2020年8月31日月曜日

「破綻国家」一歩手前のレバノンを蝕む政治的腐敗―【私の論評】まず覚醒しないあなたから、レバノンにどうぞ(゚д゚)!

「破綻国家」一歩手前のレバノンを蝕む政治的腐敗

岡崎研究所

 レバノンでは、8月4日に発生したベイルートでの硝酸アンモニウムの大規模爆発を受けてディアブ首相が内閣総辞職に追い込まれるなど、混迷を深めている。レバノンの統治不全は極めて根が深い。8月12日付のフィナンシャル・タイムズ紙社説‘Lebanon needs a credible government of reform’は、レバノンの支配層が彼ら自身の将来が危機に瀕していることを自覚しない限り、レバノンは破綻国家に近づくだろうと述べているが、決して誇張とは言えない。


 レバノンの現状は悲惨である。現地通貨のレバノン・ポンドは2019年秋以降80%減価し、最新で約90%のハイパーインフレとなっている。2020年3月にはディアブ首相が外貨建て国債12億ドルをはじめとする同国の債務の支払い停止、すなわち債務不履行を宣言した。ベイルート首都圏で91万人が食料や生活必需品を十分入手できない状態で、その半数以上を占める子供たちが年内に餓死する可能性があるとのことである。

 このような状況の下、昨年10月政府が増税案を示したことに対し大規模なデモが発生し、その後ベイルートのみならずレバノン中で国民の抗議デモが頻発したが、8月4日ベイルートで起きた硝酸アンモニウムの大爆発で163人が死亡、6000人が負傷する事態を受け、8月8日には数千人規模のデモが起こり、ディアブ首相が内閣総辞職に追い込まれた。

 レバノンの危機の原因は政治の腐敗である。レバノンには18の宗派が存在し、大統領はマロン派、首相はスンニ派、国会議長はシーア派というように各宗派に政治権力が配分され、バランスの確保に意が用いられているが、各勢力が自身の地位に胡坐をかき、利権をむさぼり、腐敗が蔓延したと見られている。このような腐敗した制度が未曽有の経済危機に対処できないでおり、国民の怒りが反政府デモで爆発しているのが現状のようである。

 レバノンの経済危機に対処するためには外からの支援が必要であり、IMFや旧宗主国フランスと協議を行っているが、支援の条件として当然のことながら抜本的な経済改革が要請されており、レバノン政府は要請に応えられていない。レバノンが破綻国家にならないためには、危機の原因である腐敗した制度の改革に取り組まなければならないが、この制度はレバノン特有の事情に根差したものであるだけに、現状の変更はかなり難しい。

 しかし、レバノンを破綻国家から救う道は現状の変更しかない。上記のフィナンシャル・タイムズ社説は、「今回の内閣総辞職は最後のチャンスで、アウン大統領と議会が独立志向の首相の率いる新内閣の成立を急ぐべきである」と述べている。現状を変更するためには支配層が彼ら自身の将来が危機に瀕していることを自覚する必要があるが、果たして支配層がそのような危機感を持つことができるのか定かでない。もし持てなければレバノンが破綻国家となることは現実味を帯びてくる。

【私の論評】まず覚醒しないあなたから、レバノンにどうぞ(゚д゚)!

レバノンというと、あのカルロス・ゴーン被告のことを思い出してしまいます。ゴーンはいまどのような状況なのでしょうか。

カルロス・ゴーン被告

8月4日のレバノン・ベイルート港の化学物質の大爆発で、日産自動車元会長カルロス・ゴーン被告(66)の妻キャロル容疑者(偽証容疑で逮捕状)がブラジル紙に自宅が損害を受けたと翌日語ったが、6日、フランスの各紙は、自宅が完全に破壊されたと報じました。

レバノンの情報筋によれば、ゴーン被告は首都ベイルートから避難し、郊外に身を寄せているといいます。逃亡後、豪邸で優雅に暮らしていたゴーン被告は、いわばホームレス状態に陥ってしまったのです。 

大爆発は、通貨危機や新型コロナウイルスによって混迷を深めてきたレバノン社会をさらに混乱させるでしょう。今回の爆発事故はレバノン政府の化学物質の管理の怠慢で起きたため、腐敗や無能で反発されてきた政府に対する信頼がいっそう低下したことは否めないです。

レバノン社会が混沌とする中で、高級住宅での生活という特権を失ったゴーン被告は心許ない生活を余儀なくされることでしょう。

あるフランス紙は、ゴーン被告は今回の事故で家を失った30万人のホームレスの1人と形容しています。爆発事故で政府が運営する小麦の倉庫も大損害を受け、レバノンの食料を輸入する能力も著しく低下しました。

ゴーン被告の食卓も寂しいものになっている可能性が高いです。レバノンでは、150万人のシリア難民と27万人のパレスチナ難民も居住しますが、難民の存在もレバノンの食料事情を逼迫させていくでしょう。新型コロナウイルスで手一杯の医療現場は、事故の負傷者たちでさらに膨らむことになり、ゴーン被告は十分な医療サービスも受けられない環境にいます。

レバノンでは対外債務が膨らんだために、現地通貨は昨年10月以来、その価値を80%下げました。レバノン経済は食料を含めて輸入に頼り、債務によって輸入経済を支えてきました。輸入経済に依存することは、レバノンの資本が海外に流れ、現地通貨が価値を下げることになる。 

海外在住のレバノン人企業家たちは、レバノンの銀行にドルで預金し、また湾岸のアラブ諸国も財政支援を行ってレバノン経済を支えてきました。しかし、腐敗など政府の失政や、政府の経済改革への取り組みが消極的なこともあって、海外在住の企業家たちがレバノンの銀行へのドル預金に熱心でなくなり、また欧米諸国の支援も滞っていきました。

こうしてレバノンでは外貨準備が不足し、対外債務が世界最悪とも言える状態になりました。銀行は預金者がドルで引き出せる額を制限したために、現地通貨で暮らす人々の生活をいっそう圧迫し、インフレはうなぎ上りとなりましたが、さらに政府は歳入不足を補うために、タバコやガソリン、さらにはワッツアップのようなSNS通話にも課税しようとしたことが昨年の10月以来連日繰り広げられるデモにつながりました。 

レバノンは18の宗派によって構成される宗派のモザイク社会ですが、1975年から90年まで続いた内戦を終らせるために、各宗派の代表的なファミリーに権力や利権が分配され、それが政治腐敗の要因となりました。イランやサウジアラビアなど外部からの支援もこうした特権層を潤わせ、それも貧しい階層の怒りや反発の背景となっています。 

爆発事故によって、政府への幻滅はいっそう深まり、政府を見捨てて海外在住のレバノン人を頼るなどの手段で大規模な国外移住が予想されるようになりました。海外在住の離散(ディアスポラ)レバノン人は本国の人口(約684万人:2018年)のおよそ3倍いると見積られていますが、国際指名手配を受けているゴーン被告は逮捕の恐れがあるために、この選択肢はありません。

 レバノンが無秩序や、さらに紛争状態になった場合、ゴーン被告のとりあえずの逃亡先は陸続きのトルコ、シリア、イスラエルの3国ぐらいしか考えられません。しかし、イスラエルとレバノンは戦争状態にあり、シリアは戦乱の渦中にあり、またISやアルカイダのような暴力的集団がどのようにゴーン被告を迎えるか定かではありません。

ゴーン被告はクリスチャンで、イスラムに訴える過激な集団から見れば異教徒で、日本で不正を働いたゴーン被告は腐敗のシンボルとも言え、彼らが最も嫌い、否定すべき対象です。さらにトルコはゴーン被告の逃亡を幇助したとして7人を逮捕した国で、ゴーン被告をかくまうことはありえないです。

 レバノンに残れば、混迷が続く政治社会の中で快適な生活は送れそうにもありません。今年終わりまでに1日4ドル以下で暮らす貧困層が50%に膨らむと予想されていますが、ゴーン被告のような不正を働いた特権階層は、彼らにとって憎悪の対象となり、危害が加えられることも否定できません。日本の司法制度から逃亡したゴーン被告は、レバノンで行き詰まり、八方塞がりになっています。

カルロス・ゴーンは今頃、治安が良く経済的にも恵まれた日本のことを思い出しているかもしれません。多くの日本人は、ゴーンのことを愚か者というかもしれません。

しかし、日本人の中には、ゴーンを馬鹿にできない人たちもいると思います。共同通信が同29、30日に行った世論調査 安倍内閣の支持率は55%で、7月の前回調査から12ポイント上がりました。歴代内閣の末期は支持率が低い場合がほとんどですが、安倍内閣は異例の高い支持率で終幕を迎えます。

退陣を決めたリーダーが翌日に20ポイントも支持率が上がるようなことは、日本では無論のこと、世界でも例がない、珍現象です。多分これは「安倍さんごめんね」という意思表示ではないかと思います。


どのような意思表示かといえば、以下のようなものです。

新型コロナウイルス対策では、死者が少なく、対策がうまくいっていると言ってもいいような気もするのだが、テレビのワイドショーなどて多くの人が「安倍さんはだめだ』と言い続けていたので、ついつい自分も「安倍が悪い」と思うようなった。それ以前の「もりかけ桜」でも同じように「安倍さんはだめだ」と思うようになってしまった。

しかし、考えてみれば、未だにテレビのワイドショーなどのコメンテーターは「疑惑」「忖度」など言いつつも結局のところ、ワイドショーのコメンテーターは、未だに決定的な証拠「物証」を挙げられないでいる、

安倍内閣は戦後の最小の長期政権になったのですが、最近では支持率が下がっていって安倍さんは苦しんで病気が再発してしまったと考えたのではないでしょうか。しかし、結果的に安倍さん辞任を表明しました。本当に申し訳なかったと反省し、その意思表示として、支持率上がっていると推察できます。

私自身は、安倍政権に関しては、このブログで以前から言っているように、過去20年では、経済でも安保でも、外交でも、最もパフォーマンスの良い政権だと思います。これは、野党が何を言おうが、ワイドショーのコメンテーターが何を言おうが、事実です。まともに、経済指標を見たり、様々な事実に当たれば、誰もが容易に理解できると思います。

安倍総理辞任表明という大きなショックが、このような人たちを覚醒させたのだと思います。カルロス・ゴーンもレバノンで大爆発事件がおこり、それどころか、食糧不足という大ショックに見舞われ、いくら金を持っていても、現状のレバンでは、それは全く無意味であることにいまさらながら気づき、覚醒したかもしれません。

ごうつくばりで、とにかく金を得るために、不正なことにまで手をつけてしまった自分を呪っていることでしょう。合法的なことで儲けた金で、日本など、多くの人々から尊敬され満ちたりた幸せな生活を送れたかもしれないと、今頃臍を噛んでいるに違いありません。

人間というものは、本当に幸せなときは、自分が幸せの絶頂にいることを意外と認識できなかったりするものです。日本のような国で、まともな政治が行われていると国民はそれが当たり前になってしまうのでしょう。レバノンのようになってしまってから初めてまともな政治の必要性を痛感するようになるのかもしれません。

これは、あくまで、私の推測であり、カルロス・ゴーン本人に聴いていなければ真実はわかりません。しかし、そのように考えるのが普通だと思います。もしそうでなければ、ゴーンはただの頭の悪い大馬鹿者です。

大ショックを受けないと、事実がみえない人たちは、ゴーンに限らず、日本でも大勢いるようです。日本では、ショックを受けて覚醒する人もいる一方、未だワイドショーなどのコメンテータの発言などを真に受けて、未だ覚醒しない人も大勢います。

無責任なワイドショーのコメンテーター
そういう人たちには、是非ともレバノンにいって、そこで1年でも生活していただきたいものです。そうすれば、本当の政治の腐敗とはどのようなものか、日本がいかに素晴らしい国であり、これを守りさらに良くしていくことが、価値あることと理解できるかもしれません。そこまでしても、覚醒しない人もいるかもしれませんが、確実に日本に逃げ帰るでしょう。

私はこのブログでも何度か述べたように、安倍総理の政策を是々非々でみており、そうしたことから、評価できる点は評価し、批判すべき点は批判してきました。そうした過程から、結論できるのは、安倍総理は現時点においては、日本を守りさらに良くしていることの価値を、最も理解する政治家だといえます。そうして、総理を辞した後でも、その道を歩んでいかれる方と確信しています。

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2020年8月30日日曜日

チェコ上院議長が台湾到着 90人の代表団、中国の反発必至―【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!


