2016年2月12日金曜日

TPP合意にかけた或る外交官の死―【私の論評】日本のエリートの本質である、現代にも存在する武士道精神!



早逝された、外務省前経済連携課長松田誠氏

2月4日、ニュージーランドで署名されたTPP=環太平洋パートナーシップ協定。日本が参加してから2年余りに及んだ交渉には、外務省、経済産業省、農林水産省など霞が関から多くの官僚たちが交渉官として携わりました。
12か国の国益が激突し、時に夜を徹して続いた厳しい協議。そうしたなか、内外の交渉官から信頼を集めながら49歳で急逝した外交官がいました。『彼なくしてTPPは実現しなかった』と首席交渉官が語るその人はどのような官僚だったのか、経済部の伊賀亮人記者が報告します。

首席交渉官が合意を報告した相手は


「難しく長い交渉でしたがようやく合意できました。感謝申し上げます」

去年10月、日本のTPP交渉団の事務方トップ、鶴岡公二首席交渉官が合意の直後、現地アメリカから真っ先に報告した相手がいました。

TPPの関税分野の交渉官で、合意の半年前、49歳で急逝した外務省の前経済連携課長、松田誠さんの妻・智子さんです。

「松田さんなくしてTPPは実現しなかった。できるかぎりの誠意を示したかった」

鶴岡氏は、亡くなった松田前課長が最期に携わった交渉の成果を本人に伝える気持ちで報告をしたかったと振り返ります。

交渉がいよいよ大詰めを迎えた局面での松田さんの突然の訃報は、霞が関に大きな衝撃を与えました。

鶴岡氏が真っ先に報告したかった松田さんとはどんな官僚なのか。

同僚たちに話を聞きたいと持ちかけると、ふだんはマスコミ対応に慎重な人まで「彼のことなら」と口を開き、「『こういう官僚がいた』ということを知らせてほしい」と多くの同僚が心を許して語り始めました。


異色のキャリアと数々の功績

松田さんの経歴は異色です。京都大学工学部で原子核工学を学んだあと、経済学部に転籍し外務省に入りました。英国留学をへて中東地域や安全保障政策、国際法を担当する部署などを歴任。優れた分析力と学生時代、陸上部のキャプテンを務めたリーダーシップで、次々と業績を上げました。

2002年、当時の小泉総理大臣が初めて北朝鮮を訪れキム・ジョンイル(金正日)総書記と首脳会談を行なった際には、担当課で交渉にあたりました。また、ワシントンの日本大使館勤務では、2004年のアメリカ大統領選挙の分析などを担当。共和党・ブッシュ大統領と民主党・ケリー候補の激しい選挙戦をち密で科学的に分析した報告は「理想の情勢分析」と今でも外務省内で語り草になっています。

責任感の強さ

同僚たちは能力の高さだけではなく、外交官としての使命感や責任感の強さを指摘します。

ワシントン勤務のあと松田さんは人事課に配属されました。人事課は、国益を代表する世界各地の大使館に誰を送り込むか、重要な国際交渉の担当に誰をつけるか検討する重要部署です。しかし、危険な紛争地域に同僚を送るつらい仕事でもあります。

人事課のあと、松田さんはみずからアフガニスタン大使館への赴任を志願しました。当時、2010年ごろ、アフガニスタンでは自爆テロなどが後を絶たない不安定な情勢が続き、志願の配属に省内では驚きが広がったといいます。

その理由を多く語らなかったそうですが、「人事課にいた自分が行くからこそ意味がある」と話していたそうです。

親しい同僚は「危険な任地を受け入れた人たちに感謝していたからこそみずからも赴く必要があるという考えだったのではないか」と語ります。

緊張した生活が続くアフガニスタンでは、2012年に日本の呼びかけで開かれたアフガニスタンの復興と開発を支援する会議を担当。参加した約80の国と国際機関の調整役を担い、総額160億ドル規模の支援策を取りまとめ、ここでも大きな功績を残しました。

交渉能力の高さと信頼を集めた誠実さ

その松田さんがTPP交渉の責任者の1人に就いたのは2014年8月。日本が交渉に参加して1年余りがたった頃でした。

その頃、取材で向き合った私自身、「TPPは日本にとってどのような意味、価値があると思うか」と問いかけられたことを思い出します。物事を本質から理解して臨もうとする松田さん特有の問いかけでした。

松田さんは、先に交渉を担当していた同僚や部下が驚くほどのスピードで交渉の経緯や内容、課題を把握していったそうです。

まず取り組んだのが世界の貿易に関するルールづくりの基礎となるWTO(=世界貿易機関)協定を読むことでした。読むといっても1000ページにも及ぶ大部。通常は自分が担当する部分だけ読むという外交官が多いそうです。しかし、松田さんは交渉を統括する立場としてすべて読み込んだだけでなく、わずか1か月ほどの間に専門の担当官よりも内容に精通していたといいます。


また、松田さんの誠実な姿勢が難しい交渉を前進させたと多くの同僚が指摘します。TPP交渉に参加する東南アジアや南米の新興国は保護主義的な制度を多く残しており、先進国との交渉は難航する場面がよく見られました。松田さんは、交渉相手国の交渉官に対して、一方的に要求を押し付けるのではなく、相手の事情を理解したうえで一緒になって解決しようという姿勢を貫き、大きな信頼を獲得していったそうです。

通商交渉のなかでも最も難しい分野の一つとされる関税分野の交渉は、ちょうど松田さんが担当になった頃、厳しさを増していました。

鶴岡首席交渉官は「松田さんは最終的にできあがった合意の基本線をつくった責任者の1人だ」と証言します。

あまりに突然の死

松田さんは、その能力の高さだけではなく、部下からも尊敬されていました。「憧れの存在でした」と語る後輩もいます。

上下の関係なく他人の話をよく聞き、部下を信頼する人だったと周囲が口をそろえます。趣味が料理という意外な一面もあって後輩たちを連れてよく食事に出かけ、家族を大切にするよう日頃から説く家族思いの人でした。

健康にも気を遣い、ランニングをしたり無駄な残業はしないという人だったため、亡くなったことを今でも信じられないと話を聞いた全員が言います。

ただ、私自身、交渉会合の度に連日深夜、時には夜を徹しての交渉や国内との調整が行なわれている様子を見てきました。特に亡くなる直前の3月中旬に行なわれた首席交渉官会合は、毎日数時間の睡眠もとれない状況だったということで、知らず知らずのうちに健康が蝕まれていたのではないかと思います。

松田さんは桜が咲く去年3月下旬、自宅で倒れ、虚血性心不全で亡くなりました。49年の人生を駆け抜けて行ったのです。

松田さんの死は、TPP参加国の交渉官らにも衝撃だったそうで、交渉会合では直接の交渉相手だけでなく、その上司である首席交渉官からも弔意が示されたということです。

TPPの先を見すえて

その松田さんが、最後に取り組んでいたのが、TPP交渉後の日本の通商戦略をどう打ち立てるかということでした。

当時、交渉が最終局面を迎えていたとは言え、まだ合意できるか分からない状態で、すでにその先を見すえていたというのです。

交渉に参加していない国に今後どのように加盟してもらい、TPPのルールを国際的に共通化し、日本にメリットをもたらすのか考えていたというのです。

取材のたび、私は「『国益』のために頑張ってください」と声をかけられました。何が日本のためになるかを常に思い巡らしていたからこそ発せられたことばだったと思います。

TPPは日本企業の海外進出にメリットがある一方で、農業を初めとした国内産業への影響が懸念されているのは事実ですが、志半ばにして亡くなった松田さんが思い描いたTPP後の世界が「国益」にかなうことを願ってやみません。



