2023年3月19日日曜日

プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力―【私の論評】今回の「子供連れ去り」の件での逮捕状は国内法でいえば別件逮捕のようなもの、本命は"武力行使そのもの"の判断(゚д゚)!

プーチン氏の威信失墜 カギ握る国際社会の協力


 国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)は17日、ロシアのプーチン大統領に対し、ウクライナからの子供連れ去りに責任があるとして、戦争犯罪容疑で逮捕状を出した。国連安全保障理事会の常任理事国の元首にICCが逮捕状を出すのは初めて。身柄拘束は困難とされるが、ウクライナ侵略を巡る戦犯容疑者として扱われることで、国際社会でプーチン氏の威信は失墜し、孤立が強まる可能性がある。

 ICCの発表によると、プーチン氏は指導者としてウクライナ占領地からの住民連れ去りに加担し、部下の犯罪を止めなかった責任などを問われた。戦時の文民保護を定めたジュネーブ諸条約は、住民の違法な移送や追放を禁じている。

 ICCのカーン主任検察官は、少なくとも子供数百人が孤児院や施設から連れ去られ、多くはロシア国籍を押し付けられて養子に出された疑いがあるとした。ICCは養子縁組を進めたリボワベロワ露大統領全権代表の逮捕状も出した。同代表は子供の権利問題を担当している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は逮捕状発行について、「歴史的な決定だ」と歓迎。バイデン米大統領は17日、記者団に「正しいことだと思う」と支持を表明した。米国はICC非加盟だが、カーン氏らの捜査に協力する姿勢を示してきた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は「ロシアの責任を追及する過程の始まり」とした。

 一方、ロシアは猛反発した。ペスコフ大統領報道官は「言語道断で容認できない」と逮捕状発行を批判。ロシアはICC非加盟であり、ザハロワ外務省報道官も逮捕状は「法的に無効。ロシアは(身柄拘束の)義務を負わない」とした。

 ICCが現職の国家最高指導者に逮捕状を出したのはプーチン氏で3人目。他の最高指導者2人の裁判はいずれも実現していない。

 ICCはこれまでアフリカのコンゴ民主共和国(旧ザイール)の国内武力紛争を巡り、政府当局が身柄を引き渡した武装勢力指導者を裁くなどしてきた。だが、ロシアが今回、プーチン氏を引き渡すことは望めず、重要となってくるのは国際社会の協力となる。

 ICCの加盟国は容疑者の逮捕や身柄引き渡しで協力義務を負う。ICCは拘束を強要することはできず、過去にはICCに逮捕状を出されたスーダンの大統領が周辺国などを外遊していた事例もある。ICCのホフマンスキ所長はこのため、「逮捕状の執行は国際社会の協力にかかっている」と訴えた。

 プーチン氏が訪問したICC加盟国が協力するかは見通せない。ただ、拘束される可能性がある以上、ICC加盟国への外遊に慎重にならざるを得なくなることも想定される。国際司法が戦犯としての責任追及の姿勢を明確にしたことで、「各国の指導者はプーチン氏との握手や会談を熟慮する」(ウクライナのコスチン検事総長)との効果を期待する声も出ている。


 国際刑事裁判所 ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略罪を犯した個人を訴追、処罰する常設の国際刑事裁判機関。2003年にオランダ・ハーグに設置された。日本を含む123カ国・地域が加盟。国連安全保障理事会の5常任理事国のうち、米国、ロシア、中国は加盟していない。

 ICCは各国の国内刑事・司法制度を「補完」するもの。関係国が被疑者を捜査・訴追する能力や意思がない場合に管轄権が認められる。管轄権を行使するためには、犯罪行為が行われた国または被疑者の国籍国が加盟国であるか、管轄権を認めていることが必要。ウクライナは非加盟だが、管轄権を受け入れている。

【私の論評】今回の「子供連れ去り」の件での逮捕状は国内法でいえば別件逮捕のようなもの、本命は"武力行使そのもの"の判断(゚д゚)!

上の記事では、「子供連れ去りの責任」について述べられていますが、そもそも、侵略戦争に関してはどうなのでしょうか。それについては、以前このブログで述べています。その記事のリンクを以下に掲載します。
ロシア軍「ジェノサイド」確実 耳切り取り歯を抜かれ…子供にも拷問か 西側諸国による制裁長期化 「ロシアはICCで裁かれる」識者―【私の論評】プーチンとロシアの戦争犯罪は、裁かれてしかるべき(゚д゚)!

この記事は、昨年4月4日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を引用します。特に、他国への侵攻ということになれば、国際法に関係してくるので、その部分を中心に引用します。
際社会は、プーチンを「露骨に国際法を破った無法者」と非難しています。国際法とは、法律のように誰かに強制される法ではありません。国際社会の合意として成立している慣習です。この慣習は掟でもあり、従えない国は文明国として扱われないのが普通です。

国際法には、大きく二種類あります。一つがユスアドベルム(戦争のための法)、戦いの正当性に関する掟です。もう一つがユスインベロ(戦争における法)、戦い方の正当性に関する掟です。
ユスアドベルムには、以下の5つの条件があります。
  1. 正しい理由(攻撃に対する防衛・攻撃者に対する処罰・攻撃者によって不正に奪われた財産の回復)の存在
  2. 正統な政治的権威による戦争の発動
  3. 正統な意図や目的の存在
  4. 最後の手段としての軍事力の行使
  5. 達成すべき目的や除去すべき悪との釣り合い
ユスインベロには、以下に条件があります
  1. 戦闘員と非戦闘員の区別(差別原則)
  2. 戦争手段と目標との釣り合い(釣り合い原則=不必要な暴力の禁止)
テレビ、特にワイドショーなどでは、このあたりを曖昧にして論議をしていて、結果として米国批判、ロシア擁護のようになっている論調が見受けられることには驚くことがあります。

国際法ついては、詳細は以下の記事をご覧下さい。非常にわかりやす行く解説されています。
敵基地攻撃の装備を検討 脅威高まり「専守防衛」拡大
プーチンはユスアドベルムとユスインベロの双方に違反しています。

さらに、この記事から一部を引用します。

ユスアドベルム(戦争のための法)において、その戦いの正当性が証明されなかった場合は、単なる違法です。負ければ、国が領土や賠償金を払って償わなければならないです。逆にユスインベロ(戦争における法)を犯した者は、戦争犯罪人として牢屋行きです。

スロボダン・ミロシェビッチやサダム・フセインは容疑の証明が曖昧だったにもかかわらず、牢屋に送られて死にました。 日本人はプーチンを甘やかしてきましたが、奴は日本とって味方でも何でもないことを認識すべきでしょう。
ウクライナの占領地から子供を連れ去るなどは、明らかに「ユス・イン・ベロ」に違反する行為です。これは誰がみても理解しやすいです。

ICCとしては、まずは誰にでも理解出来る「子供連れ去り」に関しては、「戦争行為」違反ということで、逮捕状を出したのでしょう。これによって、仮に逮捕できたとしたら、余罪として「武力行使そのもの合法性」へ侵犯の疑いでも裁く意図があるのでしょう。

国際法は、国内法とは違いまずか、これは国内法でいえば「別件逮捕」のようなものです。

上の記事で、ICC加盟国の協力が不可欠ということが言われおり、いますぐ、あるいは戦争が終了した段階で、すぐにプーチンを拘束して裁判というわけにはいきませんが、今回逮捕状が出されたことにより、その道は開けたといえます。

プーチン氏への逮捕状について、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は17日夜のビデオ演説で、「歴史的な決定だ。テロ国家の指導者らが公式に戦争犯罪の容疑者となった」と述べました。これは、武力行使そのものに関する裁判への道がひらけたことに対する発言であると考えられます。

ウクライナ政府の集計によると、ロシアによる1万6226人の子供の強制移送が確認され、このうちウクライナに戻ったのは308人だけとなっています。ゼレンスキー氏は「最高指導者の指示なしに、このような犯罪行為は不可能だ」と指摘しました。

米国のバイデン大統領は17日、記者団に対し「妥当だ。とても力強い指摘だと思う」と述べました。

一方、タス通信は、ロシアの大統領報道官が「言語道断で容認できない」と激しく反発したと伝えました。


プーチン大統領は先月16日、子どもの権利担当相ベロワ氏との会談で、「ドネツク州やヘルソン州などで現地の住民から子どもの養子縁組の申請が増えている」と述べ、ロシア国内への移送の正当性を強調しました。ただ、これはロシア側の一方的な主張であって、ウクライナ側にしてみれば、連れ去られたとの主張になるのは当然です。ロシア側の独善的な態度が、この戦争の実態を表しています。

中露北等はいまでも、「必要とあらば人を殺しても構わない」という価値観を有している国です、このような国と我が国のような「人を殺してはならない」という価値観の国とは理解し合えるはずもありません。日本は同じ価値観の国々と生きるしかないのです。

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2023年3月18日土曜日

習近平政権3期目のサプライズ人事―【私の論評】中国が効き目のある金融・財政政策ができないのは、米国等の制裁ではなく国内の構造問題に要因があることを習近平は理解すべき(゚д゚)!

