2022年11月30日水曜日

“ゼロコロナ”中国デモが飛び火も 「外国勢力ではない」参加者訴えの訳は…―【私の論評】今までみられなかった、都市部の新中間層と農村部の利害の一致が中共を追い詰めることに(゚д゚)!

“ゼロコロナ”中国デモが飛び火も 「外国勢力ではない」参加者訴えの訳は…

中国だけではなく海外にも飛び火しているゼロコロナ政策に対する抗議活動。当局が取り締まり強化に乗り出すなか、デモの参加者たちが「外国勢力ではない」と訴えている訳とは。


 抗議の声は国境を越え、広がり続けています。

 アメリカでは中国人留学生らがハーバード大で、そしてオーストラリアでは最大都市・シドニーで…。

 そのなかにいたのは「くまのプーさん」。

 姿形が似ているとして中国のネット上では習近平国家主席を表す隠語になっていましたが…。そのため今では検閲対象です。

 各地のデモで人々が掲げるプラカードが白紙なのも、まさに中国の検閲を表しています。

 デモ参加者:「少なくとも中国の学生の多くは30年前に起きたことを知りません。彼らの自由が政府に奪われないか心配です」「33年前、中国共産党は戦車を出動させて学生と市民を鎮圧しました。そして33年後の今、中国共産党はまたもや大きな罪を犯しています」

 人々が懸念するのは天安門事件の再来です。

 締め付けが強まるなかでも、香港大学では抗議が行われました。

 女性が掲げた白紙の裏に書かれた「境外勢力」という言葉。「外国勢力」という意味ですが、「外」の字にバッテンが付けられ、「内」と書き添えられています。

 この「外国勢力」という言葉。政府への批判が起きた際に中国当局が使ってきたものです。

 批判は市民の自発的なものではなく、敵対的な外国勢力によって扇動されていると印象付けるためです。

 抗議する市民は、そのことを見越しています。

 デモ参加者:「今、一部の人が外国勢力にそそのかされていると言ったが、そうだろうか?我々は中国国民であって外国勢力ではない!」

 外国勢力という言葉で中国共産党を皮肉る場面もありました。

 デモ参加者:「外国勢力であるマルクス、エンゲルスに気を付けろ!外国勢力であるレーニンに気を付けろ!スターリンに気を付けろ!」

 一方、中国の治安当局のトップ。

 29日付の国営・新華社通信によると、「敵対勢力の浸透、破壊活動に打撃を与える」としたうえで、「社会秩序を乱す違法な犯罪行為を断固取り締まる」と強調しました。

【私の論評】今までみられなかった、都市部の新中間層と農村部の利害の一致が中共を追い詰めることに(゚д゚)!

中国共産党のゼロコロナ政策への反対デモは、日本国内でも行われていました。何日か前に、テレビで報道されていました。本日そのニュースをサイトで探したのですが、見当たりません。

中国共産党の友達である、日本メディアは中国に忖度したか、あるいは中国共産党の司令があったのかもしれません。

きっかけの一つは11月24日に新疆ウイグル自治区で起きた火事でその際にコロナ規制があだとなり、相当数の死者が出たとされます。相当数の死者とは公になっている10名より実際ははるかに多いのではないかという情報の不確定さ故に断言できないのです。

以下に、その火事とされる、動画を含んだツイートを掲載します。
助けを求める女性の悲痛な叫び声がはっきり聞こえます。ウイグル人のイスラム教徒と、都市部の新中間層とは、なかなか理解しあえないところがあると思いますが、この動画はさすがに、多くの漢人の怒りにも火をつけたとみられます。

これは国民の不満が相当溜まっていて、きっかけがあればすぐに反応する状態だったともいえ、今後、似たような「惨劇」が起きれば一気に事態が悪化する公算はあります。

中国のコロナ対策は当初は素晴らしいものとされました。感染者を徹底的に追い込んだからです。平たく言えば「力づく」での対策です。一時は、パンデミック対策は中国のような先生主義国家のほうが、撲滅しやすいなどともてはやされた時期もありました。

これは、中国の威信を高める結果となり、中国は得意満面で、マスク外交や、コロナ支援外交を大々的にはじめました。

得意満面で始められた中国のマスク外交だったが・・・・・

ただこれは考えるまでもなく、中国全体を一種の無菌状態にしようとしたわけです。ですが、抑え込みという発想そのものが、荒唐無稽としか言いようがありません。100歩譲ってそれが出来たとして数年後、多くの無感染の中国人が諸外国の人と接点を持った時、中国人は自分を守る免疫がないので高いリスクを負うことになりかねません。

これでは中国発のコロナ無免疫者災害になりかねません。そんな事が起きればそれは人災という声すら上がるでしょう。

結局はゼロコロナ政策こそが中国の最大のリスクであると考えられます。ユーラシア・グループのイアンブレマー氏が2022年の最大のリスクはゼロコロナの失敗と年初に指摘していたのですが、本当にそういうことになりそうです。イアン・ブレマー氏は、今年最大の地政学的リスクとしして、ゼロ・コロナ政策の失敗を挙げ、中国は新型コロナウイルスの完全な封じ込めに失敗して世界経済が混乱に陥る事態を予測していました。

今回の大規模デモに先立ち、中国では様々な異変が起こっていました。

10月末には、河南省鄭州市にある、iphoneを受託製造するフォックスコンの工場で、新型コロナの感染者が確認されたということで、外部との接触を遮断する「バブル方式」を導入しましたが、家に帰れず、生活環境が悪化するばかりの状況に嫌気が差した従業員たちの不満が爆発、多くの従業員が工場のフェンスを乗り越え脱出、家までの道を延々と歩く姿がニュースでも報じられました。

アイフォンなどを生産している工場から、労働者が“大量脱走”。残されたのは建物の周囲に残る、2階部分まで届くような大量のゴミ

10月31日には、上海のディズニーリゾートが、ゼロコロナ政策のためとして、突然、出入り口ゲートを封鎖、来場者が園内に閉じ込められるという事態が発生しました。これにより場内にいた2万人が足止めされました。このように中国では突然の封鎖が何の前触れもなく発令されるため、上海のイケアなどでは、店舗や職場から人々が逃げ出しているといいます。

そのイケアは8月13日に、突然封鎖されたことで、一部の客が外に出ようと、ドアや窓を無理やりこじ開けて逃げ出していく姿が多く見られました。

チベットでも、異例の大規模デモが発生しました。参加者の多くは、漢人だと言われています。

このように、中国では一部の都市でパニックが起こっていました。情報統制の国であるだけに、市民は当局発表を信じず、それが荒唐無稽な噂を信じ込む原因となっています。

たとえば、河北省の当局が、石家荘市での集団検査中止を発表したところ、ネットでは「新型ウイルスの感染拡大を放置することで、住民になにが起こるのか」を当局が人体実験しようとしているという憶測が出回り、薬局から検査キットが消えたということがあったそうです。

情報統制という「愚民政策」を行っているだけに、ひとたび疑心暗鬼が広がってしまうと、これを修正することは非常に難しくなります。政府当局に対する信頼がほとんどないからです。

しかし、中国では習近平が自ら「ゼロコロナ政策」を推進してきただけに、そう簡単にやめることはできないでしょう。これから感染者が増えるにつれ、ますます厳しい対策を取らねばならくなっていくと思います。しかし、それだと市民の心がさらに抑圧されて、いつか暴発する可能性が高まっていくでしょう。

これから中国国内で動乱が頻発してくる可能性が高いです。そうして、動乱から内乱へ発展していく可能性も高まりました。

中国共産党が今、最も恐れているのは内乱だと考えられます。

現在、中国国内では経済発展に取り残された民衆による暴動が年間20~30万件ほど発生しているとも言われています。そうして、中国共産党は内乱を鎮圧するために人民武装警察(武警)を150万人配備しているとされています。

ただ、中国共産党が厳しい情報統制をしているので、目立たないだけです。しかし、ここ数年は、日々中国の暴動の様子が、SNNなどに動画が配信されています。動画によっては、どの都市なのか説明があったりするものもあります。

2020年6月20日、李克強首相は中国人口14億人程の内の6億人が貧民層だと発言しました。最近では貧富の格差に絶望した中国人はキリスト教へ入信しているといわれ、中国政府が認めていない「地下教会」で活動する信者も加えると、キリスト教人口は1億人を突破しています。

中国共産党が宗教に対して不寛容であり、キリスト教徒を激しく弾圧しているのは、まさに「太平天国の乱」の様な歴史が繰り返されるリスクを恐れているからだと考えられます。

経済的に豊かな沿海部都市と比較して、格段に貧しい内陸部農村地区の人々の間では、中国共産党に対する不平不満がフツフツと煮詰まっており、いつキリスト教と結びついて大反乱が起こっても不思議ではない、まさに一触即発状態であるという見方もあります。

中国の「人民」は経済発展で自分たちの生活水準が上昇するならと、一党独裁体制をこれまでのところは許容してきました。実際、中国は鄧小平時代から強靭な経済発展を続けてきました。

1990年の中国のGDPは、日本のGDPの7分の1程度に過ぎなかったのですが、2010年には日本を超え、今や日本のGDPの2.5倍以上となっており、年々米国との差を縮める傾向にあります。ただ、一人あたりのGDP(≒一人あたりの所得)ということになると、一万ドル(日本で約100万円)を少し越えた程度であり、これは米国をはじめ、日本にも全く及びません。

ただその成長は近年鈍化しており、新型コロナウイルスの影響によって世界経済が停滞する中、中国経済もまた停滞期に入ると思われます。

経済が好調であるから共産党に対して黙っていた都市住民も、今後生活水準が悪化する可能性があります。

そうして、中国にとって別の大きな脅威は、どんな発展途上国も通らなければならない社会の階層化です。中国の経済成長は新しい中間層を生み出しました。彼らの要求は、貧困から抜け出そうとしている農村部の望みとは全く違います。


いずれ中国政府は、新中間層と農村部という異質な2つの層を調和させなくてはならないです。これは、長期的に取り組むべき問題ですが、手つかずのまま放置されれきたといえます。それ故、中国はもともと社会不安が高まっていました。

だかこそ、習近平は共同富裕という概念を打ち出したのですが、経済発展が停滞している現状では、これは下手をすると、新中間層を貧乏にし、農村部もあまり豊にせずに終わってしまうかもしれません。

今までは、新中間層と農村部は、全く異質であり、これらが互いに理解しあうことはありませんでした。ただ、今回のコロナ政策に対する批判では利害が一致しています。裕福であるとか、貧乏であるかにかかわらず、中共のゼロコロナ政策で、苦しめられていることには変わりありません。

実際、これを示す実例があります。先にも述べたように、上海や南京など中国各地で26日夜、政府が進める厳しい新型コロナウイルス対策に対する抗議行動が起こりました。

きっかけは、24日夜に新疆ウイグル自治区ウルムチ市で起きた10人が死亡したマンション火災です。同マンションはコロナ対策で長期間封鎖され、“部屋のドアや非常口扉が封鎖されたために逃げ遅れて亡くなった”、“封鎖で消防車がマンションに近づくことができなかった”などの批判がSNSに次々に投稿され、怒りが広がりました

今回、中国での大規模なデモが話題となっていますが、中国では元々このようなことが起こる素地が十分にあったわけで、ゼロコロナ政策への反対や憎悪ということで、社会階層を越えた一致点が出来上がったわけです。

これが過去のデモとの大きな違いです。先にも、述べたように中国においては、暴動そのものは珍しくはないのですが、それにしても、それぞれの地方で単発的に起こっていました。今回は明らかに違います。

新中間層らがこれからも、体制に対して大規模なデモを起こし、それが農村部の大規模な暴動と連動するようなことになれば、中国全土で大動乱に拡大し9200万人の共産党一党支配は崩壊してしまうかもしれません。現在中国共産党は、これを最も恐れているでしょう。

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2022年11月29日火曜日

岸田首相、防衛費「GDP比2%」に達する予算措置を講じるようを指示 「見せかけ」「増税」に警戒感―【私の論評】「つなぎ国債」は今後の岸田政権を占う最重要キーワード(゚д゚)!

