2020年2月29日土曜日

台湾の新型コロナ対策が「善戦」しているワケ―【私の論評】日本の国会は、台湾の立法府を見習え(゚д゚)!


早川友久 (李登輝 元台湾総統 秘書)

新型コロナへの対応を高く評価され、支持率が急上昇している台湾の蔡英文総統。その政策を支える土台にあるものとは――?

蔡英文総統

 李登輝が台湾社会に大きく貢献したもののひとつに、全民健康保険制度がある。1995年にスタートした「全民健康保険」は、全国民はもちろん、居留証(外国人登録証に相当)を持つ外国人も加入が義務付けられる。それまでの台湾では、軍人や公務員、教師だけが社会保険制度を享受してきたが、その制度から漏れていた約4割の国民にも安心して医療を受けられる国民皆保険の環境を整備したのである。

 それと同時に、健康保険カードも導入した。このカードはのちにICチップが内蔵され、様々な情報を収められるようになった。氏名や生年月日などの個人情報のほか、いつ、どこの病院で診療を受けたのか、処方箋や薬物アレルギー、過去の予防接種記録、女性の場合は妊娠や出産に関する記録なども収められている。

マスクの「買い占め」を防止

 目下、日本も台湾もコロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大防止に躍起になっている。台湾は2003年にSARSを経験したこともあり、政府がとった動きは迅速かつ厳格だった。中国の感染拡大が報じられると、中国人の団体旅行客の入国を拒否したことを手始めに、矢継ぎ早に入国制限(現在は、中国籍の人間は一律入国拒否)した。

 また、折悪しく旧正月とぶつかったため、マスク工場が稼働しておらず、マスク不足のパニックかと思われたが、政府は即座に備蓄を放出すると発表。その後、買い占めや転売を防ぐため、台湾国内で製造されたマスクはすべて政府が買い取ったうえで「記名制」によるマスク販売を行った。

 この「記名制」で活用されたのが健康保険カードである。政府は身分証(外国人の場合は居留証)の末尾によって購入できる曜日を指定し、購入間隔を7日以上空けなければならないと定めた。薬局には必ず処方箋を処理するための健康保険カード読み取り機が設置されているため、ICチップに購入履歴が残る。一人が代理購入できるのは他の一人分までと決まっており、イカサマがやりにくい、公平性のある制度になっている。

 現在ではマスクの増産も順調で、来週あたりから購入できる枚数が増えるものと報じられている。台湾でマスク不足が叫ばれていた旧正月前は、日本から大量にマスクを持ち込む人の姿がニュースで流れたが、もう少し経てば、今度は台湾から日本へマスクが売られていく事態になるかもしれない。

感染拡大地域への「渡航歴」も登録

 また、2月21日には、感染拡大地域として指定されている日本や韓国などへの渡航歴を健康保険カードに登録すると発表された。仮に体調を崩して診察を受けた際、医師がその場で患者の渡航歴を確認できるようにするものだ。こうした取り組みは「性善説」でなく「性悪説」に立つものだ。患者のなかには、自宅隔離を嫌うなどして虚偽の申告をする場合もあるという。こうした「悪意」を出来うるかぎり排除して、徹底的に防疫しようという台湾政府の真剣さがうかがえる。一方、日本政府は中国から日本に入国する旅客に、(感染発生源とされる)湖北省への滞在の有無を自己申告させているという。国家の非常事態に、あまりにもお人よし過ぎるのではないか。

台湾と中国の「決定的な違い」

 中国は今回のコロナウイルス騒動で、東アジアどころか、全世界をパニックに陥れた。感染はむしろますます拡大している。それでもなお、中国は台湾がWHOに参加することを「『一つの中国』の原則のもとで許可」と発言した。SARSのときと同様、人命や健康よりも、イデオロギーを優先する国家なのだ。

 李登輝は2018年に訪れた沖縄での講演で次のように語った。

「中国の覇権主義に直面する台湾は、自主的な思想を持たなければならない。自分たちの道を歩む必要があるのだ。(中略)民主改革を成し遂げ、民主国家となった台湾は、もはや民族国家へと後戻りするべきではない。私たちは、幻の大中華思想から、脱却しなければならないのだ。台湾の国民が持つ共通の意識は『民主主義』であって『民族主義』ではないのだ」

 中国は「一つの民族に二つの国家はいらない」と明言している。中華民族には、中国はひとつだけ(中華人民共和国だけ)存在すればよく、中華民国は存在しない、という論法だ。李登輝は「民族主義」に走るべきではないと主張するが、個人的には、台湾が中国のいう「一つの中華民族」に入らない、別の「台湾民族」を打ち立てるべきではないかと考える。

 例えば、コロナウイルスの感染拡大の問題が報じられた当初から台湾政府の行動は素早かった。今のところ、台湾社会は冷静を保ち、感染者数も抑えられているようにみえる。ネット上では「我OK、你先領」というスローガンが踊った。「私たちは大丈夫だから、マスクが必要なところに優先して届けて」という意味である。

 政府が情報を公開し、国民の安全健康第一を掲げるとともに、国民も公徳心を発揮して行動する姿は、中国のそれと対をなすものである。これがまさに「台湾民族」を「中華民族」と決定的に異ならせる価値観になるだろう。台湾と中国の決定的な差を国際社会に示しつつ、やはり台湾が誇るべき最大の価値観は、李登輝が打ち立てた「民主主義」ではなかろうか。


早川友久(李登輝 元台湾総統 秘書)
1977年栃木県足利市生まれで現在、台湾台北市在住。早稲田大学人間科学部卒業。大学卒業後は、金美齢事務所の秘書として活動。その後、台湾大学法律系(法学部)へ留学。台湾大学在学中に3度の李登輝訪日団スタッフを務めるなどして、メディア対応や撮影スタッフとして、李登輝チームの一員として活動。2012年より李登輝より指名を受け、李登輝総統事務所の秘書として働く。

【私の論評】日本の国会は、台湾の立法府を見習え(゚д゚)!

確かに今回の台湾政府の対応は、打てば響くような速さでした。衛生福利省の疾病管制署(CDC、疾病対策センター)は、1月15日に早くも同肺炎を法定伝染病に指定。20日にはCDCに専門の指揮所を開設しました。1月26日には中国本土観光客の台湾入りを躊躇なく禁止。2月6日には中国人全員の入国を禁止したほか、中国から戻った台湾人には、14日間の自宅待機を求めました。なお、CDCは米国にもありますが、日本にはないことも台湾で不思議がられています。

台湾・基隆に1月31日に寄港した国際クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から同肺炎の患者が出たことが2月1日に分かると、6日には国際クルーズ船の寄港を一切禁じました。8日夜には、台北などの住民約700万人の携帯端末に警報のショートメッセージを一斉発信。乗客約2700人の全遊覧先51カ所を赤丸で示した地図をつけ、乗客と接触した台湾人に、14日間の自己観察を求めました。

なお、陳時中・衛生福利相が毎日、出動服姿で記者会見を続けていることは、国民に安心感を与えています。台湾民意基金会が2月24日に発表した世論調査結果だと、蔡英文政権の感染対策を信頼する台湾人は85.6%に上っています。

陳時中・衛生福利相
ただし、運の良さもあります。今年1月の台湾総統選で蔡英文総統が圧勝し、中国当局が嫌がらせのため、中国人の台湾観光旅行を規制していました。この見方は、反政権側の国民もしぶしぶ認めています。国民党の対立候補、韓国瑜氏は観光を含む中国との交流強化を訴えていました。ある市民は「韓氏が当選して、中国の観光客が押し寄せていたら、今ごろどうなっていたか」と話しています。

それにしても、今回の打てば響くような台湾の反応は、今回の新型肺炎の直前にもみられらました。それについては、このブログにも掲載しています。当該記事のリンクを以下に掲載します。
台湾・蔡総統「一国二制度は信用破産」 新年談話で中国の圧力牽制―【私の論評】日本こそ、台湾のように『中国反浸透防止法』を成立させるべき(゚д゚)!
12月月31日、台北市内の立法院で、「反浸透法案」に反対し、本会議場で座り込む国民党の立法委員ら
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 台湾の蔡英文総統は1日午前、台北の総統府で新年の談話を発表し、「(台湾の)主権を守り民主主義と自由を守ることが総統として堅持すべき立場だ」と述べ、中国の圧力に屈しない姿勢を改めて強調した。
    台湾の立法院(国会に相当)は12月31日の本会議で、中国を念頭に域外からの選挙運動などへの介入を禁止する「反浸透法案」を採決し、法案を提出した与党・民主進歩党の賛成多数で可決した。10日以内に蔡英文(さい・えいぶん)総統の署名を経て成立する。野党・中国国民党は、来月11日の総統選直前の立法は「100%選挙目的だ」と反発しています。
要するに、12月31日台湾立法院本会議で「反浸透法案」を採決、可決し、1月1日にはこの法律に関する内容も含めた、 蔡英文総裁による、新年の談話を発表したということです。

野党が反対しようがしまいが、とにかく必要とあらば、大晦日でも立法院で審議し、そうそうに法律を成立させ、元旦にはもう、それを発表するという超スビードぶりです。

日本の国会と、台湾の立法院を単純に比較するわけにはいかないと思いますが、いずれにしても、蔡英文総裁の並々ならぬ決意がみられます。

日本の国会といえば、野党は28日に衆院を通過した2020年度予算案について「新型コロナウイルス関連の予算が全く入っていない。考えられない」(立憲民主党の安住淳国対委員長)と一斉に批判しました。3月2日に始まる参院予算委員会の審議では、初動態勢の在り方などを厳しく追及する方針だそうです。

安住氏は感染拡大に関し「安倍晋三首相がリーダーシップを取り、初期の段階から対応していれば後手後手に回ることはなかった」と酷評。国民民主党の玉木雄一郎代表は、野党が共同提出した予算案の組み替え動議が否決されたことに触れ「われわれの反対を一顧だにせず、数の力で成立させた」と指摘しました。

しかし、新型コロナウィルス対策には、新年度予算に計上されている予備費当面あてることにし、後から補正予算組めば良いことです。すでに組まれた2020年度予算は、すぐにでも実行しなければ、国政等に支障が出てしまいます。

このようなことは、予算に関する知識がある人なら、誰にでもわかることであり、野党の批判は、全くの筋違いです。野党は、コロナウィルスの撲滅よりも、これを政治問題にすることを企図しているとしか思えません。

