2022年11月21日月曜日

へルソン撤退は「敗走」ではなく、ロシアの珍しく見事な「作戦成功」と軍事専門家―【私の論評】露軍ヘルソン撤退の成功は、情報将校退潮によるものか?露軍を敗者と見なすのは、時期尚早(゚д゚)!

へルソン撤退は「敗走」ではなく、ロシアの珍しく見事な「作戦成功」と軍事専門家

アンナ・スキナー


<ヘルソン撤退はプーチンにとって大きな打撃であることは確かだが、軍事的に見れば賢明な選択で、実施も過去の「敗走」とは大違いだった>

11月9日、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相はウクライナ南部ヘルソン州の州都へルソンからロシア軍を撤退させる方針を表明し、11日には撤退完了を発表した。この動きはセルゲイ・スロビキン総司令官の提案によるものとされるが、複数の専門家たちは、今回の撤退の動きからはロシア軍の「弱さ」よりむしろ「軍事戦略の進化」が伺えたと分析している。

米海軍分析センター(CNA)でロシア研究プログラムの軍事アナリストを務めるマイケル・コフマンはキーウ・インディペンデント紙のインタビューに対し、ヘルソンから撤退するというロシアの戦略には「困惑させられた」ものの、一方でロシアは過去の失敗から学んでいるように見えると述べた。

9月にウクライナ軍が反転攻勢に出て、南部ハルキウ州イジュームからロシア軍部隊が逃走する際には、大量の弾薬や戦車、軍用車などが放棄されていたことが話題となった。

「敗北は、確かに士気を低下させるものだ。それでもヘルソンの状況は、イジュームや(同じくウクライナが奪還した東部の都市)リマンとは異なっていた」と、コフマンは言う。「(今回は)組織だった撤退であり、イジュームで見られたような多くの死傷者や装備品の放棄を伴う「敗走」ではない。ロシアは残る兵力と装備の大部分を撤退させることに成功したようだ」

つまり今回のヘルソン撤退は、ロシア軍が進化していることを示しているとコフマンは指摘する。ロシアの軍事作戦の「変化」を強く示唆する、いくつもの重要な過去との違いがあるからだ。

軍全体の指揮系統にも進化が

米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問も本誌の取材に対し、ヘルソンのロシア軍部隊は、あまり激しい戦闘が起きていなかったイジュームを守っていた部隊よりもよく統制されていたと語った。

軍の指揮系統も、現在の方が優れているようだ。ウクライナ軍が州都ヘルソンに入り、国旗を掲げたところでスロビキン総司令官の「撤退作戦」は完了したわけだが、これによってロシア軍はドニプロ川の西岸で壊滅するリスクを避け、東岸地域の守りを固めるために兵力を再配分することが可能になった。

ヘルソンはウラジーミル・プーチン大統領が始めたウクライナ侵攻において、ロシア軍が唯一、占領できた州都だった。それを手放すことはプーチンにとって政治的な打撃ではあるが、軍事的な視点から見れば賢明な選択であり、その実行もうまくいったとカンシアンは言う。「その証拠に、捕虜になったロシア兵も失われた装備もほとんどなかった」

「しかも今回の『成功』は、橋や船が絶え間なく攻撃を受ける中で大きな川を渡らなければならないという、きわめて困難な軍事的状況下で成された」

実際、ウクライナはヘルソンからロシア軍を追い出すとしてミサイル攻撃などを加える映像を公開したが、撤退時に失われたロシア軍の兵力はごくわずかだったようだ。11月11日におけるロシア側の死傷者は合計710人とされるが、その多くはヘルソンではなく、東部バフムート市での激しい戦闘によるものだった。

【私の論評】露軍ヘルソン撤退の成功は、情報将校退潮によるものか?露軍を敗者と見なすのは、時期尚早(゚д゚)!

上の記事を裏付けるように、ウクライナのゼレンスキー大統領は20日のビデオ演説で、ロシア軍の攻撃が続いており、東部地域だけでも20日に400回近くの攻撃を受けたと述べました。

ゼレンスキー氏は「これまで同様、最も激しい戦闘はドネツク地方で行われている。天候悪化できょうは攻撃は減少したが、ロシアからの攻撃は残念ながらまだ非常に多い」と語りました。

「ルガンスク地域では戦闘を続けながらゆっくりと前進してる。東部ではきょう400近くの砲撃があった」と述べました。


ロシア軍に何があったのでしょうか。私は、ロシア軍内の「ザムポリト」の衰退があるのではないかと考えています。

ザムポリトと言われても、多くの読者には何のことだか分からないでしょう。しかし、その通称である「政治将校」という言葉なら聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

2018年9月はじめ、ロシアの有力紙『イズヴェスチヤ』が、ロシア軍の各部隊に政治担当補佐官(ザムポリト)が復活する予定であると報じていました。

「政治将校」は、ソ連軍を舞台にした映画や小説には必ず(大体は好ましくない姿で)登場します。いわゆる、共産党のお目付役です。

例えばトム・クランシー原作の傑作映画『レッド・オクトーバーを追え』では、ショーン・コネリー扮するソ連の原潜艦長とその部下たちが潜水艦ごと米国に亡命を企てた。

 その際、邪魔者として真っ先に消されたのは政治将校であった。ちなみに全くの偶然ながら、この時の気の毒な政治将校の名は(イワン・)プーチン氏でした。

政治将校の役割はソ連共産党によるソ連軍の統制(言うなれば「赤いシビリアン・コントロール」)を確保することであり、それゆえに軍内部の嫌われ者というイメージを持たれてきた。

しかし、実際の政治将校が西側のフィクションのような扱いを受けていたという証拠は乏しい。

どちらかいうと部隊内の規律維持や司令官の補佐、さらにはレクリエーション活動のロジに至るまで、軍隊生活の運営に関して不可欠の役割を果たす特殊な軍人という方が公平な政治将校像ではないかと思われる。

ただ、政治将校とは共産党による一党独裁体制を軍事面で支えるための制度であったから、ソ連が崩壊すると、共産党の出先機関であるソ連軍政治総局(GPU)とともに姿を消しました。

ソ連軍クレムリン連隊の儀仗兵

『イズヴェスチヤ』が報じた匿名情報によると、新たに設置される政治担当補佐官はどうもかつての政治将校により近い存在のようです。

まず、この政治担当補佐官は連隊、大隊、さらには中隊レベルにまで設置されるとのことであるから、ロシア軍の隅々にまで配属されたようです。

その任務も部隊内の規律維持だけにとどまらず、レクリエーションの企画、兵士やその家族に対する窓口業務、さらには将校や兵士の間に「国防政策に関する「深い理解と支持」を育む」ことまで含むとされました。

特定政党の出先機関ではない、という点を除けば、たしかにその任務上の性格は政治将校と極めてよく似ています。

昨今、西側社会ではロシアによるプロパガンダ戦が問題視されているが、ロシア自身は自国こそが西側による情報工作の対象になっていると認識しており、このことは大統領の演説や各種政策文書でも度々強調されてきました。

特に最近のロシア政府が神経を尖らせているのは軍人によるインターネット利用です。

ウクライナ問題やシリア問題に関して西側の見解(ロシア政府に言わせればプロパガンダ)に軍人たちが感化されたり、SNSを通じて作戦の実態が流出することが懸念されてきました。

このため、ロシア政府は軍人のSNS利用を登録制にしたり軍事情報をインターネットで暴露した場合に罰則を科すなどして情報漏洩対策を進めてきました。


ロシア軍兵にSNSや電子機器をむやみに使うのは控えるべきことを伝えるポスター

しかし、インターネット上にあふれる膨大な情報(例えばその中にはBBCロシア語版など、ロシア政府の立場に否定的な西側発の情報も含まれている)をどう解釈するかは軍人たちの判断に委ねられています。

政治担当補佐官の当面の任務は、こうした情報をどのように解釈すべきかをロシア政府の立場に従って示し、「国防政策に関する『深い理解と支持』を育む」ことであると考えられます。

そうして、ザムポリトの情報解釈がロシア軍に相当影響を与えていたものとみられます。ただ、所詮は政治将校という名が示すとおり、プーチンの政治的立場を中心に据えているため、純然たる軍隊とは違います。

プーチン氏など政治将校の情報にかなり左右されたものとみられます。プーチン大統領は特別軍事作戦の開始を宣言した2月24日の演説の中で「8年間、キーウ政権によって虐待や大量虐殺に晒されてきた人々を守るため、ウクライナの非軍事化とロシア人や民間人に対する数々の血なまぐさい犯罪を犯した者を裁きにかける」と主張しました。

ロシアに亡命していたヴィクトル・ヤヌコーヴィチ元大統領による親露政権樹立の準備もベラルーシで進められていたことが報告されているので、特別軍事作戦の主要目標は首都強襲によるゼレンスキー政権の転覆→親露政権樹立→ウクライナ全土の制圧だったのは間違いないです。

