2020年2月8日土曜日

【田村秀男のお金は知っている】「新型ウイルス、経済への衝撃」にだまされるな! 災厄自体は一過性、騒ぎが収まると個人消費は上昇に転じる―【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!


 中国湖北省武漢市で発生した新型肺炎による中国本土の死者数は、2002年11月から03年7月にかけて中国広東省と香港を中心に広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)による中国本土の死者数349人を上回った。本土以外ではフィリピンに続いて香港でも死者が出た。

 思い出すのは、SARS流行時の香港のパニックぶりだ。筆者はSARS発生時、親しくしていた香港人家族の子供を約1カ月間、預かった。それ以上の規模で本土人が持ち込む、より強力なウイルスは、かつてない脅威となると察する。

 本コラムの趣旨からすれば、新型ウイルス流行が及ぼす経済への悪影響について触れざるをえないが、もとより人の命はカネよりも重い。連日のように訪日中国人の旅行消費が減ったり、中国の現地工場の生産に支障をきたすと騒ぎ立てる国内メディアとは一線を画したい。景気上の懸念がちらついてか、米トランプ政権のように中国人の入国禁止など思い切った隔離政策に逡巡(しゅんじゅん)しているように見える安倍晋三政権の対応に違和感を覚える。その前提で、経済への衝撃を考えてみよう。


 参考になるのは、SARS流行時の香港と広東省の経済動向だ。グラフはSARSの流行前から消滅時にかけての香港の個人消費と広東省の省内総生産(GDP)の前年同期比の増減率推移である。香港では、ふだんは喧騒に包まれている繁華街に出かける人の数が少なくなったと聞いた。広東省は上海など長江下流域と並ぶ「世界の工場」地帯で、生産基地が集積している。

 香港の個人消費は、SARS発症前の01年後半から前年比マイナスに落ち込んでいる。これは米国発のドットコム・バブル崩壊の余波と9・11米中枢同時テロを受けた米国のカネ、モノ、人への移動制限による影響のようだ。

 低調な消費トレンドが、SARSの衝撃で03年半ばにかけて下落に加速がかかった。しかし、SARS騒ぎが収まると、個人消費は猛烈な勢いで上昇に転じた。

 対照的に広東省の生産はSARSの影響が皆無のように見える。むしろ、流行時の02年秋以降から生産は目覚ましい上昇基調に転じている。

 今回への教訓はシンプルだ。本来、景気は循環軌道を描くわけで、基調が問題なのだ。弱くなっているときに新型ウイルスという経済外の災厄に国民や市民、企業が巻き込まれても、災厄自体は一過性で、基本的な景気のサイクル軌道が破壊されることはない。

 もちろん、新型ウイルスが猛威を振るう期間が長期化すれば話は別だ。置くべき焦点は経済政策の失敗だ。日本の場合、デフレ下での消費税増税を繰り返し、新型ウイルス以前から個人消費を押し下げている。この災厄は人災なのだ。今後確実視されるマイナス成長を新型ウイルスのせいにするような政府御用の論調にだまされるな。(産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】今のままだと、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は落ち込み続ける(゚д゚)!

マイナス成長を新型ウイルスのせいというか、増税のせいでなくて他のせいにするような政府御用の論調はすでにありました。

内閣府が昨年11月11日発表した10月の景気ウオッチャー調査で、景気の現状判断DIが前月から10.0ポイントの大幅低下となりました。その原因として、消費増税と台風の影響で家計関連の落ち込みが大きかったとしています。

さすがに、消費税増税の直後だったので、この落ち込みの原因として、台風だけにするにはどう考えても無理があるので、台風以外に消費税増税もあげたのでしょう。

ちなみに、このときには企業部門も雇用部門もいずれも低下した。現状判断DI指数の水準は36.7と東日本大震災後の2011年5月以来の低水準となりました。

台風は確かに一時的に、経済に悪影響を与えます。一時経済が停滞するでしょうが、台風被害からの復興で、工事が増え、経済は上向きます。それで、帳消しになってしまうか、場合によっては台風がなかったときよりも景気が良くなったりします。台風のせいにするのは、無理があります。

2014年の4月の増税の悪影響は2015年にも続いていましたが、これを猛暑による野菜高騰のせいにする、愚鈍な経済学者や民間エコノミストらが大勢いました。

野菜も含めた生鮮食品の価格が、天候の影響を受けやすいのは事実です。野菜不足による価格の高騰は、日々スーパーなどで買い物を行う人たちにとっては大きな関心事でしょう。ただ、これが一国の経済全体にどれくらいのインパクトを持つかを考えてみてほしいものです。

レタスの価格指数

2015年の日本の個人消費は年間約300兆円。そのうちに生鮮野菜が占める割合は、6兆円、つまりおよそ2%ほどです。さらにこれは、GDP全体からすれば約1%の割合でしかありません。その程度の範囲内で消費が減ったとしても、GDPに及ぼす影響はマイナス0.1%ポイント未満でしょう。

野菜価格の高騰は、家計への影響度が大きいし、普段からスーパーなどで買い物をしている主婦などの実感にも訴えやすいです。「猛暑日が続いているため」といったロジックも、実際に肌身で猛暑を感じていると、「たしかに今年の夏は暑いからな…」などと思わず頷いてしまいそうになります。

しかし、誰にでもアクセスできるデータを見るだけでも、「天候不順により、食品の価格が高騰して消費が低迷した。だから景気が停滞しているのだ」という議論がいかにメチャクチャなものであるかは簡単にわかります。

経済のごく一部を占めるだけの野菜価格の議論を経済全体の議論にすり替える経済学者、そして、それをもっともらしく報じるメディア―こうした滑稽な構図は、おそらく日本でしかお目にかかることができないのではないでしょうか。

それにもかかわらず、このようなバカげたニュースが恥ずかしげもなく報じられたのは、「消費増税のせいで景気が停滞した」と思われたくない人々がいるからなのかもしれないです。

「個人消費が落ち込んだのは天候不順という不可測の事態によるものであり、消費増税の影響ではない。したがって、10%への増税もスケジュールどおりに進めるべきだ」―そんな世論をつくるために流されたデマ情報なのではなかったのか、そう勘ぐりたくなるほどでした。

私たちの庶民感覚を利用し、消費増税の負の影響から目を逸らすための情報操作があるのだとしたら、それは悲しむべきことです。そうした情報に流されないためには、一人ひとりが最低限のリテラシーを身につけるほかないでしょう。

これと似たような話が、2016年夏場にも登場していたのをご存知でしょうか。日本の国内総生産(GDP)をめぐるちょっとした騒動でした。

事の発端は同年7月20日、日銀のエコノミストが示唆に富んだあるレポートを公表したことでした。同レポートの試算によれば、2014年度のGDPは、政府公表値よりも30兆円多く、1.0%減の大幅なマイナス成長とされていた経済成長率は、実際にはプラス2.4%だったのではないかとされていました。

現行GDP統計と日銀の試算による実質GDP(兆円,年度)
GDP統計は経済官庁である内閣府が公表する、いわば「経済の通信簿」であり、経済政策にとっては最も基本的な判断材料になります。その数値が正確でない可能性を指摘する論文が、金融政策を担う日本銀行から公表されたわけです。

GDPとは、日本全体で生み出されたモノやサービスなどの経済的な付加価値の合計であるが、「そもそも日本経済全体の付加価値を測定することなど、どうすればできるのか?」と思う人もいるかもしれないです。その疑問は部分的には正しいです。

ニュースなどで報じられるGDPは、たいていの場合、さまざまな基礎統計に基づいた推計値です。四半期のGDP速報値が出るのはおよそ1ヵ月半後ですが、そもそもこの時点では十分な基礎統計データが揃っているわけではない。すべてのデータが揃うまでには約2年、場合によってはそれ以上の時間がかかるのです。

GDPに推計値を使うのはどの国でも同じような事情なのですが、以前から日本では、GDP統計の作成プロセスに問題が指摘されています。基礎統計の使い方や推計方法、また、Eコマースのような新形態のサービス業の動向を把握できていないことなどが言われており、実際、日本のGDP推計には大きな測定誤差があるのです。

このような事情は、プロの投資家や経済政策の担い手たちにとっては「常識」です。件の論文も、いわゆるその道のプロが読めば、純粋にGDP統計の問題点を整理するために書かれたものに過ぎないことはすぐにわかる内容でした。

しかし、これを取り上げた経済メディアは、「内閣府のGDP統計を日銀が批判。さらに内閣府側も日銀に再反論」といったセンセーショナルな対立構図を前面に出して報じたのです。

これも経済メディアのかなり恣意的な歪曲だと言わざるを得ないです。2014年の実質GDP成長率が公式統計のマイナス1.0%ではなくプラス2.4%だったのだとすれば、やはり消費増税のマイナス影響は皆無であり、日本経済は盤石な成長を示していたことになるからです。

これもまた、さらなる増税を望む一部の人々には「非常に都合がいい材料」ですが、それを考えると、あの報道の異常なセンセーショナリズムには、どこか奇妙な違和感を覚えずにはいられませんでした。

ただしこれには後日談があります。2016年12月8日に再度、新たな推計方法に基づいた数値が発表されたのです。それによれば、2014年度の実質GDP成長率はマイナス0.4%だったのです。

やはり消費増税があった2014年に、日本経済はマイナス成長を示していたのです。GDP統計のフレームワークについて見直しが必要なことは私も認めますし、その改善が急がれるのは事実ですが、まずはおかしな議論に惑わされないことが先決です。

ちなみに、このブログでは過去に何度かとりあげたように、リーマン・ショック時に、日本銀行以外の世界の他の中央銀行は、景気の低迷に直面し、それに対処するため、大規模な金融緩和政策を実行しました。

ところが、日銀は実行しませんでした。そのため何が起こったかというと、リーマン・ショックの震源地である米国や、その悪影響を多大に被った英国は無論のこと、EUや中国なども速く経済を立ち直らせることができたのですが、本来リーマン・ショックにはあまり関係のなかった日本は、一人負けの状態となり、長い間超デフレと超円高に悩まされました。

基軸通貨国である、米国が大規模な金融緩和をし、日銀が金融緩和をしなければ、相対的に円が少なくなり、円の価値が上昇して、超円高になるのは当然のことでした。それに、デフレであるにもかかわらず、金融緩和をしなかったのですから、デフレが続くのも当たり前のことでした。

当時、私はリーマン・ショックのことを、このブロクでは日銀ショックと呼んでいたくらいです。実際、日本以外の国々では、いわゆる日本のリーマン・ショックのように、景気が長い間落ち込むことはなかったので、「リーマン・ショック」なる言葉は存在しません。これは、和製英語です。他国では、これを「リーマンブラザース破綻に伴う経済の落ち込み」等と称しています。

以下のグラフは、FRBとECB、日銀それぞれのリーマンショック以前と以後の実際にバランスシートの規模の推移を示しているもので、中央銀行のバランスシートの規模とは、まさに各国の中央銀行が行っている金融緩和政策の“規模感”を如実に確認できるものです。


このグラフからは、リーマンショック後、FRBとECBがそれぞれ自行のバランスシートを一気に3倍と2.5倍に増やしているのに対し、日本銀行は1.4 倍しかバランスシートを拡大させていないということがわかります。

しかし、これに関しては日本のメディアはほとんど報道していません。消費税増税による悪影響や、日銀の金融政策の大失敗に関しては、日本ではなぜかまともに報道されません。

なぜこのようなことがまかり通りるのでしょうか。新型ウィルスの悪影響は相当大きいとは思います。しかし、第二次世界大戦と比較すれば、そこまで酷くないとは思うでしょう。

ただ、あの第二次世界大戦であってさえ、統計上は年度ペースでみていれば、多くの国々で後の歴史学者は第二次世界大戦があったことさえ気づかないだろうと、あの経営学の大家ドラッカー氏が述べていました。

簡単にいうと戦争中は、各国が戦争のために、兵器などを大量に製造し、戦後は復興、復旧のためものすごい勢いで、生活物資などを増産するため、年度ベースでみると戦争の形跡など見当たらなくなってしまうのです。

日本も例外ではありませんでした。日本は確かに、原爆を2発も落とされ、主要都市はことごとく爆撃され、とんでもない状態になりましたが、それでも統計上は終戦直後には、国富の70%が残り、そこからスタートしたのであり、良くいわれているように戦後のやけのヶ原でのゼロからのスタートではなかったのです。

大都市や中核都市は焼け野原になっていても、地方での農産物や、製造の基盤は残っており、そこからのスタートであり、決してゼロではなかったのです。そのような物資や基盤を求めて、終戦後しばらくの間は北海道への他地区からの移入が続きました。

