まとめ
- 情報漏洩の疑い: APB社の全樹脂電池技術が、中国と関係の深い日本企業(TRIPLE-1)経由で中国企業(ファーウェイ)に流出した可能性がある。
- 経済安全保障リスク: 福島伸享議員が、潜水艦への転用で軍事バランスが逆転する危険性やスパイ行為の可能性を指摘し、政府に調査を要求。
- 技術の重要性: 全樹脂電池は安全性と容量に優れ、次世代潜水艦への搭載が検討される日本発の先端技術で、NEDOから75億円の補助金が投じられている。
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APB創業者の堀江英明氏 |
全樹脂電池の機微情報が中国企業に流出した可能性が浮上した。APB社(福井県越前市)が中国と関係の深い日本企業に経営権を握られ、情報漏洩が疑われている。武藤容治経済産業相は経済安全保障の観点から調査意向を示した。
衆院議員の福島伸享氏は、政府に実態調査を求め、特にAPB社の筆頭株主がTRIPLE-1(T社)に変わり、中国企業との接点が増えた点を問題視。T社取締役が主導したファーウェイ技術者による工場見学や技術情報問い合わせが漏洩の具体例とされた。
福島氏は潜水艦への転用で軍事バランスが逆転するリスクを警告し、スパイ行為の可能性も指摘。警察庁は先端技術流出対策の重要性を認め、公安調査庁も関心を寄せている。全樹脂電池は安全性と容量で優れ、次世代潜水艦への搭載が検討されている日本発の技術である。
【私の論評】全樹脂電池の危機:中国流出疑惑と経営混乱で日本の技術が岐路に
まとめ
- 技術の有望性: APBが開発する全樹脂電池は、安全性と容量に優れ、次世代潜水艦への搭載が検討される先端技術。
- 経営権争い: 2024年夏に創業者の堀江英明氏が解任され、TRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任したことで、資金調達が停滞している。
- 情報漏洩疑惑: TRIPLE-1が中国企業と接触し、2023年3月にファーウェイの技術者がAPB工場を見学したことで、技術流出が疑われている。
- 技術の重要性とリスク: NEDOから75億円の補助金を受けたこの技術は、経営混乱により量産化が不透明となっている。
- 経済安全保障の懸念: 政府と関係機関は、日本の技術保護のため状況を注視し、対策が求められており、日本ではやはりスパイ防止法を制定すべきである。
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福井県越前市に拠点を置く日本のスタートアップ企業APB |
APBは福井県越前市に拠点を置く日本のスタートアップ企業だ。全樹脂電池を開発している。この電池は次世代潜水艦への搭載が検討されるほど有望な技術である。全樹脂電池は電極に金属を使わず樹脂を採用することで、発火や爆発のリスクを大幅に減らす。容量は従来型の約2倍だ。生産コストは半減できるという特徴を持つ。
こうした状況の中、TRIPLE-1の行動が意図的なスパイ行為なのか、単なるビジネス上の接触なのかははっきりしていない。警察庁は「先端技術流出対策は極めて重要」と強調している。公安調査庁も強い関心を示している。情報漏洩の直接的な証拠は限定的だ。それでも、全樹脂電池が中国に流れ、潜水艦に転用されれば、日中の力関係の変化のリスクは無視できない。
2018年に日産自動車出身の堀江英明氏によって設立されたAPBは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から75億円の補助金を受けている。川崎重工業と共同で潜水艦向けの研究を進めてきた。しかし、現在この企業は経営危機と情報漏洩疑惑に直面している。経済安全保障上の懸念が高まっている。
2024年夏、創業者の堀江氏は代表取締役を解任された。福岡のスタートアップTRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任した。これにより状況が大きく変わった。経営権争いが激化している。資金調達にも影響が出ている。2023年に北国フィナンシャルホールディングス(FHD)傘下のQRインベストメントから調達した12億円の資金は、堀江氏の続投が条件だった。追加融資が止まった可能性がある。
一方で、TRIPLE-1と中国企業との関係が注目されている。TRIPLE-1は半導体設計・開発を主とする企業だ。ビットコイン採掘用のチップ「KAMIKAZE」を開発している。ユニコーン企業とも称される。2022年に三洋化成からAPBの株式を取得した後、中国企業との接触が増加した。
TRIPLE-1の中国とのつながりは、ディレクターのZhongxin Panという人物の存在からも推測されている。Zhongxinは中国語で「忠信」と表記される。Panは中国で一般的な姓だ。ただし、この人物の国籍や背景は明らかではない。証拠は間接的である。