習近平政権3期目のサプライズ人事


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・中国で全人代が北京で開催され、習近平政権第3期目が正式に発足した。

・「李克強派」である人民銀行総裁易綱と財政相劉昆が留任。習主席が金融危機を恐れているのは明らか

・李尚福国防相就任は、今後の米中関係に大きな影響を与える可能性が高い


今年(2023年)、中国では全国人民代表大会(全人代)が3月5日から13日まで北京で開催された。そして、習近平政権第3期目が正式に発足した。新政権は、ほとんどが習主席の忠実なる部下で構成されている。

だが、各種メディアで既報の通り、中国人民銀行総裁の易綱(65歳)と財政相の劉昆(66歳)が留任した。これまでは、65歳になると、定年退職しなければならなかった(新政権には易綱と劉昆以外にも定年を超えた人事が行われている)。

今回、この件が驚きをもって迎えられたのは、李克強前首相派閥の人間が残留した(a)からである。習主席としては、国務院(内閣)から「李克強派」をすべて一掃したかったに違いない。

けれども、国務院トップの李強・新首相は地方(上海市等)政府出身のため、中央政府で務めた経験がない。習主席としては、金融・財政政策に不安を抱いたのだろう。そこで、易綱と劉昆という人材を残したと考えられる。

易綱は米イリノイ大学で博士号を習得し、インディアナ大学で教鞭を執っていた(b)。その後、帰国して北京大学の教授となっている。

易綱は、2017年の党大会で中央委員候補に選出されていた。ところが、昨2022年の党大会では、中央委員はおろか、中央委員候補にも名を連ねていなかったのである。その易綱が人民中央銀行総裁に留任した。異例の人事だろう。

習政権としては、易綱ならば、米国と金融関係の話ができるので、バイデン政権と金融面で話し合う用意があるというメッセージを米国へ送ったのではないだろうか。米国側も、その点を評価し、歓迎しているかもしれない(ただ、今秋、易綱は更迭されるのではないかという噂がある)。

他方、劉昆は、厦門大学経済学部で財政・金融を学んだ。1982年、広東省人民政府に入省し、2010年、広東省人民政府副省長にまで昇進(c)している。2013年5月、財政部副部長(副大臣)に抜擢された。その後、2018年3月、李克強首相(当時)の下、財政部長(財政相)に就任している。この2人の人事を見れば、習主席が金融危機を恐れているのは明らかではないだろうか。

実は、もう1人、新政権でのサプライズ人事があった。それは、魏鳳和を引き継いだ李尚福(65歳)新国防相(d)である。李尚福は、人民解放軍総装備部副部長、戦略支援部隊副司令官兼参謀長、中央軍事委員会装備開発部長等を歴任した後、2019年7月に上将に昇格(e)した。

李尚福は航空宇宙分野にも精通しており、西昌衛星発射センターで長年勤務している。そして、同センター司令官、月探査プロジェクト発射場システム最高指揮官、嫦娥二号発射場エリア司令官等を務めた。

2018年9月、米国務省は「米国の敵を制裁するための法案」(2017年8月に成立)に基づき、ロシアの大手武器輸出企業、ロシア防衛産品輸出公社(Rosoboronexport)との「重要な取引」について、中国共産党中央委員会に制裁を科したと発表した。

米国務省によると、この制裁は、中国共産党が2017年にSu-35戦闘機10機を、2018年にS-400地対空ミサイルシステムを購入したことに関連するものだという。その結果、李尚福は、ロシアの戦闘機・ミサイルを購入したという理由で、米政府から制裁を受けている

ところで、3月6日、習近平は中国実業家の前でワシントンを名指しで批判し、「米国を中心とする西側諸国による対中封じ込めと抹殺は、我が国の発展に前例のない挑戦をもたらす」と述べた(f)。

また、翌7日、秦剛外相は、最初の記者会見で、米国の中国への政策方針が変わらなければ、「間違いなく対立があるだろう」とワシントンに警告している。

おそらく、習主席は3期目が米国との“競争”によって特徴づけられると確信しているのかもしれない。習政権が敢えて李尚福を国防相に任命したのは、米国に対する一種の「デモンストレーション」ではないかと、香港メディアは報じている。

しかし、国防相の最も重要な責務は「軍事交流」である。李尚福国防相就任は、今後の米中関係に大きな影響を与える可能性が高いのではないか。また、米中両国国防相が会談する場合、「非常にデリケート」になると予想される。

もしかすると、習政権は、李国防相を通じて、米国の中国共産党に対する“忍耐力”をテストするつもりではあるまいか。その後、北京は対米軍事戦略を決定するのかもしれない。今後、習政権は米国との対決姿勢を鮮明にしていく公算が大きい

〔注〕

(a)『万維ビデオ』「李強では安心できない この2人の李克強派が予想外の留任となる」(2023年3月12日付)


(b)『China Vitae』易綱



(d)『中国中央人民政府』李尚福


(e)『万維ビデオ』「この閣僚の任命は奇妙だ 習近平は彼に米国をテストするように頼んだ」(2023年3月12日付)


(f)『中国瞭望』「習主席の覇権掌握に不安はない。だが、新政府にサプライズがないわけではない」(2023年3月13日付)


【私の論評】中国が効き目のある金融・財政政策ができないは、米国等の制裁ではなく国内の構造問題に要因があることを習近平は理解すべき(゚д゚)!

上の記事では、習主席としては、金融・財政政策に不安を抱いたのだろう。そこで、易綱と劉昆という人材を残したと考えられるとしています。しかし、現在の中国の金融政策や財政政策がうまくいかないのは、米国のせいではありません。それは、中国の内部の事情によるものです。

仮に、米国が制裁を行っていなかったとしても、中国の金融政策は機能不全に至っていたとみられます。それは、国際金融のトリレンマによるものです。これによれば、金融政策が機能不全に陥れば、財政政策も機能不全に陥ります。これについては、このブログでも何度か指摘してきました。

以下にその記事の典型的なもののリンクを掲載します。
姑息な〝GDP隠し〟習政権が異例の3期目 経済の足引っ張る「ゼロコロナ」自画自賛も 威信を傷つけかねない「粉飾できないほど落ち込んだ数値に」石平氏―【私の論評】習近平が何をしようが中国経済は、2つの構造的要因で発展しなくなる(゚д゚)!
詳細は、粉の記事をご覧いただくものとして、以下に国際金融のトリレンマに関わる部分を掲載します。この内容をご存知の方は、これを読み飛ばしてください。
中国の経済の停滞の原因は、ゼロコロナ、不動産バブルだけではありません。これだけであれば、この2つの不況原因を取り除けは、中国経済は再び発展することになりますが、そうではないのです。

この他に2つの構造的な要因があります。一つは、国際金融のトリレンマによるものであり、もう一つは、ごく最近新たに付け加わった、ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」です。
まずは、国際金融のトリレンマによる構造的要因です。この理論によれば、独立した国内金融政策、安定した為替相場(固定為替相場制)、 自由な資本移動、の三つは同時に実現できません。実際、日米を含め殆どの国は上記三 つのいずれかを放棄しています。

これに対して中国は、金利・為替・資本移動の自由化を極 めて漸進的に進める過程において、国内金融政策の自由度を優先しつつ、状況に応じ て為替と資本移動に関る規制の強弱を調整することで、海外の資本・技術を取り入れて 成長し、グローバルな通貨危機等の波及を阻止できました。 

しかし、資本移動を段階的に自由化した結果、最近では人民元相場と内外金利差の相 互影響が強まっています。これにより、国内金融政策が制約を受けたり、資本移動の自由 化が一部後退するなど、三兎を追う政策運営は難しくなりつつあります。

中国は、グローバル経済に組み込まれた今や世界第2位の経済大国であり、こうした 国は最終的に日米など主要国と同様の変動相場制に移行することで、国内金融政策の 高い自由度を保持しつつ、自由な資本移動を許容することが避けられません。

移 行が後手に回れば国際競争力が阻害されたり、国内バブルが膨らむ恐れがあります。一方で、 拙速に過ぎれば、大規模資本逃避や急激な人民元安が懸念されます。中国は今後一層難 しい舵取りを迫られることになります。

ただ、はっきりいえば、段階的にでも変動相場制にするか、自由な資本移動を禁止して、すべての国際金融の流れを政府が一元的に管理するかいずれかを選択しなければならないです。

前者にすれば、中国による独立した金融政策、資本自由な移動はできます。

後者にすれば、自由な資本移動はできなくなるものの、固定相場制、独立した金融政策は実施できます。

後者にすれば、中国はほぼ国際金融から切り離されることになります。ほとんど資本移動がなかった一昔前の中国に戻るしかなくなります。ただ、これでは中国の経済発展は望めません。

中国がこれからも経済発展をするつもりなら、やはり日本をはじめとする先進国のほとんどがそうしているように、変動相場制に移行するしかないのです。すぐに移行するのが無理でも、少しずつそちらのほうに舵を切るしかないのです。

独立した金融政策とは、日本のようなもともと独立した金融政策を行っている国にいる人達にはりかいしにくいかもしれません。特に日本では、独立した金融緩和を実施することができるにも関わらず、長年日銀はこれを行って来なかったので、さらにわかりにくくしている部分があります。

これは、たとえば、日銀は雇用が悪化していれば、雇用を改善するため金融緩和を実施し、失業率がNAIRU(インフレ率を上昇させない失業率 :non-increasing inflation rate of unemployment)をに達すれば、緩和をやめる等のことを行うことができます。

日本や米国などでは、インフレ率を数%高めることができれば、他に何もしなくても、数百万人の雇用が生まれます。中国では、数千万人の雇用が生まれます。これは、マクロ経済学上の常識です。下にこれを示すグラフを掲載します。

日本等の先進国では、これは通常の金融政策であり、日銀はこのようなことを行うことができます。ただ、日本においては黒田総裁前までの総裁はこのような政策を取らなかったため、雇用は改善されず、日本人の賃金は30年も上がらずじまいでした。

しかし、本来ならば先に上げた金融政策を実行して、雇用を改善すべきでした。しかし、このようなことをしなかったのが、過去の日銀です。

ところが、現在の中国においては、このようなことができないのです。なぜなら、雇用改善のため金融緩和をすると、インフレが亢進したり、キャピタルフライト(資本の海外逃避)などが起こってしまうからです。

このようなことは、李克強が首相のときにすでに発生していました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国・李首相が「バラマキ型量的緩和」を控える発言、その本当の意味―【私の論評】中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせい(゚д゚)!

