2020年1月31日金曜日

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」―【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」

米国ウィルパー・ロス商務長官

<SARSにアフリカ豚コレラ、新型コロナウイルスと続き、感染症は企業が中国に進出する際の深刻なリスク要因だということがはっきりした、とロスは言う>

アメリカのウィルバー・ロス商務長官は1月30日、インタビューに答えて、中国発の新型コロナウイルスの感染拡大のおかげで、北米に雇用が戻ってくるかもしれない、と語った。

トランプ政権発足直後から商務長官の職にあるロスは、FOXビジネスの番組で、新型コロナウイルスが中国経済に及ぼす影響について問われた。世界各国は現在、ウイルスの侵入を食い止めるため、中国に出入りする渡航に制限をかけている。

ロスはまず、ウイルスの被害に遭った人たちへの同情を表した。「まず何よりも、アメリカ国民は新型コロナウイルスの犠牲者に対して追悼の気持ちを持たなければならない」

さらに「とても不幸でとても悪質な感染症が、(自分たちに)幸いしたなどとは語りたくはない。しかし事実として、外国企業は部品調達網の見直しを行う際、感染症のリスクを考慮せずにはいられないだろう」と続けた。

「まずはSARS(重症急性呼吸器症候群)、そしてアフリカ豚コレラもあった。今回は新型コロナウイルスで、これは人々が考慮せざるをえない新たなリスク要因だ。結果として、北米への雇用回帰は加速すると思う。アメリカだけでなく、メキシコにも雇用は戻るだろう」と語った。

中国の感染者数は1万人近くにまで増加

今回の新型コロナウイルスは、昨年12月に人口約1100万人の中国湖北省・武漢で発生し、中国本土を中心に世界各国へと拡大している。

米疾病対策センター(CDC)が公表した情報によると、新型ウイルスは肺炎による重度の呼吸器症状を引き起こす可能性がある。当初、感染源は武漢の海鮮市場と言われていたが、市場や、そもそも武漢に行っていない人からも感染者が出始めたことから、今ではウイルスは人から人への感染力を持ったと見られている。

中国当局は、1月24日から30日までの春節(旧正月)の期間に感染が拡大することを恐れていた。春節には、武漢の住民を含む多くの中国人が、故郷に帰ろうと大移動をするからだ。

中国当局の発表によると、31日時点で確認された新型コロナウイルスの中国国内の感染者数は9692人、死亡者数は213人に上っている。また、ウイルス感染はすでに日本を始め、韓国、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツなど世界約20カ国・地域に拡大している。

【私の論評】新型コロナウィルスで世界経済は短期的には悪影響を受けるが、長期的には良くなる(゚д゚)!

ロス長官の見方は、妥当だと思います。無論短期においては、混乱はみられるものの、長期的(3年から5年)のうちには、確かに米国にも雇用が戻ってくることでしょう。

2020年1月28日に、中国中央部の湖北省の武漢の通りに沿って、消毒剤を散布する城管

実際、中国を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車や電子機器メーカーから観光関連企業に至るまで、世界中の企業が供給網や収益への影響について不安を募らせています。

ウイルス流行の中心地となっている中国湖北省武漢は、欧米や日本の自動車メーカーや電子部品メーカーの製造拠点です。ところが各国は現在、自国民を退避させるため航空機を手配しています。

一方、中国当局は、武漢以外の複数の都市でも封鎖などの措置を取っており、数百万人に影響が出ています。1週間の春節(旧正月)休暇が延長される中、企業への負の影響は避けられないです。

■自動車メーカー
自動車大手の米ゼネラル・モーターズや仏PSAグループ、仏ルノー、日産自動車、ホンダなどは武漢周辺を合弁企業の拠点としており、各社は状況を注意深く見守るとしています。

トヨタ自動車は、自社の従業員だけではなく、中国国内の部品メーカーなどの間でも混乱が生じる可能性を考慮し、少なくとも2月9日までは中国での製造を停止すると発表しています。

■電子機器メーカー
台湾の富士康科技集団(フォックスコン)は29日、中国本土の工場を2月中旬まで閉鎖すると発表しました。

同社は、米アップルのiPhone(アイフォーン)や薄型テレビ、ノートパソコンなどさまざまな機器を製造しており、この決定は世界中の取引先企業のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があります。

アップル自体は28日、2020年1~3月期の売上高について、新型ウイルス流行が及ぼす影響は不透明だとして、異例に広い幅を取った予想を発表しました。

■観光
中国では現在、国外への団体旅行が禁止されています。そのため、高級ブランドや高級小売店が数多くある仏パリや伊ミラノなどの都市は、神経をとがらせています。航空各社も中国行きの便を大幅に減らしています。

オランダ金融大手INGグループの中国経済専門家アイリス・パン氏は、新型ウイルスの流行が中国からアジア各国、欧州、北米へと広がっていることにより、今年の世界全体の旅行者数は昨年比30%減となる見通しを示しました。

■小売りチェーン
米コーヒーチェーン大手スターバックスは、新型ウイルスの流行により状況が目まぐるしく変わっていると述べるにとどめ、売上高についての詳細な見通しは示していません。

中国本土はスターバックスにとって世界で2番目に大きい市場で4000店舗以上を展開していますが、新型ウイルス流行により、現在はその半数が休業しています。

米ファストフードチェーンのマクドナルドと米宅配ピザ大手ドミノ・ピザも、世界全体の売上高に占める割合から見ると同じく中国で大きな存在感を示しています。

一方、スウェーデンの家具大手イケアは29日、中国本土に展開する店舗のほぼ半数に当たる30店舗を一時休業すると発表しました。イケアは先週の段階で武漢の店舗を休業していました。

長引く混乱は今後、他の産業分野にも影響を及ぼす可能性があります。例えば中国は、欧米の製薬会社が多くの救命治療用にリパッケージしている医薬品の有効成分の生産で、世界首位を誇っています。

中国に拠点のある世界中の企業が今や供給網や収益への影響について不安を募らせているのです。

これが、今回だけのことならまだしも、SARSや豚コレラ、アフリカ豚コレラの問題もありました。中国では過去だけではなく、これからもこの種の問題は発生しうると考えられます。

そもそも、これらの問題は一時的なものではなく、中国の構造的な問題に根ざしています。その構造的な問題とは、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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NBAのバスケット・ボールの試合中にフリー・チベットの活動をする他人事

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から少し長いですが一部を引用します。
不公正取引で先進諸国に「寄生」した新・悪の帝国 
 現在、中国はWTOに加盟して自由貿易の恩恵を最大限に受けているのにもかかわらず、国営企業を優遇し、海外のSNSをシャットダウンして国内の言論だけではなく、社会活動や経済活動にも多大な制限を加えている。 
 また、知財を盗むコピペ経済でもある。さらには、中国大陸に進出する外資系企業に、厳しい規制を加えるだけではなく、その優越的地位を乱用して「最先端技術を渡せ」などという無理難題を吹っ掛ける。 
 たまりかねた米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。 
 それでも彼らが儲かっているうちはまだいいが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になる。 
 そもそも、中国のWTO加盟交渉は、極めて特殊であった。 
 実は、第2次世界大戦の戦勝国である民主主義中国(中華民国、台湾)が、WTOの前身であった関税貿易一般協定(GATT)の原締約国であった。しかし、1949年の共産主義中国の建国とともに中華民国が中国大陸から追放され台湾に移ったことから、1950年にGATTからの脱退を通告している。 
 共産主義中国は、「台湾の1950年の脱退は無効である」との立場をとり続けていたが、1986年、「GATT締約国としての地位の回復」を申請した。 
 その後、1989年の天安門事件の影響などにより、加盟交渉は難航し、結局GATTには参加できなかった。 
 やっと、2001年に、中東・カタールのドーハで開かれたWTO(GATTの流れを継承)第4回閣僚会議において中国の加盟が認められることになったのだから、15年間も交渉したことになる。 
 この交渉では、「いつかは共産主義中国も民主主義国家になる」という甘い期待を持っていた米国の後押しも受けた。 
 だが、その後の中国共産党の後押しを受けた国営企業などによる不公正貿易の拡大や、知財だけでなく大量の軍事機密を盗み取る行為に米国民の堪忍袋の尾が切れたことを敏感に察知して、誕生したのがトランプ政権である。 
 米国の識者たちの多くは、共産主義中国に対して「恩をあだで返された」と感じているであろう。
米国企業の直訴が、トランプ政権に影響を与えた可能性は高いし、他の国の企業の「積年の恨み」も無視できない。
まさに、 中国に拠点を置く、米国企業や、他国企業もそれでも彼らが儲かっているうちはまだ良いのですが、利益が薄くなったり、赤字が出るようになれば、これらの企業も共産主義中国の手ごわい敵になります。まさに、新型肺炎でそのような状況になりつつあるのです。

しかも、中国の感染症は、これも社会構造に根ざしたものであり、中国が社会構造変革をしなければ、改善されることはありません。

そうして、これらの企業は、中國の感染症によって、サプライチェーン等が不安定になることを嫌い、中国の拠点を自国に戻すか、中国以外に拠点を移すでしょう。

そうして、この動きは、当初は混乱もあり、世界経済に悪い影響を与えるかもしれませんが、長期的には世界経済に良い影響を与えることになるでしょう。

バーナンキ氏

現在の世界経済は、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したように、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えてしまいました。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味します。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのです。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためです。

中国は、自国内だけではなく、一帯一路構想などで、海外でも過剰生産を繰り返しています。結局、中国の企業は国営、国有、民間企業でも政府の厳しい管理下にあり、管理下にあるということは、よほどのことがない限り、倒産することはなく、先進国なら、とうに倒産しているような会社がゾンビ企業となりさらに、過剰生産を繰り返すということになるのです。

この過剰生産が、供給過剰、貯蓄過剰を生み出し、それが先進国では高インフレや高金利が生じなくなった原因です。このような状態になった直後には多くの先進国が、デフレに悩まされましたが、ここ数年では各国がこの状況に気づき、大規模な積極財政や金融緩和に踏み切るようになりました。

そのことにまだ気づいていないのは世界では、日本くらいなものになりました。そのため、日本の財務省は、デフレから抜けきっていないのに、増税をするとか、日銀も物価目標すら達成もしていないのに、イールドカーブコントローなどの抑制的な金融政策を採用する有様です。

いずれにしても、このような中国から各国が拠点を移し、中国国内で減産モードに入ると世界はどうなるかといえば、過剰生産とそれにともなう貯蓄過剰はなくなるわけです。

米国はこのようなことを企図して対中国冷戦で実行しようとしていたのですが、ここにきて中国の新型肺炎問題が起こり、これが加速されることになると考えられます。

これを見越したからこそ、米商務長官「新型コロナウイルスの発生で雇用は中国からアメリカに戻ってくる」と発言したのてしょう。これは、無論米国だけのことではなく、日本も含めた先進国もそのようなことになるでしょう。

そうして、何よりも世界経済にとって良いことは、世界の国々が過剰生産に悩まされることがなくなることです。無論、中国以外の新興国は、これからも過剰生産を継続するでしょうが、規模的には中国のそれよりもはるかに小さく、世界経済に大きな影響を及ぼすことはないでしょう。

以前もこのブログで述べたように、中国としては、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、もっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を根本的に変えなければできないことです。

中国が社会構造改革を本気で進めれば、また拠点を中国に戻す企業も出てくるかもしれません。しかし、それにはかなり長い時間を要することでしょう。

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2020年1月30日木曜日

欧州議会、英EU離脱案を承認 議員らが惜別の大合唱―【私の論評】英国がTPPに加入すべき理由(゚д゚)!

