2025年6月19日木曜日

日本経済を救う鍵は消費税減税! 石破首相の給付金政策を徹底検証

まとめ
  • 石破茂首相は2025年6月、物価高対策として給付金(1人2万円、非課税世帯や子どもは4万円)を給付金は「消費減税よりはるかに効果的だ」「決して少なくない」と推すが、消費税減税には慎重。給付金は迅速だが持続性に欠ける。
  • 日本の経済は低成長(GDP成長率1.2%)、物価上昇(CPI 2.5%)、格差拡大(非正規雇用37%)に苦しむ。国の借金は経済規模の2.5倍、毎年の赤字は経済の6%。
  • ただし統合政府(政府+日銀)の視点では、資産600兆円が総債務1250兆円を相殺し、ネット債務はGDP比100%。日銀の国債保有(50%)で実質黒字。EUでは統合政府統計が標準。
  • 消費税減税(10%→5%)は低所得層の消費を刺激し、GDPを0.5~1.0%押し上げる。逆進性を和らぎ、格差縮小に効果的。給付金の乗数効果(0.3~0.6)は小さい。
  • ガソリン暫定税率廃止は物価を0.2~0.3%抑制、地方経済を支える。消費税減税を優先し、ガソリン税廃止を次に、給付金は補助的役割にすべき。
石破首相の給付金政策と日本の経済危機


石破茂首相は2025年6月18日、カナダでのG7首脳会議後に記者会見を開き、物価高対策として給付金政策を説明した。給付金は1人2万円、子どもと住民税非課税世帯の大人には4万円を支給し、2024年度補正予算の低所得世帯向け給付(1世帯3万円+子ども1人2万円)より手厚いと強調。「決して少なくない額」と述べ、総合的な支援を訴えた。物価高対策の基本は賃上げとし、給付金を参院選公約に検討。消費税減税より給付金は困窮層に重点を置き、迅速だと主張。消費税は社会保障の財源で、減税には「慎重な上にも慎重」とし、給付金の正当性を訴えた。

日本の経済は停滞している。2025年6月、推定実質GDP成長率は1.2%(IMF予測)、消費者物価指数は2.5%上昇、実質賃金は横ばい(総務省)。家計消費は2024年も低迷(内閣府)、エネルギーや食料品の値上がりで低所得層は苦しむ。非正規雇用は37%(総務省)、格差は拡大(ジニ係数0.33、OECD 2023)。国の借金は経済規模の2.5倍に膨らみ、毎年の赤字は経済の6%に相当する(IMF、2024年)。しかし、統合政府(政府+日銀)の視点では、政府の資産約600兆円(金融資産、国有資産、日銀保有国債等)が総債務約1250兆円を相殺し、ネット債務はGDP比約100%に縮小する(財務省、2023年)。


日銀が国債の約50%(約600兆円)を保有し、利払い負担が政府に戻るため、実質的な財政赤字は黒字となる。EUでは統合政府ベースの統計が標準的で、資産と負債の差を重視する(Eurostat、2024年)。日銀はゼロ金利を緩め、短期金利は0.1~0.25%。この状況で、恒久的減税、給付金、消費税の逆進性、ガソリン暫定税率廃止を、標準的なマクロ経済学で検証する。日本の主流経済談義、財務省、マスコミの声、現代貨幣理論(MMT)は無視し、データと理論で迫る。

恒久的減税と給付金の経済効果

標準的なマクロ経済学では、財政政策の効果は乗数効果で評価される。恒久的減税は家計の可処分所得を増やし、消費と投資を押し上げる。消費税を10%から5%に下げれば、年間10兆円の減税(財務省試算)。低所得層の消費を刺激し、OECD(2018)は乗数効果を0.5~1.0と推定。日本の需要不足はGDPギャップ5~10兆円(内閣府)。減税ならGDPを0.5~1.0%押し上げ、企業や雇用に波及する。給付金(1人2万円、総額2.5兆円)は貯蓄に回る。2009年の定額給付金の消費性向は20~30%(内閣府)。乗数効果は0.3~0.6(IMF、2010)、GDP押し上げは0.1~0.2%。給付金は即効性があるが、持続性がない。減税が優れる。


消費税の逆進性は深刻だ。10%の消費税は低所得層(年収300万円で負担率7~8%)を直撃、高所得層(年収1000万円で3~4%)は軽い(総務省家計調査)。2024年の物価上昇が実質所得を削り、格差は悪化。消費税を5%に下げれば、低所得層の消費が跳ね、GDPは0.5~1.0%増(Poterba、1996)。食料品を0%の軽減税率にすれば逆進性は和らぐ。食料品は低所得層の家計の30%(総務省)。非正規雇用者(37%)の生活を支え、格差を縮める。

消費税の財源問題とガソリン税廃止

消費税は社会保障の専用財源ではない。2024年度の消費税収22兆円は一般会計(114兆円)の一部。社会保障費(36兆円)の60%を賄うが、公共事業や債務返済にも流れる(2024年度予算)。5%減税で10兆円減収でも、経済成長で所得税や法人税が増え、赤字を補う(成長率1%増で2兆円増、財務省)。国債は国内保有率90%、金利は低い(10年物0.8~1.0%、日銀)。財政赤字(経済の6%)は管理可能(S&P格付けA+)。減税は経済活性化を優先すべきだ。


ガソリン暫定税率(1リットル25.1円)の廃止は、2024年の原油高(WTI80ドル/バレル)と円安(1ドル150円)で効果を発揮。2.5兆円の減収でガソリン価格が25円下がり、物価は0.2~0.3%抑制(日銀)。地方や低所得層(燃料費は支出の5~10%)の負担が減る。乗数効果は0.4~0.7、GDPは0.1~0.2%増(OECD)。消費税減税ほどではないが、地方経済を支える。

日本の経済は需要不足、格差、物価圧力に苦しむ。石破首相は給付金を推すが、消費税減税は逆進性を和らげ、消費を刺激し、格差を縮める最優先策だ。ガソリン暫定税率廃止は物価抑制に役立つ。給付金は持続性がない。減税と税率廃止で税収は12.5兆円減るが、低金利と国債の国内保有率で財政は耐える。消費税減税をまず実行し、ガソリン税率廃止を進め、給付金は補助に留める。経済を動かし、国民を救う道はここにある。

引用文献

OECD Economic Outlook Volume 2024 Issue 2, 2024年12月4日
IMF Japan 2025 Article IV Mission Statement, 2025年2月7日
総務省家計調査, 2024年
内閣府令和6年度経済財政報告, 2024年
日本銀行統計, 2024年
財務省国際収支状況, 2023年
Eurostat Government Finance Statistics, 2024年
Blanchard, O. (1985), “Debt, Deficits, and Finite Horizons,” Journal of Political Economy, 93(2), 223-247, https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/261297
Poterba, J. (1996), “Retail Price Reactions to Changes in State and Local Sales Taxes,” National Tax Journal, 49(2), 165-176, https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/NTJ41789195

【関連記事】

年金引き金「大連立」臆測 自民一部に期待、立民火消—【私の論評】自民・立憲大連立:日本を破滅に導く亡魂 2025年5月27日

江藤農相が辞任、「コメを買ったことがない」発言で引責-政権に打撃—【私の論評】石破発言の暴論が暴く日本の危機:失言より政策の失敗が国を滅ぼす 
2025年5月21日

食料品の消費税減税に慎重姿勢「高所得者や高額消費も負担軽減」石破首相 1年限定も「事務負担どうかの問題」—【私の論評】石破首相の経済政策を斬る!消費税減税と物価高対策の真実 2025年5月1日

