2016年1月31日日曜日

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか



日銀は29日、金融機関から預かっている当座預金にマイナス金利を導入する新たな金融緩和策に踏み切り、さらに今後も金利のマイナス幅を拡大する可能性を示唆しました。これを受けて長期金利は過去最低まで急激に下がりましたが、金利の低下が投資や消費の増加につながるかどうか、今後、新たな金融緩和の効果が問われます。

日銀は、金融機関から預かっている当座預金の一部に来月半ばからマイナス金利を導入する、新たな金融緩和策に踏み切ることを決めました。

日銀の黒田総裁は記者会見で、今回の政策のねらいについて「金利全体により強い下押し圧力を加えていく。2%の物価目標をできるだけ早く実現するため導入を決めた」と述べ、世の中の金利全般を一段と下げることで、投資や消費を活発化させることが期待できるとしました。

これを受けて、東京債券市場では29日、長期金利が一時、0.09%と過去最低の水準まで急激に下がり、金利はひとまず、日銀のねらいどおりの反応を示したほか、円安と株高も進みました。

ただ、金利が下がっても企業や個人の資金の需要が高まらなければ、金融機関からの貸し出しなども増えず、投資や消費の増加につながらないおそれもあります。日銀は必要があればマイナス金利の幅を拡大する可能性も示唆していますが、金利の低下を経済の活性化につなげ、日銀が目標とする2%の物価上昇率を達成できるかどうか、新たな金融緩和策の効果が問われることになります。

【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!

今回のゼロ金利について、予め予言をしている人がいました。それは、あの高橋洋一氏です。その予言を掲載した動画を以下に掲載します。


マイナス金利の件は45分あたりから

 この動画は1月28日に収録されたものです。高橋氏としては、29日に日銀が重大発表があるとの発表をした時点で、ゼロ金利はあり得ることとして、この動画の緊急特番ということになったのだと思います。

この動画の中でも、今回の黒田総裁が、マイナス金利を導入しなければ、まともな中央銀行総裁とはいえないということを語っていました。そうして、今回実際にゼロ金利政策を宣言したわけですから、黒田総裁はまともだということです。このあたりのことについては、詳細は上の動画をご覧ください。

このゼロ金利政策、マスコミの経済記者などには意味が良くわからないようです。識者のなかにもとんでない解説をする人がいるので、そんなことに皆さんが幻惑されないように、以下にいくつかの査証(エビデンス)を掲載させていただきます。

そもそも、日銀がマイナス金利政策を宣言する前から、もう日本は実質的にマイナス金利政策をとっているといっても過言ではありませんでした。

すでに、日本銀行は、マイナス金利政策を発表する前からゼロ金利政策を放棄してマイナス金利政策を採用してしまっていました(これって、英文法でいえば過去完了)。その査証を以下に掲載します。


さて、上は、財務省が発表している国債金利情報をグラフにしたものです。昨年の12月の半ば頃から残存期間1年の国債の利回りはマイナスになってしまっていたのです。瞬間的にマイナスになったというのではないのです。それ以来マイナスが継続しまっていたのです。

そして、昨年12月13日には、5年物新発国債の落札利回りがゼロとなったとも報じられてしまっていました。10年物国債にしても、利回りは0.26%まで低下してしまっていました。

国債の利回りがマイナスになるその原因は、日本銀行が市中金融機関から国債を買い入れる場合に、額面以上の価格で購入しているからです。日銀が額面以上の価格で国債を購入すれば、落札利回りはマイナスになります。つまり、市中金融機関は、国債を担保に日銀からマイナス金利でお金を借りてしまっていたのです。

今や市中金融機関は、ゼロ金利どころかマイナス金利で日銀からお金を借りることができる時代に突入しているのです。では、何故そのようなことを日銀はするのでしょうか。

そうでもしなければ、日銀が目標に掲げた国債の買い入れが達成できないからです。そうなると日銀の掲げた物価目標を達成できなくなるからです。

さて、すでに国債のマイナス金利政策を実行している、日銀がさらに今回マイナス金利政策を発表したのにはどんな背景があり、それが日本経済にどのような影響を及ぼすのか以下に解説します。

日銀には銀行の預金口座である「日銀当座預金」があります。この「日銀当座預金」にはこれまで0.1%の金利がついていたのですが、預金の一部にマイナス0.1%の金利、つまり手数料がとられるようになるのです。

日銀はアベノミクス開始以降、銀行などの金融機関から大量の国債を購入していますが、その国債の購入代金は銀行の預金口座である「日銀当座預金」に振り込まれます。しかし、「日銀当座預金」に0.1%の金利がついたままでは、銀行は振り込まれたお金を企業の貸出しにまわすことなく、そのまま放っておくことが考えられます。



しかし、今回のマイナス金利導入により、「日銀当座預金」に利息収入ではなく手数料がかかることになってしまいました。こうなると銀行は利益を確保するために、こぞって企業にお金を貸し出すとか、株式投資をするようになることが考えられます。これがマイナス金利導入の狙いです。

しかし、ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。

その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。


ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。

これは、高橋洋一氏が動画で指摘していたように、正しい措置であり、黒田日銀総裁は、まともな中央銀行総裁であることが示されたといえると思います。

しかし、だからといって、日本経済は安泰だというわけでもありません。先日も、指摘したように、この先中国経済はしばらくかなり停滞します。アメリカの利上げによって新興国の経済が大ダメージを受けてしまう可能性も大きいです。

さらに、原油安が資源国の経済を直撃しています。また、中東の地政学的リスクも増大しています。これらが日本の経済にどのような悪影響を与えるのか、全く予断を許さない状態です。今後リーマン級の大打撃が日本を再度襲う可能性があります。 

今後の、不測の事態に備えるためにも、日本政府は早急に2016年度の補正予算を組み、金融緩和を拡大して、財政金融両面でさらなる景気対策を施さなければなりません。

10%増税などやっている場合ではありません。まずは、景気回復、デフレ完全脱却が今の日本にとっては最優先課題です。安倍政権にはECBのように政策の優先順位を間違えないようにして欲しいです。もし、10%増税など予定通りに実行してしまえば、ECBの優先順位の誤りどころの話ではありません。

ECBが優先順位を間違えて、マイナス金利政策をやっても、効果が出ないだけで、それ自体が経済に甚大な悪影響を及ぼすわけではありません。しかし、デフレ完全脱却前の、増税は甚大な悪影響を及ぼすのは必定です。そんなことは、私達は8%増税の大失敗ですでに学んでいるはずです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月30日土曜日

去年10~12月のGDP マイナス予測相次ぐ―【私の論評】それみたことか!8%増税の悪影響が明らかになった今10%増税ではなく他にすべきことが(゚д゚)!



