2025年3月21日金曜日

ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」―【私の論評】ドイツ経済大変貌!メルツ政権の75兆円政策で欧州株急騰、日本はどうなる?

 ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」

まとめ

  • ドイツを中心とする欧州株上昇の背景には、トランプ政権の安全保障政策変化による軍事費拡大期待と、ドイツでの歴史的な財政政策転換がある。具体的には、5000億ユーロ規模のインフラ投資基金設立と防衛費増額(GDP比3%目標)が憲法改正を伴って実現しつつあり、GDP比2%相当の歳出拡大が見込まれる。
  • ドイツの新首相フリードリヒ・メルツ氏は、緊縮財政を続けてきた従来の方針を転換し、増税なしの拡張財政で経済成長を目指す。これが2025年後半から欧州経済の停滞脱却を後押しすると予想される。
  • 2025年初来の株価騰落率でドイツ(DAX+15.5%)が米国(S&P500-4.1%)や日本(TOPIX-2.5%)を大きく上回り、金融市場に大きな変化をもたらす可能性がある。
  • 一方、米国株はトランプ政権の関税政策への不確実性、日本株は石破政権の緊縮財政と減税失敗が低迷の要因となり、欧州株との明暗が分かれている。
  • ドイツの政策転換は、メルケル体制からの脱却と安全保障環境変化への対応を意味し、経済停滞や社会不安への不満が背景にある転換点として注目される。
フリードリッヒ・メルツ独首相

 現在ドイツを中心とする欧州株が上昇している理由は、トランプ政権の安全保障政策の変化を背景に、欧州各国が軍事費拡大に踏み切る政治決断への期待が高まったためである。

 特に、長年緊縮的な財政政策を続けてきた経済大国ドイツでは、2月の総選挙でキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)を率いるフリードリヒ・メルツ氏が勝利し、首相就任後、大胆な政策転換を進めている。

 具体的には、5000億ユーロ規模のインフラ投資基金(GDP比11%)を設立し、防衛費を現在のGDP比2%前後からNATO目標の3%へ増額する計画を推進。

 これに伴い、財政規律を緩和する憲法改正が緑の党との合意を経て実現する見込みだ。

 この政策により、2025年後半から10年以上にわたりGDP比1%の歳出拡大が続き、インフラと防衛費の重複を考慮してもGDP比2%相当の追加歳出が期待される。

 さらに、増税を伴わず減税も検討されており、拡張財政が経済成長を押し上げる見通しだ。
これがドイツ経済の停滞脱却と金融市場の変革をもたらす歴史的転換点とされ、欧州株上昇の原動力となっている。

 一方、米国株はトランプ政権の関税政策や発言への不確実性から2025年初来でS&P500が-4.1%と停滞。日本株も石破政権下で減税が実現せず緊縮財政が続き、TOPIXは-2.5%と低迷している。ドイツの政策転換は、メルケル時代からの政治体制変化や移民問題、ウクライナ紛争といった脅威への対応としても注目され、欧州経済全体の回復期待を高めているが、その影響が金融市場にまだ十分織り込まれていないのではないか。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ドイツ経済大変貌!メルツ政権の75兆円政策で欧州株急騰、日本はどうなる?

まとめ
  • ドイツのメルツ新政権は、緊縮財政から転換し、5000億ユーロで経済を活性化。DAXは15.5%上昇だが、株価への反映はまだ不十分で、後から急上昇の可能性も。
  • メルツの政策とアベノミクスは、経済停滞打破と株価上昇で似るが、メルツは安全保障重視、アベノミクスはデフレ対策が特徴。
  • 日本はコロナ禍で100兆円の補正予算を投入し経済を支えたが、石破政権の緊縮財政でドイツのような転換は見られない。
  • ドイツの成功は政権交代が鍵で、日本も石破政権崩壊で緊縮脱却、アベノミクス再来の可能性がある。
  • メルツは減税と財政拡大で企業を後押し、アベノミクスは金融緩和を重視し、アプローチが異なるが、目指すところは同じである。