それに、国会のはじめには、コロナウイルス関連ではなく、桜問題の追求をすると宣言していました。これでは、全く説得力がありません。野党としては、国会当初にはコロナウイルスよりも、桜問題のほうが重要だとしていたのですから、私はあの時点で全く呆れ返っていました。以下に、コレに関するフィフィさんと、世耕大臣のツイートを掲載しておきます。



野党は、長期間にわたる審議拒否を繰り替えたことでも、すっかり国民から信用を失っていることに気づかないのでしょう。台湾の野党は「反浸透法案」に大反対していましたが、さすがに審議拒否など思いもつかないことでしょう。

安倍政権も長期にわたったので、政権内にも足を引っ張る勢力が多くなったようですし、特に財務省とその走狗は安倍政権の邪魔ばかりしています。また、財界の親中・媚中派の蠢きが大きくなってきたようです。安倍政権としては、これらの勢力を弱体化させないとますます身動きがとれなくなるでしょう。

これらを弱体化させるには、まずは、目前のコロナウィルスの終息宣言をなるべく早くだせるようにし、大規模な減税なども含む十分な経済対策を行い、国民に安心感を与えたうえで、衆参両院同時選挙に打ってでるしかないでしょう。

日本の国会も台湾の立法府を見習ってほしいものです。

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2020年2月28日金曜日

北海道知事 道民に「緊急事態宣言」 外出控えるよう呼びかけ―【私の論評】デマにまどわされず、不要不急の外出は避け、うがい、手洗い等を励行しよう(゚д゚)!

北海道知事 道民に「緊急事態宣言」 外出控えるよう呼びかけ

北海道の鈴木知事は28日夕方、新型コロナウイルスの感染が道内で広がっているとして、28日から3週間の間、「緊急事態宣言」を出し、道民に向けて、特にこの週末の外出を控えるよう呼びかけました。



道は午後5時半から新型コロナウイルスに関する対策会議を開き、新型コロナウイルスの道内での感染拡大は深刻さを増しているとして「緊急事態宣言」を出しました。

期間は28日から3月19日までの3週間で、特にこの週末は道民に外出を控えるよう呼びかけました。

緊急事態宣言の内容

鈴木知事の名前で公表された緊急事態宣言は、次のような内容になっています。

「新型コロナウイルスの感染を防ぐため、オール北海道で取り組んできましたが、状況はより深刻さを増しています。早期の終息、そして皆さんご自身と大切な人の命と健康を守るため、お願いしたいことがあります。感染の拡大防止のため、この週末は、外出を控えてください。皆様のご理解とご協力を、よろしくお願いします」としています。


知事「まさに今が山場 この週末外出控えて」

鈴木知事は新型コロナウイルスに関する対策本部の会合で「北海道では現在までに63件の感染者が確認されており、感染拡大のスピードを抑える対策が必要になっている。まさに今が山場であり、1日も早く終息させる必要がある」と述べました。

また、「飲食店やスポーツジムなどでの接触の可能性が出てきいるので、週末については基本的には外出を控えてもらいたい」、「子どもたちには外出を控えてもらっており、大人も同じようにすることで、道民一丸となってこの週末、取り組みを進めていきたい。極めて深刻な状況であると認識し、行動してもらうようご協力をお願いしたい」と述べました。

知事「地域間での感染拡大のおそれ」

鈴木知事は対策本部の会合の後、臨時の記者会見を開き、北海道内の住民にこの週末の外出を控えるよう呼びかける「緊急事態宣言」を出したことを改めて説明しました。

そのうえで「きのう、集団感染の疑いがある6人が北見市で開催された展示会に参加していたことが判明し、札幌市からの参加者も確認されている。地域間での感染拡大のおそれが出てきている」と述べました。

また「緊急事態宣言を出したことを受けて、安倍総理大臣に日本で感染者が最も多い北海道の実情を直接伝える緊急の要望をしたい」と述べました。

さらに「北海道は全国で最も感染者が多く、今後は感染拡大防止のモデルを作り、国と一緒になって取り組んでいく」と述べました。

知事「観光客も行程変更を」

また道内を訪れる観光客に対しては「人がたくさんいる場所について行程を変更するなど、適切に判断してもらいたい」と述べました。

そのうえで「北海道は世界からすばらしいところだと認識され、観光客も多い。だからこそ早く終息させたい。あらゆる資源を投入し、全力で感染拡大の防止に取り組まなければならない」と述べました。

主な交通機関は通常どおり運行の見通し

北海道の主な交通機関は今のところ通常どおり運行される見通しです。

このうちJR北海道は「列車はビジネスなど様々な理由で利用する人がいて外出せざるを得ない人もいる。公共交通機関として列車を間引き運転するなどの対応は今のところ考えていない」として、週末も通常どおりのダイヤで運転する予定だとしています。

また全日空と日本航空も、週末に北海道を発着する便について、今のところ通常どおり運航する予定だということです。

4人感染確認の旭川市では…

旭川市では28日までに飲食店の経営者や保育士など4人が新型コロナウイルスに感染しているのが確認されています。

鈴木知事が「緊急事態宣言」を出したことについてJR旭川駅前を歩いていた、60代のアルバイト従業員の女性は「感染が広がっているので、緊急事態宣言を出すことはいいと思う。ただ、宣言を出すだけでなく、しっかりサポートもしてほしい」と話していました。

小売店 営業時間短縮の動きも

北海道の小売り各社の中には営業時間を短縮する動きがある一方で、通常どおり営業するところもあります。

このうち札幌市中央区のデパート「さっぽろ東急百貨店」は3月1日から18日までの間、開店を朝10時半と30分遅くするほか、閉店も午後7時半と30分早める方針です。

一方、「イオン北海道」は「道民の食生活を支える」として、週末は通常どおり営業する予定だとしています。

専門家「一定の効果 外出は必要最小限に」

感染症の予防対策に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫 特任教授は「今は非常に大事な時期なので、娯楽などで人の動きが活発になる週末に外出を控えることは、感染を抑制する観点から一定の効果があると考えられる。買い物や薬の補充などやむにやまれぬ理由で外出しなければならない場合は、外に出る人を1人に絞り、短時間ですますなど外出の機会、時間を必要最小限にしてほしい」と話しています。

【私の論評】デマにまどわされず、不要不急の外出は避け、うがい、手洗い等を励行しよう(゚д゚)!

私が現在住んでいるのは、札幌市です。北海道の感染状況は深刻です。愛別町で感染者が出たのは、私自身もショックでした。あの町、随分前に訪れたことがありますが、本当にのどかな田舎なのに、「なぜ?」と思ってしまいました。

あの町で感染者がでたのですから、いつどこで感染してもおかしくない状況だと思いました。この状況をみて、私は、行動を変えました。それまでは、外出時にマスクはしていたのですが、それ以外に医療用のゴーグルをつけるようにしました。

マスクに関しては、新型コロナウイルスが流行る前から、冬には外出時にいつもしていました。特に冬は、うがい、手洗いも励行していたので、そのおかげでしょうか20年近く風邪やインフルエンザにかかったことはありません。

少し前に、町内会の集まりがあるとされていて、それは明日土曜日に予定されていましたが、町内会長に中止を具申しました。これを中止しの運びとりました。

2月19日、北海道では道内3番目の感染者となる40代男性(Dさん)が「市中感染の疑いが高い」と発表されました。いつどこで感染したか把握できない状況を、「市中感染」と呼びます。

北海道と札幌市は28日、10歳未満の男児を含む計12人が新たに新型コロナウイルスに感染していたと発表しました。北海道で感染が確認されたのは66人となりましたた。(2月28日現在)。

このうち6人は、オホーツク海側の北見市で、今月中旬、生活関連用品の展示会に参加していました。6人のうち3人は食事をともにしていたとされています。北海道は感染者の集団「クラスター」が発生したものとみています。

生活関連用品の展示会があった「北見綜合卸センター」

釧路、旭川、苫小牧、そして札幌。ただでさえ広い道内で、まったく接点の見出せない感染者が増加しており、『調べようがない』と、北海道庁は頭を抱えています。ただ、札幌の『雪まつり』で、北海道内外に感染が広がったのは事実です。

1月31日から2月11日まで開催されていた雪まつりには、大勢の中国人が来ていました。湖北省の団体旅行客も入国していたことがわかり、このなかに感染者がいた可能性は否定できません。(札幌市役所関係者)

2月21日、中富良野町に住む小学生兄弟の感染が確認されました。北海道庁の聞き取り調査によると、二人は父母とともに会期後半の雪まつりを訪れていたといいます。

市中感染が疑われるDさんは、大手広告代理店の系列会社に勤め、雪まつり期間中は本部ブースにも詰めていました。

このブースで接触していたと見られる人は約130人。とはいえ、不特定多数が集まる会場ですので、全員と連絡が取れるかはわかりません。

雪まつりを訪れた道外の感染者も増えてきて、いくら調べてもキリがないです。実は、調査自体も徐々に難しくなってきています。

行動履歴を詳細に教えてくれない濃厚接触者がいますし、雪まつりの実行委員会もマイナスイメージになることを恐れています。

それでも、北海道内で本格的な流行を避けるためには調べ続けるしかないのです。

北海道の感染率が高いのは、北海道の特殊事情によるところが大きいとみられてます。観光庁の2018年調査によると、中国人旅行者の道内での宿泊者数は1~2月、延べ約60万人で、首位の東京都(約70万人)に肉薄しています。今年1~2月に開かれ、202万人が訪れた「さっぽろ雪まつり」では、スタッフ2人が感染したほか、道内外の複数の感染者が発症前に訪れたとされています。

会場は屋外のため感染リスクは高くないはずですが、札幌医大の横田伸一教授(微生物学)は「ホテルやレストラン、観光施設で感染が広がった可能性は否定できない」と語っています。寒さの厳しい北海道では、建物の気密性が高く、地下道が張り巡らされていることが感染リスクを高めたとの指摘もあります。

政府の専門家会議のメンバーで東北大の押谷仁教授は「当初は中国人中心だったが、現在は日本人の間で『クラスター』と呼ばれる患者の集団発生が複数起きていると考えられる。感染拡大を食い止めるには疫学調査を徹底し、クラスターを封じ込めるしかない」と話しています。

