2019年8月24日土曜日

G7、日米首脳が“断韓”会談実施!? 識者「朝鮮半島“赤化”対応協議か」―【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!


G7サミット出席のため、フランス・ボルドーに到着した安倍首相と昭恵夫人=23日

 安倍晋三首相は、フランス南西部ビアリッツで24~26日に開かれるG7(先進7カ国)首脳会議に合わせて、ドナルド・トランプ米大統領との日米首脳会談に臨む。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことを受け、自由主義陣営から離脱しかねない韓国への対応策を協議することになりそうだ。

 「日本は、北東アジアの安全保障環境に照らし、『日米韓の協力に影響を与えてはならない』との観点で、地域の平和と安定を確保したい」「韓国には国と国の約束を守ってもらいたい」

 安倍首相はG7に出発直前の23日、韓国の協定破棄について記者団にこう語った。その表情は、あきれかえっていた。

 米国防総省も、警告を無視した文政権への不快感をあらわにし、「GSOMIAの破棄は、文政権の大いなる思い違いなのだと知らしめることになると繰り返し言ってきた」と異例の声明を発表した。

 日米両国は、北朝鮮の「核・ミサイル」といった地域の脅威に対し、日米韓3カ国の協力体制で対応してきた。だが、文政権の裏切りで、北朝鮮や中国、ロシアが漁夫の利を得て、北東アジア情勢が不安定になるのは避けられそうにない。

 文大統領の狙いは何か。注目の日米首脳会談はどうなりそうか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「文大統領は、日本の輸出管理強化への不満を『米国に泣きつけば日本が妥協し、撤回する』と思ったが、動かなかったため、米国に不信感を持った。GSOMIA破棄をきっかけに意図的に距離を置き、韓国世論を反米に誘導し、『米韓同盟を米国側から破棄させよう』と狡猾(こうかつ)に動いているのではないか」と指摘する。

 やはり、文氏は、北朝鮮との「赤化統一」を狙っているのか。韓国国民は地獄を見るのではないか。藤井氏は続けた。

 「日米首脳会談ではまず、同盟体制の強化を確認する。さらに、朝鮮半島全体がいずれ『反日・反米』一色で赤化し、安全保障の最前線が38度線から対馬海峡まで下がった場合の対応も協議するはずだ。メモリチップの生産工場を、韓国や中国からベトナムに移すなど、ハイテク産業のサプライチェーンを再構築する策も練り上げるだろう」

 日米両首脳が、「断韓」を確認する会談になるかもしれない。

【私の論評】日本は朝鮮半島最悪のシナリオを想定し、防衛論議を高めよ(゚д゚)!

現代の戦争が、色々な面で「情報戦」であることは間違いないです。ファーウェイをはじめとするIT・通信分野でのサイバー戦争もそうですが、敵の軍隊の動向を各国で共有することも極めて重要な戦略です。

むしろ、ハイテク装置、情報収集能力において日米に格段に劣っている韓国にとってこそGSOMIAは防衛に不可欠な条約です。だから、それを自ら廃止するなど自殺行為です。

韓国政府のGSOMIA破棄決定を伝える韓国のニュース番組

ここまでくると、米国や野次馬たちもドン引きします。

韓国は米国に見放されるだけでは無く、「悪の帝国とその仲間たち」以外から相手にもされなくなるでしょう。

その「悪の帝国」の中には、北朝鮮は入っていない可能性もかなり高いです。このブログでもたびたび掲載しているように、そもそも、金正恩は南北統一など望んでいません。

なぜなら、南北統一をすれば、チュチェ思想などとは無縁で、金王朝等尊敬もしない韓国人が大量に現在の北朝鮮にも入り込んでくることになります。そのようなことは、金正恩は望んでません。

北朝鮮のチュチェ思想塔

金正恩は、何とか制裁を廃止もしくは緩めてもらいたいと切実に思っていたからこそ、最初は文在寅に良い顔して、いかにも南北統一したいように装い、文在寅をもちあげていただけです。要するに、金は文を制裁破りに利用しようとしただけです。

しかし、それに文は我を忘れて有頂天になってしまったのです。

朝鮮半島の分断は、ドイツ、ベトナムと同様に、東西冷戦の産物です。

ドイツは、ベルリンの壁崩壊という東西冷戦の終結を、ヘルムート・コール首相が最大限に使って実現させた。ドイツ統一のケースは、ソ連邦の敗北がもたらしたものです。

ベトナム統一は、逆に北ベトナムが南ベトナムと米国に勝利したことにより実現したものです。米国がベトナム戦争に疲れ切り、国内の厭戦気分もあって、ベトナムから手を引いたからです。

朝鮮半島は、このいずれのケースとも異なっています。韓国の同盟国、米国は強力であり、また北朝鮮を支援する中国やロシアも厳しい制裁により弱体化しつつはあるものの、かつてのソ連のように疲弊しきっているわけではありません。

中国は、GDPで世界第二の大国となり、いまや世界の覇権をアメリカと競っています。ロシアは、ソ連邦の崩壊から立ち直り、プーチンの指導の下、クリミア併合に見られるように過去の大国を復興させる道を歩もうとしています。

しかも、この三つの国のいずれも、現状では朝鮮半島の統一を望んではいません。米国は韓国による統一、中露は北朝鮮による統一を望んでおり、その両者の妥協が困難である以上、現状維持というのがベストなのである。それに先に述べたように、北朝鮮も南北統一など望んでいません。

さらに、金正恩は中国の干渉を嫌っています。自分の叔父や、血のつながった兄を暗殺した背景には彼らが中国と近い関係にあったことがあります。

結果として、北朝鮮とその核が、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。北朝鮮のミサイルは、日米だけではなく、中国やロシアにとっても脅威なのです。

韓国は、米国に守られながら、中国にも接近し中国に従属しようとの姿勢を顕にしています。文在寅からすれば、これからの世界は、米国と中国の2大国支配する世界(G2)となるので、韓国としていちはやくこれに対応し、中国と接近し、両国の間でうまくバランスをとって、韓国の発展する道を拓こうとしたつもりなのでしょうが、これは裏目に出たようです。

これは、結局中国からも裏切りものとみられ、米国からもそのようにみられるという最悪の結果を招いたようです。

結局、朝鮮半島およびその近隣の国々は、韓国を除いていずれの国も南北統一を望んではいないのです。

最近「断韓」という言葉がよく使われますが、ストーカーのような韓国に対しての唯一とも言える対抗策は「接触を持たない」ことです。どのような話し合いをしても、ストーカーの都合の良いように解釈されるだけなので意味がありません。だから「断韓」政策は世界中に支持されるでしょう。

漫画家の黒鉄ヒロシ氏(73)がテレビ朝日系の情報番組で
         「断韓」の2文字を掲げたことが話題を呼んだ

北朝鮮は勝手に米国との交渉期限を定めましたが、それは金正恩政権がせいぜい年末くらいまでしか持たないことを自覚しているからです。

最近北朝鮮のミサイル発射が続いていますが、日韓関係が悪化している中で、さらに日韓関係にくさびを打ち込もうという目的は確かにあるでしょう。しかしそれ以上に、トランプ政権に対しての「早く餌をくれないと飢え死にしちまうぜ」というメッセージなのです。

だから、トランプ氏の反応も「わかった、わかった、もう少し待ったらちゃんと餌をやるから」というものなのです。そうして、先程述べたように、北朝鮮が結果として朝鮮半島への中国の浸透を防いでいるという面もあるので、トランプ大統領は北の短距離ミサイルの発射をあまり批判的ではないのです。

北朝鮮は年末までもたないようですが、年末といえば、あと5カ月も無いです。さらにそ北朝鮮以上に緊迫しているのが韓国です。

日米・中露・北朝鮮が南北統一を望んでいないにもかかわらず、文在寅だけが、南北統一をしようとしているのですから、それこそ、文在寅の一人芝居であり、他国からみれば、ストーカーのようなものです。

現時点で、考えられる韓国にとって最悪の事態は、北朝鮮が結果として、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることも考え合わせると、米国が韓国を安全保証上の単なる空き地とみなすか否かです。

安全保証上の空き地とは、在韓米軍が撤退したとしても、北朝鮮が中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるし、さらには、金が南北統一を望んでいないことから、韓国が中国に急接近しようにもできない状態になり、結果として安全保証上においては、日米にとって有害にも無害にもならないという意味です。

ただし、これには一つ条件があります。それは、在韓米軍が撤退する前に、主に米日が、韓国を経済焦土化をするというものです。

現在のままの韓国経済を残して、在韓米軍が引き上げれば、韓国の経済力に北や中国が食指を伸ばさないはずがありません。これでは、敵に塩を送るようなものです。

その前に日米は、韓国から資産をひきあげたり、様々な手口で金融的に韓国経済を破壊することになるでしょう。

そうなると、韓国経済は疲弊し、経済的には無意味な存在になります。そんな韓国には、北朝鮮も中国も興味を失うことになります。

日米はG7においては、以上のようなことに関連した会談を実施することになるでしょう。まさに、ブログ冒頭に掲載されているような"断韓"会談が実施されるのです。

経済焦土化されて、韓国経済が疲弊すれば、経済難民が北朝鮮や日本に大量に押し寄せるようになります。

これに対して、金正恩は、韓国難民を入国させないように、38度線の守備を強化させるでしょう。

行き場を失った韓国難民は、日本、中国、ロシアに大量に押し寄せることになるかもしれません。中には武装難民も紛れているかもしれません。経済的に崩壊した韓国ですが、残存兵力を用いて破れかぶれてで何かをしでかすかもしれません。

以上は最悪のシナリオなので、韓国が何らかの形で踏みとどまってくれれば良いのですが、文在寅の行動や発言を見ている限りでは、その兆候はありません。今回のG7における日米首脳会談では、無論こうした最悪シナリオも想定しつつ様々な話し合いが行われることでしょう。

朝鮮半島情勢をみると、日本の防衛力強化は火を見るより明らかなのですが、日本で防衛論議が高まらないことに私は日々危機感をつのらせています。韓国がどうのこうのと言う前に、日本は日本の安全保障について早急に議論をすべきです。

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2019年8月23日金曜日

韓国GSOMIA破棄でクーデターの可能性も!? 日韓防衛OBにも衝撃「現役将官のほぼ全員が“失望”している」―【私の論評】日韓関係は現在正常化しつつある。過去が異常だったのだ(゚д゚)!