最近ニュースを見ていると、何やらうんざりすることばかりで、我が国日本や日本人はどうなってしまったのかなどと、鬱々とした気持ちで過ごしていました。

そんな中で、上の記事を読んでいて、亡くなったことはとても残念なのですが、そうではない人も存在するということを思い起こしました。

しかしながら、本日の大きなニュースというと、例の"ゲス不倫"宮崎氏の不倫騒動です。先には、清原の覚せい剤使用のニュースがありました。何やら、最近はこの種の報道が多かったように思います。

このような問題だけではなく、国内ではマスコミの報道ぶりがまた一段と劣悪になっていることをうかがわせるものが多いです。

マスコミは、世界経済の変動による最近の株安・円高をまるでアベノミクスの失敗のように囃し立て、あろうことか、マイナス金利まで、その要因の一つであるかのごとく報道していて、この低劣ぶりは本当にどうしてしまったのかと忸怩たる思いがしました。

それに関しては、長谷川幸洋氏が、最近の株安・円高は断じてアベノミクスの失敗によるものになく、中国の経済低迷なども含む世界経済の変化であることを主張しておられます。以下に、その記事のリンクを掲載します。
円高・株安は断じて「アベノミクスの限界」ではない!~中国の大不況が原因なのに、政権批判に転じるマスコミは破綻している

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、現在の株安・円高は国際情勢の変化によるものであって、どの方向から検討してみても、絶対にアベノミクスの限界などではありません。

ましてや、マスナス金利が関連しているなどとは全くの間違いです。日本の日銀が何か国内で有効な政策を打ったからといって、世界の経済を変えることはできません。日本国内ですら、金融緩和やマイナス金利政策を行ったからといって、すぐに国内の実体経済がすぐさま変わるということはありません。

にもかかわらず、ほとんどの新聞が、あろうことか、産経や夕刊フジまで、マイナス金利が悪影響を及ぼしたかのうよな報道ぶりです。

長谷川氏の主張を簡単にまとめると、円高・株安が進んだ原因は、一言で言えば、世界経済が先行き不透明で「安全資産」とみなされた円に投資マネーが集中したからということです。中国のバブル崩壊やそれを一因とした原油安、欧州の金融不安、米国の利上げなどが重なって世界経済の不透明感が強まったのです。

そんな中で世界の投資マネーが日本円と日本国債に逃げ込んだのです。だから円高、長期金利の低下になって、かつ円高が株安を招いたという構図です。日銀のマイナス金利政策は導入直後のマーケットがそうだったように本来、円安・株高につながるのですが、政策効果を帳消しにするほどグローバルな投資マネーの勢いが強かったのです。

こんなことは、少し考えれば、当たり前のどまんなかで、誰でも容易に理解できるはずでです。

そうして、このあたりをきちんと理解して書いていたのは読売新聞(11日付)やフィナンシャル・タイムズ(10日付)の社説くらいだそうです。

ほんとうに驚くほどの、マスコミの破綻ぶりです。長谷川氏は、このマスコミの破綻ぶりで触発された民主党の細野豪志政調会長が10日の衆院予算委員会で「マイナス金利によって円高・株安になった」と批判したことを糾弾しています。

細野氏も、本当に破綻しています。細野氏は、新聞の下請けをやっているとしか思えません。それどころか、最近の民主党など、まるで週刊文春の下請けをしてるようなありさまです。

それにあの、"ゲス不倫"の宮崎などの話を聴いていると、本当に今のマスコミや政治家など一体どうしてしまったのだと本当に忸怩たる思いがしました。

記者会見で議員辞職する意向を表明し、頭を下げる自民党の宮崎謙介衆院議員
宮崎というと、最近では「不倫」問題ばかりが注目されていますが、その前のいわゆる「育休」に関する奴の発言は、まるでなかったかのような状況になっています。

私自身は、企業や役所などにおいて、男性も「育休」がまともにとれるようにすること自体に関しては、全く賛成です。

しかし、国会議員が率先して取得ということになると、疑問符がつきます。企業でも、「育休」の取得とか、休みの取得などは従業員当然の権利であって、これを妨げるような要件はいずれ取り除いていくべきものと思います。

しかし、同じ企業でも、取締役などの役員は別物だと思います。従業員の場合、何時から何時までと労働することを義務付けられています。しかし、役員は違います。朝定時に出て、夜定時に帰ったり、残業したら残業届けを、出して手当をもらうことなど義務付けられていません。

また、休みだって、定休があるわけでもないし、休みたければ自由に休むこともできます。無論、取締役会などの重要な会議には出席しなければなりませんが、一般の従業員のように就業規則の縛りがあるわけではありません。

役員の縛りは、取締役規程などに定められたもののみでそれには何時から何時まで働くとか、いつ休みをとるとか、細かいことなど定められていません。あくまで、大まかな方向性のみが記されているだけです。

そうして、責任は一般従業員よりははるかに重いです。さらに、雇用保険などもありません。労働基準法なども適用されません。無論、育休など適用除外というかそのような規則はありません。育児のため休みたいというのなら、自分の裁量で経営に差し支えない範囲で休むということになります。

国会議員といえば、公人です。企業の役員ですら、このようなことが当たり前なのですから、国民から選ばれた公人である政治家は、さらに責任が重いわけですから、「育休」などの制度を設ける必要などないはずです。休みたければ、わざわざ「育休」などといわず、自分の裁量で取ればよいだけの話です。

国会議員であれば、国会にだって、毎回必ず何時から何時まで、出席しなければならないという縛りもありません。確かに、選挙運動も忙しくて大変ではあると思います。しかし、その選挙運動だって、何時から何時までと、時間を拘束されるものではありません。

休みたければ、自分の裁量で休めば良いだけです。それで、選挙に落ちてしまえば、どうしようもないですが、そこは自分の判断で、活動をするときは活動して、休みにするときは休みにするということで良いはずです。

では、企業の役員や、政治家など、企業の一般従業とは異なり、なぜ時間を拘束されないかといえば、それは責任の重大さの違いです。役員は、労働者ではありません。一生懸命労働者にいり混じって、労働しても何も評価されません。評価されるべきは、経営に関することです。

政治家も同じことです。官僚などといり混じって、行政事務をしても何も評価されません。評価されるのは、国政に関することです。

責任が重いからこそ、企業の従業員のように勤務時間を拘束されたりすることはないのです。にもかかわらず、「育休」などとは何事かといいたいです。

マスコミや民主党の座右の銘?


この国会議員の「育休」に関しては、なぜか多くの人が、宮崎の主張におもねる人が多かったように思います。特にテレビなどの報道はそのようなものが多かったです。

これにあからさまに反対意見を述べたのは、橋下徹氏くらいなものだったと思います。「自営業者なら、休みたくても休めない、そのことを考えれば、問題外」と吐き捨てるように語っていました。実は、私もこの意見に賛成です。私自身も、中小企業ながら、比較的若い頃から役員だったので、なりたての頃は1年以上もほぼ休みなしで仕事をしていた時期もあります。

しかし、自営業者に限らず、企業の役員ともなれば、多かれ少なかれ従業員を雇用しなければならず、さらに多くの取引先の助けをもって、事業を展開しているわけですから、責任の度合いが全く違います。

国会議員だってそうです。国政が悪ければ、国は大変なことになります。それに、企業の役員などは、個々の企業の取締役会での選出ということになりますが、国会議員は、多くの有権者が選ぶのです。その責任は、本来は企業の取締役などの責任などとは比較の対象ともならないほどの、重いものであると思います。

