2021年8月31日火曜日

中国の空母戦力が抱えるミサイルへの脆弱性―【私の論評】海戦で圧倒的に有利な日米は、 中国の空母開発を大歓迎(゚д゚)!

中国の空母戦力が抱えるミサイルへの脆弱性

岡崎研究所


 フィナンシャル・タイムズ紙のカトリーン・ヒル中華圏特派員が、8月17日付け同紙掲載の論評‘China’s focus on giant aircraft carriers makes it vulnerable to missile threat’で、中国が増強する空母戦力について、地勢的に宮古海峡やバシー海峡を通過して太平洋に出る必要があり、その際必ず地上配備のミサイルの射程に入るので脆弱である、と指摘している。

 ヒルの議論は合理的と思われる。しかし、中国は空母群の建造を悲願とし、それに力を入れており、潜在的に彼我の軍事バランスに影響を与える可能性もあるので、注意深く見ていく必要があることは言うまでもない。

 空母戦力が抱える脆弱性という中国の状況は、ここ数年ミシェル・フロノイ(元国防次官)などの米専門家が米国の空母等巨艦中心主義が中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略により脆弱になっている警鐘を鳴らしていることの丁度裏返しとなっており、興味深い。米国は、この非対称の問題を是正すべく、ドローンなど精密兵器の開発、配備に乗り出している。

 これまでに中国は2隻の空母を就役させている。ウクライナのバリヤアーグを購入、再建造した2012年9月の「遼寧」、最初の国産で「遼寧」の改良型となる19年12月の「山東」である。基地は青島と海南島の三亜である。30年頃までには4隻を保有する可能性が指摘されている。空母は、運用上最低4隻が必要と言われる。

 4隻目は原子力推進になるとの見方もあるが、そのためには相当の技術力が必要とされるようだ。またカタパルト(発艦方式)の開発も注目されており、3隻目は電磁式を採用すると見られている。なお、電磁式カタパルトの技術については、中国系米国人エンジニアが米国から持ち出したとして米国で起訴され、有罪になった。

 中国の空母能力が実際に大きな力を持つためには、まだ種々の問題を克服する必要があるように思える。空母が実際に作戦に出る場合、艦載機の他、警戒機、駆逐艦、潜水艦等で構成される空母艦隊が必要となる。そうでなければ裸の巨艦になる。今太平洋に入っている英国のクイーン・エリザベスも艦隊を組んできており、先日その一部を構成する潜水艦が韓国釜山に入港したと見られている。

 中国の空母が真に力を持つためには、これらの構成要素が全て高い能力で揃わねばならない。遠方で作戦する場合には、更に補給・保守サービスなどの基地やネットワークも必要となる。それには外交努力や保守能力の確保等が重要となる。簡単なことではない。中国は現在ジブチに基地を有しているが、パキスタンのグワダル港やスリランカのハンバントタ港も狙っているといわれる。

 米国は空母等の運用に必要な世界的同盟網、相互支援網を持っているが、中国はそれを欠いている。中国の空母が世界的な作戦をできる体制には未だ程遠い。しかし、今後そのようなネットワークを構築するかもしれない。注意すべきであろう。

 中国が何のために空母保有を追求するのか、そのドクトリン、シナリオは未だ判然としない。大国としてのステータス、国威発揚が目的かもしれない。中国の戦略家は、「今や中国は大国になったから、大国の役割を果たせねばならない。大きな軍事力も持たねばならない」という趣旨のことをよく言う。

【私の論評】海戦で圧倒的に有利な日米は、
中国の空母開発を大歓迎(゚д゚)!

このブログでは、以前から空母をはじめとする海上に浮かぶ艦艇は、もはや海上戦力ではないことを述べてきました。その代表的な記事のリンクを以下に掲載します。
中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」―【私の論評】対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって、日米豪印「クワッド」はすでに脅威(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
現在、世界各国が持っている海軍の船は、実は2種類しかありません。1つは空母などの水上艦艇、もう1つが潜水艦です。水上艦艇はすべて、いざ戦争が起こったら、ターゲットでしかありません。

船が浮かんでいる時点で、レーダーなどで、どこで動いているのか存在がわかってしまいます。そこを対艦ミサイルなどで撃たれてしまったら、空母だろうと何であろうと1発で撃沈です。しかし、潜水艦はなかなか見つからないので、その意味では現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力なのです。
現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力
そういう観点から見ると、中国はたくさんの水上艦艇を所有していますが、潜水艦そのもや対潜戦闘などの能力、水面より下の戦力は弱いです。一方日米は、水面より下の戦力においては圧倒的に強いです。

サイズ的には中国海軍は、数も多いし脅威ではありますが、実際の戦闘態勢になったら、水中の戦力は日米のほうが圧倒的です。海戦ということになると、中国は日本単独と戦っても負け戦になってしまいます。

特に、日米が協同した場合、海戦においては世界最強です。日本の通常型潜水艦は、静寂性(ステルス性)に優れており、中国にはこれを発見することはできません。一方米国の原潜(米国製通常型潜水艦は製造されていない)は、攻撃型も戦略型も攻撃力は世界一です。

日米潜水艦隊が協同して、日本の潜水艦隊が情報収集にあたり、米原潜が攻撃をするなど双方の長所を生かした役割分担をした場合、これに勝てる海軍はありません。ロシアは無論のこと中国でも海戦では全く歯がたちません。

このような中国がなぜ空母を持つのでしょうか。そのヒントになりそうなことが、中国メディアの騰訊に今年の3月に掲載されていました。

記事はまず、海軍強国はどこも空母を保有しているという共通点があると指摘し、空母はその国の総合的な実力を測る良い指標となっていると主張。世界最強の海軍を持つ米国は11隻もの空母を運用していて、新たな空母も開発中だと伝えました。

続けて、空母の分野では米国が「圧倒的な発言権」を持っているのですが、実は日本も「空母を7隻保有している」と主張。これは、いずも型護衛艦2隻とひゅうが型護衛艦2隻、それにおおすみ型輸送艦の3隻を指しているようです。

ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」

これらは護衛艦という名前がついていることからも分かるとおり空母でないのは明白ですが、いずも型護衛艦を空母に改修することが決定していることから、「日本はその気になれば護衛艦を空母に改修したり、空母そのものを建造することが可能」と主張しているのでしょう。

さらに記事は「米国は、日本が目の前で7隻もの空母を造るとは思いもしなかったはずだ」と主張し、「このことから日本の野心がいかに大きいかがよく分かる」としています。ほかにも、日本は原子力発電に力を入れており、核兵器の分野で一定の成功を収めればいつでも核による反撃ができることになると分析。

「そうなったら隣国だけでなく、世界中の多くの国が大きな被害を受けることになる」と最大限の警戒を示して記事を結びました。どうやら中国は日本の防衛力とその潜在力を警戒しているようです。

この記事からもわかるように、まずは中国は世界から海軍強国であるとみられたいと考えているようです。

日本が7隻の潜在的な空母を持っていることや、潜在的な核保有国であることに非常に脅威を感じているようです。

こうした脅威をはねのけたいという願望もあるようです。だからこそ、空母を持ちたがるのでしょう。

空母は、日米などをはじめとする先進国や中国のようにある程度大きな軍事力を持つ国にとっては、もはや大きな標的にすぎず、海上戦力ではありません。

昭和17年1月の空母「瑞鶴」飛行甲板後方

では、米海軍をはじめ空母を所有する国々は、なぜそれを所有し続けるのでしょうか。

それは、まず第一に先程述べたように、中国もそう考えているように、「海軍強国はどこも空母を保有している」という根強いイメージがあるからでしょう。

次に、対艦ミサイルや潜水艦などを持ち、ある程度の軍事力のある国はではない国々とっては、未だに空母は大きな脅威です。よほど内陸の国で無い限り、空母により世界中のいかなる国にでも、戦闘機や爆撃機を送り込むことができます。

また、ある程度軍事力のある国でも、制空権・制海権を奪われた後には、空母は依然として脅威です。

現在の空母の現実的な使い方としては、軍事力の劣る国を短期間に制圧するとか、軍事力のある国に対しては、ミサイルや魚雷で制空権・制海権を奪った後の最後の仕上げを素早く行うことでしょう。軍事力のある国に対して、初戦で空母を用いるのは、相手に大きな標的を与えるだけのことになり、愚の骨頂といえます。

日米は、強力な対潜哨戒能力を持っているので、中国の空母は脅威ではありません。日本は、ステルス性に優れた潜水艦隊を、米国はステルス性にはおとるものの、驚異的な戦闘力を持つ原子力潜水艦隊を持っているので、海戦においては中国に対しては、圧倒的に有利です。

中国海軍は、米軍にはとうてい及ばないし、日本単独でも海戦では、勝ち目はありません。

日米にとっては、中国が空母を開発することには大歓迎でしょう。何しろ、海戦では全く役にたたない空母に中国が巨額の投資をするわけですから、その他の部分がおろそかになるわけですから、大歓迎です。

潜水艦や、対潜哨戒能力をあげることに投資するのではなく、空母に投資すれば中国は今の状況から抜け出せず、海戦においては日米に水を開けられたままの状態になるでしょう。

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2021年8月30日月曜日

自民党総裁選「大ピンチ」の菅首相に残された「勝算」はコロナ対策にある―【私の論評】自民党政権は、コロナ感染症に負けない強靭な社会の構築を目指さなければ、2009年のように政権交代を許してしまいかねない(゚д゚)!

自民党総裁選「大ピンチ」の菅首相に残された「勝算」はコロナ対策にある

行動制限「一本槍」はもうやめるべき

 第5波にはピークアウトの兆候

8月24日から、東京2020パラリンピックが始まった。その一方で、国内では政局がすでに動き始めている。これから自民党総裁選、そして衆院選挙を迎えることになる。自民総裁選は、9月17日告示、29日投開票だ。 

菅政権支持率は新型コロナの感染状況と見事に逆相関になっているので、調査によっては危険域といわれる30%を割り込んでいる。


 今後の政局を占う上でも、今後の新型コロナの感染状況を見てみよう。

 まず、全国の先行指標とも言える東京都では、第5波は既にピークアウトした可能性がある。日々の新規感染者だけではなく、その一週間前との差をみると、下表になる。


日々の新規感染者の増加は明らかに鈍化している。上表をみると、ピークは8月18日前後である。 

この分析は、一般的に統計学で用いられるが、最近話題の「再生産数」と基本的には同様のものだ。もちろん、これらの数字は単に過去を反映したものであり、将来について断言はできないが。

 マスコミも煽れなくなっていく

検査の陽性率も低下している。そのピークは8月15日前後だ。過去のデータを見ると、陽性率と新規感染者数にはかなりの相関関係がある。 


最近の陽性率の低下も、第5波のピークアウトの可能性を示唆している。

全国の新規感染者数のデータでも、東京都と似たような傾向が出てきている。ピークは、東京より一週間程度遅れの8月26日前後の可能性もなくはない。 


こうなると、さすがにマスコミが煽りたくても、「新型コロナ感染者数が過去最高」という常套句が使えなくなる。そこで、重症者数が過去最高と最近は言うようになった。 

しかし、重症者数は感染者数の遅行指標であり、だいたい2週間程度遅れる。なると、東京において重症者数が過去最高と言えるのは、あと1週間程度ではないかと筆者は予測している。