韓国GSOMIA破棄でクーデターの可能性も!? 日韓防衛OBにも衝撃「現役将官のほぼ全員が“失望”している」

文大統領(左から2人目)は会合でGSOMIAに関する報告を受けた

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定したことを、自衛隊OBや韓国の退役軍人は衝撃をもって受け止めた。文大統領に対する懸念や失望以上に、怒りが広がる。専門家は韓国内で近いうちに「文降ろしが始まる可能性がある」と指摘する。

 ■伊藤俊幸氏「あまりに合理性に欠けた反日カード」

 金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸元海将は「文氏が通商から安全保障まで反日カードを切ったのは、あまりに合理性に欠ける。これまでも、文氏は北朝鮮のスパイを摘発する部局をつぶすなど、『従北』のむちゃくちゃな対応を見せてきた。日米韓3カ国の安全保障の基盤が揺らぐのを危惧する現役の軍人らの生の声も届いていないようだ」と解説する。

 続けて、「韓国軍にとり、北朝鮮のミサイル発射時には、特に着弾情報は自衛隊頼み。文氏の判断は、情報担当部局には大迷惑な話なのだ。情報は『収集→分析→評価→配布』の流れをとるが、今後は米軍が日韓両国に相互に情報を渡す『配布』の場面で機密情報を一部、加工し、渡す作業が煩雑になるなど、3カ国の連携に支障が出るだろう」とした。

 日本政府はどう対応すべきか。伊藤氏は「日本は韓国の出方を静観すればよい。議論するだけムダだ。激変する国際情勢に備え、こういうときだからこそ、憲法を改正し、自衛隊の存在を明確に憲法に位置付けるべきだ」と強調した。

 ■高永チョル氏「支持率低下を挽回したい思惑」

 かつて朝鮮人民軍と対峙(たいじ)してきた元韓国国防省北韓分析官で、拓殖大学主任研究員の高永チョル(コ・ヨンチョル)氏は「文氏は想定外の行動に出た。政権への支持率低下を、反日をあおり、挽回したいとの思惑があるようだ」と分析する。

 韓国軍は文氏の判断をどうみているのか。高氏は「現役の将官らは100%近くが、『まさか』と失望しているはずだ。軍人は敵(=北朝鮮)と戦い、勝利するのを目的にしているが、『このまま北朝鮮に韓国が飲み込まれるくらいならば』と、正義感の強い一部の軍人たちが、政権の指導者に政変(クーデター)を仕掛ける公算がより大きくなった」とみる。

 その上で「退役軍人団体らも文氏に猛抗議し、弾劾を訴えるデモが今後、激しさを増すのは確実だ。韓国に在韓米軍を置く米国側からの圧力もかかり、協定破棄を見直すべきだとの韓国世論が喚起され、『文降ろし』につながる可能性が出てきた」と語った。

【私の論評】日韓関係は現在正常化しつつある。過去が異常だったのだ(゚д゚)!

韓国は日本の隣国ですが、それだけの理由で親密な関係になる必要はないです。国際関係においては、隣国でも友人にならないこともあるし、離れていても気の合う国と友人になるべきで日本はインドやトルコのような親日国と親しくすべきです。さらに日本ではなぜか、韓国のニュースがかなり多く流れているというのも問題だと思います。

一方的に日本を敵視する国と、隣国であるという理由だけで、仲良くする必要など全くありません。

何やらテレビ等では、現在の韓国と日本の関係が異常であるかのように報道していますが、そうではありません。今が普通であり、過度に韓国に気を使いすぎた過去が間違いなのです。

韓国は、日本が貿易管理を強化したり、ホワイト国から除外したことに対して大騒ぎしていまずが、それ自体がおかしなことです。日本が現在、貿易管理の対象としたり、ホワイト国扱いをしていない国などいくらであります。たとえば、中国、台湾や、インドだってそうです。

さらに、日本だけではなく米国も韓国対して管理を強化したり、それ以上の措置をとっています。それに関しては、このブログにも掲載したことがあります。

それに関してはこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【コラム】文大統領専用機はなぜ米国で給油できなかったのか―【私の論評】文在寅は、米国による北朝鮮制裁の韓国への厳格な適用の事実を隠蔽しようとした?
コリアン・エアーの文大統領の「コードワン」と同型機

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、一昨年9月に北朝鮮の平壌に行った民間航空機・文大統領の「コードワン」はそれから6カ月間、米国に入国できない「制裁」に引っかかっていたようなのです。

文大統領専用機、つまり民間機「コードワン」が当初発表の米ロサンゼルスで給油せずにチェコで給油したのは、対北朝鮮制裁違反で米国に入国できなかったためではないのかと、韓国内では報道されていました。

私は、この報道は正しいと思います。考えてみますと、この頃から米韓関係は良くありませんでした。

米国の北朝鮮に対する独自制裁について調べてみました。米国版のWikipediaを調べると、以下の記事がありました。

Sanctions against North Koreaこの記事の中に以下のような文書がありました。

Also any aircraft or ship upon entering North Korea is banned for 180 days from entering the United States.これを訳すと、「北朝鮮に入ったいかなる航空機も船舶も、180日間米国に入国できない」です。これによれば、民間であろうが、軍用機であろうが、北朝鮮に入った航空機は、180日間米国に入国できないことになります。

確かに、このような制裁が存在するのです。米国はこの制裁を厳格に適用したのでしょう。

さらに、次のような制裁もあります。
【暴走する韓国】数々の裏切り行為や侮辱発言…日本人の堪忍袋の緒は切れた―【私の論評】韓国にとって重要な国、日本を粗末に扱った文在寅の代償はかなり大きなものになる(゚д゚)!
 

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
韓国の銀行は既に米国で送金できなくなっています。米ニューヨークに進出した韓国系銀行の支店と現地法人が昨年11月から送金中継や貸付などの核心業務を相次ぎ中断しています。米金融当局のコンプライアンス強化の要求に対応できないためです。グローバル金融の中心地ニューヨークで韓国系銀行は連絡事務所に転落しています。 
これは、北朝鮮に対する制裁破りをしている韓国に対する米国の事実上の制裁と考えるべきでしょう。 これは、韓国内ではソフトに報道されていますし、米国もはっきりと制裁とは言ってはいません。
ここでいう、「米金融当局のコンプライアンス強化の要求」とは実際には、コンプライアンスを遵守するため、新たなシステム(コンピュータ・システムも含む)を導入しなければならないようです。ただし、詳細はほとんど報道されていません。

なぜ米国がこのようなことをしたかといえば、韓国銀行による不正な送金があったか、ありそうであった、ということです。だからこそ、コンプライアンスを重視するシステムの導入を韓国銀行に迫ったのでしょう。

このような米国による韓国に対する制裁もしくは、制裁に近いような内容はあまり詳しく報道されないので、詳細を把握することは難しいです。

しかし、このようなことは時々行われているのでしょう。しかし、考えてみてください、もし日本が米国と同じことを実行したら、韓国はどうのような反応をしたでしょうか。

たとえば、文大統領の「コードワン」を日本国内に入国させないようにしてみたり、韓国銀行に対して何らかの制裁をしたとしたら、どうなるでしょう。

たとえば、現在日本のメガバンクが韓国の銀行が発行する信用状に保証を付けなければ、貿易決済さえまともにできないのが実態です。日本が、この保証に制限を設けたりしたらどうなるでしょうか。

またまた、韓国は大騒ぎして、様々な対抗措置を出すかもしれません。それにしても、米国が韓国に対して厳しい措置をしても、韓国はほとんど対抗策らしい対抗策をとったり、韓国内でもほとんど報道さませんが、なぜ日本が同じようなことをすると激しく反応したり、対抗措置を出したりするのでしょうか。

それは、おそらく、米国は韓国が騒いだり、対抗措置をだしたとしても微動だにせず、場合によっては制裁をさらにきつくするのかもしれません。だから、韓国も米国に対してそのようなことをしても無駄だし、そんなことをすれば、「コードワン」の場合は、文大統領の恥をさらすようなものであり、韓国銀行による措置に関しては、さらに制裁などが課されるだけなのでしょう。

米国だって、このような措置をするには、それなりに十分考えて根拠も明確にして実行しているので、韓国が騒ごうが喚こうが、放置し、場合によっては新たに制裁を課すということなのでしょう。ちなみに、日本のメガバングが保証をつけなれば、韓国は貿易決済ができなくなり、完璧に経済が破綻します。

過去の日本は、過度に韓国に気を使いすぎ、韓国が騒いだり喚いたりすれば、それに反応したり、実際に措置を緩和するなどのことをしてきました。それが長い間続いたので、韓国に一種の日本に対する甘えができたのでしょう。

普通の国同士ではありえないことです。たとえば、ロシアに対しても日本は厳しい措置をとることもあります。2019年の初めから日本はロシア産石油の買入量を一気に40.5%削減しました。また液化天然ガス(LNG)の輸入も前年同時期比で7.6%減少しました。一方で米国の炭化水素の輸入は急増。石油は328%、LNGは36.1%増加しています。

これは、一方ではアジアのエネルギー市場でのシェア拡大を望む米国と、もう一方にはロシアの領土問題への不変の姿勢に否定的に反応し、交渉姿勢を強めようとする日本の試みがあると考えられます。
日本は昨年も1月から9月にかけての時期にロシア産石油の輸入量を減らしていました。ところが両国間での平和条約の議論が始まるやいなや状況は変化しはじめ、11月には日本はロシアの石油の購入を急増させました。そして現在は、交渉の行方が不透明になりはじめたことから、ロシア産エネルギーの日本の輸入量は再び減少し始めているのです。
このような措置を韓国に対してとった場合、韓国は大騒ぎすると思います。しかし、ロシアは同じようなことをされても、何も騒ぎもしないし、当然のこととみなしているでしょう。ロシアは日本に対して甘えがないからです。普通の国同士ではこれが当たり前です。
だから、このようなことなど当たり前すぎることなので、日露両国ともテレビや新聞等のマスコミも特段報道もしないので、両国の国民とも知らない人がほとんどでしょう。しかし、日韓は違います。日本が韓国に対して、安全保障上の理由から、貿易管理を強化しただけで、日韓双方のメディアは大騒ぎです。異常です。
相手が友好的になれば、こちらも友好的になるし、相手が敵対的になれば、こちらも敵対的になる。これが国際社会の常識です。

しかし、過去においては、日韓関係はそうではありませんでした。今日の日韓関係がまともなのであり、過去の日韓関係は歪だったのです。

韓国がGSOMIAの破棄しても、日米の安全保障に何ら影響は与えません。孤立して困るのは韓国のほうです。これは、文在寅(ムン・ジェイン)政権による反日政策の延長線上にあり、驚くにあたらないです。

そもそも、人工衛星や情報収集能力に関しては、日米が格段に上です。対潜哨戒能力は日本は世界のトップクラスです。先日の北朝鮮による短距離ミサイルに関しても、韓国は690メートル飛行したとしましたが、日本側の分析では600キロメートルであり、後で韓国は600メートルと訂正しました。

日本の哨戒能力は強力で、レーダー照射のときもかなりの情報をつかんでいるとみられる

韓国がGSOMIAを破棄すれば、韓国には日本からの正確な情報が入ってこなくなるだけの話です。韓国側は破棄の理由として、日本が安全保障上の輸出管理で優遇措置の対象国から韓国を外す対応を取ったことを挙げています。

これらは、本来全く別な話であって、一緒くたにするのは異常です。やはり、韓国には日本に対する甘えが通じると今だに思っているようです。

このような状況はしばらくは続くかもしれませんが、日本が態度を変えないどころか、韓国が今のまま態度をかえなければ、さらに対応を厳しくし、さらに制裁などを加えるというような正しい対応をすれば、韓国も少しずつ変わっていくことでしょう。少なくとも、日本に対する甘えを捨てることになるでしょう。

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2019年8月22日木曜日

中国の属国へと陥りつつあるロシア―【私の論評】ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方であり、いずれ、中国に向かって大きく噴出する(゚д゚)!


