2018年5月23日水曜日

米韓首脳会談、文氏「仲介」は完全失敗 トランプ氏は中朝会談に「失望」怒り押し殺し…米朝会談中止も―【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!


文大統領(左)と会談したトランプ大統領(右)。金正恩氏の勝手にはさせない

 ドナルド・トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対し、米国の条件に応じなければ米朝首脳会談(6月12日)を中止すると通告した。ホワイトハウスで22日(米国時間)に行われた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談で明言した。文氏は「米朝の仲介役」として米国に乗り込んだが、完全失敗に終わった。

 「われわれは一定の条件を求めている。それがなければ、(米朝首脳)会談は行われないだろう。会談は北朝鮮と世界にとって素晴らしい機会になる。行われなければ、会談は延期され、別の機会に行われるのではないか」

 米韓首脳会談の冒頭、トランプ氏は記者団にこう述べた。

 北朝鮮は16日、トランプ政権が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)を理由に、米朝首脳会談中止を示唆した。得意とする「揺さぶり外交」の一貫だが、トランプ氏は改めて、北朝鮮に「完全非核化」を突きつけた。

 トランプ氏の批判は、北朝鮮に急接近している中国にも及んだ。

 今月7、8日に中国・大連で行われた習近平国家主席と正恩氏による2回目の中朝首脳会談について、トランプ氏は「少し失望している。なぜなら、正恩氏の態度に変化があったからだ」と怒りを押し殺した。

 大連会談で、正恩氏は「関係各国が責任をもって段階的かつ同時並行的な措置を講じ、最終的に朝鮮半島の非核化を実現させることを希望する」と主張した。習氏は、米朝首脳会談で非核化合意に達した場合、中国が段階的支援に乗り出すことが可能との考えを示したとも報じられている。

 トランプ政権は、経済、軍事両面で「最大限の圧力」をかけ、正恩氏を対話に応じさせた。その努力を中国が台無しにしようとしているとするなら大問題だ。

 中国という「後ろ盾」を得て再び、米国への反発に転じた北朝鮮に対し、マイク・ペンス副大統領はクギを刺した。21日に出演した米FOXニュースの報道番組で、「北朝鮮は守る気のない約束で、米国から譲歩を引き出すようなまねはしない方がいい」と述べ、軍事的選択肢を行使する可能性を「一切排除していない」と語ったのだ。

 米国、北朝鮮、中国による駆け引きが続くなか、「米朝の仲介役」を自認し、米国に乗り込んだ文氏の存在感はまるでない。北朝鮮にも会談をキャンセルされるなど、「韓国パッシング」に見舞われている。

【私の論評】米国は北攻撃準備を完璧に終え機会をうかがっている(゚д゚)!

昨年米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」伝えるテレビの画面

米軍が北朝鮮を先制攻撃した場合、最新資料では北朝鮮は1日で壊滅するといわれています。その根拠となるのは、2017年12月4~8日に実施された米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」です。

日本では戦闘機や偵察機など米韓両軍で230機が参加したと伝えられていましたが、11月29日に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「火星15」発射したことを受けて260機に増強され、史上最大規模の軍事訓練となりました。

詳細はこれまで明らかにされてこなかったのですが、訓練内容を分析した文書を見ると本当に実戦さながらでした。米軍が本当に先制攻撃を仕掛けた場合、その攻撃力は想像を絶します。北朝鮮は報復攻撃さえできずに、早ければ1日で壊滅すると考えられます。

これまで米国が北朝鮮に対して先制攻撃を実行した場合、全面戦争に発展するのは避けられず、北朝鮮の報復攻撃によって日米韓は甚大な被害を受けることが予想されました。

特に非武装地帯(DMZ)の北方に配置された北朝鮮の多連装ロケット砲や長距離砲がいっせいに火を噴き、付近に展開している米陸軍第2歩兵師団が標的になるばかりか、ソウルが“火の海”に化す悲劇も現実味を帯びていました。

北朝鮮の長距離砲

過去、米国はクリントン政権時代の1994年に北朝鮮の核施設への空爆を検討したことがありました。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」の発射を強行していたからです。

しかし、米国が空爆を実行すれば、朝鮮戦争の再開が危惧されました。開戦から90日で米軍の死者5万2千人、韓国軍の死者49万人、韓国の民間人の死者は100万人以上に達するという衝撃のシミュレーション結果を、当時の在韓米軍司令官がホワイトハウスに報告し、攻撃を中止したという経緯がありました。

いま、ICBMの完成を目前にして、核弾頭の実戦配置も終了したと考えられる、北朝鮮の“脅威”は当時の比ではありません。当然、米国本土も無傷では済まないはずです。

ところが、この想定は米韓合同軍事演習「ビジラント・エース」によって覆されました。米韓両軍が先制攻撃で遂行する作戦とは、一体いかなるものなのか、公開されている資料などから以下にまとめます。
攻撃は段階的に行われますが、最初に出動するのは3機の電子戦機『EA‐18G』です。電波を発射して北朝鮮のレーダー網を完全に麻痺させ、さらに対レーダーミサイルで通信基地を破壊する攻撃機です。実際、訓練中にも北朝鮮のレーダー網を麻痺させてしまったようです。このため、北朝鮮は演習内容をまったく把握できなかったといわれています。 
北朝鮮の通信網を無力化し、制空権を完全に奪ったところで、ステルス戦闘機のF35AやF22が出動。迎え撃つ北朝鮮の空軍を相手にすることもなく、ミサイル基地や生物兵器、大量破壊兵器関連施設など最優先のターゲットを次々と精密爆撃します。 
F35A
むろん、ソウルを照準にしたDMZ周辺の長距離砲陣地も完全に叩きます。反撃能力を潰えさせた後、ステルス機能のないF-15、F-16戦闘機、B-1B爆撃機が残る主要軍事施設を思うがまま絨毯爆撃するという手順です。
B-1B爆撃機
開戦となれば、金正恩朝鮮労働党委員長は要塞化された地下作戦部に身を潜めることになるでしょう。ところが、通信衛星で金氏の動きは捕捉され、バンカーバスター(地中貫通爆弾)を搭載したF-35Aが“斬首作戦”を実行します。
さらに驚くのは、260機もの戦闘機の上空で早期警戒管制機『E-8ジョイント・スターズ』という航空機が展開することです。1度に600カ所の目標物をレーダーで探知し、優先順位を決めて、すべての戦闘機に攻撃の指揮、管制をします。 
E-8ジョイント・スターズ 
おまえはこの基地を撃て、おまえはあそこを撃てというふうに、設定された軍事目標を一気呵成にしらみ潰しにしていくのです。その指示作業を確認する訓練も行われました。もはや、作戦は完璧に組み立てられています。もちろん、撃ち漏らしはあるでしょうが、開戦となれば、これまで考えられていたような反撃能力が北朝鮮に残っているとは考えにくいです。
仮に、北朝鮮が同時多発的な攻撃を企てたとしても、ほとんどのミサイルが液体燃料のため注入に1~2日かかります。その動向がキャッチされると戦争準備と認められ、米国にとってみれば先制攻撃の口実になります。
やる気になれば、米軍は韓国や日本に従来考えられていたほどの壊滅的な打撃を受けさせることなく、北朝鮮を蹂躙できるわけです。

金正恩として、金王朝存続のためトランプ大統領に北朝鮮の核保有を認めさせたいのでしょうが、トランプ大統領のほうはその気は全くありません。

米国は、北の完璧な核放棄がない限り、いずれ北に攻撃を仕掛けることになるでしょう。現在は、攻撃するにしても、どの規模で、どれくらいの期間攻撃するかを決めるため機会をうかがっているとみるべきでしょう。それでも、金正恩が核放棄に応じれば、別の道を用意する心づもりもあることでしょう。

いずれにせよ、金正恩が過去1年間で恐喝、融和、手のひら返しのような様々な策を弄しているうちに、米軍は目的、目標、期間、規模、効果の観点からありとあらゆる方式で北朝鮮を攻撃する方法をシミレーションならびに演習を通じて実行できる体制を整えているのは間違いないです。軍はすぐにでも行動に移せる状態になっていることでしょう。

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2018年5月22日火曜日

日大選手「意見を言える関係ではなかった」一問一答―【私の論評】統治の正当性が疑われる、日大常務理事としての内田氏(゚д゚)!


日大アメフト悪質反則問題で会見に臨んだ日大・宮川さん

アメリカンフットボールの定期戦での悪質な反則行為で関学大の選手を負傷させた日大の宮川泰介(20)が22日、都内の日本記者クラブで会見を行っい、内田正人前監督、井上奨コーチから反則行為の指示があったことを明らかにした。以下、一問一答。

 -内田前監督の存在とは

 「日本代表に行くな」と言われた時もそうだが「なぜですか」と意見を言えるような感じではなかった。

 -どこで判断を誤ってしまったのか

 試合があった1週間を通して監督、コーチからプレッシャーがあったにせよ、プレーに及ぶ前に自分で正常な判断をするべきだった。

 -自身のスポーツマンシップを、監督の指示が上回ってしまった理由は

 監督、コーチからの指示に対して、自分で判断できなかった自分の弱さだと思う。

 -監督、コーチがそれだけ怖い存在だったということか

 はい。

 -指示は「つぶせ」という1つだけだったか

 コーチから伝えられた言葉は、「つぶせ」という言葉だったと思う。上級生の先輩を通じて「秋の関西学院大との試合の時に、QBがけがをしていたらこっちが得だろう」という言葉もあり、けがをさせる、という意味で言っているんだと認識した。

 -日大側は、指導とその受け取った方に認識の乖離があったとしているが

 自分としては、そういう(けがをさせる)意味で言われている以外に捉えられなかった。

 -ご自身にとってアメリカンフットボールとは

 高校の頃からアメリカンフットボールを始めた。コンタクトスポーツを初めてやるとあって、とても楽しいスポーツだと思い、熱中していた。ただ、大学に入って、厳しい環境というか、そういうもので徐々に気持ちが変わっていってしまった。