岸田首相、防衛費「GDP比2%」に達する予算措置を講じるようを指示 「見せかけ」「増税」に警戒感

鈴木俊一財務相(左)、浜田靖一防衛相=28日、首相官邸

 岸田文雄首相は28日、防衛費増額をめぐり浜田靖一防衛相と鈴木俊一財務相を官邸に呼び、2027年度に防衛費と補完する他省庁の関連予算を合わせ、「GDP(国内総生産)比2%」に達する予算措置を講じるよう指示した。岸田首相は防衛力強化に向け、歳出、歳入両面での財源確保の措置を年末に一体的に決定するとも述べた。他省庁の予算を含むため、「見せかけの防衛費増額」との批判もありそうだ。

 岸田首相が防衛費の具体的な水準に言及するのは初めて。今後、増税も含めた調整が、政府・与党内で本格化することになる。

 関連予算は、研究開発や公共インフラ、サイバー、海上保安庁といった他省庁予算を念頭に置いている。防衛省だけの予算から、安全保障の強化に政府全体で対応する体制に変える構えだ。

 自民内には他省庁予算を含めた「見せかけ」「水増し」や、財務省主導の「増税」で財源を捻出する手法に警戒感があり、反発も出そうだ。

【私の論評】財務省の危険な罠「つなぎ国債」は、今後の岸田政権を占う最重要キーワード(゚д゚)!


防衛費の水増しに関しては、私も反対ですが、ただ算定方法を変えるのであれば、現在の防衛費算定方法も変えて、それを100%として、2%増やすという考え方もできると思います。

それは、当然のことです。経済指標で計算方法などを変えれば、過去に遡って、すべて現在の算定基準で算定しなおして、改定値を発表しなければ、統計資料が役に立たなくなります。

最も良いのは、上の表でいえば、従来の防衛費を2%増やし、海上保安庁、PKOの予算も2%増やすという方式にすれば、すべて丸く収まり反対する省庁もいないでしょう。反対するのは、財務省だけということになり、何よりも財務省を出し抜くことができます。それで、はやく決着をつけるべきと思います。

次に、財務省主導型の「増税」も無論反対です。防衛費増額の財源として、増税を含めた国民負担が必要だとした、政府の有識者会議の報告書に対し、29日開かれた自民党の安全保障関連の合同会議で、出席者からは「増税を念頭においた議論が出てくるのは唐突だ」とか「税収の上振れ分を活用できないかなどの議論が先だ」などと批判的な意見が相次ぎました。

これに関しては、従来から言っているように警戒が必要です。共同通信は以下のような報道をしています。
 政府は29日、防衛費増額の財源捻出に向けた調整を本格的に始めた。23年度の一時的な財源確保策として、新型コロナ対策で厚労省所管の独立行政法人に積み上がった剰余金の活用を検討。外国為替介入に備えて管理している特別会計の剰余金の転用案も浮上した。防衛関連予算を5年間で段階的に増やして27年度にGDP比2%とするための安定財源として、増税策も年末に向け議論する。赤字国債の一種である「つなぎ国債」で、増税実施までの財源不足を穴埋めすることを視野に入れる

  鈴木財務相は29日、加藤厚労相と会談し、国立病院機構など2独立行政法人に利益剰余金を国庫返納するよう求めた。
太字でない部分は、現状を報告するものでしょうが、太字の部分は完璧に財務省の広報でしょう。

特に、「つなぎ国債」は曲者です。つなぎ国債は、将来見込まれる特定の歳入を償還財源として発行される国債をいいます。

赤字国債の一種ですが、財務省は「将来世代にツケを先送りする一般的な赤字国債とは区別できる」との見解を示しており、償還期間も通常より短く設定されます。また、その呼称については、償還財源を確保するまで資金繰りを「つなぐ」という意味に由来します。

現在、つなぎ国債の発行については、増税の実施を法律レベルで担保することが前提となっています。

「将来見込まれる特定の歳入を償還財源とする」とは、わかりやすくいえば、増税を財源としてということです。

「つなぎ国債」は増税で償還をすることを前提として、発行するものです。「つなぎ国債」を発行することになれば、いずれすぐに増税するということを意味します。


岸田総理大臣は国会予算委員会で、消費税を当面、上げる考えはないと改めて強調しました。

立憲民主党・泉代表:「総理は昨年の総裁選の時ですね。消費税率を10年程度上げることは考えないというふうに名言されていますが、それは変わってないか」

岸田総理大臣:「消費税については申し上げたように変わっておりません。上げることは考えていない」

岸田総理:衆院・予算委員会 25日

また、先月26日に政府税制調査会で議論された自動車の走行距離に応じて課税する「走行距離課税」について、岸田総理は「政府として具体的な検討をしているということはない」と述べ、導入に否定的な考えを示しました。

走行距離課税については「電気自動車普及の妨げになる」などとして、日本自動車工業会が反対を表明しています。

消費税は当面あげないことを表明した岸田総理ですが、「つなぎ国債」を発行することになれば、何らかの増税を数年以内には必ず行うということです。

そうではなく長期国債を発行するとか、特別会計の剰余金を活用するということになれば、当面増税することはないでしょう。

それにしても、防衛費に関して、財務省や財務大臣の意向を聞きすぎているように思われます。財務省が防衛費の増額に反対するのは当たり前です。そのようなことはわかりきっているので、英国では戦争中の戦略会議などには、財務大臣は出席させないそうです。

現在日本は戦争中ではありませんが、それにしても今年は年末までに防衛三文書の書き換えを行う時期であり、岸田総理は、財務省などの防衛費に関する主張などは、話半分に聞いて留めるべきです。そうでないと、判断を誤ります。

まさに、「つなぎ国債」は重要なキーワードです。要注意であるとともに、岸田政権を評価するキーワードにもなります。

「つなぎ国債」以外にも、財務省の罠が他にもあちらこちらに巡らせてあるかもしれません。これについては、発見しだいこのブログで解説させていただくつもりです。

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2022年11月28日月曜日

中国「台湾侵攻」の“大嘘”…! 日本で報じられない「米軍トップ」の“意外すぎる発言”の中身と、日本人の“低すぎる防衛意識”…!―【私の論評】少し調べれば、中国が台湾に侵攻するのはかなり難しいことがすぐわかる(゚д゚)!

中国「台湾侵攻」の“大嘘”…! 日本で報じられない「米軍トップ」の“意外すぎる発言”の中身と、日本人の“低すぎる防衛意識”…!

小川 和久氏

 ロシアのウクライナ侵攻以後、「中国の台湾侵攻も現実味を帯びた」と叫ばれることも多いが、本当のところはどうなのか。国防意識は高まりを見せるなか、事実とデータをリアルにとらえ、冷静に分析・評価はなされているのか―ー。

 陸上自衛隊生徒教育隊・航空学校を修了し、外交・安全保障・危機管理の分野で政府の政策立案にも関わってきた軍事アナリストで静岡県立大学特任教授の小川和久氏の新刊『メディアが報じない戦争のリアル』(SB新書)より一部を再編集してお届けする。

軍事的合理性のない「台湾有事論」
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 Q:ロシアのウクライナ侵攻で、「次は中国の台湾侵攻では」とおそれる台湾有事論が広がっています。どう考えますか? ----------

 A.『メディアが報じない戦争のリアル』でもっとも強調したい、と私が考えていることを最初に申し上げます。それは、日本で取り沙汰されている「台湾有事論」には“科学的な視点”が欠け、 軍事的合理性もない、ということです。

 「軍事を語る際に必要な合理的でリアルな視点」 や「軍事に関する常識」が欠如している、と言い換えてもよいでしょう。

 2021年春、そんな視点に欠けた台湾有事論を、インド太平洋軍司令官を務めるアメリカの海軍大将が公言して波紋を広げました。日本では、自衛隊の将官OBの多くが「そのとおり」と、その発言に同調しました。「専門家である軍の高官が?」と思うでしょうが、困ったことに事実だったのです。

台湾をめぐる中国の「リアルな狙い」

 しかも、無責任なことに日本のマスコミは、科学的な視点に欠ける台湾有事論をきちんと検証しないまま、大々的に報道しました。その結果、「近い将来のある日、中国人民解放軍が台湾に攻め込んで軍事占領し、武力による台湾統一をはたすに違いない」という、単純な中国脅威論が拡散しました。

 SNSはじめインターネットでも荒唐無稽な議論が繰り返される。社会のリーダーたる政治家までもが、テレビに出ては「中国の台湾侵攻が近い。日本はどうする?」と危機感を煽りたてる。国政に関わる政治家や自衛隊の将官OBが社会をミスリードすれば、日本の国益を大きく損ないかねない事態です。これは捨てておけません。

 そこで、まず2021年の台湾有事論を紹介し、どこがどのように非科学的なのか、お話しします。

 この点は、ロシアのウクライナ侵攻でますます広がった台湾有事論でも、基本的に変わりません。

 そのあと中国軍の実態はどうなっているか、台湾をめぐる中国のリアルな狙いとは何か、中国の戦い方とはどんなものか、みていくことにします。

デビッドソン海軍大将の「証言」

 2021年3月、台湾有事の問題に火がついたきっかけは、インド太平洋軍司令官だったデビッドソン海軍大将が上院軍事委員会の公聴会で「中国の脅威は6年以内に明らかになる」と証言したことでした。こんな内容です。

 「彼ら(中国)は、ルールにのっとった国際秩序におけるアメリカのリーダーとしての役割に、取って代わろうという野心を強めている、と私は憂慮している。2050年までにである」

「台湾は、それ以前に実現させたい野望の一つであることは間違いない。その脅威はむこう10年、実際には今後6年で明らかになると思う」

「中国は、資源の豊富な南シナ海大半の領有権を主張するだけでなく、アメリカ領のグアムを奪う構えすら見せている」

「インド洋のディエゴガルシア島やグアム島にある米軍基地に酷似した基地への模擬攻撃の動画も公表している」

 デビッドソン大将はこう指摘し、中国のミサイルを防御する「イージス・アショア」(地上配備型イージス・システム)のグアムへの配備を求めたほか、「やろうとしていることの代償は高くつく、と中国に知らしめるため」に、攻撃兵器の予算の拡充を議会に求めました。

米軍トップのミリー統合参謀本部議長の「発言」

 なにしろインド洋と太平洋を担当する米統合軍のトップが、中国は台湾を狙っており、 6年後、つまり2027年までに脅威が現実となる、と期限付きで明言したのです。デビッドソン証言は、日本でも大きく取り上げられ、各方面に波紋が広がりました。

 ところが、火元のアメリカでは証言3か月後の2021年6月17日、米軍トップのミリー統合参謀本部議長が、上院歳出委員会の公聴会で次のように発言します。

 「中国が台湾全体を掌握する軍事作戦を遂行するだけの本当の能力を持つまでには、まだ道のりは長い」

「中国には現時点で(武力統一の)意図や動機もほとんどないし、理由もない」

「近い将来、起こる可能性は低い」

 つまり、米軍のトップがデビッドソン証言をはっきりと否定したわけです。

 このデビッドソン証言については、アメリカでは海軍予算を増やすためのアピール、中国の脅威への警鐘という評価だけでなく、上陸作戦に無知だったという酷評さえ出ています。

 意外かもしれませんが、米軍でも上陸作戦のことを教育されるのは海兵隊と陸軍のエリートだけで、海軍と空軍の大部分には知識がないのです。

思い出す「北方脅威論」

 しかし、不思議なことに日本のマスコミの多くは、デビッドソン証言のトーンを変えないまま台湾有事を報道し続け、ミリー証言に目を向けようとはしませんでした。ミリー統合参謀本部議長は軍事的な根拠を持って証言したわけですが、マスコミはもとより、研究者や自衛隊OBまでもが、その根拠を知ろうとはせず、関心を払わなかったのです。