ロシア軍の当初の特別作戦


東部への侵攻とともに、キーウに侵攻するという多方面作戦は、おそらく政治将校の情報に基づいたものであり、この作戦により、数週間で目標を達成できるものと踏んでいたのでしょう。まともな軍人ならこのような作戦は立案しないでしょう。これは、今やGDPが韓国を若干下回るロシアの経済力ではほとんど無理な話で、まともな軍人が考えれば、ロシアが侵攻できるのは、東部の数州、それも全部ではなく一部と考えるでしょう。

そうして当初の目論見は完全に潰えてしまいました。その後も、政治将校の情報を参照していたのでしょうが、それに基づく特別作戦はことごとく失敗したのでしょう。そのため、政治将校の情報は信用されなくなったのでしょう。それに変わって、ロシア軍そのものの情報が信用されなくなったのでしょう。

だからこそ、政治的にみれば、あり得ないヘルソン撤退が行われたとみえます。そうして、この軍事作戦は、ロシア軍主導で行われ、政治将校はほとんど関与しなかったのでしょう。だからこそ、成功したのでょう。

ロシアのペスコフ大統領報道官は21日、記者から「ウクライナの政権交代は特別軍事作戦の目的の一つか?」と質問されると「ゼレンスキー政権の退陣及び新政権の樹立は特別軍事作戦の目標ではない」と答えたため注目を集めていますが、詳しい言及もないまま「ロシアは特別軍事作戦の目標を達成しようとしており、これらの目標は様々な方法や形式で達成することができる」とも付け加えており、ゼレンスキー大統領が「ロシアは一時的な停戦を望んでいる」という言及にも「我々は目標を達成するだけ」と強調しました。

ペスコフ大統領補佐官の発言は、情報将校の退潮を示すものかもしれません。政治将校の情報に頼りすぎたことが、失敗の原因であり、そのようなことはこれからせず、ロシア軍の情報を重視するようするので、これから目標を達成するし、できると踏んでいるのかもしれません。

これは、情報将校に多大な影響を受けた、当初の軍事作戦から、ロシア軍主体の軍事作戦の転換を示しているものと考えられます。

ドンバス解放以外にロシアが唱える特別軍事作戦の目標が何なのかは不明ですが「これらの目標は様々な方法や形式で達成することができる」と述べているので、恐らく政治的にも軍事的にも「ウクライナの屈服」を諦めておらず、軍事的にキーウを占領しなくてもインフラを破壊して経済破綻させれば「目標は達成できる」と示唆しているとみられます。

因みにロシア議会上院のコンスタンチン・コサチョフ副議長はウクライナとの和平交渉について「西側諸国に操られている現キーウ政権とは交渉できない」と述べており、ウクライナ側も「ロシア軍が全てのウクライナ領から離れた後に和平交渉が可能になる」と主張しているので、互いにまだまだ多く血を流す必要がありそうです。

年内には停戦も休戦もなさそうです。ロシアを敗者と見なしてしまうのは、あまりにも時期尚早です。

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2022年11月20日日曜日

岸田首相、寺田総務相を更迭へ 終盤国会への影響を回避―【私の論評】昭和レトロ人事の大失敗は、岸田総理の自業自得(゚д゚)!

岸田首相、寺田総務相を更迭へ 終盤国会への影響を回避


 岸田文雄首相は20日、政治資金収支報告書の不適切な記載などが相次いで発覚した寺田稔総務相を更迭する意向を固めた。同日中に寺田氏が辞表を提出し、首相は後任の人選を急ぐ。今国会終盤は令和4年度第2次補正予算案や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)などの高額献金による被害者救済に向けた新法などの重要審議を控えており、寺田氏を続投させれば審議への影響は避けられないと判断した。

 首相は20日、公邸で松野博一官房長官や木原誠二官房副長官、嶋田隆首相秘書官らと面会し、寺田氏の処遇について協議した。首相は自民党幹部らとも電話で話し合ったとみられる。

 昨年10月の岸田内閣発足後、閣僚の更迭は旧統一教会問題をめぐり辞任した山際大志郎前経済再生担当相や「法相は死刑のはんこを押す地味な役職」と発言した葉梨康弘前法相に続く3人目。首相の政権運営への打撃は必至だ。

 寺田氏をめぐっては、関係する政治団体「寺田稔竹原後援会」(広島県竹原市)が故人名で政治資金収支報告書を提出していたことが明らかになり、昨年の衆院選で選挙区の広島5区に在住する地方議員らに違法に報酬を払った疑惑なども浮上した。

 立憲民主党などの野党は政治資金規正法の所管閣僚として不適格だとして更迭を求めている。与党内からも補正予算案などへの影響を避けるため、寺田氏を更迭し、事態の沈静化を図るべきだとの意見が強まっていた。

 寺田氏は衆院広島5区選出で首相が率いる自民党岸田派(宏池会)に所属する。昨年10月の政権発足時から首相補佐官を務め、今年8月の内閣改造で初入閣した。首相は、同じ岸田派の葉梨氏に続いて身内を不祥事で更迭する事態となった。

【私の論評】昭和レトロ人事の大失敗は、岸田総理の自業自得(゚д゚)!

政治資金所管の寺田稔総務相は夫人が代表の政治団体を通したカネのからくりや2年間も故人の会計責任者が届出をしていた事など暴露されたうえ、また現職の大臣秘書官が文春に疑惑を認め、さらには寺田総務相による証拠隠滅の疑いが浮上しました。自民内からも辞任を求める声が強まっていたため、岸田首相も更迭の方針を固めました。山際前経済再生相、葉梨前法相に続く「辞任ドミノ」です。

寺田稔竹原後援会事務所

まともな保守派からみれば、最も辞めさせるべきは筋金入りの媚中派林外相ですが、野党もワイドショーテレビも体質が同じなので、そこは追及しません。岸田首相自身も、ワイドショー政治にのめり込み、結局重要閣僚以外の三閣僚の辞任という、三流政局を自ら招いてしまいました。

このブログでは、岸田首相による、内閣改造人事は完璧に失敗だったことを改造直後に批判しましたが、その批判は正しかったようです。三閣僚の辞任には、様々な理由がありましたが、共通するのは人事が大失敗であったことは明白だと思います。

発足直後の第二次岸田内閣

首相には様々なタイプがあって、政策があって人事をするタイプと、人事しかない人がいます。岸田総理は後者です。岸田総理は、参院選の後は改造人事で頭がいっぱいだったようで、すべてそこに結びつけて行動していました。

酷かったのは中国が日本のEEZ内に(ミサイルを)撃ち込んだ時、国家安全保障会議(NSC)を開くのが常識ですが、結局開催しませんでした。これは、人事で頭がいっぱいだったからだと考えられます。

それに、改造の前日には、人事はすべて明らかになっていましたが、これは各方面にしっかりとした根回しの結果です。このやりかたは、2001年の小泉政権以前にみられた、昭和の古き良き時代の流儀です。

昭和の大女優田中絹代 映画『人生のお荷物』(1935年)のスチル写真

このような昭和レトロのような人事は、小泉政権から、菅政権まではみられなかったやり方なので、これにも本当に驚きました。

生前の安倍氏との「閣僚達は通常国会と参院選で故郷にまだ錦を飾ってない。改造は“お盆の後”にして閣僚に故郷でお盆を過ごさせてやってくれ」との約束を反故にした岸田首相でしたが、統一教会利用しての「安倍派潰し」改造人事がここまでしっぺ返しを受けてしまいました。これは、岸田総理の自業自得といわざるをえません。

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2022年11月19日土曜日

防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円増に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき―【私の論評】2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となった日本で最早増税は必要なし(゚д゚)!

 国家の流儀

防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円増に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき

 岸田文雄首相は17日、タイの首都バンコクで、中国の習近平国家主席と会談した。世界が注視する台湾や人権問題について、習氏は「いかなる者のいかなる口実による内政干渉も受け入れない」と突き放した。中国軍が8月、台湾周辺で強行した大規模軍事演習では、日本のEEZ(排他的経済水域)内に弾道ミサイル5発を撃ち込んできた。「台湾有事、日本有事」が懸念されるなか、岸田政権は「防衛力強化」や「防衛費のGDP(国内総生産)比2%以上の増額」に取り組んでいるが、政府の有識者会議では、財源を「増税」に見いだす意見が多い。岸田政権を支える財務省の影響なのか。評論家の江崎道朗氏は「防衛費増額」と「増税」をつなげる主張を論破した。


 防衛費を増額するために、果たして増税は必要か。

 11月9日、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の第3回会合が開催され、これまでの議論をまとめた結果、防衛費の大幅増額のために増税が必要であることで意見が一致したことを明らかにした。

 この第3回会合で財務省も、長期にわたる防衛費増額のためには《恒久的な財源確保》が必要であり、《国を守るのは国全体の課題であるので、防衛費の増額には幅広い税目による国民負担が必要》とする文書を提出した。

 このままだと、年末の来年度予算編成と税制改正までに、防衛費増額のための新規増税が打ち出されることになるだろう。

 確かに今後、最低でも10年以上、防衛費増額を続ける必要があり、そのための財源を確保しなければならない。ただし、その財源確保がなぜ新たな増税になるのか。大事なのは、財源であって増税ではないはずだ。

 バブルの崩壊以降、日本はデフレが続き、税収も低迷した。しかし、第二次安倍晋三政権が「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3つを柱とするアベノミクスを始めるや、日本は再び経済成長を始めた。