この記事は、2019年の記事3月31日のものです。この頃は、まだコロナ禍は深刻な影響を与えていないはずです。この記事より一部を引用します。

2019年に入り、中国の景気減速がしきりに報じられるようになった。今年1~2月の小売売上高の伸び率は前年比8・2%となり、'03年並みの水準に逆戻りしたという。

こうしたなか、李克強首相は「量的緩和(QE)や公共投資の大幅な拡大などの措置を講じようという誘惑に抵抗する」と発言した。緩やかな減税は継続するが、景気拡大を狙った量的緩和は控える、という判断である。 

この記事の【私の論評】において、当時私は、中国が金融緩和できないのは、投資効率を低下させている国有ゾンビ企業のせいとしてますが、それはより具体的にミクロ的にみれば、そうだということであり、マクロ的にはやはり国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策が実施できないことが原因です。

中国においては、最近でも雇用が悪化していることが指摘されていますが、日本の多くマスコミは、コロナ前からの構造的なものとは捉えず、コロナ禍の影響とみているようであり、そうであれば、コロナ禍から回復すれば、そうして米国等が制裁をやめれば、中国経済はまた以前のように成長するという見方になるのでしょうが、それは間違いです。

中国経済は、コロナ禍とは無関係に、国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策ができない状態にあり、これを改善するために、固定相場制から変動相場制に移行するか、自由な資本移動ができるようにするか、あるいは両方を実施するなどの抜本的な改革ができるかどうかにかかっています。米国の制裁は国際金融のトリレンマにより惹き起こされる不都合よりは、はるかに軽いものです。

問題は、このことを習近平が理解するかどうかです。上の記事では、中国人民銀行総裁の易綱は米イリノイ大学で博士号を習得し、インディアナ大学で教鞭を執っていて、その後帰国して北京大学の教授となっているので、国際金融のトリレンマについては熟知しているでしょう。財政相劉昆は、厦門大学経済学部で財政・金融を学んでいますから、これも基本的なことは理解していると思います。

問題は、この二人が李強首相や習近平にこれを正しく伝え、二人が、特に習近平がこれを理解するかどうかです。理解しないととんでもないことなりかねません。

上の記事は、以下の文で締めくくられています。

もしかすると、習政権は、李国防相を通じて、米国の中国共産党に対する“忍耐力”をテストするつもりではあるまいか。その後、北京は対米軍事戦略を決定するのかもしれない。今後、習政権は米国との対決姿勢を鮮明にしていく公算が大きい

習近平が国際金融のトリレンマを理解せず、独立した金融政策ができないのは、米国等の制裁によるものと曲解して、米国の制裁等を理不尽と受け止めれば、かなり危険な状況になると考えられます。

米国下院に最近設置された「中国委員会」のギャラガー委員長は、米中の戦略的競争において長期的には米国が有利だが、10年の短期では危険な状態にあると述べています。中国は人口減少が生む経済問題などから「無謀さを増す」とし、中国に対し米国は対策を誤っていると具体的指摘もしています。

人口減少自体は、マクロ経済学における「装置化」により、日中ともにこれを改善し、人口減少しても経済を拡大することはできるでしょう。「装置化」とは、平たくいうと「機械化」のことであり、現在でいえば、ロボット化やAIの活用です。

日本では、日銀が金融政策さえ間違えなければ、「装置化」によって、人口減少しても十分経済発展は可能であり、むしろこれを機会と捉えることさえ可能です。

しかし、独立した金融政策が取れない現状の中国はそうではありません。独立した金融政策ができなければ、「装置化」によって、生産性が飛躍的に高まっても、それに対応した緩和ができず、それを満たすだけの需要が見込めず、結局デフレになるだけです。それでも、中国が構造的な要因をとりのぞかなければ、デフレがさらに深化するだけです。

このままの状況であれば、10年後には確実に経済もかなり落ち込み、中国はかなり弱体化することになります。そうなる前に、何とかしようと、習近平は何らかの冒険に打ってでる可能性は高まったといえます。

そうならないように、日米などの民主主義国家は、対中国政策を強化し、対中国に関する軍事力強化、中国の国内への浸透を防止する法律を整備、中国が台湾に侵攻した場合の制裁の規定や法律を強化などをすべきです。さらに、同盟国、同士国との結束を固めていくべきです。

それとともに、中国が独立した金融政策ができなくなったのは、米国等による制裁によるものというよりは、中国の国内の問題であり、何よりも国際金融のトリレンマという構造的な要因によるものであり、それを解消するには、変動相場制に移行するか、自由な資本の移動をできるようにし、国際社会に復帰するしか方法がないことを説得していくべきでしょう。

そのためには、ある程度の、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は、避けられないことも説得していくべきでしょう。特に、軍事行動を起こしたとしても、何も変えられず、国際金融のトリレンマからは逃れられず、ますます悪くなることを説得すべきでしよう。

それによって、中国が考えを変えなかったにしても、10年もたてば、中国は確実に弱体化し、他国に影響力を及ぼすことはできなくなり、国内の問題に対処するだけで精一杯で、一昔前の他国との関係が希薄な元の中国に戻るだけです。その時まで、とにかく、中国が他国に対して武力を行使させることを思いとどまらせるべきです。ウクライナの二の舞いを演じることだけは避けるべきです。

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2023年3月17日金曜日

バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落―【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新を追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!

 バイドゥの「中国版ChatGPT」は期待外れ、株価10%急落

ロビン・リー(李彦宏)、2018年5月26日

中国のビリオネアであるロビン・リー(李彦宏)が率いる検索大手バイドゥは3月16日、ChatGPTの競合となることを目指す、独自のチャットボットの「Ernie Bot(アーニーボット)」を公開した。

バイドゥの北京本社で開催されたイベントで、54歳のリーはErnie Botの機能を説明した。しかし、この発表はライブデモではなく、あらかじめ用意されたさまざまなタスクをこなすボットの映像が流されただけだった。

そのため、参加者がその場でErnie Botと対話する機会はなかったが、バイドゥはこのサービスを16日から一部のユーザー向けに提供すると述べている。投資家はこの発表に感銘を受けなかった模様で、バイドゥの香港上場株は午後の取引で10%急落した後、6.4%安で日中の取引を終えた。

「当社のボットはまだ完璧とはいえないが、市場の需要を見た結果、リリースを決定した」とリーは語った。

香港のEverbright Securitiesの証券ストラテジストのKenny Ngによると、バイドゥがChatGPTを意識したプロダクトに取り組んでいることが最初に報じられたときに、市場の期待は非常に高く株価も上昇したという。2月のアナリスト向け電話会議でリーは、Ernie Botが検索エンジンだけでなく、動画サービスのiQiyi(愛奇芸)など、バイドゥのさまざまなサービスに徐々に統合されていくと述べていた。

近年は市場の影響力においてライバルに遅れをとっているバイドゥは、人工知能(AI)領域に注力して事業の多様化を図り、活力を取り戻そうとしている。同社の昨年第4四半期の売上高は予想を上回る48億ドル(約6400億円)を記録したが、売上の半分以上はオンラインマーケティングによるものだった。中国の経済成長が鈍化するなか、テンセントやTikTokの親会社のバイトダンスは、ブランドを自社のプラットフォームに誘致しようとしており、この分野の競争は激化している。

中国のチャットボットの限界

バイドゥはプレスリリースで、Ernie Botがビジネス文書や中国語の理解などの分野で優れていると述べている。同社のボットは、OpenAIが初期モデルのChatGPTをさらに進化させたChatGPT-4を発表したわずか2日後に発表された。マイクロソフトの支援を受けたOpenAIは、最新版のボットの安全性を高め、誤解を招いたり不適切と判断されるような回答をしないようにトレーニングしたと述べている。

しかし、中国ではChatGPTが利用できず、バイドゥやテンセント、アリババなどの大手がこぞってChatGPTを模倣したプロダクトを開発している。

リーは、Ernie Botのサービスの法的側面には触れなかったが、中国発のチャットボットは、デリケートな話題を避け、厳しい国内ルールに準拠することが求められる。ウォール・ストリート・ジャーナルが最近実施した調査によると、中国のチャットボットの多くは、すでに中国の指導者についての質問に答えることを拒否している。

【私の論評】社会変革は二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、今後経済成長できない(゚д゚)!

このブログでは、以前ChatGPTの話題も掲載したことがあります。そうして、その中で中国のAIには限界があることを指摘しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国ソーシャルメディアがChatGPTをブロック、プロパガンダ拡散を警戒―【私の論評】技術革新だけで社会変革にAIを使えない中国社会はますます時代遅れとなり、経済発展もしない(゚д゚)!

中国ChatGPTに類似のChatYuanの画面 クリックすると拡大します

詳細は、この記事をごらんいただくものとして、この記事より一部を引用します。
会話型AIが人間の友達になるか、うっとおしいセールスマンになるか、支配のツールになるか、全てはこれから決まっていくでしょう。ただ、西側諸国においては、これらのことは、一定の基準が設けられ、極端なことにはならないような仕組みが構築されるでしょう

ただ、中国のような国では、AIを監視システムに用いたりするという先例もありますから、技術的なもの等には利用していくかもしれませんが、社会に関するものには利用しないでしょう。

なぜなら、現在の中国は中国は遅れた社会のままであり、これを改革するためには、まずは何をさておいても、中国の現体制を変えなれければならないからです。それは、中国共産党の終焉を意味し、中共は絶対にそのようなことをしないでしょうから、中国社会は遅れたままになるでしょう。そうなると今後経済発展も期待できません。

以上、chatGPTは中国にとって、諸刃の剣であることを述べてきました。しかし、chatGPTだけが、中国にとって諸刃の剣というわけではありません。実はAIそのものが、諸刃の剣になり得ます。

たとえば、中国では監視カメラをAIで運用して、特定の個人を特定するシステムなども大々的に構築され、運用されていますが、これも諸刃の剣です。ただchatGPTのように、すぐに自分たちに危険が及ぶ可能性を認知しにくいだけです。

たとえば、このAI監視システムが反乱分子に乗っ取られたらどうなるでしょう。そこまでいかなくても、AI監視システムを運用できる人物が、その情報を反乱分子に伝えるようなことがあったらどうなるでしょうか。

