2025年3月25日火曜日

「デフレ克服していない」 加藤財務相、英紙に表明―【私の論評】日本がデフレ脱却できない衝撃の理由!物価・賃金・日銀の失策を暴く

「デフレ克服していない」 加藤財務相、英紙に表明

まとめ
  • 加藤勝信財務相は、日本がデフレを克服していないと認識し、物価や賃金上昇があってもデフレ再発の懸念がなくなるまで慎重に判断すべきだと強調。
  • 経済正常化には長期的な賃金上昇が物価上昇を上回ることが不可欠と訴え、日銀が政策金利を0.5%に据え置いた直後のインタビューで語った。

 加藤勝信財務相は、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、日本がまだデフレを克服していないと述べた。物価や賃金が上がっているが、デフレ再発の懸念がなくなるまでは克服を宣言すべきでないと強調。

 日銀が政策金利を0.5%に据え置いた会合直後に語った。基調的な物価や背景を総合的に見て慎重に判断すべきとし、経済正常化には賃金上昇が物価上昇を上回ることが必要だと訴えた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日本がデフレ脱却できない衝撃の理由!物価・賃金・日銀の失策を暴く

まとめ
  • 日本はデフレから脱却できておらず、コアCPIは2023年に2.5%、2024年に2.3-2.7%と不安定で、コアコアCPIも2.1-2.4%と低迷。需要が物価を押し上げる力はなく、デフレ脱却の兆しはない。
  • 実質賃金は2013年以降横ばいかマイナスで、2023年は1.8%減、2024年も1.0%減。名目賃金の上昇(2-3%)は物価上昇(3%超)に追いつかず、消費は冷え込んでいる。
  • QQE(量的・質的金融緩和)は日銀が国債や株を買い、お金を増やす政策。マネタリーベースは700兆円に達したが、マネーストック(M2)は年2-3%増の1,300兆円にとどまり、経済に火がつかない。
  • 金融緩和なしの賃上げは雇用を壊す。韓国の文在寅政権は最低賃金を急上昇させたが、金融緩和不足で2019年に失業率4.0%、雇用10万人減。2021年以降は財政と輸出で回復した。
  • 日銀の金融政策は失敗。QQEやマイナス金利でマネーストックは伸びず、2024年7月の利上げ(0.25%)は銀行支援が目的で、実体経済への効果はほぼゼロ。デフレ脱却には強力な金融緩和が必要だ。

日本はデフレの泥沼から抜け出せていない。誰もが感じるその息苦しさを、数字がはっきりと示している。総務省のデータだ。コアCPI(生鮮食品を除く)は2023年に平均2.5%上がったが、2024年は2.3%から2.7%でフラフラだ。2025年3月時点でも、2%を超えるのはエネルギー価格のせいで、安定感はゼロだ。コアコアCPI(生鮮食品とエネルギーを除く)はもっと情けない。

2023年で2.1%、2024年は2.3%から2.4%だ。2024年12月時点で2.4%(ニッセイ基礎研究所)と低空飛行だ。サービス価格は1.5%から1.6%しか上がらず、需要が物価を押し上げる力なんて皆無だ。コアCPIが一瞬2%を超えてもすぐ失速し、コアコアCPIは2%に届くか届かないかでウロウロ。デフレ脱却? 笑わせるな、そんな気配はどこにもないのだ。

実質賃金もズタボロだ。厚生労働省の「毎月勤労統計」によれば、2013年以降、ずっと横ばいかマイナスだ。2023年は前年比1.8%減、2024年も1.0%減くらいだ(速報値)。2023年の春闘で名目賃金が2%から3%上がったと言うが、物価上昇(CPI総合で3%超)に追いつかず、財布はスカスカだ。製造業の労働者がNHKの番組で吐き捨てた。「給料上がっても物価高で貯金が減る一方だよ」。その言葉が胸をえぐる。賃金が上がらないから消費は冷え、デフレの鎖が経済をガッチリ締め上げているのだ。

いまはマネタリーベースとマネーストックをぶち込むべきなのだ。マネタリーベースは、日銀が現金と銀行の準備預金で世に放つお金の総量だ。2013年の量的・質的金融緩和、通称QQEでガンガン増やした。QQEは、日銀が国債や株を買いまくって、お金をジャブジャブにする作戦だ。2013年に始まり、2023年時点でマネタリーベースは約700兆円、GDP比130%だ。

