2021年12月26日日曜日

「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」―【私の論評】中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れない(゚д゚)!

 「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」

 韓国でトラックなどディーゼル車に使われる尿素水(アドブルー)の需要が逼迫(ひっぱく)し、流通に打撃を与えたことが話題になった。日本でもフリマアプリで高値で取引されており、韓国メディアでは、「日本も混乱の兆しがある」と報じたが、果たして本当なのか。

 韓国では、アドブルーの原材料となる産業用尿素の97%以上を中国に依存しているが、中国が輸出規制したことで物流や社会インフラが混乱し、詐欺事件まで発生した。

韓国で11月、尿素水確保のため列を作るトラック

 一方、中央日報(日本語電子版)は「韓国批判した日本も『尿素水大乱』の兆し…」と報じている。

 「価格が高騰していることは事実で、企業側から手に入りづらいと聞いている。ただ国内の製造メーカーはフル稼働していると聞いており、需要逼迫の明確な理由が分からず、われわれも困惑している」

 そう語るのは、全日本トラック協会の担当者だ。企業側が必要以上の在庫を抱えていることに加え、アドブルーの転売が横行している可能性があると推察する。

 フリマアプリ「メルカリ」を確認したところ、数多くのアドブルーが出品されており、従来1リットル当たり300円程度のものが1000円程度で取引されている。中には10リットルのアドブルー57個を約54万円で取引したものまであった。メルカリは21日、冷静な行動を取るよう呼び掛けた。出品者に入手経路を確認する可能性もあるという。

 そもそも日本は韓国と違って、アドブルーを国内で生産できるはずだが、なぜ逼迫しているのか。

 経済産業省は「10月15日からアドブルー用の尿素について中国が輸出を停止している状況のためだ。ネット上での高額な出品は把握しており、対策は不断に検討している」(素材産業課)と回答した。

 中国では尿素の原料となるアンモニアの生産に不可欠な石炭不足が輸出規制の背景にあった。

 一方、国内最大級の商用生産尿素プラントを持つ三井化学は「アドブルーの原材料が液化天然ガス(LNG)のため、中国の影響は受けていない。ただ10月中旬から11月末にかけて定期修理のため工場の稼働を停止していた。稼働停止中も在庫をお客さまに適切に供給しており、現在は高稼働を続けている」(コーポレートコミュニケーション部)と回答した。

 中国の影響と大手の一時的な稼働停止が重なったのが要因だと考えられるが、前出の経産省担当者は「早ければ来年1月を目途に需要逼迫の緩和が期待できる」と話す。

 国内での影響は限定的といえそうだ。

【私の論評】中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れない(゚д゚)!

日本ではまた転売ヤーが暗躍しているようではありますが、まだメルカリで転売して、小遣い稼ぎをしようという連中だけのようではあります。

どうやら、組織的に大掛かりに買い占めをしようとする大手転売ヤーや、中国企業でもその動きはないようです。

これにはやはり過去の苦い経験等が関係していると思います。そうです、あのマスクの転売です。日本でマスク不足になった背景には、日本国内の大掛かりな転売ヤーや中国の転売ヤーが比較的大きな資本を用いて、転売用マスクを買い占めたり、中国企業が多数マスク製造業に参入したうえで備蓄したりで、値上がりを待って売ろうとしていたことも大きな原因の一つです。

中国英字紙グローバル・タイムズの昨年7月の記事によると、新型コロナウイルスの流行が下火になった中国で、マスクの供給能力が需要を大幅に上回り、価格が急落していたと報道されています。

当時の価格は昨年2月の水準から80―90%も下落。年末までに95%の業者が経営破綻し、米食品医薬品局(FDA)や欧州連合(EU)の輸出許可を有する5%しか生き残れないとの予測も出ていました。

同紙によると、コロナ流行が本格化した昨年2月には数百社程度だった中国のマスクメーカーは1万社を突破。1―6月の繊維製品(マスク含む)輸出額は前年同期比32・4%も増加したそうです。

