も、地下水を飲むこともないし、直接豊洲の土に触れる機会もないことから、そのようなことは何も心配していないのでしょう。

豊洲の建築途上のタワーマンション
先に示したように豊洲の6000億円はすでにサンクコストです。これは、豊洲に移転しようがしまいが、築地をどうするなどということは全く関係なしに、サンクコストです。これは、もう回収できません。

このサンクコストに加えて、築地の開発をするとなるとここでもサンクコストが発生します。

このサンクコストとは別に、支出と収入の面から豊洲問題で過去にいわれてきた方式と、今回の小池知事の方式を加えたものを比較してみます。

1.豊洲市場に移転
豊洲市場の維持費(支出) 
豊洲市場で検出された有害物質への対策費(支出)
2.移転中止・築地市場の継続
豊洲市場の維持費(支出) 
築地市場の維持費+衛生管理費(支出) 
豊洲市場の売却益(収入)
3.移転中止・第三の新市場を建設
豊洲市場の維持費(支出) 
新市場の建設費+維持費(支出) 
豊洲市場の売却益(収入)
 4.豊洲に移転・築地市場の継続・開発 
豊洲市場の維持費(支出) 
豊洲市場で検出された有害物質への対策費(支出) 
築地新市場の建設費+維持費(支出)
細かな点は別にして、結局豊洲移転・築地市場継続断念に踏み切る方がコストパフォーマンスは良い計算が成り立ちそうです。やはり、築地は売却して、地元自治体か民間業者に再開発を任せたほうが良いでしょう。過去の経緯からいっても、東京都が資産をもって事業をやろうとするとろくなことがありません。またまた、膨大なサンクコストが発生することになります。小池知事はそれを繰り返そうというのです。

感情論を先行させ、メディアを煽り、都議会で議席数を伸ばすという “政局” を目的に利用する上では豊洲問題は格好のネタです。しかし、それで利益を得られるのは知事派の界隈だけに限定されるということを覚えておく必要があります。

小池知事の豊洲と築地のダブル運営は、「築地ブランド」という魔法の言語で素人を騙しているだけです。築地ブランドはそもそも、築地という土地についたものではありません。仲卸が80年間の努力で積み重ねられた信用のことです。決して土地ではなく彼らが作り上げた誇りです。豊洲に行っても引き継いで更なる信頼の増幅を努力することによって、そのブランドは維持されるのです。ブランドは、あくまで人の努力によって形成されるものなのです。

市場のブランドは土地ではなく、市場で働く人々によって創造される

要するに小池知事は、とてつもない将来債務を発生させる装置をふたつ抱えます、と断言しているということに過ぎません。

それも自分の都議選勝利のために選挙直前まで引き延ばして、それに伴う都民の金銭的負担も別物で発生させつつ、結局この有様です。

無駄遣いなくすと言ってた小池知事が究極の無駄遣いをすると断言しているに過ぎません。小池さん、ずいぶん前からおかしくなっていたようですが完全にぶっ飛んでしまったようです。

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2017年6月19日月曜日

加計学園問題「総理のご意向」の意味がついに解明。伝言ゲームで誤解が広まった―【私の論評】マスコミがゾンビ化したことを象徴した出来事(゚д゚)!

獣医学部新設をめぐって安倍総理が不公平に友人の加計理事長が運営する加計学園をひいきしたのではないかと疑われている件について、ついに確からしい真実が明らかになった。

結論を言えば「安倍総理がひいきを指示した」という事実はない。伝言ゲームで話が膨らんだだけだった。

netgeek編集部では錯綜する情報をまとめ、できるだけ分かりやすく時系列で総括してみた。
(1)安倍総理の指揮の下、内閣府が戦略特区構想を進める。ただし獣医学部新設は文部科学省の管轄。
(2)内閣府は文部科学省から出向してきた課長補佐の牧野美穂氏(33)を含めて戦略特区プロジェクトを進めることに。
▼。
牧野美穂氏
(3)牧野美穂氏は内閣府で打ち合わせを重ねる中で、文部科学省の上司報告用として次のメモを残した。
(4)メモで確認できる「総理のご意向」というのは「規制改革を進める」という部分を指しており、断じて「加計学園の獣医学部新設」を指しているわけではない。内閣府は、獣医学部新設も総理直下のプロジェクトのような雰囲気をつくれば文部科学省内でも話が進みやすくなると考えていた。