    台湾北部の桃園国際空港に到着したチェコのビストルチル上院議長(中央)と
    出迎えた呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(右)=30日
東欧チェコのビストルチル上院議長を団長とし、地方首長や企業家、メディア関係者ら約90人で構成される訪問団が30日、政府専用機で台湾に到着した。台湾と外交関係を持たないチェコが中国の反対を押し切り、準国家元首級の要人が率いる代表団を台湾に派遣したのは初めて。国際社会での存在感を高めたい台湾にとっては大きな外交上の勝利といえるが、中国が反発するのは必至だ。

 30日午前、北部の桃園国際空港に到着したマスク姿の議長一行は、出迎えた台湾の呉●(=刊の干を金に)燮外交部長(外相に相当)らと握手でなく腕を合わせてあいさつを交わした。台湾メディアによれば、訪問団は9月4日まで滞在。ビストルチル氏は1日に立法院(国会)で講演し、3日に蔡英文総統と会談する。4日には米国の対台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)とのフォーラムにも出席する。

 チェコ上院議長の訪台をめぐっては、ビストルチル氏の前任のクベラ氏が昨年に訪台を約束したが、中国大使館から脅迫され1月に急死した。ビストルチル氏は上院議長就任後、何度も「クベラ氏の遺志を引き継ぐ」と表明していた。

【私の論評】チェコは国をあげて「全体主義の防波堤」を目指すべき(゚д゚)!

チェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏、このほか訪問団は首都プラハのズデニェク・フジブ市長や上院議員ら約90人からなり、民主化を実現させた1989年の「ビロード革命」(1989年11月17日にチェコスロバキア社会主義共和国で勃発した、当時の共産党支配を倒した民主化革命。スロバキアでは静かな革命と呼ぶ)以降、最高レベルの訪問団とされます。9月3日には蔡総統と総統府(台北市)で会談する予定。ビストルチル氏は出発前のあいさつで訪台の目的について、民主主義を守る台湾への支持を示すためと語りました。

チェコのビストルチル上院議長(左、本人のツイッターから)とプラハのフジブ市長

新型コロナ対策のため、訪問団の参加者には搭乗前3日以内の陰性証明の提出を求めたほか、9月1日にはさらに検査を実施。滞在中は専用車を使用するなどして市民との接触を避けます。一行は同5日に帰国の途につきます。

欧州との外交をめぐっては、中国の王毅外交部長が25日~9月1日の日程でフランスなど5カ国を歴訪中です。台湾が外交関係を結ぶ国はバチカンのみとなる一方、中国は近年、巨大経済圏構想「一帯一路」を足掛かりに欧州で影響力を増しています。台湾側は外交関係のないチェコ代表団の受け入れをきっかけに、欧州諸国との連携を強化したい考えです。

今回の訪台には、今年1月に急死したチェコのヤロスラフ・クベラ前上院議長の夫人も加わっています。

クベラ氏は、中国の反対を押し切って今年2月に訪台する予定でしたが、1月に急死しました。生前、台湾行きを強行するならチェコ企業に報復するなどと中国大使館から脅迫されていた事実が地元メディアによって暴露されました。

中国はチェコを中・東欧諸国の玄関口として重視しています。加えて、チェコは欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)双方に加盟しているため、中国としてはチェコを足掛かりに西欧諸国に対する影響力を高めたいとの狙いもあるようです。

チェコ大統領 ゼマン氏

一方、チェコ側も2013年に親露的でもある、ゼマン氏が大統領に就任して以後、対中関係の強化を図ってきました。ゼマン氏は訪中を繰り返し、2015年に中国が戦争勝利70周年記念の軍事パレードを実施した際も、欧米諸国のほとんどが国家元首出席を見送る中、北京に赴いて、中国との親密ぶりをアピールしました。

翌年3月に中国の習近平国家主席がチェコを訪問した際には、首都プラハでデモ隊の動きを封じ込めて迎え入れるなど、最大限の配慮を見せました。

また、中国政府が「中国からの独立を狙う分裂主義者」と敵視するチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が同年10月にチェコを訪れ、副首相らと面会した際、ゼマン氏は直ちに、当時のソボトカ首相とともに「一つの中国」原則を支持する声明を出すほど神経を使っていました。

ゼマン政権による中国接近に警戒を強めたのがプラハのフジプ市長です。

プラハと北京は2016年に姉妹都市協定が締結されていました。フジプ氏が2018年11月に市長に就任すると、協定の中に「一つの中国」原則の順守を記す条項が含まれていたことに違和感を抱き、北京側にこの条項のみを削除するよう求めたのですが、北京側が受け入れなかったため、昨年10月、協定解消に踏み切りました。

一方、フジプ氏は昨年3月に訪台し、蔡英文総統らと会談するなど台湾に接近、今年1月13日には、今度はプラハ―台北間で姉妹都市協定を結びました。AFPによると、フジプ氏はその直後に、中国を「信頼できないパートナー」と非難したといいます。

フジプ氏は自身の信念として「市長として『民主主義と人権を尊重する道に戻る』という公約を果たすために取り組んでいます。それらはビロード革命(チェコスロバキアだった1989年12月に共産党体制崩壊をもたらした民主化革命)の価値観であり、現在、チェコ政府が無視しているものだ」と語っています。

加えてチェコでは今年1月、人気政治家だったクベラ氏が急死し、その妻が「夫の死は中国政府からの度重なる嫌がらせの結果だ」と主張した一件もありました。

チェコ企業団が19年10月、台湾を20年2月に訪問すると発表し、その団長を当時上院議長だったクベラ氏が務めることになりました。この訪台は結局コロナ禍により中止になりましたが、中国側は「一つの中国」原則に反するとして不快感を示し、再三にわたってチェコ側に取り消しを迫っていました。

現地報道によると、中国の張建敏・駐チェコ大使がゼマン大統領の秘書官に「訪台を阻止しなければ両国のビジネスに影響が出る」と圧力をかけたとされています。

夫人のヴェラ氏によると、クベラ氏が亡くなる3日前に中国大使から大晦日の夕食会に招待され、「非常に不快な非公開の会談」に参加しました。途中で、クベラ氏は別室に連れていかれ、戻ってきたときには夫人に中国大使館が用意した食事は絶対食べないように言ったといいます。

夫人は遺品整理の際に、チェコ大統領府と中国大使館が送りつけた2通の「脅迫状」を発見しました。内容は、台湾訪問をやめなければ、家族を危険に晒すというものでした。ヴェラ夫人は、娘と二人で恐怖に怯えたと述べ、これらの手紙がクベラ氏を死に至らせたと考えていると述べました。クベラ氏は亡くなる前の7日間、一言も発さず落ち込んでいたといいます。

ヴェラ夫人はまた、クベラ氏が台湾を訪問することに強いこだわりを持っていたと強調し、家族には「共産党の独裁時代にも、誰もクベラを止めることができなかった!今やチェコは民主主義国家だ。このような圧力に屈するものか!」と言っていたと明かしました。

ビストルチル現上院議議長氏は、「2通の脅迫状」という重大スキャンダルを受けて、ゼマン大統領に説明を求める書簡を3通送ったのですが、ゼマン大統領は議会からの質問と調査の要求を拒否していると述べました。


台湾メディアによると、ヴェラ氏は地元テレビに出演した際、「夫は中国政府に脅迫され、そのストレスが急死の引き金になった」との見方を示し、後任の上院議長となったビストシル氏やバビシュ首相は相次いで、張大使更迭を求める考えを示しました。

そのビストシル上院議長が6月9日、クベラ氏の計画を引き継いで今年8月30日~9月5日に企業団とともに訪台すると発表しました。ビストシル氏は右派野党・市民民主党所属で、「政府の外交方針が人権と自由を支持しないのなら、それを強調するのは議会の役目だ」と話しています。

中国は反中感情を和らげるため、新型コロナウイルスの感染防止を目指す「マスク外交」によって挽回を図っています。

チェコでは医療従事者のためのマスクや手袋などの個人用防護具が不足し、政権批判が高まっていたため、ゼマン政権は諸手を挙げて中国からの支援を歓迎しました。

中国から医療用品を運んできた航空機が今年3月、プラハの空港に到着すると、チェコの閣僚らが滑走路に並んだといいます。その後も中国からの物資が届けられ、ゼマン氏は「我々を助けてくれるのは中国だけだ」とリップサービスし、遠回しにEUを批判してみせたとされています。

クベラ氏の生前の願いをかなえるためとして夫人に同行を打診したのは団長のビストルチル氏。台湾訪問が民主主義、自由を守る決意の表れとして、チェコ上院で強く支持されている背景があったといいます。

メンバーは政治家や、学者、文化団体などで、40人余りの企業家も含まれます。いずれも民主主義の信奉者で、中国から言論の自由を制限されるなど、不条理な圧力をかけられた経験を持つ人もいるといいます。今回の交流を通じ、台湾の民主主義コミュニティーとの間に制度的な協力ネットワークが構築されることが期待されます。

訪台に当たっては、新型コロナウイルス対策として、往復ともチャーター便を利用し、ウイルス検査を出発前と台湾到着後の計2回受けることなどが求められました。これらの条件は、今月9日に訪台したアザー米厚生長官や、同日李登輝元総統の弔問のために台湾を日帰り訪問した日本の森喜朗元首相らと同じだといいます。

チェコ政府は、親中的ですが、チェコの憲法で大統領に次ぐ地位とされる上院議長のビストルチル氏をはじめ中国に対峙しようとする勢力が拡大しつつあるようです。

台湾は国をあげて中共の「全体主義の防波堤」になっていることは明らかです。米国は今後「全体主義への砦」としての台湾の存在の重要性を認識して軍事・経済的支援を強力に推進することになるでしょう。その幕開けが、先日のアザール長官の台湾訪問なのです。

チェコは地政学的にいって、東欧に属していおり、東欧は欧州では中国に最も近い位置に属しています。ロシアにも近いです。このチェコが「全体主義の防波堤」になれば、東西に全体主義に反対する勢力の橋頭堡が築けることになります。

今回のチェコの訪問団の訪台が、将来これに結びつく可能性は大きいと思います。

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2020年8月29日土曜日

低姿勢で退任の安倍首相、今後はキングメーカーに―【私の論評】安倍晋三氏は、一定期間のみ良い意味でのフィクサーか、キングメーカーの道を目指している(゚д゚)!