岡崎研究所

 ロシアがクリミア半島を併合して欧米諸国の経済制裁を受けるようになり、また、シリア問題で人権を蹂躙しているアサド政権を支援していることから西側諸国と離反するようになり、プーチン大統領は、東の中国を向くようになった。

 中国の習近平主席も、米国との貿易戦争やファーウェイの5Gをめぐる対立等で、ロシアと接近を図っている。


 ロシアは、最近、5Gで中国のファーウェイを採用することを決めた。また、中露は、海軍の合同軍事演習を活発化させている。仮想敵国は日米両国とも言われている。

 中露関係については、今やロシアは中国のジュニア・パートナーである。いま、中国のGDPはロシアの6倍であるが、その差はどんどん広がっている。IMF統計では、ロシアはGDPで韓国にさえ抜かれかねない状況である。

 プーチン大統領は、自分の取り巻きに利権を配分し、権力を維持しているが、国家としてのロシアを大きく衰退させてきた政治家である。石油資源に依存するロシア経済を改革するのが急務であるとわかっているのに、ほとんどそれができていない。

 ロシア史を見ると、ロシアの指導者は、スラブ主義を標榜してロシア独自の道を追求する人と、欧米との関係を重視する欧化主義者が交代してきている。ロシア独自の道に固執したスターリンの後の本格政権は、西側との平和共存を唱えたフルシチョフ(日本に歯舞と色丹の2島を返還する決断をしたが実現しなかった)であった。その後、スラブ主義者とも言うべきブレジネフが登場した。その後は、欧米との関係改善を目指したゴルバチョフ、エリツィンが指導者として登場した(その時には歯舞、色丹、国後、択捉の北方領土4島が日露間の交渉の対象であるとする東京宣言ができた)。 

 エリツィンは、プーチンを改革者であると考えて後継者に選び、自分の家族を訴追などから守ってくれることを期待した。

 プーチンは、後者の役割は義理堅く果たしたが、ユーラシア主義者として欧米に対抗する路線をとった。そういう経緯で、プーチンは必然的に中国に近づいた。それが今の中露の蜜月関係につながっている。

 しかし、プーチン後は、この蜜月関係が続く可能性よりも、ロシアの指導者が欧米重視主義者になり、この蜜月は続かない可能性の方が高いと思われる。

 プーチン政権の上記のような傾向にもかかわらず、中露間にくさびを打つという人がいるが、プーチンがいる限り、そういうことを試みてもうまくいかないだろう。北方領土で日本が妥協して、中露間にくさびを打つことを語る人もいたが、ピント外れである。

 7月27日付の英エコノミスト誌は、ロシアが中国の属国になってきていると指摘している。その指摘は正しい。ロシアがそれから脱したいと思う日は来るだろう。そうなったときには、ロシアとの関係を考える時であろう。

 中国が中露国境沿いで安定の源になるとの見方が一部にあるが、そういうことにはならないだろう。極東ロシアは約650万の人口であり、千葉県とだいたい同じである。他方、中国の東北には1億以上の人口がある。1860 年の北京条約で沿海州などはロシア領となったが、ロシアは2004年の中露国境協定の締結後、国境が決まったのだから、中国に北京条約は不平等条約であったとの教育をやめてほしいと要望しているが、中国はそれを聞かず、そういう教育を続けている。中露国境の安定を望んでいるのはロシアであって、必ずしも中国ではない。

【私の論評】中露対立が再び激化した場合、日本は北方領土交渉を有利にすすめられる(゚д゚)!

中露関係の歴史は17世紀、ロシアがシベリアを東進し、やはり東アジアに勢力を拡張していた清朝と接触したときにはじまります。その結果、両者が結んだ1689年のネルチンスク条約は、高校の世界史の授業でも習う重要事件で、名前くらいご存じでしょう。


この条約がおもしろいです。条約とよばれる取り決めなのだから、互いに対等の立場でとりむ結んだものです。しかし東西はるかに隔たった当時のロシアと清朝が、まさか全く同一のルール・規範・認識を共有していたわけはありません。にもかかわらず、両者は対等で、以後も平和友好を保ちえました。

なぜこのようなことが可能だったのでしょうか。わかりやすい事例をあげると、条約上でも使われた自称・他称があります。ロシアの君主はローマ帝国をついだ「皇帝(ツァー・インペラトル)」ですが、そのようなことが清朝側にわかるはずもなく、清朝はロシア皇帝を「チャガン・ハン」と称しました。

ロシアも中華王朝の正称「皇帝」を理解できず、清朝皇帝を「ボグド・ハン」と称しました。「ハン」というから、ともにモンゴル遊牧国家の君主であって、「チャガン」は白い、「ボグド」は聖なる、という意味です。つまり客観的に見ると、両者はモンゴル的要素を共有し、そこを共通の規範とし、関係を保っていたことになります。

それは単なる偶然ではありません。ロシア帝国も清朝も、もともとモンゴル帝国を基盤にできあがった国です。もちろん重心は、一方は東欧正教世界、他方は中華漢語世界にあったものの、ベースにはモンゴルが厳然と存在しました。両者はそうした点で、共通した複合構造を有しており、この構造によって、東西多様な民族を包含する広大な帝国を維持したのです。


そのため両者がとり結んだ条約や関係は、いまの西欧、ウェストファリア・システムを起源とする国際関係・国際法秩序と必ずしも同じではありません。露清はその後になって、もちろん国際法秩序をそれぞれに受け入れ、欧米列強と交渉、国交をもちました。しかし依然、独自の規範と論理で行動しつづけ、あえて列強との衝突も辞していません。これも近現代の歴史が、つぶさに教えるところです。

いまのロシア・中国は、このロシア帝国・清朝を相続し、その複合的な構造にもとづいてできた国家にほかならないのです。いわば同じDNAをひきついでいます。両国が共通して国際関係になじめないのは、どうやら歴史的に有してきた体質によるものらしいです。

中露が19世紀以来、対立しながらも衝突にいたらず、西欧ではついに受け入れられなかったマルクス・レーニン主義の国家体制を採用しえたのも、根本的には同じ理由によるのかもしれないです。中ソ論争はその意味では、近親憎悪というべきかもしれません。

西欧世界には、モンゴル征服の手は及びませんでした。その主権国家体制・国際法秩序、もっといえば「法の支配」は、モンゴル帝国的な秩序とは無関係に成立したものです。だからロシアも中国も、歴史的に異質な世界なのであって、現行の国際法秩序を頭で理解はできても、行動がついてこないのです。制度はそなわっても、往々にして逸脱するのです。

しかも中露の側からすれば、国際法秩序にしたがっても、碌なことがあったためしがありませんでした。中国は「帝国主義」に苦しみ、「中華民族」統合の「夢」はなお果たせていません。

ソ連は解体して、ロシアは縮小の極にあります。くりかえし裏切られてきた、というのが正直な感慨なのでしょう。中露の昨今の行動は、そうした現行の世界秩序に対するささやかな自己主張なのかもしれないです。現代の紛争もそんなところに原因があるのでしょうか。

そこで省みるべきは、わが日本の存在であり、立場です。日本はもとより欧米と同じ世界には属していません。しかしモンゴル征服が及ばなかった点で共通します。以後も国家の規模や作り方でいえば、日本は中露よりもむしろ欧米に近いです。

国際法・法の支配が明治以来の日本の一環した国是であり、安倍首相がそのフレーズを連呼するのも、目先の戦術にとどまらない歴史的背景があります。

クリミアはかつてロシア帝国の南下に不可欠の橋頭堡(きょうとうほ)であり、西欧からすればそれを阻む要衝でした。尖閣は清朝中国にとっては、なんの意味もありませんでしたが、現在の中国も過去には何の興味も持っていなかったにも関わらず、近海が地下資源の豊富でことが明らかになると、無理やり「琉球処分」にさかのぼる日中の懸案とされてしまい、中華世界と国際法秩序を切り結ぶ最前線とされてしまいました。

互いに無関係なはずの東西眼前の紛争は、ともに共通の国家構造と規範をもつ中露の、西欧国際法秩序に対する歴史的な挑戦ということで、暗合するともいえるでしょう。

たしかにいまの中露は、欧米に対抗するための「同床異夢」の関係にあるといってよいです。ただし、考えていることもちがうし、「一枚岩」になれないことはまちがいないです。

Russian Flag Bikini

プーチン露大統領と中国の習近平国家主席は昨年6月の中国・北京での首脳会談で、両国の「全面的・戦略的パートナーシップ関係」を確認。軍事・経済協力を強化していくことで合意した。

同年9月の露極東ウラジオストクでの「東方経済フォーラム」に合わせた中露首脳会談でも、両国は米国の保護主義的な貿易政策を批判したほか、北朝鮮の核廃棄プロセスへの支持を表明しました。

さらに同フォーラムと同時期に露極東やシベリア地域で行われた軍事演習「ボストーク(東方)2018」には中国軍が初参加。ロシアのショイグ国防相と中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相が、今後も両国が定期的に共同軍事演習を行っていくことで合意しています。

しかし、同年10月24日付の露経済紙「コメルサント」によると、ここ最近、中国系銀行がロシア側との取引を中止したり、口座開設を認めなかったりする事例が相次いでいるといいます。

国際的な対露制裁の対象外の企業や個人も例外ではないといい、同紙は「中国側はどの企業が制裁対象なのか精査していない。その結果、全てをブロックしている」と指摘しまし。「この問題は今年6月の首脳会談以降、両国間で議論されてきたにもかかわらず、中国側は『是正する』というだけで、実際は何もしていない」と不満をあらわにしました。

同年同月26日付の露リベラル紙ノーバヤ・ガゼータも「中国はロシアの友人のように振る舞っているが、実際は自分の利益しか眼中にない」と批判。「中国の経済成長の鈍化が進めば、中国政府は国民の不満をそらし、自らの正当性を確保するため、攻撃的な外交政策に乗り出す可能性がある。例えばシベリアや極東地域の“占領”などだ」と警戒感を示しました。

実際、露極東地域には、隣接する中国東北部からの中国企業の進出や労働者の出稼ぎが相次いでいます。極東に住むロシア人の人口は今後、減少していくと予想されており、同紙の懸念は「いずれ極東地域は中国の支配下に置かれるのではないか」というロシア側の根強い不安があらわれたものといえます。

同年同月29日付の露有力紙「独立新聞」もこうした中国脅威論を取り上げました。同紙は「ユーラシア経済連合と一帯一路との連携に基づく計画は、実際には何一つ実現していない」と指摘し、「中国によるロシアへの直接投資は、カザフスタンへの投資よりさえも少ない」と指摘しました。

経済発展が著しいウズベキスタンやカザフスタンなどの中央アジア諸国について、ロシアは旧ソ連の元構成国として「裏庭」だとみなしています。しかし、一帯一路も中央アジアを不可欠な要素と位置付けています。

地政学的に重要な中央アジアでの影響力を確保するため、ロシアと中国は、この地域への投資や技術供与、軍事協力の表明合戦を繰り広げており、表向きの双方の友好姿勢とは裏腹に、現実は協調とはほど遠いのが実情です。

このように、中露の友好関係は一時的なみせかけに過ぎないものであり、米国による対中国冷戦が長く続き、中国の力が削がれた場合、中露対立が激化することは必至です。そうして、その状況はしばらくは変わらないでしょう。

現状は、国力特に経済の開きがあまりにも大きすぎるため、さらにロシアは人口密度の低い極東において直接中国と国境を直接接しているという特殊事情もあるため、ロシアが中国に従属しているように見えるだけです。

しかし、プーチンは強いロシアを目指しており、文在寅のように自ら中国に従属しようなどという考えは毛頭ありません。

その実、ロシアの中国に対する憤怒のマグマは蓄積される一方です。これはいずれ、中国に向かって大きく噴出します。

その時こそが、日本の北方領土交渉を有利に進められる絶好のタイミングなのです。また、米国が最終的に中国を追い詰めるタイミングでもあるのです。

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2019年8月21日水曜日

台湾総統選に波及した習近平の二つの誤算―【私の論評】米国のF16V台湾売却でより確かものになった蔡英文総統の再選(゚д゚)!