来月発表される去年10月から12月までのGDP=国内総生産について、民間の調査機関などの間では、暖冬の影響で冬物の衣料品などの売れ行きが振るわず個人消費が落ち込んだことなどから、前の期に比べた伸び率がマイナスになるという予測が相次いでいます。

来月15日に発表される去年10月から12月までのGDPの伸び率について、民間の主な金融機関や調査機関など12社は、物価の変動を除いた実質で前の3か月と比べてマイナス0.1%からマイナス0.7%。年率では、マイナス0.5%からマイナス2.8%と予測しています。

これについて各社は、暖冬の影響で冬物の衣料品などの売れ行きが振るわず「個人消費」が落ち込んだほか、中国経済の減速などで景気の先行きに不透明感が増していることを受けて、企業の設備投資が伸び悩んでいることなどを主な要因に挙げています。

各社が予測するようにGDPがマイナスになりますと、去年4月から6月以来、2期ぶりとなります。

各社は、今後の日本経済についても、中国経済の減速や原油安を受けて株価が大きく値下がりしていることで、個人や企業が消費や投資により慎重になるおそれがあるなど懸念を示しています。

【私の論評】それみたことか!8%増税の悪影響が明らかになった今10%増税ではなく他にすべきことが(゚д゚)!

いずれ、内閣府からも昨年の10-12月のGDPの推計値が出されますが、おそらく民間の出す推計値とそんなに差異はないでしょう。実際、今までも、民間の推計との間に大きな乖離があったことなどありません。

内閣府の昨年7-9月期のGDPの推計値はどうであったのか、ここで振り返っておくことにします。

内閣府が昨年12月8日に発表した2015年7─9月期の実質国内総生産(GDP)2次速報値は、1次速報値から上方修正となりました。前期比はプラス0.3%(1次速報値マイナス0.2%)、年率換算ではプラス1.0%(同マイナス0.8%)。設備投資が大幅に上方修正されたことなどが全体を押し上げました。

1次速報でマイナスだったのが2次速報でプラスに転じたのは、2012年10-12月期以来となりました。


設備投資は、財務省が1日発表した2015年7─9月期の法人企業統計を反映させた結果、1次速報のマイナス1.3%からプラス0.6%へと引き上げられました。業種では卸小売業や建設業などが寄与しました。

在庫投資はマイナス0.5%からマイナス0.2%となった。企業が在庫を積み増すペースが減速した格好で、統計上は1次速報と比べマイナスの寄与度が縮小しました。

一方、個人消費はマイナス0.5%から0.4%へとやや下振れました。業種別では自動車や衣服が下方修正の要因でした。

7-9月期の一次速報では、マイナスでした。4-6月期もマイナスでしたので、一次速報の時点では、4-6月期、7-9月期ともにマイナスでした。

このように、二期続けてマイナス成長になれば、マクロ経済学的には、リセッション(経済の後退局面)入したとみなすのが普通です。しかし、何とか2次速報では、プラスとなったので、リセッション入は免れたという形にはなりました。

しかし、10-12月のGDPがマイナスということになれば、まだまだ日本経済は予断を許せない状況にあることは確かです。

10-12月期の各社予想によるGDPは、日本がいかに再びリセッションに陥りやすいかを物語っています。おそらく、今のままでは、日本の長期潜在成長率は、せいぜい0.5%程度とみて良いと思います。

ということは、日本経済は基本的にいつでもリセッションの瀬戸際にあるということです。

その最大の原因は、「個人消費」が落ち込みにあると考えられます。そうです。8%増税による悪影響です。こうなることは、最初からわかっていました。

しかし、NHKをはじめとするマスコミや、多くの民間エコノミスト、多くの経済学者などは、増税しても影響は軽微としていたため、現状の8%増税の影響などとは、自らの恥をさらすことになるのであえて報道したり、述べたりはしません。多くの人が、口をつぐんています。NHKもその例外ではないようです。

8%増税の影響は軽微としていた熊谷氏
ブログ冒頭のNHKの記事では、暖冬の影響で冬物の衣料品などの売れ行きが振るわず「個人消費」が落ち込んだとしていますが、「8%増税の悪影響」に関しては全くスルーです。

日本の生産年齢人口は年間およそ1%減少しており、これが強力な成長下押し要因となっていますが、これはデフレとは関係ありません。

潜在成長率の低さは、企業が将来への投資をためらう最大の理由は、8%増税による先行き不安です。設備投資をしたとしても、8%増税の悪影響で消費が減るとか、減らないまでも横ばいである確率が高いと判断すれば、企業は新しく設備投資などしません。

企業は長期的な見通しが改善したと確信しない限り、工場の新設などに資金を投じることはなく、手元資金を厚くし続けようとするでしょう。

それに日本では、あまりにも長い間デフレが続き、いわゆるデフレ・ギャップが累積しています。デフレ・ギャップとは、実際の需要が潜在供給を下回った場合の差をデフレギャップといいます。

たとえば、実際の需要が80、潜在供給が100であるとすると、需給ギャップ(実際の需要と潜在供給の差)は、マイナス20(80-100=-20)となります。このマイナスの需給ギャップがデフレギャップです。

デフレギャップは、不況時に起こりやすい現象です。このとき、市場メカニズムが働かない(価格が下がっても、需要が増えない)と、経済はデフレ現象に陥ってしまいます。   




デフレギャップを解消するには、政府が需要を増やす必要があります。需要を増やす政策には、政府支出増大、減税、給付金、金融緩和政策があります。これを総需要拡大政策といいます。このうち、日銀が実行する金融緩和政策の他の政策は、政府による財政政策で、このような財政政策のことを積極財政といいます。

さて、このデフレ・ギャップですが、内閣府が過去に発表した数字では、10兆円程度としています。しかし、民間の推計では16兆円とするものもあります。

ただし、これはあくまで推定であり、財政出動をして、デフレが解消するのに費やした金額が、結果的にデフレギャップであったことが後で分かります。

とはいえ、こういった試算は、検証を積み重ねながら、モデルを構築していくため、結論ありきの恣意的な計算でなければ、それほど大きな差異はないと思います。

とにかく、現在の日本にも10兆円以上のデフレ・ギャップがあるのは間違いないです。であれば、増税するなどは全く筋違いの政策であり、本来ならば、財政政策としては、政府支出の増大を、減税、給付金などの政策を実行すべきなのです。

