2025年11月12日水曜日

財務省の呪縛を断て──“世界標準”は成長を先に、物価安定はその結果である



まとめ
  • ロイター報道の政府経済対策素案は成長投資を含む内容だったが、「成長と物価安定の両立」という言葉が官僚によって金融引き締めや緊縮政策の口実に使われる危険がある。現状のインフレはコストプッシュ型であり、引き締め策は逆効果となる。
  • 高市早苗首相の経済政策の核心は、一時的ではなく恒久的な食料品の消費税ゼロである。生活必需品への課税を除き、可処分所得を増やすことで需要を喚起し、リフレ派経済学を実践している。
  • 食料品価格上昇率約8%、CPI比重20%から算出すると、恒久減税でCPIを約1.6ポイント引き下げる効果がある。現在の2.9%から1.3%に下がり、低所得層の負担を軽減しつつ物価を安定させる現実的処方箋となる。
  • 高市政権は消費減税で家計を守りながら、AI、半導体、防衛、農業、原子力など17の重点分野への投資を進めている。これはばらまきではなく、成長と安全保障を両立する国家戦略投資である。
  • 財務省が30年間守ってきた「財政規律」偏重の緊縮政策を打破し、政治主導のマクロ経済運営へ転換を図る。高市首相は、成長を恐れる財務官僚こそ真の異端であり、減税こそ国家再生の第一歩であると明確に打ち出した。
1️⃣成長を抑え込む「両立」論の罠


2025年11月10日、ロイターが報じた政府の経済対策素案(Reuters記事はこちら)は、エネルギー高騰と生活防衛を目的に、時限的な支援と成長投資を柱とするものだった。しかし「成長と物価安定の両立」という耳障りの良い言葉が独り歩きし、官僚たちがそれを金融引き締めや緊縮財政の口実に使う危険がある。現状の物価上昇は需要過熱ではなく、エネルギーや食料といった輸入コストの上昇が要因のコストプッシュ型インフレだ。金利を引き上げても効果はなく、むしろ景気を冷やして賃上げの流れを止めてしまう。

いま必要なのは、家計を支え、供給力を高める政策である。世界の常識は「成長が先で、安定はその結果」であり、リフレ派は決して異端ではない。異端は、国民経済の血流を止めてまで「財政規律」を優先しようとする財務省のほうだ。我が国が30年にわたって停滞してきたのは、まさにこの“緊縮教”が経済の生命力を奪ってきたからである。
 
2️⃣高市政権の核心──恒久的な食料品消費税ゼロ

高市早苗首相が最も重視しているのは、恒久的な食料品の消費税ゼロである。これは一時的な減税ではなく、永続的な仕組みとして国民生活を支える政策だ。生活必需品への課税を撤廃し、可処分所得を直接増やす。それは単なる福祉ではなく、需要を創出し、デフレ脱却を確実にするリフレ政策の核心である。

リフレ派の識者――高橋洋一、田中秀臣、片岡剛士ら――は、口を揃えてこう述べている。「デフレ脱却の最後の一押しは恒久減税しかない」と。消費税減税は、国民が即座に実感できる景気刺激策であり、経済の心理を一変させる力を持つ。高市政権の政策はまさにそれを実行しようとしている。

片岡剛士氏は、「リフレ派というのは派閥ではなく、むしろマクロ経済政策としての方法論であり、デフレ・停滞のリスクを回避するために中央銀行の緩和役割が大きい」と指摘している。 (ウィキペディア+2東洋経済オンライン+2)。金子洋一氏は、「景気回復前に増税をすれば日本経済を破滅に導く。デフレ脱却を経ずして財政健全化はあり得ない」と明言している(ファクタ+1)。

さらに、報道によれば、リフレ派の有識者の起用が増えており、政府内部にもこの哲学が浸透してきている( Reuters+1)。

数字もこの政策の正当性を裏付けている。総務省の統計によれば、食料品価格の前年比上昇率は約8%に達し、CPI(消費者物価指数)に占める食料の比重はおよそ20%。単純計算すれば、食料品価格の上昇がCPI全体を約1.6ポイント押し上げていることになる。つまり、食料品を恒久的に消費税ゼロにすれば、理論上CPIを1.6ポイント引き下げる効果がある。

2025年9月の総合CPIが前年比2.9%であるため、2.9から1.6を引けば1.3%。食料品の恒久減税によって、物価上昇率は1%台前半に収まる計算になる。実際、同月の統計でも、食料とエネルギーの寄与度が1.6%と確認されており、この推計は現実的だ。食品価格が下がれば、消費者は他の品目に支出を回す。代替効果が働くことで全体の需給バランスが整い、低所得層に偏っていた負担が軽減される。今のように食費だけが異常に高く、他の出費を圧迫している状況が是正されれば、家計の息はつく。痛みは小さく、購買意欲は戻る。

誰にでも理解できる単純な算式が、それを裏付けている。−8% × 20%(CPIウエイト)= −1.6%。2.9 − 1.6 = 1.3。政府が恒久減税に踏み切れば、物価上昇率は1%台で安定し、生活は確実に楽になる。これほど即効性と公平性を兼ね備えた政策は他にない。


こうした方向性は、高市総理自身の言葉にも表れている。公明党の岡本三成議員が国会で、「政府系ファンドが実現できたとして、毎年5兆円の恒久財源があったら何をしたいか」と質問した際、高市総理はこう即答した。「まず、国民の生活を安定させる。食料品の恒久的な消費税ゼロを実現し、残りを将来への投資に回す」。この一言に、彼女の政治哲学が凝縮されている。生活の底を守り、上を伸ばす。それこそが成長国家の基本姿勢であり、リフレ派が訴えてきた“成長のための再分配”の実践にほかならない。
 
3️⃣成長を恐れぬ国家へ──減税と投資の両輪で立て直す

高市政権の経済戦略は、減税と投資の両輪で成り立っている。消費減税によって家計の基盤を支え、その上で国家の未来に大胆に投資する。AI、量子、半導体、防衛、農業、原子力など17の重点分野を掲げ、税制優遇と政府系ファンドを通じて民間投資を誘導する。

これは、官僚が好む「ばらまき」とは違う。成長と安全保障を両立させる国家戦略投資であり、政府がリスクを取ることで民間が安心して挑戦できる環境を整える。これを恒久的に動かす仕組みこそ、未来志向の財政運営である。

財務官僚が恐れているのは、国民がこの構造に気づくことだ。彼らが守ってきた「安定」という言葉の下には、国民の疲弊と停滞がある。財政規律という名の鎖で日本経済の心臓を締め上げてきたのは彼らだ。高市首相は、その呪縛を断ち切ろうとしている。経済を“管理”ではなく“動かす”。国民の生活を温め、未来への投資を促す。官僚主導の緊縮から脱却し、政治が主導するマクロ経済運営へと転換する覚悟を持っている。

消費税の恒久減税は、単なる経済政策ではない。国家の姿勢そのものの転換だ。国民を信じ、経済の力を解き放つ政治への挑戦である。高市政権の本音は明白だ。まず生活を守り、次に成長を起こす。この順序を誤れば、再び停滞の沼に沈む。いま求められているのは勇気ある決断である。減税を恐れる政治は国を衰えさせ、成長を恐れる財務省こそが真の異端なのだ。

経済とは血液である。流れを止めれば体は腐り、成長を止めれば国は衰える。物価安定は、健全な成長の結果としてのみ訪れる。高市政権が挑むのは、この当たり前の理を取り戻す戦いである。いまこそ、成長を恐れぬ政治へ舵を切るときだ。

高市早苗首相の経済政策の核心は、恒久的な食料品消費税ゼロと戦略的成長投資である。この二本柱は、リフレ派が長年主張してきた“成長を起点とする再分配”を政治が初めて実現しようとする試みだ。食料品の消費税をなくせば、理論上CPIは2.9%から1.3%へ安定し、低所得層の生活は大きく改善する。異端はリフレ派ではない。真の異端は、成長を恐れ、国民の未来を縛りつける財務省である。

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2025年11月11日火曜日

沈黙はもう終わりだ──中国外交官の“汚い首を斬る”発言に、日本が示すべき“国家の矜持”

 まとめ

  • 高市早苗首相は国会で「中国が台湾を武力封鎖すれば、日本の存立危機事態に当たり得る」と明言し、戦後日本の安全保障政策を一歩前進させた。
  • 中国大阪総領事の「汚い首を斬る」発言は、個人の暴走ではなく、中国共産党が黙認する体制的な“戦狼外交”の一環である。
  • 中国の外交官は実質的な裁量を持たず、儀礼や窓口業務が中心であり、昇進のために過激発言で党の注目を集める構造が存在し、それが戦狼外交の温床ともなっている。
  • 英国やカナダなど諸外国では、類似事例に対して外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ(望ましからざる人物)」として国外追放しており、日本も同様の措置を検討すべき段階にある。
  • 我が国は「沈黙の平和」から「覚悟の平和」へと転換し、礼と理性をもって毅然と立ち向かうことこそが「国家の矜持」と「霊性の文化」の実践である。
高市早苗首相が、台湾有事に関する国会答弁で「存立危機事態」に踏み込んだ発言を行った直後、中国大阪総領事館の薛艦(シュエ・ジエン)総領事がSNS上でこう書き込んだ。

「その汚い首を斬る。覚悟はあるか?」

この一文が世界を震撼させた。暴言というより、もはや恫喝である。民主主義国家では、外交官の発言は国家の立場を反映するが、中国では事情がまったく異なる。

1️⃣台湾有事と「存立危機事態」──高市発言の衝撃

11月7日、衆議院予算委員会。立憲民主党の大串博志議員が問うた。「中国が台湾を海上封鎖した場合、それは日本の『存立危機事態』に該当するのか」。

高市首相は静かに、しかし明確に答えた。

「戦艦を用い、武力の行使を伴うような事態であれば、我が国の存立危機事態に当たり得ると考える」

この発言は、戦後日本の安全保障政策を根底から動かすものだった。従来、政府は「我が国が直接攻撃を受けない限り、集団的自衛権の行使は慎重に」としてきた。しかし高市首相は、台湾有事が我が国の安全保障に直結するという現実を、初めて公の場で明言したのである。

首相は「特定国を念頭に置いたものではない」としながらも、「発言を撤回するつもりはない」と断言した。この毅然とした姿勢こそ、まさに日本の覚悟を示すものであった。

2️⃣暴言と沈黙──党が演出する“戦狼外交”


