2025年3月17日月曜日

有志国、停戦後のウクライナ支援へ準備強化 20日に軍会合=英首相―【私の論評】ウクライナ支援の裏に隠された有志国の野望:権益と安全保障の真実

 有志国、停戦後のウクライナ支援へ準備強化 20日に軍会合=英首相

まとめ

  • 英国スターマー首相は「有志国連合」でウクライナ支援を強化し、ロシアに停戦案接受を圧力。約20カ国首脳らと会議開催も米国不参加。
  • ロシアへの圧力とウクライナ支援継続を確認。20日に英国で安全保証計画の会合予定。
  • ゼレンスキー氏は安全保証を強調。英仏は平和維持部隊派遣、豪も協力検討。

英国スターマー首相

 英国のスターマー首相は3月15日、停戦後のウクライナ支援を強化するため「有志国連合」が準備を進めていると発表した。同氏はオンライン会議を主催し、トランプ米政権の停戦案を受け入れるようロシアのプーチン大統領に圧力をかけることを目指した。会議には独、仏、伊、カナダ、オーストラリアなど約20カ国の首脳やウクライナのゼレンスキー大統領、NATO事務総長が出席したが、米国は不参加だった。

 有志国連合は、ウクライナへの軍事支援と停戦実現への決意を確認。スターマー氏は、ロシアへの圧力強化、ウクライナ支援の継続、制裁強化でプーチンを交渉に引き込む方針を示した。また、20日に英国で軍関係者会合を開き、ウクライナの安全保証計画を策定すると述べた。ゼレンスキー氏は外国部隊駐留など安全保証の必要性を訴えた。英仏は平和維持部隊派遣の可能性に触れ、豪首相も協力の用意を示した。

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【私の論評】ウクライナ支援の裏に隠された有志国の野望:権益と安全保障の真実

まとめ
  • スターマー首相が「有志国連合」でウクライナ支援を強化。3月15日に20カ国首脳が集まり、ロシアに圧力。米国は不参加。20日に安全保障計画を策定、英仏は平和維持部隊を検討。
  • ウクライナは技術と教育水準が高く、ロシア排除で経済発展の可能性。レアメタル、穀物、市場が権益。有志国はこれを狙い、西側に取り込む。
  • 安全保障が動機だが、権益が本音。英国は23億ポンドで資源、フランスは穀物、ドイツは技術に投資。儲からないスーダンとは支援とは違い熱心だ。
  • 戦争と汚職が障害。裏取引の証拠なし。専門家は「権益がなければ支援は弱い」と言う。
  • 日本は資源なし。危機時の支援には経済力と技術力が必要。湾岸戦争の教訓から日本の価値を示せ。


英国のスターマー首相が3月15日、動き出した。停戦後のウクライナ支援を強化するため、「有志国連合」が準備を進めていると公表した。トランプ米政権の停戦案をロシアのプーチンに呑ませるべく、オンライン会議を主催。ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリアなど約20カ国の首脳が集まり、ウクライナのゼレンスキー大統領やNATO事務総長も顔を出した。だが、米国は参加せず。トランプとの交渉がこじれたらしい。有志国連合は一致団結、ロシアへの経済制裁を締め上げ、ウクライナ支援を続け、プーチンを交渉の場に引っ張り出すと決めた。

スターマーはさらに20日、英国で軍関係者の会合を開く。ウクライナの安全をどう守るか、具体的な計画を立てるつもりだ。ゼレンスキーは外国部隊の駐留やNATO加盟を求めて声を張り上げた。英国とフランスは「平和維持部隊を出すのもありだ」と言い出し、オーストラリアのアルバニージー首相も「要請があれば乗る」と応じた。ロシアは「西側の介入は火に油だ」と吠えているが、知ったことか。

ウクライナはただの弱小国ではない。旧ソ連の航空宇宙や重工業の技術を引き継ぎ、頭のいい人材がゴロゴロいる。開戦前、識字率はほぼ100%。教育レベルはかなり高い。ロシアの干渉や汚職さえなくなれば、経済が一気に跳ね上がる可能性は大きい。それに加えて、リチウム、チタン、レアアースといった鉱物資源、欧州一の黒土で育つ穀物、ITや製造業の力。これらが有志国にとって喉から手が出るほど欲しい権益だ。資源を握り、4000万人を超える人口の市場を取り込み、復興で利益を得て、ロシアを蹴落とし、ウクライナを西側に引き込む。そんな野望が透けて見える。

日常を取り戻しつつあるキーウ 賑わうオープンテラス

ただし、障害は山積みだ。戦争でボロボロのインフラ、復興には5000億ドルかかると言われる。汚職もひどい。2023年の透明性国際の調査で122位だ。米国と資源を共同管理する裏取引の噂もあるが、証拠はない。2025年2月、トランプが鉱物収益のファンドを提案したらしいが、ゼレンスキーと揉めて失敗した。

有志国は「安全保障と安定のため」と言う。確かにそれは大事だ。だが、本音はもっとドロドロしている。権益がなければ、こんなに熱くはならない。英国はロシアのガスに頼るのをやめたい。2022年、23億ポンドをウクライナに提供した。ウクライナのガス田やチタン鉱山(世界の20%を握る)が狙いだ。

フランスは穀物だ。ウクライナが欧州の10%以上の穀物を供給している。2022年の時のような食糧危機を避けたい。2023年、5億ユーロを追加で支援した。ドイツは工業技術に目をつけ、2024年に風力発電プロジェクトに資金を提供した。

歴史を振り返れば、分かりやすい。1990年代、ユーゴスラビア紛争後、NATOは復興支援でコソボやボスニアの鉱物や市場に食い込んだ。だが、儲からない紛争地はどうだ?スーダン内戦(2023年~)では死者が何万人も出たのに、西側の支援は年間数億ドル。ウクライナへの2000億ドル超とは比べ物にならない。シリア内戦も似た話だ。資源も市場もないと、空爆と難民支援で終わりだ。

ユーゴスラビア紛争の激戦地コソボの首都プリティシュナの家族連れで賑わう独立広場

ウクライナがレアメタルや市場を持たなかったら、有志国のやる気はここまでにはならなかっただろう。専門家のジョン・ミアシャイマーは2023年の論文で喝破した。「西側はウクライナをロシアから奪い、経済と軍事の拠点にする気だ。資源と市場が鍵だ」と。安全保障や人道は表の顔。裏は権益だ。これらの事実が物語っている。

日本はどうだ。地下資源はほぼゼロ。ウクライナみたいに危機が来たら、他国が助けてくれるか?日本のODAは2023年で180億ドルだ。だが、1990年代の湾岸戦争では130億ドル出したのに「金だけか」と笑われた。経済力と技術力がないと、見捨てられる。日本独自の高度な技術等で勝負するしかない。日本はそれを肝に銘じるべきだ。さもないと、いざという時、見捨てられるだろう。それが、世界の厳しい現実なのだ。

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