 全国の数字では、やはり遅効性のある東京以外で新規感染者数過去最高というだろう。そのうち、○○県では重症者数過去最高というだろう。

 ここで、ちょっと大胆な推計をしてみよう。もちろん、でている数字よりもかなりの幅をもってみてほしい。

 各地の緊急事態宣言は9月12日まで行われる予定だ。そのときには、東京都の新規感染者数は。500~1500人程度になっている可能性がある。東京都に今回の緊急事態宣言が出された7月12日と同じか、若干多い程度だ。それで、緊急事態宣言の解除となるかどうか。

 菅陣営にも勝算がある理由

東京都の新規感染者数について、自民党総裁選の告示日である9月17日には1000人を割り込み、投開票日の29日には500人程度になる可能性がある。前例で言えば、緊急事態宣言解除の目安になる数字だ。

 全国については、17日には10000~15000人程度、29日は2500~5000人程度になるかもしれない。 

この大胆な推計は、今では苦戦が強いられている菅陣営にも勝算があることを意味している。菅政権の支持率は、新型コロナの感染者数と逆相関である。であれば、新型コロナの感染が収まるにつれて、菅政権の支持率は高まる可能性があるからだ。

 新規感染者数は、新型コロナ対策としてはあまり意味がないが、政治的にはまだ意味がある。いずれにせよ、自民党総裁選でも、新型コロナ対策がカギにならざるを得ないだろう。


 自民党総裁選で、是非論点にしてもらいたいのが、憲法改正だ。新型コロナ対策で明らかになったのは、憲法改正してこなかった日本ではまともな有事対応ができないことだ。

 新型コロナ感染者の増加を受けて、全国知事会がロックダウン(都市封鎖)のような強い措置を検討すべきと政府に要望している。政府分科会も同じように要望している。現状の緊急事態宣言とロックダウンは違うのか、日本の現在の法律でどこまで可能なのか。

 1年半前海外からの新規株が流入しているときも、どうして入管で入国拒否できないのか、一定期間隔離できないのか、と疑問があった。そのときからの話が1年半ぶりにぶり返した。

 ロックダウンは一般人に対する罰則つきの行動規制(移動制限)があるが、現状の緊急事態宣言では一般人に対する行動規制は、罰則がなくお願い、自粛要請でしかない。

 行動制限「一本槍」に意味はあるのか

なぜ日本では罰則つき移動規制でなく自粛なのか。それは移動の自由は基本的人権として憲法22条で認められているが、その制限には公共の福祉では不十分で、緊急事態条項などの憲法上の規定が必要だからだ。先進国では緊急事態条項があるが、日本では憲法改正しなかったのでその条項はない。日本でロックダウンが行えない理由だ。

 もっとも、今の日本の憲法でも、私権制限がまったくできないわけではない。憲法の中の公共の福祉を活用して一部の私権制限は可能だ。

 日本の場合、飲食店などの一部業界については、限定的な規制ができる。筆者は、一般人に対する行動制限は憲法改正しないと厳しいと思うが、一部の免許業種では、公共の福祉による限定的な制限ができると考える。

 それは、免許条件で付せばいい。免許業種はしばしば「お上」に従うが、それは免許条件に反し免許を剥奪されると困るからだ。筆者も役人時代、法律に書き込めないものは、免許条件で対応した経験がある。

 全国知事会や政府分科会は、まず一般人の移動規制をいっているようだが、それは憲法上のハードルが高い。もちろん憲法改正も議論すべきであるが、より即効性があるのは免許業種に対する行動規制だ。

 特に、医療従事者には、医師法が適用できるのだから、免許条件で緊急時に政府や各都道府県知事の指揮命令に従うことを検討してもいい。

 さらに、今の新型コロナ対策での感染抑制一本槍も改めるべきだ。

 結局この1年半で医療体制は強化されたのか

今回、バッハ会長が再来日したが、それについても批判が出ている。

 25日午前の衆院厚生労働委員会での、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の発言が典型だ。

 立憲民主党の尾辻かな子氏からの質問に西村氏が答える際に、尾辻氏は「バッハ会長が、人々にテレワークを要請してる時に、また来るんです。バッハ会長の挨拶が必要なら、なぜ、オンラインでできないのか」と疑問視。「国民に(不要不急の外出の自粛を)お願いしてるんだったら、オリンピックの会長、なんでわざわざ来るのか」と批判した。

 25日午後の衆院議院運営委員会でも、西村康稔経済担当相も、「国民感情に配慮すべき」と尾身氏と同様で、感情的な発言をしている。

 バッハ会長は既にワクチンを2回接種している。もちろん、ワクチン接種者でも感染リスクはあるが、未接種者と比べるとはるかに低い。世界中の国で、海外渡航用のワクチンパスポートを導入している。日本も7月末から導入した。

 さらに、公共施設や飲食店入店において、ワクチン接種済み証の提示を求める動きも世界に広がっている。つまり、ワクチン接種者は、世界ではどこでも行動は原則として自由になっている。しかし、日本ではワクチン接種済み者の入国でも一定の制限を課している。 

尾身会長は、ここ1年半くらい感染者の拡大を防ぐために行動制限一本槍だった。1年以上前から、医療体制強化のための緊急包括支援交付金や新型コロナ患者入院確保のための緊急支援事業などにより予算は確保されていたが、未消化であったり、補助金を受けていても実際に患者受け入れを怠るなど、医療の供給体制は強化されていない。

 合理的に考え、社会を回していくべき

この点について、尾身会長は1年以上前には何ら発言をしてこなかったのに、今頃になって「臨時のプレハブ施設でもいい」といっているのはかなり無責任だ。

日本でもワクチン接種はかなり進んでいる。27日時点で、少なくとも1回接種は国民の55%、2回接種も44%になっている。

となると、政府、尾身会長もワクチン接種者をどのように社会の中で活用すべきかを考えたほうがいい。民間のソフトバンクは、プロ野球でワクチン2回接種者にチケット販売すると発表した。 

ワクチン接種者のバッハ会長に、挨拶をオンラインでして、来日するなと言うのは、まるでバッハ会長をウイルス感染者であるかのような言い方だ。 

ワクチン接種者と未接種者を同一視し感情的に反応するよりも、(差別ではなく)区別して合理的に考え、社会を回すことを考えたらどうか。

【私の論評】自民党政権は、コロナ感染症に負けない強靭な社会の構築を目指さなければ、2009年のように政権交代を許してしまいかねない(゚д゚)!

上の記事で、ワクチン接種者と未接種者を同一視し感情的に反応するよりも、(差別ではなく)区別して合理的に考え、社会を回すことを考えたらどうかという主張は正しいと思います。

そうして、その行き着く先は、先日もこのブログで述べたように、コロナ感染症に負けない強靭な社会を構築することです。多少感染者が増えたにしても、重症者、死者を増やすことなく、自粛などもしないですむ社会を構築することです。

それについては、以前このブログでも述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
札幌で抗体カクテル療法開始 臨時診療所も1日から投薬 感染妊婦8カ所で入院可―【私の論評】抗体カクテル療法の先にあるのは、コロナに負けない強靭な社会を構築すること(゚д゚)!
新型コロナウイルスの構造

詳細は、この記事をご覧いただくものして、この記事では、新型コロナをインフルエンザと同じように扱えるようにすべきことを主張しました。そのためには、現在重症化リスクのある患者に限って適用できる、抗体カクテル療法などを、医師の判断によって、抗インフルエンザ薬のように用いることができるようにすべきことを述べました。

そうなれば、コロナウィルスを撲滅することには長い時間がかかるかもしれないし、場合によっては、永遠に撲滅はできないかもしれませんが、それでも感染症で多くの人が重症化し亡くなることの無い、社会経済活動を制限しなくてもすむ強靭な社会を構築できるようになります。

まさしく、このようにして、日本社会をコロナ感染症に負けない社会を構築すべきなのです。この方向に菅政権が舵を切り、さらにコロナで痛めつけられた、経済をいちはやく回復させるために、効果のある財政出動ならびに大規模な金融緩和を行うべきなのです。

これは、英米などではすでにその方向に向けて動きだしています。シンガポールもその方向に向けて動いています。

日本だけが、行動制限「一本槍」に固執していれば、とんでもないことになります。感染症ではないですが、これに似たようなことは以前にもありました。

それは、リーマンショックです。リーマンショック(2008年)の原因はいうまてもなくサププライムローン問題ですが、日本はその頃はデフレ真っ只中で、日本の証券会社などには、サブプライムローンなどに手を出すような余力はありませんでした。

ですから、本来日本はリーマンショックなどで悪影響など受けるはずはなかったのです。しかし、現実には大きな悪影響を受けました。

それは、何に原因があったかといえば、当時の日本は日本経済がどうであろうと、とにかく増税などの緊縮財政を続けたことと、日銀は、金融引締策を実行したことに原因がありました。

リーマンショックで直接悪影響を被った国々が、大規模な金融緩和、財政出動を行ったにもかかわらず、日本では日銀は金融引締、財務省は緊縮財政をつづけたわけですから、日本はより深刻なデフレ・円高に見舞われたのは当然のことでした。

このような有様でしたから、本来日本はリーマンショックなどとは無縁だったにもかかわらず、リーマンショックの直撃を受けた多くの国々がいちはやく経済を回復させたにもかかわらず、日本は長期にわたって回復せずに、一人負けの状態となりました。

今回のコロナ対策でも同じことです。他国か、コロナに負けない強靭な社会を目指し、経済対策も、大規模な金融緩和、財政出動を行っているときに、日本だけが、それを行わず、行動制限「一本槍」に固執しつづければ、リーマンショックの再現になります。

他国は、コロナに負けない強靭な社会を構築し、経済も素早く回復するなか、日本だけが税字訳な社会の経済も回復せずとんでもないことになってしまいます。

それを回避するためにも、菅政権はコロナに負けない強靭な社会の構築を目指すことと、物価目標2%を達成するまでは、実効性のある財政政策を重視することとを宣言し、実行すべきです。

そうすれば、菅総理に「勝算」の目が出てくることになります。それをせずに、行動制限「一本槍」に固執しつづければ、リーマンショックの二の舞になります。

それこそ、菅政権どころか、自民党が危なくなります。リーマンショックの頃のように、社会は閉塞感にさいなまされることになり、その結果として、民主党に政権交代をゆるしてしまった2009年を再現することになりかねません。それだけは、回避すべきです。

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2021年8月29日日曜日

テク企業への統制は中国企業の冬の時代を迎える―【私の論評】今後中国は社会も経済も発展することなく、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な全体主義国家になるしかない(゚д゚)!