専門家によると、既に国内のマスク生産能力は世界全体の需要を上回り、「世界中の人が毎日1枚使ったとしてもなお、中国の生産能力は過剰だ」(大健康国際のバイ・ユ氏)としていました。

いわゆる、アベノマスクが配布されはじめたのが、4月の17日からですから、これもマスク転売ヤーや中国企業などに対して、インパクトを与えたのは間違いありません。アベノマスクは、布製でしたが、これもかなりインパクトがあったと思います。

もし、この布製マスクが日本で普及した場合、布自体は日本国内ではありふれたものなので、紙製が不足しても、布製で代替する可能性高いです。これに、あせった日中の転売ヤーや中国企業が4月あたりから買い占め、備蓄などをやめて、一斉に販売に転じたわけです。

日中の転売ヤーや中国のマスク業者がマスクで通常以上に儲けらた期間は、おそらく半年にも満たなかったでしょう。備蓄や、転売目的で買い占めをした組織の中には大損をしたところもかなりあるでしょう。

これについては、先日もブログに掲載したばかりです。私自身は、いわゆるアベノマスクは、日中の転売ヤーや中国企業などへの牽制になったものと確信しています。

このような状況を日中の組織的転売ヤーや中国企業などは見聞きしているはずです。マスク騒動の二の舞いにはなりたくないでしょうから、現在個人の転売ヤーのなかには転売するものもいるようですが、組織的な転売ヤーはまだ現れていないのでしょう。中国ではそもそも、原材料が少ないので、そもそもモノが入りにくい状況ですし、新規参入する企業もないのでしょう。

もし、マクス騒動とその後の組織的転売ヤーの没落がなければ、今ごろ日本でも転売ヤーが暗躍して尿素水の買い占め等を行っていたと思います。

かつて黄色いダイヤと呼ばれたカズノコ

日本ではかつて買い占めで大きな非難を浴び、会社が倒産したり、社名に傷がついたりする大事件がありました。それは、1980(昭和55)年の「カズノコ買い占め事件」です。

カズノコといえば、正月のおせち料理には欠かせない食べ物。ニシンの卵を原料にするカズノコは「黄色いダイヤ」とも呼ばれる高級品です。

カズノコが高級品となる理由は、漁期が短いことです。多くはカナダやアラスカで取れますが、だいたい3月から4月までの1か月間しか漁ができません。

そうして、取り扱う水産会社にとってもリスクの高い商品です。というのも、春ごろに取って加工し貯蔵できるにもかかわらず、売れるのは年末の1か月ぐらいしかないのです(卸は10~11月)。

そのため、買い付ける際は正月前にどれくらい売れるかを予測して価格を決めなければなりません。うまくいけば利ざやが稼げますが、売れなかったら大損です。

カズノコを仕入れる水産会社が利益を得るために考えるのは、市場価格だけではありません。為替相場も重要です。

仕入れたときよりも円高であれば、その分利益も増えます。いわゆる北商倒産事件の起こる1970年代後半は円高が進んでいる時期でしたから、いわゆる北商倒産事件前年の1979(昭和54)年も例年通り利益が得られるだろうと考えられていました。

北商の倒産を伝える当時の新聞紙面
三菱商事はそれを見越して、子会社である水産会社「北商」を通じて例年通り大量のカズノコを買い付けていました。ところが、1979年は思ったほど為替相場が円高になりません。

在庫を放出すればダメージを食い止められますが、カズノコの価格は暴落して業界全体に影響が出てしまいます。

そこで同社は卸の時期になっても在庫を売らず、年末が近づき価格が上がるのを待つことにします。そうなると、今度は市場への供給量が減り価格は高騰に転じます。

正月には欠かせないカズノコは、それでも売れるはずでした。しかし多くの人は買わず、「今年は高いから諦めよう」と思ったのです。

この予想だにしなかった「カズノコ離れ」によって、大量の在庫を抱えた北商は経営が悪化し、倒産してしまいます。

しかも大量の在庫を抱えての倒産だったことから、親会社である三菱商事はマスコミから買い占めをもくろんだとして大きな批判を浴びることになったのです。これは「カズノコ買い占め事件」として、今なお日本の経済史に残る事件として語り継がれています。

