2023年10月31日火曜日

経済減速の中国に日本と米国は何を言うべきか―【私の論評】習近平政権の展望:経済課題とリーダーシップの動向を対中強硬派マット・ポッティンジャーが語る(゚д゚)!

経済減速の中国に日本と米国は何を言うべきか


岡崎研究所


まとめ

  • 習近平は共産党大会を支配し、政治的ライバルを排除し、現在も党内での権力集中を進めている。
  • 中国経済の減速は、習近平が地政学的な利益を優先し、台湾問題を力で解決しようとする可能性を示唆している。
  • 米中関係は緊張しており、中国は米国を弱体化しているとみなしているが、台湾問題に対する強硬姿勢が悲惨な戦争を引き起こす可能性もある。
  • 現在は米中関係が緊張しており、中国は譲歩する必要があるとされている。
  • 中国は次期米国大統領選において、NATO、ウクライナ、台湾を支援する候補者が大統領になることを恐れている
マット・ボッティンジャー氏

 2023年10月9日、英フィナンシャル・タイムズ紙は、元国家安全保障担当次席補佐官(注:トランプ政権時)であるマット・ポッティンジャー氏とのインタビュー記事(「経済が弱くても習近平は大胆になり得る」 :China expert Matt Pottinger:‘Even with a weak economy, Xi is feeling emboldened’)を紹介した。


 記事では、習近平が共産党大会を支配し、ライバルを排除したことを背景に、現在も党内のリーダーシップを強化しようとしていると指摘されている。習近平政権では反腐敗キャンペーンが進行し、多くの党員が追放されていることが強調された。


 ポッティンジャー氏は、中国経済の減速が習近平をリスクを冒すように促す可能性があると指摘し、地政学的な利益を確立するために行動する可能性を示唆した。また、中国は現在の米国を弱体化していると考えており、台湾問題において力の行使が最善の抑止策であると述べた。


 また、将来の米中関係について、デリスキングではなく秩序だったデカップリングを目指していると述べ、トランプ政権下での対中政策とバイデン政権下での対中政策の違いについて議論した。


 最後に、中国共産党がトランプとバイデンのどちらを好むかについて、中国がトランプ第二期政権で最も恐れるのはNATO、ウクライナ、台湾を支援することであると指摘した。


 ポッティンジャー氏の発言は、習近平政権の特徴や中国の経済状況が政治的リスクにどのように影響するかについて示唆に富んでいる。ただし、中国が実際にどのような行動を取るかは予測が難しく、コミュニケーションと戦略が重要であると述べている。


 これは、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。


【私の論評】習近平政権の展望:経済課題とリーダーシップの動向を対中強硬派マット・ポッティンジャーが語る(゚д゚)!


まとめ

  • マット・ポッティンジャーは元米国国家安全保障副顧問で、中国の専門家であり、対中国強硬政策の主要提唱者として知られています。
  • ポッティンジャーは中国に対してタカ派的なスタンスを取り、貿易関税や台湾との緊密な関係を提唱しました。
  • 彼はトランプ政権時代に中国を米国の競争相手と見なし、「戦略的競争」政策の推進に貢献しました。
  • ポッティンジャーの見解では、中国は米国の開放性を利用しつつ、自国のシステムを制限しており、デカップリングが必要だと主張しています。
  • ポッティンジャーの見解は、今も米中関係に影響を与えており、中国の野心に対する警戒と抑止が重要であると主張している。

トランプ大統領とマット・ポッティンジャー氏(中央)

マット・ポッティンジャーはトランプ政権で活躍した元米国国家安全保障副顧問です。中国の専門家であり、対北京強硬政策を形成する第一人者とされています。ポッティンジャー氏についていくつか紹介します。


彼は ジャーナリストとしてのバックグラウンドを持ち、ロイターとウォール・ストリート・ジャーナルの中国駐在記者を長年務めました。この経験により、中国の政治と政策について貴重な見識を得ました。


彼は、中国に対してタカ派的なスタンスをとり、米国の利益に対する脅威が高まっていると見ていました。彼は中国に対抗するため、貿易関税、渡航禁止、台湾との緊密な関係といった政策を提唱しました。


彼はトランプ政権の国家安全保障戦略とインド太平洋戦略の形成に尽力し、中国を米国の力を弱めようとする競争相手と見なしました。中国との「戦略的競争」政策の推進に貢献しました。


また、中国語を流暢に話し、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで国際関係学の修士号を取得。彼の専門知識と経験は、政策立案に信頼性をもたらしました。政府を去ってからも、中国への厳しいアプローチを主張し続けています。彼は、米国の中国への「関与」は失敗し、中国は自国のシステムを制限しながら米国の開放性を利用しようとしていると考えています。競争条件を公平にするためには、デカップリングが必要なのだとしています。