しかし、日本の場合は他の先進国では見られなかった特殊な現象がありました。それは、軍部による様々な物資の莫大な隠匿でした。それは、金塊から、米、小麦粉、砂糖、塩、医療品、衣服など様々な膨大な隠匿物資があったことです。

NHKスペシャル「東京ブラックホール」で紹介された、旧日本軍による隠匿物資

これらは、戦争中は戦争継続という意味合いで、まだ理解できますが、戦争が終わっても隠匿していたのは理解できないところです。これは、はっきり言うと犯罪です。

このように、様々な物資が隠匿されたため、終戦直後の多くの国民の生活はかなり貧しいものでしたが、それら隠匿物資も、米軍に摘発されたり、闇市で売られるようになったり、その闇市が日本の警察によって摘発されるなどして、市場に出回るようになりました。そうして、ご存知のように日本は驚異の高度成長を遂げることになるのです。

日本の軍人というか、陸軍省等実体は役人ですから、何やら日本の役人には、物資を隠匿するような習性が元々あったようです。そのような習性は、現在の財務省の官僚や、日銀の官僚などに今でも色濃く受け継がれているようです。

特に財務省は、増税しないと財政破綻するなどとしながら、日本国政府は膨大な金融資産を抱えています。その金融資産の大きな部分は複雑怪奇な特別予算として組まれており、これは従来から財務省による埋蔵金といわれています。

昨年の、消費税10%への引きあげの大失敗もマスコミは報道せずに、景気の落ち込みのほとんどを新型肺炎のせいにすることでしょう。まさに、財務省の走狗です。

しかし、そのようなことをしても、事実は変わりません。日本で、新型肺炎が終息してもなお、急激に消費が上向くことなく、経済は悪くなります。それは日本の財政政策である増税が間違っているということです。そのこと自体は変えようがないのです。

そのことが、日銀ショックや戦後の隠匿物資のように、明々白々になる前に、日本政府としては、増税による悪影響を取り除くべく、何らかの対処をしなければならなのです。

無論政府は、増税による景気の悪化が予め予想されたため、特別予算を組みましたが、その施行は4月からです。さらに、規模的に小さすぎます。秋には、オリンピックが終了し、ポイント還元セールも終了することからこのブログでも、指摘したように確実に景気が落ち込みます。

それに、プラスさらに新型肺炎です。その他、米中貿易戦争も継続中ですし、ブレグジットなどもあります。中東の危機も再び勃発することもあり得ます。現状のままでは、新型肺炎が日本で終息しても、個人消費は増えず、景気が落ち込み続けることになるのは確実です。

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2020年2月7日金曜日

【有本香の以読制毒】新型肺炎、中国の感染者は「10万人超」か 安倍首相「渡航制限の拡大を躊躇なく行う」に安堵も…政府は果断な対応を―【私の論評】中国の都市封鎖という壮大な社会実験は共産主義と同じく失敗する(゚д゚)!

【有本香の以読制毒】新型肺炎、中国の感染者は「10万人超」か 安倍首相「渡航制限の拡大を躊躇なく行う」に安堵も…政府は果断な対応を

中国発「新型肺炎」

日本の防疫体制は大丈夫か=成田空港

3週連続ではあるが、中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスについて今週も寄稿したい。

 5日現在、わが国での感染者は35人。一方、中国の保健当局、国家衛生健康委員会が5日発表したところでは、中国本土の患者数が2万4324人となったという。前日の発表から新たに3887人増えている。この増え方だけを見ても収束が程遠いことは明白だが、世界の研究者からは、さらに憂慮すべき数字が示されている。

 日本の北海道大学医学研究院で、理論疫学(流行データの分析)を専門とする西浦博教授は4日、「現時点で中国の感染者は10万人に上る」との推計を明らかにした。

 脅かすわけではないが、さらに恐ろしい別の数字も紹介すると、先月24日、英米2カ国の大学の研究者からなるチームは、2月4日までに武漢市だけで感染者数が25万人以上、最大で35万人に達する可能性がある-と警告していた。

 これらを見るだけでも、新型コロナウイルスについては依然、未知の部分が大きいことに加え、中国政府の発表が真実とかけ離れたものであろうことが分かる。

 これに関連し、筆者には一つ引っかかることがある。西浦教授の会見内容を報じた日本の特定メディアのある論調だ。

 「中国での感染者10万人」という衝撃的な数字を見出しやリードに取るマスメディアが多いなか、なぜか毎日新聞(ネット版)はこの数字を本文でも一切伝えていない。何処への忖度(そんたく)か、「恐れるに足らず」の論調が際立っていた。

 西浦教授の発表に話を戻すと、教授は感染者数の他にも、次の推計を公表している。

 (1)一般的な潜伏期は5日間(2)平均1人の患者が潜伏期間中に1人、発症後に1人に感染させている(3)感染者の半数は最後まで症状が表れない「無症候性感染」の可能性あり(=無症候性でも他人に感染させるかは不明)(4)感染者全体の死亡率は現時点で0・3~0・6%。これはSARS(重症急性呼吸器症候群)の約10%と比べると大幅に低いが、季節性インフルエンザと比べると10倍以上だという。

 結論として、西浦教授は「健康な成人なら適切な治療を受ければ亡くなる人はほぼいないと考えられる致死率だ。基礎疾患があるなどリスクの高い人への対応が必要になってくる」と延べている。

 日本政府には西浦教授の推計含む、国内外の研究者らからの膨大な情報が上がっているだろうが、それらをもって適切な判断を下すのが政治家の仕事。ただし、この際に重要となるのがスピードだ。情報に振り回されタイミングが遅れれば、「良き決断」も水の泡となる。

 安倍晋三首相は5日午後、「渡航制限の拡大を躊躇(ちゅうちょ)なく行う」と衆院予算委員会で言明した。筆者は「ようやく」という安堵(あんど)の思いを抱きながら、同日午後、同じくこの答弁に胸をなで下ろしている一人のインフルエンサーを訪ねた。

 夕刊フジでもコラム「Yes! 高須のこれはNo!だぜ」(月曜掲載)を連載中の高須クリニック院長、高須克弥氏だ。

 高須氏は先月、中国政府が武漢市を封鎖する前から自身のツイッターで、「渡航制限を」と懸命に訴えてきた。医療関係者を名乗る匿名アカウントから慎重論が多く出ていたこともあり、高須氏には誹謗(ひぼう)中傷も寄せられた。しかし、氏は意気軒高そのもの、翌朝にがんの手術を控えているとは思えない「元気」な様子で語った。

 「古いことわざで、『上医は国を医し、中医は人を医し、下医は病を医す』と言うでしょう。政治家の皆さんには『国を治す』という意識、防疫は国防だという視点で動いてもらいたい」と切り出し、日本の行政に苦言を呈した。

 「僕は国を守ることを訴え続けたんだけど、残念なことに全然動いてもらえなかった。『広がる前に早く』と必死に訴えたけど。動きが遅いよね」

 まったく同感だ。

 一方、高須氏は安倍首相の「躊躇なく行う」との発言を評価し応援するともツイートした。果たして今後、日本政府が、前例にとらわれ過ぎない果断な対応を見せるか。筆者も期待半分で厳しく見つめてまいりたい。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】中国の都市封鎖という壮大な社会実験は共産主義と同じく失敗する(゚д゚)!

中国の新コロナウィルスの猛威は依然、強まるばかりです。台湾紙「自由時報」(6日付)などによると、中国では現在、浙江省杭州や、河南省鄭州、江蘇省南京などで住民の移動を制限する「封鎖式管理」が実施されており、少なくとも34都市に上るという。

 中国の各都市の正確な人口を把握するのは難しいですが、メディアや金融機関の資料をもとに加算すると、計約1億5695万人(推計)となりました。日本の総人口(約1億2600万人)より多いです。ロシアの人口は約1億4000万人ですから、ロシアの人口よりも多いです。

中国の人口は約14億人(中国国家統計局調べ)だけに、約11%が封じ込められていることになります。

新型ウイルスの潜伏期間は最長2週間とみられていることですから、これまでに類を見ない大規模な隔離が奏功したのか、それともひそかに感染が広がり、さらなる拡大を引き起こすかが間もなく分かる見通しです。

人口1100万人の湖北省武漢市の移動規制は1月23日に始まり、同市発着の国内便の運航や列車の運行、バスや地下鉄などの公共交通機関も停止しました。

英国のシンクタンク、王立国際問題研究所の世界保健安全保障センター長、デービッド・ヘイマン氏は4日、ロンドンでの記者会見で、「中国は国内外の感染拡大を阻止できるかどうかを試す壮大な実験を行っている」とした上で、「状況を監視・評価するシステムを設け、有効かどうかを見極める必要がある」と語りました。

現在の封鎖された都市のある省は、下の赤く塗られた省です。


以下に、新型肺炎により封鎖された封鎖都市と人口をまとめた表を掲載します。


伝染病に対処するための、都市封鎖は過去に例をみません。まさに、これは中国の壮大な実験です。共産主義そのものが、壮大な社会実験だっともいわれています。

そもそも何故、レーニンが唱えた共産主義が成功しなかったか、という根源的な問題を考えてみると、それは、資産の平等化という経済的観点ではなく、個人の権力志向、他人への優越感、エゴ、妬みなど、理性ではなく情念が社会制度とは無関係にいつも社会を混乱に陥れる原因となっていたことです。

社会主義の70年にわたる実運用は何十億人もの人間を巻き込んだ壮大な社会実験であり、結果的に人間の卑しい情念がある限り、社会は本質的に変わらないことが分かったに過ぎません。しかし一面では、この情念こそが人を駆り立て、社会や経済を発展させる原動力でもあるのも事実です。

共産主義の失敗は明らかに成り、現在の中国の体制は国家資本主義という全体主義体制です。現在共産主義体制の国はこの世界にはなくなりました。しかし、どのように体裁を繕ってみても、中国の体制は共産党1党独裁の全体主義体制です。

さて、封鎖措置について、北京の医療関係者は「人道的には問題があるが、感染拡大阻止の面では効果がある」と期待を示しています。一方でサウスチャイナ紙は「予防策としてはすでに遅すぎるかもしれない」という伝染病専門家の見方を伝えています。

今回の中国共産党による都市封じ込めの壮大な社会実験は、吉とでるのでしようか、それとも凶とでるのでしょうか。

封鎖された武漢市

私としては、凶とでる確率のほうが高いのではないかと思います。武漢市の封鎖は1月23日10時から始まったのですが、通告時刻は同日午前2時5分でした。その間数十万の武漢市民が脱出しました。多くの自覚症状のない保菌者が脱出したとみられます。この時点で、この実験は失敗している可能性が高いです。

さらに、最初にこの新型肺炎が発見されたのが、昨年の12月ということも災いしていると思います。この時点で中国当局が最初の手を打たなかったことで、新型コロナウィルスがすでに多くの人を媒介に全国に伝播しているはずです。

このような状況になってから、都市を封鎖したとしても、その後の二次感染、三次感染を防ぐことはできません。

結局全体主義体制による、隠蔽などの初動のまずさが、その後いくら都市封鎖などという全体主義ならではの、とてつもない大胆なことを実行しても失敗することを、示すだけに終わるのではないでしょか。その時には、現体制の中国は崩壊することになるでしょう。

そうなれば、共産主義に続き、全体主義体制も結局失敗することが実証されることになります。

私達は、まさに生きているうちに、全体主義の失敗過程を見た歴史の生き証人になるかもしれません。

ただし、これは杞憂に終われば良いとは思います。多くの人々が病に倒れることがないことを祈ります。私自身は、全体主義は新型肺炎などとは関係なく、現在では結局滅ぶと思っているからです。

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2020年2月6日木曜日

新型肺炎、ついに中国国内で習近平主席の稚拙な対応への批判高まる…共産党内部や国民から―【私の論評】常軌を逸した習近平の行動は、何を意味するのか?

新型肺炎、ついに中国国内で習近平主席の稚拙な対応への批判高まる…共産党内部や国民から

1月23日、中国共産党の祝賀会に出席する習近平氏

新型肺炎への対応の不備を中国共産党指導部が初めて認めた。共同通信は3日、『習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ』と題する記事を配信。「中国共産党の習近平総書記(国家主席)ら党最高指導部が新型コロナウイルスによる肺炎に関する会議を開き、感染症対応に誤りがあったことを認めた」と伝えた。中国の国家指導部が誤りを認めるのは非常に異例だ。共産党一党支配体制の揺らぎなのか、2日にはYouTube上に感染源となった武漢市に「臨時政府樹立」を訴える動画がアップロードされるなど、中国国内の混乱に拍車がかかっている。

「武漢臨時政府樹立」?