商品価格、26年にコロナ禍前水準に下落 経済成長鈍化で=世銀—【私の論評】日本経済の試練と未来:2025年、内需拡大で危機を乗り越えろ! 2025年4月30日

高橋洋一・政治経済ホントのところ【異例ずくめの予算成立】場当たり対応 首相失格―【私の論評】2025年度予算のドタバタ劇:石破政権の失態と自民党が今すぐ動くべき理由 2025年4月3日

2025年6月18日水曜日

トランプのイラン強硬策:核危機と中東の命運を賭けた対決

まとめ

  • トランプの強硬策と攻撃検討:トランプはイランの核施設への攻撃を検討。米軍はイスラエル支援に徹するが、攻撃は方針転換となり、紛争激化のリスクを伴う。
  • イランの核と中東和平:イランの核保有は中東を不安定化。核開発阻止で和平の道が開くが、アブラハム合意の進展は遅い。
  • イラン国内の危機:イスラム原理主義と経済制裁で国民生活が悪化。2022年のマフサ・アミニさんの死で不満が高まる。
  • 米軍の攻撃可能性と中国との対峙:イランへの圧力は中国牽制の一環。中国の軍事支援を削ぐ狙いがあるが、国際経済への影響が課題。
  • 抵抗の枢軸の弱体化:2024年12月のアサド政権崩壊とイスラエルの攻撃で、イランの「抵抗の枢軸」が壊滅的打撃を受け、地域支配力と国内安定が揺らぐ。
トランプ大統領は、中東対処のためG7を中途退席

トランプ米大統領は2025年6月17日、イランの核問題とイスラエルとの交戦を巡り、国家安全保障会議をホワイトハウスのシチュエーション・ルームで1時間20分にわたり開催した。協議内容は明かされていないが、米ニュースサイト「アクシオス」は、トランプ氏がイランの核施設、特に中部フォルドゥのウラン濃縮施設への軍事攻撃を真剣に検討していると報じた。この施設を破壊するには地中貫通弾やB-2爆撃機が必要で、米軍の直接参戦を意味する。

現状、トランプ政権はイスラエルの防衛支援に徹し、紛争への関与を避けているが、攻撃に踏み切れば方針転換となる。ロイター通信によると、米軍は中東に戦闘機を追加配備し、備えを固めている。トランプ氏は同日、SNSでイランに「無条件の降伏」を突きつけ、最高指導者ハメネイ師を「容易な標的」と脅しつつ、殺害の意図はないと述べ、「我慢は限界に近い」と警告した。バンス副大統領もSNSで、イランの核兵器保有を許さないと強調し、さらなる措置の可能性を示唆した。

イランの核問題と中東和平の行方


イランが核保有国になれば、イスラエルやサウジアラビアへの影響力が増し、ホルムズ海峡での挑発やテロ支援を通じて中東は混迷を深める。核拡散が他国を刺激し、核軍拡競争が起きかねない。だが、イランの核開発が阻止され、外交で核計画が制限されれば、中東和平への道が開ける。イランとイスラエルやアラブ諸国の緊張が和らぎ、経済制裁の緩和でイラン国内の安定も期待できる。ただし、歴史的・宗派的な対立の解消には長い時間がかかる。

イラン国内は、イスラム原理主義の厳格な統治で悲惨な状況にある。1979年のイスラム革命以来、女性や少数派への抑圧が続き、2022年のマフサ・アミニさんの死は国民の怒りを引き起こした。言論の自由は奪われ、インターネット検閲や監視が日常だ。経済制裁でインフレと失業が国民を苦しめ、貧困層が拡大、医療や教育へのアクセスも悪化している。政権は核開発に固執し、国民の不満を抑えるためさらなる抑圧を重ねる。

2020年のアブラハム合意は、イスラエルとUAE、バーレーン、スーダン、モロッコの国交正常化を実現し、中東和平の大きな一歩となった。イランへの対抗を背景に、経済や安全保障の連携を深めた。2025年、トランプ政権はサウジアラビアなどとの正常化交渉を進めるが、イスラエル・パレスチナ問題が壁となり、進展は遅い。イランを孤立させる戦略の一環だが、イランの核開発や代理勢力の動きが和平を阻む。

米軍の攻撃可能性と中国との対峙

米軍のイラン攻撃の可能性は、複数の事実が示す。「アクシオス」は、トランプ氏がフォルドゥ施設への攻撃を検討中だと報じた。これは、IAEAが2023年以降、イランの高濃縮ウラン蓄積を確認しているためである。攻撃には高度な兵器が必要で、米軍の戦闘機追加配備は準備の兆候とも取れる。トランプ氏やバンス氏の発言は、軍事オプションを交渉の切り札とする意図をうかがわせる。

ソレイマ二氏

だが、2020年のイラン革命防衛隊司令官ソレイマ二氏暗殺後の報復合戦や、過去のトランプ政権が大規模衝突を避けた経緯から、攻撃は抑止力強化の「脅し」に留まる可能性もある。攻撃すれば、放射能汚染やイランの報復で地域紛争が激化し、欧州や中国からの批判は必至だ。国内の支持基盤へのアピールも背景にある。

トランプ氏のイランへの強硬姿勢は、中国との対峙の布石でもある。米国防総省の報告書は、中国がイランにドローンやミサイル技術を提供していると指摘。トランプ政権は、インド太平洋での軍事プレゼンス強化や対中関税継続で中国を牽制している。イランへの圧力は、中国の影響力を中東で抑え、エネルギーや地域覇権の競争で優位を保つ戦略だ。攻撃は中国の支援を受けたイランの軍事力を削ぐ狙いがあるが、国際経済への影響や中国の反応を慎重に計算する必要がある。

イランの弱体化と抵抗の枢軸の崩壊

イランの「抵抗の枢軸」は、2024年12月のシリアのアサド政権崩壊とイスラエルによる攻撃でかつてないほど弱体化した。シリアはイランの最重要同盟国で、ヒズボラへの武器供給の陸上ルートだったが、反体制派のハヤト・タハリール・シャームがダマスカスを制圧し、アサドがロシアに亡命した。イランはシリアに多額の資金を投じ、革命防衛隊やヒズボラが支えたが、イスラエルの空爆で司令官らが殺害され、ヒズボラ指導者ナスララも2024年9月に暗殺された。


ガザのハマスもイスラエルとの戦争で弱体化し、抵抗の枢軸は壊滅的な打撃を受けた。イランはシリアから撤退を余儀なくされ、核開発への投資を強める可能性が指摘されている。この弱体化は、イランの地域支配力と抑止力を大きく損ない、国内の不満を高める要因だ。

イランの反応は不明だが、過去の強硬姿勢から軍事・外交的対抗が予想される。米国の攻撃は中東の混乱を招き、国際社会の批判を浴びる。トランプ氏の強硬発言は国内や中国へのメッセージかもしれないが、軍事行動の可能性は不透明だ。イラン、国際社会、アブラハム合意の行方が中東の未来を左右する。

【関連記事】

イスラエルのイラン攻撃:核開発阻止と中東の危機を読み解く 2025年6月15日

イスラエル空爆の衝撃!イラン核施設壊滅と中東緊迫の行方:日本への警鐘 2025年6月14日

ガザ再建計画の最大の障害はイラン、第1期トランプ政権が残した遺恨は原油相場を刺激―【私の論評】トランプのイラン強硬策とイスラエルの攻撃計画:中東危機と中国対決の行方  2025年3月27日

