2018年9月23日日曜日

【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに―【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

【古森義久のあめりかノート】中国の「統一戦線工作」が浮き彫りに

「これまで考えられなかったことが実際に考えられる状態となりました」

最近の米国の中国への政策や態度の変化を評して日系米国人学者のトシ・ヨシハラ氏が語った。米海軍大学教授として長年、米中関係を研究してきた専門家である。そのとおりだと実感した。

写真はブログ管理人挿入 以下同じ

最近のワシントンでは官と民、保守とリベラルを問わず、中国との対決がコンセンサスとなってきた。トランプ政権の強固な立場は昨年末に出た「国家安全保障戦略」で明示された。要するに中国は米国だけでなく米国主導の国際秩序の侵食を目指すから断固、抑えねばならないという骨子である。年来の対中関与政策の逆転だった。

ワシントンではいま中国に関して「統一戦線」という用語が頻繁に語られる。中国共産党の「統一戦線工作部」という意味である。本来、共産党が主敵を倒すために第三の勢力に正体をも隠して浸透し連合組織を作ろうとする工作部門だった。

「習近平政権は米国の対中態度を変えようと統一戦線方式を取り始めました。多様な組織を使い、米国の官民に多方向から働きかけるのです」

米国政府の国務省や国家情報会議で長年、中国問題を担当してきたロバート・サター・ジョージワシントン大学教授が説明した。

ロバート・サター・ジョージワシントン大学教授

そんな統一戦線方式とも呼べる中国側の対米工作の特定部分がワシントンの半官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」から9月上旬に学術研究の報告書として発表された。米国全体の対中姿勢が激変したからこそ堂々と出たような内容だった。

「米国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」

こんなショッキングな総括だった。1年以上をかけたという調査はコロンビア、ジョージタウン、ハーバードなど全米25の主要大学を対象としていた。アジアや中国関連の学術部門の教職員約180人からの聞き取りが主体だった。結論は以下の要旨だった。

・中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、教科の内容などを変えさせてきた。

・各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新(しん)疆(きょう)ウイグル自治区などに関する講義や研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。

・その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の学者への中国入国拒否などを武器として使う。

この報告の作成の中心となった若手の女性米国人学者、アナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏はこうした工作の結果、米国の大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険をとくに強調していた。

こうした実態は実は前から知られてきた。だがそれが公式の調査報告として集大成されて発表されることが、これまでなら考えられなかったのだ。

いまの米国の対中態度の歴史的な変化の反映だといえよう。さて、わが日本でのこのあたりの実情はどうだろうか。(ワシントン駐在客員特派員)

【私の論評】米国ではトランプ大統領が中共の化けの皮を剥がしはじめた!日本もこれに続け(゚д゚)!

トランプ大統領就任後、米国は40年間続けてきた対中宥和(ゆうわ)政策を転換させました。経済が発展すれば中国は民主化するという考え方は誤りであり、逆に米国や他の自由主義諸国が中国共産党の成長に寄与する結果になったと結論付けました。そのためトランプ政権は対中強硬路線を取り、中国共産党政権に対する貿易戦争を開始しました。

米国は知的財産権や産業技術の保護にも力を注ぎ始めました。外国資本による米国企業の買収を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する法案が近日、議会を通過しましたが、中国共産党を念頭に置いているのは明らかです。

この「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」と呼ばれる法案により、米国の安全保障を脅かす可能性のある投資や買収を未然に阻止することが可能となります。

今日、アメリカは中国共産党政権が長年行なってきた統一戦線工作の手法と、それに関わる中国政府組織を暴露しています。これは中国共産党が続けてきた「硝煙のない戦争」に対する反撃であり、中国共産党の真の姿を暴く意味を持ちます。

また、トランプ政権が米国および世界各国を率いて中国共産党政権に対して反撃を開始し、貿易や統一戦線工作などの分野において「硝煙のない戦争」を始めたと言えます。


ブログ冒頭の報告書はその名称を『中国共産党の海外における統一戦線工作』と題するものであり、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に公表されたものです。

統一戦線工作は世界各国に対する「最も国家転覆的で、最も反民主主義的な浸透工作だ」と指摘しています。そのうえで、「中国共産党は統一戦線工作の範囲を海外まで広げ、外国政府や現地の華人に影響を与えることにより、北京政府に利する結果を得ようとしている」とし、「(中国共産党による統一戦線工作の)目的はアメリカ人を転向させ、アメリカ政府とアメリカ社会の利益に反対するように仕向けることだ」としています。

中国の人権問題に関心を示す他国に対し、中国共産党政権は「内政干渉」のレッテルを貼りつけました。ところがふたを開けてみれば、中国共産党政権は各種統一戦線工作を通して他国に対する内政干渉を行い、他国民を洗脳し民主主義体制と自由主義社会の転覆を目論(もくろ)んでいました。このような中国共産党政権は間違いなく世界最大にして最も陰険な脅威です。

中国共産党の統一戦線工作の特徴として「3つのD」、すなわち偽装(Disguise)・欺瞞(Deceive)・堕落(Deteriorate)が挙げられる。
1. 偽装(Disguise):中国共産党の官僚やスパイは偽装工作に長け、様々な肩書を使い分ける。こうして彼らはうまく他国に浸透し、各業界と関係を構築しパイプを作る。 
スパイ容疑で拘禁されたエドワード・チーリャン・リン米軍少佐

2. 欺瞞(Deceive):関係を構築したのち、中国共産党のスパイらは各国の政治、商業、軍隊、学術界などのキーパーソンを取り込む。名誉や利益、ハニートラップを駆使してキーパーソンを買収もしくはコントロールし、中国共産党にとって有利となるような言論を発表させる。同時に、中国共産党にとって不利となるような言論や政策を阻止させ、共産党にとって好ましくない人物を妨害する。このような工作を行うスパイらは、時には違法行為も厭(いと)わない。 
元FBIスミスは2003年四月、中国系アメリカ人の女性実業家カトリーナ・レアンに
機密資料を渡していたとしてFBIの同僚に逮捕された

3. 堕落(Deteriorate):統一戦線工作の「トロイの木馬」による浸透が奏功した後、スパイらは継続的に様々な不道徳的な手段を活用して買収工作を行い、さらに多くのインフルエンサー(影響者)を取り込む。 
取り込まれた人物らには中国共産党の利益となる言論を広げさせ、中国共産党が当該国で勢力を拡大できるような政策を制定させる。こうしてその国は政治や経済面において中国共産党にバックドアを開き、ますます堕落し、弱体化する。こうして中国共産党はその国における影響力をますます増大させ、ついには支配する目的を達成することができる。


米国の腐りきった歴史学会を語る米歴史学者ジェーソン・モーガン氏

中国共産党が相手国の立法に影響を与えることができない場合でも、世論を操作して市民社会に波風を立てることができます。例えば、中国共産党が社会の基本的価値観と乖離(かいり)した一部の者を扇動し、一般人から嫌悪される過激な手段で争いを起こすことにより、社会の分断を狙います。

または日常的に混乱や衝突を引き起こすことにより、「社会が自由すぎるのではないか」という感情を国民に植え付け、政府の権力増大を支持させます。この手法でも社会の左翼化と国家転覆の目的を果たすことが可能です。

この報告書は、中国共産党が長年アメリカの政治界と学術界に対し浸透工作を行い、アメリカのエリートが中国共産党のために声を発するように仕向けたと指摘しています。

アメリカ前政権の不作為で怠慢な態度と異なり、トランプ政権は中国共産党の「敵をもって敵を制する」作戦を暴露し、アメリカ国民に警鐘を鳴らしました。

中国共産党の脅威は東アジアや激安商品に潜んでいるのではなく、アメリカ社会の隅々まで浸透しているのです。政治界、軍隊、学術界、商業界、教育界など、中国共産党に浸透されていない部分はなく、その手段は極めて卑劣です。


米国内では日本を貶める工作も進めらている。その目的は日米を離反させること

米国では「大先生」と呼ばれた中国関連の学者や専門家が、会話の中で中国共産党統治下の中国を称賛していました。中国の将来はバラ色だと言う彼らは、書籍を出版し共産中国の素晴らしさを宣伝しました。しかし彼らは「中国と中国共産党は別物」であり、「中国国民は中国共産党員と同じではない」という基本中の基本すら理解していないようです。

後でわかったことですが、それらの「大先生」はみな中国国内で何らかの教育活動に従事し、中国政府から利益供与を受け、多くの肩書や賞をもらっていました。

事実、中国共産党の「敵をもって敵を制する」策略の目的は、徐々にアメリカ社会に浸透することであり、アメリカが中国共産党に対し警戒を解くよう仕向けるためです。同時にアメリカ内部で勢力を持つ社会主義者やリベラル派などの左翼勢力と連携し、アメリカを蝕(むしば)みます。そして米国の政権を奪い取り、最終的には完全に左傾化させ、社会主義国とすることが最終目的です。もし米国が社会主義国となれば、万事休すです。

「中国共産党の統一戦線行動は米国に対する重大な挑戦であるにもかかわらず、簡単に説明できる問題ではない。なぜなら中国共産党と中国は分割できないものだと中国共産党が頑なに主張してきたからだ。」

長年、中国共産党は「中国は中国共産党と同一の存在だ」というイメージを意図的に形作ってきましたた。そのため多くの中国人と外国人は「中国と中国共産党は別物である」ということを忘れてしまいました。そのため、中国共産党の統一戦線工作を封じ込めるための政策が、ポリティカル・コレクトの名のもとに「人種差別」「国家蔑視」と批判されてきました。

米国政府はすでにこれを警戒し始めました。今年5月、航空会社の「台湾」表記の問題について、ホワイトハウスの報道官は「中国共産党が」圧力をかけたと非難しました。

今年7月に行われた安全保障フォーラム「アスペン・セキュリティ・フォーラム(ASF)」では、中央情報局(CIA)東アジア部のマイケル・コリンズ氏が中国と中国共産党とを区別すべきだと強調しました。

そうしなければ、中国共産党を批判する言論が「反中国」「反中国人」であると誤解されるからです。「客観的に言えば、私たちは中国や中国国民、中国の発展を脅威とみなしているわけではない」とコリンズ氏は言います。「私たちが心配するのは中国共産党の向かう方向だ。中国共産党が達成しようとしている目標、および彼らが目的達成のためにますます高圧的な手段を用いていることを懸念している」

米国は度々「中国と中国共産党は別物である」と強調してきました。これはトランプ政権が、中国共産党が長年刷り込んできた誤った認識を見破ったことを意味します。中国共産党は長年「中国と中国共産党は同一の存在だ」とする嘘偽りを発信し続け、中国国民を欺き、全世界を騙しました。トランプ政権によってこの化けの皮がいま、はがされつつあります。

正確に言えば、中国共産党は西洋から来た悪霊(共産主義は元々西洋から生まれた思想)のような政権であり、中国伝統文化とは相入れない存在です。中国は中国共産党政権に寄生されたのであり、中国国民は不幸にも中国共産党政権の奴隷となってしまったのです。

米国メデイアが中国に浸透されていることを考えると、
米国メディアのトランプ報道は真に受けることはできない

メディアは中国共産党の統一戦線工作における重要な対象です。報告書によると、オーストラリアとニュージーランドのメディアに対する買収工作が最も進んでおり、オーストラリアの中国語メディアの95%近くは中国共産党政権に買収されています。

ジェームズタウン基金(The Jamestown Foundation)が2001年に行なった調査でも、アメリカでは少なくとも「星島日報」「世界日報」「明報」「僑報」などが中国共産党による直接的・間接的コントロールを受けていることが分かりましたて。

CIAのコリンズ氏もメディア買収に対し懸念を示しました。「私は彼ら(中国共産党)が選挙を操作するのではないかと懸念している。これは政治干渉である。ほかにもメディアに対する干渉、経済に対する干渉などなど。彼らが私たちの思想をも干渉するのではないかという懸念もある」

アメリカのメディアに対する中国共産党の浸透の度合いを調査した研究はまだないですが、トランプ大統領に対するアメリカ左翼メディアの猛烈な攻撃の背後には、中国共産党の姿が見え隠れています。

中国の各種不道徳な行為を暴くトランプ政権

中国共産党は長年外国に対して統一戦線工作を仕掛けてきましたが、中国共産党はこれを決して公にしてきませんでした。いま、米国政府は公式報告書で中国共産党の統一戦線工作を系統的に暴露し、その化けの皮をはがしています。同時にこれは、他国を転覆しようと画策する中国共産党の不道徳な国際戦略に対し、米国が照準を向けたことをも意味します。