この記事でも述べましたが、経営学の大家ドラッカー氏は、イノベーションとは技術革新ではなく、社会を変えるものでなければならない、社会を変えるものでなけば、それはイノベーションとは呼べないとしています。

その意味では、中国のいわゆるイノベーションと呼ばれているものは、すべてが、技術革新ということができるでしょう。

そうして、その技術革新の目的は、社会などどうでもよく、中国共産党の幹部とその走狗が、経済的に豊になることと、中国の全体主義体制を維持することです。中国社会などどうでも良いのです。


2021年、米国のGDPは23兆ドル、中国は17.7兆ドルでした。 1人当たりGDPは米国が6.94万ドル、中国が1.25万ドルで、総額でも米国が中国を上回り、1人当たりでも米国が中国の6倍近くになっています。

ただ、中国政府の出すGDP等の統計は、ほとんど出鱈目だといわれており、本当はもっと低いとも言われています。

それは、無視して、この数字が正しいものとしても、中国の一人あたりのGDPは米国の1/6程度に過ぎないのです。

なぜこのようなことになるかといえば、米国においては様々な社会問題があることは事実ですが、それにしても、真の意味でのイノベーションが実行され、社会が少しずつであっても良くってきたし、これからも良くなり続けるからでしょう。

米国においては、中国と比較すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化などが進んでおり、それが多数の中間層を生み出し、それが活発に社会経済活動を行い、イノベーションを実施し、その結果として経済も発展してきたのです。

米国においては、あらゆる地域、あらゆる階層においてイノベーションがなされた結果、今日のような繁栄をみるようになったのです。無論、問題も多々ありますが、それでも多くの人は社会を良くすること、良くなるを前提として、日々生活しています。

これが時には行き過ぎて、社会に分断を招いたりしていますが、それでも中国と比較すれば、社会は日々進歩しています。これは、多かれ少なかれ、我が国の含めた自由主義陣営の国々に当てはまることです。だからこそ、米国に限らず、一人あたりのGDPでは多くの先進国が中国よりも、高いのです。ちなみに、中東欧諸国や台湾や韓国も中国よりは一人あたりのGDPは高いです。

ちなみに、日本は過去には金融政策を、過去も現在も財政政策を間違い続けており、そのため過去ほとんどGDPが伸びず、賃金も30年間も伸びませんでしたが、それでも一人あたりGDPでは中国よりは遥かに上です。

一方中国では、先程の述べたように、イノベーションはなされず、技術革新のみが行われ、一部の人間を経済的に豊にすることだけに注力し、社会はなおざりされたままです。中国の技術革新は、中共が掛け声をかけ、資金を投じて、一部の人間を経済的に豊にするだけで、社会はそのままです。そのため、中国では信じられないような拝金主義が横行しています。

それは、日本などの先進国でもある程度はありますが、程度問題であり、中国ほど酷くはありません。

ChatGPTのようなAIは、イノベーションによって社会変革をする環境が整っている、国や地域で、利用されて初めて真価を発揮するものと思います。中国のような、技術革新だけしようというところでは、真価は発揮し得ないでしょう。

中国のネット上では、「中国のAIは米国のAIよりも賢いに違いない。なぜなら私たちはAIに、話す方法だけでなく、話さない方法も教えなければならないからだ」と皮肉を言う人もいます。

確かに、言論の自由のない社会で、賢く、対話に長けたAIが生まれるとは想像がつかないです。

科学技術の発展によって、独裁国家の政治制度、少なくとも言論が自由を獲得する日が来る、と考えている人はいるかもしれないです。しかし、過去の中国はそうではありませんでした。


長い間、科学技術は誰にとっても公平で中立であると考えられてきました。確かに民主主義国家も、独裁国家も、技術があればミサイルやコンピューターなどを同じように生産できます。

しかし、科学技術が社会を良くすることに使われるのか、そうではないかで社会は随分違ってきたのです。科学技術でイノベーションを実現するか、そうではないかで、社会は随分異なるものになります。特に、イノベーションは二の次で、技術革新のみを追いかける中国は、過去には経済成長できましたが、今後は成長できないでしょう。

チャットGPTのような自由な対話形式のAIが普及し始めたことで、この当たり前のことがも多くの人認識されるようになるでしょう。

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2023年3月16日木曜日

日韓首脳会談、岸田首相の姿勢が「おわび」と受け取られる懸念 韓国の「ホワイト国」復帰や通貨スワップ復帰など論外だ―【私の論評】日韓関係には韓国から日本に歩み寄るべき問題はあるが、それ以外は韓国の国内問題(゚д゚)!

日本の解き方

日韓首脳会談に臨む韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(左)と岸田文雄首相=16日午後、首相官邸

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が来日し、岸田文雄首相と首脳会談を行うことが決まった。

 岸田首相は、新たな〝おわび〟を避け、歴史認識を継承することを表明するという。具体的には、1998年の日韓共同宣言など歴代内閣が示した立場の継承を表明するにとどめる意向と報じられている。この宣言には、植民地支配に対するおわびとともに「未来志向」を明記しており、日韓関係の基盤として適切だと判断したようだ。

 98年宣言は当時の小渕恵三首相と金大中(キム・デジュン)大統領が署名した。植民地支配について小渕氏が「痛切な反省と心からのおわび」を表明するとともに、金氏は「不幸な歴史を乗り越えて未来志向的な関係を発展させるため、互いに努力することが時代の要請だ」と応じた。歴史問題に終止符を打つのが狙いだった。

 日韓両国は65年の国交正常化時に締結した日韓請求権協定で、請求権問題の「完全かつ最終的な解決」を宣言した。それで、両国間の財産および請求権の問題は完全かつ最終的に解決済みである。

 しかし、韓国側が歴史問題を蒸し返し、日本政府が応じてしまったのが間違いだ。元慰安婦の方々の現実的な救済を図るために、95年に「アジア女性基金」を設立した。その後も、歴史問題はくすぶり続け、2015年に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した政府間合意に至った。しかし、文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で事実上白紙化された。解決済み問題を何度も問題とし「解決」してきたのに、再び問題化しているのだ。岸田首相は15年合意に外相として関わった。

 いわゆる元徴用工問題も同じだ。日本企業に賠償を命じる韓国最高裁判決が18年に確定したが、日韓請求権協定からみれば、そうした判決が出るのがおかしい。百歩譲ってもあくまで国内問題であり、日本との懸案とするほうがおかしい。安倍晋三・菅義偉政権では何も対応しなかったので、韓国の尹政権自らが解決せざるをえなくなった。これも国内問題なので、日本に迷惑をかけずに解決すべきものだ。本来なら日本は何も言わずに、韓国の解決策の報告を受けるだけでいい。

 報告を受けるだけから、何を加えるか。岸田政権では98年宣言を持ち出すが、これが韓国側から見れば、また日本が謝罪したといわれかねない。過去、解決済みを何度も蒸し返したので、98年宣言とはいえ、その轍を踏むことになりかねない。まして、輸出管理の「ホワイト国(グループA)」復帰や、日韓通貨スワップまで復活となるのは論外だ。

 北朝鮮問題で、日米韓の連携が必要であるので、多少の無理は仕方ないという見方もあるが、日韓は過去の蒸し返しをせずに北朝鮮対処への未来志向だけに専念すべきだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】日韓関係には、韓国から日本に歩み寄るべき問題はあるが、それ以外は全部韓国の国内問題(゚д゚)!

7日、西村経産省西村大臣は、「韓国向け輸出管理強化は安全保障の観点で実施しており、労働者問題と次元が異なる。全く別問題。そもそも本件は日本国内の運用見直しであり協議の対象ではない。昨日に韓国がWTO紛争解決手続中断の意思を示したため、政策対話で韓国の輸出管理の実効性の確認を行う。今後韓国の姿勢を見極め判断する」と発言していました。


ただ、経済産業省は16日、韓国に対する半導体関連品目の輸出管理の厳格化措置を緩和すると発表しました。14~16日に開いた日韓の局長級による政策対話で、韓国の輸出管理体制の改善を確認したほか、韓国が世界貿易機関(WTO)への提訴を取り下げると発表したためです。

日本は2019年、半導体の洗浄に使う「フッ化水素」など3品目の輸出手続きを厳しくしました。軍事転用の恐れの低い物品や技術の輸出手続きが簡略になる優遇国「グループA(ホワイト国)」から韓国を外した措置については、今後も対話を継続するとしています。

日本の輸出管理に関しては、安全保障の観点から、日本が決定すべきものであり、韓国が決定に関与したり、影響を及ぼしたりする性格のものではありません。

2019年、日本から輸入した約4万キロの高純度フッ化水素が不良品であるとして返品を受けた際に120キロしか戻らなかったという事件がありました。残りがどこに行ったのかは不明なままで、これは韓国国内でも批判の的となりました。

日本が韓国をグループA(旧ホワイト国)から除外した理由は、「韓国の輸出管理制度が不十分で、安全保障上の懸念があるから」です。韓国の管理体制がずさんであるとして、日本だけでなくEUも韓国をグループA国には指定していません。


グループA (旧ホワイト国)から除外されると、実際に韓国への輸出についてどのような影響があるのでしょうかといえば、結論から言うと、さほど大きな影響はないと言えます。

グループAから外されたことで、日本から韓国へ輸出する際、大量破壊兵器の製造などに転用される可能性がある機械製品などの幅広い品目においては、原則として契約ごとに個別に経済産業省の許可が必要とはなりました。

こういったキャッチオール規制や包括許可など、輸出許可に対して書類などの量が増えるのは多少手間ではありますが、グループA国から除外されたことで、個別許可の品目が一気に増えるわけではありませんし、韓国への扱いが悪くなることもありません。

また、韓国という国自体へのグループA国に対する包括許可がなくなっても、社内規定を整え経産省の検査を受けることで取得できる特別一般包括制度を利用すれば、韓国企業はこれまでと変わらない取引が可能です。