 動画は『緊急直播:武漢臨時政府湖北獨立宣言 605』と題し、2日にアップロードされた。4日正午現在でも視聴可能できた。動画では中国人男性が「武漢でSARSに似たウイルスの情報をネット上に流した医学生8名が警察に逮捕された」などと述べ、新型肺炎に対する中国当局の対応を批判。救援物資の公平な分配、感染予防策の適切な実施など5項目を中央政府に要求した。合わせて、普通選挙の実施、直接選挙による大統領の選出の必要性や、香港、チベットの独立を訴えた。

 この動画が武漢市の市民が作成したのか、語られている内容が事実なのか確認は取れていない。一方で、中国では当局への批判や、共産党の支配体制に対する批判、そして分離主義と呼ばれる「一つの中国」を否定する言論が厳しく統制されてきた。

 そもそも中国政府は「金盾」というインターネット上の検閲システムを使って、中国国内でのYouTubeやグーグルの利用を制限している。ウィーチャットやウェイボーなど中国国内で普及しているSNSではなく、YouTubeという媒体を使って動画が投稿されているため、この動画の信ぴょう性に難はある。一方で政府が動かずに、こうした習近平指導体制を真っ向から批判する動画が2日以上も野放しになっていること自体が異常な感を受ける。

習近平の身に何かが起きている

 中国情勢に詳しい評論家の石平氏は4日、Twitterに以下のように投稿した。

「習近平の身に何か起きているのではないかという観測が出ている。先月28日に彼がWHO事務局長と会談して以来公の場に姿をいっさい現していない。昨日、習が政治局会議を主宰したと報じられるが、テレビ局は会議の映像をいっさい流さないし、今日の人民日報も関連写真を掲載していない。何か変である」

「昨日の中共政治局常務委員会議にかんし、日本の一部報道に『中央指導部誤り認める』が出ている。確かに、会議の公式発表には『疫情対策における欠点と不足』を認めた個所があるが、それが中央政府の問題か地方政府の問題かを明確にせず、中央指導部が自分自身の誤りを認めたことになっていない」

石平氏「習氏の強力な指導者の虚像が崩壊」

 当サイトでは、石平氏に今回の投稿と新型肺炎の対処失敗に伴う習近平指導体制への影響に関して聞いた。

【石平氏の見解】

 今回の新型肺炎拡大の対処失敗で、習近平氏が就任以来7年間、宣伝機関などをフル活用して描いてきた「強力な指導者」の虚像が完全に崩れたと思います。初動対応の遅れや情報の隠蔽などは明らかで、「深刻な状況になってやっと動き出した」というイメージは拭えません。

 1月25日、新型肺炎の対策のための指導小組(対策本部)が立ち上がりました。本来であれば国家主席であり党総書記の習氏がトップになるべきところを、トップに就任したのは李克強首相でした。

 共産党にはさまざまな小組がありますが、習はすべての小組のトップに就任し、権力を集中させてきました。伝統的に本来、首相の李氏が就任するポストの中央財経指導小組ですら、習氏が就任したほどです。

 ところが、国民の生命がかかるまさに国家存亡の事態に際して、その対策の責任者につかないというのは明らかにおかしいです。少なくともこれまで、自然災害や疫病が発生した際、中国共産党のトップは必ず現地に入って最前線で激励してきました。江沢民も胡錦濤もそうでした。ところが、今回はその役目を李氏に押し付け、責任を放棄しました。

 こうした行動に対して、今まで国家主席の任期延長など、習氏の指導に疑問があった共産党幹部や国民の不満が暴発しつつあります。先日、中国中央電視台の生放送で取材を受けた武漢市幹部が党指導部の隠蔽工作を批判しました。また精華大の教授が党の対応を批判する文書を公表するなど、習近平指導部に対する批判の声が高まっています。

 一方で、李氏の評判は高まるばかりです。習氏は7年間、李氏の台頭を押さえつけていましたが、これでそれも終わりです。李氏の仕事ぶりは毎日、報道で伝えられています。

 この状況が続けば、習氏の権威体制に変化が生じてくるでしょう。新型肺炎が小康状態になるまで、共産党内には今回の失態に関して責任を追及する余裕はないでしょうが、ある程度、収まった時期に責任を問う声は上がると思います。少なくとも、習氏の個人独裁体制が崩れる可能性はあると思います。

(文=編集部)

【私の論評】常軌を逸した習近平の行動は、何を意味するのか?

冒頭の記事では、習近平の無責任体制を批判していますが、一方日本では、習近平が2月3日の会議で「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という報道がなされて、いますが、これは日本の報道機関による、歪曲報道のようです。

それについては、遠藤誉さんのニューズウィーク日本版の記事で完璧に否定さています。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平は「初動対応の反省をして」いないし「異例」でもない

この記事より、以下に一部を引用します。

"
2月3日に習近平総書記が中共中央政治局常務委員会委員を招集し会議を開催した。筆者は「中共中央政治局常務委員会委員7人」に対して「チャイナ・セブン」という名前を付けたので、この後は便宜のため「チャイナ・セブン会議」と略称することにする。

2月3日のチャイナ・セブン会議で討議された内容は2月4日のコラム<習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」>でも述べたが、日本のメディアは異口同音に北京共同の報道<習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ>の線でしか報道していないので、それが如何に間違っているかを、単独に取り上げて考察したい。

以下に示すのは、共同通信の報道をはじめとして日本のメディアが一斉に報道しているチャイナ・セブン会議の内容の中の、根拠としている部分の文章である。

これをご覧いただければわかるように、会議では赤線で囲んだ一文は、その後に書いてある「5つの要」を指している。 

まず、赤線囲みの中を丁寧に翻訳すると「このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。われわれは必ず経験を総括し、そこから教訓を学ばなければならない」となる。

そのためには、何をしなければならないかということが、この赤線囲みの下に列挙された5つの「要」である。この「要」とは「~しなければならない」という意味で、政府文書でそのように書けば、「~せよ!」ということに相当する。

要1:今回の疫病伝染対応で露わになった短所や不足に対して、国家応急管理システムを強化し、危機処理能力(緊急・困難・危険という重要任務に対処する能力)を高めよ!

要2:公共衛生環境に対して徹底的にローラー作戦を実施し(しらみつぶしに不衛生な部分を捜査せよ)、公共衛生の短所を補え!

要3:市場監督を強化せよ!どのようなことがあっても、違法な野生動物市場と貿易を徹底的に打撃して取締り、源から重大な公共衛生のリスクを制御せよ!

要4:法治建設を強化し、公共衛生の法治を保障せよ!

要5:システマティックに(系統的に)国家の備蓄物システムの欠点を整理し、備蓄物の効能を高め、肝心な物資生産能力と布陣を向上させよ!

以上である。

この指示のどこに、「初動対応の遅れを反省する」などという言葉があり、またまるで習近平が「謝罪の意思を表明した」ような要素があろうか。
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これを見る限り、習近平は初動対応の遅れを認めてもおらず、反省も表明していません。「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という日本の報道機関の報道は、忖度以外の何ものでもないようです。それも、悪しき忖度です。

私自身は、この期に及んでも、日本への国賓待遇での訪問に固執する習近平が、「初動対応の遅れを反省したり、異例の反省を表明することなどあり得ないと思っていましたが、まさにその通りです。

日本では、ガールズグループ「TWICE」が31日、公式サイトを更新。2月1、2日に東京ドームシティ内で開催を予定していたCDお渡し会を、新型コロナウイルスによる肺炎患者拡大の問題を受けて中止すると発表しました。

ちなみに、「TWICE」は、2015年に韓国で結成された韓国人5人、日本人3人、台湾人1人の9人で構成された多国籍のアイドルグループです。

サイトで「新型コロナウィルスについて、WHO=世界保健機関による『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』宣言および日本政府が当該感染症を『指定感染症』とする政令について施行日を2月1日に前倒しする方針を示しましたことを受けまして、再度協議をいたしました結果、お客様およびメンバーならびにスタッフの健康および安全を最優先に考慮し、本イベントの開催を両日とも中止させていただくこととなりました」と説明しました。

新型肺炎の影響を鑑み、週末に開催予定の芸能イベントは続々と中止、延期を発表しています。

この日、アイドルグループ「日向坂46」は2月1日開催予定のイベントと、2日に東京ビッグサイトで予定していた握手会の延期を発表。「SKE48」「NMB48」もこの日、2月2日に大阪で予定していた握手会を延期しました。

日向坂46

ハロー!プロジェクト所属の「こぶしファクトリー」も同日、2月1日に予定していたミニライブと握手会の中止を発表しました。

このように、様々なイベントが日本国内でも中止されています。習近平の国賓待遇での来日を実行すれば、天皇皇后両陛下は無論のこと、安倍総理等を含めた日本の政府要人等が、習近平ならびにその随行員などをもてなすことになります。それをもてなすために、それ相当の人数の人々が接遇にあたるわけです。

習近平に天皇皇后両陛下、政府要人、ならびに接遇スタッフの健康および安全を最優先するという配慮ができるなら、今回の訪問は中止するか、延期するのが当たり前だと思います。習近平としては、天皇陛下にも謁見して、日本を味方につけ、何とか苦境を打開したいと目論んでいるのでしょう。

過去においても、現上皇陛下が天皇陛下であった時に、中国を訪問して、当時天安門事件で世界中からそっぽを向かれて孤立していた中国が、日本の天皇を迎えたということで、また世界に受け入れられたということがありました。これは、まさに中国共産党による天皇陛下の政治利用でした。

今回の、習近平の国賓待遇での日本訪問も、まさにこのような政治利用であり、日本ではほとんど報道されていないのですが、このブログで解説したように米中貿易交渉の完全敗北等の失地回復のための方策の一つなのでしょうが、それにしても時期が悪すぎます。

このような危機的な状況の時に一国のリーダーが母国を離れ、他国に国賓待遇で招かれるなどのことがあれば、いずれの国でも、そのリーダーへの信頼は著しく失墜するでしょう。

習近平は、昨年(2019年)9月3日、青年幹部らに重要講話を行っています。その際、習主席は55回以上も「闘争」と言う言葉を使用しています。目下、習主席は、共産党で党内闘争を行っていると見られています。

その原因は(1)一向に改善されない中国経済(2)いつまでも続く「米中貿易戦争」(3)収束しない香港デモ(4)5Gを巡る覇権争いで、ファーウェイ(華為技術)が限界(5)アジアに蔓延する「アフリカ豚コレラ」等が、当時から習近平政権の足を引っ張っていました。それに今年は、新型コロナウィルスの問題が加わったわけです。まさに、習近平政権の危急存亡の時と言っても過言ではありません。

ましてや、中国では、反習近平派が、習近平が来日すれば、その隙きを狙って何をするかもわかりません。クーデターが起きても不思議ではありません。そのような時期に訪日する習近平にはとても常人の常識があるとは思えません。

習近平が、このように社会常識が欠如しているのは、中国共産党という異常な組織に安住して埋没しているからでしょう。中国の歴代の主席の中でも、鄧小平あたりまでは、中国国内の自分たちの常識と、海外の常識は違うということは、認識していたでしょう。しかし、長い間中国の非常識に浸って生きてきた習近平はそうではないようです。

中国共産党は、国内外で非道の限りをつくし、反対するものは、暴力で弾圧し、WTOやWHOなどのような国際組織においても札束にものをいわせ、我が物がを振る舞い、他国の領土(チベット、ウイグル等)にも平気で侵略して我が物にし弾圧し、挙げ句の果てに世界唯一の超大国である米国の怒りを買っています。

そのような中国ですが、実は中国のGDPは虚偽であり、実は日本以下どころか、ドイツよりも下であるという識者などもいます。それも、かなり信憑性があります。

それはさておき、日本が、GDPが米国に次いで、二位と公式に言われていた時代でも、多少浮かれていたところはあったかもしれませんが、中国のような酷い振る舞いは、さすがにありませんでした。

やはり、中共は常識外れです。その中でも、習近平は非常識極まりありません。日本の報道機関も、習近平に忖度するというのなら、日本訪問中にクーデターが発生する危険もありえることなど報道すべきです。そのほうが、よほど習近平の身のためです。

いや、日本のメディアはもうそのようなことは十分承知しているのかもしれません。習近平は相当追い詰められていて、その時期ではないとわかっていながら、日本を国賓待遇で訪問して、事態を打開する以外に道はないのかもしれません。

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2020年2月5日水曜日

新型コロナウイルスで北朝鮮崩壊の兆し―【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる【2】(゚д゚)!


