2021年12月5日日曜日

米紙“ロシアがウクライナ侵攻を計画”―【私の論評】兵站に欠陥のあるロシアはウクライナ全土は併合できない!できるのは最大でいくつかの州のみ(゚д゚)!

米紙“ロシアがウクライナ侵攻を計画”


ロシアが来年早々にも最大17万5000人規模の部隊で、ウクライナへの軍事侵攻を計画していると、アメリカの有力紙、ワシントンポストが報じました。

ワシントンポストは、アメリカの情報機関の分析として、ロシア軍が現在ウクライナ国境地帯に展開している部隊を増強し、最大17万5000人規模で、来年早々にも侵攻を計画している、と伝えています。

ロシア軍は国境の4か所に集結していて、軍事侵攻は多正面作戦になるとしています。アメリカのバイデン大統領は3日、ロシアのウクライナ侵攻を阻止するための対応策を準備していると述べました。

バイデン大統領「プーチン大統領が実行に移すのを阻止する包括的で意義ある取り組みになる」

ブリンケン国務長官も2日、ロシアのラブロフ外相との会談で、ウクライナへ侵攻すれば「深刻な結果を招く」「同盟国とともに大きな代償を与える」などと強く警告していました。

一方、ロシアのペスコフ大統領報道官は、米露首脳によるオンライン会談が、今月7日に行われると明らかにしました。

【私の論評】兵站に欠陥のあるロシアはウクライナ全土は併合できない!できるのは最大でいくつかの州のみ(゚д゚)!

ロシアの軍事力は、米国についで2位とされてはいますが、その実体はどうかといえば、兵站においては劣っており、現状では米国を除くNATOとでも本格的に戦えば負けます。

米軍抜きのNATOと戦えば、初戦においては現在でも軍事技術に優れたロシア軍は、一時目覚ましい戦果を挙げられるかもしれませんが、後続きせずに、NATO軍に打ち負かされるのは必定です。

なぜ、そのようなことを自信を持っていえるかといえば、現状のロシアのGDPは、韓国なみであり、世界10位にも入っていないという現実があるからです。

ですから、ロシアはNATOと本格的に対峙することは避けるでしょう。それを考えると、今後ロシア軍は国境付近に軍隊を配置するだけで終わるかもしれませんし、国境を超えたとしても、最大でも数十キロくらいで、そこに橋頭堡をつくる程度でしょう。

それは何のための橋頭堡かといえば、ドネツク州のようなロシア語を母語とする多い、州などをロシアに併合するための橋頭堡です。

ロシア語を母語とする人口の割合

未来永劫絶対にありえないのは、ウクライナ全土をロシアに併合することです。そうしてしまえば、NATOも何らかの手段を講じるでしょう。それに対峙できる力は現在のロシアにはありません。ドネツク州併合くらいなら、クリミアを併合したように、併合できる可能性はあります。それも、無論軍事力だけではなく、ハイブリッド戦も駆使してということになるでしょう。

なぜそのようなことがいえるかといえば、先日も中国が台湾に侵攻できない大きな一つの理由として、兵站、特に輸送力の限界を指摘しましたが、ロシアにもそのような限界があるからです。まず、先に上げたようにロシアの経済力は今や韓国を若干下回ります。これでは、大規模な戦線を長期にわたって維持することはできません。

それにロシア軍も兵站力では西側諸国に比較して、劣るという重大な欠陥があります。詳細は、以下の記事をご覧ください。
FEEDING THE BEAR: A CLOSER LOOK AT RUSSIAN ARMY LOGISTICS AND THE FAIT ACCOMPLI(クマに餌をやる:ロシア軍の兵站学と既成事実を詳しく見る)
詳細は、この記事をご覧いただくものとして。以下に一部を引用します。
ロシア軍の兵站部隊は、鉄道から離れた場所で大規模な地上攻撃を行うようには設計されていない。

ロシア軍は各統合軍に十分な持続旅団(彼らが言うところの物的技術支援旅団)を持っていない。

ロシア軍の切り札は10個の鉄道旅団で、これは西洋にはないものだ。鉄道旅団は、鉄道の警備、建設、修理を専門としており、鉄道車両は国営企業が提供している。

ロシア軍の装甲列車
ロシアが鉄道旅団を持つユニークな国である理由は、物流的に、ロシア軍が工場から陸軍基地、統合軍、そして可能であれば師団・旅団レベルまで鉄道と結びついているからだ。ヨーロッパの他の国では、ロシア軍ほど鉄道を利用している国はない。その理由の1つは、ロシアが端から端まで6,000マイル以上という非常に広大な地域であるからだ。
ロシア軍をロシアの鉄道網を超えて補給しようとすると、鉄道部隊が鉄道を再構成/修理するか、新しい鉄道を建設するまで、トラック部隊に頼らざるを得なくなる。
ロシアの兵站は、鉄道に大きく依存しており、大規模砲兵隊を持つが故に大量のトラック輸送が必要になるため、今の補給部隊の編成性質と許容量では、国境沿いで高い戦闘力を発揮できるが、長距離地上進撃の際にそれを維持できない。
結局のところ、ロシア軍はウクライナの奥地までは、侵攻できないのです。さらに、鉄道が主な輸送手段ということは、鉄道が破壊されてしまえば、補給は途絶えるということになります。

鉄道線路の破壊などは、極端なことをいえば、手榴弾でもできます。NATO側が、ロシアの鉄道網を破壊してまえば、ロシア軍はお手上げになってしまいます。それに、ウクライナは内陸なので、船による輸送もできません。

ロシアの目論見が、ウクライナを破壊することであれば、ロシア国内から核兵ミサイルを数発でも打てば、それで終わりになります。そこまでしなくても、航空機で爆撃したり、通常のミサイルを多数打ち込めば良いです。しかし、それでは意味がありません。

あくまで、ロシアの狙いはウクライナもしくはその一部を統治することですから、これはほとんど不可能です。ウクライナ全土を統合するということになれば、そこに多くの軍隊を派遣して、それらに食料(一日3000kカロリー/人)・弾薬などの物資を長期間にわたって補給しつづけなければなりません。しかも、NATOと対峙しなければなりません。これは、現在のロシアの経済力からしても無理があります。

そのため、ロシアの目論見は、国境沿いのウクライナ領内に、橋頭堡を築き、将来そこを拠点にドネツク州などのロシア人の多い地域の一部もくしは、全部をロシアに組み入れることでしょう。

マスコミの報道を見て、ロシアがすぐにもウクライナ全土を併合すると思い込むのは明らかな間違いです。

ウクライナ軍女性兵士

もう一つの可能性としては、ロシア領内のウクライナ国境沿いに軍隊を配置し、西側諸国に対して「ロシアへの制裁を解かないと、侵攻するぞ」という政治的メッセージを伝えることでしょう。こうすれば、少なくとも話し合いの緒はつかめるかもしれません。

実際、バイデン米大統領は7日、ロシアのプーチン大統領とのオンライン会談でウクライナの主権を米国として支持する姿勢を改めて表明すると、ホワイトハウスが発表しています。

つい最近、アフガンの撤退で大失敗したバイデンです。プーチンとの話あいで、譲歩するのではないかという不安もありますが、それにしても、ロシアの兵站の脆弱性が変わるわけではないので、バイデンもしなくても良い譲歩はしないでしょう。

できれば、経済的に低迷するロシアが、ロシア軍をウクライナ領内に侵攻させるなど分不相応な愚かな真似をしないように、プーチンを説得してもらいたいものです。

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2021年12月4日土曜日

中国、独自の「民主」強調 白書公表、米けん制―【私の論評】人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が、法律上正当化されている中国は断じて民主国家ではない(゚д゚)!

中国、独自の「民主」強調 白書公表、米けん制


 中国政府は4日、「中国の民主」と題した白書を公表した。共産党主導の「中国式民主主義」の特色と成果を強調する内容で、米国主催で近く開かれる「民主主義サミット」を意識したとみられる。
 白書は2万字超から成り、「民主主義は全人類共通の価値観で、党と国民が一貫して守ってきた重要な概念だ」と主張。民主主義には国の歴史・文化に根差したさまざまな形態があるとした上で、党の指導による民主主義追求の歴史や、人民代表大会制度の有効性などを説明している。

【私の論評】人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が、法律上正当化されている中国は断じて民主国家ではない(゚д゚)!