マネーストック(M2)は、世の中を流れているお金の量、現金と預金を足したものだ。こいつが消費や投資に回るかどうかが勝負だ。だが日本じゃ年率2%から3%しか増えず、2023年で約1,300兆円だ。問題はここだ。QQEでマネタリーベースを増やしても、マネーストックが育たない。銀行の貸し出しも企業の投資も火がつかない。デフレをぶっ壊すには、マネーストックをドカンと増やすしかないのだ。

最近は賃上げが話題だが、金融緩和なしで賃上げだけやると、どうなるか。雇用がズタズタになる。ケインズ経済学の進化形の現代の標準的なマクロ経済学が言う通り、金融緩和で需要をぶち上げないと、賃上げは企業の首を絞め、仕事が消える。韓国の文在寅政権がその証だ。2017年から2022年、最低賃金を無理やり吊り上げた。2018年は16.4%増、2019年は10.9%増だ。だが金融緩和がショボかった。

結果、雇用は崩壊だ。韓国統計庁のデータでは、2019年の失業率が4.0%に跳ね上がり、製造業の雇用は10万人も減った。中小企業や自営業は潰れまくり、コンビニや飲食店がバタバタ倒れた。「雇用ショック」と呼ばれたあの地獄だ。でも2021年以降、コロナ対策で財政をぶち込み、半導体輸出が好調だったおかげで持ち直した。2022年の失業率は3.0%まで下がった。金融緩和が足りなかった分を、財政と外需がカバーしたわけだ。日本が同じ道を辿れば、雇用が吹っ飛ぶのは確実だ。

雇用を激減させた文在寅

消費も死んでいる。総務省の「家計調査」だ。2人以上世帯の実質消費支出は、2020年を100としたら、2023年で98.5、2024年で99.0だ。ほぼ動かない。名目では2023年に2%増えたが、物価が上がれば実質は減る。地方の高齢者が読売新聞でこう言った。「値上げで外食なんか減らすしかない。節約が当たり前だ」。消費者が値下げを待ち、企業が値上げをビビる。この腐ったサイクルがデフレを延々と引っ張っているのだ。

日銀の金融政策はどうだ。大失敗だ。「限界」じゃない、やり方が間違っているのだ。QQEでマネタリーベースは増えたが、マネーストック(M2)は年2%から3%しか伸びない。マイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)は銀行を苦しめ、貸し出しのやる気を奪う。日銀の「生活意識調査」(2024年)では、期待インフレ率が1%未満で固まっている。地方銀行の社員が日経新聞で吠えた。「低金利で融資先がない。国債しか買えないよ」。お金が経済に流れず、死に金だ。

さらに腹立たしいのは、日銀が金融機関を助けるためだけの施策に終始している点だ。証拠はある。2024年7月、日銀は短期金利を0.25%に引き上げたが、その理由を「金融機関の収益環境改善を支援する」と明言した(日銀政策決定会合後の声明、2024年7月31日)。日本銀行の「金融システムレポート」(2024年10月)でも、銀行の利ザヤが圧迫されすぎて経営が危ないと大騒ぎだ。だが実体経済への効果は? ゼロに近い。貸出残高は2024年で前年比1.5%増(日本銀行統計)と、雀の涙だ。企業や家計にお金が回らず、銀行の帳簿を飾るだけ。こんな政策でデフレが終わるはずがないのだ。

デフレをぶち壊すには、金融緩和をガンガン続けるしかない。ケインズ経済学の進化形の現代のマクロ経済学が示す通り、マネーストックを増やし、期待インフレ率をぶち上げる。米国のFRBは1990年代や2020年にそれをやった。M2を10%以上増やし、経済に火をつけた。日本は? M2/GDPが180%もあるのに、国債に偏って消費や投資に回らない。BISのデータでも、米国の緩和は経済を動かし、日本は停滞だ。2020年の米国では、中小企業がウォール・ストリート・ジャーナルでこう言った。「融資が増えて雇用を増やせた」。日本もそうしろ。ETFや社債をガツガツ買い、財政と組んだ緩和をぶち込め。中途半端な利上げなどは、デフレのドン底に突き落とすだけだ。