 -気持ちはどのように変わったか

 好きだったフットボールが、あまり好きではなくなってしまった。

 -今後について

 もちろん、アメリカンフットボールを続けていく権利はないと思う。この先、アメリカンフットボールをやるつもりもありません。何をしていくべきか分からない状態。

 -内田監督の会見の印象

 僕がどうこういうことではない。

 -日本代表に行くなと言われて「はい」としか言えなかった。日頃から、否定できない空気があったのか

 基本的に監督と直接会う機会はあまりない。意見を言えるような関係ではなかった。

 -今後、関学大側や被害者の方から、もう1度競技に戻るよう勧められるようなことがあれば、やったほうがいいのでは

 今は、考えられない。

 -試合の整列時に、井上コーチから「できませんでした、じゃ済まされないぞ」と声をかけられた。コーチからの念押しと考えていいのか

 はい。そうだと思う。

 -井上コーチは、普段からそういう発言をする人物なのか

 このような状況はめったにあることではない。分からない。

 -他にもその発言を聞いている選手はいたか

 整列をしている時なので、隣の選手に聞こえていたかもしれない。はっきり聞こえていたかは分からない。

 -原因を「自分の弱さ」とした。あの時、違反行為をしない選択はあったか

 あの時の自分は、それをする以外考えられなかった。

 -酷な状況だったのでは。そういう指導について、どのように考えるか

 指導について、僕が言える立場にない。

 -そもそもの指示は内田監督からと考えていいか

 僕はそう認識している。

 -内田氏が監督を辞任したことが、チームにとって良かったかどうか

 僕が、今日(会見に)来たのは謝罪をして、真実を述べるため。今後のチームがどうなるか、そういうことは僕の口から言うべきではない。

 -ここまでの期間、かばってくれなかった監督に対しての気持ちは

 最初に両親とともに監督と面談した時から、指示があったということを出してほしいと伝えていた。出してほしいという気持ちはあった。

 -関学大QB側が被害届を出したことに関して

 被害届を出されるのは仕方がない。向こうの選手、ご家族からしたら、当然だと思う。内田前監督は現在大学の人事担当の常務理事を務め、また学内で体育会を意味する「保健体育審議会」の局長を務めています。

【私の論評】統治の正当性が疑われる、常務理事としての内田氏(゚д゚)!

この問題に関しては、以前にもこのブログに掲載しました。そこで指摘したのは、日大では統治と実行が同じ人物により実行されており、まともに統治できる状態でないことです。その記事のリンクを以下に掲載します。
「殺人タックル」日大アメフト部・内田正人監督、学内No.2の実力者だった! 常務理事で人事掌握 “鉄の結束”背景に上意下達の気風―【私の論評】アメフト監督が大学の常務理事を兼ねるのは統治論的にはあり得ない(゚д゚)!
日大アメフト部・内田正人監督

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、統治に関わる部分のみをこの記事が以下に引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 といいます。
しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知ったのです。
企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものでありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。
企業組織においては、日大のように統治(常務理事)と実行(アメフトの監督)を両立すると、様々な支障や不祥事がでることが、経験則的に知られていました。だからこそ、特に大企業においては会社法などにより、トップ・マネジメントと現場の監督などを兼務することなどできないようなっています。

たとえば、部長と取締役くらいなら、できるでしょうが、部長以下の役職と取締役の兼務なまずはできません。また、大企業なら、監査役のほかに内部監査人がいたり、他にも様々なたとえば経理と財務は同じ組織では行わないなどの、内部統制の仕組みがあり、不正や不祥事が起きない仕組みが構築されています。

このような仕組みができてないと、企業は上場できませんし、たとえその仕組みができていても、形骸化していて業務上で様々な支障がでていたり、深刻な不祥事が起きた場合には、上場企業であっても上場が取り消されたりします。残念ながら、最近でもこのような不祥事が起きています。

私自身は、何年間か会社の上場準備に携わっていたことがあるので、統治と実行の分離の重要性や、統治の正当性、内部統制の重要さについて考える機会が他の人よりは多かったと思います。

すっかり形ができあがった大企業に最初から勤めている人はこれが当たり前になっていて、あまり意識しないかもしれません。中小企業の場合は、日々実行に追われ統治などについて考えている余裕はないかもしれません。また、民間営利企業以外の非営利組織では、統治の問題などあまり顧みられないかもしれません。このようなことが、今回の日大の問題の本質を見えにくくしているかもしれません。

大学の関係者によりますと内田前監督は「人事を担当する常務理事で、人事権を握っているため、今回の問題で大学の職員は誰も意見を言えない」ということです。また「大学では理事長に次ぐ、実質大学のナンバーツーにあたり、田中英寿理事長から最も信頼されている人物」ということです。

日大田中英寿理事長

内田正人監督は田中英寿理事長に目をかけられ、常務理事で人事部長という現在の地位に上り詰めたとされています。

そのため、現在は内田正人監督は日大の実質ナンバー2で「次期理事長候補最右翼」とも言われいるほど日大では絶大な権力を持っています。

そのため、今回の不祥事も大学側が必死にかばっているようですが、これがかえって裏目に出ており批判殺到しています。

田中理事長は、1965年、日本大学経済学部に入学。1969年、日本大学経済学部経済学科を卒業し、日本大学農獣医学部体育助手兼相撲部コーチに就任。1999年学校法人日本大学理事、2000年日本大学保健体育事務局長、2001年日本大学校友会本部事務局長、2002年学校法人日本大学常務理事、2005年日本大学校友会会長などを歴任しました。2008年より学校法人日本大学理事長です。

この経歴だけではわかりませんが、おそらく田中理事長も、理事と監督を兼任していたこともあったのではないでしょうか。

だから、日大ではアメフト部監督の内田正人氏が、常任理事をしていたとしても、特段おかしなことではないのかもしれません。というより、このようなことは私立大学などでは特段珍しいことではないのかもしれません。

しかし、今回統治をしている側の人間が、実行もしているということで、それが今回の不祥事の温床になっていることは確かなようです。企業経営サイドの見方からみれば、学校組織であろうと、他の病院やその他の官庁などの非営利組織であろと、やはり統治をする人間が実行もするのはいずれ不正や不祥事が蔓延する組織になることは避けられないと見えます。

わかりやすい例は、お金を使うことを企画する人や部署が、お金を使う人や部署と同じであっては、いずれかならず使い込みなどの不祥事が発生することになります。それは、その個人や部署も悪いのですが、そのような組織になっていること自体が、不祥事を誘発することになるのです。

今回の不祥事は、単にアメフト監督の勇み足などと軽くみるべきではありません。営利企業では統治と実行が様々な支障や不祥事がでることが経験的に知られていますが、日大のような非営利組織もその例外ではなく、それがたまたま今回の事件を通じて表にでてきたとみるべきです。

ドラッカーは統治の正当性について、以下のように述べています。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)
企業政府機関、非営利組織など、あらゆる組織にとって、本来の機能とは、社会のニーズを事業上の機会に転換することです。つまり、市場と個人のニーズ、消費者と従業員のニーズを予期し、識別し、満足させることです。
さらに具体的にいうならば、それぞれの本業において最高の財・サービスを生み出し、そこに働く人たちに対し、生計の資にとどまらず、社会的な絆、位置、役割を与えることです。
しかしドラッカーは、これらのものは、それぞれの組織にとって存在の理由ではあっても、活動を遂行するうえで必要とされる権限の根拠とはなりえないとします。神の子とはいえなくとも、少なくともどなたかのお子さんである貴重な存在たる人間に対し、ああせい、こうせいと言いえるだけの権限は与えないといいます。
ここにおいて、存在の理由に加えて必要とされるものが、正統性です。ドラッカーは「正統性とは曖昧なコンセプトである。厳密に定義することはできない。しかし、それは決定的に重要である」と言います。
かつて権限は、腕力と血統を根拠として行使されました。近くは、投票と試験と所有権を根拠として行使されています。
しかしドラッカーは、マネジメントがその権限を行使するには、これらのものでは不足だといいます。
社会と個人のニーズの充足において成果を上げることさえ、権限に正統性は与えません。一応、説明はしてくれます。だが、それだけでは不足です。腹の底から納得はされません。
マネジメントの権限が認知されるには、所有権を超えた正統性、すなわち組織なるものの特質、すなわち人間の特質に基づく正統性が必要とされます。
ドラッカーは正当性の根拠について次のように語っています。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)

さて、日大の田中英寿理事長や内田正人常任理事らには、人の強みを生かすことということはできているのでしょうか。

私自身は、悪質な反則行為で関学大の選手を負傷させた日大選手にそのような指示を、内田氏が出していたとすれば、これはとてもじゃないですが、日大のトップマネジメントの一人としての正当性があるとは思えません。

大学や、官庁などでも、まともな大企業のように、統治と実行の分離、統治の正当性の確保を十分に行っていくべきです。

このあたりがなおざりにされていては、いくら部分的に改革や改善を行っても、まともな組織にはなりません。大元を正さなくては、いつまでも不祥事や不都合が起こり続ける組織になってしまいます。

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2018年5月21日月曜日

韓国、北朝鮮から梯子外され用済みに…米朝会談中止→米中経済戦争勃発の可能性も―【私の論評】中・韓・北の常套手段に惑わされることなく、我が国は独自の道を歩むべき(゚д゚)!