テク企業への統制は中国企業の冬の時代を迎える

岡崎研究所


 中国では、昨年11月、馬雲(ジャック・マー)のアント・グループの新規株式公開が中国の金融規制当局の指示で中止されて以来、テク企業への統制が進んでいる。中国の2大インターネット企業であるアリババとテンセントは、独占禁止法の規制を受けている。7月初めには、配車サービスの「ディディ」(Didi Global)が、ニューヨークで上場してわずか数日で網にかかった。

 さらに最近、教育関連のテクノロジー業界もターゲットになっている。学校のカリキュラムに載っている科目を教える会社は、海外での上場や外国人投資家の獲得、利益の計上ができないという新しい規制ができた。子供たちを教える事業では、誰も金持ちになってはいけないということだ。

 エコノミスト誌7月31日号の社説は、こうしたテク企業統制を取り上げ、この締め付けは、国内外の企業活動や投資にネガティブな影響を与えうることを論じている。同社説によれば、中国の意向ははっきりしている。中国は、自国の取引所で、自国の権限で、自国の条件で資本を調達することを望んでいる。このことが金融市場に与えるマイナスの影響は、まだまだ続くと思われる。中国自身が最大の敗者となるかもしれない。

 教育産業やITやネットサービス産業が、急速かつ野放図に発展し、経済の安定的発展、あるいは社会の安定のために、規制を強化する必要があったことは否定できない。問題は規制の仕方であり、中国のやり方は国内外の企業活動や投資にネガティブな影響を与えうるという上記エコノミスト社説の指摘は正しい。だからといって中国国内の規制強化、中国式の管理、監督強化の流れが変わるとも思えない。

 それは、習近平政権の体質、発想と深く関わっているからだ。政治、イデオロギーの優先であり、「党の指導」の強調は特に際立っている。彼らは、中国のすべての空間に「党の指導」を行き渡らせることが、中国の成功と共産党の統治の持続を保証すると考えている。なぜなら中国共産党ほど優秀な政党は存在せず、「党の指導」を貫徹することにより、正しいことを確実に成し遂げるというのが建前だからだ。

 この「想定」と現実とが一致するかどうかは別問題だ。種々の議論はあり得るし、現にある。しかし、習近平路線と異なる声を発出できる環境はほぼ存在しなくなった。経済の現場が、持続的経済発展への負荷が大きくなりすぎて悲鳴を上げるまで、習近平は聞く耳を持たないであろう。

 しかも、米中関係の悪化は、現時点をとれば習近平への追い風となっている。あの米国が理不尽にも中国を潰しにかかってきている。習近平主席の下に全人民が一丸となって、この難局を乗り切らなければならない。しかも時間は中国に有利であり、今頑張れば必ず勝てる。これが中国の大衆社会の雰囲気なのだ。

 中国の経済関係部門の人材は育っている。経済のことはよく分かっている。実体経済への損害を最小にするために彼らは現場で全力を尽くすであろう。しかし、管理・監督部門は往々にして政治、イデオロギーに引っ張られる。しかも、当局が管理を強化しようとしている分野は、中国で最も活力のある創造的な民営企業が作りだした産業である。

 そこに手を入れることは、中国経済の活力をそぐ。民営企業は、現在、首を縮めて風向きを図り、どうするか考えている。先進的な民営企業に冬の時代が来たことは間違いない。

【私の論評】今後中国は社会も経済も発展することなく、図体が大きいだけのアジアの凡庸な全体主義国家になるしかない(゚д゚)!

経済に関して、中国共産党が全く理解できていないことがあります。それは、先進国がどうして先進国になりえたかということです。

多くの発展途上国は、中国のように政府主導で、経済発展することができます。実際、過去には経済発展をした発展途上国もありました。ところが、一人あたりの国民の所得が100万円前後になると、それ以上になることはありませんでした。これを中進国の罠(中所得国の罠とも呼ぶ)といいます。

例外もありますが、それは産油国やシンガポール(人口570万人の都市国家)のような例外的な国だけでした。

なぜ、このようなことになるかといえば、それは民主化と、政治と経済の分離、法治国家化が行われないからです。

先進国は、過去において民主化、政治と経済の分離、法治国家化を成し遂げました。そのため、中所得国の罠を超えて、成長し現在に至っています。それ以外の国は、経済発展できず、発展途上国のままです。

これは、高橋洋一氏が作成した下の「民主主義指数(横)と一人当たりのGDP」を見ても明らかです。


民主化がなされれば、当然のことながら、その後政治と経済の分離、法治国家化もなされていくことになります。無論、経済・社会に規制などはなされますが、それは自由な競争等を阻害するときになされるのが筋です。

これによって何が起こるかといえば、多数の中間層が輩出され、それらが自由な社会経済活動を行うようになります。

自由が保証された中間層は、あらゆる階層、あらゆる地域で社会を変革するイノベーションを行うことになります。それによって、社会が改革され、あらゆる不合理、非効率が解消され、結果として経済発展します。そうして、中進国の罠を突破することになるのです。

これらをなし得たから、先進国は先進国になりえたのであり、故なく先進国になったわけではありません。

すべての発展途上国は、先進国のようにどこかで、民主化、経済と政治の分離、法治国家化に踏み切らなければ、中所得国の罠から逃れることはできないのです。

中国もその例外ではありません。いくら政府が音頭をとって、大金を投入してイノベーションをせよと号令をかけたところで、それは点のイノベーション、せいぜい線のイノベーションにしかなりえず、先進国の自由が保証された中間層による、あらゆる階層、あらゆる地域で社会を変革するイノベーション、立体的なイノベーションにはなりえないです。

その結果社会にあらゆる不合理、非効率が解消されずに残ったままで、社会が発展することなく、結果として経済発展もできなくなるのです。そうして、中進国の罠から逃れられなくなるのです。

社会にあらゆる不合理、非効率が残ったままで、経済発展しようとしてもできません。それでも、中国共産党は、デジタル政府、デジタル経済、デジタル社会を含むデジタルエコシステムによるデジタル中国を目指そうとしています。


しかし、いくらデジタル化をすすめたところで、社会にあらゆる不合理、非効率が残ったままでは、経済発展などできません。せいぜい、国民監視の能力を飛躍的に高めることができるだけでしょう。監視能力が高まっただけでは、社会は変革されず、経済発展もできません。

中国共産党は7月1日に結党100年周年を迎えました。国民党との内戦に勝利し、1949年10月1日に中華人民共和国の建国を宣言。以来、単独で統治しています。

1980年代に鄧小平氏の下で始まった中国の経済的奇跡は、かなりの政策的工夫がなされた結果であることを忘れるべきではありません。ソビエト連邦崩壊後のロシアでは、政府が急きょ規制を撤廃して自由市場を導入し、「ショック療法」と呼ばれる手法が取られました。

毛沢東氏の急進的な社会主義が、中国経済をソ連モデル以上に硬直的で脆弱なものにしていたことから、中国にはロシアが取ったような選択肢はありませんでした。

代わりに、鄧小平氏の指導の下、改革派は地元の有力者に自由化を慎重に試す権限を与え、私有財産を徐々に復活させ、農民や企業家が利益を保持できるようにしました。共産党は株や債券の取引所を復活させ、米金融市場を利用して非効率的な省庁の形態だった組織を上場企業に変えました。

彼らはいくつかの大胆な決断をしました。朱鎔基首相(当時)は、1990年代に非効率な政府系企業の従業員を推定で4000万人解雇しました。また中国共産党は、不動産資産を公的管理から私的管理に移行するという歴史上最も大々的な措置に踏み切りました。

中国の経済復興の大部分は勤勉な国民のおかげです。しかし、中国の政治指導者は、たとえ最初に混乱を引き起こしたとしても、賢明に道を切り開いたと評価できます。

このところ、中国共産党の創造力は枯渇の兆しを見せています。自由貿易試験区のような、現在の問題には対処できない古い解決策へのノスタルジーが高まっているようです。習氏は「頭を叩く」ことには長けているかもしれないです。彼の厳しい反腐敗キャンペーンは、低迷していた中国共産党に対する国民の信頼を取り戻すのに大いに役立ちました。しかし、経済的には、習政権は改革を止めたどころか失敗しました。

より生産性の高い資産クラスから資金を奪い、中国の家計を負債で苦しめている不動産への過剰投資を減らすための長期的キャンペーンを例に取ってみます。当局はパンデミックの際、景気刺激のための資金が不動産に流入しないよう努力したのですが、中核都市の住宅価格は再び急上昇しています。

その理由の一つは、中国共産党がパンデミックへの対応として、信用を緩和しつつインフラに支出するという、昔ながらの手法を用いたことでした。その結果、2008年の世界金融危機の後と同様に、資金が住宅に流れ込むことになりました。しかし、政府はこの流れを止めることができず、冷却効果があると思われる不動産税の導入も見送られました。

官僚は、問題のある業界の頭を叩くことを、改革と同義であると考えがちです。しかし、これは必ずしも正しいとは限らず、高くつく誤解である可能性が高いです。例えば、中国共産党が主導するアリババのようなテクノロジー大手に対する脅しは、投資やイノベーションを促進するとは思えません。

アリババは時価総額でアマゾンと肩を並べることを狙っていたがそれはもはや不可能になった

一方、当局は半導体分野での自立化を目指していますが、この問題に何年も資金を投入しているにもかかわらず、ほとんど成功していません。不良債権が2兆ドルに達しようとしている中、中国は無駄なイノベーションモデルに執着している余裕はありません。

例は枚挙にいとまがないです。労働人口の減少による人口動態の危機が加速する一方で、貧富の差が拡大しています。しかし、共産党は「戦狼」的な男性が牛耳っており、女性の出産に関する決定を細かく管理し、フェミニストを逮捕し、労働力の移動を制限することに依然固執しています。

15兆ドルの経済規模を誇る中国の共産党は莫大な資源と国民の支持を得ています。しかし、中国共産党が直面している問題は、鄧小平氏の改革者たちが克服した問題よりもさらに複雑です。共産党がもう1世紀持続したいならば、過去の成功に甘んじることをやめなければならないです。

過去の成功に甘んじることをやめるには、民主化をすすめるしかないのです。しかし、中国共産党にはその気は全くないようですから、今後中国は経済発展することなく、図体が大きいだけの、アジアの凡庸な全体主義国家になるしかないのです。

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2021年8月28日土曜日

バイデンのアフガン危機は「米国の歴史上で最もばかな行動」とトランプ―【私の論評】表面を取り繕うだけの、バイデンの中東外交は破綻した(゚д゚)!

バイデンのアフガン危機は「米国の歴史上で最もばかな行動」とトランプ

<引用元:FOXニュース 2021.8.27

フォックスニュースのショーン・ハニティ氏

ドナルド・トランプ前大統領は26日の「ハニティ」(ブログ管理人注:フォックスニュースのショーン・ハニティのこと)の独占インタビューで、ジョー・バイデン大統領がアフガニスタンの危機を増大させたのは、「おそらく米国の歴史上でなされた最もばかな行動」の結果だと述べた。また、デラウェア州民主党の大統領は、優先順位を国家安全保障からリベラル政治に転換させた「ウォークな(社会的不公正や人種差別に対して敏感な)将軍」に囲まれていると続けた。

トランプは司会のショーン・ハニティに、バイデンの「ウォークさ」とマーク・ミリー統合参謀本部議長のような将軍のそれが、一般軍人の力と傾向を間違って解釈し、優先順位をごちゃ混ぜにしていると警告した。

「バイデンとウォークな将軍たちは全くのウォークだ。私は在任期間の終わりに言っていたのだが、平等やこうした別の事柄についての手紙が送られてくるのを見ていた――兵士たち、彼らは戦いたいと思っており、戦う覚悟を持ちたいと思っており、兵士でありたいと思っているのだが、ウォークな将軍たちが、もう誰も信じられないようなレベルにまで状況が変わってしまっていた」とトランプは述べた。

アフガニスタンにおいて、バイデンと司令官たちは自分と同じように撤退しようとしていたが、それを全く逆の順序で行ったとトランプは述べた。「彼らは1つ忘れていた。彼らは人々を一緒に連れて行くのを忘れていた。品物を一緒に伴うのも。つまり世界で最高の軍事装備を持っていくのを忘れたということだ。そしてそれは信じ難いことだ。なぜなら子供でも分かることだったからだ。軍隊は最後に撤退させるものだ。子供でも分かることだった。どうして彼らはこのことを我が国に対して行ったのだろうか?」