低姿勢で退任の安倍首相、今後はキングメーカーに

会見当日までの保秘徹底で当面の政局でも主導権

28日夕、官邸で辞任表明の会見を行う安倍晋三首相

安倍晋三首相が8月28日夕、辞意を表明した。筆者は8月22日、「政局は重大局面、安倍政権はいつまでもつのか」と題した原稿で、早期の「辞意表明」や「内閣総辞職」を想定したメディアの動きに言及していたが、その通りの展開となった。まずは7年8月にわたって、持病を抱えながらも重責を果たしてきた安倍首相に敬意を表する。

内閣府の官僚が気づいた日程の「違和感」

 8月27日夕、翌28日の安倍首相の日程が明らかになった。メディア並びに永田町、霞が関の住人がほぼ独占的に入手している公開情報である。

 しかし、内閣府の切れ者で知られる官僚は日程をみて違和感を覚えた。

「臨時閣議が夕方にセットされているのはなぜか」

 毎週金曜日は定例閣議が開かれる。2回も閣議を開く必要があるのか。ひょっとして、安倍首相がなにか考えているのではないか。閣僚の辞表を取りまとめての内閣改造、理屈としては内閣総辞職もあり得る――。

 28日の臨時閣議は「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの確保の方針」を決定するために午後4時過ぎから開かれた。午後1時過ぎから行われた新型コロナウイルス感染症対策本部に連動した手続きの一つである。

 結果的に、この官僚の推測は外れたことになる。ただ、違和感を覚えた点では大正解だった。実際、安倍首相は28日の臨時閣議で総理大臣として辞意を表明したからだ。

 議院内閣制の仕組みに従い、安倍首相は先に午後2時過ぎに自民党本部を訪れ、臨時役員会などで自民党総裁として辞意を伝達している。そして4時から前述の臨時閣議、そして5時から辞任表明の記者会見を行った。28日午後5時からの記者会見予定が固まったのは26日とみられているが、この時点で安倍首相は辞意表明に向けた段取りをすべてセットしていたことになる。

 安倍政権は閣議決定を歴代政権よりも多く行う傾向にあるため、コロナ対策での臨時閣議はおかしいとはいえないが、臨時閣議は緊急を要する場合に行うのが通例である。対策本部の日程をずらすなどして、定例閣議でコロナ対策を閣議決定すれば事足りる。1日2回の閣議はやはり何かの兆候だったのである。

誰にも洩らさなかった

 この週は、24日の月曜日から首相の動静に注目が集まっていた。

 安倍首相は24日午前、17日に引き続いて慶応大病院に向かい、約3時間40分滞在している。その日の午後、首相官邸に入った際には、安倍首相は「体調管理に万全を期し、これからまた仕事に頑張りたい」と述べた。

 これにより自民党内は、当面は安倍首相が続投するとの認識を持った。安倍首相に近い側近らも、しばらくは職務に邁進すると受け止めた。実は前週末から「24日辞任」との怪情報が飛び交っていた。食事もとれなくなっているらしいという話はもう少し前から永田町を駆け巡っていた。政界関係者もメディアも緊張感をもって事態を見守っていた。

 だが、この日の安倍首相の言動を見て、永田町とメディアは一息ついてしまった。それが実情だった。

 筆者のつかんだ情報によれば、8月24日から25日にかけ、安倍首相は複数のメディア関係者や経済人らと電話をしている。その際、安倍首相は自身が回復傾向にある旨を明かしている。

 会話をした人物の一人は「安倍首相が続投に強い意欲を示している」との印象を受けたという。今週に入り、メディアが「安倍首相は辞任しなさそうだ」との見方に大きく傾いたのは、安倍首相自身の発言に接した人々の“見方”が影響していた。もちろん、安倍首相と直接面会する閣僚や官邸スタッフ、与党幹部らも同様の見解を持っていた。

 28日の辞任表明会見で、安倍首相は8月24日に辞意を決断したと明言し、誰にも相談せずに一人で決めたことも認めた。ウソをつくメリットを見いだせないので事実に近いはずだ。辞意を誰にも察知されないように保秘を徹底していた可能性が高い。実際、記者会見の3時間前まで、テレビも新聞も「辞意表明」の見出しを打てなかった上、自民党内も、例えば岸田文雄政調会長は地方に出張していたほどだ。有力後継候補の岸田氏がこのタイミングで東京を離れたところに致命的なセンスのなさを感じざるを得ないが、多くの議員たちにとっても寝耳に水だったのは間違いない。二階俊博幹事長も、菅義偉官房長官も、山口那津男公明党代表も、言動から推測するに事前にキャッチしていなかったようだ。唯一、事前に辞意を伝えられたのは麻生太郎副総理兼財務相だった。

しかし、振り返ってみれば兆候もないわけではなかった。

 安倍首相は8月24日、慶応大病院の検査を終え、官邸に入る際、記者団に「大変厳しい時にあっても、至らない私を支えてくれた全ての皆さまに感謝申し上げたい」と謝意を示している。今思えば、いつもとは異なる、妙な言い回しであり、“終わり”を意識した言葉であったことがわかる。

 とはいえ、この言葉だけで、近いうちに退陣するだろうとの見通しを立てられた人はほとんどいないだろう。24日から28日までの5日間、安倍首相は「敵を欺くにはまず味方から」の権謀術数の鉄則を守り、表に出る日程に辞意表明に向けた布石を打った。

「臨時代理」阻止、総裁選方式も思うまま

 8月28日の記者会見では、安倍首相の「低姿勢」が目立った。

「任期をまだ1年残し、他の様々な政策が実践途上にある中、コロナ禍の中、職を辞することとなったことについて、国民の皆様に、心よりお詫びを申し上げます」

「自分自身の健康管理も総理大臣の責任だろうと思います。それが私自身、十分にできなかったという反省はあります」

「病気と治療を抱え、体力が万全でないということのなか、大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことがあってはなりません」

 体調が万全ではないことが一目でわかる状態でありながら、無礼千万ともとれる一部記者の質問にも真摯に対応した。

 効果は絶大だった。「病気についてあれこれ言うのはかわいそうだ、よくやった」という世論がまたたく間に形成された。安倍首相に厳しい姿勢を取ってきた野党議員からも、ねぎらいや慰労の言葉が次々に飛び出し、国民民主党所属議員からは、政治判断を誤ることはあってはならないので辞任するという理由を「潔い」と褒めたたえる声も出た。

 思い出されるのは、安倍首相の大叔父でもある佐藤栄作首相の退陣会見だ。

 1972年、佐藤栄作首相は、官邸と記者クラブとの行き違いもあって、花道となるはずの退陣表明会見を記者不在で行っている。佐藤首相は記者会見場に入った途端、新聞記者たちが集まっているのを見て不快感をあらわにし、「テレビカメラはどこにあるのか。新聞記者の諸君とは話さないことにしてるんだから。国民に直接話したいんだ。文字になると違うから。偏向的新聞は大嫌いだ」と言い放ち、最終的に記者団不在のまま記者会見が始まった。安倍首相は大叔父の大先輩とは正反対に、引き際の記者会見は成功したと評価されよう。

 辞任の理由が病気であること、低姿勢を心がけた会見であったことなどから、世論はおおむね「労いモード」になった。そこで注目されるのは誰が次の首相になるのか、だ。

 安倍首相は、後継に関しては口を出さないとの立場を強調しているが、果たしてそうだろうか。低姿勢の記者会見の裏で、復権に向けた野心も垣間見える。抜き打ち的な辞意表明により、自民党は安倍首相の敷いた路線に従わざるを得ない状態になっている。永田町でまことしやかに喧伝されていた「麻生首相臨時代理」構想は出る幕もなく、安倍首相は後継が決まるまでは職務を続けると断言した。すみやかに総裁選を実施する必要があるため、両院議員総会での総裁選が実施されることも内定した。これは安倍首相の不倶戴天の敵とされる石破茂元幹事長を潰すことに直結する。党員投票が実施されれば、石破氏が有利になるからだ。

 現時点では、すべて安倍首相が望むような方向に動いている。

令和の「キングメーカー」誕生か

 日本で最も権謀術数に長けているのは、史上最長の政権を維持した安倍首相である。「麻生首相臨時代理」の線を消し去り、総裁選出法については「二階幹事長に一任」とは言いながらも、石破氏が不利とされる議員票中心の方法へと導いた。いずれも用意周到なシナリオがあってのものだろう。次期政権への影響力保持を意図しているとしか思えないし、自身は政界を引退せず、一議員として活動していくとの意向も記者会見ではっきり示した。

 9月15日前後に行われることになる総裁選、そして来年9月に再び行われる総裁選で、安倍首相の動きはポイントとなる。来年10月までには必ず衆院選もある。重要な政治イベントがあと1年のうちに3回もある点も見逃せない。

 今後、安倍首相は党内最大派閥、細田派の最高実力者となり、党内政局のキーマンとなる。しかも、細田派は100人近い大所帯であり、全盛期の田中(角栄)派に匹敵する規模を誇る。安倍首相が体調回復に成功すれば、無役の「キングメーカー」として党内に君臨する公算が大きくなってきた。

 さて、安倍首相の意中の後継者は誰なのか。スキャンダルまみれになりボロボロで官邸を去るのではない。歴代最長政権を率いた宰相経験者なのだから、その意向が影響力を持たないはずはない。当面、安倍首相の本音を探ろうとする動きが出てくるだろう。いや、そうなると安倍首相は実質的に、すでにキングメーカーの座を手に入れたと言えるのかもしれない。

【私の論評】安倍晋三氏は、一定期間のみ良い意味でのフィクサーか、キングメーカーの道を目指している(゚д゚)!

キングメーカーとは、どういう意味かといえば、キング(比喩的に最高権力者を意味するが、国王そのものである場合もある)などの選出や退陣に裏方で大きな影響力を持つ人物のことです。

自らは表舞台の政治権力者にならない(または退陣した後)が、裏方では政治権力者に関する人事権を事実上持っていることがあります。そのため、政治権力者の人事権を通じて政治を左右します。

総理退陣後に「キングメーカー」として力を発揮した西園寺公望


表舞台の政治権力者に関する人事権が少数(究極的には1人)になったり、ルールで明文化されていないが政治権力者に関する人事権を裏方の少数が事実上持っている政治構造になっていたりする場合は権力の二重構造となりやすいです。

現在の民主政治では大統領や首相など行政府最高権力者に対する裏方の人事権を指すことが多いです。

確かに、上の記事にもある通り、安倍総理の辞任発表のタイミングや、辞任する意向を麻生氏にだけ伝えたことや、今後、安倍首相は党内最大派閥、細田派の最高実力者となり、党内政局のキーマンとなることや、細田派が100人近い大所帯であり、全盛期の田中(角栄)派に匹敵する規模を誇ることから、安倍総理がキングメーカーになる可能性は高いです。

振り返ってみると、安倍晋三氏は、第一次安倍政権においては、結局のところ経済が良くなければ、政権を維持することは困難になることを学んだと思います。これは、もっともです。なぜなら、国民の一番の政治に対する関心事は、自らの暮らしぶりであり、国体や安保はその次です。それが悪くなれば、政権に不満を抱くようになり、政権への支持は低下します。

政権が維持できなければ、自らの理想を達成できないことも学んだと思います。まずは、安倍晋三氏は、政権を維持することが第一ということを肝に命じたでしょう。

そうして、不死鳥のようによみがえった第二次安倍政権では、アベノミクスといわれる経済政策を強く打ち出しました。これによって、経済はかなり回復したのですが、そこに伏兵が現れました。

それは、頑として緊縮路線を貫く財務省です。安倍総理は、支持率の高い政権であれば、財務省も時の政権に抗えないのではと思ったでしょうが、実体はそうではありませんでした。安倍総理は、二度にわたって増税を先延ばししたのですが、結局のところ財務省の圧力に負け、二度にわたる消費税増税を容認せざるを得なくなってしまいました。

安倍首相は13年前の第1次政権で財務省の怖さを身をもって経験しました。

当初は小泉政権から引き継いだ圧倒的多数を背景に公務員改革を進め、財務省の天下り先に大鉈を振るって政府機関の統廃合に取り組みました。ところが、半年経たないうちにその威勢は消し飛びました。

閣僚のスキャンダルや消えた年金問題がリークされ、支持率が落ち目になると、財務省は全くいうことを聞かなくなったのです。そうなると内閣はひとたまりもないです。

官邸は閣議の際に大臣たちが総理に挨拶もしない“学級崩壊”状態に陥りました。あの時のトラウマがあるから、安倍総理は政権に返り咲くと政府系金融機関のトップに財務省OBの天下りを認めることで7年前の償いをせざるをえなかったようです。

13年前安倍第一次内閣は崩壊

やはり13年前、安倍首相は新聞の宅配制度を支える「特殊指定(地域や読者による異なる定価設定や値引きを原則禁止する仕組み)」見直しに積極的だった竹島一彦・公正取引委員長を留任させました。その人事でさらなる窮地に陥ったのです。

財務省と宅配を維持したい大手紙側は竹島氏に交代してもらう方針で話がついていました。ところが、安倍総理が留任させたことから、財務省は『安倍政権は宅配潰しに積極的だ』と煽り、それまで親安倍だった読売などのメディアとの関係が冷え込んだのです。

財務省の天下り先を潰しただけで、それだけの報復を受けたのです。その後、自民党から政権を奪い、「総予算の組み替え」で財務省の聖域である予算編成権に手をつけようとした民主党政権の悲惨な末路を見せつけられたのです。

最近の事例では、獣医学部新設のときの文科省の抵抗をみれば、わかりやすいでしょう。あの事件の実態は、獣医学部新設を渋る文科省に対し、官邸主導で押しまくって認可させたという、ただそれだけの出来事です。

これに怒った文科省は、腐敗官僚の前川を筆頭に、マスコミに嘘を垂れ流し、安倍内閣打倒に燃えるマスゴミがこれを最大限に利用して安倍政権を糾弾したのです。官庁の中では、最弱ともいわれる文科省がこれだけの反撃をするのですから、官庁では最強の財務省がどれだけの反撃をするのかは、想像に難くないです。