アサド氏失脚、イランに「歴史的規模」の打撃―【私の論評】イランの影響力低下とトルコの台頭:シリアの復興とトルコのエネルギー戦略 2024年12月12日

<イスラエルによるイラン核施設攻撃の可能性>報復攻撃が見せた重大なインパクト―【私の論評】トランプ政権の影響とハマスの行動がイラン戦略に与える影響、そして中東和平の可能性 2024年11月20日

2025年6月17日火曜日

羊蹄山の危機:倶知安町違法開発が暴く環境破壊と行政の怠慢

 まとめ

  • 倶知安町巽地区の違法開発は、デタッチドハウス(住宅の様式)の建設を目的に、森林法や水資源保全条例を無視し、3.9ヘクタールの森林を伐採した。
  • 鈴木直道知事の中国への友好的姿勢や夕張での疑惑が、投資家に規制の緩さを印象づけ、違法開発を間接的に助長した可能性がある。
  • 北海道と倶知安町の事前監視不足が、開発の進行を許し、2025年6月になってようやく工事停止命令が出された。
  • 中国系とみられる「L.I.」が建築主として関与し、中国資本の投機的動機が環境破壊を加速させた疑いがある。
  • この開発は中国の「鬼城」造成に似ており、水源汚染や生態系破壊の危機を招き、厳格な規制と透明性が求められる。

羊蹄山のふもと、倶知安町巽地区で発覚した違法開発は、北海道の自然と地域社会を脅かす重大な問題だ。約3.9ヘクタールの森林が許可なく伐採され、水源地が汚染の危機に瀕している。この事件は、中国の「鬼城」造成のような無責任な開発の危険性を示す。鈴木直道知事の中国への友好的姿勢や自治体の監視不足が、事態を悪化させた可能性がある。以下、事件の全貌を明らかにし、その危機を訴える。

違法開発の全貌と環境への脅威

倶知安町巽地区で進められた違法開発は、観光客向けの別荘として人気の高い独立型住宅、いわゆるデタッチドハウスの建設を目的としたものだった。デタッチドハウスは、隣接する建物と完全に分離された一戸建てで、ニセコのような観光地では、プライバシーを重視する富裕層や外国人向けに短期賃貸や別荘として近年注目されている。札幌の企業が主導したが、森林法、建築基準法、景観計画条例、都市計画法、北海道の水資源保全条例をことごとく無視した。

法令
違反内容
森林法
約3.9ヘクタールの森林を許可なく伐採、1ヘクタールを超える開発に許可を取得せず([Kutchan Development Illegally Cleared 3.9 Hectares Of Trees)
建築基準法
建物を建てる際の必要な申請を提出せず
景観計画条例
景観計画に違反する開発が行われた
都市計画法
開発規模が規定を超える可能性があり、調査中
水資源の保全に関する条例
土地取引時の届け出を提出せず

約3.9ヘクタールの森林を許可なく伐採し、建築申請も提出せず、水源保護区域での土地取引の届け出も怠った。地元住民は「水が汚れたら困る」と訴える。羊蹄山周辺は、1日8万トンの湧水で知られる福出公園など、地域の生活と観光を支える水源地である。開発はかなり進行した後、2025年6月4日に北海道が現場を検査し、6月6日に工事停止命令を発令した。6月9日に事業者から森林復旧計画が提出されたが、環境へのダメージは深刻だ。この違法行為は、生態系を脅かし、水源汚染のリスクを高める。福出公園の湧水が汚染されれば、地域経済は壊滅する。

親中派鈴木知事と自治体の怠慢
鈴木直道知事は、中国との友好関係を重視する姿勢で知られる。2020年、新型コロナ対策で「結果責任は私が負う」と発言し、中国古典「史記」の「隗より始めよ」を引用。中国のネットで「日本の若きリーダー」と称賛され、アクセスランキング1位を記録した。2019年には中国の王岐山副主席と会食し、交流強化を議論した。一方、2023年には中国の日本産水産物輸入禁止を「科学的根拠がない」と批判し、バランスを取る姿勢も見せた。


しかし問題は、鈴木知事の夕張市長時代だ。中国系企業「元大グループ」に観光施設を売却し、後に香港系ファンドに高値で転売されたことで、利益供与の疑惑が浮上。夕張市は損失を被り、破産に至った。この過去が、倶知安町の違法開発に間接的に影響した可能性は否定できない。建築主として中国系とみられる「L.I.」が関与し、中国系の投資会社がSNSで「販売価格5200万円、賃貸利回り7%」と投資を呼びかけていた事実も、それを裏付ける。

北海道と倶知安町は、違法開発がかなり進行した後で対応した。2025年6月4日の検査で違法性を確認し、6月6日に工事停止命令を発令。6月9日に復旧計画を受理したが、事前の監視体制は不十分だった。事業者は伐採面積を0.99ヘクタールと偽り、実際は3.9ヘクタール。行政が事前に気づいていれば、防げたはずだ。倶知安町議会では、波方真如町議が「なぜ事前に防げなかったのか」と追及。文字一志町長は「法令無視は遺憾」と述べ、指導強化を約束したが、遅すぎる対応だ。倶知安町は、高級コンドミニアムやホテルの開発を推進する姿勢を明確にしている。ニセコの建設ブーム再開も、経済成長優先の姿勢を反映する。この姿勢が、監視の甘さを生み、違法開発を許した可能性は高い。

結論:北海道の自然と未来を救うための緊急対策
この違法開発は、北海道の自然と地域社会を破壊する危機だ。約3.9ヘクタールの森林破壊は生態系を脅かし、水源汚染は観光と生活を直撃する。鈴木知事の中国への友好的姿勢や夕張での疑惑が、投資家に誤った安心感を与えた可能性は否めない。自治体の監視不足も、違法行為を許した大きな要因だ。

この開発は、中国の「鬼城」造成に酷似する。中国では、投機的な不動産投資が未入居の住宅地を生み、環境破壊と経済的損失を引き起こした。内モンゴル自治区オルドス市の康巴什新区は、100万人都市を目指したが、居住者は3万人にとどまる。倶知安町の事例は規模こそ小さいが、法規制無視と水源地への影響は同じ道を辿る危険性を示す。

「ふきだし公園」北海道虻田郡京極町字川西(羊蹄山の麓)にある公園

ふきだし公園の湧水が汚染されれば、地域経済は壊滅する。今後、北海道は直ちに以下の対策を実行すべきだ。森林法や水資源保全条例を厳格に運用し、違法行為を未然に防ぐ。水源地での開発には、厳格な環境影響評価を義務づける。行政と事業者の関係を透明化し、外国資本の投機的投資を管理する。住民の声を反映した開発計画を策定し、信頼を回復する。これを怠れば、北海道は中国の「鬼城」のような荒廃を迎えることになりかねない。自然と経済を守るため、道民そうして行政は目を覚まさなければならない。

【関連記事】

大阪の中国人移民が急増している理由—【私の論評】大阪を揺らす中国人移民急増の危機:民泊、不法滞在、中国の動員法がもたらす社会崩壊の予兆 2025年5月9日

ラピダスに5900億円 半導体で追加支援―経産省―【私の論評】日本の半導体産業と経済安全保障:ラピダス社と情報管理の危機 2024年4月2日

【日本復喝】中国が狙う地方の廃校 「心温まる交流」かと思いきや…日本での“進出基地”に すでに転居した周辺住民も―【私の論評】想定される危機に関しては、あらかじめ対応しておくのが、安全保障の基本 2021年9月2日