その行動が米国の歴史上で現職の大統領による最悪の決定の1つとなり、13人の軍人が今回死亡し、カブールの混乱状態が継続しているとトランプは述べた。

「非常に残念だ。おそらく軍事戦術の観点からもそうだし、全く恥ずべきことであり、米国に起こったことの中で最も恥ずべきことだ。我々は世界中から見てばかのように見え、弱く、悲惨であり、自分で何をやっているか見当もつかない人々がリーダーとなっている」とトランプは語った。

「軍隊を撤退させて、これから人々を脱出させると言い、それで突然、タリバンが入ってきている―我々はタリバンを完全に支配下に置いていたので、我々の許可なしには行動しなかった。我々は信じられないほど素晴らしい合意を結んだ。我々の兵士を殺してはいなかった」

トランプは、バイデンが遠回しにその件についての自分の成功に言及したと述べ、大統領が発言の中で、2020年に結んだ合意のためにタリバンは18カ月間米軍兵士を1人も殺していなかったことを認めたことを指摘した。

「私が話したいことは、我々の兵士たちは、市民もだが、とてつもない危険に瀕していると思う。空港を出入りする飛行機はとてつもない危機に瀕していると思う。(タリバンは)最高の装備、最高のロケット、最高の戦車とヘリコプター、アパッチ・ヘリコプターを持っている。数多くあり、非常に価値のある物だ――ところでロシアはそれらを欲しがっている。調査のためであり、我々がはるかに優れた技術を持っているからだ。また中国も欲しがっている」とトランプは警告した。

「これはもっともばかなことだ――おそらく米国の歴史上でなされた最もばかな行動だったと思う。これが起こるのを許したのであり、軍隊を引き揚げてから『ああ、人々を脱出させたいと思います』と言っている」

トランプは、米国中央軍司令官のケネス・「フランク」・マッケンジー・ジュニア将軍が、米国は8月31日までに完全撤退することについて、タリバンと「共通の目的を共有」していると述べたことを批判した。

「その共通の目的を生かし続ける限り、彼ら有益な協力相手だった。彼らは我々の安全上の懸念の一部を縮小させ、協力していくのに有益だった」と司令官は述べた。

「マッケンジー将軍がタリバンが我々を守ると言うのを聞いたが、タリバンは敵だ。私はタリバンの指導者と取引した。この人物はあまり単純な男ではないし、ボーイスカウトではない」とトランプは怒りをあらわにした。

トランプはその後司会のショーン・ハニティに、自身がタリバン指導者のアブドゥル・バラダルと直接会談と交渉を行った際に、不当な行為があれば米軍による10倍の報復を受けることになるとその武闘派に対して明言したと述べた―その姿勢をバイデンの敬意を持った立場と対比させた。

「我々は彼らを完全に支配下に置いていた。動きを見た時はいつも、F-18で攻撃し、その動きは止まった」とトランプは述べた。

「だが我々はアブドゥルのためにそうしたことはほとんどなかった。我々が話した人物だが・・・アブドゥルは誰にも何もさせなかった」

(以下略)

【私の論評】表面を取り繕うだけの、バイデンの中東外交は破綻した(゚д゚)!

ウォークカルチャーのウォークは"Woke"で、もともとは「目覚める」という意味の動詞"wake(ウェイク)"の過去分詞ですが、そこから転じて「社会的正義や人種差別などに敏感なこと」を意味し、「あの映画はwokeだった」「あの人はwokeだ」のように使います。

ウォークカルチャーを標榜する人たちのデモ

wokeであること自体は、一見素晴らしいことかもしれません。しかし、一部ではそれが暴走して「絶対的な正義」を掲げ、自分と違う意見や大らかな意見、あるいは何も気にしない人々を強く非難するような人も出てきています。最近米国でしばしば話題となる「キャンセルカルチャー」もその流れでしょう。

キャンセルカルチャーとは、著名人やインフルエンサーの過去の発言などを掘り出し、前後の文脈や時代背景を無視して徹底的に糾弾するという潮流です。キャンセルとは「いらない/受け入れられない」を意味し、SNS上でさまざまな著名人が「おまえなんかキャンセルしてやる」とばかり吊るし上げられています。

例えば、2019年2月のアカデミー賞授賞式で司会を務めるはずだった黒人コメディアンのケヴィン・ハートは、約10年前の同性愛嫌悪的な発言がwokeな人たちの目に留まり大炎上。大役を辞退するに至りました。

私が個人的にも驚いたのは、アンダーグラウンド・コミックス運動の中心人物である作家のロバート・クラムまでもが"キャンセル対象"となったことです。

社会秩序を守るためにコミックスの表現が厳しく規制されていた1960年代、クラムはメインストリームでは決して描けない過激な性的表現、暴力、ドラッグ、差別......など社会の病んだ部分をテーマに、グロテスクな画風でアンダーグラウンドシーンを牽引(けんいん)しました。

彼の作品はたびたび摘発対象となり、販売した書店の店主が逮捕されるなど、麻薬と同じような扱いを受けた時期もありました。

そんな困難を乗り越え、アーティストとして評価されるに至ったクラムは、がんじがらめのメインストリームとは違う場所で独自に自由な表現を勝ち取ったパイオニアといっていいでしょう。彼の挑戦が、コミックスの表現そのものの広がりに寄与したことも紛れもない事実です。

ロバート・クラム

しかし、今や一部の"woke系"の人々にとっては、クラムの作品は「差別的でおぞましいもの」のようです。2018年マサチューセッツ州で開かれたインディ系コミックスの博覧会ではクラムの名前が削除され、先日もメリーランド州での出版系エキスポで、黒人女性漫画家ベン・バスモアがクラムをくさす発言をすると大きな拍手が起きたそうです。

ポップカルチャーを代表する作家で偉大なイノベーターでもあるクラムが、同業者から「表現が不快」との理由でキャンセルされるとは、思ってもみないことでした。

こうした状況を受け、オバマ前大統領は2019年にシカゴで開催されたあるイベントに登壇した際、こう述べました。

「こんなやり方で世の中を変えることなどできない。そうやって気に入らないものに石を投げつけているだけなら、成功には程遠い」

"正義の押しつけ"はリベラルを衰退させるだけという、オバマの忠告は、米国にだけ当てはまるものではないと感じるのは私だけでしょうか。リベラルの動きなど、日本でも少し遅れて、やってくることが多いです。日本もこのようなことにならないことを祈りたいです。

このような風潮を理解していなければ、上のトランプ氏の発言は理解できないでしょう。現在、バイデン政権を巡って信じがたいことが行われています。

たとえば、米軍がアフガニスタンからの退避作戦を円滑に進めるため、退避を希望する米国人やアフガン人の名簿をイスラム主義組織タリバン(Taliban)に提供していたと、米政治専門メディア「ポリティコ(Politico)」が26日に報じました。

この内容は、米当局者はタリバンに米国民、グリーンカード保有者、アフガン人協力者のリストを提供したというスクープです。

退避できなかったアフガン人協力者の命が危ぶまれます。タリバンはすでに外国への協力者をブラックリスト化し、家を訪問して探し回っています。米当局の極めて危険で短絡的で奇怪な行動です。

ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は報道を完全に否定せず、共和党は騒然となりました。 記者団の質問攻めに遭ったバイデン氏は、タリバンに名簿が渡った可能性を排除せず、「実際に名簿があったとは断言できない」と述べました。

「あったかもしれないが、そのような状況は把握していない」 

さらに、「『これが12人の名前で、彼らが来るから通してほしい』といったようなことはなかった。そういうことも十分あり得た」と述べました。

バイデン氏の発言に、共和党は騒然となりました。ケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)共和党下院院内総務は、「政府が国民の名簿をタリバンに渡すだなんて、この国の歴史の中で考えられなかったことだ」と指摘。

「なぜ安全に移動できる状況をつくらなかったのか」 

米国防総省は、大規模な退避を調整するためにタリバンと連絡を取っていたことを認めています。

国務省関係者は、ナンバープレートや空港への到着時刻など、車両に関する情報が共有されることがあるとした上で、退避を円滑に進めるために退避希望者の名前が伝えられることがあった可能性も否定できないと述べました。

確かにこのようなことは、米国のリベラルのスラング的にいえば、ウォークでないとできないかもしれません。このブログにも最近も掲載しましたが、タリバンは、テロリストであり、過去の行状からして、彼らは信用できず、そのようなテロリストに名簿を渡すなどありえないことです。

ただ、ウォークの立場にたてば、タリバンも差別してはならないということで、タリバンに米国民、グリーンカード保有者、アフガン人協力者のリストを提供することも奇怪なことではないのかもしれません。

まだ、このことがなければ、トランプ元大統領もアフガンからの撤退を決めていたため、バイデンは運が悪かったともいえたかもしれませんが、これでは、誰もバイデンを擁護できないでしょう。

春頃に、バイデンの外交に関して、「さすがバイデンは玄人外交。トランプと違って安心して見ていられる」というような趣旨の事を言っていた日本人識者がいました。そうしてその「玄人外交」の結果がカブールでのテロです。一体何が玄人なのか困惑せざるを得ません。

私が見ている限りでも、ツイッターでよく発言をしている「国際政治学者」だけでも、「さすがバイデンは玄人外交。外交音痴のトランプとは違う。これでアメリカは普通に戻った、よかったよかった」と言ってた識者を五人くらいはいたと思います。

カーブル空港の自爆テロでは米兵も多く亡くなりました。数週間の任務の予定でアフガン入りし、二度と国に戻れず家族にも会えなくなってしまった人たち。以下はその人達の写真です。家族が彼らの笑顔を見ることはもうありません。「イスラム国は日本が好きだ」などとイスラム国擁護をしていた某研究者に改めて怒りが沸いてきます。


米軍はアフガニスタン東部でイスラム国に対する空爆を実施したと発表。さらに、本日は、アフガニスタン国内の過激派勢力「イスラム国(IS)」系組織「IS-K」の「計画者」をドローンで攻撃し、標的1人を殺害したと発表しました。

こんなことをしてもイスラム国を壊滅させることはもちろんできないです。先日のテロに報復した雰囲気を出すための演出でしかありません。表面を取り繕えばいいというバイデン政権の中東外交は完全に破綻したようです。

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2021年8月27日金曜日

札幌で抗体カクテル療法開始 臨時診療所も1日から投薬 感染妊婦8カ所で入院可―【私の論評】抗体カクテル療法の先にあるのは、コロナに負けない強靭な社会を構築すること(゚д゚)!

札幌で抗体カクテル療法開始 臨時診療所も1日から投薬 感染妊婦8カ所で入院可

 札幌市は26日の市新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、患者の重症化を防ぐ効果があるとされる「抗体カクテル療法」を市内17医療機関で始めたことを明らかにした。患者を一時的に受け入れる臨時診療所「入院待機ステーション」でも、9月1日から薬剤投与を開始する。感染した妊婦が入院できる8医療機関も確保したという。

 抗体カクテル療法で薬剤が投与されたのは8月24日時点で80人。これとは別に、5医療機関が同23日から糖尿病や肥満など重症化リスクが高い入院患者に投与しているという。入院待機ステーション2カ所のうち、患者数の減少で休止中の中央区のステーションを9月1日に再開し、1日10人程度に投与する。

【私の論評】抗体カクテル療法の先にあるのは、コロナに負けない強靭な社会を構築すること(゚д゚)!