(5)実は文部科学省では前川喜平事務次官が利権のために獣医学部新設に反対していた。これまで私大を優遇して天下り先を確保してきたのでズブズブの関係を終わらせたくない。天下り先がなくなると自分の責任になる。

(6)牧野美穂氏が上司から「内閣府の言いなりになるな!お前は文部科学省の人間なんだからうちの方針に従ってやれ!」と怒られる。牧野美穂氏は「でも向こうは総理の権力を悪用して無理やりプロジェクトを進めようとしているんです。卑怯ですよ…」と愚痴を漏らす。

(7)安倍総理は卑怯なことをしていると省内で話が広まり、前川喜平事務次官は証拠文書をGET。玉木雄一郎議員にリーク文書を送りつける。

(8)そこには「総理のご意向で加計学園の獣医学部新設が決まった」という事実無根の情報が書かれていた。伝言ゲームで話が膨らんだのだ。担当者なら分かる文書の解釈も読み間違えてしまった。

(8)ここぞとばかりに張り切る民進党に対し、安倍総理と内閣府は当然ながら疑惑を否定する。内閣府の聞き取り調査でもみんなが「そんな事実はない」「そんな文書は見たことがない」と寝耳に水の状態。

(9)内閣府はメールを調べるも流出した文書は見つからない。おかしい…捏造されたものか?

(10)「総理のご意向」と書かれた文書は文部科学省の牧野美穂氏が上司報告用としてPCの個人フォルダに保存していた「メモ」レベルのものだった。だから内閣府の正式な書類と書式やフォントが違ったのだ。

(11)知らぬ間に渦中の人物になってしまった牧野美穂氏は良心の呵責と上司からのプレッシャーの板挟みになりながら苦し紛れに証言する。どうしよう…もう記憶がないで誤魔化すしかない…。
記憶曖昧、全容解明はほど遠く 文書作成者「発言真意は不明 
調査対象となった19文書のうち14文書が確認されたが、大半を作成したとみられる職員の記憶は曖昧で、全容解明にはほど遠い結果となった。(中略) 
作成したとされる文科省の担当課長補佐は前回調査で「記憶がない」と答えたが、今回は消極的に認めた。ただ、「発言の真意はわからない」とし、あくまで自らの受け止めとの認識を示した。(中略) 
調査に対して「当時作ったメモだろう」「ただし発言者の真意は分からない」と答えるにとどまったという。 
http://www.sankei.com/life/news/170615/lif1706150062-n1.html

(12)文部科学省と民進党、マスコミは自分たちの間違いに気づいたものの引くに引けない状態。

※以上のまとめは現時点で判明した事実関係から推察した流れ。ところどころ違う恐れもあるが、大まかなポイントは合っているはずだ。

ということで安倍総理は完全に白。悲惨なのはまんまと怪文書に乗ってしまった民進党だ。玉木雄一郎議員ら3人が獣医師連盟からそれぞれ100万円の献金を受け取っていたことが明らかになり、国民の信頼を失うことになった。

なにより決定的なのは牧野美穂氏が作成した文書であろう。



「これは総理のご意向」の「これ」というのは「最短距離の規制改革」を指しているのであり、間違っても「(獣医学部の)設置」を指しているのではない。仮に誤解したとしても次の赤線部分の「総理からの指示に見えるのではないか」の部分で誤解が解けるはずだ。裏を返せば「総理からの指示ではない」ということなのだから。

もともと既得権益を潰されることをよく思っていなかった文部科学省は安倍総理に対する敵対心から被害妄想を膨らませ、さらにそこに伝言ゲームが加わって大きな誤解がマスコミで報道されることになった。

以上が今回の騒動の真実だろう。

ここで加戸守行前知事の証言「民進党とマスコミは間違いだらけ」を読み返せば綺麗に整合性がとれる。



参考:「民進党とマスコミの推測は間違いだらけ」 獣医学部誘致の最重要キーマンがついに証言

加戸守行前知事は「第1次安倍内閣のときにも獣医学部新設を打診していたが、全く相手にされなかった。もし安倍総理が友人の加計理事長を優遇するのならあのときに決まっていたはず」と説得力のある話を語る。

さらに加計学園が選ばれた理由については「他校に比べて教育理念が正しく、提案の内容が素晴らしかったから」と解釈し、自分でも納得する結果だと証言した。

大いに騒ぎ立てておいて「ただの勘違いでした」では済まされない。今回の騒動、問題行動を起こした人はきちんと責任をとってほしい。

【私の論評】マスコミがゾンビ化したことを象徴した出来事(゚д゚)!