そもそも、役員や国会議員は本来自分でなりたいと思ってなれるものではありません。役員は、取締役会での選出、国会議員は選挙での選出ということになります。

そういう意味では、役員や、国会議員はエリートということができると思います。エリートというと、倉山満氏が一度「エリートの定義」をツイートしていたのを思い出します。

そのツイートを以下に掲載します。
確かに、国会議員は東大を出ていないとなれないとか、偏差値の高い大学に入っていないとなれないなどということはありません。企業の役員だってそうです。一部上場の大企業であれば、東大卒などはいて捨てるほどいる中から選定されます。そんな中では、東大出身とか、偏差値が高かったなどということは何の意味も持ちません。

切腹の作法
あくまで、もっとも注目されるのは、責任の重大さに耐えられるかどうかの観点になると思います。ただし、国会議員の選挙や、企業の役員の選定にあたって、実際にこれが重視されているかは別問題です。最近の宮崎のような議員をみていたり、東芝の旧社長らなどをみていると、そうとは限らないことが良く理解できます。

しかし、本当のエリートの定義は「当人の命よりも責任が重い人」ということです。

責任のない人は、自分の命が大事なのだと思います。自分の命を太く未来につなげていくことが一大事なのだと思います。

"ゲス不倫"の宮崎は、そのような本能が人一倍強いのだと思います。まあ、そうはいいながら、昔から英雄色を好むともいわれで、女性と不適切な関係を持つエリートもいましたが、それでもエリートととしての矜持はもっていたし、責任は全うしたものと思います。だからこそ、許容されたのです。

そうして、大勢の命を未来につなげるために、本来の意味のエリートが命がけで、守るべきことを守り変えるべきことを変えているからこそ、国や産業が発展していくのだと思います。

宮崎に関しては、非常に悪いタイミングで不倫をして、さらに「育休」を取ることを宣言したことも手伝って、あのような結果を招いたのだと思います。

そもそも、本来エリートは命がけでなるものなのです。偏差値の高い大学に自分の子どもを入れようとしている親の大部分は、そんなことは考えてはいないでしょう。

一昔前ならば、武士の家に生まれれば、自分がどう考えようとも、そういうエリートになるものとして育てられたわけです。いざというときに、責任を取るために、切腹の作法も学ばせたのです。

しかし、今の時代は、エリートになるならないは自分の出自に関わることで決まるのではなく、選択することができます。そのためでしょうが、そのような自覚に乏しいエリートが増えたきたように思います。そのような自覚がない人は本らいエリートになるべきではないです。今の日本では、エリートにならないという道は本当に簡単に選択できます。

日本の武士の写真
しかし、今の日本は、様々なことが乱れているようではありますが、ブログ冒頭の記事の松田誠氏のような方もいらっしやるのです。松田氏は、まさに「自分の命よりも責任が重い」と自覚されていたのではないでしょうか。

無論亡くなったことは非常に残念なことなのですが、それだけとてつもなく大変な交渉だったのでしょう。本来ならば、この交渉の経緯を松田氏自身の言葉で聴きたかったものです。そのために、この記事を書いた記者も、松田氏に接触をしていたのでしょう。

松田氏は、本来の意味でのエリート意識が高い人だったのでしょう。それが悪い結果を招いてしまったのかもしれません。本当に残念です。

しかし、今の日本、本来はエリートであるべき人がエリートらしからぬ行動をとるのが、目立ちますが、それはやはり、目立っているのだと思います。マスコミも、目立つであろうことを想定して、報道するのだと思います。

だから、一見、エリートらしからぬ人が目立ってしまうのですが、一方で松田氏のように「責任感」が人一倍強い人もいるのです。

今回、このような報道がなされたので、松田氏のことを知る機会を得たのですが、おそらく今でも各界にこのように努力されており、責任感の強い人がこの日本には大勢いらっしゃるのだと思います。無論実数は全体から比較すれば、少ないのでしょうが、そもそもエリートなど少ないのが当たり前です。だからこそ、日本は何があっても、びくともせずに存在し続けているのだと思います。

無論、官僚の中にも、政治家の中にも、企業の中にも、マスコミの中にも存在していて、人知れず努力をされているのだと思います。

そのような責任感は、やはり武士道に相通じるところがあるものと思います。このような事実を知ると、現在にも現代風に姿形は変わっても、根底の大事なところでは変わらない、武士道が息づいているのだと思います。

マスコミも"ゲス不倫"のようなことばかり報道していないで、このように「責任感の強い」人を報道して、光をあてるようにしていただきたいものと思います。それが、将来の日本の本当の意味でのエリートを育てることにつながるかもしれません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年2月11日木曜日

【主張】建国記念の日 政府自ら祝典を開催せよ―【私の論評】歴史ファンタジーを必要としない日本に日本人として生まれたこの幸せ(゚д゚)!



大きな節目となる50回目の「建国記念の日」を迎えたが、今年もまた、国として祝う式典は開かれない。残念というほかない。

日本の建国は神話的な伝説に基づいている。新しい国づくりを目指して日向国を出た神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)は瀬戸内海を東進し、難波、熊野へと至る。やがて大和を平定すると橿原(奈良県)を都と定め天下を統治することになった。

古事記や日本書紀がつづる初代神武天皇即位の物語である。

明治6年、政府は即位の日を現行暦に換算した「2月11日」を紀元節と定めたが、先の敗戦後はGHQ(連合国軍総司令部)によって廃止された。建国記念の日として復活するのは昭和42年で、祝日法には「建国をしのび、国を愛する心を養う」と明記された。

半世紀を経て、法の趣旨が十分に浸透しているかは疑問である。戦後の学校教育では、神話や建国の歴史が皇国史観や軍国主義につながるとして避けられてきた。自国の歴史を否定する自虐まみれの教育で、どうして青少年の健全な愛国心を育てられよう。

日本の建国の日を知っている日本人は2割にも満たないとの調査結果もある。神話はそっくり史実ではないにしろ、先人の国づくりへの思いや日本人としての生き方がうかがい知れる、いわば民族の貴重な遺産なのである。

自国のそのような遺産を誇りに思わない国民が国際社会から評価されようか。学校教育を含めた国の役割は極めて重大だといわざるを得ない。

昨秋、大阪で開催された交声曲「海道東征」のコンサートで、大きなホールが聴衆の感動に満たされたことを改めて想起したい。北原白秋作詩、信時潔作曲によるこの曲は、壮大な建国の歴史を格調高くうたいあげたものだ。

新保祐司・都留文科大教授は、「(聴衆は)自分という人間が、日本の建国の歴史に精神の深みで繋(つな)がっていることに覚醒して、魂の感動を覚えた」と評した(昨年12月1日付本紙「正論」)。

いま国内外で直面している幾多の困難を乗り切るためにも、日本人としての誇りを抱き続けるこれら国民の熱い思いに、政府は真剣に応えるべきではなかろうか。政府が直接関与する祝典の開催が、まず何よりも望まれる。

【私の論評】歴史ファンタジーを必要としない日本に日本人として生まれたこの幸せ(゚д゚)!