「低所得国」へ転落する日本…元凶は“平成のマネー不足”だ 2度の消費増税も足引っ張る―【私の論評】日銀の金融政策の間違いを正すことなく、インバウンド消費に期待しても、日本がニセコ化するだけ 2019年12月24日

北海道が「中国の省の1つに?」 中国資本が北海道を狙う理由=中国報道―【私の論評】父祖が開拓した国土を徒や疎かに扱うべきではない
 2017年8月25日

2025年6月16日月曜日

衝撃!ミネソタ州議員暗殺の裏に隠された政治テロと日本メディアの隠蔽の闇

まとめ

  • 2025年6月14日、米ミネソタ州でホートマン下院議員と夫が殺害され、ホフマン上院議員と妻が重傷を負った政治的動機の暗殺事件が発生。
  • 容疑者ボールターは逃亡中であり、車から70人以上を名指しした殺害リストが見つかり、事件が政治的テロである可能性が浮上。
  • ホートマンは不法滞在者健康保険廃止に賛成するなど信念を貫いた議員で、ホフマンは教育と福祉に尽力した重鎮だった。
  • 日本メディアは事件の背景報じず、報道の偏りや政治的配慮が懸念され、国民の知る権利が脅かされている。
  • 過去の安倍元首相暗殺と公判遅延が示すように、日本でも政治的暴力のリスクが高まりつつあり真実追求の必要性は、ますます高まりつつある。
衝撃の事件が米国を揺るがす
暗殺されたメリッサ・ホートマン下院議員と夫マーク氏

2025年6月14日、米ミネソタ州で異様な銃撃事件が起きた。州議会議員2人が襲われ、メリッサ・ホートマン下院議員と夫マーク氏が未明に自宅で暗殺された。同じく狙われたジョン・ホフマン上院議員と妻は重傷を負ったが、手術で命をつないだ。ウォルズ知事は記者会見で「政治的動機による暗殺だ」と断言し、州民を震撼させた。容疑者はバンス・ボールター、57歳。警備会社プレトリアン・ガード・セキュリティーでパトロール部門の責任者を務め、軍の訓練を受けた男だ。今、彼は逃亡中だ。州を挙げての大捜索が始まり、地元警察トップのマーク・ブルーリー氏は「尋常じゃない規模の捜査だ」と息巻く。ボールターの車からは、70人以上を名指しした殺害リストが発見された。議員や中絶支持者らの名が並び、事件が単なる犯罪を超えた政治的テロである証拠が浮上した。警察は複数の容疑者を拘束し事情を聴いたが、勾留者はおらず、捜査は混迷を深めている。

ホートマンとホフマンの信念と背景
防犯カメラの映像に、暗殺犯バンス・ボールターが警察官のように見せかけたラテックス製マスクと警備員の制服を着てミネソタ州議員の自宅のドアをノックする様子が映っていた。



メリッサ・ホートマンは1970年5月27日、ミネソタ州ヘネピン郡で生まれた。弁護士として出発し、2005年から州下院議員としてツインシティーズ北部を支えた。ボストン大学で政治学と哲学を学び、ミネソタ大学法学部で法務博士号を取得後、ハーバード・ケネディスクールで公共行政学修士号を手に入れた。アル・ゴアやジョン・ケリーのインターン、ジョン・サマービル判事の事務員を経験し、抜群の経歴を積んだ。2023年の立法会期では、民主党が僅差で多数を握る中、中絶権の拡大、娯楽用マリファナの合法化、有給家族医療休暇の義務化を推し進め、ミネソタを変えた。しかし、2025年、彼女は不法滞在者の健康保険廃止に賛成し、党内の反対を押し切って共和党と手を組んだ。この決断が命を奪う引き金となったと見られる。彼女の勇気は、党の枠を超えた信念の証明だった。

ジョン・ホフマン上院議員は1965年1月17日生まれで、ミネソタ州アノカ・ヘネピン郡を代表する民主農民労働党(DFL)の重鎮だ。2005年からアノカ・ヘネピン学区教育委員会で活躍し、連邦機関の調整理事会で幼児教育や特別ニーズ児童の支援に尽力した。2012年に初当選し、以来2016年、2020年、2022年と再選を重ね、2017年から2020年まで少数党幹事長を務めた。彼は教育と家族支援を重視し、予算配分や社会福祉政策で実績を残してきた。今回の事件で標的にされたのは、彼のこうした立場が政治的対立を招いた可能性を示唆している。

ミネソタ州議会

この事件の根底には、ホートマンが支持した法案がある。不法滞在者に無料健康保険を提供する政策を廃止するものだ。コスト増と予算赤字を憂う共和党の声に応えた選択だったが、民主党内では異端とされた。だが、その勇気が彼女を標的に変えた。捜査当局は、ボールターが警察官を装い複数の政治家を狙ったと明かす。政治的意見の違いが暴力に結びつく危険性が、痛ましい形で露呈した。

日本メディアの沈黙と日本の危機

米国のこの恐ろしい現実を示すこの事件の背景を、日本メディアはスルーしている。なぜか。国際ニュースでは反トランプデモや中東情勢が優先され、他の事件に埋もれる。不法移民や政治的暴力はデリケートで、国内の政治バランスを崩す恐れがあるから報じない可能性もある。さらには「報道しない自由」で国民の知る権利を奪っているとの批判さえある。この沈黙は、反トランプデモの本質や政治的暴力の脅威を隠してしまう。

日本では新聞紙の暗殺報道の見出しが全て「安倍元首相撃たれ死亡」という不気味な一致を見せた

過去の日本にも政治的暴力の暗い影が残る。2022年7月8日、奈良市で起きた安倍晋三元首相の暗殺だ。演説中、41歳の男が手製の銃で撃ち殺した。動機は統一教会への恨みとされるが、事件後、メディアは関係者の名前を隠し、国民に真実を伝えなかった。さらに異常なのは、2025年6月16日現在、暗殺から3年近く経つのに公判がまだ開かれていないことだ。この異常事態は、政治的圧力や情報隠しの可能性を示し、ミネソタの事件報道と重なる。

ミネソタのテロは、米国の政治的分断が暴力を生む現実を突きつける。ホートマンとホフマンの信念が命を奪われ、または脅かされた悲劇だ。日本メディアの沈黙は、報道の偏りや政治的配慮、情報隠しの兆しを示し、この闇はますます深まりつつある。安倍元首相の事件と公判遅延が示すように、政治的暴力は対岸の火事ではない。今、目を覚ませ。真実を求める闘いはここから始まる。

【関連記事】

トランプ前米大統領の暗殺未遂、警備はなぜ防げなかったのか―【私の論評】トランプ暗殺未遂と安倍元首相暗殺:民主主義を揺るがす警備の失態と外国勢力関与の疑惑  2024年7月17日

トランプ氏集会近くで男を逮捕 車内に散弾銃所持か―【私の論評】日本では安倍元総理暗殺事件の解明こそが政治的暴力を防ぐ鍵 2024年10月14日

首相、安倍氏死去1年「遺志に報いる」―【私の論評】日本はこの悲劇から立ち直り、世界の平和と民主主義の光であり続けるべき 2023年7月8日

警護計画を事前に警察庁が確認 首相演説会場で筒投げ爆発―【私の論評】左翼リベラル系メデイアや言論人は最低限、暗殺、大量殺人、自殺を政治利用するな 2023年4月15日

多くのナゾ残し「捜査終結」安倍元首相の暗殺事件 山上被告を追起訴も…消えた銃弾、遺体の所見に食い違い、動機など不可解な点―【私の論評】岸田首相は、政府主導で委員会を設置し安倍元首相暗殺事件の検証・報告にあたらせるべき 2023年3月31日

