2021年12月17日金曜日

米議会が中国抑止に強い決意 リムパックへの台湾招待、予算明記 識者「『中国への挑戦状』たたきつけた格好だ」―【私の論評】米議会は世界に、中国による台湾武力併合は不可能であるとの強力な「政治的メッセージ」を発信した(゚д゚)! 

米議会が中国抑止に強い決意 リムパックへの台湾招待、予算明記 識者「『中国への挑戦状』たたきつけた格好だ」 


 米議会が「台湾防衛」に強い決意を示した―。米上院は15日、2022会計年度の国防予算の大枠を決める国防権限法案を賛成多数で可決した。法案では、軍事的覇権拡大を進める中国への対抗姿勢が鮮明化したが、中でも、ジョー・バイデン政権に米海軍が主催する「環太平洋合同演習(リムパック)」に台湾を招待するよう勧奨したことは注目される。

 「米国と密接に協力して台湾海峡と地域の平和と安定を守っていく」

 米上院による招待要求を受け、台湾外交部は16日、こう感謝を表明した。国防部も同日、「感謝」を示した。

 リムパックは1971年以来、隔年で実施される世界最大規模の海上軍事演習。ハワイ沖で行われ、日本を含め、米国の同盟国を中心に相互連携を確認している。

 前回の「リムパック2020」には、コロナ禍のため、米国や日本、フランス、カナダ、オーストラリア、韓国など10カ国から、艦艇22隻、潜水艦1隻、人員約5300人が参加。前々回の「リムパック2018」は、26カ国から、艦艇47隻、潜水艦5隻、航空機約200機、人員約2万5000人以上が参加した。

 来年は開催年であり、台湾参加が実現すれば、米台断交後、初となる。

 バイデン大統領の対応が焦点となるが、中国が反発するのは必至なだけに、政権内で慎重に検討するとみられる。

 一方、中国は台湾の武力統一の可能性を排除していない。

 中国共産党機関紙、人民日報系の「環球時報」(英語電子版)は15日、人民解放軍が海南島周辺で、水陸両用の着陸任務と想定される訓練を実施したと報じた。詳細は不明だが、専門家の「台湾を念頭に置いている」との見解も伝えている。

 リムパックへの台湾招待が実現すれば、どうなるか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「米国や同盟国の『台湾支援』の士気や、連携の効率が上がり、有事でも迅速に動けるようになる。米国による台湾への武器売却などの段階から、さらに一歩進んで『中国への挑戦状』をたたきつけた格好となる。台湾が国際的舞台に復帰するデビュー戦になる」と語った。

【私の論評】米議会は世界に、中国による台湾武力併合は不可能であるとの強力な「政治的メッセージ」を発信した(゚д゚)!

米上院は15日、国防予算の大枠を決める2022会計年度の国防権限法案を賛成88票、反対11票の賛成多数で可決しました。バイデン大統領が署名して成立します。

米海軍主催の来年の環太平洋合同演習(リムパック)への台湾の招待に関する提言や、台湾の非対称防衛戦略強化に対する支援計画の制定への呼び掛けなども盛り込まれました。 下院では7日に賛成363票、反対70票で可決されました。

総額は約7680億米ドル(約88兆円)で、中国への対抗として設立された基金「太平洋抑止イニシアチブ」に71億ドル(約8100億円)が計上されました。 

法案では台湾に関し、米国の政策は中国の武力行使による台湾支配の既成事実化を許さないだけの米軍の軍事力を維持するものだと指摘。国防長官に対して、非対称防衛力強化支援と州兵との協力強化を盛り込んだ報告書を提出するよう求めました。 

また議会は政府に対し、台湾に十分な防衛力を確保させるため、実地訓練や軍事演習を台湾と実施することや、戦略、政策、機能的レベルでの米台官僚の交流推進を意見しました。

米国は台湾に対して非対称防衛力強化支援もするそうですが、非対称戦争とは、戦力を数値化して比較した場合、劣勢側の勝機を見い出すのが不可能に思えるほど膨大な戦力差のある戦争のことをいいます。

