2017年8月23日水曜日

イオンまた値下げ 「インフレ目標で価格決めない」 ―【私の論評】真摯に市場の声を聴けば今の日本経済が見えるはず(゚д゚)!

イオンのチラシ
イオンは23日、グループのスーパー2800店舗で25日から、プライベートブランド(PB)の食品や日用品114品目を値下げすると発表した。値下げ幅は平均で10%程度。同社は昨秋と今春にも合わせて約520品目を値下げした。継続的な値下げで低価格をアピールし、節約志向の消費者の需要を喚起する。

 値下げの対象は食品88品目、酒類7品目と日用品19品目。パック入りのご飯を29円安い429円、レギュラーコーヒーを108円安い753円などに値下げする。

 イオンの三宅香執行役は値下げの理由を「低価格への意識が強い消費者のニーズに応えるため」と説明した。物流の効率化や店舗拡大のスケールメリットによる原価低減を値下げに充てたという。日銀は2%の物価上昇を目標に掲げるが、脱デフレの動きは鈍い。三宅執行役は「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はない。我々は顧客のニーズだけを見ている」と述べた。

【私の論評】真摯に市場の声を聴けば今の日本経済が見えるはず(゚д゚)!

イオンは今年4月11日にも、傘下のスーパー400店で、食品や日用品の最大254品目を4月17日から順次値下げすると発表していました。値下げ幅は平均で10%程度。全体の品目数からするとごくわずかにすぎないものの、同社は昨秋から順次、プライベートブランド(PB)とメーカー品を合わせて約270品値下げするなど、定番商品の価格引き下げを続けています。

4月に値下げしたのは、総合スーパー(GMS)のイオンリテールが販売するメーカー品が約240品目、グループ共通で扱うPBが15品目。メーカー品では税抜き98円で販売している菓子パンを88円に、同235円の歯ブラシを215円に引き下げました。PBでは「トップバリュ天然微炭酸の水」を税込み149円から105円ににしました。


イオンリテールの岡崎双一社長は昨年10月、子育て世代など、節約志向が強い層の客離れが起きているとして「強烈な売価訴求」を重要課題に掲げました。メーカー品の価格見直しは半年ごとなど定期的にしており、「社会保障負担などが高まる春に合わせ、日用必需品を買いやすくする」(広報)としていました。

この4月の値下げととともに、今回の値下げで、約520品目を値下げしたことになります。この動きは、イオンだけではありません。

今年の春以降に、大規模な値下げをした企業は他にもあります。 代表的なものを見るとセブン-イレブンでは、日用雑貨品61品目を値下げしました。 これは実に、8年ぶりとなりました。

最大手のセブン-イレブンでの値下げは、またたく間に小売りの現場に広がりました。 例えば、ローソンでは、「シャンプー」を21円値下げするなど、およそ30品目を5%前後下げました。ファミリーマートもこの「柔軟剤」など、25品目値下げしました。

「値下げの春」などと大きな話題になりましたね。 晩夏を迎える今、こうした春先から続いている値下げの動きは、さらに広がりを見せています。

イオンの三宅執行役は「インフレターゲットを意識しながら価格を決める小売業はない。我々は顧客のニーズだけを見ている」と述べたいますが、まさにそのとおりです。

先日は、数字的な裏付けから、日本では未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済の実情を掲載しました。上のような事実をみるとこの記事で主張したことがさらに正しかったことが裏付けられたものと思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!
以下に、この記事で掲載したグラフを再掲します。

この記事より、このグラフの解説を以下に再掲します。
今回は、実質成長が「6期連続」で、かつ、それが「11年ぶりだ」なのではありますが、だからといってこれだけで、すぐに、今景気は良いという判断にはなりません。
なぜなら、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」にすらなり得るのです! 
実際、上記グラフからも明白なとおり、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています(黄色)。
これこそ、「6期連続、実質成長率がプラス」となった理由です。実際、このグラフに示した「名目成長率」(前年比・青線)は、今期こそ、僅かに上昇傾向を見せていますが、ここ最近、ゼロ近辺を推移しているということ、つまり、「成長していない」事を示しています! 
日本経済は、本格的な好景気状況からはほど遠い状況にあるのです。 
にもかかわらず、2017年4~6月期GDPは年率4.0%増、プラスは6四半期連続となったり、名目GDPの成長率も年率4.6%と好調となり、名目が2四半期ぶりにプラスになっています。

この理由は簡単に理解できます。その一部の理由は、「公共投資は5.1%増-補正予算の効果でプラスに寄与」というものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-13/OUAL466S972801

一年前の昨年夏に調整した、アベノミクスにおける「大型景気対策」の効果がようやく効き始めた、と言うのが、「今期」における一部良好な数字の原因の一つです。

さらに、以下のよう要因もあります。
①ここ2、3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言うことです

さらに、高橋洋一氏は、この記事の元記事で、日本の構造的失業率は2%半ばであり、まだ日本は完全雇用に達していないということを数字的裏付けをもとに主張しています。

この状況に対応して、イオンなどのスーパーや、コンビニなどの業態が値下げに次ぐ値下げ政策を実行しているというわけです。

日本銀行は7月20日の金融政策決定会合で、物価上昇2%達成時期を「2018年度ごろ」から「19年度ごろ」に先送りしました。

日本の経済の中身をみると、このようにまだまだ、物価目標も道半ばである、完全雇用の状況にもなっていないし、何よりもGDPデフレータがマイナスであることから、どう考えても未だデフレから脱却したとは言い難い状況です。

この状況では、増税などとんでもない悪手であり、減税をするか大型補正予算を組むなどで積極財政を実施するのは当然であり、物価目標すら達成できない現状では、追加の量的緩和も実行すべきです。

茂木敏充経済再生担当相
この状況で、茂木敏充経済再生担当相は、記者会見で今回のGDP速報について「率直にいい数字だと思っている」との認識を示し、「内需主導の経済成長が続くように万全の対応をしていきたい」と強調した。一方で、「現段階で具体的に新たな経済対策は想定していない」とも語っていました。

これは、全くの間違いです。これは、数値的な分析をさほどしなくても、ブログ冒頭の記事にあるように、イオンが値引きに次ぐ値引きをしているとか、イオンだけではなく、他のコンビニもそうしていることの意味を良く考えれば理解できることです。

政治家は本来このような声を読みとつていかなければ、ならないはずであり、それができないというのならいずれ有権者からそっぽを向かれてしまいます。

かといつて、現状の自民党以外の野党は、ほとんどが実体経済を理解していないという状況です。まだ、自民党のほうがましというお寒い状況です。だから、次に選挙があっても、受け皿になれる野党が存在しないという状況です。

民進党は、代表戦をする予定になっていますが、代表戦に出馬す前原氏も、枝野氏も経済にはうとすぎます。
民進党代表選の公開討論会で、記者の質問に答える枝野元官房長官。
左は前原元外相=22日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ
そうして、若狭氏が立ち上げた政治団体「日本ファーストの会」ですが、正直なところ何をしたいのか分かりにくいです。「自民党対抗の受け皿」としての国政政党ということのようですが、若狭氏はほんの少し前まで自民党員でした。昨年10月の衆院補選では自民党公認として当選し、その後離党しました。

せめて補選の前に離党していれば、大義名分は立っていたのでしょうが、その意味では政治判断を誤ったといわざるを得ないです。こうしたことは、その後の政治活動に影響するので、若狭氏主導の「日本ファーストの会」の先行きは必ずしも明るいといえません。さらには、若狭氏も経済にはうといようで、経済対策とし具体的に何をやるのかなど目立った主張はありません。

何をしたいのか良く理解できない若狭氏
このまま日本経済が放置されれば、市場関係者や流通関係者から怨嗟の声があることになります。またデフレに舞い戻れば、自民党はさらに支持を失うことでしょう。

その時に、経済を理解した野党がでてくれば、それが受け皿になるのは必定です。

その意味では自民党も油断していれば、先はないです。一番良いのは、安倍首相が初心に立ち返って、追加金融緩和と積極財政を実施し、デフレから早期に脱却することです。そのことを少なくとも、自民党の幹部連中が理解すれば、安倍政権は一強どころか、特強状況になれると思います。

なぜなら、今後経済で目立った失敗がなくなるからです。これは、とてつもなく大きなことです。特に、過去にデフレで20年以上も苦しんできた日本です。

デフレにならないということだけでも、すごいことになります。しかし、これは本来そんなに難しいことではないはずです。不景気というならまだしも、デフレは経済の癌であって、異常事態です。本来このような状態が長く続くのは異常中の異常です。

にもかかわらず、どうして日本ではデフレが長期間続いてきたかとといえば、財政や金融政策が間違えていたからです。このことに一日もはやく政治家に気づいていたただきたいです。

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2017年8月22日火曜日

【〝キレる〟高齢者】暴行摘発10年で4倍 つえで殴る、小1男児首絞め…… 識者「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある」―【私の論評】背後にあるメディアの大問題(゚д゚)!



傷害や暴行などでの高齢者(65歳以上)の摘発人数が、人口増加を上回るペースで急増していることが20日、国の統計から分かった。特に暴行の摘発は10年前から4倍超に激増。些細(ささい)なトラブルから他人に手を出すケースが多発し、火炎瓶や爆弾などで無差別に他人を傷つける重大事件も起きている。専門家は、“キレる”高齢者が増えている背景に、社会の変化に伴う高齢者の「孤立」があると指摘する。

昨年3月、兵庫県加古川市の公園で、たばこのポイ捨てをとがめられた70代の男が「カッとした」として当時小学1年の男児の首を絞め、暴行容疑で逮捕された。京都府舞鶴市でも同年10月、電話を借りるため市民センターを訪れた70代の男が申し出を断られて激高、つえで男性職員を殴る暴行事件があった。

さらに同年8月に東京都杉並区の夏祭り会場に火炎瓶が投げ込まれた事件では、当時1歳の子供を含む男女16人が負傷。犯行後に自殺した当時68歳の男は、以前から知人に「サンバの音がうるさい」などと不満を漏らしていた。2カ月後の10月にも、宇都宮市の公園で元自衛官の男=当時(72)=が爆発物で自殺し、巻き込まれた無関係の3人が重軽傷を負った。

同年8月に東京都杉並区の夏祭り会場に火炎瓶が投げ込まれた事件
 攻撃的な高齢者の増加傾向は統計にも表れている。

28年版犯罪白書によると、刑法犯全体の認知件数が減少傾向にある一方、高齢者の刑法犯の摘発人数は高水準で推移。特に傷害や暴行などの粗暴犯は右肩上がりで、27年の摘発人数は傷害1715人、暴行3808人と10年前からそれぞれ約1・6倍、約4・3倍に増加した。これは同期間の高齢者の人口増加の割合(約1・3倍)を上回る。

新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は「加齢によるパーソナリティーの変化は大きく分けて、思慮深く優しくなる『円熟化』と、感情の抑制が利かなくなる『先鋭化』の2つがある。先鋭化では、感情を制御できずに些細なトラブルが暴力につながる」と説明する。

高齢者が先鋭化する背景には、核家族化や雇用の流動化、年長者を慕い敬う伝統の消失など社会構造の変化があるとされる。激高などの行動は孤立した状況で起こりやすく、女性に比べて変化への順応が苦手な男性で顕著になるという。

碓井教授は「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある。高齢者より若い世代にも同傾向が出始めており、日本の中高年は危機的状況だ」と指摘した。

【私の論評】背後にあるメディアの大問題(゚д゚)!