外相交代などの人事から垣間見える金正恩体制の窮状

1月1日、北朝鮮の金正恩委員長が米国に対する警告と新型兵器について語るのをテレビで見るソウル市民

本稿は、中国で発生し、感染が拡大している新型コロナウイルスが、北朝鮮情勢に及ぼす影響について分析するものである。

 今回の中国発のコロナウィルス感染症の拡大が北朝鮮に及ぼす影響は、比喩的に申し上げれば、「弱り目に祟り目」と言ったところだろう。これが嵩じると「失明」に至る危険がある。

■ カミュの「ペスト」: 不条理が集団(都市)を襲った物語

 筆者は、新型コロナウイルスの感染拡大の様を見ていると、アルベール・カミュが書いた小説『ペスト』を思い出す。奇しくも出版は筆者の誕生の年の1947年だ。

 カミュは、中世ヨーロッパで人口の3割以上が死亡したペストを、不条理が人間を襲う代表例と考え「ペスト」で、不条理が集団(都市)を襲う様子を描いた。

 物語(当然フィクション)は、フランスの植民地であるアルジェリアのオラン市をペストが襲うという設定だ。

 ペストが蔓延する中、人々が何もコントロールできない無慈悲な運命を非情な語り口で描いている。

 新型コロナウイルスが発生し、感染が拡大している武漢市あるいは中国全土は「ペスト」の舞台となったのオラン市(面積は64平方キロで2006年時点の人口は68万3000人)とは面積・人口とも比べ物にならないが、相似性はある。

■ 新型コロナウイルスの感染拡大が継続

 2月2日現在、感染拡大が継続している。中国本土での患者は1万4300人を超え、死者は304人に達した。

 なお、香港大の研究チームは、武漢市の感染者が最大7万5800人に上っている可能性があるとの推計値を1月31日付の英医学誌ランセットに発表した。

 余談になるが、北朝鮮の金正恩氏はこの事態に臨み、習近平国家主席にお見舞いの書簡を送り「苦痛分かち合い、助けたい」と述べたという。

 それを見た習近平氏は金正恩氏が置かれた苦境を察知し、苦笑しているに違いない。

■ 北朝鮮に見られる異変

 北朝鮮の“宗主国”である中国が未曽有の危機に見舞われるのと相前後して、昨年末来、北朝鮮にも次のような異変がみられる。

 これらの異変が、なぜ起こったのか定かではないが、金正恩氏の健康問題や体制の揺らぎなども否定できず、今後注視する必要があろう。

 ●「人工衛星」状態だった金平一の帰国(昨年末)

 金正恩氏の叔父で駐チェコ大使だった金平一氏(65)が昨年末に、北朝鮮に帰国したと報じられた。

 金平一氏は、金正日氏の異母弟で金正恩氏の叔父だが、金正日氏との後継者争いに敗れ、まるで人工衛星のように30年間以上も海外を転々としてきた。

北朝鮮の駐チェコ大使を務めた金平一氏(2015年1月、プラハ)

 その風貌が金日成主席と似ていて軍内にも支持者が多く、一時は後継者に目されていた。

 2017年2月に金正恩氏の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害される事件の前には、欧州の脱北者団体が金平一氏を亡命政府の首班に担ぎ上げようとする動きがあったが、金平一氏は一貫して正恩氏に恭順の意を示してきたとされる。

 金平一氏がこの時期に帰国した真意については不明だが、筆者は金正恩氏が死亡するなどの不測の事態に備え、反体制派から次期首班などに担ぎ上げられるのを未然に防止するというシナリオを憶測している。

 ●6年ぶりに金正日氏の妹の健在を確認

 労働新聞によると、1月25日、金正日の実妹・金慶喜氏(正恩氏の叔母で、その夫の張成沢氏は正恩に粛清された)が旧正月を祝う記念公演の観覧に正恩氏と同席したという。

 慶喜氏の公開活動は約6年ぶりで、病持ちの老女が健在を示した形だ。

 金平一の帰国と相俟って、慶喜氏の登場は儒教国家の北朝鮮で寛容政策をPRし、何らかの事態に備えて内部結束や体制安定を図る狙いがあるのかもしれない。

 儒教文化の中で、若造の正恩氏がリーダーシップを握るのは苦労が多いものと見られ、伯父・叔母までも動員せざる得ない状況(体制不安)に追い込まれたのかもしれない。

 ●年末の党中央委総会は尻切れトンボ

 朝鮮中央通信によると、金正恩氏は党中央委の活動状況と国家建設、経済発展、武力建設に関する総合的な報告を行ったうえで、「革命の最後の勝利のため、偉大なわが人民が豊かに暮らすため、党は再び困難で苦しい長久な闘いを決心した」と述べ、報告を終えたと報じた。

 総会は開催以前から「重大問題や新たな闘争方向と方法などを討議する」と鳴り物入りで開かれ、異例の長期間(4日間)行われたものの、何ら新しいビジョンを打ち出すことができず、尻切れトンボ状態で終わった感がある。

 このことは、北朝鮮が米国のドナルド・トランプ大統領による「戦略的な遅滞作戦(制裁解除を匂わせながら合意・解決を先延ばしする作戦)」に翻弄される結果となり、金正恩氏が人民に「長期戦」呼びかけるだけで、その打開に行き詰っていることを物語るものであろう。

 金正恩氏が生き残りを懸けたはずの対米交渉カードは、核ミサイルの開発であるが、トランプ氏の「戦略的な遅滞作戦」により、それは北朝鮮自身の身を削る「壮大な浪費」になるだけである。

 金正恩氏の下では「明日」が見えず、人民は金王朝3代にわたる窮乏生活を強いられているが、それももはや限界に近づきつつあるのではないか。いよいよ追い込まれた感が否めない。

 ●ミサイルも発射せず:「クリスマスプレゼント」は反故に

 昨年末、金正恩氏は米国に「経済制裁の緩和をしてほしい。12月末がその限度だ」と一方的に期限を示し、その結果次第では米国に「クリスマスプレゼント」を贈ると予告していた。

 「クリスマスプレゼント」は弾道ミサイル発射である可能性が取り沙汰されていた。

 一方のトランプ氏は「ミサイルではなく花瓶かもしれない」と冗談を飛ばす余裕を見せた。メディアなどは、「この年末がまずは一つの大きな山場」と報じていた。

 結果は、金正恩氏は何もできなかった。

 やはり米国が怖いのだ。米国との貿易戦争を「休戦」したい中国から「余計なことをするな」とたしなめられた可能性もある。

 金正恩氏の狂ったような核ミサイル開発の加速は、米国の関心を惹き、安全保障をより確実なものにする意味では正しいだろうが、それによる「壮大な浪費」は、確実に人民を飢えさせ、「人民からの反感」を募らせる効果を持つことを無視している感がある。

 ●金正恩氏の「新年の辞」なし

 金正恩氏は2013年に政権が発足して以来、毎年発表してきた新年の辞を今年はやめた。これは異例である。

 その理由として昨年末の党中央委総会で7時間にも及ぶ長広舌がそれに代わるからだと言われている。本当にそうだろうか。金正恩氏の健康悪化や体制の不安定化などの疑惑も浮上する。

 いずれにせよ、前項でも指摘したように、北朝鮮は米国の制裁などで追い込まれ、新年の辞で新たなビジョンを打ち出すことができないのは事実であろう。

 金正恩氏が「新年の辞」をやめた事実は、彼の「元首」として指導が破綻したことを疑わせるものである。

 ●金正恩の健康を蝕むストレス

 昨年末、挑発を繰り返す北朝鮮に対して、在韓米軍は韓国軍と共同で特殊部隊により北朝鮮首脳部を攻撃し幹部を捕獲するといういわゆる「斬首作戦」の訓練映像を初めて公開した。

 また、1月3日には、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官がイラク・バグダッドで米軍のドローンから発射されたミサイルによって暗殺された。

 これは、型破りのトランプ氏が破天荒な決断をするという印象を改めて金正恩氏に示したことになる。

 本件は、トランプ氏の破天荒な決断のみならず、米国・米軍の情報能力がターゲットとなる要人をピンポイントで時々刻々フォローできることを内外に見せつけた。

 これに対して金正恩氏は、「新年の公式活動」と称して平安南道にある肥料工場建設現場を訪問・指導する様子を1月7日付の朝鮮中央通信で報道させた。

 金正恩氏は「強がり」を示したかったのだろう。だが、現実には自分が常に米軍に付け狙われていることを強く再認識し、恐怖感を募らせたであろう。

 金正恩氏は、夢の中で厳寒の平壌を、枕を抱えてドローンの追跡から逃げ惑う夢を見ているのかもしれない。

 独裁者の金正恩氏は、それでなくともストレスが多いのに、暗殺の恐怖はそれを倍加させることになろう。

 体重が130キロの金正恩氏は、肥満や糖尿病などの生活習慣病があると見られ、ストレスの増加は病状を確実に悪化させよう。

 ●人事の刷新:軍出身の李善権氏の外相就任

 朝鮮中央通信は1月24日、外務省が開催した旧暦の新年の宴会で、軍出身の李善権新外相が演説したと報じ、外相交代を確認した。


 李氏は核問題や米国との交渉に携わった経験がないため、李氏の外相任命は北朝鮮事情に詳しい専門家には意外感を持って受け止められた。

 米国務省のスティルウェル次官補(東アジア・太平洋担当)は李氏の外相就任について「変化があった。このこと自体が何かが起きたことを物語っている」と述べた。

 また、人民武力相(国防相に相当)に金正寛陸軍大将が任命されたことが1月22日に確認された。金正寛大将は、人民武力省副相兼中将からの格上げである。

 これら軍と外交のトップの交代(更迭)がいかなる意味があるのかは不明であるが、北朝鮮内部で何らかの異変が起こっているのかもしれない。

 ちなみに、李氏は対韓国政策分野の実力者の一人で、南北軍事実務会談の代表も務めた。

 2018年、南北首脳会談に合わせて平壌を訪れた韓国企業のトップらに「よく冷麺がのどを通るなあ」ときつい皮肉を言ったことが明らかになり、物議を醸した。

■ 新型コロナウイルスが及ぼす影響

 北朝鮮で上記のような異変がみられる中、中国で発生した新型コロナウイルスの感染拡大は北朝鮮にいかかる影響を及ぼすであろうか。

 ●中国の新型コロナウイルスの感染拡大は冷戦崩壊直後の悪夢と同じ

 中国が今次新感染症の拡大で大きなダメージを受け、一時的にせよ弱体化する事態は、北朝鮮の後ろ盾だったソ連が崩壊(1991年末)した事態に似ている。

 北朝鮮はその混乱の最中に金日成が死亡(1994年)し、若い金正日が待ったなしで政権継承することになった。

 このため、北朝鮮は体制崩壊の危機に瀕した。金正日が政権継直後の1995年から98年にかけて飢饉のために約300万人が餓死した。

 今次新感染症のダメージで、北朝鮮の唯一の後ろ盾である中国が弱体化すれば、そのダメージの程度にもよるが、北朝鮮はソ連崩壊と似たような困難な状況に直面せざるを得ないだろう。

【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる【2】(゚д゚)!