 この状況を見て私が思い出したのは、1970年代後半の「北方脅威論」です。米ソ冷戦が激しさを増した当時、日本国内では「何十個師団ものソ連軍が北海道に上陸侵攻してくる」という危機感が高まり、マスコミも煽るような報道を繰り返しました。

 ここでいう「師団」とは、戦闘のほか補給・管理・衛生などを含む総合的な機能があり、独立して作戦を遂行できる陸軍の基本単位で、1個師団は数千~2万人くらい(国や時代で異なる)です。とにかく、半世紀近く前の日本では、何十万人かのソ連兵が海を渡って攻めてくる、と叫ばれていたのです。

 ところが現実には、ソ連の海上輸送能力には明らかな限界がありました。リアルな姿をとらえれば、ソ連が北海道に投入できるのは3個自動車化狙撃師団(注 機械化歩兵師団のソ連側の呼称。狙撃兵の部隊ではない)、1個空挺師団、1個海軍歩兵旅団(ソ連版の海兵隊)、1個空中機動旅団にすぎません。

 まだ弱体だった自衛隊ですが、米軍と力を合わせれば、攻めてくるソ連軍の半数を海に沈めるだけの能力はありました。そんなことはソ連側も自覚していますから、全滅を覚悟しない限り作戦が発動される可能性はありませんでした。

防衛大学校の1期生が「教えてくれたこと」

 意外に思われるかもしれませんが、軍事はそんな角度から科学的にとらえる必要があると私に教えてくれたのは、当時一等陸佐になったばかりの防衛大学校の1期生たちです。

 結局、当時の騒ぎはアメリカのワシントン発、さらには東京・永田町発のきわめて“政治的な”ソ連脅威論にすぎませんでした。空騒ぎから醒めたあと、日本人にまともな防衛意識が高まるまでに長い年月がかかりました。

 今回の台湾有事論にも同じ側面が色濃く出ている、と私は考えています。

小川 和久(軍事アナリスト)

【私の論評】少し調べれば、中国が台湾に侵攻するのはかなり難しいことがすぐわかる(゚д゚)!

このブログでは、中国の台湾への武力侵攻は、簡単ではないことを何度か掲載してきました。そのため、上の小川氏の記事はまさに我が意を得たりと感じるものでした。

上の記事のようなこと、分析も何もしないで、中国が簡単に台湾に侵攻できると思い込むのは、明らかな間違いですし、中国を利することにもなりかねません。

多くの国の国民が中国の台湾侵攻は必ずあるだろうし、そうなれば中国が確実に勝つなどと思いこめば、まさに中国の思うつぼです。

まずは、中国は兵員や物資を運ぶための、海上輸送能力が足りません。その輸送能力が足りない中国が、台湾に武装侵攻すれば、一度に数万の兵員とそれに伴う物資しか運べず、ウクライナ軍よりも、はるかに強力で現代的な軍隊である、台湾軍に個別撃破されてしまいます。

一度に数万しか運べないなら、中国の軍隊の人員が百万だとしても、運ぶ都度撃破されてしまうことになります。

台湾の東海岸

しかも、台湾に上陸しようとした場合、台湾の中央部は急峻な山であり、最高峰の玉山は標高3,952 mであり富士山よりはるかに高いですし、海岸の際まで山が連なっており、東側に上陸するのはかなり難しいです。上陸するとすれば、平坦な西側からであり、しかも西側の海岸も大部隊が上陸できる場所は限られています。

そうなると、中国軍は台湾軍が周到に準備して、待ち構えているところで、敵前上陸しなければならないのです。

仮に将来、中国が多くの兵員を一度に運べるようになったにしても、ウクライナ軍よりはるかに現代化された、台湾軍は独自開発した強力な対艦ミサイルも配備していますし、対空ミサイルもありますし、北京を狙うことができる長距離ミサイルも存在します。

台湾が開発した超音速対艦ミサイル

上陸する前に、兵員を輸送する多くの艦艇や支援の艦隊や航空機がこれらに攻撃され、台湾に到達する前に、かなりが沈み上陸できる兵員はわずかということになるでしょう。これでは、勝負になりません。

たとえ、日米が加勢しなかったにしても、中国が台湾に侵攻するのはかなり難しいでしょうし、日米が加勢すれば、ほとんど不可能です。

台湾の弱点をあげるとすれば、現代的な潜水艦を持っていないことです。あるにはあるのですが、4隻であり、この4隻はどれも古く、一番古いものは第二次世界大戦に建造されたものです。

蔡政権は潜水艦国産化の方針を決定、2017年から建造が開始されました。1番艦の就役は2025年に予定されており、8隻が建造される計画です。そうなれば、中国の台湾侵攻はますます難しくなることでしょう。

台湾は、日本と同じ島国ではあるものの、地勢的には大きく異なっています。同国の場合、潜在的脅威の対象である中国との間に横たわる台湾海峡は、もっとも狭い地点で幅わずかに約130km。水深は、その大半の水域で約50mと浅いものです。


つまり、もし中国が台湾への侵攻を企図して輸送船団で台湾海峡を渡ろうとしても、水深が浅いせいで、潜水艦を運用するのは東シナ海や南シナ海などと比べて困難だといえます。

ただ、太平洋側の海は深いですが、海岸からすぐに急峻な山々がそびえており、ここから大群が上陸するのは困難です。陸上部隊が上陸したとしても、急峻なもののあまり高くはない山を越えたとたんに、今度は富士山よりも高い玉山などの高山がそびえ立っています。

西側も、大部隊が上陸できるほど開けた場所は限られていますし、平らな部分も多くはなく、すぐに高地に連なり、上陸した中国軍は、見晴らしの良い高所に陣取る台湾軍から狙いうちされることになります。陸の戦いでは、標高がより高いところから、低いところに攻撃するほうが、圧倒的に有利です。

それは軍事上の常識なのですが、インド・中国紛争やウクライナ戦争でもそれが改めて実証されています。補給船なども、狙い撃ちされ、上陸した中国軍は、補給を絶たれお手上げになってしまうでしょう。

台湾の地理を知り尽くした台湾軍は、上陸した中国軍を四方八方から効果的に攻撃し、中国軍を多いに悩ますことになるでしょう。このような地形はウクライナの奥行きはかなり深いものの、比較的平坦な地形とは、全く異なります。台湾よりもはるかに面積が広い、ウクライナ最高峰のホヴェールラ山の標高は、2,061 mに過ぎません。いかに、台湾よりも平坦であることがわかると思います。

しかも、台湾は島嶼であり、面積も広くありませんから、上陸した中国軍は、まずは低地の平らな場所に密集して布陣せざるを得ません。これを台湾軍はより効率的に撃破できます。急峻な山に分散して布陣する台湾軍には隠れ場所も多くあり、かなり有利に戦闘を継続することができます。

また、高地に布陣する台湾軍を攻撃するためには、中国軍は多くの兵員をトラックなどで輸送することになるでしょうが、それは高地の多い台湾では、道路を用いて行われることになるでしょう。道路なしの急斜面を車や戦車がまっすぐに登ることはできません。台湾軍は、中国軍から不意打ちをくらうことは滅多になく、予め想定される道路を走る兵員輸送車等を容易に攻撃できます。

そうして、台湾軍は上陸した中国軍を攻撃して、撃破すれば良いだけに比して、中国軍は台湾軍と戦闘して、これを打ち負かし、さらに捕らえて武装解除し、中国軍に従わせる必要があります。さらに、一般市民も中国軍に従わせ、その後に中国は台湾を統治しなければなりません。

無論、中国が台湾を破壊すれば良いだけというのなら、上記のようなことは全く考慮せず、ただミサイルをたくさん打ち込んだり航空機で爆撃すれば良いだけです。そうではなく、侵攻して占拠するということになれば、上記のようなことを考慮しなければなりません。以前にも述べたように、武力による破壊と、侵攻とは全く別次元のことなのです。

台湾に攻め込んだ、中国軍はウクライナに攻め込んだロシア軍よりも、なお甚大な被害を被るのは必定です。

 少し台湾の地理や軍事力を調べてみれば、中国が台湾に侵攻するのは、生易しいことではないことが良く理解できます。

何でも、マスコミ報道だけを鵜呑みにしていれば、間違った判断をすることになります。

中国が台湾侵攻ということになれば、ウクライナでそうしたように、日米豪加等をはじめとして、多くの国々が、台湾に加勢することになるでしょう。そうなれば、さらに中国の台湾侵攻は難しくなります。習近平はプーチン以上に八方塞がりになります。

以上のようなことをいえば、台湾有事はないから何もしなくて良いと主張しているように受け取る方もいるかもしれません。そうではありません。確かに中国が台湾に侵攻すること自体は、困難を極めますが、それでも中国は、武力で脅しをかけたり、場合によっては台湾の領土を破壊したりして、言うことを聞かせようとするかもしれません。

台湾が、中国の侵攻を防ぎ、いくら事実上は、独立を維持できたにしても、理不尽に武力等で脅され屈したり、台湾人の命や財産が危険にさらされるようなことがあっては無意味です。

だからこそ、これに備える必要があるのです。これが、リアルな台湾の安全保障なのです。

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2022年11月27日日曜日

台湾地方選で与党大敗、蔡総統が党首辞任 現有首長ポスト維持ならず―台北は蒋介石ひ孫の野党候補勝利―【私の論評】今回の選挙結果は台湾の内的要因が大きく、次の選挙で親中派総統が誕生する可能性は低い(゚д゚)!

台湾地方選で与党大敗、蔡総統が党首辞任 現有首長ポスト維持ならず―台北は蒋介石ひ孫の野党候補勝利


 台湾統一地方選の投開票が26日行われ、注目された中心都市・台北市長選で最大野党・国民党が勝利した。与党・民進党は首長ポストを減らし、蔡英文総統は選挙結果を受けて民進党主席(党首)の辞任を表明。台湾メディアは「民進党が大敗」と報じた。

 蔡氏は総統職を続けるが、2024年総統選や今後の対中政策への影響は避けられそうにない。蔡総統は記者会見し「全て私の責任だ」と陳謝した。次期総統選を見据えた後任選びが今後の焦点となる。

 統一地方選は4年に1度実施され、22県市の首長選が焦点。今回は、候補者の死去に伴い12月に延期された嘉義市を除く21県市で投票が行われた。中でも台北市など行政院(内閣)が直轄する6市には合計で人口の約7割が集中し、勝敗が党勢に与える影響は大きい。

 民進党は改選前に7県市の首長ポストを有していたが、台湾メディアの開票速報によると、直轄市の桃園市を国民党に奪われるなど、2ポストを減らした。国民党の朱立倫主席(党首)は、記者会見で「台湾の人々の勝利だ」と語った。

 民進党は18年の前回統一選で、首長ポストを半減させ大敗。その際も蔡氏が党首を一時、引責辞任した。選挙前の勢力は民進党7、国民党14、民衆党1。民進党は現有ポストを維持し国民党の党勢拡大を防ぐとともに、台北市を民衆党から奪いたい考えだった。


 台北市では、蒋介石・元総統のひ孫に当たる国民党の蒋万安・前立法委員(国会議員)が勝利。新型コロナウイルス対応を指揮した民進党の陳時中・前衛生福利部長(厚生労働相)、現職の柯文哲市長が擁立した無所属の黄珊珊・前副市長は、激しい選挙戦を繰り広げたが及ばなかった。

【私の論評】今回の選挙結果は台湾の内的要因が大きく、次の選挙で親中派総統が誕生する可能性は低い(゚д゚)!