ポッティンジャーは現在、フーバー研究所の特別客員研究員および民主主義防衛財団の上級研究員です。彼の見解は米中関係に関する議論に今も影響を与え続けています。


ドラゴンスレイヤー(対中国強硬派の意味) AI生成画像

 批評家たちは、ポッティンジャーは中国に対してタカ派的でイデオロギー的すぎると主張しています。彼の政策提言は、米中関係の緊張と不安定を煽る危険性があるとしています。しかし、支持者たちは、中国の野望を前にした彼の警告は先見の明があると見ています。


マット・ポッティンジャーは影響力のある対中国タカ派であり、トランプ政権時代に競争力のある政策アプローチを推進するのに貢献した専門家です。彼の見解は、米国が台頭する中国にどう対処すべきかという外交政策サークルや議論において、今もなお際立っています。


上の記事で示されているポッティンジャーによる分析も、洞察に満ちています。いくつかの重要なポイントが目立ちます。 


第一に習近平は権力を強化したが、依然としてライバルを排除し、支配力を強化しようとしているとしています。反腐敗キャンペーンは真の改革ではなく、政敵を対象としています。習近平の支配力は、彼を大胆にしていますが、同時に不安でもあります。


第二に、中国経済の減速は、習近平が国民の目をそらし、中国の強さを主張するために、より大きな地政学的リスクを取ることを促す可能性があると指摘しています。これは懸念すべきことであり、警戒が必要です。


第三に、 中国は現在、米国を弱いと見ており、台湾については武力が必要かもしれないと考えています。この攻撃性と米国の弱さの認識は危険をもたらします。米国は強さを示さなければならないです。


第四に、 米国は、単なる「リスク回避」ではなく、中国からの「秩序ある離脱」を追求すべきとしています。緊密な経済関係は中国に影響力を与えており、ある程度の切り離しは賢明です。


第五に、 中国は、NATO、ウクライナ、台湾を支持する第二次トランプ政権を恐れているとしています。このことは、中国がバイデン政権を好んでいることを示唆しています。しかし、どちらの政権も中国に立ち向かわなければならないです。


日米 AI生成画像

これに対し、日米は以下を行うべきです。


 第一に、 中国の経済と政治を注意深く監視すべきです。弱体化した中国は暴発する可能性があり、協調的な抑止力が必要となります。


第二に、 習近平政権の下でのさらなる権力強化を阻止すべきです。習近平の野心を牽制するため、民主改革と政治的野党を支援すべきです。


第三に、中国の侵略、特に台湾への侵略を抑止すべきです。武力の誇示と同盟関係の緊密化は、米国の弱さに対する中国の認識に対抗することができます。


第四に、主要技術やサプライチェーンにおける中国からの「秩序ある切り離し」を継続すべきです。これにより、中国が地政学的に利用できる経済的レバレッジを減らすのです。


第五に、トランプ政権とバイデン政権のいずれかが、NATO、ウクライナ、台湾を支持すべきです。中国とロシアに立ち向かうことは、誰が指導者であるかに関係なく国益にかなうものです。


第2次トランプ政権は中国に対してよりタカ派的になるかもしれないですが、政策はイデオロギー的な傾向ではなく、中国の行動によって導かれるべきです。日米は、民主主義的価値観を共有し、インド太平洋における戦略的利益に基づき、協力すべきです。


警戒と抑止が鍵です。減速する中国経済と習近平の野心には、地政学的リスクと修正主義を抑制するための断固とした協調的対応が必要です。特に今後数年間は緊密な協力が不可欠です。


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2023年10月30日月曜日

「増税メガネ」岸田首相も財務省に「毒されている」…頑なに消費税減税しないワケ―【私の論評】岸田政権の経済対策は、規模が小さすぎる(゚д゚)!

「増税メガネ」岸田首相も財務省に「毒されている」…頑なに消費税減税しないワケ

まとめ
  • 岸田政権は、物価高騰対策として、所得税減税1人当たり4万円と、非課税世帯への7万円の給付金を検討している。
  • これらの対策に対する世論の評価は芳しくない。
  • 世論の批判の理由は、以下の3点である。①対策が遅い、②対策が小さい、③対策が不十分
  • 岸田政権は、来年度通常国会で具体的な対策を発表する予定だが、世論の支持を取り戻すには、これらの批判を踏まえた対策を検討する必要がある。

 岸田政権の物価高騰対策に対する世論の評価が芳しくない理由は、以下の3点である。

対策が遅い

 岸田首相は、2022年10月23日の所信表明演説で「国民への還元」を強調したが、具体的な内容は示さなかった。その後、10月24日の代表質問において、所得税減税を明言したが、税法改正案は来年度通常国会での提出が想定されている。

 物価高騰は、2022年春頃から急速に進んでいる。岸田政権は、物価高騰対策の検討を早急に進めるべきであり、来年度通常国会での提出では遅すぎるとの批判がある。

 例えば、2022年9月の消費者物価指数は、前年同月比で2.1%上昇した。これは、2014年4月以来の高水準である。また、ガソリン価格は、2022年10月時点で、前年同月比で約2倍に上昇している。

