2024年4月18日木曜日

竹中平蔵氏「ルール違反」 髙橋洋一氏「全然最初から間違っている」 子ども・子育て支援法についてピシャリ指摘―【私の論評】財務省の企み「異次元の少子化対策」の隠れ増税、放置すれば将来は特別会計のような複雑怪奇な税制になりかねない

竹中平蔵氏「ルール違反」 髙橋洋一氏「全然最初から間違っている」 子ども・子育て支援法についてピシャリ指摘

まとめ
  • 4月17日、慶應義塾大学の竹中平蔵氏と数量政策学者の髙橋洋一氏がラジオ番組に出演し、子ども・子育て支援法の改正案について議論した。
  • 竹中氏は、この改正案が保険制度の目的外使用であり、隠れ増税につながると指摘した。また、野党がこの点を国会で追及しないことを疑問視した。
  • 髙橋氏は、この支援金が本来の保険制度とは異なるものであり、法案自体に問題があると述べた。
  • 番組司会者の質問に対し、髙橋氏は自動車保険の「偶発的なリスク」と子育て支援は全く異なると反論した。
  • 今後の国会審議に注目が集まっている状況だと締めくくられた。
https://www.youtube.com/watch?v=ws8llLwliX0

 4月17日、慶應義塾大学の名誉教授で経済学者の竹中平蔵氏と、数量政策学者の髙橋洋一氏がラジオ番組に出演し、子ども・子育て支援法の改正案について激しい議論を交わしました。

 この日の番組では、少子化対策を強化した子ども・子育て支援法の改正案について、前日の衆議院特別委員会での質疑が取り上げられました。

 竹中氏は、この改正案が保険制度の目的外使用であり、隠れ増税になる可能性があると指摘しました。そして、なぜ野党がこの点を国会で追及しないのかを疑問視しました。野党だけでなく、与党の内部でもこの問題を認識している人がいるはずだと述べました。

 一方の髙橋氏は、この支援金は本来の保険制度の枠組みから外れたものであり、保険の目的とは異なると批判しました。仮に国民の負担が増えないのであれば、すぐにでも制度を改めるべきだと主張しました。

 番組司会者が、自動車保険の例を挙げて質問を重ねると、髙橋氏は、自動車保険の「偶発的なリスク」と子育て支援は全く異なるものだと明確に反論しました。

 この議論を受けて、今後の国会審議に注目が集まっている状況だと締めくくられました。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】財務省の企み「異次元の少子化対策」の隠れ増税、放置すれば将来は特別会計のような複雑怪奇な税制になりかねない

まとめ
  • 「異次元の少子化対策」の財源について、当初の見積りより大幅に増加し、国民負担が大きくなることへの批判
  • 理想の子ども数と実際の出生数のギャップを解消するため、政府が手厚い少子化対策を講じようとしているが、その方針には問題があるとの指摘
  • 保険特別会計から子育て支援の財源を捻出しようとすることについて、本来の保険制度の目的と矛盾するため、事実上の隠れ増税になる可能性があるとの指摘
  • 消費税の社会保障財源化と保険特別会計の流用は、財務省主導の既存制度の枠組みを利用した新たな財源確保の手段であり、国債発行を避ける意図が反映されているとの分析
  • このような財務省主導の隠れ増税策を許容すると、複雑怪奇な税制・社会保障制度が構築され、透明性と理解が失われる可能性があるため、早期の十分な議論と国民合意が必要

加藤こども政策担当相

岸田首相が掲げる「異次元の少子化対策」の財源となる「子ども・子育て支援金」について、当初は国民1人あたり月300円~500円程度の負担と言われていたのですが、最近になって「1000円超もありうる」と加藤こども政策担当相が認めたことで、批判が殺到しています。

日本総研の2月14日の国民調査では、平均して理想の子ども数は2.25人と高い一方で、実際の出生数は減少傾向にあり、2023年は前年比4万人以上減の72.6万人、合計特殊出生率は1.20程度になる見通しです。

政府は、子育てや教育の費用がかかりすぎるというこのギャップを解消するために、手厚い少子化対策を講じることにしました。過去にも上川前少子化担当相が、手厚い家族政策と国民負担はセットだと発言しており、岸田政権の考え方と同様のものでした。

しかし近年の報告では、この政府の方針では少子化問題を解決できないという指摘がなされています。このブログにも従来手厚い少子化対策で成功してきたフランス、イスラエル、北欧などでも、少子化傾向にあり少子化には具体的な手立てはないと指摘してきました。

そうして、最近公表された米国・ワシントン大学のInstitute for Health Metrics and Evaluation(IHME)が主導する研究活動【Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2021】の最新の分析がなされています。

その分析の骨子は以下のようなものです。
  • 1950年以来すべての国で減少している世界の出生率は、今世紀末まで急落し続け、その結果、深刻な人口動態の変化が起こる。出生率は、1950年の4.84から2021年には2.23となり、2100年には1.59まで下がり続ける。 
  • 育児補助金、育児休暇の延長、税制優遇措置など、一部の国が実施している出産促進政策の効果も調べた。その結果、出産促進政策が実施された場合、女性1人当たりの出生数の増加は0.2人以下であり、強力で持続的な回復を示唆するものではなかった。 
  • 子育て支援政策は、他の理由からも社会にとって有益かもしれないが、現在の人口動態の変化の軌道を変えるものではない。
結局、上川氏、岸田首相、加藤担当相らの考え方は、間違いであり。従来の少子化対策といわれるものにはほとんど効果はないのです。

さらに、竹中氏と、高橋氏が指摘しているように、この改正案そのものに問題があります。

竹中氏と高橋氏が指摘している保険制度とこの改正案の関係について、説明します。

子ども・子育て支援法の改正案では、この支援制度の財源を社会保険の特別会計から拠出することが盛り込まれています。

竹中氏の指摘は以下のような意味合いです:
  • 本来、社会保険制度は特定の偶発的なリスク(病気、事故など)に備えるためのものです。
  • ところが、この改正案では保険制度の目的とは異なる子育て支援に保険財源を充てようとしている。
  • これは保険制度の目的外使用であり、本来の保険料の使途とは異なるため、事実上の隠れ増税になる可能性がある、という趣旨です。
一方の高橋氏は、さらに踏み込んで以下のように指摘しています:
  • 子育て支援は保険制度の対象とは本質的に異なるものである。
  • したがって、保険特別会計から支援金を支出するのは適切ではなく、法案自体に問題がある、というのが高橋氏の主張です。
つまり、両氏は、この改正案が保険制度の枠組みを逸脱しているため、制度上の問題があると指摘しているのです。

子育て支援のための財源を社会保険の特別会計から捻出することについて、保険制度本来の目的と異なるため、事実上の隠れ増税になる可能性があるという指摘があります。保険料を本来の目的以外に流用するのは適切ではないという指摘です。

さらに、国民の負担が大幅に増加する可能性についても、批判が強まっています。当初の300-500円程度の負担が、1000円を超える可能性があることが明らかになり、国民の反発を招いています。 経済的負担の増大は、少子化対策の目的に反する結果を招きかねません。

また、こうした大幅な国民負担の増加に対して、国会での十分な議論と国民合意が得られていないことも問題視されています。 少子化対策は重要な政策課題ですが、制度設計や財源措置については慎重な検討と理解が必要不可欠です。

日本の社会保障給付総額は約134.3兆円に上る一方、その財源は保険料が77.5兆円、公費が53.2兆円などとなっています。社会保障の中心をなす年金、医療、介護は本来「保険」制度であるにもかかわらず、日本では社会保険料の割合が半分程度にとどまり、税による公費負担の割合が相対的に大きいです。(数値は、一昨年度の「社会保障給付費」:厚生労働省「国民経済計算」
「社会保障財源」:内閣府「経済財政白書」)。

この背景には、日本が先進国の中で唯一、消費税を社会保障目的税として位置づけていることがあります。一方で日本には歳入庁がなく、社会保険料の徴収が効率的に行われていないのが実情です。

本来は税と社会保険料の一体的な徴収体制を整備することが先決です。しかし、財務省の反対もあり、歳入庁の創設は容易ではありません。日本の社会保障制度には、根本的な制度設計の問題があるのです。

保険の特別会計から子育て支援の財源を捻出しようとすることと、消費税を社会保障の財源として位置づけることには、共通した性質があります。

まず、これらの制度変更は、本来の目的とは異なる用途に財源を充てようとするものです。保険の特別会計は本来、保険制度の運営のためのものですが、それ以外の子育て支援に使おうとしています。同様に、消費税は一般財源として使われるべきものが、社会保障費の財源として組み入れられようとしています。つまり、両者とも本来の制度目的から逸脱しているのです。

財務省は、財政健全化を最優先課題としていますが、その際に国債発行を極力抑えようとしています。財務省にとっては、国債発行は財政の柔軟性を損なう一方で、金利上昇リスクも伴うため、財務省にとって好ましくない選択肢だからです。

茶谷財務次官

以前も述べたように国債発行は財務省が主張するような好ましくない選択肢というわけではありません。以前もこのブログで主張したように、安倍・菅両政権では合計で100兆円のコロナ対策補正予算を組んで、コロナ対策を実施しました。それによって、日本ではコロナ禍でも、失業率はあがりませんでした。

財源はすべて国債でしたが、これによる弊害はありませんでした。もし弊害があれば「それみたことか」と財務省やその走狗たちが今頃その弊害を喧伝しているはずです。

財務省は、国債発行を避けつつ、財政健全化を果たすために、既存の制度の枠組みを活用することで、新たな財源を確保しようとしているのだと指摘できます。保険特別会計の流用や消費税の社会保障財源化は、国債発行に頼らずに財源を捻出する手段なのです。