問題の投稿は翌日、SNSで世界に拡散した。「汚い首を斬る」――その言葉は、外交官としての一線を完全に踏み越えていた。日本政府は即座に外務省を通じて中国政府に正式抗議を行い、当該外交官の処分と説明を求めた。

だが、中国外交部は謝罪どころか、こう言い放った。
「日本側が台湾問題で誤った発言を繰り返し、中国の核心的利益を挑発している」

まるで加害者が被害者を責めるような態度である。この開き直りは、中国共産党体制の本質を端的に示している。

中国の外交官は、我が国や欧米の外交官とは根本的に立場が異なる。民主主義国家の外交官が「国家の代表」として一定の裁量と責任のもとに発言するのに対し、中国の外交官は共産党体制の命令下で行動する“執行装置”にすぎない。彼らに実質的な政策決定権はなく、主な任務は窓口業務や儀礼行事、親善活動など、党の方針を外部に伝達する限定的なものにとどまっている。

問題は、そのような環境で「どうすれば出世できるのか」という点にある。研究によれば、中国外務省の昇進構造はきわめて閉鎖的で、海外赴任が長くても昇進率は上がらない。むしろ北京本部に残り、党幹部の信頼を得た者が昇進する傾向がある。そのため海外に出された外交官は、本国の注目を集めるために、過激な発言や強硬な態度を取ることで忠誠心を示そうとする。この構造的歪みこそが、いわゆる「戦狼外交(ウォルフ・ウォリアー・ディプロマシー)」の温床となっている。

したがって、薛艦総領事の暴言は個人の暴走ではなく、党の意向を映す鏡そのものである。もし本国が問題視していれば、発言は削除されるだけでなく、直ちに懲戒処分が下されていたはずだ。しかし沈黙をもって放置されたという事実が、体制の容認を意味している。つまり、これは「党が演出した外交劇」である。

3️⃣諸外国ならどう動く──「覚悟ある外交」の試金石


もし同様のことが他国で起きれば、対応は明快である。国際法――ウィーン外交関係条約第9条――は、受入国に対し、理由を示すことなく外交官を“persona non grata(望ましからざる人物)”として宣言し、国外退去を命じる権利を認めている。

英国は2018年、スクリパル毒殺未遂事件の後、ロシア外交官23名を追放した。カナダも2023年、中国外交官の脅迫行為を理由に国外追放を断行した。リトアニアは中国による政治的干渉を理由に大使館員の受け入れを拒否した。いずれも、国家の尊厳を守るための当然の措置である。

我が国も、謝罪も処分もないまま放置されるなら、ペルソナ・ノン・グラータの宣言をためらうべきではない。それは挑発ではなく、国家を侮辱させないための最低限の自衛である。

ただし、外交とは断絶のためにあるのではなく、秩序を保つためにある。怒りに任せて関係を破壊すれば、経済や人的交流にも悪影響が及ぶ。だからこそ、日本は冷静に、しかし揺るぎなく立ち向かわなければならない。その態度こそ、我が国が千年の歴史の中で培ってきた「礼の外交」、すなわち「霊性の文化」の体現である。

我々はいま、沈黙をもって平和を保つ時代を終え、覚悟をもって平和を守る時代に踏み出した。中国が言葉を武器に威圧するなら、日本は理性と品格でそれを跳ね返す。それこそが「国家の矜持」であり、日本が誇る真の外交の姿である。

【参考情報】

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就任直後からの日米・印・ASEAN再結束を総括し、「礼の外交×抑止」で日本が主導権を取り戻す道筋を描く。 

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2025年11月10日月曜日

政府、経済対策に「お米券」導入──悪しきグローバリズムを超え、日本の魂を取り戻せ

 

まとめ
  • お米券導入は物価高騰下の“痛み止め策”として一定の意義はあるが、恒久化すれば構造改革を遅らせる危険がある。目的はあくまで農政の立て直しにある。
  • 戦後の農政は減反政策により供給力を自ら削ぎながら、「国際競争力がない」と農民に責任を押しつけてきた。国際競争力の強化は政策失敗を隠す免罪符となっている。
  • 米は単なる商品ではなく、“文化的価格”をもつ国の象徴である。田は祈りの場であり、米づくりは国家の命を守る防衛行為でもある。
  • 農業再生には霊性と合理性の融合が必要であり、機械化やスマート農業はその基盤を支える。「魂ある合理性」を掲げ、地域が一体となる“篤農(とくのう)村”を築くべきである。
  • 「常若(とこわか)」の精神に基づき、伝統を保ちながら制度と技術を更新することが日本再興の道である。米づくりは我が国の魂であり、国の矜持である。

政府は、物価高騰と生活支援の両立を掲げ、「米券(コメバウチャー)」の導入を決定した。低所得層への支援と国産米の消費拡大を狙う政策である。だが、この方針をめぐっては賛否が分かれている。支持者は「即効性」を評価し、批判者は「人気取りに過ぎない」と斬る。問題は、これが一時しのぎの施策に終わるか、それとも構造改革への橋渡しとなるかである。

1️⃣支援か改革か──応急策と構造の狭間で

本田悦朗氏

本田悦朗氏(元内閣官房参与、アベノミクスの立役者)は「減反を続け、供給を絞ったまま『おこめ券』で補うのは本末転倒だ」と警鐘を鳴らしている。物価上昇の根源は供給不足であり、まず増産に取り組むべきという主張だ。構造を直さず分配ばかり行えば、基礎のない建物と同じで、やがて崩れる。

ただし現実は単純ではない。米は多くの地域で年一作である。増産体制を整えても、成果が出るのは翌年以降だ。農業は季節と自然を相手にする営みであり、号令で翌日には実らない。

それでも国民の生活が苦しむ中、何もしないわけにはいかない。鈴木憲和農林水産大臣は「本来これだけ買いたいのに諦める方々がいる。そうした皆さんの負担を和らげるには、おこめ券や食品バウチャーのような支援が今は必要だ」と語った(出典:テレビ朝日「グッド!モーニング」2025年10月28日)。また、米価高を踏まえた需給調整重視の姿勢も示している(同出典)。当面のバウチャーは“痛み止め”としてやむを得ない面がある。しかしこれを恒久策にしてしまえば改革は止まる。目的は構造の立て直しにこそある。

2️⃣戦後農政の歪み──「国際競争力信仰」という罠

政治家も官僚も、「国際競争力の強化」を当然のこととしてきた。経済でも教育でも農業でも、この言葉は正義に聞こえた。しかし、それこそが戦後日本を静かに蝕んできた“悪しきグローバリズムの宿痾(しゅくあ)”である。

戦後農政は、米を「生きる糧」ではなく「過剰生産物」と見なし、やがて減反政策に舵を切った。豊作を喜ぶべき農民に「作るな」と命じたのである。この矛盾が、供給力を自ら削ぎ落とす出発点となった。


生産を抑えて価格を高どまりさせる仕組みは、一見、農家の生活を守るように見える。だがその裏で、集約と効率化が遅れ、「競争力がない」という自己否定の口実を生んだ。政策が非効率を生み出し、その責任を農民に押しつける倒錯である。「国際競争力」は、いつしか政策失敗を覆い隠す免罪符となった。価格の高さだけを問題にし、何を守るための価格かを問わない議論が横行した。

とはいえ、日本の米価が高いのは単なる経済指標ではない。風土・技術・労苦・作法が織り込まれた“文化的価格”である。米は単なる商品ではない。土地と人、自然と神を結ぶ営みだ。田は本来、祈りの場である。田に入る前に手を合わせ、豊穣を祈り、自然に感謝する。数字だけが田を支配したとき、文化は痩せる。伊勢の神宮で今も続く新嘗祭は、稲作がこの国の神話と結びついた証である。金銭で測れぬ価値こそ、国の根である。

さらに、米は文化であると同時に戦略物資でもある。輸入が滞っても、米があれば人は生きられる。農家は銃を持たぬ兵士であり、田を耕すことは防衛そのものだ。「余れば輸出すればいい」という軽口ほど浅いものはない。米は“余る”ものではない。それは国の命を蓄える備えだ。輸出とは、食の主権を外貨と引き換えに差し出す行為にほかならない。我が国の米は、為替や市場のためにあるのではない。未来の命を守るためにある。

3️⃣常若の精神──霊性と合理性の融合による再生

スマート農業のデモ

改革の狙いは、効率を高めることではない。文化としての農と、経済としての農を一致させることだ。農業が持続できなければ、祈りも文化も絶える。だからこそ、機械化やスマート農業、地域連携は霊性を壊すものではない。むしろそれを支える土台である。霊性と合理性――この二つは敵ではない。「魂ある合理性」こそ、これからの日本の道だ。

さらに、旧来の「篤農家」モデルには限界がある。機械・流通・情報・資金を地域で共有し、地域全体が“篤農村”となる仕組みを築くべきだ。ここにこそ、日本の伝統である「常若(とこわか)」の精神が活きる。伊勢神宮が二十年ごとに社殿を建て替えても魂を守り続けるように、形式を変えても本質を守り抜く。これこそ真の保守であり、真の改革である。地産地消を進めることは単なる効率化ではない。それは、生産者と消費者の心を再び結ぶ“再霊化”の営みである。ここにこそ、「内需」の本来の意味がある。

結語 米づくりは我が国の矜持である

グローバリズムは時に、神をも市場に売り渡す思想となる。だが、日本にはまだ霊性の文化が生きている。水を尊び、土に感謝し、稲を神と仰ぐ限り、この国は倒れない。「国際競争力」という呪文がこの国を支配する限り、魂は痩せる。私たちが取り戻すべきは、霊性と合理性、伝統と革新が調和した“常若の秩序”だ。米づくりはその最前線である。四季が巡り、水が流れ、祈りが続く限り、この国は立ち上がる。日本の田に芽吹くのは、ただの稲ではない。我が国の魂そのものである。

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2025年11月9日日曜日

「台湾有事」への覚悟──高市首相が示した“国家防衛のリアリズム”