欧州議会、英EU離脱案を承認 議員らが惜別の大合唱



欧州議会(European Parliament)は29日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)協定案を承認した。議場では議員らが別れの歌を合唱するなど、感情的な光景が繰り広げられた。

英国は、時にぎこちない状態に陥りながらも、半世紀にわたりEUの一員としての立場を維持。直近の約3年間は緊迫した離脱協議を続けてきたが、ベルギー時間の2月1日午前0時(日本時間2月1日午前8時)、ついにEUを離脱することとなる。

欧州議会の議員らは賛成621、反対49で離脱協定案を承認。英国は今後、EUの各組織から離脱するものの、今年末までの移行期間中はEUの規則の大半に従うことになる。

投票後、議員らは、別れの曲であるスコットランド民謡「オールド・ラング・サイン(Auld Lang Syne、日本では『蛍の光』として知られる)」を合唱した。

欧州委員会(European Commission)のウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長は英作家ジョージ・エリオット(George Eliot)の言葉を引用し、「われわれは別れの苦しみの中でのみ、愛の深さを見つめる」と表明。さらに「われわれはこれからもずっとあなたを愛する。遠く離れることは決してない。欧州よ永遠に」と述べた。

議員の多くは、離脱協定案に賛成票を投じるのはブレグジットを支持するからではなく、合意なき離脱による混乱を回避するためだと言明。欧州議会のブレグジット問題対策グループ(BSG)を率いる元ベルギー首相のヒー・フェルホフスタット(Guy Verhofstadt)議員は、「きょう反対票を投じることでブレグジットを阻止できるならば、私は真っ先にそう勧めるだろう」と語った。

【私の論評】英国がTPPに加入すべき理由(゚д゚)!

英国はこれまで、EUの「関税同盟」や「単一市場」に加わり、域内での貿易に関税がかからず、人や資本それにサービスが原則として自由に行き来できる状況を享受してきました。

しかし、EUから離脱すると、これらを可能にしてきたEU側との協定が無効になります。さらには、EUが日本などと結んでいる貿易協定の枠組みからも締め出されることになります。

したがって、英国は、現状のような自由な貿易・投資の環境を維持しようとすれば、EUとの間はもちろんのこと、米国や日本とも新しい貿易協定を結ばなければならないのです。

自由貿易協定は、特定の国や地域の間で、関税を下げたり投資などに関する規制をなくしたりすることで、貿易・投資の自由化を進めるための協定です。こうした協定を結ぶ交渉には、数年はかかるとも言われています。

日本とEUとの経済連携協定(EPA)は、2018年に調印し、2019年2月1日の午前0時に発効しました。こ場合は、交渉開始までに3年半くらいかかりました。例えば、自動車。日本の場合、すでに自動車関税はゼロだったので、EU側は『自分たちばかりが関税を下げるよう要求され、日本側に譲歩させるものがない』として、交渉を拒んでいました。

2018年7月17日 日欧EPA調印

EUは議論の中で、自動車関税を下げられないのであれば、非関税障壁と呼ばれる日本特有のさまざまな規制を緩和してほしい、日本側が先に、ある程度の規制緩和をやってくれないと交渉には入らないと言ってきたりもしました。交渉が始まる前にこういうやり取りがあったのです。

過去に行われた貿易に関する交渉と、単純に比較することはできませんが、交渉を担った日欧EPAの場合には、交渉の正式開始から妥結まで5年近くかかりました。

さらに、交渉そのものにも時間がかかります。どのような交渉でも、相手の言い分をすべて飲めばすぐにまとまります。しかし、相手の言い分ばかり聞いていては、協定を結ぶにあたって自国の国会に承認を求める際に、承認を得られなくなる可能性があります。合意の内容をバランスのとれたものにするため、当然ながら交渉には時間がかかります。

自由貿易協定に向けたイギリスとEUの交渉が、今後どのように展開するのか、現時点ではっきりと見通すことはできません。ただ、交渉が困難になるのは避けられなでしょう。

その要因の1つは、EUとは別に米国とも自由貿易協定の交渉を進めようとする英国が置かれる状況にあります。

この交渉は、イギリスにとって“踏み絵”を踏まされる交渉になることでしょう。仮に、開国がEUの要求をどんどん受け入れることになれば、米国との交渉が難しくなるでしょう。逆に、英国が米国と早く自由貿易協定を結ぶために、米国の要求ばかりを受け入れると、今度はEUとの交渉が難しくなるのでしょう。

例えば、すでに英国とEUの間で課題になった、塩素で洗ったチキンの扱いの問題があります。米国では、雑菌の繁殖を防ぐためにチキンを塩素で洗っていますが、EUでは、これは人体にとって有害だとして、輸入制限の対象になっています。英国が、この件で米国の要求を受け入れれば、EUは良い顔をしないでしょう。

これは、チキンに関することですが、当然のことながらこれは一例にすぎず、他にも様々な問題が山積みです。

このようなことを考えると、12月末までに自由貿易協定をまとめるのは、針に糸を通すような業だといえるかもしれません。移行期間内に妥結できなければ、期間終了後、直ちに関税や通関の手続きが復活することになり、「合意なき離脱」と同じ状況に陥ってしまいます。

英国とEUが交渉をまとめるには、これまでの完全に自由な関係から一転して貿易機会が失われるなど、互いに大きな痛みを伴います。その痛みに耐えきれなくなっときに、妥結するのことになるではないでしょうか。

離脱後の自由貿易交渉をめぐっては、日本もひと事ではありません。EU離脱後、イギリスがEUや各国とどのような交渉を展開するのか、目が離せない状況が続きます。

日本としては、日欧EPAと同じような内容のEPAを英国と結ぶのか、それもと、英国がTPPに加入するのかという問題もあります。



EU離脱を控えていた2018年10月英国に対し、安倍晋三首相が「環太平洋経済連携協定(TPP)参加を心から歓迎する」と英紙のインタビューで述べ、英国メディアで話題になっていました。

離脱後、EUに代わる自由貿易市場を環太平洋諸国に求める考えは、メイ政権(当時)内(¥では2018年の初めから検証されていました。TPPでリーダーシップを取る安倍首相からの具体的なラブコールは、離脱派を勢いづかせたと思います。

安倍晋三首相は昨年12月13日午後、都内で講演し、環太平洋連携協定(TPP)に関し、英国がジョンソン首相のもと加盟するならば心から歓迎したいと述べました。米国離脱後のTPP交渉を踏まえ、日本は自由貿易の旗手として貿易ルールを作る側に回ったと指摘しました。

英国ジョンソン首相

英国にとっては、TPPは環太平洋の11ヶ国の貿易協定であることから、これらの国々と逐一貿易協定を結ぶとなると、上でも述べてきたように、交渉にとてつもない時間がかかることになりますが、TPPに加入するということであれば、これら11ヶ国と各々交渉することに比べれば、飛躍的に交渉の時間を短縮できると思います。

日本としても、英国がTPP加入の意思をみせれば、米国の再加入にもはずみをつけることができます。もし米国がTPPに加入すれば、英国はTPPに加入すれば、米国と単独でEPAを結ぶ必要もなくなるでしょう。

私としては、英国が加入し、その後米国も加入することにでもなれば、これは中国に対しても大きな牽制となりますし、日米英の絆が深まり、安全保障の面でも良い影響が生まれるものと期待しています。

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2020年1月29日水曜日

新型肺炎が日本経済に与える影響、SARSと比較、訪日客減少で7760億円押し下げか―【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!

新型肺炎が日本経済に与える影響、SARSと比較、訪日客減少で7760億円押し下げか

中国の空港の国内線のゲート

新型肺炎の世界的な感染拡大が懸念されているなか、野村総合研究所(NRI)はインバウンド需要の減少による日本経済への影響について、2002年11月に発生が確認されたSARSとの比較をもとに、その試算を公表した。

新型肺炎と2003年に拡大を見せたSARS発生時と現在との大きな違いは、中国及びその他地域からの訪日観光客の急増。2002年と2019年の間に、中国からの訪日観光客数は21.2倍、訪日観光客数全体では6.1倍にも増加しているため、NRIでは、新型肺炎によって訪日観光客が減少し消費額が落ち込んだ場合、日本経済に与える悪影響はSARSの発生時よりも格段に大きくなる可能性があるとしている。

SARSの影響による訪日観光客数の減少分として2003年1月時点での訪日観光客数の前年同月比と2003年全体の訪日観光客数の前年同月比との差を比較すると、訪日中国人観光客数は-13.0%、訪日観光客全体では-15.4%となる。

新型肺炎の影響によって、2020年の訪日観光客数がこれと同じ割合で減少すると仮定した場合、中国からの訪日観光客数の減少は2020年の日本のGDPを2650億円押し下げ、訪日観光客数全体では7760億円押し下げると試算した。後者については、GDPを0.14%押し下げる計算になる。

2003年5月単月の数字を見ると、中国からの訪日観光客数は前年同月比-69.9%、訪日観光客数全体では同-34.2%とかなり深刻な影響が生じたが、SARSが訪日観光客数に影響を与えたのは数か月程度と比較的短期間にとどまった。仮にそれと同程度の影響が1年間続くと仮定し、同様に計算をしてみると、新型肺炎の影響で日本のGDPは2兆4750億円、0.45%も押し下げられる計算となる。

この試算は2020年1月27日に発表されたもの。 NRIでは、日本人の個人消費悪化の影響、企業の生産活動停滞の影響、海外経済減速の影響なども加わってくる可能性があるとしている。

新型肺炎がインバウンド需要の減少を通じて日本経済に与える影響試算

【私の論評】インバウンド消費の激減は、消費税減税で補うどころかありあまる効果を期待できる(゚д゚)!

