2020年1月10日金曜日

経済優遇とフェイクニュースで台湾侵食を図る中国―【私の論評】台湾のレバノン化を企む中国の試みは失敗する(゚д゚)!


中国の対台湾政策の手段は、アメとムチ、つまり経済的利益の約束と軍事的威圧の両方を使い分けることにある。1月11日の台湾における総統選挙と立法委員選挙(台湾の国会は一院制)を控え、中国は硬軟両様の手段を使い分けようとしている。


この半年間の香港情勢は、世界に対し、中国の言う「一国二制度」の実態が如何なるものかを暴露した。台湾では、蔡英文総統下の民進党政権はもともと「一国二制度」なるものを中台関係を律するものとして受け入れたことはない。

 しかし、中国の側では、香港統治に適用されている「一国二制度」は、将来、台湾を「統一」する際のモデルになるもの、と位置付けてきた。2019年に入ってからの習近平主席の1月の発言(台湾を「一国二制度」によって統一したいとの趣旨の発言)、さらには2019年6月以来続いている香港の大規模デモによる混乱ぶりは、皮肉にも、2018年11月の統一地方選挙で大敗した蔡英文の支持率を大きく押し上げる結果となった。蔡の支持率は国民党候補の韓国瑜に大差をつける状況となっているが、それは中国側の意図が一般の台湾選挙民の警戒感や危機意識を高めたことを示している。今日の状況は、中国との距離がより近いと見られている国民党にとって不利に働いているということである。

 このような中台関係全体の状況の中においても、中国としては、対台湾工作を硬軟両様の種々の手段を通じて行っている。

 中国が経済的梃を使って、台湾人を引き付けようとしていることは、咋年11月に中国政府が台湾の企業と台湾人を対象にして表明した「26項目の優遇措置」がよく示している。たとえば、台湾人が中国で就職したり、就業したりするときに、便宜を与えるというような点は若い台湾人にとっては、依然として一つの魅力になっているといわれている。蔡英文は、「26項目の優遇措置は台湾に一国二制度を強いるためのより大きな企ての一環」と言っているが、その通りであろう。

 また、フェイクニュース、偽情報を台湾内部に広く拡散し、台湾社会を分断させようとの意図も明確である。昨年4月、人民日報系の「環球時報」は、「台湾問題を解決するのに我々は本当の戦争を必要としない。中国は民進党政権下の台湾を、台湾独立勢力にとって意味のない、レバノンのような状況にすることが出来る」と述べている。これは単なる虚勢といえるだろうか。

 台湾の地方政治が深く関係する立法委員選挙においては、中国が各地の後援者のネットワークを利用し、旧来からのコミュニティーの指導者、農民団体などの票を買うことも考えられる。さらに台湾の特定メディアを引き込むため、中国政府の代理人が台湾の通信社にカネを払い、親中国の記事を書かせる、ということは一般によく知られている。

 2018年には、大阪駐在の台湾代表所の代表が、台風第21号による関西空港の閉鎖への対処をめぐる問題で非難を浴び自殺するという事件があった。実態は必ずしも明白ではないが、中国からのサイバー攻撃やフェイクニュースの流布が基になっている、と言われたことがある。

 これらのケースを見れば、今日、台湾は香港に並び、中国からの種々の浸透工作の最前線に立たされている、といっても間違いではないだろう。最近、米国と台湾がサイバー防衛強化のための安全保障訓練を主催したと報じられた。この演習には日本からも参加があったが、今後、このような機会を増やしていくことが強く望まれる。

【私の論評】台湾のレバノン化を企む中国の試みは失敗する(゚д゚)!

上の記事で、『昨年4月、人民日報系の「環球時報」は、「台湾問題を解決するのに我々は本当の戦争を必要としない。中国は民進党政権下の台湾を、台湾独立勢力にとって意味のない、レバノンのような状況にすることが出来る」と述べている』とありますが、ではレバノンのような状況とはどのような状況なのでしょうか。

ゴーン被告が無断出国 レバノンで会見
レバノンといえば、最近ではカルロス・ゴーンの逃亡で一躍有名となりましたが、レバノンについては、日本でもあまり知られているとはいえません。

レバノンは、地中海東岸に位置する、面積約1万平方キロメートル、人口420万人(推定)の国で、日本の書籍類ではしばしば岐阜県のような規模と称されます。同国では、自由な経済体制と比較的自由な言論環境の下、かつては「中東のパリ」と称されるほどの経済・文化活動が営まれていました。

また、狭い国土の中にキリスト教、イスラームの諸宗派が混在し、それぞれが地元のボスの下で自立性の高い社会を営んできたのもレバノンの特徴です。その結果、レバノンにはあまり力の強くない中央政府と、比較的自立性の高い地元の政治主体や共同体が存在することとなりました。

「あまり強くないレバノン」は、東隣にシリア、南隣にイスラエルという、地域の政治・軍事・外交上の重要国に囲まれ、その影響や軍事侵攻に悩まされてきました。さらに、かつてはパレスチナ、現在はシリアからの難民・避難民の存在は、レバノンの経済だけでなく、政治にも深刻な影響を与えています。


と、いうのも、レバノンでは国内に多数存在する宗教・宗派共同体のうち18を「公認」し、それを単位に政治的役職や権益を配分する「宗派制度」と呼ばれる不文律に沿って政治や社会が運営されているからです。

つまり、ひとたび決まった権益の配分の量・質を変更しようとすれば、「損をする宗派」やその仲間から猛反発を受けるし、パレスチナ人やシリア人のように配分の割合が「決まった後で」やってきた者たちをレバノン社会の構成員として迎え入れることも至難となったのです。

その結果、レバノンは複数の内戦と幾多の政情不安を経験してきた。そうした中、辛うじて安定や内外の情勢との均衡を維持してきたのが、「決められない政治」と「決めない政治」(『「アラブの心臓」に何が起きているのか』(岩波書店) 第4章「レバノン」立命館大学末近浩太教授)とも称されるレバノンの政治エリートたちの処世術でした。

彼らは、レバノン国内の力関係だけでなく、シリア紛争や地域の国際関係の中で生き残りを図るべく、レバノンの政治や社会の運営で「重要な決定を可能な限り先送り」してきました。

このような体制や運営手法においては、政治エリートたちは自らに配分された権益を、今度は「子分」にあたる自分と同じ「宗派」の構成員と有権者に配分するボスとなるのです。有権者は、利益誘導への返礼、或いはボスへの忠誠表明として、ボスが率いる党派への投票に動員されます。

一般のレバノン人民にとっては、こうした人間関係こそがあらゆる機会を得る上でのカギとなるし、ボスたちは「子分」が自分よりも華々しく成功するような権益の配分は絶対にしません。

従って、当然のことながら、そこには公正で中立で透明な司法も行政も立法もありません。だからこそレバノンでは2019年10月から「革命」とも称される人民の抗議行動が起きているのです。抗議行動に参加するレバノンの人々から見れば、ゴーン氏はレバノンの政治・経済・社会の運営や、様々な社会的上昇の機会を独占してきた特権階級の一人ということになるのです。

商才にたけ、世界をまたにかけて活躍する移民や経済人というのが、レバノン人について世界的に持たれているイメージであり、一部のレバノン人も「フェニキア人の末裔」と称してこうしたイメージを強調しています。

実際、そのようにして活躍するレバノン起源の経済人・芸能人も少なくありません。また、彼らの一部は、本当に「シャレにならない」経済活動(≒犯罪や陰謀)の場で名前が挙がることも少なくありません。

ただし、これは本当に世界をまたにかけて活躍しているレバノン人の自己表象の一端であり、実際にレバノンに住んでいるレバノン人が全員そういう活躍をしているわけではありません。

積極的に越境移動をし、なおかつそれを繰り返す、つまり世界をまたにかけて活躍しているレバノン人は、一定以上の所得を得ているごく少数の人々のようです。つまり、レバノンに住んでいる人々の大多数にあたる、所得が一定水準に達しないレバノン人は、出稼ぎやビジネスに限らず越境移動の経験も乏しければ、越境移動に積極的なわけでもありません。

ゴーン氏の経歴や行動様式は、現在レバノンに住んでいる一般のレバノン人の姿を体現・代表しているわけではなさそうです。では、世界をまたにかけて活躍する(つまり経済的機会や社会的上昇の機会を独占している)レバノン人とはどのような人々なのでしょうか。

それは同地で「ザイーム(アラビア語でリーダーという意味)」と呼ばれる指導的な階層に属する人々のようです。レバノンには多くの人々を惹きつける華やかさや魅力がある一方で、その内部には容易には解決・克服できない格差があるようです。

レバノン首都ベイルートの中心部で行われた増税と汚職に対する抗議集会(2019年10月21日)

さて、ここで台湾に話を戻そうと思います。中国共産党は、台湾でもレバノンのように、一部の特権階級が「決められない政治」と「決めない政治」を実行させるというのが、目標なのでしょうか。そうして特権階級の他に、分断された多くの断片に属する貧困層の人々が大勢いる社会を築こうとしているのでしょうか。

中国に支配されれば、中国自体がそのような社会を築いているので、台湾もそうなってしまうでしょう。

咋年11月に中国政府が台湾の企業と台湾人を対象にして表明した「26項目の優遇措置」発表したのは、もともと中台間において準公的と呼んでよい蔡英文政権と中国政府の間での対話のチャネルが開店休業の状況にあることにも関係があります。台湾当局から見ると、今回の優遇策は「一国二制度による統一方針」と受け取るのも無理はないのです。
台湾のメディアは香港のデモの状況を逐一報道していますが、「今日の香港は明日の台湾」になるのではないかとの危機意識を一部で呼び起こしています。目の前に迫ってきた総統選挙については、民進党・蔡英文、国民党・韓国瑜の一騎打ちになりそうな雲行きですが、中国の意図に反して、蔡英文の支持率が目に見えて上昇しているのは、やはり今日の香港情勢が大きく影響しているものと考えられます。
台湾としては、蔡英文氏が勝利した後にも、さらに民主化、政治と経済の分離、法治国家化を鮮明に打ち出し、これをもって、かつての西洋列強や日本のように大陸中国やレバノン等よりもはるかに進んだ社会を構築すべきです。さらに繁栄し、中国は大失敗し、台湾は大成功したと世界に印象づけるべきです。
世界の人々が、大陸中国やレバノンこそが社会的にとてつもなく遅れた存在であり、経済的にも社会的にもはるかに進んだ台湾のようになるべきだと納得させるべきです。
そうすれば、大陸中国の台湾レバノン化は、失敗することになります。
【関連記事】
再選意識!?トランプ大統領、イランと“手打ち”の真相 世界最強米軍への太刀打ちはやっぱり無理…あえて人的被害ない場所を標的にしたイラン―【私の論評】米国は中国への最後通牒の準備のため、イランとの係争を長引かせたくなかった(゚д゚)!