国民の新たな負担増加を招く一方で、制度の信頼性を損なう可能性もあるこの動きは、財務省の国債発行忌避の姿勢が強く反映されているものと理解できます。

これらの制度変更は、財政健全化を何よりも優先する財務省の企みであり、本来の制度趣旨を無視した実質上の増税策なのです。

国民の負担増加を伴う一方で、制度の信頼性を損なうリスクもあることから、こうした財務省主導の動きは大問題です。

これらの動きを野放しにしておくと、財務省がさらに創造的な隠れ増税策を編み出していく可能性があります。既存の制度の枠組みを利用しながら、国民の負担を増やしていくような手法が増えていくかもしれません。

そうなると、全体としての税制や社会保障制度が非常に複雑化し、不透明になっていきます。国民にとっても、自分がどのような負担をしているのか把握するのが難しくなっていきます。

現状の特別会計のように、本来の制度目的とは関係ない資金が積み増しされ、財政全体が非常に複雑化していく危険性があります。結果として、財政の透明性が失われ、国民の理解や信頼を損なう可能性が高まるでしょう。

特別会計に金を溜め込む財務官僚

このような財務省主導の隠れ増税策を許容してしまうと、徐々に税制や社会保障制度が不可解なものへと変容していってしまう可能性があります。速やかに国会での十分な審議と国民的合意を得る必要があります。

今回の「異次元の少子化対策」のは、こうした財務省の企みに光をあてたという点で、大きな意味があったと思われます。ただし、この事実と背景を理解すべきです。

今後、このような隠れ増税策への警鐘が広く共有されることで、少子化対策をはじめとする重要な政策課題について、より健全な議論と制度設計が行われることを期待したいです。

少子化対策の強化に向け、財源として「支援金制度」の創設を盛り込んだ子ども・子育て支援法などの改正案は、衆議院の特別委員会で、自民・公明両党の賛成多数で可決されました。改正案は19日、本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。

残念ながら、この法案は成立する可能性が高いです。これに味をしめて財務官僚がさらに実質上の増税を企てるかもしれません。この動きを阻止すべく私達は、この動きに注視していくべきです。

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2024年4月17日水曜日

日銀の「円高症候群」過度に恐れる米国の顔色 アベノミクス切り捨て財務省と協調、利上げと負担増が日本を壊す―【私の論評】現時点の円高誘導は、円高シンドロームの再燃、日本経済への破滅的な悪影響もたらす

ニュース裏表

まとめ
  • 「円高シンドローム」とは、長期にわたる過剰な円高ドル安状況を指す言葉である。
  • その発端は1985年のプラザ合意で、米国レーガン政権が日本などに対してドル安誘導を強要したこと。
  • しかし、経済学的には貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤りだった。
  • にもかかわらず、その後も政治的圧力により円高が続き、日本の政策当局(日銀と財務省)も対米従属を優先して円高を誘導した。
  • その結果、バブル崩壊やデフレ長期化など、日本経済に深刻な影響が生じた。現在も財務省と日銀は円安抑制に動いているが、国内景気への悪影響が懸念される。 

ブラザ合意後円高水準が続いている

 「円高シンドローム」とは、長期にわたって円が過剰な高水準で推移し続けた経済状況を指す用語だ。その発端は1985年のプラザ合意にありました。当時の米国レーガン政権は、累積する貿易赤字を解消するため、日本など諸国に対してドル安誘導の協調介入を政治的に強要したのだ。

 しかし、経済学的に見れば貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤った政策判断に基づくものでした。それにもかかわらず、その後も共和党、民主党を通じて、政治的な圧力により円高が続きました。

 日本の政策当局、すなわち日銀と財務省も、国内経済よりも対米従属を優先し、為替介入や金融緩和により円高を誘導し続けた。その結果、バブル経済の発生と崩壊、長期デフレ不況といった深刻な経済的影響を招くこととなった。

 現在、植田日銀体制では再び円安抑制に動き出しており、金融引き締めを通じた円安防止策をとりつつある。しかしこれは国内景気を冷やしかねず、また物価高対策にも影響を及ぼすおそれがある。

 政策当局には、国内経済の実情を冷静に見極め、適切な通貨・金融政策を採用することが求められている。「円高シンドローム」の反省に立ち、健全な経済成長を実現するための施策が重要となっているのである。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧ください。

【私の論評】現時点の円高誘導は、円高シンドロームの再燃、日本経済への破滅的な悪影響もたらす

まとめ
  • 貿易赤字や黒字は国内需給の均衡状態を反映しているが、為替レートは資金の国際移動で決まるため、両者は基本的に独立している。
  • プラザ合意のような為替レート操作は、本来の経済原理に反するものであり、マッキノン教授らも強く批判している。
  • 1980年代以降の日本の円高傾向は「円高シンドローム」と呼ばれ、日本政府の対応の失敗により長期的な経済歪みを招いた。
  • しかし、安倍政権下の金融緩和政策により、円高が是正されデフレからの脱却が進んだ。
  • 現在では各国政府も日本の政策姿勢を理解しており、強い批判は見られなくなっている。日本は、金融緩和を継続し、国内産業を支援し、消費税減税などをするのが正しい政策てあって、円高誘導は間違いである。
経済学の標準的な理論によれば、国際収支の赤字や黒字は、総需要と総供給の均衡状態を反映しているものです。つまり、自国の国内需要が自国の供給能力を上回れば貿易赤字となり、逆に国内需要が供給を下回れば貿易黒字となります。

一方、為替レートは、国際的な資金の移動によって決まります。資金が流入すれば自国通貨高となり、流出すれば自国通貨安となります。

つまり、貿易赤字というマクロ的な現象と、為替レートというマクロ的な現象は、基本的に独立して決まるものなのです。

例えば、日本の貿易収支の赤字は、日本国内の需給バランスの状況を反映したものですが、一方で円高ドル安は、日米間の資本移動や投資家心理などによって決まっているのです。

よって、政策当局が為替レートを操作することで、容易に貿易収支を改善できるというのは、経済学的に正しくありません。プラザ合意のような為替介入は、本来の経済原理に反するものだったと言えるのです。

上の記事にでてくる「円高シンドローム」という言葉は現在スタンフォード大の名誉教授である、ロナルド・マッキノン氏が最初につかいはじめました。

マッキャノン氏の著書


マッキノン氏は、1980年代半ばからの長期にわたる円高ドル安を「円高シンドローム」と呼称し、その弊害を指摘しています。その中心的な論点は以下の通りです。

マッキノン氏は、プラザ合意以降の急激な円高は、本来の経済調整メカニズムを歪めてしまったと分析しています。通常、貿易収支の赤字国の通貨は自然と下落していくはずですが、日本政府による為替介入で円高が促進されたことで、この健全な調整プロセスが阻害されたのです。

その結果、日本の輸出企業の収益が圧迫され、国際競争力が低下しました。しかし、日本政府は、この円高に対して適切に対応しませんでした。むしろ、財政支出の削減や金融引き締めなどの失敗した政策対応をとったため、かえって財政赤字の増大や超円高、デフレなどの経済的歪みを生み出してしまったと指摘しています。 

つまり、マッキノン氏は、為替レートの人為的な操作が、本来の市場メカニズムを損なっただけでなく、日本政府の政策的な失敗も重なり、長期的な経済の歪みを招いたと警鐘を鳴らしているのです。

この分析は、クルーグマンやスティグリッツ、バーナンキなどのノーベル経済学賞受賞者の見解とも共通するところがあります。彼らも、為替レート操作による経済歪曲の危険性を指摘しており、マッキノン氏の指摘は、そうした国際的な経済学者の問題意識と軌を一にしていると言えるでしょう。

2012年に安倍晋三氏が首相に就任すると、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が導入されました。その中核となったのが、日銀による大胆な金融緩和策でした。

この金融緩和政策によって、長年続いた円高傾向が是正され、円安基調に転じていきました。これにより、日本の輸出企業の収益改善や国際競争力の回復が見られるようになったのです。

つまり、安倍政権の登場と、その下で実施された金融緩和政策は、まさに「円高シンドローム」からの脱却につながったと言えるのです。マッキノン氏らが懸念していた経済の歪みは、徐々に解消されつつあったと考えられます。



特に、この頃から実施された金融緩和政策に関しては、他国から批判されていません。米国政府は当初、日本の金融緩和策に対して批判的な姿勢を示していたものの、近年ではデフレ脱却と経済成長を重視する日本の政策姿勢を理解する傾向にあるようです。

一方、中国も円安傾向に対する警戒感は示していたものの、自国の通貨政策を展開していることから、日本の政策に大きな異議を唱えるには至っていません。韓国も、日本の金融緩和による円安が輸出企業に影響すると懸念していたようですが、自国の通貨政策を通じて輸出競争力を高めてきた経緯があり、強硬な批判は行っていないのが現状のようです。

つまり、当初は各国が日本の金融緩和策に対して警戒感を示していたものの、最近では日本の政策姿勢を理解する傾向にあり、大規模な批判は見られなくなってきているということができます。プラザ合意の際のような強い政治的圧力は、現時点では生じていないようですし、これからも生じる可能性は低いです。

それに独立国家であれば自国内の経済のために、独自の金融政策を実施するのは当然の権利であり、これに反対するような国にはその誤りを指摘しつつ、独自の金融政策を実行するのが本来のありかたです。

