2024年4月15日月曜日

岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」―【私の論評】イスラエルの安全保障を支持する日本の姿勢 - G7との協調と核抑止力の重要性

岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」

まとめ
  • G7首脳がイランによるイスラエルへの攻撃を受け、緊急オンライン会議を開催した
  • G7は「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明した
  • G7は、イランが地域の不安定化と激化を招いていると指摘し、これを避ける必要があると強調した
  • 岸田首相も会議に参加した
  • アメリカ政府高官は、この攻撃に事前通告がなく、イランが死傷者を出すつもりだったと述べ、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると警告した

G7のイランのイスラエル攻撃に関するリモート会議

G7首脳は、イランによるイスラエルへの攻撃を受け、オンラインでの緊急会合を開催しました。会合には岸田首相も参加し、G7は「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。

G7は、イランが地域の不安定化と激化を招いていると指摘し、これを避ける必要があると強調しました。

アメリカ政府高官は、この攻撃に事前通告はなく、イランは死傷者を出すつもりだったと述べ、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると警告しました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】イスラエルの安全保障を支持する日本の姿勢 - G7との協調と核抑止力の重要性

まとめ
  • イラン大使館周辺へのイスラエルによる攻撃に対し、イランが報復を行った。
  • G7全体(日本含む)がイランの攻撃を「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明した。
  • イランの領土からイスラエルを直接攻撃するのは今回が初めての事態であり、G7が「前例のない攻撃」と非難した。
  • 多くの中東専門家は、今回の事態が大規模な戦争につながることはないと予想している。その理由は、イスラエルが強力な破壊兵器(核兵器)を保有しているため、イランが過度な攻撃をする可能性が低いからである。
  • 日本の左派政党やマスコミはイランを擁護する傾向にあるが、今回日本政府はイランを非難し、イスラエルを支持する姿勢を示した。今後日本は、このような傾向を強めていくべき
攻撃を受けたダマスカスのイラン大使館周辺

シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺がイスラエルによるとみられる攻撃を受けたことを巡り、イランは報復を行うと表明しており、それが実行されました。

イランによるイスラエル攻撃の際、G7全体(日本を含む)が「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。これは、イランによる攻撃が明らかな国際法違反であり、地域の平和と安全保障を脅かす重大な事態だったため、G7が団結して強い姿勢を示したものです。

さらに、イランの領土から直接イスラエルの領土を攻撃するという事態は、今回が初めてです。

過去にもイランがイスラエルを攻撃する事例はありましたが、それらはイランが支援するシリアやレバノンなどの地域からの攻撃でした。

今回のように、イラン領土そのものからイスラエルに直接攻撃を仕掛けるのは、これまでにない新しい事態でした。

G7がこれを「前例のない攻撃」と強く非難したのは、この点を踏まえてのことだと理解できます。日本もさすがに、イランに対して曖昧な態度をとれなかったのでしょう。イラン領土からの直接攻撃は地域の緊張を一段と高めるものであり、G7が強い懸念を示したのは適切な対応だったと言えます。

イランによるイスラエル攻撃

一方、ハマスによるイスラエル攻撃の際は、日本を除くG6がイスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。この背景には、G6諸国がハマスをテロリスト組織と明確に認識しているのに対し、日本の認識が相対的に希薄であったことが考えられます。

日本は、ハマスの本質を十分に理解していなかったため、G6諸国ほど強硬な姿勢を示せなかったと考えられます。テロリスト組織であるハマスに同情的な立場をとることは適切ではなく、同盟国との連携も重要です。今後は、ハマス等のテロリストの実態をより正確に認識し、国際社会との調和した対応を取る必要があるでしょう。

イランがイスラエルの実効支配下にあるゴラン高原に無人攻撃機やミサイルを撃ち込んだことで、第三次世界大戦への懸念が高まっていると報道されています。しかし、多くの中東専門家は今回の事態が大規模な戦争につながることはないと予想しています。その理由は、イスラエルが強力な破壊兵器を保有(イスラエルは認めていないものの核保有されてるとしている)しているため、イランが過度な攻撃をする可能性は低いからです。

さらに、貧困に苦しむガザ地区を支配するハマスとは異なり、イランはその産油施設を破壊されれば取り返しがつかないです。ハマスのイスラエル攻撃は例外ともいえますが、基本的に、侵略されて女性や子どもが虐殺される国は核兵器を持っていない国に限られます。

日本では核兵器は戦争の象徴とみなされていますが、世界的には平和の象徴と考えられています。日本は日米安全保障条約により、米国の核の傘の下にあります。日本が核攻撃されたら米国は報復するとは明記されていませんが、「危険に対処する」と曖昧に記されています。

その背景には、2023年末時点で日本が世界のドル流通量の1/7以上に当たる1.2兆ドルを保有していることがあります。一方、中国の保有額は約9,000億ドルと報告されています。

つまり、日本はドル資産保有においては中国を上回っているのが現状です。

このように、日本はドル資産保有大国の一つであり、世界の通貨システムにおいて重要な役割を果たしていると言えます。


日本が戦争等にまきこまれドルを大量に売却する姿勢をみせれば、米国はそれに対処せざるを得なくなります。つまり、日本のドル保有がアメリカの対日支援を引き出す要因となっているといえます。

もし、これに加え、日本が核兵器を保有すれば、世界における日本の地位も飛躍的に高まるでしょう。一方で、貧困層を支持する政党は非核化を主張しますが、それは日本の平和と繁栄の基盤を脅かすものだと言えるでしょう。

日本の左派・左翼勢力は、それだけではなく、テロリストのハマスを擁護する傾向が強く、日本のマスコミや学問界でもその傾向が強く、それが日本国内に広く流布しているため、ハマスによるイスラエル攻撃の時には、日本政府はそれにひきづられイスラエルへの「全面的な連帯と支援」の表明からは外されると大失態をしてしまいました。

これと同じように、日本の左派政党やマスコミは、イランを支持・擁護する傾向にあります。これは、イランの反米・反西側的な姿勢や、パレスチナ問題でのハマス支持、さらには核兵器に関する立場などに共感を持っているためと考えらます。

それでも、今回は日本は、「最も強い言葉で明確にイランを非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。これは、一歩前進だと思います。

これからも、日本はこのような傾向を強めていくべきです。そうでないと、せっかくかなり高い潜在的能力を持っているにもかかわらず、世界における日本の地位が低下し、衰退への道を歩むことになりかねません。


G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

2024年4月14日日曜日

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

 杉山大志 直言!エネルギー基本計画

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱 

まとめ
  • 日本のエネルギー供給の8割は化石燃料に依存しており、その安定的な調達が重要
  • しかし第6次エネルギー基本計画では、無理難題とも言える46%のCO2削減目標が設定され、化石燃料の利用制限につながっている
  • その結果、燃料調達や関連事業への参入が困難になり、供給不足や火力発電所の休廃止といった問題が懸念される
  • 一方で、気候変動の悪影響を示すデータや予測モデルの信頼性には疑問があり、CO2ゼロ目標の実効性も極めて低い
  • したがって、「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返り、安定供給を確保する政策を検討すべきであり、パリ協定からの離脱も検討の余地がある
阿蘇外輪山の元牧野に建設されたメガソーラー

 日本のエネルギー供給の8割は依然として石油、石炭、天然ガスといった化石燃料に依存している。これらの化石燃料を安定的に調達し活用することは、日本のエネルギー政策の最も重要な柱のはずだ。

 しかし、現行の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年までにCO2排出量を2013年比で46%も削減するという非現実的な数値目標が設定され、化石燃料の利用量も極端に低く設定されている。その結果、企業は長期的な燃料調達契約の締結が困難となり、油田やガス田への事業参入も阻害されている。

 こうした事態が進めば、有事の際に法外な価格でしか化石燃料が調達できなくなったり、最悪の場合は全く調達できなくなる可能性がある。また、火力発電所の休廃止も余儀なくされ、定期的に「節電のお願い」が発出されることにもなりかねない。

 一方で、メディアでは気候変動の悪影響が強調されているが、統計データではそのような事態は確認されていない。さらに、気候変動リスクを示すシミュレーションモデルさえ、過去の再現すら十分にできていないと指摘されており、その将来予測を政策決定に活用するのは適切ではない。