まとめ

  • 高市首相は台湾有事を「日本有事」と位置づけ、平和を守るには抑止力を備える覚悟が必要と明言した。戦を避けるための防衛強化こそ現実的な平和政策であると示した。
  • 中国の台湾周辺での艦艇・航空機展開は古典的侵略ではなく、心理戦による圧力であり、戦わずして優位を得ようとする戦略である。
  • 台湾で大ヒットしたが日本ではヒットしなかったテレビドラマ『ゼロ日攻撃』が示す現代戦のリアリズムは、サイバー攻撃や情報攪乱による“静かな侵略”であり、限定的な軍事行使を伴うハイブリッド戦の実像を描いている。
  • 日本のマスコミは古典的戦争像に囚われ、高市政権の現実主義を「好戦的」と誤解している。政治が現実を直視する一方で、報道は幻想を信じ続けるという齟齬が生じている。
  • 「戦争できる国」とは「戦争する国」ではなく、攻められた時に守れる国のことだ。高市首相は防衛費の議論を超えて“国家を守る意思”の再生を訴えており、真の平和はその覚悟に宿る。

1️⃣「平和を守る覚悟」──高市首相が突きつけた現実主義


「平和を守るためには、覚悟がいる」。高市早苗首相の一言が、永田町を震わせた。台湾海峡は緊張を増し、首相は2025年11月7日の衆院予算委員会で「台湾の安定は我が国の安全保障に直結する。万一の際に備えることこそ、平和を守る最も現実的な道である」と述べた。これは戦を望む言葉ではない。戦を避けるための抑止の論理である。

自衛隊は南西シフトを進めている。与那国・宮古・石垣の体制強化、電子戦・無人機の拠点整備、海空の警戒と長射程スタンドオフの配備。これらは「台湾防衛」ではなく「日本防衛」そのものだ。台湾海峡で事が起きれば、最初に影響を受けるのは沖縄・与那国・宮古である可能性が高い。備えの欠如こそ最大のリスクだ。

「台湾有事は日本有事」。安倍晋三元首相の遺言とも言うべきこの言葉を、高市首相は政策の言葉に引き戻した。中国はこの数カ月、台湾周辺で過去最多規模の艦艇・航空機を展開している。だが、これは古典的侵略の前触れではない。台湾と周辺国に「包囲されている」という圧迫感を与える心理戦の一環である。中国はまず“見せる力”で相手の心を折りにくる。

日本の世論はまだ鈍い。平和を願うことは尊いが、願いだけでは平和は守れない。現実から逃げる政治こそ危険だ。抑止は言葉ではなく、力と意思の裏付けで成り立つ。中国もロシアも北朝鮮も、残念ながら「力による平和」しか信じていない。
 
2️⃣台湾のリアリズムとテレビドラマ『ゼロ日攻撃』の示唆

人気俳優、高橋一生も出演した台湾大ヒットドラマ「零日攻撃 ZERO DAY」は日本でヒットしなかったが・・・


数十年前、北朝鮮も中国も軍事的には取るに足らぬ存在だった。いまや様相は一変した。中国は経済と軍事を融合させた全体主義国家へと変貌し、北朝鮮は核・ミサイルで恫喝する。イランは西側から離反し、ロシアと結び秩序を掻き回す。変わった現実を、我が国だけが直視しきれていない。

この遅れを照らすのが、台湾ドラマ『ゼロ日攻撃』である。派手な爆撃も大規模上陸もない。描かれるのはサイバー、情報攪乱、電力遮断――“静かな侵略”だ。台湾は、中国が損害を最小化しつつ社会機能を内部から崩す現実的手段を選ぶと見ている。

そもそも台湾は古典的上陸侵攻に向かない。台湾海峡は浅く、天候と潮流の制約が大きい。西岸は干潟(ひがた)と軟弱地盤が多く大規模上陸に不利、東岸は断崖が連なり兵站が続かない。東シナ海からバシー海峡に至る日米の哨戒網も補給線に圧力をかける。ゆえに“一気呵成の占領”は地理的にほぼ不可能だ。台湾が見据える戦争は、銃弾の応酬ではなく、電波・情報・社会機能を奪う現代型の戦争である。

ただし、現代戦は非軍事だけではない。戦略・戦術上、有効な局面では軍事力が使われる。離島制圧、指揮通信網の破壊、示威のための限定攻撃――そうした局面で中国は躊躇しないだろう。つまり本質は、軍事と非軍事が一体のハイブリッド戦である。

高市首相の「現実を見よ」という呼びかけは、このリアリズムと通底する。台湾が見ているのは「弾が飛び交う映画」ではなく「社会が内部から制圧される現実」だ。首相はその現実を日本に突きつけた。さらに首相は軍事だけでなく、情報・経済・サイバー・外交を束ねる総合的抑止を志向している。戦う前に勝つ。戦争を起こさせないための現実的戦略である。

これに対し、マスコミは今なお古典的侵略の像に囚われる。日本が台湾有事への対抗策を講じるたび、「日本が古典的総力戦を始めるのではないか」といった懸念を並べる。現実を直視する政治と、物語にすがる報道の齟齬は深い。

『ゼロ日攻撃』は、その齟齬を映す鏡でもあった。日本では“ヒット”しなかった。期待されたのは派手な戦争ドラマ、示されたのは無音の侵略。台湾は危機を現実として理解し、日本メディアはまだ“物語としての危機”に酔っている。この落差こそ、アジア防衛の盲点である。
 
3️⃣変わるアメリカ、停滞する日本──報道が国を誤らせる

アメリカではテレビ局・配信の再編が進む。私はこれを衰退とは見ない。旧来の媒体が自らを解体し、時代に適応し直す自然な進化である。朽ちるより変われ。成熟社会の当たり前だ。

一方、日本のオールドメディアは「自分たちが世論を導く」と信じ込み、時代遅れの“正義”に拘泥する。国家観を欠いた情緒的平和主義を振りかざし、現実を見ない。それどころか、自分たちこそ、国民の代表であり、よって道徳規範の制定者であるかのような誤った認識を持っているようだ。記者の中には、首相会見前に「支持率を落とす映像だけ流してやる」といった不見識な発言まであった。ここで報道は真実の伝達ではなく、“望ましい物語”の創作へと堕していることが明らかになった。


日本のメディアは報道機関ではなく「言論業界」になった。自らの思想を国民に押しつけ、現実を歪める。だが世界は変わった。国際秩序は再編され、情報戦が最前線に立つ。それでもなお「反権力こそ正義」という時代遅れの旗を振り続けるのか。

高市首相の言葉は国家の矜持を取り戻す行為である。対して、旧メディアの頑迷はその矜持を腐らせる宿痾(しゅくあ)だ。守るべきものを語らず、時代遅れの“正義”を繰り返す者に未来はない。日本が生き延びるには、政治だけでなく報道も覚醒しなければならない。

戦後八十年、我が国は「戦争をしない国」を誇ってきた。いま問われるのは「戦争できる国」かどうかだ。誤解してはならない。「戦争できる国」は「戦争する国」ではない。仕掛けられた戦いに応じ得る力を持つ国だ。これが“守れる国”の本質である。いかなる国も、軍事的側面を欠いて独立は維持できない。平和を守るには、戦う力と意志が要る。

高市首相が訴えるのは、防衛費の数字や条文の改廃だけではない。現代戦から「国家を守る意思」を取り戻せ、である。平和は努力の果実だ。備えなき平和は幻だ。戦を煽るのではない。戦を防ぐ覚悟の宣言である。再び我々が、戦うことを恐れず、平和を守るために立つ。軍事国家への回帰ではない。国家としての責任への回帰である。

平和を語る者こそ現実的であれ。防衛を語る者こそ冷静であれ。国家を守る者こそ強くあれ。台湾海峡の波が高まるいま、我が国が取るべきは「見て見ぬふり」ではなく「覚悟」である。抑止は力だけでなく、意志の問題だ。守る覚悟のない国に、平和は訪れない。高市政権の真価は、そこにこそある。

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2025年11月8日土曜日

午前三時に官邸に入った総理、深夜の天皇陛下のご公務──求められているのは“働き方改革”ではない“国会改革”である 



まとめ

  • 質問通告の遅延は国会の制度疲労を象徴する問題であり、官僚や総理だけでなく天皇陛下のご公務にまで影響している。民主党政権期には上皇陛下が深夜に決裁書類をご覧になる事態もあり、国政の乱れが象徴天皇の制度運用を揺るがしていた。
  • 国会は「慣行」に甘え、質問通告の遅れを放置してきた結果、官僚の徹夜作業と総理の早朝出勤が常態化した。責任の所在が曖昧なまま、政治全体の規律が緩み、怠慢が制度化している。
  • 民間企業では当然のガバナンスである「事前通知」「期日遵守」「違反時の制裁」が、国会には存在しない。会社法では通知を怠れば決議が無効になるが、国会では罰則もなく、混乱が繰り返されている。
  • 2021年の中央省庁職員アンケートでは、立憲民主党と共産党に質問通告の遅れが目立つとの結果が報じられた。通告の差し替えや深夜提出が常態化し、制度疲労が政党文化にまで染みついている。
  • 英国、米国、ドイツ、フランスなど世界の主要議会では、質問通告の遅れは即座に無効とされる。日本だけが「慣行」で済ませ、無秩序を自由と取り違えている。高市総理の午前三時出勤は勤勉の象徴ではなく、政治の常識が崩壊した警鐘である。
1️⃣深夜の質問通告がもたらす「制度疲労」と陛下への影響


高市早苗総理が午前三時に官邸へ入った――その報道は勤勉な首相の象徴として受け取られた。
だが、実態は違う。あれは日本の国会運営の「病巣」を浮かび上がらせた出来事だった。

野党からの質問通告が届いたのは、前夜の深夜。ときに午前一時を過ぎることもある。官僚はその瞬間から徹夜体制に入り、答弁書を一から作り直す。総理もまた、夜明け前に出勤して準備に追われる。
この異常な光景が、長年「慣例」という名の下で放置されてきた。

問題は単なる労務負担にとどまらない。国会開会式のような国家儀式にまで影響が及んでいる。天皇陛下がご臨席されるその場で、政府演説や代表質問の準備が夜を徹して行われるのだ。質問通告が遅れれば、進行が押し、陛下の登壇時刻すら確定できない事態も起きる。

そして、もっと深刻なのは、陛下ご自身のご負担である。上皇陛下(当時の天皇陛下)の御代では、民主党政権下において質問通告の遅延が常態化していた。その影響で政府答弁の作成が夜中に及び、上奏文書の提出も深夜へずれ込んだ。結果、陛下が午後九時を過ぎても書類に目を通されていたという証言が複数残っている。このようなことが報道されたのは、稀なことである。宮内庁の公表日程には夜間のご執務は記されてない。