さらに、プラザ合意なる誤った政策が実施される背景ともなった幼稚な「通貨戦争」のような概念も廃するべきです。ある国が、輸出を有利にするために金融緩和策をいつまでも継続しているとどうなるでしょうか。いずれかなりのインフレに見舞われて、緩和政策を続けられなくなります。そうして、いずれ引き締めに転じることになります。「通貨戦争」は空想の産物に過ぎません。

通貨戦争 AI生成画像

日本が金融緩和政策を実施しているのは、あくまで国内事情のためであり、需給ギャップがマイナスである日本では、未だ緩和策を継続する必要があります。しかし輸出入を行っているために、国内では海外からの影響も受けます。それに対する調整をする必要があります。

その調整策は、円安で有利になる輸出企業(大企業が多い)の法人税収入は増えるので、それを活用するなどして、輸出産業以外の産業(国内向け、輸入産業、中小企業が多い)支援をし、減税などで消費者を支援する政策などが、正しい政策であって、円高誘導などとんでもあません。

現時点での円高誘導は「円高シンドローム」の再来であり、日本経済に大きな悪影響を及ぼすことになります。

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2024年4月16日火曜日

発展途上国は気候変動対応で債務不履行の恐れ=米大学報告―【私の論評】中国の「一帯一路」政策と同様に、先進国の途上国に対する気象変動対策支援も馬鹿げている

 発展途上国は気候変動対応で債務不履行の恐れ=米大学報告

まとめ

  • 発展途上国の対外債務返済額が過去最大の4000億ドル(約54兆円)に達する見通し
  • 約50カ国が気候変動対策費用のため、今後5年以内に債務不履行に陥る恐れ
  • 47カ国がパリ協定目標のための資金調達で、債務返済不能に陥る可能性
  • 19カ国も資金不足で目標達成困難になる見込み
  • 専門家は発展途上国の債務問題を深刻に懸念

グローバル・サウス AI生成画

 ボストン大学グローバル開発政策センターなどが公表した報告書によると、発展途上国の今
年の対外債務返済額が過去最大のボストン大学グローバル開発政策センターなどが公表した報告書によると、発展途上国の今年の対外債務返済額が過去最大の4000億ドル(54兆円)に達すると予想されている。

 さらに、約50カ国は気候変動対応や持続可能な開発に必要な資金を投じるために、今後5年以内に債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあるという。47カ国はパリ協定の2030年目標達成に必要な資金を拠出すると、対外債務が返済不能の状態に陥ると指摘されている。

 また19カ国は返済不能には至らないものの、資金不足で目標達成できなくなる可能性がある。

 ボストン大学の専門家は、発展途上国の債務負担が非常に重く、必要な資金調達をすれば債務不履行に向かうと危惧している。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】中国の「一帯一路」政策と同様に、先進国の途上国に対する気象変動対策支援も馬鹿げている

まとめ
  • 地政学的リスクや、発展途上の事情から、パリ協定の2030年目標は非現実的
  • 西側諸国は地政学的リスクなどを回避するため、エネルギー安全保障を優先べき
  • 発展途上国は、気候変動対策投資困難であり、やはりエネルギー安全保障を優先すべき
  • 先進国による気象変動対策面での途上国への支援は、デフォルトリスクをはらんでいる。エネルギー安全保障面の支援を強化すべき
  • 西側諸国の課題としてエネルギー安全保障確保が喫緊、そうでなければ中露に敗北するリスクがある

パリ協定は2015年に採択


パリ協定は2015年に採択された国際的な気候変動対策の枠組みで、世界各国が自主的に設定した削減目標(NDC)に基づいて温室効果ガス削減に取り組むことを定めています。しかし、近年の情勢変化により、この協定への完全な準拠が困難になってきています。

その主な理由は以下の通りです。
  1. 2030年までの大幅な排出量削減目標設定 日本を含む多くの国が2030年までにCO2排出量を大幅に削減する非現実的な目標を掲げています。しかし、再生可能エネルギーの急速な導入には技術的・経済的課題が多く、短期的には化石燃料への依存を維持せざるを得ない状況です。急激な化石燃料削減は、エネルギー供給の不安定化を招くリスクが高いのが現状です。
  2. 地政学リスクの高まり ロシアのウクライナ侵攻などを受け、地政学リスクが高まっています。化石燃料の安定調達が喫緊の課題となっており、その制限はエネルギー供給の不安定化を招く可能性があります。
  3. 発展途上国の経済発展優先 一方で、発展途上国は経済発展を最優先しており、長期的な環境対策よりも短期的なエネルギー供給の安定性確保を重視する傾向にあります。
このように、エネルギー供給の安定性確保が喫緊の課題となっている中で、パリ協定の目標達成は現実的ではなくなってきています。そのため、協定からの離脱や、その枠組みからの一定の逸脱が正当化される可能性が高まっているのが現状です。具体的には以下のような動きがあります。

例えば、米国ではトランプ政権時代に協定からの離脱が宣言され、その後のバイデン政権でも化石燃料の活用を続ける姿勢が維持されています。EUでも、ロシアからのガス供給削減を受け、2030年排出削減目標の引き上げに慎重な国が見られるなど、柔軟な対応を模索しています。


一方、中国やインド、ブラジルといった発展途上国も、経済成長を最優先し、パリ協定目標の緩和を訴えています。こうした国々にとって、エネルギー確保と経済発展が喫緊の課題であり、長期的な環境対策よりもそちらが重視されています。

日本においても、2030年のCO2削減目標の見直しや、原子力発電の再稼働、水素・アンモニア発電の導入拡大など、現実的なエネルギー政策への転換が検討されつつあります。さらに、将来に向けて、小型原子炉、核融合炉の開発がすすめられています。

このように、主要各国がパリ協定の枠組みから一定の距離を置き、エネルギー安全保障の確保に軸足を移しつつある状況が見受けられます。政治・経済的な現実を反映した現実的な対応への移行が進んでいると言えるでしょう。

発展途上国は自国の経済発展とエネルギー安全保障の確保を最優先せざるを得ず、気候変動対策への投資を増やすことが困難な状況にあります。

一方で、先進国の支援も十分ではありません。COP26での1,000億ドル/年の支援目標は未達成のままです。また、コロナ禍やウクライナ情勢の悪化により、先進国の財政的余力も限られつつあります。

こうした中で、発展途上国が気候変動対策に膨大な資金を振り向けざるを得なくなれば、財政悪化を招き、デフォルトのリスクが高まることが危惧されます。実際に、スリランカやザンビアなどの国でデフォルトが発生しています。

このような事態は国際社会にとって望ましくありません。発展途上国のエネルギー安全保障と経済発展を支援することが重要です。先進国による十分な資金提供や、債務軽減策など、国際的な支援体制の強化が不可欠です。

長期的な視点からエネルギー安全保障と、経済発展を実現するためには、発展途上国のデフォルト リスクを回避することが喫緊の課題だといえます。

中国の「一帯一路政策」は、簡単にいってしまえば、中国国内での大きな利益をもたらすインフラ投資が一巡してめぼしい案件がなくなったため、同じことを海外で展開しようとする試みです。しかし、これにより債務不履行になる国々も存在し、これからもでてきそうです。これは、無謀な試みであり失敗するのが目に見えていますが、その邪な動機自体は理解できます。

一帯一路構想の詳細を記すドイツ語の地図

しかし、パリ協定やSDGs目標達成のために、発展途上国に犠牲を強いるのは、「一帯一路」と同様に馬鹿げています。先進国は、中国の「一帯一路政策」を批判しますが、先進国の気象変動対策は、西側先進国の「一帯一路政策」ともいえる馬鹿げたものだと思います。

西側諸国は自国のエネルギー政策を見直し、発展途上国の経済発展とエネルギーアクセスの確保を支援する施策に重点を置くべきです。そうして、先進国はこれに向けて、発展途上国への財政支援の大幅な拡充も不可欠です。

IEAによると、2050年までに世界のCO2排出量を全廃にするには、新規の石油・ガス開発への投資を即座に停止する必要があります。しかし、この場合、短期的なエネルギー供給の不安定化やエネルギー価格高騰のリスクが高まります。

一方で、中国やロシアなどは化石燃料の積極的な開発と活用を続ける傾向にあります。中国は2030年までのCO2排出量ピーク化目標を掲げつつ、石炭火力発電所の新設を続けています。

ロシアは天然ガスや石油の輸出に大きく依存しており、脱炭素化への意欲は低いです。

このように、西側諸国が気候変動対策に傾倒する一方で、中露などの国々がエネルギー供給の安定性を重視する姿勢が鮮明になっています。

その結果、中長期的にはエネルギー・ドミナンスの点で、西側諸国が中露に劣勢に立たされる可能性が高まっています。特に、地政学的リスクの高まりの中で、安定的なエネルギー確保が困難となる恐れがあります。

したがって、エネルギー安全保障の確保を最優先する現実的な対応への移行が、西側諸国にとって喫緊の課題だと言えます。そうしなければ、エネルギー・ドミナンスの面で中露に敗れてしまう恐れがあります。

そうなれば、発展途上国も衰退し、最悪エネルギーの安定供給を約束する中露に取り込まれることになります。

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2024年4月15日月曜日

岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」―【私の論評】イスラエルの安全保障を支持する日本の姿勢 - G7との協調と核抑止力の重要性

岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」

まとめ
  • G7首脳がイランによるイスラエルへの攻撃を受け、緊急オンライン会議を開催した
  • G7は「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明した
  • G7は、イランが地域の不安定化と激化を招いていると指摘し、これを避ける必要があると強調した
  • 岸田首相も会議に参加した
  • アメリカ政府高官は、この攻撃に事前通告がなく、イランが死傷者を出すつもりだったと述べ、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると警告した