中国で民主主義が実践されているとは、誰も思っていないでしょう。中国国内でもそうは思わない人が多いと思います。無論、それを公言できないでしょうが、それをもってしても民主主義とはいえないです。

民主化というと、すぐに思い出すのが下の高橋洋一氏のグラフです。そのグラフを掲載したこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
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開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。
これをG20諸国の時系列データで見てみよう。1980年以降、一人あたりGDPがほぼ1万ドルを超えているのは、G7(日、米、加、英、独、仏、伊)とオーストラリアだけだ。 
以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。

民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。 
中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。それと同時に、各種の経済構造の転換が必要だといわれる。

その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。
共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。アリババへの中国政府の統制をみると、やはりだ。

こう考えると、中国が民主化をしないままでは、中所得国の罠にはまり、これから経済発展する可能性は少ないと筆者は見ている。一時的に1万ドルを突破しても跳ね返され、長期的に1万ドル以上にならない。10年程度で行き詰まりが見えてくるのではないだろうか。

中国はどの程度の民主化をすればいいかというと、民主主義指数6程度の香港並みをせめてやるべきであった。しかし、逆に香港を中国本土並みにしたので、香港の没落も確実だし、中国もダメだろう。

中国は国全体としては、 世界第二の経済大国になったのですが、一人あたりのGDP(2018年)では、約9,600ドルで第72位に過ぎません。さらには、この統計自体の信憑性は全く明らかではありません。

全く信用できない中国のGDP統計

やはり、民主化されないと、経済も伸び悩むのです。なぜそのようなことになるかといえば、民主化、経済と政治の分離、法治国家化が実施されていれば、そこには多くの中間層が生まれ、それらが自由に社会・経済活動を行うことができて経済発展するのですが、そうでないと経済発展には限界がしまうのです。それが中所得国の罠です。

それら中間層が、あらゆる階層、あらゆる地域、あらゆる段階別で社会を変革するイノベーションを行うことができるからです。

あらゆる段階別という言い方には少し説明を要するかもしれません。貧困層が住む地域にいきなり水道や電気を設置しても、貧困層は貧困であるがゆえに、電気料や水道料が支払えず無意味です。

しかし、そういう地域にも、井戸を掘ったり、水を楽に手に入れる手段を導入すれば、経済的に余裕ができます。その余裕が蓄積すれば、次の段階では、電気料や水道料が支払えるようになり、今度はそれを導入できるようになります。

電気や水道が存在する現在であっても、貧困層である人々は、ある一定の過程を経ないと、これを使用できないのです。これを私は段階別のイノベーションと呼んだのです。そうして、無論その他のあらゆる階層の人たちにも段階的に段階別に沿ったイノベーションが発生します。

適当な言葉が見つからなかったので、この言葉にしましたが、どなたかふさわしい言葉をご存知野方がいらっしゃれば、教えていただきたいです。

電気料や水道料が支払えるようになれば、従来貧困層だった人はもはや貧困層とはいえなくなり、そこからまた中間層が出て、地域に密着したイノベーションを行うようになります。彼らは、従来は中間層以上の人々が用いたモノやサービスを提供するようになるでしょう。

このようなイノベーションがあらゆる階層・地域に段階的に爆発して、社会が無理なく豊かになり、特にお金持ちではない、多くの人々が一昔前の王侯貴族のような生活(たとえば、レジャーなど)ができるようになったのが現在の先進国なのです。

私はいくら中国が「民主化」されているなどと言ってみても、政治と経済の分離、法治国家まで行われていなければ、それは言葉の遊びにすぎず、真に民主化されているとは言えないと思います。

無論「政治と経済の分離」とはいっても、規制は必要ですし、マクロ経済的には、政府には金融・財政政策を通じて、国民経済を正常に保つ責任はありますし、ミクロ経済的にも自由競争を促すために独占等を規制をする責任もあります。しかし、政府が直接民間の経済活動に介入すべきではないです。

民主化というだけでは非常に漠然としているので、政治と経済が分離されていて、中所得国に罠から逃れて国民一人あたりの所得が100ドルを超えているとか、法治国家化がされていることを条件とすれば、中国はとても民主化されているとはいえません。

中国共産党と経済は不可分に結びついていて、中国共産党は経済が落ち込みそうだと、株式市場にまで直接介入します。さらに、憲法は中国共産党の下に位置します。

憲法が中国共産党の下にある中国は断じて法治国家ではない

このような状態では、とても中国が民主化されているなどとはいえません。そうして、今後中国は中進国の罠から逃れられず、経済的に伸び悩むことになるでしょう。そうして、「中国の民主」は間違いであっことが明らかになるでしょう。

それに、民主国家では国民という言葉をつかっていますが、中国で人民という言葉使われていて、国民と人民は明確に区別されています。国民と人民は異なるものであり、国籍を持つ国民全員が人民であるというわけではありません。人民は中国共産党の掲げる思想や政策を支持する国民の一部の人たちであり、それを支持しないで批判や反対する国民は人民ではないのです。

そればかりか人民に属さない国民は、人民の敵であり、人民が持つ権利は行使できないですが、法律を守るなどの義務を負うというのです。

半世紀以上も前に形作られた毛沢東や周恩来の考えは、今日も生きていて、残念ながら現行憲法を見る限り、国民と人民を区別する考え方は明らかに継承されています。さらに中国の憲法には「いかなる組織ないし個人も社会主義体制を破壊することを禁止する」とも記されています。

つまり人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が法律上、正当化されているのです。そもそも、国名が「中華人民共和国」です。そのような中国が断じて民主国家ではありません。

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2021年12月3日金曜日

ドタバタ岸田内閣…国際線予約停止を撤回、醜態さらす ネット上では「はっきりいって素人内閣」の声 識者「朝令暮改、行政全体が見えていない」―【私の論評】岸田総理は国民を納得させよ、財務省・中国を納得させる政策をとれば、そっぽをむかれる(゚д゚)!

ドタバタ岸田内閣…国際線予約停止を撤回、醜態さらす ネット上では「はっきりいって素人内閣」の声 識者「朝令暮改、行政全体が見えていない」

林外務大臣(左)と岸田総理大臣(右)

 岸田文雄政権が醜態をさらした。新型コロナウイルスの「オミクロン株」拡大を受けた水際対策で、国交省が日本に到着する国際線の新規予約停止を航空会社に要請しながら、「日本人を見捨てるのか」などと批判されて撤回したのだ。岸田政権はこれまでも、事実上の移民解禁との見方もある「外国人労働者拡大」の動きが突然報道されるなど、数々の疑問が指摘されてきた。大丈夫なのか。

 「一部の方に混乱を招いてしまった」

 岸田首相は2日、官邸でこう陳謝した。

 オミクロン株対策で 国交省は11月29日、独自の判断で、日本人も対象にした国際線の新規予約停止を航空各社に要請した。

 「感染防止の緊急避難的な予防措置」とはいえ、国家の最大の責務は「国民の生命と財産を守り抜く」ことだ。日本人の帰国ができないとなると、邦人保護の観点から問題となる。憲法22条が保証する「移動の自由」を妨げることにもつながりかねない。

 しかも、国交省は1日に官邸に事後報告したといい、岸田首相は同日夜、慌てた様子で邦人の帰国には適切に対応するように指示を出した。

 ネット上では、《はっきりいって素人内閣》《邦人保護の責任放棄》《何も考えず、人に言われるままにやるからこうなった》などと厳しい批判が噴出している。

 第2次岸田政権は発足から1カ月もたたないが、内政も外交も「不可解な政策・報道」が立て続けに指摘されている。

 一連の岸田政権の対応をどうみるか。

政治ジャーナリストの安積明子氏は「岸田首相は政権基盤を固めるのに必死なあまり、行政全体が見えていないようだ。国際線予約停止でも、批判を受けて朝令暮改で撤回した。政策遂行での環境づくり(=根回し)ができていない。もともと、国民の人気は高くはないが、さらに行政運営で疑問符が付けば、『岸田政権では日本は危ない』と国民に飽きられるだろう」と語っている。

◆第2次岸田政権による主な「不可解な政策・報道」

 日本到着便予約停止と撤回 (産経新聞など、12月2日)

 中国念頭「日本版マグニツキー法」の見送り報道 (共同通信、11月16日)

 外国人労働者の在留期限をなくす方向で検討報道 (日経新聞、11月18日)

 「親中派」の林芳正外相起用と、訪中調整示唆 (BS朝日など、11月21日)

 住宅ローン減税の控除率の縮小を検討 (産経新聞、11月19日)

 金融所得課税の強化検討 (共同通信、11月18日)

 「炭素税」検討の方向 (日経新聞、11月20日)

【私の論評】岸田総理は国民を納得させよ、財務省・中国を納得させる政策をとれば、そっぽをむかれる(゚д゚)!

上の記事には掲載されていませんが、岸田内閣の不安は他にもあります。2021年度補正予算案で約22兆円の国債を発行することで、財政悪化を懸念する報道もありますが、岸田氏がこれを真に受けて東日本大震災時の菅内閣による復興増税のようにコロナ増税が実施されるのではという懸念です。

こうした懸念を抱かざるを得ないのにはそれなりの理由がありすま。それは明らかに財務省が岸田政権に強い影響力を与えているからです。実際、東日本大震災後、財務省には、ホップ(復興増税)、ステップ(消費増税第1弾)、ジャンプ(消費増税第2弾)という考えがあったようです。

野田佳彦氏

ポップは菅直人政権、ステップとジャンプは野田佳彦政権という財務省にとって「いいなり」ともいえる政権で実行されました。大規模自然災害への復興などは、古今東西増税で実施されたことは、それまで一度もありません。これは、本当です疑念を感じた方は調べてみてください。しかし、唯一の例となったのが、復興税です。

その後の安倍晋三政権おいては、既に決められたステップとジャンプが実行され、今後10年間は再増税しないとの意向も出されたものの、財務省は常時増税の機会を狙っているのは間違いないでしょう。

今の岸田文雄政権は、財務省の言いなりだった民主党の野田政権に似ています。野田政権については、かつての「みんなの党」の代表であった、渡辺喜美氏が興味深いことを語っています。これは、民主党政権の最後の、2012年の野田総理による衆院解散に関するものです。


この動画の7:30あたりのところから、渡辺氏が記者になぜこのタイミングでの解散になったのか、問われて以下のように話しています。
「これは、財務省の路線そのものなのであって、とにかく新政権で、予算編成をしたいと・・・。旧政権でつくった予算をグタグタにされるのは困るという財務省の路線が、そっくりそのまま、野田総理を動かしたというだけのことですね。 
党首会談をやったときに、もう自分は財務省に見放されているということを、はっきりと言っていました。その見放された総理が、最後まで財務省路線に乗っからざるをえないと、まあー、非常に情けない内閣ですね」。
後は、ご存知のように野田佳彦氏は財務省の意向を反映した自民党が提案した消費税増税を法定化して民主党政権が壊滅する道を突き進みました。これは、本当に理解に苦しみます。民主党は政権交代直前の選挙の公約では「民主党が政権の座についている間は増税しない」としていました。