台湾の統一地方選は、4年に一度、22の県と市の首長や議員などが改選されます。これは次期総統選(2024年)の「前哨戦」に位置付けられる重要な選挙です。


激しい選挙戦を繰り広げた2大政党ですが、「対中政策」では違いが際立ちます。与党・民進党は蔡英文総統が主席を務め、日本の国会にあたる立法院で、単独過半数を獲得しています。「中華民国と中華人民共和国は、互いに隷属しない」などの方針を掲げ、中国に対して対決姿勢をとっています。

一方、野党・国民党は、1949年に中国から逃れてきた蔣介石氏が率い、長年政権を担っていました。「一国二制度」には反対するも、「台湾独立」にも反対。中国への融和路線を取り“親中国”とされています。

今回の選挙戦で、蔡英文総統は、「地方選の結果は、台湾の未来の進路に大きな影響を与える。私たちは『台湾人民は、自由と民主主義を支持している』というメッセージを全世界に伝えねばならない」と訴えていました。

一方、国民党の朱立倫主席は、「選挙のたびに、民進党は、中傷的な手紙や汚い手段をとるか、外部要因を利用して焦点をそらし、台湾の人々を威嚇し、自らのガバナンス(統治)の欠陥を決して見直すことはない」と主張するとともに、「より若く、より稼げる台湾に変える!」と主張してもいました。
 
“親中国”の国民党が勝利した要因としては、地方選挙では中国問題が争点にならず、候補者の好き嫌いや経済問題が中心の議題になっていたとみられます。

野党・国民党がいわゆる「争点隠し」というか、中国問題が争点にならないよう巧みに、問題を現政権与党の政策的な失敗や、コロナ対策への不満などに上手く逸らしていたと考えられます。

国民党や中国のことは台湾では決してプラスのイメージではないの現状があるのですが、国民党の候補者が自分たちが国民党であることをあまりアピールしなかったり、中国政策についてはっきり物を言わなかったりすることによって批判が集まらないよう工夫していたようです。

民進党政権は6年以上続いているので、やはりある程度不満も積もっているところもあったかもしれません。ただ、政権交代を望むほどではないというのは確かなので、有権者としては、そこで一つ批判をしておこうということもあったとみられます。

台湾では、3月に中銀が市場予想に反して利上げを実施しましたが、その後も台湾ドル安圧力が強まるなか、中銀は6月16日の定例会合で2会合連続の利上げに加え、預金準備率の引き上げを決定しました。

中銀は成長率見通しを引き下げる一方で物価見通しを引き上げており、景気下振れが懸念されるなかで難しい対応を迫られています。他方、先行きについては緊急利上げに含みを持たせるなど物価対応は難しさが増す展開が続いていました。

ただ、物価高は他国と比較すれば、さほどではなく、また台湾ドル安は輸出には有利に働くはずであり、金融引締に走る前に、エネルギーや輸入資源に関わる減税などを実施するなどの方法を考慮すべきだったかもしれません。ただ、それが今回の選挙にどの程度影響したかまでは、残念ながら情報不足でわかりません。

統一地方選の中でも“総統への登竜門”とされ、一目置かれるのが台北市長選です。注目候補は3人いて、1人目は、国民党の蔣万安氏、43歳。日本の国会議員にあたる元・立法委員で、台湾の初代総統・蔣介石氏のひ孫です。2人目は、無所属の黄珊珊氏。元台北市議かつ、2022年8月まで台北の副市長を務めていた人物です。3人目は、民進党の陳時中氏。“新型コロナ”対策を担う、中央感染症指揮センターの元指揮官です。

市長選で勝利した、蔣万安氏は、台北生まれ台北育ち。米・ペンシルベニア大で法学修士・博士号を取得。カリフォルニア州の弁護士資格を保有し、“将来の総統”などと称されています。

親日家ともいわれ、2022年9月に台北で開かれた、建築家・安藤忠雄氏の展覧会を訪問し、「大阪にある『こども本の森 中之島』が好きだ」とSNSに投稿しています。また、10月には、「小さい頃、ドラゴンボールが好きだったので、今年は悟空に扮してハロウィーンを迎える」とSNSに投稿しています。

一方で、蔣万安氏が所属するのは“親中国”の国民党です。11月5日に開かれた討論会で、台北市長選の候補者らに対し、メディアが“中国との統一の賛否”について質問しました。民進党の陳時中氏は「答えはもちろん『否定』だ」と述べましたが、蔣万安氏は「中華民国憲法を順守し、中華民国主権を守り、台湾の民主主義や自由、法の支配、人権の価値観を守る事こそが私のDNAだ」と返答。これに地元メディアは「正面からの回答を避けた」と指摘しています。

ただ、国民側からすると蔣万安氏の祖父蒋介石は「中華民国を建国した人物」であり、中国大陸反抗を目指した人物でもあり、そのひ孫が「中国と統一することはないだろう」という読みもあったかもしれません。

最近、第二次大戦後、台湾に渡り、蔣介石の軍事顧問団になった旧日本軍将校糸賀公一氏が、中国大陸への反攻作戦を描いた冊子が見つかっています。フランス在住の親族が所有していました。冊子は台湾で軍の指導教材として執筆され、中国の核実験にも言及しています。秘密裏に組織された日本人顧問団「白団」が、大陸奪回を目指す蔣政権で果たした役割が浮き彫りになりました。

元々、国民党は反中的であったのですが、長い間政権与党であったため、腐敗がはびこり、その腐敗の一環としての中共の工作もあり、国民党は親中的になってしまい、今日のようになってしまったという現実があります。

台湾、民主化の父といわれる李登輝総統も、元々は蒋介石氏につかえていました。そのため、私自身は、国民党が原点回帰すれば、反中的になる可能性もまったくないとは言い切れないと思っています。そもそも、李登輝氏による民主化の産物が、今日の台湾民進党であることも忘れるべきではありません。台湾の民主化がなければ、今日台湾民進党も存在すらしていなかったのです。

蔣万安氏は、こうした蒋介石のひ孫であるため、中華民国は中華人民共和国とは違うので、中華民国をまもるということで中国とは一緒にならないというような意思表示をすることは十分可能だと考えられます。

ただ、38年間も台湾で続いた戒厳令下における白色テロは、台湾に今でも暗い影を落としています。政治活動や言論の自由は厳しく制限され、「白色テロ」と呼ばれた市民の逮捕・投獄が横行しました。台湾社会は今、中国や香港の人権抑圧を横目に自由と民主主義を謳歌しています。しかし、苦難の時代の真相解明は緒に就いたばかりなのです。

この時代の国民党の負のイメージはなかなか拭いさいることは難しいでしょう。

凄惨を極めた2.28事件

現在の民進党が、親米・親日・反中と位置づけされているわけですが、今後国民党が政権を取った場合、彼は親米・親日・親中と全方位でありたいと、そういうことで台湾の安全を守っていくとそんなプランを思い描いているのではないと思います。ただ、そのようなことは当然不可能であり、蔣万安氏がはっきりと中国と対峙する旨を公表しない限り、私は、彼が総統になる芽はないと思います。

こうしてみていくと、今回の選挙結果は台湾の内的要因が大きく、米中関係や中台関係などから影響を受けたような文脈で読み解くことは難しいということがわかります。習近平氏の強硬路線に台湾社会が屈した、といった分析を加えることは完全に無理があり、注意したいところです。

蔡英文総統は、現在2期目で、任期の規定で次回、2024年の総統選には出馬できません。今回の敗北で、蔡英文総統の指導力の低下は間違いないと考えられます。しかし、次回総統選について“親中国”政権誕生の可能性については、可能性はほとんどないでしょう。

地方選で台湾の有権者が民進党への牽制的な投票行動をとったことは、逆説的に民進党が国政で優位にあると台湾人が感じている表れといえます。国政選挙になれば民進党が有利です。しかし地方選で大勝となれば国民党は勢いはつくので、接戦に持ち込める機会は出てくる可能性もあります。

中国の次の一手として、今回の結果を受け総統選を視野に圧力を強めるでしょう。習近平国家主席のやり方を台湾社会も受け入れる方向に傾いたと国際宣伝を行う可能性もあります。

中国としては、今回国民党に勝利を収めたので、2年後の総統選に水面下で様々な影響を及ぼすことができると期待しているでしょう。習近平国家主席の強硬路線はずっと裏目に出てきましたから、国民党が勝つことによって、「我々がやることは間違っていない」という宣伝をする可能性もあります。

今回選挙で中国があまり争点になっていないにも関わらず、中国側に利用されるのは望ましくないです。

中国側は武力で台湾を統一したいというわけではなく、政策・政治・ビジネスで統一することが習近平国家主席にとって理想的なことです。武力行使はコストもかかるし不確定要素が大きいからです。

中国にとっては、台湾の中で中国と統一したいという政党が勝利して、台湾の民主的なプロセスの中で中国との統一を選ぶというのが最高のシナリオです。それができるかどうか、中国側が武力行使を踏みとどまるポイントにもなるので、逆に国民党が今回勝つことで武力行使のオプションはやや後ろに下がるという可能性も非ずだと思います。

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2022年11月26日土曜日

「人事の岸田」が人事で失敗、1カ月で3人の大臣が辞任…挽回策は政策回帰しかない 増税路線からの君子豹変を―【私の論評】岸田政権の喫緊の課題は離れてしまった保守岩盤支持層の支持を急いで取り戻すこと(゚д゚)!

日本の解き方



 岸田文雄政権では1カ月で3人の大臣が辞任した。岸田首相は人事に力を入れていたはずだが、なぜこのような事態になっているのか。辞任ドミノを止める手立てはあるのか。

 1人目は山際大志郎経済財政相(当時)。旧統一教会との関係を指摘され、十分な説明ができなかった。2人目は葉梨康弘法相(同)。ウケ狙いで「死刑執行のハンコ押し」について発言し、釈明のしようもなかった。

 3人目は寺田稔総務相(同)。補正予算案審議に支障が出てはいけないという理由で、20日に事実上更迭された。政治資金の問題を週刊誌に指摘されていたことが背景にある。

 20日というタイミングは、岸田首相の外遊からの帰国と補正予算案審議との兼ね合いで、その日しかなかった。筆者は、交代させるなら同様の政治資金問題を抱える秋葉賢也復興相も同時だと思っていた。そうしないと、補正予算案の審議で秋葉氏も寺田氏と同じような批判を浴びてしまうからだ。

 岸田首相は、何をしたいかと問われると、「人事」と答えるというのは有名な話だ。普通はやりたい政策があって、そのための手段が人事だが、岸田首相の場合、逆のようだ。

 7月10日投開票の参院選で与党が勝利した後、国政選挙のない「黄金の3年間」といわれた。そこで岸田首相は内閣改造人事を行った。選挙期間中の7月8日、安倍晋三元首相が暗殺されるという悲劇があったので、国葬が優先で改造人事はその後でもおかしくなかった。しかし、8月10日、改造人事を先に行い、国葬は9月27日に後回しにされた。

 このあたりから岸田政権の歯車が狂った。それまで「無策最強」といわれていたが、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、中国が8月4日に日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイル5発を打ち込んだ際、国家安全保障会議を開催しなかった。国の安全より改造人事優先だったといわれても仕方あるまい。

 岸田首相は改造人事にあたり、「旧統一教会との関係を厳正に見直す」と言った。これは党内事情による安倍派外しの思惑だろうが、その後の岸田政権にとって大きな足かせになって自分の首を締めている。結局、旧統一教会がワイドショーに取り上げられ、連日強調されたことが岸田政権の支持率を低下させた。また、旧統一教会との関係を見直すとした改造人事で任命した山際氏が、旧統一教会との関係を指摘され、辞任ドミノのきっかけになってしまった。

 ここまで来ると、なかなか挽回策は難しい。年内にまた内閣改造人事が噂されているが、目的と手段が入れ替わったままで効果があるだろうか。

 ここは、「政策回帰」が筋だ。小泉純一郎政権のように、埋蔵金活用で増税封じくらいできないと難しい。財務省の言いなりの増税志向から、君子豹変(ひょうへん)するような大胆なイメージチェンジが求められている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】岸田政権の喫緊の課題は離れてしまった保守岩盤支持層の支持を急いで取り戻すこと(゚д゚)!