過去数十年に渡り、中国共産党は不公平な貿易によって自身の経済規模を拡充してきました。また、非合法的な技術の取得による自身の先端科学産業を発展させてきました。そして非人道的な低賃金・人権無視の戦略を用いて外資企業を誘致しました。

その極みとして、不道徳的な統一戦線工作を通して外国の世論や政策を操り、もって他国の政権や民主主義社会の転覆を目論んだのです。

中国共産党の正体を暴いた同報告書はトランプ政権の大きな実績です。中国共産党の各種不道徳な行為は、トランプ政権によって次々と暴露され始めています。これからも、さらに中国の異形のおぞましい姿が次々に晒されていくと思います。

なお、この『中国共産党の海外における統一戦線工作』に書かれていことは、以前から知られていることです。多くの筋からそのような内容は、多くの人々に知られていました。その一旦は、このブログにも過去にも数多く掲載しています。

とはいいながら、このような内容が、米国議会の「米中経済安全審査委員会(USCC)」において、8月24日に『中国共産党の海外における統一戦線工作』という報告書によって正式に公表されたという事実は大きいです。

これで、中国に対して面と向かって擁護する人は少なくとも米国ではいなくなりました。そうして、これはトランプ大統領ならび米国議会が中共との対立もじさないという並々ならぬ決意を示すものです。

そうして、このような中国の統一戦線工作は無論米国にだけではなく、日本を含む他の先進国にも様々な工作をかけています。

日本も、米国のように中国の化けの皮を剥がし、白日のもとに晒すべきです。

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2018年9月22日土曜日

【日本の解き方】二度あることは三度ある!? 消費増税「スキップ」あるか 改憲とデフレ脱却の切り札に―【私の論評】安倍総理は増税を再延期を公約として参院選になだれ込む(゚д゚)!

【日本の解き方】二度あることは三度ある!? 消費増税「スキップ」あるか 改憲とデフレ脱却の切り札に

総裁選後はじめて官邸に入る安倍総理

自民党総裁選で安倍晋三首相が3選されたが、憲法改正やアベノミクスの今後など、残る首相在任期間中の課題は少なくない。

 憲法改正の手続きは、国会が改正案を示し、最終的には国民が投票で決めるが、まず衆参両院の憲法審査会に国会議員が憲法改正原案を提出するところから始まる。まだ、安倍政権はスタートにも立っていない。

 今回の総裁選を受けて、憲法改正について自民党内での意見集約が進むだろう。安倍首相は国会議員から多くの支持を受けているので、争点はいつ、憲法改正原案を自民党として国会に提出できるかである。

 仮に提出できれば、衆参両院において憲法審査会での可決、本会議において総議員の3分の2以上の可決があってから、憲法改正を国会が発議でき、国民投票にかけられる。国民投票では賛成過半数によって、ようやく憲法改正ができる。

 このように憲法改正では、衆参両院の3分の2と国民投票による過半数という普通の法律にはない高いハードルが待っている。

 安倍政権は、この憲法改正のスケジュールをどう考えているのだろうか。最短でいけば、総裁選後、自民党内で憲法改正原案をもんで来年の通常国会に提出し、衆参3分の2で国民投票案を可決して、その半年後に国民投票というスケジュールだ。来年には改元もあるので、新しい時代に新しい憲法という流れだ。自公は衆参ともに3分の2をとっているので、参院選前に国民投票案を可決しやすいという環境を生かせる。

 しかし、これは公明党がどう出てくるかが問題になる。もし「参院選前にはやめてくれ」となるとスケジュールは崩れ、来年7月の参院選で自公で3分の2を維持しなければ、憲法改正は遠のく。

 となると、来年の通常国会を諦め、参院選で再び勝利を目指していくのか。そのためには、来年10月に予定されている消費増税をぶっ飛ばすのが政治だ。

 もちろん、来年10月の増税はすでに法律があり、準備作業に入っている。財務省は、システム対応が行われているので、来年になってからの消費増税のスキップは社会混乱を招くと主張するはずだ。

 ただし、実務を考えると、来年春に増税スキップを打ち出せばギリギリ間に合うだろう。そうした公約で参院選に突入すればいい、と筆者は考えている。

 これは、アベノミクスの課題対応にもなり、一石二鳥である。というのは、消費増税スキップはデフレ完全脱却の切り札になるからだ。

 来年10月の消費増税の悪影響をなくすためには、バブル景気並みの良い環境と、かなりの規模の減税を含む財政措置が必要だが、消費増税をスキップすればそうした措置も不要で、デフレ完全脱却への近道になる。

 安倍政権は、これまで2回も消費増税をスキップした。二度あることは三度あっても不思議ではない。確かに、安倍首相は来年10月の消費増税を明言しているが、来年7月の参院選の前に「君子豹変す」となっても筆者は驚かない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍総理は増税を再延期を公約として参院選になだれ込む(゚д゚)!

来年の10月に消費税を10%にした場合、経済が相当落ち込むことは想像に難くないです。なにしろ、今度はかなり消費税が計算しやすくなります。1000円のものを購入すれば、消費税は100円です。1万円なら千円です。10万円なら1万円です。かなり計算が苦手の人でも、すぐに正確に計算できます。これは、かなり消費に悪影響を与えることになるでしょう。

10%への消費税増税が日本経済にかなり悪影響を与えることや、現状では消費税をあげる必要など全くないことはこのブログで何度も掲載してきて、いまさら再度似たようなことを掲載するのも何やら倦怠感すら覚えてしまうほどなので、それは本日はやめておきます。

その変わり目先を変えた変わった見方を掲載しようと思います。それは、産経新聞特別記者の田村秀男氏の記事です。以下にその記事のリンクを掲載します。
【田村秀男のお金は知っている】自民総裁選に物申す、「消費税増税中止」の議論を
この記事は、9月15日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にグラフと、一部を引用します。

グラフは10年前のリーマン・ショック前後からの家計消費動向である。リーマン後、急速に落ち込み、アベノミクス開始後に急回復したが、増税で台無しだ。最近になって持ち直す兆しが見えるが、3%の税率上げ幅分を差し引くと、消費水準は10年前を大きく下回る。 
安倍首相は来年の再増税について「自動車とか、住宅とかの耐久財の消費を喚起する、あるいは商店街等々の売り上げに悪い影響がないように、きめ細やかな対応をしていきたい」と述べたが、小手先の対応に腐心するよりも、すっぱりと中止を宣言すべきではないか。 
石破氏は「経済の7割は個人消費が支えている。個人が豊かにならなければ消費は増えない」と一見もっともらしく語るが、所得がわずかに増えたところで、消費税増税で年間8兆円以上も家計からカネを吸い上げ、内需を抑圧しておいて、どうやって賃金が上がると言うのだろうか。他方で「地方創生」を最重要目標に据えるが、飼料代が増税分だけ負担増になるのに、卵1個の出荷価格の1円上げすらままならぬ地方の養鶏家の苦境にどう応えるのか。 
消費税と自然災害は無関係とみなす向きもあるだろうが、天災はすなわち人災である。人災とは政策の無為または失敗を意味する。国土の安全は治山治水インフラ、それを維持、運営するコミュニティーと組織・機構が整備されなければならない。支えるのはカネである。 
財務官僚が政治家やメディアに浸透させてきた「財源がない」という呪文こそは、国土保全に対する危機意識をマヒさせ、インフラ投資を妨げてきた。「財政健全化」を名目にした消費税増税によって、デフレを呼び込み、税収を減らして財政収支を悪化させ、さらに投資を削減するという悪循環を招いた。「備えあれば憂い無し」という常識が失せたのだ。 
もとより、国家の政策とは、安倍首相が強調するように「政治主導」で決まる。家計簿式に単純な収支計算によって国家予算の配分を決める財務官僚にまかせる従来の方式では大規模で長期にわたる資金を動員する国土安全化計画を遂行できるはずはない。 
多発性の災害までが加わった「国難」に対処する手始めは、消費税増税の中止など緊縮財政思考の廃棄とすべきではないか。
石破氏は経済の7割は個人消費が支えていると言っていますが、これは日本のGDPに占める個人消費の割合が六十数パーセントであることを示しているのだと思います。

増税すると、個人消費が低迷して結局GDPの成長率が落ちてしまうということです。そのことをこのグラフは良く示していると思います。

このグラフ各年は、4月始まりで3月終わりとなっているのでしょう。2014年の4月から、消費税の3%分を差し引いた家計消費はどんどん下がっています、17年でも元の水準に戻っていません。これは、各家庭が増税前よりも消費を減らしているということです。

8%増税で、これだけ消費が低迷しているわけですから、10%増税などしたらとんでもないことになります。

このようなことは、安倍総理はしっかりと自覚していると思います。というより、財務省はもとより、増税推進派の官僚や政治家、マスコミなどは全く信用しておらず、根強い不信感を抱いていると思います。



現状では、安倍首相と菅官房長官が財務省に包囲されてしまい、消費増税阻止のハードルが高くなっているという説が有力のようですが、これは増税派の願望かもしれません。

しかし、それを一応事実であるとして仮定すると、財務省は国民からの文書改ざん、トップのセクハラ疑惑での辞任、パワハラ的構造などでの批判など一切影響をうけずに自分たちの思いのままに政治を攻略していることになります。

さすがの財務省もここまで強くはないと思います。私は、安倍総理は総裁選の前後は無論のこと、後になってもしばらくは増税の再延長などには意図して意識して全く触れないようにしているのではないかと思っています。

なぜなら、そうすれば、財務省や大多数の議員、マスコミ、識者らの増税賛成派に警戒心を与え、増税推進のための大キャンペーンをはられて、それこそ2013年の8%増税決定のときのようになってしまうことを恐れているのではないかと思います。

私としては、やはり憲法改正の国民投票を成功させるため、高橋洋一氏もブログ冒頭の記事で主張しているように、増税の先送りを後押しに利用すべきだと思います。最近は改憲派が増えてきたとはいっても、依然護憲派の力も大きいです。何より、マスコミが護憲派の後押しをするということが大きいです。

改憲派の人でも、いざ国民投票となって、投票するということになれば、おそらくその時にはマスコミが徹底してかつてないほどの巨大な護憲大キャンペーンをすることでしょうから、それに押されて一時的にも護憲のほうに回る人も増える可能性が大です。

そんな時に、消費税10%引き上げをすでにしてしまっていたとすれば、それに伴う駆け込み需要・反動減を抑えるための大型景気対策を実施したとしても世論の不興は避けられないです。憲法改正の国民投票で過半数の賛成票を集めるためには増税の再々延期をすべきです。

そうして、護憲派を強力につなぎとめ、デフレからの完全脱却と、改憲も成功させるのです。そうして、それは安倍総理にとっても良いことです。もし、増税をそのまま強行してしまえば、再び個人消費が今度は8%増税のときよりもさらに低迷して、日本はデフレに舞い戻ります。そうなれば安倍政権は改憲どころか、安倍おろしの嵐が吹き荒れ、政権の座から追われることにもなりかねません。

そんなことは、当の安倍総理が絶対に避けることでしょう。最近、文部科学省の戸谷一夫事務次官が汚職事件の責任を取って辞任し、前任の前川喜平氏と2代続けて事務方トップが不祥事により途中で辞める事態になっています。

辞任した文部科学省の戸谷一夫事務次官

さて、先程の述べたように、財務省は国民からの文書改ざん、トップのセクハラ疑惑での辞任、パワハラ的構造などで批判を浴びています。確かに、佐川国税庁長官が辞任したり、次官は辞任したりはしていますが、まだこれでは甘いと言わざるを得ません。

私は、来年の4月あたりに、さらなる財務省の悪事が露見して、先の文部省人事よりもさらに厳しい人事が行われ、事務次官辞任はもとより、かなりの人数が辞任などに追い込まれたりで、財務省を骨抜きにした後に安倍総理は、増税スキップを打ち出し、それを公約としてで参院選に突入するのではないかと睨んでいます。

財務省に言いたいです、「首を洗って待て」と。一国の総理を甘く見るととんでもないことになります。一国の総理をなめているということは、多くの国民をなめていることでもあります。ふざけるなと言いたいです。

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2018年9月21日金曜日

北方領土問題は今度こそ動くのか 「2島返還論」のタブーを解禁するとき―【私の論評】GDPが東京都より若干小さい小国ロシアを文字通り小国にすれば、北方領土はすぐ返還される(゚д゚)!