安倍総理としては、このことはかなりのトラウマになっていることでしょう。

安倍総理は、第二次安倍政権においては、財務省の抵抗にあって二回の増税をせざるをえませんでしたが、日銀は金融緩和を実施して、かつてないほど雇用は改善されました。これが、何といっても安倍長期政権を可能にした原動力でした。

しかし、財務省による圧力により、増税をせざるを得なくなりました。さらに、官僚の反抗とそれに呼応するマスコミの攻撃と、野党の攻撃に悩まされました。

確かに野党の攻撃は、ほとんど根拠のないもので「もりかけ桜」では、どうあがいても最初から倒閣など無理でした。しかし、国会開催中においては、どうしても、この野党のくだらない追求に付き合わなければなりません。

本当に日本の国会は、異常です。本来の国会議員の仕事は、立法です。だかこそ、立法府というのです。しかし、野党はまるで、倒閣するのが自分たちの仕事と思っているかのような振る舞いばかりします。

これは、英米などとは根本的に違います。米国では、たとえば、共和党のルビオ上院議員など、かなりの数の法案を提出しています。米国では、議員の仕事は、立法であることが理解されているようです。

しかし、日本の国会ではそれが理解されていないばかりか、閣僚や総理大臣が、国会に長時間拘束されます。米国では、年間で上院にトランプ大統領は1日出るだけですみます。下院には1時間だけです。フランス大統領は1日しか国会に出ません。英国も40時間くらいです。ドイツは14日。日本の総理はだいたい90日~100日くらい出ている。

これは、無論おくびにも出しませんでしたが、安倍総理には、かなり苦痛だったと思います。それでも、野党の追求がマクロ経済に関わること、安保に関わることなど根幹にかかわるような話であれば、まだ我慢もできるでしょうが、ほとんど倒閣のための低級なくだらない与党批判ばかりです。「桜」問題では、本当に野党の低能力ぶりが顕になり、安倍総理も内心呆れ返っていたのではないかと思います。

野党や、リベラル派の方々は、そんなことはないというかもしれませんが、では「もりかけ桜」で倒閣に結びつくような「物証」をあげてくれと、問うたら、提出できますか?

それができるなら、安倍内閣はもっと短命だったに違いありません。ある筋からの話ですが、安倍総理は元来チマチマしたことが嫌いなそうです。そんなことより、物事を大筋で捉えて、それに対する大胆な方策を考えることを好むそうです。そうして、本来国政とはそのようなものです。

野党のように、立法とは直接関係ないような、チマチマしたことを追求する姿勢には、ほんとうにうんざりされていたと思います。

それと、安倍総理は党内の派閥の力学にも悩まされ続けました、特に最近では、世界情勢が変わって、多くの民主主義国家が中国との対立を深めているにもかかわらず、自民党では志帥会(しすいかい,通称二階派)の勢力が強く、ご存知のように二階氏をはじめ、志帥会には親中派の議員も多く、これを配慮するあまり習近平主席の日本への国賓待遇での訪問を拒否するにかなり手間取りました。

それだけでなく、日本は政府は無論、民間企業なども旗幟を鮮明に、中国と対峙しなければ、いずれ米国等から制裁を受けかねません。

とにかく、第二次安倍政権において安倍総理は自ら総理大臣になって、選挙で何度も勝利して、政権を安定させたにしても、現在の日本の政治風土では、官僚の頑強な反抗、マスコミの攻撃、党内力学により、自分がやりたいようにできないということをは嫌というほど学んだと思います。これを民主主義と呼ぶには、あまりに官僚やマスコミ、党内力学が強すぎます。

二階自民党幹事長(左)と財務省太田次官(右)

では、どうすれば良いのかということになりますが、それは上の記事にも掲載されているように、キングメーカーの道をえらぶということです。

私自身としては、安倍総理には辞任後は、メンターになってなってほしいと考えていました時期もありました。ちなみに、メンターとは、仕事上(または人生)の指導者、助言者の意味。

企業におけるメンター制度とは、企業において、新入社員などの精神的なサポートをするために、専任者をもうける制度のことで、日本におけるOJT制度が元になっています。メンターは、キャリア形成をはじめ生活上のさまざまな悩み相談を受けながら、育成にあたります。

ただ、メンター制度とは、あくまで商法や企業法、会社法など法律が整い、さらにその他の人事制度などが整っている組織で行えば、効果が期待できますが、官僚や、党内力学の問題がある政治の世界では全く効果が期待できません。

だとしたら、やはりキングメーカーになるのが、良いと思います。ただ私としては、それを乗り越えて、フィクサーへの道を歩んでいただきたいです。

なぜなら、最近の例をあげると、安倍総理が「10万円の制限なしの給付金」を岸田氏に一任したにもかかわらず、岸田氏は財務省との折衝において、いつの間にかそれが「30万円の所得制限つき給付金」に変わっていたことに象徴されるように、ポスト安倍候補者の能力があまりにも低いからです。

特に、マクロ経済政策に関しては、すべてのポスト安倍候補者があまりに疎く、財務省の緊縮脳に染められて、財政優先の思想に陥っているか、財務省の圧力に押し殺されて、財務省のいいなりのようです。これでは、誰が次の総理大臣になっても、長期政権すらおぼつかないです。

かろうじて、最近麻生氏が財務省を「狼少年」と揶揄して、まともになったようですが、麻生氏は次の総裁選には出ないと公言しています。

フィクサー(英: fixer)は、政治・行政や企業の営利活動における意思決定の際に、正規の手続きを経ずに決定に対して影響を与える手段・人脈を持つ人物を指します。

行政組織、政府や企業などの社会組織では、通常は関係する人間や団体の意向(広くは世論)を踏まえたうえで、正規の手続きを取って意思決定を進める手段が確立されています。

例えば、行政への陳情、選挙や企業における稟議や経営会議などです。そのような正規の手段によらず、意思決定の過程に介入する資金、政治力、人脈などを持つ人物がフィクサーと呼ばれます。

フィクサーが介入すると往々にしてその手段は公正でなく恣意的な結論となる場合があります。自民党でいえば、金丸氏はその典型でした。無論、私は安倍晋三氏が金丸氏のようになれといっているわけではありません。一方で、理想と現実の間で複雑化する人間関係や利害関係を円滑にすすめる役割を果たす場合もあります。

私が、安倍総理にフィクサーになっていただきたいというのは、そのような役割を果たし、その上で政治をあるべき正しい方向に近づけていただきたいということです。

現在の日本では、先にも述べたように、総理大臣になっても、長期政権を実現してすら、総理大臣が理想とする政治を実現できないのははっきりしました。

この状況はなんとかして変えていかなければなりません。しかし、変えるには今のままの状況では不可能です。

これを変えるために、あくまで一時的に安倍晋三氏に、フィクサーになっていただき、官僚が政治に介入できないようにし、政治が党内力学によって歪められるることがないような体制に持っていていただきたいです。そうすれば、マスコミも自ずと、変わっていくでしょう。

その過程で、日本にも英米のように政策提言シンクタンクを生み出すべきでしょうが、そのようなチマチマしたことは、それこそ、優秀な官僚等に任せれば良いことです。その他、日本では政治家の仕事と思われているものも、ほとんどがチマチマしたことです。そのようなチマチマしたことに政治家が直接かかわらなくても、すむような体制を整えるべきです。

無論、この問題は日本だけではなく、多くの民主主義国家においては存在します。韓国は、日本よりも酷いです。ただ、日本ではこの問題が韓国ほどないにしても、他の民主主義国家と比較して、度が過ぎているということです。

何もかもが、安倍晋三氏の思い通りということになれば、それは「全体主義」です。そのようなことではなく、総理大臣や政権が、官僚の思惑や、党内力学によって度がすぎる程度にまで、歪められない体制を整えていただきたいのです。

そのためには、安倍晋三氏が一定期間良い意味でのフィクサーとなり、日本の政治を良い方向に導いていただきたいのです。そうして、無論フィクサーなるものが、長期間存在することは、良くないことですから、これは数年から長くても10年でやめていただきたいです。

それで、日本の政治風土が変わり、総理大臣と政権が、官僚の思惑や、党内の力学によって歪められなくなった、まさにその時は、安倍晋三氏が再び総理大臣になっていただくか、それがかなわなけれは、安倍総理の意思を受け継ぐ人が総理大臣になっていただきたいです。日本では、これをもってはじめて、まともな安保論議や、憲法改正論議になるのではないかと思います。

無論安倍晋三氏は、これに近いことも当然ながら考えたと思います。キングメーカーもしくは、フィクサーになるべきか、それとも総理大臣を続ける道を選ぶべきが、悩まれたと思います。私は病をおしてまで、総理大臣を続けるよりは、日本の政治をより、正しい方向に向ける可能性に賭けたのではないかと思います。そうでなければ、少しの間休んでも、その期間に代理をたてて、総理大臣を続けたのではないかと思います。

これに関しては、安倍晋三氏の今後の行動をみていれば、いずれわかる時が来ると思います。

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2020年8月28日金曜日

コロナ禍でも踏ん張れるアベノミクス2800日の「レガシー」―【私の論評】安倍晋三首相の連続在職日数が史上最長になったのは、多くの人の支えや賛同があったから(゚д゚)!

コロナ禍でも踏ん張れるアベノミクス2800日の「レガシー」

田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

田中秀臣氏(写真はブログ管理人挿入)

安倍晋三首相の連続在職日数が8月24日に2799日となり、史上最長になった。首相の大叔父にあたる佐藤栄作元首相を抜く記録である。

佐藤政権の時代はちょうど高度経済成長の後期に該当し、筆者も当時をよく記憶している。特に政権の最晩年に近づくにつれ、単に長期政権というだけで、国内のマスコミや世論の批判を受けていた側面がある。国外ではノーベル平和賞をはじめ、経済大国に押し上げた経済政策を評価されていたこととは対照的だった。

現在も続く新型コロナ危機でも、安倍首相の経済対策と感染症抑制に対する評価が国内外で全く異なっていることは、前回の論考でも説明した。筆者は常に、政策ごとにデータと論理で評価することに努めている。

政策には100点満点も0点もあり得ない。しかし、多くの人は全肯定か全否定しがちである。それは愚かな態度であるが、おそらく本人に指摘しても変わることはないほど強固な認知バイアスだといえる。

筆者の周囲にも「私の直観や感情では、安倍首相は悪い人」といって、どんなに論理や事実を提示しても意見、いや「感情」を改めることのない人は多い。このような人たちの多くは、テレビのワイドショーや報道番組の切り口に大きく影響されてしまう。「ワイドショー民」としばしば呼ばれる人たちだ。

このような感情的な反発がベースにあるワイドショー民が増えてしまえば、政治家の「人格」も「健康」も軽く扱われてしまう。要するに、非人道的な扱いの温床につながるのである。

安倍首相のケースでいえば、8月17日と24日の慶応大病院での受診や、新型コロナ危機の前後から続く過度な執務状況がそれに当たる。心ない反安倍系のマスコミ関係者や野党、そしてそれに便乗する反安倍的な一般の人々による、まさに醜悪といっていい発言を最近目にすることが多い。

この人たちはおそらく人を人と思っていないのだろう。どんな理屈をつけてきても、それでおしまいである。議論の余地などない。

ましてや、国会で首相の健康の状況を政争の論点にしようとしている野党勢力がある。そのようなレベルの考えだから、いつまでたっても支持率が低いままなのだ。きちんと政治を見ている心ある人たちもまた多いのである。

経済評論家の上念司氏は、8月24日の文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』で「野党が(首相は)休むんじゃないとかひどいことを言っている。この健康不安説を流しているのは野党とポスト安倍といわれる政治家の秘書ではないか」と推論を述べている。首相の健康不安を過度にあおり、それを政争にしていく手法は、本当に醜悪の一言である。

この手の政治手法に「よくあること」などと分かった風のコメントをする必要はない。単に、人として品性下劣なだけだからだ。

実際には「一寸先は闇」なのが政治というものである。それでも、民主国家の日本でこれほどの長期政権を続けられるのは、国民の支持がなければあり得ないことだ。

この連載でも常に指摘していることだが、安倍政権が継続してきた主因は経済政策の成果にある。新型コロナ危機を一般化して、安倍政権の経済政策の成果を全否定する感情的な人たちもいるが、論外である。