 このような物価高騰の状況下で、岸田政権の物価高騰対策が遅すぎるとの批判は当然である。

対策が小さい

 政府・与党が検討している所得税減税は、1人当たり4万円程度とされている。これは、岸田首相が公約として掲げた「1人当たり10万円」の半分にも満たない。

 4万円の所得税減税は、現行の所得税率制度では、給与所得で年収約200万円の世帯が対象となる。この世帯の平均的な月々の家計支出は約30万円であり、4万円の所得税減税は、家計支出の約1.3%に相当する。

 物価高騰による家計への負担は、1.3%程度の減税では十分に軽減されないとの批判がある。

 例えば、2022年9月の総務省の家計調査によると、食費の平均支出は3万円を超えている。また、ガソリン代や電気代などのエネルギー費も、物価高騰の影響で上昇している。

 このような状況下で、4万円の所得税減税では、物価高騰による家計への負担を十分に軽減できないとの批判は当然である。

対策が不十分

 政府・与党が検討している所得税減税は、給与所得者を対象としたものだ。しかし、物価高騰による家計への負担は、給与所得者だけでなく、自営業者や年金受給者などにも広がっている。

 岸田政権は、給与所得者以外の世帯にも配慮した、より包括的な対策を検討すべきとの指摘がある。

 例えば、自営業者には、売上減少による収入減を補てんするための支援策が必要である。また、年金受給者には、物価高騰に伴う生活費の上昇を補助するための給付金が必要である。

 このような状況下で、給与所得者を対象とした所得税減税だけでは、物価高騰による家計への負担を十分に軽減できないとの批判は当然である。

 岸田政権は、来年度通常国会で具体的な対策を発表する予定だが、世論の支持を取り戻すには、これらの対策を検討する必要がある。

 この記事は元記事の要約です。詳細をご覧になりたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田政権の経済対策は、規模が小さすぎる(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田政権が2023年10月26日に発表した経済対策は、規模が明らかに小さく、物価高騰による家計への負担を十分に軽減できない。
  • 経済対策を効果的に実施するためには、規模、時期、範囲を明確にすることが重要である。
  • 規模については、需給ギャップを埋めるだけの規模が必要である。
  • 時期については、経済が最も停滞している時期に実施することが重要である。
  • 範囲については、家計を最優先することが重要である。

要約文には、含まれていませんが、元記事の最後の結論部分は以下です。
 財務省にとって、消費税の社会保障目的税と歳入庁がないのは好都合だ。 

 保険料は労使折半なので企業負担もあるが、消費税は企業負担がないと経済界は考えて、消費増税前向きだ。その上に、財務省が消費増税と法人税減税のバーターを持ちだすので、さらに経済界は消費増税に前のめりになる。歳入庁がないのは国税庁支配力の維持に好都合だ。岸田首相も財務省の手の上で踊らされている。

おそらく、岸田首相には経済対策に関して、財務省に限らず、様々な人が様々な意見を語るのでしょう。その中には、経済的な観点から、政治的な観点から、財務省など官僚の観点から、その他産業界の特殊事情の観点から、派閥の力学の観点からと、様々な種々雑多な観点からの意見があるのでしょう。 

財務省

かつて「聞く耳を持つ」と語っていた岸田首相は、これらをすべて聴いた上で、経済対策を決定しようとしているのかもしれません。

しかし、そのようなことは不可能です。

このたとえが、適切かどうかはわかりませんが、たとえば要人のスケジューリングをするにおいて、まず最初にここだけは動かせないといういくつかのポイントを決めることが重要です。

例えば、
  • 要人の出張や会議の予定
  • 重要な会議や打ち合わせの予定
  • 要人が必ず出席しなければならない予定
などです。

これらのポイントを決めることで、スケジュールの調整範囲を絞り込むことができます。また、要人の意思を尊重しながらも、効率的にスケジュールを決めることができるようになります。

ここだけは動かせないといういくつかのポイントを決めないで、多くの人の意見を聴いていれば、いつまでたっても、スケジューリングはできませんし、できたとしても、とうてい当の要人が満足するものにはなり得ません。

スケジューリングではここだけは動かせないというポイントを見出すことが重要

経済対策においては、要人のスケジューリングよりはるかに多くの考慮しなければならないことは多くあります。しかし、ここだけは動かせないいくつかのポイントがあります。

それは、まず第一に、経済対策の規模です。

ここを勘違いする政治家がいるので、驚くことがあります。「最初から規模ありきというのでは〇〇」という愚かな政治家います。こういう政治家は、様々な必要な経費などを積み上げて計算すべきと思っているようですが、その必要は全くありません。

その規模を知るのは、意外と簡単なことです。それは、すでに需給ギャップとして計算されています。経済対策の規模は、このギャップを埋めるだけのものが必要だということです。

需給ギャップとは、潜在GDPと実際のGDPの差を表す指標です。潜在GDPとは、経済が完全雇用で生産できる最大のGDPです。実際のGDPとは、実際に生産されたGDPです。