 中でも、景気回復において効果があったとされるのが日本銀行による「大胆な金融緩和」で、リフレ政策とも呼ばれる。実際に、このリフレ政策の導入によって日本は再び経済成長を始め、税収も増えていく。

 民主党政権であった2011年度の一般会計税収は42・8兆円(所得税13・5、法人税9・4、消費税10・2)だったが、第二次安倍政権になると税収も急増し、18年度には60・4兆円(所得税19・9、法人税12・3、消費税17・7)になった。そして、22年度の税収総額は68兆3590億円(所得税20・4、法人税13・3、消費税21・6)と、3年連続で過去最大を更新する見通しだ。

 要は、日本銀行による金融緩和を続けて設備投資を促していけば、景気は上向き、税収はおのずと増えていく。現に、この10年で税収は43兆円から68兆円と、実に25兆円も増えている。防衛費をGDP(国内総生産)比2%に倍増するために必要な追加予算は毎年約5兆円。このまま景気回復を続ければ、増税などしなくとも「防衛国債」などで十分に対応できる。

 防衛費増額のために新たな増税が必要だと主張する人たちは、アベノミクス以後のこの10年間の急激な税収増の現実が全く見えていない。繰り返すが重要なのは、税収増であって増税ではないはずだ。

 いま日本がすべきは、金融緩和を含むアベノミクスを引き継いで何としても景気を回復し、税収増によって防衛費増額分を確保しようとすることだ。「防衛費を増やすためには増税もやむなし」などという、愛国心をくすぐる増税論には騙されないようにしたいものだ。

江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書・共著に『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)、『インテリジェンスで読む日中戦争』(ワニブックス)など多数。

(注)元記事のタイトルは「防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき」となっていますが、これは明らかに間違いだと考えられるので、「防衛費のGDP比2%以上に〝増税不要〟 この10年で税収は25兆円に 税収増で増額分を確保、アベノミクス継承すべき」に変えてあります。

【私の論評】2018年に一般会計税収がバブル期を超え、2021年に過去最高となった日本で最早増税必要なし(゚д゚)!

上の記事で、"「防衛費を増やすためには増税もやむなし」などという、愛国心をくすぐる増税論には騙されないようにしたいものだ"という主張は正しいです。税収が増えていることは、以前もこのブログで述べたばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
岸田首相、日本の税収「過去最高68兆円超」でも増税目指す…SNSでは怒りの声「なんで還元しない?」「国民の敵としか思えない」―【私の論評】 岸田総理は、増税して未来永劫「財務省の操り人形」と謗られるか、大宰相となるのか、その瀬戸際に(゚д゚)!

一般会計税収がいかに増えているかは、このブログに掲載した2つのグラフで一目瞭然です。そのグラフを以下に掲載します。


2021年の一般会計税収は、見通しではありますが、過去最大の68兆円です。これだけだと、どれだけすごいのか理解しにくいところがあるので、以下にさらにこの記事より付け加えます。


 2018年の段階で、もうすでに、税収はバブル期を超えていたのです。2018年というと、このブログでも以前掲載したように、統合政府ベース(政府+日銀)の財政再建は2018年には確実にプラスに転じていました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
蓮舫氏が語る経済政策 実行されたなら景気低迷で雇用改善はブチ壊し―【私の論評】財政再建はすでに終わっていることを知らない民進党に先はない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事に掲載してある2016年の計算と、試算では統合政府の債務残高は2017年にはマイナスに転じることを予想しています。


債務残高がマイナスに転じるということは、債務がなくなり、黒字に転じたということです。高橋洋一氏等マクロ経済に関しての発言が信頼できる人たちも統合政府ベースでは、2018年(平成30年)には確実に財政再建は終了したと語っています。

2018年に財政再建が終了していたのですから、2019年(平成31年/令和元年)の消費税の8%から10%への引き上げなど必要なかったのです。

統合政府で財政をみることについては、日本では、これにおかしげな理由をつけて、反対する愚か者が大勢いますが、これは明らかな間違いです。

EUをはじめ、米国なども統合制ベースでみるのが、世界標準です。企業が、子会社と本社との連結財務諸表を出すのと同じ理屈でこちらのほうが政府の正しい姿をみることができます。

ある程度規模以上の企業が連結決算も公表するようになったのは、簡単に言ってしまうと、連結をしなければ、全体では赤字なのに、子会社にその赤字を転嫁して、本社は大黒字のように見せかけることができるからです。

財務省などは、この逆をしているようなものです。政府単体でみて、大赤字と騒いでいるわけですが、統合政府ベースでみれば、2018年には財政再建は終了しています。そうして、上のグラフでもわかるように、2018年には、一般会計税収はバブル期を超えていたのです。

私自身も、統合政府ベースでの債務残高の概算をしたことがあります。それについては、以下の記事を参照してください。

「国の借金」巡るホラー話 財務分析すれば怖くない―【私の論評】鳥越より悪質な都市伝説が現実になる新手の辛坊らの発言には気をつけろ(゚д゚)!

国の借金1000兆円は、真夏のホラー映画のような作り話にすぎない!

この記事は、2016年8月13日のものですが、この時点では、実際に計算してみて、統合政府ベースの債務残高は心配するほどではないことが確信できました。詳細は、この記事をご覧になってください。

「国の借金がー」「赤字がー」「悪い円高がー」などという流言飛語を何の根拠もなしに信じてしまう人は、反省したほうが良いです。

ましてや、防衛費増額のために新たな増税が必要だなどという、愚かな人の言説を信じるべきではありません。

防衛増税をするなど、しかも総合防衛費化により防衛費を嵩上げしたうえで、実質あまり増やさないようにした上で、さらに増税など、これに対して既存の頭が古い保守派は騙せるかもしれませんが、まともな保守派なら怒り心頭に発すると思います。

増税すれば、よほど頭の悪い愚かな、あるいは悪魔のような人間でない限り、日本経済が再び落ち込むのは理解できるはずです。増税で経済力が落ち、国力が衰えれば、安全保障上も良くはないことはわかり切っています。

財務省は増税、緊縮を教義とした財務真理教団であり、税調などは財務真理教の教義を頭から信じて増税にひた走るのですから、宗教団体の信者なら信者とその関係者だけが被害を被るのに対して、全国民を巻き込むわけで、本当にとんでもない連中だと思います。

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2022年11月18日金曜日

国が後押しする次世代半導体 かつて世界シェアの5割も円高と引き締めで10年遅れに 新会社「ラピダス」は迅速な意思決定が追撃の鍵―【私の論評】日銀の金融政策の間違いが中・韓の企業をぬるま湯に浸け、日本企業を痛めつけてきた(゚д゚)!

日本の解き方


記者会見後、写真撮影に応じる「Rapidus(ラピダス)」の小池淳義社長(左)と東哲郎会長=11日午後、東京都港区


 トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど8社が次世代半導体の国内生産に向けた新会社「ラピダス」を設立し、政府は700億円を補助するとしている。経済安全保障の観点からの動きとみられるが、その狙いや成否はどうか。

 今の岸田文雄政権は、経済産業省主導の振興策ではかなりまともだ。第2次補正予算案では半導体支援策が充実している。日米連携の次世代研究拠点整備に約3500億円、先端品の生産拠点支援に約4500億円、製造に不可欠な部素材の確保に約3700億円など、計1・3兆円を充てている。

 日米は次世代半導体分野の研究開発での協力で合意している。上記の研究拠点整備予算に基づく拠点は年内にも設置され、国内外の企業や研究機関とも連携する見通し。萩生田光一前経済産業相が既に道筋をつけ、具体的な企業名も挙がっている。今回の次世代新会社は、その研究成果を量産につなげる役割で、既に700億円の支援は決まっている。

 日本の半導体産業は、1970年代に日立製作所やNECなどの総合電機メーカーが高い競争力を備え、80年代後半には日本勢が世界シェアの5割を握っていた。

 しかし、日米などの「プラザ合意」を契機として、それまでの円安が是正され始めると、時を同じくして、日本の半導体産業に陰りが見え始めた。

 円高による競争力低下と同時に、日米貿易摩擦に伴う輸出制限などもあり、韓国、台湾勢が急速に力をつけてきた。90年代以降、バブル潰しに躍起になり、金融引き締めを行ったので、半導体産業でも先端製品の開発や量産に不可欠な設備投資余力を失った。そしてリーマン・ショック以降、さらなる金融引き締めで円高を誘発し、2010年代における回路線幅の微細化を巡る投資競争にもついて行けなかった。

 筆者の記憶に残っているのは、12年2月のエルピーダメモリの破綻だ。当時の坂本幸雄社長は「為替については、リーマン・ショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」と語っていた。

 日本は自国通貨高だったが、韓国や台湾勢などは不況期も巨額投資を続け、日本は10年近い技術的な差をつけられた。

 半導体では、国の資金が投入されても失敗も少なくなかった。06年の日立と東芝、ルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)によるファウンドリー(生産受託会社)設立構想、前述した日立とNEC、三菱電機の半導体事業が母体となった旧エルピーダメモリなどだ。当時は競争力を大きく損なう円高時期とも重なっていたが、今回は円安であるので、そうした言い訳はできない。

 新会社ラピダスは利害関係者が多いので迅速な意思決定ができるかどうかが鍵となる。必要なエンジニアを十分に確保し、過去よりはるかに良い円安という外部環境を生かしてほしい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日銀の金融政策の間違いが中・韓の企業をぬるま湯に浸け、日本企業を痛めつけてきた(゚д゚)!