高齢者の感情の抑制が利かなくなる『先鋭化』がなぜおこるのかということに関して、上の記事では、社会心理学の専門家が「人は孤立すると攻撃的になるとの実験結果もある」とあります。確かに、そういう側面もあるのでしょうが、私はそれだけではないと思います。

高齢者と聴いて、まず頭に浮かぶのが、高齢者の情報源のほとんどが、テレビや新聞であるということが、若い世代との顕著な差であるということです。

私自身は、近所の65歳以上の高齢者とも付き合いがあり、これは本当に顕著に感じるところです。最近の高齢者は携帯電話を持っている人も多いのですが、まだまだガラケーが多いですし、仮にスマホを持っていたにしても、主に使用するのはメールと電話であり、スマホでネットを参照したり動画を見たりする人は少ないです。

パソコンを持っている人もいるにはいるのですが、それで動画を見たり、ニュースを検索する人は滅多にいません。

この状況については、ガベージニュースの以下の記事をご覧いただくと良くご理解いただけるものと思います。
これは気になる、高齢者の日常生活上の情報源とは!?(最新)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事からグラフを引用します。


他の多数のメディア関連の調査の結果同様、高齢者における常用情報取得源のトップはテレビ、次いで新聞。この2メディアの絶対優位性は疑う余地もないです。

そうして、この記事は以下のように締めくくっています。
先行する記事では「普段の楽しみ」としてテレビや新聞を挙げる高齢者が多いとの結果を確認したが、今件では普段の情報源として両者が圧倒的な支持を集めていることがつかみ取れる。しかもテレビに限れば、どの年齢階層でも変わるところが無い。高齢層がテレビ好きで大きな影響を受けるのも、納得がいくというものだ。 
なお今調査は5年毎に実施されているため、次の調査は2019年に行われる。その頃には高齢者が使える情報源はどのような変化を示し、そして高齢者は何を選択しているのか。特にインターネット・携帯電話の利用状況がどの程度変化するのか、調査結果が楽しみではある。
ガベージニュースには、以下のような記事もありました。
テレビはシニア、ネットは若者…主要メディアの利用時間をグラフ化してみる(最新)
この記事からも以下にグラフを引用します。


このグラフが、10代と60代ではテレビの生放送の視聴時間が2.9倍も違うことがわかります。無論60代のほうが2.9倍もテレビを視聴しているということです。
2016年の時点では10代と20代でインターネットの利用時間がテレビ(生放送)を抜いている。つまり「20代以下においてはテレビ<<ネットの時代」である。多分にスマートフォンの普及浸透によるところが大きく、この傾向は今後も続くものと考えられる(今件は各年齢階層毎の平均値であり、該当メディアを利用していない=利用時間ゼロの人も含めているため、普及率が高いほど平均値も底上げされる)。 
スマートフォンの普及がさらに進めば、将来は30代、そして40代でもテレビの利用時間をインターネットが抜くようになるかもしれない。
ここで、テレビの視聴率、新聞の購読率の高い視聴者の立場にたって見て下さい。 テレビ・新聞といえば、最近でいうと、いわゆる「もり・かけ」の偏向報道が顕著でした。

このブログにも以前掲載したことがあるのですが、「もり・かけ問題」に関しては、ネットなどの情報源があれば、いずれの問題も最初から全く安倍総理やそのご夫人には問題はなく、これで追求する野党やマスコミは、愚かという以外に何もありません。結局その目的は倒閣運動以外の何ものでもないということです。

実際、その後テレビや新聞のネガティブキャンペーンがある程度功を奏して自民党政権の支持率は落ちましたが、かといってこの問題で安倍総理が辞任するとか、安倍政権が崩壊するとか、しそうとであるなどのことも全くありません。

これをテレビ・新聞を主な情報源としている高齢者にとっては、「悪の安倍」が全く何のおとがめも受けず、結局世の中は何も変わらなかったと見ているのではないでしょうか。

実際、私の近所の高齢者らも、最初はテレビにかじりついて「もり・かけ」の顛末をみていたようですが、それも最初の一月くらいであり、それをすぎると視聴するのはやめたようです。

その理由を聴いていみると、ほとんどの人が「飽きた」というものでした。確かに、なにやらマスコミや野党はいかにも何かおこりそうな雰囲気でいろいろ御託を並べて追求したのですが、結局何も変えられませんでした。

高齢者の側からすると、野党やマスコミがいくら大騒ぎしても、世の中は変えられないんだという諦めムードになり、どうせ何も変わらないなのだから、見ても無駄と思い見なくなったのだと思います。

そうして、このようなことは何も「もり・かけ」問題ばかりではありません。2015年の集団的自衛権を含む安保法制の審議のときにも、これらを戦争法案として、野党は国会で乱闘騒ぎを起こし、国会前では日々デモ隊が反対デモを挙行しました。テレビも新聞も連日連夜これを報道しました。

このときも高齢者は「悪の安倍」が「戦争法案」を通過させようとしている、これが通過すれば戦争になると息巻いてテレビを見ていたことでしょう。

しかし、法案は通過し、この時は安倍政権の支持率が落ちることもありませんでした。これでは、高齢者はどうせ世の中なんて、みんなでさわいでも何も変わらないのだという考えを深めたことでしょう。

さらに、高齢者のほとんどは、本当は増税してもらいたくはないが、増税しなければ日本は大変なことになるから、増税せざるを得ないと考えている人が多いです。そうして、増税すればどのようなことになるかは、何となくは知っているようです。それでも、増税しなければならないと思い込んだ人はどうなるでしょう。

さらに直近では、北朝鮮がグァムにむけてミサイルを打つという考えを表明したことが、かなりあおり気味で、報道されています。これは自衛隊の退職したある元幹部の人が語っていたのですが、自分自身はそのようなことはないと思っているので、テレビなどの番組で、「北朝鮮のグァムへのミサイル発射はあり得るのか?」と聴かれて「ないと思います」というと、もう後が続かなくなってしまうので、その番組にはもう使われなくなってしまうと語っています。その発言の動画を以下に掲載します。(7:57あたりにその発言があります)



しかし、テレビではミサイル発射があり得るというということを前提して、報道をしないと話が続かなくなるので、あくまであり得るという前提する放送局がほとんどです。

そうなると、いつ日本にも火の粉が飛んでこないとも限らないということで、高齢者はかなり煽られるわけです。

以上は、最近の事例を出しただけで、高齢者は昔からテレビや新聞で日々煽られてきており、さらには政治家やマスコミが悪を暴いても悪いものが成敗されることもなく、この世にのさばっていると考えざるを得ない状況に追い込まれています。

このような状態が数十年も続いたとして、自らその情報の真偽を確かめる術を持たない高齢者がどうなってしまうのか、容易に想像がつきます。それは、モラルの低下です。彼らかられば、悪の安倍政権が滅びることも何もなく、そのまま続いているのですから、この世の中は巨悪がまかり通っていると考えるようになるのも無理はありません。

そうして、最近では高齢者の体力が昔と比較してかなり向上しています。昔だとたとえ、切れても体力的にどうにもできなかったものが、今の高齢者は、実力行使に訴えることもできます。

最近の〝キレる〟高齢者が増える背景には、このような背景もあると思います。これを防ぐには、高齢者に対して直接考え方を変えるように説得してもほとんど効果がありません。さらに、インターネットで検索せよと説いてもほとんど効果はありません。

グーグルクロムキャストやアップルTVなどで既存のテレビで動画を見る方法を教えてあげると良いと思います。

私は、何人かの高齢者にそれを教えてあげましたが、教えたほとんどの人が「虎ノ門ニュース」などをみるようになって、人生観が随分変わったと言っていました。

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2017年8月21日月曜日

日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

いまこそ財政支出の「ダメ押し」が必要だ

 消費増税すべき、だと…?

内閣府が14日に発表した2017年4~6月期GDPは年率4.0%増、プラスは6四半期連続となった。名目GDPの成長率も年率4.6%と好調だった。名目は2四半期ぶりにプラスになった。

これに対して日経新聞は、「4%成長は追い風参考記録だ」というの社説を出した( http://www.nikkei.com/article/DGXKZO20027630W7A810C1EA1000/)。社説では「1.0%未満とされる日本経済の潜在成長率を大きく上回った」としたうえで、「成長率を大きく押し上げたのは、個人消費と設備投資という民間需要の2本柱だ」という。

そして、「2016年度補正予算の執行が本格化し、公共投資が成長に寄与した面も見逃せない」と書いていた。公共投資は主役扱いでない、ということのようだ。最後に、記事は「政府は労働市場や規制緩和などの構造改革の手を緩めてはならない」と締めくくっている。

GDP速報の公表後、筆者のところに、これだけ内需が伸びているのだから、秋の補正では経済対策は不要であり、この流れのなかで消費増税もやらなければいけない、という声が聞こえてきた。そこで、

<GDP速報。これで消費増税(が必要)とかいっている人もいるが。これはZ(財務省)のささやきだろう。ただ16年の2次補正が効いたとしか読めないぞ。要するに緊縮しなければ成長するという当たり前の話だろう。だから秋の補正でも(経済対策をやれ)ということだ>

とツイートした(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/897284790029754368 なお、書き損じなどを修正)。その際、以下の表も添付した。


改めてGDP速報(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf)をみたら、公共投資が大幅に伸びて、その結果、消費と設備投資への波及効果があったのだと筆者は思った。これが、普通の見方だろう。

ところが、日経新聞は社説のように、公共投資が伸びて、それが波及したことを前に出さないように書いている。おそらく財務省関係からささやかれていた話に従うかのように、記事や社説を書いたのだろう。そこには、「秋の補正での経済対策は不要である」という財務省の意図が滲み出ている。

そうした空気は、政府内にもあるようだ。茂木敏充経済再生担当相は、記者会見で今回のGDP速報について「率直にいい数字だと思っている」との認識を示し、「内需主導の経済成長が続くように万全の対応をしていきたい」と強調した。一方で、「現段階で具体的に新たな経済対策は想定していない」とも語った。

はたして茂木経済再生担当相の認識・方針は正しいのか。それを考えるために、今回のGDP速報について詳しく見てみよう。

 「完全雇用」と早合点してはいけない

需要項目別に見ると、民間消費3.7%、民間住宅6.0%、民間設備投資9.9%等で民間需要5.3%。政府消費1.3%、公共事業21.9%で公的需要5.1%。民間と公的を合わせた国内需要は5.2%だった。一方、輸出▲1.9%、輸入5.6%であったので、外需のマイナスを内需でカバーした形である。