8月13日、「抗体カクテル療法」として中外製薬の「ロナプリーブ」が承認されました。軽症から中等症に対して治療効果が期待でき、その効果は「入院または死亡リスクを約70%減少する」「重症化の抑制と症状消失までの期間を短縮する」として注目されています。

抗体カクテルとは、2つの抗体蛋白を混ぜて投与するものです。その2つの抗体蛋白は「カシリビマブ」と「イムデビマブ」です。

新型コロナウイルスは表面に「スパイク蛋白」という鍵のようなものを持ち、その鍵が細胞に結合してウイルスが細胞内に侵入、増殖していきます。抗体蛋白は、スパイク蛋白に結合し、ウイルスの侵入、増殖を阻止します。

新型コロナウイルスの構造

2種類の抗体を混ぜるのは、変異ウイルスへの効果を担保するためであす。現在、猛威を振るうデルタ株への効果も期待できるといわれています。すでに実際に抗体カクテルを使用している医療機関もあり、その効果についは良好であることが報告されています。

各地で感染爆発が起こり、各自治体は頭を悩ませていますが、そのなかでも大阪の感染者増加は顕著です。

こういった現状を受けてか大阪府の吉村洋文知事が8月20日抗体カクテルについて、以下のようにツイートしました。

<本日から「短期入院で抗体カクテル療法からのホテル療養」を始めました。なんで完治してないのに、ホテルやねん!最後まで入院させろ!と思われる方もいらっしゃると思いますが、より多くの人が治療を受ける為に必要です。重症化から一人でも多くの人を守る為にご協力下さい>

大阪府の吉村洋文知事

この発言には驚かれた方もいらつしゃるでしょうが、私としては賛同したい内容です。吉村知事や秋元札幌市長のの思いが国を動かし、抗体カクテル療法が標準治療となることを望みますが、現状ではそのハードルは高いようです。

抗体カクテル療法は、発症から7日以内で酸素を必要としない患者に有効性が期待できるとされとています。現状では、自宅待機等で急激な悪化が起きることも珍しくなく、抗体カクテル療法を受けるタイミングを判断する難しさがあります。

また、現状では、抗体カクテル療法を受けることができる患者は、重症化リスクがある場合とされます。厚生労働省が示す重症化リスクは、以下の通りです。
65歳以上高齢者
悪性腫瘍
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
心血管疾患
慢性腎臓病
高血圧
糖尿病 肥満(BMI値30以上)
喫煙
妊娠後期
重症化リスクを十分に考慮した判断が必要となり、今後の医療構築が課題となるでしょう。

また、国の調達予定は20万回分ほどで、そのうち7万回分程度をすでに確保したことを明らかにしていますが、新型コロナウイルスの終息までは、さらなる確保が必要となります。連日、自宅療養するなかでの死亡例も報道され、少しの猶予もありません。

そうして、この先には何があるかといえば、コロナ感染者が多少増えても、重症者、死者を増やさず、自粛によって社会経済活動が阻害されない、強靭な社会です。

そのためには、有効な治療法を確立することが前提です。つまり、ワクチンはすでに製造され、接種が進んでいる状況ですが、その他に抗ウイルス薬が完成することです。「ロナプリーブ」はそうなる可能性が高いです。

そして最後に、おそらくこれが最も重要なのですが、多くの人が免疫を獲得することです。

抗体カクテル療法が、効果をあらわし、重症化リスクのある患者以外にも普通に投与されるようになり効果があれば、そうなる可能性は高いです。

話は変わりますが、インフルエンザは、恐ろしい病気です。2016年には全国で1週間で、200万人もの感染者が発生し、インフルエンザは年齢層を問わず感染するので、小学生がインフルエンザ脳炎でなくなったという痛ましい事例もありました。しかし、それでも医療崩壊の危機に見舞われたり、緊急事態宣言が出されたりして、社会経済活動が阻害されるようなことはありませんでした。

なぜそうだったかといえば、インフルエンザウイルスには以前から、ワクチンはありましたし、それに加えて抗ウイルス薬もあったからです。飲み薬はシンメトレル、タミフル・ゾフル、吸入薬はリレンザ・イナビル、点滴はラピアクタという薬です。

 これらは、体内でインフルエンザウイルスが増殖するのを抑える作用があります。これらによって、感染者が増えても、死者、重傷者はあまり増えない状況になっていたからです。

抗インフルエンザ薬の用法・用量

さらにこのブログで以前から述べてきたように、インフルエンザは我が国の感染症分類では、5類に分類されていて、重症な風邪と同じような扱いができましたので、医療崩壊の恐れもなく、緊急事態宣言を発することをせずに、通常社会経済活動を維持できたのです。新型コロナウイルスによる感染症も現在は2類の扱いですが、いずれ5類にできるでしょう。

「ロナプリーブ」以外にも様々な有効な抗ウイルス薬が開発され、医師の判断によって普通に使用されるようになれば、コロナウイルス感染症も、いずれインフルエンザと同じ扱いになるでしょう。そうして、その日は目前です。

そうなれば、コロナウィルスを撲滅することには長い時間がかかるかもしれないですし、場合によっては、永遠に撲滅はできないかもしれませんが、それでも感染症で多くの人が重症化し亡くなることの無い、社会経済活動を制限しなくてもすむ強靭な社会を構築できるようになります。

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2021年8月26日木曜日

【日本の解き方】コロナが左右した横浜市長選 保守は分裂でまともに戦えず、今後の政局化は避けられない―【私の論評】数の力の意味を知る自民党は、何があっても総裁選を経て衆院選までには、「菅内閣」で一致団結する(゚д゚)!

【日本の解き方】コロナが左右した横浜市長選 保守は分裂でまともに戦えず、今後の政局化は避けられない

山中竹春氏

 22日に投開票された横浜市長選は、立憲民主党推薦の山中竹春氏が制した。

 横浜市を地元とする菅義偉首相は、今回の市長選に全力を投入した。

 元々菅首相は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の推進派だった。これに対し、「ハマのドン」との異名を取る藤木幸夫・横浜港ハーバーリゾート協会会長は、山下埠頭(ふとう)へのカジノ整備に猛反対だった。藤木氏は次点となった小此木八郎氏の名付け親として知られているが、小此木氏は藤木氏の意向をくみ、菅政権の国家公安委員長の職をなげうち、IR反対を打ち出して立候補した。

 菅首相は、小此木氏の父、三郎氏の秘書を務めていたので、これまでも小此木氏を自民党総裁選の選挙対策本部長に起用するなど厚遇してきた。IR反対を表明した小此木氏を支持したのも義理人情に厚い菅首相らしい政治判断だ。

 横浜市は、これまでIR推進で動いてきた。現職の林文子市長は当初は勇退するつもりだったが、急遽(きゅうきょ)IR賛成の立場で出馬することとなり、完全に保守分裂となった。しかも、IRについて賛否が分かれるのでは、まともに戦えるはずがない。

 選挙戦の主な争点は、IR誘致と新型コロナ対策だった。

 山中氏の当選は、政府の新型コロナ対策への不満が追い風になった。山中氏は、候補者のうち「唯一のコロナ専門家」を名乗ったことで、差別化が功を奏したようだ。

 もっとも、客観的には、政府の新型コロナ対策には致命的なミスはない。世界と比べると、パフォーマンスは悪くないといえる。

 累積での人口当たりの感染者数、死亡者数、ワクチン接種回収について、20カ国・地域(G20)諸国中でみると、菅政権が発足した昨年9月16日以降、感染者数で4位、死亡者数で4位、ワクチン接種回数で10位となっている。しかし、選挙は結果が全てだ。

 来月の自民党総裁選については、無投票という案はもはやなく、若手も出てきて喧々囂々(けんけんごうごう)となるだろう。その方が、自民党のためにもなる。それは、10、11月にも予定されている衆院選のためでもある。

 政府分科会は、1年半前から、感染者数抑制を中心にしてきたが、同時に医療体制の強化もやるべきだった。最近、政府分科会の尾身茂会長は、「臨時のプレハブ施設でもいい」と言っている。1年以上前に、そのための補正予算を約1兆5000億円も組んでいるが、それらはあまり使われなかった。

 さらに、新型コロナ病床確保のための補助金を受けながら患者受け入れに消極的な実態も一部に浮上してきた。世界トップレベルの病床を持つ日本でも医療崩壊といわれる背景に、補助金を受け取らなかったり、受け取っても患者を受け入れないというのでは、医療側の責任も小さくないのではないか。このあたりも検証すべきだ。

 いずれにしても、市長選の結果により、政局の始まりだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】数の力の意味を知る自民党は、何があっても総裁選を経て衆院選までには、「菅内閣」で一致団結する(゚д゚)!

数の力の意味を知る自民党は、何があっても最終的にはまとまる文化があります。そこが野党との違いです。ただ、それは国政レベルの話であって、地方の選挙では分裂選挙も珍しくはなく、実際分裂した選挙においては今回のように良い結果とはならないことのほうが多いようです。



報道などから自民党総裁選の状況を以下でまとめます。まず、2020年に自民党総裁選挙を経て菅首相が誕生した経緯を踏まえると、菅首相を支える安倍派と麻生派、ニ階派に属する重鎮政治家などが、菅首相の代わりとなる「選挙の顔」を求めるかどうかが焦点になります。今回の総裁選挙は、昨年のように国会議員による票取りだけではなく、自民党の党員による投票が加わるとみられます。

情勢はなお流動的ですが、菅首相は総裁選挙への出馬を明言しています。重鎮政治家は菅首相を支持する姿勢を示しています。菅首相に加えて、8月23日時点で総裁選挙に出馬する意向を示しているのは、下村博文政調会長、高市早苗元総務相です。

自民党の岸田文雄前政調会長は本日26日、国会内で記者会見し9月末の任期満了に伴う党総裁選に出馬すると正式に表明しました。「このたびの自民党総裁選に立候補すると決意した」と述べました。

岸田氏は「国民政党であったはずの自民党に声が届いていないと国民が感じている」と強調した。「自民党が国民の声を聞き、幅広い選択肢を示すことができると示し、日本の民主主義を守るために立候補する」と語った。

国民の信頼を回復するために「党のガバナンス改革をしっかりと進めていく」と訴えました。党役員への中堅・若手の大胆な登用や衆院選の比例代表候補に適用する「73歳定年制」の堅持などを主張しました。

「政治とカネ」問題は「国民に丁寧に説明し、透明性を高める」とも言明しました。総裁以外の党役員の任期を「1期1年」で連続3期までとし「権力の集中と惰性を防いでいきたい」と話しました。

新型コロナウイルス対策については「危機管理の要諦は最悪の事態の想定だ。『たぶんよくなるだろう』ではコロナに打ち勝つことはできない」と指摘しました。人流抑制や病床確保、ワクチン接種の推進などとあわせて、早期に「経済対策をとりまとめる」と説明しました。

経済政策を巡り「成長と分配の好循環による日本型の資本主義を構築すべきだ」と唱えました。中間層の拡大に向けて「『令和版所得倍増』を目指す」と力説しました。子育て世代への住居費の支援拡充などを掲げました。

岸田氏は、経済政策においては、「インフレ2%目標が最優先とされ、経済成長を押し上げる拡張的な財政政策」については触れていません。金融緩和と積極財政がなされないままでは、経済成長は不可能です。その状態で分配に力を入れるとなると、過去の民主党政権時代や最近の韓国文政権の経済政策と同じで、雇用が激減します。

岸田氏

この発言からも 岸田氏の経済政策は、経済成長を重視していた安部前首相の路線を引き継ぐとした菅政権とは、異なる経済政策運営を行う可能性が高いです。

元々岸田ファミリーは財務省で固められていますので、彼が総理になれば、消費減税どころか消費増税の可能性が高くなります。また、世界遺産登録で外務大臣当時、いわゆる徴用工の記述を「forced to work」との表現で、韓国と妥協した方なので、彼は外交面でも問題視されています。