さて、今週週末は北海道の方々は、不要不急の外出はやめるべきです。北海道以外の方々もそうすべきだと思います。

それと、もう一つ気をつけなければならないのはデマです。石狩管内の50代女性は2月下旬、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で複数の知人から、ほぼ同じ内容のメッセージが届いたそうです。

文面は、中国湖北省武漢市で活動した医療関係者の情報とした上で「武漢ウイルスは耐熱性がなく、26―27度の温度で死にます。そのため、お湯をたくさん飲む、お湯を飲ませれば予防できる」などと書かれていました。

北大人獣共通感染症リサーチセンターの高田礼人(あやと)教授(ウイルス学)は「全く根拠がありません。人間の体温は通常、36度前後。仮にウイルスが27度で死滅するなら、症状が出ることはありません。お湯を飲んだとしてもウイルスは鼻の奥や肺でも増えるため、意味はありません」と否定しました。


LINEの文面には「冷たい水、特に氷水を飲まないでください」との呼び掛けもありました。高田教授は「冷たい飲み物が体温を下げてしまうことはありますが、飲むことでウイルスが増えることはありません」と説明。その上で、「喉には体内に入ったウイルスを押し出す機能があり、乾燥するとその機能が弱まります。風邪などの一般的な感染症と同じく、喉を潤したり室内の適度な湿度を保つことは一定の予防効果があります」と助言しました。

この類のデマはこれからも出回る可能性もあります。テレビなどでも、煽り報道もあります。このようなデマや煽りに惑わされることなく、手洗い、マスク、うがいなどを励行して、感染を防ぎましょう。

終息宣言が出るその時まで、ウイルスとの闘いは終わりません。

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2020年2月27日木曜日

まだ新型肺炎の真実を隠す中国、このままでは14億人の貧困層を抱える大きいだけの国になる=鈴木傾城―【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!


 2月中旬の北京の地下鉄

中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』)

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プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。

最初から最後まで真実を隠し、今も規制を敷いている

新型コロナウイルスは中国でどのような状況になっているのか、誰も分からないと言っても過言ではない。

政府発表では2020年1月30日の段階で7,800人だったが、当時から現場は「10万人以上の患者がいる」と切実に訴えており、その乖離は壮絶なものがある(編注:2月24日現在、中国の保険当局によると感染者数は7万7,658人とされています)。

中国人ですらも中国共産党政権の発表など信じていない。中国共産党政権は、常に自分たちの都合に合わせて数字を歪曲し、情報隠蔽してしまう。中国では真実を言ったら公安当局に連行されてしまう。

日本でもアメリカでも政権に反対の人は堂々と反対運動を繰り広げて何事もなく日常生活を送っているのだが、中国では同じことをやったら無事に済まない。政権に不都合な人間は「みんな消される」のである。

新型コロナウイルスが封じ込められなかったのも、中国共産党政権は当初、情報を隠蔽していたからだ。いや、最初から最後まで真実を隠し、今もインターネットにも強い規制を敷いている。

情報を隠蔽する。都合の悪い真実はねじ曲げる。それが中国なのである。

中国の検索エンジンでは「絶対に検索できない言葉」もあって、たとえば「天安門事件」と検索しても何も引っ掛からない。それは中国政府は国民に知って欲しくない言葉だからだ。

そのため、今の若年層は天安門事件というものがあったことすらも知らない人もいる。

「何を知らないのか知らない」という状況になる

大陸に住む中国人は、中国政府が許可した情報だけアクセスできて、中国政府が隠したい情報は何も知らないままにされている。

「何を知らないのか知らない」という状況になるのだ。

都合の悪い情報はどんどん検閲されていく。この中国共産党政権の悪しき体質は新型コロナウイルスの蔓延で世界中が知ることになった。

中国はすべてにおいて、そうなのだ。中国では凄まじい大気汚染や環境破壊で癌で死んでいく人間が毎年数百万人レベルで出現している。しかし被害者は隠蔽されているだけで、今も依然として中国を覆い尽くしている。

中国共産党政権の都合の悪い事実は決して知らされない。消される。何も許されない。

次世代を作り出す技術革新は、その多くは自由な環境の中で生まれる。「あれは駄目、これは駄目、なぜ駄目なのか考えるな、政府に従え」という環境であれば、何も生み出せない。

政府が許可したものだけ、海外からパクリで持ってきてそれを運用するだけなので、すべてがワンテンポ遅れる。

そのパクリも、ハッキングやスパイ行為で情報を盗んで行われるので、情報が盗めなくなったら終わりだ。すべて盗んだものだから、そこから独創的な技術革新が生まれることもない。

そもそも下手に技術革新を進めていくと政府の都合の悪い領域に達する可能性もあるので何もできない。これが今の中国の現状なのである。

こうした情報統制や隠蔽体質は、通常の民主主義社会であれば、やがて薄まっていくのだが、中国は共産党の一党独裁なので逆にどんどん強まっている。

報道の自由などまったくない。北朝鮮と大差がない。

なぜ、中国政府は情報統制に走っているのか?

報道の自由と言えば、日本の報道の自由度も低いが、それもそうだろう。

日本では朝日新聞や毎日新聞などが捏造に歪曲に印象操作を行い、中国・韓国・北朝鮮の反日もまったく報道せず、誰が日本で売国スパイをしているのかすらも報道しないような体質なのだ。これで報道の自由が上がるわけがない。

しかし、中国の情報隠蔽というのは、もはやそんなレベルではなく、言論封殺と言っても良い状況だ。

中国では「国家安全法」で、中国にとって都合の悪い外国人もテロリストと決めつけたり、中国に不利な情報を報じる外国人ジャーナリストを国外追放したりしている。

それに飽き足らず、「反テロ法案」というものもあって、中国政府が「お前はテロリスト」と決めれば、その人物はテロリストになる。

たとえば、中国政府は海外から支援を受けたNGO団体の活動家を中国から追い出しているが、その根拠として「国家安全法」や「反テロ法」を持ち出している。

さらに習近平政権は「海外NGO管理法」を制定させて、中国のすべての人権向上のための活動を事実上、完全閉鎖に追いやった。

なぜ、これほどまで中国政府は情報統制に走っているのか。

言うまでもない。中国政府はもう政権運営に行き詰まっており、アメリカのドナルド・トランプとも対立して政治的にも経済的にもボロボロになっているからだ。

しかし、汚職・環境破壊・格差・経済不振を何としてでも隠し通して、中国共産党の一党独裁を維持し続けたいと思っている。

中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない

中国共産党では中国の未来はない。しかし、中国はこの共産党の一党独裁なので、政権交代ができない。共産党が駄目になったときの受け皿がない。つまり、中国共産党が終わるときが中国の終わるときだ。

中国は格差問題が解消できないどころかますます広範囲に広がっている。こうしたことから、中国の内陸部では頻繁に暴動が起きている。

しかし、中国は弾圧国家であり、こうした暴動も警察や軍隊の激しい暴力で鎮圧させている。この暴動が抑えきれなくなれば、中国は崩壊するが、もし北朝鮮のように弾圧が延々と続くとしたらどうなるのか。

中国は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくということになる。そうであった場合、中国という国は先進国に向かうのではなく、中進国から貧困国へと向かっていく。

14億人の貧困層を抱えるただの図体だけが大きな貧困国になってしまうのだ。

中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。

中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。

中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になって崩壊してしまうので、絶対に民主化も自由も認めない。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、徐々に途上国へと戻っていくだけだ。

今のまま推移するのであれば、中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない。多くの日本人は漠然と中国が豊かになっていく想像ばかりしているが、実はその逆の動きもあることを知るべきだ。

【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!

中国経済は、新型コロナウィルスが蔓延する前から、成長の限界に直面していました。投資効率の低下、個人消費の伸び悩みに加え、輸出を増加させることも難しい状況でした。
米中貿易戦争の影響に加え、効率性が低下する中で投資が累積され、中国の生産能力は過剰になっていました。このブログでも何度か指摘してきたとおり、中国は貯蓄過剰となり、そのため世界経済全体で需要が低迷するという状況になっていました。
あらゆる商品・製品の需要に陰りが出始めたことに加え、そもそも、中国の最大の輸出相手である、米国経済が成長し続けることも難しい状況です。その上、中国では生産年齢人口が減少しています。労働力の減少は、中国では潜在成長率の下振れ要因ともなります。
常識的に考えると、この状況を打破するためには、中国政府は構造改革を進めなければならないはずです。急務なのが、不良債権の処理です。1990年代初頭の資産バブルが崩壊した後のわが国のケースを見ても、不良債権処理は経済の安定に欠かせません。
中国の4大国有銀行は、2016年1-6月期に合計1303億元(約2兆円)の不良債権を処理したが・・・

中国政府もその重要性はわかってはいるようです。同時に、国内の不満を抑えるために目先は投資を増やさざるを得ません。しかし、成長期待(期待収益率)が低下する中で中国政府が公共投資などを増やすことは、不良債権の増大につながるだけです。
中国では、不良債権問題という“灰色のサイ”が、どんどん大きくなっています。灰色のサイとは、発生確率は高いが、対応があまりに難しく見ているしかないリスクのことです。
昨年の、社会融資総量を見ると、シャドーバンキングの代表形態とされる信託貸出(ファンド経由の貸付)、銀行引受手形が急増しました。特に、信託貸出の増加は見逃せないです。
公の統計がないので推論によらざるを得ないですが、中国人民銀行による金融緩和や財政政策を通して供給された資金が行き場を失い、利ザヤを稼ぐためにシャドーバンキングに流れ込んでいた可能性があります。
中国経済の今後の展開を考えると、短期的には、インフラ投資や減税などから景気が幾分か持ち直すことはあるかもしれません。
しかし、長期的に中国経済は一段と厳しい状況を迎えることになるでしょう。リーマンショック後の経済が投資頼みで推移してきただけに、中国経済は成長目標に合わせて投資を積み増さざるを得ないです。その結果、中国の債務問題は深刻化し、灰色のサイは一段と大きくなるでしょう。
中国の「灰色のサイ問題」はかなり深刻だった

以上が、新型コロナウィルスが蔓延する、前までの中国経済の実体です。


多くのエコノミストが、この状況をみて、世界の工場として成長率を高め、投資によって成長を維持しようとしてきた中国が、“中進国の罠”を回避できるか否かに、関心を高めていました。
このブログでも何度が述べていたように、今後中国が中進国の罠に陥ることを回避するのは難しいでしょう。