もちろん景気下降の中で消費税率の10%引き上げを2019年10月に実施した「失政」を忘れてはならない。さらにさかのぼれば、二つの経済失政がある。2014年4月の8%への消費税引き上げと、18年前半にインフレ目標の到達寸前まで近づいたにもかかわらず、財政政策も金融政策も事実上無策に終わらせたことだ。

ただし、きょう2800日を迎える中で、新型コロナ危機以前の経済状況については、雇用を中心に大きく前進していた。「長期デフレ不況」の「不況」の字が取れ、「長期デフレ」だけになっていたのが、2度目の消費増税に踏み切る19年10月以前の経済状況だったといえる。

このことは、経済に「ため」、つまり経済危機への防御帯を構築したことでも明らかである。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の防御帯は主に3点ある。「雇用の改善」「株価、不動産価格など資産価格の安定」「為替レートが過度な円高に陥ることがないこと」である。

これらのほぼ全てを事実上、アベノミクスの「三本の矢」の金融政策だけで実現している。この状況に、積極財政の成果も急いで加えることができたら、インフレ目標の早期実現も可能となり、経済はさらに安定化しただろう。

雇用改善については、第2次安倍政権発足時の完全失業率(季節調整値)が4・3%で、新型コロナ危機前には2・2%に低下していた。現状は2・8%まで悪化しているが、あえていえばまだこのレベルなのは経済に「ため」があるからだ。

有効求人倍率も、政権発足時の0・83倍から、新型コロナ危機で急速に悪化したとはいえ、1・11倍で持ちこたえているのも同じ理由による。ただし、「ため」「防御帯」がいつまで持続するかは、今後の経済政策に大きく依存することは言うまでもない。

このような雇用の改善傾向が、若い世代の活躍の場を広げ、高齢者の再雇用や非正規雇用者の待遇改善、無理のない最低賃金の切り上げなどを実現することになった。

そのような中で、朝日新聞は首相連続在職最長になった24日に「政策より続いたことがレガシー」という東京大の御厨(みくりや)貴名誉教授のインタビュー記事を掲載していた。現在の朝日の主要読者層には受けるのかもしれないが、7年にわたる雇用の改善状況を知っている若い世代にはまるで理解できないのではないか。

日経平均株価は政権発足前の1万230円から2万3千円近くに値上がりし、コロナ危機でも安定している。為替レートも1ドル85円台の過剰な円高が解消されて、今は105円台だ。これらは日本の企業の財務状況や経営体質を強化することに大きく貢献している。

ところが、24日の日本経済新聞や読売新聞では、新型コロナ危機下であっても、財政規律や基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の先送りを問題視する社説や記事を相変わらず掲載している。産経新聞は、比較的アベノミクスの貢献を詳しく書き、消費増税のミスにも言及している。

ただ、今回は別にして、産経新聞も財政規律を重んじる論評をよく目にすることは注記しなければならない。他にもツチノコのような新聞があったが、今はいいだろう。

      2万3000円台を回復した日経平均株価の終値を示す株価ボード
      =2020年8月13日午後、東京・日本橋茅場町
2万3000円台を回復した日経平均株価の終値を示す株価ボード=2020年8月13日午後、東京・日本橋茅場町
 これらのマスコミは経済失速を問題視する一方で、その主因の消費増税などをもたらす財政規律=緊縮主義を唱えているのだ。まさにめちゃくちゃな論理である。

感情的な印象論で決めがちなワイドショー民、健康を政争にすることを恥じない野党勢さ力、不況を責めながら不況をもたらす財政規律を言い続けるめちゃくちゃなマスコミ。こんな環境の中で、安倍首相はよく2800日も政権を続ける強い意志を持ち続けたと思う。本当に「偉業」だと率直に評価したい。

【私の論評】安倍晋三首相の連続在職日数が史上最長になったのは、多くの人の支えや賛同があったから(゚д゚)!

安倍総理自身による辞任の公表かなされてから、安倍総理や安倍政権に関する記事を、読んでみました。

ネットで見る限り、「レガシーなしの安倍政権」などの表題が踊っており、これらはとてもじゃないですが、自分自身のブログに掲載して、それを論評することなど、到底不可能と思い、本日は田中秀臣氏の上の記事を掲載させていただきました。田中氏の論評はいたって、まともだと思います。ただし、この記事は安倍総理が辞任を公表する前の、

田中秀臣氏に関しては、どのような人なのかは、他のメディアにあたってください。ただし、他のメディアにはない私の知っている田中秀臣氏に関してはここで若干説明させていただきます。

まず、田中氏は自他共に認める「リフレ派」です。私自身は、田中氏は正統派リフレはだと思っています。正統派とは、まともなマクロ経済学的観点からの、リフレ派だという意味です。田中氏とは、主にtwitter上のでのやりとりがありましたが、その中で感じたのは、やはり正統派ということでした。

ただし、私が正統派という場合、日本の経済学者の主流派という意味ではありません。東大を頂点とする、日本の主流派経済学者らは、はっきりいいますが、財務省の走狗であり、彼らの主張をは、世界標準の主流の経済学とはかけ離れており、まともではありません。

そのせいもあってか、最近はそのようなことはなくなりましたが、一昔まえは、異端派経済学者とみられていた時期もあったようです。

その中において、田中氏はいつもまともに、日本の経済の本当の有様を解説し、それ対する政策はこうあるべきだとの主張をしてこられました。

それは、上の記事をご覧いただいてもおわかりになると思います。あくまで、安倍政権の経済政策を是々非々でみて、論評しています。この姿勢は、以前から一環しています。

なお、民主党政権の政策については、自民党にお灸をすえるつもりで、民主党政権に政権交代させれば、大変なことになると批判してました。実際そのとおりになりました。

このブログの古くからの読者なら、おわかりでしょうが、私も無論そのように予測していました。そうして、私自身も安倍総理の政策を是々非々でみていました。高く評価したこともありますが、もちろん批判したこともあります。

この田中氏ですが、上の記事など読んでいると、田中氏のことを「保守派」と思うかたもいらっしゃると思いますが、本人は「リベラル派」と思っているようです。ただし、「リベラル派」とは現在の日本に多く存在するいわゆる似非リベラル派ということではなく、元々の正しい意味での「リベラル派」のようです。

その真性リベラル派からみても、安倍総理のレガシー(遺産)は、確かに今の日本にとって、間違いなく役にたっているのです。

たしかに、失敗もあるのですがそれでも、もし安倍政権になってからの、金融緩和政策がなければ、今頃失業率が軒並みあがり、日本はとんでもないことになり、コロナ対策どころではなくなっていた可能性が非常に高いです。

そのようなことを考えると、安倍総理のレガシーによって、現在日本は、コロナ禍に見舞われても、なんとか踏ん張ることができ、今後政策を間違えなければ、早期の回復も期待できるのです。

それと、安倍総理のもう一つのレガシーは、やはり極めて限定されているというものの、集団的自衛権の行使ができるようになったことでしょう。

集団的自衛権は世界中、どこの国でも保持しているし、殆どの場合、自由に行使が出来ます。集団的自衛権に関して、議論されていたときに、野党や新聞は、日本がこの行使が可能になれば、すぐに戦争になるとか、徴兵制が復活するなどと多騒ぎしました。

2015年8月30日午後2時、東京・千代田区の国会議事堂前で開かれた「戦争法案廃案!安倍政権退陣!
8・30国会10万人・全国100万人大行動」に参加した日本市民の巨大な波が国会を包囲

しかし、未だに日本は戦争をしていません。さらに、日本以外の国々では、集団的自衛権の行使を制限なくできますが、それらの国々のほとんどが、戦争をしていません。

日本だけが集団的自衛権を行使容認すると、途端に戦争が始まるという議論は、日本を特別に貶めるヘイト・スピーチだといっても過言ではありません。日本も世界の各国も対等です。日本だけが集団的自衛権の行使が許されず、仮にその行使が決定した瞬間に戦争になるというのは、論理的に破綻しています。

安全保障の議論は、空理空論であってはならない。集団的自衛権の行使容認によって、「立憲主義」が破壊されるという議論もありましたが、これもおかしな議論です。調べてみると、あのときに立憲主義が破壊されると叫んでいる人の多くが、PKO法案に反対し、「立憲主義が破壊される」と叫んでいた人々でした。

しかし、PKO活動が可能になって、30年近くの歳月を経た現在、PKO活動で立憲主義が破壊されるという主張はなされていません。自衛隊が海外に派遣され、自然災害等々で苦しんでいる人々を救援していることは、多くの日本国民にとって誇りです。弱い立場にある人々を救援して、立憲主義が破壊されるとは、滑稽な空理空論でした。

それと、「もりかけ桜」(くだらない上に面倒なので、このように一つまとめます)で、野党は安倍政権や安倍総理個人を攻撃し続けましたが、いまだにどれも「疑惑」の範囲を超えていません。あれだけ、長い時間をかけたのですが、結局どれもいわゆる「物証」などが出てこず、安倍政権や安倍総理を追い込むことはできませんでした。

ワイドショー民は、そのようなことはしないようですが、私自身は、公に公表されている関連文書をいくつか読んでみましたが、どれ一つをとっても、倒閣に結びつくものはありませんでした。私の出した結論は、倒閣でありもしない問題をさも「問題あり」としているだけという結論を出しました。

このようなことばかりやっていると、野党は自らをすり減らし、弱体化していくだけだと思いました。そうして、実際そのとおりになっています。次の選挙では、与党がよほどの間違いをしでかさない限り、与党が勝つのは当たり前という状況です。

それと、外交においても、全方位外交を実践し、日本の存在感を高めました。外交をするだけではなく、実際に多く国々との関係を深め、TPPや日欧EPAを発足させました。しかし、海外では高い評価を受けているものの、日本国内ではあまり評価されませんでした。

経済でも、安全保障でもこのような、外交でも、不可思議で無意味な議論がまきおこる、日本において、安倍政権は2800日も政権を続けることができたということは、奇跡に近いかもしれません。

さて、ポスト安倍ですが、私は現在のところは、麻生氏が総理大臣をつとめるのが、一番だと思います。他のポスト安倍候補は、先日も述べたように、河野防衛大臣や小泉環境大臣も含めて、全員が増税などを正しいと信じる緊縮派です。ただ、麻生氏は例外です。

麻生氏は、従来は麻生氏を要に、財務省の意向を政権内部周知徹底するという役割を担っていたようで、本人自身も「増税は国際公約」と述べるなど、かなり財務省よりでしたが、最近豹変しました。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
麻生氏の「豹変」が象徴する政府と日銀の“対コロナ連合軍” 相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう ―【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!
麻生副総理、財務大臣
詳細は、この記事を読んでいただくものとして、以下に一部を引用します。
 いずれにしても、戦前の大恐慌並みの経済ショックの際に、過去最大規模の国債を発行するのは当然である。それでも財務省の事務方は財政再建の旗を降ろさないが、麻生太郎財務相には、事務方とは違う良い兆候もある。麻生氏は5月12日の記者会見で、政府の借金が増え過ぎることによって日本財政が信頼されなくなる可能性を指摘してきた財務省を「オオカミ少年」と表現したのだ。
この記事にも掲載したように、新規国債の発行額が、当初予算と1次、2次補正を合わせて過去最大の90兆2000億円に達したと報じられたのですが、 戦前の大恐慌並みの経済ショックの際に、過去最大規模の国債を発行するのは当然である。それでも財務省の事務方は財政再建の旗を降ろさないが、麻生太郎財務相は5月12日の記者会見で、政府の借金が増え過ぎることによって日本財政が信頼されなくなる可能性を指摘してきた財務省を「オオカミ少年」と表現したのです。

コロナ・ショックは戦争状態ともいえるような非常事態です。そこで麻生氏が共同談話で「日銀と政府の関係は、きちんと同じ方向に向いていることがすごく大事なことだ」と語ったことが重要です。

これは、政府と日銀との連合軍が組まれたことを意味します。経済政策としては、財政政策と金融政策の同時・一体発動を意味しており、コロナ・ショックという戦後初、戦前の大恐慌に匹敵するくらいの経済危機に対し、政府の危機感を示すものでした。

政府と日銀との連合軍では、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うのですが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行います。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをするのです。まさに大恐慌スタイルの経済政策です。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることです。しかし、コロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときです。こんなときに、「デフレがー金利がー」と叫ぶような人は、経済が、特に未曾有の経済危機に至ったときの、経済政策がどうあるべきか等を知らない人です。

現時点で、麻生氏以外が総理大臣になった場合、消費税増税や、かつての復興税のようなコロナ増税を、財務省手動のもとで推進しかねません。そうなれば、日本経済はリーマンショックのときにのように、一人負けになり、他国がコロナ禍から経済が回復した後も、しばらくデフレや、円高に悩まされかねません。それだけは、避けるべきです。

最後に百田尚樹氏のツイートを掲載します。



まさに、百田氏の言う通りだと思います。安倍総理のレガシーをまともに評価できない人は、他の評価も信憑性に欠けるとみるべきです。

そもそもも、安倍晋三首相の連続在職日数が8月24日に2799日となり、史上最長になりえたのは、多くの人の支えがあったからです。独裁国家ではそのようなことは簡単なのかもしれませんが、日本のような民主国家では、多くの人の支えや賛同がなければ不可能です。

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2020年8月27日木曜日

中国、弾道ミサイル4発発射で南シナ海が戦場に…米国に“先に手を出した”代償―【私の論評】中国には、かつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ米国の様子をうかがい、あわよくば取引をしようとする暇もない(゚д゚)!