2020年1月9日木曜日

再選意識!?トランプ大統領、イランと“手打ち”の真相 世界最強米軍への太刀打ちはやっぱり無理…あえて人的被害ない場所を標的にしたイラン―【私の論評】米国は中国への最後通牒の準備のため、イランとの係争を長引かせたくなかった(゚д゚)!




ドナルド・トランプ米大統領は8日午前(日本時間9日未明)、イランによる米軍が拠点とするイラク駐留基地へのミサイル攻撃を受けて、演説した。米軍将兵に死者がいなかったことを明言し、イランに厳しい追加経済制裁を科すと表明した。ただ、軍事的報復は否定した。今後も、民兵組織との散発的な戦闘はありそうだが、ひとまず国家と国家による全面戦争は回避された。背景には、国内向けに強硬姿勢を示すものの、世界最強の米軍との戦争は避けたいイラン指導部と、大統領再選を意識して、好調な米国経済へのダメージを避けたいトランプ氏の意向があるようだ。


 「わが国の兵士は全員、無事で、われわれの軍事基地での被害は最小限にとどまった」「イランは今のところ、身を引いているようだ。これは全当事者にとって、いいことだ」

 トランプ氏は8日、ホワイトハウスで、マイク・ペンス副大統領や、こわもてのマーク・ミリー統合参謀本部議長らを引き連れ、こう演説した。

 米軍が、「テロの首謀者」としてイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のガーセム・ソレイマニ司令官を殺害したことを受け、イランは喪が明けた7日(日本時間8日午前)、報復攻撃に出た。作戦名は「殉教者ソレイマニ」だった。

 米FOXニュースなどによると、イラン側は米軍が駐留するイラクの基地に弾道ミサイルを計15発発射し、中西部アンバル州のアル・アサド空軍基地に10発、北部アルビルの基地に1発が着弾した。

 国営イラン放送は一連の報復攻撃で、米側の多数の無人機やヘリコプターを破壊し、米国人に80人の死者が出たと伝えた。

 最高指導者のアリ・ハメネイ師は首都テヘランで演説し、「われわれは彼ら(米国)の顔に、平手打ちを食らわせた」と述べた。

 表向き強硬なイランだが、実は事前に攻撃を通告していた。

 イラクのアーディル・アブドルマハディ暫定首相は、イラン側から口頭で攻撃を知らされていた。この情報を米国側に伝えた結果、米兵や軍用機などはミサイルが着弾する前に安全な場所に逃れ、死者はなかった。

 ミサイル攻撃で破壊されたのは軍用機の格納庫などで、イランが米軍に人的被害が出ないように、あえて標的を選んだとの指摘もある。

 さらに、イランは攻撃直後、米国の利益代表を務めるスイスを通じて、「(米国が)反撃しなければ、対米攻撃は続けない」との書簡も送っていた。

 背景には、世界最強の米軍の存在と、経済制裁で全面戦争などできないイランの事情がある。

 米軍は、インド洋のほぼ中央に浮かび、イランにも近いディエゴガルシア島の米軍基地に、「死の鳥」の異名を取る戦略爆撃機B52「ストラトフォートレス」6機の派遣を決定した。同機は、全長約49メートルで、全幅は約56メートルと巨大で、核兵器や巡航ミサイル、空対地ミサイルなどを大量に搭載できる。

 イラク戦争でも活躍した米原子力空母「エイブラハム・リンカーン」を中心とする空母打撃群も、中東海域に展開しているとみられる。空母の艦載機だけでなく、イージス艦や原子力潜水艦などで構成される最強の軍事ユニットに、イランはとても太刀打ちできない。


 ■トランプ「再選」意識

 米国にも事情がある。

 トランプ氏は大統領再選を目指しており、好調な米国経済を維持したい。米国は中東の原油に依存していないが、中東で本格戦争が起これば、世界経済は甚大なダメージを受ける。

 双方の思惑もあり、対立のエスカレーションは避けられた。いわゆる、国際政治上の「プロレス」だったともいえそうだ。

 ただ、国家と国家の戦争は避けられても、中東には、イランの支援する「反米」の民兵勢力が暗躍している。今後、散発的な戦闘が起きる可能性は捨てきれない。

 現に、イラクの首都バグダッドでは8日夜(日本時間午前)、米国など各国大使館などがある「グリーンゾーン」と呼ばれる地区に複数回にわたり、ロケット弾が撃ち込まれた。ロイター通信は、イラク治安当局の話として「爆発で火災は起きたが、死傷者は出ていない」という。

 今後、中東情勢はどうなるのか。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「ソレイマニ氏殺害で、米・イラン間では一時的に緊張が高まったが、いずれ関係修復に向かうだろう。イラン指導部の中にも、数々のテロを起こすソレイマニ氏を排除して、米国と手打ちをしたいと考える勢力がある。米国は『(ソレイマニ氏殺害によって)イランからの大規模な報復はない』と先読みしていたのではないか。報復の形をとらせ、イランのメンツを立てた。今後、第3次世界大戦は起きることはないだろう」と語っている。

【私の論評】米国は中国への最後通牒の準備のため、イランとの係争を長引かせたくなかった(゚д゚)!

イランと米国の対立は、やはり早期に終了しそうです。この背景には、上の記事では、トランプ氏の「再選」意識として世界経済のことが述べられていますが、それだけではないでしょう。

まずは、トランプ大統領の支持基盤である、米国福音派の存在が大きいでしょう。米国福音派は、米国にはイスラエルを守る使命があると韓変えているようですから、トランプ氏が増長するイランをそのままにしておけば、信頼を失う可能性もありましたが、本年年初からイランへの攻勢を実行したトランプ氏に対する信頼は絶大なものになったことでしょう。

米フロリダ州マイアミにある教会、キング・ジーザス・インターナショナル・ミニストリーで
ドナルド・トランプ米大統領(中央)に祈りを捧げる宗教指導者たち(2020年1月3日撮影)。
さらに、以前にもこのブログに述べたように、中国に対する最終警告として、北朝鮮への軍事攻撃を準備するため、イランとの全面戦争は極力避けたいということもあると思います。

昨年の米中貿易協議の第一段階目では、中国は米国に対して全面的な譲歩をしたことはこのブログにも掲載しました。この中国に対して協議内容を守らせることも、トランプ氏の再選には必要不可欠です。さらに、イラクよりも中国のほうが、米国にとって経済的にも安全保障にとってもはるかに脅威です。

この協議では7つの合意事項があります。この7つの合意事項のうち、7つ目は、わかりやすくいうと、6つの合意事項を中国が実施するか否かを米国が監視するというものです。これには、期限があります。協議してより3ヶ月以内です。3月中に中国は米国側に対して、中国が協議内容を履行しつつあることを米国に納得させなければなりません。

なかなか進展しなかった米中貿易協議だったが…… 
米国は、この履行が不十分であれば、中国に対してさらに制裁を強化することになるでしょう。それでも、中国が履行しなかった場合には、さらに制裁を強化することになるでしょう。

最後の最後に、どうしても、中国が履行する姿勢を見せない場合、米国としてはさらに厳しく、場合よっては軍事行動に出る場合もあるでしょう。

ただし、それは直接中国に対するものではなく、北朝鮮に対する軍事攻撃です。これについては、すでにこのブログにも掲載しているのですが、再度掲載します。

北朝鮮の金正恩の本当の望みは、金王朝の存続です。そのためには、核を手放すことはないでしょう。皮肉なことにこれが、結果として中国の朝鮮半島全体への浸透を防いでいます。

金正恩は、中国の干渉を極度に嫌っています。なぜなら、共産中国の北への浸透が強まれば、金王朝の存続が危うくなるからです。このことは、彼が実の兄金正男氏や実の叔父張成沢を殺害していることでも、良く理解できます。彼らは、中国と親しい関係にあり、金正恩は、彼らが中国の支援のもとに北朝鮮に新体制を築こうと目論んでいるという疑念を抱いていたようです。

このように、北が中国の朝鮮半島全体への浸透を結果として阻んでいるうちは、38度線も動くことなく、現状維持が継続される可能性が高いです。北朝鮮のミサイルは、日本や韓国や米国だけを狙っているのではなく、中国も標的にしているのは間違いないです。だからこそ、トランプ大統領も、北が短中距離ミサイルを発射しても、あまり問題にしなかったようです。

しかし最近の韓国の動きなどは、北と中国に接近して、現状維持を崩す動きに出ていますから、これはトランプ氏としては到底許容できないものでしょう。もしも、こうした動きに呼応して、中国・北朝鮮・韓国が協同する動きを見せた場合、現状が崩れてしまう可能性が大きいです。