中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。

中国経済が中進国の罠を回避するには、個人の消費を増やさなければならないです。中国政府の本音は、リーマンショック後、一定期間の成長を投資によって支え、その間に個人消費の厚みを増すことでした。

しかし、リーマンマンショック後、中国の個人消費の伸び率の趨勢は低下しいています。リーマンショック後、中国GDPに占める個人消費の割合は30%台半ばから後半で推移しています。日本は、60%台です。米国に至っては、70%台です。

中国政府は個人消費を増やすために、自動車購入の補助金や減税の実施をしましたが、結局のところ、その目論見は失敗しました。中国商務省は昨年12月29、30の両日、2019年の商務行政を総括して20年の方針を決定する「工作会議」を北京市で開き、低迷する自動市場へのてこ入れを図っていくことなどを確認しました。

しかし、このような試みはことごとく、うまくいかないようです。これは、中国政府は国営企業の成長力を高めることを目指しているからです。市場原理に基づく効率的な資源配分よりも、中国では共産党政権の権能に基づいた経済運営が進んでいます。

それは、国有企業に富が集中し、民間部門との経済格差の拡大につながる恐れがあります。それは、民間企業のイノベーション力を抑圧・低下させることにもなりかねない。

歴史を振り返ると、権力に基づいた資源配分が持続的な成長を実現することは難しいです。習近平国家主席の権力基盤の強化が重視される中、中国が1人当たりGDPを増やし、多くの国民が豊かさを実感できる環境を目指すことは、かなり難しいです。

本当は、この問題を解決するには、このブログでは、定番のように述べていますが、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けられないのです。

これらによって、かつての先進国が歩んできたように、中国も多くの中間層を生み出し、これら中間層が自由に社会経済活動を行えるようにするしか、経済を発展させる道はありません。

そのためには、この記事の冒頭の記事のように、情報の自由化は必須ですが、中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になり、統治の正当性を失い、崩壊してしまうので、絶対に認めません。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、中進国の罠にはまりこみ、そこから先は、徐々に途上国へと戻っていくだけなのです。

最近の新型コロナウイルスは無論、中国経済に悪影響を及ぼします。しかし、過去の歴史などをみると、戦争や大災害、疫病により経済がかなり低迷した国々においても、その災害や疫病が終息すると、復興など過程において、災害や疫病などが発生する前よりもはるかに大きな消費活動が生まれ、比較的短期間で経済は元通りになるのが通例です。

今回の新型コロナウイルスが終息した直後には、中国でも比較的はやく経済が復興するかもしれませんが、それは新型コロナウィルスの蔓延の前の状態にもどるというだけで、諸問題は何も解決しておらず、そこから先はしばらく横ばいか下がっていくことになります。

新型コロナウィルスが蔓延直前の中国が、これを隠蔽せずに、世界に向かって情報公開し、世界の力も借りて迅速にこれに立ち向かっていたとしたら、中国はかつて米国などが信じていたように、豊かになり発展する可能性もあるという見方になったかもしれませんが、そうではありませんでした。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

ここ数年で、中国は中進国の罠から抜け出ることはできず、その後は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくことになるでしょう。その果てにあるのは、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家です。

しかし、このアジアの凡庸な独裁国家は、軍事的には北朝鮮よりははるかに強大です。先進国のような過程を経て富を生み出すことのできない中国は、やがて八方塞がりとなり、それを解消するために、かつて中国が、東トルキスタンやチベットへ侵略したように、周辺国への侵略を開始するかもしれません。

あるいは、直接侵略しなくても、「一帯一路」などで、経済的に侵略して、周辺国の富を簒奪しようと試みるかもしれません。

そのようなことは、絶対に許すことはできません。我が国をはじめ、周辺諸国は、これから先中国が経済的に弱っても、安全保障面では油断すべきではありません。

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2020年2月26日水曜日

日本の好機とすべきブレグジット―【私の論評】日本にとって、安全保障でも21世紀型の製造業の模索でも頼りになるパートナーになり得る英国(゚д゚)!


岡崎研究所

 2月8日、訪日中のラーブ英外相と茂木外相との間で、第8回日英外相戦略対話が行われた。会談では、英国のEU離脱後も引き続き、日英が価値を共有するパートナーとしてグローバルなリーダーシップやインド太平洋へのコミットメントで協力を進めていくことが確認された。今回の協議を踏まえて発出された共同プレスステートメントの第1パラグラフは、次のように言っている。


 「日本と英国は最も緊密な友人であり、パートナーである。本日、我々は、気候変動に対処し、新しい技術の潜在能力を安全に活用し、地域の安全保障を維持し、持続可能で自立的な開発を促進し、自由貿易を強化し、ルールに基づく国際システム並びに民主主義及び人権を擁護することを含め、グローバルなリーダーシップを発揮すべく共に取り組むことへのコミットメントを再確認した。我々は、自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントについて協議するとともに、善を促進する力としてのグローバルな英国という英国のビジョンについて議論を行った」

 EUを離脱した英国にとり、経済連携は最優先課題である。日本にとっても、英国との経済関係を、英国がEUに加盟していた時と同様に維持することが利益になる。「日EU経済連携協定(EPA)を日英間の将来の経済的パートナーシップの基礎として用いるとの過去のコミットメントを再確認した。両国の自由貿易に対するコミットメントに沿って、我々は、新たなパートナーシップを日EU・EPAと同様に野心的で、高い水準で、互恵的なものとするために速やかに取り組む」と共同プレスステートメントにある通り、スムーズに進むと見られる。

 経済の分野では、英国のTPP11への加盟問題もある。英国は既に2018年より、TPP11への加盟に関心を示している。英国がTPP11に加盟することの意義の一つは、TPP11の側から見ると、TPP11の世界のGDPに占める割合が、現行の13~14%から17%に拡大することである。これはTPP11の影響力拡大につながり得る。もう一つの大きな意義は、英国のインド太平洋へのコミットメントが格段に強化される点である。TPP11への加盟には他の加盟国の承認が必要なので、紆余曲折があるかもしれないが、いずれにせよ、日本としては2018年から一貫して英国の加盟を支持している。今回の共同プレスステートメントも「英国は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定への関心を改めて表明した。日本は英国の関心を歓迎するとともに、この文脈において英国を支援する旨再確認した」としている。なお、英国は、米国、ニュージーランド、豪州との貿易協定も求めている。

 英国のインド太平洋へのコミットメントは、経済分野以上に、安全保障の分野で大きな進展が見られる。日本や豪州との安全保障協力を強化し、フランスなどと「航行の自由作戦」を実施したりもしている。2018年以来、北東アジアに英海軍艦船6隻が派遣されているという。さらに、空母を太平洋に派遣する構想も持っているらしい。

 英国がインド太平洋における軍事的プレゼンスを高めているのは、海洋通商国家として、航行の自由という国際的ルールを守ることが死活的に重要であるからである。共同プレスステートメントには、「南シナ海及び東シナ海における状況について懸念を表明するとともに、現状を変更し、緊張を高めようとするあらゆる一方的な行動に対し強く反対した。我々はまた、南シナ海行動規範(COC)が1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に反映された国際法に整合し、航行の自由及び上空飛行の自由を確保し、かつ南シナ海を活用するステークホルダーの権利及び利益を害さないことの重要性を強調した」とある。

 もう一つの背景としては、この地域には英連邦の国々が多く存在するので、これらとのつながりを強化しておきたいとの英国の意図が考えられる。

 EUを離脱した英国は、グローバル・ブリテンを掲げるが、多くの困難に直面しよう。そうした中で、英国のインド太平洋へのコミットメントの強化は、日本が掲げるインド太平洋構想にとっても心強く、日英双方の利益になる。その進展ぶりから目が離せない。

【私の論評】日本にとって、安全保障でも21世紀型の製造業の模索でも頼りになるパートナーになり得る英国(゚д゚)!

ブレグジット以降に具体化される「グローバル・ブリテン」構想による英国の安全保障政策は、日本が戦後初めて国際社会共通の物差しを世界に浸透させるルールメイキングに成功した「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」とリンクすることで実効性を担保し、極めて大きな効果が期待できます。

FOIPは2012年の第2次安倍政権発足直後、首相名で発表された英文の論文「アジア民主主義防護のダイアモンド」構想が最初でした。中国の台頭に対抗することを念頭に置いて、インド、ASEAN、オーストラリア、アメリカ、それに英国、フランスまでが加わる日本発の安全保障構想です。


すでに米国はこの構想に基づいて、ハワイに本拠を多く太平洋軍の名称を「インド太平洋軍」と改称し、インド軍、自衛隊、オーストラリア軍などが加わる軍事訓練を重ねています。

これらのことから、ジョンソン首相は「第二次日英同盟」にしばしば言及しており、2018年10月には日本がUKUSA協定国(ファイブアイズとも呼称されている)で行われる多国間机上演習に招待され、防衛省から5名が参加しています。

このUKUSA協定はもともと第二次大戦中にドイツのエニグマ暗号を米英共同で解読したのが始まりで、戦後戦略上最も重要な秘密情報を共有するため、かつて異国の植民地であった国々が参加。参加国は英国の他アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5ヵ国。このことから「ファイブアイズ」とも呼ばれています。

いずれにしろ、高度な情報コミュニティであり、英語圏以外で演習に招待されることは極めてまれで、2016年のドイツ、フランスしかありません。これへの参加は安全保障とステータスの向上という観点から見ると、日本にとって魅力的であり、高度な安全保障システムに参加可能な日英同盟に近づくステップにもなりうるのです。

「グローバル・ブリテン」構想のもう一つの柱は、英国が経済的な自由を取り戻し、世界的な展開を推進することです。ブレグジット後はEU以外の国・地域との貿易関係の強化が急務となります。そのため、英国政府は2018年7月からアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアとのFTA(自由貿易協定)協議に加え、アメリカが抜けた後、日本が主導的にまとめ上げたTPP(環太平洋パートナーシップ)11への参加に前向きな姿勢を示しています。

英国の経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT紙)が2018年10月31日、アメリカが関税障壁を引き上げたり、中国との貿易戦争を続けている状況と対比し、TPP11の発効は自由貿易の類まれなる勝利だと評価。また、FT紙は10月8日付の記事で安倍晋三首相へのインタビューを掲載。安倍首相が英国のTPP11参加を「もろ手を挙げて歓迎」し、TPP11のさらなる拡大に意欲的なことを紹介。TPP11が「グローバル・ブリテン」の経済面での重要な位置づけとなることを表明しました。