韓国、北朝鮮から梯子外され用済みに…米朝会談中止→米中経済戦争勃発の可能性も

アメリカのドナルド・トランプ大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(右)

 北朝鮮が南北閣僚級会談の中止を表明し、6月12日に予定されている史上初の米朝首脳会談の取りやめも示唆した。

 これは、アメリカによる「核放棄の強要」や米韓合同軍事演習に対する反発が理由とされているが、瀬戸際外交を続けてきた北朝鮮の常套手段といえる。核実験場の閉鎖や拘束していたアメリカ人3人の解放など、融和に向けて動き出したと見せておいて、相手の態度が軟化しそうなタイミングで揺さぶりをかけるわけだ。

 しかし、アメリカはあくまで制裁緩和よりも核放棄を優先する「リビア方式」を主張しており、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「北朝鮮による『完全で検証可能で不可逆的な非核化』という目標を取り下げることはしない」と表明している。

 また、ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は「北朝鮮が会談したければ、その用意はある。もし会談したくないのなら、それでもかまわない」と語っているが、北朝鮮はこの問いに対して「Yes」と言うしかないだろう。そもそも、会談が実現しても物別れに終わればアメリカが軍事攻撃に出る可能性すら取り沙汰されるなかで、「No」は空爆や斬首作戦の決行を意味するといっても過言ではない。

サラ・サンダース報道官

 また、北朝鮮の発表は中国の劉鶴副首相らがアメリカを訪れるタイミングで行われた。5月15日から訪米している劉副首相は、17日からワシントンでスティーブ・ムニューシン財務長官らとの通商協議に臨む。アメリカは中国の通信機器大手である中興通訊(ZTE)に対して、「北朝鮮やイランへの輸出規制に違反した」という理由でアメリカ企業との取引禁止措置を取っており、それを受けてZTEは主力事業停止に追い込まれている。

 中国はZTEへの制裁を解いてもらおうと必死で、同協議でも主題にのぼるとみられている。また、同協議は5月初旬に北京で第1回が行われたが成果は芳しくなく、中国にとっては今回が正念場といわれているのだ。

 かねてドナルド・トランプ大統領は中国に北朝鮮問題への対応を迫っており、中国が解決に動けば貿易交渉などで譲歩する姿勢を示してきたという経緯がある。そんななか、このタイミングで北朝鮮が態度を変えたことは中国にとって大きなマイナス要因であり、メンツを潰されたといってもいいだろう。北朝鮮としてはアメリカのみならず中国に対しても強く牽制した格好であり、中国に対するなんらかの不満の表れと見ることもできる。

 さらにいえば、可能性は限りなく低いが、仮に米朝首脳会談が直前で中止となれば、中国のメンツは完全に潰れることになると同時にアメリカの対中制裁もさらに容赦ないものになるだろう。

突然“韓国外し”に動いた北朝鮮の思惑

 当日になって閣僚級協議を“ドタキャン”された韓国は「遺憾の意」を表明しているが、北朝鮮にとって韓国はすでに“用済み”の存在といえる。かねて北朝鮮はアメリカとの直接対話を望んでおり、そのために韓国を利用してきた側面がある。そして、平昌オリンピックの南北合同チーム結成をはじめとする融和ムードを醸成することで、アメリカは北朝鮮との直接交渉に乗り出した。

 それにともない、中国も北朝鮮との話し合いを再開した。つまり、北朝鮮とすれば米中の2大国と韓国抜きで交渉できる体制が整ったことになり、それゆえ“韓国外し”を始めたわけだ。そもそも、朝鮮戦争の休戦協定は、アメリカ主導の国連軍と朝鮮人民軍、中国人民義勇軍によって締結されたもので、休戦に反対していた韓国は署名していない。つまり、韓国は休戦協定に関しては当事国ではなく、韓国抜きで話し合いが進められたとしても不自然ではない。

 また、将来的に考えても、金正恩体制にとって韓国の存在はプラスにはならないだろう。南北間の交流が盛んになりヒトやモノの移動が自由化されれば、北朝鮮内に民主化の動きが生まれる可能性が高いからだ。言うまでもなく、それは金正恩体制の崩壊につながる。北朝鮮の最大の目的は現体制の維持であり、そのためにマイナスとなる要素は徹底的に排除する方向だ。そう考えると、北朝鮮としてはクーデターの萌芽となり得る事態は避けたいのが本音だろう。

中国・ZTEへの制裁緩和に米議会が反対

 米中の貿易摩擦も、予断を許さない状況だ。ZTEへの制裁緩和について、トランプ大統領が検討を示唆したことで既定路線になるかと思われたが、議会は共和党、民主党ともに反対しているため実現の可能性は低い。

 すでに、国防権限法案にはアメリカ政府機関がZTEの製品を使用することを禁止する項目が盛り込まれており、共和党のマック・ソーンベリー下院軍事委員長は「(同項目について)議員らが削除を求めるとは見込んでいない」と発言している。

 毎年、アメリカは同法で軍事的な予算や計画を策定しており、そこには経済制裁なども含まれている。同法案の内容を修正するには議会の承認を得なければならず、これは大統領の一存で強行することはできない。上下両院を通過後に大統領が署名しないという手段もあるが、そうなるとすべての軍事的案件がストップしてしまいかねない。そのため、法案の審議過程で同項目を削除する必要があるわけだが、トランプ大統領が議会の強い反対を押しのけてまで実行するメリットがあるとは思えない。

 いずれにせよ、米朝首脳会談に向けて、もう一波乱も二波乱もありそうな展開だ。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】中・韓・北の常套手段に惑わされることなく、我が国は独自の道を歩むべき(゚д゚)!

ムニューシン米財務長官

冒頭の記事にある米中貿易戦争ですが、ムニューシン米財務長官は20日、米中貿易戦争をいったん「保留」にする、と述べました。

長官はテレビ番組で「貿易戦争を保留にする。関税措置をいったん保留にすることで合意した。一方、枠組みの執行は目指していく」と語りました。

米中両政府は19日、ワシントンで17─18日に開いた通商協議の共同声明を発表しました。中国が米国の製品やサービスの購入を大幅に増やすことで合意しましたが、米国が求めていた対米貿易黒字の2000億ドル削減への言及はありませんでした。

ムニューシン氏は、農業分野の中国向け輸出は今年だけでも35─40%増加し、エネルギー分野の輸出に関しては向こう3─5年で2倍になると述べ、公表はしないが業界別に特定の目標があると説明しました。

中国の在ワシントン大使館はムニューシン氏の発言に関し、コメント要請に応じていません。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は20日付の声明で、米国製品に対する中国市場の開放拡大は重要だが、中国で米企業が技術の移転を強いられている問題やサイバー空間での産業情報の窃盗を解決するほうが重要度が高いと指摘しました。

「真の構造的変革が必要とされている。それが果たされなければ多数の米国人の雇用が将来的に脅かされることになる」と強調した。

米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長はCBSテレビの報道番組で、中国が約束した米国製品・サービスの購入について、対米貿易黒字の2000億ドル削減を確定するのは時期尚早だと指摘。「詳細はやがて明らかになる。こういった取り決めはそれほど綿密ではない」とした。

同氏はABCテレビの番組で、大枠では問題への対応が約束されており、中国は関税や非関税障壁の引き下げといった「構造改革」を進める意向を示したと説明。トランプ大統領は「これについて非常に好印象を受けている」とした。

ただ、両国間の通商協定に関する合意はまだないと表明しました。

ムニューシン長官とカドロー氏によると、今後は、ロス商務長官を中国に派遣し、エネルギーや液化天然ガス(LNG)、農業、製造業など大幅な輸出増を目指す分野について検討することになります。

米国は一時は中国との貿易戦争を保留しますが、これはあくまで保留であって、中国の出方によってはどうなるかはわかりません。そうして、このブログにも以前掲載したように、真っ向から米中が貿易戦争をした場合には、中国には全く勝ち目はありません。

一方韓国はといえば、4月の輸出額は1年半ぶりに前年割れ。米国と3月に大筋合意した自由貿易協定(FTA)の再交渉では、韓国に不利な条件をのまされただけでなく、両国が競争的な自国通貨切り下げを禁じる「為替条項」まで決められ、事実上、韓国のウォン安誘導が封じられました。

韓国企業の輸出競争力の低下が懸念される中、韓国は突然、米国を除く11カ国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP11)への加入や金融危機時に日韓で通貨を融通し合う「通貨交換(スワップ)協定」の再開に意欲を示し始めています。

しかし、このブログにも以前掲載したように、知的財産権に無頓着な韓国は、そもそも最初からTPPに参加できるような国ではありません。さらに、通貨スワップも日本にとってメリットなど何もありません。

そもそも、日韓合意を反故にしようという国が、TPPに加盟したいとか、通貨スワップを再開せよなどいっても、我が国がそれに応じる義理などありません。拉致被害者問題にしても、北朝鮮の直接交渉すれば良いので、韓国と付き合う意味もありません。


日本としては、北朝鮮とその後ろ盾とみられる中国に対しても、「北朝鮮による『完全で検証可能で不可逆的な非核化』ならびに「拉致被害者問題の完全解決」以外は受け付けず、北がそれに応じないというのなら、さらに徹底した制裁を継続すべきです。

瀬戸際外交を続けてきた北朝鮮が融和に向けて動き出したと見せておいて、相手の態度が軟化しそうなタイミングで揺さぶりをかけるという常套手段などにだまされることなく、制裁を続行すべきです。

そうして、皆さんもお気づきでしょうが、この常套手段は何も北朝鮮だけではありません。韓国も中国も同じような常套手段を良く使います。

融和的態度をみせながら、日本が軟化しそうなタイミングで反日や尖閣付近での示威行動などありとあらゆる手段を用い、揺さぶりをかけるのです。

日本としては中国、北朝鮮、韓国のこうした常套手段に幻惑されることなく、我が国の進むべき道を歩むべきです。

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2018年5月20日日曜日

北非核化へ「リビア方式」ならぬ「トランプ方式」浮上 藤井氏「北朝鮮は墓穴を掘った」―【私の論評】金正恩の判断一つで、金王朝の運命が決まる(゚д゚)!