日銀植田総裁

ここで大事な話だ。緩和をやれば、インフレ傾向になる。物価が上がるということだ。ビビるな、それは実は歓迎すべきことだ。なぜか。デフレの今は、お金が回らず、みんなが節約して経済が縮こまっている。物価が上がれば、企業は儲けを増やし、投資に動き出す。消費も活気づく。

たとえば、アメリカでは2021年にインフレ率が6.1%まで跳ね上がった時、企業は売上が伸び、人を雇い始めた(米労働省データ)。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事で、ある店主がこう言った。「物価が上がったおかげで売り上げが増え、従業員の給料を上げられたよ」。日本だって同じだ。緩和でインフレが起これば、経済に血が通う。

そして何より、緩和を続ければ、賃金がインフレ率を上回って上がる。どういうことか。緩和でお金がジャブジャブになれば、企業は人手不足に悩む。仕事が増えて、人が足りなくなるからだ。すると、給料を上げてでも人を確保する。実際、アメリカでは2021年から2022年にかけて、インフレ率が6.1%に対し、平均時給は5.7%から6.5%上がった(米労働省データ)。インフレ率にほぼ追いつき、一部上回った。日本も緩和を続ければ、たとえば物価が3%上がる中で、賃金が4%や5%上がるなんてことが現実になる。財布の中身が増え、生活が楽になる。それがデフレ脱却の道だ。インフレを恐れるな。緩和で経済を動かし、賃金をインフレを上回るようにガツンと上げる。それが正解なのだ。

結論だ。コアCPIとコアコアCPIがフラフラ、実質賃金が下がり、消費が死んでいる。日本はデフレの泥沼から抜け出せていない。QQEでマネタリーベースを増やしてもマネーストックが育たず、金融政策は大失敗だ。韓国の雇用崩壊は賃上げだけじゃダメだと教えてくれる。あの回復は外からの助け頼みだった。日本は再度包括的金融緩和で、マネーストックを増やし、需要に火をつけるべきだ。2025年3月、デフレをぶっ壊すのに緩和が絶対必要なのに、日銀が利上げを企んでるなんて頭おかしい。このままじゃ経済が死ぬ。この狂った動きを今すぐ止めなきゃならないのだ。

【関連記事】

ドイツに訪れる「アベノミクスと同様」の大変化、日本が抜け出せない「緊縮病の宿痾」―【私の論評】ドイツ経済大変貌!メルツ政権の75兆円政策で欧州株急騰、日本はどうなる? 2025年3月21日

家計・企業の負担増も 追加利上げ、影響は一長一短 日銀―【私の論評】日本経済の危機!日銀の悪手が引き起こす最悪のシナリオ! 2025年1月25日

植田日銀の「利上げ」は意味不明…日本経済をブチ壊し、雇用も賃金も押し下げる「岸田政権の大失策」になりかねない―【私の論評】日本株急落の真相:失われた30年再来の危機とその影響 2024年8月6日

追加利上げに2人反対 日銀審議委員の中村、野口両氏―【私の論評】日銀の追加利上げと金融政策の転換:オントラックとビハインド・ザ・カーブの狭間で 2024年8月1日

お先真っ暗…韓国「雇用政策」大失態、貿易戦争も直撃、対中輸出3兆円減の試算も―【私の論評】金融政策=雇用政策と考えられない政治は、韓国や日本はもとより世界中で敗退する 2018年7月17日

0 件のコメント:

<解説>ウクライナ戦争の停戦交渉が難しいのはなぜ?ベトナム戦争、朝鮮戦争の比較に見る「停戦メカニズム」の重要性―【私の論評】ウクライナ戦争停戦のカギを握る米国と日本:ルトワックが明かす勝利への道

  <解説>ウクライナ戦争の停戦交渉が難しいのはなぜ?ベトナム戦争、朝鮮戦争の比較に見る「停戦メカニズム」の重要 岡崎研究所 まとめ トランプ・プーチン会談と停戦の進展 : 3月18日の電話会談で、プーチンがウクライナのエネルギーインフラに対する限定的停戦に同意したが、トランプの...