岸田政権が野田政権になるかもしれない根拠は他にもあります。それは矢野康治財務次官が月刊「文芸春秋」11月号に書いた記事てす。このブロクでも以前指摘したように、矢野氏は、財政が危機であるとして「ワニの口」と称する一般会計収支の不均衡と債務残高の大きさだけを示したグラフでした。それだけを根拠に衆院選や自民党総裁選を巡る経済対策を巡る議論を「バラマキ合戦」と指摘。

このデータは、会社でいえば一部門の収支と、バランスシート(貸借対照表)の右側にある一部門の負債だけで、財政破綻を主張する全く筋違いというか、幼稚きまりないものでした。これと同じような主張をまともな企業の取締役会などで主張すれば「馬鹿」といわれるくらいのレベルです。矢野氏は会計を全く理解していません。

BSで財務を語れない幼稚な矢野次官

今回の補正予算でもグロス負債(正味債務残高)だけしか見ていないと、国債22兆円増が単なる借金としかみられなくなります。

これに比較すると、安倍・菅義偉政権で行った累次の補正予算では国債100兆円増ですが、それらはほぼ全て日銀が最終的には購入したので、政府と日銀を含む連結されたバランスシートでは負債100兆円増ですが、資産も100兆円増となり、ネット負債は増加していません。このため財政悪化にはならずに、増税という対策も不要でした。

あのタイミングで愚かな危機を煽った矢野氏は本来ならば、更迭されてしかるべきです。安倍・菅政権下で矢野氏があのようなことをすれば、更迭されていたことでしょう。しかし、岸総理は、「いろんな議論があっていい」と言及し矢野次官の処分は「全く考えていません」と明言しました。

これでは、岸田内角は野田内閣の復興税と同じように、コロナ復興税を推進する可能性は否定できません。

もう一つの心配としては、岸田政権が中国にとって都合の良い政権になることです。これは、上の記事でも一部指摘されています。

そもそも茂木さんが幹事長になって、林芳正さんが外務大臣という人事を岸田総理は実行してしまいました。この二人は比較的中国に近いということで有名です。林氏は日中議連の会長です。

茂木幹事長
人事とは、人事賢者の価値観を表すメッセージという側面もありますから、中国側は期待しているかもしれません。しかもそのメッセージは中国に対してだけではなく、全世界的に発信されることを考えると、西側に対して誤ったメッセージになりかねません。
通常はバランスをとって、一方で中国に近い人をつければ、片方は厳しい人を選ぶでしょう。そのため茂木氏が幹事長になったときに、外務大臣は例えば小野寺さんなどにするというのが王道なのでしょうが、岸田総理はそうしませんでした。

そこで、バランスを取るという意味あいでも、安倍晋三氏がマレーシア特使として、マレーシアを訪問した後で、台湾を訪問するということもありえます。特に、安倍氏は現在は、議員という立場ですから、十分あり得ます。

国民からすると、無論増税は反対でしょうし、中国に期待されるような政策には反対でしよう。国民の嫌がることをする政権の支持率は、下がることはあっても上がることはないです。

政権支持率が下がり続ければ、来年の参院選を戦えぬという声があがり、再度総裁選ということにもなりかねません。

そんなことにならないためにも、岸田総理はまともな経済政策、対中政策を実施して国民を納得させるべきです。財務省や中国が納得するような政策をとれば、党内はもとより多くの国民から糾弾されることになります。

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2021年12月2日木曜日

ウイグル弾圧、習主席らの関与示す「新疆文書」が流出―【私の論評】 習近平来日に賛成する政治家や官僚、識者、マスコミ関係者等がいれば、それはまさしく「国賊」!日本は三度目の間違いを繰り返すな(゚д゚)!

ウイグル弾圧、習主席らの関与示す「新疆文書」が流出


習近平と李克強

習近平国家主席をはじめとする中国の指導者たちが、同国の少数民族ウイグル族の弾圧に関与していることを示す文書の写しが、このほど新たに公表された。

 この文書は、ウイグル族に対する人権侵害を調べているイギリスの独立民衆法廷「ウイグル法廷」に9月に提出されたもの。これまで一部が明らかになっていたが、今回のリークで今まで確認されていなかった情報が表面化した。 複数のアナリストは、この文書の中に中国政府高官がウイグル族の大量収容や強制労働につながる措置を求めたことを証明する発言記録が含まれていると指摘する。

 中国はウイグル族に対するジェノサイド(集団虐殺)を一貫して否定している。 ウイグル法廷はウイグル問題が専門の学者3人、エイドリアン・ゼンツ博士、デイヴィッド・トビン博士、ジェイムズ・ルワード博士に対し、文書が本物であるか確認するよう依頼した。

このニュースの詳細は以下のリンクからご覧になってください。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6b116ad23fcbd15ecab628287747bb20d7e39937

【私の論評】 習近平来日に賛成する政治家や官僚、識者、マスコミ関係者等がいれば、それはまさしく「国賊」!日本は三度目の間違いを繰り返すな(゚д゚)!

この記事を見たときに、最初に「新疆文書」という文言が目に入り、7月ごろの出来事を思いまだしました。

それは、何かというと、バイデン米政権は7月13日、産業界に対し、中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害に関与しないよう警告する文書を発表したという報道です。この文書のことを一部の報道機関は、「新疆文書」と報じていました。以下にこれに関する動画を掲載します。


米政府の諮問機関は文書で、ウイグルのサプライチェーン(供給網)に関わると「米国の法律に違反する高いリスク」を伴うと指摘しました。人権侵害に加担した企業だけでなく、融資した金融機関も制裁対象になり得ると強調しました。

ウイグル供給網を関係省庁横断で調査する諮問機関はバイデン政権で初めて警告文書を発表し、「中国はジェノサイド(集団虐殺)と人道に対する罪を犯している」と明記。問題のある中国企業との直接取引に加え、製造段階での強制労働や、民族監視に使われるIT機器の提供など「間接的な取引」を含めて即時停止を求めた。対中投資や金融支援を制限する措置を「厳しく適用する」としました。

今回のBBCによる「新疆文書」はこれとは違い、習近平国家主席をはじめとする中国の指導者たちが、同国の少数民族ウイグル族の弾圧に関与していることを示す文書の写しです。

しかし、今回の「新疆文書」はバイデン政権のそれのうち、中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害に関して明確にその事実があることと、それに習近平など中国の指導者が絡んでいることまで明らかにするもののようです。

現在その真偽が明らかにされようとしているそうですが、はやくして欲しいものです。

米国は、従来から中国の人権侵害を非難してきましたが、米国の情報収集能力はかなり高いですから、故なく中国を批判することはないでしょうに、それに対して中国はことごとく反論してきました。

しかし、今回の「新疆文書」のような証拠がこれからも次から次へと表に出てきて、中国は言い訳をすればするほど国際社会から非難され続けることになるでしょう。中国がいつまでも人権侵害をやめなければ、世界は中国を経済的にも政治的にも遮断して、中国は孤立することになるでしょう。

その中国を日本は二度も救っています。

ベルリンの壁が崩壊した後、東側諸国が次々とソ連の軛から解かれ、ソ連共産党の一党独裁が終焉を迎えてから今年で30年たちました。

天安門事件を引き金として中国共産党による一党独裁体制が崩れていたとしても、何の不思議もなかったはずです。ところが、そのような瀕死の状態であった中国共産党を救ったのが、日本でした。当時の日本政府は、天皇陛下に中国を訪問していただき、さらに世界に先駆けて、経済支援を再開しました。

天皇皇后両陛下(現上皇皇后陛下)の中国訪問を伝える中国の雑誌の日本語版

この日本の経済支援をきっかけにして、米国やEUなどの国々も支援を再開し始めました。このときは、中国共産党を崩壊させるのにはまたとない好機だった思いますが、日本はそのチャンスを自ら棒に振るどころか、中国共産党を支援したのです。

これは、このブログにも以前掲載しましたが、日本は戦時中も中国共産党を救っています。

1994年に中央文献出版社&世界知識出版社から出版された『毛沢東外交文選』によれば、
毛沢東は1960年6月21日に日本の左派文学者・野間宏らに会った時、日本の皇軍に感謝する話をしました(省略)。


1964年7月10日に、日本の社会党の佐々木らと会った時も、佐々木が謝罪するので「謝罪などする必要はありませんよ。もし日本の皇軍が中国の大半を占領していなかったら、われわれは政権を奪取することはできませんでした」「皇軍が来たからこそ、われわれは国共合作をすることができて、だからこそ2万5千まで減っていた(中共の)軍隊は、8年間の抗日戦争の間に、なんと120万人の軍隊に発展することができたのです。皇軍に感謝しないでいいと思いますか?」などと回答しています。

1972年に日本の首相・田中角栄がやって来たときにも、毛沢東は「日本が中共を助けてくれたことを感謝します。もし抗日戦争がなかったら、中共は政権を掌握することはできませんでした」と語っています。


中国を訪問した田中角栄(右)と毛沢東(左)

日本が、中国の満州等に軍隊を派遣する真の目的は、当時のソ連と対峙するためでした。中国の国民党軍と戦ったのは、本来はこの目的を完遂するためでした。ところが、日本軍は本来の目的を忘れ、国民党軍との戦いを本格化し、泥沼にはまり込んでしまいました。