そうなった場合、米国としては、北は無論のこと、韓国や中国に対して厳しい制裁を課すことになるでしょう。それでも、中北韓国がその動きを止めない場合は、米国は北朝鮮に軍事攻撃を加える可能性は否定できません。

《目の前で見た米国の「ドローン斬首作戦」…「金正恩委員長は衝撃大きいはず」》

韓国・中央日報(日本語版)は6日、こんなタイトルの記事を掲載しました。

トランプ氏の命令を受けた米軍が、中東で数々のテロを引き起こしてきたソレイマニ氏を、ドローン(小型無人機)攻撃で「除去(殺害)」したことで、北朝鮮の対米外交が変化しそうだと分析・解説した記事です。

韓国政府当局者は「米国は、外交的に解決しなければ軍事的オプションを使用する可能性があることを明確に示した」「北朝鮮は自国にも似た状況が発生する可能性がないか懸念しているはず」と語っています。記事では、正恩氏の身辺警護が強化され、当面、公の場から姿をくらますことにも言及しました。

韓国・朝鮮日報(同)も同日、《米国の斬首作戦に沈黙する北、金正恩委員長は5日間外出せず》との記事を掲載しました。

確かに、北朝鮮の反応は異様といえます。

朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、ソレイマニ氏の殺害について、発生から4日後の6日、やっと報ました。

通常なら、米国の行動に罵詈(ばり)雑言を浴びせるのでしょうが、中国の王毅外相と、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相の電話会談を報じるなかで、「中ロ外相が(米国の)攻撃は違法行為で、中東の地域情勢が著しく悪化したことへの憂慮を表明した」と伝えるだけでした。直接、トランプ氏や米軍を批判・論評することは避けました。

正恩氏は昨年末の党中央委員会総会で、米国の対北政策を批判したうえで、「世界は遠からず、共和国(北朝鮮)が保有することになる新たな戦略兵器を目撃するだろう」と強がっていました。8日の誕生日に合わせた挑発行為も警戒されていたのですが、あの勢いとは大違いです。

北朝鮮メディアが7日に報じた中部の肥料工場の建設現場を視察した金正恩

米国はかつて、北朝鮮とイラン、イラクを「悪の枢軸」と呼び、唾棄してきました。歴代米政権が、正恩氏や、父の金正日(キム・ジョンイル)総書記の「斬首作戦」を立案・検討してきたのは周知の事実です。

トランプ氏の言動にも変化が見られます。

昨年末まで、トランプ氏は「彼(正恩氏)は非核化の合意文書に署名した。約束を守る男だ」と擁護してきたが、大統領専用機内で5日、「正恩氏は私との約束を破らないと思うが、破るかもしれない」と語ったのです。

正恩氏や朝鮮人民軍の動向を監視するためか、米空軍の偵察機RC135Wが6日、韓国上空を飛行したと、朝鮮日報が民間の航空追跡サイト「エアクラフト・スポット」の情報として報じました。

実は、トランプ政権が、北朝鮮が非核化に応じない場合の極秘作戦を準備していたという指摘もあります。

このように、米軍によるソレイマニ殺害は、北にとっは米国による大きな牽制となっているようです。この警告が、功を奏して、年内に中国・北朝鮮・韓国が不穏な動きをみせなければ、米国は軍事的な手を打つことはないでしょうが、なにか動けば、米国が北に対して軍事行動をとることになると思います。

これが実行され、北朝鮮の金正恩ならびに幹部の殺害ということになれば、中国や韓国は大パニックに至ることは必定です。

ただし、軍事攻撃とはいっても、米国が北を攻めて、陸上部隊も大量に派遣して、完璧に滅ぼすまでのことはしないでしょう。あくまで、長距離ミサイルと中距離ミサイルの一部を破壊し、後は金正恩と幹部を殺害することになると思います。その後は北に体制変換を促すことになるでしょう。

これは、中国に対する米国による、最終警告になるものと思います。

【関連記事】

イラン報復、米軍基地攻撃 イラク2カ所にミサイル十数発―トランプ大統領演説へ―【私の論評】米イともに、きわめて抑制的に対処し戦争拡大を防いでいる(゚д゚)!

2020年1月8日水曜日

イラン報復、米軍基地攻撃 イラク2カ所にミサイル十数発―トランプ大統領演説へ―【私の論評】米イともに、きわめて抑制的に対処し戦争拡大を防いでいる(゚д゚)!


ソレイマニ司令官の遺族を弔問するイラン最高指導者
ハメネイ師=テヘラン、最高指導者事務所が3日提供

 イランは8日、革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍に殺害されたことに対する報復として、イラクにある駐留米軍基地2カ所を弾道ミサイル十数発で攻撃した。米側によると、米兵に死者はいなかったとみられるが、米兵の死傷者の有無によっては、米国によるイラン本土攻撃も考えられる。トランプ米大統領は8日朝(日本時間同日夜)に演説し、イランへの対応策を表明する見通し。

 トランプ氏はこれまで「米軍基地や米国人を攻撃すれば、ためらうことなく美しい最新鋭兵器をイランに投入する」などと警告してきた。それにもかかわらず、イランが弾道ミサイル発射という直接的な攻撃に踏み切ったことで、報復合戦の激化は避けられない。トランプ政権の一方的な核合意離脱から悪化の一途をたどる米イラン関係は、より危険な段階に入った。

 イランの革命防衛隊も、多数の地対地ミサイルを発射したと明らかにした。作戦名は「殉教者ソレイマニ」。声明では、米軍が駐留する国々に対し、米軍に協力すれば「標的となり得る」と警告した。最高指導者ハメネイ師は8日、「軍事行動では不十分だ。米国は戦争や分断、破壊を引き起こしており、この地域は米国の存在を受け入れない」とけん制した。

 イランのメディアは、攻撃で「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」と伝えたが、真相は不明だ。

【私の論評】米イともに、きわめて抑制的に対処し戦争拡大を防いでいる(゚д゚)!

上の記事は、イラン側の声明を一方的に掲載しているだけですので、真偽の程は確かではありません。

トランプ政権関係者によると、イランが発射したミサイル15発のうち4発は標的に届かず、イラク人の負傷が確認されています。イラクで軍事行動をとるイランの部隊が、米国への報復攻撃を意図しつつイラク人を殺してしまったということです。このイランからの攻撃はわざと標的を外した可能性が高いと分析しているようです。

イランのSima Newsが伝えたアサド基地に向けた発射されたミサイルとされる画像

イラン は華々しく米軍を攻撃した映像をばらまいて反撃したという事実と、「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」という情報で、国民を納得させた上で、事態を収拾終させたいのかもしれません。

イラン国内でナショナリズムを盛り上げ過ぎてたので米軍に対して何もしないでいれば、逆に国民から批判されることになります。しかし米国と全面戦争すると軍が壊滅することになります。 イランとしても、適当なところで鉾を収めたがっているようです。

CNN報道によると、今回のイラン軍によるイラン領内の米軍基地攻撃は事前にイラン側から予告があり、そのために米兵が適切に避難できた可能性があります。実に抑制された報復です。

イランは米国がこの攻撃に報復しなければ、攻撃を止めると言っているようです。ボールは今、トランプの側にあり、もし今回の攻撃に過剰な報復をすれば戦争は青天井でエスカレートするでしょうが、常識的な釣り合いの取れた対応であればここで収まる可能性があります。

マスコミや識者の人たちの中には、「第三次世界大戦になる!」とか「米国ガー!」と煽っている人たちもいますが、彼らはロシアがウクライナのクリミア地域に侵攻していた事実は忘れているようです。 軍事大国のロシアが侵攻していても第三次世界大戦にはなっていませんし、ましてやイラン程度で第三次世界大戦にはならないと考えるのが普通です。

世界レベルで「第三次世界大戦」がトレンド入、Siriに「第三次世界大戦はいつ始まりますか」と
  質問すると恐ろしい答がかえってくるとか

にもかかわらず、なにやらマスコミ等は「イランは何もしてないのに米国が突然要人を暗殺した」かのような話に無理やり持っていこうとしていて、歴史の書き換えとやらをまさにこの瞬間リアルタイムで目撃しているような気さえします。

マスコミなどは毎日の実施されているシリアのアサド政権の空爆に憤らないで、米国が絡んだ時だけ憤るのは何か変な思考のくせがあるようです。マスコミにも問題がありますが、解説する中東イスラム研究者や国際政治学者のほぼ全員が反米(反共和党)左派の視点しか提供しないことも問題です。反米なので親イランゆえにイランの公式発表を右から左に流すだけで、広く中東や世界から俯瞰して今回の問題を論じる人が誰もいないのは異常です。


立憲民主党枝野氏は「イラン司令官の殺害は(略)中東の安定を損なうリスクが非常に高い」と述べ、スレイマーニーの存在自体が20年以上にわたり中東の安定を大きく損なわせてきた事実に対する無知を露呈させています。知りもしない中東情勢を政権批判に利用するのは不逞不遜です。

米国もイランも本格的な総力戦をしたいわけではありません。 だからこそ、両サイドが極めて政治的で抑制的な手段を取り部分的な戦争に終始させているのに、マスコミなどが戦争だ、それも世界大戦だと煽るのは、何がしたいのか意味不明です。これは、トランプ政権への攻撃なのでしょうか。日本では、安倍総理への攻撃なのでしょうか。 この短絡思考はどうにかならないものでしょうか。

【関連記事】

2020年1月7日火曜日

日本と世界を取り巻く“不透明感” 東京五輪後に景気落ち込みの懸念…2次補正予算通過後に解散の選択肢も―【私の論評】安倍政権が憲法改正を推進したいなら、秋に異次元のサプライズを演出しなければならない(゚д゚)!