那須や葉山での静養中にも、深夜まで決裁書類をご覧になられた――そうした報道もあった。これは一時的な話ではない。国会のだらしなさが、天皇陛下のご公務にまで影響を及ぼしていたのだ。

現天皇陛下におかれても、宮内庁の公表日程には夜間のご執務は記されていない。だが、政治側の事務遅延が続く限り、ご決裁やご報告が夜にずれ込む可能性は否定できない。
つまり、あの「深夜通告の連鎖」は、今も構造として残っているのである。
 
2️⃣「ガバナンスなき国会」――企業なら無効になる慣行

衆院予算委で質問する自民党の斎藤健氏=7日午前

この異常な運営に、斎藤健元経産相は「上手にさぼりながらやってください」と苦言を呈した。
皮肉な言葉だが、そこには真実がある。総理が倒れるほど働かねばならないのは、野党の怠慢のせいだ。官僚も官邸も、そして陛下までもが犠牲になっている。

だが、解決は難しくない。質問通告に締切を設け、遅れた場合には明確な罰則を科すだけでいい。
一度目は叱責、二度目は質問時間の削減、三度目は質問権の停止――これで混乱は止まる。

民間企業では、とうに当たり前の仕組みだ。上場企業の取締役会では、会議通知は一週間前が常識であり、資料は同時に全員へ配布される。これを怠れば、決議そのものが無効になる。
会社法第370条から第372条までが、その法的根拠だ。正規の通知を怠れば「決議取消の訴え」が可能になる。

国会を企業にたとえれば、こうだ。
取締役が前夜に議題を出し、他の役員が徹夜で資料を作り、翌朝の会議で「準備不足だ」と責め立てる。
こんな組織が健全な判断を下せるはずがない。

それでも国会は“慣行”にすがりつき、誰も責任を取らない。その結果、政治全体が緩んでいった。

加えて、質問通告の遅延には明確な傾向がある。2021年春、中央省庁職員を対象にしたアンケート(ITmediaビジネスPRESIDENT Online報道)では、立憲民主党と日本共産党が特に通告の遅い政党として挙げられている。
通告の差し替え、前日深夜、休日提出――現場官僚の間では「立憲・共産の遅延は常態化している」との認識が広く共有されている。

これは偶然ではない。制度疲労が政党文化にまで染みついた結果である。
 
3️⃣世界の常識から見た日本の異常

諸外国では、質問通告の遅れは「マナー」ではなく「違反」である。

英国議会

英国議会では、質問は開会日の3日前の正午までに提出しなければならず、それを過ぎれば即時却下だ。議長が例外を認めることもない。官僚が夜中に答弁を練るなど、構造的に起こり得ない。

米国議会では、日本のような質問通告制度は存在しないが、委員会質疑では48時間前までに質問要旨を提出する決まりがある。違反すれば質問の順番を失うか、発言できない。議事妨害と見なされれば即座に発言停止である。

ドイツでは、政府への「小質問」は48時間以内に文書回答されるが、提出期限を過ぎた質問は受理されない。フランスでも質問締切は毎週火曜正午で、遅れれば翌週回しとなる。
いずれの国でも、ルールを破れば質問権そのものを失う。

これに比べ、日本はあまりに甘い。提出期限は「慣例」であり、議長は裁量で遅延を容認。差し替えも追加も自由、深夜の通告も黙認される。世界の議会運営の中で、ここまで無秩序な国は珍しい。

この堕落を正当化するかのように、2021年、立憲民主党の安住淳氏はNHK「日曜討論」でこう語った。
「官僚の過重労働は質問通告が遅いからというのは陳腐な話だ。官僚を美化してはいけない」。
この発言に対し、日本維新の会の音喜多駿議員や藤田文武議員は「深夜通告を当然視する姿勢こそ問題だ」と即座に反論した。

だが、問題は発言そのものよりも、その無神経さが「国会の空気」として定着していることだ。野次、論点逸脱、与党への罵倒――それらはすべて、無秩序を“自由な議論”と錯覚した結果である。

高市総理の午前三時出勤は、勤勉の象徴ではない。
それは、日本の政治が秩序を失い、常識を手放したことへの警鐘である。

民主主義を支えるのは「自由」ではなく「責任」だ。
秩序なき自由は、制度を腐らせ、国家を壊す。

今こそ国会は、責任ある議論を制度として取り戻さねばならない。
求められているのは“働き方改革”ではない――“国会改革”である。

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財務省支配の終焉へ──高市早苗が挑む自民税調改革 2025年10月13日
税調の権限再設計を軸に、政治主導へ舵を切る構想を解説。国会運営の非効率や「慣行依存」が政策決定を歪める構造にも踏み込む。

雑音を捨て、成果で測れ──高市総裁の現実的保守主義 2025年10月9日
「結果で評価する政治」を掲げ、国会の儀礼的・冗長なプロセスより実務を優先する視座を提示。統治の生産性向上を訴える。

高市早苗総裁誕生──メディアに抗う盾、保守派と国民が築く「国民覚醒の環」 2025年10月5日
総裁選後の政権運営の要諦を整理。国会手続きの形骸化・政治的パフォーマンスから政策成果へ軸足を移す必要性を論じる。 

伝統を守る改革か、世襲に縛られる衰退か──日英の明暗 2025年9月2日
英上院改革を手がかりに、「慣行の刷新で統治を強くする」原理を比較考察。日本の国会改革に通じる示唆を抽出する。 

天皇陛下「夜のご執務」相次ぐ 書類が来ない…―器の小さい民主党 2010年2月4日
閣議・国会対応の遅延が夜間のご決裁に波及した事例を記録。政治プロセスの遅れが天皇陛下のご公務に負担を与える現実を示す。 

2025年11月7日金曜日

韓国発“トランプ-金正恩再会談”に踊った報道──面白い情報ほど危険だ



まとめ
  • 2025年夏、米韓首脳会談でのトランプ発言を契機に、李在明政権が「トランプ-金正恩再会談」観測を政治利用し、韓国メディアが“演出外交”として国内外の期待を煽った。
  • Japan In-Depthの記事で、朴斗鎮・コリア国際研究所所長は、李政権の「再会談」情報操作を意図的な外交演出と分析し、板門店の立ち入り制限や要人発言を“期待値操作”と指摘した。
  • 韓国の“観測気球外交”は2018年以降も繰り返されており、外交と報道が一体化して世論を動かす構図が定着している。
  • 日本の一部メディアや識者がこの演出に踊らされ、「年内再会談」などを裏付けなく報じたことで、報道が政治的幻想の拡散装置となった。
  • 高市早苗氏が冷静な分析姿勢を保った一方、石破首相や報道機関は“情報の演出”に巻き込まれた。外交は演出ではなく現実の構造を読む戦いであり、幻想に酔えば国を誤る。
1️⃣憶測外交の仕掛け──李在明政権と韓国メディアの構図

2025年夏、東アジアの空気が不穏に揺れた。発端は8月20日、北朝鮮の国営通信が李在明大統領の「南北対話提案」を「たわごと(gibberish)」と切り捨て、韓国を「米国の忠実な犬」と罵倒したことだった。米韓合同軍事演習への反発が、やがて“米朝再会談”という幻想を生む火種となった。

8月25日の米韓首脳会談

その数日後の8月25日、ワシントンのホワイトハウスで行われた米韓首脳会談の場で、ドナルド・トランプ大統領が「年内に金正恩と会いたい」と発言した。アメリカ国内の選挙戦が熱を帯びる中、この発言は韓国側にとって千載一遇の好機となった。

8月26日には、複数の報道でトランプが“年内会談に前向き”であること、李在明がトランプに“peacemaker(仲介者)役”を要請したことが伝えられ、世界のメディアが一斉に反応した。再会談の観測は現実味を帯びて広がったが、「トランプ氏が訪韓時に金正恩との会談を模索」と韓国政府が公式に発表したという一次情報は存在しない。観測を支えたのは、報道が積み上げた“期待”にすぎなかった。

9月22日、金正恩は最高人民会議の演説で「米国が非核化要求を捨て、現実的な平和共存を認めるなら対話の余地がある」と述べ、さらに「トランプとは良い思い出がある」と語った。この“柔らかい調子”が国際メディアに取り上げられ、再会談の期待が再燃した。

国連総会の期間中、韓国外相は「李大統領はトランプ大統領に朝鮮半島の仲介者(peacemaker)となってほしいと要請した」と発言し、観測は頂点に達した。だが10月末、韓国大統領府の安保当局者が「会談の実現は近くない」と述べ、報道の熱は急速に冷めた。

Japan In-Depth(2025年11月6日付)の記事「李在明政権が流した『トランプ・金正恩会談』憶測情報」(著:朴斗鎮・コリア国際研究所所長)は、この流れを「意図的に助長された外交演出」と指摘している。朴氏は、李政権が支持率低迷を挽回するために“米朝幻想”を政治利用したと分析する。板門店周辺の立ち入り制限や与党要人の発言は“期待値の操作”であり、外交を“物語”化する韓国政治の伝統的手法が再び使われたのである。
 
3️⃣踊らされた報道と政治──日本の識者・メディアの過ち

この“演出外交”に最も敏感に反応したのは、実は日本の一部メディアだった。
9月下旬から10月上旬にかけて、JBpress(近藤大介)、Forbes JAPAN(牧野愛博)、JBpress(松本方哉)、文春オンライン(朴承珉)といった主要媒体が「年内再会談」「米朝対話再開」の見通しを相次いで報じた。
しかし、裏付けとなる一次情報は乏しく、ほとんどが韓国発の観測情報を基にした推測に過ぎなかった。

米朝会談についてのテレビ報道

報道は本来、熱狂を冷ます役割を担うべきだ。だが今回、日本の報道はその熱狂を拡散し、“観測気球外交”の一部となった。情報が「面白い」ほど、それが「危険」になることを忘れてはならない。

政治家の反応にも違いがあった。石破首相は「対話による安定」を強調し、慎重ながらも一定の期待をにじませた。一方、高市早苗氏は「根拠なき観測に振り回されるべきではない」と明言し、距離を取った。外交とは感情ではなく、構造を読む力で動く。
この両者の差は、まさに情報に対する“嗅覚”の違いである。
 
3️⃣幻想の代償──情報戦の時代に問われる覚悟

観測に最も強く反応したのは、政界よりもメディアと識者だった。JBpressやForbes、文春オンラインの記事はその象徴であり、SNS上では「日朝・米朝同時和平」などの幻影が拡散した。だが、外交は舞台ではない。演出に喝采を送る者は、現実の冷たさを見誤る。

報道が政治の熱に呑まれ、政治が報道の幻想を信じる──その瞬間、国家は方向を失う。
外交とは、事実を競うものではなく、「事実らしく見せる力」との戦いである。

前回の米朝首脳会談

韓国の情報機関は、来年3月の米韓合同軍事演習後に米朝首脳会談が行われる可能性が高いと見ている。4日韓国聯合ニュースが報じた。
報道によると、情報機関の国家情報院(NIS)の国会監査後、議員が記者団に対し「北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は米国との対話に意欲的で、今後条件が整えば米国と接触するとNISは判断している」と語った。
北朝鮮は、米国が非核化要求を取り下げれば対話に応じるとしているが、先週訪韓したトランプ米大統領が会談の意向を示した際、公には応じなかった。
米ホワイトハウス当局者はロイターに対し「米国の対北朝鮮政策に変更はない」とし、トランプ大統領は前提条件なしで金総書記と対話を行う用意がある」と述べた。ただ、現時点で発表できる会談の予定はないとした。

この報道にまたマスコミや識者たちは踊るのだろうか。あるいはそのまま垂れ流すのか?