どんな理由や意図があったとしても、価格が高騰している中で大量の在庫を抱えていれば「買い占め人」のそしりを受けることは否めません。

転売ヤーやマスク事業に参入した中国企業の没落や、北商倒産事件の事例などをみているとドラッカーの「社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させる」という言葉を思い出してしまいます。

ドラッカーは、企業の社会的責任について以下のように述べています。
社会的責任の問題は、2つの領域において生ずる。第一に自らの活動が社会に対して与える影響から生ずる。第二に自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生ずる。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)
工場の目的は、騒音を出し、有害なガスを出すことではありません。顧客のために高性能の製品をつくることである。そのために騒音を出し、熱を出し、煙を出す。これら社会に及ぼす影響は、組織の目的に付随して起こる。かかる副産物はゼロとすることが理想です。

他方、組織は社会環境のなかに存在します。それは社会の機関です。したがって社会自体の問題の影響を受けざるをえないのです。地域社会が問題視せずとも、社会の問題は組織にとって関心事たらざるをえないです。健全な企業、健全な大学、健全な病院は、不健全な社会では機能しえません。

あらゆる組織が、自らの本業を傷つけない限りにおいて、それら社会の問題の解決に貢献しなければならないのです。

社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させるとドラッカーは言います。企業は社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済がその企業は有用かつ生産的な仕事をしていると見なす限りにおいて、その存続を許されているにすぎないのです。
社会性にかかわる目標が必要となるのは、マネジメントが社会に対して責任を負うからではない。企業に対して責任を負うからである。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)

そもそも、組織的な転売ヤーとか、 短期的な儲けのためだけに新たな事業に参入するなどの組織は、組織ではあるものの、とてもまともな組織とは呼べません。

健全な社会においては、まともでない組織は生き残れないのです。たとえ、当初はまともな組織であっても、途中からまともでなくなった組織は生き残れないのです。そうして、不健全な社会ではまともな組織は機能しえません。

それは、特に中国にあてはまるでしょう。中国のような不健全な社会では、まともな組織は機能しえないのです。

特に最近の中国共産党の大企業に対する規制などは、いままで中国政府を支えてきた富裕層の反発を招くことになり、多くの一般国民からの反発に加え富裕層からの反発も招くことになれば、中国共産党の当地の正当性の基盤が揺らぐことにもなりかねません。

米中両サイドから中国デカップリンクがはじまり、チャイナ・リスクはさらに破滅的になりました。中国当局による中国企業への統制強化が新たな「チャイナ・リスク」となってるのですから、日本企業だけが安泰でいられるわけなどありません。

尿素は、石炭から作られますが、海外メディアなどによりますと、米中の対立によって、米国と歩調を合わせたオーストラリアに対し、中国は石炭の輸入を停止。尿素の原料となる石炭の不足に加え、中国国内では「農業の肥料」としての用途が高いため、そちらを優先し、尿素水の輸出を制限したのです。

中国の尿素水製造会社、特に海外輸出の多い企業は打撃を被っていることでしょう。中国ではこのようなことは、しょっちゅうおこります。現在は尿素水てすが、今後は様々な分野でこのようなことが起こり続け、中国の国内のあらゆる産業が毀損されることになるでしょう。

日本のような比較的まともな社会では、まともな企業こそが生き残るでしょうが、中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れないのです。だから、儲けを狙った新規参入が一般化しているのです。マスク騒ぎはその典型例です。誰もがまともに事業をして、成り立つのなら、このようなことはないはずです。

中国に拠点を持つ企業も、なるべくはやく撤退すべきです。もう、中国でまともにビジネスができると考えるのは大きな間違いです。

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