FT紙は2018年10月8日付の記事で安倍晋三首相へのインタビューを掲載

英国としても世界で最も繁栄している環太平洋地域の経済活動に参加して、ブレグジット後の活路を見出そうとしていると思われます。ブレグジット後の英国にとって日本の存在価値は高いと言えますし、日本にとっても世界の安全保障と経済に深くコミットする道筋となることでさらなる飛躍のチャンスでもあるのです。
一方英国は、21世紀型の製造業を興すことで地盤沈下した地方経済を蘇らせて国内経済の〝南北問題〟を解消する一方、大学を中心に世界中から人材を吸い寄せて資本も集める挑戦を開始しました。それは、ティースバレー(ティーズ川の下流域を中心とした英国の北東に都市領域)とその周辺を、関税、付加価値税(VAT)のないフリーポート・フリーゾーンにする構想です。

石炭と鉄鉱石の産地が近いティーズバレーは、19世紀から製鉄で栄え、ピーク時には年間1000万トンの石炭と鉄鉱石を飲み込み、350万トンのスラブ(鋳塊)と鉄製品を吐き出しました。造船や化学も強く、1970年代前半まで工場労働者で賑わいました。旧工業地帯の人口は70万。今や見る影もなく工場は閉鎖し、周辺にはシャッター街が広がっています

このディーズバレー港とその周辺を関税、付加価値税(VAT)のないフリーポート・フリーゾーンにする構想が脚光を浴びています。外資を呼び込んで新しい産業を興し、EUだけでなく、北米・南米・アジア・オーストラリア・英連邦加盟国とティーズバレーを結ぶ壮大な構想です。 

「仕事なんか戻ってくるもんか」「私たちゃあ生きてるんじゃない。ただ存在しているだけさ」と地元住民でさえ吐き捨てる街を蘇らせるためにティーズバレー市長ハウチェン氏がジョンソン首相に掛け合い、マニフェスト(政権公約)にも採用された秘策があります。

今後3年のうちに自由貿易協定(FTA)で貿易額全体の80%をカバーする戦略を掲げるジョンソン政権の切り札と言えるかもしれないです。フリーポートは一言で説明すれば国内に〝オフショアの産業特区〟を設けるアイデアです。

港のティーズポートには18・2平方キロメートルの遊休地があり、フリーポートに指定された暁には今後25年で52億ポンド(約7400億円)の投資が見込めます。地域の失業率は7・2%(英国全体は3・8%)ですが、サプライチェーンも含め3万2000人の雇用を創出、経済効果は20億ポンド、税収増は10億ポンドとハウチェン市長は算盤)を弾いています。

英財務省の首席政務次官を務める保守党のリシ・スナック下院議員(2月13日の内閣改造で財務相に抜擢)の報告書によれば、フリーポートやフリーゾーンは世界135カ国3500カ所に広がり、6600万人の雇用を創出。米国では250カ所のフリーゾーンが42万人の雇用と7500億ドルの商取引を生み出しています。

関税やVAT、規制から完全に自由なフリーポートとフリーゾーンを組み合わせたり、その中に工場や企業を誘致したり、世界のフリーポートには実に97もの異なるモデルがあります。

しかし、EU規制下で認められるフリーポートは短期間保管するだけの保税倉庫に毛が生えたようなもので、同一競争条件(レベル・プレーイング・フィールド)により国家補助金や税制、環境、労働条件に厳しいタガがはめられています。

このため12年を最後に英国からリバプールやサウサンプトンなどのフリーポートは完全に姿を消しました。ジョンソン首相が描くのは規制緩和や国家補助金を呼び水にフリーポートやフリーゾーンへ外資や21世紀型の製造業を呼び込む競争力ある産業特区です。

これまで議会で単独過半数を獲得し、EUから離脱するのがジョンソン首相の最優先課題でした。先の総選挙で保守党は「レッドウォール」と呼ばれる旧炭鉱・造船街などオールドレイバー(古い労働党)の支持を得ました。

「レッドウォール」を再活性化させるため、フリーポート構想に加え全国一律の法定生活賃金(労働者の生活を保障する賃金の下限)の引き上げを行い、国内経済の〝南北問題〟を是正しながら、EUに縛られずに世界と繋(つな)がるグローバル・ブリテンを目指す試練が始まりました。

英国の起業家ネットワーク、テク・ネーションの調査では、19年に企業価値が10億ドルを超えるスタートアップ企業である「ユニコーン」を8社も生み出した英国のデジタルテクノロジーへの投資は、前年に比べ31億ポンド増えて過去最高の101億ポンド(約1兆4400億円)を記録しました。ドイツの54億ポンド、フランスの34億ポンドを合わせた額より多く、欧州全体の3分の1を占めています。


ベンチャーキャピタル投資は前年比44%増。成長率で見た場合、ドイツ41%増、フランス37%増、イスラエル22%増、米国20%減、中国65%減を上回り、世界首位に立ちます。英国のユニコーンは計77社になり、ドイツの34社を圧倒しています。

英国にはオックスフォード大学やケンブリッジ大学など世界トップ100に入る大学が11校もあり、テクノロジーの拠点は全国に広がっています。EU市民は英国離脱によって自由に行き来できなくなりますが、米国や中国に比べるとはるかに就労ビザが取得しやすいという強みがあります。

EUとの通商交渉の行方はまだ分かりません。しかし21世紀型の製造業を興すことで地盤沈下した地方経済を蘇らせて国内経済の〝南北問題〟を解消する一方、大学を中心に世界中から人材を吸い寄せて資本も集める英国の挑戦がこれから始まろうとしています。

これから、大きなチャレンジをする英国は、日本にとって安全保障でも21世紀型の製造業の模索でも頼りになるパートナーになるのは間違いないようです。



2020年2月25日火曜日

「北京が“毒都”になった」 新型肺炎、中国の“心臓部”近くの大病院で集団発生か!? 市民「秩序も崩壊…共産党は“陥落目前”だ!」 ―【私の論評】習近平生殺与奪の権は日本にあり!習近平は日本に来るも地獄、来ないも地獄(゚д゚)!

「北京が“毒都”になった」 新型肺炎、中国の“心臓部”近くの大病院で集団発生か!? 市民「秩序も崩壊…共産党は“陥落目前”だ!」 

中国発「新型肺炎」

北京の人民大会堂で開催予定だった全人代が延期に

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、初動対応に失敗した中国の習近平政権への批判が噴出している。中国政府は24日、3月5日に北京で開幕予定だった全国人民代表大会(全人代=国会)の延期を決定した。日本政府も25日、「1~2週間が瀬戸際」として感染拡大阻止対策の基本方針を決定。中国の入国拒否対象も拡大する方針という。こうしたなか、習国家主席側がいまだに「国賓」訪日に意欲を見せているとの情報がある。人口の半数以上が「封鎖状態」というのに、正気なのか。ノンフィクション作家の河添恵子氏は緊急寄稿第5弾で、「首都・北京での感染拡大」や「人民解放軍の感染情報」「習主席訪日固執の背景」などに迫った。


中国全土は目下、「戒厳令なき戒厳体制」といっても過言ではない。

李克強首相(中国共産党序列2位)をトップとする、「アウトブレーク(集団感染)を防ぎ制御する領導小組(疫情防控領導小組)」が始動して以来、武装警察が“異様な静寂”に包まれた街に大量投入された。マスクをしていない人民を羽交い締めにして連行する様子などが、SNSにアップされている。



医師や看護師の死亡が次々と伝えられる新型コロナウイルスの発生地・湖北省武漢市の病院だけでなく、全国の医療機関は衛生当局ではなく、公安当局に管理されている。情報漏洩(ろうえい)を恐れているのだ。

一方、宣伝部と外交部は、習政権に「不都合ではない」情報だけを発信し続けている。

世界各国の専門家らによる「新型コロナウイルスは、武漢の病毒研究所から流出した可能性がある」「新型ウイルスは天然ではなく人工」との見解や推測については、外交部の報道官が「荒唐無稽で無知だ」「科学的根拠が全くない」などと真っ向から否定している。

習氏が1月20日に出した重要指示には、「迅速な情報開示の徹底」があった。中国政府の行動は正反対だが、皮肉にも、これに従って“模範的な行動”を取っているのは反習一派と反共産党勢力のようだ。

「北京が“毒都”になった」

こうした話題が、先週末から盛り上がっている。よりによって、北京でのアウトブレークは西城区の複数の大病院から発生したという。

西城区には、中国共産党の本部や習氏ら最高幹部、秘書などの居住区となる「中南海」がある。党書記処、規律委員会、組織部、宣伝部、国務院、国家発展改革委員会、国家人民委員会など、党中央の単位が120ほど集中する“中国の心臓部”なのだ。

中国最大のSNS「WeChat」(微信)に2月21日、医療関係者と思われる人物が書き込んだ衝撃的な内容が、たちまち拡散された。

そこには、「北京の大学病院と医院で集団感染が起き、大問題になっている」「北京の集団感染処置は武漢レベルに引き上げられ、医師は外部からの支援を受けられない」と記されていた。

複数の中国メディアも、「北京の付属病院と大学病院、2つの病院が緊急でアウトブレークの調査中」と報じた。

付属病院は、共産党の局長・部長級など高級幹部のための病室を備え、医師で高級幹部の子女も少なくない。北京の大病院がウイルスに侵食されていることは、以前から漏れ伝わっていたが、最近ようやく中国当局も認めた。69人、一説にはもっと多くが隔離されているという。

■米・露に見放され頼る先は日本のみ?