 したがって、「2050年にCO2排出ゼロ」という極端な目標を掲げ、日本のエネルギー政策と経済活動を大きく制限することは不適切であると考えられる。そうではなく、安定したエネルギー供給を確保し、経済発展を支えていく「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返るべきであり、グローバルサウスの支持も得つつ、パリ協定からの離脱も検討する必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

まとめ
  • 「エネルギー・ドミナンス」はトランプ政権下の米共和党で使われてきた概念で、安定かつ安価なエネルギー供給を通じた経済発展や民主主義の保護を目指すものです。
  • 第6次エネルギー基本計画は「脱炭素」を重視しつつ、再生可能エネルギー以外のエネルギー源の活用も検討されました。
  • この計画は「S+3E」の視点から、安全性、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性を重視しています。しかし、現実には脱炭素、再エネばかりが強調されています。
  • 安倍晋三氏が存命であれば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような新たな概念を提唱し、地球規模でのエネルギー協力体制を構築していた可能性があります。
  • 「エネルギー・ドミナンス」の代わりに「エネルギー共生圏」のような概念を打ち出すことで、より多くの国々の参加を促し、現実的な世界秩序の再編成を目指すべきです。

「エネルギー・ドミナンス」という用語は、米国共和党で使用されてきた概念です。これは豊富で、安定し、安価なエネルギーを供給することを指し、経済発展や防衛力の向上、自由や民主主義などの普遍的価値の保護と発展を可能にするとされています。具体的にこの言葉を最初に使った個人についての情報は見つかりませんでしたが、この概念はドナルド・トランプ大統領の下での米国のエネルギー政策に関連してよく言及されています。

「第6次エネルギー基本計画」は安倍政権下で検討されたものではありますが、安倍総理は、2020年9月16日に辞任しており、閣議決定されたのは、2021年10月の菅政権のときでした。

第6次エネルギー基本計画で目指す総発電量に占める電源別の割合

この基本計画が検討された時期においては、「脱炭素」が世界の趨勢となっており、このエネルギー基本計画は、「脱炭素」にも重点を置き、極端な目標が掲げられている一方、再生可能エネルギー以外のエネルギー源についても詳細に述べられています。

この計画は、本来は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものであり、安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)という「S+3E」の視点を重視しています。

具体的には、以下のようなポイントが含まれています。

安全性(Safety):あらゆるエネルギー関連設備の安全性を最優先し、特に原子力に関しては、国民の懸念の解消に全力を挙げることが強調されています。

エネルギーの安定供給(Energy Security):日本のエネルギー自給率が低いため、エネルギー供給の安定性を確保することが重要視されており、レジリエンス(強靭性)を高めることが求められています。

環境への適合(Environment):カーボンニュートラルを目指し、エネルギー分野の脱炭素化に取り組むことが強調されています。これには、再生可能エネルギーの導入拡大や、CO2排出削減技術の開発が含まれます2。

経済効率性(Economic Efficiency):低コストでのエネルギー供給とエネルギーの安定供給、環境負荷の低減を同時に実現することが、日本の経済成長にとって重要であるとされています。

安倍政権が継続されていた場合、あるいは政権が続いていなくても、安倍晋三氏が存命だった場合、経済効率性やエネルギーの安定供給の観点がもっと強調されていた可能性があります。

しかし、菅政権から、岸田政権にかけて、エネルギー政策というと、カーボンニュートラルや再エネ等が大きく注目されるようになりました。そうして、現状では阿蘇山にはメガソーラ発電省が設置され、釧路湿原国立公園内に、6.6haの太陽光発電施設が設置されるという危機的状況になっています。


このままだと、日本はエネルギー政策で失敗して衰退しかねません。だからこそ、エネルギー問題のまともな専門家たちは、危機を感じているのです。

そうして、上の記事の杉山氏の元記事ように
米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。
と警鐘を鳴らしているです。

これは、重要であり、中国やロシアがエネルギー・ドミナンスで優勢になれば、日本を含む西側諸国やその同盟国は安全保証上の脅威にもさらされることを意味しています。

そうして、安倍晋三氏がご存命であれば、この危機にいち早く気づいて、新たな概念を生み出しい、「安全保障のダイヤモンド」のような論文をブロジェクト・シンジケートに投稿していたかもしれません。ちなみに、この論文は、後の「インド太平洋戦略」に結びつき、中国の覇権主義に対抗する上で重要な概念となっています。

エネルギー・ドミナンスの危機に関して、安倍晋三氏がご存命であれば、やはり新たな概念を生み出したかもしれません。

たとえば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」という概念を生み出していたかもしれません。

これは、意味するところは、以下です。
  • 「共生」の文字から、各国や多様なステークホルダーが互いに協力し合い、共に発展していくエネルギーシステムの構築を表現
  • 「圏」の字は、地球規模での包括的なエネルギー協力体制を示唆しています
  • 化石燃料の利用や、原子力エネルギー等、現実的なエネルギー利用の安定供給を目指すとともに、小型原子炉や核融合炉などの将来のエネルギーの開発等も含めた、エネルギーミックスを構築する
  • 先進国と途上国、エネルギー生産国と消費国が対話を重ね、共生的なエネルギーアーキテクチャを構築することを表す
英語での意味は以下のようなものです。
  • "Energy" - エネルギーという分野を表しています。
  • "Symbiosis" - 共生、相互依存的な関係性を意味します。
  • "Sphere" - 地球規模、あるいは包括的な領域を表す言葉です。圏というと、大東亜共栄圏などを思い起こさせる言葉ですが、Sphereは違います。
つまり、「Energy Symbiosis Sphere」は、各国や様々な利害関係者が協力し合って、現実的なエネルギーシステムを地球規模で構築していくという戦略概念を表しています。

この英語表現も、安倍晋三氏の思想を反映した戦略的なイニシアチブを感じさせる言葉だと思います。

「安全保障のダイヤモンド」は、端的に言ってしまうと、「中国封じ込め政策」なのですが、安倍晋三氏は、そうではなくもっと大きな上位の概念からこの言葉を使っています。これによって、より多くの国々が、この言葉に賛同し参加できるような素地をつくりだし、後にさらに「インド太平洋戦略」という言葉を生み出し、インドや太平洋の重要性も含むようにしました。これによって、安倍晋三氏は世界の秩序を変えたといえます。

そうして、それが世界だけでなく、日本国内にも大きな影響を及ぼしています。

エネルギー・ドミナンスは日本語訳にすると「エネルギー支配」とも訳すことができ、これではエネルギーに関する覇権争いとも受け取られかねません。これでは、日米のエネルギー・ドミナンスの確立に参加を表明したくてもできない国々が出てくる可能性もあります。

Energy Symbiosis Sphere AI生成画像

日本国内でも、どなたか有力な方が「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような言葉を作り出し、安倍晋三氏が、政権発足直前に「ブロジェクト・シンジケート」で公表したように、新たな概念を公表すべきと思います。

これによって、エネルギーを基軸とした、世界秩序の再編成を目指すべきです。

それにしても、それを実現できる人は、なかなか見当たりません。改めて、わたしたちは偉大な人物を亡くしてしまったことが残念でなりません。

しかし、このようなことを実現し、それだけでなく、それを目指して行動する人こそ、安倍氏の真の後継者なのかもしれません。

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2024年4月13日土曜日

「エネルギー備蓄」「インフラ防衛」にこそ投資が必要だ 台湾からの日本有事に備えよ 中国に狙われる日本のアキレス腱―【私の論評】台湾とエネルギー備蓄の実態 - 日台が抱える課題と対策

杉山大志 直言!エネルギー基本計画
  • 中国は軍事演習と臨検(船舶への立ち入り検査)で台湾を海上封鎖し、無血開城を狙っている。台湾のエネルギー備蓄が少ないため、すぐに陥落する可能性がある。
  • ペロシ議長の台湾訪問時の中国の大規模軍事演習は実際は海上封鎖の訓練だった。中国は金門島周辺の遊覧船を臨検するなど、台湾統一への動きを見せている。
  • 中国は台湾を軍事的に圧倒しているので、米軍が介入しなければ台湾統一が成功する可能性が高い。しかし米軍が介入すれば、日本の在日米軍基地や自衛隊基地が攻撃対象となり、日本のエネルギーインフラも狙われる。
  • ロシア・ウクライナ戦争では、互いのエネルギーインフラが破壊されている。ドローン攻撃により、日本近海の海上交通の安全も脅かされかねない。
  • 中国に台湾統一を容認させるのではなく、必ず米軍が介入し、中国が惨敗して政権も崩壊すると思わせる必要がある。