日本の半導体産業に関して、あれが駄目、これが駄目などと批判ばかりしている人がいます。こういった人たちに対しては、苦言を呈したいです。

上の高橋洋一氏の記事でも、以下のように語っています。
 90年代以降、バブル潰しに躍起になり、金融引き締めを行ったので、半導体産業でも先端製品の開発や量産に不可欠な設備投資余力を失った。そしてリーマン・ショック以降、さらなる金融引き締めで円高を誘発し、2010年代における回路線幅の微細化を巡る投資競争にもついて行けなかった。

 筆者の記憶に残っているのは、12年2月のエルピーダメモリの破綻だ。当時の坂本幸雄社長は「為替については、リーマン・ショック前と今とを比べると、韓国のウォンとは70%もの差がある。70%の差は、テクノロジーで2世代先に行かないとペイしない。為替変動の大きさは、企業の努力ではカバーしきれないほどだ」と語っていた。
90年代以降のバブル潰しは完璧に間違っていました。当時の経済統計資料をみると、たしかに当時は株価や土地がかなり値上がりしていましたが、一般物価はさほどではありませんでした。当時は物価が上がり、「狂乱物価」であったと記憶している人もいるようですが、それは完璧に間違いです。

にもかかわらず、日銀は金融引締をしてしまったため、バブルは崩壊してしまいました。ただし、バブルというのも間違いです。当時の統計資料を見返すと、さほどではありません。それは、下のグラフをみてもわかります。


なぜ物価が上がらなかったかといえば、日銀が金融引締を繰り返したからです。2014年から、日銀は金融緩和に転じましたが、あまりに長い間金融引締を続けてきたため、未だ物価は十分に上がっていません。この時代は、ひどい円高だったことを覚えていらっしゃる方も大勢いると思います。

円高の理由も簡単です。他国がまともに金融緩和しているときに、日本だけが緩和をしなければ、円高になるのは当然の理屈です。

為替レートに関して、難しいことをいいたてて、煙に巻くような愚かな人が大勢いますが、それは非常に簡単です。

日銀

為替レート(円ドル)≒世界全体に流通している円の総額÷世界全体に流通しているドルの総額(円/ドル)です。これを計算すれば、どう考えても140〜150円くらいに収まると考えられますが、500円になると予測愚か者も存在します。

短期では、他の要素も複座に絡むので、この通りにならないことも多いですが、中長期では、これに近い値になります。

この式をみれば、世界中の国が普通に金融緩和しているのに、日本だけが金融緩和しなければ、円高になるのは当然といえば、当然です。

最近は、日本では、輸入に頼るエネルギー価格やその他の資源が値上がりしているため、大変だ、大変だと語る愚か者も増えていますが、実際に物価をみてみれば、以下の通りです。

10月の物価指数をみると以下の通りです。
(1)  総合指数は2020年を100として103.7  総合CPI
    前年同月比は3.7%の上昇  
(2)  生鮮食品を除く総合指数は103.4 コアCPI
    前年同月比は3.6%の上昇   
(3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は101 コアコアCPI
    前年同月比は2.5%の上昇  
コアコアCPIが、前年同月比で2.5%であることをもって、2%を超えたから大変だ、すぐに金融引締すべきだなどと叫ぶ愚か者もいますが、これも間違いです。

この判断をするには、雇用をみていく必要があります。

9月の雇用指数は以下の通りです。
(1) 就業者数
  就業者数は6766万人。前年同月に比べ40万人の増加。2か月連続の増加
(2) 完全失業者数
  完全失業者数は187万人。前年同月に比べ7万人の減少。15か月連続の減少
(3) 完全失業率
  完全失業率(季節調整値)は2.6%。前月に比べ0.1ポイントの上昇
現在日銀は、金融緩和を継続していますが、9月の時点で2ヶ月連続で就業者が増加しています。完全失業者は、15ヶ月連続で減少しています。完全失業率は前月に比べ0.1ポイントの上昇です。

金融緩和をやめる判断は、緩和を続けても、就業者数が増えない、完全失業率が下がらない状態になってから判断すべきものです。そうなれば、金融引締に転ずることを検討するのです。

9月には、完全失業率が0.1ポイント上昇しているわけですから、これでは積極的に金融引締すべきではありません。金融緩和を続けて物価がある程度上がったにしも、失業率が下がり続けているなら、緩和を続けるべきなのです。

日銀は、このようなことは、無視して、90年年代以降金融引締を2012年まで継続したのです。これは、金融政策の大失敗で、極度の円高をもたらしました。

そのため、日本の産業界で何が起こったかといえば、日本で部品を組み立てて、製品を製造し、それを海外に輸出するよりも、中国や韓国に部品を送り、そこで組み立てて、輸出したほうがコスト的にはるかに安いという状況になりました。

特に、韓国や中国は地理的にも近いですから、運賃を上乗せしても、日本から部品を輸入して、それを組み立てて製品を作るほうが有利でした。

ただ、円高の日本から部品を輸入するのは割高ですから、今度は中国や韓国で部品を製造する動きが加速しました。日本企業もそのほうがさらにコストを低減できるため、様々な企業が中国や韓国に進出して、そこで部品を製造する動きができました。

そうこうしているうちに、中国や韓国は、半導体の製造に多大な投資をして、自前で部品を作れるようになったのです。

超円高でこのようなことが起こっていたのです。日本企業が後塵を拝するようになるのは当たり前です。

これを他の例にたとえると、日本企業は円高という重たい重りを背負わされ、さらに両手、両足を縛られ遠泳をしろといわれているようなものでした。一方中国や韓国の企業は、手首、両足を縛られることもなく、それどころからライフジャケットを付けた状態で、遠泳をするようなものでした。

海自の遠泳訓練

この遠泳で、日本と中国・韓国が競争すれば、日本が負けるのは当然です。そのような状況ですから、日本が経済発展もせず、賃金も上がらなかったのです。中国や韓国が、1990年代に経済成長ができた要因は、日本の円高によるものです。これがなければ、中韓の今日の発展はなかったでしょう。

中国韓国は、日本の円高によって、ぬるま湯に浸かったような状態になり、自らはあまり努力をしなくても、経済発展することができました。一方、日本企業は日本国内で製造した海外に輸出すれは、かなりのコスト高になり、国際競争力は衰えました。一方、国内では強烈なインフレで、良い製品を開発しても売れませんでした。

私は、日本企業が往年の輝きを失った最大の原因は、日銀の金融政策の間違いによるものだと思っています。これさえなければ、日本企業もかなり成長していたことでしょう。

さて、現在は円安です。円安になってから、特に中韓の経済は落ち込んでいます。その理由は、上で述べてきたことから、十分にご理解いただけると思います。

現在は、円安が続いています。中韓にとっては、厳しい状況になっています。しかし、長年ぬるま湯に浸かってきた中韓は、このぬるま湯が麻薬のように悪いほうに効いてしまい、この厳しい状況を打開するのは困難を極めるでしょう。そうして、自分たちの実力のなさを思い知ることになるでしょう。

一方、日本企業は、円高で辛酸を舐め、現在の状況は天国のような状況です。今こそ、日本復活時なのです。日本企業は捲土重を期し、世界のリーダーへと復活していただきたものです。そうして、日本企業は、日銀が金融政策を間違え、円高にさえならなければ、成長を続けられると信じています。

現在の日銀は、金融緩和政策を継続しており、先にも述べたように、この政策は正しいです。現状で、金融引締に転じることになれば、また円高で日本企業が苦しみ、中韓企業はぬるま湯につかることになります。経済安全保障上の観点からも、日銀は正しい金融政策を実施すべきです。

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2022年11月17日木曜日

暗号資産FTX経営破綻 米で12月に公聴会へ 債権者は100万人超か―【私の論評】トランプの大統領選を有利にする、民主党リベラルの大スポンサーFTXの経営破綻(゚д゚)!