「2島返還論」のタブーを解禁するとき

北方領土の国後島を訪問したロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領
(当時、2010年11月1日撮影、資料写真)

 自民党総裁選挙で、安倍首相が3選された。3期目に積み残した課題は多いが、その1つは北方領土問題だ。9月12日にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、ロシアのプーチン大統領は、突然「前提条件なしで年末までに平和条約を結ぼう」と提案したが、安倍首相はその場では答えなかった。

 これについて総裁選挙では、石破茂氏が「領土交渉が振り出しに戻った」と批判したのに対して、安倍首相は「ロシアはいろんな変化球を投げてくるが、ただ恐れていてはだめだ」と否定的ではなかった。1956年の日ソ共同宣言から動かなかった北方領土問題は、今度は動くのだろうか。

北方領土は「日本固有の領土」か

 多くの日本人は「歯舞・色丹・国後・択捉の北方4島は日本固有の領土だ」という政府見解を信じているだろうが、問題はそれほど自明ではない。歴史的には、この4島に日本人が住んでいたことは事実だが、国境線は動いた。

 外務省ホームページによると、1855年、日魯通好条約で、択捉島とウルップ島の間の国境が確認された。1875年の樺太千島交換条約では、千島列島をロシアから譲り受ける代わりに樺太全島を放棄したが、1905年のポーツマス条約では日本が南樺太を譲り受けた。

 1945年2月のヤルタ会談で南樺太と千島列島をソ連の領土にするという密約が結ばれたが、これには法的根拠がない。1945年7月のポツダム宣言では、日本の主権が「本州、北海道、九州及び四国並びに連合国の決定する諸島」に限定されると規定したが、この宣言にソ連は署名していない。

 日ソ中立条約に違反して1945年8月に参戦したソ連は、北方4島を武力で占領したが、その後も日本とは平和条約を結んでいない。1951年のサンフランシスコ平和条約で日本は「千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄」したが、この条約にソ連は参加していない。

 1956年の日ソ交渉では、領土問題について日ソ間で意見が一致する見通しが立たないため、戦争状態の終了と外交関係の回復を定めた日ソ共同宣言を締結した。このとき「歯舞群島及び色丹島は平和条約の締結後、日本に引き渡す」と明記されたが、国後・択捉については何も決まっていない。いつまでも日ロ関係を混乱させている北方領土問題とは、この2島の問題に過ぎないのだ。

2島返還論という「変化球」

 プーチン大統領の提案は「平和条約を結んでから領土問題を話し合おう」というものだが、2島を「平和条約の締結後、日本に引き渡す」という約束を実行するなら検討に値する。彼は「いま思いついた」と言ったが、このように重要な問題について思いつきで発言するとは考えにくい。おそらく日ロの事務レベルでは合意できなかったので、彼の独断で提案したのだろう。

 その真意は分からないが、最近のロシア経済の苦境から推定すると、平和条約を結んで経済を回復しようということかもしれない。ロシアはずっと「クリル諸島(千島列島)はすべてロシアの領土だ」と主張しており、クリル諸島には北方4島がすべて含まれているので、歯舞・色丹を返還するだけでも彼らにとっては譲歩だ。

 だが日本政府の定義では、4島は千島列島に含まれないので、2島だけ返還すると「固有の領土」である国後・択捉を放棄することになる。2島返還論は外務省がずっと否定してきたもので、自民党も反対してきた。ところが今回、自民党でも右派と見られていた安倍首相が、これに前向きともとれる態度を取ったのは意外だ。

 日本政府が4島返還の原則を変えない限り平和条約は締結できないが、国後・択捉を返還されても日本人が移住することは困難で、経済的メリットはほとんどない。割り切って考えると、安全保障と2島の領有権のどっちが重要かというバランスの問題だろう。

「4島か2島か」より大事な問題

 2島返還論は、この62年間タブーだった。「それは戦後のドサクサにまぎれてソ連が不法占拠した主権侵害を事後承認するものだ」という主張は、筋論としては正しいが、それが日本政府の一貫した方針だったわけではない。

 サンフランシスコ条約で「千島列島」の領有権を放棄したとき、国会で吉田茂首相は南千島(国後・択捉)は千島列島に含まれると答弁した。日本も一時は、2島返還で平和条約を結ぼうとしたという説もある。

 2016年の日ロ首脳会談のときプーチン大統領は、1956年の日ソ交渉のとき、アメリカのダレス国務長官が重光外相に「もし日本がアメリカの利益を損なうようなこと(2島返還)をすれば、沖縄は完全にアメリカの一部となる」と述べたと記者会見で語った。つまりアメリカは2島返還で平和条約を結ばないよう、日本に圧力をかけたというのだ。

 これが「ダレスの恫喝」といわれる話で、プーチン大統領がそれを引き合いに出したのは、「日本も本当は2島返還を考えていた」と言いたいのだろうが、そういうアメリカ政府の方針は外交文書で確認できない。そういう経緯があったとしても、2島返還を正当化する根拠にはならない。

 それより大事な問題は、もし歯舞・色丹が返還されたら、そこに自衛隊や米軍の基地を設置するのかということだ。これはロシアにとっては脅威になるが、日本にとっては2島返還でも基地を置くことができれば重要な意味がある。領土問題は国家主権の問題であるとともに、日米同盟の問題である。

 原則論としては、4島返還が正しい。ここで日本が妥協すると、今後ロシアとの外交交渉でなめられるという懸念もあるだろう。だが日本とロシアのような大国間で平和条約が締結されていない状況は異常であり、安全保障の上で問題がある。

 平和条約では領土を確定するので、そこに2島返還を書けばいい。かつて日ソ中立条約を破って参戦したロシア人だから約束を守らないかもしれないという不信感もあるが、そういうことを言い出したら外交交渉はできない。このへんは外交テクニックの問題だろう。むしろ障害は、これまで固く2島返還を拒否してきた外務省にある。

 北方領土は、プーチン大統領と信頼関係を築いた長期政権の安倍首相にしか解決できない厄介な問題だ。そろそろタブーは解禁し、2島返還論を議論してもいいのではないか。

【私の論評】GDPが東京都より若干小さい小国ロシアを文字通り小国にすれば、北方領土はすぐ返還される(゚д゚)!

上の記事を書かいた方、なぜロシアがあそこまで北方領土の返還を渋るのかその理由がわかっていないようです。それがわかり、それに対象する方法を実行すれば、意外と北方四島はすんなりと返ってくるかもしれません。

ロシアがかたくなに北方領土返還を拒む理由筆頭は、軍事的理由を挙げることができます。

ロシアの核戦略上、北方領土が接するオホーツク海が極めて重要な位置を占めているのだ。これが、北方領土返還を嫌がる隠された理由です。

オホーツク海に潜むロシア太平洋艦隊所属の弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)は、米本土を核攻撃できます。ロシアにしてみれば、北方領土、とりわけ、オホーツク海に面する択捉島、国後島の2島を日本に返還することは、ロシアの戦略原潜の安全にとってマイナスになってしまうのです。これが北方領土問題をややこしくしているのです。
 
この問題は冷戦時代に遡ることらができます。SSBNは、潜水艦の特性から海面下に潜むことができ、核戦争の最後まで生き残りを図ることができます。

そのため、冷戦時には、米ソ戦の決をつけるべく両国は相手国が最終的な核攻撃を行うか、この残存を梃子に戦争終結交渉に持ち込むかするだろうとみていました。まさに、最終的な核攻撃の前に、SSBNは、最後の切り札の役割を担うと考えられていたのです。
 
ソ連の海軍戦略は、このSSBNの安全確保を最重要の柱として組み立てられました。この作戦構想は、その区域には何ものも入れない、いわゆる『聖域化(たとえばオホーツク海の聖域化)』であり、専門用語では『海洋要塞戦略』と呼ばれました。

極東においても『海洋要塞戦略』の登場により、オホーツク海およびその周辺海域が、核戦略上の中核地域となるに至ったのです。

地上戦に敗れるようなことがあっても、SSBNの安全が確保されるかぎり、第二次大戦のドイツや日本のように無条件降伏を押し付けられることはない。そのような要求には『相互自殺』の脅しをもって応えることができるからです。

ソ連のアメリカに対する核戦略上の「最後の切り札」が、オホーツク海に潜む戦略原潜(SSBN)だったのです。そして、ソ連が崩壊してロシアになった今でも、この構図は基本的に変わりません。だからこそ、ロシアは今でも北方領土を返還することを渋るのです。

このあたりを認識した上で、産経新聞の論説副委員長・榊原智が四島返還の決め手について現実的な提案をしています。その記事のリンクを以下に掲載します。
【風を読む】四島返還の決め手はこれだ 論説副委員長・榊原智
北海道・根室半島の納沙布岬(左下)沖に浮かぶ
北方領土の歯舞群島=2016年12月、北海道根室市

この記事比較的短いので全文以下に引用します。
 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が22回目の会談をしたが、北方領土問題の進展はなかった。それどころかプーチン氏は、領土問題棚上げの平和条約締結という身勝手な提案をする始末である。 
 中立条約を破って侵攻し、不法占拠を続ける旧ソ連・ロシアが悪いに決まっているが、憤っているだけでは始まらない。そこで北方四島返還につながる秘策の一端を披露してみたい。 
 戦後日本の対露交渉上の問題点を、安倍政権も抱え込んでいる。ロシアにとっての北方領土の軍事的価値を十分に意識せず、その価値を突き崩す努力をしてこなかったという点だ。 
 ロシア人は日本人の想像以上に軍事を重視する。北方四島の広さの93%を占める択捉、国後両島はオホーツク海に面しており、この海にはロシアの核ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN、戦略原潜)が潜んでいる。北欧のバレンツ海に配備された戦略原潜と並ぶ、対米核攻撃用の虎の子だ。 
 米国がロシアに先制核攻撃をしても戦略原潜は生き残って米本土に報復核攻撃を行う。この死活的に重要な戦略原潜があればこそ、ロシアは米国の核攻撃を抑止でき、最悪でも無条件降伏を免れると考え、自国を米中両国と並ぶ「大国」と見なすこともできる。 
 択捉、国後両島の返還が実現すれば自衛隊や米軍がオホーツク海で潜水艦狩りをしやすくなる。日本がそれはしない、北方領土に基地も置かないという約束を持ちかけても、自国の国防の根幹と世界的地位に関わるためロシアは決して同意することはないだろう。 
 では、日本はどうすべきか。防衛省自衛隊の知見を対露外交に取り込むべきだ。知恵を絞って先端の科学技術で自衛隊の能力を高め、有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を黙って整えればいい。これは専守防衛に反しない。共同経済活動よりも有効な返還促進策であり、対露交渉が進むこと請け合いだ。
これは、かなり現実的です。 確かに、有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を整えれば、ロシアが北方領土にこだわる理由はないし、これと北欧のバレンツ海に配備された戦略原潜も無効化できようになれば、ロシアは名実ともに小国になり果てるからです。

ロシアが小国というと、怪訝に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、現在のロシアは経済的にみても、科学技術や国の体制や人口をみてもとても大国とはいえません。小国と呼ぶのがふさわしいです。

なぜなら、まずはGDPは日本の東京都よりも若干小さいです。韓国と東京都はだいたい同じくらいのGDPです。現在のロシアのGDPはなんと韓国よりも若干小さなくらいの規模なのです。

そうして、産業構造は過渡に石油や天然ガスに頼る状況であり、その他は軍事技術は別にして、さしたる技術などありません。その意味ではまさしく発展途上国と言っても良いくらいです。

さらに、人口は1億4千万人であり、日本の1億2千万人より若干多いくらいです。あの広大な領土にこの人口です。これは、中国には遠く及ばないですし、インドにも及びませんし、米国にも及びません。

これでは、とてもロシアを大国などとよぶわけにはいきませんが、ただし上の記事にもあように、米国がロシアに先制核攻撃をしても戦略原潜は生き残って米本土に報復核攻撃を行います。この死活的に重要な戦略原潜があればこそ、ロシアは米国の核攻撃を抑止でき、最悪でも無条件降伏を免れると考え、自国を米中両国と並ぶ「大国」と見なすことができているのです。