台湾の首都台北市

 中国は「台湾統一」を目指し、その一環として軍事演習や臨検を通じた台湾の海上封鎖を計画している。台湾のエネルギー備蓄が少ないため、この戦略は台湾を迅速に陥落させる可能性がある。ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問時やその後の中国海警局による臨検など、既に実際に行われている動きがある。

 中国の軍事力は台湾を圧倒しており、米軍が介入しなければ台湾統一は可能とみられる。しかし、米軍が介入すれば、在日米軍基地や自衛隊基地、さらには日本の基幹インフラが中国の攻撃対象になり得る。ロシアとウクライナの例を見ても、エネルギーインフラが戦略的な標的になりうることが示されている。日本もドローンによる攻撃の脅威にさらされており、エネルギー供給の安定性が懸念される。

 中国を刺激しないよう、台湾有事における日本の強固な態度が重要である。日本は防衛能力の強化やエネルギー備蓄の増強、インフラの保護に向けた予算配分を見直す必要がある。グリーントランスフォーメーション(GX)への投資も重要だが、現在の国際情勢を鑑みると、防衛力やエネルギー安全保障の強化が急務である。

 中国による台湾統一の野望とその影響は、台湾だけでなく、日本やその他の関係国にとっても深刻な問題である。日本はエネルギー備蓄の充実や防衛能力の強化を急ぎ、国際的な安全保障環境の変化に備える必要がある。 

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は元記事をご覧ください。

【私の論評】台湾とエネルギー備蓄の実態 - 日台が抱える課題と対策

まとめ
  • 台湾のエネルギー備蓄は石油30日分、天然ガス10日~2週間分、石炭1カ月分
  • 台湾のエネルギー輸入依存度は97.4%で、2050年までに50%以下に削減目標
  • 日本のエネルギー備蓄も乏しい
  • エネルギー・ドミナンスは資源保有、供給支配力、影響力の確立を意味する。これを日台が確立するには、将来は小型原子炉、核融合炉を実用化すべき
  • 日台は当面、これを確立するため、再エネは抑制、化石燃料の安定的な調達や備蓄の確保、さらには原子力発電の活用といった、即効性のある対策に注力すべき
台湾・九份

台湾のエネルギー備蓄に関する情報は以下の通りです。

石油: 台湾政府は石油基金を運用して国家戦略石油備蓄を行い、過去1年間における国内石油製品販売量及び消費量の30日分相当を備蓄しています。民間備蓄は石油精製業者及び輸入業者が過去12ヵ月間における国内石油製品平均販売量及び消費量の60日分以上の安全在庫を確保しなければならないとされています。

天然ガス: 台湾の天然ガスの国内備蓄量はおよそ10日から2週間分程度しかなく、将来的に石炭を天然ガスで代替する場合には、安定したエネルギー供給が重要な課題となっています。

石炭: 現状では1カ月の在庫があるとされていますが、これは増やすことが可能かもしれません。

台湾はエネルギーの輸入依存度が高く、2021年の依存度は97.4%に達していましたが、2050年には50%以下に引き下げる目標を立てています。台湾当局は、これらの取り組みにより、2030年までの4兆台湾元にのぼる民間投資の促進、輸入エネルギーへの依存度の低下、大気の汚染量を2019年比で減少させることを目指しています。

日本の場合、官民合わせて200日以上の石油備蓄、石炭は1カ月分、天然ガスは2週間分しかないと述べられています。日本も台湾もエネルギーの備蓄量は少ないです。これでは、長期の戦争になった場合は、かなり不利です。

エネルギー・ドミナンス AI生成画像

これは、エネルギー・ドミナンスの観点から早急に見直すべきでしょう。ちなみに、エネルギー・ドミナンスとは、ある国や地域がエネルギー分野で圧倒的な優位性を持つことを指す概念です。具体的には以下のような特徴があげられます。
  • 膨大なエネルギー資源の保有 特定の国が、石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源を大量に保有し、供給能力が非常に高い状態。
  • 支配的な地位の確保 保有するエネルギー資源や輸送インフラを通じて、特定の国がエネルギー分野での支配的な地位を確立している。
  • 政治的・経済的な影響力 エネルギー供給を実質的に支配することで、その国が世界の政治・経済に大きな影響力を持つようになる。
  • 地政学的な優位性 エネルギー資源の保有や供給ルートの管理によって、地政学的な有利な立場を築くことができる。
つまり、エネルギー・ドミナンスとは、特定の国がエネルギー分野で圧倒的な優位性を確保し、それを通じて莫大な政治経済的な影響力を行使できる地位を築くことを意味しています。

現状の日米、台湾、中国のエネルギー・ドミナンスの状況を述べておきます。

まず、米国は自国内の膨大なエネルギー資源を保有しており、特に近年のシェールガス革命により、エネルギー自給率が向上しています。また、世界最大のエネルギー消費国としての地位を活かし、エネルギー分野での影響力を行使しています。つまり米国はエネルギー・ドミナンスを確立している国の一つといえます。

エネルギー・ドミナンスを確立した国は、米国の他には、ロシア、サウジアラビアなどがあります。

一方、日台は国内にエネルギー資源が乏しく、ほとんどを輸入に頼らざるを得ません。そのため、エネルギー分野では相対的に弱い立場にあり、エネルギー・ドミナンスは有していません。

最後に中国ですが、膨大な人口と急速な経済成長により、世界最大のエネルギー消費国となっています。中国は自国内の石炭、石油、天然ガスなどの資源を活用しつつ、海外からの輸入も拡大させており、エネルギー供給分野での影響力を高めつつあります。中国はエネルギー・ドミナンスを目指す一つの候補国といえるでしょう。

中国は確かに大量のエネルギー資源を有している一方、世界最大のエネルギー消費国でもありエネルギー資源の多くを輸入に頼らざるを得ない状況にあり、完全な自給体制を確立できていないのが現状です。

また、輸送インフラの整備や技術力の面でも、まだ米国などの先進国に遅れをとっているのが中国の課題です。

日本や台湾のようなエネルギー資源が乏しい国が、真のエネルギー・ドミナンスを確立するには、小型原子炉の実用化や、将来的な核融合炉の実現が不可欠だと考えられます。

現状では、再生可能エネルギーの発電コストが化石燃料に比べて高く、安定供給性にも課題がある状況です。再生可能エネルギーの比率を急速に高めていくと、エネルギー供給の不安定化や経済的負担の増大につながる恐れがあります。

具体的な数値を見てみると、以下のような状況です。

再生可能エネルギー(2022年)
  • 太陽光発電: 5~10円/kWh
  • 陸上風力発電: 8~12円/kWh
  • 洋上風力発電: 15~20円/kWh
化石燃料(2022年)
  • 天然ガス火力発電: 10~15円/kWh
  • 石炭火力発電: 12~18円/kWh
確かに、再生可能エネルギーの発電コストは下がりつつありますが、いまだ化石燃料にはおよびません、特に2022年は、ウクライナ情勢などを背景に燃料価格が高騰した時期であり、それでもなお化石燃料の発電コストが低いことに注目すべきです。

さらに、再生可能エネルギーには、出力変動性、経済性の課題、資源制約、大規模な設備投資の必要性などの不安定な要素があります。

具体的には、発電出力が天候に左右されるため供給の安定性が低く、コストも化石燃料発電に比べて割高な状況が続いています。また、希少金属などの資源確保が難しく、大規模な初期投資も必要となります。

再生エネルギー AI生成画像

小型原子炉については、大型の従来型原発に比べて安全性が高く、さらにコスト面や立地面での優位性があり、日台にとって有望なオプションになり得ます。小型原子炉の開発を進め、実用化を図ることで、エネルギー供給の安定性と自給率の向上につなげられるはずです。