具体的に、2023年に任期を迎える日銀執行部人事には、今後の官邸の経済政策の姿勢が大きく影響するでしょう。岸田氏による政策転換によって、2%インフレ目標に対するコミットを弱め、そして、1990年代半ば以降デフレ克服に十分な対応を繰り出さなかった官僚組織の意向に沿った金融政策に変わると予想されます。

財政政策に関しては、現状、新型コロナという非常事態において、財政健全化を最優先とする政治家などからの声は目立っていません。ただ、大きく拡大した財政赤字を前に、早期増税を狙う政治勢力は根強いと見られます。新型コロナ問題が落ち着いた時点で早々に、岸田氏は、所得再分配に政策の主軸が移ることを契機として、増税を伴う緊縮的な財政政策に転じる可能性が高いです。

一方、下村、高市両氏に関しては、総裁選挙出馬に必要な推薦人を集められるのか、現状では不明です。また、彼らが出馬するとしても、次次回以降の選挙を睨んで首相候補として知名度を高める意味合いが大きいと考えられます。

こうした中で、総裁選出馬の立場を表明する高市氏は、先日もこのブログで示したように、マクロ経済政策に対する考えを明確に打ち出していました。最近の文藝春秋のインタビュー記事などからピックアップすると、高市氏は、菅総理を応援しているとする一方で「小出しで複雑な支援策に終始している」とコロナ対応のための菅政権の財政政策をやや批判的に評しています。

そうして、「インフレ率2%に達成するまでは、時限的にプライマリーバランス規律を凍結して、戦略的な投資に関わる財政出動を優先する」と述べています。

インフレ2%目標が最優先とされ、経済成長を押し上げる拡張的な財政政策が実現したのは、第2次安倍政権発足直後の2013年の短期間でした。この時期のみが、金融財政政策が一体となったマクロ安定化政策の徹底された期間でした。この時の政策を続けることが、2%インフレと完全雇用実現という経済正常化に必要と高市氏は主張しています。

高市氏は、債務残高の制約によらずに長期間財政赤字を継続させている米国の財政政策運営など、幅広い知見を複数のブレーンなどから得たことで、この財政政策に対する考え方を理解さしたのでしょう。

自民党の有力政治家からこうした財政政策に対する考えが打ち出されたことは、大きな変化です。今後の自民党政治家の中で経済政策の議論の質が高まり、マクロ安定化政策が更に改善することを期待させる動きと評価できますし、今後の菅政権の経済政策運営に影響する可能性があります。

これまで菅政権を支えてきた重鎮政治家の意向は変わらず、菅政権の継続をのぞんでいるようでし、安倍氏前総理も菅政権の存続を望んでいます。これを考えると、総裁選においては、菅首相が消去法的に自民党総裁として選ばれるなるのではないでしょうか。

ただ、政治は流動的であり、一瞬先は闇ともいわています。

それにしても、新型コロナの混沌を経て、高市氏のような世界標準の経済政策を標榜する自民党の政治家が現れました。また、8月22日に日本維新の会の馬場幹事長は、総選挙の結果によっては、自民・公明両党と、政策ごとの部分的な連携がありうる、との考えを示しました。

日本維新の会は、経済成長を重視する政策を掲げています。菅政権の支持率低下が続き、政局に対する不透明感は高まっていますが、将来を期待できる動きが永田町でみられることは、日本株市場の一筋の光明と言えるでしょう。

衆院選は、最大に延長すると11月にできますし、その可能性が高くなっているともいわれています。それ以前に総裁選が開催されることになります。

総裁選においては、候補者らの政策の博覧会のようになります。様々な論議がなされて、良い方向に向かうことが考えられます。

新総裁、おそらくは菅総裁のもとに自民党は結束を固めることができるのではないでしょうか。ここで、新たな感染対策や、経済対策を打つべきです。

特に感染対策に関しては、このブログでも過去に主張してきたように、いままでのように、感染者数を減らすことだけに注力するのでなく、多少感染者が増えたにしても、重症者、死者を増やすことなく、自粛をしなくてもすむような強靭な社会を目指すようにすべきです。

経済対策に関しては、高市早苗氏のものが最もまともで、世界標準の政策であるので、これを参照しつつ、安倍政権を継承することを旨とする菅政権において、アベノミックスをさらに拡張するような政策を打ち出すべきです。特に、物価目標2%を達成するまでは、財政均衡ではなく、積極財政を実施するという点は譲れません。

先に述べたように、数の力の意味を知る自民党は、何があっても最終的にはまとまる文化があります。総裁選を経て、新たな政策を打ち出せば、11月にはその成果がはっきりするまではいかないまでにしても、コロナ感染でも、経済も好転するという予兆が多くの国民に認識される可能性があります。

国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在している野口聡一飛行士(56)が4月20日、菅義偉首相とオンラインで交信

そうなれば、11月にはコロナ感染症が収束する可能性が大きく、さらに以前このブログに述べたように、コロナ感染者数と、菅政権の支持率にはかなり強い負の相関関係があることから、菅政権の支持率も上がり、衆院選挙に勝つ可能性もでてきます。

以前にも述べたように、私自身は熱烈な菅首相ファンというわけではないのですが、コロナ感染のような未曾有の危機のときには、政権交代などがあれば、大胆な政策をできなくなる可能性が高いので、できれば菅政権を継続すべきと思っているので、菅政権には衆院選にも勝利していただきたいと思っています。

政局や政策も含めた大胆な改革などは、今ではなく、コロナ禍が収束し経済も回復した後でやるべきと思います。

先に述べたように、二階幹事長をはじめ菅政権を支えてきた重鎮政治家の意向は変わらず、菅政権の継続を望んでいるようですが、これは本当にまともな判断だと思います。二階氏に関しては、親中的な部分では、まったく賛同できないのですが、ぶれずに菅内閣の継続を望んでいることでは、高く評価したいです。

マスコミや評論家の中には、菅政権はおしまいというような論調のものも多いですが、自民党の重鎮政治家は、この点ではまともな判断をするということで、さすがは、数の力の意味を知る自民党であり、何があっても衆院選を目指してまとまることでしょう。


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2021年8月25日水曜日

【日本の解き方】漫然と延長された緊急事態宣言 保健所が介在する仕組みに限界、現場の医師の判断優先すべきだ―【私の論評】保健所を単なる情報の結節点にすべきではない(゚д゚)!

【日本の解き方】漫然と延長された緊急事態宣言 保健所が介在する仕組みに限界、現場の医師の判断優先すべきだ

札幌市保健所

 新型コロナウイルス緊急事態宣言の対象が13都府県に拡大され、9月12日まで延長された。

 先日、筆者の知人から興味深い話を聞いた。知人はワクチン職域接種の待機中に新型コロナに感染してしまったという。幸いなことに、症状は重症まで至らなかったが中程度にまでなり、自宅療養を経て今では回復している。感染経路は不明だが、どうも家庭内のようだ。

 症状が出始めたとき、かかりつけ医のところで適切なアドバイスが得られたことが不幸中の幸いだった。

 新型コロナは感染症法上、「新型インフルエンザ等」に位置付けられているが、自治体や医療機関は、結核などの2類相当あるいはそれ以上の厳格な対応をしている。

 感染者と現場の医師だけで、治療などが完結せず、ほぼ全ての場合に保健所が感染者と医師の間に介在しなければならない。筆者の知人の場合、間に入る保健所の職員が気の毒になったという。医師であれば、薬の処方などさまざまな対処方法を相談できるが、保健所の職員はほぼマニュアル対応だけなので、感染者の聞きたいことに答えられないからだ。

 筆者の知人は入院相当になったが、入院先を決めるのは保健所である。しかし、結果として、保健所から入院先がいっぱいで入院できないという連絡しかこなかったようだ。

 この事例は特殊ではなく、筆者がいろいろなところで聞いている典型例だ。要するに、保健所を介在させるので、感染者側にも現場の医療側にも不満が出るのだ。結果として、日本で豊富とされる医療資源を有効に活用できなくなっている。

 これは、一般的な経済理論であるが、間に介在する主体はないほうがいい。介在する主体が正当化できるのはその方が需給のミスマッチを解消できる場合のみだ。

 保健所を介在させるのは感染法上の措置であるが、保健所の能力などから正当化するのは難しい。役所組織が介在すると不効率ばかりが起こるのが常で、まさに筆者の知人の話を聞いていて、よくある話だと思った。

 新型コロナの感染症表の位置付けは、安倍晋三政権当時の1年前から議論があり、5類への変更も議論された。筆者は、情報を一番持っているのは現場だから、現場の医師の判断を優先するシステムを主張してきたが、それも実現せず、ここにきて限界が明らかになっている。

 こうした本質的な問題点を改善せずに、緊急事態宣言が漫然と延長された。

 政府の分科会は、相変わらず、医療体制の強化や活用を考えるのではなく、感染者の抑制ばかりを議論している。それは、新型コロナ問題の抜本的な解決にはつながらず、経済を弱めるばかりで結果として逆効果にもなりかねない。最近は政府の行うことに不信感も強まっている。

 あるテレビドラマで有名になった、今の状況を適切に語る言葉がある。「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】保健所を単なる情報の結節点にすべきではない(゚д゚)!

保健所とというと、私自身はあまり良いイメージがありません。悪いイメージというわけではないのですが、極度に遅れているというイメージか頭にこびりついています。

今から10数年前、おそらくは2005年くらいのことだったと思います。20年はたっていないと思います。私はある地方都市(札幌市ではない)の保健所のパンフレットを読んでいて驚いたことがあります。

何に驚いたかというと、それはその保健所の使用しているコンピュータ・システムに関するものでした。細かいことは忘れましたが、何とその保健所ではその当時にはオフコンなるものが使わていたのです。今では、オフコンなる言葉もほとんど死語になっていますから、知らない人も多いと思います。

そうして、記憶補助媒体は何と8インチフロッピーでした。システムの概念図を見ると、ハードディスクもあるようですが、その容量はたかだか数十メガバイトでした。

8インチフロッピを用いた当時のオフコン

そうして、当時はネットワーク化もされていなかったと思います。少なくとも、概念図には外部のネットワークについては記載されていませんでした。内部のネットワーク化もされていなかったと思います。

もし、ネットワークの必要性を感じるようなことがあった場合は、オフコンから資料をプリントアウトし、それをファクスで送信したのだと思います。

1990年代には、私は会社のIT部門に在籍していて、当時パソコンを用いて、40箇所をネットワークで結ぶという仕事をしたばかりでした。当時から、私は次世代はパソコン・ネットワークの時代になると確信していたので、多くの業者がオフコンも提案してきたのですが、結局パソコンを用いたネットワークを構築しました。

当時では、パソコンを用いると後で様々な変更などができること、オープンな環境が構築できることが魅力でした。パソコンはいくつか種類がありましたが、当時のNECのPC9800シリーズを用いました。OSはマイクロソフトのMS-DOSでした。当初は、通信機能を含んでいないOSだったので、通信部分は当時のノベル社製のソフトウェアであるネットウェアを用いました。このネットウェアというソフトは、その後マイクロソフトのwindowsosに通信機能がバンドルされるようになって、衰退しました。

いまではみられななくなったフロッピーディスクで供給さていたPC98用のNetWare

ただ、当時のMS-DOSには通信機能がバンドルされていなかったので、ネットウェイを用いたのです。

以上は、まだ現在のような、商用インターネットが普及していませんでした。当時は、学術用に用いられ、大学の研究室等からのみアクセスできました。それにしても、ケミカル・アブストラクトなどにアクセスして、その便利さには驚嘆しました。

当時はネットウェアの導入実績が少なかったので、業者の方々と互いに勉強をしながら、構築していきました。そうした経験があった私からみると、当時の保険所のシステムには驚愕しました。

そうして、保健所のシステムの実体を知って、いかに地方の保健所などでは、業務のほとんどがルーチン業務で占められているのか、理解できました。

おそらくこのシステム数十年前に、優れたSEが開発したのでしょう。そうして、数十年たっても、保健所の業務はほとんど同じなので、そのまま継承され使われてきたのでしょう。だからこそ、生き残ったのだと思います。

これは、当該地方都市に限らず、全国の他の保健所でも同じようなものだったのだと思いスマ。そのような組織が、いきなりコロナ感染症で、主役に躍り出たというのが現実なのだと思います。あまり備えがなされていないうちに、コロナ感染症情報の最前線の役を担うことになったというのが実態なのでしょう。

テレビをつければ昨年から「今日新たに確認された感染者数は○人でした」とニュースが告げる光景がすっかり日常になった令和ニッポンです。繰り返しますが、令和です。

ご存じでしょうか。新型コロナウイルスと最前線で対峙する医療関係者が、いまなお「昭和」の世界を強いられていることを。キーワードは「紙に手書き」「ファクス」。どういうことかでしょうか?