台湾総統選に波及した習近平の二つの誤算

収束しない香港デモ

福田 円 (法政大学法学部教授)

台湾総統選への動向が注目される柯文哲・台北市長 

台湾では、2020年1月の総統選挙に向けて、二大政党である与党・民主進歩党と中国国民党がそれぞれ候補者を選出した。

 今年初めの時点では、現職の蔡英文の再選は絶望的だと見られた。逆に、18年11月の統一地方選挙で勢いを取り戻した国民党は、複数の有力者が候補に名乗りを上げ、政権交代をと息巻いた。ところが、この半年間で蔡英文はじわじわと支持を取り戻して、民進党候補者の座を勝ち取り、最近の世論調査では国民党候補者となった韓国瑜よりも優勢だという結果も出ている。

 このような状況は、蔡英文が自力で勝ち取ったものではない。中国の習近平政権は、独立志向の強い民進党から親中色の強い国民党への政権交代を望んでいたが、その戦略に二つの誤算が生じたことが大きいと言えよう。

 19年1月2日、習近平国家主席は対台湾政策に関する重要講話を行い、自身の政策方針となる5項目(以下、「習五点」)を打ち出した。第一の誤算は、これへの台湾民意の反発が、思いの外激しかったことである。

 習近平の重要講話は、胡錦濤前政権期の「独立阻止」から自身の「統一促進」へと、方針の転換を明確に示すものであった。具体的には、従来は「92年コンセンサス」について、国民党との間で「一つの中国」に関する解釈の相違があることをあえて曖昧にしたまま、互いがその「一つの中国」の前提に立つことをうたってきた。その「92年コンセンサス」に、「国家の統一を求めて共に努力する」との条件を付した。また、「一国二制度」や「武力の使用」など、胡錦濤前政権が台湾民意の反発を恐れて極力使用を避けてきた文言も盛り込んだ。

 習近平にとっての、第二の誤算は、香港で起きた逃亡犯条例改正に反対する運動に、台湾の市民社会が共鳴したことである。香港政府がこのタイミングで逃亡犯条例の修正案を提出した背景にも、不確かな点が多い。直接的には、台湾にて香港人が犯した殺人事件がきっかけであるとされているが、それだけではないだろう。

 習近平が逃亡犯条例改正案の提出をどの程度主導したのかは明らかでないが、「習五点」同様に対香港政策でも攻勢に出ようとした可能性のほか、香港に逃れる中国人資本家を取り締まり、米中貿易戦争の影響を受けた資金流出を防ぐのが真の目的だったという説もある。そして、その根底にはやはり、14年の「雨傘革命」以降に行った数々の取り締まりにより、香港における抵抗の勢いは相当程度が削(そ)がれたという現状認識があったように思える。

 ところが、香港では条例改正に反対する大規模なデモが起こり、その規模は03年の国家安全条例反対デモの規模を大きく上回った。その後も断続的に多様な形態のデモが継続しており、本稿執筆時点においても収束する見通しは立っていない。

 香港の情勢は、蔡英文政権にさらなる勢いを与えることとなった。香港で最初の大規模デモが勃発(ぼっぱつ)すると、蔡英文は直ちに、既に民主化を果たしている台湾は絶対に「一国二制度」を受け入れないと主張する声明を発表した。この「民主主義の守護」を前面に打ち出した姿勢が、「香港を支えよう」とする台湾市民社会の論調とも合致し、蔡英文の支持率をさらに引き上げた。

 こうした状況下で、今でも習近平政権が韓国瑜・国民党政権の誕生を望んでいるのかどうかは定かではない。習近平は、胡錦濤前政権の対台湾政策に批判的であるのと同様、そのカウンターパートであったにもかかわらず、台湾の民意をうまく誘導できず、ひまわり学生運動のような事態を招いてしまった国民党に対する評価も厳しい。

 また、習近平は、韓国瑜や国民党が今後どのような対中政策を採るのかも、さらに見極めようとするだろう。実際、韓国瑜・国民党は選挙戦を考慮すれば、「習五点」が示した「92年コンセンサス」の条件を受け入れるわけにはいかず、「一国二制度」にも否定的な発言を繰り返さざるを得ない。

米中関係が緊張するほど
台湾に圧力を強める習政権

 そこで、今後、総統選の鍵を握るのは、柯文哲・台北市長の動向と、それに対する習近平政権のアプローチである。柯文哲は8月に入り新党「台湾民衆党」の結成を表明した。9月に入るまで総統選に出馬するか否かを表明しないとしているが、柯の出馬や、国民党予備選挙で破れた郭台銘(テリー・ゴウ)との協力によって、選挙戦の構図は変わる可能性がある。

 目下、柯文哲は「両岸一家親(中国と台湾は一つの家族)」という習近平の発言に同調することで、台北市長として中国との交流を保持している。現時点で習近平政権が柯文哲にそれ以上の立場を問わないのは、その利用価値を見極めるためであろう。

 世論調査結果によれば、柯文哲はこれまで対中政策上の立場を国民党寄りにシフトさせてきているのにもかかわらず、参戦すれば蔡英文への支持票をより多く奪うとみられている。つまり、習近平政権は韓国瑜と柯文哲の陣営を天秤にかけつつ、双方と交渉の余地を残し、蔡英文以外の政権下で台湾民衆が享受できる経済的利益を示すことで、蔡英文の再選を阻むことができる。

 そして、習近平政権にとって、そのような駆け引きが持つ重要性は、米中関係の行方に大きく左右されよう。そもそも、米中関係が安定していれば、中国の指導者は台湾問題については米政府と駆け引きをすれば良いので、台湾の選挙にそこまで気を揉む必要はない。しかし、米中関係が緊張や不確実性を抱えれば抱えるほど、台湾の選挙戦は習近平政権にとって大きな意味を持ち、その展開によっては武力行使などに踏み切る可能性も排除できない。

 米中貿易協議が進展を見せぬ中、中国政府は8月1日付で中国から台湾への個人の観光旅行を全面的に停止すると発表した。蔡英文政権への圧力を強める狙いがあるとみられる。今後の台湾総統選挙の行方と、習近平政権の動向に注目が集まる。

 これに対して、蔡英文は「一国二制度」は受け入れられないと主張する演説を直ちに発表し、その断固たる姿勢は蔡英文の支持率を引き上げる出発点となった。他方で、国民党の主要政治家は、「一国二制度」などに対する立場を問われ、説明に窮した。

 習近平がこのタイミングで蔡英文政権・民進党に塩を送り、国民党に冷や水を浴びせるような演説を行ったのはなぜか。二つの説明が可能であろう。

 一つは、17年に開催された第十九回党大会以降自信を深めた習近平は、もはや台湾の政局に配慮する必要はないと考えており、自身が促進すべき「統一」へと向けた対台湾政策を表明したのだという見方である。もう一つは、国民党が政権を奪還した後を見越して、「一つの中国」に関してより高いハードルを設定したという見方である。いずれにしても、習近平は蔡英文がこれほど勢いを取り戻すとは考えていなかったのではないかと思われる。

【私の論評】米国のF16V台湾売却でより確かものになった蔡英文総統の再選(゚д゚)!

上の記事にもあるように、1月2日、中国の習近平国家主席は、台湾政策について包括的な演説を行い、その中で、台湾統一は「一国二制度」によるという方式を打ち出しましたた。「一国二制度」は、香港が中国に返還された際に中国が50年間の香港統治のための方式として約束したものです。

蔡英文総統は、同発言に対し、直ちに「台湾の大多数の民意が『一国二制度』を受け入れることは絶対にない」と断言しました。

さらに、野党国民党支持者などで受け入れる人の多い「92年コンセンサス」(「一つの中国」の内容は中台それぞれが解釈する。台湾にとっては「一つの中国」は「中華民国」を意味する)に関しては、北京当局によって「一国二制度」と実質的に同じものと定義されたため、これまで期待されていた同床異夢の曖昧さがなくなったとして、もうこれを口にするはやめるべきだと訴えました。

蔡英文総統

「一国二制度」は、かつて鄧小平によって台湾統治の方式として検討されたことはありましたが、実際には香港統治に利用されました。今日の民主化した台湾の人たちが受け入れる余地のほとんどない方式であり、今日の状況下でこのような方式を打ち出したこと自体、中国がいかに台湾の現状を知らないかの証左と見られても不思議ではないです。

この習近平発言の結果、昨年11月の統一地方選挙において大敗を喫した蔡英文への支持率が逆に増えました。蔡英文の支持率は、蔡の慎重な対中態度やいくつかの国内問題への対応ぶりから低迷していました(19%といった数字も見られる)が、習近平発言後の世論調査によると、支持率急上昇、61%に上昇したとの調査もありました。これは、主として蔡が「一国二制度」を拒絶し、民主主義下の「台湾の主権」に言及したことによるものです。

「一国二制度」の台湾への適用については、民進党、国民党の支持者の区別なく台湾人の大多数がこれに反対していますが、他方、「92年コンセンサス」については、国民党のなかに依然としてこの方式によって中台関係を規定したいとの考え方が見られます。

特に馬英九政権下では中国と交流する際には、「一つの中国」の内容は中台それぞれが解釈し、台湾にとっては「一つの中国」は「中華民国」を意味する「一中各表」が前提となっていました。ところが、今回の習近平発言の結果、中国の台湾政策の核心が「一国二制度」であることが極めて明白となったことにより、「一中各表」を掲げる国民党としても新たに複雑な課題に直面することになりました。

呉敦義・国民党主席、朱立倫・元国民党主席、そして、蒋経国元総統の孫で蒋介石の曾孫である蒋萬安・立法委員らも習近平の「一国二制度」による台湾統一の提案には反対を唱えているといいます。

1月15日付けの台北タイムズ社説‘Tsai must back words with actions’は、蔡英文に対して、こういう稀有な挙国一致的反対を好機として捉え、中国に対する強硬な主張を如何に実行に移すかが次の重要な課題である、と述べました。

蔡英文は、最近日本側関係者に対し、台湾としてはTPPに参加したいので日本の支持を得たい、と述べました。また、習近平が「中国としては台湾に対する武力行使の可能性を排除しない」旨の発言をしたことに関連して、台湾の防衛のために、米国のほか日本を含む各国との協力に期待すると述べ、安全保障の面において中国への警戒感を一段と強めています。

こうした動きは、台北タイムズ社説がいうところの「強硬な主張を如何に実行に移す」行動の一環と見てよいでしょう。蔡英文政権の中国への対応が、今後、より強硬かつ対立的になることが十分に予想されます。

そうして、この蔡英文の主張は、米国を動かし、今日台湾にとって長年の悲願であった米国のF16売却が、実現に結びつきそうです。米トランプ政権は、米議会に対して、F16の売却を認めるとの方針を通知したと米主要メディアが伝えたのです。

この通知は非公式の段階ですが、すでに各方面で広く報じられており、議会にも反対の声はないとみられ、66機計80億ドルという近年にない台湾への巨額武器売却が、この台湾総選挙まで残り5カ月を切った敏感な時期で実現に向かうことの意味は大きいです。

この売却を報じた米メディアは、加熱する米中貿易戦争と緊迫する香港情勢において、中国の牽制を目的としたものだという見方を伝えています。それは必ずしも間違いではないかもしれないですが、これは米トランプ政権が来たる台湾総統選において、現職の民進党・蔡英文総統を支持するというサインをこのF16売却承認を通して明確に伝えたとみるべきと思います。
中国による香港への軍介入については、まだその時期には至っていないですが、暴力が続けば状況は変わるかもしれません。しかし、軍の直接介入は中国にとってコストが高過ぎます。あらゆる手段が尽きた場合に初めて発動されるでしょう。

