2021年2月9日火曜日

中国の半導体国産化に立ちふさがる壁―【私の論評】日本の産業界の優位性がある限り、中国、GAFA等が世界市場を独占するのは不可能!それは世界にとって良いこと(゚д゚)!

中国の半導体国産化に立ちふさがる壁

岡崎研究所

 米国が先端チップ(半導体)製造で後退を示す中、チップ製造で中国の時代が始まりつつあるかもしれない、中国をグローバル供給網に参加させ、かつ西側の利益を守るような、中国との予測可能な通商の枠組みを創る必要があると、1月23日付けの英Economist誌が論じている。

 英Economist誌にしては、かなり皮相な記事だと思う。マイクロチップ製造は、設計・材料・製造装置の存在を前提とする。エコノミスト誌の記事は、この3分野を度外視している。中国は、高級材料・先端製造装置を日本や西側諸国に依存している現実がある。

 マイクロチップ生産の歴史にはいくつかの節目があった。IBMに代表されるメイン・フレームからパソコンに移行した時、パソコンからスマホに移行した時、そして現在5Gに対応して多種多様・高性能のマイクロチップが求められる時代に移行しつつある。

 その中で、当初優位を築いた日本企業は、相次ぐパラダイム変化の波に乗り遅れて製造面では没落した。しかし、素材と製造機械生産の面では世界で高いシェアを維持している。

 米国は、製造の多くを台湾、韓国企業に仰ぐが、設計と製造機械生産の面では世界の大元を抑えており、それによって第三国企業をも己の対中制裁措置に従わせることができる。例えば、米国製装置で作ったものの対中輸出を禁ずる等である。

 一方、中国はこれまでマイクロチップの大輸入国であった。その主因は中国で最終製品を組み立てるアップル(台湾のホンハイが生産を受託)等が、そのために大量のマイクロチップを(おそらく、米国、台湾、韓国から)中国に持ち込んでいたからである。そのため、中国の自給率は20%以下と言われて久しい。外国企業は中国での自社製品組み立てを縮小しつつあるので、マイクロチップの自給率は数字の上では上がっていくだろう。

 習近平政権は遠大な目標を立てた。2025年には自給率70%を達成しようと言うのである。米国の制裁を食らった華為(ファーウェイ)等はすでに、国産マイクロチップへの移行をはかりつつある。しかし、これは容易なことではない。例えば5Gに対応できる高精細のチップを作るためには最先端のEUV(極端紫外線)を用いた露光装置が必要なのだが、これを作れるのは世界で現在オランダのASML一社のみである。これは一基100億円以上する代物なのだが、米国の差し金で、中国には輸出できない。他にもEUV対応の製造装置は米国・日本・欧州の企業に独占されていて、これを止められると中国はどうしようもない。華為などは台湾のTSMC等と緊密な人的関係を持っているが、人材だけではモノは作れない。

 マイクロチップ設計面で中国は力をつけているが、華為でさえ実際はArm社に依存していたのであり、自立までには時間がかかるし、いずれにしても製造装置、素材が入手できないと話にならない。

 冷戦時代のソ連のように、マイクロチップの最終製品を秋葉原などで購入してはスーツケースで密輸するしかない。ソ連はこれでは兵器生産にも足りず、西側に立ち遅れていったのである。

 つまり、西側による規制が守られていれば、中国はマイクロチップ面での後れを克服することはできない。力をつければ周辺諸国、西側諸国に歯をむくような中国は、こうしておけばいいのだろう。トランプ時代の規制措置の多くは、残してしかるべきものだろう。

 日本では、米中対立を迷惑がり、ビジネスの邪魔だとする声もあるが、それは安全保障を軽視した意見だ。中国で最終製品の組み立てが減少すれば、その分中国以外の国での生産が増えるのであり、日本企業はここへ素材・製造装置を輸出していけばいいのである。それに元々、最先端の素材・製造装置の対中輸出は、日本の法制でも規制されてきたので、事態はあまり変わらないのである。

 Economist誌の記事は、中国をグローバル・サプライ・チェーンの中に組み込み、その行動を国際取り決めで管理していけばいい、と言っている。しかしそれは、不可能なことを言って議論をごまかそうとしているのである。西側諸国は以前、WTOを改革して中国の行動も規制しようとしたが、中国はこれを受けなかった。そのためオバマ政権はTPPを推進して中国への圧力としたのである。RCEPはこれの代用にはならないし、昨年12月末ドイツの動きで基本合意されたEU・中国投資協定も解決策にならないだろう。

【私の論評】日本の産業界の優位性がある限り、中国、GAFA等が世界市場を独占するのは不可能!それは世界にとって良いこと(゚д゚)!

上の記事では、日本は素材と工作機械生産の面では世界で高いシェアを維持としていて、日本の優位性を語ってはいるものの、その本質までは、語っていないと思います。本日は、それについて掲載しようと思います。

日本の工作機械は世界でも有数の競争力を持っています。機械を作る機械というその性質から「機械の母」あるいは「マザーマシン」と呼ばれているほどです。無論半導体を製造する工作機械も日本は世界でトップクラスです。

ものづくり産業全体は三層構造で考えるとわかりやすいです。一番上位に自動車や家電、航空機などの最終完成品をつくる自動車メーカーや家電メーカー。次にそれらに部品を提供する企業。そして部品をつくる際に欠かせない工作機械産業です。

以下、柴田友厚氏の『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』から一部を引用し、再編成した形で掲載します。

日本で世界一の競争力を持つ産業は一体何だろうかと問われると、おそらく多くの日本人は自動車産業だと答えるのではないだろうか。確かに、日本における自動車産業の存在感はとても大きいものがあるが、国別生産高では多くの場合、米国の後塵を拝してきた。 

あまり知られてはいないが、この四半世紀、一貫して世界最大の生産高を誇ってきた産業がある。それが工作機械産業だ。表1が示すように、日本の工作機械産業は1982年に米国とドイツを抜いて世界一の生産高に躍り出て以来、2008年のリーマンショックまで、なんと27年間にわたって世界一の生産高を守り続けた。


現在では、中国が日本とドイツを抜いて世界一の生産高を誇っている。これには理由がある。

リーマンショックが起こると、世界の主要各国は、需要減少に対応するために大規模な財政出動や金融緩和に踏み切った。その中で特に中国政府は、4兆元(当時のレートで約60兆円)もの膨大な景気対策を打ち出し、世界の需要を下支えしたのだ。

その旺盛な公共投資やインフラ開発に後押しされて、中国の工作機械の生産高は世界一となったのである。

しかし、技術力では先進国とまだ大きな開きがある。技術力の客観的評価は困難な側面があるために主観的評価にならざるをえないのだが、中国を始めとする新興国メーカーの工作機械と日米欧先進国の工作機械の間には技術水準にまだ大きな格差がある、というのが現場を知る経営者の共通した認識である。

その意味では、日本の工作機械産業は現在でも依然として世界最強といってもよいだろう。

27年間にわたって世界一の生産高を守り続けた産業はこれまでなかったし、これからも生まれないのではないだろうか。

また、輸出比率と輸入依存度の観点からも、日本の工作機械産業の国際競争力の向上を観察できる。表2は、日本の工作機械の輸出比率と輸入依存度の金額ベースの推移を示したものだ。輸出比率とは、生産高のうち、輸出高の比率を示している。一方、輸入依存度とは、内需のうち、輸入高の割合を示している。


表が示すように、日本の工作機械産業は、50年代は欧米から多くの工作機械を輸入する産業だった。特に55年頃の輸入依存度は、なんと5割を超えていた。しかし、70年代から80年代にかけて輸入依存度は低下してゆく。 

輸入依存度の低下と相反するように急速に上昇していったのが、輸出比率である。特に90年代以降は、生産高の半分以上を輸出する産業へと変貌した。 

表をよく見ると、2000年前後に輸入依存度が少し上昇していることに気づく。この頃は、日本の工作機械メーカーのアジア新興国への進出が加速していった時期だが、そこで生産された機械が国内に輸入され始めたことを示している。

このように日本の工作機械産業は、生産高および輸出入比率両方の観点からも、70年代後半から80年代にかけて、その多くを海外に輸出できるだけの技術力を持った産業へと発展し、国際競争力を高めてきたことがわかる。

日本の工作機械産業が70年代以降次第にキャッチアップして、高い競争力を持つに至ったのには、もちろん様々な要因がある。いうまでもなく、工作機械メーカー自身のキャッチアップに向けた不断の努力は不可欠であった。

例えば、ライセンス契約を締結して、当時技術的に進んでいた米国の工作機械メーカーから熱心に技術導入を図ったり、先進的な工作機械のリバース・エンジニアリング(機械の構造を分解して技術情報を調査すること)にも熱心に取り組んだりした。また、自動車や家電等の優れたユーザー企業の存在も指摘されている。ユーザー企業からの高度な要請に応えようとすることで、技術は確かに磨かれるからだ。

しかし、その中で必ず言及しなければならないであろう最も重要な要因の一つは、CNC装置の工作機械への導入にいち早く成功したことである。工作機械産業において、それが産業革命以来最大の技術革新といわれている。

CNC装置は工作機械をコンピュータで自動制御する、頭脳部分であり司令塔のようなものである。CNC装置の開発を草創期からリードしたのは、富士通の社内新規事業として1956年に始まり、その後分社化して独立したファナックである。1972年に富士通本体から分離独立した際の社名は富士通ファナックだったが、その後1982年には社名をファナックに変更した。

ファナックはその創業初期にインテルと出会い、1975年にいち早くインテルのMPUを自社のCNC装置へ導入したが、それにより日本の工作機械の競争力を飛躍的に高めて顧客層を大きく拡張した。IBMがパソコンにインテルのMPUを初めて導入したのは1981年だったことを考えると、それがいかに早い先進的取り組みだったのかは容易に想像できるだろう。パソコン産業より、なんと6年も早くMPUを導入したのである。

一国の工作機械産業の技術水準は、ものづくりの基盤技術を規定するといわれるが、これは具体的にはどういう意味だろうか。それは、工作機械の持つ母性原理と技術的収斂の2点によって説明できる。

生産される機械や部品の精度は、それを作り出す工作機械の精度によって決まる。つまり、作られる機械や部品は、それを作り出す工作機械の精度を超えることができない。これは、工作機械の「母性原理(copying principle)」と呼ばれる。それでは、このような工作機械はどのように作られるのだろうか。それを作るのも、また工作機械である。

ここでも再び母性原理が働く。つまり、精度が高い工作機械を作るためには、それ以上の精度を持った工作機械が必要になる。一国の工作機械産業の技術水準がものづくりの基盤技術を規定する一つの理由は、この母性原理にある。

もう一つの理由は、米国の技術史家ローゼンバーグが指摘した「技術的収斂(Technological convergence)装置」としての役割である。工作機械は「機械を作る機械」として、あらゆる産業のものづくりの現場で使われる。ということは、ある特定産業の特定用途を実現するために開発された工作機械の新しい技術や機能は、他産業でも使用されることでその性能や機能が他産業にまで波及するはずである。