北非核化へ「リビア方式」ならぬ「トランプ方式」浮上 藤井氏「北朝鮮は墓穴を掘った」

トランプ氏の北朝鮮への圧力はさらに強まるか  写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 北朝鮮の「完全非核化」に向け、ドナルド・トランプ米政権が新たに「トランプ方式」を打ち出した。これまで、リビアのカダフィ政権から大量破壊兵器放棄を勝ち取った「リビア方式」が提唱されていたが、北朝鮮が猛反発していた。ただ、専門家は、核開発能力を奪う点では変わりはないとの見方を示している。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権は確実に追い込まれつつある。

 「われわれが北朝鮮について考えるとき、リビア方式はモデルとはしない。(北朝鮮に適用する方式では)正恩氏が国を運営し、国家はとても豊かになるだろう」

 トランプ大統領は17日(米国時間)、記者団にこう語った。サラ・サンダース大統領報道官も前日、「非核化に向けた定型の方式があるわけではない。これはトランプ大統領方式だ」と述べた。

 核放棄を果たした後に見返りを与える「リビア方式」については、「死に神」の異名を持つ、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が北朝鮮への適用に意欲を示していた。

死神の異名を持つジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

 しかし、正恩氏側は体制崩壊の恐怖から反発を強めた。リビアの独裁者、カダフィ大佐は核放棄後、反体制派に殺害されている。北朝鮮は、6月12日にシンガポールで予定されている米朝首脳会談中止の可能性を示唆し、ボルトン氏を名指しで批判する談話も出した。

 「リビア方式」に変わる「トランプ方式」はどのような内容なのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「北朝鮮の核爆発装置を取り上げるだけではなく、核開発能力を奪うことに関しては『リビア方式』と同じだろう。リビアの場合、カダフィ大佐が殺されたということもあり、北朝鮮が気も悪くするので、それを気遣った表現ではないか。期間などで若干の柔軟性はあるかもしれない」と語る。

 トランプ政権が「リビア方式」にこだわらない姿勢を示したことで、一部メディアでは「北朝鮮に妥協する恐れがある」との見方も出ている。

 だが、藤井氏は「北朝鮮は自ら墓穴を掘った。今回の対応は、トランプ氏の顔に泥を塗ったことになる。北朝鮮の恫喝(どうかつ)は、米国、トランプ氏には通じない。トランプ氏の北朝鮮に対する目は余計厳しくなったはずだ」と否定した。

【私の論評】今後の金正恩の判断一つで、金王朝の運命が決まる(゚д゚)!

米国は北朝鮮の核放棄に関しては「リビア方式」を求めてきていました。これは、十分可能なはずです。ロシア等の後ろ盾のいなかったリビアでは核放棄後に、最高指導者のカダフィ氏が殺害されましたが、北朝鮮の場合、中国が後ろ盾にいるため、リビアの二の舞いはないと考えられます。
カダフィ大佐と、カダフィー・ガールズと呼ばれた
カダフィーの身辺警護の女性たち

ただし、中国は対米貿易交渉で、対米黒字を1年間で2000億ドル(約22兆円)も減少させることを要求されるなど理不尽な二国間交渉を強いられていますが、自国有利のために北朝鮮を「売る」ことも考えられます。
ただし「売る」相手は米国なのですから、そうなれば米国は北朝鮮の後ろ盾のような役回りをせざるをえなくなるわけですから、いずれにしてもリビアとは状況が同じです。
それに、北朝鮮からすれば、中国が仮に北を米国に売ろうとした場合、北朝鮮の建国にかかわったソ連後継者であるロシアに後ろ盾になってもらうことも考えられます。この点でも、リビアとは異なるわけです。
さらに、リビアには強力な反政府勢力がいましたが、北朝鮮にはそのような勢力が国内にあるわけではないですから、やはりリビアとは状況が異なるわけです。
以上のようにリビア方式に難色を示すのは、ある意味全く北朝鮮、金正恩の都合にすぎないわけであり、このようなことにトランプ政権が左右されるはずもありません。
もし、金正恩がリビアのカダフィ大佐と同じような運命をたどるとしたら、米軍による斬首しかありません。
それに、トランプ米大統領は北朝鮮の揺さぶりを「会談が実現しなければ次のステップへいく」と切り捨てました。次のステップとは軍事オプションです。このため北朝鮮にとって「米朝首脳会談を蹴る」選択肢は限りなくゼロに近くなったと見るべきです。

また今回の北朝鮮の瀬戸際外交は歴代米政府による「不名誉な過去」を想起させ、過去との決別を宣言しているトランプ政府を結束させたようです。一方、日朝関係者の間では、「米朝首脳会談の後に日朝首脳会談も視野に入った」との情報が出始めています。

北朝鮮側が米朝首脳会談の席につかないまま会談自体を拒否すれば、米政権が「次のステップ」に進むことが明白になったことで金正恩氏に首脳会談を蹴る選択肢はなくなりました。

非核化をめぐって米朝が決裂すれば、日朝会談の実現は困難になりますが、継続協議ならば日朝首脳会談が開催される可能性は高いです。日本にとっては拉致問題が最優先ですが、北朝鮮は日本との『過去の清算』が大きいです。

金正恩氏は4月末の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領に「いつでも日本と対話する用意がある」と応じました。しかし、その後も北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判を続けています。

さらに今月12日、唐突に『この世の万事は決して日本の欲望に従うものではない』(朝鮮中央通信)との論評を発表、日本の拉致問題について「解決済み」との立場を強調しました。拉致問題についての言及は今年1月24日以来で、注目されました。論評では加藤勝信拉致担当相や菅義偉官房長官も批判しました。

金正恩氏は4月末の南北首脳会談で、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領に「いつでも日本と対話する用意がある」と応じました。だが、その後も北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判を続けています。

北朝鮮メディアによる日本非難、安倍政権批判

さらに今月12日、唐突に『この世の万事は決して日本の欲望に従うものではない』(朝鮮中央通信)との論評を発表、日本の拉致問題について「解決済み」との立場を強調しました。拉致問題についての言及は今年1月24日以来で、注目されました。論評では加藤勝信拉致担当相や菅義偉官房長官も批判しました。

しかし、北朝鮮が全く日朝交渉に興味がないのなら、そもそも日本について言及する必要性などないはずです。これは、いま日本を攻撃することにより、日本国内にある「バスに乗り遅れる論」や「日本だけカヤの外」といった安倍政権批判に乗じ、日朝交渉のハードルを意図して意識して上げているとしかとりようがありません。これは北朝鮮が得意とする心理戦の常套手段です。

朝鮮中央通信の12日の論評でも「過去の清算だけが日本の未来を保証する」と国交正常化交渉への期待を顕にしています。

トランプ大統領は米朝首脳会談で日本の拉致問題を取り上げる意向を示しており、米朝首脳会談と日朝首脳会談は連携して進む可能性もあります。

北朝鮮の体制は共産主義と名ばかりで、実体は金王朝である

いずれにせよ、北朝鮮は金正恩の判断一つで、米軍に斬首されて金王朝が絶たれるか、存続できるかの分水嶺にあることだけは確かです。

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2018年5月19日土曜日

【日本の解き方】間違いを正さない特区報道 政権批判に手段選ばず、世論操作の疑いも―【私の論評】マスコミに感謝!情弱で愚かな人と、多方面から情報を得るまともな人の区別がつきやすくなった(゚д゚)!


参考人招致され答弁を行う柳瀬唯夫元首相秘書官=10日

 加計学園や国家戦略特区について、柳瀬唯夫元首相秘書官が国会参考人質疑で答弁したが、いまだに一部野党やマスコミはかまびすしい。特区に関しては1年経過しても間違った報道が続けられている。これはなぜだろうか。

 本コラムで何度も書いたが、問題の本質は、特区の行った規制緩和は、認可「申請」を許さなかった「文部科学省の告示」の改正でしかない。「認可」そのものについては一切、規制緩和されておらず、特区での便宜供与はほとんどない。

 このことをマスコミ関係者に話すと、ほとんどの人は理解しておらず、それを理解しても「この点については今さら報道できない」と言う。「この1年間、マスコミは何を報道していていたのか」と、批判を浴びてしまうかららしい。

 結局、マスコミが根本を理解できていないので、報道自体がまったく無意味なものになっている。

 一例を挙げると、NHKのニュースサイトに掲載されている解説記事「加計学園 獣医学部新設問題」の記述は誤解を招きかねない。サイトでは「今回、岡山理科大学が獣医学部を新設した愛媛県今治市は、平成28(2016)年1月、大胆な規制緩和を進める国家戦略特区に指定されました」と書かれているが、これは「今回、岡山理科大学が獣医学部を新設希望した愛媛県今治市は、平成28(2016)年1月、認可申請できないという異常な事態を認可申請できるという普通の状態にする国家戦略特区に指定されました」と修正すべきだ。

 「国家戦略特区の諮問会議で獣医学部の新設が52年ぶりに認められ」という記述も「獣医学部の新設の申請が52年ぶりに認められ」が正しい。なにしろ、「認可」と「認可の申請」を混同するのは、試験の合否と試験を受けることを取り違えるくらい恥ずかしいミスである。

 マスコミは、愛媛県知事が柳瀬氏の国会答弁は正しくないと言ったと報じるが、これは、試験を受けたいと「話す人」と「聞く人」の違いでしかない。

 3年前の話であり、聞く人は、試験の話であって、合否には無関係なのだから、気楽に受け流しているはずだ。筆者も官邸の「準秘書官」を経験したが、大人数で陳情を受けるときには、単に「聞きおく」といって、案件をさばくだけで一人一人の発言は覚えておらずメモもとらなかった。

 文科省による認可手続きは、昨年4月から11月まで行われており、これは、文科省関係者だけで行われ、安倍晋三首相も誰も関与していなかったのはマスコミでも知っているだろう。

 要するに、特区によって加計学園が獣医学部新設の認可を得たかのごとく、マスコミが報道していることが間違いだ。

 これは、文科省告示などの公式資料を見ればすぐにわかるし、筆者は1年前からマスコミに説明しているが、ほとんど取り上げようとしないし、問題の本質を避けようとしている。マスコミも分かっているはずなのに間違った情報ばかりを垂れ流すのは、政権批判に手段を選ばずという意図的な世論操作と判断せざるを得ない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】マスコミに感謝!情弱で愚かな人と、多方面から情報を得るまともな人の区別がつきやすくなった(゚д゚)!