我が国が進むべき道は、虚構の演出に乗ることではない。
幻想に酔えば、足をすくわれる。
現実を見抜く者だけが、次を動かす。

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就任直後から米・印・ASEANに布石を打ち、FOIPを再起動。理念と実務を接続する高市外交の骨格を解説し、情報戦下での日本の立ち位置を明快に示す。

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原潜保有を「選択肢」と明言した発言を起点に、日本の海洋抑止の将来像を検討。演出ではなく装備・運用という“現実面”から国家の覚悟を問う。

詐術の政治を超えて――若者とAI、そして高市所信表明が示した現実主義 2025年10月26日
世論戦の時代における情報感度と検証主義を提言。“面白い情報ほど危険だ”という今回の主題と響き合う、知的保守向けの基調論考。

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日米協力の実務面(投資・エネルギー・技術)の具体像を整理。米朝・韓国情勢に揺れる中でも、日本が堅持すべき対米連携の現実的軸を明らかにする。

2025年11月6日木曜日

「左派のトランプ」新ニューヨーク市長マムダニが映す鏡──対岸の火事ではない

まとめ

  • ゾーラン・マムダニの当選は「反エリート」運動の象徴であり、生活苦と体制不信に苛まれた庶民が草の根の力で既存政治を突き動かした。
  • 急進的な改革路線には治安・財政・外交の不安定化リスクがあり、米国保守派はマムダニの理想主義が社会を毀損する可能性を強く警戒している。
  • スティーブ・バノンはマムダニを「左のトランプ」と評し、共和党に警鐘を鳴らした。 彼の言うポピュリズムは“大衆迎合”ではなく、中産階級の代弁運動という本来の意義を持つ。
  • 日本でも同様の「草の根政治」的潮流が地方に現れつつあり、橋下徹元大阪市長の例に見られるように、反エリート構造が政治エネルギー化している。
  • 日本は霊性の文化と「改革の原理としての保守主義」という二つの精神的支柱を軸に、伝統と改革の均衡を守り、社会秩序を持続させることが求められる。
1️⃣ゾーラン・マムダニの勝利──ニューヨークに吹いた「反エリート」の風


2025年11月4日、ニューヨーク市長選で州下院議員のゾーラン・マムダニ(Zohran Mamdani)が当選した。34歳、民主的社会主義を掲げる初のムスリム市長である。家賃凍結、富裕層課税、交通費軽減など、生活直結型の政策を訴え、草の根の献金とボランティアで大都市の空気を変えた。生活コストの上昇に苦しむ市民の怒りが、政治を突き動かしたのである。

マムダニの勝利は、単なる政党間の勝負ではない。既存の政治・財界・不動産業界などへの不信が頂点に達し、それが“反エリート”という旗のもとに一つになった結果だ。彼は理念よりも「生活の実感」を訴え、低投票層を掘り起こした。この出来事は、米国政治の構造を根底から揺るがし、現代民主主義が抱える「信頼の断絶」を象徴している。

だが、その勝利は同時に大きな危うさもはらむ。マムダニ氏は、警察予算削減や警察権限縮小を主張してきた過去を持つ。その思想は市警(NYPD)との摩擦を招き、治安維持との両立に疑問を投げかけている。さらに、交通の無料化、市営スーパーの創設、富裕層課税など、理想色の強い政策群には、財源確保や制度設計の裏づけが乏しい。ニューヨークの財界や不動産業界はすでに「資本逃避」への警戒を強めている。

外交的にも懸念がある。彼の強いパレスチナ支持とイスラエル批判の姿勢は、ユダヤ系団体や経済界との緊張を生んでいる。また、当選直後には反イスラム的ヘイト投稿が急増し、社会の分断を助長する恐れも指摘されている。要するに、マムダニ氏は「変革の象徴」であると同時に、都市の均衡を崩しかねない「政治的リスク」でもあるのだ。

2️⃣スティーブ・バノンの警鐘──トランプ流を映す「左の鏡像」

スティーブ・バノン

翌5日、トランプ政権の元首席戦略官スティーブ・バノン(Steve Bannon)は、政治専門サイト「ポリティコ(Politico)」のインタビューで語った。「マムダニを侮るな。共和党にとってこれは警鐘だ」。

彼は続けてこう述べた。「マムダニの運動は、投票意欲の低い有権者を巻き込むことに成功した。トランプ流の草の根再生の手法だ」。ここで注目すべきは、バノンが語るポピュリズムの本来の意味である。日本のメディアが使う「大衆迎合」という軽蔑的な意味ではない。ポピュリズムとは、19世紀末のアメリカで生まれた中産階級と労働者の代弁運動だ。都市のエリート層に対して、地方と庶民の声を政治に取り戻そうという流れであり、今日では国民世論そのものに近い。つまり、バノンの主張は「民主主義の根を草の根へ戻せ」という訴えである。

マムダニ現象は、その左派版だ。体制不信の市民が「自分たちの代表」を求めた。これは偶然ではない。既存秩序が信頼を失い、「政治を動かすのは大衆の側だ」という意識が広がっているのだ。こうした構造的反発こそ、トランプ現象とマムダニ現象を結ぶ共通項である。

そしてこの波は、遠い国の話ではない。日本でも、政治の信頼構造が静かに揺らいでいる。中央政界では高市早苗(たかいち・さなえ)政権が安定を保っているが、地方では“反中央”“反官僚”を掲げる首長が台頭し始めた。その典型が橋下徹(はしもと・とおる)元大阪市長・府知事である。彼は「大阪都構想」を掲げ、既得権に切り込む姿勢で市民の支持を集めた。方向は異なるが、マムダニと同様、反エリートの構造を政治エネルギーに変えた点で共通している。

日本の都市政治でも、政党色を超えた草の根型の潮流が生まれつつある。政治的左右を問わず、国民が「信じられる政治」を求め始めているのだ。マムダニの勝利は、アメリカだけでなく、我が国の「政治再編の前触れ」でもある。

ただし、バノンをはじめとする米国保守派が本当に恐れているのは、マムダニが掲げる理想主義的改革が都市の社会構造そのものを毀損しかねないことである。急進的な税制改革や警察権限の制限が治安と財政を同時に不安定化させる懸念があるのだ。彼らにとって、マムダニは単なる政治的ライバルではない。秩序と制度のバランスを崩しかねない、いわば「左派のトランプ」としての潜在的リスクでもある。

3️⃣日本の霊性の文化と「改革の原理としての保守主義」──国を支える精神の軸

八百万(やおよろず)の神

こうした時代に、我が国が軸を失わずに立つために必要なのは、精神の背骨である。それが日本固有の霊性の文化だ。日本の霊性は、八百万(やおよろず)の神に象徴される自然観、祖先への敬意、「和」を重んじる倫理に根ざしている。古代のアニミズムやシャーマニズムが他国では宗教に吸収され消えていったのに対し、日本ではそれを社会の道徳として昇華し、現代まで連続させてきた。その持続を支えてきたのが皇統である。万世一系の皇統は、我が国の歴史と精神を貫く軸であり、国の霊性を形として護ってきた。

この霊性の文化と並んで、日本の社会を支えてきた思想的支柱が、「改革の原理としての保守主義」である。これは特定の陣営に属する思想ではない。社会の基盤を守りながら改革を進めるという、文明社会が安定と進歩を両立させるための普遍的原理だ。極端な革命主義でも、変化を拒む頑迷な保守でもない。社会を損なわずに進化させる理性の原理である。

保守本流こそ、この「改革の原理としての保守主義」を堅持し、他の立場にも共有を促す責務を負っている。改革を恐れず、伝統を軽んじない。その均衡を守ることこそ、国家の持続と秩序を保証する道である。

この主題をさらに掘り下げた拙稿
👉 高市早苗の登場は国民覚醒の第一歩──常若(とこわか)の国・日本を守る改革が始まった
もあわせてお読みいただきたい。

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参考資料

AP / The Associated Press:Zohran Mamdani wins New York City mayor’s race (AP News)
The Guardian:New York mayor-elect Zohran Mamdani challenges Donald Trump in victory speech(ライブ更新) (ガーディアン)
The Washington Post:2025選挙ライブ更新 — Democrats sweep; Mamdani wins NYC mayoral race (The Washington Post)
CBS News New York:Zohran Mamdani wins NYC mayoral election after energizing young voters with focus on affordability (CBSニュース)
Al Jazeera:Updates — Mamdani wins New York City mayoral race; Cuomo concedes (Al Jazeera)
The Guardian(米保守側の反応):Democrats celebrate while Republicans stew over Mamdani’s historic win and others (ガーディアン)
Yahoo News:2025 election live updates and results — Zohran Mamdani wins NYC mayoral race ほか (yahoo.com)