国民党軍との戦いなどは、ほどほどにしておき、ソ連との対峙に主に専念していれば、当時の国際社会も日本を理解したかもしません。日本は、ソ連の防波堤としての評価を受けたかもしれません。しかし、中国大陸の広い地域に戦線を拡大して、結局中国共産党に塩を送ったのです。

さて、現在に話を戻すと、新型コロナウイルスによって世界は一変したのですが、中国・武漢で最初の感染爆発が起きた際、中国共産党当局による情報隠蔽が、パンデミックの引き金になったことを忘れるべきではありません。

さらに中国共産党は、すべての個人情報を国家が管理し、自由を求める人たちを「危険人物」として容赦なく監獄や収容所にぶち込み、チベットやウイグルでの弾圧が、香港でも公然と行われ一国二制度を自ら潰したにもかかわらず、現実から日本政府も国会も目を背けているようです。岸田政権になってから、その傾向がさらに強くなったようにみえます。

昨日も述べたように、台湾侵攻を諦めざるをおえない中国共産党は西側諸国の「反中同盟」を切り崩そうと日本を懐柔しようとしています。手始めが、習近平国家主席の国賓来日実現です。これが実現すれば、日本はまた過去の二度の過ちを繰り返すことになります。ただ、過去とは違い、国際社会は日本のこの動き同調することはないでしょう。日本は中国とともに世界から孤立する道を選ぶことになりかねません。これを未だ林外務大臣ははっきりと否定していません。

日本は、瀕死の中国共産党を2度助けました。3度目は、絶対にあってはならないです。いまはなりを潜めているようですが、今後習近平来日に賛成する政治家や官僚が、識者、マスコミ関係者等がいれば、それはまさしく「国賊」以外の何者でもありません。

私自身としては、台湾有事などよりも、こちらのほうが余程心配です。

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2021年12月1日水曜日

安倍元首相、台湾のTPP参加を支持 中国へは自制ある行動呼び掛け―【私の論評】中国が台湾に侵攻すると考える人は、兵站のことを考えていない(゚д゚)!

安倍元首相、台湾のTPP参加を支持 中国へは自制ある行動呼び掛け

安倍元総理

(台北中央社)安倍晋三元首相は1日、台北市内で開催されたフォーラムにリモートで登壇し、「台湾のTPP(環太平洋経済連携協定)参加を支持します」と語った。中国との関係については「習近平主席と中国共産党のリーダーたちに、繰り返し、誤った道に踏み込むなと訴え続ける必要がある」との認識を示した。

フォーラムは台湾の民間研究機関、国策研究院文教基金会が主催。安倍氏は「新時代の台日関係」と題した講演を行った。台北の会場には鄭文燦(ていぶんさん)桃園市長や林智堅(りんちけん)新竹市長などが出席した。

安倍氏は「日本と台湾がこれから直面する環境は、緊張をはらんだものとなる」と指摘。「自由で開かれた、民主主義の枠組みに、自分たちをしっかりと結び付ける努力を続けることが肝心」との考えを示した。

TPPの参加については、「台湾には参加資格が十二分に備わっている」と強調。「WHO(世界保健機関)のオブザーバー資格など、可能な分野からふさわしい発言権を手にしていくべき」とした上で、「実現に向け、支援を惜しまぬつもり」と述べた。

一方で中国との関係については「自由と民主主義、人権、法の支配という普遍的価値の旗を高く掲げて世界中の人から見えるよう、その旗をはためかせる必要がある」と語った。

また台湾の有事は日本の有事だとし、「日米同盟の有事でもある」と主張。中国に対して「自国の国益を第一に考えるなら、両岸(台湾と中国)関係には、平和しかないということを、繰り返し説いていかねばならない」とした。

安倍氏は、「普遍的価値を重視する私たちにとって台湾こそはキーストーンである」と強調。「まずはWHOへの参加など、台湾の国際的地位を、一歩一歩、向上させるお手伝いをしたい」と述べ、「自由で、人々に人権を保障する台湾は、日本の利益」とし、「世界全体の利益でもある」と語気を強めた。


【私の論評】中国が台湾に侵攻すると考える人は、兵站のことを考えていない(゚д゚)!

安倍総理は、中国に対して以下のような警告もしていました。

「軍事的冒険は経済的自殺への道でもある」と述べ、「中国が台湾に侵攻した場合、世界経済に重大な影響を及ぼし中国が深手を負うことになる」とも指摘したのです。

これについては、このブログで何度か述べてきたようなことを意味しているものと思います。そうです、中国の台湾侵攻は軍事力的にいって無理なのです。侵攻すれば、中国海軍は崩壊し、地上部隊は補給がされなくなりお手上げ状況になるだけです。そうして、大きな損害を蒙るだけではなく、諸外国から経済的にも政治的にも切り離されことになります。

中国側にはおびただしい数の死傷者がでることになります。無論、台湾側にもそれなりの犠牲者がでるでしょうが、それにしても中国側と比較すれば、かなり少ないでしょう。特に中国海軍の犠牲はおびただしいでしょう。

中国海軍は、日米英などの海軍から比較すれば、海戦能力に著しく劣りますが、それでもある程度の時間をかけて養成してきたものが、灰燼に帰し、再建するには途方もない時間と経費を必要とすることになるでしょう。

軍事アナリストの小川和久氏も、中国による台湾侵攻は無理であると断じています。その根拠については、以下のように述べています。
 台湾有事論の高まりを前に、1970年代後半の北方脅威論の時代を思い出している。

 激しさを増す米ソ冷戦のさなか、日本国内では何十個師団ものソ連軍が北海道に上陸侵攻してくるとの危機感が高まり、マスコミでもそれをあおるような報道が相次いだ。

 しかし、現実には海上輸送能力の限界から、北海道に投入できるのは3個自動車化狙撃師団(機械化歩兵師団)、1個空挺(くうてい)師団、1個海軍歩兵旅団、1個空中機動旅団にすぎず、全滅を覚悟しない限り、作戦が発動される可能性はなかった。

 意外かもしれないが、そういう角度から軍事を科学的にとらえることを教えてくれたのは、1等陸佐になったばかりのころの、防衛大学校1期生たちだった。

 つまるところ、このときの騒ぎはワシントン発、そして永田町発の政治的な北方脅威論にすぎなかった。空騒ぎからさめたあと、国民の防衛意識が高まるには長い年月を必要とした。今回の台湾有事論の高まりには同じ側面がある。

当時のソ連軍と同じような輸送力の限界は現代の中国にもあります。 これについては、以前このブログでも述べました。その記事から引用します。

台湾有事を気楽に語っている軍事評論家も忘れているようですが、旧ソ連軍の1個自動車化狙撃師団(定員1万3000人、車両3000両、戦車200両)と1週間分の弾薬、燃料、食料を船積みする場合、30万~50万トンの船腹量が必要だとされています。
旧ソ連軍の演習
舶輸送は重量トンではなく容積トンで計算するからです。それをもとに概算すると、どんなに詰め込んでも、3000万トンの船舶が必要になります。

この海上輸送の計算式は、世界に共通するもので、中国も例外ではありません。むろん、来援する米軍機を加えると、中国側には上陸作戦に不可欠な台湾海峡上空の航空優勢を確保する能力もありません。

このようなことを考えると、中国が台湾に侵攻するのは無理ということになります。輸送力に欠ける中国は、戦力を小出しにせざるを得なく、台湾に兵を送れば、小出しの兵力ではすぐに台湾軍に撃破されてしまいます。

いくら、中国軍が相対的に巨大であるからといって、小出しにしか兵を送れないなら、台湾軍のほうが数的にも圧倒的に有利になり、個別撃破されるだけになります。

しかも、米国は当然のことながら、台湾を攻撃型原潜で包囲するでしょうから、そうなるとただでさえ少ない輸送力が、さらに破壊され小さくなってしまいます。これでは、十分な人員も武器弾薬も送れず、小出しに展開した兵は、逐次台湾軍に個別撃破されることになります。

それに潜水艦で包囲されてしまえば、中国側はこの包囲網を破ることはできません。それでも、強行突破しようとすれば、多くの艦艇は海の藻屑と消えることになります。

以上に関して、詳細については下の【関連記事】のところに、リンクを掲載しておきますので、そちらをご覧になってください。

戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、その著作『補給戦――何が勝敗を決定するのか』(中央公論新社)の中で、「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」と言い切っています。

マーチン・ファン・クレフェルト

実は第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったのです。極限すれば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきました。そう同著は伝えています。

エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎません。

現実の戦いは常に不確実であり、作戦計画通りになど行きません。計画の実行を阻む予測不可能な障害や過失、偶発的出来事に充ち満ちているのです。

史上最高の戦略家とされるカール・フォン・クラウゼビッツはそれを「摩擦」と呼び、その対応いかんによって最終的な勝敗まで逆転することもあると指摘しています。

そのことを身を持って知る軍人や戦史家たちの多くは、「戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る」と口にします。

米陸軍の「寒冷地用」戦闘糧食 

中国は何のために、台湾に侵攻するかといえば、台湾を中国に併合して、台湾を中国の省とするか、対岸の福建省に組み入れることです。台湾を中国の一部として、統治するのが目的です。

台湾を破壊するだけでは意味がないのです。破壊するだけなら、艦艇や航空機を派遣して、攻撃して引き上げれば良いだけです。あるいは、中国本土からミサイルを撃ちまくれば良いです。破壊が足りなければ、何度でも繰り返せば良いだけです。最も簡単な方法は、核ミサイルを数発打ち込めば良いです。しかし、それでは統治はできません。

しかも台湾人は中国に統治されることを拒否していますし、さらには、優れた対艦ミサイルも備えた軍隊を有しています。その他様々な兵器も有しています。このような軍隊に対して、小出しの展開しかできなければ、負けるに決まっています。

中国が勝つと考える人は、兵站のこと、特に陸続きではない海洋を隔てた戦闘地域に対するそれが頭にないのではないかと思います。兵站に考えがいたらない人は、軍事を語るべきではありません。

【関連記事】

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2021年11月30日火曜日

米潜水艦母艦「フランク・ケーブル」 佐世保に入港 原潜運用に変化か―【私の論評】米軍は攻撃型原潜を台湾近海、南シナ海に常時潜航させている(゚д゚)!