以上のことを勘案すると、以前このブログにも掲載したような経済対策が絶対に必要です。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国ではリーマン級の危機 消費増税“強行”なら取り返しがつかない―【私の論評】10%増税で財務省は天国!国民は夢と希望を捨て、若者は、進学、就職、結婚を諦めよ(゚д゚)!
国会で「リーマン・ショックのような危機」が
なければ消費再増税をすると明言した安倍総理だが?
この記事では、中国ではリーマン級の危機が起こりそうなときに、消費税増税なら取り返しのつかないことになることを述べました。そうして、経済対策として実行すべきは以下のようなものであるべきことを述べました。
1.追加緩和 
2%の物価目標も達成がなかなかできていないのですから、追加金融緩和を行い。これを達成する速度をはやめるべきです。イギリスの事例をみてもわかるように物価目標をいっとき4%程度にしても、ハイパーインフレになる可能性はありません。2%などと悠長なこと言っていないで、いっときでも4%にするべきと思います。 
2.増税延期or凍結 
これは、上記で述べたように絶対に増税などすべきではありません。増税は、緊縮財政の手法であり、本来景気が加熱して、ハイパーインフレなどになりそうなときに行う手段であり、デフレから脱却するときに行う政策ではありません。デフレからの完全脱却を目指すなら、減税や給付金などの積極財政を行うべぎてす。 
3.20兆円ぐらいの大型補正予算 
日本には、未だ、10兆円のデフレギャプがあります。これを埋めるためには、補正予算3兆円など、焼け石に水です。最低でも10兆円、できれは20兆円の補正予算を組むべぎです。日本にはその能力があります。実際、特別会計には、為替特別会計など、円安の現状では、必要のないお金が天文学的に積み上げせられています。これで、20兆円など簡単に捻出できます。ただし、政治決断が必要。今回のリーマン・ショック級の危機はこれらを実行するために、良い口実になると思います。安倍総理は、これを口実に努力していただき、上記のような政策を実行していただきたいものです。
昨年の10-12月の民間予想のGDPがマイナスであることも考えると、こうした政策の妥当性がますます強まったと思います。

昨日は、このブログでは、甘利大臣が辞任したことによって、財務省・増税派の逆襲がはじまるであろうことを掲載しました。

しかし、10%増税などとんでもないです。そんなことをすれば、本当に取り返しのつかないことになります。

そんなことよりも、今は上記で述べたように優先的になすべきことがあります。

日本の政治家の多くもこのくらいのことは理解して、マクロ経済音痴から脱却して、財務省などに幻惑されないようにして、正しい経済政策を選択して、日本経済の一日も速い回復に、命をかけていただきたいものです。

そうでなければ、政治家の存在価値が疑われると思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2016年1月29日金曜日

安倍政権に危機到来!甘利大臣辞任で財務省・増税派の逆襲がはじまる―【私の論評】多くの政治家、マスコミの認識が及ばぬ成層圏で官邸VS財務省の熾烈な戦いは続く(゚д゚)!

安倍政権に危機到来!甘利大臣辞任で財務省・増税派の逆襲がはじまる


野党は喜んでいる場合か

甘利明経済財政相が1月28日、献金疑惑について記者会見し、金銭授受を認めるとともに閣僚を辞任した。安倍晋三首相は後任に石原伸晃元環境相を任命したが、安倍政権にとって甘利氏の辞任が打撃であるのは間違いない。政権はどこへ向かうのか。献金疑惑そのものについてはマスコミが報じ、これから司直の捜査もあるだろうから、立ち入らない。ここでは甘利氏の閣僚辞任と石原氏への交代劇が政権に何をもたらすか、を考えてみる。

少なくともポイントは3つある。まず、安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉経過と意義を国民に説明するキーパーソンを失った。甘利氏がTPP交渉の最前線に立って、米国をはじめ各国と厳しい交渉をこなしてきたのは、だれもが知っているとおりだ。TPPは12ヵ国の多国間交渉であるだけでなく、21の交渉分野に分かれている。

それぞれの分野が複雑なうえ、交渉相手と分野の組み合わせも取引の一部になっている。強力な事務方が支えてきたのは当然だが、全容と経緯を知る政治家となると甘利氏をおいて他にない。いまの通常国会には、交渉結果を踏まえた関連法改正案が何本も提出されている。与野党は甘利氏にどうしてこういう結末になったのか、全体像を踏まえたうえで個別案件についても国会で細かく事情を質す役割を担っていた

ところが民主党をはじめ、野党は献金疑惑が表面化すると、TPP質疑など忘れたかのように「閣僚のクビをとる絶好のチャンス」と腕まくりするばかりだった。甘利氏が大方の予想に反して自ら辞任を表明したのだから、野党は「戦う前に完全勝利した」と気勢が上がっているかもしれない。それを本当に野党の勝利と呼べるのだろうか。

■安倍首相が甘利氏を必要とした理由

私は、むしろ甘利氏にはしばらく続投していただいて、与野党の質問に応える役割を果たしたほうが良かったのではないか、とさえ思う。代わりはいないのだ。献金疑惑の責任を負わなければならないのは当然だが、辞めるのは質疑が一段落した後でも遅くはなかった。永田町は権力闘争が本質だから、野党にとってはTPPをめぐる政策論争より、閣僚のクビをとるほうがはるかに重要という理屈も分からなくはない。

とはいえ、TPPが国民生活に密接に関わるのはだれもが認めているとおりだ。TPPはこれまでのどの通商協定よりも日本に与える影響が大きいと言っても過言ではない。そんな重要案件の全体像と細部のすべてを知る人物が、国会で国民に説明する機会が失われていいのだろうか。野党は献金疑惑の追及もさることながら、辞任した甘利氏にTPP交渉の実態について質す機会を考えるべきだ。それは与党にとっても必要だろう。国民が甘利氏に聞きたいことでもあるはずだ。次に、甘利氏が安倍政権内で担ってきた役割である。

氏はTPP交渉担当だけでなく、経済再生相としてアベノミクスを推進する役割も果たしてきた。ここで重要なのは、アベノミクスが霞が関や日銀から生まれた政策ではなく、安倍首相個人の政策的確信から生まれたパッケージである点だ。そうであるからこそ、アベノミクスを強力に推進しようとすると、いきおい財務省をはじめとする霞が関や日銀との軋轢が避けられない。もっとも分かりやすいのは増税問題だ。

■「財務省派」が勢いを増す

財務省は常に増税に賛成し、減税に反対する。だが、デフレを脱却して景気を良くするには、当面はできる限り増税を避けて減税を進める必要がある。安倍政権が2014年11月に消費税10%への増税先送りを決断する一方、法人税減税を推進してきたのは、それが理由だ。甘利氏は財務省の圧力が強まった局面では、常に首相官邸サイドに立って両者の調整役をはたしてきた。

甘利氏の辞任によって、安倍政権はそういう調整役を失った。政策面だけではない。政治的にも、甘利氏は第2次安倍政権誕生へのジャンプ台になる2012年の自民党総裁選で安倍選対の責任者を務めた、首相の盟友である。そんな甘利氏が表舞台から消えるのは、安倍首相にとって大きな痛手だ。甘利氏の退場によって、内閣の屋台骨は安倍首相と菅義偉官房長官、麻生太郎財務相の3人という形になる。麻生氏が財務省寄りなのは周知の事実だ。加えて自民党をみれば、同じく財務省寄りの谷垣禎一幹事長が中核に座っている。

こうしてみると、政権全体の力学バランスは微妙に財務省有利に変わるのではないか。甘利氏の後任として経済再生相に就いたのは石原氏だ。石原氏は幹事長、政調会長という党の重職を務めた一方、閣僚としては行革相、国土交通相、環境相などの経験しかない。経済担当閣僚としては未知数といっていい。これが3点目だ。2012年の自民党総裁選に立候補したときは、ロイター通信のインタビュー(http://jp.reuters.com/article/zhaesma-idJPTK089206420120911)に答えて「金融財政のスペシャリスト」と売り出したが「為替政策がデフレに一番効くことはだれもが分かっている」などと発言した。

■内閣改造も視野に入れている?