ただ、韓国としては、日本からグループAに指定されていないということは、それだけ日本から信用されていないということを意味しており、他国からそういう国なのだと、みられることになり、韓国としては沽券に関わるというところがあります。

しかし、それは日本側が歩み寄るべきものではなく、韓国側が自国の輸出管理制度を整えて、日本政府の信頼を取り戻すべき問題です。

その他の問題も同じです。通貨スワップも、日本の哨戒機に対する、照射などは、韓国のほうから日本に歩み寄るべき問題であり。


慰安婦問題、徴用工問題は、日本にとっては何の問題でもなく、韓国が自国内で解決すべき国内問題です。

日韓関係には、韓国から日本に歩み寄るべき問題はありますが、それ以外は韓国の国内問題であるという立場を崩すべきではありません。

そうして、北朝鮮問題で、日米韓の連携は必要ですが、それにしても、現在の尹韓国大統領、中国依存脱却にまい進し対米輸出に注力すること等をして、親米的な態度を示してはいますが、今後韓国が再び中国寄りになるなら、日米としても、韓国は北や中国に対峙するために必要な軍事上の緩衝地帯(空き地)であるとみなし、それなりの扱いしかしないようにすべきです。

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2023年3月15日水曜日

ホンジュラス大統領、「中国との国交樹立を指示」と発表 外交部「わなにはまるな」/台湾―【私の論評】ホンジュラスの中国への寝返りがかすむ米国の台湾紛争抑制法(゚д゚)!

ホンジュラス大統領、「中国との国交樹立を指示」と発表 外交部「わなにはまるな」/台湾

ホンジュラスのカストロ大統領


中華民国(台湾)と外交関係を結ぶ中米ホンジュラスのカストロ大統領は14日、ツイッターで、中国との公式な関係の樹立を取り計らうようレイナ外相に指示したと発表した。これを受けて外交部(外務省)は15日、ホンジュラス政府に対して「厳正な関心」を表明したと報道資料で明らかにし、「中国のわなにはまってはならない」と慎重な判断を求めた。

中華民国とホンジュラスは1941年に国交を樹立した。外交部は、台湾が信頼できるパートナーであることをこれまでに繰り返しホンジュラスに伝えてきたことを明かした上で、能力の及ぶ範囲において国家建設の発展を支援してきたと言及。中国がホンジュラスとの関係の発展を狙う唯一の目的は、国際社会における台湾の空間を圧迫することにあると指摘し、ホンジュラス国民の福祉に有益な協力関係を推し進めていく心からの思いはないと訴えた。その上で、台湾との長年来の友好関係を損なう誤った決定を下さないよう呼び掛けた。

「ホンジュラスは中南米の重要な国交樹立国」だと強調し、ホンジュラス政府や社会の各界に対する説明や意思疎通を引き続き強化していく方針を示した。

これに関し、駐台ホンジュラス大使は現時点では中央社の質問に回答していない。

【私の論評】ホンジュラスの中国への寝返りがかすむ米国の台湾紛争抑制法(゚д゚)!

ホンジュラスといえば、前大統領のエルナンデス大統領は、親台派でした。2021年11月13日台湾を訪問し、蔡英文総統と会談しました。中国と台湾の外交上の綱引きは中米の政治にも影響を与えています。  

ホンジュラスでは同年11月28日に大統領選挙が行われましたが、無所属の有力候補の一人であった現大統領カストロ氏は「当選した場合、台湾と断交し、即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と主張していて、台湾は強い危機感を示していました。

エルナンデス全大統領は、立候補していませんでしたが、「大統領選挙の結果、国民が台湾との交流を選択することを願う」と後継候補への支持を表明していました。大統領選の結果は、無党派のカストロ氏が当選しました。

中南米カリブ海地域には台湾と外交関係を持つ15カ国中9カ国が集中。長年、中台の「外交戦争」の最前線となってきました。台湾は、欧州連合(EU)欧州議会の代表団や米議員団の訪問を相次いで受け入れており、台湾と中国との駆け引きが活発化しています。

今回は、長年台湾と外交関係を維持してきた、ホンジュラスが台湾と断交することを決めたのです。


当時、断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示しました。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えました。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆しました。

ただカストロ大統領は、中華民国(台湾)から中華人民共和国に承認先を替える計画はないと述べた上で、台湾副総統の頼清徳氏に対し、台湾との関係強化を約束しました。また、カストロのスポークスパーソンは、彼女が「当面の間、一つの中国への支持を変更・転換する考えはない」と述べていました。

現在台湾を国と認めているのはバチカン市国を含め世界で14カ国しかありません。うち7カ国は南太平洋やアフリカ沖の小さな島国で、主軸は中南米だ。と言っても、南米はパラグアイ1国、中米はグアテマラ、ホンジュラスと、81年に英国から独立した小国ベリーズ、そしてカリブに浮かぶ島国、ハイチです。

今回ホンジュラスが中国に寝返ってしまったので、もはや中米は台湾にとって「拠点」とは呼べなくなってしまいました。

中国と台湾の国交レースが始まったのは1970年代初頭です。71年の米ニクソン政権による対中接近、毛沢東率いる中国の国連復帰と中華民国(台湾)の国連脱退を機に、78年までに日本を含めた80カ国近くが雪崩を打つように中国と国交を結びました。

この時期、台湾の承認国は22カ国で底を打ち、その後、上下を繰り返す。李登輝総統時代の98~2000年にかけて、台湾の攻勢が最も華々しく、外交関係にある国は95年、30カ国に達しました。

ところが、アフリカにおける台湾の牙城だった南アフリカは98年、中国と国交を結びました。マンデラ政権の与党、アフリカ民族会議が反アパルトヘイト運動の中、長く中国から支援されてきたためです。その後もアフリカで大規模な援助外交を繰り広げる中国は、03年にリベリア、05年にセネガル、06年にチャド、07年にマラウイと相次いでアフリカ諸国との国交を台湾から奪いました。

援助攻勢で小国をつなぎ留めておく意味はあるのか、という議論も台湾にはあり、08~16年の馬英九総統時代には「外交休兵」が提起され、このころ、レースはさして進みませんでした。

ところが、16年に始まる蔡英文政権下、中国の習近平体制からの圧力が強まり、台湾は17年にパナマを、18年にはドミニカ、エルサルバドルまで奪われました。そして昨年12月にはニカラグアも台湾から中国に乗り換えました。

そんな逆風の中、ホンジュラスがつい最近まで台湾を維持してきたのは、米国の存在があったからです。

従来、例えば98年に南アフリカが台湾を切る際、米クリントン政権からは特段の外交圧力はありませんでした。米国の影響力が最も強い中米の国で「絶対に台湾とは断交しない」と歴代大統領が公約してきたエルサルバドルが18年に台湾から離れたときも、米国の言い分は重視されませんでした。

一方、22年1月のホンジュラス大統領カストロ氏の就任式にはバイデン政権のハリス副大統領が列席し、その存在感をアピールしました。両国は中米から米国への移民を抑えるプロジェクトで合意し、米国からの投資促進も約束さていました。

ホンジュラスと米国との緊密さに中台問題は本来関係がないですが、ここに来て、米国と中国の対立が微妙に影響し始めていたようです。「中南米における中国の影響を抑えるため」といった露骨なことをハリス氏は言いませんでした。

カルロス大統領就任式に出席するためホンジュラスに降り立つハリス米副大統領。就任式の際、同じく出席していた台湾の頼清徳副総統と異例の「直接会話」を行った。

しかしホンジュラスとしてはそれなりのそんたくを働かせたのか、早々に「台湾維持」を発表していました。

台湾が国交国を失うケースは近年頻発していますが、ここで特に記しておきたいのは、以上で「台湾と断交」と書いてきたのですが、正確にはこれらの国々は「中華民国」と断交したのです。

その背景にあるのが、中華人民共和国の唱える「ひとつの中国」政策です。中華人民共和国が南アフリカをはじめとする各国に対して迫ったのも「中華人民共和国を認めるか、中華民国を認めるか」という選択でした。

言い換えれば、台湾が国交国と断絶し、失っていく原因は、この中華人民共和国が唱える「ひとつの中国」政策といって良いです。台湾が1971年に国連を追放されたのも、中国を代表する正統政府は中華人民共和国だと認められたからであり、「台湾」という名義で国連に残るという選択肢がないわけではなかったと言われています。

台湾は現在にいたるまで国連に加盟出来ておらず、国連の関連組織である世界保健機関(WHO)や国際民間航空機関(ICAO)への限定的なオブザーバー参加さえ、中国の圧力によって妨害されることが多いです。これもまた「中華民国」という名称が大きな要因となっているといえます。

とはいえ、台湾がその国名「中華民国」を名称変更するのはそう容易なことではありません。選挙のたびびに有権者が「台湾」か「中華民国」かで割れるうえ、総統が演説の中で「中華民国」を何回使ったか、が台湾ではニュースになるほど賛否が分かれる状況です。

であるならば、台湾を取り巻く日本をはじめとする国際社会はどのように台湾と接していくべきでしょうか。それに有効な解決方法がすでに日台や米台の政府間で進められている「積み木方式」による各種協定の締結です。

日本と台湾は国交がなく、他の国家のように条約を締結することが出来ません。例えばFTAを結ぶにしても、中国による妨害も考えられ現実的ではありません。

そこで、包括的な条約を結ぶのではなく、投資や租税、電子取引や漁業など、個別の協定を結ぶことを、あたかも積み木を積み上げていくことで、実質的にはほぼFTAを締結したのと等しいレベルにまで持っていくことです。。

現在、台湾は中国の圧力により、いっそう国際社会における外交空間を狭められています。しかし、知恵を絞ることによって外交関係がなくとも、実質的には国家間とほぼ同等レベルの密接な関係にまで作り上げられるというモデルが日台間で実現、その成功例を世界に発信していくべきです。

さらに、日本としては、台湾をTPPに参加してもらうことにより、積み木をさらに高く積み上げることができます。そうして、民主化され市場の自由度も高い台湾はTPPに加入することは可能です。全体主義国家の中国は、市場の自由度も低く、そもそも固定相場性ですから、最初からTPPに入ることはできません。

TPPと積み木方式での各種協定により、日台は実質的に外交関係にあるのと同じことになります。これをモデルとして世界に示すことこそ、日本の使命であり、これを実現し、G7の国々が似たようなことをすれば、ホンジュラスのような国が中国側に寝返ったとしても、あまり影響がなくなります。

一方、米国は台湾関連法案を新設したり、改定しています。2月28日、米連邦議会下院金融委員会は台湾に関する3つの法案を圧倒的な多数で可決、台湾紛争抑制法案、台湾保護法案、台湾差別禁止法案」の3つ、その中で特に注目すべき台湾紛争抑制法案です。

中国が台湾に侵攻すると中共幹部は乞食になる・・・・?