インバウンド消費を過大に評価する人がいて、中には日本経済の発展≒インバウンド消費の拡大などと言い出す識者もいて、本当に噴飯ものといわざるをえないところがあります。

これについては、以前のこのブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
消費税10%ショック! やはり「景気後退」が始まったかもしれない―【私の論評】インバウンド消費等元々微々たるもの、個人消費に勝るものはない(゚д゚)!
麻生財務大臣
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、旅行の経済に関わる部分をこの記事より引用します。
平成29年の日本人国内旅行消費額は、21兆1,130億円(前年比0.8%増)となり、うち宿泊旅行が16兆798億円(前年比0.3%増)、日帰り旅行が5兆332億円(前年比2.3%増)です。 
日本人国内延べ旅行者数は、6億4,751万人(前年比1.0%増)となり、うち宿泊旅行が3億2,333万人(前年比0.7%減)、日帰り旅行が3億2,418万人(前年比2.8%増)です。

なぜか、インバウンドばかりに目がいきますが、やはり日本人の旅行者のほうが圧倒的に実数も、消費もはるかに大きいです。現状のインパウンドの4.5兆円と比較すると、20兆円規模です。

少子高齢化の影響もあってか、日本人の延べ旅行者数は、減る傾向にはありますが、消費額の推移をみると、だいたい20兆円台で推移しています。インバウンド消費(18年で4.5兆円)よりもはるかに大きいことがわかります。 
インバウンド消費停滞の経済全体へ影響は限定的である一方、日本経済の成長をはっきり押し下げるのは消費増税による緊縮財政政策の悪影響です。当然日本人の国内旅行での消費も減ることになるでしょう。 
インバウンド消費は、GDPの1%に過ぎないのですが、日本人による個人消費はGDPの60%を占めます。個人消費が冷え込めば、インバウンド消費がかなり増えたとしても、それは帳消しになります。
新型肺炎の問題が起こるまでは、インバウンド消費が徐々に増えるだろとうということで、観光産業などを中心にこれに期待するむきも多かったのですが、もはやその期待は打ち砕かれたとみるべきです。

こちらは、札幌です。もう少しで「さっぽろ雪まつり」が開催されます。今年は、2月4日から開催の予定ですが、今年は新型肺炎により、観光客が大幅に減ることが予想されます。

「さっぽろ雪まつり」にも毎年、海外から観光客が訪れていますが、今年は期待できないでしょう。

「さっぽろ雪まつり」に限らず、今年は様々なイベントで国内外の観光客が激減するのは、はっきりしています。

最近の新型肺炎の広がりかたのスピードは、増しているようです。そうして、どうなら人から人への感染も広がっているようです。今のところとどまるところを知らないようです。

であれは、わたしたちとしても、最悪を想定しておくべきです。最悪の場合は、中国の習近平の国賓としての訪問は当然のことながら、中止されるか延期されるでしょう。オリンピックもそうなる可能性は否定できません。

札幌では、東京オリンピックのマラソンが観戦できるものと、期待していましたが、それもなくなるかもしれません。

インバウンド消費が、かなり冷え込むことは最早明らかです。

そうして、これに対する最も単純ですぐにできる対策があります。それは、昨年10月に10%にあげた消費税を元に戻すか、5%に減税すことです。

現状は、危急存亡の時と言ってもよいくらいです。このときくらいは、このような手段を用いるべきです。そもそも、日本では税金というものは、増税の一方方向しかないと思われているようですが、それ自体が間違いです。

その時々の経済の状況に応じて、増税(景気が加熱した場合)したり、減税(景気が悪くなった場合)するというのが、まともなやり方です。

そうなると、個人消費は回復するどころか、伸びます。インバウンド消費の減少を補ってあまりあるほどになるはずです。

無論、日本国内でも新型肺炎の脅威が消えさらなければ、減税しても当初は消費の伸びは鈍いかもしれませんが、少なくとも日本国内での感染が終息すれば、景気はもりもり回復することでしょう。

今の日本にとって重要なのは、国内での新型肺炎の感染を終息させ、海外からの感染者をシャットアウトし、減税により、経済を良くすることです。

インバウンド消費が倍になるよりも、日本国内個人消費が数%でもあがったほうが、日本経済への影響はよほど大きいです。

さらに、個人消費があがれば、当然のことながら、日本の国内旅行での消費額や、旅行回数なども増えることが予想されます。新型肺炎前に、海外にいっていた人たちが、国内旅行に回帰する可能性が大きいからです。そうなると、観光業も日本人観光客により潤うことが予測されます。

SARSと、今回の新型肺炎により、私達は、インバウンド消費に頼ることが、いかに脆いことが学んだはずです。外国からの観光客は、来るもの拒まずという姿勢は崩さなくてもよいですが、まずは国内の消費を拡大し、国内観光客数や消費額を増やすことが先決です。それによって、安定した基盤をつくり、海外で今回の新型肺炎のようなことがあっても、余裕をもって対処できるようにしたいものです。

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2020年1月28日火曜日

「コロナウイルス大流行」が貿易戦争完敗の中国にトドメを刺すか―【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる(゚д゚)!

「コロナウイルス大流行」が貿易戦争完敗の中国にトドメを刺すか



米中貿易戦争は習近平の完敗だ

 2018年9月24日の記事「米中冷戦、食糧もエネルギーも輸入依存の中国全面降伏で終わる」で、米中貿易戦争は、「トランプ大統領(米国)の圧勝」、「習近平国家主席(中国)の惨敗」で終わるであろうと述べたが、それがいよいよ現実のものになりそうである。

新型コロナウイルス「中国の情報隠蔽」を考えて患者数を予測したら…

 共産主義中国に忖度した日本のオールド・メディアは、習近平氏の体面を取り繕うために、1月15日に米中によって署名された「第1段階の合意」がいかにも引き分けのように取り繕っている。

 しかし、いつもは「大本営発表」ならぬ「共産党発表」で、ありもしない成果をプロパガンダする中国共産党が、今回は静かで、中国内の報道そのものさえ規制しようとしている。これは、「習近平惨敗」の事実を、中国人民に隠すためのものと思われる。


 あの北朝鮮でさえ、金正恩斬首作戦の実現性を証明した、イラクにおけるイランのソレイマニ司令官斬首作戦の事実を隠しきれず、国民のほとんどが知ることになった段階で公にしている。

 いずれ「習近平惨敗」の事実が国民の間に広がれば、香港・台湾における「民主主義渇望のうねり」で、政治的に厳しい状況に追い込まれているだけではなく、武漢から始まった「新型コロナウィルス」の流行で「泣きっ面にハチ」状態の習近平政権崩壊は意外に近いかもしれない。

 「新型コロナウィルス」は、自然の不可抗力ではあるが、習近平政権の対策は、楽観的な見通しに終始し情報公開に消極的であった。

 2002年から流行が始まったSARSの大騒動での学習効果があるため、少しはましになったが、共産党の隠ぺい体質が流行を広げた人災といってよいであろう。

 このままの状態では、世界的大流行が避けられないかもしれない。

 そうなれば、習近平政権は海外だけではなく、国内の被害者からも厳しい批判を浴びるだろう。

どのように惨敗したか

 「第1段階の合意」の内容をきちんと分析すれば、「引き分け」などという解釈の入る余地はなく、中国の惨敗、米国の圧勝であることは明らかである。

 まず、米国は署名に先立って共産主義中国に対する「為替操作国」の認定を解除している。

 中国が為替操作国に認定されたのは昨年8月であるが、米国財務省の為替報告書によれば、それ以来中国は米国に恭順の意を示し、「市場介入をほとんど手控えたようだ」とされる。

 つまり、今回の為替操作国からの解除は、「恭順の意を示した中国」に対して、米国が「そろそろ勘弁してやろう」と寛容な態度を示しただけなのだ。

 もちろん、共産主義中国の言葉など信用しないトランプ氏は、保全措置を講じている。

 「中国が人民元切り下げを行わないという『実行可能なコミットメント』を行ったほか、為替のデータ公表に同意した」ため解除したのだと説明している。つまり、「自国の為替市場を米国の厳重な監視下に置く」ことに同意をしたのにも等しい。

 これは、単純に為替操作国に認定されるよりも厳しい状況であるから、習近平氏が国民に隠したい事情も良くわかる。

 ちなみに、米国がウォッチしている対象国は、20ヵ国ほどであるが、中国の解除で「為替操作国」はなくなった。なお、「監視対象国」には引き続き中国が含まれる。

米国は何も失っていない

 さらに、1月15日に署名された合意内容には、

 1.「中国政府による米国の技術と企業機密の窃取に対する取り締まりの強化」
 2.「農産物の2017年(貿易戦争開始前)の水準に比べて倍以上の輸入増加」

 など多数かつ重要な中国側の譲歩内容が含まれる。

 特に、対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後2年間で2000億ドル(うち農産品は320億ドル)相当の追加購入計画は重要だ。

 この合意に基づいて、中国は米国からの農産物の輸入を最初の1年で125億ドル、2年目は195億ドル増やすと表明した。この額(合計320億ドル)を、貿易戦争が始まる前の2017年に中国が輸入していた240億ドルに上乗せするので、輸入額は2017年当時の倍以上になる。

 11月に大統領選挙を控えたトランプ氏にとって、農民票は極めて重要で、その確保の道筋をつけたのだから、上機嫌であるはずである。

 それに対して、資源、エネルギー、軍備、人材その他あらゆる分野で米国に太刀打ちできない中国の「数少ない切り札」である「農産物輸入カード」をトランプ氏に献上せざるを得なかった習近平氏の機嫌が悪いのも当然だ。

 その見返りに米国が提供するのは、昨年9月に発動した制裁第4弾のスマートフォンやパソコンの部品、衣類や靴といった日用品などの中国製品に課した追加関税15%を7.5%に引き下げることくらいだ。