高橋洋一氏は、特区によって加計学園が獣医学部新設の認可を得たかのごとく、マスコミが報道していることが間違いとしています。

"特区の行った規制緩和は、認可「申請」を許さなかった「文部科学省の告示」の改正でしかない。「認可」そのものについては一切、規制緩和されておらず、特区での便宜供与はほとんどない"としています。


これでもなかなか理解できない人がいるかもしれません、なぜかといえば、規制があまりにも異様、異常としかいいようがないからです。

これを高校受験にたとえてみましょう。認可の「申請」をゆるさなかったとは、高校受験で受験資格が規制で得られなかったということと同じです。

高校受験にたとえると、受験者が高校を受験したくても、出願すらできないという状況です。これが、何十年も続いていたというのですから驚きです。受験したい人がいるのに、何十年も受験できない状態を続けたということ自体が異様で、常人には理解不能です。

そうして、特区の行った規制緩和は、高校受験でいえば、特区にある高校への受験の出願を可能にしたということであって、その後の実際の受験の仕組みそのものについては一切何も変てもいないし、ましてや特定の受験生に対して、便宜なども図っていないということです。

受験が終了してその結果を学校側が採点するときに何か不正を行った、校長の友人の子弟である受験生に下駄を履かすなどの不正を行ったというのであれば問題ですが、受験申請をして受験票をもらう事自体は何の不正でもありません。

しかし、高校を受験すること自体が、受験票をもらうこと自体が何十年も禁じられていたという異常事態自体が、一般の人には理解しがたいものなのでしょう。

新聞などのマスコミもこれを当初は理解しなかったのも理解はできます。しかし、最初の数ヶ月くらないらそれも理解できますが、1年たっても理解できないというのですから、これはもう印象操作以外の何ものでもないと思います。

私自身は、当初は高校受験のたとえ話のようにわかりやすく説明することはできませんでしたが、これについてはこの問題が明らかになってから1〜2週間で理解しました。

さらに高校受験のたとえばなしを続けます。柳瀬唯夫元首相秘書官は、高校でいえば、高校の副校長のような立場で、受験を希望する受験生本人や、その両親に面会したようなものです。その中にたまたま、校長の友人の子どもが含まれていたとしても、それ自体はどう考えてみても犯罪でも何でもないです。

テレビドラマ「先に生まれただけの僕」の登場人物の相関図

テレビドラマで「先に生まれただけの僕」というのがありました。あれは、商社マンが高校の校長になり、民間営利企業と学校の違いで四苦八苦するという物語でした。櫻井翔さんが、校長役をやっていました。

あの物語でも、受験生を増やそうとして、魅力的なオープンキャンパスを実施していました。高校側が受験生を増やそうとして、オープンキャンパスを行って、受験生やその親などに高校に来てもらったりするのは当然のことです。

あるいはオープンキャンパス時に来られなかった受験生や親などが、予め連絡をして高校に来るなどのことがあれば、教頭や入試に関わる教師などができるだけ面談しよう心がけ、実際に面会したとしてもそれ自体は何の犯罪にもなりません。たとえ、その中に校長の友人の子弟などが含まれたとしても、それ自体は犯罪ではありません。

ただし、入試自体で手心を加えて、裏口入学をさたたようなことがあれば、これは問題であり場合によって犯罪になります。しかし、特区の行った規制緩和は、何十年も与えられなかった受験資格を与えたようなものであり、規制緩和自体が裏口入学のようなものというわけではありません。

マスコミの報道の仕方、あるいは野党政治家の追求の仕方は、まるで高校受験で校長の友人の子弟が受験して合格したので、校長が不正を働いたと確たる証拠もないのに、断定して、「疑惑が深まった」と言っているようなものなのです。

もっとわかりやすく言うと、行列のできるラーメン店で、ラーメン店の店長の友達が早めに並んでいたので、一日100食限定のラーメンを食べることができたという事実を、野党やマスコミは店長の友達がラーメンを食べられた事自体を問題にして、「不正だ」と大騒ぎして、その後も何人かの証人の証言を聴いても確たる証拠も出ていないのに、「疑惑は深まった」と言っているようなものです。

行列にできるラーメン店
加計問題でも、何度誰を証人喚問をしても、確たる証拠はでてきません。これは、どう考えても野党、マスコミぐるみの倒閣運動としか思えません。

マスコミや野党が、証人喚問をすれぱするほど、追求をすればするほどその「疑惑」が深まったとしか言いようがありません。本当にくだらないです。

くだらないとはいいながら、それで実際に国会の審議が妨害されているわけですから、本当にトンデモないことです。

この事件で唯一ポジティブな面は、マスコミ、政治家、識者の中で誰が倒閣運動に熱心なのかがあぶり出されたかということです。

それと、加計問題が起こってから1年以上もたった現在では、身近な人のうち誰がマスコミなどに扇動されやすい人なのかが見えてきたということもあります。これを巡っては、誰があまりに情弱で愚かな人なのか、普通の人なのか、多方面から情報を得る優秀な人なのかが本当に見分けやすくなったと思います。ある意味で、マスコミや野党に感謝です。このような機会は滅多にないものと思います。

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2018年5月18日金曜日

「殺人タックル」日大アメフト部・内田正人監督、学内No.2の実力者だった! 常務理事で人事掌握 “鉄の結束”背景に上意下達の気風―【私の論評】アメフト監督が大学の常務理事を兼ねるのは統治論的にはあり得ない(゚д゚)!

「殺人タックル」日大アメフト部・内田正人監督、学内No.2の実力者だった! 常務理事で人事掌握 “鉄の結束”背景に上意下達の気風

日大アメフト部・内田正人監督

アメリカンフットボールの日大の選手が定期戦で関学大のクオーターバック(QB)に「殺人タックル」をした問題で、カギを握る人物が日大の内田正人監督(62)だ。アメフト部のみならず、大学の常務理事で人事を握り、実質的なナンバー2とされる。「上意下達」(関係者)の気風が影響したとの指摘もある。

 内田氏は日大豊山高校出身で、日大アメフト部では、レシーバーが散弾のように散らばりパス攻撃に有利な「ショットガンフォーメーション」で黄金時代を築いた篠竹幹夫監督の下でセンターとして活躍し、国際試合にも出場した。卒業後も職員として大学に残り、コーチとして篠竹監督を支え、4度の日本一、17度の学生王座に貢献した。

 44年にわたり監督を務めた篠竹氏が2003年に定年で勇退した後を継いで監督に就任。16年には一度勇退したが、チームの成績低迷を受け17年に監督に復帰した。

 練習前にトータルで2500ヤード(約2・3キロメートル)のダッシュを課すなどスパルタ練習で、約20人の大量退部者を出したが、昨年12月の甲子園ボウルで関学大を下し、27年ぶりの学生王座に返り咲いた。

 この甲子園ボウルの再戦となった春の定期戦で起きたのが、前代未聞の悪質タックルだった。

前代未聞の悪質タックル

アメフト部と関わりの深い日大OBの男性は、「内田監督は、相手選手に不必要なタックルをさせるような指令は出さないはずだ」と困惑する一方、「普通なら悪質なタックル1回で選手を引っ込めて叱るが、監督やコーチには選手のプレーをとがめる様子がなかった」と首をひねる。

 内田氏の指示があったのかについて日大は「大学内での調査の結果、そのような事実は確認されなかった」(広報課)との立場だ。アメフト部OBも「内田監督はいい人。部員もきっと何も気にしていないはず」。

 日大、そしてアメフト部の“鉄の結束”の背景について、ある関係者は「日大は上意下達が徹底している組織という印象が強い」と話す。

 アメフト部で絶対的な存在の内田氏だが、大学内でもトントン拍子に出世している。14年に理事に選出された内田氏は、17年には4期目の田中英壽理事長と3期目の大塚吉兵衛学長体制の下で常務理事となり、人事を担当するなど学内有数の実力者だ。

 前出のOBは「篠竹監督時代には、相手校に対するリスペクトがあった。今回の騒動も監督がきちんと顔を出し、正式に謝罪するべきだ」と話すが、判断を下せるのは内田氏本人だけなのか。

【私の論評】アメフト監督が大学の常務理事を兼ねるのは統治論的にはあり得ない(゚д゚)!

さて、この問題連日デレビで報道され、識者なども様々な意見を述べているのですが、残念ながら私からすればまともな意見を言っている識者はおらず、どれも核心をついていません。このままではこの日本の社会で似たようなことがこれからも度々繰り返されるとの危機感をいだきました。

問題の本質は、内田正人氏がアメフト部の監督という、企業でいえばいわば現場の監督のような仕事をしつつ、一方ではトップマネジメントを担っているというあり得ないようなことが、日大という組織でまかり通っているということです。

企業ではトップマネジメントと、現場監督を同時に兼ねるようなことはまずありません。特に上場企業であれば、そのようなことはそもそも、許されることではありません。

なぜそうなのかといえば、そのようなことでは、企業の統治に支障をきたすからです。統治に関しては以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ただ事ではない財務省の惨状 同期ナンバーワン・ツー辞任 ちやほやされてねじ曲がり…―【私の論評】統治と実行は両立しない!政府は統治機能を財務省から奪取せよ(゚д゚)!
57年財務省入省組の記念写真 佐川氏、福田氏の他片山さつき氏も・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の組織の「統治」に関わる部分のみを引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏は政府の役割について以下のように語っています。
政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。(ドラッカー名著集(7)『断絶の時代』)
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 といいます。
しかし、ここで企業の経験が役に立ちます。企業は、これまでほぼ半世紀にわたって、統治と実行の両立に取り組んできました。その結果、両者は分離しなければならないということを知ったのです。
企業において、統治と実行の分離は、トップマネジメントの弱体化を意味するものでありませんでした。その意図は、トップマネジメントを強化することにありました。
この事例は、無論政府の役割についてですが、統治ということでは、企業も大学のような組織でも同じことです。実際、ドラッカー氏はマネジメントの原則があてはまるのは企業のような営利組織だけではなく、あらゆる組織にあてはまるものであるとしています。