G7のイランのイスラエル攻撃に関するリモート会議

G7首脳は、イランによるイスラエルへの攻撃を受け、オンラインでの緊急会合を開催しました。会合には岸田首相も参加し、G7は「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。

G7は、イランが地域の不安定化と激化を招いていると指摘し、これを避ける必要があると強調しました。

アメリカ政府高官は、この攻撃に事前通告はなく、イランは死傷者を出すつもりだったと述べ、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると警告しました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】イスラエルの安全保障を支持する日本の姿勢 - G7との協調と核抑止力の重要性

まとめ
  • イラン大使館周辺へのイスラエルによる攻撃に対し、イランが報復を行った。
  • G7全体(日本含む)がイランの攻撃を「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明した。
  • イランの領土からイスラエルを直接攻撃するのは今回が初めての事態であり、G7が「前例のない攻撃」と非難した。
  • 多くの中東専門家は、今回の事態が大規模な戦争につながることはないと予想している。その理由は、イスラエルが強力な破壊兵器(核兵器)を保有しているため、イランが過度な攻撃をする可能性が低いからである。
  • 日本の左派政党やマスコミはイランを擁護する傾向にあるが、今回日本政府はイランを非難し、イスラエルを支持する姿勢を示した。今後日本は、このような傾向を強めていくべき
攻撃を受けたダマスカスのイラン大使館周辺

シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺がイスラエルによるとみられる攻撃を受けたことを巡り、イランは報復を行うと表明しており、それが実行されました。

イランによるイスラエル攻撃の際、G7全体(日本を含む)が「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。これは、イランによる攻撃が明らかな国際法違反であり、地域の平和と安全保障を脅かす重大な事態だったため、G7が団結して強い姿勢を示したものです。

さらに、イランの領土から直接イスラエルの領土を攻撃するという事態は、今回が初めてです。

過去にもイランがイスラエルを攻撃する事例はありましたが、それらはイランが支援するシリアやレバノンなどの地域からの攻撃でした。

今回のように、イラン領土そのものからイスラエルに直接攻撃を仕掛けるのは、これまでにない新しい事態でした。

G7がこれを「前例のない攻撃」と強く非難したのは、この点を踏まえてのことだと理解できます。日本もさすがに、イランに対して曖昧な態度をとれなかったのでしょう。イラン領土からの直接攻撃は地域の緊張を一段と高めるものであり、G7が強い懸念を示したのは適切な対応だったと言えます。

イランによるイスラエル攻撃

一方、ハマスによるイスラエル攻撃の際は、日本を除くG6がイスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。この背景には、G6諸国がハマスをテロリスト組織と明確に認識しているのに対し、日本の認識が相対的に希薄であったことが考えられます。

日本は、ハマスの本質を十分に理解していなかったため、G6諸国ほど強硬な姿勢を示せなかったと考えられます。テロリスト組織であるハマスに同情的な立場をとることは適切ではなく、同盟国との連携も重要です。今後は、ハマス等のテロリストの実態をより正確に認識し、国際社会との調和した対応を取る必要があるでしょう。

イランがイスラエルの実効支配下にあるゴラン高原に無人攻撃機やミサイルを撃ち込んだことで、第三次世界大戦への懸念が高まっていると報道されています。しかし、多くの中東専門家は今回の事態が大規模な戦争につながることはないと予想しています。その理由は、イスラエルが強力な破壊兵器を保有(イスラエルは認めていないものの核保有されてるとしている)しているため、イランが過度な攻撃をする可能性は低いからです。

さらに、貧困に苦しむガザ地区を支配するハマスとは異なり、イランはその産油施設を破壊されれば取り返しがつかないです。ハマスのイスラエル攻撃は例外ともいえますが、基本的に、侵略されて女性や子どもが虐殺される国は核兵器を持っていない国に限られます。

日本では核兵器は戦争の象徴とみなされていますが、世界的には平和の象徴と考えられています。日本は日米安全保障条約により、米国の核の傘の下にあります。日本が核攻撃されたら米国は報復するとは明記されていませんが、「危険に対処する」と曖昧に記されています。

その背景には、2023年末時点で日本が世界のドル流通量の1/7以上に当たる1.2兆ドルを保有していることがあります。一方、中国の保有額は約9,000億ドルと報告されています。

つまり、日本はドル資産保有においては中国を上回っているのが現状です。

このように、日本はドル資産保有大国の一つであり、世界の通貨システムにおいて重要な役割を果たしていると言えます。


日本が戦争等にまきこまれドルを大量に売却する姿勢をみせれば、米国はそれに対処せざるを得なくなります。つまり、日本のドル保有がアメリカの対日支援を引き出す要因となっているといえます。

もし、これに加え、日本が核兵器を保有すれば、世界における日本の地位も飛躍的に高まるでしょう。一方で、貧困層を支持する政党は非核化を主張しますが、それは日本の平和と繁栄の基盤を脅かすものだと言えるでしょう。

日本の左派・左翼勢力は、それだけではなく、テロリストのハマスを擁護する傾向が強く、日本のマスコミや学問界でもその傾向が強く、それが日本国内に広く流布しているため、ハマスによるイスラエル攻撃の時には、日本政府はそれにひきづられイスラエルへの「全面的な連帯と支援」の表明からは外されると大失態をしてしまいました。

これと同じように、日本の左派政党やマスコミは、イランを支持・擁護する傾向にあります。これは、イランの反米・反西側的な姿勢や、パレスチナ問題でのハマス支持、さらには核兵器に関する立場などに共感を持っているためと考えらます。

それでも、今回は日本は、「最も強い言葉で明確にイランを非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。これは、一歩前進だと思います。

これからも、日本はこのような傾向を強めていくべきです。そうでないと、せっかくかなり高い潜在的能力を持っているにもかかわらず、世界における日本の地位が低下し、衰退への道を歩むことになりかねません。


G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

2024年4月14日日曜日

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

 杉山大志 直言!エネルギー基本計画

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱 

まとめ
  • 日本のエネルギー供給の8割は化石燃料に依存しており、その安定的な調達が重要
  • しかし第6次エネルギー基本計画では、無理難題とも言える46%のCO2削減目標が設定され、化石燃料の利用制限につながっている
  • その結果、燃料調達や関連事業への参入が困難になり、供給不足や火力発電所の休廃止といった問題が懸念される
  • 一方で、気候変動の悪影響を示すデータや予測モデルの信頼性には疑問があり、CO2ゼロ目標の実効性も極めて低い
  • したがって、「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返り、安定供給を確保する政策を検討すべきであり、パリ協定からの離脱も検討の余地がある
阿蘇外輪山の元牧野に建設されたメガソーラー

 日本のエネルギー供給の8割は依然として石油、石炭、天然ガスといった化石燃料に依存している。これらの化石燃料を安定的に調達し活用することは、日本のエネルギー政策の最も重要な柱のはずだ。

 しかし、現行の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年までにCO2排出量を2013年比で46%も削減するという非現実的な数値目標が設定され、化石燃料の利用量も極端に低く設定されている。その結果、企業は長期的な燃料調達契約の締結が困難となり、油田やガス田への事業参入も阻害されている。

 こうした事態が進めば、有事の際に法外な価格でしか化石燃料が調達できなくなったり、最悪の場合は全く調達できなくなる可能性がある。また、火力発電所の休廃止も余儀なくされ、定期的に「節電のお願い」が発出されることにもなりかねない。

 一方で、メディアでは気候変動の悪影響が強調されているが、統計データではそのような事態は確認されていない。さらに、気候変動リスクを示すシミュレーションモデルさえ、過去の再現すら十分にできていないと指摘されており、その将来予測を政策決定に活用するのは適切ではない。

 したがって、「2050年にCO2排出ゼロ」という極端な目標を掲げ、日本のエネルギー政策と経済活動を大きく制限することは不適切であると考えられる。そうではなく、安定したエネルギー供給を確保し、経済発展を支えていく「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返るべきであり、グローバルサウスの支持も得つつ、パリ協定からの離脱も検討する必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

まとめ
  • 「エネルギー・ドミナンス」はトランプ政権下の米共和党で使われてきた概念で、安定かつ安価なエネルギー供給を通じた経済発展や民主主義の保護を目指すものです。
  • 第6次エネルギー基本計画は「脱炭素」を重視しつつ、再生可能エネルギー以外のエネルギー源の活用も検討されました。
  • この計画は「S+3E」の視点から、安全性、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性を重視しています。しかし、現実には脱炭素、再エネばかりが強調されています。
  • 安倍晋三氏が存命であれば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような新たな概念を提唱し、地球規模でのエネルギー協力体制を構築していた可能性があります。
  • 「エネルギー・ドミナンス」の代わりに「エネルギー共生圏」のような概念を打ち出すことで、より多くの国々の参加を促し、現実的な世界秩序の再編成を目指すべきです。

「エネルギー・ドミナンス」という用語は、米国共和党で使用されてきた概念です。これは豊富で、安定し、安価なエネルギーを供給することを指し、経済発展や防衛力の向上、自由や民主主義などの普遍的価値の保護と発展を可能にするとされています。具体的にこの言葉を最初に使った個人についての情報は見つかりませんでしたが、この概念はドナルド・トランプ大統領の下での米国のエネルギー政策に関連してよく言及されています。

「第6次エネルギー基本計画」は安倍政権下で検討されたものではありますが、安倍総理は、2020年9月16日に辞任しており、閣議決定されたのは、2021年10月の菅政権のときでした。

