2021年12月4日土曜日

中国、独自の「民主」強調 白書公表、米けん制―【私の論評】人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が、法律上正当化されている中国は断じて民主国家ではない(゚д゚)!

中国、独自の「民主」強調 白書公表、米けん制


 中国政府は4日、「中国の民主」と題した白書を公表した。共産党主導の「中国式民主主義」の特色と成果を強調する内容で、米国主催で近く開かれる「民主主義サミット」を意識したとみられる。
 白書は2万字超から成り、「民主主義は全人類共通の価値観で、党と国民が一貫して守ってきた重要な概念だ」と主張。民主主義には国の歴史・文化に根差したさまざまな形態があるとした上で、党の指導による民主主義追求の歴史や、人民代表大会制度の有効性などを説明している。

【私の論評】人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が、法律上正当化されている中国は断じて民主国家ではない(゚д゚)!

中国で民主主義が実践されているとは、誰も思っていないでしょう。中国国内でもそうは思わない人が多いと思います。無論、それを公言できないでしょうが、それをもってしても民主主義とはいえないです。

民主化というと、すぐに思い出すのが下の高橋洋一氏のグラフです。そのグラフを掲載したこのブログの記事のリンクを以下に掲載します。
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開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。
これをG20諸国の時系列データで見てみよう。1980年以降、一人あたりGDPがほぼ1万ドルを超えているのは、G7(日、米、加、英、独、仏、伊)とオーストラリアだけだ。 
以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。

民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。 
中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。それと同時に、各種の経済構造の転換が必要だといわれる。

その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。
共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。アリババへの中国政府の統制をみると、やはりだ。

こう考えると、中国が民主化をしないままでは、中所得国の罠にはまり、これから経済発展する可能性は少ないと筆者は見ている。一時的に1万ドルを突破しても跳ね返され、長期的に1万ドル以上にならない。10年程度で行き詰まりが見えてくるのではないだろうか。

中国はどの程度の民主化をすればいいかというと、民主主義指数6程度の香港並みをせめてやるべきであった。しかし、逆に香港を中国本土並みにしたので、香港の没落も確実だし、中国もダメだろう。

中国は国全体としては、 世界第二の経済大国になったのですが、一人あたりのGDP(2018年)では、約9,600ドルで第72位に過ぎません。さらには、この統計自体の信憑性は全く明らかではありません。

全く信用できない中国のGDP統計

やはり、民主化されないと、経済も伸び悩むのです。なぜそのようなことになるかといえば、民主化、経済と政治の分離、法治国家化が実施されていれば、そこには多くの中間層が生まれ、それらが自由に社会・経済活動を行うことができて経済発展するのですが、そうでないと経済発展には限界がしまうのです。それが中所得国の罠です。

それら中間層が、あらゆる階層、あらゆる地域、あらゆる段階別で社会を変革するイノベーションを行うことができるからです。

あらゆる段階別という言い方には少し説明を要するかもしれません。貧困層が住む地域にいきなり水道や電気を設置しても、貧困層は貧困であるがゆえに、電気料や水道料が支払えず無意味です。

しかし、そういう地域にも、井戸を掘ったり、水を楽に手に入れる手段を導入すれば、経済的に余裕ができます。その余裕が蓄積すれば、次の段階では、電気料や水道料が支払えるようになり、今度はそれを導入できるようになります。

電気や水道が存在する現在であっても、貧困層である人々は、ある一定の過程を経ないと、これを使用できないのです。これを私は段階別のイノベーションと呼んだのです。そうして、無論その他のあらゆる階層の人たちにも段階的に段階別に沿ったイノベーションが発生します。

適当な言葉が見つからなかったので、この言葉にしましたが、どなたかふさわしい言葉をご存知野方がいらっしゃれば、教えていただきたいです。

電気料や水道料が支払えるようになれば、従来貧困層だった人はもはや貧困層とはいえなくなり、そこからまた中間層が出て、地域に密着したイノベーションを行うようになります。彼らは、従来は中間層以上の人々が用いたモノやサービスを提供するようになるでしょう。

このようなイノベーションがあらゆる階層・地域に段階的に爆発して、社会が無理なく豊かになり、特にお金持ちではない、多くの人々が一昔前の王侯貴族のような生活(たとえば、レジャーなど)ができるようになったのが現在の先進国なのです。

私はいくら中国が「民主化」されているなどと言ってみても、政治と経済の分離、法治国家まで行われていなければ、それは言葉の遊びにすぎず、真に民主化されているとは言えないと思います。

無論「政治と経済の分離」とはいっても、規制は必要ですし、マクロ経済的には、政府には金融・財政政策を通じて、国民経済を正常に保つ責任はありますし、ミクロ経済的にも自由競争を促すために独占等を規制をする責任もあります。しかし、政府が直接民間の経済活動に介入すべきではないです。

民主化というだけでは非常に漠然としているので、政治と経済が分離されていて、中所得国に罠から逃れて国民一人あたりの所得が100ドルを超えているとか、法治国家化がされていることを条件とすれば、中国はとても民主化されているとはいえません。

中国共産党と経済は不可分に結びついていて、中国共産党は経済が落ち込みそうだと、株式市場にまで直接介入します。さらに、憲法は中国共産党の下に位置します。

憲法が中国共産党の下にある中国は断じて法治国家ではない

このような状態では、とても中国が民主化されているなどとはいえません。そうして、今後中国は中進国の罠から逃れられず、経済的に伸び悩むことになるでしょう。そうして、「中国の民主」は間違いであっことが明らかになるでしょう。

それに、民主国家では国民という言葉をつかっていますが、中国で人民という言葉使われていて、国民と人民は明確に区別されています。国民と人民は異なるものであり、国籍を持つ国民全員が人民であるというわけではありません。人民は中国共産党の掲げる思想や政策を支持する国民の一部の人たちであり、それを支持しないで批判や反対する国民は人民ではないのです。

そればかりか人民に属さない国民は、人民の敵であり、人民が持つ権利は行使できないですが、法律を守るなどの義務を負うというのです。

半世紀以上も前に形作られた毛沢東や周恩来の考えは、今日も生きていて、残念ながら現行憲法を見る限り、国民と人民を区別する考え方は明らかに継承されています。さらに中国の憲法には「いかなる組織ないし個人も社会主義体制を破壊することを禁止する」とも記されています。

つまり人民ではない国民に対するさまざまな弾圧や抑圧が法律上、正当化されているのです。そもそも、国名が「中華人民共和国」です。そのような中国が断じて民主国家ではありません。

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