このことだけが、かろうじて現在にのロシアが「大国」扱いされるわけですが、それを除けば、ロシアの実体は小国と呼ぶにふさわしいです。

ロシアの戦略原潜

そうして、ロシアの原潜の潜むバレンツ海とオホーツク海の聖域を完璧に無効化してしまえば、ロシアは名実ともに小国になるわけです。そうなれば、経済大国日本が交渉すれば、ロシアは4島返還にも応ずることでしょう。

そのような状況になれば、なんといっても一番の脅威は中国です。ロシアは世界でもっとも長く中国と国境を接している国でもあります。中国もロシアのように一人あたりのGDPでは米国はおろか日本にも及ばないですが、それでも人口が13億79百万人と桁違いに多いです。

さらに、最近では経済力を伸ばし軍事力も伸ばしています。現在のロシアにとって、最大の軍事的な脅威は、中国です。

今のところは、ロシアは「大国」扱いで、中国がロシアの領土等に対して野心を抱いたにしても、かなり簡単に屈服させることができます。しかし、将来はどうなるかはわかりません。現状でも、ロシアと中国の国境があいまいになり、多数の中国人がロシア領に越境して、様々な活動や事業を実施しています。この状況は国境溶解として、このブログでも以前紹介したことがあります。

日日中国の脅威が増しつつあるロシアでは、いずれ中ロ関係を大事にするより、日米英同盟に接近することも十分考えらます。

さて、ロシアのオホーツク海の戦略原潜の聖域無効化する方法ですが、これについては榊原智氏も明らかにはしていません。

まず最初に考えられるのが、潜水艦です。南シナ化では、すでに日米の潜水艦がチョークポイントに潜み、中国の原潜等の監視にあたるほか、訓練なども行い、中国の喉元にあいくちを突きつけたような状況にあることこのブロクでも解説しました。

このように、日米がオホーツク海に多数の潜水艦艦を配置するというやり方もあると思います。ただし、中国は未だに南シナ海を中国の戦略原潜の聖域には未だしていません、というか出来ない状態にあります。

未だ中国が聖域化していない海域に、日米が潜水艦を配置したとしても、軍事的な対立は起こりにくいですが、すでにロシアが聖域化しているところに日米が潜水艦隊を常駐させるようなことをすれば、軍事的な緊張が極度に高まることになります。ただし、ロシアの対潜哨戒能力は日米と比較してかなり低いですし、ロシアの経済規模からすれば、これに対応することは限られています。実際に潜水艦を配置されてしまうと、ロシアは太刀打ちできなく亡くなるのは事実です。

これに変わる方法はないかと考えてみましたが、あります。それについては、以前もこのブログで紹介したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
潜水艦の時代は終わる? 英国議会報告書が警告―【私の論評】水中ドローンが海戦を根底から覆す(゚д゚)!
海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」

 これまでの「対潜水艦戦」(以下、ASW)は、少数の艦艇および有人機によって実行されていた。これらの仕事は、広大な荒野で逃亡者を探す少人数の警察のようなものだった。最も可能性の高い逃走ルートや隠れ家に戦力を集中させて、幸運を祈るだけであった。
 
 しかし、安価な無人機の登場によって、逃亡者の逃走は不可能になる。一人ひとりの探知能力は低いものの何千人もの応援が警察の側につき、隅から隅まで全域を探索するようになるからだ。 
 小型偵察ドローンが米軍を中心に増加している。精密攻撃が可能な小型無人機もイスラエルなどで登場してきている。
 しかも最近の米国防総省は、大量の小型ドローンを「群れ」として使う研究を進めている。例えば、米海軍は「コヨーテ小型偵察無人機」というASW対応の小型無人機を開発した。コヨーテ小型偵察無人機は哨戒機から投下されるや飛行形態に変形し、熱センサーで水温を測定し、風速・圧力などの様々なデータを収集可能する。 
 そもそも偵察機を飛ばす必要はなくなるかもしれない。米海軍が開発した小型水上無人機「フリマ―」は、今までASWの主力であったソノブイ(対潜水艦用音響捜索機器)の代替になる可能性がある。
 また、やはり米海軍が開発した「セイル・ア・プレーン」は、飛行機であると同時に偵察時は水上で帆を使って帆走し、太陽発電と波力発電で充電できる偵察機である。
 水中グライダー式の小型無人機もある(水中グライダーは推進機を持たず、浮力を調整することで水中を上下しながら移動する)。大阪大学の有馬正和教授が開発した「ALEX」は低コストの水中グライダーである。有馬教授は、1000ものALEXのような無人機の群れで構成される巨大な共同ネットワークで海洋研究調査を行うことを提唱している。
このような空中、海上、水中のドローンを開発して、 自衛隊の能力を高め、有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を整えるのです。

分解したシーグライダー(水中ドローンの一種) ワシントン大学応用物理研究室が、
地球温暖化による氷河の変化を観察するため開発したもの  軍事転用もすすみつつある

無論最初は潜水艦等とドローンの混成であっても良いと思います。聖域から比較的離れたところに日米潜水艦隊が潜み、多数のドローンが隠密裏に聖域を常時監視し、何かあればすぐにドローンが潜水艦に連絡し、潜水艦や艦艇、航空機がすぐに攻撃をするという方式でも良いと思います。

ただし、将来は監視から攻撃までドローンがすべて行うという方式が望ましいと思います。これによって、ロシアの潜水艦は誰から攻撃されているかも、いつ攻撃されたのかもわからないうちに、海の藻屑と消えているような方式が望ましいと思います。

監視型、攻撃型のドローンを数百から数千もオホーツク海のロシアの戦略原潜の聖域に常時設置して、普段から哨戒任務にあたらせ、もしものことがあればすぐに原潜とミサイルを攻撃して無力化できるようにするのです。

そうして、実際にオホーツク海で多数のドローンを用いた演習をして、ロシア側にみせつけるのです。

これは、「はやぶさ」で惑星探査ができる技術力を持つ日本ならば、短期間のうちにできるはずです。

これにより、ロシアを文字通り小国化することができます。小国化したロシアは、日米と対立するよりは、日米に接近し、中国の脅威を払拭したいと考えるに違いありません。そのときに、日本がロシアと北方領土交渉すれば、かなり有利に交渉できるのは間違いありませんし、おそらく北方四島は日本に返還されるでしょう。

しかし、こうしたことをしないで、返還交渉をしたとしても、二島返還ですら相当難しいと思います。今こそ、発想の転換が必要です。

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2018年9月20日木曜日

中国メーカーの日本工場で「なりすましMADE IN JAPAN」が横行か?”静かな侵略”で就労移民が押し寄せる―【私の論評】中国の悪しきグローバリズムが、世界をナショナリズムに回帰させる(゚д゚)!

中国メーカーの日本工場で「なりすましMADE IN JAPAN」が横行か?”静かな侵略”で就労移民が押し寄せる

漫画家 / 評論家 孫向文


 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

  近年、日本のブランドのメーカーはコスト削減のために中国に工場を移設してきました。その結果、中国人作業員の手によって日本産の品質は低下。「日本ブランド」が実は「中国製」と何ら変わりがないという、口コミの風評被害が発生し、その価値は著しく下がってしまいました。


 前述のケースとは逆に、中国メーカーが日本で工場を開設して「日本製」と記載する事態が横行しているのです。無論、この中国メーカーの商品の開発と製造は中国人です。

 記事によれば、中国人消費者の間で「日本製」が大人気のため、中国メーカーはブランド価値を上げるために、日本に工場を移設しているのです。上海にある『慎興』というメーカーは、日本の工場で月に5万本の歯ブラシを製造し、それを中国に「輸入」しています。同社の社長は「我が社の商品は日本国内で生産しているため、正真正銘の日本製だ」と、「日本製」を看板にしています。

 日本政府のデータ(2017年3月まで)でも、中国内に本社を持ち、日本で支社を設立する中国メーカーは49軒、5年前の5倍になっているのです。

 ■中国企業の日本進出は「日本の就業率」を引き上げる? 答えはNO!

 日本人が中国で工場を開設すると、中国人を雇用し、中国の経済が活性化され、売り上げのほとんどが「中国のGDP」になっています。これが逆転した今、中国が日本で工場を開設しても日本人を雇用し、結果、日本の経済を活性化することになるのでは? と思う人もいるでしょう。

 しかし、中国メーカーの日本工場は日本人をほとんど雇用しません。雇用するのは在日中国人ばかりです。理由は、社内で中国語を喋ると仕事の効率が高くなり、さらに中国人の人件費は日本人より安くて済むからです。

 旧知の在日中国人の社長に取材したところ、さらに「恐ろしい手口」を明かしてくれました。

 「中国企業の日本工場は、だいたい従業員の9割が在日中国人。特に多いのは留学生のアルバイトなんです。彼らは卒業時に”留学ビザ”が切れると帰国しないといけないので、そのままアルバイトから正社員にして”就労ビザ”に変更させます。そうして、次は日本での”永住権”、最終的には”日本国籍”を取得を狙っていく。こうして中国企業は日本に工場を置くことで、数百人の中国移民を誘致する惨状になっているのです」

 日本では600万円投資すると、外国人であっても会社を作れます。これは国際基準と比較しても非常に低い敷居です。そこに中国企業が目をつけ、日本の土地と資源を利用し、「なりすまし日本製」(中身は完全に中国人の手による中国製のチャイナクオリティの商品)を濫造し、まるで商業詐欺のような商品が横行しています。今後も中国メーカーが日本に大量進出するようならば、「日本製」というブランド価値にも風評被害が及びかねません。

 ■アフリカを蝕む、中国マネーの甘い罠

 中国の投資進出は日本国内だけではありません。たとえばアフリカでも中共とコネのある企業がインフラ整備などで大量進出しています。しかし、中国企業はほとんどアフリカ諸国の国民を雇用しません。中国人の従業員をアフリカに大量に派遣し、現地で住み込みの経済活動をさせているのです。

 今年の8月に習近平主席がアフリカ諸国を訪問し、さらに600億ドルの「返済不要の融資」をアフリカに注ぎ込みました。「返済不要」と聞くと、アフリカにとって大きな得ではないかと思いますが、そんなに美味しい話ではありません。中国が腹黒い国家であることは私が散々述べてきたので、これまでのコラムをお読みになった方は十分、ご存知かと思います。

 ※アフリカ日本協議会からの引用

 <中国企業の進出に伴って、中国人が大挙してやってくることを否定的に語られることもある。大勢の中国人が、食料供給が十分にないところで野生生物を食べるケースが多々発生し、野生生物の食用需要がさらに高まっているという。>

 http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/africa-now/no93/top4.html

 ※中国語記事

 「アフリカに進出する中国企業は中国人しか雇用しません、アフリカの鉱産物とエネルギーを狙う」

 http://technews.tw/2017/11/02/china-investment-in-africa/

  中国「一帯一路」専門の情報サイトによると、「アフリカで採集した豊富な鉱産物資源を中国に送る、世界工場を維持する製造業にとって重宝です」

 http://silkroad.news.cn/2018/0116/79740.shtml

 現在、アフリカ諸国ではこのトリックを見破り、各地に反中デモが発生しています。このように明らかに他国の資源略奪、経済と人口の侵略に反発するのは、アフリカ人の当然の反応でしょう。

 ■「静かな侵略」を食い止める、シンプルな方法とは?

 このような企業による他国進出は中国によるものだけではありません。

 私は、仕事関係で韓国人が経営する出版業者にも接触したことがあります。その社内の雇用状況を聞くと「100%在日韓国人」であり、日本の取引先に対しても、打ち合わせでは「社長が韓国語のできる日本人」か、「日本語通訳できる韓国人と同行しないといけない」という条件をつきつけていました。その会社は今も韓国人労働者を大量に雇用しています。

 日本の土地と資源を利用しながら、多くの移民を送り込もうとする「静かな侵略」。日本が長年にわたり築き上げてきた、日本製ブランドさえも食い物にしようとしています。これを食い止める方法はないのか、私も考えてみました。

 答えは簡単、中国人企業が日本で工場を設立した場合、「従業員の9割以上は純日本人(帰化人除く)ではなければ営業免許を降ろさない」という条件を追加すれば良いのです。左派層から「人種差別だ!」の批判が殺到するでしょう。今の親中派だらけの自民党政権には、このような「非武力による日本侵略」の対応を期待できません。

孫向文
1983年生まれ、漫画家、評論家。中華人民共和国浙江省杭州市出身。『本当にあった愉快な話』(竹書房)にて「日本に潜む!!中国の危ない話」、 隔月刊『ジャパニズム』(青林堂)にて「大和撫子が行く」を連載中。近著『日本人に帰化したい!!』(青林堂)が好評発売中。そのほか『週刊文春』にて実録中国猛毒食品「僕らだって怖い!」を掲載し、TBSテレビ『新・情報7daysニュースキャスター』にて「中国超監視社会」に出演。

【私の論評】中国の悪しきグローバリズムが、世界をナショナリズムに回帰させる(゚д゚)!