需給ギャップが正の値であれば、経済は潜在GDPを下回っており、需要不足に陥っています。この場合、政府は経済対策によって需要を拡大し、経済を回復させることが求められます。

内閣府の推計によると、2022年4-6月期の需給ギャップは、名目GDP比で-2.7%、年換算で-14.8兆円となっています。これは、潜在GDPを下回る需要不足を示しています。

この需給ギャップを埋めるためには、約15兆円程度の経済対策が必要です。これに対しても異を唱える不思議な人がいますが、これも多すぎたり、少なすぎたりすれば、後でいくらでも修正できますが、規模の少ない対策を打ち、そのままにしていれば、経済は間違いなく悪化します。

第二に経済対策の時期です。

経済対策の効果が最大限に発揮される時期は、経済が最も停滞している時期です。そのため、需要不足が深刻化している現在、早急に経済対策を実施することが重要です。

経済対策は、政府の財政負担を増加させます。そのため、経済対策を実施する時期は、財政状況が安定している時期にすることが望ましいです。

現状の日本では、経済が停滞しており、財政状況も安定しています。そのため、経済対策を実施する時期としては、現在が最適と言えるでしょう。

具体的には、2023年12月から2024年1月頃に、経済対策を実施することが考えられます。この時期は、年末年始の消費のピークが過ぎて、景気が落ち着き始める時期です。そのため、経済対策の効果が最大限に発揮されると考えられます。

第三に、経済対策の範囲です。

需給ギャップを埋めるためには、対象範囲を適切に決めることが重要です。対象範囲を広げすぎると、経済対策の目的が達成できなくなる可能性があります。また、対象範囲を狭めすぎると、経済対策の効果が十分に発揮されない可能性があります。

具体的には、以下の対象範囲が考えられます。
  • 家計支援:低所得者、子育て世帯、高齢者など
  • 設備投資:中小企業、製造業、農業、漁業など
  • 成長産業育成:環境対策、デジタル化など
これらの対象範囲を踏まえて、具体的な経済対策を検討することが重要です。

範囲まで含めると、考慮しなければならない点が相当増えますが。ただ、これらにあまり神経質になる必要はありません。有効需要という考え方からすれば、経済対策の効果を最大化するためには、手法を細かく検討するより、規模と時期を逸しないことが重要です。

範囲としては、現状では、物価高騰による家計への負担を十分に軽減することを最優先すべきです。

バーナンキ氏はかつて「日銀はトマトケチャップを買え」と発言しましたが、経済対策の実施を急ぐことの重要性を説いたものと言えるでしょう。経済対策は、需要不足を解消するために迅速に実施することが重要です。そのため、何をすべきかということを神経質に考えるあまり、規模や時期を逸するよりは、素早く実行することが重要と言えます。

多少まずいことがあったにしても、これはあとからでも修正することはできます。しかし、規模や時期を間違えていれば、これを修正するのはかなり難しいです。そうして、経済が悪化し、雇用が激減したり、貧困層が増えたりして、これに後追い的に手当をせざるを得なくなります。

そうしても、経済はすぐは元に戻らないこともあります。結局最初に適切な経済対策をすべきだったという事になります。このような愚かなことを日本は平成年間に何度も繰り返してきたといえます。

岸田政権は、2023年10月26日に、所得税の1人当たり4万円減税と、所得が低い世帯への7万円給付を打ち出しました。

所得税減税の規模は、対象者数を約1億人に想定した場合、約4兆円となります。給付金の規模は、対象者数を約5000万人に想定した場合、約3.5兆円となります。

したがって、所得税減税と給付金の合計規模は、約7.5兆円になると試算できます。これでは、明らかに少ないですし、物価高騰による家計への負担を十分に軽減することはできません。

岸田首相としては、経済対策の規模と時期、範囲としては家計を最優先すること、最初にこれらを譲れないポイントとしたうえで、多くの人の意見を聴くという姿勢を貫くべきでした。

今回の失敗を糧に、次の経済対策では以上の3つを譲れないポイントしてすすめるべきです。

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2023年10月29日日曜日

いずも型護衛艦「空母化」必要なの? 軍事的な合理性はあるか それ以上に大切な「日本の見られ方」―【私の論評】空母の利点と使い方:軍事戦力から災害支援まで(゚д゚)!

いずも型護衛艦「空母化」必要なの? 軍事的な合理性はあるか それ以上に大切な「日本の見られ方」

まとめ
  • 日本は空母を保有することになり、軍事力と国際社会における存在感を高める。
  • 空母の導入は軍事的な合理性よりも政治的な理由によって決まった。
  • 空母は戦闘にはそれほど有効ではないが、平時の外交の道具としては有効。
  • 空母は災害救援や平和維持活動などにも活用できる。
  • 空母の保有は日本の軍事力だけでなく、外交力も高める。
2027年度に軽空母化改修が完了する予定の護衛艦「いずも」