公共事業の伸びが大きかったのは、16年度第2次補正予算に盛り込んだ経済対策が寄与したからだ。今回のGDP速報は、適切な補正予算によって、個人消費が牽引され、内需主導の望ましい経済成長が可能になったことを示している。

総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比▲0.4%だった。1-3月期には▲0.8%であったので、改善の方向であるが、依然としてデフレから完全に脱却したわけでないことが明らかだ。

これを指摘しても、茂木経済再生担当相や日経新聞は、日本経済の潜在成長率が低いことを主張して、現時点で経済対策は不要であるというだろう。

ちなみに、内閣府は、2017年1-3月期GDP2次速報後のGDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPの乖離)を+0.1%としている。今回のGDP速報では、さらにプラス幅が拡大するはずだ。プラスということは、需要超過なので、これで有効需要をさらに増やす経済対策は不要、というロジックである。

日経新聞も、潜在GDP成長率は「1.0%未満」と社説に書いているので、すでに「需要超過」という内閣府と同じ意見を有しているのだろう。というか、このあたりの話になると、マスコミでは自分で検証できないので、役所のいいなりである。

さて、GDPギャップについては、重要な経済データなので、内閣府だけではなく日銀でも算出しており、GDPギャップは実際のGDP(国内総生産)と潜在GDPの差の、潜在GDPに対する比率と定義されている。

問題なのは、潜在GDPである。一般的には、経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で、資本や労働力などの生産要素を投入した時に実現可能なGDPとされているが、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもって見る必要がある。このことはGDPを推計している内閣府や日銀でも注意事項として認識されている。

内閣府の数字は0.1%となっているが、この結果をもって、「GDPギャップがないからすでに完全雇用だ」「経済対策は必要ない」と早合点はできない。潜在GDPについて、これまでの実現GDPをベースに算出するが、その結果、これまで完全雇用が実現されていないような水準に引きずられて、完全雇用水準から過小評価になる傾向があるからだ。

つまり、潜在GDPは必ずしも完全雇用を意味していないのだ。その理由を簡単に言えば、まだインフレ率が上がっていない以上、失業率はまだ下がる余地があり、インフレ目標達成とさらなる失業率の低下を進めるために、経済対策の余地はあるということだ。

ただしGDPギャップについては、その変化はおおいに参考になる。内閣府のデータは公表されている(http://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html)ので、それを活用してみよう。それを使って、完全雇用水準からどの程度、過小評価になっているのか考えてみよう。

 構造失業率は2%程度

まず、失業率とインフレ率の関係(フィリップス曲線)を整理しておこう。それを仔細に見ていくと、ちょっと違った姿が見える。失業率とインフレ率は、逆相関になっているが、実は、両者の間に、GDPギャップが介在している。

例えば、GDPギャップがマイナスで大きいと物価が下がり、失業率が大きくなる。逆にGDPギャップがプラスで大きいと物価が上がり、失業率が小さくなる。

下の図1は、2000年以降四半期ベースで見たGDPギャップとインフレ率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸にインフレ率(消費者物価総合対前年比)をとっている。GDPギャップは半年後(2四半期後)のインフレ率とかなりの相関関係がある。


ここで、GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。

それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。

また、この財政出動はGDPギャップを縮小させるので、インフレ率の上昇とともに、これ以上は下げられない「構造失業率」まで失業率の低下をもたらすはずだ、

下の図2は2000年以降の、四半期ベースで見たGDPギャップと失業率の関係である。左軸にGDPギャップ率、右軸に失業率をとっている。図をわかりやすくするために、左軸は反転させて表示しているが、GDPギャップはやはり半年後(2四半期後)の失業率とも、かなりの逆相関関係がある。


GDPギャップと失業率の関係式から見た、GDPギャップ+4.5%程度に対応する失業率は2%半ば程度である。筆者は、2016年5月30日付け本コラム(「消費増税延期は断固正しい! そのメリットをどこよりも分かりやすく解説しよう」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48779)において、これ以上下げられないとされる構造失業率を2%半ばと推計している。

一般的に、構造失業率の推計には、UV分析と潜在GDPによる分析の二通りがある。昨年の本コラムでは前者のUV分析を使ったが、今回は後者である。

いずれにしても、二つの異なる分析によっても、日本の構造失業率が2%半ばと同じになっているのは興味深いことだ。数学の問題では、二つ以上の別の解法により解けば、その命題はより正しいとされるが、経済学でも別の二つの方法で同じ結果であれば、よりもっともらしいといえるだろう。

 デフレ論者は否定するだろうが…

以上の分析を総合すると、構造失業率は2%半ば程度であろうとともに、それに対応するインフレ率はインフレ目標の2%である。その状態は完全雇用なので、内閣府の潜在GDPは4.5%程度過小評価になっている。

であれば、現実のGDPをその「完全雇用水準」まで引き上げるためには、有効需要25兆円、財政出動に換算して20兆円規模となる。逆にいえば、そこまでGDPを高めれば、インフレ目標2%を達成し、同時にこれ以上下げられない構造失業率2%半ばを達成することになる。この意味で、適度なインフレの下で、回避できない失業を除いて完全雇用を実現する合理的な政策となる。

さて、本題に戻ろう。今回のGDP速報結果を分析すれば、公共事業に支えられて、民間需要が誘発された形である。ここで、すでに民間需要に火がついたと勘違いして、経済対策の手を緩めれば、元の木阿弥になるだろう。というのは、現在は実際には完全雇用にほど遠い状態であり、賃金上昇に本格的な火のついていない状態だからだ。

実際、安倍政権下について考えれば2013年度は公共事業が活発で経済も良かった。しかし、2014年度以降公共事業が低調だった。消費増税の影響も相まって、緊縮財政傾向になり、GDP成長率は今一歩だった。

現時点で財政問題は気にする必要はない。これは、2015年12月28日付け本コラム(「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか… http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)などで繰り返してきたので、読者ならばおわかりだろう。

むしろ国債市場では国債「玉不足」が言われている状況だ。今の低金利時代に、将来投資を行い、同時に、インフレ目標2%、構造失業率2%半ばを達成するのが正しい経済政策である。そうすれば、民間需要に本当の火がつくだろうし、過去20年間以上苦しんだデフレ経済からも本当に脱出できるだろう。

このように書くと、デフレ論者から、「金融政策だけではインフレ目標が達成できなくなったから、また別の手を出してきた」という批判が出てくるだろう。それは違う。上にも書いたが、2014年度以降は消費増税の影響もあり、緊縮財政だったので、それが金融政策の足をひっぱってきた。だから、それを改めよという話をしているのだ。

デフレ論者は消費増税・緊縮財政指向なので、彼らの主張が日本経済のためにならないのは、改めていうまでもない。

【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

確かに、「年率実質4%成長」という数字は、「良い数字」であることは間違いありません。そして、実質成長が6期連続のプラスなのも、それが11年ぶりであることも、事実です。

しかし、それら数字についての「解釈」は、いずれも著しく「不適切」であるとしか言いようがありません。

なぜなら、「いい数字」もある一方で、日本経済が未だにデフレであることを明確に示す「わるい数字」も存在しているからです。

ついては以下、現状の経済状況がいかなるものなのかを、客観的視点から確認してみることにしましょう。

まず、上記の報道における「景気が良い!」という論調の根拠はいずれも「実質成長率」(前期比)に基づくのですが、景気判断は下記のような多様な尺度を参照せねばなりません。
・実質成長率(前期比、対年前年度比)
・名目成長率(前期比、対年前年度比)
・デフレータ変化率(前期比、対年前年度比)
こういった尺度が全て良好になったときはじめて、本格的な成長軌道にのったと判断できるのです。それはまさに、健康診断の時の「血液検査」と同じようなもの。健康な人は全ての尺度が「良好」なのです。不健康な人は、これらの内、複数の尺度が「不健全」なのです。

さて、その視点で、今回公表された各数値を確認しますと以下となっています。
・実質成長率———–前期比年率3.9%——前年比2.1%
・名目成長率———–前期比年率4.6%——前年比1.7%
・デフレータ変化率—–前期比0.2%———-前年比-0.4%
ご覧の様に、成長率は「前期比」に比べれば随分と「景気の良い数字」なのですが(実質、名目共に年率4%前後以上)前期比でみれば、たいしてよい数字とは言えません。

何よりも深刻なのは、デフレータ(物価)がほとんど改善していないという点(前期比の増加率0.2%という数字は到底力強い上昇とは言えません)です。むしろ「前年比」で見れば「マイナス」の状況にあります。

そもそも、実質成長3%と名目成長4%(つまり、デフレータ1%増)を目指している我が国政府の基準を踏まえれば、これら数字は以下の様に判定することもできるでしょう。
・実質成長率     前期比年率3.9%(○)  前年比2.1%(△)
・名目成長率     前期比年率4.6%(○)  前年比1.7%(△)
・デフレータ変化率  前期比0.2%  (×)  前年比-0.4%(×)
これでは、「景気は良好!」とは決して言えません。

つまり、「前期比」の年率「実質」成長率だけを見て、「かなりよい景気だ、だから、もう対策は不要だ!」というマスコミ論調は、まさに「木を見て森を見ず」というか、「森の中の一本の木だけを見て、森どころか隣の木すら見ていない」、極めて愚かな論調に過ぎません。

確かに、今回は、実質成長が「6期連続」で、かつ、それが「11年ぶりだ」なのではありますが、だからといってこれだけで、すぐに、今景気は良いという判断にはなりません。

なぜなら、「実質成長率」は、「デフレが加速してデフレータ(物価)が下落」すれば、上昇するものだからです。つまり、「実質成長率は、デフレの深刻さの尺度」にすらなり得るのです!

実際、下記グラフからも明白なとおり、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています(黄色)。


これこそ、「6期連続、実質成長率がプラス」となった理由です。実際、このグラフに示した「名目成長率」(前年比・青線)は、今期こそ、僅かに上昇傾向を見せていますが、ここ最近、ゼロ近辺を推移しているということ、つまり、「成長していない」事を示しています!