普通は軍事革命の進捗において一段階以上の断絶が存在している場合に用いる用語で、単純な兵員数・兵器の性能と開発技術力・資源保有量などが違うだけなら外交や戦術・戦略で覆せる可能性があるので、必ずしも非対称戦争とは呼びません。

当然ながら劣勢側がまともな戦術で太刀打ちできるわけが無いため、必然的にゲリラ戦、NBC兵器、民間人への攻撃、その他の(優勢側の理屈で言えば)犯罪とみなされる戦術の実行を余儀なくされます。この種の「非道」な戦術に対する反撃も総じて苛烈を極める傾向にあります。

また、そもそも非対称戦争が成り立つほどの劣勢を知っていて戦争を仕掛けたがる国家指導者など存在するわけがない以上、全ての非対称戦争は劣勢側当事国の意志とは無関係に行われる侵略行為です。少なくとも侵攻を受けた側は当然そのように考えます。

中国と台湾の戦争ということになれば、中国の兵力のほうが圧倒的に有利であり、そこでこの非対称戦争という言葉が用いられようになりました。


ただ、中国と台湾との戦争が、本当に非対称戦争となるかについては、冷静に考える必要があります。以前も同じようなことを掲載しましたが、下に再掲します。

中国が台湾を武力統一しようとする場合、最終的には上陸侵攻し、台湾軍を撃破して占領する必要があります。来援する米軍とも戦わなければならないでしょう。

その場合、中国は100万人規模の陸上兵力を発進させる必要があります。台湾軍の突出した対艦戦闘能力を前に、上陸部隊の半分ほどが海の藻くずとなる可能性があるからです。

100万人規模の陸上兵力を投入するには5000万トンほどの海上輸送能力が必要となります。これは中国が持つ全船舶6000万トンに近い数字です。

台湾有事をしきりに語っている軍事評論家もすっかり忘れているようですが、たとえば旧ソ連軍の1個自動車化狙撃師団(定員1万3000人、車両3000両、戦車200両)と1週間分の弾薬、燃料、食料を船積みする場合、30万~50万トンの船腹量が必要とれています。

船舶輸送は重量トンではなく容積トンで計算するからです。それをもとに概算すると、どんなに詰め込んでも、3000万トンの船舶が必要になる計算です。

4月23日に海南島・三亜で就役式が催された、中国初の強襲揚陸艦「海南」(推定排水量約4万トン)

この海上輸送の計算式は、世界に共通であり、中国も例外ではありません。むろん、来援する米軍機を加えると、中国側には上陸作戦に不可欠な台湾海峡上空の航空優勢を確保する能力もありません。

それだけではありません。軍事力が近代化するほど、それを支える軍事インフラが不可欠ですが、中国側にはデータ中継用の衛星や偵察衛星が決定的に不足しています。

しばしば脅威が喧伝される空母キラー(対艦弾道ミサイル)も、移動する空母を追跡して直撃する能力には至っていません。そういう中国側が、サイバー攻撃を仕掛けようとしても、上陸作戦の成功がおぼつかないのは明らかです。

ただ、要注意なのは、台湾国内で親中国的な世論が生まれ、内乱のような混乱に乗じて、かいらい政権が登場することでしょう。あらゆる手段を駆使するハイブリッド戦です。これなら、中国でも台湾を併合できる可能性はあります。ただ、軍事的には、ほぼ無理です。

中国が台湾に侵攻しようとしても、海上輸送力が十分ではないため、不可能なのです。しかし、それでも無理に侵攻しようとすれば、兵力を小出しにせざるをえなくなり、それは台湾軍に個別撃破されてしまうことになります。

中国陸軍の水陸両用装甲車(中国軍系SNSの7月17日の投稿より)

ただ、中国はそのあたりを見透かされていると感じたのか、中国共産党機関紙傘下の環球時報(英語版)最近、中国軍が民間の大型フェリーを利用して大量の兵員や戦車など軍用車両を海上輸送する訓練を実施したと伝えました。