2025年11月5日水曜日

ASEAN分断を立て直す──高市予防外交が挑む「安定の戦略」


まとめ
  • 2025年版グローバル・ピース・インデックス(GPI)は、世界の平和度が前年より0.36%下がったと報告し、南アジアを中心に治安と統治が悪化。西欧主導秩序が崩れ、「大断片化」の時代が到来している。
  • 新興国や途上国では制度の脆弱さから、経済危機や汚職、権威主義化の影響を受けやすく、暴力による経済損失は世界GDPの11.6%に及ぶ。
  • ASEANではラオスが47位(前年44位)、タイが86位(前年81位)へと後退し、シンガポールのみが6位を維持。地域の治安と統治の格差が拡大している。
  • 高市首相はASEAN歴訪で「東南アジアを再び一つに」と訴え、安倍晋三元首相の「自由で開かれたインド太平洋」構想を継承。エネルギー連携を軸に脱炭素と安定成長を両立させる戦略を示した。
  • 高市外交はエネルギーと安全保障を両輪とし、AZECとOSAを通じた非戦闘領域の支援でASEANの安定化を図る。これはサプライチェーンと海上輸送路を守るための、現実的かつ戦略的な外交である。
1️⃣世界の平和度が示す「断片化」の時代

Global Peace Index 2025

2025年版「グローバル・ピース・インデックス(GPI)」は、オーストラリアの独立系シンクタンク「経済平和研究所(Institute for Economics & Peace)」が発表した国際的な平和指標だ。国連やOECD、世界銀行も参照する権威あるデータで、163の国と地域を対象に、「社会の安全」「紛争の継続」「軍事化」の三分野から計23の項目を評価している。その2025年版は6月に公表され、高市首相のASEAN歴訪(10月)に先立って、世界がかつてない不安定期に入ったことを明確に示した。

報告によれば、世界全体の平和度は前年より0.36%低下し、87カ国で悪化、74カ国で改善にとどまった。特に南アジアでは緊張が高まり、地域全体が「最も平和度の下がった地域」とされた。政府機能の弱体化、法の支配の後退、汚職の拡大、そして権威主義の台頭――こうした要因が治安の崩壊を招いている。

紛争の拡大も深刻だ。報告書の「進行中の国内・国際紛争」項目では、戦闘の件数も死者数も戦後最多級となった。アフリカ、中東、南アジアでは武装勢力の跳梁が止まらず、国家機能が崩壊する例も出ている。これらの国々は例外なく順位を下げた。

GPIはこうした流れを「大断片化(The Great Fragmentation)」と名づけた。西欧主導や米中二極といった従来の秩序が崩れ、地域ごとの対立が新たな不安定要因になっているという指摘だ。多極化の進行は、国際社会を静かに分裂へと導いている。

新興国や途上国では、この分裂の衝撃が最も激しい。制度や治安の脆弱さが、外的要因をもろに受け止めるからだ。経済危機や汚職、暴力が一度発火すれば、その国はたちまち混乱に沈む。GPIは「暴力による世界経済への損失は19.97兆ドル、世界GDPの11.6%に相当する」と試算している。これはもはや遠い国の話ではない。
 
2️⃣ASEANに広がる「不均質な危機」

ASEANの旗

こうした世界情勢のなかで、日本にとって最も重大なのがASEANの動向である。GPI 2025によれば、東南アジアは一枚岩ではなく、国ごとの格差が拡大している。

ラオスは2024年の44位から47位へ後退。軍備支出の増加と偽情報の蔓延が治安を悪化させた。タイも81位から86位へと順位を下げ、政情不安が続く。一方でシンガポールは前年と同じ6位を維持し、アジアで最も平和な国の地位を守っている。

この差こそが「断片化」の象徴である。ASEANは経済統合を進めてきたが、平和の均衡はもろい。軍事化の進行や民主制度の成熟度の違いが、地域の基盤を揺るがしている。

本ブログでも以前取り上げたが(「東南アジアを再び一つに──高市首相がASEANで示した『安倍の地政学』の復活」、高市首相はASEAN歴訪で安倍晋三元首相の理念「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を再定義した。彼女が打ち出したのは、「ASEANを再び一つにする」という明確な意思である。対中・対米のはざまで揺れる各国を、再び安定の輪に戻す構想だ。
 
3️⃣エネルギーと安全保障──高市外交の現実的戦略

高市首相は、安定の礎としてまずエネルギー連携を掲げた。実際、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合で、各国がそれぞれの現実に即した脱炭素と成長、そしてエネルギー安全保障を両立させると宣言している。日本の原子力技術や高効率の発電・送電技術を活用し、ASEANの電力安定を支える構想だ。これは単なる経済協力ではない。国家の安定を直接支える安全保障政策である。

だが、エネルギーだけでは地域は守れない。ASEANを真に安定させるには、抑止力を含めた安全保障支援が欠かせない。日本が取るべき道は、武器輸出ではなく、監視・救難・情報共有など非戦闘領域での能力支援だ。すでに政府は「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を通じ、フィリピンに沿岸監視レーダーを供与した。さらに海上保安庁による巡視船支援、災害救助、サイバー防衛協力なども進めている。これらは憲法の枠内で可能な「現実的な軍事支援」であり、エネルギーと並ぶもう一つの柱だ。

ASEANの不安定化は、直接日本の国益を脅かす。第一に、東南アジアは日本企業の生産拠点であり、政情不安が起きればサプライチェーンが断たれる。第二に、マラッカ海峡や南シナ海は我が国の生命線である。治安悪化はエネルギー輸送を停滞させ、保険料や燃料費を押し上げる。第三に、ASEANの分裂は中国の影響力拡大を招き、結果として日本の防衛負担が増す。つまり、ASEANの混乱は日本の「防波堤の崩壊」を意味する。

先月25日夜、ASEAN関連の首脳会議に出席するため、政府専用機でマレーシアに到着した高市首相


高市首相のASEAN訪問は、この危機を見据えた“予防外交”だった。彼女の掲げた「東南アジアを再び一つに」という言葉は、友好の飾りではない。断片化の時代に、日本が主導して地域を再構築するという決意の表明である。エネルギーと安全保障の二本柱を掲げたこの外交は、安倍晋三元首相の地政学的構想を実践に移したものであり、現実政治に根ざした戦略的行動である。

GPI 2025が示したように、ASEANの平和度は静かに下がっている。だが、高市外交はその流れを見越し、早くも“反転攻勢”を始めた。日本が平和の仲介者であり、制度支援の提供者として動くなら、東南アジアの未来はまだ変えられる。

GPIの数値は単なる統計ではない。それは日本がどう生きるかを問う警鐘である。ASEANの揺らぎは、我が国の地政学的責任を映す鏡だ。日本が再び世界の秩序をつなぎ直す力を取り戻せるかどうか――その答えは、今まさに示されようとしている。

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脱炭素の幻想をぶち壊せ! 北海道の再エネ反対と日本のエネルギードミナンス戦略 2025年5月31日
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2025年11月4日火曜日

高市政権82%、自民党24%――国民が問う“浄化の政治”とは何か

 まとめ

  • 高市政権は高支持率を維持しているが、自民党の信頼は依然として低迷しており、拙速な解散は危険である。党の信頼を取り戻す「整備と浄化」の時間が必要だ。
  • 解散前に整えるべき三本柱は、政治資金の透明化、生活実感を伴う家計支援、連立や政策協定の明示であり、これらのうち二つ以上を実現してから信を問うべきだ。
  • 自民党保守派は「お行儀の良いサラリーマン」ではなく、防衛増税を巡る党内審議で怒号を飛ばすほど激しく増税派と対立し、その闘いが党の流れを変えた。
  • 2025年5月の「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」再始動が保守派結集の転機となり、分裂ではなく結集を選んだことで高市総裁誕生の道が開かれた。
  • 高市首相の外交姿勢には「霊性の文化」と「改革の原理としての保守主義」が融合しており、韓国旗への一礼に象徴される礼節と尊厳の政治こそ、時を待ちながら信頼を築く真の保守の道である。
1️⃣支持率の乖離が示す現実


高市政権の支持は高水準だが、自民党そのものへの信頼はまだ戻っていない。事実、今年7月のNHK世論調査で自民党支持は24%まで落ち込み、低迷を示した。これは石破政権末期の数字で、高市政権発足後の“ご祝儀相場”とは対照的である。いま必要なのは、内閣の勢いに頼ることではなく、党そのものの信頼を積み直すことだ。ちなみに内閣支持の方はJNNなど複数調査で80%前後という極めて高い数値が確認されている。(Reuters)

公明離脱を経た政権構造は再設計の途上であり、生活実感もなお鈍い。賃上げは進むが、家計は物価上昇の影を引きずり、国民の評価は「今すぐ選挙で信を問え」とまでは熟していない。ここで拙速に解散に踏み切れば、比例票の取りこぼしが連鎖し、政権の足腰を逆に弱める危険がある。結論は明快だ。いまは“整備と浄化”の時間である。
 
2️⃣90日で整える三本柱


第一に、政治資金の透明化を本気でやる。パーティー券と収支の公開を機械判読レベルまで上げ、第三者監査を常設する。これはマスコミが煽りまくり、検察が起訴できない政治資金不記載問題を裏金問題にすり替え、実際よりも巨悪に仕立てたが、それにしてもこの問題を放置はできない。与党だけでなく、野党も同じ規制をかけるべきだ。

第二に、家計に届く即効策で“実感”を作る。エネルギー・燃料負担の時限軽減と、中小の価格転嫁支援を機動的に打ち、数字だけでなく生活の手触りを変える。

第三に、選挙後の枠組みを先に見せる。維新などとの政策合意を文書で明示し、政権像をあらかじめ提示する。この三本柱のうち二つ以上を確実に形にしてから、春から夏にかけて信を問う――それが勝ち筋である。

「今すぐ選挙」という意見にも理はなくもない。野党再編が遅れ、追い風は吹いている。しかし、党支持が立ち上がらないまま走れば、勝っても脆い。政権構想が曖昧なまま突っ込めば、「場当たり」の烙印を押されるだけだ。ここは焦らない。勝つために、整える。
 
3️⃣分裂ではなく結集――霊性と「改革の原理としての保守主義」

自民党の結集を訴える高市総裁

かつて、岸田・石破リベラル路線が続いた時期に「高市は塔を出て新党だ」「野党と合流だ」という声があった。私も一度はこのブログに、かつての三木武夫首相のやり方を参考に、それを主張したこともあった。その背景には自民党のリベラル・左派、官僚、マスコミによる日本の毀損という危機感というより絶望感があった。

だが、出なかった判断は結果として正しかった。中国の浸透、マスコミや財務官僚、党内左派の結束は侮れない壁だった。そこで自民党内の保守は逃げず、党内で真正面から闘った。象徴的なのは、防衛増税を巡る自民党会合で怒号が飛び交った一件だ。あの場面は、保守が“お行儀の良いサラリーマン”などではなく、現場で命懸けの論戦をしていた事実を物語る。(TBS NEWS DIG)