きっかけは、ある公立病院に勤務する医師だという人がツイッター上に投稿したツイートでした。「もう止めようよ…。手書きの発生届…(中略)コロナも手書きでFAX…。もう止めようよ…。手書きの発生届…。こんなん昭和ですよ…(後略)」

感染症法では、医師は新型コロナなどの患者を確認した場合、すぐに地域の保健所(各都道府県)に「発生届」を出して報告することになっています。問題は、これがお役所が定めた書式の用紙に、医師らが手書きし、保健所などにファクスしなければならない、ということなのです。

このツイートが投稿されるやいなや、1万回以上リツイートされ、「医療崩壊寸前の戦場のような中でこれを書く側の手間(中略)何という無駄」など、医療関係者にとどまらず共感が広がり、IT政策を担当する内閣府の平将明副内閣相も「対処します」と乗り出す事態になったのでした。

このツイートが投稿されるやいなや、1万回以上リツイートされ、「医療崩壊寸前の戦場のような中でこれを書く側の手間(中略)何という無駄」など、医療関係者にとどまらず共感が広がり、IT政策を担当する内閣府の平将明副内閣相も「対処します」と乗り出す事態になったのです。

感染症法を所管する厚生労働省のホームページでは、医師が書き込む「発生届」がアップされ、自由にプリントアウトできるようになっています。各都道府県も厚労省のものを参考に書式を作っており、各地の医師はこれに従い、保健所に届け出る、というわけです。

読者もご覧いただきたいものです。感染者の名前や住所、職業、症状、初診の年月日、診断方法など計19項目を記入するようになっています。よほど字を小さくしないと手書きの記入が難しいのです。日々の診療に加え、コロナ対応で疲弊しきった医師らに細々書かせるのは無駄というほかないです。

しかし、私自身は正直なところ、上で述べた経験があったので、さほど驚きませんでした。

政府が5月に運用を始めた新型コロナウイルス感染症の情報把握システム「HER-SYS」(ハーシス)の普及が遅れている。国、自治体、医療機関が感染者らの情報を共有できるようになるシステムだですが、保健所が設置されている155自治体のうち、昨年7月14日時点で4分の1の39自治体が利用を始めていません。

独自システムを使う東京都、神奈川県、大阪府で切り替えに時間がかかっているためだといわれていました。国内初の感染者が確認された1月16日から半年たっても、全国的な情報集約システムが確立していないというのが実情でした。

上の高橋洋一氏の記事では、「保健所を介在させるので、感染者側にも現場の医療側にも不満が出るのだ。結果として、日本で豊富とされる医療資源を有効に活用できなくなっている」としていますが、まさにそのような状況が発生しているのだと思います。

ドラッカー氏は現在の組織について以下のように語っています。
知識労働のための組織は、今後ますます専門家によって構成されることになる。彼ら専門家は、自らの専門領域については、組織内の誰よりも詳しくなければならない。(『ポスト資本主義社会』)

いまや先進国では、あらゆる組織が、専門家によって構成される知識組織です。

そのため昔と違って、ほとんどの上司が、自分の部下の仕事を知らない。そもそも今日の上司には、部下と同じ仕事をした経験がない。彼らが若かった頃には、なかったような仕事ばかりである。したがって彼らのうち、部下たる専門家の貢献を評価できるだけの知識を持つ者もいない。

 いかなる知識といえども、他の知識よりも上位にあるということはないのです。知識の位置づけは、それぞれの知識に特有の優位性ではなく、共通の任務に対する貢献度によって規定されるのです。

かくして現代の組織は、知識の専門家によるフラットな組織である。じつにそれは、同等の者、同僚、僚友による組織である。

 そしてそのフラットな組織において、彼らの全員が、まさに日常の仕事として、生産手段としての自らの頭脳を用い、組織の命運にかかわる判断と決定を連日行なうのです。

つまり、全員が責任ある意思決定者なのです。

もっともドラッカーは、自分よりも詳しい者が同じ組織にいるようでは、専門家とはいえないと言っています。

「現代の組織は、ボスと部下の組織ではない。僚友によるチームである」(『ポスト資本主義社会』)

専門家によるフラットな組織には、いつでも専門家が最新の情報が得られるようにシステムを構築しなければなりません。このあたりのことを、官僚などは未だに理解していないのでしょう。 

そもそも、保健所がコロナ情報の中心になるという考え方自体が時代遅れです。本来このような情報は、クラウド上に蓄積できるようにし、医師もしくはその代理人がこのクラウドにアクセスして、コロナ患者のデータを入力できるようにすべきでした。

保健所や、コロナ関連の官僚は、情報の結節点そのものになるのではなく、このクラウドにアクセスして、その時々で分析を行い、様々な政策を立案するという方式にすべきでした。その仲でも、特に各地に位置する保健所は、その地域に即したきめ細かい提言などができるはずです。

このようなシステムは、現在ではさほど資金を投下しなくてもできますし、素早く構築できます。

それにしても、末端の保健所の職員は大変です。未だにファクスや電話を用いて、患者に連絡したり、病院の状況を把握したりするのですから、いくら人手があっても足りないと思います。

まさに、上の高橋洋一氏の記事の結論部分にもあるように、「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」 のです。

テレビドラマ「踊る走査線」名セリフ「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」

無論、保健所が全く関与するなととまではいいませんが、少なくともコロナ感染情報の単なる結節点になるのではなく、情報を分析して、はやめに各方面に実施すべきことを伝えるなどの行動をメインとすべきです。

そうしてこそ、様々な資源の配分が効率よくできるようになるはすです。保健所の所員たちの、能力が活かされることになります。さらに、現場の医師の判断を優先するシステムにすれば、医師の能力もさらに生かされます。そのためにも、コロナ感染情報のクラウドによる一元管理をすすめるべきです。

それに、コロナ感染者数減だけを目指す感染対策はもうやめにすべきです。コロナ感染症を撲滅するにはこれから長い時間がかかります。であれば、感染者数が多少増えたにしても、重傷者、死者を増やさず、社会の機能を損なうことない強靭な社会を目指すべきです。

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2021年8月24日火曜日

中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」―【私の論評】対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって、日米豪印「クワッド」はすでに脅威(゚д゚)!

中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」

岡崎研究所


 元豪州首相のケヴィン・ラッドが、8月6日付のForeign Affairsで、クワッド(日米豪印の4か国協力)の成功は中国の野望達成にとり主要な脅威になるなどの理由で中国を警戒させていると述べている。

 ラッドがクワッドにつき何を言うのか、興味があったが、表立ってクワッドを批判することにはなっていない。安倍晋三元総理のイニシアティヴにも触れながらクワッド成立の経緯を説明し、中国の対応は当初は無視し、その後は参加国分断や猛烈な非難攻撃をやるが、それでもクワッドの進展は止められなかった、今やクワッドが世界的な反中連合になることを強く警戒しているとする。それは、世界一の経済、技術、軍事大国になるという中国の野望達成の脅威になっていると言う。このようなラッドの分析は、恐らく正しいであろう。

 中国が強く警戒する理由として、ラッドは、①クワッドが世界的な反中連合の土台になり中国の野望達成の障害になる、②台湾海峡や南シナ海などでの軍事シナリオを複雑化するということを挙げる。そして、中国の対応としては、①ASEAN諸国との関係強化、②ロシアとの関係強化、③米国が動けない自由貿易の枠組の推進、④軍事支出のさらなる拡大を挙げる。

 ラッドは「これまでのところ、中国はクワッドに効果的な対応を取れないでいる」というが、それも正しいと思う。中国は、クワッド対応に失敗しただけでなく、抑々自己主張を強める政策や振る舞いがそれを引き起こしたことを忘れてはならない。

 当初慎重だったインドも中印衝突を経てクワッド参加を鮮明にした。対中経済関係を重視してきた豪州は、中国の標的にされた。豪州によるWTO提訴は当然である。Covid-19の起源の客観的調査を求めると豪州が発言したのみで、中国は、豪州からの貿易品目に不当な関税を課す等したのだから。

 中国がクワッドを警戒していることは、対中抑止力が効いていることでもある。クワッドを注意深く進展させていくことが重要である。クワッド首脳は本年末までに対面会合開催を予定している。

 日本はクワッド協力を提唱し、推進してきた。ラッドもそれを理解の上書いている。日本の大きな貢献である。「インド太平洋」地域の概念は定着した。日本はこれらの努力を継続するとともに、中国やロシアとの関与にも努めていかねばならない。

 ASEAN諸国は特に重要である。ASEAN地域は中国との競争の主要な地域になる。日米がコロナ・ワクチンの配布に力を入れていることは良いことだ。バイデン政権の国務長官や国防長官が先頭に立った関係強化の努力が目立ってきている。米・インドネシア対話も始まる。

 欧州が漸くアジア太平洋への関与を強めていることは、良いことである。英、仏、独がインド太平洋に艦船を派遣し、我が国とも演習をするようになっている。目下英国の空母と、ドイツのフリゲート艦が東アジアに向かっている。なお今月上旬インドは今年の4か国のマラバール合同演習を西太平洋で行うことを発表した。

【私の論評】対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって、日米豪印「クワッド」はすでに脅威(゚д゚)!