貿易戦争で追い詰められる習近平

米中貿易戦争で、トランプ大統領は中国経済の息の根を止めようとしているのでしょうか。制裁関税第3弾の発動を正式に決めましたが、中国側が報復すれば残りの全輸入品にも25%の追加関税を課すとあらためてぶち上げました。

対中制裁に関しては有言実行のトランプ氏だけに、今回も脅しでは済むとは思えません。日本など外資系企業が生産拠点を移すなど「脱・中国」の動きは止まらず、習近平政権の地盤が大きく崩れつつあります。

中国はこの対中制裁に対して、あくまで受けて立つようです。日本など外資系企業にとって、中国に生産拠点を置くメリットがなくなりつつあります。

そのためか、米国の対中追加関税第1弾と第2弾を受け、三菱電機は8月に、中国で生産し米国に輸出していた工作機械の生産を国内に移しました。コマツは建設機械の部品生産の一部を中国から日本やメキシコに振り分けています。

ダイキン工業は米国で製造する空調機の一部部品を中国から賄っていますが、調達先の変更などを検討中です。東芝機械も10月に自動車向け部品などを製造する射出成型機の生産の一部を上海工場からタイと国内の本社工場に移す計画です。

ユニクロを展開するファーストリテイリングも、米国への供給をベトナムなど中国以外の拠点に切り替えることを検討しています。

これは、日本企業だけではありません。ブルームバーグは、米国のファッション各社が中国の代替地としてカンボジアやベトナムなど東南アジアに生産拠点を広げていると指摘しています。

米国ファッション産業協会の調査に参加した企業の67%が、今後2年で中国での生産量や生産額を減らすとの見通しを示したといいます。「次に買うブランド物のハンドバッグには『メイド・イン・チャイナ』のラベルは付いていないかもしれない」とも報じました。

中国から徹底する企業が相次いでいる

これは、外資系企業だけでなく、中国の民間企業にとっても同じです。拠点を中国以外に移す企業も増えるでしょう。その拠点の中には当然ながら、日本も含まれます。そうなると、孫向文氏がブログ冒頭の記事で指摘している、中国メーカーが日本で工場を開設して「日本製」と記載して販売するということがさらに横行することが考えられます。

それどころか、日本に本社を設置して、日本企業であることにして、その実中国で製造した製品を世界中に販売するということも十分考えられます。

そうして、これは何も日本だけではなく、米国やカナダ、オーストラリア、EUなどの先進諸国でも同様の危機があるものと考えられます。

他国の法律がどうなっているかどうかは、わかりませんが規制がなければ、当該国においてほとんど中国人が製造して、当外国製品であることにして販売するとか、本社を当該国に設置して、中国で製造した製品を当該国の製品として世界中に販売という事例もあるのではないでしょうか。

国営新華社通信は昨年、「世界の偽物(偽ブランド、コピー商品)の8割は中国とした欧州報告書の真相は如何に?」と題する記事を配信しました。

それによると、欧州刑事警察機構(ユーロポール)と欧州連合知的財産庁は、全世界の偽物の8割は、中国内地または香港の出自であるとレポートしたそうです。中国が商標権や知的財産権を侵害しているのは周知の事実であり、だからこそトランプ政権は対中国貿易戦争を展開しているのです。

このような中国ですから、貿易戦争により状況が変われば、中国人は海外に工場を移し、安い労働力であり言葉が通じて使いやすい中国人で製造した製品を当該国の製品として世界中に売りさばくなどということを平気ですることでしょう。

これに対して、米国をはじめとする先進国はいずれ手を打たなければならないことになると思います。日本とてその例外ではありません。

ブログ冒頭の記事で、孫向文氏は、中国人企業が日本で工場を設立した場合、「従業員の9割以上は純日本人(帰化人除く)ではなければ営業免許を降ろさない」という条件を追加すれば良いとしています。

それも一つの方法でしょう。私はこれも方法の一つだと思いますが、そういう条件がでてくれば中国人は変幻自在でこの規制を網の目を抜ける方法をすぐに考えてしまうのではないかと思います。

私は、これにプラスして、財務省に日本国内て製造する中国企業に対して一定の条件を満たさなければ所得税や、法人税を「増税」する方法を考えさせ、実行させると良いと思います。

何が何でも、省益だけを考え、引退後の天下り先で超リッチなハッピーライフを送ることを第一に考え、国民生活など無視して、とにかく増税しようとばかり考えてきた財務官僚が、これによってはじめて日本国民のため役に立つことができ、さらに彼らの増税DNAを満足させることもできるわけですから、これは一石二鳥です。

日本経済の悪化の諸悪の根源は財務省にあることは随分周知されるようになってきたが・・・・・

彼らなら、過去の増税でつちかってきた手法によって、ほとんどの国民にその実体を知られることもなく、マスコミからも糾弾されるどころか味方につけて中国企業に対して今度は、正当な理由により増税して彼らに塗炭の苦しみを与えることも不可能ではありません。(ブログ管理人注:これって半分ジョークですから、まともに受け取らないでください、とはいいながら半分は本気です😁)

さて、儲かりさえすれば、国境を超えてでも何でもするという中国の悪しきグローバリズムは、世界中で警戒心を招いています。

このブログでは、世界は自由貿易をしながらもナショナリズムに復帰するであろうと主張してきました。その典型的な記事のリンクを以下に掲載します。
【米中貿易摩擦】手詰まり中国 時間稼ぎ トップ会談で「休戦」狙う―【私の論評】中国のミンスキー・モーメントが世界のナショナリズム回帰への先鞭をつける(゚д゚)!
トランプ大統領

"
2017年4月27日に行った外交演説でドナルド・トランプ大統領は、以下のように述べています。
我々は最早グローバリズムという誤ったイデオロギーによって国家を破壊し、米国の国民をその犠牲者としてはならない。国民国家こそ幸福と調和の真の基礎を成すものである。私は国際的組織というものを信用していない。
これはナショナリズムという言葉こそ使わなかったものの、まさしくアンチ・グローバリズムであり、国家の再建を意味するものです。また、米・英・中・露は、タックスヘイブンを潰そうとしていることも、猛威を振る舞った金融グローバリズムを崩壊させるものとなるでしょう。

これからは、世界の国々は自由貿易をしつつも、ナショナリズムの時代になっていくことでしょう。勿論、急に何もかもが変わっていくわけではないはずですが、徐々に変わっていくことになるでしょう。

私は、中国のポスト・ミンスキー・モーメント(ブログ管理人注:中国でミンスキー・モーメントが起こった後)がその先鞭をつけるものではないかと思います。

トランプの戦いは、まさに悪い面でのグローバリズムの申し子でもある中国を潰しナショナリズムに復帰した世界を再構築することなのです。
"
トランプ大統領は、もし中国企業がうまい抜け道を使って、米国内で中国人を用いて製品を製造し、それを世界中に米国製としてばらまくようなことがあれば、これ対して鉄槌を下すのは明らかです。

悪しきグローバリズムに対しては、現在は米国トラン政権が先頭にたって戦っていますが、これには他の先進国も追随することでしょう。日本も当然追随します。

こうした動きに最初は抵抗する人もいるでしょうが、ブログ冒頭の記事のようなことをはじめとして悪辣な中国のやり口が人々に周知されるにつれて、抵抗はなくなり、世界はナショナリズムに回帰することでしょう。

グローバリズムは理想ではありますが、それには今の世界には徹底的に欠けているものがあります。それは、世界全体を統治する機構です。

それに似たようなものはすでにあります。それはEUや国連です。しかし、EUもなかなかうまく行っていないし、国連もまともに機能してはいないというのが実情です。EUや国連ですら、うまくいかないのであれば今後世界は、たとえ中国が崩壊したとしても、いつまた悪しきグローバリズムが復活するかは保証の限りではないので、やはり自由貿易をしつつも国民国家を主体とするナショナリズムに回帰することでしょう。

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2018年9月19日水曜日

海上自衛隊の潜水艦「隠密作戦」に中国狼狽 南シナ海で中国に“強烈メッセージ”か 同盟国・米国も了解―【私の論評】日米同盟は北朝鮮問題を解決するつもりのない中国の喉元にあいくちをつきつけた(゚д゚)!


海自潜水艦「くろしお」

南シナ海で軍事的覇権を強める中国への“強烈なメッセージ”なのか。防衛省は17日、海上自衛隊の潜水艦を南シナ海に派遣し、護衛艦部隊とともに対潜水艦を想定した訓練を実施したと発表した。潜水艦の行動は「極秘中の極秘」であり、今回の公表は極めて異例。同盟国・米国も了解しているとみられる。国際法を無視して、南シナ海の岩礁を軍事基地化している中国への牽制(けんせい)とともに、中国の具体的行動への“警告”と分析する関係者もいる。米中貿易戦争が激化するなか、中国の軍事的挑発を阻止する狙いなのか。中国は反発したが、動揺を隠しきれない。

 「自衛隊の訓練は、練度を向上させるためで、どこか特定の国を想定したものではない。南シナ海における潜水艦の訓練は15年前から行い、昨年も一昨年もしている」

 安倍晋三首相は17日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」に生出演した際、海自の対潜水艦訓練について、こう説明した。

 重ねて、安倍首相は「事実上、そうした訓練は(近隣国である)相手方も、十分に承知していることが多い」とも述べており、中国を意識したメッセージであることは、間違いない。

 中国は南シナ海のほぼ全域に歴史的権利があると主張し、独自の境界線「九段線」を引く。

 国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は2016年、こうした主張を否定したにもかかわらず、中国は、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の岩礁を勝手に埋め立てた人工島に滑走路やレーダーを建設したほか、パラセル(同・西沙)諸島に地対艦ミサイルを配備し、軍事拠点化を進めている。

 共産党一党独裁による中国の覇権拡大に対し、「自由と民主主義」「人権」「法の支配」といった価値観を共有する自由主義諸国は、警戒感を強めている。ドナルド・トランプ米政権は「航行の自由作戦」を展開し、英海軍も揚陸艦を航行させて圧力をかける。

 こうしたなか、今回の海自の訓練は、九段線の内側、フィリピン西側の公海上で行われたという。

 海自などによると、南シナ海に派遣したのは、海自呉基地(広島県)を母港とする潜水艦「くろしお」。13日までに護衛艦「かが」「いなづま」「すずつき」の計3隻と合流し、護衛艦や艦載ヘリコプターがソナーを使って敵の潜水艦を探索する一方、潜水艦は探知されないように護衛艦への接近を試みる実戦的内容だった。

 「くろしお」は、全長82メートル、幅8・9メートルで乗員約70人の潜水艦(排水量2750トン)。「かが」は、海自最大の護衛艦で、空母化の構想もある「いずも」と同型だ。

「かが」

 これに対し、中国の反応は、従来のような激烈な反発ではない。

 中国外務省の耿爽報道官は17日の記者会見で、「現在、南シナ海の情勢は安定に向かっている。域外の関係国は慎重に行動し、地域の平和と安定を損なわないよう求める」と述べた。

ドナルド・トランプ米大統領は17日(米国時間)、中国からの輸入品に追加関税を課す制裁第3弾を24日に発動すると発表した。中国の“軟化”は、対米貿易戦争での苦境を反映しているのか。このタイミングで日本側が対潜水艦訓練を公表した狙いを、専門家はどうみるか。

 米国事情に精通する拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司教授は「訓練の公表が、中国への牽制(けんせい)であることは間違いない。米国の対中関税制裁は強力で、日本は米国と歩調を合わせ、軍事面から後方支援するという意味があるのだろう」と話した。

 これと符合するように、官邸に近い永田町関係者は次のように語った。

 「米中貿易戦争が激化するなか、中国が軍事的緊張状態を演出する懸念がある。今回の公表は、日米による『軍事的緊張を許さない』というメッセージだった可能性が高い。潜水艦『くろしお』は最新鋭潜水艦ではなく発見しやすいが、中国の哨戒能力では把握できなかったのではないか。このため、『われわれは南シナ海でも自由に行動できる』『挑発はダメだ』と伝えるため、異例の公表に踏み切ったとみる。軍事的挑発で懸念されるのは、弾道ミサイルを搭載した中国原潜の太平洋進出だ。米中の軍事的緊張が一気に高まる」

 中国の具体的行動を受けたメッセージとの分析もある。

 防衛関係者は「防衛省の今回の動きは異例だ。表向きのメッセージとは違う可能性が高い」といい、続けた。

 「潜水艦の行動は、各国海軍とも極秘だ。トランプ大統領でも、米原子力潜水艦の動きは知らされない。防衛省がリスクを侵して公表した意図がある。あくまで推測だが、中国が南シナ海で許容できない行動をしたのではないか。中国は現状を少しずつ変更して、軍事的覇権を強める戦術を取っている。自衛隊がそれを察知し、米国と情報共有したうえで、中国側にメッセージを伝えたとみるのが自然だろう。自衛隊の哨戒能力は世界最高だ。日本周辺で各国艦船や潜水艦の動向をリアルタイムで把握している。中国の抑制的な反応を見る限り、メッセージは伝わったのではないか」

【私の論評】日米同盟は北朝鮮問題を解決するつもりのない中国の喉元にあいくちをつきつけた(゚д゚)!