メルケル

ドイツの政策転換は、電撃的な衝撃だ。メルケル時代のケチケチした緊縮財政から、メルツ新政権が大胆に金を使う路線へ舵を切った。移民問題やウクライナ紛争という火急の脅威に立ち向かうため、5000億ユーロ(約75兆円、1ユーロ=150円換算)のインフラ投資と防衛費増額に突っ込む。憲法改正までぶち上げて、欧州経済に活を入れる気だ。メルケルのお花畑的優等生路線から、保守派の硬派な姿勢への転換が火種だ。

金融市場はすでにザワついている。DAXが15.5%も跳ね上がった。だが、まだこの変化の大きさが株価に反映されていないようだ。株価は未来を先読みするバロメーターだ。普通なら、6~12カ月先を見越して動く。なのに今回は、不確実性が影を落とし、投資家がその凄さを掴みきれていないようだ。

米国株や日本株がグズグズしている中、欧州株が光っている。それでも、アベノミクスの時のように、後から急激に織り込まれる可能性がある。ドイツの変貌はとんでもないが、株価にその全貌が映っていないのだ。簡単に言えば、もっと騒がれてもいいのに、まだ過小評価の段階だ。

アベノミックスでは、大胆な金融政策が一番目の矢とされていた

メルツの経済政策とアベノミックスを並べてみると、面白い。どっちも経済に喝を入れる点では似たようなものだ。メルツは2025年、緊縮の鎖をぶち切り、5000億ユーロ(約75兆円)のインフラ投資と防衛費増額をぶち上げた。経済をブーストする積極財政だ。アベノミックスも2013年、安倍晋三が公共事業やインフラに金をつぎ込んで景気を浮上させた。どっちも停滞をぶっ壊すのが狙いだ。メルツは減税で企業の尻を叩こうとする。アベノミックスも法人税を下げて、民間を焚きつけた。株価が跳ねるのも一緒だ。メルツの下でDAXが15.5%上がり、アベノミクス初期は日経平均が50%以上ぶっ飛んだ。

だが、違うところも大きい。メルツは安全保障が火種だ。トランプの圧力やウクライナ紛争で、防衛費をGDP比3%まで引き上げる。日本でも似た動きがあった。コロナ禍だ。2020~2021年、安倍政権が60兆円、菅政権が40兆円、合計100兆円(当時のGDPギャップに匹敵)の補正予算を増税なしでぶち込んだ。国債を大量に発行し、日銀がそれを買い取ってコロナ禍対策を大々的に行った。これが大当たりだ。経済がズタボロになるのを食い止め、2021年にはGDP成長率が2.1%まで持ち直した。

アベノミックスを説明する安倍首相(当時)

当時ドイツでは2020年に失業率が4.9%から6.1%にグンと上がったのに、日本は2.8%から3.0%でほぼピクリともしなかった。アベノミックスの柔軟な対応が効いた証明だ。一方、アベノミックスの本命はデフレをぶっ潰すことだ。金融緩和と円安でガンガン攻めた。メルツは金の使い方に頼りきりで、金融の話はほとんど出てこない。これには、EUの特殊事情がある。

そもそもドイツは独自に金融政策を実施できない。ユーロ圏の一員として、欧州中央銀行(ECB)が金融政策を管理する。ドイツ連邦銀行はECBの方針に従う。財政政策はある程度独自にできるが、金融政策はECBの枠組み内なのだ。さらに、メルツは憲法改正で財政の縛りを緩めるが、アベノミクスは、メルツみたいに憲法改正はせず、既存の仕組みでやりくりした。

つまり、メルツとアベノミックスは経済をぶち上げる点で似てるが、メルツは安全保障で財政を振り回し、アベノミクスはデフレ退治で金融を動かした。コロナ禍の日本は、メルツの現在の危機対応に似ており成功を収めた。今後、ドイツは経済政策で勝ちに行く可能性が高い。メルツの豪腕が経済を引っ張るだろう。だが、日本はアベノミックスで勝ったのに、それが軽んじられている。

ドイツの成功は政権交代が鍵だ。日本も石破政権が崩れれば、同じ道を突っ走れるかもしれない。緊縮の呪いから抜け出し、アベノミックスの再来を狙えるかもしれない。政権がひっくり返れば、日本も化ける可能性も十分あるのだ。しかも、ドイツと比較すれば、日本は独自の金融政策をとることもできる。これはドイツと比較すれば、かなり有利だ。もうそろそ、日本もドイツと同じように、長年の緊縮財政の宿痾から逃れるべきだ。

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