すなわち、工作機械を経由して新しい技術が多くの産業に普及するのだ。そのために、多くの産業の技術水準が工作機械を経由してある一定範囲に収斂するというメカニズムが存在する。これが、技術的収斂という概念の意味である。

このように、工作機械は他産業にはない独自の役割と機能を持つことが明らかにされており、産業規模では計ることができない戦略的重要性を持つ。

さて、このような特性を持つ工作機械には実に多種多様なものが存在する。工場内では様々な加工用途が生じるために、それに対応して様々な種類の工作機械が必要になるからだ。主要な工作機械として、旋盤(Lathes)、研削盤(Grinding machines)、そしてマシニングセンター(Machining center)などが知られている。表3は、2017年度の日本におけるNC(Numerical Control、数値制御)工作機械の機種別生産割合を表している。一口に工作機械といっても、実に様々な種類の機械が存在することがわかるだろう。 

 その中で、台数、金額ともに最大の機種はマシニングセンターで、工作機械全体の約4割を占めている。

マシニングセンターとは複数の刃物を自動交換できる装置を持ち、NC装置で読み込まれるプログラムに従って、穴あけや平面削りなど複数の異なる加工を1台で行う工作機械を指す。従来の工作機械が基本的に単一種類の加工を行っていたのに対して、複合加工を自動的に実現する機械であり、NC装置の出現によって誕生した。

次に多い機種はNC旋盤で、全体の約3割を占めていることがわかる。旋盤は円柱状の被切削物を回転させ、バイトと呼ばれる工具で切削加工をする工作機械である。現在の日本では、この二つの機種で全工作機械生産高の約8割程度を占めている。また、現在日本で生産される工作機械のほとんどは、NC装置が付いたNC工作機械である。

1980年代は、日本の製造業の国際競争力が向上し、それに対する世界的な関心が高まった時期だった。ちょうどその頃、米国の産業競争力の回復を目的として、マサチューセッツ工科大学(MIT)を中心として産業生産性調査委員会が組織された。

その委員会の調査報告書『Made In America』では、日本の強い産業競争力の背景にあるいくつかの要因を挙げているが、NC(Numerical Control、数値制御)工作機械産業についても一定のスペースを割いてその特徴を記述している。

報告書はまず、NC工作機械産業の戦略的重要性について次のように述べている。

NCおよびNC工作機械は、自動車やエレクトロニクス、機械工業などに対して少量・多品種かつジャストインタイムで納入している業者に、フレキシブルなオートメーションをもたらした。

このようなNC装置の設計と製造を主導したのが、ファナックであった。日本の工作機械メーカーの多くは、NC装置の開発をファナックに完全に任せて、自らは工作機械それ自体の革新に注力することができた。つまり日本の場合、ファナックと工作機械メーカーとの間で分業が行われたのである。

一方、米国の場合、日本のような分業体制ではなく、工作機械メーカーが自社でNC装置を開発した。今から振り返ると、この草創期の開発形態の違いこそが、後述するような大きな違いをもたらすことになった。しかし、黎明期は、まだそのような先のことまで見通すことはできなかった。日米の開発形態の違いに関して、報告書は次のようにいう。

日本はNC工作機械のNCの設計と生産をファナック1社に絞った。この為、規模の経済的メリットが得られただけでなく、米国の工作機械ユーザを悩ませた互換性のなさという問題も回避できたのである。工作機械メーカーは自社でNCを開発する重荷から解放され、ファナックがエレクトロニクス分野にその全力を集中した為、ファナックと工作機械メーカーとの直接の競合も回避された。

私の調査では、日本がNC装置の開発を意図的にファナック1社に絞ったという事実は存在しない。産業用ロボットなど、メカトロニクス製品の製造を行うメーカーで知られる安川電機もNC装置の開発をしていたからである。より正確にいえば、ファナックが結果として主導する形になり、ファナックのNC装置が大きなシェアを占めたということだろう。その結果、日本の工作機械メーカーは確かに、規模の経済のメリットを享受できたし、互換性も維持することができた。

ここでいう工作機械ユーザーとは、工作機械を使用して自社製品を作る自動車メーカーや精密機器メーカーなどを指す。これらの工作機械ユーザーは、自社の加工条件に従ってNCプログラムを作成し、それを使ってNC工作機械を動かす。したがって工作機械ユーザーにとっては、一度作成したNCプログラムを他の機械でもできるだけ使用したいという要望は当然であろう

だが、NC装置メーカーが違えば、NCプログラムの言語仕様や操作性が異なるために、他のNC工作機械で使えない可能性が出てくる。これが互換性の問題である。日本の場合、たとえ工作機械が違っても付加されるNC装置の多くはファナック製であったために、互換性の問題が顕在化しなかった。

他方、米国の場合、工作機械メーカーがそれぞれ独自のNC装置を作るために、工作機械ユーザーは互換性の欠如という問題に直面していたのである。それが、強力なNC工作機械産業を発展させるのに大きな障害になった、と報告書は指摘する。

さらにファナックの技術戦略について、調査結果は次のように報告している。

アメリカの制御機器メーカーとは異なり、ファナックは早くから先端的な半導体技術を採用し、コストに見合った設計を行って標準品を低コストで生産した。

ここでいう先端的な半導体技術とは、半導体技術を使った記憶素子である半導体メモリやインテルのMPUを指す。これらの先端技術をファナックは積極的に取り入れたのに対して、米国のメーカーはそうではなかったと指摘する。

さらに報告書は、標準化を積極的に図ったことでコストを下げることができたという、ファナックの製品戦略の特徴を明らかにしている。

米国の産業生産性調査委員会では、産業競争力における工作機械産業の重要性と、その中で果たしたファナックの役割について、明確に認識していたことがわかる。

さて、以上のことから日本の工作機械の優位性は十分にお分かりいただけたものと思います。興味のある方は、ぜひとも柴田友厚氏の『日本のものづくりを支えた ファナックとインテルの戦略』を御覧ください。この書籍、そのへんの小説を読むよりはるかに面白いです。

日本でなぜこのような、工作機械をつくれるかということには、もう一つ理由があります。それは、日本の産業界にはほぼすべての技術が育まれているということがあります。

たとえば米国では、原潜しか製造しなくなったため、通常型の潜水艦は製造できません。製造できないということはないでしょうが、莫大なコストをかけても日本と同等のステルス性の高い(日本は世界最高)潜水艦は製造できないでしょう。日本の潜水艦は三菱重工業神戸造船所と川崎重工業神戸造船所が隔年で交互に建造しています。そうして、通常型潜水艦にはありとあらゆる最新技術が駆使されています。日本の製造能力の結晶と言ってもよいでしょう。

日本は原潜は製造はしていませんが、それでも製造しようとすれば、米国が通常型潜水艦を製造するよりは、はやく高性能のものを製造できるでしょう。原子力空母や、核兵器なども短期間で製造できるようになるでしょう。製造しないということと、製造できないということは根本的に違います。

テレビも、米国は1980年代に入ってからは、製造していません。

EUだと、たとえば、リチュウムイオンバッテリーは製造していません。EUはリチウムイオンバッテリーを中国から輸入しています。日本は、ユアサバッテリーという優秀なメーカーがあり、これは、最近日本の最新鋭潜水艦にも搭載されて、潜水艦の動力源になっています。そのため、日本の潜水艦の静寂性は無音と言っても良いくらいになり、潜航時間も従来の2週間より、はるかに長くなりました。

「軽いのに鉄より強い」という炭素繊維(カーボンファイバー)の分野で、日本は世界でもトップシェアを誇っています。炭素繊維は飛行機や自動車、さらには医療機器などで活用されていますが、これも品質・価格ともに日本製が最高です。

半導体に必要不可欠なフッカ水素は、中国や韓国でも製造できますが、純度が低く、日本のように純度の高いもの製造できません。そのため中国製や韓国製のフッカ水素を用いれば、歩留まりがかなり低くなり、競争力が低下してしまいす。

最近では、このブログにも掲載したように、味の素の子会社である、味の素ファインテクノが供給する、層間絶縁材料「ABF」は味の素の独壇場です。これがないと、最新のMPUは製造できません。

以上のようなことは、多くあります。上に述べたのは、私が思いついたことを掲載しただけです。ただ、日本のマスコミが反日であるため、ほとんど報道しないので、一般の日本人には知られていません。ほとんどすべての技術を内製できるのは、世界で日本だけです。

私自身は、過去に述べてきたように、日本の産業界の優位性がある限り、中国やGAFAなどが、世界市場を独占するのは不可能だと思います。中国が全体主義的な動きをさらに強化したり、いつまでも継続する場合、GAFAなどが市場を独占する動きを見せた場合、それを阻止しうるのは、日米だけでしょう。日本は、それだけの潜在能力があります。そうして、それは世界にとって良いことです。だから、この先も日本はそれを失うべきではないのです。

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2021年2月8日月曜日

【独話回覧】菅政権は一刻も早く財政支出を拡大せよ 中国に土地や不動産を買い漁られ…経済萎縮は“安保上の危機”に―【私の論評】財政均衡主義は、財務省とその走狗たちの抱える宿痾となった(゚д゚)!

 【独話回覧】菅政権は一刻も早く財政支出を拡大せよ 中国に土地や不動産を買い漁られ…経済萎縮は“安保上の危機”に



 「政府は債務水準にこだわらず、大きな行動をとることこそが重要」(米国のイエレン新財務長官)。新型コロナウイルス・ショックは政府債務に関する世界の思潮を大きく変えつつある-。

 1月30日付産経新聞の拙連載コラム「経済正解」でこう論じたが、実のところ筆者はこれまで15年間、同じような主張を展開してきたので、「ああ、やっとアメリカの経済学者で、しかも財政の最高責任者が言い出したか」との感慨があった。

 これまでは、いち経済ジャーナリストがいくら「正論」を唱えても、しょせん多勢に無勢で、わが日本国では政官財界はもちろん、経済学界もメディアも、主流は財務省の意のままだ。彼らエリートは学術的にも経験的にも根拠がないにもかかわらず、財政均衡至上主義で増税や財政支出削減をすれば経済は良くなる、というフェイク情報で国民をだまし続けてきた。

 緊縮財政でどうなったか、日本は実に4半世紀もの間の慢性デフレ局面から抜け出せない。もっと恐れるべきなのは、経済規模、すなわち国内総生産(GDP)を世界標準のドルでみると、日本は20年前の1995年よりも小さくなっていることだ。

 95年のGDPと、新型コロナウイルス・パンデミック(世界的大流行)のあった2020年の見通しを比較すると、日本は5兆4000億ドルから4兆6000億ドル(19年実績は5兆800億ドル)と減少している。

 中国は7300億ドルから14兆8000億ドル(同14兆3000億ドル)と約20倍、米国が7兆8300億ドルから19兆5000億ドル(同21兆4000億ドル)と約2・5倍、ユーロ圏が約7兆5000億ドルから11兆2000億ドル(同13兆3000億ドル)と約1・5倍に増えている。日本だけが世界経済史上、前例のないほどの長期停滞、マイナス成長を続けてきた。