 日本の空母保有は、軍事的な合理性よりも政治的な理由によって決まったと言える。その根拠は、日本の防衛政策においては基本的に航空自衛隊の活動範囲内での作戦が推定されるから。加えて空母は高価であり、維持費や運用費も考慮するなら空中給油機のほうが、はるかに戦力の向上につながるだろうと考察したため。

 しかし、空母は政治的に非常に大きな意味合いを持つ。東アジアでは、中国の軍事的な挑発や領土問題が深刻化しており、日本は将来的にあり得る中国の海洋進出に対抗するために、自国の防衛力を強化するだけでなく、同盟国や友好国との連携を密にする必要があった。

 その点では、空母は有効な手段であると言え、日本は空母を持つことで、自国の防衛意志や能力を示すことができ、また空母はヘリコプターの運用拠点としては非常に効果的であることから、その能力を使って他国で協力や支援を行うことで、日本は国際社会から尊敬される存在として認められることにつながるかもしれない。

 空母は「軍事的合理性」だけで見るなら、日本にとってはそれほど必要ではないだろう。しかし、平時の外交の道具として見た場合は別だ。日本は空母を持つことで、自国の防衛意志や能力を示すことができ、また空母はヘリコプターの運用拠点としては非常に効果的であることから、その能力を使って他国で協力や支援を行うことで、日本は国際社会から尊敬される存在として認められることにつながるかもしれない。

 さらに、空母の保有は日本の軍事力だけでなく、外交力も高めることができる。かつて大日本帝国海軍(旧日本海軍)は世界最大級の空母艦隊を保有していましたが、それは侵略戦争の象徴となってしまいました。それを教訓とするなら、日本はいずも型護衛艦を使って自国の「お行儀よさ」を世界にアピールし、国際的な正当性を守っていることを示すことが重要になると筆者は考えます。


【私の論評】空母の利点と使い方:軍事戦力から災害支援まで(゚д゚)!

まとめ
  • 空母の最大の利点は、機動性と攻撃力であり、航空機を搭載し、任意の地域に短時間で展開し、遠距離から効果的な攻撃を行える。
  • 空母は制空権と制海権を確保した地域に展開し、敵の軍事施設、地上部隊、補給線、味方の支援などで効果的な攻撃を実施できる。
  • 潜水艦は海戦において重要で、発見や攻撃が困難。対潜水艦戦争(ASW)の能力が海軍の強さの指標で、日米が世界トップ。
  • 米国が空母を東地中海に派遣し、イスラエルとハマスの紛争拡大を防ぐために軍事的・政治的意味がある。
  • 空母は被災地支援にも活用可能で、過去の事例からその有効性が認識されており、国内外で平和的な軍事・政治的プレゼンスを高める手段として活用すべきであ。

空母の最大の利点は、その機動性と攻撃力にあります。空母は、航空機を搭載して、比較的短時間で任意の地域に展開することができます。また、艦載機は、さまざまな兵器を搭載して、遠距離から効果的な攻撃を行うことができます。

そのため、空母は、比較的限定された地域において、自軍が制空権と制海権を得た場合、その地域に空母を派遣して、ピンポイント的に効果がある地点に継続的に攻撃をすることができます。

具体的には、以下のような場面で空母の利点が発揮されると考えられます。
  • 敵の軍事施設やインフラへの攻撃
  • 敵の地上部隊への攻撃
  • 敵の補給線や輸送路の遮断
  • 味方の部隊への支援
もちろん、空母は非常に高価な兵器システムであり、その維持費や運用費も莫大です。そのため、空母を保有するには、十分な財政力と政治的意思が必要となります。

しかし、空母は、現代の軍事において非常に重要な存在であり、その利点は決して小さくありません。

世界最大の空母「ジェラルド・R・フォード」(手前)

ただし、自軍が制空権と制海権を得ていなければ悲惨な結果をまねくことになります。

現代海戦においては、艦艇は水上艦艇と潜水艦の二種類あると考えるべきです。自軍が制空権と制海権を持っていない海域においては、水上艦艇は空母も含めてミサイルや魚雷等の大きな標的でしかありません。しかも、現状の誘導型ミサイルや魚雷であれば、命中率は極めて高く、すぐに撃沈されてしまいます。

一方、潜水艦はそうではありません。いずれの潜水艦も敵方に発見されないうちに予めある水域に潜み動かなかったり、あるいは動力を駆動させずに、潮流に乗って移動している限りにおいては、敵方に発見されることはありません。

このような潜水艦を探知するのは容易ではありません。艦艇や航空機、監視衛星をもってしても現状では発見するのは困難です。

ただし、その状況で敵方を攻撃をすれば、敵方に発見される可能性は高まります。発見された場合は、攻撃を回避するためにできるだけ早く移動することになります。敵方に発見されないようにするためには、敵の探知を妨害する能力や、潜水艦のステルス性を高める必要があります。

この能力を含め、潜水艦を発見する能力、潜水艦を攻撃する能力を含めた総合的な能力を対潜水艦戦争(Anti Submarine Wafare:ASW)といい、現代海戦においては、この能力が高い海軍が海戦に強い海軍ということになります。