暗号資産FTX経営破綻 米で12月に公聴会へ 債権者は100万人超か


暗号資産の交換業大手「FTXトレーディング」が経営破綻した問題で、アメリカ議会下院の金融サービス委員会は来月、公聴会を開くと発表しました。債権者は100万人を超える可能性があり顧客の資産を保全し、返還できるかどうかが焦点です。

暗号資産の交換業大手「FTXトレーディング」は自社と、日本法人を含むおよそ130のグループ会社について連邦破産法第11条の適用をアメリカの裁判所に申請し、11日、経営破綻しました。

これを受けてアメリカ議会下院の金融サービス委員会は16日、FTXの経営破綻と影響について来月、公聴会を開くと発表しました。

経営破綻するまでCEOを務めたバンクマンフリード氏など、関係者から話を聞く予定だとしています。

FTXは国際的に事業を展開し、これまでに裁判所に提出した資料によりますと、債権者は100万人を超える可能性があるということで、顧客の資産を保全し、返還できるかどうかが焦点となっています。

金融サービス委員会のウォーターズ委員長は「FTXの転落は100万人以上の利用者に甚大な被害をもたらした」と指摘し、再発を防ぐために議会がとるべき立法措置などを明らかにするとしていて、暗号資産業界への規制をめぐる議論が活発になりそうです。

米財務長官「暗号資産市場をより監視する必要性」

アメリカのイエレン財務長官は16日、声明を発表し、FTXの経営破綻の影響が暗号資産の保有者や投資家に広がったことについて「暗号資産の市場をより効果的に監視することの必要性を示している」と指摘しました。

また、暗号資産の市場の混乱が金融の安定に及ぼす影響は今のところ限定的となっているものの、金融業界と暗号資産業界のつながりが強まれば、金融の安定により大きな懸念が生じるおそれもあるとの認識を示しました。

そのうえで「消費者を保護し、金融の安定を促進するために行動することが重要だ」と述べ、政府や議会は迅速に動き、ほかの金融商品の投資家と同じように、暗号資産の投資家も保護することが重要だという考えを示しました。

大谷翔平や大坂なおみなど 広告塔務めたと提訴される

「FTXトレーディング」の経営破綻をめぐっては、事業の広告塔を務めていた大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手や、テニスの大坂なおみ選手など日本のトップアスリートも提訴される異例の事態となっています。

訴状では著名なスポーツ選手が事業の広告塔を務めていたことで、投資家の信頼を集めた責任があるとしていますが、請求額は明らかにしていません。

提訴されたのは元CEOのバンクマンフリード氏をはじめ、NFL=アメリカプロフットボールリーグのトム・ブレイディ選手やNBA=アメリカプロバスケットボールのステフィン・カリー選手などで、日本選手ではエンジェルスの大谷選手やテニスの大坂選手も含まれています。

FTXの経営破綻は、スポーツ界を代表するスター選手たちが数多く訴えられる異例の事態に発展し、アメリカのメディアも大きく報じています。

【私の論評】トランプの大統領選を有利にする、民主党リベラルの大スポンサーFTXの経営破綻(゚д゚)!

暗号資産については、私自身は利用したことはありません。ですから、今回のことで、損失を被ることはありませんでした。

FTXは世界中で期待されていました。たとえば「世界経済フォーラム」もサイトでFTXを推していました(下の「世界経済フォーラム」のサイトのキャプチャー画面)が、FTXが経営危機に陥ると、すぐにしれっと削除しています。


ニューヨーク・タイムズも擁護記事をだし共犯と言われ出しています。大谷翔平や大坂なおみなどより、「世界経済フォーラム」やNYTのほうがはるかに影響力が強いと思います。そのうち、さまざまなメディアや組織がその責任を追求されることになると思います。

一般的に、暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーンという技術によって記録・管理されています。ブロックチェーンは、データの破壊・改ざんが極めて困難な仕組みであることから、暗号資産(仮想通貨)がシステム障害やハッキング等によって消失する可能性はほとんどありません。

しかし、暗号資産(仮想通貨)の保有者は暗号資産(仮想通貨)の所有を示す鍵を安全に管理する必要があり、鍵を無くしたり、ハッキングされた際には、暗号資産(仮想通貨)を失うことになります。(詳細は、「ブロックチェーンって何?」も併せてお読みください。)

ただ、運営元が経営破綻してしまえば、現状ではどうしようもないです。

FTXのサム・バンクマンフリード前最高経営責任者(CEO)は、FTXのレバレッジ水準について間違えていたとツイートしました。実際は130億ドル(約1兆8100億円)だったが、約50億ドルだと考えていたといいます。

サム・バンクマンフリード前最高経営責任者(CEO)

「今週は流動性を高めるためにできる限りのことをします」と、バンクマンフリードは説明している。「ユーザーにとって正しい対応をするために、いまある資産の最後の1セントまですべてをユーザーにまっすぐに返します」とも語っています。

資金を取引所から引き出せない人にとって慰めにはならないでしょうが、バンクマンフリード自身も多額の損失を被っています。ブルームバーグの報道によると、バンクマンフリードの個人資産は先週まで160億ドル(約2兆2,000億円)の価値があったのですが、FTXの破綻で1ドル残らず完全に消し飛んだそうです。ブルームバーグはこれを「史上最大級の富の消失のひとつ」と表現しています。

さて、日本でも損をした人もいますが、一番損をした、あるいはそうなりそうなのは誰でしょうか。

それは、米国民主党等のリベラル派かもしれません。破綻したFTXのバンクフリードマン氏は、 民主党No2の巨額献金をしている選挙スポンサーであり、気候変動対策の取り組みやリベラルメディアの巨額スポンサーの一人です。 民主党とリベラル派は、自由に金が引き出せた巨大なスポンサーも失いました。

バンクマンフリード氏は進歩派の主張に賛同し、文字通りリベラルに(気前良く、またリベラル派的に)資金を出すことで、暗号資産業界のセレブでスポークスマンとなったのです。FTXは昨年、取引プラットフォームを「カーボンニュートラル(二酸化炭素排出量実質ゼロ)」にする方針を示し、何百万ドルもの資金を気候変動対策の取り組みに提供することを約束していました。

これは、民主党にとって痛手でしょう。ダメージは金が引き出せなくなったことだけではありません。広告塔の人間が批判され、提訴されたというのですから、多額の寄付を受けていた、民主党やリベラル派も、FTXに政治利用されたということで、大きな批判にさらされることになるでしょう。

米財務長官「暗号資産市場をより監視する必要性」と語っていますが、民主党自体がFTXの広告塔になっていたともいえるわけですから、今更何を言っているのでしょうか。

ただ、米国のリベラルメディアはこれを問題をあまり大きくならないように、印象操作し沈静化しようとするでしょうが、共和党支持者やトランプ支持者は黙っていないでしょう。また、トランプ自身も黙ってはいないでしょう。

これは、共和党にとって有利に働くのは間違いありません。そうして、2024年の大統領選手場を宣言したトランプ氏にも有利に働くでしょう。


トランプ氏の次期大統領選出馬表明について日米のメディアは強く批判ばかりしています。その最大の根拠は「中間選挙で共和党が惨敗」したという見方です。

しかし上院で今回選挙戦が争われたのは35選挙区です。民主党の改選議席数は14(非改選36)、共和党の改選議席数は21(非改選29)下院は共和217、民主207。これでは、共和党が惨敗とはいえません。むしろ、選挙戦そのものでは共和党のほうが勝っているともいえます。

そうして、トランプが支持した候補は予備選等も含めて235人当選し、敗北は22人です。これもトランプが敗北したとはいえません。

そうでなけば、2024年の大統領選に出馬することを表明したりはできなかったでしょう。

日本のメディアは、米国のリベラルメディアの報道を垂れ流すのみで、以上のようなことを報道しません。


米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる―【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

2022年11月16日水曜日

中国航空器材集団、エアバスから140機一括購入―【私の論評】米国は、昨日の技術を今日使えるようにした中国初の大型旅客機「C919」を中国の主力旅客機にすることすら許さないかも(゚д゚)!

中国航空器材集団、エアバスから140機一括購入
独首相の訪中に合わせ、集中購買で有利に交渉

中国企業がエアバスと大型購入契約を結んだのは、7月に続いて今年2回目だ

 航空関連器材の集中購買を手がける中国航空器材集団(CASC)は11月4日、ヨーロッパの航空機製造大手エアバスと航空機140機の大型購入契約を結んだと発表した。ドイツのオラフ・ショルツ首相の中国訪問期間に合わせた動きで、契約の内訳は短距離路線用の「A320シリーズ」が132機、長距離路線用の「A350」が8機。カタログ価格ベースの総額は約170億ドル(約2兆5148億円)に上る。

 「中国の航空運輸市場の緩やかな回復とともに、今後は比較的速いペースの市場拡大が見込まれる。それに伴う航空会社の輸送力増強の需要に対応するため、エアバス機の大量導入を決めた」。今回の契約の背景について、CASCはそうコメントした。

 同社は中国政府の国有資産監督管理委員会直属の国策企業で、中国国内の航空会社に代わって航空機の買い付け交渉にあたる。集中購買方式を通じて航空機メーカーから(各航空会社が個別に交渉するよりも)大きな優遇を引き出しており、航空業界関係者によれば、今回の商談でも実際の契約総額は170億ドルをはるかに下回るという。

ボーイングは大型受注5年なし

 2020年に新型コロナウイルスの流行が始まって以降、中国企業がエアバス機を大量購入するのはこれが2回目だ。前回は2022年7月、国有航空大手の中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空の3社がそれぞれエアバスと商談し、合計292機を契約。カタログ価格ベースの総額は約372億5700万ドル(約5兆5115億円)に上った。

 一方、エアバスのライバル企業であるアメリカのボーイングは、中国との大型契約が途絶えて久しい。前回は5年前の2017年11月、当時のドナルド・トランプ大統領の中国訪問に合わせてCASCが300機を購入。カタログ価格ベースの総額は370億ドル(約5兆4734億円)を超えた。

 だが、その後は米中両国政府の関係悪化が続いたうえ、ボーイングは主力機種「B737MAXシリーズ」の2度にわたる墜落事故の影響により航空機市場での評判を落としてしまった。中国では、航空安全当局によるB737MAXの運航再開許可が今も下りておらず、新規受注が得られない状況が続いている。

【私の論評】米国は、昨日の技術を今日使えるようにした中国初の大型旅客機「C919」を中国の主力旅客機にすることすら許さないかも(゚д゚)!