台湾有事の際に不足する揚陸艦を民間船舶の徴用で補い、大量の陸上戦力を迅速に投入できる態勢の整備を進めている可能性があります。

中国国営中央テレビも訓練を伝えました。北京に司令部を置く「中部戦区」に所属する陸軍機動部隊「第81集団軍」が、排水量4万5000トンのフェリーを使って実施しました。フェリーは兵員1000人以上と戦車や歩兵戦闘車など数百台の軍用車両を載せて14日夜に出港し、15日午前に1000キロ・メートル以上離れた港に到着したとしています。

中国軍は揚陸艦の数が限られていることなどから、大型の民間船舶を利用して多数の軍用車両を輸送する訓練を進めています。同紙は訓練について、「将来の戦場で部隊の輸送効率を高める目的がある」との専門家の分析も伝えました。

ただ、中国軍がこのようなことをしたとしても、先にも述べたように、100万人規模の陸上兵力を投入するには5000万トンほどの海上輸送能力が必要となり、これは中国が持つ全船舶6000万トンに近い数字ですから、たとえフェリーなどを輸送にあてたとしても、十分とはいえません。仮に軍・民の全艦艇を台湾への輸送にもちいれば、中国は輸出入ができなくなりますし、海洋の守備が疎かになります。

それに、台湾軍は破壊力の強い対艦ミサイル雄風III型ミサイルや、米国製対艦ミサイルなども多数配備しており、中国が民間フェリーで兵員や、補給を試みても、多数が撃沈されることになります。

さらに、一昨日このブログに掲載したように、米軍の攻撃力が強い、攻撃型原潜が台湾を包囲してしまえば、中国軍がこの包囲を突破しようとすれば、中国海軍は崩壊します。

6月17日、米軍トップのミリー統合参謀本部議長は上院で「中国が台湾への侵攻能力を備えるには長い時間がかかり、その意図もない」と述べ、今後6年以内に台湾侵攻の可能性を指摘したデービッドソン発言を否定しましたが、上記で示したリアルな数字に基づいていると考えられらます。

中国側も当然のことながら、この現実を認識しているでしょう。そうなると、台湾侵攻はありえないです。そのことを米国も見透かして、リムパックへの台湾招待をしても、それで中国が硬化して、台湾への武力侵攻などないだろうとみているのでしょう。

一方米上院を国防権限法案に「環太平洋合同演習(リムパック)」に台湾を招待するようバイデン政権に求める文言が明記されたことについて、台湾側は謝意を表明する一方、バイデン政権が実際に招待に踏み切るか慎重に見極める構えです。リムパック参加は台湾への威圧を強める中国への牽制になるとはいえ、実務的には課題もります。

台湾の国防部(国防省に相当)の史順文報道官は16日、「台湾に友好的な法案が可決されたことに感謝する」と述べました。一方、参加については「動向を引き続き注目し、総合的に判断する」と述べるにとどめました。

米議会としては、中国に対して「政治的メッセージ」を送ったということでしょう。中国は従来から強いメッセージを送っており、少なからぬ人が、中国はすぐにも簡単に武力で台湾を併合すると考えがちですので、そのよう人たちにむけても「メッセージ」発信したということでしょう。


フランス・スペイン共同開発 インド海軍期待の新型潜水艦「ヴェラ」就役―【私の論評】多くの国々が対潜戦闘力を強化し、中国の多くの艦艇を持てば勝てるという幻想を打ち消すことに(゚д゚)!



0 件のコメント:

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか 小笠原理恵氏―【私の論評】横田めしの「ししゃも」は「樺太ししゃも」!糧食を疎かにされる軍隊は勝てない(゚д゚)!

自衛官冷遇の衝撃実態、ししゃも2尾の「横田飯」 ネットでは「病院食ですか?」の声 岸田首相は心が痛まないのか 小笠原理恵氏 航空自衛隊横田基地の公式ツイッターに投稿された「朝食」の写真 クリックすると拡大します  岸田文雄政権が「防衛力強化」「防衛費増加」を進めるなか、危険を顧み...