米潜水艦母艦「フランク・ケーブル」 佐世保に入港 原潜運用に変化か

佐世保港に入った「フランク・ケーブル」

 米海軍の潜水艦母艦「フランク・ケーブル」が29日、佐世保港(長崎県)へ入っているのが確認された。同艦は全長198メートル、2万2826トン。潜水艦への補給や乗組員の休養、修理の支援などを担う。

 海上自衛隊呉地方総監部によると、同艦はグアムを母港としている。休養や物資の補給を目的に23日、海自呉基地に寄港し、数日間滞在したという。

 佐世保市によると、原子力潜水艦は2020年3月を最後に佐世保に入港していない。米軍の動向を追うリムピース編集委員の篠崎正人氏は「原潜の運用が変わってきている」と指摘。従来は原潜が港に入って補給や休養をしていたが、潜水艦母艦を用い洋上で補給や休養を取るようになってきているという。

 理由について篠崎氏は「新型コロナウイルス感染防止や、(原潜の)姿を見せないことで海洋進出を強める中国に圧力をかけるためではないか」と分析している。

【私の論評】米軍は空母なみの破壊力を持つ攻撃型原潜を台湾近海、南シナ海に常時潜航させている(゚д゚)!

潜水艦母艦とは別名「潜水母艦」ともいい、旧日本海軍も保有していました。おもな任務は、潜水艦に洋上で魚雷や燃料、食料などの消耗品を補充し、潜水艦乗員の休養や交代要員を用意し、さらには整備や応急修理なども行う、いわば洋上の潜水艦基地ともいえる艦です。

また第2次世界大戦ごろまでの潜水艦は通信能力が低かったため、当時は遠洋において通信連絡の肩代わりを担うことも想定されていました。

このように様々な任務を有するため、「母艦」と称されます。補給のみを担う艦は「母艦」ではなく、単なる「補給艦」や「支援艦」と呼ばれます。

海上自衛隊が過去に運用していたなかに潜水艦救難母艦「ちよだ」という艦がありましたが、こちらは「救難」という言葉が入っているように、潜水艦の救難任務も担っていました。

「ちよだ」は船体中央に搭載した深海救難艇(DSRV)での救難任務以外に、潜水艦への補給用として魚雷やミサイル、燃料、食料、真水を搭載でき、さらに潜水艦への電力供給や潜水艦乗組員80名分(約1隻分)の休養設備を有していました。

潜水艦母艦としての機能も有していたからこそ、「ちよだ」は潜水艦救難母艦と呼ばれたのですが、海上自衛隊の方針で、その後建造された同種の艦は、母艦機能をなくし、より救難機能を充実させた内容になったことから、潜水艦救難母艦ではなく「潜水艦救難艦」と名称を改めています。

一方、米海軍は、攻撃型原子力潜水艦(攻撃原潜)と戦略ミサイル搭載原子力潜水艦(戦略ミサイル原潜)を合計で75隻、保有しているためもあり、補給艦的存在の「潜水艦母艦」と、救難艦の「潜水艦救難艦」をあえて別々に保有しています。

航空母艦(空母)や掃海母艦の「母艦」という語句にも同じ意味があります。前者は航空機の補給や整備、パイロットの交代休養、後者は掃海艇の補給や整備、掃海作業員の交代休養にあたるからこそ、「母艦」と付いています。

ちなみに民間船舶である捕鯨母船の「母船」も同じ意味あいです。こちらは捕鯨船団の指揮や補給、乗組員の各種支援にあたる船です。

上の記事では、リムピース編集委員の篠崎正人氏は「原潜の運用が変わってきている」と指摘していますが、それは当然です。

すでにこのブログも過去に何度か掲載したように、昨年の5月より、米軍は潜水艦を少なくと7隻を派遣していることを公表しています。詳細は以下のリンクから御覧ください。

この記事は昨年11月のものであり、筆者は古森義久氏です。
アメリカ海軍の潜水艦が中国への抑止誇示
古森義久氏

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
 この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて5月下旬に報道した。アメリカ海軍は通常は潜水艦の動向を具体的には明らかにしていない。だが今回は太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされた。

 その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされている。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられる。 
 同報道によると、太平洋艦隊所属でグアム島基地を拠点とする攻撃型潜水艦(SSN)4隻をはじめ、サンディエゴ基地、ハワイ基地を拠点とする戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)など少なくとも合計7隻の潜水艦が5月下旬の時点で西太平洋に展開して、臨戦態勢の航海や訓練を実施している。
この記事にもあるように、米軍は新型コロナウイルスの感染がアメリカ海軍にまで及び、空母「セオドア・ルーズベルト」の乗組員の半数ほどの感染だけでなく、他の艦艇にも同様の感染が広がることから起きるアメリカ海軍全体の危機対応能力への懐疑を抑えることも、目的に潜水艦を派遣しているという側面はあると思います。

ただし、米軍が攻撃型潜水艦が抑止力となると考えているのも事実でしょう。何しろ、米攻撃型原潜は、トマホークを百発以上も発射できるような化け物のような代物で、かつてトランプ大統領か「海の下に沈む空母」と形容したくらい、攻撃能力が高いです。

コロナウイルス感染だけが潜水艦派遣の原因であれば、すでに潜水艦を引き上げでも良いはずですが、そうではないことがわかっています。

それは、米攻撃型原潜「コネティカット」が10月2日に、何かの物体に衝突したことが公表されたことで明らかになりました。

米軍は昨年5月あたりから、西太平洋で潜水艦の動きを活発化させており、それは今も継続されているものとみられます。

そうして、共産党のサイトでは、昨年は米原潜の日本への寄港が半減して、82年以降最少であったことがレポートされています。以下にそのサイトに掲載されていたグラフを掲載します。


確かに、寄港回数は減っています。西太平洋に潜水艦を派遣すれば、日本への寄港回数が増えるというのが普通でしょうが、そうではなく、寄港回数が減っているのです。

攻撃型原潜も原潜であることには変わりありません、原潜なら2年間潜航することはできますし、大規模整備も2年間隔くらいで十分です。しかし乗組員中が持ちません。やはり数ヶ月単位(通常は3ヶ月)で帰港してクルーを交代する必要があります。

クルーはいずれかの港に寄港すると別のチームと交代して静養します。当然、この時に食糧などの補給と整備を行います。

だから、日本への寄港回数が減るというのは不思議です。これは、辻褄が合いません。ただ、一つこの齟齬を解く鍵は、やはり台湾情勢や南シナ海情勢に関係しているのだと思います。

米国はすでにこのブログで掲載して説明したように、緊迫している台湾近海に攻撃型原潜を複数隻派遣している可能性が大です。さらに、南シナ海にも要所要所に原潜を潜ませていることでしょう。

メンテナンス中のシーウルフ級攻撃型原潜(コネティカットと同級) 巨大さがよくわかる

台湾近海や南シナ海に常時潜水艦を配置するということになれば、さすがに米国でも、潜水艦の数には限りがあり、交代のために時間をかけて日本等に寄港するのはやめて潜水母艦で潜水艦に対する物資補給と乗組員休息に切り替え効率的に運用するように切り替えたのでしょう。

ただ、潜水母艦での原潜の交代要員の休憩も長い期間は続けられません。さらに潜水母艦自体の物資補給や乗組員の休息も必要です。そのため、攻撃型原潜や潜水母艦も日本等にも寄港するのでしょうが、それにしても特に原潜の寄港回数は減っていると解釈できます。

このブログでは、何度か述べましたが、米軍は中国に比較すると圧倒的にASW(対潜水艦戦闘力)が優れており、米攻撃原潜が、台湾近海、南シナ海に常時潜んでいれば、中国側は迂闊なことはできません。これは、かなりの抑止力になります。

潜水艦の行動は通常公表しないのが普通です。しかし、リムピースや共産党など、我々と目的は違いますが、上記のような情報を提供するので、様々な軍事的な分析をするのに役立ちます。特に、数値情報は役立ちます。

そういう意味では、朝日新聞でさえも役立つことがあります。結局どのような情報であれ、使う人次第であり、良くも悪くもなるということだと思います。

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2021年11月29日月曜日

入国禁止、全世界に拡大 オミクロン株で水際強化―30日から適用・政府―【私の論評】感染症対策の順番を間違えなかった岸田総理に、期待すること(゚д゚)!

