2021年12月30日木曜日

【独自】海自潜水艦に1000キロ射程ミサイル…敵基地攻撃能力の具体化で検討―【私の論評】日本の潜水艦隊は、長射程巡航ミサイルを搭載し、さらに戦略的要素を強めることになる(゚д゚)!

【独自】海自潜水艦に1000キロ射程ミサイル…敵基地攻撃能力の具体化で検討


 政府は、海上自衛隊の潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載する方向で検討に入った。ミサイルは海中発射型とし、自衛目的で敵のミサイル発射基地などを破壊する「敵基地攻撃能力」を具体化する装備に位置づけられる見込みだ。

 複数の政府関係者が明らかにした。相手に発見されにくい潜水艦からの反撃能力を備えることで、日本への攻撃を思いとどまらせる抑止力の強化につなげる狙いがある。配備は2020年代後半以降の見通しだ。

 岸田首相は22年末に改定する安全保障政策の基本指針「国家安全保障戦略」に、「敵基地攻撃能力」の保有について明記することを目指している。保有に踏み切る場合、潜水艦発射型ミサイルは有力な反撃手段の一つとなる。

 搭載を検討しているのは、陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」を基に新たに開発する長射程巡航ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」。射程は約1000キロ・メートルに及び、敵艦艇などに相手のミサイル射程圏外から反撃することを想定する。将来的には敵基地攻撃への活用も可能とみられている。

 スタンド・オフ・ミサイルは現在、航空機や水上艦からの発射を前提にしている。防衛省は22年度予算案に開発費393億円を盛り込んだ。

 潜水艦に搭載する場合、浮上せずに発射できるよう、垂直発射装置(VLS)を潜水艦に増設する方式や、既存の魚雷発射管から発射する方式などが検討されている。自衛隊は、スタンド・オフ・ミサイルより射程は短いが、魚雷発射管から発射する対艦ミサイルは既に保有している。

 中国は日本を射程に収める弾道ミサイルを多数保有するほか、近年、日本周辺海域や南・東シナ海で空母を含む艦隊の活動を活発化させ、軍事的挑発を強めている。北朝鮮も核・ミサイル開発を進めている。

 日本を侵略しようとする国にとっては、先制攻撃で自衛隊の航空機や水上艦隊に大打撃を与えても、どこに潜むか分からない潜水艦から反撃される可能性が残るのであれば、日本を攻撃しにくくなる。

 自衛隊の潜水艦は現在21隻体制で、航続性能や敵に気付かれずに潜航する静粛性などに優れ、世界最高水準の技術を誇る。

 政府はこの潜水艦の能力を生かし、弾道ミサイルによる攻撃や、艦隊などによる日本の島嶼(とうしょ)部への侵略を防ぎたい考えだ。

【私の論評】日本の潜水艦隊は、長射程巡航ミサイルを搭載し、さらに戦略的要素を強めることになる(゚д゚)!

このニュースを、ロシアのメディア「スプートニク」は、素早く報道しています。
日本政府、海自潜水艦に国産の長距離巡航ミサイルを搭載する方向で検討=読売新聞

やはり、このニュースはロシアも相当気になるということなのでしょう。無論中国も気にしていることでしょう。北朝鮮も気にしているでしょう。

上の記事でも「自衛隊の潜水艦は現在21隻体制で、航続性能や敵に気付かれずに潜航する静粛性などに優れ、世界最高水準の技術を誇る」と記載されてますが、これはこのブログでも過去に何度か掲載してきたように事実です。

航続性能については、軍事秘密なのではっきりしたことは公表されていませんが、最新鋭潜水艦では最長で2週間をはるかに超える潜水が可能とされています。

特に静寂性(ステルス性)については、最新型のリチウムイオンバッテリーを駆動力に用いる潜水艦では、ほとんど無音に近いです。ただ、古い型の潜水艦でも日本の現役の潜水艦はすべて静寂性にはかなり優れています。これを中露海軍が探知するのは難しいです。

さらに、日本の自衛隊の潜水艦探知能力は、米国とならんでトップクラスであり、中露をはるかにしのぎます。

その日本の潜水艦が、米国の攻撃型原潜に劣るのは、航続性能や攻撃力ですが、その攻撃力が「スタンド・オフ・ミサイル」を装備したとなると、これは米国の攻撃型原潜に近い性能を有することになります。

新型巡航ミサイルの原型となる地対艦誘導弾システム:12式地対艦誘導弾(12SSM)

日本は、米中露のように、戦略原潜のような戦略兵器は持っていませんが、日本の潜水艦が「スタンド・オフ・ミサイル」を装備すれば、今までも戦略的だったのですが、より戦略兵器に近づくことになります。

日本では、三菱重工が地上、戦闘機、艦艇のいずれからも発射できる射程距離1000キロを(1000〜1500km)超える巡航ミサイルを開発中で。開発費は約1000億円で、地上配備型は2025年、艦艇搭載型は2026年、戦闘機搭載型は2028年までに配備を完了する計画だとされています。

そうして、今回はさらに、潜水艦に、地上の目標も攻撃可能な国産の長射程巡航ミサイルを搭載することを検討し始めたのですから、中露・北朝鮮なども心穏やかではないでしょう。

ちなみに1000キロとはどの程度の距離なのか、以下に地図を掲載します。


この地図をご覧になれば、わかるように1000キロだと、東京から打っても、北朝鮮には届きませんが、日本の潜水艦は北や中国には探知できないので、潜水艦で近づいて発射すれば、日本の領海内からでも、北京や平壌に届きます。

いまのところ、目立った反論などはありませんが、この計画が進行するにつれて、中露・北朝鮮の反発が強まることになることでしょう。どの程度の反発を示すのか今から楽しみです。反発が激しければ、激しいほど日本の戦略を恐れているということなると思います。

そうして、これは無論、日本にとっては良いことだと思います。運用の仕方によっては、東アジアの軍事バランスに大きな影響を与えることになるでしょう。無論、日本にとって良い方向にです。

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