2025年6月15日日曜日

イスラエルのイラン攻撃:核開発阻止と中東の危機を読み解く

まとめ
  • イスラエルのイラン攻撃は核開発阻止と体制崩壊を狙い、分裂したイラン社会をシリアのような内戦状態に追い込む戦略だ。
  • ネタニヤフは1995年の著書でイランの脅威を予見し、「抵抗の枢軸」による攻撃や2024年のイラン直接攻撃を警告。
  • 2023年、当時の国防相はイスラエルは7地域で「多方面の戦争状態」にあルトの認識を公表、過去のサイバー攻撃や暗殺でイランの核開発を遅らせたが阻止は不完全。
  • 米国は2018年に核合意離脱、中国はイラン支援、ロシアは軍事協力と、大国間の動きが事態を複雑化。
  • イランの核開発は世界を危機にさらし、イスラエルと西側諸国が行動を起こす時間は限られている。
2024年12月8日アサド政権崩壊

イスラエルによるイランへの奇襲攻撃は、核開発計画を遅らせ、現体制を崩壊させる明確な狙いを持つ。核施設、ミサイル工場、軍の要人や核科学者を標的に、民間人の犠牲を抑えつつイラン国内の反体制運動を促す意図があった。しかし、イスラエルの真の目的は、民族や宗派、経済格差で分裂するイラン社会をさらに分断し、アサド政権崩壊前のシリアのような内戦状態に追い込むことだ。

ネタニヤフの予見とイランの脅威

ネタニヤフ首相は1995年の著書『テロリズムとはこう戦え』でイランの脅威を予見。イスラムテロ組織の反米動向を分析し、2001年の9・11テロを予告するような警告を発していた。同書では、国際テロが支援国家の「安全な避難所」なくして成り立たないと断じ、イランがヒズボラ、ハマス、フーシ派の「抵抗の枢軸」を通じてイスラエルを攻撃してきたと指摘。2024年、イランは4月と10月にドローンやミサイルでイスラエルを直接攻撃。ヒズボラの弱体化やシリアのアサド政権崩壊で「抵抗の枢軸」が揺らぐ中、イラン自身が直接対決に踏み切る危険性が浮上した。


ネタニヤフは、イランが核兵器を手に入れれば、都市全体を人質に取りかねないと警告。ナチズムを例に、ヒトラーが核を持っていたら文明は終焉していたと述べ、民主国家が時間を無駄にしてきたと訴える。「一刻の猶予もない」と力強く断言した。攻撃直後、ネタニヤフはヒズボラへの対応がレバノンやシリアの政権変動を招いたと主張し、イラン国民に「解放」の日が近いと呼びかけた。しかし、反イスラエル感情が根強いイランで体制崩壊は不透明だ。軍上層部の排除で体制を揺さぶる狙いはあるが、後継者が強硬姿勢を強める危険もある。米国なしでは核開発阻止は困難だ。

多方面の戦争とイランの抵抗

2023年、当時のガラント国防相は、ガザ、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、イラク、イエメン、イランの7地域で攻撃を受ける「多方面の戦争状態」を認識。イランと「抵抗の枢軸」による攻撃で、2023年10月のハマス襲撃もイランの支援が背景にあった。イスラエルは2010年のスタックスネットウイルスや2020年の核科学者暗殺で核開発を遅らせたが、完全な阻止はできていない(国際原子力機関報告、2023年)。2022年のイラン国内抗議運動は体制への不満を示したが、治安部隊に鎮圧され、民衆蜂起は遠い。イランの分裂を加速させる戦略は、シリアのような混乱を招く可能性があるが、地域全体の不安定化はイスラエルにも跳ね返るリスクをはらむ。

大国間の駆け引きとイスラエルの孤立


イランをめぐる大国間の動きは事態を複雑にする。米国は2015年のイラン核合意から2018年に離脱し、経済制裁を強化(米国務省、2018年)。2025年6月、イスラエルの攻撃直前に核交渉が予定されたが、イランの報復脅威で米国はイラクから人員を避難させ、交渉は中止(ロイター、2025年6月)。トランプは核開発阻止を求め、軍事攻撃を示唆するが、直接対決は避けたい。一方、中国はイランの最大の石油輸入国として制裁回避を支え、2021年の25年戦略協定で軍事・経済協力を強化(中国外務省、2021年)。2025年3月の北京での三国協議で、核問題の外交解決を主張しつつ米国を非難(新華社、2025年3月)。

ロシアはウクライナ戦争でイランのドローン支援を受け、2025年1月に戦略パートナーシップを締結(ロシア外務省、2025年1月)。イランを政治的に後押しするが、軍事介入には慎重だ。イランは米国の圧力に対抗し、ロシア・中国との関係を深めるが、両国が米国との取引でイランを見限る可能性を警戒する。イスラエル国内では、ネタニヤフへの支持は揺らぎ、反政府デモも起きている。しかし、イランの脅威は世界的な問題だ。

作戦名「アム・ケラヴィ」(雌獅子のような民)は、聖書の民数記に由来し、イスラム革命前のイランのライオンを暗示するとの見方もある。特別非常事態宣言が続く中、作戦は数週間続く可能性がある。米国はイランのウラン濃縮加速を警告(国際原子力機関、2025年)。米国の関与縮小傾向の中、イスラエルは単独で立ち向かう。イランの核開発と地域の混乱は、世界を危機にさらす。イスラエルと米国を中心とする西側諸国が行動を起こす時間は限られている。

【関連記事】

イスラエル空爆の衝撃!イラン核施設壊滅と中東緊迫の行方:日本への警鐘 2025年6月14日

ガザ再建計画の最大の障害はイラン、第1期トランプ政権が残した遺恨は原油相場を刺激―【私の論評】トランプのイラン強硬策とイスラエルの攻撃計画:中東危機と中国対決の行方  2025年3月27日

2025年6月14日土曜日

イスラエル空爆の衝撃!イラン核施設壊滅と中東緊迫の行方:日本への警鐘

まとめ

  • 2025年6月13日、イスラエルがイランのナタンズ核施設を空爆、革命防衛隊司令官や核科学者を殺害。モサドの作戦「ライジング・ライオン」でミサイル施設と防空システムを破壊。
  • イランは100発弱のミサイルで報復するが、イスラエルがほぼ迎撃。78人死亡、320人以上負傷。ウクライナの「スパイダーウェブ(蜘蛛の巣)作戦」とイスラエルの潜入・ドローン戦術が類似。
  • 今回の攻撃は、2023年ガラントの「多方面戦争」認識の延長線上にあると見られる。ハマス奇襲後、敵の能力排除を優先。ネタニヤフはイランの核開発を30年間脅威視。
  • 米国は関与せず、トランプが攻撃を称賛。国連で対立、IAEAは他施設の被害なしと報告。2027年まで中東不安定化が続く見通し。
  • 日本は中東の石油供給リスクに備え、原発再稼働やエネルギー多様化を急ぐとともに、ドローン搬入戦術への防衛策として監視システムや対ドローン技術の強化が必要。