第6次エネルギー基本計画で目指す総発電量に占める電源別の割合

この基本計画が検討された時期においては、「脱炭素」が世界の趨勢となっており、このエネルギー基本計画は、「脱炭素」にも重点を置き、極端な目標が掲げられている一方、再生可能エネルギー以外のエネルギー源についても詳細に述べられています。

この計画は、本来は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものであり、安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)という「S+3E」の視点を重視しています。

具体的には、以下のようなポイントが含まれています。

安全性(Safety):あらゆるエネルギー関連設備の安全性を最優先し、特に原子力に関しては、国民の懸念の解消に全力を挙げることが強調されています。

エネルギーの安定供給(Energy Security):日本のエネルギー自給率が低いため、エネルギー供給の安定性を確保することが重要視されており、レジリエンス(強靭性)を高めることが求められています。

環境への適合(Environment):カーボンニュートラルを目指し、エネルギー分野の脱炭素化に取り組むことが強調されています。これには、再生可能エネルギーの導入拡大や、CO2排出削減技術の開発が含まれます2。

経済効率性(Economic Efficiency):低コストでのエネルギー供給とエネルギーの安定供給、環境負荷の低減を同時に実現することが、日本の経済成長にとって重要であるとされています。

安倍政権が継続されていた場合、あるいは政権が続いていなくても、安倍晋三氏が存命だった場合、経済効率性やエネルギーの安定供給の観点がもっと強調されていた可能性があります。

しかし、菅政権から、岸田政権にかけて、エネルギー政策というと、カーボンニュートラルや再エネ等が大きく注目されるようになりました。そうして、現状では阿蘇山にはメガソーラ発電省が設置され、釧路湿原国立公園内に、6.6haの太陽光発電施設が設置されるという危機的状況になっています。


このままだと、日本はエネルギー政策で失敗して衰退しかねません。だからこそ、エネルギー問題のまともな専門家たちは、危機を感じているのです。

そうして、上の記事の杉山氏の元記事ように
米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。
と警鐘を鳴らしているです。

これは、重要であり、中国やロシアがエネルギー・ドミナンスで優勢になれば、日本を含む西側諸国やその同盟国は安全保証上の脅威にもさらされることを意味しています。

そうして、安倍晋三氏がご存命であれば、この危機にいち早く気づいて、新たな概念を生み出しい、「安全保障のダイヤモンド」のような論文をブロジェクト・シンジケートに投稿していたかもしれません。ちなみに、この論文は、後の「インド太平洋戦略」に結びつき、中国の覇権主義に対抗する上で重要な概念となっています。

エネルギー・ドミナンスの危機に関して、安倍晋三氏がご存命であれば、やはり新たな概念を生み出したかもしれません。

たとえば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」という概念を生み出していたかもしれません。

これは、意味するところは、以下です。
  • 「共生」の文字から、各国や多様なステークホルダーが互いに協力し合い、共に発展していくエネルギーシステムの構築を表現
  • 「圏」の字は、地球規模での包括的なエネルギー協力体制を示唆しています
  • 化石燃料の利用や、原子力エネルギー等、現実的なエネルギー利用の安定供給を目指すとともに、小型原子炉や核融合炉などの将来のエネルギーの開発等も含めた、エネルギーミックスを構築する
  • 先進国と途上国、エネルギー生産国と消費国が対話を重ね、共生的なエネルギーアーキテクチャを構築することを表す
英語での意味は以下のようなものです。
  • "Energy" - エネルギーという分野を表しています。
  • "Symbiosis" - 共生、相互依存的な関係性を意味します。
  • "Sphere" - 地球規模、あるいは包括的な領域を表す言葉です。圏というと、大東亜共栄圏などを思い起こさせる言葉ですが、Sphereは違います。
つまり、「Energy Symbiosis Sphere」は、各国や様々な利害関係者が協力し合って、現実的なエネルギーシステムを地球規模で構築していくという戦略概念を表しています。

この英語表現も、安倍晋三氏の思想を反映した戦略的なイニシアチブを感じさせる言葉だと思います。

「安全保障のダイヤモンド」は、端的に言ってしまうと、「中国封じ込め政策」なのですが、安倍晋三氏は、そうではなくもっと大きな上位の概念からこの言葉を使っています。これによって、より多くの国々が、この言葉に賛同し参加できるような素地をつくりだし、後にさらに「インド太平洋戦略」という言葉を生み出し、インドや太平洋の平和と安定の重要性も強調しました。これによって、安倍晋三氏は世界の秩序を変えたといえます。

そうして、それが世界だけでなく、日本国内にも大きな影響を及ぼしています。

エネルギー・ドミナンスは日本語訳にすると「エネルギー支配」とも訳すことができ、これではエネルギーに関する覇権争いとも受け取られかねません。これでは、日米のエネルギー・ドミナンスの確立に参加を表明したくてもできない国々が出てくる可能性もあります。

Energy Symbiosis Sphere AI生成画像

しかし、安倍晋三氏が生み出したような「インド太平洋戦略」という中露との対立という概念より、上位の概念は、この地域の平和と安定を目指すものであり、この地域や、他地域の多くの国々の賛同を得ることができ、これに真っ向から反対するのは、一部の権威主義的、全体主義的な国々だけです。

日本国内でも、どなたか有力な方が「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような言葉を作り出し、安倍晋三氏が、政権発足直前に「ブロジェクト・シンジケート」で公表したように、新たな概念を公表すべきと思います。

これによって、エネルギーを基軸とした、世界秩序の再編成を目指すべきです。

それにしても、それを実現できる人は、なかなか見当たりません。改めて、わたしたちは偉大な人物を亡くしてしまったことが残念でなりません。

このようなことを実現し、それだけでなく、それを目指して行動する人こそ、安倍氏の真の後継者なのかもしれません。

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2024年4月13日土曜日

「エネルギー備蓄」「インフラ防衛」にこそ投資が必要だ 台湾からの日本有事に備えよ 中国に狙われる日本のアキレス腱―【私の論評】台湾とエネルギー備蓄の実態 - 日台が抱える課題と対策

杉山大志 直言!エネルギー基本計画
  • 中国は軍事演習と臨検(船舶への立ち入り検査)で台湾を海上封鎖し、無血開城を狙っている。台湾のエネルギー備蓄が少ないため、すぐに陥落する可能性がある。
  • ペロシ議長の台湾訪問時の中国の大規模軍事演習は実際は海上封鎖の訓練だった。中国は金門島周辺の遊覧船を臨検するなど、台湾統一への動きを見せている。
  • 中国は台湾を軍事的に圧倒しているので、米軍が介入しなければ台湾統一が成功する可能性が高い。しかし米軍が介入すれば、日本の在日米軍基地や自衛隊基地が攻撃対象となり、日本のエネルギーインフラも狙われる。
  • ロシア・ウクライナ戦争では、互いのエネルギーインフラが破壊されている。ドローン攻撃により、日本近海の海上交通の安全も脅かされかねない。
  • 中国に台湾統一を容認させるのではなく、必ず米軍が介入し、中国が惨敗して政権も崩壊すると思わせる必要がある。

台湾の首都台北市

 中国は「台湾統一」を目指し、その一環として軍事演習や臨検を通じた台湾の海上封鎖を計画している。台湾のエネルギー備蓄が少ないため、この戦略は台湾を迅速に陥落させる可能性がある。ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問時やその後の中国海警局による臨検など、既に実際に行われている動きがある。

 中国の軍事力は台湾を圧倒しており、米軍が介入しなければ台湾統一は可能とみられる。しかし、米軍が介入すれば、在日米軍基地や自衛隊基地、さらには日本の基幹インフラが中国の攻撃対象になり得る。ロシアとウクライナの例を見ても、エネルギーインフラが戦略的な標的になりうることが示されている。日本もドローンによる攻撃の脅威にさらされており、エネルギー供給の安定性が懸念される。

 中国を刺激しないよう、台湾有事における日本の強固な態度が重要である。日本は防衛能力の強化やエネルギー備蓄の増強、インフラの保護に向けた予算配分を見直す必要がある。グリーントランスフォーメーション(GX)への投資も重要だが、現在の国際情勢を鑑みると、防衛力やエネルギー安全保障の強化が急務である。

 中国による台湾統一の野望とその影響は、台湾だけでなく、日本やその他の関係国にとっても深刻な問題である。日本はエネルギー備蓄の充実や防衛能力の強化を急ぎ、国際的な安全保障環境の変化に備える必要がある。 

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧ください。

【私の論評】台湾とエネルギー備蓄の実態 - 日台が抱える課題と対策

まとめ
  • 台湾のエネルギー備蓄は石油30日分、天然ガス10日~2週間分、石炭1カ月分
  • 台湾のエネルギー輸入依存度は97.4%で、2050年までに50%以下に削減目標
  • 日本のエネルギー備蓄も乏しい
  • エネルギー・ドミナンスは資源保有、供給支配力、影響力の確立を意味する。これを日台が確立するには、将来は小型原子炉、核融合炉を実用化すべき
  • 日台は当面、これを確立するため、再エネは抑制、化石燃料の安定的な調達や備蓄の確保、さらには原子力発電の活用といった、即効性のある対策に注力すべき
台湾・九份

台湾のエネルギー備蓄に関する情報は以下の通りです。

石油: 台湾政府は石油基金を運用して国家戦略石油備蓄を行い、過去1年間における国内石油製品販売量及び消費量の30日分相当を備蓄しています。民間備蓄は石油精製業者及び輸入業者が過去12ヵ月間における国内石油製品平均販売量及び消費量の60日分以上の安全在庫を確保しなければならないとされています。