 ドル建てのGDPが細って他国に水をあけられることはそれだけ、国民の賃金や所得でみて相対的に貧しくなっていることを意味し、なおかつ、モノ・サービス価格は下がり、不動産など資産価格もそれにひきずられる。ドル建てGDPが増えている国は購買力が上がっているわけだから、日本はモノも飲食・宿泊などのサービスも、さらに土地もマンションも「安い!」ということになる。

 政府は中国などからのインバウンド消費に頼り、昨年2月の春節にはコロナ感染の元凶、中国人旅行客を「歓迎」するメッセージを安倍晋三首相(当時)が送る始末だった。インバウンド消費に頼らざるを得ないというのは、貧困国である証左であり、北海道の山林原野、農地から東京都心の不動産まで中国資本や中国人によって買い漁られる。中国は何も武力を使わなくても、日本を徐々にわがものにしていける。四半世紀間もの経済萎縮は、実は日本国の安全保障上の危機である。

 それにもかかわらず、政財官学、メディアに危機感が乏しい。相変わらずコロナ不況対策で財政支出が増えると、財政規律を忘れるな、消費税のさらなる増税を準備せよとのたまう向きが幅を利かせる。

 代表的な論説が日本経済新聞1月24日付朝刊社説で、見出しは「財政悪化の現実を直視できないのか」である。「困窮している個人や企業を、いまはしっかりと支えるべきだ。そのために必要な国・地方の財政出動をためらう時ではない」と、緊急の財政出動を認めながらも、政府債務残高がGDPの2倍近いとし、「たとえ危機下でも財政に負荷をかけすぎれば、そのツケはいずれ返ってくる」と例によって「オオカミ少年」の本性をむき出しにしている。

 冒頭のイエレン財務長官発言に戻ると、財政支出拡大をよしとする基準は「債務水準」であり、イエレン氏は政府の借金利払いの対GDP比率だとしている。

 グラフは日米とユーロ圏の同比率の推移である。日本とユーロ圏については、経済協力開発機構(OECD)が各国地域別に発表している見通しから抜き出し、米国については米財務省が公開している利払いデータから算出した。一目瞭然、利払い比率がダントツに低いのは日本であり、20年、21年とゼロ%以下である。

 米国はイエレン長官が、08年のリーマン・ショック当時よりも低いと言っているが、それでも20年9月時点では利払いのGDP比が1・6%に上る。つまり、財政支出拡大に最も悠々と踏み切ることができる国は米欧ではなく、日本である。

 日本は前述したように、25年前から経済萎縮病に見舞われており、コロナ禍はそれをひどくした。宿痾(しゅくあ)はデフレとマイナス成長であり、それを引き起こしてきたのは消費税増税と緊縮財政である。菅義偉政権は財政支出拡大によって、一刻も早く国難から脱出する戦略を進めるべきだ。

 ■田村秀男(たむら・ひでお) 産経新聞社特別記者。1946年高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後の70年日本経済新聞社入社。ワシントン特派員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級研究員、日経香港支局長などを経て2006年産経新聞社に移籍した。近著に『検証 米中貿易戦争』(ML新書)、『習近平敗北前夜』(石平氏との共著、ビジネス社)、『日本再興』(ワニブックス)など多数。

【私の論評】財政均衡主義は、財務省とその走狗たちの抱える宿痾となった(゚д゚)!

このブログでも、ブログを新設したころから、財政均衡主義の間違いについて指摘してきました。それは、もうすでに10年くらい前から常識中の常識でした。これに関しては、2009年くらいから、意図して意識して、このブログにもとりあげてきました。

世界的な権威といわれる経済学者の中で、日本以外の学者で、財政均衡主義が正しいと、言ったのは二人くらいかもしれません。ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハートです。

これについては、間違いであったことをこのブログでも2013年に指摘しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

「ごめんなさい」では済まされない! 財政切り詰め策の根拠となった論文に誤り 欧州連合の方針に疑問―【私の論評】 これは経済学者というか、科学者として許すまじ行為!!世界を日本を惑わした罪は大きい!!見せしめのために、学会から追放せよ!!日本は、消費税増税絶対にみあわせようぜ!!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、財政切り詰め策は、間違いであることがこの時あたりから明らかになり、EU諸国では経済が低迷したときに、財政を引き締めるという動きはなくなりました。この記事は、2013年4月19日のものです。この記事から一部を引用します。
2009年にギリシャ問題が発覚し、それが欧州財政危機問題へと拡大した際、欧州委員会は危機を回避する政策を策定するにあたってひとつの論文を参考にしました。

それはハーバード大学のケネス・ロゴフ教授とハーバード・ケネディ・スクールのカーメン・ラインハート教授による「Growth in a Time of Debt(国家債務時代の経済成長)」という論文です。

ロゴフ教授とラインハート教授は『国家は破綻する』という本の著者でもあり、日本でも知られています。

ところがマサチューセッツ大学アマースト校の博士課程に学ぶトーマス・ハーンドンがこの論文に書かれている結果を再現しようとしたところ、ロゴフ教授とラインハート教授が主張するような、「国家負債が90%を超えるとGDP成長が著しく鈍化する」という結果が得られませんでした。そこで彼の指導教授であるマイケル・アッシュ教授ならびにロバート・ポーリン教授とともに「結果がそうならなかった」という指摘をしました。
これが両者の間で論争を巻き起こしましたが、結局、ロゴフ教授とラインハート教授がエクセルのスプレッドシートを操作する際、コーディングのミスをした為、一部のデータが演算に反映されていなかったことが判明しました。

ロゴフ教授とラインハート教授がエクセル操作上の凡ミスを全面的に認め、謝罪の声明を出すということで論争には終止符が打たれました。

しかし切り詰め政策を強要されているギリシャやスペインの国民からすれば「間違いでした、ごめんなさい」ですまされることではありません。

この馬鹿まるだしの間違いをしたのは、以下の写真の二人です。

ケネス・ロゴフとカーメン・ラインハート

ケネス・ロゴフは、現在は現在、ハーバード大学教授です、カーメン・ラインハートは現在全米経済研究所の研究員(Research associate)であり、経済政策研究センターのリサーチフェローであり、 またVoxEUの創立協力者でもあります。

この二人の学者は、この当時はブログをごらんいただくと私自身もかなり批判をしましたが、それにしても、この二人は処方的な過ちなのですが、素直に誤りを認め、謝罪の声明を出しています。だからこそ、今日の地位があるのだと思います。

しかし、この教授たちのように、「国家負債が90%を超えるとGDP成長が著しく鈍化する」という誤った説を唱え続けているおかしな組織な個人が日本にはいます。

それが、財政規律に拘泥する日本の財務省であり、財務省の走狗である経済学者たちであり、これらの言説を鵜呑みにして報道するマスコミが存在します。

がれらの歪んだ頭では、イエレン氏の考えなど理解できないようです。彼らの歪んだ頭では、デフレ下での増税や、そもそも保険であり、財政とは無関係である年金なども、歪められ、社会保障と税の一体改革などという不可思議な理論がまかり通ってしまいます。

彼らはいまでこそ、コロナ禍で大勢の人が苦しんでいるので、息を潜めていますが、コロナが収束すれば、日本経済の状況など無視して、東日本震災後の復興税制などのようなコロナ増税を実行しようとするでしょう。それどころか、現在10%の消費税を、15%、20%にするなどといいかねません。

もう私達は、財務省とその走狗たちの、認知症的な財政政策等に惑わされるべきではありません。

財政均衡主義に拘泥する財務省の太田事務次官


もう昔とは状況が変わっています。このブログですら、もうすでに、10年以上も前から、財政規律に拘泥することの間違いについて主張してきて、今年で13年目に入ります。

昔は、政官財界はもちろん、経済学界もメディアも、主流は財務省の意のままであり、彼らエリートは学術的にも経験的にも根拠がないにもかかわらず、財政均衡至上主義で増税や財政支出削減をすれば経済は良くなる、というフェイク情報で国民をだまし続けてこれましたが、もうそのような時代ではありません。

財務省とその走狗たちが、いくら緊縮財政至上主義を訴えても、それに嬉々として従うのは、マスコミでしか情報を得られない、ワイドショー民である高齢者などの少数です。

財務省とその走狗たちの思い通りにさせることは、多くの国民が許さないでしょう。彼らの宿痾は消えそうもありません。であれは、財務省をなくすべきです。

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2021年2月7日日曜日

高橋政治経済科学塾講義2021年(令和3年)2月号特集 高橋洋一教授の日本マスコミ崩壊の衝撃予測!!―【私の論評】明けましておめでとうございます!10年で新聞消滅という厳然たる事実(゚д゚)!

 高橋政治経済科学塾講義2021年(令和3年)2月号特集 高橋洋一教授の日本マスコミ崩壊の衝撃予測!!


【私の論評】明けましておめでとうございます!10年で新聞消滅という厳然たる事実(゚д゚)!

上の動画で、10年で新聞消滅という厳然たる事実を語っています。みなさん、よろしいですが、朝日新聞消滅ではなく、全部の新聞がそういうことになるということです。高橋洋一氏が段順明快な指摘をしています。

ちなみに、元になったデータを以下に掲載します、これは新聞協会のサイトでご覧いただけます。興味のある方は、そちらを是非御覧ください。


高橋洋一氏の予測は、新聞全体ですから、予想よりはやく消滅する新聞もこれからでてくるはずです。

上の表をみただけでも、新聞は相当危ないことがわかります。この表をプロットしてみただけでも、将来どういうことになるのか、よくわかります。高橋洋一氏は、新聞発行部数の現象の速度を元にして予測しています。おそらく、微分法などを使っているのでしょう。

しかし、そこまでしなくても、統計学で良く使われる、最小二乗法でも使えば、誰でも予測できると思います。そうして、その結果は高橋洋一氏のものとあまり変わらないでしょう。

EXELには最小二乗法の関数もありますから、誰にでも簡単にできます。以下のサイトでは、その手順が示されています。


それにしても、新聞は2000年頃からこうした傾向はみらていたのに、なぜ体質改善をシてこなかったのでしょうか。それは、明らかです。何十年も法律などで守られきたため、危機感が全くなかったからでしょう。
では、テレビ局はどうなっているのでしょうか。HUTの推移をあらわしたグラフを以下に掲載します。「HUT」とはテレビの総世帯視聴率(Households Using Television、テレビをつけている世帯)を意味する言葉で、具体的には調査対象となる世帯のうち、どれほどの比率の世帯がテレビ放送をリアルタイムで視聴しているかを示す値(チャンネル別の区分はない)です。

HUTの値として確認できるのは、ゴールデンタイム(19~22時)、全日(6~24時)、プライムタイム(19~23時)の3種類。そのうち一番視聴率が高く、変移が見やすいゴールデンタイムのもの、そして包括的な意味を持つ全日のグラフ、合わせて2つを併記し、状況を確認します。



これも、何も説明の必要はないです。2020年度上期が明らかに増えているのは、無論コロナで外出が減ったためです。予測してみようとも思いましたが、2020年のコロナのアーティファクトが入るのでやめておきました。

これは、コロナが収束すれば、また元のように減少し続けるということです。これでは、テレビも同じ運命をたどりそうです。これも、電波法でまもられてきたため、危機感が薄かったというのが原因でしょう。

日新聞への抗議デモをを本社から笑いながら見下ろす朝日新聞の社員たち 2014年

マスコミはもう久しく、危ないといわれきましたが、本当にここ10年が正念場です。何も変えなければ10年で消滅です。

まあ、そうなっても、誰も悲しむ人はいないでしょう。マスコミの従業員とその家族以外は・・・・・。マスコミに従事されているかたは、自分自身や家族のことも考えて、次にどうするかを今から真剣に考えておいたほうが良いです。

このブログでは、過去には何度も、マスコミの酷さについて掲載してきましたが、もう10年でマスコミそのものがなくなりそうだからでょうか、マスコミ関連の記事はあまり読まれなくなりました。

若年層には、もともと関心がないし、もっと上の層には、愛想を尽かされているのでしょう。

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2021年2月6日土曜日

【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…―【私の論評】菅政権は、トランプが実践して見せ、イエレンが主張する財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫き通せ(゚д゚)!