そして長期的には、核融合炉の実現が鍵を握ると言えます。核融合は膨大なエネルギーを安全かつクリーンに生み出す可能性を秘めた次世代技術です。この実用化が実現すれば、化石燃料や ウラン 資源に依存しなくてもエネルギーの確保が可能となり、まさにエネルギー・ドミナンスの確立につながることになります。

ただ、これらが実用化されるまでには時間がかかります。それまでの間、日本や台湾としては、まずは化石燃料の安定的な調達や備蓄の確保、さらには原子力発電の活用といった、即効性のある対策に注力すべきです。

再生可能エネルギーについては、引き続き研究開発を続けることはやぶさかではないものの、あくまで実験レベルにとどめるべきであり、現実的なエネルギー供給源とみなすべきではありません。短期と長期のバランスを取りつつ、段階的にエネルギー・ドミナンスを確立していくことが、日本や台湾にとって望ましい道筋です。

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2024年4月12日金曜日

日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意―【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意

まとめ
  • 「日本とフィリピンを防衛する米国の決意は揺るぎない」と米大統領
  • 米は国際社会の「中心的役割」継続を、岸田首相が米議会で演説


 日本、アメリカ、フィリピンの3カ国首脳が会談を行い、自衛隊と米比両軍の海上共同訓練の拡充に合意した。

 南シナ海情勢を踏まえ、海洋安全保障が最重要議題となった。バイデン大統領は日本とフィリピンの防衛への決意を表明した。

 3カ国は、南シナ海と東シナ海における中国の行動に深刻な懸念を示し、新たな共同訓練の実施や資源サプライチェーン強化などで協力を強化することで合意した。

 岸田首相は、米議会での演説で、自由と民主主義が脅威に晒されており、特に中国の動向が課題だと指摘。米国の支援と存在が不可欠であると述べた。岸田演説は、選挙後の日米関係の重要性を米議会に訴えるものだった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

まとめ
  • 安倍前首相の日米同盟強化への尽力と指導力が、現在の日米同盟の基盤を築いた。
  • 日米協力は官僚レベルでの継続的な取り組みであり、政権交代に影響されないものだった。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」構想は安倍前首相の外交の柱で、その延長線上にある日米比の安全保障協力が進展している。
  • 日米比3か国の防衛大臣会談、軍隊間の共同訓練、非伝統的安全保障分野での協力など、緊密な連携が進んでいる。
  • 岸田首相は、安倍イズムの外交・安全保障政策を継承し、国内においても経済政策や自民党内の調整などで安倍路線を踏襲すべきだ

昨日のこのブロクでは、安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能であり。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと掲載しました。

結局のところ、今日の日米首脳会談は、安倍イズムの影響下での日米同盟強化であったと結論ずけました。

その根拠として、日米同盟の強化はすでに両国の官僚級の折衝はから始まっていたことを根拠としてあげました。それは、両国の首脳の政権がこれからも続くか続かないにかかわらず、日米という国家間で継承される合意事項であるともいえます。

今回の日米首脳会談はこれを追認したものに過ぎません。

今回の日米比の首脳会談でも同じことがいえます。日米比の安全保障協力の進展は、安倍前首相の時代から見られる「自由で開かれたインド太平洋」構想の具現化であると言えます。

安倍首相は在任中、日本の外交・安全保障政策の大きな柱として、この構想を掲げ、地域の主要国との連携強化に力を入れてきました。特にフィリピンとの関係強化は重要な課題の一つでした。

こうした安倍首相の方針は、その後の日本政府によっても継承されており、日米比三カ国の安全保障協力はその具体的な成果として表れているといえます。

日米比の3か国による安全保障協力も活発に行われてきました。
  • 2022年以降、日米比三カ国の防衛大臣会談が定期的に開催され、地域情勢への共同対応について議論が行われています。
  • 日米比三カ国の自衛隊、米軍、フィリピン軍による共同訓練の実施が活発化しており、相互運用性の向上が図られています。
  • 災害救援活動や 海洋安全保障等、非伝統的安全保障分野での協力も強化されてきました。
  • 情報共有や海上監視、訓練支援など、各国の軍事当局間での緊密な連携も進んでいます。
  • 日米両国がフィリピンに対する装備品供与や訓練支援など、二国間の取り組みも行っています。
このように、日米比三カ国間での安全保障面での協力は着実に進展してきており、地域の平和と安定に向けた重要な枠組みとなっています。特に、日米比の省庁レベルや軍事当局レベルでの緊密な対話と協調が進展してきたと言えます。

2022年には第1回日米比陸軍種ハイレベル懇談会が日本で開催された

省庁間、軍事当局間での緊密な対話と実務レベルの協力は、この構想の実現に向けた着実な取り組みの一環であると評価できます。

これは、日米比の多くの人々も認めるところであり、今回の日米比の首脳の合意は、安倍イズムの延長線上にあるものとえ、この三者が新しく始めたものではなく、安倍イズムによる「自由で開かれたインド太平洋」構想の継承とみることができます。もっといえば、安倍首相は中国をめぐる世界秩序を変えたのです。

中国への対処ということでは、「自由で開かれたインド太平洋」構想とこの構想に含まれる諸国との提携や、協力の強化の方針は、安倍イズムによってすでに方向づけられたものです。そのため日米比の現在の首脳は、これを自分たちの成果とすることはできません。

特に、大統領選、総裁選が間近に迫っている、バイデン大統領と、岸田首相はそうです。

バイデン、岸田ともに、政権を安定させたいなら、インド太平洋地域以外の外交や国内を安定させる政策を推進することが肝要です。

岸田首相は、昨日も述べたように、大きな問題は国内にあり、有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできません。ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

安倍首相は、地球儀を俯瞰する外交を実行して成果をあげており、この点で、岸田首相が外交で努力したとしても、あまり大きな成果とみなされることはありません。おそらく、岸田首相の独自での外交での成果といえば、ウクライナ電撃訪問くらいかもしれません。

安倍首相地球儀を俯瞰する外交で成果をあげた

やはり岸田首相は、安倍氏の経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。さらに憲法改正もすすめるべきなのです。国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきなのです。

これは、岸田政権が崩壊して、次の政権に変わったにしても、あてはまることだと思います。

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2024年4月11日木曜日

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及―【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及

まとめ
  • 日米同盟がかつてない強さに高まり、両国が大胆な措置を講じてきたことを確認
  • 防衛・安全保障協力の深化に向け、日本の防衛力強化や日米指揮統制体制の向上などを歓迎
  • 先端技術分野での共同開発・生産、経済安全保障の強化などによる日米の技術的優位性の確保
  • インド太平洋地域の自由で開かれた秩序の維持に向けた地域協力の推進
  • 気候変動対策での両国の連携強化とクリーンエネルギー分野でのリーダーシップ発揮


  日米首脳共同声明は、過去3年間にわたり、両国が勇気ある措置を講じることにより、日米同盟が前例のない高みに到達したことを確認している。この歴史的な展開を踏まえ、両首脳は新たな日米グローバル・パートナーシップの構築に合意した。

  そのための具体的な取組として、まず防衛・安全保障協力の強化が掲げられている。日米両国は、同盟がインド太平洋地域の平和、安全および繁栄の礎であり続けることを確認し、日本の防衛力強化や指揮統制体制の強化など、同盟の新たな時代に対応した取組を支持した。さらに、日米の指揮統制体制の向上や情報協力の深化、ミサイル防衛の強化など、地域の安全保障上の課題に直接対処するための具体的な施策も明記。

 加えて、宇宙開発、イノベーション、経済安全保障、気候変動対策など、幅広い分野で日米が連携して取り組むための新たな戦略的イニシアチブを発表した。特に、次世代技術の共同開発や、経済安全保障の強化に向けた政策協調の強化などが重要な柱となっている。

 一方で、北朝鮮の核・ミサイル問題、ロシアのウクライナ侵略など、地域や世界の安全保障上の重要課題に対しても、関係国と協調して対処していくことを表明。

 さらに、日米両国民の絆を一層深化させるため、人的交流の強化やグラスルーツレベルの地方自治体間連携など、多様な取組についても言及されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