 北朝鮮は新型コロナウイルスの拡散を防ぐため中国やロシアとの国境を封鎖、海外との取引もほとんど絶たれており、国内経済への大きな打撃が懸念されています。経済発展を掲げる金正恩朝鮮労働党委員長にとって痛手は避けられない情勢です。

すでに近隣諸国との航空便や列車の運行を取りやめ、最近入国した外国人には数週間の強制検疫を実施、海外からの観光客受け入れも中止しており、国の閉鎖に拍車がかかっています。

北朝鮮ではこれまで新型コロナウイルスの感染は確認されていません。これは、同国が頼っている中国など経済的つながりが断絶され、あるいは極端に制限されていることも意味します。
今後北朝鮮の市場経済だけでなく、国の経済全体に大きな影響が及ぶでしょう。北朝鮮は国産を推奨していますが、菓子であれ衣服であれ原料は中国から輸入しています。
北朝鮮の経済的リスクの度合いは、閉鎖の長さにかかっていとみられます。数か月あるいはそれ以上になれば、相当な悪影響を与えることは確かです。

最近の韓国の貿易協会のリポートによると、2001年には17.3%だった北朝鮮の対外貿易に占める中国の割合は、去年91.8%に達しました。数千人の中国人観光客も大きな経済効果をもたらしています。

米国との非核化交渉が暗礁に乗り上げるなか、今回の新型ウイルス危機で北朝鮮の立場が弱まることも考えられます。

経済的苦境を埋め合わせるため、北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射や核実験など挑発行為に出る可能性もあります。コロナウイルス問題がすぐに解決されなければ、北朝鮮の状況は今年一層厳しくなるでしょう。

新型肺炎による混乱が重なれば、国民の意識にどのような変化が生じるかわからないです。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は1月29日、新型肺炎への対策は「国家存亡に関わる重大な政治的問題」であるとする記事を掲載しましたが、この表現は決してオーバーなものではといえます。


韓国も、コロナウイルス対策はそれなりには行っているようですが、このブログでも述べているように、文在寅政権は金融緩和することなく、最低賃金だけをあげるという、日本でいえば立憲民主党の枝野氏の主張するような、最初から見込みのない経済政策を実行して、予想通りに雇用が激減しています。

この状況でコロナウィルスの悪影響を受ければ、今年の大統領選挙では敗北する可能性も十分あります。

トランプ米大統領は4日の一般教書演説で、北朝鮮の核問題に言及しませんでした。トランプ氏が同演説で北朝鮮に触れないのは初めてです。11月の大統領選に向けた選挙活動が本格化する中、トランプ氏は打開の見通しの立たない北朝鮮との交渉には力を注がないのではないかという臆測を広げそうです。

トランプ氏は昨年2月の一般教書演説では、同月下旬にハノイで2回目の米朝首脳会談を開催すると発表。「金正恩(朝鮮労働党委員長)との関係は良好だ。朝鮮半島の平和に向け歴史的奮闘を続ける」と訴え、北朝鮮問題を優先課題に掲げました。

ところが、ハノイ会談は非核化の進め方をめぐり物別れに終わりました。正恩氏は昨年末、トランプ氏に中止を約束した核・ミサイル実験の再開を示唆して強硬路線に転じ
る姿勢もみえ、非核化協議再開のめどは立っていません。

トランプ氏は日本にも触れず、アジア政策では中国について、新型コロナウイルスによる肺炎をめぐる協力や、貿易交渉の成果に触れた程度でした。習近平国家主席を含む中国との関係は「恐らくこれまでで最も良い」と主張し、中国への厳しい姿勢は鳴りを潜めたようにもみえます。

ただし、中国に対して米国は「貿易交渉」において、このブログにも掲載したように米国は一方的な大勝利をしています。この交渉で米中には七つの合意事項がありましたが、一番最期の合意事項は、6つの合意事項について、米国が監視するというものです。

今年は年初から、コロナウィルスの中国での蔓延という特殊事情が米国との貿易交渉で一方的に大敗北した中国に追い打ちをかけています。トランプ政権としては、コロナウィルスによる、中国、北朝鮮、韓国などがどの程度影響を受けるのかを見極めつつ、大統領選機にもっとも有利な形になるよう、これらの国々の対応を決めていくことでしょう。

今年は文・習・金の運命が大きく変わる年になるかもしれない・・・・

いずれにせよ、先日もこのブログに掲載したように、今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わることでしょう。この三者が表舞台から姿を消すということも十分あり得ます。

【関連記事】

2020年2月4日火曜日

「新型肺炎」と「鳥インフルエンザ」、どっちが怖い?―【私の論評】この4月に日本を訪問する習近平は、失脚の可能性を自ら高めている(゚д゚)!



中国発の新型肺炎がどんどん広がっている。新型コロナウイルスによるものだといわれている。本書『知っておきたい感染症―― 21世紀型パンデミックに備える』 (ちくま新書)は近年たびたび世界を揺るがしている厄介な感染症について手際よくまとめた解説書だ。未然に防ぐために私たちは何をするべきなのか? 副題にもあるように、今後さらに強力な感染症が出現した場合、膨大な犠牲者が出て全世界が未曽有の大混乱に陥りかねないと警告している。

 著者の岡田晴恵さんは1963年生まれ。専門は、感染免疫学、公衆衛生学。ドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所、国立感染症研究所研究員などを経て、本書刊行時の肩書は白鷗大学教育学部教授。『人類vs感染症』 (岩波ジュニア新書)など感染症関連では多数の著書がある。今回の新型肺炎に関してもメディアにしばしば登場している。
症状が重篤で致死率が高い

 エボラウイルス病、二つのタイプの鳥インフルエンザ、SARS、MERS、...本書は主にこれら新しいタイプの感染症を軸に、デング熱や破傷風・マダニ感染症などについて、それぞれ一章を設けて詳述している。いずれもこの20年ほどの間に世界や日本を震撼させた感染症だ。

 中でも著者が怖さを強調するのは「H5N1型鳥インフルエンザ」だ。これこそが人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性があるという。

 すでに1997年、香港で発生して18人の感染者のうち6人が死亡した。香港政府は、人への感染源とされた家禽140万羽をわずか3日間で殺処分するなどして、人への感染を絶った。ただし、この火種となったウイルスはその後も中国南部の野鳥などに存在し続け、2003年以降も世界各地の鳥に飛び火して流行が続いているという。15年までに人の感染者844人、死者449人が報告されている。散発的に発生しているので、大きく報じられることは少ないが、鳥から人への感染が続いているということであり、不気味だ。

 このウイルス感染の最大の特徴は、症状が重篤で致死率が高いこと。通常の季節性インフルエンザとは性質が全く異なる。全身の臓器がやられる。もしも感染が拡大すると、各国の社会機能や経済活動が麻痺状態に陥り、地球規模の危機となる。そのため国際機関と各国の農業行政当局は、鳥における流行の制圧と新型インフルエンザの発生を阻止する行動を続けている。日本でもH5N1型鳥インフルエンザが発生するたびに、大量の家禽を処分するなどの緊急対応がとられてきた。つい最近も中国・湖南省の養鶏場で発生、すでに約1万7千羽を殺処分したことが報じられている。

 H5N1型でパンデミックが起きた場合、2億人前後の死者が推定されているという。

遺伝子の突然変異を起こしやすい

 鳥インフルエンザは、もともとは鳥を宿主とするので人には感染しにくい。ところがインフルエンザのウイルスは、遺伝子の突然変異で、その性質を変化させやすい性質を持つ。変異は一定の割合で起きる。鳥の間で感染が拡大すれば、ウイルスが増殖するから変異ウイルスも増える。「人型」のウイルスが出現することがあるのだ。そうなるともはや鳥型のウイルスではなくなり、人に感染する「新型インフルエンザウイルス」になる。人はこのウイルスに対する防御免疫機能を持っていないので、感染すると重症化しやすいというわけだ。

 インフルエンザウイルスには多数の種類がある。たいがいは「弱毒型」。ところが、その中で「H5亜型」「H7亜型」は「強毒型」に変化する可能性がある。したがって「H5亜型」「H7亜型」の鳥インフルエンザが見つかった場合は、その段階では弱毒型でも、強毒型に変化する可能性があるので厳しい措置が取られることになる。

 強毒型に感染した家禽は1日か2日で100%死ぬ。しかし不思議なことに、水禽類(カモ、アヒル、ガン、ハクチョウなど)の多くは感染してもほとんど症状が出ないのだという。その理由はわかっていないそうだ。

 本書では、もう一つのタイプの怖い鳥インフルエンザ「H7N9型」についても一章設けて詳述している。

 ウイルス変異の仕組みはなかなか難しい。本書で詳しく説明されているが、先日、BOOKウォッチで紹介した『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』(ミネルヴァ書房)はカラー図解入りなのでわかりやすい。

「クラミジアによる肺炎」と発表

 新型肺炎との関連では、「SARS」が再び注目されている。ともにコロナウイルスとされ、中国が震源地。SARS は2002年11月から03年6月までに32か国で感染者8098人、死者774人の被害が出た。原因とされるSARSコロナウイルスは21世紀になって最初に流行した新型ウイルスだった。

 発生後、中国当局の対応は鈍かった。03年2月中旬になって、ようやく広東省における「非定型性肺炎」の流行を認め、病原体は「クラミジア」と発表した。

 しかし、香港では早くから「新型インフルエンザ」ではないかと心配の声が出ていた。ベトナムや台湾、シンガポールなど各地で類似の患者が見つかったこともあり、WHOが調査団を中国に派遣、3月中旬に「SARS」(重症急性呼吸器症候群)と命名、4月になって病原体は新たなコロナウイルスだということが特定された。新型インフルエンザではなかった。

 不思議だったのは、中国滞在経験がない人も感染していたことだった。のちにその理由がわかる。感染者の共通項をたぐると、いずれも同時期に香港の同じホテルの9階の部屋に滞在していたのだ。その後の調べで、当時この9階に、中国で問題の肺炎治療にあたっていた広州の医師が宿泊していたことが判明する。激しくせき込み、高熱を出していた。この医師はその後SARSと診断され死亡している。

 中国政府が情報を隠蔽したとか、後手に回ったともいわれるが、「新型」ゆえにWHOをはじめ、各国の専門家らも戸惑ったようだ。

 SARSウイルスは中国南部のコウモリが元々の宿主。それが何かの拍子に中間宿主を経て、人に侵入したとみられている。そして、重症肺炎を引き起こす新興感染症になった。その後の研究では、サル、ネズミ、ネコ、ハクビシンなどはSARSコロナウイルスの感染を受けてもほとんど発病しないことがわかった。さらに中国南部で野生動物を扱う人たちについて調べたところ、約20%がSARSもしくは類似ウイルスの抗体を持っており、彼らも発病しないか、軽傷ですんでいたという。不思議なウイルスだ。

韓国でも被害

 その後に発生した類似の感染症にMERSがある。2012年にサウジアラビアで第一例が見つかり、16年1月までに感染者1626人、死者が少なくとも586人。ウイルスの名称はMERSコロナウイルス。韓国での感染者186人、死者38人が目立った。最初の患者に、サウジアラビア滞在歴があった。

 MERSコロナウイルスは、ヒトコブラクダが人に伝播させたとみられている。ラクダ飼育者は、このウイルスの抗体を持つ率が高く、軽症で推移する場合が多いらしい。かつて中東の人は幼少のころからラクダと共生していたが、都市化が進み、ラクダと接しない人が増えたこととの関連が想定されている。

 動物はそれぞれ特有のコロナウイルスを持つ。人間の場合も、普通の風邪の5%は人のコロナウイルスによるものだという。通常、コロナウイルスは動物の種の壁を越えて感染することはほとんどないが、ウイルスの突然変異によって、種を越えるようになる。今回の新型肺炎の詳細は不明だが、似た経路をたどったのだろうか。

 近年の新種の感染症流行の背景には、交通網の発達や急激な都市化の影響があるとされる。エボラウイルス病はアフリカのごく一部の地域の風土病だったが、僻村と都市との交流が進んだことから疫病が都市部に波及、世界に拡散した。

 かつてインディアンやアイヌが、「文明社会」と接したことで、未知の病気を持ち込まれ苦しんだことはよく知られている。BOOKウォッチで紹介した『鎖塚――自由民権と囚人労働の記録』(岩波現代文庫)によると、明治政府は北海道の開拓で、樺太アイヌ人を動員しようとしたが、コレラや天然痘で大量の病死者が出たことなどから無理と判断、囚人に切り替えたそうだ。

 SARSやMERS、エボラ出血熱はその逆の話のような気もする。これからも「文明社会」が未知のウイルスと遭遇し、混乱に陥る可能性が大いにありそうだ。地震や噴火などの天変地異、核管理、温暖化などと並んで、感染症に対しても備えが必要だと痛感する。すでに医療や畜産関係者の間では周知のことと思われるが、政治家や行政一般、マスコミ関係者も日ごろから知識を深めておくべきだろう。本書はその一助となる良書だ。

【私の論評】この4月に日本を訪問する習近平は、失脚の可能性を自ら高めている(゚д゚)!