天然ガス: 台湾の天然ガスの国内備蓄量はおよそ10日から2週間分程度しかなく、将来的に石炭を天然ガスで代替する場合には、安定したエネルギー供給が重要な課題となっています。

石炭: 現状では1カ月の在庫があるとされていますが、これは増やすことが可能かもしれません。

台湾はエネルギーの輸入依存度が高く、2021年の依存度は97.4%に達していましたが、2050年には50%以下に引き下げる目標を立てています。台湾当局は、これらの取り組みにより、2030年までの4兆台湾元にのぼる民間投資の促進、輸入エネルギーへの依存度の低下、大気の汚染量を2019年比で減少させることを目指しています。

日本の場合、官民合わせて200日以上の石油備蓄、石炭は1カ月分、天然ガスは2週間分しかないと述べられています。日本も台湾もエネルギーの備蓄量は少ないです。これでは、長期の戦争になった場合は、かなり不利です。

エネルギー・ドミナンス AI生成画像

これは、エネルギー・ドミナンスの観点から早急に見直すべきでしょう。ちなみに、エネルギー・ドミナンスとは、ある国や地域がエネルギー分野で圧倒的な優位性を持つことを指す概念です。具体的には以下のような特徴があげられます。
  • 膨大なエネルギー資源の保有 特定の国が、石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源を大量に保有し、供給能力が非常に高い状態。
  • 支配的な地位の確保 保有するエネルギー資源や輸送インフラを通じて、特定の国がエネルギー分野での支配的な地位を確立している。
  • 政治的・経済的な影響力 エネルギー供給を実質的に支配することで、その国が世界の政治・経済に大きな影響力を持つようになる。
  • 地政学的な優位性 エネルギー資源の保有や供給ルートの管理によって、地政学的な有利な立場を築くことができる。
つまり、エネルギー・ドミナンスとは、特定の国がエネルギー分野で圧倒的な優位性を確保し、それを通じて莫大な政治経済的な影響力を行使できる地位を築くことを意味しています。

現状の日米、台湾、中国のエネルギー・ドミナンスの状況を述べておきます。

まず、米国は自国内の膨大なエネルギー資源を保有しており、特に近年のシェールガス革命により、エネルギー自給率が向上しています。また、世界最大のエネルギー消費国としての地位を活かし、エネルギー分野での影響力を行使しています。つまり米国はエネルギー・ドミナンスを確立している国の一つといえます。

エネルギー・ドミナンスを確立した国は、米国の他には、ロシア、サウジアラビアなどがあります。

一方、日台は国内にエネルギー資源が乏しく、ほとんどを輸入に頼らざるを得ません。そのため、エネルギー分野では相対的に弱い立場にあり、エネルギー・ドミナンスは有していません。

最後に中国ですが、膨大な人口と急速な経済成長により、世界最大のエネルギー消費国となっています。中国は自国内の石炭、石油、天然ガスなどの資源を活用しつつ、海外からの輸入も拡大させており、エネルギー供給分野での影響力を高めつつあります。中国はエネルギー・ドミナンスを目指す一つの候補国といえるでしょう。

中国は確かに大量のエネルギー資源を有している一方、世界最大のエネルギー消費国でもありエネルギー資源の多くを輸入に頼らざるを得ない状況にあり、完全な自給体制を確立できていないのが現状です。

また、輸送インフラの整備や技術力の面でも、まだ米国などの先進国に遅れをとっているのが中国の課題です。

日本や台湾のようなエネルギー資源が乏しい国が、真のエネルギー・ドミナンスを確立するには、小型原子炉の実用化や、将来的な核融合炉の実現が不可欠だと考えられます。

現状では、再生可能エネルギーの発電コストが化石燃料に比べて高く、安定供給性にも課題がある状況です。再生可能エネルギーの比率を急速に高めていくと、エネルギー供給の不安定化や経済的負担の増大につながる恐れがあります。

具体的な数値を見てみると、以下のような状況です。

再生可能エネルギー(2022年)
  • 太陽光発電: 5~10円/kWh
  • 陸上風力発電: 8~12円/kWh
  • 洋上風力発電: 15~20円/kWh
化石燃料(2022年)
  • 天然ガス火力発電: 10~15円/kWh
  • 石炭火力発電: 12~18円/kWh
確かに、再生可能エネルギーの発電コストは下がりつつありますが、いまだ化石燃料にはおよびません、特に2022年は、ウクライナ情勢などを背景に燃料価格が高騰した時期であり、それでもなお化石燃料の発電コストが低いことに注目すべきです。

さらに、再生可能エネルギーには、出力変動性、経済性の課題、資源制約、大規模な設備投資の必要性などの不安定な要素があります。

具体的には、発電出力が天候に左右されるため供給の安定性が低く、コストも化石燃料発電に比べて割高な状況が続いています。また、希少金属などの資源確保が難しく、大規模な初期投資も必要となります。

再生エネルギー AI生成画像

小型原子炉については、大型の従来型原発に比べて安全性が高く、さらにコスト面や立地面での優位性があり、日台にとって有望なオプションになり得ます。小型原子炉の開発を進め、実用化を図ることで、エネルギー供給の安定性と自給率の向上につなげられるはずです。

そして長期的には、核融合炉の実現が鍵を握ると言えます。核融合は膨大なエネルギーを安全かつクリーンに生み出す可能性を秘めた次世代技術です。この実用化が実現すれば、化石燃料や ウラン 資源に依存しなくてもエネルギーの確保が可能となり、まさにエネルギー・ドミナンスの確立につながることになります。

ただ、これらが実用化されるまでには時間がかかります。それまでの間、日本や台湾としては、まずは化石燃料の安定的な調達や備蓄の確保、さらには原子力発電の活用といった、即効性のある対策に注力すべきです。

再生可能エネルギーについては、引き続き研究開発を続けることはやぶさかではないものの、あくまで実験レベルにとどめるべきであり、現実的なエネルギー供給源とみなすべきではありません。短期と長期のバランスを取りつつ、段階的にエネルギー・ドミナンスを確立していくことが、日本や台湾にとって望ましい道筋です。

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2024年4月12日金曜日

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日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意

まとめ
  • 「日本とフィリピンを防衛する米国の決意は揺るぎない」と米大統領
  • 米は国際社会の「中心的役割」継続を、岸田首相が米議会で演説


 日本、アメリカ、フィリピンの3カ国首脳が会談を行い、自衛隊と米比両軍の海上共同訓練の拡充に合意した。

 南シナ海情勢を踏まえ、海洋安全保障が最重要議題となった。バイデン大統領は日本とフィリピンの防衛への決意を表明した。

 3カ国は、南シナ海と東シナ海における中国の行動に深刻な懸念を示し、新たな共同訓練の実施や資源サプライチェーン強化などで協力を強化することで合意した。

 岸田首相は、米議会での演説で、自由と民主主義が脅威に晒されており、特に中国の動向が課題だと指摘。米国の支援と存在が不可欠であると述べた。岸田演説は、選挙後の日米関係の重要性を米議会に訴えるものだった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

まとめ
  • 安倍前首相の日米同盟強化への尽力と指導力が、現在の日米同盟の基盤を築いた。
  • 日米協力は官僚レベルでの継続的な取り組みであり、政権交代に影響されないものだった。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」構想は安倍前首相の外交の柱で、その延長線上にある日米比の安全保障協力が進展している。
  • 日米比3か国の防衛大臣会談、軍隊間の共同訓練、非伝統的安全保障分野での協力など、緊密な連携が進んでいる。
  • 岸田首相は、安倍イズムの外交・安全保障政策を継承し、国内においても経済政策や自民党内の調整などで安倍路線を踏襲すべきだ

昨日のこのブロクでは、安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能であり。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと掲載しました。

結局のところ、今日の日米首脳会談は、安倍イズムの影響下での日米同盟強化であったと結論ずけました。

その根拠として、日米同盟の強化はすでに両国の官僚級の折衝はから始まっていたことを根拠としてあげました。それは、両国の首脳の政権がこれからも続くか続かないにかかわらず、日米という国家間で継承される合意事項であるともいえます。

今回の日米首脳会談はこれを追認したものに過ぎません。

今回の日米比の首脳会談でも同じことがいえます。日米比の安全保障協力の進展は、安倍前首相の時代から見られる「自由で開かれたインド太平洋」構想の具現化であると言えます。

安倍首相は在任中、日本の外交・安全保障政策の大きな柱として、この構想を掲げ、地域の主要国との連携強化に力を入れてきました。特にフィリピンとの関係強化は重要な課題の一つでした。

こうした安倍首相の方針は、その後の日本政府によっても継承されており、日米比三カ国の安全保障協力はその具体的な成果として表れているといえます。

日米比の3か国による安全保障協力も活発に行われてきました。
  • 2022年以降、日米比三カ国の防衛大臣会談が定期的に開催され、地域情勢への共同対応について議論が行われています。
  • 日米比三カ国の自衛隊、米軍、フィリピン軍による共同訓練の実施が活発化しており、相互運用性の向上が図られています。
  • 災害救援活動や 海洋安全保障等、非伝統的安全保障分野での協力も強化されてきました。
  • 情報共有や海上監視、訓練支援など、各国の軍事当局間での緊密な連携も進んでいます。
  • 日米両国がフィリピンに対する装備品供与や訓練支援など、二国間の取り組みも行っています。
このように、日米比三カ国間での安全保障面での協力は着実に進展してきており、地域の平和と安定に向けた重要な枠組みとなっています。特に、日米比の省庁レベルや軍事当局レベルでの緊密な対話と協調が進展してきたと言えます。