中国、弾道ミサイル4発発射で南シナ海が戦場に…米国に“先に手を出した”代償

文=渡邉哲也/経済評論家

中国の習近平国家主席

南シナ海をめぐるアメリカと中国の応酬が激化している。8月26日、ドナルド・トランプ政権は中国企業24社に事実上の禁輸措置を発動することを発表した。

 国有企業である中国交通建設の傘下企業などについて、南シナ海での軍事拠点建設に関わったとして、「エンティティー・リスト」に27日付で追加する。今後、対象企業にアメリカ製品を輸出する場合は米商務省の許可が必要となるが、申請は原則却下されるという。

 中国交通建設は習近平指導部が掲げる広域経済圏構想「一帯一路」に関わる企業であり、ほかにも、デジタル通信機器やGPS関連機器を手がける広州海格通信集団などが含まれており、今後大きな影響が出るものと予測される。

 ウィルバー・ロス商務長官は「(制裁対象企業が)中国の挑発的な人工島建設で重要な役割を担っている」と断定しており、南シナ海関連では初めてとなる経済制裁のカードをここで切ってきたことになる。ただし、今回の措置は「アメリカ原産技術の禁輸」であり、金融制裁を伴うものではない。そのため、警告の意味合いが強く、短期的には影響が限定されるだろう。

 また、米国務省も、南シナ海の埋め立てや軍事拠点化などに関与した中国人と家族に対して、入国拒否などのビザ(査証)制限を実施すると発表した。マイク・ポンペオ国務長官は、「アメリカは中国が南シナ海での威圧的行動を中止するまで行動する」と警告している。

 中国が南シナ海で人工島を建設するなど軍事拠点化する動きについて、7月には、ポンペオ国務長官が「完全に違法」「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」と明言し、アメリカが初めて公式に否定した。また、同月には南シナ海で米中が同時に軍事演習を行い、一気に緊張が高まったという経緯がある。

中国のミサイル発射で南シナ海が“戦場”に

 一方、中国は8月26日朝に南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発の発射実験を行ったことが報じられており、ミサイルは南シナ海の西沙諸島と海南島に挟まれた航行禁止海域に着弾したという。しかも、そのうち「東風26」は米領グアムを射程に収めることから「グアムキラー」と言われ、同じく発射された「東風21D」とともに「空母キラー」と呼ばれる強力なものだ。

 中国は前日に軍事演習区域を米軍偵察機が飛行したことに対して「あからさまな挑発行為だ」と非難しており、アメリカを牽制する意図があることは明らかだ。しかし、あくまで威嚇的な行動であるとはいえ、これは事実上の宣戦布告と言っても過言ではない。南シナ海を舞台にした米中による戦争状態を加速させる動きであると同時に、中国がアメリカに対して先に手を出してしまったことの代償は大きなものになるだろう。

 すでに、アメリカは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中国の在留アメリカ人に対して帰国命令を出しており、残留者については保護の対象外としている。そのため、中国には保護すべきアメリカ人はいないということになっている。

 中国に対して強硬姿勢を取るアメリカは、台湾との関係を強化している。8月10日には、アレックス・アザー厚生長官が台湾を訪れ、蔡英文総統と会談を行った。これは、1979年の断交以来、最高位の高官訪問であり、中国に対する牽制の意味合いも多分に含まれているだろう。

 当初は8月末に予定されていたG7サミット(主要7カ国首脳会議)は11月に延期され、世界的な話し合いの場は先送りとなった。今後は、9月半ばに迎える、華為技術(ファーウェイ)や北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する動画アプリ「TikTok」に対する制裁期限、9月26日から実施される香港の貿易上の優遇措置廃止などが、事態が動くタイミングとなるのだろう。

 また、アメリカ大統領選挙の選挙戦が本格化する中で、中国共産党員のアメリカ資産凍結と入国拒否、アメリカからの退去命令などの、より強い制裁が発動されるのかも注目に値する。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】中国には、かつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ米国の様子をうかがい、あわよくば取引をしようとする暇もない(゚д゚)!

いよいよ、中国が本格的に北朝鮮化してきたようです。これから、中国は北朝鮮のように、ミサイルを頻繁に発射しつつ、核を開発し、様子をうかがいつつ米国との取引ができる状況になれば、ミサイルの発射を控えるということを繰り返すようになるのでしょうか。

いずれにせよ、中国が北朝鮮のようになることは十分に予想できました。中国共産党が「香港の1国2制度破棄」によって、引き返すことのできない、ルビコン川を渡ったのは明らかだらかです。習近平氏は従来から「毛沢東崇拝」を隠しもしませんでしたが、習近平政権の毛沢東化はついに「ルビコン川」を渡ったと言えるでしょう。

ルビコン川 川幅の身近いところは1mに満たない

「香港国家安全維持法」が6月30日に行われた中国全人代常務委員会で可決されましたが、施行されるまでこの法律の全文は公開されませんでした。さらに、中文のみで英語のものはありません。香港で施行される法律で英文がないものは初めてだろうと言われています。

しかも、この法律は中国共産党の統治下にはいない国外の外国人や組織にまで適用するという異常ぶりでした。

この時にすでに、中国は英語でいうところの"point of no return"(引き返せない地点)、すなわちルビコン川を渡ってしまい、かつてのナチス・ドイツと同じように、「殲滅すべき人類の敵」と民主主義国の国々から認識されたのです。

この「人類の敵」は、当時のナチス・ドイツと比較すれば、さほど強力ではないようです。特に核兵器に関しては、ソ連の核兵器を継承したロシアにも劣ります。さらに、人民解放軍は人民を抑圧するための組織であり、養わなければならない兵隊の数は多いがですし、長期にわたる一人っ子政策で、ほとんどが一人っ子ということもあり、外国と戦うための戦力としてはあてになりません。

ナチス・ドイツのV2ロケット

2隻の国産空母はほとんど戦力になりません。そうして、これは特に強調しておきますが、対艦哨戒能力に関しては、中国は時代遅れであり、日米とは比較にならないほど遅れています。また、潜水艦に関しても、ステルス性において、日米とは比較の対象にならないほど遅れています。

これは、何を意味するかといえば、日米の潜水艦は中国に発見されず、南シナ海や東シナ海、その他の海域を自由に航行できますが、中国の潜水艦はすぐに日米に発見されるということです。実際、最近では奄美大島の沖を中国の原潜が通過し、それを日本側がいちはやく発見し、河野防衛大臣が、それを公表しました。

ちなみに、日米の潜水艦は、南シナ海、東シナ海は無論のこと、中国の近海やもしかすると、港の中まで自由に航行しているでしょうが、それに関して中国のメディアが公表したことはありません。というより、中国側がそれを発見する能力がないです。

最近、サイトなどで中国の軍事力についての記事をみると、南シナ海で米中が戦えば米軍が負けるなどという、噴飯ものの記事をいくつか見ることもあります。

それらの記事には、対潜哨戒能力や潜水艦のステルス性については、なぜか一言も触れらておらず、その上で、ミサイルがどうの、航空機がどうのと、もっともらしく述べられ、結論として米国が負けるとしていました。

そういう記事には、「日米は南シナ海や東シナ海では潜水艦を使わないのですか?」と直截に質問をしてみましたが、返事がかえってきたためしはありません。痛いところを突かれたのでしょぅ。

特に、米国の原潜は、中国に発見されることなく、世界のすべての海域を自由に航行し、核を含めたあらゆるミサイルを発射することができます。日本の潜水艦も米国の潜水艦よりステルス性に関しては優れています。これでは、最初から勝負になりません。

要するに、南シナ海でも、東シナ海でも、いや世界中の海で、中国は米国に勝つ見込みはないのです。

世界最強の攻撃型原潜、米海軍のバージニア級 

さらに、米国の世界の金融支配は、中国としてはいかんともしがたく、世界金融市場をカジノにたとえると、米国がカジノの胴元とすれば、中国はいくら金をかなり使うとはいっても一プレイヤーに過ぎず、胴元に対抗しようとしても、対抗するすべがありません。胴元がプレイヤーに対して、カジノから出ていけといわれたらおしまいです。

あるとすば、中国国内にある米国企業や銀行の支店に対して、取引停止や資産凍結ができるだけです。それは、全体からみればほんのわずかなものに過ぎません。もし、中国がこれを大々的(とはいいながら最初から限界がありますが)に実施するなら、米国も国内で同じことを実行し、中国がさらに疲弊するだけです。

要するにも金融でも、軍事的にも米国は中国の敵ではないということです。そうして、米国は軍事衝突の前に、中国に対してあらゆる金融カードを切ることになります。そうされても、中国には対抗手段がほとんどありません。

では、今後中国がどのような道を選ぶことができるかというと、以下の二つしかありません。

1) 現在の北朝鮮のように、毛沢東時代の貧しい鎖国をする国になる。あるいは、北朝鮮やイラン、その他の少数の国々と経済圏をつくりその中で細々と貿易をする体制になる。
2)「人類の敵」として世界中の先進国から攻撃を受け滅亡する

中国が、ここ数十年驚異的な経済発展を遂げることができたのは「改革開放」という資本主義・自由主義的政策を共産主義に変わって、国家資本主義ともよべる体制を築き実行したからです。その中のほんの一部の自由の象徴が香港でした。

「改革開放」が存在しない中国大陸は、北朝鮮と何ら変わりがありません。習近平氏の運が良ければ、北朝鮮のように貧しい国で王朝を築くでしょうが、毛沢東時代と違って「自由と豊かさを知った」中国人民を押さえつけるのは至難の技でしょう。

ただ、現在の中国と北朝鮮とは根本的に異なることもあります。金正恩は、根本的に中国嫌いです。それが証拠に、中国に近いとされた、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長と、実の兄である、金正男氏を殺害しています。

金正恩にとって、最大の関心事は、金王朝を存続させることです。それを邪魔するのが、中国であり、北朝鮮内の親中派です。これを金正恩は許すことができないのです。

北朝鮮内の親中派はことごとく処刑すれば、それですむかもしれませんが、中国に関しては、そう簡単にはいきません。黙っていれば、中国はすぐにも朝鮮半島に浸透して、半島を我が物にしてしまうでしょう。

しかし、それを防いでいるのが、北朝鮮の核であり、ミサイルなのです。北の核は、無論韓国や日本に向いているのですが、中国に向けられているのです。ただ、金正恩にも、中国を無碍にできない事情もあります。現在厳しい制裁を受けているので、何かと中国の手助けが必要であるということです。だから、表だって中国に対する反抗的な態度をみせないだけです。

しかし結果として、北朝鮮とその核の存在が、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいるのです。このあたりを理解しているので、トランプ政権も現在のところは、北朝鮮を泳がせて様子見をしているというのが実情なのでしょう。