そもそも加計問題とやらで、何がどう悪いのか、短く的確に説明できる人が皆無であったことを考えると、真相は、概ね上のようなものだと考えられます。

このブログで、何度かこの問題について掲載しましたが、結論は、発信番号、発信者、宛先、発信日時など、公文書としての体裁をなしていないメモ書きのような文書をもとに、疑惑を追求しようというのなら、そのメモ書きプラス何らかの別の明確な証拠が必要であるというものでした。

このような、メモ書きのようなものでは、当然のことながら、作成者の憶測含まれるものと、考えるべきでしょう。その点、公文書であれば、主には誰か、いつ、どこで、何を、どのように行ったかなどの、客観的事実が掲載されているのが常です。

やはり、その結論は正しかったということです。そもそも、この程度のメモ書き程度のもので、取締役会などで、代表取締役の不正を追求して、それで辞任に追い込むことができるなら、普通の会社でも、代表取締役はおろか、取締役、一般従業員の誰でも辞任に追い込むことができます。そんな非常識なことが最初から成り立つはずもありません。

そうして、これは、一般社会常識の範囲内のことです。この問題を追求した、野党民進党の議員や新聞社などは、このような一般社会常識に欠けていたということです。

課長補佐の牧野美穂氏(33)
民進党議員の中には、まともな文書管理がなされていないような環境でしか仕事をしたことのない人もいるかもしれません。そういう人は別にして、新聞社は法律上も大企業ですから、文書管理もまともにできていないような企業であれば、上場を廃止される可能性もあります。

であれば、新聞社に入ってすぐに、文書の取扱など徹底的に仕込まれるはずです。そういうことから考えると、もともと文書自体、それもメモ書き程度のものが違法でもなんでもないのですが、この事実は重いです。要するに朝日新聞と毎日新聞がろくに調べずウソ八百を流したということになります。これらの新聞社の罪は大きいです。

テレビの報道番組はもはやホラー化
野党やマスコミは同問題について、いまだに真相が明らかになっていないといっているようですが、私には、内閣府と文科省の課長レベルの議論で勝負がついた後に、文科省が言い訳を言っているだけにすぎないものであったわけです。

課長レベル交渉で決着がついている以上、「総理の意向」が働くことなどありえず、文科省の文書にある「総理の意向」という文言については、文科省側のでっち上げ・口実以外の何ものでありません。

この問題は、ブログ冒頭のネットギーク記事のように、時系列を参照すれば、最初から何も問題はなかったことがあまりにもはっきりしすぎています。

以下に時系列を整理した表を掲載します。

2016.3.31の時点で、閣議決定の宿題(この時点までに、文科省は需要予測について出すように求められていた)ができず、文科省の「負け」が決まり、「泣きの延長」となった2016.9.16時点でも予測を出せずに完敗。ここまでが課長レベル交渉です。

その後に「総理の意向」という例の文科省文書が出てきているのですが、すでに決着がついた問題に「総理の意向」が働くことなどありえません。獣医学部の新設で事態は動いていたものの、獣医系の団体から「新設は1校」と政治的働きがあったため、そこで以前から申請していた加計学園の一校に決まり、京産大は次回に認可される期待をもって辞退した、という簡単な話です。

この時系列の表と、以前このブログに掲載した。国家戦略特区ワーキング議事録、閣議決定の文書を分析すれば、これはかなり明確になります。
①2015年6月8日国家戦略特区ワーキンググループ議事録(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf) 
②2015年6月29日閣議決定(文科省部分、http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu22/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/02/1361479_14.pdf) 
③2016年9月16日国家戦略特区ワーキンググループ議事録(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf
加計問題の本質は、これら3つの文書を読めばすぐに理解できてしまいます。