高橋洋一 日本の解き方

東京五輪の開会式の舞台となる国立競技場

2020年の日本は、経済指標が悪化するなかで東京五輪・パラリンピックを迎える。米大統領選や米中貿易戦争、英国の欧州連合(EU)離脱、中東情勢など、世界の政治や経済に影響を及ぼす事案はどう動くだろうか。

 まず国内の政治スケジュールでは、1月から通常国会が開かれる。召集日は1月20日を軸に検討されており、150日間で6月中旬までの会期となる。冒頭に補正予算が審議され、3月いっぱいまで来年度予算が審議される。中国の習近平国家主席の来日は、国会開会中の春に予定されている。

 東京都知事選は6月18日告示、7月5日投開票だ。そして東京五輪は7月24日に開幕し、8月9日に閉幕する。そして11月上旬には大阪都構想の住民投票が行われる予定だ。

 世界を見ると、1月にトランプ米大統領の弾劾裁判が上院で開かれる。2月から各州で大統領選の予備選が実施され、11月に本選が行われる。

 EUでは1月31日に英国の離脱期限が到来する。昨年の英総選挙の結果を受けて、いよいよブレグジットが実現する。

 その他の地域では、1月11日、台湾総統・立法委員選挙がある。3月には中国で全国人民代表大会(全人代)が開かれる。6月10~12日に先進7カ国(G7)首脳会議が米ワシントン郊外のキャンプデービッドで、G20首脳会議は11月21、22日にサウジアラビアでそれぞれ開催される。



 安倍晋三首相の自民党総裁としての任期は21年9月までだ。今の衆院議員は17年10月の総選挙で選ばれたので任期はやはり21年9月までとなる。衆院解散については21年に入ると「追い込まれ解散」となって不利だとみられており、20年中の可能性が高いだろう。

 通常国会で補正予算を通してから解散総選挙という選択肢も一時、話題になっていたが、実務上の制約があるうえ、秋元司衆院議員がIR(カジノを含む統合リゾート)関連で逮捕されたので、その線は薄くなった。なにしろ、現職国会議員の逮捕は、10年1月の陸山会事件における石川知裕議員以来だ。

 当面、政府と与党は、補正予算と来年度予算の成立を図り、昨年10月の消費増税による景気の落ち込みを避けたいところだ。補正予算が通れば、当面の景気の下支えになる。

 しかし、世界経済は不透明だ。米中貿易戦争は11月の米大統領選頃まで本格的な解決は期待できない。というのは、これが経済だけではなく安全保障や人権問題にも関わってくるので、議会は共和党も民主党も中国に対し強硬姿勢を取っているためだ。トランプ大統領は選挙対策としても安易な妥協はできない。

 ブレグジットによる欧州の景気後退や不透明感も気になるところだ。

 となると五輪後の20年秋に景気の落ち込みがありうるので、再び臨時国会で補正予算という議論になるだろう。そこで解散総選挙という選択肢も出てくるのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍政権が憲法改正を推進したいなら、秋に異次元のサプライズを演出しなければならない(゚д゚)!

私も、高橋洋一氏のように、通常国会で補正予算を通してから解散総選挙と睨んでいました。それについては、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応―【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!
消費税は時の与党に国政選挙での苦戦を強いてきました。導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。 
そこで有力視されるのが来年秋以降です。「増税直後の選挙は負ける」とみて、東京五輪・パラリンピックを間に挟み、増税の影響を薄める狙いがあります。年明けからは五輪準備が本格化し、物理的にも解散が難しくなります。公明党が要請した軽減税率の仕組みは複雑で、「混乱が生じれば支持者が離れる」(同党関係者)との懸念もあり、こうした見方を後押ししています。 
ただし、増税の影響が表れる10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値が発表されるのは来年の2月17日です。このため「数字が出る前に解散を打った方がいいのではないか」(自民党関係者)との声もあります。野党側は立憲民主、国民民主両党が会派合流を決めたものの、離党の動きが出るなど臨戦態勢が整わず、与党にとっては好条件です。

1月解散となると、まさに選挙戦の最中にGDPの速報値が発表されることになるわけですが、その時に何の経済対策も打っていなければ、与党が大敗北となることが予想されます。
総選挙の開票開始後間もなく、自民党大敗の趨勢が判明、当選者もまばらな
ボードをバックに質問を受ける同党の麻生太郎総裁=2009年8月31日

しかし、そのときに真水の10兆円の対策を打つことを公約とすれば、話は随分と変わってきます。特に、先日もこのブログでも説明したように、現状では国債の金利はマイナスであり、国債を大量に刷ったとしても何の問題もありません。これは、多くの人に理解しやすいです。10兆円どころか、もっと多くを刷れる可能性もあります。 
この対策とともに、日銀がイールドカーブ・コントロールによる現状の引き締め気味の金融政策をやめ、従来の姿勢に戻ることになれば、このブログにも以前掲載したように、マクロ経済的には増税の悪影響を取り除くこともできます。

安倍政権がこれを公約として、丁寧に政策を説明すれば、十分勝てる可能性はあります。来年秋以降ということになると、経済がかなり悪くなっていることが予想され、自民党の勝ち目は半減する可能性が大です。秋以降でなくても、選挙が後になれば、なるほど増税の悪影響がでてきます。 
そうなると、いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高いのではないでしょうか。
 ただしこの見立ては、実務上の制約があるうえ、秋元司衆院議員がIR(カジノを含む統合リゾート)関連で逮捕されたので、その線は薄くなりました。

こうなると、やはり高橋洋一氏が主張するように、オリンピック終了後の秋に解散総選挙という可能性がかなり高まったと考えられます。

ただし、今回補正予算が実施されるのは、4月からということで、増税してから半年ということで、秋口にはかなり経済が悪化している可能性が大きいというより、何か特別なことがない限りかなり悪化します。そうなると、選挙では経済関連でかなりの対策を打つことを公約としなければ、自民党にはかなり不利です。

上にも述べたように、消費税導入直後の1989年の参院選で自民党は大敗。10%までの引き上げを決めた旧民主党は2012年の衆院選で壊滅的敗北を喫しました。その後を受けた安倍内閣が連勝したことは、2度の増税延期と無縁ではありません。

 安倍総理は、アベノミクスで、大きな支持を得たという経緯があります。特に雇用面では若い世代などからは圧倒的な支持を受けています。多くの国民は、憲法や安保よりもまずは、自分たちの暮らし向きが大事なのです。これはどの国でも変わりません。

安倍政権が宿願である憲法改正を実現するためには、何が何でも次の選挙では、大勝し改憲勢力を2/3以上にしなければならないはずです。さらに、今後安倍政権下で、憲法改正をするつもりなら、昨年「桜を見る会問題」などで、憲法改正論議がなされなかったことから、時間の壁があり、その壁を破るためには、安倍四選が不可欠です。

そのためにも、衆院選で大勝利しなければ、四選はかなり不利です。やはり、選挙で大勝利するためには、凡庸な公約ではかなり不利になります。これを打開するためには、やはり経済面等でたとえば、異次元の金融緩和に匹敵するような目新しいサプライズでありながら、誰にでも最初から簡単に納得できるか、わかりやすく説明すれば誰もが納得できて、強く訴求できるサプライズを演出しなければなりません。

私自身は、以前考えていた1月解散、2月総選挙よりは、秋に解散総選挙のほうが、このようなサプライズが期待できると思います。



そのサプライズに関しては、このブログにいくつか掲載してきました。たとえば消費税を5%に戻すこと。国債の金利がマイナスであるため、マイナス分の金利は、発行した政府の儲けとなることから、国債を100兆円刷って、政府が金利分を設けて、その他は基金にして、国土強靭化などにも用いるとか・・・・。

さらには、日銀法を改正して、日本国の金融政策の目標は政府が定め、日銀はその目標を専門家的立場から実行する方法を選ぶことができるようにするとか・・・・。これによって、日銀の独立性は世界水準の中央銀行の独立性と同等になるわけです。

考えれば、他にもあります。たとえば、習近平を国賓としして招くことをやめるとか、防衛費のGDP1%枠を破るとか・・・・。ちなみに、防衛費を上昇させ、国内でその面に投資すれば、当然ながら景気にも良い影響を及ぼします。他にもあるかもしれませんが、まずはこれらだけでも、かなり支持率がアップすると思います。

全部とはいわなくても、このうち2つくらいでも実行すれば、大サプライズになります。これにより、次回の衆院選は自民党の大勝利となり、安倍四選も可能となり、さらには憲法改正も可能になります。

安倍政権には、秋のサプラズに期待したいです。

【私の論評】

【日本の解き方】IMFの「消費税引き上げ論」と真水「10兆円」の補正予算浮上…財務省の“絶妙”な対応―【私の論評】いまのところ、1月解散,2月選挙という可能性が最も高い(゚д゚)!

安倍首相、任期中の改憲「黄信号」 窮屈な日程…打開には総裁4選か―【私の論評】任期中の改憲には、時間の壁と、もう一つ大きな経済という壁がある(゚д゚)!

2020年1月6日月曜日

中国の軍事脅威を再びけん制したベトナム国防白書―【私の論評】これからの伸びしろが大きいベトナムに日本は貢献できる(゚д゚)!