それに、米国(韓国は含まず)と中国、ロシア、北朝鮮とは、朝鮮戦争の直後の休戦協定で、38度線を互いにずらすことをしないという取り決めをしているので、みずからその現状維持を破るということはしたくないという考えもあるでしょう。

しかし、中国は、北朝鮮とは立場が異なります、中国は北朝鮮のように米国の大きな敵と対峙しているわけではありません。中国がかつての北朝鮮のように、ミサイルを頻繁に発射すれば、米国はどんどん金融制裁を推進し、最終的に人民元とドルの交換を停止したり、中国の所有する米国債を無効化する措置まで実行することになるでしょう。

そうなると、中国の選べる道をは上で示した二つしかなくなるのです。そうして、中国がどちらかの道を選べば、北朝鮮の将来もきまります。

一つは、他の国が入ろうが、入るまいが、北朝鮮が中国の経済圏の中に入り、他の経済圏からは切り離され、細々と生きていく道です。ただし、これは中国の浸透を嫌う金正恩がなんとか避けたいと思う道です。

もう一方の道は、中国が「人類の敵」として世界中の先進国から攻撃を受け滅亡し、全くの別の国、もしくは国々になった場合です。

この場合、中共が崩壊した後の新体制は、少なくとも米国とは対立するものとはならないため、北朝鮮と核の存在が朝鮮半島への浸透を防いできたという状況は消えるというか、必要がなくなります。そうなると、北朝鮮は滅ぶしかなくなります。特に、金王朝は滅ぶしかなくなります。

どちらの道も厳しいですが、北朝鮮が存続するためには、金正恩がいやがるかどうかは、別にして中国の経済圏の中で細々と生きていくしかありません。

米国としては、中国との対立の前には、北朝鮮は従属関数にすぎないと考えているでしょう。米国にとって、最優先は、中国です。

いずれにしても、中国にはかつての北朝鮮のように、ミサイルを発射しつつ、米国の様子をうかがい、あわよくば、取引をしようとする、暇もないようです。そうして、今の北朝鮮は中国の出方次第です。どちらの未来も明るくはありません。

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2020年8月26日水曜日

台湾、香港、中国の社会運動から見る青春と挫折、未来への記録 映画「私たちの青春、台湾」公開―【私の論評】今日の台湾は、アジアの希望だ(゚д゚)!

台湾、香港、中国の社会運動から見る青春と挫折、未来への記録 映画「私たちの青春、台湾」公開

「私たちの青春、台湾」ポスター

[映画.com ニュース]2014年に起きた台湾の「ひまわり運動」のリーダーと、中国人留学生ブロガーの活動から、台湾の民主化の歩みとその後を追い、台湾アカデミー賞こと金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した「私たちの青春、台湾」が10月31日、公開される。

23日間に及ぶ立法院占拠、統率の取れた組織力、全世界に向けたメディア戦略で成功を収めたといわれる一方、立法院内では、一部の指導者たちによる決議に対する不満など、困難に直面し、多くの課題を残した「ひまわり運動」。

陳為廷(チェン・ウェイティン)は、林飛帆(リン・フェイファン)と共に立法院に突入し、ひまわり運動のリーダーになった。そして、中国からの留学生で人気ブロガーの蔡博芸(ツァイ・ボーイー)は、“民主”が台湾でどのように行われているのか伝え、大陸でも書籍が刊行される程の支持を集めた。そんな彼らの活動を見ていた、傅楡(フー・ユー)監督は「社会運動が世界を変えるかもしれない」という期待を胸に抱いていたが、彼らの運命はひまわり運動後、失速。運動を経て、立法院補欠選挙に出馬したチェンは過去のスキャンダルで撤退を表明。大学自治会選に出馬したツァイは、国籍を理由に不当な扱いを受け、正当な選挙すら出来ずに敗北する。

『私たちの青春、台湾』傅楡(フー・ユー)監督

そして、香港の雨傘運動前の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)との交流など、カメラは台湾、香港、中国の直面する問題、海を越えた相互理解の困難さ、民主主義の持つ一種の残酷さを映し出していく。

アジア初の同姓婚法制化、蔡英文総統の歴史的再選、女性議員がアジアトップ水準の4割を占め、世界も注目した新型コロナ対策などで関心を集める台湾。フー・ユー監督は、金馬奨授賞式で涙を流しながら、「いつか台湾が“真の独立した存在”として認められることが、台湾人として最大の願いだ」とスピーチし、大きなニュースとなった。

私たちの青春、台湾」は、10月31日からポレポレ東中野ほか全国順次公開。また、フー・ユー監督の人生と台湾の民主化の歩みを書いた、「わたしの青春、台湾」(五月書房新社)邦訳版が、映画公開にあわせ10月23日に発売される。

▼「ひまわり運動」とは
 2014年3月17日、国民党がサービス貿易協定をわずか30秒で強行採決した。翌18日、これに反対した学生たちが立法院(国会)に突入し、23日間にわたって占拠した。占拠直後から多くの台湾世論の支持を集め、与党側は審議のやり直しと、中台交渉を外部から監督する条例を制定する要求を受け入れた。議場に飾られたひまわりの花がシンボルとなり、この一連の抗議活動を「ひまわり運動」と呼ぶ。運動は一定の成果を残し、同年11月の統一地方選挙での国民党大敗を導き、台湾政治の地殻変動を引き起こした。翌年にはひまわり運動を起こした若者らが中心となり、政党・時代力量が設立された。ひまわり運動は、近年の台湾アイデンティティの興隆を象徴する出来事となった。

【私の論評】今日の台湾は、アジアの希望だ(゚д゚)!

一体何が台湾を変えたのか?この映画は、この疑問に答える映画の一つになりました。 2014年の「ひまわり学生運動」は大きな転換点であるように思います。そう、学生や運動家たちが国会を占拠した、あの事件です。実はこの事件だけではない。台湾の歴史を振り返ると、市民運動が政治を動かしてきたことが分かります。

もともと台湾は、現在の大陸中国と比較しても、比べ物にならないほどの独裁国家でした。1949年から1987年の38年間、台湾では戒厳令が敷かれ、中国国民党(=国民党)による一党独裁政治が行われていました。この38年間にわたる戒厳令は、決して名誉ではない世界最長記録です。

台湾 の離島、緑島 の政治犯収容所、蠟人形によって当時の様子が復元されている

白色テロ」とも呼ばれるその時代に、政治活動や言論の自由が厳しく制限され、多くの知識人が弾圧され、投獄され、処刑されました。それでも民主化を望む多くの知識人が、「党外(=国民党の外で、の意)運動」と呼ばれる民主化運動を行っていました。

中でも特に有名なのが1979年の「美麗島事件」です。これは『美麗島』という雑誌社が台湾南部の都市・高雄で主催した反体制デモで、例にもれず言論弾圧に遭い、主催者を含め数十人が有罪判決を受けました。裁判の過程でむごい拷問に遭った人も多かったとされています。デモ自体は鎮圧されたのですが、これがきっかけで国民の政治への関心が高まり、台湾の民主化を推し進める結果となったのです。

美麗島事件後、国民から民主化を求める声が高まり、やがて政権が押さえつけられないほど勢いを強めていきました。1986年、政権に対抗すべく運動家たちは政府が敷いた結党禁止令を破って民主進歩党(=民進党、今の与党)を結成しました。

「美麗島事件」で投獄された活動家や裁判に関わった弁護士の一部は民進党の党員となりました。翌年、長い戒厳令が解除され、台湾はようやく民主化を迎えました。民進党の党員の中には、政府の要職についた人も多かったのです。

これら独裁政治や民主化運動の歴史は、台湾では義務教育できちんと教えられている。感じ方は人それぞれだろうが、「今の民主主義は先人が長い時間をかけて、血を流しながら反体制運動を繰り返してやっと手に入れたものだ」ということを、台湾人なら少なくとも知識としては知っています。「望む政治を手に入れるためには声を上げ、行動しなければならない」というのが、民主化を求める台湾の歴史に刻まれたDNAであるように思います。

1987年に戒厳令が解除されたは良いのですが、政治改革のペースは緩慢でした。それに不満を覚え、1990年に大学生を中心に「野百合学生運動」が行われました。この学生運動の直接的あるいは間接的な成果として、国会議員の総選挙、そして国民の直接投票による総統の選出を可能にした制度改革の実現が挙げられます。それまでの国会議員は1947年選出以来ずっと改選されておらず、総統も国民ではなく「国民大会」という形骸化した機関が選出していたのです。

その後、1996年に初めて総統選挙が行われ、2000年の総統選挙では史上初の政権交代が実現し、国民党に代わって民進党が与党になりました。この政権交代は、台湾社会は本当の意味で民主化したことを示しています。

2000年に当選した陳水扁(ちんすいへん)総統は2004年に僅差で再選を果たすも、2006年に汚職疑惑が噴出し、彼の退陣を求めて数十万人規模のデモが何度も行われました。その後、民進党の支持率が低迷し、2008年の総統選挙では国民党の馬英九が民進党の立候補者に大差をつけて当選しました。国民党は与党に返り咲き、馬英九は2012年に再選を果たしました。ちなみに陳水扁は任期満了後に汚職で有罪判決となり、収監されました。

陳水扁

親中派である国民党の政策は中国に配慮するあまり、台湾の(特にリベラル派の)国民の反感を買っていました。その一例として、2008年の「野いちご学生運動」があります。

当時、中国の海協会(中国の対台湾交渉窓口機関)会長・陳雲林が会談のために台湾を訪問しましたが、政府は治安維持の名目で人権侵害とも取れる政策を行いました。空港や道路を封鎖したり、理由なく職務質問や任意捜査を行ったりしました。台湾独立のスローガンや中華民国の国旗を掲げるだけで拘束された人もいました。そんな中で政権に対する反発として行われたのが「野いちご学生運動」ですが、名称はもちろん、前述の「野百合学生運動」にちなんでいます。

国民党が政権に返り咲いた2008年から、台湾では毎年何かしらの社会運動や抗議デモが行われました。都市再開発に伴う土地の強制収用、地下鉄建設に伴うハンセン病療養所の取り壊し、性的少数者の差別問題、食品安全問題、賃金や退職金の不払い問題。

それらの問題はまるでがん細胞のように、面積が日本の十分の一しかない台湾という小さな島を日々蝕んでいくように見えました。
やがて「もう十分だ」と言わんばかりに爆発したのが、2014年の「ひまわり学生運動」です。きっかけは台湾と中国のサービス貿易協定であり、これは台湾の国民生活に幅広く影響を及ぼす協定ですが、国民党政権は説明責任を果たすことなく、数の力に頼って30秒で強行採決しました。
不満を覚えた大学生や社会運動家は「貿易協定を撤回せよ、民主主義を守れ」をスローガンとし、国会の議場に乗り込み、国民の幅広い支持のもとで警察と対峙しました。運動はやがて3週間の籠城に発展し、50万人規模のデモも行われました。

「私たちの青春、台湾」は、この「ひまわり学生運動」の空気感を余すところなく伝えてくれたようです。

運動は最終的に政権側の譲歩で収束し、サービス貿易協定は撤回されたのですが、成果はそれだけではありません。ひまわり学生運動がきっかけで、それまで政治に無関心だった多くの若者が政治の重要性を再認識し、積極的に参加するようになりました。これらの若者を指して「覚醒青年」という言葉が生み出され、「時代力量」など小さなリベラル政党が結成されたのもこの時期でした。

「覚醒青年」と呼ばれる若者と、「時代力量」などのリベラル新興勢力を中心に、人権問題や社会正義に対する関心が高まりました。そのため、世代間の平等、居住権の平等、婚姻の平等、移行期正義(=独裁時代に弾圧された政治犯への名誉回復や補償など)、マイノリティの差別解消など、人権を重視する政策を打ち出す政党が支持を集めるようになりました。一方、保守派の国民党は支持率が低迷し、2014年末の地方選に続き、2016年の総統選も大敗を喫しました。

2016年に民進党は再び政権を握り、史上初の女性総統・蔡英文が誕生しましたが、民進党政権は決して安泰ではありません。中学中退でトランスジェンダーである唐鳳(オードリー・タン)をIT大臣に起用したり、年金改革や同性婚を断行したりなど、国民党政権では考えられなかった大胆な人事や政策を打ち出しましたたが、そのせいで保守層や既得権益層から反感を買いました。