まず①と③を読むと、内閣府・特区有識者委員と文科省(農水省)による規制緩和議論は、前者の規制緩和推進派の完勝であることがわかります。

②の閣議決定では、要求されている獣医学部新設の需要見通しについて、許認可をもち需要見通しの挙証責任がある文科省が、まったくその役割を果たせていないことが分かります。しかも、②では、2015年度内(2016年3月までに)に獣医学部の新設の是非について検討するという期限が切られているのですが、それすら文科省は守れていないことがわかります。

これでは、文科省の完敗です。加計問題に係る規制緩和の議論は、課長レベルの事務交渉で決着がついてしまっていたののです。総理の参加する諮問会議の前にこれだけ完膚なきまでに文部省は負けてしまい、さらにはその無能ぶりまでさらけ出してしまってるのです。この問題のいずれかの過程で「総理の意向」が出てくる余地はまったくありません。

要するに、時系列とこれらの文書を参照すれば、そもそも「獣医学部新設」に関して「総理のご意向」などあり得なかったことは、牧野美穂氏の文書などとは関係なく、あり得なかったことが誰にでも最初から理解できます。

ちなみに、週刊文春ではAさんとなっていますが、公表されている議事録では該当部分の発言者は牧野美穂という文科省課長補佐。なら、実名でも良いと思います。

日本のマスコミはすでにゾンビ化
結局のところ、新聞もマスコミもそうして野党民進党などもこの文書を読みもせずに、馬鹿なことを繰り返したということです。

本当に馬鹿か、悪意ある人物としか言いようがありません。上記のようなことは、公表された議事録に基づいて、考えれば、誰もが簡単に理解できることです。本来は、マスコミが丹念に資料にあたり、報じるべきことだと思います。

そんな当たり前のことが出来ないほどに、マスコミの質が落ちていることに民主主義の危機を感じてしまうのは私だけでしょうか。もう、日本のマスコミはゾンビ化してしまったようです。

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2017年6月17日土曜日

AIIBの正体は「アジアインフラ模倣銀行」だ! 見切りつけた習政権、人民元を押し付け 編集委員 田村秀男―【私の論評】ブラック金融のようなAIIBに日米が絶対に加入できない理由(゚д゚)!

AIIBの正体は「アジアインフラ模倣銀行」だ! 見切りつけた習政権、人民元を押し付け 編集委員 田村秀男


 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の正体はアジアインフラ模倣(Imitation)銀行である。北京は加盟国・地域数でアジア開発銀行(ADB)を上回ると喧伝するのだが、自力でドル資金を調達、融資できず、ADBや世界銀行のプロジェクトの背に乗って銀行を装っている。元締・中国の外貨準備は減り続け、対外借金がなければ底をつく。ドル本位のAIIBに限界を見て取った習近平政権はユーラシアのインフラ整備構想「一帯一路」の決済通貨を人民元にしようともくろむ。

 韓国・済州島でのAIIB第2回年次総会会場では韓国企業などが最先端の情報技術(IT)インフラ設備の売り込みを競っているが、AIIB目当てでは「とらぬたぬきの皮算用」同然だ。ドル建て金融のAIIBの信用の源泉は元締・中国の外貨準備で、残高は3兆ドル余りだが、帳簿上だけだ。海外からの対中投資や融資は中国にとって負債だが、当局はその外貨を強制的に買い上げて、貿易黒字分と合わせて外準に組み込む。外貨の大半が民間の手元にある日本など先進国とは仕組みが違う。

 グラフを見よう。外準は3年前をピークに急減している。対照的に負債は急増し、昨年末には外準の1・5倍以上だ。外国の投資家や企業が中国から資金を一斉に引き揚げると、外準は底をつくだろう。

 中国外準を見せ金にして昨年初めに開業したAIIBには世界最大の債権国日本とドルの本家米国が参加を見送った。当然のように国際金融市場はそっぽを向く。米欧の信用格付け機関はAIIBの格付けを拒否するので、AIIBはドル建て債券発行ができない。