2025年6月13日、イスラエルはイラン中部のナタンズ核施設を空爆し、革命防衛隊のホセイン・サラミ司令官、モハマド・バゲリ参謀総長、核科学者のモハマド・メフディ・テヘランチら要人を葬った。この攻撃は、モサドが長年イランに潜入し、現地協力者から得た情報で成し遂げた作戦「ライジング・ライオン」の成果だ。ニューヨーク・タイムズやアルジャジーラは、イスラエルが誘導ミサイルや自爆型ドローンをイランに持ち込み、テヘラン近郊にドローン基地を設けたと報じた。イランのミサイル発射施設と防空システムは壊滅。イスラエルはモサドの諜報力を誇示し、イラン指導部の報復の気力を挫く狙いを明かした。2020年にもイランで核科学者が暗殺されており、イスラエルの執拗な工作が浮き彫りだ。

攻撃後、イランはテルアビブやエルサレムに100発弱のミサイルを発射したが、イスラエル軍はほぼ全て迎撃し、被害は軽微だった。イラン国営メディアは数百発と誇張し、最高指導者アリ・ハメネイは「報復」を宣言。イラン国連大使は、攻撃で78人が死亡、320人以上が負傷し、テヘランやケルマンシャーの住宅地も被害を受けたと訴えた。国際社会は民間人被害を憂慮している。

イランがイスラエルに向けてミサイル100発以上を発射し、一部はテルアビブに着弾

この攻撃は、ウクライナの「スパイダーウェブ作戦」と似ている。2025年6月1日、ウクライナは117機のドローンをロシア領内に運び、トラックから発射して5つの空軍基地を攻撃。約10機の戦略爆撃機を破壊した。両作戦は、敵国内への潜入、偽装トラックによるドローン発射、精密攻撃で共通する。イスラエル軍ラジオは、ウクライナの手法を取り入れたと報じた。イスラエルはイランの防衛を突破し、敵の戦力を削いだ。

この攻撃は、2023年12月26日、ヨアヴ・ガラント国防相が議会で述べた「多方面での戦争状態」に基づく。2023年10月7日、ハマスが1200人以上を殺害、250人以上を拉致する奇襲を仕掛け、イスラエルはガザ、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、イラク、イエメン、イランの7戦域で脅威に直面。6戦域で反撃を開始し、敵の戦力を潰す戦略に転換した。ガラントは「敵は誰でも標的」と言い切り、ハマスの壊滅と人質奪還を誓った。イランとハマス、ヒズボラ、フーシ派との全面対決が背景にある。

スパイタ〜ウェブ作戦に用いられたドローン ウクライナ保安局

ネタニヤフ首相は30年間、イランの核開発を最大の脅威とみなし、2010年と2012年に攻撃を計画したが、米国の反対で断念。2023年のハマス攻撃後、イスラエルはヒズボラやフーシ派への攻撃を強化。ガザでは約5万5000人が死亡、シリア政権崩壊にも影響を及ぼした。2024年11月、ネタニヤフは今回の作戦を指示。モサド元幹部は、イランにドローン基地を事前に設けたと明かした。

米国は関与せず、トランプ大統領は攻撃を称賛しつつ、イランとの交渉の余地を残した。国連安保理ではイランが米国を非難、イスラエルは「国家存続のための行動」と反論。国際原子力機関は、ナタンズ以外の核施設に被害がないと報告。専門家は、攻撃がイランの核開発を遅らせても、体制危機が核兵器開発を加速させる恐れを指摘。イランの軍事力と代理勢力の衰退は報復を制限している。

イスラエル・ネタ二アフ首相

戦争の行方を占うと、イスラエルの目標である核開発遅延や代理勢力の無力化が進んでも、イランとの緊張は2026年以降も続く。ガラントは2024年に「戦争は長引く」と警告。専門家はイランの核兵器完成を2~3年遅らせられると見る。外交的合意やイラン体制の変革がなければ終結は難しい。2024年11月、国際刑事裁判所がガラントとネタニヤフに逮捕状を発行。ガラントは解任され、イスラエル・カッツが国防相に就任。2027年までは軍事衝突や諜報戦が断続するだろう。イランが核開発を加速すれば、大規模作戦が再び起きる。

中東の不安定は2027年まで続くだろう。その後も両者の睨み合いは続く。日本はエネルギー安全保障と防衛を見直すべきだ。中東からの石油・ガス供給が不安定化する中、再生可能エネルギーへの過度な期待は危険だ。原発再稼働や石炭、LNGの活用でエネルギー多様化を急ぐ必要がある。さらに、スパイダーウェブ作戦やライジング・ライオンに見るドローン潜入戦術への備えが急務だ。敵国が日本にドローンを密輸したり、日本国内で製造して、重要施設を攻撃するリスクに備え、監視システムや対ドローン技術、物流網の点検を進めるべきだ。現実的なエネルギー政策と防衛策は、経済と安全保障を守る鍵だ。

【関連記事】

ウクライナの「クモの巣」作戦がロシアを直撃:戦略爆撃機41機喪失と経済・軍事への衝撃  2025年6月2日

ガザ再建計画の最大の障害はイラン、第1期トランプ政権が残した遺恨は原油相場を刺激―【私の論評】トランプのイラン強硬策とイスラエルの攻撃計画:中東危機と中国対決の行方  2025年3月27日

<イスラエルによるイラン核施設攻撃の可能性>報復攻撃が見せた重大なインパクト―【私の論評】トランプ政権の影響とハマスの行動がイラン戦略に与える影響、そして中東和平の可能性 2024年11月20日

アサド氏失脚、イランに「歴史的規模」の打撃―【私の論評】イランの影響力低下とトルコの台頭:シリアの復興とトルコのエネルギー戦略 2024年12月12日

イスラエル国防相「多方面で戦争状態」 イラン念頭に警告―【私の論評】中東の安全と安定を脅かす「抵抗の枢軸」の挑戦とその対抗策 2023年12月28日

2025年6月13日金曜日

中国の異常接近:日本の対潜水艦戦能力の圧倒的強さを封じようとする試みか

まとめ
  • 中国軍のJ15戦闘機が、海上自衛隊のP3C哨戒機に6月6日と8日、太平洋上で異常接近し、衝突リスクを伴う挑発的な飛行を行った。両機の最短距離は45メートルで、国際航空安全基準を下回る危険な状況だった。
  • 日本は国際法を遵守し、冷静に対応。防衛省は中国に厳重抗議し、再発防止を求めた。中国外務省は日本の偵察がリスクの原因と反論したが、国際法を無視する中国の行動は信頼醸成を損なう挑発だ。
  • 現代海戦では対潜水艦戦(ASW)が鍵であり、日本はP-3C、P-1哨戒機や護衛艦、潜水艦で世界最高水準のASW能力を持つ。2021年のマラバール演習でその実力を示した。
  • 中国のASW能力、特に敵潜水艦の探知力は日本に大きく劣る。2020年の米国防総省報告書や2018年の演習失敗、2016年の無人潜水艇拿捕事件がその限界を露呈する。
  • 中国はASWの劣勢を補うため、J15による牽制や対艦弾道ミサイルに頼る。今回の異常接近は日本のASW能力を封じる狙いだが、中国の挑発は対話を拒否する行為であり、緊張緩和には中国の行動変容が必須。
中国軍の空母「山東」を太平洋上で監視していた海上自衛隊のP3C哨戒機に、中国軍のJ15戦闘機が6月6日と8日、2日間にわたり異常接近を繰り返した。衝突の危険を伴う挑発だ。防衛省が公開した8日の映像には、J15の翼下に白いミサイルのような物体が映っている。赤外線誘導の空対空ミサイルの可能性があり、胴体下部にも別のミサイルが搭載されているかもしれない。模擬弾か実弾かは不明だが、ミサイルと推定される。J15はP3Cの前方約900メートルを高度差なく横切り、ジェットエンジンの乱気流がP3Cのエンジンに影響を与えるリスクを生んだ。最悪の場合、エンジンが停止する恐れもある。両機の距離はわずか45メートル。国際的な航空安全基準を大きく下回る危険な状況だ。