中国の軍事脅威を再びけん制したベトナム国防白書

岡崎研究所

 11月25日、ベトナムの国防省は「2019年ベトナム国防白書」を公表した。ベトナムの国防白書の発表は、2009年以来、10年振りになる。これにより、ベトナムの国防政策の透明化が図られた。軍事予算も公表され、2018年のベトナムの国防費は58億ドル(約6300億円)とされ、これは国内総生産(GDP)比では2.36%にあたる。

 今回公表されたベトナムの国防白書に記述された南シナ海に関するベトナムの立場、考え方には、全体として特に目新しいことはない。ただ、10年ぶりに国防白書を公表し、その中で南シナ海問題を詳細に論じることにより、ベトナムの基本的考えを改めて強調し、世界にアピールすることが目的であったと言えよう。それは、この問題についてのベトナムの危機感を表すものである。アピール先の世界とは、第一に、ベトナムの立場を理解する米国、日本などの西側諸国である。第二には、紛争相手国の中国である。第三は、本来はベトナムの仲間ながら、カンボジアのように中国の代弁者のような国もいて、なかなかベトナム支持でまとまってくれない ASEAN(東南アジア諸国連合)であろう。

 南シナ海におけるベトナムと中国の紛争の歴史は古い。例えば、西沙諸島(別名パラセル諸島)では以前より中越間の武力衝突があり、1974年には中国が最後のベトナム軍を追放し、中国軍の駐屯地を設営している。一方、ベトナムは、2018年に総工費180万ドル(約1億9000万円)をかけてパラセル博物館を建設し、パラセルがベトナム領であることをアピールしている。 

中国・ベトナム間で衝突が起こった西沙諸島(別名パラセル諸島)

 2007年には、中国艦船がベトナム漁船を銃撃する事件が起きた。2017年には、ベトナムがスペインの石油大手レプソルに南シナ海での石油開発権を与えたが、中国の圧力で開発を断念している。本年2019年7月、中国の海洋調査船が海警局の艦船を引き連れてベトナムのEEZ(排他的経済水域)に入り、ベトナムが抗議したところ、10月に作業が終了したとして退去した。

 南シナ海の紛争に対処するため、ASEANと中国はかねてより南シナ海の行動規範を作るべく話し合いを行い、本年11月の首脳会議で行動規範の今後2年以内の策定を目指す方針で一致した。ただしASEANが国際海洋条約に基づいた規範を求めているのに対し、中国は法的規制のないものを目指しているなど、両者の見解がどこまで一致しているかは定かでなく、行動規範が合意されるとしても同床異夢的なものになる恐れがある。

 ベトナムは、南シナ海をはじめとして中国の軍事的脅威を受けている。国防白書が「ベトナムは海軍、沿岸警備隊、国境警備隊、国際機関の艦船がベトナムの港を訪問したり、修繕、必要物資の調達のためベトナムの港に立ち寄ったりすることを歓迎する」と述べているのは、中国の脅威に対する一つの牽制とみてよいだろう。

 日本にとってベトナムは国際海洋の法的原則の遵守で利害を同じくするなど、東南アジアで重要な友邦国であり、ベトナムとの戦略的関係の強化は必要であろう。本コラムの2018年6月15日付「中国と粘り強く戦うベトナム、日本ができること」でも触れたが、日本とベトナムは共に「自由で開かれたインド太平洋地域」を推進する海洋国家である。既に日本は、ベトナムに対して海上保安庁やJICA等様々な機関を通じて、海洋の安全保障に関する国際協力を行なってきた。能力構築支援等、中長期的に継続することによって成果があがるものもある。今後もこれらの支援を維持、発展させることが、インド太平洋地域の平和と繁栄につながるだろう。

【私の論評】これからの伸びしろが大きいベトナムに日本は貢献できる(゚д゚)!

米中貿易対立の行方には世界が注目しています。5Gに代表されるように、中国ファーウェイの進める技術覇権戦略に対し、トランプ政権は全面戦争もいとわない姿勢を見せています。そのような米中対立の激化から「漁夫の利」を得ようとしているのがベトナムです。

ベトナム人の耐久力の強さは歴史が証明しています。フランスの植民地から脱却し、中国との国境戦争にも負けず、ベトナム戦争では「世界最強」とうたわれた米軍を追い出し、独立を勝ち取ったことは記憶に新しいです。

米中貿易戦争の煽りで、米国から中国製品が締め出される恐れが日に日に大きくなっているため、中国に進出していた外国企業や米国市場で大儲けしていた中国や香港の企業が相次いでベトナムに製造拠点を移し始めています。

サプライチェーンが大きく変動するなかで、「チャイナ・プラス・ワン」の代名詞ともなったベトナムの占める役割は拡大の一途をたどっています。


ベトナムの強みは政権の安定と経済成長路線にほかありません。2019年のGDP予測は6.7%と高く、インフレ率も失業率も4%を下回っています。しかも、地方の少数民族の貧困は問題はありますが、国全体で見れば貧困率は1.5%にすぎず、周辺の東南アジア諸国とは大違いです。

特に注目株といわれるのがビン・グループです。ベトナム最大手の不動産開発やショッピングモール、病院、学校経営で知られる企業ですが、昨年、ベトナム初の国産自動車製造会社ビン・ファストを立ち上げ、2019年から販売を開始しました。また、同社はスマホ製造も開始し、韓国のサムスンへの最大の供給メーカーの座を獲得し、自前のブランドで国際市場へ打って出る準備を着々と進めています。

そんな活気溢れる若い国に魅せられ、米国のトランプ大統領はすでに2度も足を運んでいます。 日本は昨年、ベトナムとの国交樹立45周年を祝ったばかりで、安倍首相も「トランプ大統領に負けてはならぬ」と2度の訪問を実現させています。

また、年明け早々茂木外務大臣はASEAN=東南アジア諸国連合の議長国、ベトナムを訪問してミン外相と会談し、中国が南シナ海で海洋進出を強めていることへの懸念を共有し、海洋安全保障で緊密に連携していくことで一致しました。

ことし最初の外国訪問として東南アジア4か国を歴訪している茂木外務大臣は日本時間の6日午後、ベトナムの首都ハノイでミン外相と会談しました。

会談で茂木大臣がことしベトナムがASEANの議長国と国連安全保障理事会の非常任理事国であることから「国際的なパートナーとして特に重要視している」と述べたのに対し、ミン外相は「日本の主導的で積極的な役割を歓迎する」と応じました。

そして両外相は中国が南シナ海で海洋進出を強めていることへの懸念を共有したうえで、海洋安全保障の分野で緊密に連携していくことで一致しました。

また北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返していることを踏まえ、完全な非核化に向けた連携を確認しました。

さらにベトナムも参加するTPP=環太平洋パートナーシップ協定の参加国拡大や、両国のほか、インドや中国など合わせて16か国によるRCEP=東アジア地域包括的経済連携の早期妥結に向けた協力も確認しました。

日本ではあまり知られていませんが、ベトナムの外交手腕はしたたかというか、小国の常として、そうせざるを得ない部分があります。日本にとっては拉致問題が未解決のために国交正常化交渉が進まない北朝鮮とも、親密な関係を構築しています。

金正恩労働党委員長自らが「ベトナムに学べ」と大号令をかけているほど、北朝鮮におけるベトナムの存在は大きくなる一方です。昨年2月に開催された2度目の米朝首脳会談も、ベトナムのハノイが舞台となりました。

要は、米国とも、中国、北朝鮮とも、はたまたロシアや日本ともがっちりと手を握っています。それが未来の大国ベトナムの真骨頂でもあり、欠点でもあるところです。

そのようなベトナムが今、もっとも力を注いでいるのがIT産業の育成です。2012年に「科学技術に関する国家戦略」を策定したベトナム。そこで掲げられた目標は「2020年までにGDPの45%をハイテク産業で生み出す」という野心的なものです。この方針の下、情報技術省が中心となり、国内のIT関連企業の育成が始まりました。

もともと「新しいもの好き」の国民性で知られるベトナム人です。国内6000万人のネット利用者の大半にとって、フェイスブックとユーチューブが欠かせません。特にフェイスブックの利用者は急速に伸びており、5800万人に達し、世界では7番目となったといいます。

また、メッセージ送信アプリのザロはベトナムでは3500万人が利用しており、中国のテンセントの傘下にあるWeChatやフェイスブックが運用するWhatsAppより人気が高いです。

そうした外国のアプリに依存するのではなく、ベトナム独自のソーシャルメディアを広める方向をベトナム政府は打ち出しました。「2022年を目標に国産のIT技術でソーシャルメディア市場の70%を押さえる」ことが決定されました。
今後ビジネスの主流に躍り出るに違いないネット販売の分野でも、自国企業を支援する考えを鮮明に打ち出しています。そのため、この分野では圧倒的なシェアを誇る中国のJD.comが、ベトナムのローカル企業のティキへの投資を決めたほどです。

そうしたなか、ベトナム最大の民営企業であるビン・グループも新たな動きを見せ始めました。人工知能(AI)とソフトウェア開発を専門にする新会社を立ち上げるというのです。

ビン・グループ会長 ファム・ニャット・ブオン氏

その名は「ビンテック」。米国のシリコンバレーのベトナム版を目指すという触れ込みです。ビッグデータの活用を主眼とし、関連するハイテク分野を先導するとの方針が発表されました。

こうした動きは明らかにベトナム政府の標榜する「2020年国家戦略」に沿ったものです。実は、こうした国家戦略を立案、推進する要役を果たすのが情報技術省であり、そのトップに就任したのが元ビエッテルの社長のフン氏。ビエッテルといえばベトナム最大のテレコム会社で、その影響力はミャンマーなど周辺の途上国に広く及んでいます。

彼らの意図する戦略はグーグルやフェイスブックに流れている莫大な広告収入を、ベトナム企業に引っ張ろうとするものです。SNSが急速に拡大するベトナムでは毎年、3億7000万ドルの広告収入が発生しています。しかし、現状では、これらの収入はすべ米て国企業に流れているため、なんとしてもその流れを変えたいということです。

とはいいながら、これはベトナムが国家を挙げて推進するIT革命の一端にすぎません。まだまだ新たな新規事業が目白押しです。医療や教育の分野もしかり、農業や観光の分野もしかりです。そんな実験国家でもあるベトナム。どこまで未来への夢が実現できるのでしょうか。また、そのなかで日本がどのような役割を担えるのでしょうか。