 AIIBはやむなくADBや世銀との協調融資で当座をしのぐ。5月末時点の融資額は授権資本金1千億ドル(約11兆1千億円)に対し21億ドル余りにすぎない。加盟国の多くは割にあわないことを恐れ、当初約束した出資金の払い込みを渋る。

 習近平国家主席は5月中旬、北京で開いた一帯一路の国際会議で、人民元資金、7800億元(約12兆8千億円)をインフラ整備用にポンと出すと表明した。国際通貨としての信用力が貧弱な人民元でも不自由しない企業は中国の国有企業に限られるので、韓国や欧米企業は受注で二の足を踏むだろう。借り手国は人民元の返済原資確保のために、対中貿易に縛りつけられる。AIIBに見切りをつけた習政権は中国による中国企業のためのプロジェクトを周辺国に押し付けるだろう。

【私の論評】ブラック金融のようなAIIBに日米が絶対に加入できない理由(゚д゚)!

中国の人民元は元々、巨額の米国ドルによる中国の外貨準備高が裏付けとなって保証されていたものです。人民元そのものの信用が高かったわけではありません。その外貨準備が底をつけば、人民元は国際的には信用を失うわけです。

人民元はどうあがいても、国際通貨にはなりえません。これを考えると、AIIB構想そのものが、元々最初から無理筋であったと言わざるを得ません。

結局、自力でドル資金を調達、融資できず、ADBや世界銀行のプロジェクトの背に乗って銀行もどきの金貸しに過ぎません。

銀行でもないものが、銀行を装っているようなものですから、このような似非銀行に金を借りれば、どんなことになるかわかったものではありません。いつ、街金の高利貸しのように豹変するかわかったものではありません。

このようなAIIBには、日米とも参加しないのが、当たり前であり、これに加入すべきなどという輩は国籍はどこであり、馬鹿か中国スパイとの誹りを受けてもやむを得ないです。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁は17日、年次総会を開いていた韓国南部の済州島で記者会見しました。金総裁はAIIBへの参加を見送っている日本と米国について「我々はこれからもドアを開き続ける」と語り、加盟を歓迎する意向を改めて示しました。
記者会見するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁=(左)(17日、韓国・済州島)

AIIBが日米に参加を促す理由は2つあります。まず人材の確保です。AIIBの職員は100人程度と日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の約3千人と比べ少なく、融資案件の発掘も簡単ではないです。開発金融に精通した人材は限られます。日米が加盟すれば、国際機関で勤務経験のある官僚など、人材確保のルートが幅広くなると考えているのでしょう。

結局中国には、国際金融に通じた人材などほとんど存在せず、何をどうやれば良いのか良く分からないのです。現状ては、中国国内の粗雑で野蛮なやり方でしか、AIIBを運用するしかないのです。

それに、信用力の補完も狙っているのでしょう。出資国の上位に世界経済1、3位( 金融では2位、GDPも本当は中国は世界第三位以下との評価もある)の日米が加われば、国際機関としての信用力は増します。

そもそAIIBは中国の通貨・人民元ではなく、米国の通貨・米ドルで構成されている、という事実があります。私の調べでは、これまでのところ、AIIBの融資承認案件数は予定額ベースで20億ドル程度に過ぎませんが、その金額は米ドル建てです。
中国主導のAIIBの融資実績(2017年4月末時点) 
区分         件数 AIIB融資額
承認済プロジェクト   12件   20億ドル
検討中プロジェクト   10件   15億ドル
また、AIIBの現時点の参加国は、「加盟する意思を表明し、AIIBに承認された国」を含めて、70カ国です(上)。

AIIBの現時点の融資金額の少なさは、ADBと比較すると一目瞭然です(下)。

つまり、中国が主導するAIIBは、肝心の資金を米国の通貨・米ドルに頼っているのです。世界最大の米ドル保有国である日本に対し、執拗に協力を求めて来ているのも、当然のことといえるかもしれません。

つまり、中国としては、「一帯一路」「シルクロード基金」「AIIB」という「3点セット」で金融覇権を握ろうとしているのに、肝心の資金源である日米が付いてきていないという状況にあります。しかも、自国の通貨・人民元については、事実上、国際化に失敗してしまいました。