本案には、米国財務省に中国共産党幹部とその親族たちの在米資産の調査を求める条項と、米国金融機構に対し中共幹部と親族に金融サービスを提供することを禁じる条項が含まれているからです。

これは、中国共産党に対して大変な威力のある「戦争阻止法案」となるでしょう。共産党政権を支える高官たちの大半(もっといえばほとんど)が米国に隠し資産を持っていることは「公開の秘密」でもあります。

それが米国の法律によって凍結・没収される危険性が生じてくると、共産党幹部集団にとっての死活問題となるからです。ちなみに米国には、5200億米ドル(約70.2兆円)の中国の特権階級の資産があるとされています。

一方SNS上で再び「中国人100人がスイス銀行に7兆8000億元、預金している」という噂がネットユーザーの間で広まっていまい。福建省当局はその「デマ」を検証し、ネットの噂は事実ではないと打ち消しました。

スイス連邦経済事務局のイネイヘン・フライシュ局長が、仮に台湾海峡情勢が変化すれば、EUの制裁に従うと明言した事と関連があるのではないでしょうか。

米国やスイスの銀行口座に資産を置いている同党幹部らは、ロシア・ウクライナ戦争を目の当たりにし、背筋が寒くなっているのではないでしょうか。

このようなことは、法律があろうがなかろうが、戦争になれば、普通は資産が凍結されることは、最初から分かりきっていることなのに、中国としてはホンジュラスで意趣返しでもしたつもりかもしれませんが、それにしても、中共の幹部らは、自分たちがいかに脆弱の基盤の上に立っているのか思い知らされたことでしょう。

かといって、中共幹部らは、資産を中国の銀行に預けることも不安なのでしょう。ということは、中共幹部は中国の未来を信じていないということを意味するのですが・・・・。

そんなことはないという人もいるかもしれませんが、お金は正直です。日本や西側諸国には、自国の金融機関に資産を預けない人などいません、これは自国の未来を信じているからです。

今後も米国は台湾関連法をさらに強化し、日本は台湾との間で様々な条約などを積み木方式でさらに積み上げ同盟関係に近いところまで持っていくべきです。

そうして、日本は米国を見習い、台湾関連法案も改定、新設すべきですし、米国はTPPに復帰すべきでしょう。

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2023年3月14日火曜日

画期的な台湾外相の訪米 問われる日本の対応―【私の論評】蔡英文総統は8月訪米、日本も招いて首脳会談すべき(゚д゚)!

画期的な台湾外相の訪米 問われる日本の対応

岡崎研究所


 2023年2月23日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の解説記事は、台湾の呉釗燮・外交部長(外相)の訪米は米台関係において画期的であると述べ、米台間の要人交流の活発化を報じている。

 台湾の外相が米高官との会談のため訪米した。異例のことである。台湾の中央通訊社(CNA)には、呉釗燮・外交部長と顧立雄・国家安全会議議長がウェンディ・シャーマン米国務副長官らと、米国の台湾における代表機関である米国在台湾協会(AIT)のワシントン本部を後にする姿が写っている。

 CNAによると、2月21日の会談は国家安全保障問題を焦点に7時間に及んだ。台湾の識者達は、台湾問題を扱う米国事務所という準公式の場で行われた今回の会談は米台関係の注目すべき一歩であると言う。

 中国外交部報道官は、2月24日、米国は中国の台頭を封じ込めるために台湾を利用していると非難した。中国は長年、台湾を外交的に孤立させる事に成功してきたが、ロシアのウクライナ侵攻は、台湾が中国に攻撃される可能性への懸念を高め、米国と同盟国は台湾への支持表明を強めることとなった。

 米台間に正式の外交関係はないが、両者は互いの首都に利益代表部を維持し、議員や元官僚の代表団を多数受け入れてきた。米国は台湾に武器も供与し、公式には米国は曖昧政策を続けているが、バイデン大統領は、台湾が攻撃された際には米国は支援すると繰り返し述べている。

 民主党のペロシ下院議員は昨夏、下院議長在任中に台湾を訪問した。最近選出されたマッカーシー下院議長も台湾を訪問したいと述べている。2月23日、カンナ下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)率いる議員団が台北で蔡英文総統と会談した。そこには、ゴンザレス(共和党、テキサス州選出)、オーキンクロス(民主党、マサチューセッツ州選出)、ジャクソン(民主党、イリノイ州選出)各議員が含まれる。別途、ギャラガー・米中戦略的競争に関する米国下院特別委員長も訪台し、蔡英文らと会談した。

*    *    *

 台湾の呉外相が最近、米国を訪問し、7時間にわたってワシントンにおいて、米政府関係者と協議した。1979年の米台外交関係断絶以来、現役の台湾の外相がワシントンを訪問し、AIT事務所において米政府関係者と会談したのは初めてのことであり、米台関係における画期的事件ととらえることが出来る。

 WSJはじめメディアは、単に会談が行われた事実を伝えるのみで、内容の詳細については触れていないが、米台間の外交では特筆すべき一大進展であったことは間違いない。

 なお、今のところ、日本では、台湾の総統、副総統、行政院長(首相)、国防相、外相については、日本国内で直接日本政府関係者と会談することを避けるのが、日台断交以来の日本政府の慣行になっている。この点、今回の呉外相の訪米は、このような旧来の日台間の慣行に比して、新機軸をなすものと言えよう。

 呉に同行した台湾代表団には国家安全会議の顧秘書長が入っている。また、米国側より、シャーマン国務副長官やファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)が参加した。

 WSJの本記事は米台関係がこのように急速に変貌を遂げつつある背景としてウクライナへのロシアの侵略があり、台湾をめぐっても同じようなことが起こるのではないかとの危惧の念が米国政府側にあるからだろうと述べている。

 正式な外交関係がないからと言って、台湾の状況をただ傍観するだけでは、今後「台湾有事」が発生するのを抑止できなくなる恐れもあると米国側が判断したからというWSJの見方は決して間違ってはいないだろう。

 台湾の世論では、有事の際に米国は果たして支援してくれるのだろうかという議論が引き続き行われている。呉外相の訪米は、米国としての本気度を示すものと受け取られることも折り込んだ米台間のアレンジメントであろう。

 バイデン政権としては、もし将来台湾が武力攻撃の対象になれば、「台湾関係法」を持ち、台湾に武器を供与することにコミットしている米国としては、「一つの中国」政策につき「曖昧さ」を維持しつつも、台湾救援のために駆けつける構えを示したいところであろう。
日台関係の深化は急務

 最近、日本においても「台湾有事」が発生した際に、日本としていかに対応するかが話題になることが多い。日本としては、安保関連法案に基づき、米国の台湾支援に対する後方支援を行うだけではなく、日ごろからハイレベルで、軍事面を含め、台湾の政策決定者との間で情報交換しあうような関係を築く必要がある。今回の呉外相の訪米はそのためのヒントとなろう。

 台湾問題を「核心中の核心問題」と位置づけ「台湾統一」のためには武力を行使することも排除しないとする中国の猛反発は目に見えているが、中国の台湾への軍事侵攻の可能性を考慮すれば、今回の呉外相の米国訪問は、日本の台湾問題への取り組みにおいても重要な課題を提起するものである。

【私の論評】蔡英文総統は8月訪米、日本も招いて首脳会談すべき(゚д゚)!

このブログでは、中国による台湾侵攻は難しいということを掲載してきました。これは、マスコミなどが日々それを煽るため、多くの人が、中国はいとも簡単に台湾に軍事侵攻して、台湾を併合できると思うのではないかと懸念したため、実はそう簡単ではないことを掲載してきました。私は、中国がいとも簡単に台湾に侵攻できると思い込むのは、中国の思うつぼだと思います。

実際、中国が台湾を侵攻しようとすれば、現在ウクライナがロシアに抵抗しているように台湾軍がこれに真正面から抵抗すれば、開戦当初のウクライナ軍よりも、はるかに精強で現代的な兵器を整えてる台湾軍により、中国軍はかなりの損害を被ることが予想されます。

台湾軍女性兵士

なぜなら、台湾は島嶼国でありながら最高峰の玉山(3,952m)は、日本の最高峰富士山よりも高く、東は切り立った山であり、海の水深は深く、西の海は浅いので潜水艦は発見されやすく、上陸地点は限られており、上陸する人民解放軍は、高地の台湾軍から容易に狙い撃ちされることになるからです。

さらに日米が加勢すれば、中国は台湾に侵攻してこれを併合するのはかなり難しくなります。それは、最近の米国の台湾有事のシミレーションによっても明らかにされています。しかし、だからといって中国が未来永劫にわたって台湾に侵攻しないという保証はありません。

中国としては、軍事的手段以外の手を駆使して、台湾併合をはかるでしょうが、最後のひと押しで軍事力を使う可能性は捨てきれません。特に、侵攻は難しいものの、ミサイル等を用いて、台湾の軍事施設などを破壊することはすぐにできます。ただ、台湾も長距離ミサイルを配備しており、そうなれば中国側損失を被るのは必定です。