日本はベトナム産の農産物の輸出拡大に欠かせない検疫や食の安全検査を改善するために、12億円の資金援助も約束しました。それでなくとも、経済的に豊かになったベトナムでは消費者の健康志向が強まっています。

農薬や化学肥料を使わない日本式の無農薬、有機栽培の食材への関心と需要は今後、大きく伸びるに違いありません。安全安心を売り物とする日本の食材は現地消費者の間では高い評価を得ています。

ベトナムでは一昨年末に実施された世論調査で、消費者の82%が「2018年は個人所得が増えた」と回答し、63%が「2019年はお金を使うには良い時期だ」と述べていました。それだけ、懐具合に自信を抱いているというわけです。

もっともお金を使う予定の品目は何かと聞くと、40%の回答は「健康増進に役立つもの」といいます。ベトナムでも日本人の健康長寿ぶりはよく知れ渡っています。日本製の健康食材や健康グッズは化粧品と並んで売れ筋です。この分野での日本ブランドは圧倒的な強みを発揮し続けるでしょう。
日本への熱い期待と信頼を寄せるベトナム。2018年には新規株式上場による資金調達額でシンガポールを抜くという快挙を達成しました。この「未来の大国」との関係をより深化させることが、日本の未来を大きく左右するに違いありません。ベトナム航空では日本路線にボーイングの最新鋭大型機を投入し、人的・経済的結びつきを強める上で一役買っています。

機を見るに敏なベトナム人。日本と共に「第4次産業革命」を進める計画も明らかにしました。頼もしいパートナーといえます。急成長を遂げるアジア市場のダイナミズムを取り入れる上でも親日国ベトナムとの連携は欠かせないです。
日本は、自由で開かれ、国際法秩序に基づく海洋を維持するという普遍的価値を米豪英仏等と共有している。そして今、この価値観とヴィジョンを、ベトナムとも共有する。
南シナ海で中国と領有権を争っているベトナムであるが、中国は一方的に人工島を建設し、そこを「防衛」という名目で軍事化している。中国を刺激しないように、「中国」という固有名詞こそ上げないが、中国を意識して、日本がベトナムを支援し、ベトナムも日本に感謝していることは、明らかです。
ベトナム・中国国境

ベトナムは海洋のみならず、陸でも中国と国境を接しています。かつて中越国境紛争もありました。山にある中越国境線上に「平和の門」が設置されています。これは1998年頃の話ですが、中国とベトナムそれぞれの兵士が監視していたのですが、中国は、毎日、その「平和の門」を少しずつベトナム側に移動させたそうです。
すなわち、中国は、徐々に徐々に自国の領土を広げてきたのです。ベトナム側は、負けじと毎日、その「平和の門」を元の位置に戻したと言います。ベトナム人は辛抱強いのでしょう。そして、おそらく、ベトナム戦争で大国の米国を「名誉の撤退」に追いやったように、大国に対しても毅然と戦う粘り強さを持ち合わせているのでしょう。

日本は、そのベトナムを様々な角度から支援しています。特に、南シナ海をめぐる海洋安全保障の分野では、すぐに軍事衝突にならないように、海上保安庁の役割が大きくなっています。

以前、ベトナムの海上警察はベトナム海軍に入っていましたが、それを別組織にして海上保安庁のような組織を創設することは、日本が知見を与えたものです。巡視艇供与はハード面の支援ですが、こういうアイデアを出すというのは、目に見えにくい日本のソフト・パワーでしょう。

今後も、日本の海洋大国としての知見や経験は、インド太平洋地域の中小諸国に、多々役立つでしょう。そうすることで、国際社会が求める「自由で開かれた海洋」が保たれることになるのでしょう。日本は経済だけではなく、安全保証の面でも、これからの伸びしろの大きいベトナムに貢献することができます。

【関連記事】

2020年1月5日日曜日

米vsイラン“一触即発”状態! 殺害された司令官は「対米テロ首謀者」 米大使館近くにロケット弾4発、トランプ氏「イランが報復したら…」―【私の論評】米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらない(゚д゚)!

米vsイラン“一触即発”状態! 殺害された司令官は「対米テロ首謀者」 米大使館近くにロケット弾4発、トランプ氏「イランが報復したら…」

トランプ米大統領の指示で殺害されたイランのソレイマニ司令官を悼み、デモを行うテヘラン市民


 米国とイランの緊張がさらに高まっている。イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のガーセム・ソレイマニ司令官が米軍に殺害された現場となったイラクの首都バグダッドで4日、米大使館近くにロケット弾4発が撃ち込まれたのだ。一方、米政府は「ソレイマニ氏=対米テロの首謀者」と認識しており、米国内にはドナルド・トランプ大統領の判断を支持する声も多い。トランプ氏は同日、報復への徹底抗戦を警告した。日本の左派メディアの「反米」報道だけでは、状況を見誤りそうだ。

 「米国に死を!」

 バグダッドで4日行われたソレイマニ氏の葬列の行進開始に合わせて、市民数千人が街頭で弔意を示す一方、こう反米色をあらわにした。

 こうしたなか、バグダッド中心部の米大使館近くなど3カ所に4日、ロケット弾計4発が撃ち込まれた。死者は確認されていない。犯行声明は出ていない。イランはイスラム教シーア派の大国だが、隣国イラクにもシーア派は多数いる。

 イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐(ふくしゅう)」が待っていると米国に警告している。中東地域の米関連施設が攻撃目標となるとの見方が強い。

 これに対し、米国の理解は違う。

 トランプ氏は、攻撃に踏み切った根拠について、「ソレイマニ氏が、イラクとシリア、レバノン、中東にいる米外交官と米軍将兵を今にも攻撃しようとしているとの確度の高い情報があった」「攻撃は戦争を阻止するためだ。戦争を起こすためではない」「米国民を守るために、すべての措置を講じる」と声明(3日)で説明した。

 さらに、トランプ氏は4日のツイッターで、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告した。米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めている。

トランプ大統領

 日本の左派メディアは、ソレイマニ氏について「イランの国民的英雄」「ハメネイ師に次ぐナンバー2の実力者」などと伝えているが、これだけでは日本人をミスリードする危険性がある。

 米CNN(日本語版)は4日、ソレイマニ氏が率いた「コッズ部隊」を「米国からは外国テロ組織と見なされている」とし、「国防総省は、ソレイマニ司令官と指揮下の部隊が『米国や有志連合の要員数百人の殺害、数千人の負傷に関与した』としている」と伝えた。

 英BBC(同)も同日、「米政府からすれば、ソレイマニは大勢のアメリカ人を死なせてきた、血染めの張本人だった」と解説した。

 ともかく、日本がエネルギーを大きく依存する中東の情勢が緊迫しているのは間違いない。

【私の論評】米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらない(゚д゚)!

日本メディアにはソレイマニがさも立派な人物だったと強調する記事が多いようです。そこまでいかなくとも、あたかも先進国などのまともな軍隊の司令官のような扱いをするのが多いようです。

それを読んだ一般人はそんな立派な人物を殺したトランプは愚かだ、トランプのせいで戦争が始まると考えるのではないかと思います。ソレイマニが最恐テロリストである事実は、ほとんど指摘されていません。

イランではヒジャーブをとった女性が禁錮刑となり、同性愛者が処刑され、11月に開始した反体制デモ参加者2000人近くが革命防衛隊に殺害されています。

私も一昨日、このブログの記事で「ソレイマニ司令官」という表現をしてしまいましたが、無論ソレイマニは、イラン正規軍の司令官でも、ましてや先進国の正規軍の司令官のような存在でもないので、この表現は良くなかったと反省しています。「革命防衛隊というテロリストのリーダー」あたりが穏当な表現だったと思います。

さて、ソレイマニ氏殺害に続き、上の記事にもあるように、トランプ大統領は、イランが報復した場合、イランの重要施設を含む52カ所を短時間で攻撃し「大きな打撃を与える」と警告しています。さらに、米軍部隊約3000人を中東に増派する方針も決めているとあります。

では、米国とイランの対立が戦争にまで拡大するかといえば、そのようなことはないと思います。

そもそも、米国にとっては中東はさほど重要ではありません。それを示すデータなどを以下に掲載します。以下に中東の名目GDPを掲載します。


これを見ると、サウジアラビアがトップであり、石油で儲けた王族などがイメージされ、さもありなんと思いがちですが、サウジアラビアのGDPは、昨日の記事でも掲載したように、世界で18番目です。

ところが、昨日もこのブログで述べたように、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

ちなみに、サウジアラビアのGDPの規模は日本の県と比較すると、ほぼ福岡県相当です。

無論、経済の大きさだけで、米国にとっての中東の重要度を推し量ることはできませんが、それにしてもこの程度ということを認識しておくべきです。

では、なぜ米国が中東をかつてはかなり重視して、米国中央郡を中東に配置していたかといえば、やはり中東が世界最大の石油の輸出国だったからです。そうして、米国は石油輸入国だったからです。

ところが、この状況も昨年から変わりました。米エネルギー情報局(EIA)が昨年11月29日発表した統計で、9月の米国の原油・石油製品の1日当たりの輸出量が、輸入量を上回ったことが分かりました。シェールオイルの生産増が輸出を押し上げました。米ブルームバーグ通信によれば、単月で純輸出国となるのは政府の記録が残る1949年以来、70年間で初めてです。

原油市場では、米国によるシェールオイル増産が相場の押し下げ要因になっています。一方、中東地域への依存度が低下することで同地域に対する米国の関与が薄まり、地政学的なリスクが高まる恐れもあります。
9月の輸入は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やペルシャ湾地域などからの分が大きく減り、前年同月比約12%減に落ち込んだ。これに対し輸出は約18%増となり、1日当たりで8万9000バレルの輸出超過となりました。