2024年夏、創業者の堀江氏は代表取締役を解任された。福岡のスタートアップTRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任した。これにより状況が大きく変わった。経営権争いが激化している。資金調達にも影響が出ている。2023年に北国フィナンシャルホールディングス(FHD)傘下のQRインベストメントから調達した12億円の資金は、堀江氏の続投が条件だった。追加融資が止まった可能性がある。
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大島麿礼氏 |
さらに、FHDの投資子会社が東京地裁に会社更生法の適用を申請した。その後取り下げた一連の動きは、TRIPLE-1との争いの激しさを示している。
一方で、TRIPLE-1と中国企業との関係が注目されている。TRIPLE-1は半導体設計・開発を主とする企業だ。ビットコイン採掘用のチップ「KAMIKAZE」を開発している。ユニコーン企業とも称される。2022年に三洋化成からAPBの株式を取得した後、中国企業との接触が増加した。
特に、2023年3月にTRIPLE-1派遣の取締役が主導した。中国通信機器大手のファーウェイの技術者4人がAPB工場を見学したことが問題視されている。見学前には「全樹脂電池の素材に興味がある」とのメールが交わされた。その後も技術情報の問い合わせが続いたと報告されている。衆院議員の福島伸享氏は、「潜水艦に転用されれば日中間の軍事バランスが逆転する」と警告している。
TRIPLE-1の中国とのつながりは、ディレクターのZhongxin Panという人物の存在からも推測されている。Zhongxinは中国語で「忠信」と表記される。Panは中国で一般的な姓だ。ただし、この人物の国籍や背景は明らかではない。証拠は間接的である。
北村滋元国家安全保障局長が代表を務める北村エコノミックセキュリティ合同会社の報告書では、TRIPLE-1の取締役について「中国との密接な関係が見受けられる」とされている。具体的な裏付けは不明だ。堀江氏は「大島氏が中国企業と秘密保持契約を結んだ。技術情報を共有した形跡がある」と証言している。懸念を表明している。
TRIPLE-1は華々しい看板を掲げつつ、その裏で何かを隠しているような気配が濃厚だ。実態の曖昧さ、中国との不自然な接近、経営の不透明さ。これらが絡み合い、ただの企業とは言い難い怪しさを放っている。真相が明らかになるまで、疑いの目は離せない。
TRIPLE-1は華々しい看板を掲げつつ、その裏で何かを隠しているような気配が濃厚だ。実態の曖昧さ、中国との不自然な接近、経営の不透明さ。これらが絡み合い、ただの企業とは言い難い怪しさを放っている。真相が明らかになるまで、疑いの目は離せない。
こうした状況の中、TRIPLE-1の行動が意図的なスパイ行為なのか、単なるビジネス上の接触なのかははっきりしていない。警察庁は「先端技術流出対策は極めて重要」と強調している。公安調査庁も強い関心を示している。情報漏洩の直接的な証拠は限定的だ。それでも、全樹脂電池が中国に流れ、潜水艦に転用されれば、日中の力関係の変化のリスクは無視できない。
無論、中国が全樹脂電池を搭載した潜水艦を製造して配備したからといって、それだけではすぐに日中の軍事バラランスが崩れるということはない。潜水艦は、日本の高度な対潜水艦戦(ASW:Anti Submarine Warfare)能力の要ともなる重要な要素だが、潜水艦の動力源だけが優秀なものに変わったとしても、それだけでASWの能力が飛躍的に伸びるわけではないからだ。ASW能力は、様々な要素がからむ、総合的であるだけではなく統合的な能力だからだ。それにしても、この技術が中国側にわたり、それが実用化されれば中国を利することは間違いない。
それにこの技術だけではなく、他の機微な技術も中国の手にわたれば、現在は圧倒的に日本が強い海戦能力が中国に逆転される可能性もある。そうなれば、由々しき事態だ。
それにこの技術だけではなく、他の機微な技術も中国の手にわたれば、現在は圧倒的に日本が強い海戦能力が中国に逆転される可能性もある。そうなれば、由々しき事態だ。
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TRIPLE-1の会社概要 |
APBの全樹脂電池は日本が誇る先端技術である。経営権争いと情報漏洩リスクにより、量産への道は不透明だ。堀江氏はこの状況について、「トリプルワンは半導体技術などに出資をしている会社だが、技術が分かる人はいないようだ。43億円の資金をAPBに入れるとの約束も事前にしていたが、一向に何も実行されることもない。実態が不明な会社に株を引き渡してしまったことは、私の責任だ」「今回のように技術の価値が分からない人の手に渡るような事態は想定していなかった。わなにかかったと言われても仕方ない」と悔やんでいる。
裁判所の判断や新たなスポンサー探しが注目されている。政府と関係機関は、この状況を注視している。日本の技術を守るための適切な対策を講じる必要がある。これだけ警鐘が鳴り響いているのだ、もはや月並みと言っていいくらいだが、やはり日本は、スパイ防止法を制定すべきだろう。
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