そして2025年5月、麻生太郎氏を本部長とする「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」が再始動した。ここに保守が結集し、流れは変わった。高市総裁誕生への道筋は、この“分裂ではなく結集”の選択から拓けたのである。(eikei.jp)

高市首相は外交でも日本の「霊性の文化」を体現し始めている。韓国・慶州での首脳会談に先立ち、日韓両国旗に向けて深く一礼した所作は、屈従ではなく“相手の象徴への敬意”という日本的礼節そのものだ。礼を尽くし、相互の尊厳を起点に対話を始める――その一瞬に、争いを前提にしない力の行使があった。(Alamy)

ここに「改革の原理としての保守主義」が重なる。保守とは、古びた制度にしがみつくことではない。受け継ぐべき原理を守りながら、時代に合わせて形を大胆に変える胆力である。伝統の根を守り、枝葉を剪定する。その作法で政治を“浄化”し、社会を“調和”へ導く。だからこそ、今は拙速に旗を振る時ではない。党の信頼を磨き、生活の実感を作り、政権の枠組みを定める。順序を守ってから、堂々と信を問う。

最後にもう一度だけ言う。焦って解散はしない方がいい。高市政権は、霊性の文化が教える「時を待つ徳」と、保守が示す「原理に立脚した変革」を重ね合わせ、春に勝つ準備を整えるべきだ。数字は待ってくれる。だが、信頼は準備の先にしか生まれない。

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高市外交の成功が示した“国家の矜持”──安倍の遺志を継ぐ現実主義 2025年11月2日
就任直後から米・印・ASEANに手を打ち、FOIPの再起動で「対話による抑止」を具体化。理念と実務を結ぶ高市外交の骨格を読み解く。

詐術の政治を超えて──若者とAI、そして高市所信表明が示した新現実 2025年10月26日
レトリックに流されない“検証可能な政治”を提唱。AI時代の情報環境と高市所信表明をつなぎ、霊性と現実主義の接点を示す。

高市総理誕生──日本を蝕んだ“中国利権”を断て 2025年10月21日
政治資金スキャンダルの次元を超える「利権ネットワーク」を直視。権力の浄化なしに安全保障も経済も立たないと論じる。

日本初の女性総理、高市早苗──失われた保守を取り戻す“再起動” 2025年10月20日
「壊すための改革」ではなく「守るための改革」。保守の信頼を回復するリーダー像と政策優先順位を整理。

石破政権は三度の選挙で国民に拒絶された──それでも総裁選で続投を狙う愚 2025年8月25日
連敗の事実とメディア環境の偏りを検証し、政党内手続きが民意を代替できない危険を指摘。保守再生の条件を逆照射する一篇。

2025年11月3日月曜日

山上裁判が突きつけた現実──祓(はら)いを失った国の末路


まとめ

  • 山上容疑者の「宗教二世の悲劇」は虚構であり、父の自殺や母の破産、兄の病など主要な不幸は統一教会入信以前または本人の自立後に起きているため、宗教との因果関係は薄い。
  • 日本人の「霊性の文化」とは、他人を責めず己を省みる心であり、神道の祓(はらい、祓え)に象徴される内省の倫理が潜在意識に根づいてきたが、現代はそれを失い外に敵を求めるようになっている。
  • マスコミは事実の検証よりも感情を優先し、全国紙が同じ見出しで報道するなど「第二の加害」とも言うべき同調報道を行い、社会全体が山上の誤った因果を共有する結果になった。
  • 事件そのものにも、警備の不備、発砲音や煙、弾道と致命傷説明の矛盾など多くの不審点があるにもかかわらず、報道は「宗教問題」へ論点を固定した。
  • 安倍暗殺は日本人の精神性崩壊の象徴であり、「日本死ね」「安倍政治を許さない」などの言葉の暴力がその前兆で、現在の高市早苗氏へのマスコミ攻撃もその延長線上にある。

安倍晋三元首相が凶弾に倒れてから三年。奈良地裁で続く山上徹也被告の公判は、いまも世論を揺らしている。
検察は計画的な殺人として死刑を求める構えを見せ、弁護側は「母親の信仰に苦しんだ宗教二世の悲劇」として情状酌量を訴える。だが、法廷で明らかになりつつある事実は、マスコミが作り上げた“物語”とはあまりに違う。
本稿では、山上の生い立ちを時系列で整理し、統一教会との関係を冷静に見直した上で、事件を覆う報道の異様さと、日本人が忘れかけた「霊性の文化」の視点からこの事件の本質を考えたい。

1️⃣山上の境遇を時系列で検証する──「宗教二世の悲劇」は虚構である


山上徹也の人生は「宗教に翻弄された悲劇の息子」としてセンセーショナルに語られてきた。だが、事実を時系列で追えば、その構図は根底から崩れる。

父親の自殺は1984年。母親が統一教会に入信する七年前のことであり、当時、彼女が傾倒していたのは別の団体「朝起き会」だった。兄の小児がんも信仰とは無関係の病気である。母親が破産したのは2002年。山上はすでに海上自衛官として自立しており、妹も十九歳。母の破産が家庭を崩壊させたとするのは不自然だ。むしろ子どもが巣立った後に信仰にのめり込み、資金を使い果たした結果の破産だったと見る方が筋が通る。

山上自身の自殺未遂も、本人が語る「兄妹の生活費のため」という説明には無理がある。当時、妹は成人しており、兄も高校を卒業していた。生活を支える必要性は乏しく、むしろ山上自身の精神的な混乱が原因だったと考えられる。
さらに兄の自殺(2015年)を宗教のせいにする根拠もない。教育面の報道にも誤りが多く、「同志社中退」「京大に入れた」という話は事実ではない。母親は息子を名門高校に通わせており、妹も宗教による被害を否定している。

こうして整理すれば、山上家の不幸の多くは統一教会入信以前、あるいは本人が自立した後に起きている。つまり、「宗教が家庭を壊した」という構図は成り立たない。山上は、己の不幸を宗教のせいにし、さらにそれを政治的対象にすり替えた。彼は“被害者”ではなく、誤った因果を信じた“加害者”だったのである。

2️⃣日本人の「霊性の文化」──無意識に受け継がれる心の規律

日本の霊性の文化とは、他人を責めず、まず自らを省みる心の在り方である。古来より我が国では、災いや不運に直面しても、外に原因を求めず、己の内を清めようとしてきた。神道の祓(はらえ)は、悪を他者に転嫁するための儀式ではなく、心を正し、穢れを祓う行為である。

この精神は、多くの日本人が明確に意識しているわけではない。だが、無意識のうちに深く刻み込まれている。
神社の鳥居をくぐるときに自然に一礼し、墓前に立てば静かに手を合わせる。その姿に、我が国の霊性の文化は今も息づいている。善悪を超えて“清め”を尊び、自然との調和を重んじる感覚――それが日本人の魂の奥底にある。


霊性の文化は、特定の宗教を信じることではない。
自然、祖先、社会の秩序と調和して生きようとする心の態度だ。古来の神道においても、悪を罰するより、まず心を整えることが重んじられた。行いを正し、他人を思いやり、争いを避ける。その積み重ねが「和」を生んだ。
しかし、近代以降の合理主義が進む中で、この精神は言葉を失った。だが、それでも日本人の潜在意識の奥には今も息づいている。

この霊性を忘れたとき、人は不幸の原因を外に探し、他者を責め始める。山上の行為は、まさにその典型であった。自らの苦悩を省みず、外に敵を作って憎悪に変える。霊性を失った現代日本の危うさが、そこに凝縮されている。

3️⃣報道の同調と「第二の加害」──そして事件に潜む不可解な闇

本来、事実を冷静に伝えるべきマスコミが、この事件では感情を煽る役割を果たした。
父の自殺、母の破産といった時期の異なる出来事を一括りにし、「宗教二世の悲劇」と報じ続けた。事実の検証より“共感”を優先し、山上の動機を美化した報道があふれたのである。

特に異様だったのは、暗殺の翌日、全国主要紙の一面見出しが軒並み同じ構成だったことだ。
「銃撃」「旧統一教会」「安倍元首相と宗教団体」――この三語が全国の紙面を埋め尽くした。まるで一つの脚本に基づいていたかのように、どの社も同じ語り口で事件を描いた。
異なる編集方針を掲げる新聞が、同じ方向へ一斉に流れる。その同調ぶりは、日本の報道界に根深い“忖度”と“自己検閲”の存在を示していた。

安倍氏暗殺の翌日の主要紙、地方紙新聞見出し

報道が同じ方向を向いた瞬間、社会は思考を止める。
「なぜ守られなかったのか」「なぜ撃たれたのか」という根源的な問いがかき消され、「統一教会と政治」という筋書きだけが残った。
これこそが“第二の加害”である。山上が抱えた誤った因果を、マスコミが国民全体に拡散させたのだ。

さらに事件そのものにも、いくつもの不可解な点が残っている。
SPの動きの遅さ、発砲の間隔、弾道の方向、そして未発見の弾丸。映像では花火のような鈍い音と白煙が映り、黒色火薬の使用をうかがわせるが、警察の説明は「無煙火薬」だった。医療側は「頸部損傷」、警察は「上腕損傷」と説明を変え、致命傷の特定も揺れている。
単独犯が自作の銃でこれほどの威力を再現できたのか――疑問は残る。

だが、マスコミはこれらを深く掘り下げず、「宗教問題」としての枠に押し込めた。結果、事件は「安倍政治の終焉」という政治的物語にすり替えられた。まるで銃弾ではなく、情報の奔流が安倍晋三を葬ったかのようだった。

我が国の霊性の文化は、本来こうした「不可視の悪意」を察する感性を持っていた。
だが現代の日本は、その直観を失い、表面的な物語に酔っている。安倍晋三という政治家の死を、誰がどう利用したのか――そして、本当に山上単独による犯行だったのか。その前提すら疑う勇気を、私たちは取り戻さねばならない。

それこそが、我々が見失った「真実への祓い」の道である。

4️⃣精神の崩壊としての暗殺──「言葉の暴力」が生んだ日本の危機


安倍晋三暗殺事件は、単なる政治テロではない。
それは、日本人の精神が崩れかけていることを示す“鏡”だった。

「日本死ね」――この言葉が流行語大賞に選ばれたとき、私は背筋が凍った。
「安倍政治を許さない」「安倍を叩き切ってやる」「安倍が死んでよかった」。
これらの言葉は、事件の数年前から社会に充満していた“怨嗟の毒”である。
それを、政治的主張の一部として拍手喝采したメディアや知識人がいた。
その瞬間、我々はすでに“言葉の殺人”を始めていたのだ。