「為替政策がデフレに効く」などと言った時点でトンチンカンなのがバレバレだった。そもそも「為替政策」などという代物が本当にあると思っていたのだろうか。日本銀行が単独で為替市場に介入したところで、巨大なグローバル市場に実質的な影響を及ぼせないのは、スペシャリストであれば常識だ。

そんな石原氏が経済再生相に就任して、TPP交渉について実のある答弁ができないのは当然としても、経済財政諮問会議を取り仕切ってアベノミクスを推進する役割を果たせるだろうか。ここは不安材料である。それでも安倍首相が石原氏を起用したのは、政策面より政治的なサポートを期待したためだろう。

安倍首相と石原氏はかつて根本匠元復興相、塩崎恭久厚生労働相と4人の頭文字をとって「NAISの会」を結成していた。こちらも盟友の1人だ。7月には参院選、あるいは衆参ダブル選挙がある。安倍首相には、それまで国会をしのいで選挙に勝てば、いずれ内閣改造という判断があるかもしれない。いずれにせよ、ここは政権の正念場だ。

【私の論評】多くの政治家、マスコミの認識が及ばぬ成層圏で官邸VS財務省の熾烈な戦いは続く!

野党の大部分も、マスコミのほとんども、いや自民党の多くの議員もですらも、上記の長谷川氏の記事、字面は読めるかもしれないですが、その意味するところを正しく認識できないのではないかと思います。

日本の財務省は非常に特異な存在であり、本来政府の一下部機関に過ぎないにも関わらず、政治に深く関与し、日本の政治を自分たちの省益に沿った形で、誘導しているという事実を全く認識していないのではないかと思います。

なぜ、その時々の経済に全く関係なく、ブログ冒頭の記事で長谷川氏も指摘する"財務省は常に増税に賛成し、減税に反対する"のか全く理解できていないのではないかと思います。

その理由の最大であり、財務省の性ともいえるのは、財務省の高級官僚の天下り先の確保と、その天下り先を増やすことのみならず、天下り先の蓄財の最大化です。これによって、財務省を退官した後の高級官僚の天下り先で贅を凝らしたハッピーライフを確実なものにすることこそ、彼らの至上命題なのです。

実際、財務省は複雑な特別予算体系を創設し、維持し拡大するためにとにかく、増税することを至上命題として日々活動しています。

このブログでも何度か掲載したように、本来現状では増税する必要性など全くありません。過去に何度も掲載していることですが、直近で、そのことについて掲載し記事のリンクを以下に掲載します。
いまだはびこる国債暴落説と財務省の説明を妄信する人たち ―【私の論評】財政破綻などしないのは常識で理解できるのに、それができない馬鹿真面目共が多すぎ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、財務省が主張する増税すべきという主張の、論拠ともなっている、¥1,100兆ともいわれる、国(政府)の借金などは全くのまやかしであることを述べた部分を以下にコピペします。
 日本の現状をいえば、グロスの債務残高は1100兆円程度であるが、ネットでみれば500兆円で、GDP比で100%程度。さらに、日銀も含めた連結ベース(経済学でいえば統合政府ベース)の債務は200兆円、GDP比では40%程度である。この程度であれば、先進各国と比較しても、それほど悪い数字ではない。 
 ちなみに米国ではネットでみてGDP比80%程度、統合政府ベースでみれば65%程度。英国ではネットで見てGDP比80%程度、統合政府ベースで見て60%程度である。
ご存知のように、現状で米英が、増税するなどという話は全く聴いたことがありません。米英では全く増税の必要性など論じられていません。米英の政府が、増税せずにやっていけるのに、このように、ネットでみれば、米英よりも政府の借金が少ない日本でなぜ増税しなければならないのでしょうか。

それは、先ほども述べたように、財務高級官僚の天下り先の確保と、そこでのハッピーライフを確実なものにするためです。

実際、財務省は、増税などによって、蓄積した資金を特別会計に積み上げるとともに、天下り先でもある、外郭団体や事業体などに天文学的な数字の資金を貸し付けています。この貸付分や、特別会計も日本政府の資産です。そうして、この資産は、世界最大です。これほどの、金融資産を有する政府は世界広しといえども、日本以外にありません。

そうして、この資産をいわゆる借金から差し引き、日銀などとの連結決算をすれば、 日本政府の正味の借金は、200兆円程度であるということです。

これだけ書けば、財務省の特異性をご理解いただけたものと思います。

そうして、財務省の作文である「税と社会保障の一体改革」を根拠として、税の問題と社会保障を強引に結びつけ、増税の正当性を主張しています。確かに社会保障は、先立つものがなければできるものではありませんが、ないならないなりのやり方だってありますし、あればあったで、あるなりのやり方もできます。

はっきりいえば、もともと、「税」と「社会保障」とは別モノです。しかし、財務省はこれを強引に結びつけ、多くの政治家や、マスコミ、国民を幻惑して、自分たちが特別会計や外郭団体などに巨万の富を蓄財していることは、おくびにも出さず、社会保障費が増大していることを理由に増税の正当性を主張しているわけです。

このようなことは、多くの国民はなかなか知ることはできないですが、本来ならば政治家やマスコミなどは、本気で調べれば理解できる筋合いのものです。

しかし、財務省は従来から、様々なご説明資料と称する資料をもとに、政治家や、マスコミ、識者に至るまで、丁寧に自分たちの主張を説明してまわることと、結局自分たちが金を回しているということを背景に、徹底的に自分たちの主張を繰り返してきたため、多くの政治家や、マスコミなどがこれに幻惑されることになりました。

そうした中での、甘利大臣の献金疑惑事件が発生しました。甘利大臣は、大臣になるときに、上記のからくりなど、安倍総理や他のブレーンから聴いて良く理解していたと思います。

それを査証するような記事もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!~『朝ナマ』に出演して改めて感じた、日本の野党のお粗末さ―【私の論評】第二社会党の道を歩む民主に期待は無駄!本当は増税政党の自民も無理!期待できるのは今は次世代の党のみ!
増税派(財務省側)に堕ちた稲田朋美政調会著

