2025年8月17日日曜日

トランプ半導体300%関税の衝撃、日本が学ぶべき「荒療治」


まとめ

  • グローバリズムの幻想:自由貿易と国境なき経済は理想ではなく幻想であり、米国産業を衰退させ、中国を肥大化させる仕組みとなった。
  • グローバリズムが生んだ中国の台頭:WTO加盟を機に中国は国際市場で支配力を強め、知財流出や技術吸収を進め、米国企業も短期利益に溺れた。
  • トランプの荒療治と反グローバリズム:最大300%の半導体関税は、グローバリズムを撃ち抜く象徴であり、経済政策と政治戦術の両面を兼ねる。
  • 日本の失策とグローバリズムの影響:内需大国でありながら、日銀ショックで自ら経済を縛り、外需依存の幻想に囚われた。
  • 結論と政策提言:日米両国がグローバリズムの呪縛から脱し、内需大国としての潜在力を取り戻すことが、自由世界の安定を支える決定的な一手となる。そのために日本では金融・財政政策の立て直しと官僚機構の刷新が不可欠。
🔳グローバリズムという呪文とその帰結
 
20世紀終盤グローバリズムこそ正義という無邪気な熱病が世界を支配した

20世紀の終盤、世界は「グローバリズム」という名の呪文に酔いしれた。国境をなくせば経済は活性化し、すべての国が豊かになると喧伝された。米国はその先頭に立ち、自国の製造業を海外へ移すことを繰り返した。なぜそんな暴挙を許したのか。それは「金融業さえ残れば米国は繁栄できる」という幻想があったからだ。

この政策が最も恩恵をもたらしたのは中国である。2001年、米国が強力に後押しして中国をWTO加盟へ導いたことは歴史的転換点だった。以来、中国は国際ルールの隙を突き、国際市場に浸透し、製造業をのみ込み、利益を吸い上げた。米国企業も短期的利益に目がくらみ、積極的に中国へ投資した。だがその裏で、中国は国家的規模の工作を展開し、先端技術の吸収、知的財産の奪取、影響力拡大を進めた。

つまり、グローバリズムは美辞麗句の陰で米国の産業を衰退させ、中国の台頭を許す最大の仕組みとなったのである。
 
🔳トランプの「300%関税」と日本に刻まれた日銀ショック
 
エアフォースワンから降り立ったトランプ大統領

こうした幻想を真っ向から叩き壊したのがトランプ前大統領である。彼は「アメリカ第一」を掲げ、グローバリズムの果実ではなく、その副作用に光を当てた。その象徴が「最大300%の半導体関税」だ。2025年8月15日、トランプ氏はエアフォースワン機内で記者団に「来週か再来週にも関税を設定する」と宣言した。導入は段階的で、まずは低率から始め、最終的に200〜300%にまで引き上げる構想を示した。

ここで重要なのは、これは単なる経済政策ではなく政治戦術でもあるという点だ。国内向けには「雇用を守る最後の砦」というメッセージを放ち、支持層を固める。国際的には交渉カードとして機能し、中国や同盟国との駆け引きに使われる。まさに経済と政治を重ねた「爆弾」である。

一方、日本はどうか。日本は本来「内需大国」であった。輸出依存度は1980〜90年代でも8%前後の一桁台にとどまり、国内市場の力だけで経済を回す潜在力を持っていた。1990年代初頭、バブル経済が崩壊したとされるが、実際の物価指数を見ると必ずしも過熱ではなかった。にもかかわらず日銀は急激な金融引き締めに踏み切り、資産市場と実体経済を同時に冷却した。これこそバブル崩壊ではなく、「日銀ショック」である。さらに追い討ちをかけるように、財務省は、緊縮財政に走った。日本は自らの内需を縛り付け、衰退を招いたのだ。
 
🔳グローバリズムを超える内需大国の逆襲

今日、真の内需大国は日米しか存在しない。欧州主要国や中国・韓国は輸出依存度が高く、外需が止まれば経済が停滞する。だからこそ、日米がグローバリズムの呪縛から脱し、内需主導の成長モデルへと舵を切ることが、自由世界の安定を支える決定的な一手となる。

トランプの300%関税は、その荒々しさゆえに副作用を伴うだろう。しかしその背景には、グローバリズムがもはや幻想にすぎないという冷厳な現実がある。日本もまた「外需頼み」という思考停止から抜け出し、内需の潜在力を信じて政策を組み立て直すべきである。

潜在能力に満ちた日本

そして何より、内需拡大は「規制緩和」「技術投資」「国土再開発」といった表層的スローガンだけでは達成できない。第一にマクロ経済政策、すなわち金融・財政政策の立て直しが不可欠だ。そのためには財務官僚や日銀官僚の硬直した思考を改めさせるか、それが不可能なら新たな人材に入れ替えるしかない。ここにおいて日本は、トランプの荒療治から学ぶべきだ。

グローバリズムの呪文に踊らされた時代は終わった。21世紀後半の秩序を決めるのは、内需を覚醒させられる国家である。日米がその道を選ぶか否か——その選択が自由世界の未来を決するのである。

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