まとめ
- 2025年6月13日、イスラエルがイランのナタンズ核施設を空爆、革命防衛隊司令官や核科学者を殺害。モサドの作戦「ライジング・ライオン」でミサイル施設と防空システムを破壊。
- イランは100発弱のミサイルで報復するが、イスラエルがほぼ迎撃。78人死亡、320人以上負傷。ウクライナの「スパイダーウェブ(蜘蛛の巣)作戦」とイスラエルの潜入・ドローン戦術が類似。
- 今回の攻撃は、2023年ガラントの「多方面戦争」認識の延長線上にあると見られる。ハマス奇襲後、敵の能力排除を優先。ネタニヤフはイランの核開発を30年間脅威視。
- 米国は関与せず、トランプが攻撃を称賛。国連で対立、IAEAは他施設の被害なしと報告。2027年まで中東不安定化が続く見通し。
- 日本は中東の石油供給リスクに備え、原発再稼働やエネルギー多様化を急ぐとともに、ドローン搬入戦術への防衛策として監視システムや対ドローン技術の強化が必要。
攻撃後、イランはテルアビブやエルサレムに100発弱のミサイルを発射したが、イスラエル軍はほぼ全て迎撃し、被害は軽微だった。イラン国営メディアは数百発と誇張し、最高指導者アリ・ハメネイは「報復」を宣言。イラン国連大使は、攻撃で78人が死亡、320人以上が負傷し、テヘランやケルマンシャーの住宅地も被害を受けたと訴えた。国際社会は民間人被害を憂慮している。
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イランがイスラエルに向けてミサイル100発以上を発射し、一部はテルアビブに着弾 |
この攻撃は、ウクライナの「スパイダーウェブ作戦」と似ている。2025年6月1日、ウクライナは117機のドローンをロシア領内に運び、トラックから発射して5つの空軍基地を攻撃。約10機の戦略爆撃機を破壊した。両作戦は、敵国内への潜入、偽装トラックによるドローン発射、精密攻撃で共通する。イスラエル軍ラジオは、ウクライナの手法を取り入れたと報じた。イスラエルはイランの防衛を突破し、敵の戦力を削いだ。
この攻撃は、2023年12月26日、ヨアヴ・ガラント国防相が議会で述べた「多方面での戦争状態」に基づく。2023年10月7日、ハマスが1200人以上を殺害、250人以上を拉致する奇襲を仕掛け、イスラエルはガザ、レバノン、シリア、ヨルダン川西岸、イラク、イエメン、イランの7戦域で脅威に直面。6戦域で反撃を開始し、敵の戦力を潰す戦略に転換した。ガラントは「敵は誰でも標的」と言い切り、ハマスの壊滅と人質奪還を誓った。イランとハマス、ヒズボラ、フーシ派との全面対決が背景にある。
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スパイタ〜ウェブ作戦に用いられたドローン ウクライナ保安局 |
ネタニヤフ首相は30年間、イランの核開発を最大の脅威とみなし、2010年と2012年に攻撃を計画したが、米国の反対で断念。2023年のハマス攻撃後、イスラエルはヒズボラやフーシ派への攻撃を強化。ガザでは約5万5000人が死亡、シリア政権崩壊にも影響を及ぼした。2024年11月、ネタニヤフは今回の作戦を指示。モサド元幹部は、イランにドローン基地を事前に設けたと明かした。
米国は関与せず、トランプ大統領は攻撃を称賛しつつ、イランとの交渉の余地を残した。国連安保理ではイランが米国を非難、イスラエルは「国家存続のための行動」と反論。国際原子力機関は、ナタンズ以外の核施設に被害がないと報告。専門家は、攻撃がイランの核開発を遅らせても、体制危機が核兵器開発を加速させる恐れを指摘。イランの軍事力と代理勢力の衰退は報復を制限している。
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イスラエル・ネタ二アフ首相 |
戦争の行方を占うと、イスラエルの目標である核開発遅延や代理勢力の無力化が進んでも、イランとの緊張は2026年以降も続く。ガラントは2024年に「戦争は長引く」と警告。専門家はイランの核兵器完成を2~3年遅らせられると見る。外交的合意やイラン体制の変革がなければ終結は難しい。2024年11月、国際刑事裁判所がガラントとネタニヤフに逮捕状を発行。ガラントは解任され、イスラエル・カッツが国防相に就任。2027年までは軍事衝突や諜報戦が断続するだろう。イランが核開発を加速すれば、大規模作戦が再び起きる。
中東の不安定は2027年まで続くだろう。その後も両者の睨み合いは続く。日本はエネルギー安全保障と防衛を見直すべきだ。中東からの石油・ガス供給が不安定化する中、再生可能エネルギーへの過度な期待は危険だ。原発再稼働や石炭、LNGの活用でエネルギー多様化を急ぐ必要がある。さらに、スパイダーウェブ作戦やライジング・ライオンに見るドローン潜入戦術への備えが急務だ。敵国が日本にドローンを密輸したり、日本国内で製造して、重要施設を攻撃するリスクに備え、監視システムや対ドローン技術、物流網の点検を進めるべきだ。現実的なエネルギー政策と防衛策は、経済と安全保障を守る鍵だ。
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