中国人評論家の1人は「付属病院は、中南海まで数キロの距離にある。ここでのアウトブレークにより、習氏の関心事がどこに向いたかは容易に想像がつく」「湖北省を捨てても、全国を放棄しても、北京を死守しなければならないのだ!」と記している。

北京は2月10日に封鎖されたが、西城区の区長は18日、「厳格な地区閉鎖管理」を宣布した。

こうしたなか、国内外のネット市民からは、以下のような冷ややかな声が上がっている。

「150歳まで生きる目標を持つ共産党幹部にとって、(新型コロナウイルスは)恐怖以外の何ものでもないはずだ」「中国政府がいくら法律をつくろうと、ウイルスは言うことを聞いてくれない」「権力者であろうが、庶民であろうが、ウイルス(の感染)には関係ないのだ」

人民解放軍への感染情報も相次いでいる。

香港を拠点とする人権民主情報センターは2月13日、「中国の空母『山東』の人民解放軍1人が、海南省三亜市で新型肺炎と診断され、三亜に『山東』の軍の100人が隔離された」と伝えている。

共産党一党独裁体制について、「北京の秩序も崩壊し、真の“毒都”となり、中南海の陥落も目前だ!」といった激しい論調すら飛び出すなか、習氏は日本への「国賓」訪問に固執しているとされる。

ドナルド・トランプ大統領の米国とは冷戦状態に陥り、ウラジーミル・プーチン大統領のロシアは中国との国境封鎖や中国人の入国禁止など、厳格な措置を取っている。世界各国から見放された習氏としては、すり寄る先が日本しかないのか?

いずれにせよ、来るも地獄、来ないも地獄であることに変わりはない。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

【私の論評】習近平生殺与奪の権は日本にあり!習近平は日本に来るも地獄、来ないも地獄(゚д゚)!

北京で開幕予定だった全国人民代表大会の延期ということを聴くと、日本人なら、大事と思うかもしれませんが、全人代は日本の国会のようなものと認識する多くの日本人は、これは大事だと思うかもしれません。確かに北京の新型肺炎の感染のレベルは大事になっているのは間違いないでしょうが、全人代延期そのものは現実的にはさほどのことではありません。

ただし、全人代は中国共産党のパフォーマンスの一環であり、パフォーマンスとはいいながら、過去には、これにより、いかにも中国に当地の正当性があるかのように、主張するために機能させてきたのですが、それすらもできないということでは、新型肺炎の感染レベルが抜き差しならぬことになっているのかもしれません。

昨年の全人代

まずは、全人代がどういうものなのかを解説します。

中国の全人代=全国人民代表大会は、日本のメディアでは「国会に相当する」という修飾語がつくことが多いですが、これは随分誤解を招くな言い方です。全人代は日本人が「国会」として想起する姿や機能と全く違います。

まず、代表の選ばれ方が違います。日本の「国会」は主権者である国民が選挙で議員を選びます。その際、普通選挙・平等選挙・秘密選挙・直接選挙の4原則が確保されます。

これに対して全人代は、中国共産党が党にとって都合の良い代表者を党が指導する下部組織に間接的に選出させて組織されるもので、この選出過程に一般の中国国民は関与できません。

「国会に相当」と聞くと、民主的手続きによって選出された国民の代表で組織する立法機関が中国にもあると思いがちですが、現実は違います。

中国には、建国以来、先進国などでみられる民主主義的な選挙が行われたことはありません。その意味では、中国には先進国でいうところの、政治家は一人もいません。習近平や、江沢民、胡錦濤なども厳密な意味では政治家ではありません。先進国でいえば、官僚です。

その分かりやすい例が、香港議会の補欠選挙に民主派が立候補すらできなかったことです。党にとって不都合な人物はそもそも選挙から排除するのが北京流です。全人代の映像を見ると、約3000人の代表の中には民族衣装で正装した少数民族の代表者と思しき姿があります。

これは、少数民族も政治に関与できていると思わせる狙いがあります。その姿がカラフルで物珍しいので、日本のテレビ局はついつい放送に使ってしまううのですが、相手の思う壺です。

全人代に参加した少数民族

次に全人代の機能は手続き的なものでしかありません。毎年1回開催、会期は約10日間にすぎないです。

昨年全人代は、習近平総書記の2期目に当たり、憲法改正から国家元首の選出、行政や司法に関わるトップ人事、予算の承認、国の機構改革、法律の制定などなど、国政の重要事案を16日間でやっつけてしまいました。

そんなことができるのは、全ては中国共産党が事前に決めており、全人代での扱いは形式的なものにすぎないからです。

以前ほどラバースタンプ(《承認のために押すゴム印の意から転じて》提案や計画を十分に検討しないで、賛成したり、認可したりすること)言われなくなっているのは、裁決での反対・棄権票が増えてきていることと関係するのでしょうか。

全人代の電子投票システムでは誰が反対・棄権票を投じたか即座に特定できるはずです。反対者は断固排除する一党独裁制の基本をよくよく承知している代表者が、自分の将来を潰しかねない反対・棄権票をあえて投じるのでしょうか?甚だ疑問です。

それよりも、反対・棄権票も事前の振り付けと考える方が納得できるのではないでしょうか。

独裁国での形式的な選挙の投票率が99.4%などと発表されるのと同じ感覚ですが、その時々の世論を意識しながら数字を塩梅するのであれば、より洗練されてきているとも言えるかもしれません。

それはさておき、全人代の会期が年間10日程度で済んでしまう理由として、全人代常務委員会の存在が見逃せないです。

全人代閉会中、ということは年間350日程度、憲法の規定で全人代が持つ最高の国家権力を行使し立法機能を代行する常設機関です。

実際には主客逆転していて、常務委員会が随時立法し権力を行使し、全人代が年一回まとめて追認するのです。全人代で覆されることはありません。

この常務委員会のトップに中国共産党の最高指導部の一人が就き、200人弱の構成員の約7割を共産党が占めます。残りは「民主党派・無所属人士」と括られる、要するに、共産党以外の人々も関与していますけど…という人たちです。

一言でいえば、この全人代常務委員会が、党の政策と支配を憲法や法律に則り民主的な手続きを踏んだ形をとって国政の次元に落とし込む制度的仕掛けなのです。

党と国家の軸であると同時に、一党独裁を代表民主制のようにカムフラージュするのです。

現在の中国は国の大きさや経済レベルは全く違うが、支配の政治メカニズムは基本的に何十年も変わっていません。

だからこそ、「国会に相当する」と聞くと違和感を覚えます。「国会」の言葉のイメージによって「実態」を観る目が曇らないようにしたいものです。

中国には、政治家が一人もおらず、いるのは官僚だけなのです。官僚が政治を司るとどういうことになるか、日本で考えていただければ、おわかりになると思います。特に、官僚の無謬性へのこだわりは、とんでもない事態を引き起こしがちです。

選挙で選ばることない、官僚だけが日本を統治していれば、当然のことながら腐敗は当たり前ですし、何でも官僚にいうとおりです。日本では、財務省が力のある役所であるといわれ、まるで増税することが使命のように、増税がくりかえされました。

それでも、過去に安倍政権は二度も、消費税増税を延期を公約として選挙をし、大勝利して、消費税増税を延期しました。選挙で政権与党が、増税見送りを公約として大勝利した場合、さすがの財務省もこれを翻すことはできません。

日本と中国を単純比較はできませんが、もし日本が中国のように、官僚の国であれば、日本ではもう何度も増税されて、今頃、消費税は50%くらいになっており、経済は疲弊し、国民の怒りは頂点に達し、革命がおこり怒りのマグマが財務省に向かって大爆発し、財務省は粉砕されるなどということになったかもしれません。

しかし、中国は真の官僚国家であり、司法や人民解放軍は、国民ではなく共産党の下に位置づけられ、中国共産党は何事にも何者にも、制約されることなく、自分たちのやりたい放題です。そうして、この状態を全体主義というわけです。

このような国で、新型肺炎が起こったのが、人類の不孝でした。とにかく、全体主義国家では、良いことは率先して公表しますが、悪いことは隠蔽したり、あるいは報告が遅れるものです。そのため、中国では新型肺炎への対処が遅れてしまいした。

新型肺炎への対応がこのように遅れて、その結果として、新型肺炎、中国の“心臓部”近くでも蔓延して、中国共産党幹部らにもその驚異が間近に迫っているわけです。

この度は、新型肺炎への対応の遅れで、このような事態を招いてしまいましたが、他の驚異にも同じく今の全体主義的中共は対応できないことが十分予想できます。

このような国が長続きするとはとても思えません。米・露に見放され、日本にも見放されれば、とんでもないことになるのではないでしょうか。

だからこそ、習近平をわらをも掴むような気持ちで、今でも日本に向かってはっきりと日本訪問の延期や中止などを言えないようです。

日本では、中国を過大評価する人も多いですが、少なくとも日本は、中国国内ではかなり大きな影響力のある国です。

まずは、天皇の存在です。天皇は中国でいえば、皇帝です。その皇帝に謁見することは、中国国内ではかなり権威付けとなります。実際、いまた次世代の中国主席の候補者であった、習近平は2009年日本を訪問して自らの中国国内での権威付けに成功しました。

中韓では、反日運動が盛んですが、それは逆にいえば、日本に対する劣等感であります。中国や韓国に日本に対する劣等感がなければ、そもそも反日などする必要性もありません。

そうして、その劣等感がどこからくるかといえば、現在の韓国も、中国共産党も他国のように、他国と戦って独立を勝ち得た経験がないからです。そうして、そもそも日本は、かなり古くから天皇を頂点に独立の道を歩んできたからです。

韓国は、日本から独立したのではなく、日本から米国に移管され、その後に独立しました。中共は日本と戦ったことは一度もありません。いわゆる日本が戦った中国とは、蒋介石が率いた中華民国(現台湾)です。

中国建国の父である毛沢東は、日本と中華民国が戦ったくれたおかげで、中華民国が疲弊したおかげて、我々は中国を独立させることがだきたと語ったといわています。

韓国は、米国から独立、中国は内戦で勝利して独立ということで、いずれも外国などと戦ったことはないわけであり、そこでどうしても国内で統治の正当性が弱いのです。だから、中国では今でも日本の天皇に謁見したものは、かなりの権威付けになるのです。

韓国は、全く自分の力とは関係なく、米国から独立したということもあり、天皇に謁見することは権威付けにはならないようです。

いずれにしても、中国も韓国も国内で日本を悪者にして、自らの政権の統治の正当性を高めるということでは共通点があります。

八方塞がりの習近平にとつては、かつて自分が天皇に謁見して中国国内での権威付けに成功したのと同じ陽に、米露が見捨てられた現在では、日本でまた天皇に謁見して、国内での権威付けを高めることと、日本を介して米露などと良い関係を構築したいのでしょう。

習近平が予定通りに日本に来れば、ある程度の権威付けにはなるかもしれませんが、それにしても、反習近平派が日本に訪問しているうちに、クーデター起こすかもしれませんし、そこまでいかなくても、おそらくその時期には、まだ新型肺炎が終息していないでしょうから、中国に戻った習近平に対して大事な時期に国を離れたとして、謗ることでしょう。

日本に来なければ、習近平の権威は地に落ちることになります。まさに、習近平は日本に来るも地獄、来ないも地獄なのです。

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2020年2月24日月曜日

習近平4月訪日…先に「延期しよう」と切り出せず神経戦する日中―【私の論評】中国が「反日統一戦線共同戦線」構想を取り消さない限り、日中戦争は継続中であると心得よ(゚д゚)!