日本の対潜哨戒機P1

いかに多数の艦艇を持っていたにしても、ASW能力が低ければ、多くの艦艇が敵方に発見され、撃沈されることになります。

日米は、この能力に秀でており、どちらも世界トップクラスです。米国は、原潜しか所有しておらず、原潜であるがゆえにステルス性には若干劣るものの、ありとあらゆる武器を大量に搭載した巨大な水中武器庫ともいえる、攻撃型原潜を所有しています。日本は、原潜は保有していないものの、ステルス性では世界トップクラスの通常型潜水艦を備えています。

そうして、両者に共通するのは、世界トップクラスの対潜哨戒能力(潜水艦を発見する能力)です。これは、日米ともかなり高く、能力の方向性が若干異なるので、どちらが優れているかということは、甲乙付けがたいところがありますが、それにしても、日米と他国を比較すると日米は突出しており中露を含めた他国をはるかに凌駕しています。

このような観点からすると、日本の海自が過去には22隻の潜水艦隊を構築することに尽力してきたこと、台湾が自前で潜水艦を建造したことは、軍事合理的観点からコスト・パフォーマンスという観点から高く評価することができると思います。

米国が昔から空母を保有し続けていたり、日本がこれから空母を所有しようとするのは、上の記事で指摘されているとおり、軍事的合理性というより、政治的な意味合いが大きいです。中国もそうです。

アメリカ国防総省は、東地中海に追加の空母打撃群の派遣を指示しました。イスラエルとハマスの衝突が拡大するのを防ぐためだとしています。

国防総省のオースティン長官は14日の声明で、アメリカ海軍の空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」を中核とする空母打撃群の東地中海派遣を命じたと明らかにしました。

アメリカ軍はすでに最新鋭の原子力空母「ジェラルド・フォード」を中心とする空母打撃群を東地中海に配備していて、2隻目の空母も合流するということです。

ハマスは海軍力、空軍力は皆無ですし、イランを含めた中東地域の国々には海軍力、空軍力は脆弱です。ここに、空母打撃群を派遣することは軍事的にも政治的にも大きな意味を持ちます。

このように、空母は軍事力と戦力の投射のために依然として重要な役割を果たしています。潜水艦がステルス性や奇襲攻撃において有利なのは確かですが、それが故に潜水艦の行動は、昔から秘匿されるのが通例です。

一方空母は敵を威嚇する目に見える強さの誇示を可能にします。空母はまた、自国から遠く離れた場所での軍事作戦に比類のない航空戦力を提供できます。多くの軍事的な弱小国においては、空母を威信とグローバル・リーチ(世界中への展開力)の象徴として重視しています。時代遅れだという意見もあますが、空母は、公海での優位性を主張しようとする世界の大国にとって、今後もその役割を果たし続けるでしょう。

さらに、空母は被災地支援等に活用することができます。

  • 災害発生直後の救援活動
  • 救援物資や人員の輸送
  • 医療支援
  • 復興支援

空母は、その機動性や輸送能力を活かして、被災地支援に大きな効果を発揮することができると考えられます。

熊本地震の災害支援のために「いずも」に乗り込む自衛隊員ら(2016年4月19日)

以下に、空母等が被災地支援に活用された事例をいくつかご紹介します。

  • 2004年のスマトラ沖地震では、米国の空母「カール・ヴィンソン」が被災地支援に投入され、復興支援物資の輸送や医療支援などに貢献しました。
  • 2011年の東日本大震災では、米国の空母「ロナルド・レーガン」が被災地支援に投入され、復興支援物資の輸送や医療支援などに貢献しました。
  • 2016年海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」熊本地震の被災地支援のために陸上自衛隊の輸送にあたった。

これらの事例から、空母等は被災地支援に有効な手段であることが世界中で認知されつつあると言えるでしょう。

日本としては、国内外の被災地支援でも空母を活用しつつ、平和的に軍事・政治的プレゼンスを高めるべきです。ただ、軍事的・政治的プレゼンスを高めるにもコスト・パフォーマンスは常に意識すべきでしょう。その上で、活用すべきはどんどん活用していくべきです。

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2023年10月28日土曜日

「増税感」の背景 国民1人71万円の「所得損失」 田中秀臣―【私の論評】岸田政権の経済政策は? 減税や給付で15兆円の需給ギャップを埋められるのか(゚д゚)!