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に甘利氏が財務省の本質を理解していたと思われる部分を以下にコピペします。
甘利氏「論理矛盾」×稲田氏「雨乞い」 財政再建で対立
2015年6月13日06時48分 朝日新聞デジタル
 政府の財政再建をめぐり、甘利明経済再生相と自民党稲田朋美政調会長の対立が12日、表面化した。経済成長による税収増を期待する甘利氏が、歳出額の数値目標を掲げない方向で議論を進めているなか、稲田氏が「2018年度に歳出額の目標設定を行う」との党方針を決定。甘利氏が「論理矛盾」と反発すれば、稲田氏は成長重視路線を「雨乞い」と批判し返した。 
 稲田氏が委員長を務める党財政再建に関する特命委員会はこの日、財政健全化策の最終報告案を決定。党は昨年12月の衆院選で「国・地方の基礎的財政収支(PB)を2020年度に黒字化」と公約しており、中間段階の18年度に歳出額の目標を設定することを明記した。社会保障費の伸びを「年5千億円程度」に抑える目標も掲げた。 
 政府が示す今後の経済成長率(名目3%、実質2%)については「楽観的」と指摘して、「経済成長だけではPB黒字化のめどが立たない」とした。 
 一方、甘利氏が担当相を務める政府の経済財政諮問会議が10日に示した2015年度「骨太の方針」の骨子案では、「18年度のPBの赤字を国内総生産(GDP)比で1%に抑える」としただけで、歳出の上限額は盛り込まれていない。安倍晋三首相が「経済再生なくして財政健全化はなし」という方針を示しており、歳出抑制よりも経済成長による税収増で財政健全化を目指しているためだ。 
 このため、甘利氏は12日の記者会見で党の方針について「(首相の考え方を)共有していながら、経済成長と無関係に歳出を縛るのは論理矛盾だ」と述べ、いら立ちを隠さなかった。 
 これを聞いた稲田氏は反発。「当てにならない(経済)成長を当てにして、雨乞いをしてPB黒字を達成させるとか、そういう話ではない」と語った。稲田氏は16日に首相あてに最終報告を提出するが、党方針が「骨太の方針」に反映されるかは不透明だ。(相原亮、鯨岡仁
この記事を読めば、稲田政調会長は完全に、財務省の手に堕ちたことが理解できますし、甘利氏はそうではなく、 「経済再生なくして財政健全化はなし」という官邸側の意思を強調しています。

実は、甘利氏は、TPPの交渉に当たる前、無論経済財政相になる前には、あまり経済、特にマクロ経済には疎いほうの方でした。しかし、経済財政相になり、TPP交渉にあたるようになってから、これがすっかり変わり、マクロ経済に関しては非常にまともな発言をされるようになりました。

私自身、甘利大臣とはフェイスブックでは友達にもなっているので、甘利大臣の変貌ぶりが、フエイスブックのコメントなどから手にとるように理解できましたので、大いに勇気づけられたものです。

甘利氏は、安倍総理大臣の期待に応えて、経済に関しても勉強され、必死に努力しTPPでも粘り強い交渉を実行されたのだと思います。

誠実な人柄の方ですから、大臣を辞任せざるをえなかったことは、さぞや無念なことであったことでしょう。

それにしても、ブログ冒頭の記事のように、今やマクロ経済通にもなった、甘利氏が大臣を辞任したこと、さらに、稲田朋美政調会長のような本来であれば、安倍総理の側近中の側近である人ですら、財務省の手に堕ちているわけですから、これは長谷川氏が主張するように、官邸側としては、ここは正念場だと思います。

後任の、石原氏は、ブログ冒頭の記事にもあるように、確かにマクロ経済音痴です。金融緩和をすると、インフレ傾向となり、円安傾向にはなります。しかし、その逆は真でありません。為替介入で円安になりインフレ傾向になるなどということはありません。

石原伸晃経済再生担当相
石原氏や、稲田氏ですら酷いマクロ音痴なのですから、自民党議員の中には酷いマクロ経済音痴も存在し、財務省の手に堕ちているものも大勢います。野党の議員などは、特に民主党は金子洋一参議院議員などの例外を除いて、マクロ経済と、財務省の本質を知る人はいません。マスコミもそうです。経済学者などの識者も多くが、財務省側に堕ちています。

そんな中、官邸は確かに難しい政権運営を迫られることになると思います。

石原氏には、経済財政相として、甘利氏が成し得たように、もっとマクロ経済に通暁して、財務省の本質を理解するよう努力していただきたいものです。

安倍晋三氏が、総理大臣になってから、今まで官邸と財務省は、ガチンコ勝負を三回実行しました。

それは、8%増税、10%増税延期、軽減税率です。簡単にいうと、8%増税は、財務省の圧勝でした。10%増税では、一昨年暮れに衆院の解散により、延期に成功した官邸の勝利です。軽減税率においては、官邸側が圧勝し、財務省が惨敗しました。

マクロ経済も熟知しない、財務省の本質も理解しない、マスコミや多くの政治家にとって官邸と、財務省の戦いは、地上にいる私達が成層圏で起きていることがわからないのと同じように、理解できないと思います。

成層圏からのスカイダイビング
実際、成層圏で戦闘機同士が戦闘をしていても、地上では認識できません。撃墜された戦闘機が墜落して地上に堕ちたときはじめてわかります。

官邸と財務省の戦いも似たようなものです。政治家もそれを認識できない人が多いです、マスコミも一切報道しません。ただし、政治家の発言や、マスコミが報道した内容などから、その戦いがあったことや、その勝敗がどうなったかは、十分に知ることができます。

今のところは、官邸側と、財務省側のどちらが優勢なのかまだはっきりしません。このブログでは、単にマスコミの報道や識者の発言を鵜呑みにしてことはありません。しかし、今年の参院選(場合によっては、衆参同時選挙)に向けて、両者の熾烈な戦いがすでに始まっていることは確かです。

これからも、成層圏での熾烈な戦いについて掲載していきます。

よろしくお願いします。

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2016年1月28日木曜日

手記出版「あの日」…小保方さんは何を語っているのか―【私の論評】小保方さんの手記ではみえないSTAP細胞問題の背後にある危機(゚д゚)!