小野寺五典(いつのり)防衛相は18日午前の記者会見で、海上自衛隊の潜水艦「くろしお」が南シナ海で13日に行った訓練について「戦術技量の向上を図るもので、特定の国を念頭に置いたものではない」と述べ、軍事拠点化を進める中国への牽制(けんせい)ではないと強調しました。その上で「南シナ海での潜水艦が参加する訓練は15年以上前から幾度となく行っている。昨年、一昨年にも実施している」と述べました。



秘匿性が高い潜水艦の訓練を公表したことについては「過去も適切に公表している。特に意図があってのことではない」と語りました。

ただし、海自は南シナ海での実任務に就く潜水艦の訓練を公表したのは、今回の事例が初めてだと説明しています。

日本の海自の潜水艦や、米軍の潜水艦が南シナ海で訓練をしたり、哨戒任務にあたっているのは、以前から知られていることで、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【世界ミニナビ】中国ご自慢の空母「遼寧」は日米潜水艦隊がすでに“撃沈”?―【私の論評】中国の全艦艇は既に海上自衛隊により海の藻屑に(゚д゚)!
実戦ではほとんど役立たずといわれる空母「遼寧」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。
日本の海上自衛隊と米国海軍の潜水艦艦隊が演習で遼寧を“撃沈”しているようだと明らかにしたのは、米誌「ナショナル・インタレスト」だ。同誌は6月18日(ブログ管理人注:2016年)のウェブサイトで、「撃沈している」との断定的な表現は微妙に避けながらも、日米の潜水艦艦隊は遼寧が出航するたびに追尾し、“撃沈”の演習を繰り返しているとしている。
・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・ 
 ナショナル・インタレストは海軍艦艇の中で最も強力なのは潜水艦戦力で、空母をはじめとする水上艦艇を沈めるのに最も有効な手段だとしている。遼寧についてもその配備先は当初、海南島や台湾やベトナム近くの海軍基地ではないかとの観測もあったが、山東半島の付け根にあり、黄海に面した北海艦隊の根拠地となっている青島に配備された。 
ナショナル・インタレストは、中国が遼寧の母港を青島にした理由として、通常動力型の宋級潜水艦と漢級原子力潜水艦が配備されているためだとしており、宋級潜水艦と漢級原子力潜水艦が日米の潜水艦隊に対抗するうえで有効なためだと分析している。 
ナショナル・インタレストは潜水艦戦力の例として、2006年10月に宋級潜水艦が沖縄近海で米空母キティホークに魚雷攻撃ができる距離まで近づき、浮上したことを紹介。また、2013年に中東のオマーン湾で行われた演習で、米海軍の攻撃型原潜が英海軍の空母イラストリアスに魚雷で攻撃できる距離まで近づいたことを明らかにしている。 
水上艦や潜水艦をはじめとする中国海軍の動向は人工衛星や偵察機によって把握され、艦艇が出港すると、海上自衛隊や米海軍の本格的な監視・追跡が始まる。もちろん、まさにこの時間帯にも中国の軍港の近海や東シナ海や南シナ海から西太平洋に抜ける海峡などのチョークポイントに日米の潜水艦隊は潜んでおり、中国の海軍艦艇をにらんでいる。
ちなみに、チョークポイント(英: choke point)とは、海洋国家の地政学における概念のひとつであり、 シーパワーを制するに当たり、戦略的に重要となる海上水路をいいます。 見方を変えれば、例えば、シーレーン防衛において、重要な航路が集束している部位であったり、あるいはスエズ運河やパナマ運河など、水上の要衝を意味します。

地理的チョークポイント

日米の潜水艦は、隠密裏にこれらのチョークポイントに潜み、協同あるいは単独でも、監視や訓練を以前から実施しているのです。そうして、「遼寧」やその他の艦艇を何度となく、訓練で撃沈しているのです。

日本は第2次世界大戦後に憲法で平和主義を掲げる一方で近代的な軍事力を築き、中国や北朝鮮の行動に対する懸念が高まる近年は、さらなる増強に取り組んでいます。日本はブルネイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、台湾やベトナムとは違い、南シナ海に直接領有権を主張しているわけではないですが、東シナ海では中国と台湾と尖閣諸島の領有権を争っています。

日本は一番の軍事同盟国であるアメリカと共に、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で中国が岩礁の軍事拠点化を進めていることについて、より厳しい姿勢で臨む構えを示しています。アメリカは「航行の自由」を主張して、これまで周辺海域に数多くの巡視船を派遣しているが、中国は同海域での建設作業は「主権国家としての権利」だと主張し反発しています。

海上自衛隊は8月にも南シナ海での訓練を実施しており、これには北朝鮮も反発を表明しました。北朝鮮は南シナ海の領有権争いに関与していないですが、海上自衛隊がアジア太平洋地域で米海軍と合同で訓練を実施したことを、中国と共に強く非難。国営通信社の朝鮮中央通信は「日本は平和を破壊した行為の代償を払うべきだ」と主張しました。

北朝鮮は9月15日にも、政府系メディアを通じて、陸上自衛隊が8月26日に静岡県御殿場近郊で実施した国内最大規模の火力演習を強く非難。政府機関誌の民主朝鮮はこの演習について、日本が「チャンスがあれば他国を侵略・占領できるように軍事力の強化を目指している」ことを裏付ける証拠だと主張しました。

中国と北朝鮮は長年、社会主義的な絆とともに、両国とも第2次世界大戦下で日本と一度も戦ったことがないにもかかわらず、あたかも抗日戦争で日本に勝利したかのような演出をし、日本を悪魔化することによって、国内で統治の正当性を主張しているということでも共通点があります。

北朝鮮は2011年に金正日の死去を受けて息子の金正恩が最高指導者となって以降、それまで後ろ盾となって影響力をふるってきた中国との関係悪化が囁かれてきたものの、金は今年に入って習近平国家主席の元を3回にわたって訪問し、関係の強化をアピールしています。

中国は、金が6月の米朝首脳会談で体制保証と引き換えに約束した非核化の実現を北朝鮮に求めていくという点で、アメリカなどの主要国を支持しているように装っています。しかし、それはみせかけだけに過ぎないということをトランプ大統領は見破ったのです。

昨日のブログにも掲載したように、北朝鮮問題の根本的な解決を急ぐトランプ政権に対し、中国はあくまでもそれが「解決されない」方向へと持っていこうとするので、北朝鮮問題をめぐっての米中連携は最初から成り立たなかったのです。

トランプ政権は、とうとう中国を頼りにしての北朝鮮問題の解決は不可能であるどころか、中国こそが北朝鮮問題解決の邪魔であるとわかったようです。

だからこそ、昨日のブログにも掲載したように、米国は今のタイミングで中国に対して対貿易戦争を仕掛けたのです。無論それだけが目的ではなく、最大の目的は中国が知的財産権をないがしろにすることに対しての制裁です。

そうして、それだけではなく、日米同盟の同盟国日本を通じてこれからも、中国が北朝鮮問題を解決するつもりながなく、北朝鮮の日本に対する内政干渉などを許容するようであれば、南シナ海で何かがおこるかもしれないこと周知させるため、中国の喉元にあいくちを突きつけたのです。これは米国が直接実施すれば、大事になりかねないので、日本を通じて実施したものだと思います。

実際、日米が協力すれば、中国を相手に南シナ海の海上封鎖などすぐにできます。中国は今更ながら、その可能性に気づき、南シナ海を中国の戦略原潜の聖域にするのは不可能であることを悟ったことでしょう。南シナ海の日米の潜水艦隊に対して軍事行動を起こせば、中国艦隊はなすすべもなく、海の藻屑と消えます。

実際、中国がそのような動きを見せれば、米国は何のためらいもなく、場合によっては軍事衝突の危険をおかしてでも、南シナ海を海上封鎖することでしょう。日英はこれに監視などで協力することになるでしょう。

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2018年9月18日火曜日

米、2千億ドル対中制裁を24日発動 中国報復なら「2670億ドル追加」―【私の論評】中国が貿易戦争の終焉を望むなら、知的財産権を尊重し、米軍の北朝鮮武力攻撃を認めるしかない(゚д゚)!


トランプ大統領 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 トランプ米政権は17日、中国による知的財産権侵害を理由に、中国からの2千億ドル(約22兆円)相当の輸入品に追加関税を課す制裁措置の第3弾を24日に発動すると発表した。上乗せする税率は当初10%とし、来年から25%に引き上げる。米国は500億ドル相当の制裁を発動済みだが、制裁の対象規模を5倍に拡大し、中国経済への打撃を狙う。

 トランプ米大統領は声明を発表し、「中国指導部が迅速に不公正な貿易慣行を終わらせるよう求める」と述べた。中国が報復措置を採った場合、ただちに2670億ドル相当の中国製品への新たな制裁を検討するとしている。

 2千億ドル規模の制裁発動で、昨年の中国によるモノの対米輸出額(約5050億ドル)のほぼ半分が追加関税の対象となる。米中の貿易対立は一段と激化し、長期化する公算が高まった。


 米政府は関税の税率を、予定していた25%から当初10%に引き下げる。年末商戦を控えた米景気への影響を和らげることに加え、段階的に来年から25%に引き上げることで、中国に歩み寄りを迫る狙いがあるとみられる。米政権高官は17日、今月下旬に予定する米中協議を念頭に、「大統領が(協議を通じた)解決を望んでいることに変わりはない」と話した。

 一方、7月に公表した約6千品目の関税対象品リストの原案から、約300品目を削除する。腕時計型端末などの消費者向け電機製品や化学材料、ヘルメットなどが外された。原案の公表後、産業界から寄せられた約6千の意見を精査。消費者への影響を考慮し、一部品目を対象から除いた。

 トランプ政権は、米企業に対する技術移転の強要など、中国の不公正な貿易慣行を問題視。米通商法301条に基づき、8月まで2度にわたって計500億ドル相当に25%の関税を上乗せする制裁を発動した。

 発動済みの制裁措置は半導体などのハイテク製品が主な対象だった。今回の2千億ドル相当では、中国の主力輸出品である衣料品や家具などの消費財が多数含まれ、米中双方の経済への影響が懸念されている。

【私の論評】中国が貿易戦争の終焉を望むなら、知的財産権を尊重し、米軍の北朝鮮武力攻撃を認めるしかない(゚д゚)!