中国で旅客機というと、中国初の国産大型旅客機「C919」の開発プロジェクトはどうなったのでしょうか。

中国初の旅客機「C919」

中国は2006年の5カ年計画で、国産の大型旅客機の開発プロジェクトを立ち上げて以来、16年の歳月と数百億ドルの資金を費やして、「C919」と呼ばれる商用機を製造し、規制当局の認可を受ける態勢を整えています。6機の試験機のうち1機は、年内に中国東方航空が運航を開始する予定です。

ただし、中国に技術を盗まれることを警戒した海外のサプライヤーが、最新技術を搭載した部品の納入を躊躇した結果、この機体の性能は、最先端とは言い難いものになっています。C919は昨日の技術を今日使えるようにしたものといえます。

中国政府は、C919の開発を行う国有メーカーの中国商用飛機(COMAC)に、目を見張るような大金を注ぎ込みました。ワシントンの戦略国際問題研究所で中国経済を専門とするスコット・ケネディは、2008年の設立から2020年までにCOMACが受け取った資金は490億ドルから720億ドル(約10兆円)にのぼると推定しています。

COMACは、この機体の製造で海外のサプライヤーに大きく依存せざるを得ませんでした。Airframer.comに掲載されているC919の約80の主要サプライヤーのうち、中国企業はわずか7社で、別の7社は外国企業と中国企業のジョイントベンチャーだとケネディは指摘しました。

欧米企業がどのグレードの技術を提供しているかは不明ですが、競合の成長を手助けしたくないという気持ちと、知的財産の盗難への恐怖が、それを抑制したと考えられています。

おそらく最も重要な部品であるエンジンは、ゼネラル・エレクトリックとフランスのサフラン社の合弁会社であるCFM社のもので、同社はC919のエンジンが同社の最高グレードのエンジンであるLEAPエンジンの改良型だと述べています。しかし、コンサルティング企業AeroDynamic AdvisoryのRichard Aboulafiaは、このエンジンが実際には旧型のCFM56のアップグレード版ではないかと疑っています。

二流のテクノロジーを搭載したC919は、性能の重要な指標である航続距離で大きく劣ることになりました。COMACによると、この旅客機の航続距離は約2500海里で、エアバスA320neoやボーイング737 MAXに大きく遅れをとっています。このため、すでにA320や737 MAXが就航している世界中の数百の路線でC919を使うことはできず、ボイドは、この機体の海外での販売は困困難です。

C919の定価は6億5300万元(約130億円)と高くはないかもしれないですが、航空会社がパイロットや整備士を訓練して新しい機種に乗り換えるには、費用も時間もかかります。A320や737と比較して、運用コストの削減や性能の優位性がなければ、C919を導入する意味はないでしょう。

一方で、中国経済は減速し、新型コロナウイルス関連の規制が旅行需要を抑制する中でも、長期的には中国の航空会社はより多くの欧米の飛行機を必要とすると、業界ウォッチャーは予想しています。ボーイングは、今後20年間に中国が8485機の旅客機を導入し、世界市場の約20%を占めると予測しています。

しかし、その中でボーイングが獲得するかもしれないシェアは、トランプ政権時代に始まった米国の対中貿易戦争などの影響で脅かされています。さらに、その貿易戦争が、C919の今後に疑問を投げかけています。米国政府は2020年後半から、米国の企業が中国軍と関係のある企業に部品を輸出する場合、特別なライセンスの申請を義務付けています。

米国が不満を募らせた結果、中国への部品の輸出を完全に停止する可能性もあります。その場合、C919をすべて中国製の部品で作り直すためには、10年から15年が必要になるでしょう。

ただ、それもできないかもしれません。なぜなら、米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したからです。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限しました。

半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示されます。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていました。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられます。

一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。影響は幅広い商品に及びそうです。その中には、無論航空機も含まれます。

新規制の対象は、最先端技術だけでなく、現行技術も含まれており、生活に密着した製品の製造・流通が途絶し得るのだ。半導体枯渇で、電子製品が前世代に「先祖返り」すれば、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの利用や、クラウド構築も不可能となる。

さらに、米当局は、自国技術や製品を最終的に手にする組織・個人の目的、用途がはっきり確認できないケースを「未検証エンドユーザーリスト(EL)」として集約しており、ここにもメスを入れる構えです。

リスト対象に製品を送る場合、対象を調査して米国政府の許可を得る必要があます。新規制では、対象が「米国の国家安全保障または外交政策に反する重大なリスクがある者」に拡大されました。調査に協力しないと、ELに追加されることになります。米国の経済制裁のスキームを示す、チャートを以下に掲載します。

クリックすると拡大します

この状況ですから、エアバスにも米国制の半導体が使われている可能性は高いですから、エアバスを輸出するにしても、米国の許可が必要かもしれません。

輸出ができたにしても、その後半導体を供給できないかもしれません。

C919は昨日の技術を今日使えるようにしたものであり航続距離も短いですが、今後中国ではこれを用いるしかなくなるかもしれません。いずれ、この航空機が、中国の主力旅客機という時代が来るかもしれません。

以下にC919がどのような部品を用いているのか示すチャートを掲載します。部品名の横に国旗がありますが、これはその部品がいずれの国のものかを示すものです。


なんとは、中国製はほとんどなくて、多くの部品は米国のものです。これで、本当に中国国産といえるのでしょうか。

米国がこれらの、部品を中国に輸出できなくすれば、中国で航空機の製造はできなくなります。実際に、そのように主張する人もいます。

上の記事では、こうしたことが触れられていませんが、米国の中国制裁は凄まじい段階に達していることは、認識すべきと思います。これでも、日本の親中派の方々は、未だ中国の輝かしい未来を信じているのでしょうか。

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2022年11月15日火曜日

ロシアエリートの「プーチン離れ」 後継者は誰になるか―【私の論評】今のままだと、岸田首相は年金支払期限の延長で窮地に至ったプーチンと同じ目にあう(゚д゚)!

ロシアエリートの「プーチン離れ」 後継者は誰になるか

岡崎研究所 


Economist誌10月30日号が「ロシアのエリートがプーチンなき将来を考え始めている。プーチンの排除が少なくとも考えられている」との記事を掲載している。主要点は次の通り。



・ロシアのエリート、官僚、実業家たちは、「次は何か。プーチン後の生活はあるのか。彼はどう立ち去るのか。そして誰が彼にとって変わるのか」といった疑問を抱いている。

・ウクライナ侵攻は、プーチンは全面戦争のリスクを冒さないと考えていたロシアの支配層にとってはショックであったが、当初の軍事的前進、ロシアの経済が崩壊しなかったこと、和平交渉への初期努力を見て、自らを落ち着かせようとしていた。

・エリートたちの考えはプーチンの「部分」動員で粉砕された。大勢の人の国外出国、広範な徴兵逃れは、この冒険を新しい「大祖国戦争」にするプーチンの試みが失敗したことを示す。

・プーチンはこの戦争に勝てない。なぜなら戦争当初から明確な目標がないからである。多くを失い、彼は深い屈辱をうけることなく、戦争を終わることはできない。

・9月までロシアのエリートはプーチンを支持するとの実利的選択をしてきたが、今や彼らは種々の敗北のシナリオの中で選択しなければならないところまで事態は進展した。

・軍事的敗北はそれを支持した者へのリスクを伴いながら、政権の崩壊につながるだろう。プーチンは安定の源泉と思われてきたが、不安定と危険の源と考えられるに至っている。

・政治アナリストのガリアモフによれば、次の数週間、数カ月で、エリートたちはシステム内でのプーチンの後継者探しを行うだろう。

・ガリアモフが挙げる後継者の候補は、ドミトリー・パトリシェフ(ニコライ・パトリシェフ安全保障会議書記の息子)、セルゲイ・キリエンコ(大統領府次官)、ソビヤニン(モスクワ市長)、ミシュスチン首相など。

・逆に、「もっと攻撃的なグループ」も既に姿を現し始めている。エヴゲニー・プリゴジンや(元刑法犯でプーチンのコックとして知られ、傭兵のワグナーグループを率いる)、ラムザン・カディロフ(チェチェンの強権指導者で私的な軍を持つ)である。二人はプーチンに個人的に忠誠である。プーチンはウクライナを破綻国家にしようと望んだが、代わりに彼はロシアを破綻国家にしかねない。

*   *   *   *   *   *

 エコノミスト誌は相当な調査能力を持つ会社で、ロシアのエリートがプーチンとウクライナ戦争をどう見ているかという難しい問題にこの記事で取り組み、プーチン後継問題にも言及している。