ニュース裏表

まとめ
  • 岸田首相は「増税メガネ」と呼ばれている。
  • 国民は、岸田政権の増税感を強く感じている。
  • 国民の増税感は、政府の税収増と国民の所得損失の乖離による。
  • 岸田政権は、所得減税で名誉回復を図ろうとしている。
  • 消費税減税が最も望ましいが、期限付きの所得減税でも評価は上がる。

 岸田首相は、2021年10月就任以来、増税を否定し、減税を強調してきた。しかし、国民の間では、消費増税や防衛費増額などによって、実質的に増税が行われているとの不満が根強くある。

 このような国民の「増税感」は、経済学における「機会費用」という考え方によって理解することができる。日本経済は、毎年1%以上の成長をすることが望ましいが、2019年の消費増税や2020年以降の新型コロナウイルス感染症拡大などの影響で、その成長は阻まれていた。その結果、国民1人当たりの実質GDPは、2018年度から2022年度までに約71万円も減少している。

 一方、政府予算は、毎年度4兆円以上の税収増を続けている。国民の所得は減少しているのに、税収だけが増えていることで、国民の増税感は高まっている。

 岸田首相は、こうした国民の増税感を意識して、2023年10月に期限付きの所得税減税を表明した。これは、増税感の払拭に向けた「名誉回復」の試みと言える。しかし、消費税減税ができないのは残念であり、規模や「期限付き」の中身次第では、依然として「増税人間」の評価がついてしまう可能性もある。

 要するに、岸田首相は、国民の増税感を理解し、対応すべきである。具体的には、消費税減税の実現を目指すとともに、所得税減税の規模や「期限付き」の中身を国民の納得が得られるものにする必要がある。

 この記事は元記事の要約です、詳細を知りたい方は元記事を御覧ください。

【私の論評】岸田政権の経済政策は? 減税や給付で15兆円の需給ギャップを埋められるのか(゚д゚)!

まとめ
  • 岸田政権の増税、減税の具体的な動きは、防衛費増額による実質増税と所得税減税による実質減税の二つに集約されている。
  • 防衛費の増額は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて実施され、10兆円の規模となっており、国民の負担への懸念が高まっている。
  • 防衛増税に関する法案は提出されておらず、与野党間で賛否が分かれるため、国民の理解と支持が必要とされている。
  • 所得税減税と非課税世帯への給付が実施されており、経済対策に取り組んでいるが、一部批判もある。
  • 現状は、複数年度にまたがっても需給ギャップを埋める経済対策をすべき。

岸田政権による増税、減税の具体的な動きは、以下の二つです。その他は、議論がなされているというだけであり、具体的なものではありません。

岸田政権が成立してからの減税、増税の具体的な動きは、防衛費の増額による実質増税と、所得税減税による実質減税の二つの動きに集約されます。

2022年10月に、岸田首相は、防衛費の増額を決定しました。この増額は、10兆円に上り、過去最大の規模となりました。この増額は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、防衛力の強化を図る狙いがあります。しかし、この増額によって、国民の負担が重くなるとの懸念が高まっています。

しかし、防衛増税そのものはすでに決まったことではありません。

2023年10月28日現在、防衛増税に関する具体的な法案は提出されていません。岸田文雄首相は、2023年7月20日の参議院本会議で、防衛費をGDP比2%に引き上げることを表明しましたが、具体的な増税額や増税方法については、今後の議論の中で検討していくとしています。

防衛増税は、与野党間で賛否が分かれる議題であり、実現には国民の理解と支持が必要です。そのため、防衛増税が実現するかどうかは、今後の議論の行方次第となります。

ただし、岸田政権は、防衛増税を実現する強い意欲を持っています。そのため、今後の議論の中で、防衛増税の実現に向けた具体的な方策が検討され、実現に向けた動きが加速していく可能性は十分にあります。

一方、2023年10月には、岸田首相は、所得税減税と非課税世帯への給付を打ち出しました。この減税は、1人あたり4万円で、期限は2025年末までとなっており、物価高騰による国民の負担を軽減する狙いがあります。しかし、消費税減税を実現できなかったことや、規模が小さいことへの批判もあります。

今後、岸田政権は、国民の増税感を払拭するために、消費税減税や、所得税減税の規模拡大などの対応を迫られると考えられます。

岸田政権になってから、岸田政権そのものは、増税について具体的な言及をしていませんが、税調や財界人がその発言を繰り返しています。そのため、岸田政権は増税するだろうという認識が高まったと考えられます。

影響が大きかったものとしては以下のものがあります。

・政府税調の中期答申
2023年6月30日に公表された政府税制調査会(首相の諮問機関)の中期答申では、消費税率の13%への引き上げや、富裕層への課税強化など、増税を含む幅広い税制改革が提言されました。この答申は、岸田政権の税制改革の方向性を示すものとして、大きな注目を集めました。

 ・自民党税制調査会の宮沢洋一会長の発言

自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、消費税率の13%への引き上げや、所得税の累進課税の強化など、増税を容認する発言を繰り返しています。宮沢会長は、岸田政権の税制改革を担う立場にあるため、その発言は大きな影響力を持っています。

・財界人などの発言

財界人の中にも増税すべきという人は少なくありません。

経団連会長の十倉雅和氏は、2023年7月の定例記者会見で、「財政再建の遅れは、経済の潜在成長率の低下や、社会保障の持続可能性を脅かす」と指摘し、増税の必要性を訴えました。また、消費税率の13%への引き上げについては、「国民の理解と納得を得ることが重要」と述べ、政府に丁寧な説明を求めました。