2014年4月の会見時の小保方さん 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
突然の出版

講談社の社員も知らない極秘プロジェクトだったようだ。

2016年1月27日、STAP細胞事件の当事者である小保方晴子さんが手記を出版することが明らかになった。その名は「あの日」。

STAP細胞論文の記者会見から1月28日でちょうど2年。2014年4月の会見以来、公の場に姿を現すことなく、弁護士を通じたコメントなどでしか動向がわからなかった小保方さんが、その思いの丈を手記という形で世間に問う…

いったい何が書かれているのか。1月28日午前0時、電子書籍版を速攻でダウンロードし、読んでみた。

出版の意義

内容に触れる前に、手記が出版されること自体の意義について考えてみたい。

小保方さんはSTAP細胞事件で激しい批判にさらされた。いわば「炎上」した。もちろん、ご本人の行った研究者としての逸脱行為は問題だし、ペナルティを課されねばならない。しかし、これまで触れてきたように、研究不正は世界各地で起きており、小保方さんより悪質な例はいくらでもある。あそこまで叩かれる必要はない。

過剰なバッシングで失われた名誉を回復するために、本人が口を開くことは許されることだと思う。

また、研究不正の事例として、当事者の考えを知ることは重要だ。今後の教訓にもなる。ただし、正直に語ってくれることが必要条件となる。

始まりはハーバード

では早速手記の中身をみていこう。表現はやや拙い感じがしており、本人が書いた手記っぽい印象だ。たぶんゴーストライターは使っていないだろう。

手記は小保方さんの幼少時代から始まる。次第に科学に魅力を感じ、研究者を志す様子が描かれる。

そこまではどこにでもいる研究者だ。そんな小保方氏が、どうしてSTAP細胞論文を、世界有数の科学論文誌Natureに出すに至ったのか。きっかけはハーバード大学への留学だ。

留学中に与えられたテーマである、スポアライクステムセル(胞子様幹細胞)の性質を調べるうちに、キメラマウスの作成が必要となり、理化学研究所発生・再生医学総合研究センター(CDB)の若山照彦博士のもとで研究することになった。

小保方氏は、理研CDBで若山博士と共同研究するうちに、研究規模は次第に大きくなり、若山博士やその研究室のメンバーが加わり、総がかりで行われるようになった。一流論文誌に不採択となったことや、若山博士が山梨大学に移動になったことをきっかけに、笹井芳樹博士が論文執筆にかかわるようになり、丹羽仁史博士もアドバイザーとして関与するようになる。また、小保方氏も理研のユニットリーダーに採用される。そしてSTAP細胞論文発表につながる。

このあたりは報道もされたので、ご存じの方も多いだろう。

しかし、なぜ、STAP論文は撤回されることになったのか。

若山主犯説

小保方氏は、論文に問題があったことは認めているが、単なる勘違いだったと述べる。また、たしかに問題だったが、データはあるし、実験に問題はなかったとも言っている。

一方で、小保方氏は、ハーバード大学での研究以来、体細胞が多能性幹細胞になったマーカーであるOct4という遺伝子の発現という現象に注目しており(のちにSTAP現象と呼ばれる)、それを研究したかったが、あとから研究に加わった若山氏が、STAP幹細胞(増殖能を持つ)の作成にこだわったという。そして、STAP幹細胞を証明するキメラマウスの作成や胚の操作は若山博士や研究室の人たちが行い、自分が関与できなかったという。細胞の管理も小保方氏は行えなかったという。

だから、STAP細胞なるものがES細胞の混入であった点は、自分ではなく若山氏が関与したと述べる。また、研究者の多くがSTAP細胞の存在を疑うにいたった「TCR再構成」も、若山氏の細胞の管理の問題だと述べる。

若山氏が、研究データよりストーリーを重視し、仮説にあわないデータを意図的に除外するなど、逸脱行為をしている点を述べる。

しかし、STAP細胞の論文で挙げられた疑義は多岐にわたり、この本ではそのすべてに答えていない。

STAP細胞はあるのか

小保方氏は、狭い意味でのSTAP現象、つまり体細胞に刺激を与えてOct4の発現を蛍光発光で確認することはできたと述べ、それが200回STAP細胞を作ったという記者会見での発言につながったという。だから、いまでもSTAP細胞はあると考えている。多くの人たちが考えるSTAP細胞存在の定義より狭く考えているのだ。

検証実験に失敗したのも、検証実験にキメラマウスの作成が求められ、若山氏が関与した部分に手を出せなかったからという。

しかし、蛍光発光という現象を小保方氏が見たのは事実だろうが、検証実験や2015年のNature誌の論文で、Oct4の発現含めたSTAP現象が否定されているので、説得力はないように思う。

報道被害、バッシング被害

このように、言い訳に終始した感のある本書だが、冒頭に述べたように意義はある。それは報道、バッシングによる被害の様子がどんなものかを当事者の口から聞けるということだ。

生活に支障の出るほどの過剰な取材や、一方的なバッシングの渦中にある当事者が、どんなに大変なめにあうのか…確かに小保方氏は問題行為をしたが、ここまでひどい扱いを受けることはない。メディアに出演し、小保方氏を批判した私は、決して本人を貶めるようなつもりはなかったものの、バッシングに加担したことになるわけで、その点は申し訳なく思った。

この本から得られる教訓

この本から得られるものは、初動の重要さだ。

結局、理化学研究所が早々に論文の問題点を認め、証拠保全をし、研究不正の調査をしていたら、ここまで騒ぎにはならなかっただろう。笹井博士もなくなることはなかったかもしれない。本書の出版を含め、関係者がメディア上で意見を言い合うというのは、もはや科学ではない。

小保方氏が本書で自分に都合のよい主張を述べている点も含め、この本の出版は、科学コミュニティが研究不正に向き合わなかったことの報いなのだ。

【私の論評】小保方さんの手記ではみえないSTAP細胞問題の背後にある危機(゚д゚)!

今日は、甘利大臣の辞任という大きな出来事もありましたが、この件についてまだ私自身以前このブログに掲載した以上の情報は持ちあせていないことと、まだ考えが良くまとまっていないことなどから、本日はこの大きなニュースの影に隠れて、見逃されがちである、この小保方さんの記事をとりあげさせていただくことにしました。

小保方さんに対するマスコミの扱いなど、確かに榎木氏が語るように、不当なものだったと思います。

それに、この事件で主に責任をとったのが小保方さんのみであったということも今でも納得のいかないところがあります。STAP細胞に関しては、大きなプロジェクトで動いていたにもかかわらず小保方さんだけが責任をとり、後はほとんどお咎めなしというのが、なんというかあまりに典型的なトカゲの尻尾切りのようで、興ざめしてしまいます。

まともに考えれば、小保方さんがSTAP細胞を自分自身で作成できたと勘違いしていたとしても、小保方さんだけの責任とされるのは、筋が通りません。

何もかも小保方さん一人の責任なのか?
研究所で、誰かが何かを発見したとして、まずはその発見の真偽の本人以外の人間が確かめるというのが、筋であり、たとえそれが滅多にできないものであったにしても、確かめて間違いないと判断できたものは発表すれば良いし、そうでなければ、発表しなければ良いだけの話だと思います。

また、発表したにしても、それが間違いかもしれないとわかった後の理研の対応も悪すぎです。それにマスコミも問題だったと思います。理研は事態が拡大する前に、速やかにリスク管理をすべきだったと思います。理研の対応は、臭いものに蓋をするようなものに終始していたと思います。マスコミもこの出来事の背景について、科学的な観点のみならず、他の観点においても、全く視野の狭い報道しかしていませんでした。

