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まとめ
- 岸田文雄首相は新たな経済対策を提案し、「物価高から国民を守り、賃上げと投資の拡大の流れを強化したい」と述べた。
- 経済対策の中核は雇用創出と投資促進で、インフレ目標を設定して賃上げを実現する方針を採用すること。
- 真の需給ギャップがマイナス3%(約15兆円)であるとの見方から、経済対策の規模は15兆円が必要。
- 望ましい政策は、マクロ経済の視点からは柔軟で、政権が優先する分野に財政を投入すること。
- 改造内閣では大きなメンバー変更はなく、15兆円の経済対策の実現が注目されており、財務省の影響や政策路線が焦点となる。
岸田文雄首相は新たな経済対策について、「物価高から国民を守り、賃上げと投資の拡大の流れをより強いものとする総合経済対策にしたい」と発言した。経済対策の規模や内容、改造内閣の顔ぶれから、実際にはどのような政策が出てくるだろうか。
岸田首相 |
岸田首相は物価高などに対応する経済対策を来月中をめどに取りまとめると述べ、「必要な予算に裏打ちされた思い切った対策とする」として、裏付けとなる補正予算案の編成を指示する考えを明らかにした。
まず、賃上げしたいなら雇用を作らなければならない。なので、冒頭の発言は「物価高から国民を守り、雇用と投資の拡大」という表現が正しい。
マクロ経済学の言葉でいえば、物価と失業率の逆相関関係を示すフィリップス曲線上で、最低の失業率と最低のインフレ率を示す「NAIRU(インフレを加速させない失業率)」を目指すということになる。
そのなかで、インフレ率に対応するのがインフレ目標だ。この状態になれば、「インフレ率プラス1~2パーセント程度」の継続的な賃上げが実現しやすい。
こうした経済状況は、需給ギャップ(供給サイドの潜在GDPと、実際の需要サイドのGDPの差)がない状態で達成される。もちろん、ここでの需給ギャップは本コラムで筆者が繰り返して指摘しているもので、内閣府などが出している数字とは異なるものだ。
先日の本コラムで、真の需給ギャップはマイナス3%(約15兆円)程度あるとした。この見方からいえば、マクロ経済的に必要な経済対策は、需給ギャップを埋める真水15兆円だ。
こういうと、「民間需要が出てくるので、公的需要ですべてを埋める必要はない」という意見も出てくるだろう。もっとも、民間需要をどれだけ誘発できるかは不確定な要素が大きいので、安全サイドに立てば需給ギャップを景気対策規模の目途にした方がいい。先日の本コラムで、真の需給ギャップはマイナス3%(約15兆円)程度あるとした。この見方からいえば、マクロ経済的に必要な経済対策は、需給ギャップを埋める真水15兆円だ。
その内容については、マクロ経済の観点からは何でもいい。ミクロ経済からみて、時の政権が重視するところに財政を充てればいいだけだ。
岸田首相は、今回の改造を「変化を力にする内閣だ」とも語った。具体的な分野としては、ガソリン対策、災害対策、15兆円規模のGX(グリーントランスフォーメーション)投資、異次元少子化対策などを挙げた。
今回の改造では、財務相、経済産業相、国土交通相、官房長官ら、具体的な分野のほとんどが留任閣僚なので、改造の顔ぶれによる変化はあまりないだろう。
あとは、岸田首相が15兆円規模の対策を指示できるかどうかだ。対策全体の規模はまさに首相の判断によるところが大きい。木原誠二氏の後任で新たに官房副長官となった同じ財務省出身の村井英樹氏がどのようにアドバイスするかも注目だ。
緊縮路線なのか、積極路線なのか、財務省色がどの程度なのかもわかるだろう。
まとめ
- 岸田首相が15兆円規模の経済対策を支持できるかどうかは、岸田首相の経済政策の方向性と、党内勢力や支持率の影響を受ける。
- 岸田首相が経済対策を行ったとしても、その後の財政再建に向けて増税に踏み切る可能性が高い。
- 国民は、現政権がいつでも増税を検討していることを意識し、警戒しておくべきである。
高橋洋一氏は上の記事で「緊縮路線なのか、積極路線なのか、財務省色がどの程度のかもわかるだろうと」としています。岸田首相が15兆円規模の対策を支持できるかどうかに、焦点をあてています。
自民党世耕幹事長 |
この点については、私自身は、世耕幹事長の発言等から、意外と実現する可能性は高いのではないかと思います。以下にその発言の内容を掲載します。
政府がまとめる経済対策について、自民党の世耕参議院幹事長は19日の記者会見で、15兆円から20兆円規模の対策を講じるべきだとの考えを示しました。
世耕氏は、電気やガス料金の負担軽減策に加え、投資を後押しする施策や低所得者への支援策なども盛り込むべきだと述べました。
世耕氏は、過去には増税や緊縮的な財政で経済の勢いの腰を折ってきた歴史があると指摘し、経済がよい局面に入りつつある中でさらに加速させる対策が必要だと強調しました。
ただ、本当に警戒すべきは、このような経済対策を行った後です。
内閣改造後の閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任し、首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就任しています。両氏とも、増税派です。
内閣改造後の閣僚の顔ぶれをみると、鈴木俊一財務相が留任し、首相側近の官房副長官に財務省出身の村井英樹氏が就任しています。両氏とも、増税派です。
木原稔氏 |
一方、「非緊縮派」の立場からは、初入閣の木原稔防衛相が、積極的な財政政策を支持する党の財政政策検討本部のメンバーとして知られています。
今回人事には「増税・負担増」批判や保守派への配慮も見られますが、全体的に見れば、政府の財政政策が強く財務省に依存する方向に進んでいることが明らかです。さらに、岸田首相の経済政策は党内勢力や支持率に影響を受けやすいものです。
首相が大規模な経済対策と補正予算を採用したとしても、その後の「負担増」路線には警戒が必要です。
岸田首相が経済において、真の変化を実現したいのであれば、補正予算で少なくとも真水15兆円程度の資金が必要です。本来なら消費減税が望ましいところですが、実現が難しいでしょう。
次期衆院選対策として大胆な策を打ち出しても、選挙後に「デフレ脱却宣言」をし、財政再建に向けて動き出す可能性があるかもしれません。国民は、現政権がいつでも「増税」を検討していることを意識し、警戒しておくべきです。それを予感させるようなことはすでにあります。
- 防衛費の増額
- 少子化対策
- 社会保障制度の持続性
9月20日 税金に関して本音をポロリと出した岸田首相 |
これらのエビデンスから、現政権は、防衛費の増額、少子化対策、社会保障制度の持続性など、さまざまな政策の財源確保のために、いつでも「増税」を検討する姿勢にあることがわかります。
国民は、現政権がいつでも「増税」を検討していることを意識し、警戒しておくべきです。
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