中国農業農村部(日本の農林水産省に相当)は2月1日、湖南省邵陽市の養鶏場で、ニワトリがH5N1型の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認されたと発表。この養鶏場には7850羽のニワトリが飼育されていましたが、そのうち4500羽がウイルスに感染して死亡したといいます。同省は「地元当局が感染の確認を受けて、予防的に1万7828羽を殺処分するなど、感染が広がらないよう処理をした」ことを明らかにしました。

冒頭の記事では、「H5N1型鳥インフルエンザ」こそが人類史上最悪のパンデミックを引き起こす可能性があるとしています。「H5N1型鳥インフルエンザ」のほうが、危機なようです。

米国疾病管理予防センターによると、鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染した例は2003年から19年の16年間で、世界中で計861例が報告されています。その原因となっているのは、養鶏場などで働いていて、感染したニワトリと密接に接触したためであることがほとんどです。致死率は50%以上と極めて高く、感染した861人のうち、455人が死亡。中国だけでは過去16年間に53件の鳥インフルエンザ感染が報告されており、31人が亡くなっているといいます。

これに対して、2002年から03年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の場合、感染による致死率は約10%。武漢が発生源の新型コロナウイルス感染の場合は約2%となっており、これらに比べるとH5N1型の鳥インフルエンザウイルスによる人間への毒性は極めて強力なことがわかります。

同センターは「ヒトからヒトへの感染はほとんど報告されていない」としていますが、中国では一緒に生活していた「きょうだい」や「親子」間での感染が原因で死亡したケースも報告されており、鳥インフルエンザが今回の新型コロナウイルスのようなヒトからヒトへの感染がまったくのゼロとはいえないようです。

新型コロナウイルスの場合も、中国政府は発生当初には「ヒト・ヒト感染はない」と報告していましたが、感染者の死亡例が増えるにつれて、前言を撤回しています。人間の体内に入ったウイルスが突然変異して、ウイルスの感染力が強くなった可能性も考えられます。

鳥インフルエンザ流行の兆しが見えたことで、中国への国際的な警戒感は強まりこそすれ、弱まることはないです。SARSの場合、02年秋に発生が確認され、感染の終結宣言が出されたのは03年7月でした。このため、SARSのコロナウイルスは暑さに弱いとの見方が強いですが、新型コロナウイルスがSARSと同じ性質かどうかは現段階では不明。これから半年間は油断できません。

新たな鳥インフルエンザの流行で、国際社会の対中警戒感は一層強まることは確実なので、習近平国家主席を最高指導者とする中国共産党政権は、その存立をかけて、年初から大きな危機を迎えているのは間違いないです。

現在、中国で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大しています。中国動物疫病予防管理センターは、今回の鳥インフルエンザの発生は、中国の公衆衛生資源の負担をさらに増大させると指摘しています。

新型コロナウィルスの肺炎拡大は、もうすでに起こってしまったことなので、起こったもに対する対処しかないわけです。これは、中国をはじめ感染者が出た国々で最大限の努力で封じ込めていただき、なるべくはやく終息させていただきたいものです。

そうして、「H5N1型鳥インフルエンザ」に関しては、中国が全力で人への感染を防いでいただきたいものです。新型肺炎に加えて、「H5N1型鳥インフルエンザ」が人に感染して、蔓延してしまえば、中国はとんでもないことになりそうです。

このような時期に習近平氏らが日本を訪問をしているときに、中国内で政変が起こり、習近平氏を失脚させ、新たな政権を樹立ということも十分起こりえます。

楊潔チ氏

中国の外交担当トップである楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)中国共産党政治局員が、今月下旬に来日する方向で日中両政府が調整していることが分かりました。

北村滋国家安全保障局長と会談し、4月上旬に予定する習近平国家主席の国賓来日に向け詰めの調整を行います。ただ、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスに対処するため、習氏が来日を見送る可能性も指摘されています。楊氏の来日は、政府がこだわってきた春の国賓来日の有無を左右する重要なポイントになりそうです。

「影響があるとは聞いていない。予定通り準備を粛々と進めていきたい」

菅義偉官房長官は4日の記者会見で、現時点では新型肺炎の問題が習氏来日に向けた調整に影響を与えていないと強調しました。

ただ、習指導部にとって目下の最重要課題は国内での感染の封じ込めです。習氏は当面対応に追われ、とても外遊に出る余裕はないのではないはずです。中国側はメンツがあるので、今の時点では『訪日計画に影響しない』と言わざるを得ないでしょうが、直前でのキャンセルは十分あり得ると思います。

習氏の来日について、政府関係者は「楊氏が来たときの状況次第だ」と慎重な見方も示しています。本来は習氏の露払い役として来日する楊氏がどう対応するのか注目されるところです。

このような時期に、来日すれば、先にも述べたように、中国の反習近平派は、この機会を逃さず、真っ先に人民開放軍を掌握して、新政府樹立に走るかもしれません。今頃、反習近平派は鵜の目鷹の目(ウノメタカノメ)で、習近平の来日日程等を探って、クーデター計画などを練っているかもしれません。



実際中国には、クーデターの噂もありました。習近平が来日中に、クーデターが起こるか、来日から帰国した途端反逆者として逮捕されることも考えられます。そこまで行かなくても、習近平が帰国してから間もなく、政変が起こるということも十分考えられます。

何しろ、これだけ酷い伝染病の蔓延しているさなかに、苦しんでいる人民を尻目に、日本で国賓待遇を受けるといういうのですから、多くの人民の怒りは頂点に達することでしょう。場合によって、人民の憤怒のマグマが、習近平だけではなく、日本に向かって大爆発する可能性もあります。

ただでさえ、中国ではこのブログで以前掲載したように、毎年暴動が10万件も起こっており、それこそ、中国人民や本来外国であるはずの自治区等の人々の憤怒のマグマがいつ大爆発してもおかしくは無い状況です。それが、今回の新型肺炎騒ぎで、さらに頂点に達しています。反習近平派は、当然このような状況も利用するでしょう。

そのような状況にもかかわらず、習近平が日本を訪問するのは、自ら失脚する確率を高めているようなものです。楊氏訪問で、来日時期を延期するのが正常な判断だと思います。

ただし、中国は、香港や台湾に対してかなり強力な工作を行ったにも関わらず、香港の選挙で負け、その後台湾の選挙でも負け、新型肺炎では、当初の対処方法を間違い、国内で蔓延するだけではなく、海外にも患者を発生させてしまうような不手際を繰り返しています。

これは、当然のことながら、習近平の自身の大きな読み違いという側面もあると思います。そうして、習近平の取り巻きは、独裁政権にありがちな、とにかく現実を見るのではなく、上をみて仕事をして、おべっかばかり使っていて、現実が見えなくなっているかもしれません。であれば、習近平は裸の王様で、やはり予定通り来日して、あつさり失脚という道を自ら選んでしまうのかもしれません。今後の趨勢を見守っていきたいと思います。

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2020年2月3日月曜日

新型肺炎、中国の“衝撃”惨状 感染者「27万人以上」予測も…習政権は“隠蔽”に奔走、「国賓」来日に潜む危険 ―【私の論評】本来習近平自身が、延期等を打診してくるべき!日本に対する無礼の極み(゚д゚)!

中国発「新型肺炎」

習近平(左)と李克強(右)のコンビを信用できるのか

中国本土で、新型コロナウイルスによる肺炎が「パンデミック(感染爆発)」状態となっている。一日あたりの感染者増加は2000人以上。中国当局は「春節(旧正月)」の大型連休が明けた3日、さらなる感染拡大を防ぐため厳戒態勢を敷いている。こうしたなか、フィリピンで2日、新型肺炎で中国人男性が死亡したと発表された。世界保健機関(WHO)によると中国国外での死者は初めて。地球規模の混乱が続くなか、今年4月、天皇、皇后両陛下が接遇される「国賓」として、中国の習近平国家主席を迎えられるのか? 中国事情に精通するノンフィクション作家の河添恵子氏が、大手メディアが伝えない「衝撃の裏情報」に迫る緊急寄稿第2弾-。


 「2月4日には、新型ウイルスが発生した湖北省武漢市で13万人から27万人以上の感染者が予測される。ほかに最大規模の感染者が予想される中国の都市は、上海、北京、広州、重慶、成都だ」

 「飛行機での移動を通じて感染拡大の危険性が高い国や特別行政区は、タイと日本、台湾、香港、韓国である」

 これは、英国ランカスター大学と、同グラスゴー大学ウイルス研究センター、米国フロリダ大学の感染症生物学者の専門家が1月23日、今後の14日間の新型肺炎の流行予測として発表した内容である。

 武漢市からのチャーター機3機で日本に帰国した計565人の中に、感染者は8人いた。感染割合は1・5%弱となる。武漢市の人口は約1100万人なので、16万人以上が感染してもおかしくはない。

 しかも、中国政府が隠蔽に奔走していた間に、北京や上海はじめ中国全土にウイルスが拡散してしまった。英BBCは先月31日、「チベットでも感染者が確認されたことは、中国すべての地域にウイルスが到達したことを意味する」と報じた。

中国メディアによると、3日朝時点で、中国全土の死者は360人、感染者は1万6000人超という。感染拡大が加速するなか、習近平政権は「情報統制」にますます力を注いでいるように感じる。

 新華網によると、中国の巨大メッセージアプリ「WeChat(微信)」のセキュリティーセンターは先月25日、「新型肺炎に関する噂の特別管理公告」を発表した。「SNSでの伝達、伝聞の類の噂話は社会秩序を著しく乱すため、3年以下の懲役、拘束または管理対象とする。重大な結果を招く者は、3~7年以下の懲役に処せられる」という。

 さらに、李克強首相(中国共産党序列2位)をトップ(組長)とする、「アウトブレーク(集団発生)を防ぎ制御する領導小組(疫情防控領導小組)」が立ち上がった。宣伝担当の王滬寧・政治局常務委員(同5位)を副組長に、中央宣伝部部長、公安部部長など党幹部がメンバー入りした。

 これに対し、中国国内では「医師や学者など専門家がいない!」「人民の命は後回しか」「目的は人民の怒りの封じ込めと、情報漏洩(ろうえい)を防ぐことだ」との揶揄(やゆ)が飛んでいる。また、「これまで、複数の組長になってきた習主席が、責任を李首相に押し付けようとしている」との皮肉も聞こえる。

 混乱をよそに、中国各地からは「意を決した」人民によるさまざまな情報や写真、映像が拡散され続けている。

 武漢の協和病院では、1人の肺炎患者を治療したところ、14人の医療従事者が同時に感染したという。また、上海では先月末までに、市内201カ所の公園が閉鎖された。上海で最も有名な繁華街「南京路」が“無人状態”となっている写真も流出している。

 また、北京大学呼吸器科の主任医師が、中国中央電視台(CCTV)で「(新型肺炎の流行は)制御可能」「医師と看護師など医療現場での感染者はない」と語り、党幹部らと武漢市を訪れた後、自身の感染が発覚して隔離された、という話もある。「北京の病院は国家安全部(=情報機関)に管理され始めている」との情報もある。

 ロイター通信は、封鎖されて7日目の武漢市の様子を航空写真で公開した。中国メディアの一部は「死城(死んだ街)」と表現した。

 ■習主席「国賓」来日の危険度

 また、中国内外からは、「武漢市の海鮮市場からウイルス感染が広がったのではなく、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、エボラ出血熱といった危険な病原体を研究するために指定された中国唯一の研究室『武漢P4研究室』から生物化学兵器が漏れた」という説とともに、犯人捜しがヒートアップしている。

 情報が錯綜(さくそう)するなかで流れる「習政権は、昨秋から戦争の準備をしていた」とか、「9月には、すでに新型コロナウイルスが存在していた」という話も、フェイクとは言い切れなくなった。

 なぜなら、武漢天河国際空港の税関で「コロナウイルスの感染が1例検出された」という想定での緊急訓練活動が昨年9月18日に実施されたことを、湖北省の官製メディアが報じているからだ。

 さて、問題は日本だ。

 日中両政府は現在、習主席の4月上旬の「国賓」来日で調整している。実現すれば、習主席は中国から大勢の同行者とともに来日するが、その中に「自覚なき感染者」が含まれていないともかぎらない。

 国賓の場合、天皇、皇后両陛下による歓迎行事や会見、宮中晩さん会などが催される。両陛下や皇族の方々が、新型肺炎に感染しないと誰が保証できるのか。

 情報の「開示」どころか「隠蔽」に走る習政権のメンツを立てることが最優先事項なのか? 永田町が「国民の安全」と「国体の護持」について真剣に考えているとは到底思えない。

【私の論評】本来習近平自身が、延期等を打診してくるべき!日本に対する無礼の極み(゚д゚)!