現状は、岸田政権の暴走により、安倍元総理支持者を中心とする保守岩盤支持層が離れてしまっています。特に、防衛増税ほど、まともな保守の憤怒のマグマを煮えたぎらせたことはないでしょう。防衛増税をして経済が落ち込めば、安全保障にも悪影響がでてきます。これでは、いつ岸田首相に向かって怒りのマグマが大噴出するかわからない状況です。

そのような自民党にとって、喫緊の課題は離れてしまった保守岩盤支持層の支持を急いで取り戻すことです。

現在ポスト岸田で名前の挙がっているのは茂木、河野太郎、林では、これは全く無理です。最近では、さすがに、あまりにもグレートアフォーすぎる、小泉進次郎や石破の名前はあがらなくなりましたが、それにしても、この三人では、保守岩盤支持層は全く納得しないでしょう。


こういうこともあって、首相は心の奥底では、次期総裁選まで続投する自信は揺らいでいないかもしれません。

その背景には、①最大派閥・安倍派の空中分解の可能性、②反岸田勢力の旗頭の菅義偉前首相、二階俊博元幹事長の支持取り付け、③有力な後継候補の不在、という自民党内の権力構図があるようです。

まず安倍派の状況ですが、当初有力視された塩谷立会長代理の昇格案が、同派中堅若手などの反対で頓挫しました。その背景には残念ながら現在の安倍派(清和会)には、次の総裁になれるような玉が存在しないことにあります。

確かに、萩生田光一氏などの保守岩盤層の強い支持もありますが、それにしてもまだ力不足です。安倍総理が総裁選で支持した高市早苗氏は無派閥です。安倍元総理が亡くなってしまった現在、岸田首相は最大派閥の圧力から解放されている状況と言っても良い状況です。

次に、党内の反岸田勢力の活動をみても、その中核となる菅、二階両氏が政権支持を表明するなど広がりに欠けるているという現状です。10月下旬からの岸田首相の二階氏らに対する“会食攻勢”も奏功しているようです。

さらに、“ポスト岸田”候補については、上でもあげたように、自民党内で茂木敏充幹事長、河野太郎・内閣府特命担当相らの名前が挙がっています。ただ、いずれも党内での評価は低く、とりあえず岸田首相の続投が無難との見方が支配的なようです。

そのため、岸田総理は、未だ任期を全うするという、まさかの「秘策中の秘策」を諦めていないともみえます。

岸田首相にとっては、三木武夫元首相(故人)の政局対応を参考になるかもしれません。約半世紀前、「金権批判」で退陣に追い込まれた田中角栄首相(故人)の後継首相となり、「クリーン三木」を売り物に、戦後最大のスキャンダルとなったロッキード事件での田中氏逮捕を主導したとされるのが三木氏です。

「クリーン三木」の正体は、実は、想像を絶する「政争の怪物」でした。その実像は、翼賛選挙を非推薦で勝ち上がり、戦後の混迷する政局を泳ぎ回った稀代の策略家です。「綺麗事を武器にしろ」「昨日の敵は今日の友」「もっと火を大きくしてこい」との三木武夫の権謀術数の数々言葉が残されています。

これに対し、三木・中曽根両派を除く田中氏逮捕に反発する党内各派が、「挙党体制確立協議会(挙党協)」を結成して1年半にも及ぶ激しい“三木降ろし”を展開しました。しかし、三木氏はあえて解散で対抗せず、衆院議員の任期満了選挙に持ち込んで途中退陣を免れるという、政治史に残る粘り腰で任期を全うしました。

岸田首相には三木武夫氏の老獪さを真似するのは難しい・・・・・・?

ただ、こうした首相の“秘策”には、なにより官房副長官や首相秘書官で構成する「官邸チーム」や、総裁派閥・岸田派の結束と支援が不可欠です。ところが、国民の政権不信を招いた岸田首相の“朝礼暮改”は「まさに官邸チームの能力不足」が原因ともみられています。

さらに事実上更迭された、葉梨前法相や、寺田稔総務相は、いずれも岸田派の主要幹部なのに、「首相を支えるどころか足を引っ張るばかり」です。

16日の日本の国会は「首相不在で開店休業状態」でしたが、岸田首相が参加しているインドネシア・バリ島でのG20(20カ国・地域首脳会議)開催中に飛び込んだ「ロシア製ミサイルがポーランド東部の村に着弾した」との情報に、G7と北大西洋条約機構(NATO)が緊急首脳会合を開催する事態となりました。その後、バイデン米大統領が「ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べたが、国際社会は緊迫しました。

さらにこれと同時進行で、米国でトランプ前大統領が次期大統領選出馬を高らかに宣言したことが世界中で速報されました。まさに、国際情勢は物情騒然の様相を呈していました。

これにより、かねて岸田首相が指摘してきた「日本にとって戦後最大の危機」がますます深刻化するのは明白です。だからこそ与党内からも「宰相としての決断と実行が、日本の未来を決める。政権維持の策謀などは論外」声が出てくるのは当然です。

このため、政界では「岸田首相が身命を賭し、『チーム岸田』を率いて国を守るための決断と実行に邁進しない限り、任期途中での政権崩壊は避けようがない」との厳しい見方も広まっているようですが、当の岸田首相にその覚悟があるのでしょうか。

考えてみれば、菅政権は1年という短い在任期間で、独自の仕事も多く成し遂げましたが、基本的に安倍政権の政策は継承していました。特に、重要政策においてはそうです。なぜ、そうなのかといえば、外交でも国内政治でも、安倍政権の政策は現在の情勢に適合したものだったからであり、わざわざそれを変える必要がなかったからと考えられます。


岸田政権が現状の世界、国内情勢に適合するための一番の早道は、安倍政権の政策の継承であると考えられます。まさに、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、政策回帰が求められているのです。

岸田首相は、新しい資本主義など新しい政策もあげていますが、それを貫くには、三木武夫のように次々と権謀術数を繰り出すことが必要になると思います。そのようなことが、岸田首相にできれば、それこそ大化けするかもしれません。

ただ、これができないというのなら、やはり安倍政権の頃の政策への回帰すべきです。そうすば、政権を安定させるとともに、保守岩盤層の支持を取り戻すことになります。

そうであれば、保守岩盤層も、茂木、河野太郎、林のいずれかが総理になるくらいであれば、岸田政権継続ということで納得することでしょう。

茂木、河野、林が総理大臣になれば、保守岩盤層は蜘蛛の子を散らすように自民党から離れていき、それこそ、自民党は再び下野ということになりかねません。

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2022年11月25日金曜日

「北朝鮮が“ガチ”になった」またもやICBM級落下で専門家が指摘する3つのポイント―【私の論評】世界平和のために、日本はいずれ、核、SLBM、原潜を持つべき(゚д゚)!

「北朝鮮が“ガチ”になった」またもやICBM級落下で専門家が指摘する3つのポイント


 2022年だけで34回と、異例の頻度でミサイルの発射を行っている北朝鮮。18日には、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下した。

 北朝鮮の外相は、日米韓が首脳会談を開き連携を強化したことに対して警告する談話を発表していて、それが、ここ連日のミサイル発射につながったと専門家は指摘する。

龍谷大学 李相哲教授:

 今、日米韓の連携はかつてないほど強固になっているというのが一般的な見方。日米韓が北朝鮮の軍事能力に対して共同で対処するということですから、怖いことでもありますし、非常に不満を持っている。

 李教授は、北朝鮮が今後もミサイルの発射を続け、核実験を断行する恐れもあるという。

龍谷大学 李相哲教授:

 国民を餓死させながらもひたすら開発してきた核兵器が完成間近になっているのに、やめるということはまずない。核実験はするものとみられます。ただ、タイミングがいつになるかに関しては、金正恩総書記の政治的判断なので予測しにくい

■「北朝鮮が“ガチ”になってきた」 3つのポイント

 2022年3月以来のEEZ内落下で、緊張が走った今回のミサイル。北朝鮮のミサイル開発にも詳しい、東京大学先端科学技術研究センター特任助教の山口亮氏に聞きます。

(Q.「北朝鮮が“ガチ”になってきた」というのは、どういうことでしょう?)

東京大学 山口亮特任助教:

 軍事力を強化してきたな、という印象です。今回の発射は日米韓へのメッセージ、特に先日の日米韓首脳会談で、アメリカが「拡大抑止」の強化を宣言しました。北朝鮮はそれに対抗しているということもありますが、それ以上に実戦配備に向けたICBMの軌道・移動能力や性能の検証、ミサイル部隊の練度や指揮統制システムの向上・確認なども兼ねていると思うんです。“ガチ”で戦力化を進めているとみられます

(Q.最近、日米、米韓の合同軍事演習に対して挑発的にミサイルを発射してきましたが、それとはまた違ったものですか?)

東京大学 山口亮特任助教:

よりボルテージを上げてきた、それなりの本気度を表に出してきた、という感じです

■ポイント1 落下地点

 今回のミサイルは、通常より角度を付けて高く撃ち上げるロフテッド軌道で発射されました。最高高度は約6000km、飛行距離は約1000km、飛行時間は約69分で、北海道渡島大島の西、約200km地点に落下した。

 山口特任助教は、「落ちた」ではなく「落とした」、精度の高さを確認したという見解だ。

(Q.狙って落としたということですか?)

東京大学 山口亮特任助教:

 北朝鮮は、日本海のどこかにあらかじめ設定した標的を狙って撃ったんだと思います。極めて危険な行為だというのは承知の上で、ギリギリのところを正確に撃てるほどの精度があるということのアピール、あるいは検証だとみています

(Q.200キロというと、大阪から名古屋くらいの距離でしょうか?)

関西テレビ 神崎デスク:

 そうですね、日本の領土からそれほど遠くないところに落ちています。今回のミサイルは「ロフテッド軌道」という、ほぼ真上に上げたような状態です。上がるのに6000km、下りるのに6000km、横に1000km移動しているので、単純計算で1万3000km飛んでいる。弾頭部分の重さにはよりますが、防衛省の見立てでは、1万5000kmの距離にあるアメリカ本土に届くと性能を誇示している。日本にも脅威ですが、アメリカ本土に届くというアピールになっているんです

■ポイント2 ミサイルの種類

 山口特任助教は、今回のミサイルを火星15の改良型、もしくは火星17型だとみている。今回のミサイルの怖いところは「複数の核弾頭を載せられるミサイルの完成に近づいた可能性がある」点だということだ。

東京大学 山口亮特任助教:

 火星17は、超大型のミサイルです。今まで失敗が続いてきたんですが、今回成功したのであれば、それなりに技術が進んできたということを意味します。今までの問題点などを克服できたということです。また、火星17はまだ開発段階であって、MIRV(複数個別誘導再突入体)を搭載する能力についてはまだ課題が残っているんですが、かなり進んできていて、実戦配備も時間の問題だとみています

(Q.核弾頭を複数搭載すると、どういうことが起きるのですか?)

東京大学 山口亮特任助教:

 1つのミサイルに複数の核弾頭を搭載すると、複数の標的に核弾頭を落とすことができます。例を挙げると、1つの石を投げつけられた場合は何とか止められるかもしれませんが、4つや5つの石を同時に投げつけられると、1つは止められても他は当たってしまう可能性がある。それと同じような感じで、全て撃ち落とせない、迎撃できないかもしれません

■ポイント3 タイミング

 北朝鮮がなぜミサイルを連発しているのかについて、山口特任助教は、「アメリカは下手なことをしてこないし、中国・ロシアは、目をつむってくれる」からとみている。

東京大学 山口亮特任助教:

 アメリカは最近、日米韓の安全保障協力や「拡大抑止」の強化に力を入れていますが、戦力などに関してはまだ曖昧なところがあり、北朝鮮としてはそこを試したいんだと思います。中国とロシアは共に孤立してきていますし、米中対立も激化している。また、北朝鮮との協力を深めています。北朝鮮としては、軍事挑発に出ても中国・ロシアからのお咎めがほぼほぼないのではないか、または援護してもらえるのではと計算していると思います

■次は核実験 山口特任助教の見解

(Q.「北朝鮮は核実験をする、あとは金正恩総書記の政治判断」ということですが…)

東京大学 山口亮特任助教:

 核実験場の準備は、ほぼ整っているとみられます。なので、いつ実施されてもおかしくない。いつ核実験を行うかよりも、複数搭載用の小型化がどの程度進んでいるのか、都市や重要インフラを標的とした戦略核なのか、戦場や敵部隊を標的とした戦術核なのかなど、いろいろと見なければいけないところがあります。さらに北朝鮮は『国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画』というのを前倒しで進めていて、核兵器のドクトリン(核の使用法令)のようなものを9月に出しました。急ピッチで各種兵器の開発や実戦配備、軍の運営面の改善などを進めているので、今後もこういった実験や訓練を行う可能性が高く、この緊迫した状況が引き続き高止まりすると考えられます

 ミサイル発射、そして核実験。日本は当分、その脅威に立ち向かう必要がありそうだ。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月18日放送)

【私の論評】世界平和のために、日本はいずれ、核、SLBM、原潜を持つべき(゚д゚)!