 ここで描写されているロシア国内の状況はおそらく現実であると思われる。プーチン離れやプーチン批判がエリートの中で広がっていることは、ウクライナ戦争がうまく行っていない中、当然予想されることである。

 最近、ショイグ国防相がプーチンに「30万人の動員は実現した。追加動員の計画はない」と報告した画像をロシア国営テレビは流したが、動員がロシア国内に与えたショックが如何に大きかったか、それへの反発をなくしたいとの政権側の意図は明確である。この戦争は、今やロシア国民の支持を得ておらず、ロシア軍の士気もよくなる見込みはない。

多くのオリガルヒは戦争に反対

 この戦争はプーチンが起こしたもので、彼の責任は重い。プーチンの統治への不満はこれからも高まっていくだろう。権威主義政権が権威をなくしてきていると考えても大きな間違いではない。国内のみならず、中央アジア諸国もロシア離れを起こしている。

 クセニア・ソプチャクがリトアニアに逮捕を避けるために逃げたことは特に大きな衝撃を与えた。プーチンが今の地位にいるのはクセニアの父、ソプチャク・レニングラード市長が彼を副市長にしたことが契機になっている。支配層の中で分裂が見られる。

 エリツィンの次女の夫で大富豪のデリパスカが、プーチンの戦争に起因する経済的損失が大きすぎると批判しているのが良い例だが、オリガルヒは大体戦争に反対である。

 引退後の後継者としてはニコライ・パトリシェフが最有力のようにも思われるが、上記の記事が言うように彼の息子、ドミトリー・パトリシェフが選好される可能性はある。考えてみれば、ニコライ・パトリシェフはプーチンより2歳年上であるから、後継者にはなりにくい面がある。

 ドミトリーは44歳で、農業大臣をしたほか、農業銀行の頭取をしたことがあり、経済がわかるとの利点がある。さらに自身も治安機関で働いたことがあり、父のコネもあるので、いわゆるシロビキ(治安関係者)に近い。有能とされている。

 「もっと攻撃的グループ」といわれるプリゴジンやカディロフがポスト・プーチンで力を得た場合には、とんでもないことになりかねない。われわれ自身が「プーチンはまだましだった」と懐かしむことにさえなりかねない。

【私の論評】今のままだと、岸田首相は年金支払期限の延長で窮地に至ったプーチンと同じ目にあう(゚д゚)!

プーチンはウクライナ侵略をしたから、支持率が低下したという側面は否定できませんが、実は元々支持率は低下しつつありました。それは、年金問題です。ロシアの平均寿命は、他国と比較すると短いですが、それでも最近では平均寿命が延び、少子高齢化が進む中、ロシアにおいても2028年から年金の受給開始年齢が引き上げられることになりました。

しかし、この改革を巡る一連の騒動が、プーチン強権の地盤を揺るがしたといわれています。水面下では、終身大統領の野望に燃える大統領と国民の温度差が、ますます広がりました。

2018年モスクワで年金支給年齢の引き上げに抗議する人々

ロシア政府が2018年に発表した年金改革計画は、年金受給開始年齢を男性は現行の60歳から65歳へ、女性は55歳から63歳へと引き上げるというものでした。どの国においても該当することだが、国民の負担が増える改革は多くの痛みと反発をともないます。

ところがロシア国民の反応は、政府の予想をはるかに上回っていました。ロシア全土で反対デモや署名運動が行われました。慌てた政府が行ったのは、女性の開始年齢の引き上げを60歳にとどめるなどの複数の譲歩案の提出でした。

しかし、政府の骨折りも虚しく、国民の憤りはすぐさまプーチン大統領の支持率に跳ね返りました。2014年3月~18年4月にわたり80%前後を維持していた支持率が、わずか数ヵ月で70%台を下回ったのです。ロシアの独立系世論調査機関レヴァダセンターが同年9月に実施した調査では、国民のほぼ90%が受給年齢の引き上げに反対の立場を示しました。

一部の人々は、この出来事が「プーチン神話のほころび」になったと見ています。「国民の意見を尊重して譲歩した」という見方をすれば美談ですが、突き詰めると「強硬君主として知られるプーチン大統領が、支持率の低下を恐れてUターンした」ことに他ならないです。

もちろん、支持率の低下は年金改革だけが原因ではありません。ウクライナを巡る欧米諸国の経済制裁や独裁政権の拡大など、ロシアが抱えているさまざまな問題に対して、一部の国民は長年にわたり不満を抱いていました。年金改革はターニングポイントに過ぎないようです。

これを機に支持率は低下の一途をたどり、そこへパンデミックが蓄積した国民の不満に拍車をかけました。2020年5月の支持率は59%と、2000年代で過去最低水準に落ち込みました。


年金受給開始年齢を含め、年金改革は多数の国で実施されています。少子高齢化に加えて、生活様式や雇用環境の変化、貧困格差の拡大など、社会は大きく様変わりしました。変化に対応可能な制度へと再編することは、社会保障制度を維持する上で必要不可欠です。

ちなみに、ロシアで年金制度の基盤が確立されたのは、旧ソ連時代の1930年です。当時のロシア人の平均寿命は43歳でした。

このような背景を認識しているにも関わらず、ロシア国民はなぜそこまで強硬に反発したのでしょうか。ロシア国民が猛反対している理由は、以下の3つに集約されます。

1.前言撤回

かつてプーチン大統領は、「自分の就任期間中は年金受給開始年齢を引き上げない」と公言しました。しかし、2014年の時点で歳出総額13兆9,600億ルーブル(約20兆9,039億円)のうち、社会保障と軍事が占める割合がそれぞれ30%を超えました。いずれかの削減を迫られたプーチン大統領は、年金の給付総額を減らす選択をし、膨らみ続ける財政赤字を補填せざるを得なくなったのです。

2.平均寿命の短さ

WHO のデータによると、2019年のロシアの男女の平均寿命は世界183の国や地域のうち96位の73.2歳でした。2002年以降は年々上昇しているものの、1位の日本(84.3歳)と比べると10年以上低いです。平均寿命をベースに算出すると、日本では65歳からほぼ20年間にわたり年金を受給できますが、ロシアでは男性は8年強、女性は13年強しか受け取れないです。

3.年金格差

国家年金を受給する国家職員と一般人では、加入できる年金制度の種類や優遇措置、支給額が大幅に異なります。

このように、ただでさえ年金制度に対する不信感が強いところへ、開始年齢の引上げが通告されたような状況です。プーチン大統領を英雄視していた国民が、強い絶望感と怒りに包まれたのは想像に難くないです。

日本でも、年金の納付期間の延長が話題になっています。年金保険料の納付期間は現在、20歳から59歳までの40年間。この納付期間を5年延長し、20歳から64歳までの45年間にする案が政府内で検討されています。

そうして、その理由として少子高齢化が報道で挙げられています。

働く世代が少なくなり、保険料を納付する人数が減ると、年金を支払うための財源は少なくなります。その一方で年金をもらう高齢者は増えるため、財源の確保が難しい状況になっていくという説明です。

ただし、この説明は全くの間違いとまでは言わないですが、年金の本質から外れています。

年金の本質とは何かといえば、それは、長生きした時の「保険」です。死亡保険は死んだ時の保険ですが、長生きした時の保険はイメージしにくいです。ざっくりいえば、みんなから保険料をとって、平均寿命より早死にした人には年金を払わず、平均寿命より長生きした人に年金を払うという仕組みです。

平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がないです。延長しなというなら、納付金額を上げるしかありません。

これについては、高橋洋一氏が簡単な算式を用いて、わかりやすいく以下の記事で解説しています。
知っておくべき「年金の本質」 保険料納付の期間延長しか「解がない」理由
年金数理から見れば、平均寿命が伸びれば、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がない。ちょっとした「算数」なので、マスコミはこうした解説もしないとまずいのではないでしょうか。無用の誤解を生む可能性もあります。

年金は保険という観点からすれば、高橋洋一氏の主張は正しいです。納付期間の延長に関して、ネガティブな意見を語る人は、これを理解していないのではないでしょうか。高橋洋一氏は、消費税増税をはじめとする、緊縮財政には反対しています。それも、きちんとしたマクロ経済的な背景を説明しつつ反対しています。税金の問題と年金問題とは分けて議論すべきなのです。

ただ、ロシアにおいては、ロシアの特殊事情があります。ロシアは、現在GDPでは韓国を若干下回る程度であり、しかも人口は1億4千万人とと韓国の数千万人よりは、はるかに多く、一人あたりのGDPでは1万ドルを若干上回る程度です。

それに比較すると、軍事費は世界では3%を占める程度、日本と比較してさえ、かなり多いとはいえないですが、ロシアのGDPからみれば、かなり費やしているのは間違いありません。何しろロシアのGDPは日本の1/3です。


プーチン大統領が年金改革を発表してから、3年以上が経過した。2021年4月の改正大統領選挙法成立を経て、「終身大統領」の野望に一歩近づいた現在も、足元の不安要素は拡大し続けています。プーチン大統領の大きな誤算は、年金改革が英雄の地位や強権を揺るがすほど、国民にとって重要な問題であることを見誤った点のようです。