安倍の命を奪った銃弾は、冷たい金属ではなく、長年積み重なった憎悪の言葉が形を変えたものだった。
この事件は、一人の男の狂気ではなく、社会全体が育てた“集団の病”である。
日本人が長い歴史の中で培ってきた「祓い」「慎み」「敬い」の心が失われ、
罵倒と正義が混ざり合う“暴言の時代”が生まれてしまった。

この流れは今も続いている。
マスコミが高市早苗氏を標的にし、根拠の薄い疑惑を繰り返し報じる姿は、
まるで“第二の安倍狩り”だ。
彼女が女性であれ保守であれ関係ない。
「憎む相手を作り、集団で叩く」――それが今の日本社会の快楽になっている。
これほど霊性を失った姿があるだろうか。

かつて日本人は、他人の不幸を喜ぶことを恥じとした。
他者を悪しざまに罵れば、自分の魂が穢れると知っていた。
だが今や、言葉の刃を振るう者が“正義”の顔をしている。
これこそ、日本人の精神性崩壊の危機である。

安倍暗殺事件は、その頂点だった。
山上が引き金を引く前に、すでに我々は「祓い」を忘れ、
言葉で互いを撃ち合う国になっていたのだ。

霊性を取り戻さねば、この国は再び誰かを“正義”の名のもとに殺すだろう。
安倍晋三の死を無駄にしないために、我々が向き合うべき敵は他人ではない。
それは、我々自身の心の荒廃である。

そして、この言葉は決して「リベラル・左派」などにだけ向けられたものではない。
自らを「保守」と呼ぶ人々が、これを他人事として切り捨てるなら、それこそが霊性を失った証である。
「霊性の文化」とは、信条や立場の違いを超えて、己の内に潜む驕りと憎悪を祓い清める力のことであり、
それを欠けば、右も左も同じく“正義”という名の暴力に呑まれる。

保守であれリベラル・左派であれ、真の危機は思想の違いではない。
我々一人ひとりが、言葉の刃で他者を断罪し、自らの心を荒らしてゆくことこそが、この国を蝕む病である。
「霊性を取り戻す」とは、信念を捨てることではなく、信念を祓い清めてもう一度“祈りの国”を思い出すことなのだ。

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総裁選後の保守再結集を「国民覚醒の環」というキーワードで位置づけ、FOIP戦略本部の役割とメディア環境への対抗軸を整理。

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世界が霊性を取り戻し始めた──日本こそ千年の祈りを継ぐ国だ 2025年9月30日
SBNRの潮流を日本固有の「二重の祈り」(天皇の祈り/庶民の祈り)に接続し、現代政策への含意を提示。

奈良の鹿騒動──高市早苗氏発言切り取り報道と拡散、日本の霊性を無視した攻撃が招く必然の国民の反発 2025年9月29日
「切り取り報道」の実態を検証し、奈良の神鹿という霊性的文脈を踏まえた発言解釈の必要性を具体例で示す。


2025年11月2日日曜日

高市外交の成功が示した“国家の矜持”──安倍の遺志を継ぐ覚悟が日本を再び動かす


まとめ
  • 高市首相は就任直後から迅速に外交を展開し、米・印・ASEANとの関係を再構築した。2025年の習近平主席との会談では日中対話を復活させ、これは自民党の戦略本部が事前に高市政権を想定して準備していた成果である。
  • 高市外交の根底には、安倍晋三の「自由で開かれたインド太平洋」構想があり、理念と現実を結ぶ「対話による抑止」を実践した点に真価がある。安倍が築いた戦略的一貫性を忠実に継承した。
  • 安倍・菅政権は国債発行による約100兆円の補正予算で失業率と医療崩壊を防ぎ、総需要・雇用・医療を同時に守り抜いた。まさに我が国財政政策の世界に誇れる金字塔である。財務省は緊縮論崩壊を恐れ沈黙した。
  • 岸田政権の「新しい資本主義」、石破政権の「新しい安全保障」などは耳障りの良いだけのスローガンで、安倍の成功モデルを放棄した結果、外交は迷走し経済も停滞した。言葉だけの“新しさ”が国家を鈍化させた。
  • ドラッカーの説く「改革の原理としての保守主義」は、安倍政権の成功を導いた実証の原理である。岸田・石破両政権はこれを無視して失敗したが、高市政権は再びこの王道に立ち戻り、日本再生の道を示した。
1️⃣高市外交の即応力と戦略的勝利


高市早苗首相は就任直後から、驚くべき速さで外交を動かした。米国のトランプ前大統領との会談を皮切りに、インドのモディ首相、ASEAN諸国の首脳らと相次いで協議を行い、短期間で日本外交の信頼を取り戻した。こうした一連の成果の頂点が、2025年10月31日、韓国・慶州で行われたAPEC首脳会議での中国国家主席・習近平との会談である。

この会談で両首脳は、「相互利益を高める関係を築く」と確認し、長く停滞していた日中高官レベルの対話を再開させた。日本側は東シナ海や南シナ海における中国の活動、希土類輸出規制、日本人拘束事件などの懸案を率直に伝えた。高市外交は、対立でも融和でもない。“言うべきことは言う”という現実的外交だった。これは安倍晋三が打ち立てた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の理念を、実際の行動に移したものである。

多くのメディアは、会談の成果よりも「実施された」という事実だけを淡々と報じた。だがその裏には、緻密な準備があった。2025年5月、自民党「自由で開かれたインド太平洋戦略本部」は麻生太郎副総裁を本部長に、前国家安全保障局長の秋葉剛男氏を招き、次期政権の外交方針を具体的に検討していた。高市政権の誕生を見越し、政権発足と同時に外交を再始動できる体制が整えられていたのだ。

高市外交の即応力は偶然ではない。党の設計力、政府の実行力、そして安倍晋三が遺した国家戦略が、すべて噛み合った結果である。安倍外交を忠実に継承しつつ、より現実的な判断で国益を守る――それが高市外交の真の力である。

2️⃣危機を乗り越えた財政の金字塔と沈黙する財務省

高市外交の背景には、安倍・菅両政権が築いた経済政策の成果がある。新型コロナの危機に際し、政府は増税を行わず、国債発行による約100兆円規模の補正予算を決断した。雇用調整助成金や持続化給付金などの制度が機能し、失業率は3%台に抑えられた。欧米で見られたような急激な雇用喪失も、医療崩壊も起こらなかった。

この三本柱――「総需要の維持」「雇用の確保」「医療体制の維持」――を同時に達成した国はほとんどない。まさに我が国財政政策の世界に誇れる金字塔として記録されるべき成果である。

現財務次官新川浩嗣氏

しかし、メディアはこの因果をほとんど報じなかった。そのため、菅政権はあたかもコロナ対策に失敗したかのようにマスコミなどに扱われ、短命に終わったが、岸田政権の半ばまで経済が比較的安定していた理由を、多くの国民が理解できなかった。財務省もまた、この成功には一切触れなかった。安倍政権が「増税なき国債発行」で危機を乗り切ったと認めれば、「国債=将来世代への負担」という彼らの持論が崩れるからだ。下手に批判すれば、緊縮財政の誤りが露呈し、積極財政の正しさが明らかになってしまう。ゆえに財務省は沈黙したのである。マスコミも右に倣えだった。

岸田・石破両政権は、安倍流の積極財政を受け継がず、財務省の意向に沿って緊縮へ舵を切った。安倍が築いた「すでに成功した方法」を捨て、“耳障りの良い理想”を掲げるだけの政治に転落した。その象徴が岸田政権の「新しい資本主義」である。格差是正と成長の両立をうたいながら、実際には増税と配分偏重を正当化する口実にすぎなかった。石破政権も「新しい安全保障」「持続的共生社会」といった曖昧な言葉を並べたが、現実を動かす力は何一つなかった。

安倍時代に証明された成功の方程式――経済・安全保障・外交を一体で動かす国家運営――を捨て、「新しさ」を演出するだけの政治に堕したことこそ、日本衰退の最大の要因である。それを高市総理はしっかり認識している。

3️⃣「改革の原理としての保守主義」──安倍の遺産を継ぐ高市政権

衆院本会議で、立民主議員の質問を聞く安倍首相(右)と高市総務相(肩書は当時)=2020年2月13日

高市早苗の政治姿勢の根底には、安倍晋三が遺した思想がある。その考え方を最も正確に言い表しているのが、ピーター・ドラッカーの『産業人の未来』の一節だ。
保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会をもつための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していくという原理である。これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらすこと必定である。
安倍政権の外交・安保・経済政策は、この原理に忠実だった。理想を掲げながらも、手法は常に現実的であり、実証済みの政策を積み上げて成果を出した。「自由で開かれたインド太平洋」「日米同盟の深化」「国債による機動的財政出動」――いずれも机上の理論ではなく、現実の行動だった。だからこそ、憲政史上最長の政権を築けたのだ。

岸田・石破両政権は、この原理を完全に無視した。安倍の成功を「古い」と切り捨て、「新しい資本主義」「新しい安全保障」といった看板を掲げ、言葉の新しさで中身の空洞を覆い隠した。理念を再定義するふりをして、実績を否定したのである。結果として外交は迷走し、経済は鈍化し、国民の信頼は失われた。両政権の凋落は、政治資金問題でも、統一教会問題でも、派閥政治でもない、本質はすでに成功が実証された安倍路線の継承をしなかったことにある。

ドラッカーの言葉は現実となった。「これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらす」。岸田・石破政権の失敗こそ、その実例である。だが一方で、高市政権は再び安倍が示した道へ戻った。実証された手段を基盤とし、現実を見据えて未来を切り開く――それが“改革の原理としての保守主義”である。

結語

高市早苗の外交は、偶然でも演出でもない。党の戦略、政府の実務、そして安倍晋三が遺した国家理念が一体となって結実した成果だ。理念を現実に変える力、成功した方法を磨き続ける知恵――これこそが真の保守であり、真の改革である。

日本が再び世界で存在感を取り戻すためには、「すでに成功した道」に立ち返ることだ。高市外交の成功は、その第一歩であり、我が国が再び世界の舞台で輝くための確かな道標である。

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