日本商工会議所会頭の三村明夫氏は、2023年7月の定例記者会見で、「財政再建は喫緊の課題であり、増税は避けられないだろう」と述べ、増税の可能性をにらみました。また、消費税率の13%への引き上げについては、「国民の負担を軽減する対策を講じることが重要」と述べました。

日経連会長の中西宏明氏は、2023年7月の定例記者会見で、「社会保障の持続可能性や、防衛費の増額など、財政再建には増税が不可欠だ」と述べ、増税の必要性を訴えました。また、消費税率の13%への引き上げについては、「国民の理解と納得を得ることが重要」と述べ、政府に丁寧な説明を求めました。

これらの財界人は、いずれも日本の経済界を代表する存在であり、その発言は、政府の政策に大きな影響を与えると考えられます。そのため、彼らが増税を容認する発言を繰り返していることは、岸田政権の増税への傾斜を示すものとして、注目されています。

ただし、岸田政権は、増税については具体的な言及を避けており、最終的な判断は、今後の議論の中で行われることになるでしょう。

こうした議論の中で、減税を選挙目当ての、バラマキなどと批判するむきもありますが、減税自体は、どんな形であれ、歓迎すべきものです。

上の記事で、田中氏は、「岸田首相は、国民の増税感を理解し、対応すべきである。具体的には、消費税減税の実現を目指すとともに、所得税減税の規模や『期限付き』の中身を国民の納得が得られるものにする必要がある」としていますが、その通りだと思います。

減税、給付その他を含めて、少なくとも15兆円(需給ギャップ)以上の経済対策を実行すべきです。

このブログでは、安倍・菅両政権において合計100兆円の補正予算を増税なしで組み、経済対策を行い、コロナ感染による経済の悪化を抑えることに成功したことを何度か掲載しました。し安倍元総理の言葉を借りると、この補正予算は、「政府日銀連合軍」により、政府が国債を発行し、日銀がそれを買い取るという方式で賄われました。


この方式を政府の借金が増えるからなどとして、批判するむきもありましたが、政府の借金は増えるどころか、ここ数年政府の一般税収は過去最高を更新しています。そうして、何よりも、「政府日銀連語軍」方式が巨大な借金を生み出しているなら、財務省や増税派はこれを「それみたことか」と喧伝するはずですが、そのようなことは一切ありませんでした。

ただ、安倍政権のときには、60兆円の補正予算であったので、当時は需給ギャップが100兆円だったので、若干不安感を感じていました。しかし、その後の菅政権がすぐに、40兆円の補正予算を組み経済対策を実行したので、計100兆円となり、安心しました。

この対策は、経済音痴のマスコミは評価しませんが、かなり功を奏したのは間違いありません。経済対策は必ずしも、単年度ですべて実行しなくても複数年度で実行し続けるという手法もあるのです。

こうしたこともあって、岸田政権は経済では比較的安定したスタートを切ることができました。しかし、その後のエネルギー・資源価格の高騰があり、岸田政権はこれに対処しなければならなくなりました。これには、需給ギャップを考えれば、先に述べた15兆以上の対策が必要です。

岸田政権は、2023年10月26日に、所得税の1人当たり4万円減税と、所得が低い世帯への7万円給付を打ち出しました。

所得税減税の規模は、対象者数を約1億人に想定した場合、約4兆円となります。給付金の規模は、対象者数を約5000万人に想定した場合、約3.5兆円となります。

したがって、所得税減税と給付金の合計規模は、約7.5兆円になると試算できます。

なお、この規模は、あくまでも試算であり、今後の議論の中で変更される可能性もあります。

また、所得税減税の対象となる所得は、給与所得と事業所得であり、給与所得者のうち、給与所得控除額が38万円を超える人が対象となります。給付金の対象となる世帯は、住民税非課税世帯と、住民税の課税額が3万円以下の世帯です。

7.5兆円だと、15兆円の半分ですが、これを単年度で終わらせることなく、複数年度で実施するとか、さらに消費税減税も行うことによって、複数年度では15兆円以上の対策をすることができます。

そうして、財源は税収上ブレ分を使うという考えもありますか、それだけでは15兆円には足りないです。需給ギャップの15兆円を国債で賄っても、それが借金になるということはありません。それは、安倍・菅両政権であわせて、需給ギャップに相当する100兆円の国債を発行しても、そうはならなかったことを見ればご理解いただけるものと思います。要するに、現在の日本は、財源の心配など全くせずに、減税できるのです。

スーパーを視察した岸田首相

国民も、そうして志のある野党も、マスコミや識者などのネガティブキャンペーンに煽られて、「どうせ増税」などと諦めずに、岸田政権が正しい経済政策を実行するように、これから世論を形成していくべきです。

ただ、岸田政権に反省を促したいのは、はやめに「消費税減税」を打ち出していれば、政権運営も安定していたであろうことです。しかも、規模としては、100兆円でなくて、15兆円です。やる気になれば、何とでもなると思うのですが、そんなに難しいことなんでしょうか・・・・・・。


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