しかし、侵攻で台湾を一気に併合するのではなく、軍事以外のあらゆる手段を用いて、台湾を外交的に孤立させたり、中国脅威論を煽ったり、通商妨害をしたり、台湾を弱体化するなどのことをしてから、軍事力も用いつつ最終的に台湾を奪取して併合するなどのことは十分に考えられます。私は、むしろこちらのほうがはるかに中国にとって現実的なシナリオだと思います。

中国が軍事力のみで台湾を侵攻するというのなら、台湾もそれに備えて、軍事力を強化し、人民解放軍の弱点を知り抜いた日米も台湾に武器を供与したり、共同軍事訓練をしたりすればそれで良いです。

しかし、事はそう単純ではないのです。台湾の多くの人々は、台湾が中国に併合されることには反対ですが、中国と利害が一致する人や親中的な人も存在します。それも、有力者の中にもそういう人は存在します。

中国が台湾内で影響力を増し、次期台湾総裁選で親中派の国民党の候補者を当選させるなどの工作をし、その他に対してもありとあらゆる方面に幅広く工作して台湾のあらゆるところに浸透し、台湾が合法的に中国に自発的に併合されるという、シナリオも十分考えられます。

もし、自発的に併合されなければ、台湾へのあらゆる方面への工作を強化し、これが最終局面を迎えた段階で、易々と侵攻というか、進駐に近い形で台湾に軍を派遣して奪取することも十分に考えられます。

このような脅威は常に懸念されるからこそ、台湾は米国等と関係を深めようとしているのです。

そうしたなかで、台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が先月21日、米首都ワシントンDC近郊で米政府高官と非公式の会談を開いたのは画期的なことです。

台湾の呉釗燮・外交部長(外相)

会談は米バージニア州にある米国在台湾協会(AIT)の本部で実施しました。米国側からはシャーマン国務副長官らが出席し、台湾側からは国家安全会議(NSC)の顧立雄秘書長も参加しました。

米台高官の非公式会談は定期的に実施されています。直近では2022年6月に台湾NSCの顧氏の訪米が報じられました。

さらに、台湾の蔡英文総統が8月までに訪米する方針を固め、米国側と調整に入ったことが分かりました。産経新聞が先月25日、複数の台湾当局関係者の話として報じました。

蔡英文氏は、台湾・民主進歩党主席だった頃、次期総統選候補者として、2015年5月末から6月にかけて訪米したことがあります。台湾総統として、米国を訪れるのは初めてのことです。

蔡氏は来年5月に退任しますが、台湾への軍事的圧力を強める共産党一党独裁の中国を牽制し、蔡政権の外交成果の集大成として「米台関係の緊密さ」をアピールする狙いといいます。中国の習近平国家主席は「台湾の武力統一」を排除しておらず、激しく反発しそうです。

蔡英文総統が米国を訪れるのは画期的なことです。これにより、米台間の揺るぎない関係を中国にに見せつけ、中国の台湾侵攻を牽制することなるのは間違いないです。


蔡氏の訪米待望論は以前からありましたが、米国が中国の反発を懸念してためらっていたようです。ところが、中国は「台湾併合」を公言し、緊張感を高めており、習政権に配慮する意味はなくなりました。米台連携を緊密化することが最大の抑止力になります。

日本も「自由」「民主主義」「人権」「法の支配」といった普遍的価値を共有する台湾との関係を強化すべきです。

日本も、議員団の訪台だけでなく、台湾総統を招くとか、総理大臣や外務大臣が訪台するなどのことをすべきです。そうして日米台連携を緊密にすることがさらに、抑止力を高めることになります。

そうして、来年台湾に新総統が誕生したときには、総理大臣が出向いて、台湾で首脳会談を開催すべきです。

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2023年3月13日月曜日

中露首脳、来週にもモスクワで会談か ロイター報道―【私の論評】習近平と人民解放軍の争いの行末を占えるか?来週の習・プーチン会談(゚д゚)!

中露首脳、来週にもモスクワで会談か ロイター報道


 ロイター通信は13日、中国の習近平国家主席が来週にもロシアの首都モスクワを訪問し、プーチン大統領と会談する予定だと報じた。会談が実現した場合、中露はともに対立する米国への対処方針や、ウクライナ情勢に関して中国が先月24日に提示した和平案などを協議するとみられる。

 プーチン氏は昨年12月、オンライン形式での中露首脳会談で習氏を今春にもモスクワに招待したい意向を伝達。プーチン氏は今年2月22日、訪露した中国の外交担当トップ、王毅共産党政治局員と会談し、「習氏の訪露を心待ちにしている」と述べていた。

 それぞれ台湾情勢やウクライナ情勢で米国と対立する中露は、連携を強化し、自国単独で米国と対峙(たいじ)する事態を避けたい思惑だとみられている。

 ロシアとウクライナ双方に譲歩を通じた早期停戦を求めた中国の和平案を巡っては、ロシアは中国の関与を歓迎する一方、「軍事作戦は目標達成まで継続する」とし、早期停戦には応じない立場を示している。

【私の論評】習近平と人民解放軍の争いの行末を占えるか?来週の習・プーチン会談(゚д゚)!

習近平がプーチンの招請に応じて、今年の春にロシアを訪問する可能性があることについては、このブログで何度か述べてきました。

この会談の結果により、現在の中露関係が見極められるだろとうということも主張してきました。それらの記事から一つの記事のリンクを以下に掲載します。
「同盟しない、対抗しない、第3国をターゲットとしない」、習近平政権、ロシア見切りへ外交方針大転換―【私の論評】習近平がロシアを見限ったのは、米国の半導体規制が原因か(゚д゚)!

外相に就任した秦剛氏氏


これは、今年1月17日の記事です。この記事より一部を引用します。

昨年12月30日、習主席は今年3月開催予定の全人代を待たずにして異例の「閣僚人事」を行い、前駐米大使の秦剛氏を外務大臣に任命しました。

外相に就任した2日後の今年元旦、秦剛氏はさっそく米国のブリンケン国務長官と電話会談を行い、新年の挨拶を交わしたと同時に、「米中関係の改善・発展させていきたい」と語りました。

米国務長官との電話会談の9日後、秦外相は本来一番の友好国であるはずのロシア外相との電話会談を行ったのですが、その中でロシア側に対し、今後の中露関係の「原則」として「同盟しない、対抗しない、第三国をターゲットとしない」という「三つのしない」方針を提示しました。

それは明らかに、米国を中心とした西側に配慮してロシアと関係見直しに出た挙動であって、習政権の対米改善外交の一環であろうとも思われます。

こうした中で、ブリンケン米国務長官の2月訪中が双方の間で決定され、長官は2月5日、6日の日程で北京を訪問する予定でした。 ところが「ブリンケン訪中」の直前になって、中国の放った偵察気球一つでそれが延期されることとなりました。その後も、全部が中国の気球かは、まだわからないものの、カナダやアラスカでも行われことが報じられ、さらに止めの一発のように、今回のレーザー照射です。

中国外交部は、習近平の外交方針を代弁しているとみられます。よって、「同盟しない、対抗しない、第三国をターゲットとしない」という「三つのしない」方針は、習近平の方針であると考えられ、これはロシアとの関係を見直すと受け取れる発言です。

その直後に偵察気球問題が発生しました。この偵察気球は人民解放軍が上げたとみて、間違いありません。

月3日、米本土上空で米軍偵察機U2から撮影した中国の偵察気球

中国海警局は、組織改編により、人民解放軍の下に組み入れられています。したがって、フィリピン船へのレーダー照射も軍の意向と考えられます。

これは、ロシアと距離を置こうとしている、習近平指導部に対して、軍が意趣返ししたと受け取れます。習近平指導部と、軍との間で、対ロシア政策を巡って齟齬があるのは間違いないと見えます。

この記事の結論は以下のようなものです。

現状は、ウクライナもロシアも弾薬が不足気味のようで、戦線は膠着していますが、中国がロシアに対して、見切り外交に舵を切ったことから、今後はウクライナのほうが圧倒的に有利になる可能性がでてきました。

今春に習近平はロシアを訪問するのでしょうか、私は訪問しない可能性も出てきたと思います。訪問したとしても、型通りの話ししかなく、形式的なものになる可能性が高まってきたものと思います。

さて、今回習近平が、ロシアを訪問するということで、習近平としては、軍の意向も反映して、ロシアに対して無下にもできないというスタンスであるのは間違いないようです。

上の記事にもあるように、ロシアとウクライナ双方に譲歩を通じた早期停戦を求めた中国の和平案を巡っては、ロシアは中国の関与を歓迎する一方、「軍事作戦は目標達成まで継続する」とし、早期停戦には応じない立場を示しています。

和平提案については話はされるでしょうが、これをロシアが受け入れて、すぐに具体的な交渉にはいることはないでしょう。

今回の会談がほぼこれだけで終わり他にめぼしいものがなければ、習近平はロシアと距離を置こうとしているとみなすことができると思います。プーチンと会談したのは、人民解放軍への懐柔策ともみられます。

一方、中国の和平提案以外にも、中国のロシアに対する支援策、特に軍事支援などが具体的に話され、何らかの合意に達すれば、これは習近平が軍部に折れたともみなされ、中国内では人民解放軍が優勢であり、今後それこそ偵察気球やレーザー照射による意趣返しどころか、大規模な権力闘争もしくはそれを通り越して、武力による争いや内乱などに発展する可能性もあるとみるべきと思います。

ロシアの武器提供も含め、習近平がロシアを支援することを表明すれば、ウクライナ戦争はさらに長引くことも予想され、米国を含む西側諸国の大反発を招くのは必定です。米国は中国に対して、さらに制裁を強化するでしょう。特に半導体での締め付けはかなり厳しくなる可能性があります。現在中国は軍事転用可能な最新型の半導体等に関する規制をうけていますが、これが拡大され、半導体そのもの製造、輸入を妨害する等の厳しい措置にでるかもしれません。

まさに、来週の中露首脳会談の推移によって、これが占えると思います。滅多にない機会です。さて、どうなるか、何か動きがあれば、またレポートさせていただきます。

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2023年3月12日日曜日

ミクロネシア大統領、中国の「賄賂、脅しや政治戦争」非難―【私の論評】南太平洋波高し!米加改めて確認、日本の林外相は今月島嶼国を訪問(゚д゚)!