この傾向は続き、米国は2020年には年間でも原油・石油製品の純輸出国になる見通しです。エネルギー市場で米国の存在感が高まり、原油価格を下押しする圧力になります。米国の中東への依存が減り、トランプ政権の外交戦略にも影響する可能性があります。

米シェールオイルの最大鉱区パーミアン盆地にある原油貯蔵タンク。米テキサス州

ただし、中東に関しては、争乱の耐えない地域であることや、米国や同盟国に対するテロを目論む組織も多数存在することから、米国が全く関与しなくなるということはないでしょう。

さらには、トランプ大統領の支持基盤である米国福音派は、イスラエルを守ることは米国の使命であると考えているようで、この面からもトランプ大統領はこれを疎かにできないという背景もあります。

ところが、昨日も述べたように、今や中国のGDPは米国に次いで第二位で、一人あたりのGDPは未だ中進国の中でも低いレベルなのですが、中国共産党は、その全体の経済力を自由に使うことができるということで、現状では、世界で唯一米国に経済的にも、軍事的にも脅威を与える存在です。

であれば、昨日このブログでも掲載したように、やはりトランプ政権は、中国に対峙することを最優先順位においていると考えるべきです。

米中の貿易交渉第一次合意の結果について、米国は監視を続け、3ヶ月後(今年3月)には判断を下します。これを過ぎでも、中国が合意内容を守らない場合は、米国は無論対中国制裁を上乗せすることになります。それでも、守らなければさらに厳しい制裁を課すことになるでしょう。

それでも、WTOに加盟した中国が、体裁だけ整えて結局約束を守らず、WTOそのものを無意味にしてしまったことを米国は悔いています。

今回米中貿易協定を中国が結局反故にした場合、米国は思い切った制裁手段に出ることが予想されます。一つは、かつてなかったようなほどの大規模な金融制裁です。もう一つは、見せしめのために、北朝鮮に軍事攻撃を仕掛けることです。

昨日も述べたように、北への軍事攻撃も、全面戦争にはならないでしょうが、それにしても金正恩ならびに幹部の殺害もしくは捕獲と、核施設の破壊はするでしょう。どの程度の破壊になるかは、未知数ですが、少なくとも長距離ミサイルは確実に破壊するでしょう。

これを実行する可能性は十分あります。そうなると、習近平とその取り巻きにはかなりの脅威を与えることができます。

ただし、これも今年の3月を過ぎてすぐということでないでしょう。北朝鮮は中国の干渉を嫌っているため北朝鮮とその核が、朝鮮半島全体への中国の浸透を防ぎ、結果としてバランスが保たれてきました。そのバランスが崩れるか、あらかじめバランスが崩れることが予想された場合は、米国は躊躇なく北朝鮮に武力行使するでしょう。それが、年内になる可能性もあります。

いずれにせよ、米国の優先は中東よりも中国、それは今年も変わらないでしょう。これが変わらない限り、習近平と中共幹部は枕を高くして寝ることはできないでしょう。

2020年1月4日土曜日

今年、米国が北朝鮮に軍事攻撃の可能性も…トランプ再選で中国共産党崩壊が加速か―【私の論評】年始早々のソレイマニ氏の殺害は、中国との本格対峙のための前哨戦か?

今年、米国が北朝鮮に軍事攻撃の可能性も…トランプ再選で中国共産党崩壊が加速か


トランプ大統領

 2020年が幕を開けた。

 19年は日韓関係が戦後最悪の状態を迎えたといわれ、18年に続き米中貿易戦争が世界経済の大きなリスクとなった。しかし、12月には安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領が1年3カ月ぶりに会談を行い、米中間の通商協議では第1段階の合意がなされるなど、事態は少しずつ動き出しつつある。

バブル崩壊の中国を追い詰める米国

 では、20年はどう動くのか。

 まず、米中合意に関しては、アメリカが1600億ドル相当の中国製品に対する関税発動を見送るとともに1200億ドル相当の中国製品に対する関税を従来の15%から7.5%に引き下げ、中国はアメリカ産の農産物を320億ドル追加購入し、さらにエネルギーやサービスの購入も増やすという内容だ。

 これは、いわば「額」に対する合意であり、問題の本質である中国の構造改革にまでは踏み込んでいない。また、中国側が大きく妥協したことにより合意に至ったが、その内容を中国側が履行しなければ、アメリカは再び関税強化に踏み切ることを明言している。さらに、複数回に分割される可能性も浮上している第2段階の合意についても、アメリカは中国が第1段階の合意内容を履行してからだとしている。つまり、交渉の本番は今年ということだろう。

 そもそも、アメリカは中国に「外国企業の企業活動の保証」「知的財産権の保護」「資本移動の自由化」「為替の自由化」「国有企業の解体や不正な産業保護の廃止」を求めており、中国の国家資本主義を問題視している。これは単なる貿易問題ではなく文明と文明の衝突であり、アメリカが最終的に中国共産党の崩壊を狙っている以上、今後も終わりなき戦いが繰り広げられるのであろう。

 19年6月から始まった香港デモが長期化し内政に火種を抱える中国は、経済面でも苦しい状況が続いている。企業物価指数が下落し消費者物価指数が上昇しており、景気悪化の中で物価が上がるスタグフレーションの状態にあるのだ。また、民間企業のデフォルト率が過去最高を記録し、高額消費の流れを示すといわれる自動車販売台数も17カ月連続で前年割れとなるなど、さまざまな経済指標を見る限り、バブル崩壊が顕在化している。

 一方、アメリカは11月に香港での人権尊重や民主主義の確立を支援する「香港人権・民主主義法」を成立させ、12月には台湾への武器供与や軍事支援などを盛り込んだ「国防権限法」を成立させるなど、中国に圧力をかけている。いずれも中国は強く反発しているが、中国のもうひとつの火種である新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧に関しても、アメリカは「ウイグル人権法」を成立させる見込みであり、中国にとっては分の悪い戦いが続くことになるだろう。

 また、1月11日には台湾総統選挙が行われるが、現職の蔡英文総統が優勢と見られている。独立派の蔡総統が再選を果たせば、中国にとって向かい風となることは確実だ。

米国が北朝鮮へ軍事行動に出る可能性も

 選挙といえば、今年はアメリカ大統領選挙イヤーである。現状では民主党に有力な候補者がおらず、ドナルド・トランプ大統領の再選が有力視されているが、仮にトランプ政権が2期目に突入すれば、中国および北朝鮮への対応はますます厳しいものになるだろう。

 19年2月に行われた米朝首脳会談が決裂に終わって以来、北朝鮮の非核化交渉は不透明な状態が続き、金正恩朝鮮労働党委員長は再び弾道ミサイル発射を繰り返すなど、18年の米朝合意は事実上の白紙に戻っている。これは、北朝鮮がミサイルおよび核開発を停止し、その間はアメリカが北朝鮮の安全を保証するという内容であったが、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼試験を行った可能性も取り沙汰されている。

 そのため、北朝鮮は自ら安全保障を放棄しており、条件的にはアメリカが軍事オプションを行使してもおかしくない状況をつくり出しているわけだ。アメリカとしても、この状況を放置しておくわけにもいかず、なんらかの行動に出る可能性はあるだろう。

 いわば、北朝鮮は対米融和路線から崖っぷち外交に逆戻りしたわけだが、その北朝鮮にすり寄る姿勢を見せているのが韓国だ。

 昨年、日本の輸出管理強化に反発して軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の一方的な破棄を通告したものの、失効当日になって「破棄通告を停止」するという離れ業を見せた韓国は、文大統領が指名したチョ・グク前法相が数々の不正疑惑によりスピード辞任し逮捕寸前まで追い詰められるなど、青瓦台と検察当局との対立が深まっている。任期5年の折り返しを迎えた文政権は4月に総選挙を控えており、国内世論の支持を得るために、さらに反日的な姿勢を強めるとも見られている。

 また、日本は19年の天皇譲位に伴う改元に続いて、20年も記念すべき年となる。夏に東京オリンピック・パラリンピックが開催され、それに先立ち、春には次世代通信規格「5G」の商用サービスが始まる。

 また、五輪前の7月には東京都知事選挙が控えており、11月には安倍晋三首相の連続在職日数が大叔父の佐藤栄作氏を超えて歴代1位となる予定だ。安倍首相はすでに19年11月の時点で通算在任日数で歴代1位を記録しているが、12年12月から続く連続在職日数でも憲政史上最長となるかどうかが注目される。

英国、いよいよEU離脱へ

 イギリスのEU(ヨーロッパ連合)離脱も、20年の世界の関心事のひとつだ。12月に行われた総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる与党・保守党が圧倒的勝利を収め、1月31日の“ブレグジット”がほぼ確定した。2月以降は完全離脱の準備のための「移行期間」に入り、年末までにEUとの間で新たな自由貿易協定で合意するという課題は残っているものの、長期間の混乱に終止符が打たれることの意味は大きいだろう。

 もともと「栄光ある孤立」を外交方針としてきたイギリスは、ヨーロッパ大陸を捨てたことで、今後はアメリカをはじめとする「ファイブ・アイズ」(アメリカ、イギリスのほかにカナダ、オーストラリア、ニュージーランド)との関係を重視する戦略に転換するものと思われる。

 また、EUに加盟している以上は他国との貿易協定を結ぶことはできなかったが、今後は個別の貿易協定交渉も前に進むことになるだろう。日本との間でもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加を前提とした交渉が進んでおり、安全保障に関しても共同声明により、すでに準同盟関係が構築されている。また、ブレグジットが確定したことで、イギリスは元宗主国である香港の問題に関しても積極的に関与する体制が整ったといえる。

 いずれにせよ、20年は米大統領選とブレグジットのゆくえが世界的な注目を集め、同時にアメリカが中国および北朝鮮とどのようなディール(取引)を見せるのかが重要なポイントとなりそうだ。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】年始早々のソレイマニ氏の殺害は、中国との本格対峙のための前哨戦か?