まとめ
  • 日米首脳会談の共同声明は、日米同盟の新たな時代を示す戦略的パートナーシップの構築を目指すものであり、防衛、経済、技術、外交など広範な分野に焦点を当てている。
  • 共同声明の注目すべき点は、日本の防衛力の抜本的強化、先端技術分野での日米協力の深化、経済安全保障の強化の3つに集中している。
  • 日本の防衛力の強化は、専守防衛の原則からの転換を意味し、抑止力と対処力の強化につながる。
  • 先端技術分野での協力は、経済安全保障上も重要であり、両国の競争力を高める。
  • 日米関係の強化には、安倍首相のリーダーシップや外交努力が大きく寄与しており、岸田首相もこの路線とともに、日本国内の政策に関しても安倍イズムを継承すべきである。

この共同声明は、21世紀の課題に取り組む日米同盟の新たな時代を切り拓くべく、防衛、経済、技術、外交など、広範な分野における具体的な戦略的パートナーシップの構築を示すものとなっています。

共同声明の中で特に注目すべき点は以下の3つです。

1. 日本の防衛力の抜本的強化
共同声明では、2027年度までに日本の防衛費をGDP比2%まで増額し、反撃能力の保有や統合作戦司令部の新設など、日本の防衛力を大幅に強化することが盛り込まれています。これは注目すべき点です。
なぜなら、これまで日本は専守防衛を旨としてきましたが、今回の防衛力強化は抑止力の大幅な強化につながるものです。地域の安全保障環境が厳しさを増す中で、日米同盟の抑止力と対処力を引き上げる上で、日本の防衛力強化は不可欠な取り組みだと位置づけられているからです。

このような日本の防衛力増強は、同盟国である米国にとっても大きな意義を持ちます。日本の防衛力が強化されることで、米国の同盟国としての負担が軽減され、より効果的な抑止力の発揮が期待できるためです。

2. 先端技術分野での日米協力の深化
共同声明では、AI、量子、半導体、バイオテクノロジーなどの重要・新興技術分野で、日米が協力して研究開発や産業基盤の強化に取り組むことが明記されています。
これは注目に値する点です。先端技術分野でのリーダーシップを確立することは、経済安全保障上も極めて重要です。両国が互いの強みを活かしながら、これら次世代技術の開発や保護に協力することで、技術的な優位性を確保し、経済的な競争力を高めていくことができるためです。

また、こうした技術協力は、日米同盟の絆をより強固なものにする効果も期待できます。先端技術を共に推進していくことで、経済的な利益共同体としての側面が一層強化されるからです。

3. 経済安全保障の強化
共同声明では、日米両国が非市場的な政策や慣行への対処、信頼性のあるサプライチェーンの構築など、経済的側面からの安全保障強化に取り組むことが明記されています。
これは重要な点です。地政学的な競争が激化し、経済的な安全保障の確保が喫緊の課題となる中で、日米が緊密に協調してこの分野に取り組むことは、両国の経済的利益を守る上で不可欠だからです。

特に、先端技術分野での覇権を握ることは、経済安全保障上も極めて重要です。日米が連携して、こうした分野での優位性を確保していく狙いがうかがえます。
 
以上3点は、共同声明の中でも特に注目すべき点だと考えられます。日米同盟を21世紀の安全保障環境に合わせて強化していく上で、これらの取り組みが大きな意味を持つためです。


日米が安全保障面での一体化を模索することは、もはや多数の米国民にとって当然のことです。今回の合意に対する大きな騒ぎは起きていません。日本との同盟強化に反対する声はほとんどなく、ドナルド・トランプ前大統領や共和党支持者を含めても、日米同盟の強化に異議を唱える声はありません。

日本という国が米国にとってより身近な存在になっています。大谷翔平選手やテレビドラマ、アニメなどを通じて、日本文化が米国に浸透しており、日本人に対する親近感が高まっています。これは、中国に対する米国民の嫌悪感とは対照的であり、日本は米国人にとって好意的な国として位置付けられています。

ギャラップ世論調査では、日本が米国人にとって最も好きな国の一つに選ばれています。この好意的な姿勢は、日米関係の強化にも繋がっていると言えます。

しかし、一方で岸田首相に対する米国メディアの関心は薄いです。岸田首相の政治的地位は不安定であり、政権内部や有力派閥のスキャンダルに揺れ動いています。そのため、米国メディアは岸田首相を「影の薄い総理大臣」と見ており取り上げることが少ないです。これは安倍首相とは対照的です。

しかし、日米関係の強化に向けては、両国のまともな官僚や議員らが着実に動いているようです。両国の政治的不安定さにもかかわらず、日米関係の堅固さを確保するために、彼らは日々努力しているようです。そのため、今回の日米首脳会談も、両国の関係強化の一環として注目されています。

官僚レベルにおける日米関係強化に向けた取り組みには以下のようなものがあります。

防衛・外交面では、外務省北米局と米国務省が定期的な政治対話を行っており、北朝鮮問題に関する制裁政策の調整や台湾問題に関する協議などが実施されているほか、自衛隊と米軍の共同訓練を強化することで軍事面での協力関係を深めています。

経済・貿易面では、経済産業省と米通商代表部がIT分野など特定分野の共同研究を進める一方で、農林水産省と米農務省もTIFAにおける農産品の市場開放交渉を行っています。

文化交流面では、文部科学省と米教育省が大学間交流事業の拡大に努めるとともに、外務省と米国務省が語学研修制度を活用した若手研修生の派遣数を増やしています。

テクノロジー面では、総務省と米通信委員会が5G技術の標準化で、経済産業省も半導体技術分野で共同研究を進めることで協力体制を強化しています。

さらに、環境・エネルギー面では再生可能エネルギー分野、科学技術面では宇宙開発分野での国際協力も進められています。

上に述べた具体例は、ごく一部にすぎません。 

なぜ日米関係がこのようになっているかといえば、やはり安倍首相の尽力があったおかげです。

これなくしては、現在の日米同盟の強固な地位と日米協力体制がこの水準に達することは極めて困難であったと思います。

特に、トランプ政権下で米国第一主義が強まる中、安倍首相はトランプ大統領個人との信頼関係を築き、日米同盟の重要性を直接説得しました。加えて、日米同盟を東アジアにおける安定と繁栄の礎と位置づける戦略もトランプ政権のアジア観と合致するものでした。


この結果、トランプ政権下では一時東アジアからの関与が低下した傾向に歯止めが掛かり、日米同盟を軸とする米国の東アジアに対する関与が強化されることになりました。同時に、安倍首相の尽力により日米同盟の重要性が再確認されました。

安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能でした。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと考えます。

そのことを岸田首相は再認識すべきです。岸田文雄首相は昨年2月26日の自民党大会で、2012年の政権交代後からの自公政権10年間について話しをしました。安倍元首相の強力なリーダーシップの下、経済状況は改善し雇用と企業収益が拡大したこと、デフレから脱却できたことなどを指摘しました。外交・安全保障面では「自由で開かれたインド太平洋」の推進、日米同盟の深化、平和安全法制の整備などの実績を挙げました。

10年間を振り返り、民主党政権下で失われた日本の誇りと自信、活力を取り戻すため、皆で力を合わせ国を前進させたとアピールしました。今こそ安倍元首相と菅前首相が築いた10年間の成果の上に、次の10年を創造する時だと強調しました。防衛力を抜本的に強化し、積極的な外交を展開することで、戦後最も複雑な状況の中でも国民を守り抜く考えを表明しました。

岸田首相は、今回の日米首脳会談は、安倍首相が敷いた既定路線に乗った形で、成功を収めたことを理解すべきです。

そうして、米国との関係については、米国政府という相手があることであり、安倍首相が構築した日米関係の方向性を崩すことは最早できません。さらに、日米関係を基軸とした外交・安全保障に関しても、これを崩すことはできません。


問題は、国内であり、もっと有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできず、ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

そのことを強く認識して、経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。外交だけではなく、国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきです。

これをないがしろにすれば、岸田政権が崩壊するだけではなく、自民党が崩れ、それだけならまだしも、安倍首相が語っていたような、悪夢の民主党政権のよう暗黒史を自民党政権が自ら招くことになりかねません。そうなれば、いずれ自民党は再び下野することになるでしょうが、それまでの間に悪夢の自民党政権が日本国内を毀損すことになりかねません。さらには、次の政権は安倍イズムとは、逆の政権運営をするかもしれません。