 【お金は知っている】「イエレン財政論」は利払いゼロの日本にぴったり 国内メディアは財政均衡主義にこだわるが…

 無利子でかなりの規模で借金できれば、テレワーク用に最新のパソコンと大画面の表示装置を買おうか、将来の子供の学費にするか、いやマンションを買うか、などさまざまな夢が実現しよう。

  これらの借金は経済合理性にかなっている。借入金利ゼロというのは「ゼロ・コスト」のカネであり、それを不確かでも、何がしかのリターン(利益)が得られそうな分野に投資すればよいのだ。

  以上の経済常識を政府に当てはめたのが米バイデン政権の財務長官に就任したジャネット・イエレン氏である。米国の場合、昨年12月の国債金利は1%を割り込んだ。お金の価値は物価上昇率にも関係があるので、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利はマイナスになっている。借金して投資したほうが得だ。

  イエレン氏は1月19日の米上院の財務長官指名承認公聴会で「世界は変わった」とし、「現在のような超低金利環境では、連邦政府債務が膨らみ続けているにもかかわらず、GDP(国内総生産)に対する利払い額の比率は低い。パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」と言い切った。 

 イエレン氏はGDPに対する利払い負担の低さを挙げて、財政赤字を気にしない財政支出拡大が正しいと論じたのだ。新型コロナウイルス・ショックが図らずも、米国の財政政策を均衡主義の呪縛から解き放つ新財政思想だが、別に難しいことではない。 

 GDPが増えることを意味する経済成長は通常、民間の企業が設備投資し、家計が消費することで実現するのだが、新型コロナ禍が広がる状況下では民間活動は萎縮してしまう。そうなると、経済を支える主役になれるのは政府しかない。その政府が実質金利ゼロで大々的に借金し、経済成長に向けて投資すべきなのだ。不況なのに政府債務の増大を理由に財政支出をけちると、多くの中小、零細企業が倒産し、失業者が町にあふれよう。失業給付など社会保障支出、治安対策費も膨らむ一方で税収は減るので、政府収支赤字は財政出動した場合に比べはるかに大きくなるだろう。

  実は日本こそ、イエレン理論に最もふさわしい。グラフは政府利払い費のGDP比と国債金利の推移である。いずれとも米欧に比べて圧倒的に低い。2019年はいずれもゼロ領域だ。

  だが、国内メディアの大多数は相も変わらず財政均衡主義にこだわる。日本経済新聞1月23日付社説は「困窮している個人や企業を、いまはしっかりと支えるべきだ」としながらも、政府債務残高がGDPの2倍近いとし、「たとえ危機下でも財政に負荷をかけすぎれば、そのツケはいずれ返ってくる」と警告した。「世界は変わった」とするイエレン発言は馬の耳に念仏なのか。(産経新聞特別記者・田村秀男

【私の論評】菅政権は、トランプが実践して見せ、イエレンが主張する財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫き通せ(゚д゚)!

このブログにも以前掲載したように、トランプ大統領もイエレン氏と同じような考えを持っていました。これについては、以前のブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
追加経済対策 3次補正予算を決めた国会

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
トランプ氏が経済政策面でもたらした最大のインパクトは、自らの想定とはかけ離れたものになるのかもしれないです。それは、財政赤字に対する米国人の常識を覆した、ということです。

トランプ氏は企業や富裕層に対して大幅減税を行う一方で、軍事支出を拡大し、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」をはじめとする社会保障支出のカットも阻止し、財政赤字を数兆ドルと過去最悪の規模に膨らませました。新型コロナの緊急対策も、財政悪化に拍車をかけています。

これまでの常識に従うなら、このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起こし、民間投資に悪影響を及ぼすはずでした。しかし、現実にそのようなことは起こっていません。トランプ氏は財政赤字を正当化する上で、きわめて大きな役割を果たしたといえます。
米国では連邦政府に対して債務の拡大にもっと寛容になるべきだと訴える経済学者や金融関係者が増えています。とりわけ現在のような低金利時代には、インフラ、医療、教育、雇用創出のための投資は借金を行ってでも進める価値がある、という主張です。

このような巨額の財政赤字は金利と物価の急騰を引き起すこともなく、結局将来世代へのつけともならないでしょう。

イエレン氏の述べた「パンデミック(世界的大流行)による打撃に対する必要な措置を避けると、財政を赤字にしてもやるべきことをやる場合より、悪い状況に陥る公算が大きい」 という発言内容と同じことをすでにトランプ大統領は実行していたのです。

大統領選挙の公約においては、バイデン氏は様々な政策を増税して行うと発言しており、米国経済はバイデン政権下で低迷することになると発言していたため、私自身はバイデン政権下で、米国経済は落ち込むと予想していました。

ところが、蓋を開け見ると、イエレン氏が財務長官に任命され、しかも上記のような正しい発言をしていたので、安心しました。よって米経済はトランプ政権時代と比較して遜色ないか、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することが予想されます。

おそらくバイデン氏としては、経済運営に自信がなかったのでしょう。それを補うためにも、過去の実績のあるイエレン氏を財務長官にしたのでしょう。そうして、それは正しい選択でした。バイデン氏の安全保障政策は未だどうなるのか、予断を許さないですが、イエレン財務長官が思ったとおりに財政政策を実施でき、バイデン政権がこれを邪魔しなければ、米国経済は早期に回復して、再び成長軌道に乗ることが期待できます。米国、金融界、産業界などもこれを歓迎していることでしょう。

コロナ禍からの再生担うジャネット・イエレン財務長官

ただし、経済政策においてトランプ氏やイエレン氏だけが、慧眼の持ち主というわけではありません。すでに、予算収支は常にバランスが取れている必要はないというのが世界の通説です。特にまともな経済運営をしている国々においてはすでに常識です。バイデン氏はその常識からかけ離れていたということです。

そうして、特に、インフレ率がゼロに近く、金利がGDP成長率よりも低い日本では、適度の政府赤字が現在世代だけでなく将来世代のためにも有益なのです。むしろ、均衡させたり、黒字にすることこそ、利益に反することになるのです。

コロナ危機が世界の需要を減退させ、GDP成長率を低下させる今、それを一時的にしのぐには政府支出が特に必要なのです。均衡予算への見当違いな固定観念のために、法的用語を使えば「緊急避難」のための財政支出を避けることは非人道的であり、国民経済全体にも害を及ぼすことになります。

菅政権としては、財政健全性という時代遅れな意見を強調する論者の意見を鵜呑うのみにすべきではありません。迷ったら新任の高橋洋一内閣官房参与の意見に従うべきです。「健全財政」の美名の陰には、増税によって権限が拡大することを望む財務官僚の意見や、消費税の減免税率によって利益を受ける新聞業界の利害が隠れているのです。

アベノミクスの第3の矢は、将来に向けて日本の潜在的な成長力を高めるための構造改革でした。この分野での進展は、安倍政権の努力にもかかわらず緩やかであったといえます。能率化を進めようとすると一部の人びとに不利益が及ぶので、構造改革は一部の政治家、官僚、経済人から抵抗を受けます。そのため、日本には官庁のデジタル化の遅れ、公印を押す習慣、所得税で共働きを抑制する税制など時代遅れのルールが多く残っています。

コロナ危機で、会社に皆が同時にいてすべき仕事は意外に少ないことも明らかになったのですが、危機が過ぎた後では守旧派の意見で昔の働き方が戻りつつあり、最近またコロナ禍がぶり返したのに、テレワークが再開した企業は少ないです。

スガノミクスではまず、トランプ氏やイエレン氏のように、財政を赤字にしてもやるべきことをやるという姿勢を貫いた上で、首相自身の最も持ち味の出る構造改革と成長戦略に焦点を当てるべきです。

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2021年2月5日金曜日

民間企業の勢い削ぐ中国共産党の「党の指導」―【私の論評】中所得国の罠にハマりつつある中国に、これから先さらなる経済発展の機会はない(゚д゚)!

民間企業の勢い削ぐ中国共産党の「党の指導」

岡崎研究所

 中国政府は、民間企業に対して権力を振りかざし始めたようだ。一つは反トラスト姿勢の強化であり、もう一つは外国法の域外適用への反発である。これらは、中国共産党統治の抱える本質的矛盾を、はしなくも露呈している。


 1月9日、中国商務省は米国の対中制裁に対抗すべく、「外国法の不当な域外適用」を順守しないよう中国企業に求めるかもしれないと述べ、さらに、外国の制裁や補償に応じた国内外の企業を提訴できるようにした。

 11月にはネット通販最大手のアリババの金融子会社、アント・グループが上海及び香港での上場を目前に新株発行を止められた。また、同月、国家市場監督管理総局は電子商取引企業を規制する規則を発表、12月には独占禁止法違反の容疑でアリババへの捜査を始めた。アリババとアントの共同創業者で、スピーチの中で中国の国営銀行を質屋になぞらえたジャック・マーは、3か月間、公の場から姿を一時的に消した。1月16日付けのエコノミスト誌は「過去に消息不明になった他の財界の大物たちのように、改悛を示し、捜査官たちに協力した後、彼が再び姿を現したとしても、この件は恐ろしいシグナルを送る」と指摘している。

 法律の域外適用をめぐる米中間の争いについては、2019年、中国商務省は「信頼できない企業」リストを作った。上記のエコノミスト誌の記事によれば、現在のところ、著名な外国企業はまだリストに入っていないらしいが、中国当局が規則を厳格に適用すれば、中国にいる西側の多国籍企業に対し、制裁を破ったとして米国で罰金を科されるか、中国の裁判所に行くかの厄介なジレンマを突きつけることになろう。