習近平4月訪日…先に「延期しよう」と切り出せず神経戦する日中

    習近平中国国家主席(左)が昨年6月28日に大阪で開かれたG20首脳会議
    公式歓迎式で議長国の日本の安倍晋三首相とあいさつを交わしている。

4月初めに予定されている習近平中国国家主席の国賓訪日日程は新型コロナウイルスによる肺炎の拡散で流動的な状況だが、中国と日本ともに「延期」を切り出せず神経戦を行っていると産経新聞が24日に報道した。

現在日本と中国とも「予定通り準備を進める」という立場を維持しているのは、中国が重視するプライド問題、また、中国に利用されかねないという日本側の戦略が絡んでいるという。

日本の茂木敏充外相は21日会見で習主席の訪日について、「いくつかの準備会合などが延期になっているので、準備を加速していく必要がある」と話した。

15日にドイツで茂木外相に会った中国の王毅外相も「(習主席訪日を)ぜひ実現したい」とした。

新型肺炎の影響で国賓訪日が実現するかわからない状況だが、双方とも表向きは強い意欲を見せていることになる。

産経は「中国が習氏訪日の延期を自ら持ちかければ、新型コロナウイルスを押さえ込めないとの印象を国際社会に与えかねない。逆に訪日すれば「終息宣言」の演出にもなり、メンツをかけて予定通りの訪日を実現しようとする」とした。

これと関連し日本政府関係者は「日本から『無理なさらないでください』と言ってもらいたいはず」との見方を示すが、もし実際に日本がそうした場合には「日本が延期を言い出した」と利用されかねないと懸念する。

さまざまな理由から日本と中国とも顔色をうかがいながら保身を図っているということだ。

日本側は天皇と安倍晋三首相のスケジュールなどを考慮して習主席の訪日可能日を伝えているが、「まだ何も回答はきていない」と産経は伝えた。

【私の論評】中国が「反日統一共同戦線」構想を取り消さない限り、日中戦争は継続中であると心得よ(゚д゚)!

新型肺炎感染者の増加が連日報じられている日本ですが、中国全土からの渡航禁止が実施されない状況に対して疑問の声も上がっています。有事である現在の日本の状況にあっても対中関係改善を優先する政府ですが、このようなことをしても政府が報われることは永遠にないでしよう。

日中関係が、急速に改善されているようにみえます。確かに、尖閣中国漁船衝突事件があった2010年や、尖閣国有化の2012年のような「超緊張関係」よりは良いのかもしれませんが、周近平の訪日が決まっても、中国による尖閣への挑発は続いています。

さらに、現在の日中関係は、異常です。新型コロナウイルスの感染者が日本国内でも増えています。この際最も重要なのは、他国でも普通に実施されているように、日本も中国全土からの渡航を禁止することです。

新型コロナウイルス
ところが日本政府は、この当たり前のことをしません。日本政府が習近平に忖度しているのでしょう。つまり、今の日本政府は、国民の安全よりも習近平のご機嫌を最優先していることになります。それでも、日本政府が長期的に中国から報われれば良いのかもしれません。しかし、日本政府の「忖度」が報われることはありません。

1989年、天安門事件で中国は世界的に孤立しました。中国指導部は、どうやってこの危機を克服したのでしょうか?彼らは、「世界一純真でだまされやすい日本を利用して孤立から脱却しよう」と考えました。

そして、彼らは日本に接近しはじめました。1992年、天皇皇后両陛下が、訪中されました。これを見た欧米諸国は、「裏切り者の日本は、巨大な中国市場を独占するつもりだ!」と焦ります。そして、1993年から中国と欧米の関係も改善されたのです。日本は、中国の苦境を救ったのです。

問題は、この後です。中国は、「利用済み」の日本を捨てました。どのように捨てたかといえば、1994年、江沢民政権は、国内では「反日教育」を、国外では「反日プロパガンダ」を精力的に行うようになったのです。

これは、「日本を米中共通の敵とすることで、米国が二度と中国を叩かない環境をつくる」という戦略に基づいた動きだったのです。この戦略がうまくいき、クリントン政権は熱心にジャパン・バッシングをしていました。

なぜ、中国は、これほど見事に日本をだませるのでしょうか。それは、中国指導部の「哲学」が「だますこと」だからです。彼らが信奉しているのは、「孔子」ではなく「孫子」です。

孫子はいいます。
兵は詭道なり(戦争は、だましあいである)
つまり、戦争中は「だますこと」が「善」とされるのです。では、今は戦争中なのでしょうか。戦争中ではないのでしょうか。

彼らは、こう考えます。「政治は、武器を使わない戦争である。戦争は、武器を使う政治である」。だから、「平時」でも「戦時」でも、彼らはいつも「戦争中」と考えるのです。だから、「いつでもウソをつくのは善である」と考えるのです。これ、「中国人はそうだ」といっているのではありません。「中国の指導者がそうだ」といっているのです。

天安門から30年が過ぎました。中国は、また孤立しました。それで、また同じように、日本に接近してきたのです。世界一純真でだまされやすい日本政府は、過去の失敗に学ばず、またもや「コロリ」とだまされたようです。

習近平が国賓訪日すれば、「天皇陛下、是非ご訪中ください」というに決まっています。天皇陛下は立場上拒否できないので、訪中されるでしょう。1980年代から1990年代の初めに起こったことが、また起ころうとしているのです。日本政府は、同じ失敗を繰り返そうとしているようです。

失敗といえば、第2次大戦時、日本はナチスドイツに接近して破滅しました。今度は、「ウイグル人100万人を強制収容」し、「現代のナチスドイツだ」と批判されている中国に接近しています。また亡国の道を驀進しています。

中国指導部の「ウソ」については、話せばキリがありません。最後にこれに触れないわけにはいかないでしょう。2012年11月、中国は、ロシアと韓国に「反日統一共同戦線をつくって、日本を破滅させよう!」と提案しました。

彼らは、「日本には【沖縄の領有権はない!」「米国も反日統一共同戦線に引き入れる!」と宣言しました。卒倒物のこの話。このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【国難突破】習政権が目論む“情報洗脳的世界支配” 日米連携で中国「情報謀略網」解体を―【私の論評】2012年から日中は戦争状態!なるべく多くの国々と同盟関係になることが日本を守る(゚д゚)!
   マイク・ペンス米副大統領が201年10月4日、ワシントンでの講演で、かつて米国政府が

   したことのない中国非難を展開した。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、「反日統一共同戦線」がらみのところを以下に引用します。

多くの人々は気づいていないようですが、実は日本もすでに、中国と戦争状態に入っています。とはいいながら、最近日中関係が、一見改善されてきているようにみえます。安倍総理は昨年(ブログ管理人注:2017年)11月11日、ベトナムで習近平と会談しました。雰囲気は、きわめて友好的で、両首脳は関係改善への意欲をはっきり示しました。さらに、今週は安倍総理が中国を訪中する予定です。 
日中関係が改善されるのは、良いことのようにもみえますが、決して油断することはできないです。中国は6年前、尖閣、沖縄を奪取するための戦略を策定しました。「広義」での「日中戦争」は、もう始まっているのです。 
私自身「日中戦争が始まった」という事実に大きな衝撃を受けたのは2012年11月15日のことでした。 
私はこの日、「ロシアの声」に掲載された「反日統一共同戦線を呼びかける中国」という記事を読みました(現在リンク切れ状態になっています)。この記事には衝撃的な内容が記されていました。 
これを読み、私は「日中戦争が始まった」ことを確信しました。そうして、中国は米国を「反日統一共同戦線」に米国を引き入れようとしましたが、米国はそれに応じなかっために、米中もまもなく戦争状態に入りました。これは、はっきりしませんが、おそらく2016年か2017年頃だと考えられます。
  ・中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」の創設を提案した。 
  ・「反日統一共同戦線」の目的は、日本の領土要求を断念させることである。 
  ・日本に断念させるべき領土とは、北方4島、竹島、尖閣および沖縄である。 
  ・日本に沖縄の領有権はない。 
  ・「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。

中国は、現在でも尖閣への挑発をやめていません。本来であれば、「反日統一共同戦線」戦略をやめると宣言して、日本に接近をはかるなどのすべきです。

それをしないで、いくら日本に接近しようとしても、日本としては「反日統一共同戦線」がある限りは、日本は戦線布告されたままてあると捉えるべきです。

日本と中国とは今でも戦争状態にあるのです。戦争というと、日本人の多くは、軍隊同士の衝突や戦闘ばかりを思い浮かべるでしょうが、戦争はそれだけではありません。情報戦などもその部類です。日本は、今のままだと、中国のとの情報戦、すなわち戦争に負けてしまいます。

日本人が決して決して決して忘れてはならないこと。それは、中国指導部の【本質】です。これは、永遠に変わりません。かつて米国も中国にだましつづけられましたが、トランプ大統領になってからは、随分変わり、現在では超党派で中国に対峙しています。

トランプ大統領がディールで中国と関係を改善しようとしても、現在の米国議会はそれを許しません。トランプ大統領の次の大統領も、中国と関係改善としようとしても、それはできません。ここ暫く、米国が中国と対峙するのは米国の意思となりました。

日本人も、中国とは「戦争中」であるという事実を忘れるべきではありません。親中派、媚中派の議員らは、このことを理解していない、馬鹿です。彼らが、我が物顔で動き回れは、日本は中国との戦争に勝つことはできません。

まずは、彼らを議員にならせないこと、それでも議員になった場合は、徹底的に監視して、中国の手先として動けなくするか、中国の手先である事実を明るみに出して、政治生命を断つべきです。

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2020年2月23日日曜日

国民の生命は二の次!?中国に媚びを売る媚中派たち “甘すぎる”日本の新型コロナ対応 識者「韓国を歯ぎしりさせた「戦略的放置」を中国にも断行すべき」―【私の論評】安倍政権は、国民の声を聴き、特亜三国に「economic statecraft」を実行せよ(゚д゚)!