2022年には第1回日米比陸軍種ハイレベル懇談会が日本で開催された

省庁間、軍事当局間での緊密な対話と実務レベルの協力は、この構想の実現に向けた着実な取り組みの一環であると評価できます。

これは、日米比の多くの人々も認めるところであり、今回の日米比の首脳の合意は、安倍イズムの延長線上にあるものとえ、この三者が新しく始めたものではなく、安倍イズムによる「自由で開かれたインド太平洋」構想の継承とみることができます。もっといえば、安倍首相は中国をめぐる世界秩序を変えたのです。

中国への対処ということでは、「自由で開かれたインド太平洋」構想とこの構想に含まれる諸国との提携や、協力の強化の方針は、安倍イズムによってすでに方向づけられたものです。そのため日米比の現在の首脳は、これを自分たちの成果とすることはできません。

特に、大統領選、総裁選が間近に迫っている、バイデン大統領と、岸田首相はそうです。

バイデン、岸田ともに、政権を安定させたいなら、インド太平洋地域以外の外交や国内を安定させる政策を推進することが肝要です。

岸田首相は、昨日も述べたように、大きな問題は国内にあり、有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできません。ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

安倍首相は、地球儀を俯瞰する外交を実行して成果をあげており、この点で、岸田首相が外交で努力したとしても、あまり大きな成果とみなされることはありません。おそらく、岸田首相の独自での外交での成果といえば、ウクライナ電撃訪問くらいかもしれません。

安倍首相地球儀を俯瞰する外交で成果をあげた

やはり岸田首相は、安倍氏の経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。さらに憲法改正もすすめるべきなのです。国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきなのです。

これは、岸田政権が崩壊して、次の政権に変わったにしても、あてはまることだと思います。

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2024年4月11日木曜日

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及―【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及

まとめ
  • 日米同盟がかつてない強さに高まり、両国が大胆な措置を講じてきたことを確認
  • 防衛・安全保障協力の深化に向け、日本の防衛力強化や日米指揮統制体制の向上などを歓迎
  • 先端技術分野での共同開発・生産、経済安全保障の強化などによる日米の技術的優位性の確保
  • インド太平洋地域の自由で開かれた秩序の維持に向けた地域協力の推進
  • 気候変動対策での両国の連携強化とクリーンエネルギー分野でのリーダーシップ発揮


  日米首脳共同声明は、過去3年間にわたり、両国が勇気ある措置を講じることにより、日米同盟が前例のない高みに到達したことを確認している。この歴史的な展開を踏まえ、両首脳は新たな日米グローバル・パートナーシップの構築に合意した。

  そのための具体的な取組として、まず防衛・安全保障協力の強化が掲げられている。日米両国は、同盟がインド太平洋地域の平和、安全および繁栄の礎であり続けることを確認し、日本の防衛力強化や指揮統制体制の強化など、同盟の新たな時代に対応した取組を支持した。さらに、日米の指揮統制体制の向上や情報協力の深化、ミサイル防衛の強化など、地域の安全保障上の課題に直接対処するための具体的な施策も明記。

 加えて、宇宙開発、イノベーション、経済安全保障、気候変動対策など、幅広い分野で日米が連携して取り組むための新たな戦略的イニシアチブを発表した。特に、次世代技術の共同開発や、経済安全保障の強化に向けた政策協調の強化などが重要な柱となっている。

 一方で、北朝鮮の核・ミサイル問題、ロシアのウクライナ侵略など、地域や世界の安全保障上の重要課題に対しても、関係国と協調して対処していくことを表明。

 さらに、日米両国民の絆を一層深化させるため、人的交流の強化やグラスルーツレベルの地方自治体間連携など、多様な取組についても言及されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

まとめ
  • 日米首脳会談の共同声明は、日米同盟の新たな時代を示す戦略的パートナーシップの構築を目指すものであり、防衛、経済、技術、外交など広範な分野に焦点を当てている。
  • 共同声明の注目すべき点は、日本の防衛力の抜本的強化、先端技術分野での日米協力の深化、経済安全保障の強化の3つに集中している。
  • 日本の防衛力の強化は、専守防衛の原則からの転換を意味し、抑止力と対処力の強化につながる。
  • 先端技術分野での協力は、経済安全保障上も重要であり、両国の競争力を高める。
  • 日米関係の強化には、安倍首相のリーダーシップや外交努力が大きく寄与しており、岸田首相もこの路線とともに、日本国内の政策に関しても安倍イズムを継承すべきである。

この共同声明は、21世紀の課題に取り組む日米同盟の新たな時代を切り拓くべく、防衛、経済、技術、外交など、広範な分野における具体的な戦略的パートナーシップの構築を示すものとなっています。

共同声明の中で特に注目すべき点は以下の3つです。

1. 日本の防衛力の抜本的強化
共同声明では、2027年度までに日本の防衛費をGDP比2%まで増額し、反撃能力の保有や統合作戦司令部の新設など、日本の防衛力を大幅に強化することが盛り込まれています。これは注目すべき点です。
なぜなら、これまで日本は専守防衛を旨としてきましたが、今回の防衛力強化は抑止力の大幅な強化につながるものです。地域の安全保障環境が厳しさを増す中で、日米同盟の抑止力と対処力を引き上げる上で、日本の防衛力強化は不可欠な取り組みだと位置づけられているからです。

このような日本の防衛力増強は、同盟国である米国にとっても大きな意義を持ちます。日本の防衛力が強化されることで、米国の同盟国としての負担が軽減され、より効果的な抑止力の発揮が期待できるためです。

2. 先端技術分野での日米協力の深化
共同声明では、AI、量子、半導体、バイオテクノロジーなどの重要・新興技術分野で、日米が協力して研究開発や産業基盤の強化に取り組むことが明記されています。
これは注目に値する点です。先端技術分野でのリーダーシップを確立することは、経済安全保障上も極めて重要です。両国が互いの強みを活かしながら、これら次世代技術の開発や保護に協力することで、技術的な優位性を確保し、経済的な競争力を高めていくことができるためです。

また、こうした技術協力は、日米同盟の絆をより強固なものにする効果も期待できます。先端技術を共に推進していくことで、経済的な利益共同体としての側面が一層強化されるからです。

3. 経済安全保障の強化
共同声明では、日米両国が非市場的な政策や慣行への対処、信頼性のあるサプライチェーンの構築など、経済的側面からの安全保障強化に取り組むことが明記されています。
これは重要な点です。地政学的な競争が激化し、経済的な安全保障の確保が喫緊の課題となる中で、日米が緊密に協調してこの分野に取り組むことは、両国の経済的利益を守る上で不可欠だからです。

特に、先端技術分野での覇権を握ることは、経済安全保障上も極めて重要です。日米が連携して、こうした分野での優位性を確保していく狙いがうかがえます。
 
以上3点は、共同声明の中でも特に注目すべき点だと考えられます。日米同盟を21世紀の安全保障環境に合わせて強化していく上で、これらの取り組みが大きな意味を持つためです。


日米が安全保障面での一体化を模索することは、もはや多数の米国民にとって当然のことです。今回の合意に対する大きな騒ぎは起きていません。日本との同盟強化に反対する声はほとんどなく、ドナルド・トランプ前大統領や共和党支持者を含めても、日米同盟の強化に異議を唱える声はありません。

日本という国が米国にとってより身近な存在になっています。大谷翔平選手やテレビドラマ、アニメなどを通じて、日本文化が米国に浸透しており、日本人に対する親近感が高まっています。これは、中国に対する米国民の嫌悪感とは対照的であり、日本は米国人にとって好意的な国として位置付けられています。

ギャラップ世論調査では、日本が米国人にとって最も好きな国の一つに選ばれています。この好意的な姿勢は、日米関係の強化にも繋がっていると言えます。

しかし、一方で岸田首相に対する米国メディアの関心は薄いです。岸田首相の政治的地位は不安定であり、政権内部や有力派閥のスキャンダルに揺れ動いています。そのため、米国メディアは岸田首相を「影の薄い総理大臣」と見ており取り上げることが少ないです。これは安倍首相とは対照的です。

しかし、日米関係の強化に向けては、両国のまともな官僚や議員らが着実に動いているようです。両国の政治的不安定さにもかかわらず、日米関係の堅固さを確保するために、彼らは日々努力しているようです。そのため、今回の日米首脳会談も、両国の関係強化の一環として注目されています。

官僚レベルにおける日米関係強化に向けた取り組みには以下のようなものがあります。

防衛・外交面では、外務省北米局と米国務省が定期的な政治対話を行っており、北朝鮮問題に関する制裁政策の調整や台湾問題に関する協議などが実施されているほか、自衛隊と米軍の共同訓練を強化することで軍事面での協力関係を深めています。

経済・貿易面では、経済産業省と米通商代表部がIT分野など特定分野の共同研究を進める一方で、農林水産省と米農務省もTIFAにおける農産品の市場開放交渉を行っています。

文化交流面では、文部科学省と米教育省が大学間交流事業の拡大に努めるとともに、外務省と米国務省が語学研修制度を活用した若手研修生の派遣数を増やしています。

テクノロジー面では、総務省と米通信委員会が5G技術の標準化で、経済産業省も半導体技術分野で共同研究を進めることで協力体制を強化しています。

さらに、環境・エネルギー面では再生可能エネルギー分野、科学技術面では宇宙開発分野での国際協力も進められています。

上に述べた具体例は、ごく一部にすぎません。 

なぜ日米関係がこのようになっているかといえば、やはり安倍首相の尽力があったおかげです。

これなくしては、現在の日米同盟の強固な地位と日米協力体制がこの水準に達することは極めて困難であったと思います。

特に、トランプ政権下で米国第一主義が強まる中、安倍首相はトランプ大統領個人との信頼関係を築き、日米同盟の重要性を直接説得しました。加えて、日米同盟を東アジアにおける安定と繁栄の礎と位置づける戦略もトランプ政権のアジア観と合致するものでした。