このように考えると、「政治力は超一流」の中国も、「経済・金融のセンス」という観点からはゼロ点だというのが実情といえるのかもしれません。

そうして、日米がAIIBに加入するなど、まともで業績の良い銀行が、悪徳街金やブラック企業に肩入れするようものであり、あり得ないことです。実際、AIIBによってなされるインフラ事業は、中国主導で中国の国内基準元に行われるので、そのようなものになります。

中国政府が中国内でそのようなことを実施することについては、諸外国がこれに意義を唱えるのは、ある意味内政干渉になりかねませんが、国際的にそれを展開すると話は違ってきます。

現在の中国ができるのは、中国内のブラック的な要素を海外に移転するというお粗末なことしかできません。

インフラに関しては、国際社会で広く共有されている考え方があります。透明性で公正な調達によって整備されることが重要です。プロジェクトに経済性があり、借り入れをして整備する国にとって、債務が返済可能で、財政の健全性が損なわれないことが不可欠です。

これに関しては、まともな銀行であるADBにはできることですが、銀行もどき、悪質街金のようなAIIBには全く不可能です。そもそも、現中国には鬼城が全国各地いたるところに存在します。

全国いたるところに存在する中国の鬼城
鬼城とは、本来は、本来は、元々住んでいた人々がいなくなった廃墟や死の町を指すのですが、現代中華人民共和国では、特に投機目的の不動産投資と開発運営事業の失敗により完成しないまま放置されたり、人々が入居する前に廃れた都市や地域を指す表現として使われています。

日米が、AIIBに参加して、巨額の出資をした場合、AIIBは悪徳街金のように、無理な返済計画でも資金を融通し、世界中に鬼城を輸出することになることでしょう。

そうなると、日米の巨額の出資も焦げ付き、回収不能になります。そうて、そんなことより、AIIBに参加したということで、日米の信用に大きく傷がつくことになります。そんなことは断じてできません。だからこそ、日米はAIIBに絶対に参加しないのです。

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2017年6月16日金曜日

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗―【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太方針から消えた「消費税」 財政再建は事実上終わっている、英政権は「緊縮病」で失敗

「骨太の方針」の表紙

 政府が閣議決定した「骨太方針」から消費税の引き上げに関する言及が消えたと報じられている。

 昨年の「骨太2016」では、「『成長と分配の好循環』の実現に向け、引き続き、『経済再生なくして財政健全化なし』を基本とし、消費税率の10%への引き上げを2019年(平成31年)10月まで2年半延期するとともに、2020年度(平成32年度)の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標を堅持する」との記述があった。

 今回の「骨太2017」では、「『経済再生なくして財政健全化なし』との基本方針の下、引き続き、600兆円経済の実現と2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す」とされ、消費税増税については書かれていない。

 もっとも、消費増税については、法律で予定されているものなので、政府としてその方針には変更はない。つまり、骨太方針に書かれていないといっても、新たな法律を制定しない限り、19年10月の10%への消費増税が実行されることになる。

 ただし、財政再建至上主義者にとっては、先日の本コラムで書いたように、財政目標でプライマリーバランス(基礎的財政収支)の重要性が当面なくなったことで、財政健全化の動きが大幅に後退すると心配しているかもしれない。

 ちなみに、「財政健全化」という言葉は、「骨太2016」では12回使われていたが、「骨太2017」では6回に減っている。これも彼らの懸念に拍車をかけていることだろう。

 実際のところは、債務残高対GDP(国内総生産)比とプライマリーバランスの間には密接な関係があり、債務残高比対GDP比を発散させないような経済運営が本来であるので、財政再建至上主義者の懸念は的外れである。

 これまで何度も書いてきたように、財政状況は、連結ベースの統合政府バランスシート(貸借対照表)でみるべきである。であれば、理論的には財政再建目標は、債務から資産を差し引いた「ネット債務残高対GDP」を低位に保つことが重要となる。

 現状において、ネット債務残高対GDPはほぼゼロであるので、そもそも財政を気にする必要がないというのが、理論的な帰結である。

 このような状況を安倍晋三首相はよく把握しているのだろう。ノーベル経済賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏やクリストファー・シムズ氏を呼んで講演してもらっているのも、そうした意見を補強するという意味でうなずける。

 安倍首相はさらに、憲法改正で教育無償化を打ち出した。これに必要な財源はざっと見ても4兆~5兆円である。教育投資国債を抜きにして賄うことはまずできない。

 ネット債務残高対GDPはほぼゼロという事実からみれば、消費増税は必要なく、また投資のための国債を発行しても、財政状況を悪化させる要因にならない。

 財政再建至上主義者はこれらに反対だろうが、理論的根拠は乏しく、「緊縮病」を患っているようにみえる。英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】度々財政を間違える英国だが、日本はいつも間違えてばかりだった(゚д゚)!