上の記事では、北朝鮮のミサイルのことに絞って語っていますが、日本の危機はこれだけではありません。

日本は北朝鮮、ロシア、中国、今年ミサイルを領土外に発射した核保有3カ国に囲まれていることを忘れるべきではありません。

核戦争で日本と世界はどうなるのでしょうか。日本が核攻撃されるリスクはどのくらいあるのでしょうか。核戦争を防ぐ日本の真の抑止力とは何なのでしょうか。そもそも、核攻撃されても生き残れるのでしょうか。

日本が核を未だに持てていないのは敗戦と押し付け憲法が原因といえます。日本国憲法の前文に「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあります。崇高な理念です。

しかし、現在の中・露・北に「信頼」など信頼できるものでしょうか。憲法9条のお陰で日本は守られていると本気で信じている日本国民などごく少数に過ぎないでしょう。

マスコミは原子力船「むつ」の「微弱放射線漏れ」を「放射能漏れ」と嘘をつき、ビキニ環礁で核の灰を浴びた第五福竜丸の船員の死を内部被曝と騒ぎましたが、死因は肝機能障害、輸血時の肝炎ウイルス感染が原因でした。

3.11フクシマ原発事故の避難区域と健康被害報道もそうです、マスコミは必要以上に煽りまくりました。

10月4日、5年ぶりに北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を超えて日本のEEZ(排他的経済水域)外に落着しました。Jアラートが鳴ったのはミサイルが通過した後だった現実を軽く考えべきではありません。「専守防衛論」は既に破綻しています。中国は台湾を越えた日本のEEZ内に何発もミサイルを着弾させて謝りもしません。ロシアは不可分の兄弟国だというウクライナに100発近くものミサイルを撃ち込んだばかりです。

永久中立国スイスの地下シェルター普及率はイスラエルと並んで100%、アメリカとロシアは8割、シンガポールも5割を超えるのに、日本はわずか0.02%です。先般、東京都が国民保護法に基づく緊急一時避難施設の指定を発表しました。

先日ミサイル着弾時の爆風などから身を守る「緊急一時避難施設」について、秋田県が地下道約30か所を今年度中に新たに指定する方向で調整していることが分かりました。すでにコンクリート造の学校校舎などが指定されていますが、地下施設は一般の建物よりも、被害を減らす効果が期待できます。地下施設の指定は県内では初めです。

山王十字路交差点の地下道 秋田市

国はどうするのでしょうか。地下施設は核の空中爆発では破壊されません。ウクライナは核攻撃は受けていませんが、都市には大きな核シェルターが多数あるので、かなりのミサイル攻撃を受けても甚大な被害を受けということはありません。この点は、日本も見習うべきです。

7月8日、防衛費の増加と国防の強化を訴え続けた安倍晋三元総理が暗殺され、世界を動かせるリーダーを失った日本。日本海を隔てではあるが専制国家と接する日本はこの先どうなっていくのだろうか思うと、国民は安眠できません。

現状、核攻撃されて核爆発が起きたら、誰もあなたを救ってはくれないです。閃光「ピカ」と衝撃波「ドン」の回避、地獄からの脱出は、国民自身一人ひとりの判断と行動で決まります。そのサバイバル術は頭に入れておいたほうが良いでしょう。

日本政府としても、何もしないということではありません。日本が韓半島(朝鮮半島)と中国、ロシアまで射程圏とする長射程ミサイル配備計画を準備したと、毎日新聞が25日報じました。



日本政府は北朝鮮のミサイル挑発、中国との南シナ海をめぐる領土紛争、ウクライナ情勢をきっかけに「反撃能力」保有を進めています。今回の長射程ミサイル配備計画はこうした反撃能力保有の一環で、日本の長射程ミサイル開発計画と共に段階別に樹立されました。

同紙によると、日本政府は地上発射型長射程ミサイルを段階別に開発しています。1段階では南西諸島に射程距離1000キロ程度のミサイルを配備します。沖縄はもちろん台湾海峡、尖閣諸島(中国名・釣魚島)が含まれます。運用開始目標は2026年。日本自衛隊が保有する地上発射型ミサイルのうち射程距離が最も長い(約200キロ)のが12式地対艦誘導弾です、このミサイルの「改良型」が最初の配備候補となる見込みです。

12式地対艦誘導弾

ミサイル開発2段階の候補地には富士山付近が挙がっています。近隣に陸上自衛隊駐屯地があり、候補地として検討されています。配備を念頭に置いているのは「島嶼防衛用高速滑空弾」を含む射程距離は2000キロ以上です。

3段階では、北海道に射程距離約3000キロの極超音速ミサイルが配備される見通しです。目標時点は2030年半ばまでで、3段階の配備まで終えれば韓半島と中国、ロシアまでが射程圏に入ります。

◆「反撃能力」行使を基準に「同盟国の脅威」も検討

日本政府は今年末までにいわゆる「安保関連3文書」を改める方針です。核心は反撃能力です。第2次世界大戦敗戦後に「戦争をしない国」を宣言した日本が、戦後初めて「敵基地攻撃」を可能になるようにしたのが骨子です。

今回の長射程ミサイル配備と射程距離2000-3000キロ台の極超音速ミサイルの開発も同じ脈絡で進められています。「地上から発射する長射程ミサイルは敵の攻撃拠点から離れたところに配備可能で、攻撃を受けにくい」というのが、今回のミサイル開発と配備の理由に挙げられています

「反撃能力」をどの範囲まで想定するかという議論も行われています。産経新聞はこの日、反撃能力行使について「日本が侵攻を受ける『武力攻撃事態』だけでなく、同盟国などが武力攻撃を受けて集団的自衛権の行使が可能となる『存立危機事態』に関しても除外しない方向で検討している」と政府関係者の話として伝えました。

周辺国の主要都市が射程に入れば、その国は日本への攻撃を一層ためらうようになるでしょう。自ら日本に対して、軍事的な緊張を高めてくる、中国・ロシア・北朝鮮に対して、このようにして対抗するしか術はないと考えられます。

そうして、このブログにも依然から掲載しているように、長距離ミサイルを開発して、地上に配備するだけではなく、潜水艦から発射できるSLBMも開発すべきです。

中露北は、日米等と比較すると、対潜哨戒能力がかなり劣っていますから、日本のステルス性に優れた潜水艦を発見するのは難しいです。その潜水艦が魚雷だけではなく、SLBMも搭載しているということになれば、これは中露北にとっては、今までも日本潜水艦は彼らにとって脅威だったのが、さらに輪をかけて恐ろしい存在になります。

そのような装備ができた後には、当然のことながら日本も核保有を検討すべきでしょう。そうして、原潜の保有も検討すべきでしょう。

日本は、人工衛星を打ち上げる能力がありますが、これはすぐに核ミサイルに転用できます。しかも、かなり低価格で量産できます。このような技術も活用すべきです。

これらを実現できれば、世界の軍事バランスはかなり崩れ、日米英豪やEUなどにとってかなり有利になるのは間違いありません。これらを検討していると日本が公表しただけでも、中露北はパニックに陥るでしょう。

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2022年11月24日木曜日

激安服「SHEIN」もヤバい?中国で1日50人の児童が失踪、奴隷労働に従事か―【私の論評】中国ブラック企業の日本進出を阻止せよ(゚д゚)!

激安服「SHEIN」もヤバい?中国で1日50人の児童が失踪、奴隷労働に従事か


街中至る所に監視カメラを設置し、人民を徹底監視する中国。そのような状況にある国で、年間20万人もの少年少女が行方不明になっているという不可解な事実をご存知でしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、最近も頻発している失踪事件のニュース記事を引きつつ、その原因を推測。臓器売買や強制労働の疑いも捨てきれないとの見方を示しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年11月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

 【中国】失踪児童と強制労働と中国企業躍進の関係

中國青少年失蹤頻傳 網友諷:説好的封控在哪裡?

中国では、少年少女が失踪する事件が数多く起こっています。その数は年間20万人、1日平均50件とも言われています。

年間20万人の児童が行方不明に! 中国マフィアの「誘拐イノベーション」

中国メディアやラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、湖北、江西、広東、河南で、ここ1カ月ほどで少なくとも十数件の小中学生が行方不明になっているとのことです。

九維新聞、暁星朝刊などのメディアが報じた最近の事件は、武漢市黄璧区に住む14歳の中学生、劉蒼成さんが今月12日午後8時半にゴミを捨てに階下に降りた後、行方不明になり、その後も消息が分からなくなったそうです。

このほか、11月5日に広東省汕頭市の中山路付近で15歳の少年が失踪した事件、10月23日に広州市番禺区大石街大興村で17歳の少女が失踪した事件、10月14日に江西省霊山県の高校1年生胡新宇さんが夜学に向かう途中で失踪した事件などが、類似の事件として挙げられています。

ご承知のとおり、中国には2億台もの監視カメラが街のあちこちに備え付けられており、徹底した監視社会となっています。中国のネットでも、交通違反や新型コロナの隔離違反者はすぐ捕まるのに、なぜ行方不明の少年少女たちは見つからないのかという疑問が噴出しています。

中国では、このような失踪事件は当局が公表しないことも少なくありません。そのため、その原因は推測するしかないのですが、これらの失踪者の多くが健康な10代の若者であるため、マフィアによる臓器売買や、強制労働が疑われています。一方、幼児の場合は、老後の不安がある農村の夫婦などに売られているケースがあるようです。

2007年には、中国山西省臨汾市の複数のレンガ工場で、誘拐された子どもたち1,000人以上が強制労働をさせられていたという事件が発覚したことがありました。子どもたちは国内各地で誘拐され、レンガ工場に500元(約8,000円)で売られ、1日14時間労働を強いられていたといいます。

中国:子ども100人以上が誘拐され、レンガ工場で強制労働

今年の9月28日、アメリカの労働省は、児童が強制労働に拠って生産された物品リストを更新しましたが、そこでは、中国で製造されるリチウムイオンバッテリーや、太陽電池セル・モジュールなども含まれており、とくに新疆ウイグル自治区での強制労働で生産されたポリシリコンが、企業のサプライチェーンに組み込まれるリスクを指摘しています。

米労働省、児童・強制労働によって生産された物品リストを更新

中国ではまだまだ強制労働や極めて低い賃金での劣悪な労働が横行しています。たとえば、中国発のファッションブランドSHEINは、非常な低価格戦略により世界中で売上を伸ばしており、先日原宿にショールームを出店し、日本の若者にも人気となっています。

しかし、イギリスのメディアによる潜入調査により、SHEINの中国にある製造工場では従業員が1日18時間労働を強いられ、1日少なくとも500着を製造するものの、報酬は1着につきわずか6円しか得ていないという実態が明らかになっています。