中国情勢に関しては、このブログでも昨年は様々な内容を掲載させていただきました。その中でも今後の対米関係を最も予感させると思われる記事のリンクを以下に掲載します。
米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!
      昨年12月13日に北京で会見する財政相副大臣の廖岷。重要な会見の
         はずなのに出席者はいずれも副大臣級ばかりだった
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。米中貿易「第1段階合意」には7項目の合意事項があります。その合意事項の(7)の内容が今後の中国を運命づけるものとなったと私は考えています。
合意項目(7)の「双方による査定・評価と紛争処理」の意味は自ずと分かってくる。要するに今後において、中国側が自らの約束したことをきちんと実行しているかどうかを「査定・評価」し、それに関して双方で「紛争」が起きた場合はいかにそれを「処理」するかのことであろう。中国側の発表では一応「双方による査定・評価」となっているが、実際はむしろ、アメリカ側が一方的に中国側の約束履行を「査定・評価」することとなろう。
これは、はっきり言えば、米国による合意6項目が中国により履行されているかどうかを米国が監視を意味します。企業などでたとえると、外部から監査するようなものです。

米国はこの監査を本気で行うつもりです。その覚悟をナバロ氏やライトハイザー氏が述べています。
中国が「第一段階」の貿易協定に違反すれば米国は一方的報復を行う可能性がある、とホワイトハウスのピーター・ナバロ通商製造政策局長は15日、FOXニュースのエド・ヘンリーに語りました。 
https://www.foxbusiness.com/markets/us-retaliation-phase-one-trade-china
「私が合意で最も気に入っている部分は強制の仕組みだ。それによってもし中国が合意に違反しそれに関して何もできなければ、我々は90日以内に、基本的に一方的に報復できる」とナバロは語った。「だからそのことについては強力な合意だ。中国が約束した2,000億ドル分の農産物、エネルギー・サービス、そして製品を買うか見てみよう。それは最も容易に観察できることだろう――見たままだのことだ」
ナバロは視聴者に、米国がまだ3,700億ドル相当の中国製品に関税をかけていることを思い出させました。 
「これは中国に対話を続けさせるための保険であると同時に、我々の技術的重要資産に対する保護でもある」とナバロは語りました。
ピーター・ナバロ通商製造政策局長

ロバート・ライトハイザー米国通商代表は15日朝のCBS「Face the Nation」で同じことを指摘し、合意には「本当に確かな強制力」があると説明しました。
「最終的にこの合意全体が機能するかどうかは、米国ではなく中国で誰が決定を行うかによって決まるだろう」とライトハイザーは語りました。「強硬派が決定すれば1つの結果を得ることになる。改革派が決定を行うなら、それが我々の希望だが、別の結果を得ることになる。これがこの合意についての考え方であり、2つのとても異なる制度を両者の利益に統合しようという中での第一歩だ」
どのような反応だとしても「相応」となるとライトハイザーは述べました。
これは、以下の6項目に関して、米国が監視するということです。 
 (1)知的財産権に関する合意、(2)中国による技術移転の強要の是正、(3)食品と農産物に関する合意、要するに中国側がアメリカ側の要求に応じてアメリカから大豆や豚肉などの食品・農産物を大量に購入すること、(4)金融サービスに関する合意、アメリカ側が求めている中国国内の金融サービスの外資に対する開放、(5)為替とその透明度に関する合意、(6)貿易拡大に関する合意、中国側はアメリカ側の要求に応じてアメリカからの輸入を大幅に増やすことを約束
そうして、この合意項目が履行されていなければ、90日以内に、基本的に一方的に報復するということです。

(2)、(3)、(6)関しては、中国がすぐに実行しようと思えばできます。他の項目はなかなかできないというのが中国の実情だと思います。これは、資金を投下して政府が掛け声をかけて、できなければ、武力鎮圧して無理にでも実行させれば、できるというものではないからです。

これを実行するには、ある程度以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れません。中共自体がこのような経験が全くありません。中共幹部には、何をどうしたら良いのかさえ理解していないかもしれません。それに、実行すれば、中共は国内で統治の正当性を失い崩壊する可能性が大きいです。

上の記事にもあるように、今回は中国側が大きく妥協したことにより合意に至ったのですが、その内容を中国側が履行しなければ、米国は再び関税強化に踏み切ることを明言しています。さらに、複数回に分割される可能性も浮上している第2段階の合意についても、米国は中国が第1段階の合意内容を履行してからだとしています。つまり、交渉の本番は今年なのです。

中国側が、従来のようなつもりで、これを上辺だけ実行したようにみせかけても、米国は納得しないでしょう。そんなことは、中国のWTO加盟後の中国の不誠実な対応で懲りています。

であれば、もうすでに3ヶ月後(今年3月以降)には、米国から報復されることはほぼ確定です。これは、バブル崩壊中の中国を追い詰めることになります。これによって、中共崩壊へまっしぐらということにもなりかねません。

一方、トランプ大統領としては、中国問題がメインであり、北朝鮮、韓国はその従属関数程度にとらえていることでしょう。

なぜそうなのかといえば、米国民にとって一番の関心事は、経済だからでしょう。これは、日本でも同じことです。いや、世界中の国々がそうです。

多くの国の国民にとって経済、もっといえば暮らし向きが一番大事なのです。大多数の国民が、大金持ちにはなれなくても、努力すれば正当に報われ、将来に期待を持てるような政治を為政者が実行してくれれば、大多数の国民は満足なのです。

ただし、無論将来に期待を持てるようにするためには、安全保証も大事なことです。ただし、先立つのは国内経済なのです。本格的な総力戦にでもならない限り、これはどこの国でも同じことです。

しかし、中国が不公正な貿易や、技術の剽窃や安全保障の面で米国を脅かしつつあったので、トランプ氏は中国を叩くことを最優先したのです。

考えてみれば、韓国など日本の東京都と同程度のGDPです。ロシアも同程度です。北朝鮮などさらに小さいです。EU諸国も、EU単位ではなく、国別にみれば、いずれの国も日本よりもGDPが小さいです。

中東も同じです。サウジアラビアのGDP(国内総生産)は、世界で18番目です。ところが、米国のペンシルベニア州よりも少ないです。2017年のサウジアラビアのGDPは約6830億ドル、ペンシルベニア州のGDPは7520億ドルでした。そして、ペンシルベニア州のGDPはアメリカ50州のうち6位です。

中国は1人あたりのGDPでは、まだまだ低くく中進国の中でも低レベルですが、それにしても国レベルでいえば、人口は、13.86億人で14億人に迫る勢いで、GDPも米国についで世界第二位です。中国共産党は、この経済を裏付けに他国にはできないこともできるのです。中国のみが現在では米国の安全保障と、経済を大きく脅かす存在なのです。

このような事実をみると、米国が中国問題をメインとして、他は従属関数と考えるのは当然といえば当然です。これをトランプ大統領は「米国第一主義」と表現しているのです。そう考えれば、トランプ氏の言うことは何も矛盾していません。米国第一主義を貫くためにこそ、中国と対峙するのです。他は従属関数に過ぎないのです。


現在、北朝鮮は核を保有しているとはいえ、金正恩は、金王朝存続のために中国の干渉をひどく嫌っています。そのため、結果として北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島全体への浸透を防いでいます。

しかし、このバランスが崩れ、中国、北朝鮮、韓国が協力関係を強め、中国主導で38度線を有名無実とし、米国と対峙したり、同盟国である日本に攻勢を強める様子をみせたりすれば、トランプ大統領は、躊躇することなく、中国と直接の軍事対決は避けつつ北朝鮮を攻撃するでしょう。

そうして、そのときはサラフィー・ジハード主義組織ISILの指導者バクダディや、イラン革命防衛隊のコッズ部隊を率いていたソレイマニ司令官を殺害したように、金正恩を斬首することでしょう。場合によっては、他の幹部も狙い撃ちするかもしれません。

これにより、米国は習近平ならびに、中共幹部にかなりの衝撃を与えることになります。米国との合意事項を守ることと、命を失うことのいずれを選ぶのかということになれば、たとえ、中共が崩壊しても合意事項を守るということになるでしょう。

年始早々の、ソレイマニ氏の殺害は、今年3月以降に考えられる、中国との本格的対峙に備えるための前哨戦のようなものと捉えるべきです。実際、米国はイラン精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクで殺害し中東地域で緊張が高まる中、イラクのメディアはアメリカ軍が3日、現地の民兵組織を標的にした新たな攻撃を行い、6人が殺害されたと伝えています。

米国のニューズウィークは、国防総省関係者の話として、攻撃はシーア派民兵組織「イマーム・アリ旅団」の指導者を標的に行われ高い確率で殺害したとみられると伝えています。

「イマーム・アリ旅団」は、イラクの複数のシーア派民兵組織で構成される「人民動員隊」の中の有力部隊で、ニューズウィークによりますと、今回の攻撃はイランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した作戦の一環として、2日にトランプ大統領が承認したということです。


トランプ大統領は、今年3月以降の中国との対峙に備えて、中東における脅威を少しでも減らしておくため、年初に攻勢にでたものと見られます。


中国が優勢、南シナ海でのエネルギー争奪戦-米国には不愉快な実態―【私の論評】中国の南シナ海進出 - エネルギー・ドミナンス確立が狙い

中国が優勢、南シナ海でのエネルギー争奪戦-米国には不愉快な実態 まとめ ベトナム、フィリピンは国内の天然資源開発を計画していたが、中国の南シナ海における一方的な領有権主張と強硬な行動により妨げられている。 中国は法的根拠が不明確な「九段線」「十段線」に基づき、南シナ海のほぼ全域に...