日本経済は、本格的な好景気状況からはほど遠い状況にあるのです。

とはいえ、「今期」は、少なくとも「前期比」で見れば、デフレータ、名目成長率、実質成長率が全てプラスという、(他の国なら当たり前の)「正常」な数字も、久々に一部において見られたわけですが、これがなぜもたらされたのかをしっかり認識する必要があります。さもなければ、誤診に基づいて間違った治療を施すヤブ医者のように、日本経済を完全に治癒する(=デフレ完全脱却させる)ことが不可能となるからです。

その一部の理由は、「公共投資は5.1%増-補正予算の効果でプラスに寄与」というものです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-08-13/OUAL466S972801

つまり、ちょうど一年前の昨年夏に調整した、アベノミクスにおける「大型景気対策」の効果がようやく効き始めた、と言うのが、「今期」における一部良好な数字の原因だったのです。この事を踏まえれば、この景気回復基調を確実なものにするためにはやはり、政府の経済対策の当面の継続が必要であることが見えてきます。

ただし、これ以外にも、「個人消費や設備投資など内需が堅調」という点も、事実です。今期は消費も投資も双方、おおよそ6000億円(名目値)ずつ前期から拡大しています。

この消費と投資の回復は一体なぜもたらされたのか──その根拠は、下記のグラフから読み取ることができます。


このグラフは、日本経済を構成する「四主体」の内の三つ、「民間」「政府」「海外」の「貯蓄態度」を示すもの(日銀資金循環統計から)。

この「貯蓄率」という数字は「貯蓄額の対GDP比」ですから、各主体が「ケチ」になって「金づかい」が悪くなって貯金ばかりするようになると「上がり」ます。一方、各主体が「豪気」になって「金づかい」が良く(=荒く)なると、は「下がり」ます。

ご覧のように「民間」の貯蓄率は、この1年ほど「下落」してきています。これは、民間企業が「ケチ」な態度から「豪気」な態度にシフトし始めた事を意味しています。

別の言い方をすると、「内部留保する傾向を弱めてきている」という事を意味します。つまり、民間企業が、儲けたオカネを貯金する(=内部留保する)のでなく、消費や投資に使うようになってきたということを示しているのです。これこそ、「今期の消費と投資の拡大」を意味する統計値です。

では、なぜ、民間が貯蓄率を減らし、投資や消費を拡大し始めたのでしょうか。それは、海外の貯蓄率が下がってきた」という点に求められます。

ご覧の様に、この3年ほど、海外の貯蓄率は下落し続けています。これはつまり、外国人が日本で使うカネの量が、過去三年の間、増えてきた事を意味します。これは要するに、(相対的に)「輸出が増えてきた」ということを反映したもの。実際、ここ最近景気の良い企業の多くが、「輸出企業」だったのです。

http://datazoo.jp/w/%E8%BC%B8%E5%87%BA/32830318

さて、これらのデータを全て踏まえると、我が国のここ最近の経済動向は、次のようなものだ、という「実態」が見えてきます。
①ここ2,3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言う次第です。

さて、この実情を踏まえれば、確かに、(金融緩和→円安→外需拡大をもたらした)アベノミクスは着実に、一定成功していることが見て取れるのですが、それと同時に、未だ、我が国経済の「成長の兆し」はとても確実で安定的なものだとは言えない、という姿も同時にくっきりと見えてきます。なぜなら我が国の現時点の成長の兆しは、「外需頼み」のものに過ぎず、したがって、極めて不安定なものと言わざるを得ないからです。

つまり今後、例えば朝鮮半島の緊張の高まりを受けて世界経済の成長が鈍化して外需が冷え込んだり、あるいは、円高で輸出企業が厳しくなったり、あるいは、石油価格が高騰したりすれば、この好景気への僅かな兆しも、瞬く間に失われ、完全デフレ状態に舞い戻ってしまうことになる、という事が危惧されるのです。

そうなる前に一刻も早く、デフレを終わらせ、「外需頼み」で回復し始めた日本経済を、力強い確実な成長軌道に乗せるべく、徹底的な景気対策を図る必要があります。

そもそも、我が国政府は、消費増税以降、徹底的な「緊縮」政策を、ここ数年継続させていた、という事実を忘れてはなりません。改めて先に紹介したグラフの「青線」をご覧ください。

これは政府の貯蓄率。ご覧の様に、我が国政府は、貯蓄率を「拡大させ続けて」いるのです。

これはつまり、増税をして緊縮財政にして、カネをマーケットから吸い上げ続けている、という事を示しています。すなわち我が国政府は、外需が改善してきているのを良いことに、自分だけカネをため込んで、マーケットで使わず、景気の足を引っ張り続けている、と言うことです。

この緊縮的な態度を辞めない限り、デフレ脱却なぞ、絶対にあり得ません。

デフレを完全脱却させるために、外需と一緒に、政府もまた、貯蓄率を引き下げ、民間がさらにさらに投資と消費を拡大できる状況を作らねばならないのです。

アベノミクスの成功、すなわち、デフレ完全脱却は、確実に私達に近づいてきています。そのチャンスを手にするか否かを決めるのは、もちろん、政治の判断です。

我が国内閣の、客観的な情報に基づく理性的判断を、心から祈念したいと思います。

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2017年8月20日日曜日

「徴用工は反日カード」 呉善花氏、佐賀で講演―【私の論評】徴用工問題、慰安婦問題は永遠に突っぱねよ(゚д゚)!


拓殖大教授の呉善花(オソンファ)氏
 評論家で拓殖大教授の呉善花(オソンファ)氏は19日、佐賀市天神のアバンセホールで講演し、日本統治下の朝鮮半島での徴用工問題について「韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は人権問題として持ち出した。新たな反日カードであり、言葉だけが国際社会で一人歩きすると危険だ」と語った。

 文大統領は17日、徴用工について「個人の権利は残っている」と述べた。これに対し、日本政府は日韓請求権協定(1965年)で「完全かつ最終的に解決済み」と抗議した。

 呉氏は「徴用工問題はまだ盛り上がっていない。しかし今後、韓国側が人権問題として世界に訴えれば、専門家が反論しても通じてしまうだろう。慰安婦問題と同様に、(反日の)大きな力となる危険がある」と警鐘を鳴らした。

 文大統領は徴用工について、北朝鮮と共同での被害実態調査にも言及した。呉氏は「日本を巻き込み、北朝鮮を支援したいとの狙いがある」と指摘した。

 また、長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)を舞台にした韓国映画「軍艦島」(柳昇完(リュスンワン)監督)について、「過剰な演出がある。いくら映画といっても、歴史を扱う際は、事実関係に忠実であるべきだ」と批判した。講演会「佐賀土曜セミナー」で語った。

【私の論評】徴用工・慰安婦問題は永遠に突っぱねよ(゚д゚)!

第二次世界大戦は、大規模な戦争で、どの国でも自国民を徴用工として募集し、様々な軍需産業などで労働をさせました。この徴用工という言葉が韓国では正しく認識されていないようです。

彼らの主張では、戦時中に日本によって強制労働させられたのが、徴用工であるとしています。さらには、彼らが主張する徴用とは、人権を無視したものであったとしていますが、それも彼らの妄想もしくは、歴史の捏造にすぎません。それそも、徴用は強制労働ではないし、人権を無視したものでもありませんでした。

徴用工については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
【西村幸祐氏ツイート】まるで戦時中の徴用に強制的という言葉をつけるのが正しいように報道する劣悪なNHK長野の報道―【私の論評】歴史的事実常識を知らなさすぎのマスコミ、このような報道ばかりするというのなら存在価値はない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に"徴用"という言葉に関して、関連のある部分のみをこの記事から引用します。

"
徴用(ちょうよう)とは、戦争中などに、政府が国民や占領地住民を強制的に動員して、兵役を含まない一般業務につかせることです。

これも、当時のアメリカの女性徴用に関するポスター

日本では、1939年(昭和14年)に国民徴用令が制定され、第二次世界大戦の終結まで行われました。また物品や施設、船舶等を徴発することも徴用と呼びます。占領地住民に対する徴用・徴発についてはハーグ陸戦条約に規定があり、正当な対価のない徴用・徴発は禁じられています。

戦時中の日本では、1944年8月8日、国民徴用令の適用を免除されていた朝鮮人にも適用するとした閣議決定がなされました。その後、1944年9月より朝鮮人にも適用され、1945年8月の終戦までの11ヶ月間実施されました。

日本本土への朝鮮人徴用労務者の派遣は1945年3月までの7ヵ月間でした。戦後、賃金の一部が未払いであったことが問題とされましたが、1965年に締結された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定によって未払い賃金を含めた経済支援が韓国に行われ、完全かつ最終的に解決されました。

当時徴用された朝鮮人の名簿「半島労務者」、「給与係」と書かれ
ている所に注目 これは今でいえば、賃金台帳のようなものです。

強制労働とは、賃金も対価も何もない労働のことで、この典型例は、終戦後も長きにわたって当時のソビエトのシベリアで、旧日本兵が食料も満足に与えられず、極寒の地で強制労働させられ、大量に死亡したという事実があります。

徴用とは、戦時中にアメリカなど含むどこの国でも実施されたことであり、従事する人には給料が支払われました。日本をはじめとする、アメリカを含む文明国の徴用を強制労働と称するのはは完全な間違いです。

戦時徴用され航空機づくりの作業に従事しているアメリカ人女性
強制労働というに相応しいのは、旧ソビエトの日本兵に対する強制労働です。これは、当時も現在に至るも給料など一銭も支払われておらず、完璧なハーグ陸戦条約違反でした。日本の徴用を強制労働とするのは完璧な間違いであり、認識不足です。

なお、当時のソビエトに抑留されて、強制労働によって亡くなった旧日本軍将兵の慰霊塔が日本各地に建立されています。その一つの写真を碑文を以下に掲載します。

忠霊園 高知県高岡郡東津野村 「シベリア虜囚の叫び」
碑文 
ソ連スターリンは全面的降伏をした我が日本軍を、戦争中の捕虜として流刑の地シベリアに強制連行して酷使し飢えと寒さに耐えられず八万人の将兵が惨めたらしく死んでいきました。 
これは国際法・人道上赦されぬ行為であります。 
この像は疲労困憊した兵が虱の猛威にたまりかね、伐採山で裸になり痩せ衰えた我が身体を見て落胆しながらも「俺は生きて帰り、この凍土の下に無念に眠る数多くの同胞の霊を浮かばせてやらねばならない」と故国の空に叫ぶ姿を描いた銅像です。 
世界のそれぞれの国がその人権を守り、永久の平和と戦友の冥福を祈るため、慰霊の像を建立するものです。 
平成十一年十月二十日之建  高知県シベリア強制抑留者慰霊銅像建立委員会
これが、強制労働というものです。
"
この記事には、ソ連が旧日本兵に対して、違法な強制労働をさせたことを掲載しました。そうして、この当時は朝鮮人は日本人でしたから、この中にも朝鮮人がいました。何と2000 人もの朝鮮人がソ連により、シベリアに強制送還され、そこで強制労働をさせられていました。

しかし、朝鮮人の被害はそれだけではありません。実は、ソ連は1937年に21万人にも及ぶ沿海州在住朝鮮人の家と土地を奪い、中央アジアに強制連行し、強制移住させ、強制帰化させました。当事の新聞の記事が残っているので、その記事を以下に掲載します。

kyosei_ijuu3.jpg

大阪朝日新聞 1937(昭和12)年12月7日 
"ソ連の回答不法"朝鮮同胞の強制移住問題外務当局、談話発表 
極東ソ連領に在住する朝鮮人強制移住問題に関し外務当局は再三ソ連当局に厳重抗議を重ねその反省を要望したるに拘らずソ連側では未だにその誠意の見るべきものなきに鑑み当局では六日夕刻左の情報部長談を発表、ソ連側の反省を求めた 。
 