入国禁止、全世界に拡大 オミクロン株で水際強化―30日から適用・政府

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」への対応について、記者団の質問に答える岸田文雄首相=29日午前、首相官邸

 岸田文雄首相は29日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染が広がっていることを受け、アフリカ9カ国に限定している外国人の入国禁止を全世界に拡大すると発表した。30日午前0時から適用する。

オミクロン株、欧州・豪で確認相次ぐ 感染拡大受け規制復活―入国、全面禁止も

 岸田首相は首相官邸で記者団の取材に応じ、「最悪の事態を避けるために緊急避難的な予防措置として、外国人の新規入国は30日午前0時より全世界を対象に禁止する」と説明。オミクロン株感染が確認された14カ国・地域からの帰国者に対し、厳格な隔離措置を行うことも明らかにした。

 外国人の新規入国を原則停止している日本政府は、外国人ビジネス関係者や留学生、技能実習生の新規入国を11月8日から例外的に解禁。しかし、オミクロン株の発生を受け、南アフリカなど9カ国にはこの例外を認めないことにしている。政府はこの措置を全世界に広げる。

【私の論評】感染症対策の順番を間違えなかった岸田総理に、期待すること(゚д゚)!

岸田政権、国民のため、全世界を対象に、例外的に認めていたビジネス目的の短期滞在者、留学生、技能実習生などの日本への入国を当面の間、停止することを決定しました。とても評価しますが、進言して説得した政治家、官僚も同様に評価したいです。

家族が日本に滞在しているなど「特段の事情」がない限り、外国人の新規入国は認められなくなる。さらに岸田総理はオミクロン株の感染が確認された国や地域からの日本人らの帰国者に対しても、厳格な隔離措置を実施すると表明しました。

また岸田総理は今回の措置について、「オミクロン株がある程度明らかになるまでの念のための臨時異例の措置だ」と強調しました。

一方、「ナミビアから入国した1名に新型コロナ陽性の疑いがあると報告を受けており、ただちにゲノム解析を行っている」と述べた。解析結果が出るのは4、5日かかることも明らかにしました。

この措置は、さっそく様々なことに影響を及ぼしています。日本で開催するフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル(12月9日開幕、大阪)に暗雲が垂れ込めてきました。 SNSでは「GPファイナルどうなるの?」「日本人だけ出場? 中止?」とザワついています。 

GPファイナルには世界王者のネーサン・チェン(米国)、女子では世界最高得点を連発する15歳の〝怪物ルーキー〟カミラ・ワリエワ(ロシア)が出場予定。例外なく入国禁止となれば、開催に大きな影響を及ぼすことになります。日本スケート連盟は「現段階ではまだお答えできるレベルのことが決まっていないので」としています。 ようやくコロナが終息しかけた中での緊急事態。果たしてフィギュア界最高峰の大会はどうなるか。

カミラ・ワリエワ

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が最初に確認された南アフリカの医師が28日、患者の症状について、「今のところ軽症だ」と述べました。

南アフリカ医師会・コエツィ医師「症状としては、1日2日続く強い倦怠感(けんたいかん)の後に頭痛や体の痛みがある。せきもあるが、ずっと続くものではなくやがてなくなる」

南アフリカの医師会の会長でオミクロン株の患者を診察した医師は、「今のところ重症患者はおらず、自宅での治療も可能だ」と話しました。また、患者に味覚や嗅覚障害は見られず、酸素濃度の低下なども確認されていないということです。

オミクロン株にワクチンが効かない可能性について、医師は「分からない」としつつも、患者の症状は軽いとして、「パニックになる理由はない」と話しています。

オミクロン株は人間の細胞に結合するウイルス表面の突起部分だけで32か所もの変異があります。慶応大の解析によると、世界中で流行した英国由来のアルファ株、インド由来のデルタ株と共通の変異はありますが、両者や南アフリカ由来のベータ株とも違う、別の系統で変異した新型コロナウイルスと考えられるといいます。


分析した小崎健次郎教授(臨床遺伝学)は「過去の流行株と系統が違うため、アフリカで監視の目をくぐり抜けて変異が蓄積したのではないか」と指摘しています。

感染力や重症度は不明だが、変異は細胞への侵入のしやすさや、免疫の攻撃の回避に関係する部位にもありました。東京医科大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「南アフリカの一部地域では感染力が強いデルタ株を 凌駕しオミクロン株に置き替わっている。変異部位も多く、感染力が増している可能性がある」と懸念しています。

日本のメディアは大騒ぎしているようですが、個人レベルではマスクをする、手洗いをする、三密を避けるなどを励行しつつ、この変異株の正体が明らかになるのを待つべきと思います。

ただしこの変異株の正体は分かつていないということは、予想以上に危険な場合もあり得るということで、後でそれがわかってから慌てるよりは、今回の政府の措置は評価したいです。

後でさほど危険性がないということがわかれば、制限を緩めれば良いだけです。逆をやると大変なことになります。大勢の犠牲者から出てから、入国制限をするということでは、取り返しがつきません。

岸田総理、今回はコロナ感染症対策に対して正しい対応をしたと思います。このようなことができるのであれば、他の外交、安全保証や、経済政策なども、まともに実施していただきたいです。

政策は順番を間違えるととんでもないことに・・・・・・

外交でも、安保でも、経済対策でも順番を間違えると、感染症対策と同じく破滅的な結果を招くこともあります。

外交、安保で現在最も重要なのは、中国対策です。世界の趨勢に逆らい、新中国敵な政策をとれば、米国をはじめとする先進国から爪弾きにされかねません。

経済対策においても、金融緩和をしないで、経済を良くしようとしても、できません。韓国のように雇用が激減して、とんてもないことになるだけです。それに、経済が良くなる前に、増税するなどももっての他です。

昨日もこのブログで述べたように、移民政策の前に、まずは国民の賃金を上昇させる政策を実施べきです。賃金があがってもそれでも、人手不足なら、まともな制度設計をして、外国人労働者も受け付けるようにすべきです。そうしないと、政府も産業界も取り返しのつかないことになります。すべての政策において、順番を違えることのつけは大きいです。政策の失敗は、順序を間違える場合がほとんどです。

衰弱した猫に、死んだ後て水や餌を与えても無意味です。生きているうちに、水や餌を与えるべきことは誰にでも理解できます。ところが、政治の世界では、このような過ちを平然として行う政治家が多いのにはしばしば驚かされます。

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2021年11月28日日曜日

政府「特定技能2号」拡大検討 在留期限なし―【私の論評】政府も産業界も実質的な移民政策を実行することで、自分たちの首を絞めることに(゚д゚)!

政府「特定技能2号」拡大検討 在留期限なし


 政府は人手不足に対応するため、外国人労働者の在留資格を緩和する方向で検討に入った。事実上、在留期限がなく、家族帯同も認められる在留資格「特定技能2号」について、現在の建設と造船・舶用工業の2業種だけでなく、人材確保が困難な農業や宿泊業、飲食料品製造業、外食業などにも拡大する考えだ。関係省庁と調整し、来春の正式決定を目指す。

 特定技能は外国人労働者の受け入れ拡大を目的に平成31年4月に新設された。人手不足が顕著な介護や建設、農業など14業種を対象とし、技能水準や日本語能力などによって「1号」と「2号」に分類した。

 「1号」は「相当程度の知識または経験を必要とする技能」が求められる。在留期間は最長5年で、基本的に家族の帯同は認めない。一方、「2号」は「熟練した技能」を持つ外国人労働者が対象で、定められた期間ごとの更新は必要になるが、在留期間の上限はない。家族(配偶者と子供)の帯同も可能だ。

 松野博一官房長官は特定技能制度の意義について「生産性向上や国内人材確保のための取り組みを行った上で、人材確保は困難な状況にあるため、外国人により、不足する人材の確保を図る」と説明。「2号」認定については「無条件に永住を可能とするものではない」と語る。

 出入国在留管理庁によると、9月末(速報値)の「1号」の在留資格者数は3万8337人で、2号はいない。政府は「2号」の業種を拡大することで、労働力不足の解消につなげることを検討している。

 ただ、日本では原則10年以上在留していることなどを条件に永住権が認められ、その後の職種は問われないことから、「2号」の拡大は事実上の「移民解禁」との指摘もある。

【私の論評】政府も産業界も実質的な移民政策を実行することで、自分たちの首を絞めることに(゚д゚)!

「特定技能2号」拡大に関しては、来夏の参院選を控え、支援を受ける業界団体への配慮から前向きな議員もいる一方、自民党には対象拡大に否定的な意見も根強いです。

そもそも、岸田首相は26日の「新しい資本主義実現会議」で、経済界に「3%超の賃上げ」実現を強く求めました。一般的に低賃金と指摘される外国人労働者の受け入れ拡大は賃金上昇にマイナスの影響を与え、首相の経済政策に矛盾します。



松野博一官房長官は26日の記者会見で「国民の人口に比して一定の規模の外国人・家族を、期限を設けずに受け入れて国家を維持する政策を取る考えはない」と明言した。「いわゆる移民政策は取らない」との政府方針を変更したわけではないと強調しました。

「特定技能」は安倍晋三政権の平成30年に成立した改正出入国管理法に基づく制度。安倍氏は当初、保守層の反発を考慮し慎重でしたが、介護や建設、宿泊業などの業界団体の窮状を熟知する菅義偉官房長官(当時)の強い説得もあり、受け入れの方向へかじを切りました。安倍氏は「優秀な外国人材にもっと日本で活躍してもらうために必要だ」と説明し、「移民政策」との批判をかわしてきました。

ただ、自民党には対象拡大に否定的な意見も根強い。来夏の参院選を控え、支援を受ける業界団体への配慮から前向きな議員もいるが、9月の党総裁選で高市早苗政調会長を支持した若手参院議員は「絶対に認めない。党部会などで制度が抱える問題点を徹底的にあぶり出す」と語る。