これだけは、絶対に避けるべきです。岸田政権は今後、安倍イズムを定着させるべく、邁進すべきです。

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2024年4月10日水曜日

今後も南シナ海で共同パトロール実施へ、日豪比と=米大統領補佐官―【私の論評】日米首脳会談で浮上!安倍から岸田政権への「統合作戦司令部」構想の歴史とバイデン政権の影響

今後も南シナ海で共同パトロール実施へ、日豪比と=米大統領補佐官

サリバン米大統領補佐官


 サリバン米大統領補佐官は、日本、オーストラリア、フィリピンとの南シナ海での共同演習について、今後共同パトロールが増える見通しを示し、中国の威圧に対応するための行動だと述べた。

 また、日米首脳会談と日米フィリピン首脳会談が予定されており、中国の影響力拡大への対抗策が議題となる。さらに、安全保障の枠組み「AUKUS」において、日本との協力拡大が予想される。

 バイデン大統領と岸田文雄首相は、首脳会談で、防衛・安全保障や宇宙開発における協力強化を発表する見通しであり、日本の「統合作戦司令部」発足に向けた米国の支持も明らかにされた。また、在日米軍司令官の階級の格上げが検討されている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】日米首脳会談で浮上!安倍から岸田政権への「統合作戦司令部」構想の歴史とバイデン政権の影響

まとめ
  • 日本の「統合作戦司令部」構想は2010年代初頭から自民党を中心に検討されてきた。安倍政権時代に具体化が進み、岸田政権で発足に向けた米国の支持が得られた。
  • 有事の際、統合作戦司令部は韓国のように米軍の指揮下に入る可能性があり、日本政府との調整が必要。日本は、韓国のような体制を取るべきではない。
  • バイデン政権は日米統合作戦司令部発足を支持しつつ、有事の指揮権移管を求める可能性がある。
  • バイデン政権はウクライナ支援への日本の協力も要求してくる可能性がある。日米同盟強化とウクライナ支援を関連づけて日本に働きかけてくるかもしれない。
  • 岸田首相の今回の米国訪問は総裁選に向けた重要な機会だが、失敗すれば総裁選前に辞任につながるリスクがある。慎重な対応が求められる。
上の記事に「統合作戦司令部」という言葉がでてきます、日本のこの構想は、2010年代初頭から自民党を中心に検討されてきたものです。当時の日本の防衛体制は、陸海空自衛隊がそれぞれ独立した司令部を持っており、統一的な指揮命令系統が不足しているという課題があり、この問題に対する解決策として「統合作戦司令部」の創設が検討され始めました。

特に、2012年から2020年にかけての安倍晋三政権時代に、この構想が大きく前に進みました。安倍政権は日本の防衛力強化を重要政策の一つに位置づけており、統合的な指揮命令系統の確立が不可欠だと考えていました。そのため、安倍政権下で「統合作戦司令部」の具体化に向けた検討が活発化し、その構想が具体的な形となっていきました。

その後、2023年に岸田文雄政権が発足すると、日米首脳会談の場で統合作戦司令部の発足に向けた米国の支持が明らかにされました。つまり、長年にわたる自民党内部の検討と議論を経て、ついに岸田政権下で具体化への大きな一歩を踏み出したのです。

これに関して、日本の統合作戦司令部は平時は自衛隊の指揮下にありますが、有事には米軍との緊密な連携の下に置かれ、場合によっては日米共同の作戦統制が行われる、すなわち有事には米軍司令部の下に置かれる可能性も指摘されています。無論、安倍元首相はそのようなことは目指していませんでした。

実際韓国は、そのような状況になっています。韓国軍の最高指揮権は韓国大統領にあり、平時・有事を通じて大統領が韓国軍を指揮しています。韓国軍は独自の軍司令部を持ち、韓国大統領の指揮下にあります。

韓国軍

ただし、有事の際は、韓国軍の戦時作戦統制権が韓米連合司令部に移譲され、連合軍司令官(米軍4星将軍)が韓国軍を指揮することになります。

つまり、平時の韓国軍は大統領の指揮下にあるが、有事には作戦統制権が米軍に移る体制になっています。

バイデン政権は、岸田政権が発足して以来、統合作戦司令部の発足を支持しているのですが、その位置づけに関して、有事には米国の指揮下に入るように圧力をかけてくるかもしれません。その背景には、有事の際に日本の自衛隊と米軍との指揮命令系統を明確化し、より緊密な協力体制を構築したいという米国の意図があると考えられます。

具体的には、有事の際の統合作戦司令部の位置づけについて、次のような圧力をかける可能性が指摘されています。
  • 統合作戦司令部を米軍の指揮下に置くよう求めること
  • 少なくとも作戦統制権の一部を米軍に移管するよう要求すること
  • 日米の指揮系統の一元化を強く主張すること
これらは、有事における日米の迅速な軍事対応力を高める狙いがあると考えられます。

ただし、有事においては自衛隊の指揮権を日本政府が維持するというのは独立国家として、当然のことであり、有事の際の指揮権をめぐって日本政府と米国政府の間で調整が必要になると見られます。


今後の日米首脳会談などの場で、この点をめぐる激しい協議が行われる可能性が高いと考えられます。

岸田首相は、なし崩し的に、有事の指揮権を米国に譲るようなことがあれば、国民の反発を招くことになるでしょう。こうした圧力をはねのけて、独立国家としての意地をみせていただきたいものです。

一方、AUKUSに関しては、昨日このブログで指摘した通り、協力強化を見据えた上で、日本やその同盟国の安全保障に危険を及ぼす可能性のある人物や組織の排除は正当化されるべきであり、そのための法制度の整備が重要です。岸田首相はこの方向に舵をきるべきです。

さらに、ウクライナ情勢をめぐり、バイデン政権は日本に対して様々な要請を行う可能性があります。

まず、対ロシア制裁への更なる参加要請が考えられます。日本はすでにロシアに対する制裁措置を講じていますが、バイデン政権はさらなる制裁強化を求めてくる可能性があります。

日本はこれまでにウクライナに対する軍事支援は行っておらず、バイデン政権はより積極的な軍事支援を要請してくる可能性があります。

さらに、ウクライナの復興支援や人道支援などに対する日本の経済的な協力を求めてくる可能性もあります。

ウクライナ支援に関して、許容できる範囲なら良いですが、法外な要求に応じてしまえば、国民の反発は必至です。

バイデン大統領夫妻との夕食会に向かう車中での岸田・バイデンの様子

特に注目されるのは、日米統合作戦司令部の発足を支持する中で、ウクライナ情勢への対応で日本の協力を引き出したいというのがバイデン政権の意図と考えられることです。

日米同盟の強化とウクライナ情勢への対応は、バイデン政権にとって重要な政策課題であり、これらを関連づけて日本に要請してくる可能性が高いといえます。

岸田首相にとって、今回の国賓待遇での米国訪問がが総裁選に向けた重要なチャンスとなる可能性もありますが、政治的リスクも大きいといえます。上手く乗り越えられれば有利な展開につながる可能性もありますが、失敗すれば総裁選を待たず辞任にまで追い込まれかねないです。慎重な外交的立ち振る舞いと、国内世論への配慮が重要になってくるでしょう。

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2024年4月9日火曜日

米英豪「AUKUS」、日本との協力を検討 先端防衛技術で―【私の論評】日本の情報管理体制改革がAUKUS参加と安全保障の鍵となる

 米英豪「AUKUS」、日本との協力を検討 先端防衛技術で

まとめ

  • 米国、英国、オーストラリアの3か国がAUKUSの枠組みの下、日本との先端防衛技術分野での協力を検討している
  • 日本はサイバーセキュリティや秘密保持の課題を抱えており、協力を進める上で一定の障壁がある
  • AUKUS は原子力潜水艦の配備に加え、量子computing、AI、サイバー分野などでの協力を日本と検討しているが、具体的な内容は未定


 米国、英国、オーストラリアの3か国は、日本と先端防衛技術分野で協力することを検討している。これは、これら3か国が設立した「AUKUS(オーカス)」と呼ばれる安全保障の枠組みの一環である。