 極東ソ領には革命以前より多数の朝鮮人が居住していたが、昭和七年にはその数約二十万に達し大部分は沿海州烏蘇里州方面において農業に従事し、また海岸地方の居住者は漁業に従事し、いずれも平和的にその経済生活を営んで来た、しかるにソウェート政府は本年九月はじめよりこれら朝鮮人を強制的に中央アジヤ方面に移住せしめることとしたため朝鮮人は永年の居住地を捨て多大の不安裏に異域に向って輸送せられつつある現状である。 
朝鮮人は韓国時代からその国籍を離脱する方法がなかったのであるが、帝国はその制度を継承しているので朝鮮人は仮りに他の国籍を取得しても斉しく帝国臣民たることには変りなく、これは代々ソ領に居住して来た朝鮮人についても全く同様であり、殊に在ウラジオストック帝国総領事館に登録せられ明かに帝国の国籍を有するもののみでも昭和十一年十月一日現在において九百七十八人に達する次第である。 
よって帝国外務省は在ソ帝国大使館に訓令し強制移住に対し十一月十三日ソ連へ厳重抗議せしめ、特に約一千人の朝鮮人については調査方要望せしめたところ十一月二十七日外務人民委員部より朝鮮人に対するソ連籍を主張しわが方の抗議をさらに容れ得ない旨を回答して来たがその理由なきことは明かであってわが方としては引続きその主張を堅持し更に適当の措置を考慮することとなろう。
【出典】・神戸大学 新聞記事文庫
これに関しては、複数のソースが存在することから、このような事実があったのは間違いないです。そうして、当事の日本政府が当事のソ連に対してこのような抗議をしたのは、当然のことです。当事は、朝鮮人は日本国民だったからです。

さて、日本に対しては、徴用工を問題にしようとしている韓国ですが、なぜかロシアに強制連行されたこれらの事例に関しては、ロシアに対して抗議をしたという話は聴いたことがありません。

なぜでしょうか、無論ロシアに対して、これを抗議したとしても、ロシアは全く取り合わないからでしょう。しかし、本来は厳重抗議すべきです。

このブログでは以前、たとえ韓国政府が何かを言ったり、行動をしても、慰安婦問題に関しては、日韓間には日韓合意後全く問題がないという姿勢を崩すべきではないことを主張しました。なぜなら、この姿勢を崩してしまえば、それらこそ韓国の思う壺だからです。無論、安倍政権はこの姿勢を崩す気は全く内容ですが、その後の政権もこの立場を一切崩すべきではありません。

徴用工の問題に関しても、今後韓国政府が何かを言ったり、行動をしたとしても、日本政府は、日韓請求権協定(1965年)で「完全かつ最終的に解決済み」という立場を一切崩すべきではありません。

ハーグ陸戦条約違反という国際法違反をして明らかに自らに非のあるソ連、現在のロシアはこの問題に対しては、その存在すら認めないようです。ソビエト連邦は枢軸国の将兵や民間人だけではなく、ポーランドを占領するとまもなくカティンの森事件などでポーランド人将校や民間人などを大量虐殺しました。

ましてや、これらの問題に非のない現状の日本は、慰安婦問題も、徴用工問題に関しても、日韓合意などを根拠として、これからも永遠に突っぱねるべきです。

たとえ、韓国が世界中に慰安婦象を立てまくったり、国際社会に訴えたとして、他の国が韓国の尻馬に乗れば、「貴国の植民地政策はどうなのか、その問題は解決済みなのか?わが国と韓国との間では、すでに完全かつ最終的に解決済みである。それに対して貴国がわが国に対して意見を言うことは内政干渉である」と突っぱねれば良いのです。

民間レベルでも、その他のレベルでも、そうすべきです。私も個人的にでも、韓国人とこれらについて話を機会があったとしたらその立場をとります。

それでも、韓国側の態度が改まらなければ、現状の朝鮮半島情勢がある程度落ち着いた後には、国交断絶で良いと思います。そのほうが余程良いです。もう面倒に巻き込まれたくありません。これが、多くの日本人の心情だと思います。

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2017年8月19日土曜日

【日本の解き方】景気拡大による人手不足、苦境に陥るのはブラック企業 労働者には賃上げの好機―【私の論評】長期と短期でみた雇用対策のありかた(゚д゚)!

【日本の解き方】景気拡大による人手不足、苦境に陥るのはブラック企業 労働者には賃上げの好機

このところの人手不足を深刻だと感じ、景気への悪影響を懸念する企業も少なくないようだ。ただ、人手不足は労働者や景気にとって本当に問題なのか。そして人手不足を解消するにはどのような方法があるのか。

 産経新聞社が7月下旬から8月上旬にかけて主要企業121社を対象に実施したアンケートによれば、4割近く(無回答を除く)の企業が人手不足を感じているという。人手不足は商機を逃す要因にもなりかねず、景気に悪影響を与えるとの懸念も6割に上った。

 これは、企業側からみた話である以上、当然ともいえる。企業にとって人手不足は、人件費を増やすコストアップ要因になるし、もし人手不足に対応できなければ企業の死活問題にもなる。

 ただし、人手不足になる要因は何かと言えば、景気拡大を受けた仕事の増加である。しかも賃金の上昇で対応するとしても、企業が倒産するまで賃金を上げることはもちろんなく、基本的には企業収益の範囲内である。つまり、景気拡大によってこれまで儲けた分と、今後儲ける分の一部を労働者に還元するだけのことだ。

 このように考えれば、企業の人手不足は、企業の担当者にとっては大変なことだろうが、その背景に仕事の増加があるので、うれしい悲鳴といったところだ。この意味では、人手不足が景気の悪影響になるというのは、大げさな表現であり、せいぜい人手不足に対応できない企業の経営が大変になるという程度の話である。

 もちろん、労働者から見れば、人手不足は、就職の選択肢が広がるという意味でありがたい話だ。

 11日のNEWSポストセブンで堀江貴文氏が「仕事で悩んでいるなら才能よりも環境を疑え」と興味深いことを書いている。仕事や人間関係で悩んでいたら「さっさと辞めたらいい」としているが、まったくその通りだ。

堀江貴文氏
 もっとも、アベノミクスの前の民主党政権時代は、そう気安く言える経済環境ではなかった。失業率が今よりも高かったので、会社を辞めても、次の仕事を確保するのが難しかったからだ。下手をすると、会社の仕事に悩んで自殺という最悪の結果になることもあった。

 ところが、今では失業率は低くなり、人手不足なので、新たな会社を探すのは難しくない。これは、自殺者数の減少という形で成果になっている。

 いずれにしても、原因として景気拡大による仕事の増加がある限り、人手不足は経済全体にとって良い話だ。

 一方、苦境になる代表格は、賃金切り下げで収益を上げてきたブラック企業だ。本コラムでも書いてきたが、デフレ時代には売り上げ減少の中、賃金カットを行うブラック企業が勝者になる。しかし、脱デフレ時代には、拡大する収益を労働者と分け合うような企業が勝者になるはずだ。

 企業が人手不足を悪者にするのは、ブラックな側面が出たとみるべきだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】長期と短期でみた雇用対策のありかた(゚д゚)!

人手不足の問題が深刻化する中、労働者派遣業界にもその影響が及びつつあるようです。帝国データバンクが8月8日に発表した「労働者派遣事業者の倒産動向調査(2017年上半期)」によると、労働者派遣業の倒産件数は2年連続で増加しています。本来、人手不足の状況は労働者派遣業の追い風となるはずですが、深刻な人手不足が派遣する人材の確保も困難にしている実態が明らかとなりました。

調査によると、2017年上半期(1月~6月)の労働者派遣業の倒産件数は37件となり、前年同期の33件から12.1%の増加となりました。上半期の倒産件数は2年連続となります。負債総額は前年同期比30.3%増の37億8300万円となり、こちらも2年連続の増加となっています。

派遣の仕組み
年ベースで見ると、倒産件数、負債総額共に2014年を境に2年連続の減少を続けており、2016年は倒産件数57件、負債総額39億9600万円でした。2017年は上半期を終えた時点ではありますが、共に増加に転じる可能性が高いです。帝国データバンクによると、2017年7月単月での倒産件数は6件となっており、通年では70件程度が見込まれています。また、負債総額に至っては、7月単月で4億7500万円となっており、1月から7月の累計で既に前年を上回っています。

本来であれば、人手不足が叫ばれる現在の環境は、労働者派遣業に追い風となるはずです。しかし、現在の深刻な人手不足は派遣する人材の確保も困難にしており、皮肉な事に人手不足が労働者派遣業界自体も苦しめているようです。

帝国データバンクによると、2017年上半期において、労働者派遣業界の景況感を示す景気DIは54.7と基準となる50を上回っています。国内平均が46.1と50を下回る中、業界としての景気は悪くないです。

問題は深刻な人材不足にあります。雇用の過不足を表す「雇用過不足DI」を見ると、労働者派遣業は非正社員で65.4と基準の50を大きく上回ります。国内平均は54.9となっており、業界の大きな課題となっています。また、正社員の「雇用過不足DI」も62.1となっており、こちらも基準の50や国内平均の57.4を上回ります。ここ数年、労働者派遣業の「雇用過不足DI」は高止まりしており、派遣スタッフや自社の正社員の確保に頭を悩ませている事が分かります。

労働者派遣業における人手不足の原因は、近年の雇用環境の改善が大きな要因となっています。厚生労働省が発表した2017年6月の正社員の有効求人倍率は1.01倍となり、2004年の調査開始以来、初めて1倍を超え、求人が求職者を上回る状態となっています。パートタイムを含めた全体の有効求人倍率は1.51倍となっており、こちらはバブル期の水準も上回り、高度経済成長末期以来の水準を叩き出しています。労働市場は売り手市場となっており、派遣スタッフを希望する労働者が減少していると見られます。

人手不足がのしかかる労働者派遣業ですが、その影響を大きく受けているのは中小零細業者であるようです。冒頭の調査によると、2017年上半期の倒産件数37件の内、負債総額5000万円未満のものは26件となっており、その比率は70.3%に上る。負債総額5000万円未満の倒産が全体の7割を超えるのは、調査を開始した2008年以降で初となります。

対する大手は国内全体の人手不足を追い風とした事業運営を行っています。業界最大手であるリクルートホールディングス <6098> が8月10日発表した、2018年3月期第1四半期決算によると、同社の国内人材派遣事業の売上高は前年同期比12.6%増の1257億円となっており、好調です。テンプホールディングスから社名変更したパーソルホールディングス <2181> の2018年3月期第1四半期決算でも、人材派遣事業の売上高は前年同期比10.4%増の1174億円となっています。

大手では派遣スタッフの人材確保に向け、賃金を上げる動きも進んでいます。また、一部では派遣スタッフの契約を従来の有期雇用から無期雇用に切り替える動きも出ています。大手が資金力や知名度を活かした人材確保に動く中、中小零細は非常に厳しい戦いを強いられています。人手不足の問題は簡単に解決する問題ではありません。労働派遣業は人材を確保出来た者のみが生き残れる消耗戦に入っていく可能性もあります。中小零細の人材派遣業者は特色を出していく等、生き残りに知恵を絞らなければならないでしょう。