しかも、1つのミスをすると日給の3分の2の罰金が科せられるというのですから、ほとんど「奴隷労働」状態でしょう。

SHEINの製品を作る労働者は1日18時間働き、報酬は1着わずか6円…英チャンネル4が潜入調査の動画公開

その他、SHEINには、商品に新疆ウイグル自治区の強制労働によって生産された綿が使用されている疑いも出ています。

SHEIN製品、新疆綿使用と検査結果が示す-米強制労働対策に抜け穴

児童誘拐には、中国社会で奴隷労働がまだまだ根絶されていないことにも、一因があるでしょう。そもそも中国においては人権や人命は非常に軽いものです。中国共産党自体が、国民主権どころか言論の自由や信教の自由を阻害しているのですから、個人が尊重されることなどありません。人を人と思わないわけですから、子供だからといって容赦などしません。

もっとも、これは現在のみならず、中国の特質として数千年も引き継がれてきたことでもあります。文豪の魯迅は、中国の歴史は「奴隷になりたくてもなれない時代」と「安全に奴隷になれる時代」の繰り返しだと述べました。いつでも奴隷主になり、また自らも奴隷になるというのが中国の風土なのです。

清末の政治家・梁啓超は、中国人を「戮民」と評しました。彼は『新民説』において、「中国の天の戮民たること久し。天これを戮し、人これを戮し、暴君これを戮し、汚吏これを戮し、異族これを戮す」と嘆いています。天からも、同胞からも、為政者からも、官僚からも、外国人からも虐げられる存在だということを喝破したわけです。

清末の中国で20年以上も布教活動を行ったアメリカの宣教師アーサー・スミスは、著書『中国人的性格』(邦訳は中央公論新社)で、中国人の相互不信を特筆しています。そのなかで、「一人で寺に入るな。二人で井戸を覗くな」という中国のことわざを紹介しているのですが、その理由を中国人から「一人で寺に入るとその機会を捉えて僧侶に殺されるから、二人で井戸を覗くと、物品を盗もうと考える相手によって突き落とされるから」と教えられて、大変驚いています。

ある意味で、超利己的で人間不信社会である中国だからこそ、他人を奴隷化することもいとわず、それが低価格戦略を可能にしているわけです。児童誘拐や人身売買にも、そうした背景が関係しているのです。

奴隷労働を強いる企業の製品を買うことは、明らかにSDGsとは真逆の方向性です。

地球温暖化にしても、環境保護団体などはなぜか西側諸国ばかり糾弾して中国にはだんまりを決め込むということがよく見られますが、それと同様、日頃、人権意識の高い人達や企業が、奴隷労働によって生まれる商品を嬉々として購入しているならば、そこにはなにか「別の力」が働いていると思わざるをえません。

【私の論評】中国ブラック企業の日本進出を阻止せよ(゚д゚)!

SHEINの協力工場がある広東省をはじめ、沿岸部の縫製工場の賃金がついに、日本の東北地方を上回り始めたそうです。平均7,000元〜10,000元(日本円: 14万〜20万円)。日本向け衣料を生産する大手工場の見積額も今や日本の工場より高い額を日本の商社へ要求しているそうです。

中国では昨年暮れ最低賃金を引き上げる動きが相次いでいました。経済規模が最大の広東省をはじめ、2021年に入り20の省・直轄市・自治区が実施していました。習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げる「共同富裕(共に豊かになる)」のもと労働者の不満を抑える狙いですが、人件費の上昇は工場の国外移転を加速させる可能性もあります。


中国では、国際金融のトリレンマにより、金融緩和が自由にできない状況にあることは、このブログでも解説したことがあります。金融緩和せずに、機械的に賃金を上げるとどうなるでしょうか。それは、韓国の文在寅政権のときに実行された結果、申告な雇用状況の悪化を生み出しました。

中国でも同じことが行われています。その結果は深刻な雇用状況の悪化を生み出すことになるでしょう。

技能実習生が日本へ来なくなる日も現実味を帯びてきたと騒ぐ人もいます。そうして、これは多分に最近の円安によるところが多いです。

そうして、円安は本当に悪いことなのでしょうか。円安で日本人の賃金が安くなったと騒ぐ非人もいますが、それはドル建て比較しているからであって、ほとんどの人は日本国内で働き、日本で賃金を受け取っているので、円安の影響はあまりありません。

ただ、中国沿岸部の工場の賃金が、日本の東北地方を上回り始めたのであれば、日本の東北地方で生産したほうが良いということになります。日本向け衣料を生産する中国の大手工場の見積額が日本の工場より高い額を商社にするというなら、日本の商社は日本国内の工場に縫製を頼めば良いということになります。

技能実習生が日本に来なくなれば、日本人が働けば良いといことです。無論、日本人が働くということであれば、技能実習生のような縛りがないため、もし雇用先がブラック体質であれば、就業しても辞めるとか、最初から就業しないといことで、技能実習生を使いブラック体質の事業を行っていた企業は存続の危機を迎えることになるでしょう。

これは、中国の縫製工場の例ですが、他の産業でも、中国以外の国においてもこのようなことが大規模に起こっているのです。通貨安によって海外に進出した企業の大規模な国内回帰につながるのです。無論、すぐには回帰できない企業もあるでしょうが、それにしても円安が続けばその傾向は定着することになります。

ただ、気をつけなければならないことはあります。日本の賃金が安いということになれば、今度は中国企業が日本に進出してきて、日本で大量に日本人雇い、様々な製品を製造することになるかもしれません。


そうなると、日本国内に中国企業が増えることになり、さらにその中国企業は日本の法令を守らず、中国国内と同じくブラック体質まる出しで操業をはじめるかもしれません。そうなると、日本人は逃げ出すか、最初から中国企業に就業しなくなるかもしれません。

しかし、日本には、日本人だけではなく、中国人や他国の人も存在します。日本に進出した中国企業がこれらの人々を使ってブラック体質の操業を始めるかもしれません。

私自身は、SHEINもそのようなことを狙っているのかもしれないと思っています。実際SHEINは、日本の原宿に店舗を出したばかりです。この店舗への商品を日本国内で製造することになるかもしれません。そうして、それがうまくいけば、日本国内での製造を拡大するかもしれません。

何しろ、渋谷・原宿が世界的に見ても、ファッション先進地です。お洒落な衣料品の激戦区です。様々なお店が立ち並ぶ中で、様々なファッションに出会うことができます。

SHEIENの原宿店は、ファッションを売るだけではなくそうした情報をキャッチする役目も担っている可能性が大きいです。私は、SHEIENの商品を最初にサイトでみたとき、これは米国のメーカーなのかと思ったくらいです。今考えてみると、何のことはない単なる欧米のパクリだったのだと思います。

そのためか、かなり露出が多かったり、明らかに大きな体格に合わせたと思われる商品が多かったですし、色使いやデザインも日本のものなどに比較すれば、大雑把であったり大胆すぎなどで、なんというかちぐはぐ感は免れないものでした。なんというか、ブランドの統一感が感じられなかったのです。

SHEINのサイトより クリックすると拡大します

これは、当然のことながら、同じブランドであっても、他の複数のブランドのパクリであれば、理解できることです。

原宿・渋谷のフアッション先進地でフアッションを盗み、中国の工場で安い賃金で、すばやくそれを真似た商品をつくり、それを世界中で販売するという企みなのかもしれません。

ただ、中国で製造ということになれば、それだけ時間がかかるし、きめ細かなコミュニケーションができないので、日本で製造ということになるかもしれません。

今後円安で、そのようなことを中国の様々な産業が実施することになるかもしれません。

しかしそのようなことは、国益の観点から野放図に許すわけにはいきません。今後円安を背景に、パンデミックや米中貿易摩擦で断続的にサプライチェーンが寸断された近年の経験を踏まえれば、コストの問題は脇に置いても国内で製造した方が安全という考え方の企業も出てくるでしょう。

今後「円安+経済安全保障」まで包括的に考えた時に、製造業の国内回帰の可能性が高まることになるでしょう。 ただ、その動きとともにSHEINのような中国企業が日本国内でブラック的な事業を展開する可能性も高まるということです。

今後日本企業が、経済安全保障の観点から中国などから、日本へ拠点を移したら、今度は日本国内の中国企業に脅かされるということになれば、本末転倒ということになります。

日本政府は経済安全保障の観点から、このような動きを規制すべきですし、また公的補助により、海外から日本に回帰する企業を助け、さらに円安で不利益を被る中小企業を助けるということもすべきと思います。 

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2022年11月23日水曜日

岸田首相が増税を提起 防衛費増額に「国民全体で負担することを視野に入れなくては」―【私の論評】真摯さに欠る有識者会議、財務省、岸田総理(゚д゚)!

岸田首相が増税を提起 防衛費増額に「国民全体で負担することを視野に入れなくては」


岸田文雄首相は22日、防衛力強化に関する政府有識者会議座長の佐々江賢一郎元駐米大使と官邸で会い、報告書を受け取った。報告書は、防衛費増額のために不足する財源について「国民全体で負担することを視野に入れなければならない」とし、事実上の増税を提起。抑止力向上のため敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が不可欠だと明記した。首相は「重要なアドバイスだ。与党と調整しながら検討を進める」と評価した。

政府は与党協議の結果も踏まえた上で、外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定に反映させる。

首相は報告書受け取りに続いて、自民党の麻生太郎副総裁や公明党の山口那津男代表ら与党幹部を交えた会議に出席。防衛費増額を巡り協議した。

報告書は、防衛力強化に継続的に取り組むには「安定した財源の確保」が基本との姿勢を示し、国民に負担増への理解を得る努力をするよう要請。「幅広い税目による負担が必要」としつつ、具体的な税目は明示しなかった。賃上げなどの企業努力に水を差さないようにすべきだと指摘した。

変則軌道や極超音速のミサイル開発を進める北朝鮮や中国を念頭に、インド太平洋のパワーバランスが大きく変化していると強調。敵基地攻撃能力の整備に向け、今後5年を念頭に十分な数の長射程ミサイルを装備するよう求めた。発動に際して「政治レベルの関与の在り方について議論が必要だ」とも指摘した。

研究開発や公共インフラなど防衛力強化に資する4分野の経費を合算した新たな予算の枠組み創設にも触れた。

有識者会議は佐々江氏や経済の専門家、元防衛事務次官ら10人がメンバーとなっている。

【私の論評】真摯さに欠る有識者会議、財務省、岸田総理(゚д゚)!

有識者会議の情報発信全くおかしいです。報告書には防衛力強化の中身が殆どなく国民に税負担をお願いするボリュームがやたら大きい報告書になっています。これでは国民から相当反発が来るでしょう。

防衛力強化に関する政府有識者会議座長の佐々江賢一郎元駐米大使

補正予算で景気対策、一方防衛力で増税では、これは理解はかなり得にくいです。

このブログでも過去の述べてきたので、ここで詳しくは述べませんが、日本は慢性的な需要不足に陥っていて、増税どころか減税しなければならない状態のはずです。にもかかわらず、有識者会議は防衛公債や防衛納税など一顧だにせず、国民が広く負担する税の増税を答申しています。一体何のための有識者会議なのか、意味がわかりません。

なぜこのような報告をするのでしょうか。有識者会議の報告書では、予想通りこのブログでも指摘した、為替特会などの埋蔵金は書いていません。政治家などが、防衛費は国債で賄うべき、防衛国債を創設すべきなどと語っていれば、財務省は換骨奪胎して「つなぎ国債」を発行などといいだすでしょう。つなぎ国債は、償還までの期間が短いので、これは増税と同じようなものです。

財務省は次の段階では、償還のために増税が必要として、増税することを狙うでしょう。そして特別会計を作って「防衛増税」をするでしょう。これは財務省の定番メニューです。背後には、こうした財務省の企みがあるからこそ、有識者会議の報告は多くの国民から理解を得にくいものになっているのでしょう。

政治家が国債という時にははっきりと「長期国債」と言うべきです。防衛費は、まずは埋蔵金40兆円で8年凌いでその後自然増収をあてるが筋というものです。

「増税なき防衛力の強化を」との国民の願いに背を向け、増税を明確化した有識者会議。自民党内には“これが強行されたら政権は吹っ飛ぶ”との声が充満しています。巨額の埋蔵金も活用せず、防衛国債も拒否して「幅広い税目による負担が必要」とは恐れ入ります。