今日は、お誕生日おめでとう日本と言いたいです。 今年は紀元2676年なので、本日は日本の2675回目の誕生日ということになります。現存する国としては、世界最古の国家に生まれたことを誇りに思います。

それにしても、本日は建国記念日に関する催しものが各地で開催されていますが、その中でも護憲派の集会も多く開催されています。

その中には仰天するようなものも多くあります。たとえば、水戸市のJR水戸駅南口では、「茨城のシールズ」を標榜する市民団体がバレンタインアピールとして、チョコ付きのティッシュやビラを配りながら「戦争法廃止」の街頭宣伝を行っていました。

産経新聞の取材に応じた共同代表の女性(38)は、「北のミサイル発射は日本には危害がない。北朝鮮と中国、米国がグルになっている」などと仰天の発言を連発したそうです。

それに建国記念の日に関係することで、神武天皇不在論というものもあります。初代の天皇がいらっしゃらなければ、今生天皇である125代は有りようがないわけです。

現在天皇陛下がいらっしゃる以上、誰かが初代だったのであり、その初代を「神武天皇」とお呼びしているのです。「神武天皇はいつの時代の人物か」等という問いは議論可能ですが、神武天皇不在論はまったく馬鹿げた主張です。

そんなことより、米国のように建国のときのいきさつについて、細かなことまで記録に残っているような国でも、当のアメリカ人や、多くの日本人が信じているアメリカの建国の歴史にはかなり疑わしいことが多くあります。

それに関しては、倉山満氏の『嘘だらけの日米近現代史』をご覧いただくか、以下の書評サイト(パピレス・プラズ)を御覧ください。

嘘だらけの日米近現代史[著]倉山満 [発行]扶桑社

さて、米国よりさらに新しい、中国や韓国ですが、これらの国々は、過去と断絶しており、中国も韓国も過去の国とは全く別物であり、文化や伝統を継承してはいません。

中華人民共和国の建国は、1949年10月1日のことです。これが建国の日だとすると、大東亜戦争が終了したのは、1945年ですから、現在の中国は日本とは戦争をしたことはありません。にもかかわらず、昨年には、中国では抗日70周年記念軍事パレードを挙行しました。

これは、全くの歴史ファンタジーです。日本と戦争をしたのは、現在台湾にある中華民国です。日本と毛沢東の共産党軍とは、戦争をしたことはありません。実際、生前毛沢東は、日本軍が中華民国と戦ってくれて、我々は助かったとしています。

1949年、天安門にて中華人民共和国の建国を宣言する毛沢東
大韓民国の建国は、昭和23(1948)年8月13日で、この日、首都・ソウルで、韓国樹立の宣布式が挙行されています。日付は「8月13日」です。ところが、韓国では、未だにこの正しい日付を建国記念日とはせずに、大韓民国は、1919年なのか、1948年8月15日なのかという、歴史ファンタジーのような論争が続けられています。

これについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【コラム】大韓民国建国は1919年なのか、1948年なのか―【私の論評】大韓民国の建国は、1919年ではないしましてや1945年8月15日でもない!未だに続く歴史ファンタジー!
韓国の独立記念式典 1948年8月13日
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、韓国の建国は、1948年8月13日なのに、1948年8月15日を「光復節」として、韓国の建国の日としています。8月15日は、日本の敗戦記念日であり、この日を建国の日としたいというのでしょうが、これは完璧に歴史ファンタジーです。

そうして、歴史ファンタジーといえば、韓国でも、韓国は日本と戦って、独立を勝ち得たというような歴史ファンタシーがはびこっています。しかし、それは全くの虚偽です。韓国は、大東亜戦争中は日本が統治していました。

韓国が独立したのは、日本からではなく、終戦後日本の統治に変わってアメリカが統治をして、そのアメリカから独立したというのが史実です。

歴史の比較的新しい米国であるアメリカですら建国の逸話は疑わしいことがありますが、それよりもさらに建国の新しい中国や、韓国でもこのような歴史ファンタジーというか、はっきりいえば歴史の捏造があります。

なぜこのようなことをするかといえば、政府が国を統治する上での正当性を強調するためです。日本という国は、2000年以上の歴史がある国ですし、明治以降は、民主的な手続きを経て誕生した政府が統治をしているため、歴史ファンタジーを捏造するしなくても、その時々の政府が国民に対して統治の正当性をことさら強調する必要もありませんでした。

こういうことを考えれば、神武天皇の存在の有無など、議論することは間違いであることがはっきりすると思います。他国では、特に建国の歴史の浅い国では、歴史ファンタジーを捏造する必要がありますが、日本においては今生天皇が存在する以上、あまりにも歴史が古いからこそ故にはっきりと記録などに残ってはいないものの、初代天皇が存在したことは明白であり、その初代天皇のことを神武天皇とするということで、これは歴史ファンタジーでも何でもないです。

特に歴史の継続性ということでいえば、現存する国では、日本ほど明確な国は他にはありません。

たとえば、まだ記憶に新しい2013年に挙行された、伊勢神宮式年遷宮は、何も今に始まったことではありません。20年に一回このような遷宮が、1000年以上にわたって、繰り返されてきました。このような国など日本をおいて他には存在しません。

2013年に挙行された伊勢神宮式年遷宮
さて、このような古い歴史を持つ日本、建国されたのが、いつなのかあまりに古くて多くの人々が良くわからない国日本、それに対して、アメリカ、中国、韓国などの新興の国では、かなりのことが詳細に、歴史として残されています。しかし、古くから継続されてきた文化など存在しません。

このような伝統文化が根付いたわが国においては、国民の求心力を高めるたり、政府の統治の正当性を強調するために、わざわざ歴史ファンタジーを捏造する必要もありません。そんなことをしなくても、私達の日々の暮らしの中に深く根付いていて、意識しなくても日々その影響は私達の潜在意識の中に刻み込まれています。

米国や中国、韓国などのような歴史の新しい国々も、建国から500年もすれば、無論その時に国自体が存在していればの話ですが、あまり幼稚な歴史ファンタジーを創作しなくても、国としての統一性や、継続性を保つことができるようになるでしょう。

しかし、これだけは、他の国はいくら日本のようになろうとしても、すぐにはできないということです。私たちにとっては、長い歴史と伝統を持つ日本があまりにも当たり前になっているため、そのような認識で他国を見ると理解しがたい面があります。

他国や他国民には日本や日本人のような、このような長い歴史に培われた、バックボーンがない根無し草であるため、程度の差こそあれ、ことさらそれを強調しないと、国や国民としての求心力が損なわれるという面があるということを忘れてはならないです。

そうでなければ、他国や他国民の考えや、行動を理解できなくなります。ニッポン人の中には、諸外国の人々がことさらそれを強調するのを見て、勘違いして、外国人には立派なバックボーンがあり、日本人にはそれがないと幻惑される人もいます。

建国記念日という日は、歴史ファンタジーを必要としない日本に日本人として生まれたこの幸せを私達に思い起こさせてくれる、大切な日です。

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2016年2月10日水曜日

マイナス金利に文句言うのは 銀行の関係者だけだ―【私の論評】ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまう浅ましさ(゚д゚)!

マイナス金利に文句言うのは 銀行の関係者だけだ

日銀は(2016年)1月29日、マイナス金利を導入した。その後、株式市場、為替市場は乱高下した。それでマイナス金利悪者論が闊歩している。

それらは世界経済の動きが原因であり、残念ながら日本の金融政策が世界を動かしているわけでない。

にもかかわらず、マイナス金利には否定的な論評が多い。

日銀決定の影響は

■日銀当座預金に金利で「濡れ手に粟」

筆者は、この状況を揶揄して、2月3日に次のようなツイートをしたところ、これまでに1400を超えるリツイートがあった。この種の堅い話題では珍しい。
多少言葉が不正確で乱暴なのはご容赦願いたいが、銀行を通してみると、マイナス金利の意味がよくわかる。テレビなどで、エコノミストらが批判するのは銀行の子会社にいて、親会社の銀行がマイナス金利を嫌っているからだ。

一般人が銀行に当座預金しても金利はつかない。ところが、銀行は日銀に当座預金すると、0.1%の金利が付いていた。銀行は一般人から当座預金ではゼロ金利であったが、それを仕入れとして、日銀に当座預金すると、0.1%の金利が付くので、濡れ手に粟だった。

この制度が導入されたのが、前の白川・日銀総裁時代の2008年である。

今回、マイナス金利を決めた日銀政策決定会合は象徴的だった。

賛成は、黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員。反対は、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員。白井委員は学者出身であるが、石田委員、佐藤委員、木内委員は民間金融機関出身である。賛成には民間金融機関出身者はいない。賛成委員は安倍政権下で黒田体制になってからの任命、反対委員は民主党政権下で白川体制での任命である。