「コスト」の内容としては、米中冷戦が長期化する中、香港の金融センターとしての地位は中国にとり重みを増しており、米国が香港に与えている優遇措置が止められた場合中国経済への打撃が大きいということがいえます。そのため、習近平は香港への軍事介入は慎重にならざるを得ないのです。

F16の売却については、台湾の蔡英文政権はトランプ政権にかねてから打診をしており、前向きな感触を得ていました。蔡英文総統は、この7月に外遊するなかでニューヨークでのトランジット滞在を米側に認められるなど「破格の好待遇を米国から受けた」だと評価されました。

F16の売却が実現すれば、7月に同様に米議会に通知された米戦車の売却以上の「快挙」となります。一方、中国外務省の耿爽副報道局長は19日の記者会見で、早速、売却取り消しを米国求める考えを明らかにしました。

台湾の戦闘機は、米国のレーガン政権時代に承認され、1990年代に売却されたF16の初期型A/Bの144機のほか、フランスから購入したミラージュ、自主開発した経国号(IDF)が配備されていますが、いずれも老朽化しており、あと10年以内に大型改修をしなければ退役という年代物ばかりです。

いずれ遠くない時期には、世代交代を急スピードで進めている中国の戦闘機に追い抜かれ、台湾海峡軍事バランスの最後の砦である制空権でも完全に太刀打ちできない状況に追い込まれることが目に見えていました。

台湾も決して手をこまねいていたわけではなく、前々政権の陳水扁時代の2006-2007年にかけて、当時の新鋭型であるF16 C/D型を新たに購入したいという要望を米国に提案しようとしていましたが、門前払いを食っていました。

当時は米中関係も安定しており、中国との対立を煽るような独立色の強い発言を繰り返していた陳水扁総統に米国が不信感を抱いていたことが響いていました。

その後、国民党の馬英九政権になると、中台関係も安定していたため、台湾は再び、F16の売却実現を期待したのですが、米国は中国への配慮から、A/Bのアップグレードに応じるという中途半端な決定を下しました。

それでも総額58・5億ドルという巨額なものとなったのですが、当時の米オバマ政権がやはり中国を過度に刺激しないことを優先させた決定だと見られていました。

台湾中部の彰化県で行われた軍事演習「漢光35号」に参加した米国製のF16V戦闘機(2019年5月28日)

今回売却されるのはF16 Vと呼ばれるF16シリーズのなかでも第四世代の最も先進的な機種で、航続距離や耐久性、レーダーなどに優れており、米軍とのデータリンクもより柔軟に対応できます。

現在保有するF16A/BもV型に改修中で、この売却により、台湾の航空戦力の対中均衡は当分、維持され得ると見られます。

肝心のトランプ大統領が台湾問題をどう見ているのかについては相変わらず決め手となるような情報はないですが、今回のF16売却決定には、ボルトン大統領補佐官や、シュライバー米国防次官補など、政権内の対中強硬派であり、親台派でもあるグループが大きな役割を演じたと言われています。

シュライバー米国防次官補

彼らは基本的に対中接近を掲げる国民党に対して近年、厳しい見方をしており、国民党の総統選候補に決まった高雄市長の韓国瑜氏とも距離を置いているようです。

現在、蔡英文総統は、昨年までの支持率低迷から回復を続けており、これまで先行していた国民党の韓国瑜氏と接戦、あるいは追い抜くところまで持ち直しています。最新の世論調査では、蔡英文氏と韓国瑜氏の一対一の対決となった場合、台湾のテレビ局TVBSの調査では、蔡英文氏が5ポイントリードし、美麗島電子報の調査では、蔡英文氏が14ポイントという大きなリードを見せています。

中国という大きな脅威を抱える台湾の社会は、防衛上の後ろ盾である米国の姿勢に敏感で、民進党・国民党支持者を問わず、米国のお墨付きを得ているかどうかを気にします。

もし、この売却が実際に実現すれば、民進党は台湾の世論に対して、「米国支持」を強く印象付ける宣伝戦を展開することができ、蔡英文総統は、香港問題に続いて有力な「武器」を手にすることになります。

総統選まで半年を控えたこのタイミングで武器売却を決めれば、台湾への武器売却に神経質になっている中国の反発が必至であることは誰でも想像がつきます。今後、米中の軍事交流などが中断するなどの影響は避けられないでしょう。もちろん米国も中国の反発は織り込み済みで今回の行動に出ています。

もちろん米国はこうした事情をすべて織り込んでF16を売却するべきだと判断しており、中国が当選を望んでいない蔡英文総統の再選を、米国は支持するという強いサインと見るべきです。

緊迫する香港情勢において中国は、米国がデモ隊を背後で操っていると疑っており、米中対立の煽りもうけて、香港問題が米中関係の焦点になりつつあります。

台湾への武器売却が実現すれば、米中関係のさらに新しい火種となることは間違いないです。そのうえ解放軍や武装警察による香港への介入をにおわせる中国を牽制する効果もあり、このF16の売却決定が、今後の香港、台湾などを含んだ東アジア情勢に与えるインパクトを小さく見積もるべきではないです。

そうして、日本も台湾に対してTPP加入の促進などで協力すべきです。

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2019年8月20日火曜日

香港騒動でトランプは英雄になる―【私の論評】トランプの意図等とは関係なく、香港の自治が尊重されないなら、米国は香港を中国と別の扱いにすることはできない(゚д゚)!

香港騒動でトランプは英雄になる

無関心だった大統領が踵を返した3つの理由


「第2の天安門事件」にはならない

 香港での「逃亡犯条例」の改正案をきっかけに燃え上がった香港市民の抗議デモは留まるところを知らない。

 これに対して、中国軍の指揮下にある武装警察が香港と隣接する中国広東省深圳の競技場に集結し、デモがさらに激化すれば出動する構えを見せている。

 一方、市民団体は香港政府に対し、逃亡犯条例改正の完全撤回、逮捕者の無罪放免、普通選挙の実施など「5大要求」を掲げて徹底抗戦の構えだ。

 週末には市民団体は各地で大規模なデモ行進を敢行した。24、25両日には新界地区でもデモが予定されている。まさに一触即発の事態を迎えている。

 もし中国軍が武力抑圧に出れば、1989年6月4日の天安門事件*1の再来もありうる。

 米国は世界でも名だたる「人権重視国家」。たとえ内政干渉と言われようとも他国の人権抑圧政策には口を出してきた。

 それが米国建国のバックボーンになっているからだ(たとえ建て前であろうともその辺が日本などとは異なる)。

 中国で大勢の市民が虐殺されれば真っ先に立ち上がるのは米国だ。また世界はそれを期待している。

 今回の香港デモでも何人かが星条旗を掲げているのもそうした期待度があるからだ。

「第2の天安門」事件となれば、米国は動かざるを得ない。それでなくとも貿易を巡って緊張感が高まっている米中関係に新たな火種となることは必至だ。

*1=2017年に公開された英国外交文書によると、天安門事件で殺害された市民は少なくとも1万人とされる。当時の駐中国英国大使が中国国務院委員からの情報として本国政府に報告した極秘公電で明らかにされている。

狭い香港で大規模な武力行動は無理

 ところが、まずそうした状況にはならないだろうと楽観視しているのは香港の事情に精通する米国人ジャーナリスト、ワシントン・ポストのマーク・セッセン記者だ。

「中国の軍隊が香港に侵入し、香港市民の抗議デモを鎮圧するのはかなり難しいのではないのか。軍隊を出動させても抗議デモを天安門の時のように鎮圧できないからだ」

 その理由を3つ挙げている。

 1つは、香港の地形だ。香港島、九龍半島、新界と235余の島からなるが、山地が全体に広がり、平地は少ない。香港島北部の住宅地と九龍半島に人口が集中している。

 市街は曲がりくねった狭い迷路だらけ。それに坂が多い。重装備の戦車や装甲車が活動するには極めて不適切だ。

 2つ目は、今回の抗議デモには指導者がいないし、1か所を叩いてもすぐほかの場所で抗議デモが始まる。モグラ叩きのようなものだ。

 現在は6月に200万人デモを行った民主派団体「民間人権陣線」が抗議活動の指揮を執っているようだが、市民は自然発生的に広がっている。

 3つ目は1989年の天安門事件の当時にはなかったSNSをはじめとするインターネットの普及だ。市民間のコミュニケーションの手段になっているだけでなく、中国軍の一挙手一投足が動画で世界中に流れる。

 中国政府の全く統制の取れない状況下で中国軍対香港市民の武力衝突→多数の死傷者といった事態が同時多発的に全世界に流れる。

 それが習近平国家主席と中国共産党にとってどんな意味を持つか。知らぬはずがない。

https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/08/15/china-does-not-have-upper-hand-hong-kong-trump-does/

俄然関心を示し始めたトランプ大統領

 トランプ大統領は、香港デモ発生以降、断片的にツィッターや記者団との即席会見で中国政府が「人道的な解決」を図るよう、促してきた。

「当事者に死傷者が出ないことを望む」

 当事者とは抗議を続ける市民と香港警察の警官双方を指していることはいうまでもない。

(2017年8月、バージニア州シャーロッツビルで過激派極右グループが抗議デモの市民たちに襲いかかった時に発した同じコメントだ。「喧嘩両成敗」的発言だった)

 米情報機関からの情報や国務省、国家安全保障会議などの専門家の分析が閣僚や補佐官を通じてトランプ大統領の耳に入るのに若干時間がかかったからだろう。

 それが15日には豹変した。香港騒動を米中貿易戦争に結びつけたのだ。

「私は習近平主席をよく知っている。彼は中国国民から非常に尊敬されている偉大な指導者だ。彼はいい人物だが、商売(外交交渉)にはタフで、歯ごたえのある人物だ」

「彼が香港問題を早急に人道的に解決したいのであれば、そうできると思っているし、疑いの余地はない」

「(もしこの危機を解決するのに役立つなら自分との)個人的な会談をやれだって? 中国(が国内でやっていること)には何の問題もないが、香港で起こっていることが(今米中間で行っている貿易交渉に)役立ちはしない」

「無論中国は(貿易交渉が)うまくいくことを望んでいるはずだ。(ということは)中国は香港問題を人道的に片づけることが先決だ」

https://www.nytimes.com/2019/08/15/world/asia/donald-trump-hong-kong.html

*筆者はトランプ氏の言ったことをそのまま訳しても、知的に解釈できないと思い、置かれた状況を踏まえてネイティブの助けを借りて意訳した。トランプ氏の実際の発言は以下の通りだ。

"China is not our problem. though Honk Kong is not helping. Of course China wants to make a deal. Let them work humanely with Hong Kong first!"