日本の冷静な対応と中国の反論

P3Cは監視任務では攻撃用の武装を搭載しない。情報収集に特化したセンサーやカメラで運用される。対潜水艦戦(ASW)や対艦攻撃能力を持ち、魚雷や対艦ミサイルを搭載可能だが、今回は武装の報告はない。国際法を遵守し、冷静に対応した。対して、J15は機動性の高い戦闘機だ。空自のパイロットは、意思疎通がない状況で高度差なく接近すれば、衝突事故の確率が極めて高いと警告する。複数回の接近は中国軍の組織的な指示による可能性が高い。防衛省は11日、「山東」の艦載機が7、8日にP3Cに異常接近したと発表。日本政府は深刻な懸念を表明し、再発防止を申し入れた。浜田靖一防衛相は「極めて遺憾」と述べ、外交ルートで中国に厳重抗議した。2014年に中国のSu-27が自衛隊機に約30メートルまで接近した事案以来の異常接近だ。

P3C

中国外務省の林剣報道官は12日の記者会見で、「日本の艦艇や軍用機が中国の正常な軍事活動に接近して偵察することがリスクの根本原因」と反論した。日本に「危険行為」をやめるよう求め、中国軍の活動は「国際法と国際慣例に合致している」と主張した。両国の国防部門が意思疎通を保っているとも述べた。しかし、この発言は国際法を無視し、衝突リスクを高める中国の行動と矛盾する。信頼醸成を自ら踏みにじる挑発だ。

現代海戦の鍵:対潜水艦戦

現代の海戦では、対潜水艦戦(ASW)が主力を担う。潜水艦はステルス性が高く、対艦ミサイルや魚雷で空母や艦隊を脅かす。ASWに優れた軍隊が海洋の覇権を握る。日本は世界最高水準のASW能力を持つ。P-3CやP-1哨戒機、SH-60K対潜ヘリ、ソナー搭載の護衛艦、静粛性に優れるおやしお型やそうりゅう型潜水艦を運用する。P-1は磁気探知装置、高性能ソノブイ、合成開口レーダーを備え、潜水艦探知に優れる。2021年のマラバール演習で、米国やインドと高度なASW戦術を披露した。日本のASW網は、米国の海底音響監視システムや無人機と統合され、太平洋での支配力を強化している。

海洋観測船「あかし」の進水式

2025年5月29日には、16年ぶりに海洋観測艦「あかし」が進水したばかりである。「あかし」は海洋観測任務のため、旋回式推進装置とバウスラスターを装備し、高い操縦性能を確保。基本的な仕様は、2010年3月に三井造船玉野艦船工場(現:三菱重工マリタイムシステムズ)で竣工した「しょうなん」に準じており、「ポッド式推進システム」が搭載されているとみられる。水中機器の敷設・揚収機能を強化するとともに、艦上における海洋環境データ処理能力の向上を図りました。一方で官給品や民生品の積極的に活用することにより建造費やLCC(ライフサイクルコスト)を低減している。

潜水艦を支えるために、極めて高性能な海洋観測機器を搭載する海上自衛隊の海洋観測艦。逆に言うと海洋観測艦の性能がわかってしまうと、日本の潜水艦の活動限界についてもわかってしまう可能性もある。

ゆえに、海洋観測艦は潜水艦以上の機密保持性が求められる。実際、護衛艦や潜水艦は一般公開されることがある一方、海洋観測艦の内部が公開されることはまず二位。海洋観測艦は、海上自衛隊で潜水艦以上に秘匿性の高い艦と言える。

ASWは、単に兵器の性能、探索能力などで向上できるものではない、ハード・ソフト、マンパワーなどを含めた国家による総合力であり、短期間に養えるものではないし、ましてや技術やノウハウを剽窃したからといってすぐに高められるものではない。

中国のASWの遅れと挑発の狙い

中国はASW能力、特に敵潜水艦の探知で日本に大きく劣る。Y-8Q哨戒機は約20機で、日本のP-3CやP-1に比べ数が少なく、センサー性能も劣る。2020年の米国防総省の報告書は、中国のASW能力を「地域的な作戦に限定され、遠洋での潜水艦追跡は困難」と評価する。054A型フリゲートや052D型駆逐艦のソナーは、日本の護衛艦のソナーに比べ精度が劣る。2018年の南シナ海の演習で、模擬潜水艦の探知に失敗した。2016年、米国の無人潜水艇を南シナ海で拿捕した事件は、中国の対潜哨戒能力の限界を露呈した。2023年の演習でも、空母戦闘群のASW防御が不十分だった。いかに優れた兵器を持ったとしても、発見できない敵を効果的に攻撃することはできない。

中国のY-8Q哨戒機

中国はASWの劣勢を補うため、対艦弾道ミサイルやJ-15による牽制に頼る。今回の異常接近は、P3Cの監視を妨害し、日本のASW能力を封じる狙いがあったと見るのが妥当だろう。特にP3Cに、「山東」を含む空母打撃群の脆弱性を発見されたくないという考えがあったものと見られる。中国は日米などの訓練において監視することもあり、これに対して、日米が中国の航空機や艦艇に対して、今回のような妨害行為をしたことはなく、今回の事案は中国側の身勝手な行動と言える。2007年に中国の039型潜水艦が米空母近くに浮上した事例があるが、これは静粛性の低さから見ると偶然もしくは米軍に発見され追い詰められた可能性すらある。中国は新型096型潜水艦を開発中だが、2020年代半ばでは日本のASW網に対抗できない。

日本のASW能力は中国の海洋覇権封じ込めの鍵だ。中国の今回の挑発事案は、短期的な牽制にすぎない。日中の信頼醸成は重要だが、中国は今回の行動で対話を拒否した。国際法を無視し、信頼を踏みにじる行為は、中国自身の責任だ。日本のASW能力を脅威とみなしたこの事案は、中国が対話ではなく挑発を選んだことを示す。ASWに優れる日本は戦略的優位を保つ。緊張緩和は必要だが、それは中国が挑発をやめることから始まる。

【関連記事】

中国の野望を打ち砕け!南鳥島を巡る資源と覇権の攻防 2025年6月9日

中国ヘリ発艦で引き返す  尖閣周辺で飛行の民間機  機長、当時の状況証言—【私の論評】尖閣の危機:中国の領空侵犯と日本の防衛の限界を暴く 2025年5月7日

<主張>中国軍の演習 無謀な台湾封鎖許されぬ―【私の論評】中国の台湾封鎖は夢想!76年経っても統一が実現しない理由と西側の備え 2025年4月7日

中国、南鳥島沖で「マンガン団塊」大規模採鉱を計画…商業開発認められればレアメタル独占の可能性―【私の論評】日米とEUの戦略的関与で中国主導の深海資源採掘ルール形成を阻止せよ! 2024年12月1日