 岸田首相がワシントンでバイデン大統領と会談する際に、この件が取り上げられる見込みだ。3か国は、日本の強みと各国との緊密な2国間防衛パートナーシップを認識しており、先進技術の共有に向けて日本と協力したいと表明している。

 ただし、日本はサイバー防衛強化や秘密保持の必要性から、協力には課題が残されているという指摘もある。

 AUKUS は第1の柱として原子力潜水艦の配備を進めているが、日本はその参加は検討していない。代わりに、量子コンピューティング、AI、サイバー技術などの分野での協力を検討している。

 AUKUS はこの第2の柱に他国の参加を望んでいるが、情報保護などの課題もある。一方、日本政府は具体的な協力内容は今のところ決まっていないと述べている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本の情報管理体制改革がAUKUS参加と安全保障の鍵となる

まとめ
  • AUKUS との協力推進に向けた特定秘密保護法や セキュリティクリアランス制度の改善が喫緊の課題
  • 国家安全保障に危険を及ぼす可能性のある人物・ 組織の排除が可能となるよう、法的手続きを整備すべき
  • 政治的対立ではなく、国家の安全保障を最優先 する必要があり、これを正当化し裏付ける法律の制定強化が必要
  • 岸田首相はAUKUSとの協力強化に向け、 情報管理体制の抜本的な強化に着手する可能性
  • 日本や同盟国の安全保障に危険な親中派・ 媚中派の排除は正当化されなければならない
日本がAUKUSとの防衛技術協力を進める上での課題は、以下のようなものがあります。

まず、特定秘密保護法の整備について、2014年の法制定以降、一定の改善がなされてきました。秘密指定の基準明確化や罰則強化など、法的な基盤は整備されつつあります。ただし、AUKUS での協力では、より機密性の高い情報を共有する必要があり、現行法でも十分とは言えません。法制度のさらなる拡充が求められています。

次に、セキュリティクリアランス制度については、公務員や防衛産業関係者を対象とした制度が2016年に拡充されましたが、課題も残されています。まず、審査内容についてはハニートラップなどのスパイ工作への対応が十分ではありません。

また、対象者の範囲も公務員や防衛産業に限定されており、AUKUS での協力に必要な大学研究者やベンチャー企業関係者などまでは広がっていません。制度の拡充が求められています。

さらに、近年の政府の情報管理体制の脆弱性も大きな問題です。内閣府のタスクフォース報告書への中国企業ロゴ混入や、防衛省の調達情報流出など、機密情報の管理に深刻な課題があることが明らかになっています。法制度の形式的な整備だけでなく、実効性のある運用体制の構築が喫緊の課題です。

内閣府のタスクフォース報告書に入っていた中国企業ロゴの透かし

加えて、スパイ対策の法制度も整備されていません。機密情報の窃取やスパイ活動への加担に対する罰則規定の整備が求められています。

以上のように、特定秘密保護法の拡充、セキュリティクリアランス制度の強化、政府の情報管理体制の抜本的な改善、そしてスパイ防止法の整備など、日本にはAUKUSとの本格的な技術協力を進めるための総合的なセキュリティ体制の構築が喫緊の課題なのです。これらに取り組まなければ、信頼できる協力関係を築くことは難しいと指摘されています。

日本の情報管理体制が脆弱であれば、機密情報の流出リスクが高まります。そうなれば、AUKUS 参加国は日本との技術協力に慎重にならざるを得なくなります。

同様に、日本がファイブアイズ情報共有体制に参加できなくなる可能性もあります。ファイブアイズは極秘情報の共有が前提であり、日本の情報管理能力が信頼されなければ、参加国から排除される恐れがあります。

さらに広く見れば、日本の安全保障上の地位そのものが脅かされかねません。先進国の情報共有ネットワークから締め出されれば、戦略情報の収集や分析、さらには危機対応能力までが大幅に制約されることになります。その結果、日本の安全保障環境が大きく悪化し、地域における存在感も失われかねません。

つまり、日本が情報管理の抜本的な強化に取り組まなければ、AUKUS をはじめとする各国との協力関係が損なわれ、ファイブアイズからの排除も危惧されます。これは日本の安全保障と地位に深刻な打撃を与える可能性があるのです。

Five Eyes

岸田首相がワシントンでバイデン大統領と会談する際に、この問題が取り上げられることは、日本政府にとって重要な機会となります。AUKUS への参加や、より広範な安全保障協力を進めるためには、日本の情報管理体制の改善が必要不可欠であることを、両首脳が共有できるからです。

そのため、岸田首相は会談の場で、日本のセキュリティ強化に向けた具体的な取り組みを表明する可能性が高いと考えられます。特に、前述の課題に対する対応策を示し、早期の法制度整備や運用体制の構築に言及するなど、AUKUS との協力強化に向けた決意を示すことが期待されています。

日本政府にとって、AUKUS との連携は重要な安全保障上の課題です。岸田首相は、この首脳会談を、日本の情報管理体制を抜本的に強化する好機と捉え、積極的に行動すべきです。

まず、AUKUS との防衛技術協力の推進に向けて、特定秘密保護法やセキュリティクリアランス制度の改善が喫緊の課題です。これらの法制度を強化することで、機密情報の適切な管理体制を構築できるようになります。


その上で、これらの制度に基づいて、国家の安全保障に危険を及ぼす可能性のある人物やグループを排除することが可能になります。例えば、中国寄りの政治姿勢を示す議員や、中国企業との癒着が疑われる官僚などが、適切な審査によって排除の対象となり得るでしょう。危険な民間企業や、教育機関、その人物も対象となり得るでしょう。

法的な手続きと適正な理由に基づいて人事面での対応を行うことは、日本の国益を護る上で正当化されるべきだと考えます。単なる政治的対立ではなく、国家の安全保障を何よりも優先する必要があるのです。

岸田首相は人事を非常に重要視しています。特に、政府の政策課題や国民生活に関わる重要な判断を行う際に、即戦力となる人材を選ぶことを重視していると述べています。これは、国政推進において調整力、実行力、そして答弁力を備えた人材が必要だという考えに基づいています。

また、自由民主党の役員人事に関しても、国民の信頼回復に向けて努力する姿勢を示しており、特定の派閥や政策集団に属さず、中立的な立場で党改革を進める意向を表明しています。

AUKUS との協力強化を見据えた上で、日本やその同盟国の安全保障に危険を及ぼす可能性のある人物や組織の排除は正当化されるべきであり、そのための法制度の整備が重要です。岸田首相はこの方向に舵をきるべきです。

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2024年4月8日月曜日

【中国VSブラジルの貿易論争】経済悪化の中国が世界に及ぼす影響とは?―【私の論評】デフレ圧力と貯蓄率からみる中国の世界経済への影響、長期では吉、中短期で凶か

【中国VSブラジルの貿易論争】経済悪化の中国が世界に及ぼす影響とは?

岡崎研究所

まとめ
  • ブラジル政府は、国内産業界からの要請を受け、中国製品のダンピング疑惑について、鉄鋼、化学品、タイヤなど10件以上の調査を開始した。
  • 中国は不動産セクターの減速と内需低迷による生産過剰に悩み、安価な製品を大量に輸出しているため、各国が対抗措置を取り始めている。
  • ブラジルにとって中国は最大の貿易相手国であり、中国からの輸入増加は国内産業保護の観点から課題となっているが、中国は大量の原料を輸入しており、両国の経済関係は密接不可分である。
  • ブラジルはG20議長国であり、来年にはBRICS首脳会議とCOP30が開催される予定で、中国との関係強化を重視するルーラ政権にとって、この反ダンピング問題は大きな課題となっている。
  • 一方で、中国のブラジル向け直接投資は低下傾向にあり、外国投資家にとってブラジルが魅力的な選択肢になりつつある。日本からの首相訪問も検討されており、日本とブラジルの関係強化が期待されている。
ブラジル・ルーラ大統領

 ブラジルは、中国製品に対する反ダンピング調査を開始した。ブラジル産業省は、国内の産業界からの要請を受け、鉄鋼、化学品、タイヤなど10件以上の分野で、中国製品のダンピング疑惑について調査を開始した。この措置は、世界第2位の経済大国である中国が直面する経済的課題を背景としたものだと位置付けられている。