 さらに、これらの合意の実行を、監視・担保する制度も盛り込まれ、実行されなければ、合意内容は取り消される可能性がある。

 忘れてはならないの、この貿易戦争を仕掛けたのは米国であり、第1弾から第4弾までの関税は米国が一方的に設定したものだ。その米国の都合で一方的に「追加」したた関税のごく一部を「微調整」するだけで、これだけの成果を得たのだ(1弾~3弾は25%の制裁関税率を堅持している)。

 つまり、貿易戦争と名付けられた「実質的経済制裁」に音をあげた共産主義中国が「後生ですから緩和してください」と泣きを入れて、「貢物」を差し出したのに対して、トランプ政権は「制裁のごく一部の緩和」で応じたのだ。

 このような見事な「トランプ流交渉術」には驚かされる。1月16日の記事「勝つためには手段を選ばない男・トランプとは何者か…ルーツを探る」で述べた様に、基本的に政治家というよりもビジネスマンであるトランプ氏は、面子よりも実利を大事にする。

 だから、習近平氏の面子を保つ手伝いをすることなど朝飯前であるし、それによって「大きな実利」を手に入れたわけである。

習近平政権は断崖絶壁に追い込まれている

 1月20日の記事「香港大騒乱、台湾・蔡氏圧勝でアジアの春はやってくるのか」で述べた様に、「アジアの春」とも呼ぶべき「民主主義を渇望するうねり」に対して習近平政権はなすすべがない。

 香港では、5大要求のうち1つにしか応じないものの、天安門大虐殺(事件)の時のように戦車で国民をひき殺すような荒療治もできず、指をくわえて見ている。区議会議員選挙での親中派の惨敗は大きな痛手である。

 さらに、台湾総統選挙での蔡氏圧勝がダメ押しとなった。

 ニュージーランドやオーストラリアでも、政治・選挙に関する干渉を行っているくらいであるから、両選挙への中国共産党の干渉はすさまじいものであったはずだが、それでも「民主主義渇望のうねり」を抑え込むことができなかったのだ。「打つ手がない」というのが習政権の現状であろう。

 さらには、12月24日の記事「ウイグル人権法案、じつは『日本企業』が他人事とはいえない可能性」で述べた様に、米国をはじめとする諸外国から「天井の無いアウシュビッツ」として批判されるウイグルやチベットなどでの人権問題も重くのしかかる。

 鄧小平による改革・解放が軌道に乗る前の中国は、当時鉱物資源の開発収入が比較的多かった北朝鮮よりも貧しかった。さらに、「竹のカーテン」を引いた鎖国状態で8000万人(西側推定、人為的飢餓を含む)もの人民を虐殺したとされる。

 これまでの動きを見ると、経済でも政治でも「毛沢東暗黒時代」への回帰が避けられないようだ。

 しかし、香港・台湾だけではなく、天井の無いアウシュビッツとも呼ばれるウイグルやチベットなの虐げられた人々、そして「民主主義を愛する人々」にとっては「世界最大の民主主義の敵」の崩壊は朗報である。

クリスマスプレゼント未遂の金正恩の運命

 このように追い込まれている習近平政権に、朝鮮半島の国々にかまう余裕はないといえるだろう。

 トランプ氏の真意を誤解し、「クリスマスプレゼントを楽しみにしていろよな!」という大言壮語を吐いた金正恩氏は、クリスマス前に公開(流出? )された、米国と韓国の合同で行われた「斬首作戦ビデオ」におびえることになる。

 その結果、年末の異例(通常は1日)の4日間にわたる朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で、プレゼント作戦失敗のごまかしとクーデタ対策を行うことになる(クーデタ首謀者になりうる人間を自分の目の前に集めたことになる)。さらには、恒例の自身の言葉による「新年の辞」を、「総会の報告」に代えてお茶を濁した。

 また、韓国の文在寅政権も、これでもかこれでもかという問題を抱えて悲惨である。

 まず、文在寅氏自身と取り巻きに迫りくる検察の捜査妨害に躍起だ。なりふり構わぬ人事などで、当面の検察の攻勢をかわすことができるかもしれないが、その姿を見ている国民は4月15日の総選挙でどのように判断するであろうか? 

 さらには、文政権の従北ぶりを見かねたハリス駐韓米大使の「韓国の北朝鮮政策に関する親切な忠告」に逆切れして、大使の母親が日本人という出自や口ひげにまで文句をつけるありさまだ。米国は、2015年の「リッパート駐韓米大使襲撃事件」を忘れたわけではない。

 この事件でリッパート氏は、あと1~2センチずれたら死に至るという傷を受け、「この攻撃は私個人に対するものではなく、米国という国家に対するものだ」と発言したともいわれる。朴槿恵大統領とオバマ大統領の話し合いによって、大きな政治問題になることは回避できたが、文在寅大統領とトランプ大統領の間の意思の疎通はないに等しく、小さな火種が「大政治問題になる可能性」がある。

在韓米軍撤退と斬首作戦

 追い詰められた習近平政権と混迷の極にある朝鮮半島の南北国家の状況を考えれば「在韓米軍撤退と引き換えに、金正恩斬首作戦と米傀儡政権の樹立容認」を中国が行うというシナリオも荒唐無稽ではなくなってきた。

 在韓米軍は、中国への牽制という意味合いもある。しかし、本来は共産主義独裁国家である北朝鮮に対抗するために駐留しているのだから、北の共産主義独裁政権が打倒されれば、駐留する意味がなくなる。

 もともと、第2次世界大戦後、米国は「日本海が重要な防衛ライン」だと公言していた。しかし、そのメッセージを誤って受け取った金日成氏が、米国は介入しないであろうと判断し韓国を侵略した。

 そこで、朝鮮戦争が始まり、第2次世界大戦が終わったばかりで戦争はもうこりごりだと思っていた米国も、共産主義陣営による民主主義陣営の侵略を認めることができないために参戦した。しかも、その朝鮮戦争は「休戦」という形でいまだに続いているので、米国としても韓国から撤退するわけにはいかないのだ。

 つまり、在韓米軍はいってみれば、「事故の結果」駐留するようになったのであり、北朝鮮がクーデタや斬首作戦で崩壊し、親米政権が樹立されれば必要がない。もとの「日本海防衛路線」に戻るだけだ。

 また、現在の文政権を「共産主義の侵略から守るべき自由主義陣営」と呼ぶのは極めて難しい。

 金正恩氏同様、文在寅氏も「自分の首」の心配をする必要がありそうだ。

大原 浩(国際投資アナリスト)

【私の論評】今年は新型肺炎で、文・習・金の運命が大きく変わる(゚д゚)!

米中貿易交渉「第1段階の合意」が、中国側の完膚なきまでの敗北であり、米国の完全勝利だったことについては、このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中貿易「第1段階合意」が中国の完敗である理由―【私の論評】米国の一方的な完勝、中共は米国の要求に応ずることができず、やがて破滅する(゚д゚)!
       13日に北京で会見する財政相副大臣の廖岷。重要な会見の
       はずなのに出席者はいずれも副大臣級ばかりだった

この記事は、評論家の石平氏の記事を元記事として、私自身の考えを述べたのですが、石平氏も昨年12月の米中合意は、合意とは名ばかりであり、中国の完敗としています。

これは、合意内容そのものを読んだだけでもわかります。日本のメディアはそのようなことは報道せず、淡々と合意内容の事実のみを報道するのみで、あれではまるで引き分けのような印象を受けてしまいますが、内容は不平等条約と言っても良いくらいの、米国の一方的な大勝利でした。

ブログ冒頭の記事にもあるように、米国は署名に先立って共産主義中国に対する「為替操作国」の認定を解除しています。これに関しては、私の見方は、上の記事「大原 浩」氏とは別の見方をしているのですが、ここでは話の本筋から離れてしまうので。詳細は説明しません。

これについては、このブログにも以前掲載したことがあり、【関連記事】のところに当該記事を掲載しておきますので、興味のある方はこれを是非ご覧になってください。

さて、話を整理すると、中国は最近は負けが込んでいます。しかも、昨年の暮れ近くから現在まで、負け続けと言っても良いです。

昨年11月には、香港区議会議員選挙で大敗しました。次には、1月11日の台湾総選挙でも親中派は大敗北ました。中国は、これらの選挙に大規模に介入しているにもかかわらず、大敗北です。

習近平の中国は、まさに面目を叩き潰されたというのが実情でしょう。そうして、今度は、新型肺炎による不手際が明るみに出つつあります。現状では、まだ新型肺炎が蔓延しつつあり、各国もそれに対する対策に腐心していることや、中国が発生源ということで、大きな被害を被っていることから、現状では中国指導部に対する批判の声は大きくはありません。

しかし、一度これが収束すれば、一昨日もこのブログで指摘したように、SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されることになるでしょう。糾弾どころか、これから犠牲者が増えれば、増えるほど、国内外から怨嗟の声があがることでしょう。

そうして、この糾弾や怨嗟は、現在の習近平政権を揺るがすことは間違いないです。米国としても、これを許容することはしないでしょう。中国が貿易協定の合意を守らなければ、トランプ政権としてはさらに制裁を厳しくすることになるでしょう。

それでも、中国がある程度の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめることがなければ、ためらわずに次の制裁に打ってでて、中国が他国に影響が及ぼせないくらいまで、経済的に弱体化するまで制裁を続けることでしょう。中国を第2のソ連にするくらいまで、制裁を続けるでしょう。

中国が頑なに、体制を変えなければ、このブログにも以前にも示したとおり、中国に対してかなり思い切った軍事作戦を敢行するかもしれません。ただし、それは中国に対して直接軍事攻撃を行うというものではなく、北朝鮮に対する軍事攻撃です。

その目的は、無論核をいつまでも撤去しない北朝鮮に対して核を無力化するものですが、それは、日本の報道機関の報道する表向きの理由です。その本質は、金正恩と幹部を殺害することにより、中国を強く牽制することです。

この斬首作戦が成功すれば、中国共産党は無論大パニックになるはずです。習近平と幹部らは、斬首されるか、貿易交渉の合意を守るかどちらかを選ぶことを迫られることになります。そうなれば、中国で政変が起こるかもしれません。

その時期は、無論新型肺炎が終息してからになります。それには、数カ月はかかるでしょう。

いずれにせよ、習近平体制は崩れることになるでしょう。崩れなかったとすれば、中国の崩壊も視野にいれなければならなくなるでしょう。

それは、中国崩壊自体が間近に迫っているいることを意味するかもしれないからです。誰も、最期の皇帝役などつとめたくありません。すべての幹部は、習近平を悪者に仕立てて、自己保身を図ることに邁進していることを示しているかもしれないからです。