ミクロネシア大統領、中国の「賄賂、脅しや政治戦争」非難

ミクロネシア連邦のパニュエロ大統領

米国と自由連合協定を組むミクロネシア連邦のパニュエロ大統領が、太平洋で「政治的な戦争」を仕掛けていると中国を非難し、同国との外交関係の断絶も提唱する書簡をしたためていたことが12日までにわかった。

論議を招きそうな大胆な内容が交じる書簡は13ページの長さで、CNNも入手した。中国は台湾への侵攻を準備しているとし、この戦争が起きた場合、ミクロネシアの中立の立場を確保するため賄賂、政治的な干渉に加え、「直接的な脅し」さえかけていると指弾した。

また、中国に代わり台湾との外交樹立を検討したこともあると明かした。

パニュエロ氏は自国内で中国が進めるとされる政治的な戦争について、同盟関係の構築、経済的な方途や公共の場でのプロパガンダ流布などの公然たる活動に言及。さらに、「賄賂、心理戦争や恐喝」といった非公然活動にも触れた。

中国によるこの政治的な戦争が多くの分野で成功している理由の一つは、「共謀者になったり、沈黙を守らせるために我々が収賄されているからだ」と主張。「激しい表現だが、実態の正確な描写でもある」と強調した。

パニュエロ氏はこれまでも、南太平洋を含むインド太平洋で影響力の拡大を図る中国に対して警戒姿勢を見せ、その旨の発言も示してきた。

中国は近年、一部の島しょ国家で自らが関与するスタジアム、高速道路や橋梁などインフラ施設の建設を推進し、存在感の誇示を図っている。中国の習近平(シーチンピン)国家主席も2014、18両年に島しょ国家を歴訪し、政府高官の派遣にも踏み切っている。

南太平洋諸国を台湾から切り離す狙いもあるとされ、同地域では台湾を認める国が14カ国のうちの4カ国までに落ち込んだ。2019年にはソロモン諸島とキリバスが台湾を見限り、中国との国交樹立に転じていた。

この中でパニュエロ大統領は、中国が太平洋の10カ国の島しょ国家に申し出た広範な地域的な安全保障の枠組みにも反対の見解を表明。昨年5月には太平洋諸国の22人の指導者に書簡を送り、枠組みの提案は中国と外交的な関係を持つ島しょ国家を中国の勢力圏へさらに引き寄せる意図があると警告。

島しょ国家の主権が揺さぶられるほか、提案への調印は中国と西側諸国の間の緊張が高まる新たな冷戦をもたらしかねないと釘を刺していた。提案は結局、実現していなかった。

オーストラリア北東部に多く位置する太平洋の島しょ国家は軍事戦略上、米軍基地もある西太平洋の米領グアム島と米国の同盟国オーストラリアをつなげる重要な接続回路と長年位置づけられてきた。

パニュエロ氏は最近の総選挙で議席を失い、今後2カ月内に大統領を退任する予定。大統領は19年から務めていた。

一方、中国外務省の報道官は定例の記者会見でパニュエロ氏の書簡内容に触れ、「中傷や非難のたまもの」と反論。中国は国の規模の大小に関係なく全ての国の平等性を常に支持してきたことを強調したいとし、ミクロネシアが自らの事情に基づき開発の方途を選ぶことを終始尊重してきたとも続けた。

【私の論評】南太平洋波高し!米加改めて確認、日本の林外相は今月島嶼国を訪問(゚д゚)!

中国の南太平洋での最近の動きについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中対立の最前線たる南太平洋 日米豪仏の連携を―【私の論評】米中対立の最前線は、すでに台湾から南太平洋に移った(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を以下に引用します。

その(中国の台湾侵攻には大きな犠牲が伴う)ため中国としては、軍事的侵攻は避け、台湾が持つ他国との国交をどんどん消していくことで、台湾に外交をできなくさせる狙いがあるのでしょう。

そうすることによって、台湾を国際社会から孤立させ、あわよくば、台湾を飲み込んでしまうとする意図があると考えられます。中国はそれぞれの国(南太平洋の島嶼国)に対し、中国と台湾の二重承認を許していません。まさに白か黒かのオセロゲームのようです。台湾を国際的に孤立させるため、中国は膨大な支援を通じて、台湾と断交し、自分たちと国交を結ぶように迫っているのです。

現在、台湾と外交関係を維持する国は世界でたった14か国です。うち4か国が太平洋の小さな島国です。最近ではソロモン諸島、それにキリバスが台湾から中国へスイッチしました。中国が国交を結んだ国々では中国主導でインフラ整備を進めています。

それは、対象国のためであるとともに、中国自身が共同利用しようという狙いもあるとみられます。台湾問題に行き詰まった中国は、今後も南太平洋でさまざまな活動を行い、活路を見出すつもりでしょう。このままの中国有利な情勢が続けば、断交ドミノ現象はいっそう勢いを増す恐れがあります。米豪日は、今後のマーシャル諸島、ツバル、パラオ、ナウルへ政治的なテコ入れを強化していくでしょう。

その意味では、米中対立の最前線は、台湾そのものではなく、すでに南太平洋に移っていると認識を改めるべきです。そうして、南太平洋でも軍事力の衝突というよりは、経済支援や、外交的な駆け引きが主であり、米国とその同盟国と、中国との間の戦いということになるでしょう。特に同盟国がほとんどない中国にとっては、南太平洋の島嶼国を味方につけることは重要です。国連の会議などでは、どのような小さな国でも、一票は一票です。
もちろん、中国は台湾統一を諦めたわけではありません。しかし、昨年暮れ米国が中国による台湾侵攻をシミレートした結果を公表しましたが、それはできないという結果が出ています。

さらに、中国は日米も攻撃して、日米が甚大な被害を被る可能性もありますが、それでも台湾侵攻はできないという結果になっています。

その事自体は、中国も認識しているでしょう。それでも無理をして台湾を武力侵攻すれば、中国海軍が崩壊する可能性もあります。だからこそ、中国は当面、南太平洋の島々に対して外交攻勢を強め、台湾の力を弱め、さらに軍事的要衝でもあるこの地域を中国の覇権が及ぶ地域にすることが予想されます。

この動きに対して、日本を含めた西側諸国も対応力を強めつつあります。AUKUS(オーカス)は、2021年9月にオーストラリア(Australia)、英国(United Kingdom)、米国(United States)の3カ国によって発足合意に至った軍事・安全保障上の同盟の枠組みです。太平洋を中心とする海域の軍事的主導権を握る対中国戦略の枠組みともされます。

AUKUSの枠組みには加わっていない日本も、中国の脅威を感じている点で米国やオーストラリアと立場を同じくします。22年5月23日に東京で行われた日米首脳会談では「国家の防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」という共同声明が発表されるなど、日米間の軍事面での関係は今後さらに強化されていくとみらます。

南太平洋における日米豪等の連携は既にとれているところがありますが、米国は、AUKUS加盟国ではないカナダに対してもそれを再確認しています。

米国とカナダは10日、インド太平洋地域の安全保障や経済などに関する初の対話を開き、南太平洋の島嶼(とうしょ)国や東南アジア諸国への関与を強化する方針で一致しました。米国家安全保障会議(NSC)が11日発表しました。カナダは昨年、中国を「秩序を乱す大国」と位置付けたインド太平洋戦略を策定しており、中国と覇権を争う米国と足並みをそろえました。

悪手するバイデン米大統領(左)とトルドー加大統領

南太平洋というと、かつてはこの海域の島嶼国を巡って日米が熾烈な戦いを繰り広げました。それを題材とした「南太平洋波高し」という映画が今月ケープルテレビなどで放映されたそうですが、今日すぐに南太平洋で戦争が起こるなどとは思えませんが、中国の外交攻勢等や、日米加豪などのこれに対抗と、再びこの地域は波が高い状態になりつつあるといえます。

米カナダ両政府は、インド太平洋地域や南シナ海の安定を確保するため、東南アジア諸国連合(ASEAN)や地域協力機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」、太平洋の島嶼国を支援する枠組み「ブルーパシフィックにおけるパートナー」との協力や連携を強めることを確認しました。

対話は米国とカナダが地域への関与を深めることを目的に昨年10月の両国外相会談で開催を決定。初対話には米国のキャンベル・インド太平洋調整官とカナダのトーマス首相補佐官が出席しました。

日本もこの動きに呼応しています。日本政府は3月下旬に林芳正外相をソロモン諸島とキリバス、クック諸島に派遣する方向で調整を始めたと、2023年3月12日日曜、読売新聞が複数の政府関係者からの情報を引用し報じました。

日程は3月18日~22日となる見込みで、昨年、中国がソロモン諸島と安全保障協定を締結し、中国が南太平洋地域での影響力を拡大しようとしていると、米国やオーストリアから懸念が示されていることを受けての歴訪となります。

林外相は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け3つの島国との協力を確認する意向で、安全保障面での協力についても提案することを検討していると報じられています。

映画「南太平洋波高し」のポスター 高倉健(左) 鶴田浩二(右)

南太平洋では、島嶼国を巡って日米が熾烈な戦いを繰り広げた地域でもあります。今月は、これを題材とした「南太平洋波高し」という映画が、東映チャンネルで放映されていました。この地域、かつてのようにすぐに戦争になるという事は考えられませんが、中国の外交攻勢等とそれに対抗する日米豪加等が、火花を散らし、また波が高くなりそうです。

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