現在、世界各国が持っている海軍の船は、実は2種類しかありません。1つは空母などの水上艦艇、もう1つが潜水艦です。水上艦艇はすべて、いざ戦争が起こったら、ターゲットでしかありません。

船が浮かんでいる時点で、レーダーなどで、どこで動いているのか存在がわかってしまいます。そこを対艦ミサイルなどで撃たれてしまったら、空母だろうと何であろうと1発で撃沈です。しかし、潜水艦はなかなか見つからないので、その意味では現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力なのです。

現代の海戦においては潜水艦が本当の戦力

そういう観点から見ると、中国はたくさんの水上艦艇を所有していますが、潜水艦そのもや対潜戦闘などの能力、水面より下の戦力は弱いです。一方日米は、水面より下の戦力においては圧倒的に強いです。

サイズ的には中国海軍は、数も多いし脅威ではありますが、実際の戦闘態勢になったら、水中の戦力は日米のほうが圧倒的です。海戦ということになると、中国は日本単独と戦っても負け戦になってしまいます。

特に、日米が協同した場合、海戦においては世界最強です。日本の通常型潜水艦は、静寂性(ステルス性)に優れており、中国にはこれを発見することはできません。一方米国の原潜(米国製通常型潜水艦は製造されていない)は、攻撃型も戦略型も攻撃力は世界一です。

日米潜水艦隊が協同して、日本の潜水艦隊が情報収集にあたり、米原潜が攻撃をするなど双方の長所を生かした役割分担をした場合、これに勝てる海軍はありません。ロシアは無論のこと中国でも海戦では全く歯がたちません。

かつて、中国の潜水艦というと、ドラを打ち鳴らすように音を出しながら水中を進むと形容されたように、場所がすぐにわかってしまったと言われた時代がありました。最近は静粛性が上がっているものの、それでも日米の世界最強の対潜哨戒能力からすれば、中国の潜水艦は簡単に中国に発見されてしまいます。


最近では、米国の対潜水艦装備を用いている英空母打撃群が追尾する中国の潜水艦をすぐに発見してしまったという報道がなされています。英軍にも発見できるわけですから、世界最高の哨戒力のある日米にはすぐに発見されてしまいます。これでは、そもそも勝負になりません。日米と中国の海戦は、目の見えない中国と目がよく見える日米との戦いと言っても過言ではありません。

さらに、中国が日米などと比較して、徹底的に劣っていることに中国に仲間がいないということがあります。中国には同盟国がないということです。

過去の戦争を見ると、勝った国は、最新テクノロジーを持っていたとか、物量的に優位だったとの分析がなされていますが、同盟が強かった国が勝って来たということができます。

 その典型は英国です。英国は、ロシアが強大になるとフランスと同盟を組み、ドイツが強大になるとらロシアと同盟を組み対処してきました。 英国は、仲間づくりがうまいのです。

 日本も歴史を振り返ると、日露戦争のときは英米を含めてうまく仲間を使っています。ロシアがバルチック艦隊でアフリカの方を回って来てもスエズ運河に入らせないとか、途中でどこかの港に入ったら邪魔するということをやってくれましたし、横須賀には英国が売ってくれた「戦艦三笠」がありました。 

英国は、物資も戦費も調達してくれ、英国かなりお世話になったのです。日本も勝てた戦争を冷静に見て行くと、良い国と同盟を結んでいたから勝てたということができます。 

ところが第二次世界大戦では、ABCD包囲網で、周りが敵だらけになり、外交的に負けている状況で戦争をやろうとしていました。これでは勝てるわけがなかったのです。

Aが米国、Bが英国、Cは中国、Dはオランダです。日本には当時まともな同盟相手がいませんでした。一応、ドイツは同盟国だつたですが、たまにBMWの試作エンジンを送ってくれるとか、金塊を潜水艦で送ってくれましたが、それ以外はほとんど役に立たなかったのです。

第2次世界大戦中は、結局日独伊が組んだ大規模な作戦など一度も実施されませんでした。物資や経済的な交流もほとんどなく、独伊は同盟国としてある程度機能していましたが、日独伊三国同盟はほとんど機能していませんでした。

日独伊三国同盟の祝賀会の写真をカラー化(渡邉英徳教授のTwitterより)

そうして、いまの中国を見てください。いざというときに頼りになる仲間はいません。経済力は強いのですが、同盟システムを彼らは持っていません。

仲が良いのは、北朝鮮やラオス、カンボジアくらいです。ロシアとは表面上は仲が良いようにしていますが、その実氷の微笑ともいえるような冷たい関係です。

米国は世界に四十数ヵ国の同盟関係を持っています。これらの同盟国の基地も使えますし、軍隊も派遣できます。 人間もそうなのですが、国も仲間は大切です。いざというときに助けてくれる仲間が必要です。

中国はそういう意味で、仲間を得られない国なのです。元々システム的に弱さを持っているのです。
 
日本も同盟の大切さを常に意識しなければいけません。 中国に対抗するという意味では、オーストラリアが重要です。今回のオリンピックでも、オーストラリアの選手が日本に感謝してくれていました。

オーストラリアはこれからも日本にとって大事な国になって来ます。また、インドもクアッドという仕組みに入っています。日本が自発的に仲間になろうと、みんなとうまくできる状況をつくることが必要です。そうして、将来的にはこれらの国と同盟国になることが、中国と対抗していく上で重要になってきます。

対潜哨戒能力も同盟関係も貧弱な中国にとって日米豪印「クワッド」はすでに脅威です。さらに、クワッドが欧州などとも同盟関係を強めれば、中国が一国でこれに対処するのは不可能です。


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2021年8月23日月曜日

自衛隊機、アフガンに出発 邦人・現地スタッフ退避へ 外国人輸送は初―【私の論評】困難を伴う任務の成功とみなさんの無事の退避を心から願う(゚д゚)!

自衛隊機、アフガンに出発 邦人・現地スタッフ退避へ 外国人輸送は初



アフガニスタンに向けて出発する航空自衛隊機=23日午後、埼玉県の航空自衛隊入間基地


 政府は23日、イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに残る邦人や大使館などの現地スタッフを国外退避させるため、自衛隊の輸送機を派遣した。

  自衛隊法に基づく措置で、外国人の輸送は初めてとなる。

  政府は同日午前、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)を開き、自衛隊機を派遣する方針を確認。この後、岸信夫防衛相が自衛隊に派遣を命じた。 

 第1陣となる航空自衛隊のC2輸送機1機は同日夕、派遣先のカブール国際空港に向けて入間基地(埼玉県狭山市など)を出発。24日にはC130輸送機2機が出発する方向で調整している。隊員計数百人も現地入り。準備が整い次第、輸送活動を開始する。

  輸送対象は、国際機関の日本人職員に加え、日本大使館や国際協力機構(JICA)のアフガニスタン人などの現地スタッフで、家族も含め数百人規模になる見通し。カブール国際空港から周辺国に向かう。 

【私の論評】困難を伴う任務の成功とみなさんの無事の退避を心から願う(゚д゚)!

昨日のこのブログで、今回の自衛隊の作戦は、現地アフガニスタン人スタッフやその家族の保護も含むだろうと予測しました。その予測はあたりました。本当に良かったです。

せめて、現地アフガニスタン人スタッフやその家族を中継地まで送り届けるべきとも主張しましたが、その通りになったようです。

国産のC2輸送機

この作戦、C2輸送機C130輸送機2機が参加するとのことですが、これは結構規模の大きいものといえると思います。なにしろこれらの航空機かなり巨大です。下の写真はC2輸送機の内部です。

C2輸送機の内部

昨日は、タリバンの残虐さと平気で嘘をつくことを述べました。この作戦には、もちろん危険もともなうかもしれません。

アフガンでは、まだ戦闘が続いています。タリバンの報道官は「敵はパンジシールで包囲されている。我々は平和的解決を望んでいる」と主張しています。パンジシールのアフマド・マスウードの方も話し合いを求めているので、どちらも真実なら戦闘は発生しないことになる。戦闘が発生すれば、どちらかがウソをついていたことになります。

タリバンはガニ大統領と政府高官に対する恩赦を発表していますが、これを信じて戻ったら大変なことになるでしょう。タリバンは政府関係者や外国への協力者をブラックリスト化し、一軒一軒探し回っていると多くのメディアが伝えています。すでに殺害・処刑された人もいます。

今回の輸送の前提となる「安全」について、政府は米軍が首都カブールの空港を掌握しており確保されていると説明しています。ただ、輸送対象の邦人や大使館などの現地職員らは自力で空港までたどり着かなければならず、危機下の邦人保護の難しさも浮き彫りになっています。

岸信夫防衛相は23日、防衛省で記者団に「各国は自らの軍用機で自国民や現地職員を退避させている。人道的な観点から、自衛隊がこうした方々を退避させることは重要な責務だ」と強調しました。

防衛省は今回の輸送にあたり、カブール空港に現地調整所を設置します。空港は米軍の管理下にあり、輸送対象の邦人らは米軍のセキュリティーゲートを通過し、外務省職員による本人確認などの検査を受けることになります。自衛隊はそうした手続きのサポートに加え、輸送機までの誘導などを担いますが、その活動範囲は空港内にとどまるのが現実です。

日本政府は平成28年に施行した安全保障法制で、自衛隊法を改正し在外邦人の保護措置に関する規定を整備しました。同法84条の3「在外邦人等の保護措置」に基づけば武器使用範囲が広がり、任務遂行を妨害する相手に対しても武器使用が可能となります。ただ、権限がより強くなる分、前提条件も今回適用する84条の4「在外邦人等の輸送」よりも厳格で、「当該外国の同意」が必要となります。

日本政府は、タリバンが樹立を目指す新政権を承認するかどうか慎重に見極める構えです。混乱が続くカブール空港外で、自衛隊による「在外邦人等の保護措置」を実施するのは困難です。

また、空港から国外へ退避させたアフガニスタン人の現地スタッフとその家族らをどう処遇するかも課題の一つとなっています。安全な場所にいったん、退避させた後、本人の希望を踏まえて日本に入国させることや、第三国に移動させることなども検討します。

アフガンに赴くためC2輸送機に乗り込む自衛隊員ら

今回の作戦における最大の懸念は、故障あるいはミサイル攻撃等でカブールにおいて修理が必要になった場合、国産のC-2では米軍の支援を受けることを期待できず、最悪の場合、カブールで放棄しなければならなくなる可能性もあるということです。一方のC-130は、世界中で使われている航空機です。こうした点では安心です。

C-2を使う場合は、カブールには直接飛ばさず、ディエゴガルシア(インド洋にある環礁。アメリカ軍とイギリス軍の基地がある)と在日米軍基地間など、幹線空輸用に使用することが望ましいのでそのようにするかもしれません。

もし自衛隊機がタリバンの携帯式SAMで攻撃され、フレアなどでミサイルを回避できなかった場合、大変な悲劇になることを懸念している方がいると思います。 

戦闘機と違い大型の輸送機は、機動するといってもそれほど派手な機動はできません。懸念は、もっともかもしれません。 

しかし、大丈夫です。携帯式SAMでは、よほど運が悪くなければ、ミサイルが命中しても大型機が墜落することはありません。 

イラク派遣の直前には、かなりの輸送機が、バグダッド国際空港の周辺で携帯式SAMによる攻撃を受け、一部にはミサイルが命中しています。 

軍の輸送機についてはニュースになっていませんが、国際宅配便の独DHLの航空機が被弾し緊急着陸したことは報じられています。この時は、運悪く主翼内の燃料が燃えたため、かなりのダメージとなりましたが、人的被害はありませんでした。 

携帯式SAMは、多くのものが赤外線誘導で、熱源であるエンジンに命中します。当然、そのエンジンは故障しますが、携帯式SAMの弾頭は手榴弾程度の破壊力しかないので、早い話、命中したエンジンしか壊せないのです。むしろ、エンジンから飛び散ったブレードの方が怖いくらいです。 

そうして、旅客機でも同じですが、大型機は、エンジン1基が故障しても、飛行を続けられるように作られています。また、当然ながら軍用機は民間機よりも頑丈です。 

C-130にせよ、C-2にせよ、たとえ攻撃を受けても、DHL機のようにカブールに緊急着陸しなければならなくなる可能性はありますが、撃墜される可能性はきわめて低いと言えるでしょう。

ただ、現地では何が起こるかはわかりません。カーブル空港北門付近で銃撃戦が発生し、米軍や独軍も巻き込まれアフガン治安部隊メンバーが死亡したという報道もあります。困難を伴う任務の成功とみなさんの無事の退避を心から願います。

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