 トランプ大統領は18日にはさらに嵩に懸かるようにこう警告した。

「中国が香港デモで天安門事件のような対応をすれば、(米中)貿易合意は困難になる」

 なぜ、トランプ氏が強硬になったのか。

 その理由の一つは、前述の通り、トランプ大統領は中国は香港騒動を武力鎮圧はできない、という米情報機関からの分析が入ってきたからだろう。

 第2は、米国には「米国・香港政策法」という法律があることを知らされたからだろう。

 おそらく対中強硬派の経済学者、ピーター・ナバロ通商製造業政策局ディレクター(旧国家通商会議=前カリフォルニア大学アーバイン校教授)あたりから聞いたのかもしれない。

 ナバロ氏には米中戦争突入の戦慄シナリオを書き上げた著書があるくらいだ。

 香港は1842年、南京条約で清朝から英国に割譲され、英国の永久領土となった。その後1984年の中英連合声明を踏まえて、2007年に主権が中国に返還された。

 中国の特別行政区となり、「一国二制度」の下、2047年まで社会主義政策を実施しないことを決めている。

 米国は、香港が中国に返還され、行政特別区となることで対中外交が複雑化することを懸念した。

 そこで1992年、米議会は香港の扱い方を規制する法案(米国・香港政策法)を可決成立させ、97年、香港が中国に返還されると同時に同法を発効させたのだ。

https://www.law.cornell.edu/uscode/text/22/5701

同法により、米国は香港を中国の他の地域とは異なる地域と扱い、関税や査証(ビザ)発給などで優遇措置を採ってきた。

 トランプ大統領は、万一中国が抗議デモも武力鎮圧に出れば、直ちにこの法律を使って対香港関税優遇措置の撤廃に踏み切る。

 中国は米国が香港に対し関税面で優遇措置を採っていることで通商面で多大な恩恵を受けてきた。中国にとっては香港は「金の卵」を産む雌鶏だ。これはどうしても手放したくない。

 実は、米議会は6月13日、香港の「逃亡犯条例」改正案に反発して「米国・香港政策法」の前提になっている香港の自治が保障されているかどうかを米政府が毎年検証することを求めた法案(「香港人権・民主主義法案」)を超党派で提出している。

https://time.com/5607043/hong-kong-human-rights-democracy-act/

 中国が香港デモを武力で鎮圧するような事態になれば、米議会はさらに強硬な法案を出すことを必至だ。

 ことあるごとに角突き合わせているトランプ大統領と民主党のナンシー・ペロシ下院議長もこと、香港問題では完全に一致する可能性大だ。

対中強硬派ブレーンの「文殊の知恵」?

 中国共産党機関紙「人民日報」の傘下にある「環球時報」は、習近平政権の心情を慮ってこう報じている。

「香港での抗議活動が当初の逃亡犯条例改正反対という原点を離れて、(旧ソ連諸国などで政権を倒した民主化運動だった)『カラー革命』(顔色革命)に変質した」

「抗議活動の標的が香港政府から中央政府に移り、香港を再び中国から切り離して西側世界に戻ろうとしている」

「従って(逃亡犯条例改正に拒否する)反対派の要求には絶対に応じられない」

 ところがこれはあくまでも建て前の話。習近平政権にとってはもっと直近な懸念が急浮上してきた。

「香港騒動」に乗じて「米国・香港政策法」をちらつかせてきたトランプ大統領の戦術にどう対応するかだ。

 かってのような人権を守るための「正義」などではなく、進行中の米中貿易交渉の交渉材料の一つに加えるトランプ政権のしたたかであくどい手口だ。

 関税優遇措置を継続させるために「逃亡犯条例改正」案を引っ込めさせるのか。これも政治的リスクは大きい。

 元国務省高官の一人は筆者にこうつぶやいている。

「商売人トランプの真骨頂と言うべきか。ジョン・ボルトン大統領国家安全保障担当補佐官、ステファン・ミラー大統領顧問、ナバロ通商製造業政策局ディレクターら対中強硬派ブレーンの『文殊の知恵』(Four eyes see more than two)か」

「人民の統治を重視する米共和主義のシンボルであるジェファーソニアン・デモクラシーとはあまり縁のないトランプたちが香港の自治とか、市民の人権などを重視して考えついた発想でないことだけは確かだ」

「しかし、結果的にはトランプが香港の自治権を守る英雄のように世界には映るだろうね」

【私の論評】トランプの意図等とは関係なく、香港の自治が尊重されないなら、米国は香港を中国と別の扱いにすることはできない(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、米国と香港の関係は、1992年に成立した「米国・香港政策法」で規定されています。同法は香港を中国とは別の関税自治区かつ経済地域とみなし、それに基づき米国は香港に優遇措置を適用しています。

米国務省は同法の下で、香港に関する年次報告書を公表することが義務付けられています。3月21日に公表された報告書では、香港は優遇措置を正当化する「十分な」水準の中国からの自治を維持しているとしたうえで、その自治権は「減退してきた」としています。

中国は近年、共産党政権に批判的な香港市民を第三国から連れ去り、勾留するため中国に移送してきました。香港市民は、中国政府が「逃亡犯条例」改正により、批判者を特定し、同国の法律の下で起訴し、その後、中国での審理や処罰のために引き渡しを求める明確な権限を持つことになるのを理解しています。

また腐敗した中国の当局者らは本土への移送という脅しをかけるだけで、香港の企業から利益を巻き上げることができるようになるでしょう。

唐人テレビのインタビューに応える米NY私立大学 ベンジャミン・シェパード教授

改正案に「深刻な懸念」を表明した米国務省によれば、香港で活動する米企業は1300社を超えます。また香港における米国の投資額は約800億ドル(約8兆6850億円)で、居住する米国市民は8万5000人に上るといいます。

カート・トン元駐香港米総領事は中国の主張に異議を唱え、「当地において投資はできるが発言権はないと言うのは、責任ある者の考えではもちろんない」と語りました。

冒頭の記事にもあるように、マルコ・ルビオ上院議員(共和、フロリダ州)、ジム・マクガバン下院議員(民主、マサチューセッツ州)、クリス・スミス下院議員(共和、ニュージャージー州)は先に、「香港人権・民主主義法案」を議会に再提出しました。

これは主に、中国が約束した自治を香港が享受し続けているかどうか、2047年まで毎年検証するのを国務長官に義務づけるものです。香港の自治が保障されていない場合、米国の法律の下で香港が受けている優遇措置―関税、査証、法執行上の協力など―はなくなる可能性があります。

民主党のナンシー・ペロシ下院議長
一部には、香港への優遇措置をなくすことで中国を罰するというやり方が、香港を一層傷つけると懸念する向きもあります。しかし、ペロシ下院議長の論理は正しいです。香港の自治が尊重されないのであれば、なぜ米国の政策で香港を中国と別の扱いにする必要があるのでしょうか。

ブログ冒頭の記事は、非常に良い記事なのですが、ただしトランプ政権が「米国・香港政策法」をちらつかせたこと、トランプ政権のしたたかであくどい手口などと評価していますが、それはいかがなものかと思います。

今や米国は、議会は超党派で、そうして司法も中国と対決姿勢を顕にしています。もはや、米国にとって中国はかつてのソ連のような敵となったのです。トランプ大統領が、何かの都合で、ディールを成立させ、中国と和解しようとしても、それは簡単にはできなくなりました。

ペンス米副大統領は19日、ミシガン州で演説し、香港で続く大規模抗議デモへの対応をめぐり、「中国政府は、香港の法を尊重するとした1984年の英中共同声明などの約束を守る必要がある」と語りました。

ペンス米副大統領

香港の自治と自由を尊重するとした英中声明に触れて、武力鎮圧しないよう中国をけん制しました。

そもそも、トランプ大統領の意図など全く別にして、習近平国家主席が中国の誇りであるべき自由都市、そして、台湾に安心をもたらす自治政府の一例である香港に不必要なダメージを与えようとしているのなら、米国は中国政府を信用することなどできません。

これは、トランプ大統領の意思がどうのこうのと言う前に、米国の意思であることを理解すべきと思います。

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2019年8月19日月曜日

文在寅の報復は「日本に影響ナシ」どころか「韓国に大打撃」の可能性―【私の論評】断交前に韓国のカントリーリスクを高める価値は十分ある(゚д゚)!

文在寅の報復は「日本に影響ナシ」どころか「韓国に大打撃」の可能性

経済の条件が違いすぎる







文在寅


感情的な対応の代償

日韓関係がかつてないほどに緊迫している。すでに、貿易戦争に突入していると言っていい。

最近の出来事を整理しておけば、日本は8月2日、韓国を輸出管理上の優遇国(グループA)から除外する政令を閣議決定した。

これに対して、韓国政府は日本の輸出管理強化への対抗策として、(1)日本を「ホワイト国」から外すと発表した。その上で韓国では、民間レベルで(2)日本製品をボイコットしたり日本行きの旅行をキャンセルしたりする動きが出ている。

さらに韓国政府は、(3)WTOへの提訴、(4)日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新を行わない(8月24日までに通告義務)等が検討されていると報じられている。

はたして、これらの韓国の報復措置は、どこまで意味があるのだろうか。

結論を言えば、ほとんど日本経済には影響がない。それどころか、もし日本が本気で対抗策を実行し始めたら、韓国経済は潰れてしまうだろう。韓国は、感情的な対応をするのではなく、一刻も早く冷静な対応をとった方がいい。

まず、日本の輸出管理の見直し措置は、いわゆる徴用工問題に対する報復ではなく、あくまで安全保障上の措置である。

それなのに韓国政府は、「本音は、いわゆる徴用工問題の報復だろう」と公言し、対抗措置を取っている。外交的に、きわめて稚拙だ。

韓国の人とこの話をしても、同じく「本当は、いわゆる徴用工への対抗措置なんだろ」と言ってくる。外交においては、あくまで建前が重要だ。韓国側が、日本が掲げるような安全保障上の問題として扱っていれば、これほどこじれることはなかった。

つまり、日本の措置をいわゆる徴用工問題への報復と捉えているところが、韓国の外交上のミスだ。日本側の問題提起では、あくまで輸出管理の問題なので、最終需要者などを韓国側が特定し、不正な再輸出はなかったと弁明するなり、もしあっても再発防止策を講じるなどの措置を行えば、日本としても基本的には受け入れざるを得ない。

それなのに、徴用工問題と関係していると韓国が言い張るのは、韓国として問題解決をしたくない、と言っているのに等しい。

ここでは、韓国は感情的にならずに、日本がいう安全保障上の措置という問題提起に冷静に乗ったほうが得策だったはずだが、感情だけで動いたのがそもそもの間違いだ。

感情で動くのは韓国の特徴ともいえるが、文政権としては、自分たちの経済運営があまりに無残なので、国内からの批判を日本に向けたかったのも一因だろう。

文在寅政権の「失敗」はどこか

韓国の失政の代表例は、雇用政策である。文政権は、韓国内では左派政権とされるが、それが雇用政策に失敗したとあっては、面目がないだろう。この点、韓国の文政権は驚くほど日本の民主党と共通点がある。

文政権は、「最低賃金引き上げ」と「労働時間短縮」に取り組んだが、結果として失業率は上がってしまった。

最低賃金引き上げも労働時間短縮も、ともに賃金引き上げを意図した政策だ。しかし、金融緩和を行って雇用を作る前に、先に賃金を上げてしまうと、結果として雇用が失われる。典型的な失敗政策で、まさに日本の民主党政権と同じ間違いだ。

左派政党の建前は、労働者のための政治だ。このため、雇用を重視する。しかし、雇用を作るための「根本原理」が理解できていないと、目に見えやすい賃金にばかり話が行きがちだ。

金融緩和は、一見すると企業側が有利になる。そのため左派政党は、短絡的に「金融緩和は労働者のためにならない」と勘違いする。金利の引き下げは、モノへの設備投資を増やすとともに、ヒトへの投資である雇用を生み出すことを分からないからだ。

この間違いを犯す人は、金融引き締めで金利を上げることが経済成長のためになる、などと言いがちだ。例えば、立憲民主党の枝野幸男代表がその典型だ。

そうした勘違いの末、政策として実行しやすい最低賃金の引き上げを進める、という話になる。民主党政権もこれで失敗した。

政権を取ってはじめの年、2010年は、最低賃金を引き上げるべきでなかった。左派政権であることの気負いと経済政策オンチからか、前年比で2・4%も最低賃金を引き上げてしまったのだ。

前年の失業率が5・1%だったので、その値から導かれる無理のない最低賃金引き上げ率は、せいぜい0・4%程度であるのに、民主党はもったいないことをした(この点は、かつて本コラムでも概要を紹介した)。