ですから、上の政府の役割の政府の部分を、企業なら「取締役会」、大学なら「理事会」と言い換えても成り立つのです。

実際に入れ替えてみます。
大学の理事会の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。大学という組織のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである。
この政府の役割をドラッカーは統治と名づけ、実行とは両立しないと喝破しました。
統治と実行を両立させようとすれば、統治の能力が麻痺する。しかも、決定のための機関に実行させても、貧弱な実行しかできない。それらの機関は、実行に焦点を合わせていない。体制がそうなっていない。そもそも関心が薄い。
 理事会は大学の統治をするところです。そうして、内田正人氏が、アメフトの監督をしながら、常務理事をするということは、まさに統治と実行を両立させようとすることに他なりません。

この統治の原則からすれば、内田氏はアメフトの監督をしながら、常務理事をすることはさけなければならないです。アメフトの監督を続けるなというなら、そもそも理事になるべきではないのです。理事を続けたいなら、アメフトの理事をやめるべきなのです。

両方を掛け持ちすれば、統治の能力が麻痺するのです。実際、日大は統治能力が麻痺しているようです。内田氏は、あの事件から10日以上もたっているのにもかかわず、会見を開いて説明責任を果たすということもしていません。

これが、統治と実行がはっきり分離されていて、内田氏がアメフトの監督をのみをしているか、あるいは内田氏は常務理事だけをしていて、アメフトの監督は別の人物が行うなどのことをしていれば、そもそも、あのような事件はなかったか、あったにしても、未だに説明責任すら果たさないというお粗末なことはなかったでしょう。

統治と実行を両立させようとすると、このような不祥事が頻繁に起こることが、経験的に知られており、企業などの民間営利組織では、特に大企業では統治と実行は両立できないように、会社法などで定められています。

日本の官庁でも同じようなことが行われています。たとえば、財務省は、本来政府が定めるべき日本国の財政の方針を中途半端に定めるなど、統治をしておきながら、一方では徴税するなどの実行も行っています。これでは、日本国の財政に関わる統治能力が麻痺するのは当たり前のことです。

企業でも、中小企業の場合は、このあたりが曖昧になっているところが多いです。以下は北海道にある中小企業での実話です。本格的な春も近い3月のある日、季節外れの大雪が降ったので、社員や役員も含めて、駐車場の除雪をしたそうです。

除雪は専務取締役の仕事か・・・・・

その作業中に、専務取締役もいたそうです。専務も他の社員に入り混じって、2時間近くも除雪作業をしていたそうです。その姿を見たその会社の社長は後でその専務に対して「除雪作業をやらせるために君に高い給料を支払って、専務にしているわけではない。やるべきことをやれ」と叱ったそうです。

この事例では、社長は専務にこのような注意をするくらいですから、自分たちが主に実行すべきことは「統治」であると気づいているようですから、まともです。

しかし、そのようなことに気付かずに、自分も営業や作業に追われる中小企業の社長もいます。こうなると悲劇です。無論、社長がある程度、営業や作業をするのは規模の小さな企業では仕方ないことです。しかし、社長が企業統治のことなど全く頭になく、営業や作業に拘泥するような会社は早晩潰れます。

また、統治と企画の区別がつかない人もいるようです。これは、全くの別物です。企画とは、統治によって決定と方向付けを行なわれている状態で、その方向付けにしたがって、具体的に資源を割り当てる計画です。

その意味では、企画も実行の一部といえます。ただし、大企業では企画と、企画に基づいた実行をするのも別組織で行われるのが普通です。たとえば、大企業では、財務と経理が別組織になています。これを一緒にすると腐敗を助長するようなものです。

統治と企画を、取り違えると大変なことになります。本人は統治しているつもりでも、実は企画をしているということもあり得ます。そうなると、会社は方向性を失いいずれ機能しなくなくなります。

本来企画をするべき人たちに、統治をまかせようとする経営者もいます。これは、良く丸投げなどともいわれています。経営者があまり方向性など示すこともなく、部下に企画を立案させるような行為です。これも、部下が育たなかったり、部下が方針まで決定しなければならない状態に追い込まれ、混乱しいずれ企業が機能しなくなります。

財務省や、日大などは大所帯ですが、明らかに統治と実行が分離されていないので、財務省はまともな財政ができず、日大は今回のような不祥事を起こしてしまいました。

考えてみれば、最近の角界の度重なる不祥事も、統治と実行が区分されていないことに原因があるといえるかもしれません。相撲界の理事会の理事は、相撲取りの経験しかない人が大半です。それで本当に統治ができるのかどうか、はなはだ疑問です。

ものごとが、実行されている、現場を熟知していないと経営者はつとまらないと良くいわれます。それは事実です。しかし、現場しか知らない人は経営者などつとまりません。組織を統治すべき経営者にはそれ以外の知識や経験、洞察力、統合的思考などが欠かせません。

統治と実行は、厳密に区分されるべきものなのです。この当たり前の原則について、あまりテレビなどで報道されないのは、あらゆる組織において統治に関わる人は圧倒的に少数だからでしょう。さらに学校でもまともに教えられないことにも問題があると思います。

多くの人は、ガバナンス=統治であることくらいは知っているようですが、では統治とは何なのかということを具体的には理解していないようです。何しろ、日本では官僚や政治家、マンモス大学の理事でもそれを理解していないようですから、多くの人が理解しないのも無理はないかもしれません。

しかし、私達は、統治をすべき人がこれを理解していないような組織では今回のような不祥事がいつでも起こり得ることを認識すべきです。これが、問題の本質です。

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2018年5月17日木曜日

威圧的な軍事演習で台湾を脅かす中国──もうアメリカしかかなわない―【私の論評】北朝鮮問題が収束すれば、米中対立でアジアの緊張は極限まで高まる(゚д゚)!

威圧的な軍事演習で台湾を脅かす中国──もうアメリカしかかなわない

トム・オコナー

南シナ海で行った演習でミサイルを発射したZ−9ヘリ(5月11日、正確な場所は明かされていない)

<戦闘機編隊が台湾島上空を周回。台湾の高速砲艦を想定した演習も>
中国が4月に南シナ海と台湾海峡で行った実弾演習は台湾に対する警告であり、必要ならば武力で台湾を併合するという意思表示だと、中国当局者が語った。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は「一つの中国」原則を認めない台湾への締め付けを強めており、南シナ海で史上最大規模の観艦式を実施するなど、このところ盛んに軍事力を誇示している。中国の国務院台湾事務弁公室の安峰山(アン・フォンシャン)報道官は5月16日の記者会見で、一連の軍事演習は「二つの中国」に固執する台湾当局に対するメッセージだと語った。

「(軍事演習は)『台湾独立』を目指す分離主義一派とその活動に対する強い警告であり、国家主権と領土の一体性を断固として守る我々の決意と能力を示すためのものだ」

「我々はどんな形であれ『台湾独立』を目指す分離主義の動きを封じ込める。『台湾独立』は絶対にあり得ない」と、安は語気を強めた。

5月15日には中国の国営テレビ、中国環球電子網が、南シナ海に展開する中国海軍の艦隊からZ-9対潜ヘリが飛び立つ映像を公開した。これは11日に実施された演習の模様で、中国の軍事専門家、宗忠平(ソン・チョンピン)が中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙、環球時報に語ったところによると、紛争が勃発した場合、台湾など他国の高速砲艦が中国の空母を攻撃するというシナリオを想定したものだ。

牽制できるのは米軍だけ

5月11日バシー海峡を飛び越えたSu-35戦闘機とH-6K爆撃機
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

中国国防省の発表によると、5月11日にはまた、中国空軍はロシア製のSU-35戦闘機を初めて、H-6K爆撃機編隊と共に台湾とフィリピンを隔てるバシー海峡に飛ばした。編隊にはJ−11戦闘機、KJ-2000早期警戒管制機が含まれ、台湾島を周回して空軍力の向上を見せつけた。

KJ-2000早期警戒管制機

これらは4月に台湾海峡で実施された実弾演習と南シナ海での史上最大規模の観艦式に続く演習だ。観艦式では習主席も閲兵し、海軍の現代化は「差し迫った」課題だと演説した。

オーストラリアのシンクタンク、ロウイー国際政策研究所が先日発表した包括的な指数によると、中国はアジアでは第2位の軍事力を保持しているが、首位のアメリカが中国の勢力拡大を黙認することはまずあり得ない。

米太平洋軍司令官フィリップ・デービッドソン海軍提督

米軍幹部は、海上における中国の軍事的プレゼンスをアメリカの国益に対する脅威とみなしている。米太平洋軍司令官に指名されたフィリップ・デービッドソン海軍提督は、4月に米上院軍事委員会の公聴会で、「中国は今や、アメリカと戦争になる場合を除き、あらゆるシナリオで南シナ海を制覇できる軍事力を保有している」と警告した。

アメリカは1972年以降「一つの中国」政策をとる一方で、民間レベルでは台湾との関係を保ってきた。ドナルド・トランプ米大統領は中国との貿易摩擦がピークに達した3月半ば、アメリカと台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目指す「台湾旅行法」案に署名。中国はこれに強く反発している。

【私の論評】北朝鮮問題が収束すれば、米中対立でアジアの緊張は極限まで高まる(゚д゚)!