骨太の方針については、以下のリンクからご覧いただけます。


骨太の方針は、本来は「背骨(バックボーン)の方針」とするべきでしょう。背骨から生える各あばら骨という「政策」は、全てバックボーンの影響を受けます。

バックボーンの方針で「プライマリーバランス黒字化」が決定された場合、予算措置を伴う全ての政策が、「新たな支出をするならば、他の予算を削るか、もしくは増税する」という、狂った方針に従わざるをえないことになりかねません。

問題の「財政健全化目標」については、以下の通りとなっています。

『経済財政運営と改革の基本方針2017(略)基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。このため、「経済再生なくして財政健全化なし」との方針の下、デフレ脱却・経済再生、歳出改革、歳入改革という「3つの改革」を確実に進めていく必要がある。(後略)』

結局、2020年までのPB黒字化という狂った目標は、骨太の方針に残ってしまいました。何とか「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す」を盛り込むことはできましたが、「基礎的財政収支(PB)を2020 年度(平成32 年度)までに黒字化」を削除することはできませんでした。大変、残念です。

PB目標が残ったことで、2017年の日本の再デフレ化の懸念を考えざるを得ない状況になってしまいました。

すでにして、GDPデフレータが対前期比▲0.5%と、デフレ化の方向に突き進んでいるにも関わらず、デフレギャップを埋める財政拡大は難しいでしょう。何しろ、PB目標がある限り、

「財政を追加的に拡大するならば、他の予算を削るか、増税」
 
という話になってしまいます。

ちなみに、経済がデフレ化すると、名目GDPが伸びにくくなります。実際、2017年1-3月期の名目GDPは、対前期比▲0.3%でした。

名目GDPの停滞は、既に2016年から始まっています。GDPデフレータも、2016年からマイナスが始まりました。

つまりは、日本経済は2016年から「再デフレ化」した可能性が濃厚なのです。まだ、推移をみてから判断する必要はありますが、それにしても、厳密にはデフレではなかったとしても、デフレすれすれという現実は変えようがありません。

経済がデフレ化し、名目GDPが伸びなくなると、税収が減ります。理由は、我々は所得から税金を支払っており、所得の合計がGDPになるためです。

そんなことは、あるはずがない! などと思う方々に、残念なお知らせがあります。
国の税収、プラス成長でも7年ぶり減 16年度   
国の2016年度の税収が7年ぶりに減収に転じ、政府の見積もりも2年連続で割り込む見通しだ。所得税収は7年ぶりの前年割れで、法人税収も伸び悩んだ。税収は今年1月時点で55.8兆円と見込んだが、さらに数千億円減るもよう。プラス成長でも税収が減った形で、安倍政権が経済運営の基本に掲げる「成長による税収増」の土台が揺らいでいる。(後略)
これは、現在の「プラス成長(=実質GDPの成長)」は、名目GDPが伸び悩む中、GDPデフレータというインフレ率がマイナスに落ち込んでいる結果を計算しているに過ぎないわけですから、こうなるのが当然のことです。

このような税収の減少は、財政再建至上主義者らの「このままでは財政破綻する! 早期のPB黒字化を!」という声を大きくします。

結果、我が国はデフレ脱却に必要な財政出動ができず、デフレが深刻化し、名目GDPが伸び悩み、税収が減るという悪循環に突っ込む可能性も高くなります。これは、結局のところ昨日のこのブログにも掲載したように、やはり8%増税の悪影響です。以下のグラフを見てもわかるように、消費性向が16年から急激に落ち込んでいます。