上の記事にもある、新型コロナウィルスがHIVからデザインされた生物兵器というのはインドの研究チームの早とちりのようです。新型の遺伝子はSARSなどと96%一致。HIVと同じとされている部分は他の生物にもたくさん存在する配列のようです。そもそも、新型コロナウィルスには、遺伝子編集された痕跡がないとのことで、生物兵器説はないと見て良いでしょう。

それに、生物兵器であれば、ウィルスの蔓延を防いだり、治療方法も開発してあるでしょうから、発症・感染の初期にはやめに対策を打てたはずですから、現状をみていると、そのようなことはないようなので、こちらの観点からも、やはり生物兵器説はあり得ないと断じて良いでしょう。この点以外は、冒頭の記事の内容は、概ね信憑性があるものと思います。



ところで、沖縄県・尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で3日、中国海警局の船4隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認しました。2日にも確認しており、尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは2日連続です。

第11管区海上保安本部(那覇)によると、1隻は機関砲のようなものを搭載。領海に近づかないよう巡視船が警告しました。

中国は新型肺炎で、大変なはずですが、そのような大変な時にもかかわらず、今年に入ってから皆勤賞です。1日も欠かさず「毎日」来ています。今日で28日連続です。

自民党幹事長二階氏が「親戚の人が病になったとという思い」とマスク100万枚送った国からの仕打ちがこれです。馬鹿馬鹿しくてもはや腹も立たないです。政治家の言葉はまさに政治的駆け引きの道具ですから、時には歯の浮くお世辞も必要ですが、時機もわからないご老体には無理な話だったようです。二階幹事長の勇退と習近平主席の国賓招聘中止をあわせて求めたいです。


そうして、中国外務省は1日、春に予定する習近平国家主席の国賓訪日に向けた準備を日本側と継続する考えを示し、新型肺炎の拡大やそれを受けた日本側の渡航制限などの対応は訪日計画に影響しないとの見解を示しました。
日本側と密接に連絡を取り合っていると強調。「重要な外交議題と日程を順調に進める」ため、日本側と努力を続けるとしました。
日本政府は中国湖北省から新型肺炎が拡大したことを受け、14日以内に湖北省に滞在歴がある外国人の入国拒否を開始。同省を除く中国全土の感染症危険情報を「不要不急の渡航の自粛」を求めるレベル2に引き上げました。
コロナウイルスを蔓延する最中に、中国ではH5N1鳥インフルエンザが同時に爆発的広げてます。ウイルスが高伝染性と発表されています。

このような状況では、本来ならば、中国側から訪問の延期などを打診するのが普通だと思います。逆の立場になったと考えれば、すぐにわかります。安倍総理が4月に中国訪問を予定していて、日本で大規模な伝染病が発生した場合、普通は日本側から延期を申しでるなどのことをするはずです。

これは、日本に限らず、他の先進国が同じ陽な立場にたった場合、同じようなことをするでしょう。少なくも現時点では様子見ということになるでしょう。

それだけ、習近平とその取り巻きには、世間一般常識がないということだと思います。まさに日本に対する無礼の極みです。国内で、自分たちの思い通りにゴリ押しをしてきたので、外国にまでそれが効くと勘違いしている大馬鹿共の集まりです。

非常識な習近平は中国内でもかなり浮いた存在になっているようです。このままだと、習近平国賓招待される前に、習近平が失脚する可能性が高くなりました。

共産党内部ではコロナウイルスのトラブルに習近平の無能を責めたてられるでしょう。もし安倍首相が習近平招待を盛大にアピールする最中に習近平が失脚したとしたら、チャイナマネーに理性を失った愚かな日本として、世界の物笑いの種になるでしょう。

ところで、安倍総理は国会で新型コロナウイルスの感染拡大を受け台湾のWHO参加の必要性を強調しました。政治的な立場で排除しては、地域全体を含めた健康維持、感染の防止は難しいとさらっと爆弾発言をしました。

   安倍首相は30日、新型コロナウイルスの感染例が増加し
   ていることを受けて、台湾のWHO加盟を支持した

これは、明らかに中共を念頭に置いており、安倍総理個人としては習近平の国賓招待に積極的ではないとのほのめかしとも受け取れる発言です。呼びたい真犯人は、やはり二階幹事長でしょうか。安倍総理としては、党内政治力学で、二階氏を無下に突き放すということもできないのでしょう。

日本の親中政治家にも、そろそろ目覚めていただきたいものです。米国ではもはや、政治的には、親中派の居場所はなくなりました。なぜそうなるのか、日本の親中政治家も勉強すべきです。そうでないと、彼らの居場所が日本でもなくなるでしょう。

しかし、そんなことは今では子供でも理解できることだと思います。国内外で、非道の限りをつくし、反対するものは、暴力で弾圧し、WTOやWHOなどのような国際組織においても札束にものをいわせ、我が物がを振る舞い、他国の領土にも平気で侵略して我が物にし、挙げ句の果てに世界唯一の超大国である米国の怒りを買い、米国は中国が体制を変えるか、経済的に無意味な存在になるまで、対中冷戦を継続することでしょう。

これは、どう考えても、現在の中国の体制には、将来はないと見るのが、当たり前でしょう。それでも、中国、中国というのは、すでに妄想の中に入り込んでしまっているのかもしれません。

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2020年2月2日日曜日

ミサイル防衛を危ぶませる極超音速兵器―【私の論評】日本にとってイージスアショアよりも、核ミサイルに対する「先制攻撃」の方が、はるかに現実的(゚д゚)!

ミサイル防衛を危ぶませる極超音速兵器

岡崎研究所

 12月27日、ロシア軍は、超高速で飛ぶことができる極超音速兵器アヴァンガルドを配備した、と発表した。今回配備されたアヴァンガルドは、ICBMに搭載されて打ち上げられ、その後極超音速で滑空するミサイルとされている。その速度はマッハ20くらいにもなるという。極超音速というのは通常マッハ5以上の高速を意味するが、その基準を大きく上回っていることになる。その上、軌道を変えることができるという。


 アヴァンガルドのような極超音速兵器を在来のミサイル防衛で迎撃することは極めて困難であろう。12月27日付けのニューヨーク・タイムズ紙の解説記事‘Russia Deploys Hypersonic Weapon, Potentially Renewing Arms Race’は、次のように説明している。「極超音速滑空機として知られるロシアの武器は、弾道ミサイル防衛レーダーを回避して大気中をより低く飛ぶことができる。ICBMに搭載されており、伝統的技術で最初は弾頭を目標に向けて運ぶ。しかし、目標に近づくにつれて、予測不可能な経路で極超音速で飛行するように設計されている。それを検出、追跡、撃墜するのは非常に困難である」。

 今回の発表は、ロシア側が存続を切望している軍備管理条約New START(戦略的核ミサイル発射装置を制限し、両方の配備核弾頭を制限)の存廃交渉に関わっているかもしれない。トランプ政権は条約の延長を約束せず、トランプは中国やその他の核兵器国が含まれない限り更新しない、と何度も言っている。中国は、その兵器の数は米ロの5分の1であり、数量制限に関心がないと述べている。そこで、ロシアは新しい極超音速兵器を誇示し、トランプに交渉を始めるように圧力をかけている可能性がある。

 いずれにせよ、極超音速ミサイルの開発は中国でも行われているし、今後、米国も力を入れていくことになる。米軍高官は、米国は2022年までに独自の極超音速兵器を配備する計画であると述べている由である。この分野での軍拡競争はまず止まらないと思われる。

 こうした極超音速ミサイルが出来てくると、ミサイル防衛は意味がなくなってくるだろう。 日本がイージス・アショアを配備しても、ロシアや中国が極超音速ミサイルを配備して来ると、ミサイル防衛は不可能であろう。北朝鮮が極超音速ミサイルを開発するにはもっと時間がかかるから、北朝鮮のミサイルには、ミサイル防衛はある程度の有効性を示すと思われるが、それでも完全に防衛できることはない。相当な撃ち漏らしが避けられないであろう。

 核兵器出現以来、核兵器が使われないようにということで、戦略的安定をいかに確保するかについて多くの議論がなされてきた。結局、相互に脆弱性を持たせ、相互確証破壊(MAD)を確実にして置くことが最も良いということになったが、これはなかなか心理的に受け入れられず、SDI構想やミサイル防衛などが主張されることになった。2002年の米国のABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)からの脱退は、ミサイル防衛への制限を外し、ミサイル防衛を行うという選択であるが、この極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、状況は相互確証破壊に戻ってしまわざるを得ないことになっていると思われる。

 日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう。そして、核抑止力の問題を安全保障上の問題として、タブーなしに議論してみる必要がある。

 なお、ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。

【私の論評】日本にとってイージスアショアよりも、核ミサイルに対する「先制攻撃」の方が、はるかに現実的(゚д゚)!

上の記事の結論部分に、
ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。
とありますが、これは事実です。もっとわかりやすくいうと、ロシアのGDPは日本の1/3です。それは、東京都や韓国を若干下回る程度です。

このようなロシアが、米国と軍拡競争に入れば、間違いなくロシアは負けるしかありません。ただし、現在中国もそれを開発しているということが不安材料です。

現在の中国は、SARS、豚コレラ、アフリカ豚コレラに続き新型コロナウィナスが発生して、この対策に集中しているところです。さらに、鳥インフルエンザが発生しています。

中国の湖北省で新型のコロナウイルスの感染が拡大する中、隣接する内陸部の湖南省の養鶏場でニワトリが「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認され、当局は警戒を強めているものとみられます。

これは、中国の農業農村省が1日発表したもので、湖南省邵陽にある養鶏場で、ニワトリが「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認され、4500羽が死んだということです。

感染の確認を受けて、およそ1万7800羽が予防的に殺処分され、感染が広がらないよう処理をしたということです。

鳥インフルエンザはもともとは鳥に感染する病気で、「H5N1型」と呼ばれるウイルスはヒトにも感染して重い症状を引き起こすことが知られています。

上海ではマスクにフード姿でスマホを操作する女性の姿が

新型コロナウィルスと、鳥インフルエンザに対処するためには、莫大な経費と、手間をさかなくてはできません。しかし、これらに対処したとしても、中国が社会構造改革を行わない限り、これからも様々な疫病に悩まされることになります。

以前このブログで指摘したように、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、中国はもっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を変えなければできないことです。

中国が社会構造改革に取り組むようになったとしても、それが成功し、まともな社会構造を構築し、疫病が起こらない、もしくは起こっても、初期のうちに対処できるような体制を整えるまではには、膨大な経費と時間がかかることでしょう。

いずれにしても、今後中国は、経済的にかなり落ち込むことが予想されます。そうなると、ロシアと同じように、米国とまともに軍拡競争をして、米国に勝つことなどできないでしょう。

そうはいいながら、中露は、極超音速兵器の開発をやめることはないでしょう。特に、米国も極超音速兵器、ならびにそれに対する防御兵器の開発を継続するなら、なおさらやめないでしょう。そうして、これは確実に中露の経済弱体化につながります。かつてのソ連が崩壊した原因の一つに米国との軍拡競争、特にスターウォーズ構想関連での競争があります。

スターウォーズ構想の概念図

極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、今後相互確証破壊に戻ることになるは間違いないでしょう。そうなるとイージスアショアなどはあまり意味を持ちません。北朝鮮の核ミサイルも従来よりは、抑止力を減退することになります。

この状況について、上の記事では、「日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう」としていますが、それに対する具体的な示唆は何もありません。

これに対して有効なのは、まずは北朝鮮への対処方法を日本がはっきりさせておくことです。

それには、日本が北朝鮮の核施設、ミサイル発射施設などに対して日本を攻撃する可能性が高まったときには、先制攻撃ができる体制を整えることです。

これは、日本も先制的自衛権を行使することを意味しますが、これは他国からの武力攻撃が発生していない段階ですでに自国に差し迫った危険が存在するとして、そのような危険を予防するために自衛措置を行うことができるとされる国連憲章にもある国家の権利です。

そうして、それを実行するには、日本は航空自衛隊などの戦闘機などの現行兵器に若干の装備品を加えるだけで十分対応可能です。無論、その他のイージス艦、ミサイルその他の兵器でも現行で可能なもの全部と若干の装備品を付加すれば使えるものは全部使うべきです。

これは、絵空事ではなく、実際に1981年にイスラエルが、バビロン作戦という作戦名の先制攻撃でイラクの原発を破壊した事例があります。

バビロン作戦て破壊されたイラクの原発

国内法的にも、軍事的にもそれを可能にして、先制攻撃の対象国がどこか、そうしてその具体的方法などは明らかにせず、それを世界に向けて声明すべきなのです。

それは、特に特ア三国(中国、韓国、北朝鮮)とロシアに衝撃を与えるでしょう。無論、米国をはじめ多くの国々は、そのような声明は主に北朝鮮の核に対する備えであるということで、歓迎されるでしょうが、特ア三国やロシアは自分たちも標的になると考えることになるでしょう。

こちらのほうが、はるかに現実的な対応です。それに、イージスアショアよりはるかに経済的です。日本としては、まずはこれを実行して、将来的に余裕があれば、極超音速ミサイルも開発すれば良いのです。米国と共同開発しても良いと思います。

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2020年2月1日土曜日

新型肺炎は、中国共産党支配の「終わりの始まり」かもしれない―【私の論評】全体主義国家が強大になっても、様々な異変でそのほころびを露呈し結局滅ぶ(゚д゚)!