北朝鮮問題は、何らかの収束を迎えそうな気配があります。米国は、先日もこのブログで掲載したようにイランをはじめとする中東の問題も抱えているため、北朝鮮問題に関しては早期解決をはかるでしょう。

その後に、中東の問題を解決する可能性が高まっています。だから、北朝鮮問題を長引かせることはないでしょう。どんな形であれ、数ヶ月以内に決着をつけることになるでしょう。

それについては、以前もこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
イラン・イスラエル戦争が始まる? 核合意離脱で一気に不安定化する中東―【私の論評】北朝鮮との和平に向けた動きが加速すればするほど、イラン攻撃が近くなる(゚д゚)!
イスラエル軍のダマスカスへのミサイル攻撃(5月10日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分のみを掲載します。
トランプ政権としては、まずは北朝鮮に核を放棄させるとともに、北朝鮮とイラン、シリアなどの中東諸国との関係を絶たせ、北と和平を結ぶか和平交渉のテーブルにつかせ、その後にイスラエルを支援し、イスラエルがイラン・シリアを攻撃し、様子を見て介入すべきと判断した場合は介入することでしょう。

トランプ大統領は、何としてもオバマ前大統領の「戦略的忍耐」を正す腹でしょう。
現在のところ、中東問題がどの方向に進んでいくのか、米国の介入があり得るかどうかは、未だ判然としないところがあります。

だからこそ、米国は北の問題を長引かせることないでしょう。金正恩が米国の要求をすべて飲むか、要求を飲まなければ、米軍が北に軍事攻撃をして少なくとも核関連施設をすべて破壊することになります。

その後中東情勢を睨み、米軍が介入するかどうかを決めるでしょう。

そうして、アジアでは北朝鮮問題など単なる前哨戦にすぎないことが明らかになります。台湾を巡っての中国と米国の対立が顕になります。

すでにその兆候はみられています。米国の対台湾交流窓口である米国在台協会(AIT)台北事務所の新庁舎が今年6月に開所後、米海兵隊が警備に就く可能性が出ています。

元AIT台北事務所長のステファン・ヤング氏が先にメディアへの投書で、新庁舎の警備には、他国の米在外公館と同様、海兵隊員を派遣するよう米政府に提案したことを明らかにしました。

台湾の対米窓口機関、台北経済文化代表処の米首都ワシントンの事務所の
警備に、憲兵ら台湾軍人の派遣を復活する案も出ている

米国側は海兵隊の派遣の有無を明らにしておらず、台湾外交部も確認を避けています。しかし、新庁舎建設工事の競争入札の募集広告に「警備隊営舎」と書かれており、海兵隊の派遣は確実との見方が広がっています。

一方、台湾の対米窓口機関、台北経済文化代表処の米首都ワシントンの事務所の警備に、憲兵ら台湾軍人の派遣を復活する案も出ています。AITの海兵隊派遣に対し、対等を立場を示すためです。

同代表処のワシントン事務所は、以前は憲兵が武器を携行せず館内で警備を行っていましたが、民進党の陳水扁政権時代に、経費節約を理由に中止になりました。馬英九政権時代に再び、憲兵の派遣が提案されましたが、中国への配慮から見送られました。憲兵は、国家主権の象徴であり、中国を刺激する恐れがあったからです。

台湾の外交関係者は、海兵隊と憲兵隊の相互派遣について「台米関係に影響を与えないようにするとともに、中国が反発して報復を招かないよう気をつけなければならない。利害とバランスは複雑で、すぐに結論は出せない」と話しています。 

いずれにせよ、米海兵隊のAITの派遣は規定の事実なので、これが実際に実施された場合、中国の反発を招くのは必至です。

しかし、これを皮切りに台湾をめぐり米中の対立が顕になるのは、必定です。

昨今の台中関係を鑑みるに、潜水艦は台湾の中国に対する抑止力を高めるためのカギとなる存在の一つであることが理解できます。航空戦力は既に圧倒的に中国側が有利であり、中国から台湾への攻撃があった場合、単純に両国間の戦力差を比較すると台湾は2、3日で制空権を失うと言われています。

これに関しては台湾の中国に対する、「A2AD(接近阻止・領域拒否)」的な能力の向上が重要ですが、実現には新鋭の潜水艦が不可欠です。しかし、現在台湾が保有する4隻の潜水艦(2隻は米国製、2隻はオランダ製)は、老朽化が進んでいます。これに対し、中国は約60隻もの潜水艦を保有しています。

2001年に米国のブッシュ(子)政権は、台湾に8隻のディーゼル推進式潜水艦の売却を決めたものの、結局、実現していません。そこで蔡英文政権は米国からの購入を断念し、自主建造に方向転換、2026年までに1隻目を就役させることを目指しています。

台湾の王定宇・立法院議員は、台湾の海中戦闘能力向上のための防衛計画は10年前に始まっていて然るべきものであり、潜水艦建造は既に予定より20年遅れている、と強い懸念を示しています(4月9日付、台北タイムズ)。また、船体は自主建造できるにせよ、エンジン・武器システム・騒音低減技術等は海外から導入する必要があります。

状況を俯瞰すると、米国から台湾に潜水艦技術が供与されることが望まれます。この点、4月9日、台湾国防部は、台湾の潜水艦自主建造計画を支援するために米企業が台湾側と商談をすることを米政府が許可したと明らかにしています。

10日、台湾・高雄市で開かれた「台米国防産業フォーラム」

台湾と米国の防衛関連企業の協力強化を目指す初の「台米国防産業フォーラム」が10日、台湾南部高雄市のホテルで開かれました。米国が台湾との高官往来を促進する法律を制定するなど米台の接近が目立つ中、中国が警戒感を強めそうです。

台湾政府は防衛産業の育成を重視し、フォーラムを通じて台湾企業が米国の防衛産業により深く関与することを狙っています。潜水艦や軍用機の自主建造も進めており、必要な技術協力にもつなげたい考えです。

フォーラムには米航空防衛機器大手ロッキード・マーチンや米軍需大手レイセオンなど10社以上の米企業や台湾企業約40社の代表らが参加。航空や造船、サイバーセキュリティー分野での協力の可能性について意見交換しました。

トランプ政権は米台関係を重視しており、米側は「防衛協力のチャンス」と期待。ただ、中国に進出している台湾企業は多く、中国への防衛機密漏えいを懸念し、法的な防止措置が必要との指摘も聞かれました。

米国では台湾企業と交流する米台国防工業会議が毎年開かれていますが、台湾ではこうした場がありませんでした。

ただ、商談が成立したとしても、実際に輸出されるには米政府の許可が必要となります。この点は不透明な要因ですが、最近の米国の潮流は台湾への武器供与に積極的になっているように思われます。

2016年7月、米議会では、台湾関係法と「6つの保証」(1982年にレーガン大統領が発表)を米台関係の基礎とすることを再確認する両院一致決議が採択されています。台湾関係法は、台湾防衛のために米国製の武器を供与することを定めています。

「6つの保証」の内容は、1.台湾への武器売却の終了時期は合意されていない、2.台湾と中国の間で米国が仲介することはない、3.台湾に中国と交渉するよう圧力をかけることはない、4.台湾の主権に関する立場を変更することはない、5.台湾関係法の規定を変更することはない、6.台湾への武器売却決定に当たり事前に中国と協議することはない、となっています。

トランプ政権は、昨年6月、14億ドル相当の武器を台湾に売却すると議会に通知し、同12月に発表された米国の「国家安全保障戦略」では、台湾関係法に基づく台湾への武器供与が明記されています。

台湾は、日本の潜水艦技術にも強い関心を持っていると言われています。日本の潜水艦技術は世界でもトップクラスであり、特に騒音軽減技術が優秀である。台湾が最新鋭の潜水艦を導入することは、日本の安全保障にとっても当然プラスになります。

通常動力型潜水艦としては世界最高峰の「そうりゅう型潜水艦」

日本は通常動力型潜水艦の分野で世界をリードする立場にあり、同分野で日本と比類する技術力を持つ国はありません。

中国にも039型などの通常型潜水艦がある一方排水量などの点から見ても通常動力型潜水艦としては世界最高峰の「そうりゅう型潜水艦」には到底及ばないのが現状です。

そうりゅう型潜水艦は「X舵」を採用しており、海底付近での機動性が向上しています。浅海区や沿岸で機動できる場所が多く、簡単に侵入されやすい日本周囲の海峡において威力を発揮する潜水艦です。海洋進出を進めている中国にとって、そうりゅう型潜水艦は脅威です。

日本としては、台湾の港に「そうりゅう型」潜水艦を寄港させたり、バシー海峡で、「そうりゅう型」潜水艦も含めた、日米台の軍事訓練を行うことも考えられます。

いずれ、台湾が要望すれば、日本はこれを提供することも今から検討をしておくべきです。

いずれにせよ、北朝鮮問題が何らかの形で収束を見た場合、しばらくアジアの平和と安定が続くとみるべきではないです。

次の段階では、台湾を巡って、米中の争いが顕になります。これに関して、日本は無関係ではないどころか多いに関係があります。

台湾が中国に飲み込まれてしまえば、日本も危険です。もしそのようなことが起こったとすれば、米国は台湾を見捨てたということです。勢いづいた中国は、台湾を日本侵攻の基地として、次の段階では尖閣諸島を我が物にし、その次の段階で沖縄、その次の段階では西日本、その次の段階では東日本を我が物にしようとするかもしれません。

一方、台湾の独立が維持された場合には、米国は台湾に海兵隊を進駐させるかもしれません。そうなると、かつてないほど緊張が高まることになります。

北朝鮮問題は、米国が中国に制裁の強化を依頼するなど、米中が直接対決ということではありませんでしたが、それでも大きな問題でした、しかしこの問題がある限りは、米中の直接対決はあまり目立たないものでした。しかし、北の問題が収束すれば、米中の対立が露わになりアジアの緊張は北の問題のときよりも一層苛烈なものとなります。

これが、お花畑頭の日本のマスコミや識者が伝えない事実です。その時に日本が、平和憲法を理由に、これを傍観することは許されることではありません。

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2018年5月16日水曜日

【激動・朝鮮半島】トランプ米政権、米朝首脳会談中止の可能性に言及した北の真意を精査 現時点では「開催予定に変更なし」―【私の論評】正恩の判断一つで石器時代をむかえる北(゚д゚)!


10日、米中西部インディアナ州で、支持者に応えるトランプ米大統領

 トランプ政権は、北朝鮮が朝鮮中央通信を通じた声明で米朝首脳会談を中止する可能性に言及したことに関し、安全保障担当の高官らを招集して北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の真意などについて分析作業に入った。

 サンダース米大統領報道官は15日、声明をめぐる報道に関し「承知している」とした上で、「米国として北朝鮮の発言内容を独自に精査し、同盟諸国と引き続き緊密に連携していく」と強調した。

 国務省のナウアート報道官は15日の記者会見で、米朝首脳会談について「引き続き準備を進める」と述べ、現時点で開催予定に変更はないとの認識を明らかにした。

 ナウアート氏はまた、「金正恩氏は以前、米韓が合同演習を続けることの必要性と効用について理解すると発言していた」と指摘。国防総省のマニング報道官も同日、一連の米韓演習は「毎年の定例」であり、「防衛的性格であることは何十年にもわたって明確にしてきており、変更もない」と強調した。

 マニング氏は演習の目的について「米韓による韓国防衛の能力を向上させるとともに、米韓の相互運用性と即応能力を高めるため」とした。

 北朝鮮が問題視している米韓共同訓練「マックス・サンダー」は定例の空軍演習で、今年は米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22やB52戦略爆撃機などが参加。既に始まっており、25日まで行われる。

【私の論評】正恩の判断一つで石器時代をむかえる北(゚д゚)!