■「個人の預金金利がマイナスになる可能性はない」

白川前総裁は、日本経済より銀行を優遇する政策を行ったが、この当座預金への0.1%付利はその典型だ。

銀行の日銀当座預金残高は250兆円。その大半に0.1%の金利が付いているので、これだけで銀行は年間2200億円の利益を得ている。そもそも、当座預金に金利をつけることがおかしい。

この付利は、次の金融緩和で見直される可能性がある。今回の騒動は、この2200億円を守りたい銀行が必死になっていると見たほうがいい。

あえていえば、一般人からゼロコストの預金を受け入れ、それを貸出にまわさず、日銀当座預金している銀行は社会的にはいらない。貸出先がないと仕事をしない銀行もいらない。金融再編で消えても一般人は困らない。

なお、日銀のマイナス金利政策の導入を受けても、個人の預金金利がマイナスになる可能性はない。マイナス金利になるなら、預金せずに、家の金庫に置いておいた方がいい。もしみんなが預金しなくなると、銀行は仕入れがなくなるわけだから経営できなくなる。だから、銀行は仕入れをするためにマイナス金利にしないはずだ。

++ 高橋洋一

【私の論評】ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまう浅ましさ(゚д゚)!

上の、記事さすがに高橋洋一氏の書いたものですから、マイナス金利について余すところなく、掲載されています。

それにしても、このマイナス金利悪者論者に関しては、高橋洋一氏が主張するように、銀行関連の人たちだけではないようです。マスコミもそのような主張をするものが多いです。

その典型的な例をあげておきます。これは、産経新聞の記事ですが、産経に限らず他紙でも似たような論調が多いです。
欧州発金融不安? ドイツ銀の株価が急落 マイナス金利で収益圧迫 銀行株一斉売り
ドイツ銀行
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にはこの記事の出だし部分のみを掲載しておきます。
 欧州の金融最大手のひとつ、ドイツ銀行の株価が急落している。債券の利払い能力に不安が高まったためだ。マイナス金利政策の導入など欧州中央銀行(ECB)が超低金利状態を保ち、利ざやが縮小していることも収益を圧迫。銀行株の売りは欧州全体に広がり、金融システム全体の健全性に対する懸念がくすぶる。 
 ドイツ銀の株価は8日に9・5%急落し、9日も4・3%の大幅安で、年初からの下落率は40%を超えた。2015年12月期に68億ユーロ(約8800億円)の純損失を計上し、4月末に予定されている3億5千万ユーロの利払いができるか疑問視された。
この記事、明らかな錯誤があります。それは、「マイナス金利政策の導入など欧州中央銀行(ECB)が超低金利状態を保ち、(ドイツ銀行の)利ざやが縮小していることも収益を圧迫」という部分です。

これを読むと、多くの読者は、日銀がマイナス金利政策の導入をすると、日本の銀行の利ざやが縮小すると考えると思います。

ECBは、そもそも銀行の銀行です。銀行の銀行であるECBがマイナス金利を導入すれば、ドイツ銀行などのような市中銀行は、ECBに金を預けておけば、預かり料をはらわなれればならないことになるので、ECBにあまりお金を預けなくなります。

ルーチンで決まったような、決済などの必要なお金のみ預け、その他は引き出し自分のところに保管するか、他に貸出をすることになります。それだけのことです。これで、それまでよりも、利ざやが減ることになるという考えそのものが不思議です。

いいですか、お金を置く場所を変えるだけです。ドイツ銀行の利ざやがそれによって減るには減りますが、激減するわけではありません。これをもって、ドイツ銀行の利ざやが減って、業績悪化につながったというのは、あまりにも乱暴な極論です。EUには多くの銀行が、あります。ドイツ銀行が、マイナス金利で不振になったというなら、EUの銀行がことごとく、不振になっているはずてです。ドイツ銀行の不振はもっと他の原因にあるとみるべきです。

そもそも、ドイツ銀行は、ECBと取引をして利ざやを稼ぐのではなく、あくまで市中銀行として、企業などに融資してお金を稼ぐ機関です。

確かに、ドイツ銀行などの市中銀行が、決済などに預けるお金にはマイナス金利がかかることになりますが、微々たるものでしょう。

ECBとしては、マイナス金利にすることにより、市中銀行がなるべくお金をECBに預ける料を減らし、市場に出回るようにしたということです。ただし、これは、以前このブログにも掲載したように、あまり効果は出ていないことを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!
さて、このマイナス金利政策は、ECBではあまり効果が出ていないのですが、日本で実行すれば、それなりの効果はあります。この記事から、その部分を述べた部分を以下にコピペします。
ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。 
その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。
ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。
また、ドイツ銀行の不振が、リーマン級のショックを世界経済に与えるとの論調もありますが、それもかなり疑問符がつきます。

このあたりについては、私が説明するよりも、その道のブロの人の記事をご覧になったほうが良いと思います。以下に、矢口新氏の記事のリンクを掲載します。
世界恐慌の噂を検証~ドイツ銀行が破綻するとは思えない10の理由=矢口新
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、矢口新氏はドイツ銀行が破綻するとは思えない理由を10あげています。その一つ一つが十分納得のいくものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、矢口氏は一番最後の理由で以下のように述べています。
リーマン・ブラザーズは高レバレッジ体質でした。その後、ボルカールールなどで銀行のレバレッジの縮小が続いています。前述の「大き過ぎて潰せない」銀行への新規制でも、換金可能な資金の確保が要求されるということです。
レバレッジ(英語:leverage, gearing)とは、経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること、または、その高まる倍率をいいます。特に、リーマン・ブラザーズは異常なほどの高レバレッジ体質だったので、この一社の破綻が、他社にとてつもない影響を及ぼしました。

それから、私自身は、あのリーマンショツクに関しては、一家言があります。それは、日本におけるリーマンショツクは、本当の意味でのリーマンショツクではなく、日銀ショツクであるというものです。

実際、あのリーマショック後に、リーマン・ショックの悪影響を直接被った、米英、EU、中国等では、経済の不振を払拭するために、大規模な金融緩和を実行しました。そうして、比較的短期間のうちにリーマン・ショックから回復しました。

ところが当初はリーマン・ショックの影響は、軽微と見られていた日本においては、他国が金融緩和をしても、日銀はしなかったため、当時のデフレをさらに深化させ、円高も亢進してしまい、まさにひとり負けの状況でした。


だから、私は、日本におけるリーマン・ショックは、日銀ショックと呼称しています。実際、これは正しい見方です。あのとき、日銀が大規模な金融緩和に転換していれば、日本はあそこまで、一人負け状態になるはずはありませんでした。もともと、当時の金融業界は、あまり余裕がなく、サブプライムローンに手を出しているところなどほとんどありませんでした。

以上のようなことを考えれば、マイナス金利悪者論は完璧に間違いであることがわかると思います。最近の株価や、為替の乱高下は、マイナス金利とは全く関係なく、世界経済の動きが原因であり、マイナス金利をやめると、株価や為替が安定するなどということは全くありえません。

それにしても、あろうことか、ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまうマイナス金利悪者論者の浅ましさは酷いものですし、それを見抜けず、マイナス金利悪者論者の言説に惑わされて、悪者論者の片棒をかつぐマスコミもいかがなものかと、思ってしまいます。

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2016年2月9日火曜日

ホリエモンが56億円“宇宙詐欺”にあっていた!―【私の論評】投資も、技術も失敗と激しいしばき合いがあるから成功する(゚д゚)!