トランプ政権はようやく、本格的に習近平中国に鉄槌を下しましたた。中国はこれで、対米輸出の半分、対外貿易黒字全体の約三分の一を失うことになります。中国経済への打撃は甚大であり、中国の今後の政治動向・外交戦略、そして国際情勢に与える影響は計りきれないものになります。今日という日は、後に歴史家が現在史が大きく動いた日として記録に留めることでしょう。

2500億ドル分の中国製品に対する米国の制裁関税が数年間でも続けば、中国経済は、息切れし、国内で不安が拡大し権力闘争の激化することでしょう。そうして、一帯一路は完全終了し、世界の工場の中国から工場が世界の各地に移転しすることになるでしょう。「中国の夢」は破れて世界が変わることでしょう。

米国が日本時間の今朝、2000億ドルの中国製品に対する制裁関税の発動を表明したのに対し、先ほど新華社通信はやっと中国商務省報道官の談話を発表。「深い遺憾」を表明して対抗措置の実行も表明しましたが、措置の中身は言及せずに予定されている米中交渉の中止の発表もありません。完全に腰砕けの印象です。

米中貿易戦争に関して、2つの誤解を払拭しておきます。

まずは、自由貿易を重視する立場から、中国の悪辣なやり方はほとんど指摘せずに、米国が貿易赤字になりがちなことだけ指摘して、トランプは貿易赤字の意味がわかっていないと批判する論者もいます。

これは、中国の回し者か、あるいは無知な人かもしれません。対中貿易赤字大ということは、中国からの対米投資が大きいことを意味します。

対米投資を自由にやりながらアメリカの知的所有権を侵害しているというのがトランプ大統領の論法です。だから貿易赤字は単に話の枕に過ぎず、本質的なことでありません。

本来であれば、米国の貿易赤字の原因を語りつつも、その何倍も中国に悪辣なやり方を批判すべきです。

米国の対中国貿易赤字は年を追うごとに大きくなっている

さらに、貿易戦争で中国の影響は軽微という論者もいますが、現実はどうかといえば、たとえば車の消費は減っています。中国は輸入米車に対して報復関税をかけていますが、これくらいでは大した影響もないとみていたようです。

しかし、そうではなかったことが明らかになりました。9月18日、中国の全国乗用車市場情報連席会が、2018年8月の中国国内乗用車市場統計データを公開しました。

統計データによると、中国2018年8月の乗用車販売台数は、2017年同期と比較して7.4%減少し、173万4188台となりました。

一方2018年1月―8月の乗用車販売台数は、2017年同期比1.3%増の1427万4000台に達しています。

昨年は、米車の中国の売上は絶好調でした。中国が米車に関税を多くかけたくらいでは、中国も自動車を製造していますし、日本やドイツからの輸入もありますが、ほとんど影響がないようにも見えたのですが、現実には車の消費そのものが減少しています。

車でこの状況ですから、他のものでも思ったよりもはるかに大きな影響がでるものもでてくることが懸念されます。

米国の対中貿易戦争は北朝鮮問題ともかなり密接に絡んでいる

さて、話題は変わりますが、米国の対中国貿易戦争は、一見関係ないようにも見える北朝鮮問題ともかなり密接に絡んでいます。中国は北朝鮮問題でアメリカとの協力姿勢を示した一方、トランプ政権が考える北朝鮮への軍事攻撃にはあくまでも大反対です。

北朝鮮が米国の軍事攻撃によって滅ぼされ、そしてそれによって、中国が在韓米軍からの軍事的圧力に直接晒されることは、中国にとっての悪夢だからです。

さて、昨年3月米国のティラーソン国務長官(当時)と中国の王毅が会談しました。このとき中国の王毅外相がティラーソン米国務長官との会談では、「朝鮮半島は危険なレベルに達している」との認識を米国と共有しておきながらも、「平和的解決には外交的手段が必要」と強調して、武力行使にはあくまでも反対する立場を示していました。

しかし中国側のこの姿勢はトランプ政権を苛立たさせました。中国自身が決して、北朝鮮問題の根本的な解決を望んでいないからです。北朝鮮が常に「問題」となっているからこそ、アメリカは問題解決のためにいつも中国に頭を下げてくるのであり、問題が解決されてしまったら、中国のアメリカに対する優位はなくなってしまうからです。

つまり北朝鮮問題の根本的な解決を急ぐトランプ政権に対し、中国はあくまでもそれが「解決されない」方向へと持っていこうとするので、北朝鮮問題をめぐっての米中連携は最初から成り立たなかったのです。

トランプ政権は、とうとう中国を頼りにしての北朝鮮問題の解決は不可能であるどころか、中国こそが北朝鮮問題解決の邪魔であるとわかったようです。だからこそ、トランプ政権は、ティラーソン国防長官を解任して、矛先を北京へと向けているのです。

トランプ大統領が就任直後からしばらくは、公約通りに中国への対抗心を顕にしなかったのは、一重に北朝鮮問題があり、これを解決するには中国が大きな役割を果たしてくれるに違いないと判断していたからです。

中国が、米国の対中国貿易戦争の終焉を望むなら、知的財産権を尊重すだけではなく、米国の北朝鮮武力攻撃を認めるしかないわけです。

知的財産権を尊重するとは、言葉では簡単なことですが、かなり難しいことです。例えば中国がTPPに加入できる程度に、国の制度や慣習などをあらためる必要があり、そうなると、中国は民主化、経済と政治の分離、法治国家化という構造改革を実現しなければなりません。

それは実質的に中国の現体制を崩壊させることを意味します。本当は、そうしたほうが中国人民にとっては良いことなのですが、中共にはできないでしょう。

考えられるのは、小手先の構造改革でごまかすことでしょうが、そのようなことはすぐに露見します。

さらに、米国による北朝鮮の武力攻撃も認めなければなりません。これは、中共には全く無理なことです。

米国の対中国貿易戦争は、経済冷戦にまでエスカレートし、中国が経済的に弱体化し、北朝鮮などの周りの国々に影響力がほとんどなくなるまで継続されることになるでしょう。

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2018年9月17日月曜日

石破茂氏が経済論、憲法論議で犯してしまった「致命的なミス」総裁選後の振る舞いはどうするのか―【私の論評】トンデモ歴史観と経済理論に支配された石破氏は総理の器にあらず(゚д゚)!

石破茂氏が経済論、憲法論議で犯してしまった「致命的なミス」総裁選後の振る舞いはどうするのか

髙橋 洋一

相次いだ「告白」

#イケガミMeTooのハッシュタグを掲げる経済評論家の上念司氏
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

先週、ネットで「イケガMetoo」という言葉が話題になったのをご存じだろうか。あのジャーナリストの池上彰氏(68)に関することだ。

事の発端は、元通産官僚で徳島文理大学教授の八幡和郎氏が、池上氏の番組スタッフからある問題について取材を受けたが、それを八幡氏のコメントとしてではなく「池上さんの意見として紹介したい」と言われたと、フェイスブック(https://www.facebook.com/kazuo.yawata/posts/2130828563658019?__tn__=-R)で明かしたことだ。

これに対して、いろいろな人から「私も似たようなことがあった」という意見が相次いだ。筆者もその一人で、「オレも似た経験あるぞ」(https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1038986751153328128)とツイートした。

その後、こうした「告白」が相次いだことで「#イケガMetoo」というハッシュタグも出たのだ。これで、筆者以外にも、同様な経験があると表明している人がいるのがわかった。

筆者の場合は、かなり昔の話であるが、池上さんがやっていたあるラジオ番組でゲストして呼ばれた後、取材として話を聞かせてくれということだった。それで、筆者はまたゲスト出演をお願いされたのだと思い取材協力したが、「テレビでその取材内容を使いたい」ということだったのだ。こちらはゲスト出演と思い取材に協力したのに、残念に思ったことを覚えている。

学者の場合、意見は論文や本で表明する。学位をとるような著作では、自分のオリジナルな意見と他人の意見の引用は厳格に区別されている。

一方、ジャーナリストと称する人は、取材で得たことをベースにしたうえで自分の意見を述べるが、自分の意見と取材によって得た意見の差がどこにあるのか、かなり曖昧だ。しばしば取材源の秘匿を主張するが、それは取材を受けた者がそう主張した場合のみに許されることであり、一般的には取材先を明らかにできなければ、客観的な検証ができないことになってしまう。

マスコミ記事のなかには、そうした検証がしにくいものが多い。俗に言う「ソース」が明らかでないのだ。学者の論文なら、検証可能でないものは到底意味をなさないため、ここは大きく違っている。

池上氏の場合、テレビのジャーナリストによくあることだが、ソースの明示がハッキリしていない場合が多い。

筆者は、かつて本コラムで池上氏の番組を批判したことがある(2016.12.19「フジテレビ「池上彰特番」が犯した、残念すぎるレベルの3つのミス」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50502)。おそらく筆者とは立場の違う人に取材をして番組を作ったのだろう。この番組でも、ソースは明示されていなかった。

池上氏については、9月7日に放送されたフジテレビ「池上彰スペシャル」についても批判されている。この番組で、子役タレントが20人以上出演していたからだ。八幡氏のケースも、子役タレント出演のケースでも、筆者からみると、ソースの明示(クレジット)をきちんとしていないことが問題ではないか、と思っている。

ツイッターで拡散されている画像


学者なら、取材協力者としてクレジット表記をしてくれればOK、という人もいるだろう。「クレジットなしでも、そこそこの報酬がもらえるのであればいい」というジャーナリストもいるだろう。まず、その協力者を番組に出演させればまったく問題なし、だ。

たとえ「出演なし」でも、クレジット表記か、協力に見合う報酬があれば多分問題なし、のはずだ。「出演なし、クレジットなし、報酬なし」ではやっぱり酷いと言わざるを得ないだろう。

池上氏は他人の意見を自分の意見のように言うことはない、としているが、これだけ似たような体験をした人がいるとなると、全面否定が通じるだろうか、という疑問も出てくる。モリカケ問題のとき、マスコミは「疑われた場合、挙証責任は疑われた側にある」というとんでもない論法を仕掛けていたが、これに即するなら、池上氏がどのような対応をとるのか興味深いところだ。

窮地に立たされた石破氏

今後、池上氏は窮地に立たされるかもしれないが、間もなく窮地に立たされそうな人物があと二人いる。

今週は、なんといっても20日(木)の自民党総裁選投開票に注目が集まる。もろもろの情勢を分析すると、選挙結果はもう決まったようなもので、安倍総理の勝ちであろう。

心配なのは石破氏だ。安倍総理と石破氏の違いについては、本コラムですでに述べている(例えば、2018.08.20「憲法、財政、本当にそれで大丈夫…? 石破氏総裁選出馬に抱く懸念」 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57106)が、その後も、石破氏は「ほんとうに大丈夫か?」という感想を抱くしかない発言を繰り出している。

石破茂氏

たとえば、石破氏は9月2日、高知の浜口雄幸記念館を訪問し、これまでに繰り返し『男子の本懐』を読んだことが報じられた。これは故・城山三郎氏の著作で、第一大戦後の日本の不況をなんとかしようとした政治家・浜口雄幸の姿を描いたものだ。

しかし、残念なことに『男子の本懐』に書かれている浜口雄幸の金解禁等の政策は、今の経済史では「デフレを招く原因となり、失敗だった」と理解されている。その意味で、経済政策論議の中で『男子の本懐』を出すのは、ミスリーディングといわざるをえない。歴史の教訓に学べば、経済政策について論じるなら高橋是清の政策(リフレ政策)をあげるのが正しい。

憲法改正についての議論でも驚いた。8月30日の読売新聞では、もし憲法改正を行うならどこから手を付けるかの議論の中で、「共産党まで含めた、賛同得られるものから改憲を」とコメントしている。それ以前にもテレビで同様の発言はあったが、それは口が滑っただけと思っていたら、どうやら本気なのだろう。これではまるで「護憲派」である。

石破氏は総裁選後、再び自民党を飛び出し、野党再編の核になるという見方すらでている。筆者には、離党経験があるが復党した石破氏が、まさかそうした行動はとらないと思うが、石破氏は、第二の小沢一郎になるとの予想も確かに一部にあるようだ。

敗北後の石破氏の身の振り方がとても心配だ。北海道地震を「国難」ととらえて、潔く総裁選出馬取りやめをしたほうがよかったのではないだろうか。

野田聖子氏も「骨抜き」か

さて、もう一人窮地に立たされそうなのが、野田聖子総務大臣だ。一時は出馬するという勢いだった野田氏も、携帯料金についての議論と「ふるさと納税規制強化」路線について、なにやらおかしなことになっている。

野田聖子氏

携帯料金についての議論をみると、野田氏の「地位の低下」が如実に分かる。というのも、菅義偉官房長官が講演で「携帯料金は4割程度下げる余地がある」と発言したのは8月21日のこと。これを受けて、野田総務大臣は、23日、携帯電話市場の競争促進策などを議論するように情報通信審議会に諮問したが、本来なら携帯電話の料金などの問題を管轄する野田総務大臣が先に発表するのが自然だ。