南鳥島沖レアメタル鉱物密集―【私の論評】日本の海洋資源戦略:マンガンノジュールからインド太平洋戦略まで 2024年6月22日


2025年6月12日木曜日

『WiLL』と『Hanada』の成功の裏側:朝日新聞批判から日本保守党批判への転換と商業メディアの真実

まとめ
  • 『WiLL』と『Hanada』は朝日新聞批判で部数を伸ばしたが、安倍政権終焉やネットメディアの台頭でマンネリ化し、限界を迎えた。
  • 2024年、両誌は日本保守党批判に転じ、飯山陽氏の記事やYouTubeでの対立事件を通じて話題性を確保、商業的成功を収めた。
  • 日本保守党がLGBT理解増進法廃案に動いていないとの批判は、党の公式政策や島田洋一議員の国会質疑から見て不正確な可能性。
  • 両誌は売上至上主義で話題性を追求し、朝日や保守党批判は商業戦略の一環。梶原麻衣子の新書で編集部の葛藤が描かれる。
  • 雑誌は商業媒体であり、読者は事実と意見を分け、複数の情報源を参照して批判的に向き合うべき。これは、すべての情報媒体と向き合う際の教訓となるだろう。
『WiLL』や『Hanada』といった保守系雑誌は、大手メディアへの対抗意識と週刊誌のようなスピード感を武器に、読者の心を掴み、部数を伸ばしてきた。特に、朝日新聞をターゲットにした批判記事は、保守派読者の不満を代弁し、商業的成功を収めた。しかし、この「朝日新聞叩き」の戦略は限界を迎え、新たな話題性として日本保守党への批判が浮上した。この流れは、雑誌が売上を優先する商業メディアである本質を浮き彫りにする。読者は、こうした雑誌を批判的に捉え、事実と意見を分けて向き合う必要がある。


2000年代中盤、『WiLL』は朝日新聞の慰安婦報道や原発報道を批判する特集で大きな注目を集め、ピーク時には公称13万6000部の発行部数を記録した。みんかぶマガジンの記事によると、この成功は、保守派読者の大手メディアへの不信感を巧みに捉えた結果だった。梶原麻衣子さんの新書『「“右翼”雑誌」の舞台裏』では、編集部が朝日新聞批判を優先し、読者から「日本の名誉を守る雑誌」との熱い支持を得ていたことが描かれている。2014年の朝日新聞の慰安婦報道検証記事を機に、両誌は「反日的」と朝日を攻撃する企画を連発し、部数を押し上げた。

花田紀凱編集長の週刊誌出身の経験が、この戦略を支えた。朝日の社説や記事を名指しで批判する特集は、読者のメディア不信を刺激し、商業的成功を確実なものにした。しかし、2022年の安倍元首相の死去やネットメディアの台頭により、「朝日新聞叩き」の鮮度が薄れ、読者の「飽き」が生じ始めた。2025年1月のデイリー新潮の記事では、保守系雑誌の従来の戦略が限界に達しつつあると指摘されている。梶原さんの新書でも、売上至上主義の中で扇情的な内容や陰謀論が採用される葛藤が描かれ、朝日批判の繰り返しがマンネリ化のリスクを孕んでいたことが示唆されている。雑誌は商業媒体であり、読者の関心を維持するためには新たな話題が必要だった。

花田紀凱編集長

そこで注目されたのが、日本保守党への批判だ。文春オンラインの記事(2024年10月)によると、両誌は2023年の日本保守党結党当初は支持する姿勢を見せていたが、2024年の衆院補選での党の動向や、党首・百田尚樹氏と事務総長・有本香氏の言動に疑問を抱き、批判に転じた。たとえば、飯山陽氏が『Hanada』で日本保守党のLGBT理解増進法への対応や政策の曖昧さを批判する記事を寄稿し、話題を呼んだ。2024年、飯山氏は衆院補選で日本保守党の候補として出馬したが落選し、党との関係を断絶。その後、YouTubeや『Hanada』で党批判を展開し、百田氏らの言動を問題視した。2024年後半の『Hanada』YouTube生放送では、ゲストが日本保守党を批判する中、百田氏と有本氏が電話で番組に抗議し、編集部との対立が表面化した。この事件は、両誌と日本保守党の緊張関係を象徴し、読者の間で議論を巻き起こした。両誌は「言論の自由」を掲げ、こうした圧力行為を批判の正当化に利用したが、その背景には商業的動機があった。2024年の関連号は書店で品薄となり、批判記事が商業的成功を収めた証拠となった。

日本保守党所属の島田洋一議員

しかし、飯山氏による「日本保守党がLGBT理解増進法廃案に動いていない」や『WiLL』の政策の曖昧さを問題視する批判は、必ずしも事実と一致しない。産経ニュース(2023年10月17日)によると、百田氏は結党会見で「LGBT法に怒り結党した」と述べ、党の重点政策としてLGBT理解増進法への反対を明確に掲げていた。日本保守党の公式サイト(2024年10月時点)でも、伝統的家族観の重視を政策に明記し、法案の問題点を追及する姿勢を示している。2024年、日本保守党所属の島田洋一議員が国会でLGBT理解増進法に関する質疑を行い、女性スペースの保全を法務大臣に約束させるなど、具体的な行動を起こしている。これらの事実から、両誌の批判が党の活動実態を十分に反映していない可能性が浮かび上がる。

雑誌は、所詮商業ベースの情報媒体だ。『WiLL』や『Hanada』の朝日新聞批判や日本保守党批判は、読者の関心を引き、部数を伸ばすための戦略に他ならない。梶原さんの新書では、売上至上主義が編集方針を歪め、倫理的葛藤を生んだことが赤裸々に綴られている。文春オンラインの記事でも、両誌が日本保守党批判を通じて新たな話題性を追求したことが示唆されており、売上を優先する姿勢が明確だ。読者は、こうした雑誌を純粋な「真実の代弁者」と見なすのではなく、売上を優先する商業媒体として捉え、複数の情報源を参照しながら批判的に向き合うべきだ。

日本保守党をYouTubeで批判する飯山陽氏

朝日新聞批判から日本保守党批判への移行は、読者の関心を維持するための必然だったが、保守派内部の分裂を深めるリスクも孕む。特に、事実と異なる批判は読者の信頼を損ねる危険がある。文春オンラインの記事が指摘するように、この内紛は保守系メディアの信頼性を損なう可能性もある。結局、雑誌との付き合い方には、冷静な視点が欠かせない。『WiLL』や『Hanada』が提供する情報は、話題性を追求する商業媒体の一面に過ぎない。読者は、複数の情報源を参照し、事実と意見を分けて考える姿勢が求められる。日本保守党批判をめぐる議論は、言論の自由や保守派の分裂を映し出すが、雑誌の動機は売上にあることを忘れてはならない。この視点は、保守系メディアに限らず、すべての情報媒体と向き合う際の教訓となるだろう。

【関連記事】

安倍昭恵の電撃外交と安倍の魂復活:保守派の「千載一遇の大チャンス」は来るか?   2025年6月11日

衆参同日選で激動!石破政権の終焉と保守再編の未来   2025年6月8日

夫婦別姓反対!日本の家族と文化を守る保守派の闘い 2025年6月7日

保守分裂の危機:トランプ敗北から日本保守党の対立まで、外部勢力が狙う日本の未来   2025年6月6日

【自民保守派の動き活発化】安倍元首相支えた人の再結集—【私の論評】自民党保守派の逆襲:参院選大敗で石破政権を揺さぶる戦略と安倍イズムの再結集 2025年5月22日

日本経済を救う鍵は消費税減税! 石破首相の給付金政策を徹底検証

まとめ 石破茂首相は2025年6月、物価高対策として給付金(1人2万円、非課税世帯や子どもは4万円)を給付金は「消費減税よりはるかに効果的だ」「決して少なくない」と推すが、消費税減税には慎重。給付金は迅速だが持続性に欠ける。 日本の経済は低成長(GDP成長率1.2%)、物価上昇(...