そうして、日本の報道機関は全く報道しませんが、現在北朝鮮と北朝鮮の核は、結果として、中国の朝鮮半島への侵入を防いでいます。北朝鮮の核ミサイルは、韓国や日米だけではなく、北京等をも狙っているからです。

このブログでは過去に何度か、掲載してきたように、実は金王朝を継続したい金正恩は、中国の干渉を極度に嫌っています。

もし北が核武装をしていなければ、金王朝はとうに崩れて、朝鮮半島全体が中国の派遣の及ぶ範囲になっていたかもしれません。

最後に、韓国ですが、米軍が北を攻撃して、金正恩らを斬首し、核施設などを破壊した後には、米国は北朝鮮に親米政権ができるように腐心することでしょう。そのときには、北に米軍が中短距離ミサイルを設置できるようにするかもしれません。

そうなると、このブログでかねてから主張してきたように、韓国は安全保障条の単なる空き地になることが予想されます。要するに安全保障上では、日米にとって関係のない空き地のような存在になるということです。

今年は文・習・金の運命が大きく変わる年になるかもしれない・・・・

第二次世界大戦直後は、北朝鮮のほうが韓国よりも、GDPは大きく、韓国より豊かでした。それは、なぜかといえば、日本が朝鮮半島を統治していたころは、産業の中心は現在の北朝鮮のほうであり、韓国は農村がメインの産業だったからです。

韓国が北朝鮮のGDPを追い越したのは、1970年代になってからのことでした。米軍が北を軍事攻撃した後は、当然なから、韓国は軍事的にも、経済的にも空き地のような存在になり、第二次世界大戦直後のように韓国は貧乏な農業国に戻るかもしれません。

ブログ冒頭の大原 浩氏の記事は、私とは表現などは違うものの、結局私が以前からこのブログで主張してきたことと同じであり、まさに我が意を得たりという思いがしました。いずれにせよ、今年は文・習・金の運命が大きく変わる年になることでしょう。

しかし、これくらいのことは、最近の世界情勢を踏まえていれば、誰もが当然のこととする事柄だと思います。日本のマスコミは情けなさ過ぎます。

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2020年1月27日月曜日

習近平「新型肺炎対策」の責任逃れと権謀術数―【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!


中国で新型ウイルス肺炎拡大 各国で警戒

<新型肺炎の被害拡大を防ぐため、共産党政権は対策本部を急きょ設立した。だが、そのメンバー人事は予想外のものだった>

1月25日、中国共産党政治局常務委員会は新型肺炎に関する対策会議を開いた。昨年12月8日に新型肺炎が武漢で発見されて拡散して以来、共産党最高指導部がようやく開いた最初の対策会議なので、その中身が当然注目された。

まず今後の対策について、新華社通信が配信した対策会議の正式発表は冒頭からこう述べる。

「1月25日、中共中央政治局常務委員会は会議を開き、新型肺炎への対策に関する報告を聴取。疫情(疫病情況)の(拡大)防止・コントロール、特に患者の治療についての再研究・再手配・再動員を行なった」

つまり会議は、今後における新型肺炎の拡散防止と治療について、どういう措置をとるのかを研究し、実行のための手配や動員を行なった。ここで注目すべきなのは、「再研究・再手配・再動員」における「再」という言葉の連発である。

その意味するところは、共産党政治局常務委員会が事実上、今までの研究と手配と動員は不十分であることを認めた点にある。今までのやり方は不十分だったからこそ、「再研究・再手配・再動員」が必要となったのであろう。つまり政治局常務委員会は、今までの不手際を間接に認めた上で、対策の見直しや態勢の立て直しを図ろうとしている。

そこで態勢立て直しのためにとった重要な措置の1つが、党中央の「疫情対策指導小組」の設置である。

新型肺炎を防ぐ「指導小組」の疑問点

どういう組織なのかを理解するため、まず「小組」という言葉の意味を簡単に説明しておこう。中国共産党の中央指導部には多くの「小組」が設置されている。日本で言えば「統括本部」あるいは「対策本部」のようなものである。例えば「中央財経指導小組」は党と政府による経済運営・財政運営の統括本部であり、「中央外事工作指導小組」は即ち外交政策とその運営を統括する中国外交の最高司令塔である。

上述の「疫情対策指導小組」は、すなわち党中央新設の「新型肺炎対策本部」であり、党と政府と軍の全力を動員して疫病拡散の阻止や治療を行うという危機対策の司令塔なのである。

今になっての「対策本部」の設置はどう考えても遅すぎた感があるが、設置したこと自体は評価できよう。しかし、発表された「疫情対策指導小組」の中身やその布陣を見ていると、この「指導小組」は果たして、危機対策の司令塔の役割を果たせるのか、かなり疑問だ。

まず一つ不思議なことに、25日に新華社通信に配信された上述の共産党政治局常務委員会の正式発表は、「疫情対策指導小組」の設置を伝えたものの、誰かがこの「小組」の「組長」となっているかに一切言及してない。

何かの対策本部の設置を決めれば、同時にその長となる人事を発表するのは普通だ。事態が緊急である場合はなおさらである。しかし政治局常務委員会はどうやら、「疫情対策指導小組」の設置を決めておきながら、そのトップとなる人選を直ちに決められなかったようである。

「組長人事」はどうして迅速に決められなかったのか。考えられる理由の一つは、習近平国家主席自身を含めて中央指導部の誰もその役割を引き受けたくなかった、ということだ。

本来なら、習自身が「組長」の最適な人選である。国家の一大事への対処に当たって、共産党総書記・国家主席・軍事委員会主席として党国家の最高指導者・軍の最高司令官である彼こそ危機対策の司令塔の司令になるべきであろう。

実際、習は今まで前述の「中央財経指導小組」組長、「中央外事工作指導小組」組長のほかに十数の「組長」を兼任している。組長になることがこれほど好きな彼が今回の「疫情対策指導小組」の組長にならないのは、むしろ異例で筋が通らない。そして最高指導者の彼が進んで組長になろうとすれば、それを止める人も反対する人もいないはずである。しかし最高指導者の習は国家が存亡の危機に直面しているこの肝心な時に、先頭に立つことも全責任を負うことも拒否した模様である。

対策本部トップを引き受けた人物

最高指導者がこの有様では、共産党政権の新型肺炎対策はどこまで機能するか疑問だが、翌日の26日になると、疫情対策指導小組の組長人事がやっと判明した。李克強首相がそれを引き受けたのである。その日、李が組長として「疫情対策指導小組」の第1回目の会議を開いたと伝えられている。

新型肺炎対策本部のトップを押し付けつけられた?李首相(右)と押し付けた?習主席

この人事は普段なら「これでも良い」と思われようが、現在の重大なる緊急事態への対処に当たって決して強力な人事とは言えない。中国の場合、首相とはいっても、党総書記・国家主席・軍事委員会主席という三位一体の最高権力者よりはずっと弱い存在である。ましてや、「習近平一強」「習近平個人独裁」が確立されている現在、李が存在感の薄く権力も小さい、弱い首相であることは周知のとおりである。

この李が組長になっても、危機対策の司令塔としての役割を果たして果たせるかどうかは覚束ない。習ではなく李が組長となった時点で、疫情対策指導小組が強力な指導力を発揮することはもはや期待できなくなった、と言ってもいい。

これだけではない。さらに驚いたのは、李以外の疫情対策指導小組の布陣である。

まず、李の補佐役として指導小組の副組長となっているのは、政治局常務委員の王滬寧である。筆者はこの人事を人民日報で知ったとき、まさに狐に包まれたような異様な感じを受けた。

王は今、党内きっての理論家としてイデオロギーや宣伝を担当している。しかし、学者出身の彼は、地方や中央で政治の実務を担当した経験は一度もない。はっきり言って、理論家の王に今の危機で何らかの問題処理能力を果たすことは全く期待できない。副組長として実務面で李をサポートするはまずあり得ないが、その一方で政治局常務委員として、そして党内のイデオロギーの担当として、李の仕事に余計な口出しをしてくるのは必至だろう。王が副組長となったことで、ただでさえ無力な李はなおさら手足を縛られてしまう。

王を副組長に任命するこの人事を主導したのは当然李ではなく、王に近い習その人であると思われる。つまり習は、李に組長の大役を頼んでおきながら、安心して李に任せるのではなく、王を使って李首相を牽制したいのであろう。

副組長人事だけでなく、指導小組のメンバーの人選にも習の思惑が反映されている。

保健衛生の専門家がいない

新華社通信の発表で判明した指導小組の主要メンバーのうち、党中央弁公室主任の丁薛祥、党中央宣伝部長の黄坤明、北京市党委員会書記の蔡奇の3人がいずれも習の腹心の中の腹心であることは中国政界の常識である。上述の王滬寧を入れると、主要メンバーの半数が習近平派によって固められていることが分かる。

さらに奇妙なことに、主要メンバーには公安部長の趙克志や国務院秘書長の肖捷が入っているが、彼らと同じ大臣(閣僚)クラスの国家衛生健康委員会主任の馬暁偉や、衛生部長の陳竺の名前が見当たらない。

こうしてみると、危機の緊急対策本部としての疫情対策指導小組の人選は、実務重視・実行能力重視の視点から選ばれたわけでは決してなく、むしろ李への牽制という習の政治的思惑からの人事であることが一目瞭然である。

つまり習は国家の緊急事態に際し、自ら先頭に立って危機に当たる勇気もなければ責任感もなく、その責任を首相の李に押し付けてしまった。一方で、李に全権を委ねて李が思う存分仕事できる環境を作ってあげるのでもなく、逆に側近人事を行って李の仕事を牽制し、その手足を縛ろうとしている。

習のリーダーシップはもはや最悪と言うしかなく、この無責任さといい加減さで当面の危機を乗り越えられるわけはない。貧乏くじの役割を引き受けた李も要所要所で習の牽制を受け、きちんとしたリーダーシップを発揮できない。

このような指導体制で、今回の新型肺炎の事態収拾と危機克服は期待できそうもない。状況はまさに絶望的である。

【私の論評】SARSに続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は、世界から糾弾されて当然(゚д゚)!