株式会社ネオキャリアの女性スタッフ
たとえば、人材サービスを手がける株式会社ネオキャリア(東京・新宿区)は、45歳以上限定の労働者派遣サービスを今月中に始めます。

今の労働市場は、人手不足が深刻化しており、若い人にとっては「売り手市場」。一方で、1970年代半ばに生まれた「ロスジェネ世代」には、90年代後半の就職氷河期もあって、中年フリーターが増えています。こうした人材を活用する狙いがあるようです。

「派遣業界は今まで、45歳未満か、50歳以上のシニア層の募集が基本でした。45歳から50歳の“エルダー層”には求人がない状態だったのです。しかし、今の中高年は肉体的に若く、仕事に就くと定着率が高く、出勤率も良く、勤務態度もマジメだと派遣先企業からの評判がいい。それが、45歳以上のサービスを提供しようと考えたキッカケです」(ネオキャリア広報担当)

職種は、コールセンターやデータ入力などの事務職を中心に、清掃業務などもあるといいます。時給は1500円から2000円。失職中やフリーターの中高年にとって、文字通り“ネオキャリア”となるのかも知れません。人材コンサルタントの菅野宏三氏は「労働市場の実態に即したサービス」と評した上でこう続けます。

「これまで40代以上は求人が極端に少なく、仕事を探すのが困難な状況が続いてきました。しかし、若い働き手でなくても構わない職種がどんどん増え、企業サイドも中高年を積極的に受け入れるようになっている。人手不足を、コストと時間がかかる若い人材ではなく、45歳以上の中高年で補おうということでしょう。“苦肉の策”とも言えますが、方向性は正しいと思います」

なお、中高年の採用は“人柄重視”だそうです。若者とも和やかに働ける人が重宝されるらしいです。

今後人手不足がさらに続くと、さらに高齢者や女性に焦点があてられるようになるかもしれません。

一昔前の肉体労働者(実際ほとんどの労働者がこの範疇で、これらの多くは、モノ運んだり、つくったり、農業、漁業などの労働者であり、それが大勢を占めていた)であれば、55歳にもなればもう十分働いたという感覚であり、そこからさらに働きたいなどというものはほとんどいませんでした。多くの人が、50歳にもなれば、定年して引退生活することを心待ちにしていました。

一昔前のアメリカの肉体労働者
しかし、知識労働者は違います。彼らは、まだまだ、健康で頑丈であるばかりではなく、まだまだ働く能力が十分にあり、また、定年した後でもそうしたいと願っています。ただし、ここでいう知識とは仕事に適用できる知識を意味します。本や百科事典に書かれてあるようなものは、仕事に直接適用することはできず、単なる情報にすぎません。そうして、知識を仕事に適用するのが、知識労働者です。

そうして、現代ではこの知識労働が仕事の大部分を占めています。モノ運んだり、つくったり、農業、漁業などの労働者の労働者は、少数派になりました。それに、このような労働者ですら、知識を仕事に適用する場面が増えてきています。ここは勘違いしないでいただきたいと思います。

年金が破綻するかもしれないと思われている日本でも(実はさほど深刻ではないのですが、本日は本題から外れるので述べません)、おそらくアメリカの後を追い、いずれ定年が70歳まで、引き上げられるか、実質上の定年撤廃(働けるまで働く)という時代がやってくるかもれしません。

世界中の先進国や新興国では、少子高齢化で若者の数が少なくなっているため、雇うのが困難になりつつあります。さらには、若年層は、企業で再教育が必要ですが、高齢者、特に高学歴の知識労働者については、その必要もないです。

数年前までの雇用状況が悪化していた状況では、そのような必要はないですが、これから日本も高齢者を活用することを本気で考えなければなりません。いずれ、高学歴の高齢な知識労働者の奪いあいになることも十分に考えられます。

ただし、若年層はフル・タイムで働くことを前提とした人事・労務管理が行われてしかるべきですが、高齢者に関しては、臨時とか、契約、コンサルタントなど、多様な就労形態による人事・労務管理が重要になってきます。

しかし、今後さらに景気が上向き、さらに少子高齢化が進んだことも考え、上記のようなこと記憶にとどめておいて、手をうつべきと思います。

建築現場で働く女性
それにしても、雇用に関しては短期的展望と、長期的展望を持っておく必要があります。現状の人手不足は、2013年から始まった日銀による金融緩和に源があります。日本では、金融政策と雇用とが密接に結びついているという考えは一般的ではありませんが、欧米では常識です。簡単にいうと、金融緩和をすれば雇用は増え、引き締めをすると雇用は減ります。

一方、2014年4月からは、日本はデフレにから完全に脱却していなかったにもかかわらず、8%増税を実施してしまったため、個人消費が減退して、GDPが伸び悩みの状況でした。

しかし、その状況も金融緩和を継続して行っていたせいもあって、改善されつつあります。このブログでも先日掲載したように、デフレ脱却まで「もうひと押し」のところにます。

実際この記事にも掲載したように、8月14日に発表された2017年4-6月期のGDP速報値では、実質GDPの季節調整済前期比(年率換算)が+4.0%と、大きく上振れました。

しかし、この状況がいつまで続くかは保証の限りではありません。今後、過去のようにデフレ下で金融引締めや、増税などの緊縮財政をするようなことはなく、まともな金融政策や、まともな財政政策が実行されるかどうかを見極めるべきです。

それにしても、直近の人手不足は何とかしなければなりませんから、特に人手を必要とする小売・サービス業のような業態では、営業店舗などの現場では、過去のように新卒ばかりに頼るというのではなく、中高年の活用を積極的にすすめるべきです。この分野では、女性の活用も従来から進んでいますが、女性の活用もさらにすすめるべきです。

そうして、これから先日本でもまともな金融政策や、財政政策ができるようになると判断できた場合は、さらに雇用政策を変えていくべきです。運悪くもしそうならなければ、残念ながら、再度ブラック的になるしかありません。もちろん完全なブラックはいけませんが、デフレ期には企業がある程度ブラック的になるのはやむを得ません。それは、企業の責任ではなく、政府の経済対策のまずさのせいです。以下には、日本の金融・財政政策がまともになると判断された場合のみ記載します。

先に述べたように、現場だけではなく、会社の中枢である本部も含めて会社の様々な部署に高齢の知識労働者を配置することを考えるべきです。

そうして、このようなことを考慮しなければならない時代には、当然のことながらあらゆる市場もかなり大きく変わります。

日本では、過去デフレが続いたので、顕著ではなかったのですが、日本のように極端なな長期のデフレに見舞われなかった先進国においては、50歳未満と、それ以上の年代層の2つの異なる労働市場が併存しています。日本もそのようになります。日本はデフレだったために、この労働市場の二分化が進みませんでした。

若者が就職に苦しむような時代には、当然のことながら高齢者の労働市場など出来上がる余地もありませんでした。

このように2つに別れた市場に対応するマーケティングと、イノベーションが必要になりす。特に50歳以上の市場に対応するためには、若者では無理であり、高齢の知識労働者は欠かせなくなります。

いずれにせよ、このように労働市場がはっきり二分化する時代にはやくなってほしいものです。

さらに、労働市場だけではなく、あらゆる市場が多様化します。1920 年代、30 年代まで:あらゆる国が多様な文化と市場を有していました。  たとえは、農村市場、富裕市場などです。

 第2次大戦後は、あらゆる先進国が大衆向けの唯一の文化と市場を有する時代が続きました。 今日、再び市場の多様化の兆しがみられます。たとえば、ハイテク株のバブル市場(45歳未満)、長期投資市場(50歳以上)、高学歴者のための継続教育市場、そうして少子化がこれからも進みか つて4、5人の子供にかけていた総額を超える額を1人にかけるようになり若年市場ができあがります。

日本のように極端で長期のデフレに見舞われなかった他の先進国では、市場の多様化がかなり進みましたが、日本ではそうではありませんでした。今後、まともな経済対策が行われ、不況が数年続くようなことがあっても、デフレが長期にわたって続くことがなければ、このようなことが日本でも起こります。

このような市場の多様化に対処するためのもマーケティング(顧客の創造)、イノベーションは必要不可欠であり、特に高齢者の市場には若者だけでは対処できません。質量ともに、幅広い人材が必要になります。

とにかく、このような状況にはやくなって欲しいものです。そのためにも、政府はこれからまともな経済対策を実行して、数年間不況が続くようなことは仕方ありませんが、経済の癌ともいわれる異常事態のデフレに舞い戻るようなことだけはすべきではありません。

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2017年8月18日金曜日

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

半島緊迫ウラで権力闘争 習氏と正恩氏“絶縁”にプーチン氏、米中手玉の“漁夫の利” 河添恵子氏緊急リポート

習近平
朝鮮半島危機の裏で、中国とロシア、北朝鮮が狡猾に動いている。中国の習近平国家主席は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と“絶縁状態”で北朝鮮への影響力はゼロに近いが、米国と北朝鮮の緊張を権力闘争に利用しようとたくらむ。ロシアのプーチン大統領は、北朝鮮を抱き込み、米国と中国を手玉に取る。正恩氏は、米国と中国、ロシアの間でしたたかに立ち回っている。ドナルド・トランプ米大統領は、彼らの計略に気付いているのか。東アジア情勢に精通するノンフィクション作家、河添恵子氏が緊急リポートする。

 中国共産党幹部にとって、今年夏はとりわけ暑い。最高指導部が大幅に入れ替わる5年に一度の党大会を秋に控え、引退した大物長老も含めた幹部が河北省の避暑地、北戴河に集まり、非公開の会議で人事を固める重要な時期だからだ。

 一部の中国語メディアは、習氏が宿泊する豪華別荘「ゼロ号」には、暗殺防止のために防弾ガラスが設置され、習氏が海水浴をする際には、厳格な審査を経て選抜された200人以上の水上警察官が警護にあたっている-と報じた。

ロシア人のリゾート地にもなっている北戴河
 習体制が船出して5年、習氏は権力掌握と勢力拡大を目指し、盟友の王岐山・党中央規律検査委員会書記(序列6位)とタッグを組み、「トラもハエもたたく」の掛け声で、宿敵・江沢民元国家主席派の大物を次々と刑務所や鬼籍へ送り込む“死闘”を繰り広げてきた。

 昨年10月の党中央委員会総会で、習氏は、トウ小平氏や江氏と並ぶ「核心」の地位を得たが、依然として「権力の掌握ができない」というジレンマを抱えている。習政権が掲げた夢は「中華民族の偉大なる復興」だが、習氏の夢は「江一派の無力化」であり、いまだ道半ばだからだ。

 習氏の不安・焦燥はそれだけではない。

 4月の米中首脳会談で、習氏は、北朝鮮の「核・ミサイル」対応をめぐり、トランプ氏から「100日間の猶予」を取り付けたが、7月中旬までに“宿題”をこなせなかった。北朝鮮と直結するのは江一派であり、習氏は北朝鮮に何ら力を持たないのだ。