一方『骨太の方針』からは、消費税増税という文字は完璧に消えました。これは、安倍総理の増税はしないとの決意の表れともとれます。

これは、ブログ冒頭の記事にある高橋洋一氏が主張する統合政府ベースではすでに、政府の借金はないということからも、明らかです。借金をする必要のない政府が、増税をする必要性など全くありません。

上の記事でも、「英総選挙で、緊縮財政を指向したメイ政権は過半数を取れなかった。緊縮財政は政治的にも経済的にも失敗することを示した」とありますが、全くそのとおりです。

緊縮財政で足をすくわれた英国メイ首相
イギリスは良く財政政策を間違います。このブログでもかなり前に、増税の失敗を掲載したことがあります。これは、日本の8%増税の前に実施されたものですが、これは惨憺た大失敗でした。特に、若者雇用がかなり酷く悪化しました。その失敗を補うために、イングランド銀行(イギリスの中央銀行、日本の日銀にあたる)は大規模な金融緩和に踏み切りました。それでも回復までには、かなりの年月を要しました。それについてはこの記事の最後のほうの【関連記事】のところに掲載しますので、是非ご覧になって下さい。

さて、メイ首相は、前のキャメロン政権で治安対策の責任者である内相を務めました。当時の保守党は緊縮財政を進めるため、警察官を2万人削減。このことで、メイ首相を批判する声が出ています。労働党のコービン党首らは、メイ首相に辞任を求めています。

これに対し、メイ首相は6日の演説の中で、「選挙の数日前には、新たな政策を数多く発表するつもりはないが」と前置きした上で、「テロ行為で有罪判決を受けた人々の刑期を長くするべきだ」「当局が外国人のテロ容疑者を、自国に送り返すことをより容易にすべきだ」と述べ、移民の権利を手厚く保護する「人権法」を改正することで、さらなる対テロ対策を実施する方針を示しました。

 英タイムズ紙は13日、関係筋の話として、有権者による緊縮財政への忍耐が限界に達していることをメイ首相が認めたと報じました。

記事によるとジョンソン外相、デービス欧州連合(EU)離脱担当相や他の与党保守党議員らは、首相に対し、緊縮財政に対する国民のムードを首相は読み違えたと述べたといいます。

首相は前週の総選挙で単独過半数を取れず、北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)との連立協議を開始しました。

このように、緊縮をすれば、経済が落ち込み国民の反発は必至です。緊縮、それも日本経済がデフレに再突入したか、しないかの現在の状況で緊縮をすれば、とんでもないことになるのはわかりきっています。GDPは伸びは更に落ち込み、マイナス成長になりデフレに逆戻りです。

緊縮は本当に高くつくということを日本の政治家は忘れてしまったようです。緊縮財政を続けてきた過去の日本の政権は、全部短期で終わっています。例外はありません。財政再建至上主義の政治家はまたこれを繰り返したいのでしょうか。

どうやらそのようです。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に否定的な自民党有志による「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」(野田毅会長)が15日、2回目の会合を国会内担当で開き、石破茂前地方創生相ら議員約30人が出席しました。講師の早川英男元日銀理事は「デフレ脱却による高成長は幻想だ」とアベノミクスを批判し、石破氏は記者団に「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」と述べました。

石破茂前地方創生相
どうやら、彼らは財政件至上主義で増税などすれば、国民をデフレスパイラルのどん底に落とし、塗炭の苦しみを与えるこになり、そうなれば、国民の反発を招きそもそも政権を維持することすら困難になりかねないということに気づいていないようです。まあ、私達国民としては、どのような政権になったにしても、まずは経済がまともであれば良いということなのですが、では野党はどうなのかといえば、経済に関してはほとんどが落第生です。それ以前に、森友・加計問題で、騒ぎ回る馬鹿集団です。問題外です。

そうなると、やはり経済を考えれば、今は安倍政権を支持するという選択肢しかありません。本当に困ったものです。


上には、英国の例を出しましたが、考えてみれば、日本は英国よりも財政政策を間違えてばかりです。こんなことですから、現在に至っても未だ、GDPの伸びは英国はおろか、韓国すら上回っていない状況です。馬鹿な政治家どもに言いたいです、いい加減に気づけよと・・・・!

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