新型肺炎に関して、WHO(世界保健機構)が非常事態宣言を出さなかった事が激しく糾弾されることになるでしょう。習近平は事態を把握できていなかった可能性もあります。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事が裏目に出たばかりか、台湾の締め出しも非難されることになるでしょう。日本としては世界の先頭に立って台湾のWHO加盟を訴えるべきです。

WHOが大スポンサーの中国共産党を忖度した事については、以下の記事が詳しいです。
「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より、結論部分のみ引用します。
 たとえ「緊急事態宣言」を受けたとしても、パンデミックを起こさないことの方が遥かに重要だと思うが、それを選択できないところに中国の欺瞞的な構造がある。地方政府の危なさと共に、こういった所に「ポキッと折れるかもしれない」中国の脆弱性が潜んでいるのである。 
 このような国の国家主席と「責任を共にすると誓い」、国賓として来日させようとしているのが日本の安倍内閣だ。天皇陛下と握手する場面を全世界にばらまかせることによって、習近平政権のやり方に正当性を与えようとしている。 
 このような状況にあってもなお、習近平を国賓として招聘するなどということが、どれほど恐ろしい未来を日本にそして全世界にもたらすか、安倍内閣は真相を見る目を持つべきだ。 
 野党も何をしているのか。習近平の国賓来日が、どれほど危険な将来をもたらすか、そのことにも目を向けた大局的な国会議論を望む。
日本では、新型のコロナウイルスによる肺炎について、安倍総理大臣は衆議院予算委員会で28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

     新型のコロナウイルスによる肺炎について、衆議院予算委員会で
    「指定感染症」にする方針を明らかにした安倍総理

この中で、安倍総理大臣は「政府としては、感染拡大が進んでいることを踏まえ、これまでに関係閣僚会議を開催し、水際対策のいっそうの徹底、検査体制の整備、国民に対する迅速かつ的確な情報提供、日本人渡航者や滞在者の安全確保などについて関係省庁で連携して、万全の対応をとるよう指示を行った」と述べました。

そのうえで、安倍総理大臣は「感染者に対する入院措置や、公費による適切な医療等を可能とするため、今般の新型コロナウイルスに関する感染症を感染症法上の『指定感染症』などにあすの閣議で指定する方針だ」と述べ、今回の肺炎について、28日の閣議で、国内で感染が確認された場合、法律に基づいて強制的な入院などの措置を取ることができる「指定感染症」にする方針を明らかにしました。

また、安倍総理大臣は中国政府との調整を加速させ、民間のチャーター機などあらゆる手段を通じて現地に滞在する日本人の希望者全員を速やかに帰国させる方針を重ねて明らかにしました。

新型コロナウイルスによる肺炎が「指定感染症」に含まれると、国内で感染が確認された場合、感染症法に基づいて強制的な措置をとることができます。

具体的には、都道府県知事が患者に対して感染症の対策が整った医療機関への入院を勧告し、従わない場合は強制的に入院させられるほか、患者が一定期間、仕事を休むよう指示できるようになります。入院などでかかる医療費は公費で負担されます。

指定の期間は原則1年間で、さらに最大で1年延長することができます。

指定感染症にはこれまでに平成15年に重症急性呼吸器症侯群「SARS」、平成25年にH7N9型の鳥インフルエンザなどが指定され、今回の肺炎が指定されれば平成26年の中東呼吸器症候群「MERS」以来、5例目となります。

指定までにかかる期間について厚生労働省は「過去には、2週間ほどかかった例もあったが、今回はそれよりも早く指定できるようにしたい」としています。

厚生労働省によりますと新型コロナウイルスによる肺炎については、指定感染症だけでなく検疫感染症にも指定される見通しです。

検疫感染症に指定されると、空港や港などの検疫所で感染が疑われる人が見つかった場合、法律に基づいて検査や診察を指示できるようになります。

具体的には、空港や港などで入国者に症状が出ていないかを質問し、感染が疑われる症状があった場合は検査や診察を受けるよう指示できます。

さらに、入国時に感染の疑いがある人については、一定期間、健康状態について報告を求めることができます。

これらに従わない場合は罰則を課すことができます。

日本としては、WHOが非常事態宣言を考慮したのか、新型肺炎に関して対応が鈍かったようですが、ようやく動きはじめました。

            スイス・ジュネーブのWHO本部で開かれた新型コロナウイルスによる肺炎感染に
            関する記者会見で発言するテドロス事務局長(2020年1月22日)

WHOをが非常事態宣言を出さなかったことに考慮したとしても、万が一国内で、新型肺炎が蔓延するようなことにでもなれば、多くの人命が失われたり、経済活動もままなくなるのは明らかなので、このような措置に踏み切ったのでしょう。

2020年に入ってからの27日間で世界は中東戦争の危機、オーストラリアの山火事による大量絶命の危機、新型肺炎によりグローバルパンデミックの危機に直面しているのに、習近平は自らの保身に走ることで、本当に新型肺炎に対処しようとしてるのか、はなはだ疑問です。現在のWHOも自らの使命を果たすつもりがあるのか、疑問です。

世界中の他の国々も続々と、日本政府のような措置をすでにとったか、とりつつあります。WHOの緊急事態宣言がない中で、世界中の国々がこうした措置をとっているのですから、WHOと中国の動きはなんともお粗末というか、現実を直視せず、中国人民に対してだけではなく、他の国々に対する裏切り行為でもあります。

現在は、我が国をはじめ、世界の国々は当面はパンデミックを封じ込めることに集中すべきですが、これが収束した場合には、WHOや中国を徹底的に糾弾すべきです。糾弾するだけではなく、制裁すべきです。

SARS続き、今回も似たようなことを繰り返したWHOと中国は糾弾されて当然です。それでも改めなければ、対中冷戦に本気で取り組んでいる米国のように、他国も中国に対して厳しい制裁を課すべきです。そうして、WHOにも厳しい措置をとるべきです。

中国とWHOがまともにならなければ、世界にはいつまでもパンデミックの危機を拭い去ることはできません。頭が19世紀か、もしかすると18世紀であるかのような両者をこのまま捨置くわけには絶対にいきません。両者とも、本当にかなり痛い目に合わせないと、いつまでも同じことを繰り返すことになるだけです。

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2020年1月26日日曜日

沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙―【私の論評】すっかり忘れさられたもう一つの疫病「豚コレラ」!中国は元々カントリーリスクが高いことを再認識せよ(゚д゚)!

沖縄・豚コレラ殺処分で自衛官が流した涙

     飼育豚が豚コレラに感染した沖縄県うるま市の養豚場で、防疫作業をする
     県職員と自衛隊員ら=8日午後0時1分(小型無人機から)

陸上自衛隊の松田みずき陸士長(23)は一児の母だ。沖縄県南風原(はえばる)町の出身。敵のミサイルや戦闘機を撃ち落とす03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を運用する同県沖縄市の第15高射特科連隊第3中隊に所属している。息子は2歳になった。

1月8日、松田陸士長に思わぬ任務が舞い込んだ。うるま市と沖縄市の養豚場で豚コレラ(CSF)の感染が確認されたたため、県が第15旅団に災害派遣を要請した。これを受け、同旅団は隷下の第15高射特科連隊を中心に部隊を編成した。任務の内容は、豚の殺処分支援や消毒活動だ。

自衛官数人が豚をベニヤ板で囲い込み、獣医のもとへ誘導する。獣医が電気ショックを与えた後、心臓に注射して安楽死させる。死体を仮置き場に運ぶのは自衛官の役割だ。松田陸士長が最初に担当した豚は、おなかに赤ちゃんがいる母豚だった。

「自分も同じ一人の母親として、すごく心が痛かった」

松田陸士長はこう振り返る。周囲には泣いている同僚もいた。第15高射特科連隊本部管理中隊の野上光3等陸曹(29)も涙を流した一人だ。「豚を育てていらっしゃる方のことを思うと涙が出てしまった。最初はちょっと、やっていけるのかなと思った」と語る。

ベテラン自衛官にとっても緊張を強いられる任務だった。自分の地元が危機にさらされているなら、なおさらだ。第15後方支援連隊整備中隊の安慶名光明1等陸曹(49)は豚コレラが発生したうるま市出身。「初めてのことだったので戸惑いもあった」と打ち明ける。同級生の県庁職員を現場で見つけて気持ちが軽くなったが、若い隊員が養豚場の臭いに慣れることができず、気を配らなければならなかった。

殺処分を受ける豚が暴れることも隊員を悩ませた。豚は大きいもので体重300キロを超える。農林水産省担当者は「映画『もののけ姫』にでかいイノシシが出てくるでしょ。あんな感じです」と解説する。松田陸士長と同じ中隊の金城保享1等陸曹(36)は堂々とした体格の自衛官だが、「押さえ込むときにものすごい力を要した」という。

心のケアが課題

第15旅団は8日から20日までの13日間、豚コレラ対策支援のため、約570人の隊員を派遣した。同県内で殺処分された豚は20日時点の県発表で7農場の計9043頭。各養豚場では約35人の小隊規模で6時間交代のローテンションを組み、24時間態勢で「有事」に対処した。

15旅団にとって、懸案の一つは隊員の心の問題だった。昨年、岐阜県や愛知県で豚コレラ感染を受けて殺処分が行われた際は、精神的苦痛を訴える隊員が相次いだという。今回の派遣では心理ケアを専門とする自衛官3人を投入し、一日の任務が終わるたびにミーティングを開いた。どうしても耐えられない隊員は配置転換するなどして対応した。

現地指揮官を務めた第15高射特科連隊長の内村直樹1等陸佐(47)は「その日の任務が終わった後にどう感じたか、つらかったことがないかということを吐き出せた。一人ひとりの隊員に異常がないか、細やかに確認を取った」と説明する。殺処分の際に泣いた野上3等陸曹は、上官から「それは、おかしいことではないんだよ。みんなそうなんだよ」と声をかけられたという。

対象となった7農場の防疫措置が終了したことを受けて陸自の災害派遣が終了した20日、玉城デニー知事(60)は中村裕亮旅団長(54)に「誠にありがとうございました。本当にありがとうございました」と頭を下げた。県畜産課の担当者も「今回ここまでこられたのは、自衛隊の協力があってのことだと実感している」と語る。

活動に疑問の声も

ただ、こうした活動に自衛隊を使うことには疑問の声もある。元陸自東部方面総監の渡部悦和氏(64)は「南西諸島に対する中国の脅威が高まる中で、沖縄を取り巻く状況は非常に厳しい。訓練すべきときに、豚コレラの災害派遣は本当に適切だったのだろうか」と話す。