マックス・サンダーに参加中のステルス戦闘機F22ラプター

以前もこのブログに掲載したことがありますが、北朝鮮には40年前のレーダーしかなく、実質上防空施設はないと考えて良いです。航空機も時代遅れのものが多く、米韓の航空兵力には全く太刀打ちできません。核ミサイルばかり注力してきたので、昔中東や、ベトナムで活躍した北朝鮮空軍の面影は全くありません。

このような北朝鮮ですから、米韓の航空機による普通の攻撃も脅威ですが、これに加えて、金正恩を恐怖に陥れる戦法もあります。

それは《電磁パルス(EMP)攻撃》や《地中貫通核爆弾》を用いた戦法です。

米軍による電磁パルス攻撃の模式図

EMP攻撃の方は、日本国内ではもっぱら北朝鮮が日本を筆頭に米韓に仕掛けるというパターンの報道が多いです。現に、北朝鮮がICBM搭載用水素爆弾の6回目実験を行った昨年の9月3日、北の朝鮮労働党機関紙・労働新聞がEMP攻撃を完遂できると強調していました。これは、おそらく本当でしょう。

韓国の公共放送KBSは昨年9月3日夜のニュースで、韓国がEMP攻撃に遭えば「自動車などの交通手段や金融機関や病院、通信施設など、全基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上『石器時代に戻る』」という専門家の声を紹介してもいました。

しかし、『石器時代に戻る』のは北朝鮮ではないでしょうか。

EMP攻撃は、高度30~400キロの上空での核爆発を起点とします。その時生じたガンマ線が大気を構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子中の電子がはじき飛ばされて雷のような巨大な電流が発生するなどした結果、強力な電波の一撃であるEMPが地上に襲来します。「宇宙より押し寄せる津波」に例えられるゆえんです。

EMPは送電線を伝ってコンピューターといった電子機器に侵入。電圧は5万ボルトに達するので、機器はIC(集積回路)の機能停止で損壊し、同時に大規模停電にも見舞われます。

影響範囲は爆発の高度や規模によるが、高度100キロで広島型原爆の3分の2に相当する10キロトン(TNT火薬換算)のケースでは、日本全土をほぼ覆う半径約1100キロにも達っします。

現代社会は電気なしでは成り立たちません。大規模停電で公共インフラを支える電子機器が損壊すれば、都市機能はマヒします。携帯電話&電話&インターネットなどの通信やガス&水道の供給が停止。飛行中の航空機が操縦不能になり、電力を絶たれた原子力発電所が制御不能に陥ります。自衛隊・警察・消防の指揮・命令系統や金融機関も機能不全となります。 

EMP攻撃は地上への核攻撃と違い、ミサイルの弾頭部分を大気圏再突入時の超高熱から守る素材や突入角度制御に関わる技術は必要ありません。小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけです。米国防総省では、北朝鮮が既に核弾頭の一定程度の小型化に成功し、EMP攻撃能力を備えたと確信しています。

この恐るべき兵器を米国は当然、研究・開発し、実戦段階まで昇華しています。

スターフィッシュ・プライム時にホノルルでみられたオーロラのような現象

実際、米国は1962年、北太平洋上空で高高度核実験《スターフィッシュ・プライム》を実施、高度400キロの宇宙空間での核爆発でEMPを発生させました。ところが、爆心より1400キロも離れた米ハワイ・ホノルルなどで停電が引き起こされ、予想通りの「魔力」が実証されました。
 
米国の専門家チームが近年まとめたシナリオでは、10キロトンの核爆弾がニューヨーク付近の上空135キロで爆発すると、被害は首都ワシントンが所在する米国東部の全域に及びます。損壊した機器を修理する技術者や物資が大幅に不足し、復旧には数年を要し、経済被害は最悪で数百兆円に達します。

EMP攻撃で、北朝鮮の核・ミサイル施設&基地を含む軍事拠点や各種司令部&各部隊間をつなぐ電子・通信機器=指揮・統制システムを不通にできれば、もはや戦(いくさ)はワンサイド・ゲームと化すことになります。

その上、EMP攻撃敢行のハードルは、核爆弾の直接攻撃に比べハードルが低いです。EMPの場合、核爆発に伴う熱線や衝撃波は地上には届かないです。EMPは被攻撃側の人々の健康に直接影響しません。

半面、食糧不足や病気などで数百万人単位もの死傷者は出ます。病院をはじめ、無線などの情報通信やテレビ・ラジオもマヒし、被害情報把握も救援・復旧活動も困難になります。信号機も突如消え、交通事故や火災で死者を増やし、大パニックに陥るためです。

こうした、一般の北朝鮮国民への被害をどう局限し、国際世論の批判をかわすか、米国は昨年、シミュレーションを繰り返していました。

もちろん、米国にとり最優先事項は人道ではなく、EMPの届きにくい地下坑道に陣取る北朝鮮・朝鮮人民軍の通常・核兵器による報復の芽を摘み取る点にあります。核施設の制御不能回避も大きな課題です。以上の課題も、米国昨年着々と解決しました。

ところで、北朝鮮の韓大成・駐ジュネーブ国際機関代表部大使は昨年9月5日、あろうことかジュネーブ軍縮会議で「米国が北朝鮮に圧力を加えようと無駄な試みを続けるなら、わが国のさらなる『贈り物を受け取ることになる』だろう」と演説しました。しかし、現実には『贈り物を受け取ることになる』側は、北朝鮮になるかもしれないです。

B2ステルス爆撃機とそれに搭載する地中貫通爆弾

さて次は、《地中貫通核爆弾》について論じます。 

バラク・オバマ政権は政権の最終盤に入って、ようやく北朝鮮の脅威に気付きました。一昨年11月の政権引き継ぎ会談で、当時のオバマ大統領は大統領選挙を制したドナルド・トランプ次期大統領に「米国の最大脅威は北朝鮮」だと、自戒を込めて伝えました。米国防総省も引き継ぎ直前、秘中の秘たる《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》の模擬弾投下試験を超異例にも公表。大統領選で激突していたトランプ候補とヒラリー・クリントン候補に、暗に覚醒を促しました。

大型貫通爆弾=MOPのパワー・アップ費&生産費や、MOPのプラットフォームとなるB-2ステルス爆撃機の改修費について、米国防総省は2000年代に入り近年でも頻繁に請求し認められています。 

対する北朝鮮の核・ミサイル施設は地下深く、鉄筋コンクリートや硬岩、鋼鉄などを巧みに組み合わせて構築されています。しかも、時間の経過とともに地下施設は補強され、強度を増しています。

このように、米国が「克服しなければならない課題」は多数残っています。しかし、「克服しなければならない課題」は昨年着実に「克服」されてきたのです。

30センチ以下の動く対象を捉える米国の偵察衛星は移動式発射台のワダチをさかのぼり、核・ミサイル格納トンネルを特定します。

軍事利用している衛星の種類には資源探査型があり、地質構造・地表温度を識別して、地下施設・坑道の構造や深度が一定程度判別可能です。

こうして長年蓄積し続けた膨大な量の偵察・監視資料を精緻に総合的に再分析します。すると、見えなかった地下施設が浮かび上がるのです。

例えば、地下施設建設前と建設後で、地上地形がどう変化していったか/地形変化のスピード/掘削機の能力割り出し/トラックで運び出される土砂の量/トラックで搬入されるセメント・鉄骨・鋼板などの量/労働者数…など。

地下施設といえども、兵器や技術者、軍人が出入りする出入り口は絶対に必要です。換気施設も然り。絶好の監視対象であり爆撃ポイントになります。 

金正恩の執務室があるとされる15号屋の衛星写真、地下150メートルには秘密居所があるされている

北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の秘密居所は地下150メートルともいわれ、MOPですら荷が重い恐れがありますが、先述の《地中貫通核爆弾B-61タイプ11》であれば確実に粉砕します

《電磁パルス(EMP)攻撃》と同様、地中貫通核爆弾B-61タイプ11は他の核搭載兵器に比べ、実戦投入のハードルは低いです。爆発威力を抑えれば、地下での起爆であり、一般国民の住む地上の被害を抑え、核汚染被害も局限できます。地下に蓄えられる朝鮮人民軍の生物・化学兵器も、核爆発力を抑えた「小さな核爆弾=ミニ・ニューク」が発する熱波で蒸発→無害化に一定程度貢献することでしょう。

やはり、「贈り物」が届く先は金正恩委員長が震えながら閉じこもる「地下のお住まい」のようです。

このような2つの贈り物で北朝鮮は「石器時代」に戻ることになるどころか、金正恩氏も蒸気になって跡形もなく消え去ることになりかねません。

石器時代に戻る北朝鮮?

マックス・サンダーでは当然のことながら、これら2つの兵器の訓練も行っているのでしょう。

金正恩からすれば、この訓練がいつのまにか本当の作戦行動になり、いつ北朝鮮が石器時代にもどり、自分がこの世から消えるかもしれいないという恐怖に苛まされているはずです。

北朝鮮は朝鮮中央通信を通じた声明で米朝首脳会談を中止する可能性に言及したといいますが、北朝鮮にそれを選択できる余地などありません。

米朝会談に主席するか、出席しないで、米国に北朝鮮攻撃の格好の理由を与えるかのいずれかのみです。

米朝会談に出席したとしても、米国の要求を飲まなければトランプ大統領は途中で退席することになるでしょう。まさに、金正恩の判断一つで北朝鮮は石器時代を迎えるかもしれません。

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