総務省の携帯料金担当役人は、料金引き下げについての菅発言を「寝耳に水」といっているようだが、野田総務大臣より先に菅官房長官が総務省の方針を発表するのは、政界における二人の力関係を如実に表している。野田総務大臣の「相対的な力の低下」が見て取れるということだ。

その野田大臣、ふるさと納税規制強化について、寄付金に対する自治体の返礼費用の割合が3割を超えたり、返礼品が地場産でなかったりする自治体への寄付を、税優遇の対象から外す方針を表明している。

ふるさと納税は、2007年の第一次安倍晋三政権の時に、当時の菅総務大臣の発案で創設され、自分で選んだ自治体に寄付すると、払った住民税の一定割合までを税額控除するというものだ。筆者も官邸にいながら、その制度創設を手伝った。

この制度の画期的なことは、税額控除の仕組みと寄付金を合わせているので、事実上税の使い方を国民が選ぶことができる、ということだ。これは、政府(官僚)が税を徴収して政府(官僚)がその配分を決めるのが公正である、という官僚の考え方とはまったく反している。そのため、ふるさと納税の創設の時、官僚はこれに猛反対だった。それを、当時の菅総務大臣が政治的に説得して通したものだ。

自民党総裁選では、野田総務大臣も出馬意欲を見せていたが、推薦人も集まらず、仮想通貨をめぐる問題で政治家として致命的なミスをしてしまい、結果として出馬さえできなかった。

こうした状況で、本来野田大臣が行うべき携帯料金問題の検討が進まなかったので、菅官房長官が業を煮やしたのだろう。引き下げについて菅官房長官が野田大臣より先に発表したのは、そういう背景があったと思われる。これに対して野田総務大臣がふるさと納税規制強化という「筋違いな応え方」をしてしまったようだ。とんだ意趣返しだ。

ちなみに、ふるさと納税の総額は3482億円であるが、これに伴う住民税控除額は2448億円で、それも都市部に集まっている。当初の目論見どおりに、各自治体の分配是正に貢献している、ということだ。しかも、全体の控除額は個人住民税収額(12兆8235億円)の2%にも満たないものだ。この程度なら、住民税の根幹を揺るがすことはないことは明らかだ。

もはや、野田大臣は、ふるさと納税に反対したい総務官僚に乗せられている、とみるべきだろう。「どうせ次の政権にはいないだろうから、官僚の代弁くらいさせておけ」という程度の利用価値しかない、と官僚たちからも見切られているのではないだろうか。

さて、この3人のうち誰が生き延びるだろうか。筆者は、池上氏だと思っている。政治の世界では、その結果についてそれなりにハッキリと見えるものだが、池上氏の問題については、テレビやマスコミが積極的に取り上げることはないだろう。

というのは、その他にもテレビやメディアに出演する自称「ジャーナリスト」は、池上氏と似たり寄ったりだからだ。池上氏の場合、「こどもニュース」で子ども相手にすべてを知っている人としてキャラができていたが、それを「大人相手」にしただけだ。

ちょっと取材したくらいで「専門家」を自認する「ジャーナリスト」はたくさんいるので、池上氏の問題をマスコミやテレビが取り上げれば、収拾がつかなくなってしまう。そう考えると、自浄作用については、政治の世界よりもマスコミの世界の方が劣っているのかもしれない。

【私の論評】トンデモ歴史観と経済理論に支配された石破氏は総理の器にあらず(゚д゚)!

ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事に、」「敗北後の石破氏の身の振り方がとても心配だ。北海道地震を「国難」ととらえて、潔く総裁選出馬取りやめをしたほうがよかったのではないだろうか」という下りがあります。私もそう思います。

というのも、石破茂氏はどう考えても、総理の器ではないからです。冒頭の記事にあったように、もし憲法改正を行うならどこから手を付けるかの議論の中で、「共産党まで含めた、賛同得られるものから改憲を」とコメントするようでは、もう器ではないことは明らかです。これでは、護憲派であるとうけとられても致し方ありません。

石破氏はさらに立て続けにとんでもないコメントをしています。石破陣営は、自民党総裁選の特設サイトで、47都道府県向けの動画を配信しています。そのなかの沖縄向けメッセージで、米軍基地が集中している理由をこう説明しました。

「1950年代、反米基地闘争が燃えさかることを恐れた日本と米国が、当時米国の施政下にあった沖縄に、海兵隊の部隊を移したからだと聞いている。(略)このことを決して忘れてはならない」

これは、石破氏が直接コメントしたものではありませんが、当然のことなが、石破氏の考えを表現したものです。石破氏の主張を受け、沖縄タイムスは13日にこの事実を報道し、「元防衛相が政治的要因を認めた」「閣僚経験者が本土の反対を懸念して、沖縄に米軍基地が集約された経緯について発言するのは初めてとみられる」と特筆しているくらいです。

沖縄知事選の争点とされる「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設」について、革新系で自由党前衆院議員の玉城デニー氏(58)が反対を訴える一方、保守系の前宜野湾市長、佐喜真淳(さきま・あつし)氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=は、是非を明言せず、慎重な態度を貫いています。
沖縄知事選候補者、左から佐喜真淳(さきま・あつし)氏と玉城デニー氏

石破氏の主張は、革新勢力の「反基地感情」に火を付け、玉城陣営を利することになりかねないです。これは、防衛相経験者として、とんちんかんな発言で、沖縄の革新勢力などに媚びているようにしか思えません、

沖縄は、朝鮮半島や中国、台湾まで、戦闘機なら数時間で到達できる戦略的要衝です。米軍基地が集中しているのは、中国や北朝鮮などへの威嚇のメッセージにもなっています。元防衛相なら、そうした地政学的意義を丁寧に説明し、沖縄県民の理解を得るよう努めるべきであるにもかかわらず、この有様です。
石破氏は、日本を取り巻く安全保障環境を踏まえ、沖縄の米軍基地の重要性も説明すべきではないか

これは、最近のことですが、過去にもとんでもない発言をしていて、石破氏の歴史館はとうてい日本の総理大臣としてふさわしくないことがわかります。これについて、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
石破氏、ポスト安倍狙う“秘策” 党総裁選改革案は「ゲルマンダー」―【私の論評】安部総裁の本来の勝負は平成15年の自民党総裁選!ここで石破総裁が誕生すれば「戦後体制からの脱却」は遠のき、失われた40年が始まる!(◎_◎;)

この記事は、2013年10月31日木曜日のものです。この記事の中から、渡部昇一氏が石破氏の歴史観を徹底的に批判していた部分のみを以下に引用します。
"
この歴史観について、雑誌「2008年WILL6月号」で渡部昇一氏が石破大臣を国賊だと批判していました。

石破氏の中国の新聞に載せられたインタビュー記事は衝撃的であり、この件について当時政府が何も動かなかったことも驚愕です。中国の情報工作はますます進み、当時の石破大臣も篭絡されたのではないでしょうか?だとすれば、末恐ろしいことです。

以下にこの渡辺昇一氏の記事の一部を引用します。

渡辺昇一氏

石破大臣の国賊行為を叱る

渡部昇一

中国共産党の新聞「世界新聞報」(1/29)に駐日記者が石破茂防衛大臣の執務室でインタビューした記事を載せた。 
【石破防衛相の発言】 
●私は防衛庁長官時代にも靖国神社を参拝したことがない。第二次大戦の時に日本の戦争指導者たちは、何も知らない国民を戦線に駆り出し、間違った戦争をした。だから私は靖国神社に参拝しない、あの戦争は間違いだ、多くの国民は被害者だ。 
●日本には南京大虐殺を否定する人がいる。30万人も殺されていないから南京大虐殺そのものが存在しないという。何人が死んだかと大虐殺があったかは別問題だ 
●日本には慰安婦についていろいろな見解があるが、日本軍が関与していたことは間違いない。 
●日本人が大東亜共栄圏の建設を主張したことは、侵略戦争に対する一種の詭弁だ。 
●(中国は日本に対する脅威であるから対中防衛を強化せよという人たちは)何の分析もしないで、中国は日本に対する脅威だと騒いでいる。 
●日本は中国に謝罪するべきだ。
これではまるで稚拙なサヨク学生の言い草ではないか。ギルト・インフォメーションに基づく戦後自虐教育の落とし子そのものである。 
これが事実だとすれば石破茂防衛大臣に対する認識を改めねばならない。 
「WILL」編集部が石破茂防衛大臣に確認したところ、事務所から次の回答が来たという。 
問 1月29日付け「世界新聞報」に石破防衛大臣の執務室での独占取材内容が掲載されているが、この取材は実際に受けたものか。 
答 実際に受けたものです。 
問 いつの時点で取材を受けたのか。 
答 平成19年11月21日(水)に取材受けいたしました。 
問 掲載された内容は、石破防衛大臣が話した事実に即しているのか。 
答 インタビューを先方が記事にまとめたものですので、事実に即していないと言うほどではありませんが、事実そのままでもありません。 
問 記事が事実に即していない場合、それに対してなんらかの対処をされたか。 
答 前の答えの通り、どのマスメディアでも発言を加工することはありますので、特別対処というほどのことはしておりません。 
いやはや、恬として恥じない石破氏はアッパレ! 
しかし、この大臣の下で働く自衛隊のみなさんの心情を考えると哀れである。 
その著書「国防」を当ブログでも紹介し、軍隊でないために行動基準がネガティブリストではないこと、軍法会議がないこと、NTP体制は「核のアパルトヘイト」だという発言を好意的に取り上げたが、所詮は単なる「軍事オタク」で国家観も歴史観も持ち合わせていないことが判明した。 
ブッシュ(父)大統領がハワイ在住の日系人の式典で「原爆投下を後悔していない
(I am not sorry)」と発言したことについて、渡部氏はいう。 
「他国に簡単に謝罪するような人間は、大統領はおろか、閣僚にも絶対になれません。それが諸外国では当たり前です」 
野党首相の村山富市は言うに及ばず、宮澤喜一、河野洋平、加藤紘一その他の謝罪外交を繰り返した政治家たちは「当たり前」ではないのである。 
石破茂防衛大臣もその一人として辞任を要求する。
いやはや、これはとんでもない歴史観です。しかも、防衛大臣だった時分の歴史観の吐露ですから、救いようがありません。

石破氏は今でもこのような歴史観を持っているのでしょう。先にも掲載したように、 石破氏はさらに立て続けにとんでもないコメントをしています。このコメント、「失言」と捉えられている向きもありますが、私はそうではないと思います。

このような石破氏の歴史観からにじみ出る、本音を語っているとみるべきです。こんな人物は、どう考えてみても、日本の総理大臣の器ではありません。

一方石破氏の経済政策はといえば、これもとてもじゃないですが、総理の器とはいえません。

石破氏の経済政策のスタンスは、「反アベノミクス」に尽きます。アベノミクスは3点から構成されていて、大胆な金融緩和政策、機動的な財政政策、そして成長戦略です。

このうちアベノミクスの核心部分が大胆な金融緩和政策にあります。政府は日本銀行の人事を国会での議決を通じてコントロールし、この大胆な金融緩和政策、いわゆるリフレ政策(デフレを脱却して低インフレ状態で経済を安定化させる政策)を実現しようとしてきました。石破氏の「反アベノミクス」とは、このリフレ政策への批判に他ならないものです。

例えば、まだ民主党政権の時代に評論家の宇野常寛氏との共著『こんな日本をつくりたい』(2012年)の中で、宇野氏のリフレ政策をとっても良いのではないか、という問いに対して、石破氏は即時に否定しています。石破氏の理屈では、リフレ政策は「二日酔いの朝に迎え酒飲むようなもの」で、続けていけばハイパーインフレ(猛烈なインフレ)になる可能性があるというものでした。

この意味で、マクロ経済政策としては、財政再建路線、金融緩和否定というアベノミクスの真逆であり、そのマクロ経済政策が実際に行われれば、アベノミクスで達成できた雇用や株高は失われ、デフレ脱却もかなわず、デフレに逆戻りになる可能性があります。

野田聖子氏も、経済では石破氏と五十歩百歩です。

トンデモ歴史観とトンデモ経済理論に支配されている、石破氏だけは、間違っても総理にすべきではありません。今回はどう考えて芽はないので、本当に良かったです。

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