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1人目は山際大志郎経済財政相(当時)。旧統一教会との関係を指摘され、十分な説明ができなかった。2人目は葉梨康弘法相(同)。ウケ狙いで「死刑執行のハンコ押し」について発言し、釈明のしようもなかった。
3人目は寺田稔総務相(同)。補正予算案審議に支障が出てはいけないという理由で、20日に事実上更迭された。政治資金の問題を週刊誌に指摘されていたことが背景にある。
20日というタイミングは、岸田首相の外遊からの帰国と補正予算案審議との兼ね合いで、その日しかなかった。筆者は、交代させるなら同様の政治資金問題を抱える秋葉賢也復興相も同時だと思っていた。そうしないと、補正予算案の審議で秋葉氏も寺田氏と同じような批判を浴びてしまうからだ。
岸田首相は、何をしたいかと問われると、「人事」と答えるというのは有名な話だ。普通はやりたい政策があって、そのための手段が人事だが、岸田首相の場合、逆のようだ。
7月10日投開票の参院選で与党が勝利した後、国政選挙のない「黄金の3年間」といわれた。そこで岸田首相は内閣改造人事を行った。選挙期間中の7月8日、安倍晋三元首相が暗殺されるという悲劇があったので、国葬が優先で改造人事はその後でもおかしくなかった。しかし、8月10日、改造人事を先に行い、国葬は9月27日に後回しにされた。
このあたりから岸田政権の歯車が狂った。それまで「無策最強」といわれていたが、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問を受けて、中国が8月4日に日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイル5発を打ち込んだ際、国家安全保障会議を開催しなかった。国の安全より改造人事優先だったといわれても仕方あるまい。
岸田首相は改造人事にあたり、「旧統一教会との関係を厳正に見直す」と言った。これは党内事情による安倍派外しの思惑だろうが、その後の岸田政権にとって大きな足かせになって自分の首を締めている。結局、旧統一教会がワイドショーに取り上げられ、連日強調されたことが岸田政権の支持率を低下させた。また、旧統一教会との関係を見直すとした改造人事で任命した山際氏が、旧統一教会との関係を指摘され、辞任ドミノのきっかけになってしまった。
ここまで来ると、なかなか挽回策は難しい。年内にまた内閣改造人事が噂されているが、目的と手段が入れ替わったままで効果があるだろうか。
ここは、「政策回帰」が筋だ。小泉純一郎政権のように、埋蔵金活用で増税封じくらいできないと難しい。財務省の言いなりの増税志向から、君子豹変(ひょうへん)するような大胆なイメージチェンジが求められている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】岸田政権の喫緊の課題は離れてしまった保守岩盤支持層の支持を急いで取り戻すこと(゚д゚)!
現状は、岸田政権の暴走により、安倍元総理支持者を中心とする保守岩盤支持層が離れてしまっています。特に、防衛増税ほど、まともな保守の憤怒のマグマを煮えたぎらせたことはないでしょう。防衛増税をして経済が落ち込めば、安全保障にも悪影響がでてきます。これでは、いつ岸田首相に向かって怒りのマグマが大噴出するかわからない状況です。
そのような自民党にとって、喫緊の課題は離れてしまった保守岩盤支持層の支持を急いで取り戻すことです。
現在ポスト岸田で名前の挙がっているのは茂木、河野太郎、林では、これは全く無理です。最近では、さすがに、あまりにもグレートアフォーすぎる、小泉進次郎や石破の名前はあがらなくなりましたが、それにしても、この三人では、保守岩盤支持層は全く納得しないでしょう。
こういうこともあって、首相は心の奥底では、次期総裁選まで続投する自信は揺らいでいないかもしれません。
その背景には、①最大派閥・安倍派の空中分解の可能性、②反岸田勢力の旗頭の菅義偉前首相、二階俊博元幹事長の支持取り付け、③有力な後継候補の不在、という自民党内の権力構図があるようです。
まず安倍派の状況ですが、当初有力視された塩谷立会長代理の昇格案が、同派中堅若手などの反対で頓挫しました。その背景には残念ながら現在の安倍派(清和会)には、次の総裁になれるような玉が存在しないことにあります。
確かに、萩生田光一氏などの保守岩盤層の強い支持もありますが、それにしてもまだ力不足です。安倍総理が総裁選で支持した高市早苗氏は無派閥です。安倍元総理が亡くなってしまった現在、岸田首相は最大派閥の圧力から解放されている状況と言っても良い状況です。