堀江貴文氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
“ホリエモン”こと堀江貴文氏(43)が約56億円の現金をだまし取られたとして、米テキサス州で訴訟を起こしていたことが分かった。

週刊文春が入手した裁判資料によると、「本件は、民間の宇宙船マーケットで起きた詐欺」として、堀江氏がヒューストンの弁護士であるアート・ドゥラ氏らを訴えている。

堀江氏はロシア製の宇宙船「アルマズ」を利用した宇宙プログラムに投資していたが、後に宇宙船が展示以外に使えない“ポンコツ”であることが判明。投資金などの返還を求めている。一方、ドゥラ氏側は裁判で「何ら不正行為は行っていない」と全面否認している。

2005年に「アルマズ」に乗り込む姿を披露した堀江貴文氏
 堀江氏に取材を申し込むと、取材には応じず、自らのブログで事実関係を認めた。そのうえで「どうせ文春は面白おかしく『ホリエモン詐欺に引っかかる(笑)』と書いて(中略)茶化すつもりだろう」としている。

“情報強者”の立場から社会的発言を続けてきた堀江氏だが、これほど大きな舞台装置で騙されることは「想定外」だったのだろうか。


【私の論評】投資も、技術も失敗と激しいしばき合いがあるから成功する(゚д゚)!

堀江氏は、週間「文春」のやり方に余程腹をすえかねたのでしょうか。以下のようなツイートをしています。


上の記事で、ブログで事実関係を認めたとありますが、そのブログ"HORIEMON.COM"の内容を以下に掲載します。
週刊文春のクソ記者から突然電話がきた
朝ランニングしていたら、突然知らない番号からスマホに着信があった。余り使わないスマホから自動転送にしていたので番号が出ないけど、普段電話に出ない私にわざわざかけてくるというのはよっぽどの重要な電話だと思いでたら、なんとどこで調べたのか週刊文春のクソ記者からの突然の取材電話だ。失礼な奴だ。メールで事務所あてに問い合わせるのが当たり前だろ。なので速攻で切ったら何度もかけてきやがるので着信拒否にした。そしたら事務所あてのメールアドレスに取材内容が書いてあった。 
どこで調べたのか判らないが、私が宇宙開発で詐欺にあった的な内容が書かれている。確かにエクスカリバーアルマズというロシアの宇宙船をリノベーションしてロケットで飛ばす会社に投資をしていたのは事実だし、日本円で50億円以上投資していたのも事実。んで、そこの社長だったArt Dulaに対して賠償請求をしているのも事実だ。で、どうせ文春は面白おかしく「ホリエモン詐欺に引っかかる(笑)」と書いて、まるで私が別で投資をして順調に育ってきているインタステラテクノロジーズのロケット開発まで茶化すつもりだろう。 
ほんとこいつらの頑張っている人の足を引っ張ったり、茶化したりする最低の下劣さには辟易する。まあこんな最低の雑誌をいかしているのは、それを読んでいる下劣な読者のせいなんだけどな。エクスカリバーアルマズに関しては当初ロシアに契約交渉に行ったり計画を精査したりして順調に進んでいると確信していた。現在は訴訟中の為これ以上の事は言えないが、もし一部でも残存している資金が返ってくるならばインタステラテクノロジーズの宇宙開発の方に再投資ができるならば、それがベストだと思える。 
なんというか、こんなネタで週刊文春の部数増に貢献すると思うと虫酸が走るので先に記事にしてやった。もう文春が新事実を書くことはないと思うので文春買う意味ないぞ。 
(エクスカリバーアルマズに関して詳細は こちらの記事 へ。)
さて、以下に堀江氏の宇宙開発に関連する動画を掲載します。

動画の説明を簡単にしておきます。これは、視聴者からホリエモンに質問があり、それに応えるというシリーズ動画です。

この回での質問は、「ロケットの人材を増やす為には、もっと女性の技術­者が増えるべきだと思います。そこで『リケジョ』ならぬ『ロケジョ』みたいな感じで宇­宙に興味のある『宇宙女子』をどんどん支援していく事はできませんか?」というものと、「中高生の­うちからロケットに興味を持たせる事も大切です。ロケット女子が活躍する漫画やアニメ­、映画がヒットすれば全国の学校にロケット部ができる筈です。最近だと『けいおん!』­や『そふてにっ』等、女学生+部活ものはヒットしやすいです。」というものです。

ホリエモ­ンの回答はいかに!? ゲストは準レギュラーのアイスマン福留さんです!



下の動画は、堀江貴文氏の宇宙に対する思い入れを話しているTEDの動画です。


堀江貴文氏は本気で、宇宙に取り組もうとしています。ブログ冒頭の記事では、『“情報強者”の立場から社会的発言を続けてきた堀江氏だが、これほど大きな舞台装置で騙されることは「想定外」だったのだろうか。』と締めくくっています。

しかし、投資でも、技術開発でも、いつも成功できるとは限りません。TEDの動画でも、堀江氏は、失敗したところの動画を聴衆に見せています。その失敗を、聴衆もおおらかに笑ってみています。

かといって、失敗ばかりでもどうにもなりませんが、最後に成功すれば、それで良いわけです。そうして投資し続けたり、研究開発を長年にわたって、続けるというのなら、それは野球でいうところの打率のように見て、評価すべきなのです。

野球のバッターだって、いつも良い成績を収められるとは限りません。長い間、続けていれば、うまくいかないときだってあります。しかし、それでも諦めずに続けていれば、また良い時期もあり、そうして長い間にわたって、高い打率を上げることができれば、そのバッターは能力のあるバッターということになります。

そうして、民間の投資や、技術開発は、多くの人が投資をしたり、技術開発をしてしばきあうことによって、成長していくのです。

あの、iPhoneやiPadとほぼ同じようなプロトタイプを、ノキアがアップルに先駆けて開発していたことを知っている人は少ないかもしれません。しかし、ノキアはそれを市場に投入する機会を狙っていたのですが、残念ながらノキアは市場に投入する時期を間違えて、アップルに完璧に負けてしまいました。

ノキアがアップルより半年も先に、このプロトタイプを市場に投入していたら、状況は大きく変わっていたかもしれません。

ノキアの最初のスマホは、市場導入時期がアップルのiPhoneよりも遅れてしまった
ノキアは、スマホやタブレットなどは、まだ市場に投入しても、ユーザーには受け入れらないと判断していたのです、そうこうしているうちに、後発のアップルに追いぬかれてしまいました。

この事例のように、最初のうちは、誰が成功するかなど、誰にもわかりません。しかし、とにかく他者に抜きん出ようとして努力をして競争して、互いにしばきあって、どこかの企業が成功すれば、それが場合によっては、大きな産業を生み出すこともあるのです。

これを否定してしまえば、優れた投資や、優れた技術なども生まれてきません。それは、計画経済の共産主義がことごとく失敗したことからも明らかです。

“情報強者”のホリエモンでさえ、失敗することはあるのです。というより、資本主義市場における、民間企業は失敗の連続です。その失敗から立ち直り、最後に成功できる企業が次世代を創りだすのです。

しかし、この失敗を許容しない社会は本当につまらない社会になると思います。これは、小保方さんのSTAP細胞についても同じことがいえます。このブログにも以前掲載したように、本来ならば、小保方さんのSTAP細胞に関しても、たとえ小保方さんが間違えていたとしても、どこかで許容されるような社会でなければ、優れた投資活動や、優れた技術開発が阻害されてしまうと思います。

まあ、この程度の茶化しで、堀江氏が尻込みするということなど考えられませんが、このような週刊誌のやり方が、野放図に際限なく行われ、そうして多くの人々が、失敗を許容しないような社会になったとしたら、そのような社会には発展性はありません。

堀江氏の今回の投資の失敗など、笑って許容するくらいの度量が欲しいものです。何やら、私自身は、彼も時にはこんな大失敗をするのかと、思い、かえって親しみがましました。私は、とにかく失敗だけはしないようにする人間は、全く見込みのない人間だと思います。そんな人間に、未来は切り開けないです。そのような人間が世の中の主流となってしまえば、我が国の発展もありません。

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2016年2月8日月曜日

安倍内閣 「支持する」50% 「支持しない」34%―【私の論評】この結果は、野党があまりに不甲斐ないから!このままだと、次の選挙でも与党の大勝利(゚д゚)!