 アリババなどのケースは、中国当局がアリババ集団傘下の金融会社アント・グループへの統制を強めている最大の理由は、筋論としては、中国の金融システムに対する影響が大きいからであろう。反トラスト規制も、経済の運営の観点からやらざるを得ないし、法律の域外適用についても、米国が仕掛けてきた経済戦争への対抗手段として慌てて作ったものである。しかし、いずれの場合も、先のことや結果を十分に考えずに、あたふたと対応している感を否めない。そこには統治のあり方、政治と経済との関係、党と民営企業との関係といった、共産党統治の抱える根源的な問題が見えてくる。

 習近平政権は、「党の指導」を強調する。中国のあらゆる面を共産党が指導することは党規約にも書いてあるし、憲法にも書いてある。しかし経済の現場において、どのようにして経済の効率を高めながら「党の指導」を具現化するのであろうか。経済の効率を高めるために「市場は資源の分配に決定的役割を果たす」ことも大方針として謳っている 。2000年代に入ってからの中国経済の大躍進の主役は、民営経済であり公有経済ではない。

 中国の民営企業に、五六七八九という言い方がある。民営企業は、50パーセント以上の税収、60パーセント以上のGDP、70パーセント以上の科学技術の創新、80パーセント以上の都市就業者、90パーセント以上の企業数を占め、中国の発展に大きく貢献している。官僚機構の権化である党が、実体経済に関与すればするほど、経済の効率は損なわれる。「党の指導」は、この民営企業を弱体化させ、市場の機能を削ぐ。

 これが中国の現場なのだ。党の指導と市場の重視という、相矛盾する指導原則に振り回されているのだ。党の指導、つまり政府の管理を強めれば、民営企業の活力はそがれ、イノベーションの力は落ちる。中国で起業をし、新しい業界を生み出し、巨万の富を得る―それがチャイニーズドリームであり、その象徴がジャック・マーだった。その失墜は、これから参入する者を含め、民営企業者の心理に広く影響を与え、中国経済にもボディブローのように効いてくるであろう。

【私の論評】中所得国の罠にハマりつつある中国に、これから先さらなる経済発展の機会はない(゚д゚)!

中国経済が今後どうなるかは、このブログにも何度か掲載したことがあります。結論から、いうと中国はそろそろ中所得国の罠に嵌るということです。中所得国の罠とは、経験則であり、国民一人当たりの所得が約1万ドル(日本円では100万円)をなかなか超えられないというものです。このあたりについては、高橋洋一氏が動画で理解しやすいように解説しています。以下にその動画を掲載します。


いずれの国でも、経済が発展すると、国民一人あたりの所得が1万ドルくらいには順当にいきますが、そこから先はなかなか伸びない、一時的に1万ドルを超えたにしても、それを維持することができず、結局1万ドル以下に戻っとてしまう現象をいいます。

日本は、戦後の高度成長で国民一人あたりの所得は1万ドルを超え、その後もそれを維持して現在に至っています。このようなことが起こった国は、日本以外では、エジプトと韓国だけです。

アルゼンチンはかつて先進国で、国民の一人あたりの所得は1万ドルを超えていましたが、現では発展途途上国になってしまいました。1900年初頭、アルゼンチンは黄金期を迎えていました。世界を制するのはアメリカかアルゼンチンかともいわれたほどです。

そう言われるほどの国力を誇っていたのです。実際、その当時の国民1人あたりの所得は、およそ2750ドル。同じ時期の日本は1130ドルでしたから、日本の2倍以上の経済力があったことになります。

この関係が逆転したのは、1967年のことでした。高度経済成長に沸く日本、そして停滞・後退を始めたアルゼンチン。

戦後の混乱から、奇跡的な発展を遂げた日本は、資源がほとんどない小国でありながら先進国の仲間入りを果たしました。一方アルゼンチンは、豊かな資源がありながら、工業化に失敗し、衰退しました。

途上国から先進国になった日本と、先進国から途上国になったアルゼンチン。どちらの事例も非常に稀なことであり、それをもって1971年にノーベル経済学賞を受賞した、米国の経済学者・統計学者であるサイモン・クズネッツは、「世界には4つの国しかない。先進国と途上国、そして、日本とアルゼンチンである」と語りました。

その後、アルゼンチンは2001年から02年にかけて国家的な経済崩壊を体験しました。アルゼンチンのたどった経済崩壊までの軌跡を簡単に並べてみると、以下のようになります。
1国家の成長産業勃興
2経済の高成長
3成功体験
4傲慢
5転落
6崩壊
アルゼンチンは、世界トップレベルの農業国で、 20世紀半ばまで、30年間も経済成長率が平均6%を記録したそうです。そして国民一人当たりのGDPは4位から7位をつけていたそうです。つまりアルゼンチンは押しも押されぬ南米一の先進国に成長したわけです。

ところが1946年に誕生したペロン政権が大衆迎合的なバラマキ 政治を続け、90年代末ついに国家財政が破綻したのです。99年から4 年間はGDP成長率がマイナスとなり、2002年にはハイパーインフレが起き、失業率が21.5%に達したそうです。

アルゼンチン第29、41代大統領 フアン・ドミンゴ・ペロン

アルゼンチンのたどった軌跡、これは、国家的経済崩壊の例として「アルゼンチン型」と呼ばれていますが、バブル崩壊前後の日本のパターンもこれによく似ているとする指摘もあります。ただし、本当は全く違います。日本の場合は、平成年間のほとんどを財務省は財政政策を、日銀は金融政策を間違い続けたということが主な原因であり、日本経済のファンダメンタルズは成長の可能性を失ったことは一度もありません。

中国の場合は、他の発展途上国と同じく、中所得国の罠からの罠から逃れられない可能性が高いです。先進国になる以前に、発展途上国に戻る可能性が非常に高いです。

なぜ、多くの国々が中所得国の罠から逃れられないのかといえば、このブログでも掲載してきたように、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を実施しなかったからです。

これらが、実施されると社会が変わり、特に星の数ほどの中間層が生まれ、これらが社会のいたるところで、イノベーションを起こし、それが社会の変革と富を生み出すのです。

日本をはじめとする先進国といわれる国々は、過去においてこれを実施し国の富を増し、現在に至っています。

習近平

中国は、冒頭の記事にもあるように、党の指導と市場の重視という、相矛盾する指導原則に振り回されています。このような国では、少数の富裕層は生まれましたが、多数の中間層が生まれことなく、社会のいたるところで、イノベーションが起こることはなく、社会の至るところで、不合理・不経済が残ってしまい、よって社会変革もおこらず、富も形成できず、結局中所得国の罠にはまってしまうのです。

ただし、中国共産党が国を富ませるため、多数の中間層を生み出すために、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を本格的に進めれば、それこそ、多くの中間層から中国共産党の存在意義を問われるようになり、統治の正当性が失うことになり、崩壊することになります。

それは、中国共産党としては、できないことなので、これを実施することはできません。他の中進国も国によって事情は様々ですが、結局これができないため、中進国以下にとどまるしかなかったのです。

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2021年2月4日木曜日

日英「2+2」で対中包囲網強化! 武器使用可能の海警法を警戒 識者「英の太平洋進出は大きなプレッシャーになる」―【私の論評】クアッド+英国で八方塞がりになる中国海軍(゚д゚)!

 日英「2+2」で対中包囲網強化! 武器使用可能の海警法を警戒 識者「英の太平洋進出は大きなプレッシャーになる」


 日英両政府は3日、外務・防衛閣僚会議(2プラス2)をテレビ会議方式で開催した。日米で推進する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現に向けた連携強化や、安全保障協力の深化で一致した。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米国ではジョー・バイデン新政権が誕生し、中国の軍事的覇権拡大が進んでいる。国際情勢の激変を受けて、英国の役割に大きな期待がかかっている。

 「英国の能力を示し、さらに防衛協力を深めたい」

 ベン・ウォレス英国防相は閣僚会議で、こう語った

 会議では、南シナ海で軍事拠点をつくり、東シナ海でも軍事力を増大させる中国に対し、日英が協力して対応する姿勢を示した。中国海警局に武器使用を認めた海警法や、中国政府による少数民族ウイグル族や香港民主派弾圧についても懸念を共有した。

 茂木敏充外相は、海警法について「国際法に反する形で運用されてはならない」と発言。ドミニク・ラーブ英外相は、国際法に基づく海洋秩序維持と「航行の自由」の重要性を強調した。

 ウォレス氏は、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に東アジア地域に派遣すると表明した。自衛隊や米軍と共同訓練を行う予定だ。

 岸信夫防衛相は、沖縄県・尖閣諸島防衛への強い決意を英国側に伝達。海洋国である日英の防衛協力の必要性を訴えた。

 英紙デーリー・テレグラフなどは1月末、英国が、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国による事実上の中国包囲網「QUAD(クアッド=日米豪印戦略対話)」に参加する可能性を伝えた。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「英国のクアッド参加は賛成だ。英国は、中国の香港弾圧に立腹している。中国の覇権拡大に対抗するため、『自由民主』『人権』『法の支配』といった価値観を共有する英国が太平洋に進出する新たな時代になりつつある。今後は、カナダなどがクアッドに参加する可能性も考えられる。英国が軍事面で東アジアに進出すれば、中国にとって、大きなプレッシャーになる。日英間では過去に戦闘機共同開発の話も持ち上がっており、技術協力の面でもメリットもある」と語った。

【私の論評】クアッド+英国で八方塞がりになる中国海軍(゚д゚)!