韓国が痛手を被る構造的理由

韓国の文政権も、この日本の民主党と同様の失敗をした。2018年1月、最低賃金を16・4%引き上げたのだ。その結果、3・6%だった失業率が1年後には4・4%まで上昇し、今年の5月には4・0%と高止まりしている。

そうした失敗の結果、韓国の失業率は、安倍政権以前には日本よりも低い水準だったが、最近では逆転し、日本のほうが低くなっている。特に若者の失業率では、日韓の逆転は顕著である。


もっとも、韓国と日本とでは経済構造が異なることには留意しておいたほうがいい。

まず、日本のGDPはおよそ5兆ドルであるが、韓国はその3分の1にすぎないおよそ1・6兆ドルだ。外貨準備についても、日本は3兆1000億ドルであるのに対し、韓国は4000億ドル(2018年)と7分の1しかない。

しかも、貿易依存度(輸出入合計額のGDPに対する比率)を見ても、日韓で格差がある。

もともと日本は内需中心の国であり、貿易依存度は27・4%だが、韓国は貿易依存度が高く67・6%だ(2017年)。貿易のうち輸出だけをみても、日本の輸出依存度は14・1%、韓国は37・7%。

さらに日本の輸出先のうち、韓国のシェアは7.1%、韓国の輸出先のうち日本のシェアは4・5%なので、日韓間での輸出不振からくるGDPへの影響度は、韓国の方が日本より1・7倍大きいことになる。また、日本の輸入先のうち韓国のシェアは4・5%、韓国の輸入先のうち日本のシェアは11%だ。

つまり、日本は外需依存が少なく、韓国からの影響も受けにくいが、韓国の状況は日本とは逆なので、どう考えても韓国のほうがより大きな影響を受けることになるだろう。

また、外需依存の強い韓国では外資依存も強いので、大きな経済ショックがあると、外資が引き上げられて国内経済がガタガタになってしまう。これは、1998年の金融危機のときに経験済みである。通貨のウォンが大幅下落して対外債務負担が著しく大きくなり、それが国内経済をも毀損するのだ。

こうした観点からみると、このまま日韓で貿易戦争が進展すれば、韓国のほうが痛みが大きい。

訪日客は確かに減っているが…

韓国経済にはこのようなアキレス腱があるために、まともなマクロ経済政策を打ちにくいのも痛いところだ。

対外的な経済危機のときには、国内マクロ経済政策として、変動相場制を採用している先進国においては金融緩和によって為替安状態を作り、同時に積極財政によって国内での有効需要を創出する。

ここでポイントになるのは、金融緩和である。もし、金融緩和を行わずに積極財政だけを行うと、国内で国債発行するために金利が上がり、それが通貨高を招いて輸出減少へつながり、国内での有効需要創出が相殺されてしまう。これが、有名なマンデル=フレミング効果であり、しばしば先進国で見られる現象である。

しかしいずれにしても、韓国がこのオーソドックスな金融緩和と積極財政を行うと、為替安を誘発し、韓国経済にはかえってマイナスになる可能性があるので、金融緩和を行えない弱みがある。この点も、韓国のマクロ経済構造は日本より不利であるといえる。

日本に対する韓国の「報復措置」は、こうした条件の上に行われている。(1)日本を「ホワイト国」から外すこと、(2)日本製品をボイコットしたり日本行きの旅行をキャンセルする動き、(3)WTOに提訴する、(4)日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の更新を行わないといった施策は、日本に対して影響がないばかりか、むしろ韓国自身への打撃になる。

まず(1)について、日本にとっては痛くも痒くもない。前述した通り日本は内需依存国であり、輸出依存度が高くないからだ。しかも、日本はEUなどから優遇国として扱われているので、韓国からの扱いは、はっきり言ってどうでもいい。

では(2)についてはどうだろうか。2018年の韓国からの日本への訪問者は753万9000人と、中国からの838万人に次いで2位。3位は台湾からの475万7000人だ。

しかし、2018年の訪日外国人旅行消費額でみると、韓国は5881億円であり、中国の1兆5450億円に次ぐ2位だが、3位の台湾の5817億円と大差ない。ちなみに1人あたりの消費額でみると、中国18万4000円、台湾12万2000円なのに対し、韓国は7万8000円とかなり低い。

確かに最近、日本を訪問する韓国人は減少している。昨年6月から今年5月までの毎月の訪問者数を対前年同月比で平均してみると、韓国は4・6%減だ。

ただし、中国が10・2%増、台湾は0・3%減なので、韓国からの訪問者の減少は中国が補ってあまりある。中国からの訪問者の消費単価は韓国の倍以上なので、全国平均であれば、韓国からの訪問者数減少が日本の消費にもたらす影響は、あまり大きくないだろう。

むしろ、韓国からの訪問者数の減少が、韓国の旅行業者やLCC事業者など韓国側の企業に悪影響が出ているというレポートもある。先行き業績の悪化を懸念して、韓国LCC各社の株価も低迷しているのだ。

(3)のWTO提訴については、WTOの上級審は事実上機能していないので、当面の解決策にはならない。
また(4)について、これはそもそも米国が許さないし、韓国の軍事的協力がなくとも、アメリカとさえ情報共有できれば、日本としては何の問題もない。

日本にはまだ手がある

今後はどうなるのか。いずれ韓国はアメリカに泣きついて、政治的な仲介を頼むしかなくなる。

8月2日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合が開催されているバンコクで、日米韓外相会談があった。ポンペオ米国務長官は日韓での対話を促しただけで、積極的な仲介はしなかった。しかも日米韓外相会談の前日の1日、日米外相会談が行われており、アメリカは日本の事情を理解している。

つまり、表面上アメリカは日韓のいずれにも肩入れしないが、実際には日米両国が駄々っ子の韓国を持て余している、という状態だ。

さらに、韓国が感情的に主張する、「日本の措置はいわゆる徴用工問題への報復だ」とする構図も、アメリカからの情報をきちんと分析すれば、あまり筋が良くない。

アメリカは、いわゆる徴用工問題については「日韓協定により解決済み」という日本の立場を支持していることがすでに明らかになっている。韓国がこの程度の情報さえ入手しないで、感情的に対応しているのは呆れるほかないが、ここでも韓国の勝ち目はなく、詰みの状態だ。

日本は今のところ「安全保障上の措置」をとっているに過ぎないが、本格的に韓国経済へ打撃を与えようと思えば、まだ手が残されている。

今回の輸出規制管理の見直しは「モノ」に対する措置であるが、財務省管轄の外為法を使えば、韓国のカントリーリスクを高めることも、金融庁のさじ加減で可能になる。これは韓国経済の息の根を止めうる措置であり、発動すれば1998年の金融危機の再来になるかもしれない。

韓国は、今回の日本の措置が安全保障上の問題であるという原点に戻って、冷静に対応したほうがいい。
【私の論評】断交前に韓国のカントリーリスクを高める価値は十分ある(゚д゚)!

冒頭の記事で、高橋洋一氏がいうところの、カントリー・リスクとは、その国の政治・経済情勢によって企業などが損をしたり、資金回収ができなくなる危険性を指します。韓国のカントリー・リスクを引き上げることでは、2つの効果があります。

まず、第一は韓国の銀行は現在、ドル送金ができないという報道があります。韓国企業は邦銀を含む外国銀行のソウル支店を利用して送金しています。金融庁が保証債務のリスク区分を引き上げれば、邦銀は手を引かざるを得ず、ほかの外国銀行も手を引くことになります。韓国の外貨調達コストは一気に上がることになります。

このブログにも以前掲載したことですが、韓国紙、中央日報(日本語版)は昨年11月、韓国経済新聞の記事として、米金融当局のコンプライアンス強化の要求に対応できないため、ニューヨークにある韓国系銀行の支店と現地法人が送金中継や貸付などの業務を相次ぎ中断していると伝えています。グローバル金融の中心地ニューヨークで韓国系銀行は連絡事務所に転落しています。

第二は、カントリー・リスクの引き上げは、韓国の貿易も直撃します。

国際貿易でモノを輸入する際、『信用状』というものが使われています。企業の代金決済を保証する一種の手形のようなものです。韓国の銀行の信頼は低く、簡単には受け取ってもらえません。邦銀が再保証する形で流通しています。保証をやめれば輸入が止まります。

これまで、日韓間では「政治と経済は別」という意識が強かったのですが、文政権の韓国は、国家間の約束も守らないうえ、海上自衛隊の哨戒機に危険な火器管制用レーダーを照射し、国会議長が「天皇陛下への謝罪要求」をするなど、常軌を逸しています。

日本財界も、韓国の対応を問題視しており、1969年以降、毎年開かれていた「日韓・韓日経済人会議」も、今年5月にソウルで開催予定でしたが延期となりました。

外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は14日、ソウルの韓国外務省で開かれた金容吉(キム・ヨンギル)東北アジア局長との会談では、対立激化を回避する努力をしていくことで一致したといいますが、ボールは韓国が持っています。日本企業に実害が出る事態になれば、効果的な一打を返すしかないです。

韓国のカントリー・リスクの引き上げは、その効果的な一打になることは間違いありません。

これは、いずれ発動しなければ、韓国の外交的非はこれからも続くでしょう。元来、政権が変わったら前政権が行った政策は覆しても構わない、という発想が韓国政治の特徴です。

徴用工裁判の原告

しかし、国際社会では、前政権の外交上の約束事は次の政権も引き継がなくてはいけないのが鉄則です。日本も民主党政権時の政策の尻拭いを現政権がしています。それが国際社会における当然の姿勢です。

米国やつい最近までの英国の二大政党制においては、たとえ政権が変わったとしても、前政権の政策の6割〜7割を引き継ぐのは当然のことです。残りの4割から3割で新政権らしさを出すというのが常識です。これは、政権が変わるたびに何もかもが変わると、国民生活に重大な支障をきたすからです。

国と国の条約も同じことです。政権が変わるたびに前政権が交わした条約を反故にするというのであれば、そもそも外交は成り立ちません。政権が変わって、前政権が交わした他国と交わした条約を変えたいというのであれば、そこからが交渉です。

相手がいることですから、変えられるかどうかは定かではありません。しかし、はっきりしていることは、交渉の上で、当事者国同士が新たな条約を結ぶまでは、前の条約は生きているということで、両国とも前条約を守るというのが筋です。これは、国際社会の常識です。

日本では小村寿太郎が不平等条約を変更するどれほどの努力と年月をかけのか、知っている人はこれを当然のこととするでしょう。不平等条約ですら、勝手にすぐに破棄ということはできないのです。これが国際社会の常識です。ましてや、日韓は不平等条約を結んでいるわけではないのですから、何をか言わんやです。

小村寿太郎

これを政権交代を理由に、平気で変えられると思っているのが韓国です。日韓合意の破棄は外交的にはありえない、恥ずべき行為の極みです。そのことを韓国は知るべきなのです。

韓国にそうさせるためには、まともな手段を用いていては、できません。このブログでは、断交すべきと主張してきました。たしかに、これくらいのショックはないと韓国は態度を改めない思います。しかし、その前に、韓国のカントリーリスクを高めるという措置は実行してみる価値が十分あると思います。

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2019年8月18日日曜日

日韓対立激化、沈黙の中国はこう観察していた―【私の論評】朝鮮半島の現状を韓国一国で変えることは到底不可能(゚д゚)!