国民の生命は二の次!?中国に媚びを売る媚中派たち “甘すぎる”日本の新型コロナ対応 識者「韓国を歯ぎしりさせた「戦略的放置」を中国にも断行すべき」

安倍首相(右)は習主席との距離を置くべきだ

 中国発の新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。中国本土では22日朝時点で、感染者は7万6000人以上、死者は計2345人。日本国内でも、北海道と埼玉で子供の感染が発覚して、感染者は計743人(クルーズ船の634人を含む)となった。日本政府の初動対応の遅れが指摘されているが、背景には、恩を仇(あだ)で返す、中国への甘すぎる対応があったとの見方も根強い。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、韓国を歯ぎしりさせた、日本の「戦略的放置」を中国にも断行すべきだと強調した。安倍晋三政権は、国民と旅行者の生命と健康を守るため、中国の入国拒否の対象地域を拡大するとともに、対外発信力の強化を検討している。


 新型肺炎は世界にますます拡大し、日本は初期対応のまずさから「世界第2位の汚染国」のイメージを世界中に植え付けてしまった。媚中派の自民党を含む議員や官僚などが、国民の健康や生命を二の次にして中国に媚びを売ることに懸命になったことが惨劇を招いた。

 国民がマスク不足で右往左往しているときに、マスクだけではなく、防護服まで中国に贈呈した政治家、官僚、役人は、騒ぎが終わった後、厳しく断罪すべきである。しかも、共産党独裁で利権がはびこる中国で、それらの善意の品が本当に必要な人々に届くのかどうかも疑問だ。



 安倍晋三政権の対応のまずさを指摘する声もある。確かにそれは否定できない事実だが、より根本的な問題は「平和ボケ日本」の「有事対応」の欠如にある。

 日本の民主主義、自由主義は素晴らしいが、それはあくまで平時の話だ。日本よりもさらに自由や民主主義を尊重する米国でさえ、「有事に私権の制限」が行われるのは当たり前だ。

 米国では、全ての中国からの入国者を即時に拒否し、米国人のリスクを抱えた帰国者は2週間きっちりと隔離される。日本が世界で2番目の感染国になったのは、事前の法整備も含めた「有事対応」の欠如による「人災」と言ってよい。

 日本政府として中国への今後の有効な対応は「戦略的放置」である。この戦略はストーカーのように付きまとう韓国に対して極めて有効であったことは、その後の「経緯」が証明している。

 韓国に効き目のある「戦略的放置」を、安倍政権が中国になぜ適用しないのか。自民党を含む国会議員の中国利権が韓国利権に比べてはるかに大きいからなのかもしれない。

 しかし、過去の中国の日本に対する態度を振り返れば、「戦略的放置」が急務であるとわかる。

 まず、1972年の日中国交回復(正常化)を米国の頭越しに実行した田中角栄元首相は、激怒した米政府にロッキード事件でつぶされたと噂される。

 しかし、これによって鎖国状態の中国が世界に開かれなければ、いくら●(=登におおざと)小平元国家主席が優秀でも「改革開放」を成功させることができず、中国の繁栄はなかった。改革開放の初期には日本政府や日本企業が全面的に支援した。

 その大恩を、1989年の天安門事件の後、欧米からの非難の矛先をかわすための「あることないこと」をネタにした反日運動で返した。しかも、92年に天皇陛下が訪中されたことにより、天安門の大虐殺の責任を結果的に封印してしまった形だ。

日本中の国民が苦しんだ東日本大震災直後には、ひっきりなしに領空(海)侵犯を激化させた。さらに今、自国の新型肺炎対策に数々の支援を行ってくれている日本への領空(海)侵犯を激化させている。

 日本人の優しさ、思いやりは世界中から称賛されるが、「恩をあだで返す国」にいつまでも「寄り添って」いるのでは、単なるお人よしである。

 共産党独裁によって苦しんでいる中国人民に手を差し伸べたい心優しい日本人は多いと思うが、中国共産党に対する「戦略的放置」こそが、中国人民を救うことになるのだ。


 すでに米下院は、ウイグル、香港、チベットに関する人権法案を次々と可決している。共産主義中国に対し冷戦時代のソ連邦や、第二次世界大戦下のナチスドイツに準じる扱いをしているというわけだ。

 日本は第二次世界大戦でドイツと同盟国になったため、戦後長い間苦しんだ。今回は同じ過ちを繰り返さず、徹底的な「戦略的放置」を粛々と実行すべきである。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】安倍政権は、国民の声を聴き、特亜三国に「economic statecraft」を実行せよ(゚д゚)!

上の記事では、"韓国を歯ぎしりさせた、日本の「戦略的放置」を中国にも断行すべき"とありますが、私がこの「戦略的放置」が始まったころには、とうとう日本も、「economic statecraft(経済的な国策)」をやり始めたと思いました。

「economic statecraft(経済的な国策)」とは、経済的な手段を用いて地政学的な国益を追求する政策です。欧米などでは認識され、政策に応用されていますが、現時点では日本にない概念であり、日本語に直訳するのは難しいです。

これについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本の「安全保障環境」は大丈夫? ロシア“核魚雷”開発、中国膨らむ国防費、韓国は… 軍事ジャーナリスト「中朝だけに目を奪われていては危険」―【私の論評】日本は韓国をeconomic statecraft(経済的な国策)の練習台にせよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、economicstatecraftは、日本にはない概念なので、ほとんど報道されませんが、多くの国々がこれを意図して意識して、適用しつつあります。米国、ロシア、中国などは明らかににこれを意図して意識して実施しています。

韓国は、そのような戦略的な考えはないようですので、戦略的に行うというよりは、散発的にその時々で戦術的な反日のような、economicstatecraftとはいえないようなことを実行しているだけだと思います。

北朝鮮は、経済的にあまりに小さいので、そもそもeconomicstatescraftなどできないのだと思います。北朝鮮が経済的になにかの政策をとっても困る国はないです。だからこそ、核ミサイル開発に踏み切ったのでしょう。

それで、米国と首脳会談にまで持ち込むことができたのですが、最近ではその手が使えず、使えば、孤立したり米国の軍事攻撃を招いてしまいかねないので、結局は使えず、八方ふさがりの状況になっています。

私は、本当は、韓国に対する「戦略的放置」も、economicstatecraftの一環で行われているのではないかと思いますが、日本国内はこれを発動すべき韓国、北朝鮮、中国に対して過度に忖度する勢力が多いので、安倍政権とししては、はっきりeconomicstatecraftであるといえないところがあるのだろうと思います。

これに関しては、日本国内での新型肺炎の感染が深刻になることがあらかじめ、予想されたにもかかわらず、中国からの渡航者を全面的シャットダウンできなかったし、現在でもなおそうしないということから、日本には過度に中国に忖度する勢力が存在することが明らかになったと思います。

おそらく、規模の違いはあっても、日本には特亜3国に忖度する勢力があるのは間違いないです。この勢力は左翼系は無論のことですが、安倍政権の中にも存在します。

安倍政権が結局、習近平を国賓として招くことを未だに中止する動きがないこと、韓国に対しても、さらなる制裁を課すようなことは全く考えていないような態度をとり、結局韓国に対しても、「戦略的放置」にとどまっているのもその証であると思います。

日本は中国にかなり依存しており、中国との関係が悪化すると大変なことになるとか、技術面でも最近の中国は発展したので、日本は中国に技術的にもかなり依存しているなどと思いこむ人も多いようですが、それは事実ではないです。

中国向け輸出は、日本のGDPの3%内外であり、中国向け投資もGDPの1%程度にすぎません。輸入に関してもわずかなものであり、しかも自国での生産や他国からの輸入で代替できるものがすべてです。

最近の事例でいうと、たとえばマスクは日本では中国から輸入が80%を占めるので、最近は日本では全国的に品薄になっています。ただ、いずれユニ・チャームなどの国内メーカーが増産しつつあるので、いずれ是正されるでしょう。中国からの輸入はこのようなものばかりです。

日本からの中国向け輸出に関しては、中国にとって死活的なものが多いです。特に工作機械や精密機器などは中国では製造できず、これがなくなると中国は製造が滞ることになります。

中国の技術はかなり高いと思われていますが、実体は高度な技術は米国や日本などの先進国から盗んだものを組み合わせているにすぎません。驚いたことに、中国では高速鉄道や航空機のネジ・ボルトすら国内で製造できないのです。

このような状況だと、日本が中国との関係を断ったにしても、無論マスクのように一時品薄になるようなことがあっても、いずれ他国からの輸入に切り替えたり、自国で製造するようにすれば、日本としては何も困らないわけです。

であれば、日本は中韓に対してeconomicstatecraftを適用しても、ほとんど困ることはないです。日本は中国や韓国に対してeconomicstatecraftを十分実行し得るのです。

韓国に関しては、最近のあまりの暴虐ぶりに日本国民の中にも、かなり韓国政府に対する批判が高まり、国内親韓派などは、無視して安倍政権は、韓国に対して「戦略的放置」ができるようになりました。

韓国ソウルの延世大学。新型コロナウイルスへの予防を呼びかける垂れ幕の下を歩く学生(2月10日)

であれば、ウイグルやチベット、最近では香港に対して人権を無視した、弾圧を継続しているとか、武漢肺炎の危機がありながらも、尖閣への挑発をやめないとか、習近平が未だ日本への国賓訪問を中止しないなど、中国の最近の暴虐ぶりが国民に周知されれば、安倍政権は中国に対して「戦略的放置」ができるようになる可能性は十分にあります。

それどころか、新型肺炎でこれからも犠牲者が出たり、様々なイベントが中止されたり、実体経済に影響がでれば、安倍政権や親中派に対して怨嗟の声があがるようになるでしょう。

安倍政権としては、政権運営を円滑にするために、二階氏のような親中派に対して党内政治で忖度するのか、それとも国民の声に耳を傾けるのか、選択を迫られる事態になることでしょう。

私としては、安倍政権は、国民の声をきき、特亜三国に関しては「戦略的放置」以上に、「economic statecraft(経済的な国策)」を実行していくべきものと思います。

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