クアッド+英国(ペンタ?)については、すでにこのブログでも掲載したことがあり、無論日本としては大歓迎です。

「2+2」において、ウォレス氏は、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に東アジア地域に派遣すると表明しています。

ただ、海洋戦においては、従来は空母が重視されていましたが、現在においてはこれは政治的には大きな意味を持ちますが、実戦においては、空母や去就揚陸艦など自体はあまり意味をもたなくなりました。

なぜなら、現在は対艦ミサイルなどが発達したため、空母は単なる大きな標的となってしまい、すぐに撃沈される可能性が大きいからです。

現代の海洋戦では、やはり潜水艦隊と対潜哨戒能力が鍵です。

では、英国の潜水艦はどうかといえば、予算削減によりすでに随分前から、通常型潜水艦は開発されておらず、就役しているのは米国と同じく原潜のみです。

攻撃型原潜については、攻撃力は優れているものの、静寂性(ステルス性)には劣ります。日本の通常型潜水艦と比較すれば、静寂性は格段に劣ります。

そのため、実戦ということになれば、英国の原潜も米国の原潜と同じく、中国軍からは比較的発見されやすいので、やはり日本の潜水艦が偵察活動をして、米英の潜水艦は、その情報を活用して、攻撃に徹するという役割になるでしょう。

何しろ、日本の潜水艦の静寂性は非常に高く、中国海軍のお粗末な対潜哨戒能力ではこれを発見することは不可能だからです。原潜は構造上どうしても騒音がある程度出るので、米英の原潜も中国軍に発見される可能性があります。

ただし、予め水中に潜んでいて、必要があれば突然攻撃を加えるという戦法をとれば、これは中国軍には対処不能です。それを実現するためにも、日本の潜水艦による情報収集は欠かせなくなります。

ただし、日本の潜水艦隊は22隻であり、これは日本全体を守備するために存在するわけですから、尖閣付近や南シナ海にばかり航行させるわけにもいかず、そのような場合は米英の原潜が要所要所に潜み偵察ならびに攻撃に転じることができるというのは、心強いです。

対潜哨戒能力については、英国は、日本と同じようにかつては、P3Cを導入していましたから、中国よりは、はるかに哨戒能力が高いですから、これは中国に対してかなりの抑止力になります。

2019年9月26日(木)から10月4日(金)までの9日間、長崎県の佐世保から関東南方に至る海域と空域で、海上自衛隊とアメリカ海軍、インド海軍による日米印共同訓練「マラバール2019」が実施されました。

この訓練には海上自衛隊とアメリカ、インド両海軍から艦艇に加えて、対潜水艦戦や洋上のパトロールを任務とする哨戒機も参加しており、海上自衛隊からはP-1哨戒機、アメリカ海軍とインド海軍からはボーイングがP-3C哨戒機の後継機として開発した哨戒機「P-8」が、それぞれ参加しています。

アメリカ海軍のP-8A哨戒機は、2013(平成25)年から沖縄県の嘉手納飛行場に配備されており、2019年4月に航空自衛隊のF-35A戦闘機が墜落事故を起こした際には、捜索活動に加わっています。

日米印共同訓練「マラバール2019」にて。左から米海軍P-8A、海自P-1、印P-8I

またオーストラリア空軍も2018年4月から2019年9月までの約1年半のあいだに5回、P-8哨戒機を日本に派遣して嘉手納飛行場を拠点とし、北朝鮮による、公海上で船舶を横付けして物資の取引を行う、いわゆる「瀬取り」を含めた違法な海上活動の監視を実施しており、P-8は日本にとって馴染みの深い航空機になりつつあります。

アメリカ海軍やオーストラリア空軍などが採用したP-8Aは、潜水艦が発する磁気による磁場の乱れを探知する「MAD(磁気探知装置)」を備えていませんが、インド海軍が導入したP-8Iは、P-3C哨戒機や海上自衛隊のP-1哨戒機と同様、MADを尾部に装備しています。

日本では、MADを装備していないP-8Aは潜水艦の探知能力において、P-3CやP-1に比べ劣るのではないか、という見方もあります。ただし、MADの価値は依然として低下しておらず、哨戒機を運用する海軍や空軍がどのような対潜水艦作戦を構想しているかで、MADが必要であるか否かが決まります。

さらに、水中で潜水艦の発する音波を受信して航空機に送信する潜水艦探知装置「ソノブイ」の進化などにより、MADを装備していなくてもP-3Cと同様以上の対潜水艦作戦が遂行できると判断して、米豪海軍はP-8AにMADの装備しなかったようです。

P-8AはMADを装備していないだけではなく、最初から無人機との連携を想定して開発されている点もP-3CやP-1とは異なっています。

米豪海軍は、P-8Aとコンビを組む無人航空機として、ノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」を採用しています。両海軍は、有人哨戒機に比べて連続作戦時間が長い「トライトン」で洋上を監視し、「トライトン」が不審な目標を発見したらP-8Aが急行して対処するという運用方法を構想しています。ちなみに、英海軍もP-8Aを装備しています。

哨戒活動演習をするノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」

「トライトン」は日本も導入するRQ-4「グローバルホーク」の派生型で、外見もよく似ていますが、「グローバルホーク」が成層圏を長時間飛行して監視を行なう航空機であるのに対し、「トライトン」は低高度を飛行して洋上を監視する航空機であることから、機体構造が強化されているほか、センサーもAESAレーダーなど、洋上監視に最適化されたものが搭載されています。

P-8Aはボーイングが開発を進めている無人潜水艇「エコーボイジャー」との連携も検討されています。「エコーボイジャー」は約1万2000kmの連続航行と約3000mまでの潜航が可能で、船体には様々なセンサーを搭載できます。アメリカ海軍はエコーボイジャーの採用を決めていませんが、採用されればP-8Aの潜水艦への対処能力はさらに向上すると考えられます。

無人潜水艇「エコーボイジャー」

P-8Aは海上自衛隊のP-1とは異なるコンセプトの哨戒機ですが、同盟国の米国と事実上の準同盟国である豪に加え、近年、日本との防衛協力の強化が著しい印度と英国にも採用されており、海中を含めた海洋の自由を重んじる日本にとって、心強いパートナーとなる哨戒機です。

日本としても、クアッド+英国で、これらドローンの運用も視野にいれることもできます。なお、中国のドローンを過大評価するむきもありますが、中国がいくら種々様々なドローンを開発して、対潜哨戒能力そのものが優れていなければ、無意味です。そもそも、発見できない敵は攻撃できません。その他超音速ミサイルなども同じことです。

いずれにしても、現時点では日米が対潜哨戒能力では、世界トップクラスであり、英・豪もそれに続く状況にあります。そうして、中国海軍よりはいずれも対潜哨戒能力が優れています。

中国海軍の対潜哨戒能力は、現状では日米英豪に比較するとかなり劣っています。この状況だと、クアッド+英と中国が海洋戦になった場合、対潜哨戒能力が優れたクアッド+英が、中国の潜水艦をすぐに探知し、これを破壊することになります。そうなれば、中国海軍は空母やその他艦艇を守備することはできません。そうなると、中国側には全く勝ち目はありません。

私が以前からこのブログでも主張してきたように、クアッド+英は、南シナ海と尖閣諸島を守るために、わざわざ空母打撃群を派遣する必要はありません。大規模な潜水艦隊を派遣して、南シナ海や尖閣を包囲するだけで良いです。

包囲して、南シナ海の軍事基地や、尖閣の上陸部隊への補給を絶てば良いのです。場合によっては、機雷封鎖をすれば、より効果的です。補給を絶てば、上陸部隊はお手上げになってしまいます。その後は、お手上げになった上陸部隊を拘束すれば良いのです。そのために、必要とあれば、空母打撃群を派遣すれば良いのです。このような戦い方をすれば、犠牲はほとんど出ません。

このブログでは、以前から中国海軍のロードマップでは、昨年までに第二列島線を確保することになっていましたが、それどころ台湾、尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。

かといつて、尖閣や台湾を強襲しても、負けることは最初からはっきりしています。クアッド+英国で、中国海軍の八方塞がり状況がしばらく続くことになるでしょう。

それどころか、台湾、尖閣諸島で何らかの軍事行動を起こせば、惨敗して、中国の海洋戦略は大きく後退することになります。

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2021年2月3日水曜日

改正コロナ特措法が成立 罰則導入、実効性高める―【私の論評】野党・マスコミの認知症的物忘れの速さに惑わされるな(゚д゚)!

 改正コロナ特措法が成立 罰則導入、実効性高める

改正新型コロナウイルス特別措置法が可決成立した参院本会議=3日午後、国会


 改正新型コロナウイルス特別措置法と感染症法は3日の参院本会議で、与党と立憲民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。官報での公示を経て13日に施行される。営業時間短縮や入院拒否に関して命令や罰則を導入し、対策の実効性を高める。与野党の事前協議を経たことで、1月29日の審議入りから実質4日の審議でスピード成立となった。

 西村康稔経済再生担当相は3日の審議で、命令や罰則について「専門家の意見を聞いて判断するし、十分に私権に配慮した運用を行う。丁寧に事業者の理解を得ながら進めていく」と述べ、慎重に運用する考えを強調した。内閣委と本会議の採決では国民民主、共産両党が反対した。

 特措法には、緊急事態宣言の前段階に当たる「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を新設。首相が専門家の意見を踏まえて指定した地域の知事は、宣言の発令前でも事業者に営業時間の短縮を命令でき、拒んだ場合は20万円以下の過料とする。コロナ分科会が示す基準で「ステージ3(感染急増)」での適用を想定している。

 緊急事態宣言下での時短や休業についても、これまでの要請に加えて命令を新設し、拒んだ場合は30万円以下の過料とする。

 また、休業や時短に応じた事業者に対する支援として、国と地方自治体が「財政上の措置」を講じるよう義務付けた。

 一方、感染症法には入院拒否者や、保健所の行動調査を拒否した感染者に対する罰則を追加し、それぞれ50万円以下、30万円以下の過料とする。

 改正法は自民、立民両党が1月28日の幹事長会談で、政府案から刑事罰を全て削除するなどの修正で合意。衆院で1日に修正案が可決され、参院に送付されていた。

【私の論評】野党・マスコミの認知症的物忘れの速さに惑わされるな(゚д゚)!

改正特措法は営業時間短縮命令を拒んだ事業者に、緊急事態宣言下で30万円以下、「まん延防止等重点措置」下で20万円以下の過料を科す。改正感染症法は入院拒否者に対し50万円以下、疫学調査拒否者に30万円以下の過料を課します。

 改正新型インフルエンザ等対策特別措置法では、都道府県知事による営業時間短縮などの「命令」に違反した事業者への罰則として、緊急事態宣言下で30万円以下、まん延防止等重点措置下で20万円以下の「過料」を科す規定が新たに設けられました。

ただし、知事が命令を出すには段階を踏む必要があり、すぐに適用されるわけではない。政府は「抑止効果として罰則があること自体が大事だ」との考えで、適用は慎重に判断する構えです。 

感染症法に関しては、入院に応じなかったり、入院先から逃亡したりした感染者らに「50万円以下」の過料を科すことと、保健所による行動歴などの調査に応じず、虚偽の回答をした場合も「30万円以下」の過料を科すことになりました。




田村憲久厚労相は、患者や家族に必要な介護や保育などのサービスが確保できないため入院を拒否している場合は「正当な理由になり得る」と説明。罰則の対象としない考えです。

政府は2020年4~5月の緊急事態宣言時の基本的対処方針で、知事が休業や時短を求める場合には、まず宣言前から可能な「協力の要請」をした上で、第2段階でより強い「要請」、第3段階で「指示」と段階を踏むよう明記。その都度、「国と協議」のうえ専門家の意見を踏まえるよう求めていました。

知事が要請・指示をする際には、職員らが実際に店舗を訪れ、営業状況を確認するなどした上で店名を公表していました。 

改正特措法は、知事が要請・命令を出す必要があるかを判断するに当たり、感染症の専門家らの意見を聞かなければならないと規定。要請・命令を出す際には今回の改正以前と同様の段階を踏む必要があります。 

前回の宣言下で指示の対象となったのは一部のパチンコ店のみでした。現状で各知事が飲食店に求めている時短要請はいずれも協力要請で、今回の宣言下では罰則適用には至らないとみられます。

結局のところ、現在とあまり変わりないようですが、過料が課せられる場合もあるというのが大きな違いです。結局のところ、多くの人の良識に任せるというところは変わりないようです。