安倍内閣 「支持する」50% 「支持しない」34%


NHKの世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より4ポイント上がって50%、「支持しない」と答えた人は1ポイント下がって34%でした。

NHKは今月5日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは1574人で、68%に当たる1063人から回答を得ました。

それによりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より4ポイント上がって50%でした。一方、「支持しない」と答えた人は1ポイント下がって34%でした。

支持する理由では、「他の内閣より良さそうだから」が40%、「実行力があるから」が23%、「支持する政党の内閣だから」が14%だったのに対し、支持しない理由では、「政策に期待が持てないから」が42%、「人柄が信頼できないから」が22%、「支持する政党の内閣でないから」が10%となっています。

安倍内閣の経済政策について尋ねたところ、「大いに評価する」が6%、「ある程度評価する」が50%、「あまり評価しない」が30%、「まったく評価しない」が10%でした。

景気が回復していると感じるかどうかについては、「感じる」が11%、「感じない」が49%、「どちらともいえない」が36%でした。

甘利前経済再生担当大臣と甘利前大臣の秘書が建設会社の関係者から現金を受け取っていたことについて、甘利前大臣の説明に納得できるかどうか聞いたところ、「大いに納得できる」が3%、「ある程度納得できる」が23%、「あまり納得できない」が38%、「まったく納得できない」が28%でした。

甘利前大臣が政治とカネの問題で辞任したことの安倍政権への影響については、「大いに影響がある」が19%、「ある程度影響がある」が44%、「あまり影響はない」が24%、「まったく影響はない」が6%でした。

北朝鮮がミサイルの開発を進めていることに対し、日本政府が十分な対応をしていると思うか尋ねたところ、「十分な対応をしている」が20%、「十分な対応をしていない」が35%、「どちらともいえない」が36%でした。

民主党と維新の党が合流して一つの政党になることを期待するかどうか聞いたところ、「大いに期待する」が4%、「ある程度期待する」が17%、「あまり期待しない」が39%、「まったく期待しない」が34%でした。

【私の論評】この結果は、野党があまりに不甲斐ないから!このままだと、次の選挙でも与党の大勝利(゚д゚)!

安倍内閣の支持率については、ANNでも調査をしていて、今月1日にその内容を発表しています。その内容の動画を以下に掲載します。



安倍内閣の支持率はこの調査では50.4%で、1年ぶりに5割を回復しました。金銭授受疑惑を巡る­甘利前経済再生担当大臣の辞任は今の時点で大きく影響しなかった形です。

夏の参院選が刻々と迫る中、民主党は、政党支持率1割以下という超低空飛行を続けています。民主党は、国会論戦の序盤に浮上した甘利明前経済再生担当相の「政治とカネ」をめぐる疑惑で「反転攻勢のチャンス」と色めき立っちましたが、世間には、政策論戦そっちのけで疑惑追及に血道を上げていると映ったのでしょうか、支持率は逆に下落してしまいました。
今や何をやっても「ブーメラン」で、民主党に帰ってくるようです。甘利氏の電撃辞任により追及の気勢もそがれ、脱力感だけが残りました。それでも色めきたっている民主党の面々をみると、もう本当に白けるばかりです。

そうして、私は民主党の「ブーメラン」を見ていると、西城秀樹さんのブーメランストリートという曲を思い出してしまいます。その曲の動画を以下に掲載します。



今月3日の衆院予算委員会で、民主党の岡田克也代表は安倍晋三首相との直接対決で、甘利氏の金銭授受疑惑に切り込みました。
「甘利氏はアベノミクスの司令塔、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の最終交渉もした。きちんと検証するべきだ」
「巨大な権限を持つ人が疑いをかけられていることに、首相は危機感を持つべきだ」
対する首相は、
「TPP交渉に影響するわけがない」と色をなして反論し、「影響を与えたというならば、具体的にどの品目に影響を与えたのかを言わないと、無責任な誹謗中傷だ」
 とまくしたてました。

「政治とカネ」をめぐる論戦はヒートアップしたましたが、岡田氏が約1時間の質疑時間のうち疑惑追及に費やしたのは、わずか10分ほどでした。疑惑解明も必要だが、追及一辺倒では世論が辟易しかねません。こんな意識が働いたとみられる。

実際、民主党の追及姿勢について世論は評価していません。むしろ逆効果となりました。甘利氏が閣僚辞任を表明した1月28日直後の報道各社の世論調査をみると、その傾向は一目瞭然です。

民主党の支持率は、共同通信9・5%(前回比0・2ポイント減)、読売新聞7・0%(前回比1・0ポイント減)、毎日新聞は横ばいとはいえ、わずか7・0%にすぎませんでした。逆に内閣支持率は軒並み数ポイント増え、5割を回復した調査も少なくありませんでした。

1月22日の衆院本会議で甘利氏の経済演説の際に、民主党など野党6党が「甘利氏から明確な答えがないまま演説は聴けない」として、ぞろぞろと退席したことも多くの人の心証を害したようです。

1月22日の衆院本会議で民主党など野党6党がぞろぞろと退席
自民党の平将明衆院議員が自身のツイッターで、退席の様子を書き込みました。
「私も議場にいたが、政策論争ではなく、政局的展開になったとたんに、民主党がガラッと元気になったのをみて、この党の本質をみた気がした。何人かの若手は怒りではなく本当に嬉しそうな顔をして議場から出て行った」
国民からもそんな民主党の体質を見透かされているのです。