それに、STAP細胞に関しては、小保方さんのやり方ではないものの、米国の学者が別の方法で、存在を確かめたという事実もあり、それは以前このブログにも掲載しました。

その記事の、リンクを以下に掲載します。
小保方さんの発見は真実!ネイチャーにマウスの体細胞が初期化して多能性を持つ「STAP現象」がアメリカの研究者により発表される―【私の論評】日本のマスコミや識者もSTAP細胞騒動を二度と繰り返すな(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、少なくともSTAP現象はこの世に存在することは、アメリカの学者らの研究で、証明されたといえそうです。この研究が、推進され、STAP細胞が作り出されることもあり得ると思います。

この記事では科学誌『ネイチャー』の運営するオンライン電子ジャーナル「Scientific Reports11月27日付テキサス大学医学部ヒューストン校やピッツバーグ大学医学部の研究者たちが発表した'Characterization of an Injury Induced Population of Muscle-Derived Stem Cell-Like Cells損傷誘導性の筋肉由来幹細胞様細胞群という論文に関して掲載しました

しかし、この論文で小保方さんが発見したというSTAP細胞の存在が証明されたわけではありません。しかしその一方で、研究者らは「マウスから採取した筋肉の細胞に刺激を与えた(損傷させた)ところ、(ES細胞やiPS細胞のようにさまざまな細胞になることができる)幹細胞に"似た"細胞ができた」ということを発表、これを「iMuSCs細胞」と名づけているのです。

確かに、手法や結果は小保方さんのSTAP細胞とはまったく異なりますが、複雑な工程を経ることなく幹細胞(万能細胞)に近い性質を持つ細胞を生み出したという点に着目すれば、今回の研究の方向性が、少なくとも小保方さんのSTAP細胞と同じ目標を見据えたものであるという点だけは間違いないでしょう。

そうして、ES細胞やiPS細胞ではない幹細胞(万能細胞)に近い存在『iMuSCs細胞』が見つかったことは確かです。そうして、STAP細胞のような簡単な手法で万能細胞ができる可能性について、世界の科学界ではあって当然のものとして誰もが認めています。まさに基本中の基本であり、それを誰が最初に見つけるかあるいは、その利権を我が物にしようと激烈に争っているのです。

理研は、小保方さんが生成したSTAP細胞について、研究室の冷蔵庫にあったES細胞の混入が原因だったと結論づけています。しかし、実際にSTAP現象が起こることが、他の方法で確かめられた以上、小保方さんが提示した実験手順で、新しい万能細胞が生まれていたかもしれない可能性はまだ捨てきれません。

現在、日本ではSTAP細胞=ウソ、いかがわしいものの代名詞のような扱いを受けています。しかし、複雑な手順を経ることなく万能細胞を生み出そうとするSTAP細胞と同様のコンセプトを掲げ、世界中の科学者たちが日夜熾烈な競争を繰り広げており、小保方さんもその渦中にあったことだけは間違いないです。

今や世界の先進国で日本だけが、STAP細胞まがい物という、世論が形成されている稀有な国と言っても過言ではないと思います。


日夜熾烈な競争というと、化学や物理学等の他の分野もそうなのですが、それにしても、これらの学問の歴史は古いので現状ではある程度落ち着いたという感がありますが、生物学の分野は裾野も広く、ここ数十年で長足の発展をとげ、それこそ最先端の分野では、激烈な競争が繰り広げられています。

その激烈な競争の一端を知ることができるあのiPS細胞の生みの親である、山中教授の発言もあります。

京都大学の山中伸弥教授が応じた『週刊朝日』のインタビューでは、この構造が「仁義なき戦い」と形容され、山中氏自らこう語っています。

「簡単に言いますと、ヒトのiPS細胞は自分たちのほうが先に作っていたんや、とアメリカのベンチャー企業が主張しました。同社の特許の請求内容を見たら、京大が先に出願していた請求内容とほとんど違わない。もう完全に戦争するつもりできているわけですね」(『週刊朝日』、2014年11月7日号)

山中教授がiPS細胞を発表したほぼ同時期に、アメリカのベンチャー企業が、同じ内容の論文を発表しています。これはつまり、アメリカが京都大学のデータを盗んでいたということを意味します。この時に京都大学がとった措置は、アメリカで裁判を起こすと不利になるため、アメリカでの特許権を放棄する代わりに、アジア・ヨーロッパで認めてもらうように図らうことでした。

山中伸弥教授 iPS細胞の世界で熾烈な理研争いが・・・・
これと同じように、STAP細胞に関しては、最先端の熾烈な研究活動だけではなく、利権を巡る熾烈な戦いもすでに始まっていたということです。

おそらく、世界的な医療分野の巨大企業は、かなりの投資をして、この分野の利権を得ようと血眼になっています。

理研も当然そのことは、承知しており、その渦中に小保方さんのSTAP細胞の研究があったということです。

そうして、アメリカの巨大企業は、何が何でも、ありとあらゆる手段で、STAP細胞の利権の先陣争いに勝とうと画策しているのは間違いありません。

こうした画策に関しては、研究者は無防備です。小保方さんも、無防備だったと思います。無論研究者はそれで良いと思います。研究者は、研究することが本分であって、リスク管理などに気をまわしていれば、研究がおろそかになります。

それに、リスク管理の対象になる人々が、リスク管理をするというのでは、監査役が会社の事業をしているようなもので、そもそも管理などできません。

しかし、理研を管理する人や、国がそうであってはいけないはずです。

このことに関連する動画を以下に掲載します。



この動画の会話を以下に掲載します。
クライン孝子:理研も小保方さんも犠牲になったように感じた。調べてみたら理研の平成24年度の内訳には予算が844億円、正社員が3000人くらいいる、外部から出入りするのが3000人くらい。外人のところを見てぎょっとした。636人中、中国が141人、韓国が88人、東南アジアは131人、欧州は192人、北米が60名。3分の1が中国韓国。 
水島:外国との交流は科学はありますけれど、中国や韓国とはやる必要はないと思います。 
クライン孝子:やるんならば日本も諜報機関を作らなければ、やられ損じゃない。 
水島:この問題の本質はスタップ細胞が本当かどうかこれにかかっているだけです。これがあるとしたら大変なことです。人類史上の大変革ですから、何百兆、製薬会社から。 
クライン孝子:だから全部狙っているんでしょう。いろんなところで開発しようとしている。日本はかなりいい線いっているところを、日本の開発を止めさせようとしているのは見え見えだね。 
水島:仰る通りで、論文の撤回などとんでもない話で、まずやることは全力を挙げてスタップ細胞が本当かどうか、存在があるのかどうかをまずはやってから小保方女史のミスとかをやればいい。日本のマスコミはその手先になって、自分たちは正義のつもりでやっている。 
水島:今回のスタップ細胞もハーバードのバカンティーという人が加わったり、リニアモーターカーを安倍さんが、開発に1兆円くらいかけているものをアメリカの鉄道に売るというけれども、結局無償で技術を提供してしまう、アメリカは死に物狂いで生き残りをやっています。日本は所詮属国なんです。 
クライン孝子:属国にしてしまった日本人が悪い。理研も外国人の研究員や教授を呼んで、中国と韓国人で3分の1を占めて、本当に丸裸にされてきた。それに気がついていない。今になってこういう問題が出てくるのは当たり前だし、上の方は責任逃れだし。どうにもならない。
上の動画で、水島氏がSTAP細胞の本当かどうかだけが、この問題の本質のような話をしていますが、それは間違いだと思います。それよりも、理研にこれだけの数の外国人が存在するということのほうが余程重要問題であり、これは理研のリスク管理体制が脆弱であることを示していると思います。