政府は2日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金をめぐり、財政負担が一定額を上回った自治体に対し、地方創生臨時交付金を追加支給することを決めました。坂本哲志地方創生担当相が記者会見で明らかにしました。
2020年度第3次補正予算に計上した1兆5000億円のうち、追加支給分として2000億円を確保。協力金は国が8割、自治体が2割を負担する仕組みですが、新型コロナの感染拡大が続く中、自治体側からさらなる財政支援を求める声が上がっていました。

日本政府の、対コロナ財政政策をふりかえってみると、下のグラフをご覧いただけば、日本は先進国においてはトップクラスともいえる状況です。野党やマスコミなどは、こうしたグラフを読み取る能力がないようにみえます。


ただ、コロナ対策で失敗もあります。たとえば、二次補正予算のときに積み上げておいた、予備費10億円があまり使われていなかったということがあります。あれを活用して、昨年の夏あたりに、コロナ専門病院とか、医療従事者を確保しておけば、現状のように医療の逼迫などおこなら買ったはずです。

立憲民主党など野党は昨年5月28日、政府が2020年度第2次補正予算案に計上した10兆円の予備費を批判しました。

立民の逢坂誠二政調会長は記者団に「頭から否定するものではないが、10兆円は空前絶後で政府に白紙委任するようなものだ」と指摘しました。

国民民主党の泉健太政調会長は「予備費は最小限であるべきだというのがこれまでの通説だった。いかなる国会統制が必要かを考えねばならない」と述べました。

共産党の志位和夫委員長は記者会見で「政府の独断で何でも決めるやり方が横行したら、予算審議の意味がなくなる」と主張しました。

このような批判もあったので、予備費はあまり使われないままになっていた部分もあります。残念なことです。野党の批判などは気にせずに、どんどん対策をやって、医療崩壊などの危機に対処すべきでした。

新型コロナウイルス対策の費用を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案は1月26日、衆議院本会議で採決が行われ、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決されました。27日から参議院で審議され、28日に成立しました。

追加経済対策は19兆1761億円とされていました。これは、まったく新しく決まったように報道しますが、これは去年(2020年)12月の頭に閣議決定されて内容も出ていることです。そのときには、各紙一斉に「予算が大き過ぎる」という批判されていました。今回はこの予算案に対するマスコミの「大き過ぎる」という批判はありません。本当に、不思議です。 

あの当時言われていたのは、補正の19兆に加えて本予算の方、15ヵ月予算の全体で真水30兆円というのが大き過ぎると言われていました。 

新聞では、いま停止しているGo To 関係の予算が補正のなかに計上されているので、これを医療機関や生活困窮者への支援に回すべきではないかとされています。 

しきし、Go To が感染を拡大したというエビデンスはなかったですし、止めても関係がなかったでしょう。Go To は日本人の全移動の1%くらいでしかないので、説明はできません。

1%の要因で全体を説明するのは無理だということは常識的にわかります。Go To を停止した12月半ば過ぎ、その後むしろ感染者が増えました。東京でも1000人を超えたのがそのタイミングです。Go To を止めたら、今度は「飲食や旅行業界はどうなるのか」とまた逆のことを言います。

マスコミは、前に言ったことはすぐに忘れてしまい、その都度言いたいこと言っているようにしかみえません。こんなにすぐ忘れてしまえるとは、精神衛生上非常に良いかもしれません。(誤解しないでください、はっきり言うと馬鹿と言っているだけです)

一律の給付金に関しては、三次補正には含まれていないので、実施されることはないでしょう。ただ、四次補正についても、実施する可能性はあります。その中には、含めるということも考えられます。

とにかく、野党やマスコミの言うことは、経済面では全く役にたちません。惑わされるだけです。惑わされるだけならまだしも、不安に押しつぶされるような人もでてくるのではと、心配になります。一番良い対処法は、コロナに関してはテレビも新聞も見ず、信頼できるソースを追いかけるなどのことをすべきです。

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2021年2月2日火曜日

バイデン政権、ウイグル族大量虐殺を追認 相次ぐ対中強硬発言の背景にトランプ氏の“置き土産” 石平氏「撤回すれば猛批判」―【私の論評】トランプの置き土産は、厳しい中国対応だけではない(゚д゚)!


ブリンケン氏(手前)とマスクをするバイデン氏(奥)


 ジョー・バイデン米大統領率いる新政権の幹部から、対中強硬発言が相次いでいる。バイデン政権に対しては、バイデン一家の中国疑惑に加え、中国に融和的姿勢を取り続けたバラク・オバマ元政権の中心メンバーが多く参加しているため、対中政策の転換が懸念されていた。識者は、ドナルド・トランプ前政権がさした“楔(くさび)”の存在を指摘している。

 「(バイデン政権としても)ジェノサイド(民族大量虐殺)であるとの認識は変わらない」

 アントニー・ブリンケン国務長官は就任翌日の27日、国務省で初めて記者会見し、トランプ前政権が中国政府による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒少数民族の弾圧を「ジェノサイド」と認定したことについて、こう言い切った。

 同日、米国連大使に指名されたリンダ・トーマスグリーンフィールド元国務次官補も、上院外交委員会の承認公聴会で証言し、国連で影響力を高める中国について、「各種の国連機関で権威主義的な計略の推進に取り組んでいる」と非難し、対抗策を講じていくと表明した。

 気候変動問題を担当するジョン・ケリー大統領特使も同日の記者会見で、気候変動問題は米中の「独立した重要な問題だ」としたうえで、「『知的財産窃取』や『南シナ海問題』といった中国とのすべての懸案に関し、気候変動(をめぐる協議)の取引材料には決してしない」と強調した。

 政権の「親中」イメージを払拭するかのような言動をどう見るか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「ウイグル族への弾圧は、国内外から『重大な人権問題』として注目されている。トランプ前政権は最終盤で、バイデン政権が『親中』に傾ききれない一線を引いたとも解釈できる。仮に、バイデン政権が『ジェノサイド』という認識を撤回すれば、猛批判を浴びただろう。バイデン政権にとっては『余計な置き土産』という本音もあるのではないか」と分析している。

【私の論評】トランプの置き土産は、厳しい中国対応だけではない(゚д゚)!

トランプ政権末期には、矢継ぎ早に中国に対する厳しい様々な措置を実行しました。それについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプが最後に連発する駆け込みアクションの意味―【私の論評】日本は米国の大型経済対策に対応し、安倍・トランプの置き土産日米豪印(クアッド)の中国包囲網を強化せよ(゚д゚)!
米テキサス州ハーリンゲンのメキシコ国境の壁を視察した後、メリーランド州の
アンドルーズ基地で専用機から降りるトランプ大統領(2021年1月12日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、末期のトランプ政権は、特に対中国に関して、導入できる限りの厳しい内容措置をして、退きました。

これは、当然のことながら、バイデン政権に対して、対中国に関して、後退はさせないとの意思表示であったと考えられます。バイデン政権は『ジェノサイド』という認識の他にも、中国に対して譲歩をするようなことがあれば、米共和党はもとより、民主党の多くの議員にも反発されるどころか、世界樹の先進国から反発されるでしょう。

ただ、日本の外務省の担当者は26日の自民党外交部会で「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」との認識を示したようです。出席した自民党議員からは「日本の姿勢は弱い」などの指摘が相次いだが、外務省側は「人権問題で後ろ向きという批判は当たらない。関係国と連携しながら対応していく」と理解を求めたそうです。

中国の鼻息を仰ぎ、人権弾圧を容認するかのような発言をすることは、わが国の名誉、そして国益にかかわる重大事です。

文明国家、道義国家として、わが国は、いかなる国家の人権弾圧も許さぬ姿勢を明らかにすべきです。

トランプ氏の置き土産は、対中国に関するものばかりではありません。無論先日述べたように、北朝鮮による拉致被害者に寄り添ってくれたということもありました。これも、後継のバイデン政権は無視することはできないでしょう。

それ以外にも大きな貢献があり、これもバイデン政権は無視できないでしょう。トランプ氏は、大統領に就任中は、少年少女を守るため奮闘しましたし、これからも奮闘することでしょう。

日本ではあまりなじみがないですが、「Pedophile Ring(ペドファイル・リング)」という問題が世界には存在します。これは、幼児・小児を対象とした特殊な性的嗜好を持つ人を指します。こうした人々の欲望を満たすべく、幼児誘拐や性的虐待を取りまとめる犯罪ネットワークを、ペドファイル・リングと呼ぶのです。

トランプ氏の大統領就任から2カ月の時点で、ペドファイル・リングに関連して、すでに1500人ほどが逮捕されました。これは、オバマ政権下の2014年に逮捕された約400人の3倍以上の数です。トランプ大統領就任後の1月末には、カリフォルニアで人身売買組織が摘発され、474人もの逮捕者が出ました。児童28人と成人27人が救出されたといいます。

トランプ氏は、こうした組織的な犯罪を撲滅しようとしました。

2017年2月、国境を越えた犯罪組織に関する連邦法の強化、および人身売買などの国際的な密売を防ぐ旨の大統領令に署名。同月、人身売買問題の専門家との会合を開き、司法省や国土安全保障省、連邦政府関係機関に人身売買の防止強化を指示すると述べました。

実は、大統領に就任する5年前、トランプ氏は行方不明事件について次のようにツイッターで述べていました。

「性倒錯者に捕えられたこれらの行方不明の子供たちに対して何かしなければならない。あまりに事件が多すぎる。迅速な裁判、そして死刑が求められる」

ペドファイル・リングの問題は根深く、権力者との癒着も指摘されています。こうした説を陰謀論だとする声がある一方で、癒着を裏付けるような被害者の告白もあります。

2014年、「An Open Secret(公然の秘密)」というドキュメンタリー映画が公開され、物議を醸した。これは、ハリウッド業界内で行われている少年への性的虐待の事実を明らかにしたものです。以下にその動画の予告編を掲載します。

この動画は、以下のリンクでご覧になることができます。


同作品では、プロデューサーや投資家から実際に性的虐待を受けていたという元子役の男性が、当時の様子を描写します。断れば仕事がなくなるという状況の中、少年たちは大人に相談することもできず、苦しみを隠しました。10代前半の少年が60歳を超えた男性に性的虐待を受けるなど、信じがたい行為が当然のように行われていたというのです。

性的虐待の記憶からアルコールやドラッグに走り、普通の生活が送れなくなった元子役の姿が描かれた同作品は、「これは氷山の一角にすぎない」と視聴者に訴えかけています。英ガーディアン紙や英テレグラフ紙でも取り上げられ、注目を浴びました。

ハリウッド以外にも、ペドファイル・リングには政治家の関与もささやかれています。トランプ氏は、現在でもこうしたアンタッチャブルな領域にもメスを入れるつもりなのでしょう。

米国のトランプ大統領の署名で新型コロナウイルス追加経済対策法案が成立した昨年12月下旬。実はこの時から、未確認飛行物体(UFO)に関して米情報機関が知っている内容を180日以内に議会に提出するよう求めるカウントダウンが始まりました。