チェルノブイリとソ連崩壊に似ている

「武漢封鎖」と「チェルノブイリ」の類似性

感染が拡大している新型肺炎は、中国の政治指導体制に重大な影響を与えるのではないか。チェルノブイリ原発事故が旧ソ連崩壊のきっかけを作ったように、新型肺炎は中国共産党支配の「終わりの始まり」になる可能性もある。

中国当局は武漢における初動の情報隠蔽を内外で批判されたために、連日、記者会見を開いて、感染者と死者の数を公表している。それでも、まだ実態には程遠いはずだ。病院に来た患者を収容しきれず、自宅に追い返しているのだから、正しい数字を把握できるわけがない。

感染者数について、当初は米欧の研究チームが公表したように「最大で35万人以上になる」という推計もあった。ただし、1月27日時点での改訂版推計では、具体的な数字が削除された(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.01.23.20018549v2.full.pdf+html)。状況が流動的で、信頼できる推計値を出せないのかもしれない。

いずれにせよ、感染者数も死者数も増加の一途を辿っており、いつピークを打つのか、現時点では見通せない。日本でも、武漢からの帰国者の中に感染者がいた。数人の感染者で大騒ぎなのだから、武漢では事態の沈静化どころではないはずだ。

武漢市内に突貫工事で建設されている病院

マスクに防護服姿の当局者たちが武漢駅を封鎖した光景を見て、私は、1986年4月26日にソ連で起きたチェルノブイリ原発事故を思い出した。防護服だけでなく、当局による情報隠蔽と慌てぶりがそっくりだったからだ。

事故がもたらした「共産党崩壊」

チェルノブイリ事故も発生直後、現場の当局者によって事実が隠蔽された。世界が事故を知ったのは、事故発生から2日後である。スウェーデンの原発で働いていた作業員のアラームが鳴り響き、靴から高い放射線量が検出されたのがきっかけだった。

付着していた放射性物質を調べたところ、汚染の発生源は自分たちの原発ではないと分かり、方角からソ連の原発を疑った。スウェーデン政府が問い合わせて、初めてソ連が事故発生を認めたのである。当時の様子を、ソ連共産党書記長だったゴルバチョフ氏は回想録で、次のように記している。
事故の第一報がモスクワに入ったのは、26日早朝だった。……直ちに政府委員会を事故現場に派遣することが決定された。……27日に委員会からの情報が入り始めた。……28日にルイシコフが委員会の活動に関する最初の成果を政治局に報告した。……意図的に隠したという告発に対して、私は断固否認する。単に我々は当時、まだそれを知らなかっただけだ。 
事故の直後に政治局会議で行ったアカデミー会員の……発言が今でも忘れられない。……「恐ろしいことは何も怒っていない。こんなことは工業用原子炉にはよくあることです。ウォトカを1、2杯飲み、ザクースカ(注・ロシアの前菜)をつまんで一眠りすれば、それで終わりですよ」(『ゴルバチョフ回想録』上巻、1996年、新潮社、以下同じ)
ゴルバチョフ氏は「自分たちは知らなかった」と言い訳をしているが、一方で、自分たちも「アカデミー会員に騙されていた」と認めている。つまり、ソ連が世界に事故を隠した事実は変わらない。そのうえで、次のように関係者を断罪し、事故を総括している。
極度に否定的な形をとって現れたのが、所轄官庁の縄張り主義と科学の独占主義にしめつけられた原子力部門の閉鎖性と秘密性だった。……私は1986年7月3日の政治局会議で言った。「……全システムを支配していたのは、ごますり、へつらい、セクト主義と異分子への圧迫、見せびらかし、指導者を取り巻く個人的、派閥的関係の精神です」 
事故は、我が国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことをまざまざと見せつける恐ろしい証明であった。……それは途方もない重さで我々が始めた改革にはねかえり、文字通り国を軌道からはじき出してしまったのである。
ゴルバチョフ氏は事故の教訓を深刻に受け止めて、グラスノスチと呼ばれた情報公開を武器にして、急進的なペレストロイカ(改革)に乗り出した。それは部分的に成功したが、最終的に共産党体制の崩壊とソ連という国家の解体をもたらす結果になった。

あまりにお粗末な中国の役人たち

ゴルバチョフ氏が指摘した「役所の閉鎖性や秘密主義、官僚のごますり、へつらい」など は、いまの中国共産党にそのまま当てはまる。

読売新聞によれば、武漢市の病院は「許可を得ずに、公共の場で感染状況を語ったり、メディアの取材を受けてはならない」と医師たちに指示していた(https://www.yomiuri.co.jp/world/20200125-OYT1T50233/)。武漢市長は1月26日に開いた会見で、情報提供の遅れを認めたうえで「上層部の許可を得なければ、情報を公表できなかった」と釈明している。

このときの会見で、湖北省の省長がマスクを着用していなかったり、武漢市長がマスクの裏表を逆にしていたり、マスクの生産量を億単位と万単位で間違えたりした。はては、会見後につぶやいた「オレの回答は良かったでしょ」という言葉が動画に流れて、中国のネットで「無能の証明」などと大荒れになった。

お粗末な対応を見る限り、中国の当局者たちは、ソ連と同じように、上司のご機嫌伺いを最優先にしただけでなく、そもそも行政能力が話にならないほど低レベルなのがうかがえる。共産主義の独裁体制が何十年も続くと、どの国もこうなる、という証明だろう。

新型肺炎は原発事故より厄介な面もある。原発近くで放射能を浴びれば、健康に障害が出るのは確実だが、新型肺炎は自分が感染しているのかどうか判然とせず、感染していたとしても、必ず死に至るとは限らない。それだけ人々の不安は一層、高まるのだ。

ソ連崩壊は「5年後」だったが…

被害拡大の様相も異なる。放射能汚染は風に乗って、時間とともに拡大したが、新型肺炎のウイルスは人間が媒体になって、中国と世界の各地に散らばっていった。武漢市長は街が封鎖される前に500万人が街を出た、と明らかにした。

そうであれば、今後、上海や北京など大都市が「第2、第3の武漢」になる可能性が高い。潜伏期間を考えると、今週から来週にかけてがヤマ場ではないか。上海や北京が汚染されれば、混乱は武漢の比ではないだろう。今度こそ、中央政府による徹底的な情報隠蔽が始まる可能性もある。いや、もう始まっているかもしれない。

新型肺炎で中国経済が打撃を受けるのは明白だが、それは政治体制への打撃にもなる。感染対応のお粗末さに加えて、失業と倒産が増え、政府に対する人々の怒りが増幅する。米国と合意したばかりの「2年間で2000億ドル」の輸入拡大策もどうなるか。内需が劇的に落ち込めば、輸入拡大どころではない。

反政府勢力によるバイオテロが起きる可能性もある。テロリストから見れば、新型肺炎の蔓延は、ウイルスを使ったバイオテロを実行する絶好の機会になる。ウイルスをばらまいても、意図的なテロか自然の感染拡大か、政府には直ちに見分けがつかないからだ。

チェルノブイリ原発事故がソ連の崩壊を招いたのは、究極的には、人々がソ連共産党を信頼しなくなったからだった。ゴルバチョフ氏が書いたように、事故は「国を軌道からはじき出してしまった」のである。新型肺炎も、中国共産党に対する信頼を傷つけているに違いない。

ソ連が国ごと崩壊したのは、原発事故から5年後だった。中国は、どうなるのだろうか。

【私の論評】全体主義国家が強大になっても、様々な異変でそのほころびを露呈し結局滅ぶ(゚д゚)!

さて、上の長谷川幸洋氏の記事では、チェルノブイリ原発事故が起きてから、5年後にソ連が崩壊したことを例として、中国も新型肺炎の蔓延が起きたことで、かつてのソ連と同じように崩壊する可能性を示唆しています。

チェルノブイリ原発事故

この説には信憑性があります。中国、ソ連そうして、かつてのナチスドイツのような全体主義の国家は長い間にはほころびが見えるようになります。そのほころびが崩壊前に目立つようになるということだと思います。

ナチス・ドイツの場合も、崩壊する前に、ヒンデンブルク号の悲劇という大惨事がありました。この大惨事があったのは、1937年でした。1945年にナチス・ドイツは崩壊しています。この大惨事が発生してから、8年後のことです。ナチス・ドイツはその後ヨーロッパ各地に侵攻していきましたが、その過程で様々なほころびを見せました。

炎上するヒンデンブルク号

このほかにも、全体主義国が経済的に発展して、世界的にも認知され、オリンピックを開催した10年後あたりに崩壊しているという事実もあります。

ベルリン・オリンピックが開催されたのは、1936年でした。ドイツ第3帝国(ナチス・ドイツ)が崩壊したのは、1945年5月です。モスクワ・オリンピックが開催されたのは、1980年、ソビエト連邦崩壊は1991年です。全体主義国家であるソ連もナチスドイツも、オリンピックを開催すると約10年後に崩壊しているわけです。

現代の全体主義国家中国では北京オリンピックが開催されたのは、2008年でした。その10年後の2018年には、中国は崩壊しませんでしたが、先日もこのブログに掲載したように、米国の対中政策が2018年を転機に、対決一色になりました。

2018年米国では中国に対する批判等は一巡し、中国に対抗するのは、米国の意思であるとの確認がされたのです。2019年以降は、実際に逐次中国に対する対抗策を長期にわたって実行し続ける段階に移行し、現在に至っています。

米国は、中国共産党が中国の体制を変えるか、変えるることができないというのなら、他国に大きな影響力を与えることができなくなるまで、中国経済を弱体化するまで、対中冷戦をやめることはありません。

2018年に中国の運命は決まったと言っても良いかもしれません。世界で唯一の超大国である、米国が中国をかつてのソ連のような敵国としたのですから、この時点で中国の運命は定まったのです。

もし、米国にオバマ政権が誕生して、中国に対して優柔不断な態度をとっていなければ、中国は2018年に崩壊したかもしれません、

結局、全体主義国が、オリンピックを開催できるまで、強大になり、他国が無視できない存在になったとしても、全体主義であるがゆえに様々なほころびが発生して、それがヒンデンブルク号の事件や、チェルノブイリ番発事故で可視化され、やがて崩壊するということなのでしょう。

北京オリンピック開会式での中国選手団

まさに、現在の中国で発生した新型ウィルスの蔓延も、現在の中国の全体主義であるがゆえのほころびを象徴するものなのでしょう。

そのほころびは無論ウィルスの蔓延だけではなく、中国社会・経済、その他あらゆる方面に蔓延しているのでしょう。

そうしたほころびを中国共産党は、軍事力や、国内の警察な城管などの暴力装置を用いた民衆の弾圧や、豊富だった資金力を用い、国内はもとより海外にも様々な工作をして、言葉通りの弥縫策を効果的に実施してきたのでしょう。

この弥縫策が、あまりに強力かつ巧であったため、多くの人たちが、「中国崩壊」を主張してきたにもかかわらず、中国はいままで崩壊しなかったのでしょう。

中国は建国以来毎年平均2万件の暴動が起こっていたとされますが、2008年あたりからは、10万件ともいわれるようになりました。このあたりから、中国は暴動の件数など公表しなくなりました。

日本の人口は、中国の1/10くらいですから、中国の10万件は、日本でいえば1万件です。これは、一日では約27件です。日本でもし、これくらいの暴動があったとしたら、すでに内乱状態と言っても良いです。

これを中国は、城管、公安警察(日本の警察にあたる)、武装警察、人民解放軍などを鎮圧してきたのです。このような実績があるからこそ、中国は香港デモなど軽く鎮圧できるものと考えていたようですが、その考えは甘かったとしか言いようがありません。

現代の中国はまさに典型なのですが、全体主義国家が様々な方法をとって、軍事力や経済力を強大にしたとしても、結局ナチス・ドイツやソ連と同じように、ヒンデンブルク号事件や、チェルノブイリ事故などのような様々な異変で、そのほころびを露呈して結局滅ぶのです。中国もその例外とはならないでしょう。

現在でも全体主義的な方針の国々のリーダーは、このことを真摯に受け止めるべきです。全体主義は、シンガポールなどのように小さな規模でやっているうちは長持ちするでしょうが、ナチス・ドイツやソ連のように大規模になると、崩壊するのです。

崩壊しないで発展しようとするなら、民主化、政治と経済の分離、法治国家は避けて通れないということです。これらを実施することにより、多数の中間層が、社会・経済的に自由に活動させる基盤を築いた上で、国を富ませ、経済力をつけ、その上で軍事力も強化するという道しかないということです。

これを無視する全体主義国家は、一時強大になったとしても、崩壊するのです。中共にも、全体主義をやめるか滅ぶかの二択しかないのです。

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