 具体的には、中国の不動産セクター減速と内需低迷により生産過剰に悩んでいる状況の中、中国企業が安価な製品を大量に輸出することで、各国の国内産業に悪影響を及ぼしていることが指摘されている。このため、ブラジルをはじめとする各国が対抗措置を取り始めているのが現状だ。

 ブラジルにとって中国は最大の貿易相手国となっており、中国からの輸入増加が国内産業の保護という観点から大きな課題となっている。一方で、中国は大豆や鉄鉱石など、ブラジルからの原料輸入を大量に行っており、両国の経済関係は密接不可分である。そのため、ブラジル政府は、中国との良好な関係を維持しつつ、国内産業の保護を図るジレンマに直面している。

 特に、今年G20議長国を務めるブラジルでは、来年にBRICS首脳会議とCOP30の開催が予定されており、中国との関係強化を重視するルーラ政権にとって、この反ダンピング問題は大きな懸案事項となっている。一方で、中国のブラジル向け直接投資は低下傾向にあり、ブラジルが外国投資家にとって魅力的な選択肢になりつつあるとの指摘もある。

 こうした中、安倍首相以来10年ぶりの現役総理のブラジル訪問が検討されている。中国に対抗する経済的絆の強化や、安全保障分野での協力強化など、日本とブラジルの関係強化が期待されている。ブラジルは中国との関係と国内産業保護の狭間で、難しい舵取りを迫られている状況にある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】デフレ圧力と貯蓄率からみる中国の世界経済への影響、長期では吉、中短期で凶か

まとめ
  • コロナ禍以降、世界的な高インフレに苦しんでいた先進国経済にとって、中国からの低価格の輸入品増加は一時的にはデフレ圧力によるインフレの緩和として歓迎された
  • 特に、米国では40年ぶりの高インフレに見舞われ、中国からの安価な輸入品流入は米国消費者物価の上昇を抑制し、一定の歓迎ムードがあった
  • 中国の景気減速が先進国のインフレ対策に追い風を与え、世界のマクロ経済の状況を変える可能性がある
  • 中国の貯蓄率低下の傾向が続くと見られ、長期需要不足の状況が解消される可能性がある一方、短期・中期においては自国産業の空洞化や競争力低下の懸念がある
  • 中国の経済運営と各国の政策対応が世界経済の調和的な成長に重要であり、中国のダンピング等に対する適切な対応が必要である。
コロナ禍以降、世界的な高インフレに苦しんでいた先進国経済にとって、中国からの低価格の輸入品増加は一時的にはデフレ圧力によるインフレの緩和として歓迎される側面がありました。

特に、米国では40年ぶりの高インフレに見舞われ、連邦準備制度(FRB)が金利引き上げに踏み切るなど、物価高抑制に苦慮していました。そうした中で、中国からの安価な輸入品流入は、米国消費者物価の上昇を抑制する効果があり、一定の歓迎ムードがあったと指摘できます。これについては、このブログでも解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風に―【私の論評】中国長期経済停滞で、世界の「長期需要不足」は終焉?米FRBのインフレ対策の追い風はその前兆か(゚д゚)!
FRBジェローム・パウエル議長

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。
1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきました。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しません。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

 一部省略

中国の経済の停滞が続けば、「長期需要不足」の時代は終わるのではないでしょうか。そうなれば、今後は、財政拡張や金融緩和を相当大胆に行えば、従来のように、景気加熱やインフレが起きやすくなることを意味します。 
中国経済の減速は、世界の各国のマクロ経済の状況が一昔前に戻ることを意味するかもしれません。そうなれば、「長期需要不足」、「長期停滞」は過去のものとなり、多くの国々で、経済政策が実施しやすくなるかもしれません。米国での中国の景気減速が米FRBのインフレ対策の追い風となっている事実は、その魁なのかもしれません。 
現在まで、世界の各国のマクロ経済状況は、緊縮財政を行えば、経済が後退する一方で、金融緩和や積極財政をするかしないかというのが常道となりつつあったのが(これを全く認識していないのが財務省と旧タイプの日銀官僚)、一昔前のように、経済が落ち込めば、金融緩和をし、積極財政を行い、景気が加熱すれば、金融引締をし、緊縮財政をするというように、比較的簡単にコントロールできるようになるのではないでしょうか。
長期的にはこのようなことがいえるかもしれません。中国の経済低迷が続けば、過剰貯蓄もなくなる可能性が高いからです。以下に、日本、米国、EU、中国の貯蓄率推移の一覧表を掲載します。

IMF資料に基づく 主要国・地域 貯蓄率推移比較表 2015年~2022年

 日本米国EU中国
貯蓄率前年比貯蓄率前年比貯蓄率前年比貯蓄率前年比
201517.8-7.8-12.9-43.8-
201618.1+0.37.2-0.613.1+0.242.2-1.6
201718.5+0.46.8-0.413.3+0.241.7-0.5
201818.2-0.36.1-0.713.1-0.243.8+2.1
201917.9-0.36-0.112.9-0.242.2-1.6
202020.6+2.713.6+7.617.1+4.250.2+7.9
202120.1-0.510.3-3.315.4-1.746.4-3.8
202219.8-0.39.4-0.914.9-0.544.3-2.1
2015-202218.5+2.08.6+1.613.5+2.043.5+0.5

中国の貯蓄率はもともとかなり高いことがわかります。ただ、最近の経済の低迷で貯蓄の取り崩しが始まっているものとみられ、その傾向は2016年あたりから続いていますが、2020年はコロナ禍の影響で、貯蓄率が高まったものとみられます。

中国の貯蓄率低下の傾向はさらに続くと見られますので、 世界の「長期需要不足」「長期停滞」の状況はいずれ解消される可能性があります。

しかし、ブラジルの事例が示すように、中国からの低価格輸出が継続すると、ブラジルの産業保護の観点から問題が生じてきます。つまり、一時的な物価抑制効果はあるものの、中期的には自国産業の空洞化や競争力低下を招く恐れがあるのです。

ブラジルは、鉄鋼や化学品、タイヤなどの分野で中国製品のダンピングが懸念されており、国内産業保護の観点から反ダンピング調査に乗り出しました。これは、安価な中国製品の輸入増加が、ブラジル経済に悪影響を及ぼし始めているという前兆だと捉えることができます。

先進国各国も、同様の事態に直面する可能性があります。一時的な物価抑制効果はあるものの、中期的には、中国の生産過剰と低価格輸出が、自国経済の健全な発展を阻害する要因になりかねないのです。

中国が、自国の経済の低迷を回復するため、過去もそうであったように、さらに大量の在庫をかかえている製品を低価格で輸出したり、それだけにとどまらずさらに低価格の製品を大量に製造して世界中に低価格で売るようになった場合世界はどうなるでしょう。

その場合、世界経済全体の健全な成長を阻害し、様々な問題を引き起こすことが危惧されます。各国が適切な政策対応を取らない限り、大きな混乱を招く可能性が高いと言えるでしょう。

結局のところ、世界経済の調和的な成長のためには、中国経済の適切な運営と、各国の適切な政策対応が重要となってくると考えられます。中国の生産能力管理と、各国の産業保護と自由貿易のバランスを取ることが課題になると言えるでしょう。

経済運営には疎いと言われる習近平

中国共産党政府が、ダンピング等をやめない場合は、関税引き上げ措置にとどまらず、一時的にデカップリングやデリスキリングなどの措置も、やむを得ない場合も生じてくるかもしれません。日本としても、中国の動向をみつつ、対中政策を考えていく必要があります。

特に、安易な金融引締や、緊縮財政などは中国や韓国等を利するだけになります。過去の日本は、過度の金融引締、緊縮で極度のデフレに陥り、超円高となり、たとえば日本で部品を組み立て製品に輸出するよりも、中国・韓国等で組み立てたほうが低価格という異常な状況を生み出しました。

その結果おおいに中国や韓国を助け、日本の国際競争力は低下し、国内では産業の空洞化をもたらし、中韓にぬるま湯に浸かったかのような経済状況をもたらしたことを忘れるべきではありません。

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