自衛隊の災害派遣は「公共性」「緊急性」「非代替性」の3要件が満たされたときに都道府県知事が要請できる。「非代替性」とは、自衛隊が派遣される以外に適切な手段がない状態を指す。「各自治体の体力によって『非代替性』があるかどうかの判断は異なる」というのが、防衛省統合幕僚監部の説明だ。

渡部氏は平成16年に京都府で鳥インフルエンザが発生した際の殺処分支援で現地指揮官を務めた経験から「自治体だけではなく、農協や建設業界には人も機材もある中で、すぐに自衛隊にやらせるのはおかしい」と批判する。

ただ、災害派遣は自衛官にとって目に見えて「県民の役に立った」と実感できる貴重な機会ともいえる。

「任務から帰ってきたら、県庁の皆さんから『ありがとうございました』との言葉をいただいて、グッとくるものがあった。『多少きつくてもしようがないやろ』という現場の意見はあった」

派遣隊員ら(左から安慶名1曹、安田1曹、野上3曹、松田陸士長)=20日午後、県庁

第15旅団隷下第51普通科連隊第3中隊の安田翔一1等陸曹(35)はこう語る。

第15高射特科連隊第2中隊長の斎藤祐太3等陸佐(34)は「国民の安心と安全のためにこのような任務につくことができ、任務を完遂できたことをとても誇りに思う」と胸を張った。

【私の論評】すっかり忘れさられたもう一つの疫病「豚コレラ」!中国は元々カントリーリスクが高いことを再認識せよ(゚д゚)!

最近は、中国の新型肺炎ウイルスの蔓延により、日本では豚コレラのことはすっかり忘れラさられたかの如くですが、これも重大な事件です。そうして、後で詳細を述べますが、この豚コレラも中国が発生源とみられています。

陸自の災害派遣が沖縄で終了しました。これは、沖縄豚コレラの新たな発生は食い止められたことを意味します。

上の記事にもある通り、これまでの過程において、自衛隊員はとてつもなく、大変な目にあったようです。自衛隊員の皆様本当にご苦労さまでした。

それにしても、自衛隊が災害派遣されている最中に、本州方面からいつもいらしている、左翼活動家の方々は一体何をしていたのでしょう。沖縄県民のことを本当に考えていらっしゃるなら、沖縄の豚コレラ防疫活動に、ボランティアの形でも参加すべきではなかったでしょうか。

沖縄県としても、自衛隊に頼る前に、これらの人々をボランティアとして、防疫活動に携わさせることなど考えなかったのでしょうか。沖縄といえば、基地反対派の方々が、元気一杯に市民活動に従事されている様子、YouTubeなど(下の動画など)でみかけますが、あの方々は何をしていらしたのでしょうか。


それにしても、何もかも、自衛隊に依存する行政とは何なのでしょうか。災害も豚コレラも鳥インフルエンザも、本来なら行政の仕事のはずです。多くの職員を低賃金の非正規雇用にして、その場しのぎの行政をやっているから、事が起これば自衛隊頼みとなってしまうのでしょう。

自衛隊も大幅に定員不足が続き、個々の隊員の負荷は重いです。本来の訓練に支障も出ることでしょう。本当に沖縄に限らず、各自治体はもしもの場合にどうするのか普段から考えておいていただきたいものです。普段から、各自治体の正職員が、リーダーとなり、ボランティアなどを動員して、いざというときに適切な行動ができるように、普段から訓練しておくべきものと思います。

それでも、災害などの規模大きすぎて、自分たちの手ではどうにもならなかったときに、自衛隊に頼るべきです。沖縄の場合は無論正規職員の一部は防疫活動に従事していてはいたようでしたが、どうだったのか、この観点からも国会などで論議をすべきです。

豚コレラ、アフリカ豚コレラ対策チームとして農水省のみならず、法務省、財務省、法制局、調査室との打ち合わせが連日続いています。来週も予算委員会で与野党対決の場面ばかりが取り上げられると思いますが、食料の安全保障に関しては国会の審議を横目でにらみながら、地道な作業を続けています。具体的にはいかのようなことが実施されています。
・家畜伝染病予防法改正法第一弾(予防的殺処分の対象にアフリカ豚熱を入れる)
・家畜伝染病予防法改正法第二弾(国家防疫体制の強化も含めた総合的な見直し)
・出入国管理及び難民認定法改正法(水際対策のさらなる強化)
・養豚農家振興法の見直し検討など
それにしても、今回の新型肺炎は、無論のこと、この豚コレラの発生源もまだはっきり特定されてわけではないですが、中国だといわれています。

一昨年9月に26年ぶりに発生し、現在も猛威を振るっている豚コレラの感染経路について、農林水産省の疫学調査チームが昨年中間とりまとめを公表しました。中国やその周辺国からの旅行客が不正に肉を持ち込むなどしてウイルスが日本に入り、ウイルスを含む肉が廃棄されて野生イノシシに感染したのが発端になった可能性があるとしています。

豚コレラより致死率が高く、有効な治療法やワクチンがない、アフリカ豚コレラが中国や北朝鮮などで発生し、新たな脅威にもさらされています。


中間とりまとめでは、発生源の特定はできていないようですが、今後も調査を継続して、発生源をつきとめていただきたいものです。ただし、中国が感染源でない可能性もありますが、今回の豚コレラの感染源が中国だったとしても全くおかしくはありません。

中国とのビジネスには、中国固有のカントリーリスクがあります。日本国内でも、中国のインバウンド消費に糠喜びしていると、今回の新型肺炎ウイルスや、豚コレラで足元をすくわれかねません。

実際中国ではアフリカ豚コレラ感染のまん延で、今年に入って飼育数の3分の1に当たる2億頭を超える豚が処分されるなど、食卓に欠かせない豚肉の価格が急騰しているのですが、これにいま、中国マフィアが目を付けているといいます。アフリカ豚コレラに感染した豚を安く買い取って、他の省に運び、健全な豚の肉と偽って、高く売りつけたりして荒稼ぎしているというのです。

このブログでもかねてから主張しているように、現状の日本におけるインバウンド消費など、GDPの1%にすぎません。消費税増税をした現在、大型の経済対策をすぐに行い、物価目標を未だに達成できない日銀も従来の異次元の金融緩和の姿勢にもどすべきです。

それなしに、単純にインバウンド消費を増やせば、日本国内がニセコ化するだけです。

今回の新型肺炎、豚コレラ騒動で、日本人いかに不確かな中国のインバウンド消費に頼ることが危険なのかを学ぶべきです。そのような危機から日本を守るには、日本国内の景気を良くして、インバウンド消費に頼らなくて良くすることです。

無論「来る者拒まず」という格言にもあるとおり、わざわざ日本に来たいとする外国人を拒む必要はないですが、それにしても、外国人にだけ特化した施設をつくり、日本人を受け付けないようなことまで、無理して行うことは全くありません。日本には、もともとそのようなことをしなくても、国内を豊かにできる潜在能力が十分有り余るほどあることを忘れるべきではありません。

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2020年1月25日土曜日

新型肺炎の最大の犠牲者は中国の貧困層―【私の論評】中国はもっと社会・経済的に豊かにならなければ、世界の伝染病の発生源になり続ける(゚д゚)!


漢口駅の入り口をマスク 姿で警備する武装警察


<新型コロナウイルスに接触する可能性が最も高く、そして感染を中国全土に広げるのは貧困層の出稼ぎ労働者>

中国湖北省の省都・武漢。1月23日の夜明け、例年なら翌日から1週間にわたる春節(旧正月)の休暇を前に、多くの人でごった返しているはずの駅と空港に人影はない。

武漢で発生したとみられる新型コロナウイルスの感染者が急増しているのを受け、同市は23日から交通機関の運行を停止。主要道路も封鎖され、帰省や旅行を予定していた1100万人の住民の多くは、足止めを食らうことになった。アメリカに例えれば、多くの人が帰省する感謝祭の2日前に、シカゴ都市圏全域が封鎖されるようなものだ。

だが、新型ウイルスのリスクに最もさらされているのは、感染者が見つかった米西海岸のワシントン州やタイの首都バンコクの住民ではない。中国の貧困層だ。

世界中どこの貧困層もそうだが、中国の貧困層は適切な医療を受けにくい状況にある。だが、新型コロナウイルスに接触した可能性が最も高く、それが最も急速に拡散する可能性が高いのは貧困層であり、政府が突然打ち出した過激な対策の最大の影響を被るのも、中国の貧困層だ。

問題のウイルスは、武漢の海鮮市場で、動物からヒトに感染したとみられている。海鮮市場とは言うものの、この市場はオオカミの子からヘビ、コウモリ(今回の感染源とみられている)など珍しい野生動物を幅広く扱っていた。

中国の生鮮市場はどこもそうであるように、動物を扱う不潔で危険な仕事を担っていたのは、主に出稼ぎの単純労働者だ。

武昌と漢陽、そして漢口という歴史ある3つの地区が合わさった武漢は、20世紀末に不動産開発を軸に急成長を遂げた。だが、武漢の医療システムは街の急速な成長に追い付いておらず、今回の危機で既に極限状態にある。

23日に武漢の交通機関がストップしたとき、出稼ぎ労働者や地方出身の大学生の多くは、既に故郷に向けて出発した後だった。こうした人たちによるコロナウイルスの「持ち帰り」が危惧されるなか、各地の公衆衛生当局にとって、最新情報の収集は最重要課題となっている。

ところが現実には、武漢の近隣都市で感染者が確認されたニュースよりも、韓国やタイで感染者が見つかったニュースのほうがずっと早く報じられているのが現実だ。

武漢の病院はパンク寸前
監視社会の意外な抜け穴

国外で感染が確認された中国人旅行者は、平均的な中国人よりもはるかに金持ちだ。それは外国旅行に行くだけの経済力がある時点で明白だ。中国のパスポート保有者は、人口の10%にも満たない。

バンコク行きの飛行機のエコノミークラスで咳をしている中国人客は、相乗りトラックに揺られて町外れの実家を目指す労働者や、長距離バスで遠い地方の故郷に帰省する労働者よりも、はるかに新型肺炎に感染している可能性を認識しやすい。