 北朝鮮は5月、「中国が中朝関係を害している」と初めて名指しで批判した。これは建国以来の「兄弟国」中国に対してではなく、習氏や習一派への罵倒と読み取るべきだ。正恩氏は強硬姿勢を崩さず、ミサイル発射を繰り返している。こうしたなか、プーチン氏の存在感が際立っている。

 中国共産党最高指導部「チャイナセブン」(中央政治局常務委員7人)のうち、4月に、江一派の張徳江・全人代常務委員(序列3位)と、張高麗副首相(同7位)が訪露し、プーチン氏と会談した。

 習氏(同1位)も7月、2泊3日でモスクワ入りし、プーチン氏と複数回会談した。これほど短期間に「プーチン詣で」が続いた背景は、北朝鮮問題である。

 北朝鮮の金王朝は1961年、旧ソ連と軍事同盟の性格を持つ「ソ朝友好協力相互援助条約」を締結するなど、古くから特別な関係にあった。プーチン氏は大統領就任直後の2000年、ロシアの最高指導者として初めて平壌(ピョンヤン)を訪れ、正恩氏の父、金正日(キム・ジョンイル)総書記から熱烈な歓迎を受けた。

 この2年前、北朝鮮は「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の中距離弾道ミサイルを発射した。北朝鮮のミサイルは旧ソ連の技術が基盤とされる。

 プーチン氏の訪朝後、ロシア下院は「露朝友好善隣協力条約」を批准する。正日氏は2001年以降、公式・非公式で何度も訪露をするなど「プーチン氏との関係強化に邁進(まいしん)した。

 北朝鮮は一方、江一派の息がかかる瀋陽軍区(現北部戦区)ともつながってきた。瀋陽軍区は、米国や日本の最先端技術を盗み、金王朝と連携して「核・ミサイル開発」を進め、資源や武器、麻薬など北朝鮮利権を掌握したとされる。

 江一派と敵対する習氏としては、北朝鮮のミサイルの矛先が北京・中南海(中国共産党中枢)に向かないよう、プーチン氏との「特別な関係」に注目しながら、江一派の“無力化工作”に心血を注いでいる。

 習氏がモスクワ訪問中の7月4日、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した。訪露にあたり、習氏は「110億ドル(約1兆2170億円)規模の経済支援」という手土産を持参した。北朝鮮をコントロールできない苦境を物語っているようだ。

 これに対し、プーチン氏はロシア最高位の「聖アンドレイ勲章」を習氏に授与した。習氏を手下にしたつもりだろうか? ロシアはすでに、北朝鮮を抱き込んでいると考えられる。

 北朝鮮の貨客船「万景峰(マンギョンボン)号」は、北朝鮮北東部・羅津(ラジン)と、ロシア極東ウラジオストク間を定期運航している。真偽は定かでないが、プーチン氏が送り込んだ旧KGBの精鋭部隊が、正恩氏の警護や、北朝鮮人民軍の訓練にあたっているという情報もある。

 一連の危機で“漁夫の利”を得るのは、間違いなくプーチン氏である。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『豹変した中国人がアメリカをボロボロにした』(産経新聞出版)、『「歴史戦」はオンナの闘い』(PHP研究所)、『トランプが中国の夢を終わらせる』(ワニブックス)など。

【私の論評】半島情勢を左右するロシアの動き(゚д゚)!

結局、今回の朝鮮半島情勢も、ロシアが漁夫の利を得るだけなのかもしれません。これは、第二次世界大戦における真の勝者は誰だったのかを考えることが、参考になります。

さて、戦争の勝敗は何によって決まるでしょうか。もちろん死傷者も重要です。領土や財産を奪ったか奪われたかも重要です。しかし、本質は「目的を達成したか」どうかです。

当時のソ連の、戦争目的は、まず東欧の赤化です。これには完璧に大成功しました。次の目的は、満州の獲得です。これも成功です。それどころか、北朝鮮まで手中に収めました。ちなみに、現在の中ロ関係は良いとはいえないですが、スターリンが存命中には、毛沢東は忠実な手下です。

米国は結局ほとんど何も得られませんでした。英国は、失うものばかりが多く、本当にソ連の一人勝ちです。

ウェデマイヤーレポートの日本語版のタイトルは『第二次大戦に勝者なし』との題名なのですが、内容は「第二次大戦の勝者はソ連だけだ」です。


そうして、今日ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。
 
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。

プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本人はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定石が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。

ソ連の愛国者プーチン
このやり口を理解しなければ、トランプ大統領もプーチンにしてやられるだけです。

日本では、半島情勢というと、米朝の二国間だけに注目しがちであるし、マスコミもこの側面ばかり報道します。

しかし、これらの背後にあるロシアの動きも注目しなければならないということです。

ロシアが対北朝鮮で融和政策を取る最大の理由は、北朝鮮の振る舞いに対し、アメリカやその同盟国と非常に異なった解釈をしているからです。長年ロシアは、北朝鮮とわずかに国境を接しているにも関わらず、金一族に対してアメリカよりはるかに楽観的な見方をしてきました。冷戦初期、北朝鮮とソ連は共産主義の価値観を共有していましたが、そうしたイデオロギー上の連帯感はとうの昔に消え去りました。

ロシアは金一族は奇妙だが、合理的だとも考えているようです。金正恩が核兵器を手にしたのは本当です。しかし、ロシアのアナリストは、北朝鮮が核兵器で先制攻撃すれば、アメリカによる核の報復を受けて金も北朝鮮も破滅することを、金は承知しているとみています。

冷戦時代に米ソに核兵器の使用を思いとどまらせた核抑止の論理が、北朝鮮の攻撃を回避するうえでも役に立つというのです。そのため多くのロシアのアナリストは、北朝鮮が国家の安全保障に自信をもてて、アメリカによる軍事攻撃を抑止できるという点で、北朝鮮の核開発は朝鮮半島情勢の安定化に役立つと主張しています。

ロシア政府が北朝鮮問題でアメリカと一線を画すのには、他にも理由があります。ロシアは中国と同じく、朝鮮半島が統一されて北朝鮮の政権がアメリカの同盟国に取って代わられる事態をまったく望んでいません。

ロシア政府は中国に同調し、米軍による韓国への最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備に強く反発しています。アメリカが東アジア地域に重点を置く限り、ロシアが今も最優先に掲げるソ連崩壊後の地域をめぐる争いにアメリカの目は行き届きにくいです。そのうえ、金が譲歩しないことでアメリカが怒りの矛先を向けるのは中国だから、ロシアがアメリカに同調しないでいることは簡単です。

実際ロシアの見方では、朝鮮半島を緊張させた責任は、北朝鮮だけでなく同じくらいアメリカにあります。そうした見方からすると、そもそも金一族がミサイルや核を開発するのは自己防衛のためだといいます。「北朝鮮は通常、自分から仕掛けるよりやられたらやり返すタイプだ」と、ロシアの外交政策分析の第一人者で政治学者のフョードル・ルキヤノフは述べました。

「北朝鮮は、強がるのは賢明でないことをイラクのサダム・フセイン元大統領やリビアのムアマル・カダフィ元大佐の末路から学んだ上で、ミサイルや核を開発している。ミサイルや核の存在が、他国による介入の代償を許容できないほど押し上げている」。ロシアのアナリストの多くは、アメリカが北朝鮮を体制転換させると言って脅しさえしなければ、そもそも北は核兵器開発の必要性を感じなかっただろうと主張しています。

悲惨な末路を遂げたサダム・フセイン(左)とカダフィ(右)
アメリカは北朝鮮に対して核開発をやめるよう圧力をかける意思も能力もない中国に苛立ち、新たな選択肢を模索しています。アメリカとしては、このまま北朝鮮に米本土を射程に収めるミサイルの開発や実験を続けさせる事態は避けたいです。

トランプが今年1月、北朝鮮が核弾頭を搭載したICBMで米本土を攻撃する能力を持つ可能性はないと約束した手前もあります。米軍が北朝鮮の核関連施設を攻撃すれば、韓国や日本を巻き込む大規模な戦争に発展する危険性があります。

もしアメリカが北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるなど、北朝鮮政策を穏健なものにしていたら、ロシアも他国と足並みを揃え、北朝鮮に核・ミサイルの開発や実験をやめさせるよう圧力をかけたかもしれません。しかしアメリカが北朝鮮への軍事攻撃や体制転覆を選択肢として残している限り、ロシアは金正恩だけでなくトランプにも責任を負わせ続けるでしょう。

米国としては、中途半端はもうするべきではないのです。道は2つしかありません。北朝鮮の核開発を容認し体制存続に保障を与えるか、北朝鮮を攻撃し核の脅威を取り除きいずれ、北朝鮮に民主的な政権を根付けるかです。

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2017年8月17日木曜日

日本経済は今、デフレ脱却まで「もうひと押し」のところにいる―【私の論評】恥知らずの債券村住人の利己主義は排除せよ(゚д゚)!

日本経済は今、デフレ脱却まで「もうひと押し」のところにいる

安達 誠司

   出来すぎのGDP速報値

8月14日に発表された2017年4-6月期のGDP速報値では、実質GDPの季節調整済前期比(年率換算)が+4.0%と、大きく上振れた。7月10日のESPフォーキャスト調査でのコンセンサスが同1.9%だったので、エコノミストの予想をはるかに上回る結果であった。

この「4%成長」の内訳を「寄与度」が高い順にみると、1)民間消費が+2%(伸び率は+3.7%)、2)民間設備投資が+1.5%(伸び率は+9.9%)、3)政府部門(公的資本形成(公共投資)と政府消費の合計)が+1.3%(両方の合計値の伸び率は+5%、公的資本形成だけでは+21.9%)、4)住宅投資と民間在庫変動がともに+0.2%(住宅投資の伸び率は+6.0%)であった。

最近の日本経済は輸出主導で回復しているという印象が強かったが、純輸出の寄与度は-1.1%で、輸出の寄与度が-0.3%(伸び率は-1.9%)、輸入の寄与度が-0.8%(伸び率は+5.6%)であった。

数字上は、輸入の増加は成長率の足を引っ張る方向に作用したことになる(GDP統計上はマイナス項目となる)が、これは、内需が堅調に推移していることの裏返しであるので、むしろ良いことかもしれない。

また、輸出は、2017年1-3月期までは3四半期連続で極めて高い成長を実現していたので、一時的な反動減は仕方ないと思われる(2016年7-9月期、同10-12月期、2017年1-3月期の前期比年率換算の伸び率はそれぞれ、8.8%、13.2%、8.0%)。

このように、今回(4-6月期)は、純輸出を除けば、ほぼ全ての項目で成長が加速するという「出来すぎ」に近い結果であった。

この「前期比年率換算」の数字は、「ヘッドライン」といわれ、メディア等がこぞってニュースとして流すものだが、あくまでも「瞬間風速」という意味合いが強い。そこで、以下、GDPの数字をもう少し長い視点からみてみよう。