理化学研究所は1917年(大正6年)に財団法人として創設されました。戦後、株式会社科学研究所、特殊法人時代を経て、2003年(平成15年)10月に文部科学省所轄の独立行政法人理化学研究所として再発足し、2015年(平成27年)4月には国立研究開発法人理化学研究所になりました。

理化学研究所は従来も準国立の機関のようなものでしたが、今では完璧に国の機関です。大学や、民間の研究機関などとは異なります。

学問の自由な発展のためには、外国人の研究者も招き入れるなどのことも必要だと思います。しかし、理研は、国の機関ということから、そうではあってはいけないと思います。

無論外国人を一人も入れるなというような極論を言うつもりはありません。しかし、中韓はよほどのことがない限り、入れるべきではありません。研究内容が盗まれるだけです。他の外国人も、かなり厳しい身辺調査なども含む厳しい選別をして入れるべきです。

このこと、一つとっても、理研はリスク管理体制がほとんどできていないのだと思います。これでは、秘密も何もあったものではありません。

この状況では、極端なことをいえば、アメリカの巨大企業の息のかかった研究者が、密かにSTAP細胞とされるものをすり替えた可能性も絶対にないと否定しきれないのではないかと思います。アメリカのスパイなど、このようなことはかなりの訓練を受けて、簡単に実行できると思います。

それだけではありません。小保方さんの実験内容なども、参考のために盗まれているかもしれません。いや、それどころか、日本にSTAP細胞で先を越されないために、STAP問題を単なる倫理問題にすり替えて、日本のSTAP細胞開発の芽を摘むという企みを画策して実行したかもしれません。資金が潤沢な巨大企業なら、そんなことも可能です。もし、そうだとしたら、海の向こうで誰かが大声で高笑いしているかもしれません。

一昨年 理研にタクシーで出勤した際の小保方さん
性善説に立脚していては、日本の知的財産を守ることはできません。日本のSTAP細胞に関する識者の論評やマスコミの報道は、この観点を全く欠いた軽薄なお花畑的なものがほとんどです。

ブログ冒頭の記事も、全くそうだと思います。結局のところ、問題の本質を見ることなく、小保方さん、マスコミ、理研の倫理的な問題にすり替えているだけです。そうして、研究者であった小保方さんに問題の本質を解明することを期待するのも間違いです。

結局、小保方さんも理研の幹部なども、そうして文部省も司法で裁かれるといことはありませんでした。もしそうなれば、理研のリスク管理体制の甘さがクローズアップされたかもしれません。さらに、外国勢力の危険性も検討されたかもしれません。

しかし結局、この問題は、単なる小保方さん個人の倫理的な問題にすり替えられてしまったようです。問題を倫理の問題にすり替えてしまえば、対策をするといっても個々人の善意にゆだねるだけになり、問題の本質はいつまでたっても見えないことになります。

やはり、理研の幹部や、理研を監督する文部科学省がまともなリスク管理体制を築くべきです。特に、この件に関して文部科学省の責任が問われないことは、重大問題です。

このSTAP細胞問題の本質は、理研のリスク管理体制の甘さに起因しているものであり、それがたまたま今回表面にでできたものだと思います。リスク管理体制がまともであれば、このような問題は最初から起こらなかったし、起こったにしても、早期に収拾できたものと思います。

それに、小保方さんも、あそこまでバッシングされることもなかったと思います。研究活動も人間のやることです。そこには、思い込み、間違いなどがつきものです。このような間違いを犯す事自体は、犯罪でも何でもありません。

エジソンも失敗は、発明の母という趣旨で自分の失敗の数々を語っています。数えきれない様々な間違いを経た上で、大発見や大発明があるのです。だから、小保方さんが誤りを犯したかもしれないとしても、それ自体は何の問題もなかったはずです。

そんなことよりも、その誤りかもしれない事柄を発表し、誤りかもしれないと指摘されたときに、理研が何をどうするのか、危機に陥ったときに何の手順もなく混乱してしまい、狼狽え、それをマスコミが正義の味方のように倫理問題として糾弾し、小保方悪、STAP細胞は紛い物という空気をつくりあげ、結局何もかも小保方さんの倫理の問題にしてしまったことが重大な問題です。

実際、ブログ冒頭の記事を書いた、榎木英介氏による、以下のような記事もあります。
やっぱり小保方さんなんてかわいいほうだった~2015年も多発した研究不正事件

世界では、小保方さんなど霞んでしまうような、とんでもない研究不正事件が数多く起こっています。

こういうことことからも、やはり理研のリスク管理体制の甘さが是正されないかぎり、この種の問題は解消されません。文部科学省など、これを放置しておけば、また似たような事件に悩まされることになるでしょう。

もし、今回の問題に世界の大企業などが関係していたとしたら、彼らはまた、日本に先を越されないため、手を変え品を変え、日本の最先端技術等の芽をつむため暗躍を続けるかもしれません。
良き意図だけでは、世の中は変えられません。成果も挙げられません。誤りや、間違いを許容しない社会は発展しません。それは、硬直した官僚主義的な社会を生み出すのみです。

倫理的に物事を考えるということは、決して悪いこととはいいません。しかし、それにしても倫理的側面だけで、物事を見て判断して、人を糾弾するということは、最近の日本の社会でよく見られることです。こんなことを繰り返していては、日本における政治、マスコミ、学問や、マネジメントなどのあり方も劣化するだけです。

そうして以上に述べたようなことは、STAP細胞問題の当事者である、小保方さんや理研の研究員などにはなかなか見えないことです。そもそも、研究員が研究をしないで、そのようなことに気を使うべきではなく、ここはやはり、理研をマネジメントする人々や、文部科学省の責任です。

今回の事件ではこのことが、全く追求されもせず、問題にされません。これでは、日本は海外勢力から無防備であるとの謗りを受けても致し方無いと思います。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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