「日韓が対立しても米日韓の同盟は揺るがない」

G20大阪サミットで握手する韓国・文在寅大統領と日本の安倍晋三首相(2019年6月29日)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 日韓対立が国際的な波紋を広げるなか中国の反応も注目されているが、このたび中国政府系の著名なアジア研究者が日韓対立の影響を考察する論文を官営メディアに発表した。

 論文によると「現在の日本と韓国との対立が、両国の米国との同盟、そして米日韓3国軍事協力を崩すことはない」という。日韓両国の対立が東アジアの安全保障面での米国の立場を大幅に弱めることはなく、中国としては重大な動きとしてはみていない、という趣旨である。

 一方で、論文の筆者は日韓対立が北東アジアの安全保障態勢の再編の始まりを示唆するとして、中国には有利となる動きだとの認識も示した。

日韓対立に対する、初めての中国側の反応

 日本と韓国との最近の対立に、米国も真剣な関心や懸念を示すようになった。

 米国は北朝鮮の非核化や中国の軍事膨張に対応するため、日韓両国との同盟に基づく3国連帯を強く必要としている。日韓両国が衝突すると、その連帯が崩れることになる。日韓両国の離反が中国を利することにつながることは米国にとって大きな懸念材料である。

 では、実際に中国は今回の日韓対立をどうみているのか。トランプ政権としては中国の反応を探りたいところだが、これまで中国側が日韓対立について、公式にも非公式にも論評することはなかった。

 そんななか、中国の官営新聞「環球時報」英語版(8月8日付)に「北東アジアは今より多くのコンセンサスをみる」というタイトルの論文が掲載された。「日韓対立に対する、初めての中国側の反応」だとして、米側の一部専門家が大きな関心を寄せている。

 同論文を執筆したのは、中国黒竜江省社会科学院「北東アジア研究所」の笪志剛所長である。笪(だ)氏は中国の社会科学院で中国とアジア諸国との関係を中心に長年、研究を重ね、中国と日本、韓国との外交関係について中国学界有数の権威とされているという。

3国の同盟関係が崩れることはない


笪志剛氏
 笪氏は論文で、日韓対立に対する中国当局の見方を紹介していた。論文の主要点は以下のとおりである。

・現在の日本と韓国との離反は、貿易、二国関係全般、両国民の感情での対立に及んでいる。日韓両国ともに相手に関する誤った判断、誤った認識を抱いたことが現在の紛争へと発展した。しかし両国とも米国との絆を減らそうとしているわけではない。

・現在の日韓紛争は、米日韓3国の同盟の本質部分に打撃を与えているわけではない。日韓の貿易紛争は3国の協力全般に少なからず影響を及ぼすかもしれない。しかし3国間の軍事同盟は安定したままだろう。

・現状では、日韓対立が、米国が日韓両国と個別に結んでいる同盟を崩壊させることはない。米国が両国に及ぼしている影響力を減らすこともないだろう。米国は、日本と対立して苦しい立場にある韓国に対して、在韓米軍の経費の大幅増額を求めている。米国が対韓同盟の保持に依然として強い自信を持っていることの表れだといえる。

・日本と韓国が結んでいる韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、8月24日に改定の時期を迎える。この軍事情報共有の協定がどうなるかは重要だ。もし協定が骨抜きとなったり破棄される場合は、米日韓3国の軍事同盟関係にヒビが入ることになる。だが、それでも3国の同盟関係が完全に崩れることはないだろう。

・米国は現在の日韓対立に介入していない。日本は韓国の枢要産業分野に照準を絞り、制裁を加えた。米国も制裁や関税を他国への交渉の武器として使っている。だから日本の行動を批判する資格はないということだろう。

 以上のように笪論文は、「日韓関係の悪化が、ただちに日米同盟、米韓同盟、さらには米日韓3国の安保連帯の弱体化につながることはない」とする中国側の見解を繰り返し強調していた。この見解には、米国が「日韓対立が中国を利する」と警告することへの反論や否定が含まれているという見方も成り立つ。だが、中国側が「日韓衝突がただちに米国の北東アジアでの安全保障や軍事の政策の継続に大きな支障を与えることはない」と認識していることは確かだろう。
中国が期待すること

 また、笪論文は中国やロシアの側の動向について、次のような骨子も述べていた。

・最近、中国、ロシア、北朝鮮の間で歩調を合わせて協力する動きが増えてきた。日韓が対立する間に、中国とロシアはアジア太平洋地域で合同の戦略爆撃演習を実行した。北朝鮮は短距離弾道ミサイルを何回も発射した。3国関係の改善を表している動きといえるだろう。

・こうした動きがみられるのは、各国が独自の地政学的な戦略を有しているからである。かといって中国、ロシア、北朝鮮が国家の本質的な部分で連携したり、新たな同盟を結ぶことはないだろう。ただ、日韓対立を除いて、北東アジア諸国はより多くのコンセンサスを有するようになったといえる。

・習近平主席は、今や北東アジアの平和と安定のために関係各国が一国主義や保護貿易主義を排して共通の利益を求める段階になったと改めて宣言した。北東アジアのパワーバランスは再編成されていくだろう。

 以上のように述べるこの論文は、後半で中国の戦略目標を巧みに表明しているわけだ。つまりは、米国が後退していくことへの願望をにじませつつ、中国、ロシア、北朝鮮の協力やコンセンサスの拡大に期待するということだろう。

 だがそれにしても、現在の日韓対立が米国の対日、対韓の両同盟の根幹を揺るがすことはないだろうとする中国側の観測は注視しておくべきである。

【私の論評】朝鮮半島の現状を韓国一国で変えることは到底不可能(゚д゚)!

この見方は確かに中国の見方ですが、中国共産党の見方をすべて表しているとも思えません。その背後には、さらに何かがあるはずです。まずは、中国共産党としては朝鮮半島をどのように捉えているかを認識すべきです。

それについて、参考になることは以前もこのブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!
4月時点では、マスコミは北朝鮮のミサイル発射実験の可能性を指摘していた
この記事では、朝鮮半島の近隣諸国がいずれの国も現状維持(Status quo)を望んでいることを前提として論を展開しました。この記事から朝鮮半島を巡る近隣諸国等のStatus quoを説明する部分を以下に引用します。
さて、現代も現状維持勢力と打破勢力の相克で動きます。ただし、世界大戦のように劇的に動く時はめったにありません。では、東アジアにおいて、誰が今この瞬間の現状打破を望んでいるでしょうか。 
昨年の米朝会談で、北朝鮮は核兵器の全面廃棄と今後の核実験の中止を約束しました。約束を履行した場合の経済援助も含みがありました。 
北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。
この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。
だから、後ろ盾になっているのです。結束して米国の半島への介入を阻止し、軍事的、経済的、外交的、その他あらゆる手段を用いて北朝鮮の体制維持を支えるのです。
ただし、絶頂期を過ぎたとはいえ、米国の国力は世界最大です。ちなみに、ロシアの軍事力は現在でも侮れないですが、その経済力は、GDPでみると東京都を若干下回る程度です。
ロシアも中国も現状打破の時期とは思っていません。たとえば、在韓米軍がいる間、南進など考えるはずはないです。長期的にはともかく、こと半島問題に関しては、現状維持を望んでいるのです。少なくとも、今この瞬間はそうなのです。
では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。
さて、この状況は、基本的には現在も変わっていません。しかし、変化はみられます。北朝鮮と中国は単純に同盟国とみられていますが、現在では北朝鮮は、中国の干渉を極度に嫌っています。さらに、大きな変化としては、北朝鮮が核と弾道ミサイルを開発したことです。

しかし、これは結果として中国が朝鮮半島全体に浸透することを防いでいます。この状況は米国にとって必ずしも悪い状況ではありません。最悪は、中国が朝鮮半島全体に浸透することです。

北朝鮮が中国の干渉を極度に嫌っていることもあって、北朝鮮は米国大統領を交渉の場にひき出すことに成功しました。

一方韓国は、現状維持を破る方向に動いています。まずは、在韓米軍が駐留しているという現実がありながらも、中国に従属する姿勢をみせました。さらに、文在寅政権になってからは、北と接近して、南北統一を目指すことを強く主張しはじめました。

これについては、金正恩は本当は現状維持を望んでいるのに、何とか制裁破りをしたいのと、とにかく外貨がほしいことから、文在寅に良い顔をして、いかにも南北統一を自らも目指しているような素振りをみせました。

これにすっかり舞い上がった文在寅は、南北統一をさらに大きく主張し始めたのですが、金正恩はこれをきっぱりと否定しました。

中国共産党も当然基本的に現状維持を望んていますし、上記のようなことは理解しています。しかし、文在寅は、中国に従属しようとする一方で本気で南北統一をするということで、現状打破をしようとしています。

中国側からみれば、米国としては当然のことながらこの韓国の振る舞いを絶対に許すはずがないとみたことでしょう。仮に中国の版図内でこのようなことが起これば、中国もこれを絶対に許すはずもありません。

中国としては、現在の日韓対立を在韓米軍の韓国撤退直前の経済焦土化の前触れてあると見ているでしょう。米国は、本当に韓国から在韓米軍を引きあげることになれば、日本はもちろん米国も韓国内で経済焦土化をすると知らしめているとみているのです。

韓国もそのことに気づいていることでしょう。日本としては、韓国にすぐに経済制裁をするつもりはないものの、いざとなればできるし、いざとなれば、米国もそれができるということを韓国に悟らせるために、今回の貿易管理の措置がとられたものと、中国はみているでしょう。

そうして、日本のマスコミなどは、日韓の対立が深まったことにより、習近平はほくそ笑んでいるなどと報道していますが、むしろ中共としては、米国にはすでに経済冷戦を挑まれており、韓国に対して貿易管理の動きに出た日本は、中国に対してもこれを発動する可能性もあることを危惧していることでしょう。

何しろ中国は「製造2025」を標榜していながら、中国の製造基盤はあまりにも技術水準に高低差がありすぎます。中国は、月の裏側に無人探査機「嫦娥4号(じょうが4号)を世界で初めて、着陸させた一方で、信じ難いことに航空機などに用いられる精度の高いネジを製造することできませんし、工作機械も製造できません。

日本が中国を制裁対象とすれば、中国の製造戦略は絵に描いた餅になる

無人探査機のネジなどは無論外注していることでしょう。無論工作機械もそうでしょう。これらの輸出が止められれれば、中国はもちろん無人探査機等を製造することはできません。

日本からは、中国は様々なハイテク部品、素材、様々な用途の工作機械等を輸入しています。もし日本が米国とともに、中国を経済制裁の対象とした場合「製造2025」など吹き飛びます。

このような現状を踏まえれば、韓国は到底在韓米軍の撤退など要求できないはずです。韓国が在韓米軍を撤退させ、経済焦土化されない方法が一つだけあります。それは、韓国が、米国の中短距離核ミサイルの設置場になることです。

この場合、韓国が攻撃された場合、米国はすぐにこれに対応することができず、韓国がかなりの打撃を被ることになります。であれば、韓国がわざわざ在韓米軍をみすみす撤退させるようなことはできないでしょう。中国もそのように見ているでしょう。

韓国としては、経済焦土化を極度に恐れているとともに理不尽に感じているのですが、それを米国に直接訴えることもできず、だからこそ当面は日本に対して反日によってその鬱憤を晴らすしかないのです。

せめて、韓国の経済規模が日本の半分くらいであり、さらに軍隊が日本の自衛隊を上回る能力を持っていれば話は別ですが。結局、日米、中露、北朝鮮が朝鮮半島の現状維持を望んでいる一方、韓国だけが半島の現状を打破しようとしても到底できないということです。それを金正恩は、文在寅に強烈に知らせるとともに、自らは現状維持の破壊者ではないことを周りの国々に周知しているのです。

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