   デフレ脱却への「再チャレンジ」

ところで、今回のGDP統計で、非常に「ポジティブ」であったのは、民間設備投資の増加であったと考える。

設備投資動向の見方は色々あるが、設備投資サイクルを見る場合に用いる「投資率(GDP全体に占める民間設備投資のシェア)」をみると(図表1)、実質ベースでは16.0%、名目ベースでは15.9%で、1994年以降のピークにほぼ近い数字となった。


この投資率は、2016年半ば以降、急上昇しているが、設備投資自体の伸び率も勘案すると、今年に入ってから加速していると思われる。2017年4-6月期の内訳はまだ不明だが、1-3月期では、製造業よりもむしろ、サービス業を中心とした非製造業の設備投資拡大が顕著であった。

世間的には、企業による賃上げがデフレ脱却の鍵だと考えるむきがある。実際の安倍政権も企業や業界団体に賃上げを強く求めている。その効果もあり、賃金も上昇傾向にあるのは事実だが、資本主義社会の中で、民間企業が、自社の収益環境を無視してまで賃上げを行うとは考えにくい。そして、現局面で、政府が賃上げを民間企業に強制するのは、逆に企業を雇用を削減する方向に誘導しかねないので、経済政策としても自殺行為に近い。

また、かつては、景気回復局面において、雇用と設備投資は同時並行的に改善してきたが、最近は、雇用環境だけが一方的に加速度的に改善していた。企業にとっては、雇用も設備投資も同じ投資であると思われるが、ここまでの日本経済の現状(極めて緩やかな回復)を考えると、賃上げでさらなる人員確保に走るよりも、そろそろ、出遅れていた設備投資に目を向ける局面に入ってきたのではないかと考える。

図表1をみると、この4-6月期の投資率はちょうど2000年、及び2006年頃の水準に近いことがわかる。この過去のピークの局面では、いずれも、まだデフレ脱却が道半ば(当時は、「かなりいいところ」までは来ていたと思われるが)金融政策が引き締め方向に転換し、せっかく始まっていたデフレ脱却への歩みを頓挫させた。

その意味では、現局面は、過去、何度か失敗したデフレ脱却に向けて、ようやく「再チャレンジ」の入り口に立ったという認識を持つべきではなかろうか。
消費税率引き上げの前に

次に、問題の個人消費の状況である。1994年以降の個人消費(ここでは家計最終消費支出)は、4つの局面に分類できる(図表2)。

すなわち、①1997年4月の消費税率引き上げ前まで、②1997年4月の消費税率引き上げからリーマンショック直前(2008年4-6月期)まで、③リーマンショック直後から2014年4月の消費税率引き上げ前まで、④2014年4月の消費税率引き上げ以降、の4つの局面である。


ここで注目すべきは、③のリーマンショックの影響を除く3つの局面をみると、消費税率の引き上げをきっかけに個人消費のトレンドが鈍化している点である。

ここでの個人消費のトレンドは、その期間における消費の平均的な伸び率を示しているので、1994年以降のデフレ環境の下では、消費税率引き上げは、個人消費を一時的ではなく、中長期的に減速させてきたことがわかる。

今回の個人消費の拡大は2014年4月以降の消費のトレンドから若干上振れてはいるものの、トレンド自体を上方シフトさせるか否かはまだ定かではない。また、消費の内訳をみると、「非耐久消費財」だけがこの4-6月期に急に上振れたことが消費拡大につながっており、一時的である可能性がある。

経済政策面では、2019年10月の消費税率引き上げの是非が重要な論点になっているが、今回の消費拡大をもって、消費税率引き上げの条件が整いつつあると判断するのはあまりにも拙速過ぎるのではなかろうか。

デフレ脱却の道半ばでの消費税率引き上げは、さらに消費のトレンドを下方屈折させるリスクがある。もし、どうしても次の消費税率引き上げを実行したいのであれば、この2年でデフレから完全脱却させるような強力なリフレ政策をとるべきであろう。

   賃金は着実に上昇している

さらにもう一つの重要な論点は、賃金動向である。

GDP統計では、「雇用者報酬」という統計が発表されている。他の賃金データ、例えば、厚生労働省が毎月発表している「毎月勤労統計」や総務省が発表している「家計調査」の所得データは、労働者1人当り、及び1世帯当りの数字だが、「雇用者報酬」は、国内全体で支払われた賃金の合計を示すものといえる。

この「雇用者報酬」の推移を示したのが図表3である。

「雇用者報酬」でみると、日本全体の賃金はメディアが作り上げたイメージに反して、意外と上昇している。「アベノミクスでは賃金の上昇が不十分」という話が日々のニュース等ではまことしやかに流れているが、「雇用者報酬」は、名目ベースでも、2006年の水準を超えているし、実質ベースでも着実に伸びている。

さらにいえば、雇用拡大のペースが加速している点、1人当りの賃金の上昇率が緩やかである点、を鑑みれば、「雇用者報酬」の拡大は、ある一定階層の賃金だけが伸びている訳ではなく、雇用確保(もしくはパートタイマーの正社員化の動きなど)を通じて幅広い階層で所得が伸びていることを意味するのではなかろうか。

以上より、現状の日本経済は、デフレ克服へ「再チャレンジ」する素地が整ってきた段階であると考える。

この先、安倍政権がやるべきことは、ここまでのデフレ解消プロセス(特に雇用回復による一般国民の生活レベルの改善)を内心苦々しく思っているデフレ局面で既得権益を享受してきた階層に妥協することではなく、デフレの完全克服に向けて、財政金融両面でリフレーション政策を再加速することではないかと考えるが、支持率低下に苦慮している政権はどう出るのだろうか。

【私の論評】恥知らずの債券村住人の利己主義は排除せよ(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事の最後のほうで、「デフレ局面で既得権益を享受してきた階層」のうちその最たるものは何かといえば、それは俗に言う「債券村」の人々です。債券村とは、証券会社などの金融機関で債券を扱う人々の集まりです。そうして、これらの人たちは金融機関の中でも少数派なので「債券村」と言われているのです。

債券は、国、地方公共団体、企業、または外国の政府や企業などが一時的に、広く一般の投資家からまとまった資金を調達することを目的として発行するものです。資金調達するために発行するという点では、株式と目的は同じですが、あらかじめ利率や満期日などが決められて発行される点がちがいます。

債券を購入すると、定期的に利率分の利子を受け取ることができます。そして、満期日を迎えると、額面金額である償還金を受け取ることができます。


このように債券は、満期日に額面金額が返金されることが約束されていますので、安全性の高い金融商品です。よって利子収入を目的に資産運用をすることができます。

また2年~10年といったようにあらかじめ決めれた満期日までまつことなく、マーケットで売買することも可能です。マーケットにおける債券の価格は、日々変動しています。途中売却することにより、利子収入以外に、購入価格と償還金との差額金を得ることができることもあります。

債券には、さまざまな種類があります。国が発行する国債、地方自治体が発行する地方債、企業が発行する社債、社債を株式に転換できる権利がついているCB、外国の自治体もしくは、外国の通貨、海外の市場のいずれかで発行する外国債券などがあります。債券は、証券会社を通じて購入することができます。

金融機関では、かなり長引いたデフレで本業の貸出が思うように伸びない中、債券部門が金利低下を背景に収益を支えてきました。債券関係者はデフレ下では自分たちの存在価値があったのですが、デフレを脱却すれば本業の貸出部門が盛り返してくることになります。

債券関係者は、その焦りが出て、乱高下や先行き不安を唱えるますが、それはまさしく経済が良い方向に向かっている証しでもあるのです。

デフレでは債券部門が優勢であったのですが、脱デフレでは主役交代になり、金融機関全体としてみれば収益は上がります。しかも、経済全体でみればいい方向なので、国民全体にとっては良いことです。

現状の債券村の人の意見は本当にずれています。ブログ冒頭の記事のように日本はデフレ脱却まで「もうひと押し」のところまで来ているのは事実です、しかしインフレ目標2%もまだなのに、出口戦略がどうのこうのというようなことを口にします。これでは、デフレから脱却しきっていないうちに、金融引締めをせよといっているようなものです。

全く呆れてしまいます。債券村は、デフレで深刻だった時代に稼ぎ頭だった夢が捨てられないのです。債券村ははっきりいえば、ブラック部門なのです。彼らは、デフレでしか生息できない哀れな人達なのです。

にもかかわらず、マスコミは債券村を擁護するかのように、国債の金利を日銀が抑え込んでいることで、「長期金利が経済の体温計としての指標性を失った」などと報じています。

債券村の住人が扱う債券
しかし、これは典型的な「債券村」の内部の事情に関する話です。つまり、金融機関の債券部門の声をマスコミは拾っているだけなのです。

「債券村」の意見は、日本経済を代表するものではありません。「失われた20年」といわれるデフレ期間に、日本は世界でほぼ唯一、名目経済が伸びず、失業率が高止まりしてきました

この間、日本経済は最悪の状態でしたが、金融機関の債券部門は、金利が傾向的に低下する局面で労せずして債券売却益を享受してきました。このため、金融機関内で稼ぎ頭となって発言力を増し、社内ポジションは向上しました。「債券村」にとってはデフレ期こそ「黄金期」だったのです。

ところが、名目金利はほぼゼロになってしまいました。日銀は国債を購入することで量的緩和を行い、名目金利はゼロのままであるのですが、インフレ予測を高めることで実質金利をマイナスにしています。

デフレが継続していれば、名目金利はゼロのままで、いわゆる「流動性の罠」状態となります。日銀の量的緩和は、実質金利をマイナスにすることに意味があるのですが、「債券村」の住民は名目金利にしか注目せず、ゼロ金利になっているのは日銀のせいだと思っているようです。

確かに、日銀の国債購入で名目金利が抑えられたのですが、日銀が国債購入をしなくても流動性の罠状態では名目金利はゼロのままです。ところが、市場に流通する債券の「玉」が少なく、商売あがったりの「債券村」は日銀に八つ当たりするのです。

債券村の人は債券市場が崩壊した等と言いますが、それは彼らが投資で利益を得られなくなったというだけであり、国民生活には良い影響が出ていることを指摘させてもらいたいです。

債券村の住人はデフレを維持することで債権市場から利益を得続けることができるわけですが、経済政策は国民生活のためにあるものであり、一部の業界の利権を維持するためにあるのではありません。これを覆い隠すためにトンデモ論として有名な「デフレ人口減説」まで持ち出してくるとはまったく恥を知るべきでしょう。利己的であるにも程があります。

デフレからの本格的な脱却は生半可な努力ではできません。その意味で、名目ゼロ金利は当分の間、継続するでしょう。世間が失業率の低下により、新卒者を中心として雇用環境が改善されているにもかかわらず、その間、「債券村」の住民は文句を言い続けるのでしょう。

デフレの失われた20年間、世間とは逆に利益を得てきたのですから、ここ数年彼らは日本経済のために我慢すべきではないでしょうか。ましてや、債券村の住人の理不尽な主張に屈して、デフレ脱却を断念するようなことがあってはならないです。

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