ただ、これは見せかけに過ぎず。政治家が埋蔵金の利用などいわず、「防衛国債」とばかり主張することになることを財務省は、見越しており、それで「つなぎ国債」を発行し、償還財源を増税で賄うというのが、財務省の既定路線のようにみえます。

政治家は、この企みにまんまののせられないためにも「防衛国債」とはいわずに、「長期防衛国債」と語るとともに、埋蔵金の活用も主張すべきです。

岸田首相は、矛盾した発言もしています。何と今の時期に、低・中所得国に8.8兆円インフラ投資にあてると表明していたのです。

岸田文雄首相は今年の6 月26日午後、2027年までに650億ドル(約8兆8000億円)以上を低・中所得国のインフラ投融資にあてると表明しました。当時ドイツで開催中の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の関連行事で明らかにしたのです。

今年ドイツで開催中の主要7カ国首脳会議(G7サミット)

 これによって、気候変動や情報通信などの分野でアジアやアフリカの低・中所得国のインフラ整備を支えるとしたのです。

一方で、防衛費は増税で賄うといのですから、首をかしげてしまいます。外国には、9兆円ものインフラ投資をするといいながら、一方国内では、防衛という国の根幹に関わることで増税しようとするのですから、全く辻褄があいません。

それどころか、不正な外国人生活保護や医療費に何兆円も注ぎ込むようなこともしていいます。

防衛費を増税で賄わなければならないほどに、財政が逼迫しているというのなら、外国にインフラ投資や、生活保護や医療費にする金で、まずは防衛費にあてるべきです。

「抑止力とは戦争する力ではありません。戦争を“止める力”なんです。子供達の未来をこれで守っていくんです」と生前の安倍元首相は語っていました。しかし、お花畑のドリーマーにはこれが分らないようです。

安倍元首相、最後の演説内容  神戸市三の宮 暗殺の前日7月7日

有識者会議も同じす。増税で防衛費を賄ってどうするのでしょうか。財務省及び有識者会議の目的は“日本弱体化”なのでしようか。1997年以来の失政を未だ続ける阿呆としか言いようがありません。

岸田総理が嬉々としてこれを遂行すれば、富国強兵ではなく貧国弱兵の道を突き進み、日本の地獄行は確定です。平成年間の大部分がそうだったように、経済は伸びず賃金も上がりません。

やはり党内政局はこれが引き金になるでしょう。これがいずれ激烈な岸田おろしに結びつくことになるでしょう。

次の総理が誰になるかわかりませんが、贅沢はいいません。頭が悪くても、ルックスが悪くても、態度が悪くても、滑舌が悪くても、頼りなくても良いですから、任期中には何があっても増税しない、金融引締しない、中国とは対峙するという方針を貫く人に総理大臣になっていただきたいです。あるいは、岸田総理にこのように変わっていただきたいものです。

そうして、ドラッカー氏のいうところの真摯な人物になっていただきたいです。経営学の大家ドラッカー氏は真摯さについて以下のように語っています。
(マネジャーには)根本的な素質が必要である。真摯さである。

うまくいっている組織には、必ず1人は、手を取って助けもせず、人づきあいもよくないボスがいる。この種のボスは、取っつきにくく気難しく、わがままなくせに、しばしば誰よりも多くの人を育てる。好かれている者よりも尊敬を集める。

一流の仕事を要求し、自らにも要求する。基準を高く定め、それを守ることを期待する。何が正しいかだけを考え、誰が正しいかを考えない。真摯さよりも知的な能力を評価したりはしない。

このような素質を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明(そうめい)であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。

真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それはまず、人事に関する決定において象徴的に表れる。真摯さは、取って付けるわけにはいかない。既に身に付けていなければならない。ごまかしがきかない。

ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは2、3週間で分かる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。
真摯さ」は、原本では、「integrity」と書かれており、「誠実、高潔」という意味があります。 これは、ドラッカーの「マネジメント」のなかで最も多く出てくる言葉でもあります。そうして、欧米では経営者等に求められる唯一の資質とされ、マネジメント関連の書籍に良く使われる言葉です。 ただ一生懸命にということではなく、「不変の正直さと誠実さで、強い信念を持って仕事に取り組む姿勢」だと思います。

残念ながら、現在の有識者会議にも、財務省にも、そうして残念ながら岸田総理にもこのような姿勢に欠けているようです。特に岸田総理の統一教会問題を利用した、安倍派外しの人事においては、そうした傾向が強く見られたように思います。

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2022年11月22日火曜日

ハーバード世論調査:トランプがデサンティスに18ポイント差で勝利、仮定上の2024年共和党予備選挙で―【私の論評】 中間選挙でトランプの共和党内での立場は盤石になり、現状で大統領選の最有力候補に(゚д゚)!

ハーバード世論調査:トランプがデサンティスに18ポイント差で勝利、仮定上の2024年共和党予備選挙で


<引用元:ブライトバート・ニュース 2022.11.18
最新のハーバードCAPS・ハリス世論調査で、共和党の2024年大統領予備選挙を仮定した場合にドナルド・トランプ前大統領がフロリダ州のロン・デサンティス知事に18ポイントリードし、明らかな最有力候補者であることがわかった。

世論調査では、共和党有権者の46パーセントがトランプを支持していることがわかった。一方デサンティスの支持者は28パーセントだった。

2024年に大統領選挙に出馬するとの憶測が多いマイク・ペンス前副大統領は、わずか7パーセントの支持率だった。テッド・クルーズが3パーセントで4位に着け、ニッキー・ヘイリー、マイク・ポンペオ、そしてティム・スコットはいずれも2パーセントだった。

ハーバード世論調査は、先週の中間選挙後、そしてトランプの2024年大統領選挙出馬の発表後に実施された。

「アメリカを再び偉大で輝かしくするために、私は今夜合衆国大統領に立候補することを発表します」とトランプは、15日にマーアラゴの私有地で支持者の聴衆に語った。

また世論調査では、デサンティスならジョー・バイデン大統領と同点となるが、トランプであれば2024年のリターンマッチを仮定した場合にバイデンに勝利することもわかった。

仮定上のリターンマッチでは、有権者の42パーセントがバイデンを支持するのに対し44パーセントはトランプを支持する。調査ではまた、仮定上の選挙でトランプがカマラ・ハリス副大統領を7ポイント差で破ることもわかった。

一方デサンティスとバイデンは調査では43パーセントで同点となった。

調査ではほとんどの有権者がバイデンの精神面の健康状態に疑問を持っており、2期目の出馬を行うべきでないと考えていることもわかった。

ハーバードCAPS・ハリス世論調査は2,212人の登録済み有権者に対して11月16日から17日まで実施された。

【私の論評】 中間選挙でトランプの共和党内での立場は盤石になり、現状で大統領選の最有力候補に(゚д゚)!

上の記事にでてくる、フロリダ州のロン・デサンティス知事、州知事選で、民主党の対立候補に圧勝して知事再選を果たし、2024年の次期大統領選に向けた共和党の「新星一番手」という地位を確保したとみられる人物です。

ロン・デサンティスフロリダ州知事

トランプ前大統領が15日に次期大統領選への再出馬を正式表明すると予測される中で、デサンティス氏は、自らの政治生命を賭けてトランプ氏と共和党大統領候補の座を争う覚悟があるのかどうか決断を求められることになります。

日本では、ほとんどのメディアは中間選挙は、共和党の完璧な敗北であり、その責任の一旦はトランプにあり、トランプの大統領復帰など、あり得ないという論調です。

しかしこれは一方的な見方にすぎないことをこのブログでは、主張しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
暗号資産FTX経営破綻 米で12月に公聴会へ 債権者は100万人超か―【私の論評】トランプの大統領選を有利にする、民主党リベラルの大スポンサーFTXの経営破綻(゚д゚)!
サム・バンクマンフリードFTX前最高経営責任者(CEO)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を引用します。
トランプ氏の次期大統領選出馬表明について日米のメディアは強く批判ばかりしています。その最大の根拠は「中間選挙で共和党が惨敗」したという見方です。

しかし上院で今回選挙戦が争われたのは35選挙区です。民主党の改選議席数は14(非改選36)、共和党の改選議席数は21(非改選29)下院は共和217、民主207。これでは、共和党が惨敗とはいえません。むしろ、選挙戦そのものでは共和党のほうが勝っているともいえます。

そうして、トランプが支持した候補は予備選等も含めて235人当選し、敗北は22人です。これもトランプが敗北したとはいえません。

そうでなけば、2024年の大統領選に出馬することを表明したりはできなかったでしょう。

日本のメディアは、米国のリベラルメディアの報道を垂れ流すのみで、以上のようなことを報道しません。
無論、共和党は中間選挙で旋風を起こせなかったのは事実です。ただ、それを全部トランプのせいにするのは、あまりに無責任といわざるをえません。

この記事で主張したように、共和党は「トランプ党」なのか「反トランプ党」なのかを明確にしないまま、選挙戦に突入したのに対して、民主党はインフレなど不利な面があったので、より結束を強めて選挙戦に突入することができました。

そのため、共和党は中間選挙では旋風を起こすことができなかったのです。しかしながら、朝日新聞は以下のように伝えています。
 トランプ氏は選挙後、米FOXニュースに対し、推薦した候補の大半が当選したとして「我々はとてつもない成功を収めた」と語った。米紙ワシントン・ポストによると、トランプ氏は上院で21人、下院で156人の計177人を推薦した。米CNNによると21日時点で、上院では15人、下院では148人が当選を確実にしている。「トランプ派」の推薦候補のうち9割超が当選したことになる。

 ただ、朝日新聞は、続けて、中間選挙の選挙区を「共和党有利」「接戦区」「民主党有利」の三つに分類すると、トランプ氏が推薦した先は「共和党有利」の候補ばかりだとしています。

ただ、トランプ氏がなぜ推薦を行ったかといえば、トランプ派の議員をなるべく増やすためです。この目的を成就するためには、共和党が有利な選挙区で、トランプ派の議員が立候補していれば、その議員を推薦し、反トランプ派の議員が立候補している場合は、刺客を送り、反トランプ派の議員を落選させることが、最も効率的ですし、効果的です。

これは、このブログでも以前述べましたが、ワイオミング州で8月16日、連邦下院選の共和党候補を決める予備選が行われた結果、昨年の連邦議会占拠事件を巡ってトランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れたことをみても明らかです。


トランプ氏の推薦候補は、上下両院の共和党の当選候補のうち7割近くを占めています。今後の米議会でも、トランプ派が共和党内で存在感を保つことは確かです。私自身、今回の中間選挙でトランプ氏の共和党内での立場は強くなったとみています。

確かに共和党の大統領候補指名レースに限れば、トランプ氏はデサンティス氏を含む他のどの政治家に対しても優位に立つとみられます。党の支持層の間では高い人気を維持し、手元にある潤沢な選挙資金はこれからさらに増えていく一方でしょう。

それを見越している人が多いからこそ、最新のハーバードCAPS・ハリス世論調査で、共和党の2024年大統領予備選挙を仮定した場合にドナルド・トランプ前大統領がフロリダ州のロン・デサンティス知事に18ポイントリードし、明らかな最有力候補者であることがわかったのだと考えられます。

トランプ氏が2024年の大統領選挙における有力な候補であることは間違いないです。ただ、一つトランプ氏にとって不安材料があります。それは、今回の中間選挙で共和党が「共和党旋風」を起こせなかった原因となった、共和党が「トランプ党」でいくか、「反トランプ党」でいくかをはっきりさせないことです。

これが、はっきりしなければ、トランプ氏も、共和党も「勝てる選挙」でも勝てなくなってしまう可能性があります。

共和党としては、どちらの道を行くにしても、早い時期に決めて、決まった以上は一致団結して、選挙戦に望み、次の選挙では、共和党旋風を巻き起こすべきと思います。

過去をみると、共和党政権にとっては、日本にとって良いことが多く、民主党政権のときはあまり良くなかったと思います。


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