一方、労基法改正などの政策は「労働者の権利を無視した」として、一部のリベラル層からも批判を浴びました。年金改革や同性婚、労基法改正を巡って、やはり抗議デモが何度も行われました。そんな中で、2018年末の地方選では民進党が敗北しました。

習近平の独裁体制や香港デモの勃発で、中国に呑み込まれる危機感が国民の間で募り、その結果として2020年総統選挙では親中派でない民進党が勝利し、蔡英文が再選を果たしました。

しかし2018年の敗北を経験した民進党は、自らの政権は決して盤石ではないことを知っているようです。100年の歴史を持つ国民党のように強固な支持層があるわけではなく、リベラル志向の若者も多くは浮動票で、政策を誤ればすぐに離れるのです。

何より民進党自身が反体制デモから生まれた政党なので、市民運動の力をよく分かっているようです。だからいつも強い危機感を持って政権の運営に当たっており、利権や前例、党内のしがらみなどよりも、常に国民を第一に考える姿勢を見せているようです。そしてそれがコロナ禍の対応にも反映されたのです。

「ひまわり学生運動」後の台湾の若者は、選挙のために帰省し、日常生活で政治的な会話をし、SNSで自分の意見を表明し、臆することなく政権を批判します。

かつて、現在の中国よりも、比べ物にならないほどの独裁国家だった、台湾が変わったのは、こうした市民学生運動の力があったことは間違いありません。

誤解のないように最後に付け加えておきますが、台湾と日本の市民学生運動の違いはなにかというと、日本はあくまでも「市民学生運動ごっこ」に過ぎないことです。台湾は違います、間違いなく台湾社会の転換期を作っています。その差はなんなのかというとを、日本の若者や市民たちに、しっかり真剣に考えてほしいです。

シンガポールの独裁者故リー・クアン・ユー氏はかつて、決して西洋の自由民主主義が誤りだとは主張しませんでした。ただ「アジア人」には向いていないとは述べていました。アジア人は、個人の利益よりも集団の利益を上に置く考え方に慣れていると主張しました。生来、権力者に対して従順で、こうした傾向はアジアの歴史に深く根差す「アジア的価値観」なのだと主張していました。

しかし、今日の台湾をみていると、リー・クアン・ユー氏のこの考えは間違いだったといわざるをえないです。もし氏が存命だったとしたら、台湾についてどのように語るのか聴いてみたいです。

今日の台湾をみているとシンガポールも大陸中国や他のアジアの独裁国家もいつの日か、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が可能になるのではないかとの希望がわいてきます。

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2020年8月25日火曜日

米大統領選、トランプ氏が肉薄! “バイデン旋風”は起こらず? 「反トランプ」のCNN、驚愕の世論調査結果 ―【私の論評】米国内では「バイデン圧倒的に優勢」との確信が揺らぐような内容の報道も(゚д゚)!


永田町・霞が関インサイド

バイデン氏(左)とトランプ氏(右)

 筆者は度々、わが国メディアのワシントン発の記事に対して疑問を呈し、不満を口にしてきた。残暑厳しい日が続くなか恐縮ではあるが、本稿でまた言及する。

 米民主党は8月18日夜(日本時間19日午前)、大統領候補にジョー・バイデン前副大統領を正式に指名した。そして遡(さかのぼ)る11日にはバイデン氏が副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を選んでいる。

 「反トランプ」を旗幟(きし)鮮明にするCNNテレビは12~15日に米大統領選について世論調査を実施、その結果を民主党大会前日の16日夜にホームページで公表した。驚愕(きょうがく)の調査結果だった。

 バイデン氏支持が、前回調査(6月2~5日)比5ポイント減の50%、ドナルド・トランプ大統領支持は5ポイント増の46%で、その差は僅か4ポイントである。トランプ氏が誤差の範囲内にまで肉薄したのだ。

 世論調査の時期を見てほしい。ハリス氏が副大統領候補に指名された翌日12日から党大会開催前々日の15日までの期間である。

 本来であれば、バイデン陣営にとって追い風の好機である。正副大統領候補の正式決定で、民主党支持層の歓喜の声に沸き返って支持率が急上昇するタイミングでの世論調査だった。

 それだけではない。各質問項目のなかでも重要項目とされた「経済運営(政策)」については、バイデン氏支持が45%(前回比1ポイント減)、トランプ氏支持は53%(同2ポイント増)であり、「大統領にふさわしいスタミナと鋭さ」という質問でも、トランプ氏がバイデン氏を2ポイント上回った。

 「スタミナ」に続く、「鋭さ(sharpness)」という表現がくせ者である。当選すれば78歳と最高齢で大統領となるバイデン氏には当初から健康不安説が指摘され、とりわけ「初期認知症」疑惑が取り沙汰されてきた。だが、CNNは「鋭さ」と質問することで問題をぼかしたのである。

 この世論調査が、保守系のFOXテレビが行ったのであれば、この結果は「やはりそうか」である。

 平たく言えば、党内左派のバーニー・サンダース上院議員を推した若者たちの支持が得られず、バイデン旋風が巻き起こっていない証と見るべきである。

 トランプ氏は残る選挙期間で、新型コロナウイルスのためのワクチン開発に成功したと言い募り、対中強硬策を相次いで繰り出すことで「弱腰バイデン」をプレイアップするはずだ。

 なぜかCNN調査を一紙以外は報じない日本の新聞は「バイデン優勢」を決め打ちすべきではない。 (ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】米国内では「バイデン圧倒的に優勢」との確信が揺らぐような内容の報道も(゚д゚)!

上の記事の通り、日本のメディアでは、米国のメディアの報道をそのまま垂れ流し、「バイデン優勢」の決め打ちをしています。

このブログでも何度か掲載してきましたが、米国の大手メディアのうち新聞は全部がリベラル系で、民主党よりです。全米ネットワークの大手テレビ局は、FOXTVのみが保守で、あとはすべてリベラルです。

日本人の中にはウォール・ストリート・ジャーナル紙を保守メディアと勘違いするむきもありますが、これもリベラル系です。ただし、歴史は古く、比較的まともな報道をしています。

だから、米メディアがどうしても「バイデン」寄りになるのは当然なのです。2016年の大統領選挙では、米メディアは最後の最後まで、「ヒラリー推し」をして、結果としてどのメディアもトランプ大統領の誕生を予測できませんでした。

2016年トランプ大統領の誕生を伝える朝日新聞の号外

この「ヒラリー推し」の報道を鵜呑みにして報道した、日本のメディアも右に倣えで、トランプ大統領の誕生を予測できませんでした。

今回の大当選でも、同じことが起ころうとしているようです。「バイデン優勢」との確信が揺らぐような内容の報道もなされています。

実は、CNNは8月6日にも「バイデンは引き続き優位に立っているが、トランプは低迷を脱してきた。新型コロナウイルスの感染が収まらず死亡者も増えている中で、トランプはバイデンをstriking distancing(射程内)に捉えた」との記事をウェブサイトに掲載していました。

記者はCNNの政治アナリストであるハリー・エンテン氏です。各種の世論調査を分析して、5~6月にはトランプ大統領への支持が立ち直れないほど低迷しながらも、7月になると底打ちして回復してきていることに注目するとつとは言えCNNのことなので、こう付け加えることも忘れていませんでした。

 「現在の世論調査を見る限りでは、バイデンが比較的安定した優位を保っており、明らかに勝者と考えられるが、全てに前例のない異常な状況に直面している時に、トランプが虎視淡々と逆転を狙っているのも確かだ」

この記事は、8月16日の調査結果の正式に先立ち、調査の内容の概要がわかった段階で発表したものと思われます。そのため、支持率などの正確な数値自体は8月16日に発表されたようです。

そうして、このような報道がどのような状況のもとに行わているかも注目に値します。

監視機関「メディア・リサーチ・センター(Media Research Center)」のプロジェクトである「ニュースバスターズ(NewsBusters)」のプロジェクトである「ニュースバスターズ(NewsBusters)」調査によると、アメリカの夕方のニュースはドナルド・トランプ大統領に対する否定的な報道を大量に流す一方で、民主党大統領候補のジョー・バイデン氏を事実上無視していることが明らかになりました。

「ニュースバスターズ(NewsBusters)」は6月1日~7月31日までのABC、CBS、NBCによる夕方のニュースを分析しました。その結果、トランプ氏に関する報道時間は512分で、バイデン氏の58分の9倍でした。

ところが、トランプ氏に関する報道はほとんどがネガティブなものだったのです。

トランプ氏に対してネガティブな報道をする米メディア

同センターの分析によると、大統領に対する評価的陳述の668件のうち634件が否定的で、これに対してバイデン氏は12件のうち4件が否定的でした。

米国のメディアは、ジョー・バイデン氏に大統領を任せることより、自らがドナルド・トランプ氏の反対者になることを選んでいるようです。

このような調査を見るまでもなく米国の主流メディアは公然とトランプ大統領に偏見を持っているようであり、多くの米国民がそれを見抜けないと思っているのなら、自らを欺いていることになるでしょう。

通常の選挙シーズンでは、ニュースは両候補者をともに報道します。この不均衡は、バイデン氏が中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行期間に何カ月もキャンペーン・イベントを開催しなかったことが一因でしょうが、それでもバイデン氏は依然として毎日発言を続け、公約も立てていました。また性的暴行疑惑などのスキャンダルもあります。

バイデン氏に焦点を当てた報道の40% (23.5分) は、バイデン氏がトランプ氏を批判する内容でした。一方、トランプ氏に焦点を当てた報道はわずか0.25% (88秒) が、トランプ氏のバイデン氏に対する批判を伝えるものだったといいます。

まるで米国メディアは、両方を報道すると、大衆は正しい決断が出来ないと思っているかのようです。

この調査では、記者やキャスター、あるいは専門家や有権者といった超党派の人たちによる、トランプ氏やバイデン氏についての明確な評価的陳述を対象にしました。党派的な人物からの評価やコメント、そして中立的な陳述は含まれていません。

トランプ氏は、多くの記者が彼に偏見を持っていると繰り返し述べてきました。

トランプ氏は8月17日、「フォックス&フレンズ」との電話インタビューで、「私の最大の敵はバイデン氏でも民主党でもなく、腐敗したメディアだ。この国には今まで誰も見たことのないような腐敗したメディアがある」と述べました。

民主党全国大会の期間中に選挙キャンペーンをしている理由について尋ねられたトランプ氏は、メディアのせいで「仕方なく」やっていると述べました。

「地下室から出てこない男(バイデン氏)がいて、メディアは彼を報道している」とトランプ氏は述べ、「彼ら(メディア)が私に質問する時、私は彼らの目に火が燃えているのが見える。私は彼らを見ながら、本当にどうしてそんなに大きな憎しみを持っているのだろうかと思う」と付け加えました。

バイデン氏は3月に自宅で隔離を始めて以来、記者会見をほんの数回しか行っておらず、自宅隔離は夏の間に終了しました。バイデン氏と新しく発表された副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員 (カリフォルニア州選出、民主党) は、8月11日に副大統領候補が発表されて以来、あまり質問を受けていません。
トランプ氏がバイデン氏に肉薄していること、米国メディアがトランプ氏に対して、かなりのネガティブな情報を流していることを考えると、実体はトランプ氏のほうが優勢なのかもしれません。

いずれにしても、「バイデン圧倒的に優勢」と決め打ちするのは、時期尚早です。

日本では、安倍総理が病院で検査ということで、ネガティブな報道がされています。テレビ局は、安倍総理検査入院で、嬉しくてしょうがないようで、まるでお祭り騒ぎのように沸き立っています。



自分の健康について、総理自らが確認するのは、当然のことです。それに、検査入院ということになれば、周りの人間の本音が見え、敵と見方の区別がつきやすくなるし、使えない馬鹿と使える利口の見分けもしやすくなります。

それに野党は、合流話など馬鹿真似ばかりをしていて、しかも「政権奪還」などというばかりで、政権を奪還した後にどのような具体的な政策を実施するのか、まったく見えません。次の選挙で自民党が勝つのは、確実です。その意味では、現状では野党は自民党政権の最大の応援団です。安倍総理は、その意味では、今後続投するにしても、もしそうでなくても心安らかかもしれません。

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