国家情報長官と国防長官は、およそ半年以内に「未確認航空現象」に関する非機密扱いの報告書を連邦議会の情報軍事委員会に提出する必要があります。

この条項は、今回の予算案に含まれる2021年度情報機関授権法の「委員会コメント」に盛り込まれていました。

上院情報委員会の指示書によると、報告書には、UFOデータに関する詳細な分析や、海軍情報部、未確認航空現象作業部会、米連邦捜査局(FBI)が収集した情報を含める必要があります。

さらに、全ての未確認航空現象報告に関するタイムリーなデータ収集と一元化された分析を促すための省庁間プロセスについて詳しく記述し、そのプロセスの責任者を指名することも求めています。

UFOによって国家の安全が脅かされるような事態があった場合は特定し、背後に敵国が関与しているかどうかの判断を示す必要があります。

提出された報告書は非機密扱いとなりますが、機密指定の付属書が含まれることもあります。

国家情報長官の報道官はファクトチェックを行うサイト「スノープス」の取材に対し、この報道内容を確認しました。

米国防総省は昨年4月、「未確認航空現象」をとらえた3本の映像を公開していました。

これも、トランプ氏の置き土産です。

トランプ氏の二度目の弾劾は、すでに提出されたときから、無駄ということが指摘されていました。米国メディアとそれに追随する日本のメディアの偏向報道に騙されるなと警告したいとです。そもそも、すでに辞任した大統領を弾劾できるはずもないです。

それにしても、米民主党はなぜ2度とも最初から無駄とわかっている、大統領弾劾を二度も実行しようとしたのでしょうか。民主党は相当焦っているとしか言いようがありません。良い言葉が思い浮かばないのですが、それこそ「トチ狂っている」としか言いようがありません。

日米の大手メディアは、トランプ氏の失言や疑惑ばかりを取り上げ、揶揄する傾向があります。それどころか、TwitterやFaceBookなどでは、アカウントを永久凍結するなどの、信じられない暴挙を犯しました。しかし、このような報道されない仕事にこそトランプ氏の真意が隠されているのです。私たちには、真実を見極める力が必要です。

ドナルド・トランプ前大統領が大統領選挙直後に結成したセーブ・アメリカPACは、連邦選挙管理委員会に提出された報告書によると、少なくとも3,120万ドル(日本円で32億7千万円)の資金を確保しています。

PAC(政治活動委員会)のおかげでトランプは、ホワイトハウスから出た後も資金集めを継続し共和党に影響力を維持することが可能になっています。

これからも、トランプ氏の行動や発言には目が離せません。元々実業家であり、既存の政治家には、考えられないような行動をするトランプ氏です。今後どのような行動と発言をして、米国政界やエスタブリッシュメントたちを揺るがすのか、本当に楽しみです。これも、トランプ氏の置き土産といえると思います。

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2021年2月1日月曜日

英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

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激突!米大統領選

TPPに参加する英国のボリス・ジョンソン首相

 英政府は1日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を正式申請する。発足時の参加国以外による初の正式申し込みで、米国のTPP復帰など、加盟国拡大の好機といえる。英国メディアによると、英国は、日米とオーストラリア、インド4カ国の枠組み「QUAD(クアッド)」にも参加する可能性があるという。TPPは「中国包囲網」としての意味合いがあるだけに、英国のTPP加盟実現の重要性は高そうだ。

 「英国民に莫大(ばくだい)な利益をもたらす経済連携を築く」「(加盟申請は)自由貿易の旗手となる野心を表している」

 ボリス・ジョンソン英首相は1月30日、このような声明を発表した。

 自動車など、英国からの輸出品の関税引き下げや、ビジネス目的の往来が容易になることなどを目指す。エリザベス・トラス国際貿易相が1日、西村康稔経済再生担当相らとオンラインで会談し、申請する見通しだ。

 英国は経済面だけでなく、安全保障分野でも「アジアとの連携強化」に積極的だ。

 英紙デーリー・テレグラフなどは1月30日までに、英国がクアッドに参加する可能性があると伝えた。英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」は今年、東アジア地域に展開して、自衛隊や米軍と共同訓練を行う予定だ。

 習近平国家主席率いる中国共産党政権は、コロナ禍でも軍事的覇権拡大を進めている。1日には、中国海警局(海警)に外国船舶への武器使用を容認する海警法を施行した。

 香港の旧宗主国である英国は、香港民主派弾圧などで中国との対決姿勢を強めており、日米などとの同一歩調を模索しているとみられる。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「英国は、EU(欧州連合)から離脱し、経済的あるいは安全保障上、自立することは当然といえる。地政学的に考えれば、ユーラシア大陸の核保有国を(クアッドと英国で)挟むことができ、手を結ぶべき絶好の国といえる。親中懸念があるジョー・バイデン米政権が不安とするならば、英国のクアッド参加はそれを埋めてくれる。日本政府は『歓迎している』ことを発信してもいいくらいだ」と指摘した。

【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

英国は既に昨年9月11日、日本と自由貿易協定締結で合意したと発表していましたた。英国にとっては、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)後に初めて結ばれる主要な協定とされていました。

国際貿易省は声明で「英国は日本との自由貿易協定を確固たるものにした」と発表し、「これはわが国が独立した貿易国となって初の主要な貿易協定となり、対日貿易は推定152億ポンド(約2兆800億円)規模の増加が見込まれている」と明かしました。

エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英国際貿易相と茂木敏充外相は昨年9月11日、ビデオ会議で協議し、包括的経済連携協定を結ぶことで大筋合意に達した。

エリザベス・トラス(Elizabeth Truss)英国際貿易相

この協定は、昨年発効したEUと日本間の広範な貿易協定を基礎としていますが、同協定は昨年12月31日をもって、英国には適用されなくなりました。

英国は昨年1月にEUから離脱したものの、年末まで移行期間を設けることに合意しています。現在は既存のものと同様の協定、または新協定を年内に締結するため、交渉を急いでいます。

トラス氏は「ブレグジット後初の主要な貿易協定であり、これは英日両国にとって歴史的な瞬間だ」と歓迎。さらに、新協定は英国が環太平洋連携協定(TPP)に加盟するための「重要な一歩」だと述べました。

英国とEU間の将来的な貿易協定に関する協議は難航し、行き詰まっています。

英紙デーリー・テレグラフなどは1月31日までに、中国の脅威をにらんだ日米とオーストラリア、インドの4カ国で構成される枠組み「クアッド」に英国が参加する可能性が浮上していると報じました。

英国は香港問題などの人権問題をめぐり中国への対抗姿勢を鮮明にしており、「自由で開かれたインド太平洋」を目指す日米などと連携を強めたい考えとみられます。 

米国のトランプ前政権は外交・安全保障面でクアッドを含む中国包囲網の構築を進めてきました。 バイデン米大統領も菅義偉首相との初の電話会談でクアッドで協力を強化することで一致。

米ホワイトハウスのサリバン国家安保補佐官が日本、オーストラリア、インドなど4カ国が参加する多者安保協議体「クアッド」について「インド・太平洋政策の土台になるだろう」として「もっと発展させたい」との考えを示しました。

このような中でクアッドへの参加に消極的な韓国の代わりに、昨年欧州連合(EU)と決別した英国がこれに参加する可能性が浮上しています。クアッドが「クインテット(5人組)」に拡大改編した場合、自由・民主陣営における韓国の立場が一層弱まるとの見方も出ています。

デーリー・テレグラフ(電子版)は28日、クアッドを「中国への対抗勢力として米国が拡大をにらむ『アジアの北大西洋条約機構(NATO)』」と表現。新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港の人権問題などで中国への強硬姿勢を強める英国が中国に対抗するため、クアッドに参加する可能性があるとの見解を示しました。 

また、英紙タイムズ(電子版)は29日、ジョンソン英首相がバイデン政権との外交政策の擦り合わせに熱心になっていると指摘。ジョンソン氏が今後、インドを訪問した際に参加も視野に入れた協議を行うとの見通しを示しました。英国は対中、対露政策で米国とともに強硬路線をとり、米英の「特別な関係」を維持したい思惑があります。

英国がクアッドに参加する可能性は昨年以降ずっと話題に上っていました。昨年EUから離脱した英国は新たな活路を見いだすため「アジアへの回帰」を政策として推進しています。米国や日本との海上合同軍事演習を通じて持続的にインド・太平洋地域への関心を示し、先月には日本との合同軍事訓練に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を参加させる可能性があるとも報じられました。

最新鋭空母「クイーン・エリザベス」


英国は昨年5月、対中協力に向けたいわゆる「民主主義10カ国(D10)構想」を呼び掛けるなど、共通の価値観に基づく連帯に積極的な関心を示してきました。そのため韓国の外交関係者の間からは「韓国が除外された状態でのクアッド拡大・改編」に対する懸念の声も出ています。

 2020年1月末に欧州連合(EU)から離脱した英国は世界各国との連携で経済成長や影響力拡大を図る「グローバル・ブリテン」構想を掲げており、アジア太平洋地域との連携拡大も視野に入れます。議長国を務める6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では、韓国とオーストラリア、インドの3カ国を招待する方針を表明。G7に韓豪印を加えた「民主主義10カ国」(D10)を結成する構想を進めています。 

英国は中国を念頭に置いたアジア太平洋地域の連携を主導し、存在感を高めたい考えとみられます。

東西冷戦時代から今日に至るまで、アジア太平洋地域では、米国を中心に、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアがそれぞれ別個に同盟を結んでいました。それは「ハブ・アンド・スポークの同盟」と呼ばれ、米国が常にハブであり、スポークがその相手国でした。これに対して、欧州のNATOのように複数の国が互いに同盟を結び、協力し合う関係を、「ネットワーク型の同盟」と呼びます。

ハブ・アンド・スポーク同盟の最大の問題は、協力し合う相手が常に一国しかないために、国同士の利害が一致しない場合、機能不全に陥ることです。また、二国間の力のバランスに大きな差があると、弱い側が常に強い側に寄り添う追従主義に陥りがちであり、スポークの国は戦略的に自律するのが難しいです。そのため、2000年代以降、スポークの国同士の協力が急速に進展してきています。

具体的には、日本では安倍政権発足以来、政府の首脳陣がほとんど毎月のように東南アジア、南アジア、さらに欧州諸国に足を伸ばし、安全保障協力を拡大しようとしていますし、自衛隊も、オーストラリア、インドなどと定期的に共同の演習を実施しています。また、日米とオーストラリアとインド(クアッド)、日米と韓国、日米とインドといった三国間での安全保障協力も進んでいます。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築き、米国との同盟を支えようとしているのです。

ただし、このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英がそうであるように、コアとなる二国間関係が必要です。日英同盟はまさにそのコアになりえます。

日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

その両国が、TPPとクアッド+英国で、協力しあうのは、まさに理にかなっているといえます。さらには、ファイブアイスとの関係を強化していくこともそうだと思います。

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