永住に道を開くことにもなり得る重大な政策転換に際し、十分な国会論議と政府の丁寧で透明性のある説明が求められのは当然です。

高橋洋一氏は、この措置について、「特定技能2号」の全業種への拡大は、自民の公約に見当たらないことが不味いし、これは賃金が下がるということで、経営側は歓迎ですが労働側は不満を持つことになるし、重要な争点なので選挙前に議論すべきであったとしています。詳細は、以下の動画を御覧ください。


上の動画で高橋洋一氏が、語っているように、自民党の「政策BANK」を見ると、「外国人の適正な出入国・在留管理を徹底しつつ、一元的相談窓口の設置など、多文化共生の実現に向けた受け入れ環境を整備するとともに、技能実習制度及び特定技能制度の活用を促進し、中小企業・小規模事業者等の人手不足に対応します」と、最後のページに小さな文字で記されています。

ちなみに「政策BANK」は、以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.jimin.jp/policy/pamphlet/
 極めて分かりにくい文章ですが、これで「国民の支持を得た」と言い張るつもりなのでしょうか。そもそも、特定技能は、日本で学んだ技術を母国で還元してもらうことが目的の制度であるはずですが、報道が本当なら、事実上の「移民受け入れ政策」になります。

移民の受け入れは、欧州諸国でかなりの大問題になっているのに信じがたいです。それに高橋洋一氏が語っているように、賃金が下がるということで、経営側は歓迎ですが労働側は不満を持つことになります。

日本の賃金については以前このブログにも掲載したことがあります。
【日本の解き方】日本の賃金はなぜ上がらない? 原因は「生産性」や「非正規」でなく、ここ30年のマネーの伸び率だ!!―【私の論評】日本人の賃金が低いのはすべて日銀だけのせい、他は関係ない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事からグラフを引用します。

このグラフをみると、日本では30年間賃金があがっていません。これは、一重に日銀の金融政策が間違っていたからであると、この記事では結論づけました。

そうて、最後の結論部分を以下に引用します。
勘違いすれば、とんでもないことになります。たとえば、お隣韓国では、雇用状況がわるいというのに、あまり金融緩和をしないで最低賃金を機械的にあげましたが、どうなったでしょうか。雇用が激減してとんでもないことになりました。今日もテレビで、韓国の悲惨な現状が報道されていました。

日銀が大規模な金融緩和をしないうちに、「非正規雇用」が多いからなどとして、非正規雇用を機械的に減らしてみたり、「企業の内部留保」を機械的に減らすようなことをすれば、がん患者に、突然激しい運動をさせてみたり、厳しいダイエットをするようなものであり、無論賃金が上がるということもなく、韓国のようにとんでもないことになります。

立憲民主党のように「分配なくして成長なし」というのも、これと同じようにとんでもないことになります。成長する前に分配をしてしまえば、韓国のように雇用が激減するだけになります。

考えてみれば、「失われた30年」は、日銀による実体経済にお構いなしに、金融引締を実施し続けたことによるデフレ、政府によるこれも実体経済にお構いなしに増税など緊縮財政を長い間にわたって続けてデフレに拍車をかけてきたことが原因です。

もう、いい加減このような愚かな政策はやめるべきです。

岸田政権には、賃金をあげようという考えは全くないようです。勘違いどころか、意図して意識して、賃金を下げる政策をしようというのですから、お話になりません。

このようなことでは、岸田政権は来年夏の参院選ではボロ負けして、退陣ということになりそうです。

産業界の人たちも良く考えるべきです。日本人の賃金が上がらないということは、これから消費も伸びないということです。消費が伸びなければ、自社製品の売上も伸びないということです。

輸出すれば良いという考えもあるかもしれませんが、まだ十分にコロナから回復していない諸外国への輸出が急激に伸びるとは考えられません。

それに、コロナから回復したにしても、輸入を増やせるのは、賃金の高い先進国であり、現状でも賃金が低い日本がさらに賃金が低いままかさらに低くなるようでは、賃金の高い国々の非人々のニーズやウォンツを把握し、それに対応する製品等の開発は困難になるはずです。

食糧不足が深刻な北朝鮮でトウモロコシ農場を視察する金正恩総書記

なぜなら、賃金の高い人たちには、その人たちなりのニーズやウォンツがあり、それは賃金の低い人たちにはなかなか理解できないからです。たとえば、北朝鮮の人々は、十分に食べることができれば、幸福かもしれませんが、先進国の人はそうではありません。

日本人の賃金が他の先進国より、低くない時代には光り輝いていたソニーが今は見る影もないのは、そのような背景があるからかもしれません。

結局、政府も産業界も実質的な移民政策を実行することで、自分たちのくびを締めることになるのです。そのことを岸田総理は自覚すべきです。

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2021年11月27日土曜日

中国軍、台湾海峡で「戦闘準備パトロール」 米議員団の訪台受け―【私の論評】軍事力以外で台湾併合を目指さざるを得ない中国の道のりは、果てしなく遠く険しい(゚д゚)!

中国軍、台湾海峡で「戦闘準備パトロール」 米議員団の訪台受け


米下院議員5人が25日に台湾を訪問したことを受け、中国軍が26日、台湾海峡周辺で「戦闘準備」に向けたパトロールを実施したと発表した。

「台湾海峡の現在の状況に対応するために関連する行動が必要だ。台湾は中国の領土の一部であり、国家主権と領土を守ることはわが軍の神聖な使命である」とした。ただ詳細は明らかにされていない。

台湾国防部(国防省)は同日、核兵器の搭載が可能なH6爆撃機2機を含む中国軍の戦闘機8機が台湾の防空圏を飛行したと発表した。

マーク・タカノ退役軍人委員長

台湾を訪問した米下院議員団を率いるマーク・タカノ退役軍人委員長は26日、蔡英文総統と会談し、台湾は世界において「善に向けた力」だと称賛し、蔡総統の下で米台関係は過去数十年で最も生産的だと述べた。

【私の論評】軍事力以外で台湾併合を目指さざるを得ない中国の道のりは、果てしなく遠く険しい(゚д゚)!

この報道に関して、一部マスコミは中国の台湾侵攻の脅威を煽っていますが、これは昨日と一昨日もこのブログで述べたようにありえないです。もし、中国が台湾に侵攻したとすれば、台湾と単独と戦ったとしても、中国軍は甚大な被害を受けます。

もし米軍が加勢したとすれば、中国海軍はさらに甚大な被害を受け、事実上壊滅します。どうしてそうなるかについては、昨日と一昨日のこのブログの記事を御覧ください。

壊滅すれば、習近平の権威は地に堕ちます。そのようなことを習近平がするはずもありません。

中国は本音では、軍事的圧力などしても、米国への牽制にもならないと思っているでしょう。さらに、自由主義陣営による北京冬季五輪の『外交的ボイコット』も覚悟しているでしょう。

ただし、そのままにしておけば、習近平国家主席の面子が潰れるため、八つ当たりで台湾へ戦闘機などを台湾防空圏内を飛行させたのでしょう。

中国の王毅(おう・き)国務委員兼外相は26日、バイデン米政権が来月にオンライン形式で開く「民主主義サミット」について、「一つの国の基準に基づいて線引きを行い、分裂と対立を作り出す」と非難した。中国を念頭に置いた新たな連携の枠組みになることを警戒しているようです。


さて、台湾に軍事的に侵攻できない中国はそれでも、台湾を併合しようとしています。

習近平政権は2018年ごろまで、台湾社会にそれなりにうまく浸透していました。例えば「恵台31条」です。景気が悪かった台湾の人々に、中国での雇用を提供するなどの施策を盛り込んだ台湾融和策です。

この取り組みはある程度効果を発揮し、台湾の人々の間で対中感情が向上。蔡英文政権がこの年の地方選で惨敗したことと、中国が進めたこの融和策に台湾の人々が応じたこととの間には関係性があったと考えられます。

しかし、2018年あたりからは、雲行きが危うくなりはじめました。2119年1月の総統選で蔡英文総統陣営をけん制するため、中国は2018年8月から中国大陸から台湾への個人旅行を停止しました。中国大陸から台湾には2017年には100万人を超える個人観光客が訪れたのですが、中国からの旅行客に頼る台湾の観光業に大打撃となりました。

しかし、このことが台湾に大いに幸いしました。最近の研究では、中国では2018年12月あたりの時期からコロナの感染があったのではないかとされています。その時期よりずっと前の8月から台湾には中国から個人客はいませんでした。

台湾のコロナ対策は世界でもトップクラスであり、感染者、死者数とも桁違いに少ない状況でしたが、このように中国からの旅行客がいなかったこともプラスに働いたのは間違いありません。

そうして、流れを完璧に変えてしまったのが、2019年1月に発表した習5点でした。中国の対台湾政策をまとめたものです。

習5点の骨子は以下のようなものです。
第一:統一促進と中国の夢
第二:一国二制度と民主協商の呼びかけ
第三:一つの中国原則と台湾独立反対
第四:両岸融合と同等待遇
第五:中華民族アイデンティティ
この中にある「外部の干渉や台湾独立勢力に対して武力行使を放棄することはしない」という文言を、台湾の人々が「台湾への軍事侵攻を妨げない」と理解して猛反発し、それが蔡英文総統への支持拡大にもつながりました。

中国はその後、香港で民主派を弾圧。これが蔡英文政権への支持をさらに拡大させ、同政権を2020年に再選させました。それと同時に、コロナ下でのチャーター機問題などで台湾の人々が抱く反中感情は悪化の一途をたどりました。

この状況を改善すべく、中国は「愛国統一力量」を養成する取り組みを進めています。台湾の若者、社会、企業の中に中国のシンパを増やしていくと、同時に台湾の対岸に位置する福建省と台湾の一体化を進める考えです。ただし、これは容易なことではありません。台湾が抱く対中不信感は非常に強いものがあります。

中国はこれまで台湾の国民党との協力、すなわち「第3次国共合作」を進めて統一に至るシナリオを描いていました。しかし、国民党があまりに弱くなりすぎました。

そのため現在は、国民党への働きかけよりも、台湾の社会全体に訴えることを重視しています。それが愛国統一力量の養成なのです。台湾で「愛国者」を育て、彼らと一緒に統一を目指す。しかしこれは長期になるでしょうし、容易ではありません。


したがって、2024年の次期総統選にも中国は確実に介入するでしょうが、工作対象としての重要度は以前と比較すれば薄れてきたといえるでしょう。

中国に台湾に侵攻できるだけの軍事力があれば、このような回り道などせず、もうとうにチベットやウィグルがそうであったように、台湾も侵攻されて、中国の一つの省か、福建省の一部になっていたことでしょう。

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2021年11月26日金曜日

中国軍改革で「統合作戦」態勢整う 防衛研報告―【私の論評】台湾に侵攻できない中国軍に、統合作戦は遂行できない(゚д゚)!