民主党の長島昭久元防衛副大臣は1月30日の自身のこのことに関して自身のブログ『翔ぶがごとく』懸念を表明しています。以下にそのブログの内容を転載します。


民主党の長島昭久元防衛副大臣
 のっけから誤解を恐れず言わせて貰えば、「国会戦術上」の甘利問題は、あの潔く辞任表明した会見でほぼ勝負がついてしまったと思う。これ以上、国会の場で甘利問題を深追いしても逆効果になってしまう(つまり、スキャンダル追及で政権に打撃を与えるという思惑が国民の支持を広げる可能性は高くないどころか、逆に反発すら招く恐れがある)のではないか。小渕元大臣も仕留められなかった国会が、甘利前大臣にとどめを刺すのは難しいだろう。これが国会の限界なのだと思う。 
 ここから先は、斡旋利得があったかどうか等、秘書の件も含め司直の手に委ねるべきものだ。もちろん、甘利前大臣自身が認めているように、政治家及び政治事務所による役所(今回は国交省およびUR)への口利きや金銭授受行為は、違法か否かに拘らず、政治的、道義的責任を免れず、厳しく正されるべきことは言うまでもない。ましてや、国家の最高権力者たる現職大臣である。再発防止のため新たな法整備の必要もあるかもしれない。また、そういった点をめぐり、国民の疑問にきちんと答える(野党としてしっかり正す)べきとの議論は残るだろう。しかし、党を挙げて、しかも予算審議を人質に取ってまで取り組むべき問題なのかどうか、真剣に考え直すべきだろう。政治倫理を扱う別の委員会も存在する。 
 言うまでもなく、予算委員会で議論すべき問題はいくらでもある。甘利大臣が担当していたTPPから始まって、政府の異常な金融緩和、消費税の引き上げ、それに伴う軽減税率の是非や総合合算制度を諦めてしまったことの是非、原発再稼働、北朝鮮のミサイル実験、中国の軍事的拡張と経済崩壊の可能性等々、枚挙に暇がない。 
 その上で、改めて国政(政府)を正す責務を有する野党の立場で考えてみると、甘利大臣辞任がもたらす問題の核心は、甘利大臣の罪状というより、甘利大臣が第二次安倍政権の中で果たしてきた役割が突然取り除かれてしまったことにあると思っている。 
 つまり、これまで3年間にわたり安倍政権の安定性を担保してきたのは、閣内における鉄の結束だろう。それは屢々「トリプルA」と呼ばれてきた安倍・麻生・甘利の三枚看板だ。そこに菅官房長官の調整力が加わり盤石の体制を誇ってきたものだ。アベノミクスの進め方をめぐり、消費税や金融緩和、財政政策など閣内でも意見が相克するような場面はこれまでいくらでもあった。しかし、その局面のたびに、総理の信頼厚い盟友・甘利大臣が果たしてきた役割はきわめて大きかった。ここ数日、甘利大臣の力量をめぐってメディアでも激論が交わされたが、私の見るところ、安倍政権における甘利大臣の価値は、政策力でも交渉力でもなく、総理の信頼を背景にした政権内のバランサー的な役割だったと思っている。 
 したがって、甘利大臣の後継に石原伸晃氏が起用されることが決まった直後の大臣会見で、事もあろうに政権の要である麻生副総理が石原氏の手腕にビッグ・クエッション・マークを付けてみせた時には、思わずのけぞってしまった。これが政権の綻びになる可能性を秘めているからだ。その意味で、巷間囁かれているように今回の甘利大臣辞任が安倍政権の「終わりの始まり」だとすれば、それは甘利前大臣の罪状の故にではなく、甘利大臣が閣外に去ることによる政権内の不協和音の顕在化にあるのではないかと推察する。 
 であるからこそ、野党は、すでに大臣自ら職を辞し幕引きを図った事案の罪状暴きに奔走するのではなく、真正面から堂々と安倍政権に政策論争を挑み、建設提案を突きつけ、閣内不一致を暴き出すことに全力を傾けるべきなのだ。野党として、スキャンダル攻撃に血道をあげるより、政策論争で政権を追い詰める方がよほど憲政の常道に叶うし、国民の利益になるはずだ。この週末は、野党にとっても頭を冷やすにはちょうどいい。
長島氏の不安は的中したといえます。しかし、民主党は追及の手を緩めようとしません。確かに甘利氏の疑惑に絡む斡旋利得の有無など真相究明は欠かせないですが、司直に委ねる部分が多く、立法府での甘利氏不在の追及には限界があります。

民主党など野党は甘利氏の参考人招致などを求めますが、与野党会派の全会一致が慣例で、実現の見通しは立ちません。

それにしても、民主党の国会での論争を聴いていると、そもそも民主党にはこの日本をどのようにしたいのか、経済をどうしていくのが、社会をどうしていくのか、などという考えは全くなく、とにかく自民党に対峙して、何で反対して、自民党に競り勝つことのみ考えているようにしかみえません。

そんな中で、民主党の政策論争といえば、全くお話にならないほどの低レベルです。無論、民主党の中にもまともなことをいう人もいるにはいるのですが、本当にごく少数派です。安保法制のときの、民主党の論議は結局のところ「戦争法案」のレッテル貼り一辺倒で、全く議論になっていませんでした。

さらに、経済に関してはあまりにレベルが低すぎです。それについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!~『朝ナマ』に出演して改めて感じた、日本の野党のお粗末さ―【私の論評】第二社会党の道を歩む民主に期待は無駄!本当は増税政党の自民も無理!期待できるのは今は次世代の党のみ!

この記事の元記事は高橋洋一氏が書いています。この記事は、昨年の11月10日のものです。民主党議員の経済オンチぶりについては、この記事をご覧いただくものとして、この元記事の高橋洋一氏の結論を以下に掲載します。
ここまで民主党がダメだと、安倍政権は民主党が今の体制のうちに、解散総選挙を仕掛けたくなってしまうのではないか。与党がそんな手を打てなくなるような野党が必要である。
ここでいう解散総選挙とは、参院の選挙は決まったことですから、今年の夏に実行されますが、年内に衆院も解散して、総選挙を行うかもしれないということです。

実際に、安倍首相の側近である自民党の下村総裁特別補佐は、7日朝、フジテレビの「新報道2001」に出演し、衆議院の解散・総選挙について、「年内に90%くらいあるのではないか」と、実施の可能性が高いという考えを示しました。

自民党の下村総裁特別補佐は「年内にですね、90%くらいの可能性で、わたしは(解散・総選挙が)あるという前提で考えた方がいいのではないかというふうには思います」と、衆議院の解散・総選挙が、年内に行われる可能性が高いという見通しを述べ、その理由として、「2017年4月に消費税が10%に引き上げられ、経済的に厳しい状況が出てくるかもしれない」と指摘しました。

また、衆院選挙の具体的な時期について、下村氏は、「ダブルや年末」と述べて、夏の参院選と衆院選を同日に行う、ダブル選挙の可能性にも言及しました。

もし、衆院も解散総選挙となれば、民主党は今のままであれば、歴史的な大敗北を喫して二度と立ち上がれないくらの打撃被るのではないかと思います。

丁度、あの社会党が、PKO法案成立後の選挙で、大敗して、存続すら不可能になったのと同じようなことになります。私は、はっきりここに予測しておきます。

そうして、この記事では、当時の「次世代の党」の経済対策が、もっとも優れていることを掲載しました。しかし、「次世代の党」は、「日本のこころを大切にする党」に名称を変更しました。

知名度が低いのにさらに、党名変更ということで、おそらく影響力の強かった石原慎太郎氏のイメージから脱却して、新しい党に生まれ変わろうとの趣旨で行ったのでしょうが、選挙には不利であると考えられます。

大阪維新の党も、どうしても、地域政党の性格が強いので、あまり大きな動きにはならないと考えられます。そうなると、他の野党の状況をみあわせると、今年の夏や、もしかすると行われる衆院選挙では、またまた、与党が大勝利を収めることになるのではないかと思います。

唯一の懸念は、経済が良くなりきらないうちに、10%増税を決めたり、憲法論議を進めたりすることです。10%増税をすれば、8%増税も大失敗だったのに、とんでもないことになるのは明らかです。本格的に経済が悪くなれば、その時の政権が誰のものであり、政権を放棄せざるをえなくなります。

憲法論議に関しては、自民党の憲法素案はまだまだ、非常に詰めが甘すぎます。無論、改憲はいずれすべなのですが、もっと、もっと詰める必要があります。まだ、詰めきってもいないうちに、憲法論議で時間を費やしたり、選挙の公約にすれば、与党にとってはあまり良いことはないと思います。特に、経済が悪化しているときの憲法論議は避けるべきです。

憲法解釈にも、いろいろあって、京都学派の解釈によれば、日本国憲法9条は、国際紛争を避けるための手段として、武力を保持したり行使することは、明確に禁止していますが、自衛戦争にのために武力を保持したり、行使することまでは禁じていないとしています。

この解釈に従えば、自衛隊は違憲でも何でもありません。こういうことも考え合わせ、新たな憲法の草案には、もっと時間を費やすべきであり、もっと大日本帝国憲法の内容を吟味したり、その成立過程を学び、まともな憲法草案にしてから、議論すべきものと思います。

このような危機はあるものの、今年の夏の参院では与党が大勝利することは余程のことがない限り、間違いないでしょうし、衆院解散総選挙があってもやはり、与党が大勝利ということになると思います。

それもこれも、野党があまりにも不甲斐ないからです。野党は、自民党に対峙することばかりに血道をあげるのではなく、まともな政策論争ができるように、努力すべきです。

野党がまともな政策論争をして、与野党が切磋琢磨することによって、我が国はさらに良くなるはずです。

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