それに多くの出稼ぎ労働者は、少しばかり体調が悪くても、誰もが仕事を休むこの時期に帰省するチャンスを逃したくないと思うだろう。

中国は監視社会だが、その網は穴だらけだ。テクノロジーによるプロファイリングシステムで中流階級はかなり可視化されているが、貧困層は抜け落ちている。

全ての市民が常時携帯しているはずの身分証を、持っていない人もいる。紛失したが、高い旅費をかけて役所まで行って再発行する余裕がない人。そもそも出生を届け出ていない人もいる。彼らは身分証が必要な鉄道や飛行機ではなく、監視が難しいバスや相乗りのトラックを利用する。

彼らはインターネット上でも追跡が難しい。中国では微信(ウィーチャット)のようなサービスが広く浸透していると言われているが、ネット普及率はようやく60%を超えた程度だ。微信のアカウントや身分証を、家族で共有する例も少なくない。

予防や治療の「格差」

公衆衛生に関しては、地方は置き去りにされがちだ。手洗いやマスクなどの感染予防策や、健康に関する情報はなかなか広まらない。電話やネット回線の有無が、健康を守るための情報を左右する。

情報だけではない。コロナウイルスが武漢の外に広がるにつれて、公衆衛生の関連用品が不足し始めており、都市部から離れている病院ほど必要な医療品が届きにくい。

上海では春節で工場が休業する時期と重なり、マスクの供給不足に拍車が掛かっている。ある工場は、通常の3倍の給料で休日出勤を募集している。こうしたリソース不足と従来の格差が相まって、持てる者と持たざる者の「感染予防格差」が広がりそうだ。

さらに、ウイルスに感染した貧困層は、病院に行く可能性がかなり低い。中国の医療制度は、中流階級さえ、適切な治療を受けるのが難しいことで悪名高い。国民の大多数にとって、質の高い医療へのアクセスはないに等しいのだ。

医療の資源は、政策によって大都市や首都圏に集められている。中国人医師の大半は学部レベルかそれ以下の教育しか受けておらず、資格のある臨床医師(アメリカの医学博士に相当)は大都市の病院にしかいない。それらの病院も今や患者であふれ、スタッフはパンク寸前だ。

公的な医療保険も近年は拡充されているが、社会保障は戸口(戸籍管理制度)と結び付けられている。戸口の登録は基本的に出身地に縛られ、居住地や受けられる教育、公共サービスも限定される。

従って、地方の住民が、優秀な医師のいる都市部の病院で公的保険を使って受診することはできない。戸口のある土地から遠く離れた所で働く出稼ぎ労働者は、保険を全く利用できない。

彼らは命の危険が迫るまで病院に行かず、自分で治そうとするか、伝統的な民間療法に頼る。日常的に健康状態が悪くウイルスの影響を受けやすいため、風邪と勘違いしやすくなる。

武漢市内でマスクを着用して清掃作業をする女性(1月22日)

こうした要因を全て悪化させるのが年齢だ。1月23日に当局が公表したデータによれば、これまでの死者17人の平均年齢は73歳で、大部分を退職者が占める。最もリスクが高いのはより高齢で既往症のある人々という状況に変わりはない。

だが出稼ぎ労働者は適切な年金や良質な医療を利用できず、40~50代以上であることも多い。若い頃から同年代の中流層に比べて過酷な労働条件で働いてきた人々もいる。

こうした貧困層は比較的見えにくく、かつ軽視されていることも、中国当局が公式発表している患者数(22日時点で500人以上)が外国の推計(1700人以上)と大きく懸け離れている一因だ。当局は患者の存在を隠蔽しているというより、患者を見つけられずにいるのかもしれない(恐らくその両方だろう)。

1月中旬から市内全域と他の交通の要所で診断などが無料になった(義務付けられた)ことで、こうした状況はいくらか改善されるだろう。だが、医療施設は都心部に集中しがちで、新型肺炎と診断されても十分な治療を受けられない可能性もある。

過去の四川大地震や唐山大地震への対応でも、国は都市部を優先し、農村部の住民は自分たちで対処せざるを得なかった。武漢では市民の足であるバスや地下鉄やフェリーなどの公共交通機関が運行停止に。低所得層の看護師や若手の医師などがシフト勤務のために移動するのに支障が出る恐れもある。

不満や不安のはけ口にも

貧困層は診断や治療の面では見落とされがちだが、抑圧の対象としては逆に目を付けられやすい。武漢周辺で検疫が強化されるなか、当局からひどい扱いを受ける可能性もはるかに高い。惨事はしばしばエリート層をパニックに陥れ、貧困層やよそ者を孤立させる。76年の唐山大地震の後には、農村部から都市部に避難してきた人々を、都市部の民兵組織が略奪者として殴り殺したり、射殺したりした。

武装した検疫官や町に閉じ込められた市民の間に不安が広がれば、こうした危険な衝突が起きかねない。封鎖された市内で治療に必要な物資などの供給と日々の活動が低下しているだけに、なおさらだ。意図的な誤報も出回っている。そのリスクは世間の対応を遅らせると同時に、「噂の流布」に対する司法当局の取り締まり強化につながってもいる。何がフェイク情報の拡散で何が政府批判なのか、当局の線引きは不明瞭なままだ。

検疫はウイルスの拡散防止に役立つだろうが、医療や検疫のシステムにとって最も見えにくい中国の労働者階級については既に手遅れだ。特に出稼ぎ労働者は長い道のりを長時間かけて移動しなければならないため、春節が始まる頃にはもう移動を始めている。彼らを見つけて救いの手を差し伸べるのは容易ではないが、何としてもやらなければ事態は改善しない。

<本誌2020年2月4日号掲載>
【私の論評】中国はもっと社会・経済的に豊かにならなければ、世界の伝染病の発生源になり続ける(゚д゚)!

中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、中国での感染は5500人規模に広がっているとする推計結果を、北海道大医学研究院の西浦博教授(理論疫学)らが24日、医学専門誌に発表しました(https://www.mdpi.com/2077-0383/9/2/330#)。中国で患者の診断や報告システムが十分機能していない可能性があるといいます。

西浦さんらは、日本やタイ、米国など、24日朝までに中国本土以外で報告された計13人の感染者のデータと、武漢市からそれらの地域への渡航者数などから、統計的に中国本土での感染者数を導き出しました。

中国政府は24日時点で、感染者は計830人としています。西浦さんは「実際の感染者数は数百人ではなく数千人のオーダーで、感染元が明らかでない感染者がかなりの数いるだろう」としています。

これは、上の記事でも指摘されてるように、「貧困層」は比較的見えにくく、かつ軽視されていることも要因であると考えられます。中国当局が公式発表している患者数(22日時点で500人以上)が外国の推計(1700人以上、北大での推計の5500人以上)と大きく懸け離れている一因でしょう。当局は患者の存在を隠蔽しているというより、患者を見つけられずにいるのかもしれない(恐らくその両方だろう)」という指摘とも合致しているものと思われます。

李克強指数でみると、中国のGDPは2015年にはすでにマイナス成長になっていた可能性が・・

中国の統計データは、信用できないということは、このブログでも経済分野では過去に何度か掲載してきました。経済分野でも重要なGDPにおいては、過去において何度も、中央政府が発表した全体の数値よりも、各々の省があげてきたものの総計のほうが高いということがありました。

ただし、信用できない中国の経済統計のなかでも、農業生産と工業生産に関しては、しっかりデータを取っている節がうかがえます。小売や物流といった第三次産業に関する統計には弱点があるものの、計画経済を進めるために、1950年代からしっかり生産量のデータをとっていたようです。

この農業および工業の2015年のGDP成長率を産業別のデータのなかから見ると、農林業に畜産と漁業を加えたところで3.6%、工業が6.0%の成長となっています。この業種別GDPのほかに、自動車、鉄鋼、電力といった主要二七の工業製品の生産量データも出されます。

これらをチェックしてみると、2015年上半期に六%以上の成長を達成した製品は四製品のみ。さらに、13の工業製品は、伸び率がマイナスを記録しています。

工業製品の生産量の伸びは平均で一%程度。工業製品のデータに関しては割と正確に採取されます。そうなると、産業別の成長率六%の伸びと、工業製品別の生産量の伸びとが、かなり乖離していることがわかります。

粉飾の匂いがプンプンするのは工業成長率6%です。こういった数値を積み重ね、重ね合わせていくと、どうしても中国経済GDP6.9%成長というのは、相当にゲタを履かせた数値だということが判明します。中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度と見るのが妥当だと思います。

中国においては、統計数値などは、まともなものではなく、政治的メッセージと受け取るべきなのかもしれません。感染などの統計もそう受け取るのが妥当なのかもしれません。

話が少しずれてしまいましたが、中国の統計はもともと、経済の統計も信用ならないわけですから、おそらく北大の西浦博教授の出した推計地のほうが、正しいと認識しておいたほうが良いでしょう。

私のは、ブログ冒頭の記事のように、「貧困層」の実態を素早く把握できないことが、SARS感染の場合も、今回の新型肺炎の場合も、中国政府が素早く感染などに対応できない最大の原因だと思います。無論、日本国内で報道されているように、隠蔽体質ということもあると思います。

いずれにしても、中国の社会が遅れていることが、中国が疫病に素早く対応できないことの原因です。

これは、すぐにでも取り除かなければ、私達は中国を源とする疫病にいつまでも悩まされることになるのです。

以下にSARSkの感染源ともなった、キクガシラコウモリのスープの動画のついたツイートを掲載します。このツイートでは、このキクガシラコウモリが今回の新型肺炎の原因となったとされていますが、これ自体はまだ確認はされていません。




やはり、中国もある程度は、他の先進国のように、まずは民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめ、中間層が自由に社会経済活動をできるよにすべきです。機会的に、貧困層を豊かにしようとして、韓国のように最低賃金を単純にあげるようなことをすれば、逆効果になり、雇用を激減させることになるだけです。

ようはある程度まともな社会にして、その次にまともな経済・財政政策を行いつつ、まずは貧困層に対して、医療などの面で手厚い保護をし、さらにいずれは経済的にも貧困を撲滅すべきです。

中国は国全体では、GDPは世界第2位(ただし、先に述べたように、中国の統計はデタラメなので、実際は1/3だったとすれば、ドイツ以下で世界第四位)ですが、一人あたりのGDPは、世界70位です。中国は未だ貧困であり、特に富裕層に富が集中し、貧困の度合いはいまだに酷いものです。

貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、中国はもっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。

中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を変えなければできないことです。

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