ドナルド・トランプ前大統領 |
ヒル紙に先週出た論説は、ドナルド・トランプ前大統領が2017年に実施した減税が富裕層よりも労働者―そして中間層に利益をもたらしたことが、IRSのデータから明らかだと認定した。
2018会計年度(2017年10月~2018年9月)の財政収支そのものは、1132億ドルの赤字となっていました。この数字は、6年ぶりの水準でした。
しかし、それが「トランプ減税」に結び付けられて日米のメディア報じられたのは、強引に過ぎました。なぜなら、税収を主とする歳入そのものは、減税が実施される2017会計年度よりも増えていたからです(923億ドル増)。
財政赤字が膨らんだ主因は、それ以上に歳出が増えたことによるものでした(1270億ドル増)。
歳出がかさんだ要因として最も大きかったのは、公的債務への「利払い」が増えたこと(620億ドル増)。背景には、米連邦準備理事会(FRB)が引き締め政策として、政策金利を引き上げたことがありました。
そうして「利払い」に次ぐ歳出拡大要因は「国防費」です(333億ドル増)。これも、中国の覇権拡大に対抗するためのものでした。軍事費を減らし続けたオバマ政権のツケであり、未来の平和維持のためのコストです。
つまり、財政赤字拡大の"主因"はどちらも、減税したこととは別の話だったのです。
こうした事実を前提にすると、当時の報道の、「減税が財政赤字拡大の主因」という書き方はあまりにもミスリーディングだったと言わざるを得ません。
「IRSの発表した所得データは、共和党による税制改革法によって平均してすべての所得階層が大幅に利益を受け、中でも最大の受益者は、非常に多くの民主党が主張しているように上位1パーセントではなく、労働者・中間所得層であったことを明らかに示している」と、保守派シンクタンク・ハートランドインスティテュートの社会主義研究センター所長である著者のジャスティン・ハスキンズは書いた。
ハスキンズはIRSデータを分析して、納税者に以下のような利益があったことがわかったと述べた。「実際のところ、共和党による2017年の税制改革法は、約束されたとおりのことを実現した。つまりすべての所得グループの税金を引き下げ、中間所得世帯に最大の利益をもたらし、経済成長に拍車をかけたことで貧困を減らし豊かさを増すのに役立った」とハスキンズは書いた。
- 1万5千ドルから5万ドルの所得層では、法成立後でIRSの全データが得られる最初の年である2018年に、16パーセントから26パーセントの減税となった。
- 5万ドルから10万ドルでは、平均で15パーセントから17パーセントの減税。
- 10万ドルから50万ドルでは、11パーセントから13パーセントの個人所得税の減税。
- 50万ドル以上では、平均9パーセント以上の減税となり、100万ドル以上では平均で6パーセント未満の減税となった。
訳注:記事の引用元と思われる論説
【私の論評】トランプ減税が花咲いた米国、日本には花さか爺はいないのか(゚д゚)!
トランプ減税により、米国の財政赤字は10年間で1兆ドル強増える見込みで、中期的に米長期金利の上昇要因となり、結局富裕層だけが恩恵を受けるなどとされました。しかし、上の記事ではそうではなかったことが明らかにされました。これについては、トランプ減税が導入された直後の2018年でも、明らかになっていました。
2018年日経新聞(1月18日電子版)に掲載された表 |
しかし、それが「トランプ減税」に結び付けられて日米のメディア報じられたのは、強引に過ぎました。なぜなら、税収を主とする歳入そのものは、減税が実施される2017会計年度よりも増えていたからです(923億ドル増)。
財政赤字が膨らんだ主因は、それ以上に歳出が増えたことによるものでした(1270億ドル増)。
歳出がかさんだ要因として最も大きかったのは、公的債務への「利払い」が増えたこと(620億ドル増)。背景には、米連邦準備理事会(FRB)が引き締め政策として、政策金利を引き上げたことがありました。
そうして「利払い」に次ぐ歳出拡大要因は「国防費」です(333億ドル増)。これも、中国の覇権拡大に対抗するためのものでした。軍事費を減らし続けたオバマ政権のツケであり、未来の平和維持のためのコストです。
つまり、財政赤字拡大の"主因"はどちらも、減税したこととは別の話だったのです。
こうした事実を前提にすると、当時の報道の、「減税が財政赤字拡大の主因」という書き方はあまりにもミスリーディングだったと言わざるを得ません。
むしろ注目すべきだったのは、「減税したにもかかわらず、歳入が増えたこと」です。連邦法人税率を10%以上も引き下げ、個人所得税も下げるというのは、かなり大胆な減税でした。
さすがに法人税収入は大幅に落ち込みました(923億ドル減)。しかしそれを上回って、個人所得税が増え、減税分を帳消しにしていたのだ(964億ドル)。その背景は、減税や規制緩和による歴史的な好景気でした。そうなると「減税が赤字の主因」という論は、ますます苦しく見えまました。
「税率を下げ、税収が増える」という現象が起きていたのです。
大幅な歳出拡大の影で起きている、この重要なパラドックスにこそ注目すべきだったのです。なぜ報道はそれを黙殺したのでしょうか。
トランプ景気については日米メディアともに「副作用がある」「脆弱だ」などと議論していました。しかし少なくとも新聞は、まずは目の前の現象を素直に報じるべきでした。
以下に、世界各国の名目GDP成長率(1980年を1.0とする)を掲載します。
明らかに、日本だけが伸び率が低いです。これは、過去に、特に平成年間【明仁(第125代天皇)の在位期間である1989年(平成元年)1月8日から2019年(平成31年)4月30日まで。】のほとんどの期間を、日銀は金融引締をし、財務省は緊縮財政を主導して、消費税を何度もあげ、その他の緊縮財政を実施してきたからにほかなりません。
トランプ減税では、富裕層よりも労働者―そして中間層に利益をもたらしたことがはっきりしました。日本でも、減税をすれば、このような成果が期待できます。消費税の減税が法的に難しいというのなら、所得税でも、その他でも様々な減税ができるはずです。
是非実行して、していただきたいものです。岸田政権では絶対に無理でしょうから、ポスト岸田に期待したいものです。
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