次に、党内の反岸田勢力の活動をみても、その中核となる菅、二階両氏が政権支持を表明するなど広がりに欠けるているという現状です。10月下旬からの岸田首相の二階氏らに対する“会食攻勢”も奏功しているようです。
さらに、“ポスト岸田”候補については、上でもあげたように、自民党内で茂木敏充幹事長、河野太郎・内閣府特命担当相らの名前が挙がっています。ただ、いずれも党内での評価は低く、とりあえず岸田首相の続投が無難との見方が支配的なようです。
そのため、岸田総理は、未だ任期を全うするという、まさかの「秘策中の秘策」を諦めていないともみえます。
岸田首相にとっては、三木武夫元首相(故人)の政局対応を参考になるかもしれません。約半世紀前、「金権批判」で退陣に追い込まれた田中角栄首相(故人)の後継首相となり、「クリーン三木」を売り物に、戦後最大のスキャンダルとなったロッキード事件での田中氏逮捕を主導したとされるのが三木氏です。
これに対し、三木・中曽根両派を除く田中氏逮捕に反発する党内各派が、「挙党体制確立協議会(挙党協)」を結成して1年半にも及ぶ激しい“三木降ろし”を展開しました。しかし、三木氏はあえて解散で対抗せず、衆院議員の任期満了選挙に持ち込んで途中退陣を免れるという、政治史に残る粘り腰で任期を全うしました。
岸田首相には三木武夫氏の老獪さを真似するのは難しい・・・・・・? |
ただ、こうした首相の“秘策”には、なにより官房副長官や首相秘書官で構成する「官邸チーム」や、総裁派閥・岸田派の結束と支援が不可欠です。ところが、国民の政権不信を招いた岸田首相の“朝礼暮改”は「まさに官邸チームの能力不足」が原因ともみられています。
さらに事実上更迭された、葉梨前法相や、寺田稔総務相は、いずれも岸田派の主要幹部なのに、「首相を支えるどころか足を引っ張るばかり」です。
16日の日本の国会は「首相不在で開店休業状態」でしたが、岸田首相が参加しているインドネシア・バリ島でのG20(20カ国・地域首脳会議)開催中に飛び込んだ「ロシア製ミサイルがポーランド東部の村に着弾した」との情報に、G7と北大西洋条約機構(NATO)が緊急首脳会合を開催する事態となりました。その後、バイデン米大統領が「ロシアから発射されたとは考えにくい」と述べたが、国際社会は緊迫しました。
さらにこれと同時進行で、米国でトランプ前大統領が次期大統領選出馬を高らかに宣言したことが世界中で速報されました。まさに、国際情勢は物情騒然の様相を呈していました。
これにより、かねて岸田首相が指摘してきた「日本にとって戦後最大の危機」がますます深刻化するのは明白です。だからこそ与党内からも「宰相としての決断と実行が、日本の未来を決める。政権維持の策謀などは論外」声が出てくるのは当然です。
このため、政界では「岸田首相が身命を賭し、『チーム岸田』を率いて国を守るための決断と実行に邁進しない限り、任期途中での政権崩壊は避けようがない」との厳しい見方も広まっているようですが、当の岸田首相にその覚悟があるのでしょうか。
考えてみれば、菅政権は1年という短い在任期間で、独自の仕事も多く成し遂げましたが、基本的に安倍政権の政策は継承していました。特に、重要政策においてはそうです。なぜ、そうなのかといえば、外交でも国内政治でも、安倍政権の政策は現在の情勢に適合したものだったからであり、わざわざそれを変える必要がなかったからと考えられます。
岸田政権が現状の世界、国内情勢に適合するための一番の早道は、安倍政権の政策の継承であると考えられます。まさに、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、政策回帰が求められているのです。
岸田首相は、新しい資本主義など新しい政策もあげていますが、それを貫くには、三木武夫のように次々と権謀術数を繰り出すことが必要になると思います。そのようなことが、岸田首相にできれば、それこそ大化けするかもしれません。
ただ、これができないというのなら、やはり安倍政権の頃の政策への回帰すべきです。そうすば、政権を安定させるとともに、保守岩盤層の支持を取り戻すことになります。
そうであれば、保守岩盤層も、茂木、河野太郎、林のいずれかが総理になるくらいであれば、岸田政権継続ということで納得することでしょう。
茂木、河野、林が総理大臣になれば、保守岩盤層は蜘蛛の子を散らすように自民党から離れていき、それこそ、自民党は再び下野ということになりかねません。
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