中国軍改革で「統合作戦」態勢整う 防衛研報告


 防衛省のシンクタンク、防衛研究所は26日、中国の安全保障に関する動向を分析した年次報告書「中国安全保障レポート2022」を公表した。中国は習近平国家主席が主導した軍改革により、伝統的な陸海空の軍隊に加え、宇宙やサイバーなどの新たな領域を加えた「一体化統合作戦」が遂行できる軍体制を整えたと指摘した。ただ、残された課題も多く、今後の動向に注視が必要と訴えた。

 報告書のテーマは「人民解放軍の統合作戦能力がどこまで深化したのか」。2012年に発足した習体制のもとで断行した建国以来最大規模の軍改革について、一体化統合作戦が実現可能な態勢を整えたと評価した。

 習体制の軍改革では、全土を5つの「戦区」に再編し、陸海空各部隊の指揮権限を付与している。レポートでは、中央と各戦区にそれぞれ作戦指揮システムを導入し、台湾周辺や南シナ海での訓練を活発化させていると分析した。

 一方、レポートでは指揮系統や人材育成制度など細部にわたり分析を加え、課題もあぶり出した。陸海空司令部と戦区の間の権限調整や、各戦区に配置された政治委員の指揮権限などが残されており、「その克服には時間がかかると目される」とした。

 また、中国軍が各レベルで人材育成に力を入れているとも指摘した。各戦区の政治委員が作戦指揮や科学技術も学び、統合作戦の指揮を可能にすることで、共産党体制との両立を模索しているとした。

【私の論評】台湾に侵攻できない中国軍に、統合作戦は遂行できない(゚д゚)!

このレポートは以下のリンクからご覧いただけます。
http://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/pdf/china_report_JP_web_2021_A01.pdf
今年のレポートは、1991年の湾岸戦争以降に中国が本格的に研究を始め、2000年代半ばから提唱した「統合作戦構想」に焦点を当てています。

統合作戦そのものは、中国独自のものではなく、同じ軍隊における異なる軍種・部隊間が連携して行う軍事作戦であり、第二次世界大戦の頃から重要性が認識されるようになってきました。その必要性としては軍事技術特に航空機、電子戦、ミサイルの発達によって作戦地域における前線、後方、地上、空中などに限定されることなく戦力が複雑に交錯することになったことが挙げられます。

また、集団安全保障体制の重要性が高まり、軍隊内の意思疎通を万全にして連合作戦を実施する必要性が出てきたことがあります。また軍隊に対する政治統制の希求、徹底した合理化、効率性と経済性の追求なども理由として大きいです。

中国の「統合作戦構想」とは、簡単に言ってしまうと、陸海空の「伝統的安全保障領域」に、宇宙やサイバー電磁波、認知領域など「新型安全保障領域」を連動させるものです。レポートでは、習近平指導部が建国以来最大の軍改革を断行し、習氏の統制力・指揮権限が強化され、統合化を重視した軍上層部の人事が行われたことなどを挙げ、「構想を実現し得る体制を整備した」と記述しています。

また中国軍が台湾周辺や南シナ海での訓練を活発化させていることについて、「一連の訓練を通じて、各軍種間で情報共有体制と指揮体制システムの相互接続などを強化している」と指摘しました。

さらに人材育成面では、軍の学校やオンライン教育によって統合作戦人材の育成に力を入れていることを紹介する一方、課題として、軍と民間との給与面の差が大きく、高度な科学技術知識に優れた人材の確保、維持、育成が難しいことなどを挙げています。

著者の防衛研究所・杉浦康之主席研究官は、今年のテーマについて「中国の軍改革は2020年に完成することになっていた。一体、中国はどこまで能力を強化できたのか、この時点で評価するのは重要と考えた」と語りました。

「統合作戦構想」自体は、いずれの軍隊でも考えておくべきことであり、いずれ将来の戦争はこのような作戦に基づき実行されるようになるのは間違いないでしょう。しかし、それと現状の差異はまだまだあります。

昨日も述べたように、中国には台湾に侵攻できるだけの力はありません。それについては、機能はある記事を引用しましたが、本日は再度別の角度から述べてみます。

中国が台湾を武力統一しようとする場合、最終的には上陸侵攻し、台湾軍を撃破して占領する必要があります。来援する米軍とも戦わなければならないです。

国防関係の展示会で展示された対艦ミサイル「雄風3」とキャニスターの模型(手前)=2015年8月、台北市内

その場合、中国は100万人規模の陸上兵力を発進させる必要があります。なぜなら台湾軍の突出した対艦戦闘能力を前に、上陸部隊の半分ほどが海の藻くずとなる可能性があるからです。

それに、昨日も述べたように、日米の潜水艦隊が台湾に加勢すると、上陸部隊のさらに半分が海の藻屑となります。これでは、台湾に到達する前に、全部隊が撃破されることになります。

日米が加勢しないとしても、100万人規模の陸上兵力を投入するためだけにでも5000万トンほどの海上輸送能力が必要となります。これは中国が持つ全船舶6000万トンに近い数字です。

台湾有事を気楽に語っている軍事評論家も忘れているようですが、旧ソ連軍の1個自動車化狙撃師団(定員1万3000人、車両3000両、戦車200両)と1週間分の弾薬、燃料、食料を船積みする場合、30万~50万トンの船腹量が必要だとされています。

旧ソ連軍の演習

船舶輸送は重量トンではなく容積トンで計算するからです。それをもとに概算すると、どんなに詰め込んでも、3000万トンの船舶が必要になります。

この海上輸送の計算式は、世界に共通するもので、中国も例外ではありません。むろん、来援する米軍機を加えると、中国側には上陸作戦に不可欠な台湾海峡上空の航空優勢を確保する能力もありません。

それだけではありません。軍事力が近代化するほど、それを支える軍事インフラが不可欠です、中国側にはデータ中継用の衛星や偵察衛星が決定的に不足しています。

その不足したインフラも、昨日も述べたように米軍が台湾に加勢することになれば、米国は真っ先に攻撃型原潜を派遣し、それをもって中国軍の偵察衛星の地上施設やレーダーなどを破壊するでしょう。そうなると、中国は目を塞がれた状態で戦わざるを得ないです。

しばしば脅威が喧伝される空母キラーと呼ばれる対艦弾道ミサイルも、移動する空母を追跡して直撃する能力には至っていません。さらに、これが機能したにしても、海に潜航する米国の攻撃型原潜を沈めることはできません。そういう中国側が、サイバー攻撃を仕掛けたにしても、上陸作戦の成功がおぼつかないのは明らかです。

それよりも何よりも、昨日も掲載したように、初戦において米攻撃型原潜が3隻くらいででも、台湾を包囲すれば、最初から中国の艦艇も、航空機も台湾に近づくことすらできません。近づけば破壊されます。こうすれば、米軍も台湾軍もほとんど犠牲が出ません。中国軍が無駄に犠牲を増やすだけになります。

中国軍が素早く行動して、運良く台湾に上陸部隊を揚陸できたとしても、その後に米攻撃型原潜に台湾を包囲されてしまえば、上陸部隊に対して補給ができなくなりお手上げになります。

そんなことよりも、注意すべきなのは、台湾国内で親中国的な世論が生まれ、内乱のような混乱に乗じて、傀儡(かいらい)政権が登場することでしょう。中国によるあらゆる手段を駆使するハイブリッド戦こそ警戒すべきです。

米軍トップのミリー統合参謀本部議長

6月17日、米軍トップのミリー統合参謀本部議長は上院で「中国が台湾への侵攻能力を備えるには長い時間がかかり、その意図もない」と述べ、3月の米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官(当時)の「中国の台湾への脅威は6年ほどで現実のものとなる」との発言を否定しましたが、上記のようなリアリズムに基づいていることを知っておくべきです。

先に述べたように、「統合作戦構想」自体は、中国に限らずいずれの国も持っていてしかるべきであり、そこに向けて努力すべきものだとは思います。

しかし、台湾に侵攻できない中国軍が、組織改編等したからといって、すぐに精緻な統合作戦ができるというわけではありません。その前にすべきことが多くあります。その道のりはまだまだ遠いとみるべきでしょう。

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