先に述べたように、平均寿命が伸びれば、保険である年金は、年金額を維持しようとすれば納付期間の延長しか、解がないです。延長しなというなら、納付金額を上げるしかありません。

そのため、年金数理的にはプーチンの選択は間違いではないのですが、それにしても、元々ロシア国民の収入は多くはないところにもってきた、2014年のクリミア併合以降、ロシアに対する制裁で多くの国民の生活は苦しくなっていますし、インフレ傾向が続いていることから、多くの国民の生活は苦しく、思いの外強い反発を招いてしまったのです。

第1次政権からのプーチン大統領支持率を見ると、22年間ずっと、60%以上を上回っていて、最新の今年2月には71%となっています。戦争を仕掛けるたびに支持率をアップさせていて、2008年8月、現在のジョージアと“衝突”した時や、2014年3月、ウクライナ南部のクリミアを併合した時に支持率が上昇しています。 

もしウクライナ侵略もその背景に、支持率を上げるためであったとすれば、全く本末転倒の結果になってしまった言わざるを得ません。

昨年の税収が過去最高だったことや、円安で為替特会の含み益が増大し、その一部は為替介入で実現益になっていること、多くの国民が国債は将来世代へのつけではないことを理解しつつあり、日本においても、年金の支払い期間の延長で国民の反発が高まることも十分考えられます。

ロシアのプーチン大統領は5月25日、一般国民に対する年金を6月1日から、最低賃金を7月1日から、それぞれ10%引き上げると表明しました。モスクワのクレムリンで開かれた閣僚や地方知事らとの会議で述べました。

プーチン氏は同時に、ウクライナでの軍事作戦に参加した軍関係者らへの金銭的補償を充実させるよう指示しました。戦闘長期化や欧米の制裁による物価上昇などの経済悪化を受け、国民の不満を抑える意図があるとみられます。

ただ、ロシアは制裁を受けていることから、インフレ率が亢進しており、9月のロシアのインフレ率は前年比で13.68%となり8月の14.30%から低下したとはいえ、まだかなりの高水準です。

これでは、年金や賃金を上げてもほとんど意味がないです。というより、上げなければとんでもないことになります。上げて当たり前です。ただ、これはインフレにさらに拍車をかけることになるでしょう。現在のロシアはまさに、八方塞がりです。

このようなロシアの状況からみれば、日本は随分良い状態です。岸田首相は、ここしばらくは、増税などの緊縮財政はしないと表明した上で為替特会を経済対策に当てる旨を公表すれば良いです。そうして、これを実行すれば良いのです。そうすれば、多くの国民は納得するはずです。

さらに、防衛費の嵩上げで実質的に防衛費をあまりあげないようにするにすぎない「総合的な防衛体制の強化に資する経費」化をやめる旨を公表し、実際にそうすれば、保守派の国民を納得させることができます。

これらを実行すれば、岸田内閣はまた支持率を上げることができるかもしれません。八方塞がりのロシアのプーチンからみれば、日本の岸田首相が羨ましいことでしょう。

岸田総理が、これらのことを実行せずに、年金の支払期限だけを伸ばせば、プーチンのように窮地に至ることは必定です。

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2022年11月14日月曜日

岸田首相が〝中国名指し批判〟の豹変 閣僚の相次ぐ辞任、内閣支持率続落で覚醒して奮起したか 八幡和郎氏「言葉だけで腰砕けにならないよう注目すべき」―【私の論評】日中首脳会談で何をいうかで、岸田総理の評価が定まる(゚д゚)!

岸田首相が〝中国名指し批判〟の豹変 閣僚の相次ぐ辞任、内閣支持率続落で覚醒して奮起したか 八幡和郎氏「言葉だけで腰砕けにならないよう注目すべき」

東アジアサミットに参加した岸田首相

 岸田文雄首相は13日、カンボジアの首都プノンペンで開催していた東アジアサミットで、軍事的覇権拡大を進める中国を名指しで批判した。米国や中国、ロシアなど、各国代表も出席していた。葉梨康弘前法相など閣僚の相次ぐ辞任や、親中派閣僚の存在、防衛費のGDP(国内総生産)比2%以上の増額に合わせた増税検討、物価高騰への対応などから内閣支持率が続落するなか、やっと覚醒して奮起したのか。

 「東シナ海では中国による日本の主権を侵害する活動が継続・強化されている」「(台湾海峡の平和と安定が)地域の安全保障に直結する重要な問題だ」

 岸田首相はこう訴えた。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と、日米中韓露など計18カ国が参加した同サミットには、ジョー・バイデン米大統領や、中国の李克強首相、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相らも参加していた。

 岸田首相は、中国軍が8月、台湾周辺での大規模軍事演習時に、日本のEEZ(排他的経済水域)内に弾道ミサイル5発を撃ち込んだことにも言及した。さらに、中国による新疆ウイグル自治区での人権弾圧や香港情勢への「深刻な懸念」も表明した。

 昨年10月の内閣発足以来、岸田内閣には親中傾向が見られ、「政界屈指の親中派」である林芳正外相の言動には疑問が指摘されていた。

 インドネシア・バリ島で15、16日に開かれるG20(20カ国・地域)首脳会議などに合わせて、岸田首相と中国の習近平国家主席との首脳会談が調整されている。岸田首相の変化をどう見るか。

 評論家の八幡和郎氏は「中国に気を使う従来の姿勢からみると突出した発言で、岸田首相の真意は分からない。ただ、欧米はじめ各国が中国に厳しい姿勢をとるなか、違う判断が働いた可能性もある。いずれにしても、言葉だけで腰砕けにならないよう、注目すべきだ」と語った。

【私の論評】日中首脳会談で何をいうかで、岸田総理の評価が定まる(゚д゚)!

東アジアサミットにおける岸田首相による「東シナ海では、中国による日本の主権を侵害する活動が継続・強化されている」という発言は、

SNSでは、話題になっており、
他の事に関しては言いたい事は沢山あるけど、名指しした事は評価する。国防に関しては岸田総理に期待出来ると思ってる。
等と、評価する声が多数あります。

歌手の世良公則氏も、自身のTwitterに「これは高く評価したい 隣国の脅威は深刻」と投稿しました。

有森香氏は、以下のようにツイートしていました。

確かに、このような発言は、良いことだとは思うのですが・・・・・・。

これについて今のところ中国から猛烈な反発はありません。事前に根回しも何もしておらず、この発言をすれば、中国は激烈な反発をしたと思います。

ということは、事前に根回ししていたと見るのが妥当のようです。本当に中国の覇権主義に懸念を示すならまず林外相を更迭し、松下新平議員を党として徹底調査した上で然るべき対処をすべきです。それ以外にもやるべきことは、多くあります。それらを行わずに口頭で抗議しても自己矛盾を露呈するだけです。

それに、中国の弾道ミサイルは今年8月与那国や波照間の沖合のEEZにも着弾しました。これで、中国批判は当然です。 逆に批判しない方がおかしいです。批判は当たり前です。今後日中首脳会談が予定されているからといって批判しなかったとしたら、本末転倒ともいえます。


岸田文雄首相は中国の習近平国家主席と17日に会談します。タイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて実施。対面での日中首脳会談は約3年ぶりで、岸田氏にとっては初となります。

松野博一官房長官が14日の記者会見で発表しました。岸田氏は、14日の習氏とバイデン米大統領による初の対面会談の内容も見極めた上で、日中の建設的かつ安定的な関係構築へとつなげたい考えです。


岸田氏は13日、訪問先のカンボジアで日中関係に関して「主張すべきは主張し、責任ある行動を求める」と記者団に強調。対話を重ねて安定的な関係を構築していく考えを示しました。

この動き、支持率低下で、岸田総理が吹っ切れて、奮起したというのなら、良い兆しですが、次の日中首脳会談での発言に注目すべきと思います。

本日公表されたFNN世論調査では 内閣支持率38.6%。また下落 初の30%台に

岸田総理自身は気づいているかどうかはわかりませんが、この会談で習近平に対して主張すべきことを主張しないようでは、ますます民意が離れていくことになると思います。

これは、ある意味岸田総理のラストチャンスかもしれません。ここで、習近平に対して物別れになっても良いから、主張すべきことを主張し、それだけではなく、間髪をいれず、日本国内の孔子学院を閉鎖させるとか、自民党参議院議員の「松下新平氏」が高級顧問である「中国秘密警察日本支部」を徹底的に調査したり、防衛費の嵩上げを狙うとみられる防衛費の「総合防衛費」化をやめさせるなどの行動を起こせば、支持率が上がることも期待できるかもしれません。

私自身は、あまり期待していません。岸田首相は、統一教会問題や葉梨法相の事実上の更迭などで、ワイドショー政治にまっしぐらですし、経済対策では、財務真理教団の信者であることを露呈しました。

もう、ほとんどの人は期待していないでしょう。ただ、次の総裁としては、河野太郎氏がなる可能性も高いです。そんなことになれば、岸田総理よりさらに駄目になる可能性が大きいです。改めて、安倍元総理の偉大さを感じてしまいます。

かといって野党には、ほとんど期待できませんし、本当に困ったものです。いっときの繋でも良いから、政権をある程度まともに担当できる野党ができてほしいものです。

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