この結果、トランプ政権下では一時東アジアからの関与が低下した傾向に歯止めが掛かり、日米同盟を軸とする米国の東アジアに対する関与が強化されることになりました。同時に、安倍首相の尽力により日米同盟の重要性が再確認されました。

安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能でした。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと考えます。

そのことを岸田首相は再認識すべきです。岸田文雄首相は昨年2月26日の自民党大会で、2012年の政権交代後からの自公政権10年間について話しをしました。安倍元首相の強力なリーダーシップの下、経済状況は改善し雇用と企業収益が拡大したこと、デフレから脱却できたことなどを指摘しました。外交・安全保障面では「自由で開かれたインド太平洋」の推進、日米同盟の深化、平和安全法制の整備などの実績を挙げました。

10年間を振り返り、民主党政権下で失われた日本の誇りと自信、活力を取り戻すため、皆で力を合わせ国を前進させたとアピールしました。今こそ安倍元首相と菅前首相が築いた10年間の成果の上に、次の10年を創造する時だと強調しました。防衛力を抜本的に強化し、積極的な外交を展開することで、戦後最も複雑な状況の中でも国民を守り抜く考えを表明しました。

岸田首相は、今回の日米首脳会談は、安倍首相が敷いた既定路線に乗った形で、成功を収めたことを理解すべきです。

そうして、米国との関係については、米国政府という相手があることであり、安倍首相が構築した日米関係の方向性を崩すことは最早できません。さらに、日米関係を基軸とした外交・安全保障に関しても、これを崩すことはできません。


問題は、国内であり、もっと有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできず、ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

そのことを強く認識して、経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。外交だけではなく、国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきです。

これをないがしろにすれば、岸田政権が崩壊するだけではなく、自民党が崩れ、それだけならまだしも、安倍首相が語っていたような、悪夢の民主党政権のよう暗黒史を自民党政権が自ら招くことになりかねません。そうなれば、いずれ自民党は再び下野することになるでしょうが、それまでの間に悪夢の自民党政権が日本国内を毀損すことになりかねません。さらには、次の政権は安倍イズムとは、逆の政権運営をするかもしれません。

これだけは、絶対に避けるべきです。岸田政権は今後、安倍イズムを定着させるべく、邁進すべきです。

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2024年4月10日水曜日

今後も南シナ海で共同パトロール実施へ、日豪比と=米大統領補佐官―【私の論評】日米首脳会談で浮上!安倍から岸田政権への「統合作戦司令部」構想の歴史とバイデン政権の影響

今後も南シナ海で共同パトロール実施へ、日豪比と=米大統領補佐官

サリバン米大統領補佐官


 サリバン米大統領補佐官は、日本、オーストラリア、フィリピンとの南シナ海での共同演習について、今後共同パトロールが増える見通しを示し、中国の威圧に対応するための行動だと述べた。

 また、日米首脳会談と日米フィリピン首脳会談が予定されており、中国の影響力拡大への対抗策が議題となる。さらに、安全保障の枠組み「AUKUS」において、日本との協力拡大が予想される。

 バイデン大統領と岸田文雄首相は、首脳会談で、防衛・安全保障や宇宙開発における協力強化を発表する見通しであり、日本の「統合作戦司令部」発足に向けた米国の支持も明らかにされた。また、在日米軍司令官の階級の格上げが検討されている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】日米首脳会談で浮上!安倍から岸田政権への「統合作戦司令部」構想の歴史とバイデン政権の影響

まとめ
  • 日本の「統合作戦司令部」構想は2010年代初頭から自民党を中心に検討されてきた。安倍政権時代に具体化が進み、岸田政権で発足に向けた米国の支持が得られた。
  • 有事の際、統合作戦司令部は韓国のように米軍の指揮下に入る可能性があり、日本政府との調整が必要。日本は、韓国のような体制を取るべきではない。
  • バイデン政権は日米統合作戦司令部発足を支持しつつ、有事の指揮権移管を求める可能性がある。
  • バイデン政権はウクライナ支援への日本の協力も要求してくる可能性がある。日米同盟強化とウクライナ支援を関連づけて日本に働きかけてくるかもしれない。
  • 岸田首相の今回の米国訪問は総裁選に向けた重要な機会だが、失敗すれば総裁選前に辞任につながるリスクがある。慎重な対応が求められる。
上の記事に「統合作戦司令部」という言葉がでてきます、日本のこの構想は、2010年代初頭から自民党を中心に検討されてきたものです。当時の日本の防衛体制は、陸海空自衛隊がそれぞれ独立した司令部を持っており、統一的な指揮命令系統が不足しているという課題があり、この問題に対する解決策として「統合作戦司令部」の創設が検討され始めました。

特に、2012年から2020年にかけての安倍晋三政権時代に、この構想が大きく前に進みました。安倍政権は日本の防衛力強化を重要政策の一つに位置づけており、統合的な指揮命令系統の確立が不可欠だと考えていました。そのため、安倍政権下で「統合作戦司令部」の具体化に向けた検討が活発化し、その構想が具体的な形となっていきました。

その後、2023年に岸田文雄政権が発足すると、日米首脳会談の場で統合作戦司令部の発足に向けた米国の支持が明らかにされました。つまり、長年にわたる自民党内部の検討と議論を経て、ついに岸田政権下で具体化への大きな一歩を踏み出したのです。

これに関して、日本の統合作戦司令部は平時は自衛隊の指揮下にありますが、有事には米軍との緊密な連携の下に置かれ、場合によっては日米共同の作戦統制が行われる、すなわち有事には米軍司令部の下に置かれる可能性も指摘されています。無論、安倍元首相はそのようなことは目指していませんでした。

実際韓国は、そのような状況になっています。韓国軍の最高指揮権は韓国大統領にあり、平時・有事を通じて大統領が韓国軍を指揮しています。韓国軍は独自の軍司令部を持ち、韓国大統領の指揮下にあります。

韓国軍

ただし、有事の際は、韓国軍の戦時作戦統制権が韓米連合司令部に移譲され、連合軍司令官(米軍4星将軍)が韓国軍を指揮することになります。

つまり、平時の韓国軍は大統領の指揮下にあるが、有事には作戦統制権が米軍に移る体制になっています。

バイデン政権は、岸田政権が発足して以来、統合作戦司令部の発足を支持しているのですが、その位置づけに関して、有事には米国の指揮下に入るように圧力をかけてくるかもしれません。その背景には、有事の際に日本の自衛隊と米軍との指揮命令系統を明確化し、より緊密な協力体制を構築したいという米国の意図があると考えられます。

具体的には、有事の際の統合作戦司令部の位置づけについて、次のような圧力をかける可能性が指摘されています。
  • 統合作戦司令部を米軍の指揮下に置くよう求めること
  • 少なくとも作戦統制権の一部を米軍に移管するよう要求すること
  • 日米の指揮系統の一元化を強く主張すること
これらは、有事における日米の迅速な軍事対応力を高める狙いがあると考えられます。

ただし、有事においては自衛隊の指揮権を日本政府が維持するというのは独立国家として、当然のことであり、有事の際の指揮権をめぐって日本政府と米国政府の間で調整が必要になると見られます。


今後の日米首脳会談などの場で、この点をめぐる激しい協議が行われる可能性が高いと考えられます。

岸田首相は、なし崩し的に、有事の指揮権を米国に譲るようなことがあれば、国民の反発を招くことになるでしょう。こうした圧力をはねのけて、独立国家としての意地をみせていただきたいものです。

一方、AUKUSに関しては、昨日このブログで指摘した通り、協力強化を見据えた上で、日本やその同盟国の安全保障に危険を及ぼす可能性のある人物や組織の排除は正当化されるべきであり、そのための法制度の整備が重要です。岸田首相はこの方向に舵をきるべきです。

さらに、ウクライナ情勢をめぐり、バイデン政権は日本に対して様々な要請を行う可能性があります。

まず、対ロシア制裁への更なる参加要請が考えられます。日本はすでにロシアに対する制裁措置を講じていますが、バイデン政権はさらなる制裁強化を求めてくる可能性があります。

日本はこれまでにウクライナに対する軍事支援は行っておらず、バイデン政権はより積極的な軍事支援を要請してくる可能性があります。

さらに、ウクライナの復興支援や人道支援などに対する日本の経済的な協力を求めてくる可能性もあります。

ウクライナ支援に関して、許容できる範囲なら良いですが、法外な要求に応じてしまえば、国民の反発は必至です。

バイデン大統領夫妻との夕食会に向かう車中での岸田・バイデンの様子

特に注目されるのは、日米統合作戦司令部の発足を支持する中で、ウクライナ情勢への対応で日本の協力を引き出したいというのがバイデン政権の意図と考えられることです。

日米同盟の強化とウクライナ情勢への対応は、バイデン政権にとって重要な政策課題であり、これらを関連づけて日本に要請してくる可能性が高いといえます。

岸田首相にとって、今回の国賓待遇での米国訪問がが総裁選に向けた重要なチャンスとなる可能性もありますが、政治的リスクも大きいといえます。上手く乗り越えられれば有利な展開につながる可能性もありますが、失敗すれば総裁選を待たず辞任にまで追い込まれかねないです。慎重な外交的立ち振る舞いと、国内世論への配慮が重要になってくるでしょう。

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