2019年12月31日火曜日

北海道の植民地化を着々と進める中国―【私の論評】中国による北海道土地買収は、長期的には中国の経済的脅威になるが、短期的には日本の安全保障上の脅威(゚д゚)!

北海道の植民地化を着々と進める中国

ニセコ町のゴルフ場

 中国は1970年代末から対外開放政策を打ち出してアフリカに進出、その後は中南米へ、そして近年は南太平洋諸国へ進出している。一帯一路に絡めた地域開発やインフラ整備を掲げで土地や資源を買い漁り始めた。

 しかし、開発に必要な労働力や資材を持ち込み、ミニ・チャイナタウンを作るので、潤うのは現地進出の中国人社会と賄賂に絡む一部の特権階層で、多くの現地人は辺鄙なところに追いやられ、期待された発展は叶えられない。

 その上に、「債務の罠」に嵌り、惨めな状況に陥ることは、現代の植民地化と言われるハンバンドタ港(スリランカ)の例が示している。

 多くの日本人は、開発途上国に特有の現象で、日本には当てはまらないと信じていたに違いない。

■ 買収された日本の地積

 10年くらい前までは、日本の土地が買い漁られるとマスコミが大きく取り上げ、危機感をもつ地元民もいた。

 しかし、年を追うごとに反対の声も小さくなり、今では買収話は当たり前になり過ぎてニュースにもならなくなったと平野秀樹・青森大学教授は語る(「略奪される国土」、『Hanada』2018年7月号所収)。

 政府は全貌を押さえてさえいない。

 実際政府が公表しているデータは林地のみで、外資(外国人、外国法人)と外資系(出資比率または役員比率の過半が国外)が買収した僅かに5789ヘクタール(ha、2018年)で、山手線の内側(6000ha)相当でしかない。

 平野氏は「全国で・・・国土がどれだけ買われ、どのように占有され、どんな利用が始まっているか。国名、面積、企業名などの全貌はもとより、個別事例とて曖昧なままだ。・・・国はこうした買収問題に対し、何の手立ても講じていない」という。

 心配になった17道県だけが、条例を制定したが、これも林地売買に際し、事前届出を課す条例を成立させただけで、買収阻止や抑制の歯止めにはならないであろう。

 2012年以降、急激に増大したソーラー発電の「発電量7900万kw(2017年)をもとに試算してみると、ソーラー用地は概ね16万~24万ha。・・・これらの買収の相当数が外資系であり、推定8万ha程度が買収(リースを含む)されたとみられる」と教授は語る。

 以上から、教授は外資保有の日本国土は10万ha程度とみる。しかし、無届の買収、日本法人(外資法人の子会社)の買収、ペーパー・カンパニーによる本体秘匿の買収、リース使用の賃借契約など膨大に隠れているとみられることから、10万haは最小値という。

 北海道に限ると、政府掌握の林地買収は2495ha(2018年)でしかないが、これは2012年の2.4倍である。

 小野寺秀(まさる・元北海道道議)氏や宮本雅史(産経新聞編集委員)氏らが7~8年前から報告し盛んに警鐘を鳴らしてきたが、現地の農協や役場は「把握していない」と関与を避け、マスコミの多くも黙殺を続けてきた。

 しかし、宮本氏の報告では、中国資本に買収された北海道の森林や農地などは推定で7万ha。北海道だけで、山手線の内側の11倍以上である(「産経新聞」平成29年2月25日付)。

■ 北海道も植民地化? 

 中でも北海道の多くの土地が中国資本に買い漁られてきた。過疎地で手が行き届かないことや、リゾート地に中国資本が入ることでより発展が期待され、活気を取り戻すと期待しての放出であったに違いない。

 しかし、「産経新聞」(令和元年12月17日付)の「外資開発もニセコ潤わず」「雇用は外国人、税収限定的」の見出しの報道からは、雇用や税収などを期待した現地を困惑させている状況が読み取れる。

 世界的なスキー・リゾート地である北海道ニセコが「債務の罠」にかかったということではないが、中国系資本への土地売却や資本導入は、アフリカや中南米、南太平洋などに置ける開発同様に、現地を潤すことはない状況が読み取れる。

 現に地元では「中国など外国資本に経済面で実効力を奪われてしまう」(同上紙)」と危惧の声が上がっている。

 すでに多くの企業が北海道に入り込み、リゾートやホテル経営、ソーラーパネル発電、高層ビル建築、高級住宅街開発などを行っている。

 千歳空港・自衛隊基地の西方数キロ先には中国人別荘地があり、17棟が立ち並んでいる。当初は1000棟の計画であったが、周辺などの反対もあり頓挫した様である。しかしいまだに空地もあり、開発会社は今後の増棟を目指すとしている。

 北海道はカネを引き出せる金庫でもあるようだ。現道知事の鈴木直道氏は夕張市長時代(2017年)に2つのホテル、スキー場、合宿の宿の4施設を2億4000万円で中国人の不動産業者に売却したが、2019年に香港系ファンドに15億円で転売されたと言われる。

 中国が北海道に食指を動かしていることは明確のようだ。

 平成17年5月、国土交通省と北海道開発局が主催した「夢未来懇談会」では、札幌市で通訳や中国語教室を手掛ける中国人社長が、「北海道人口1000万人戦略」の掲題で基調講演し、参加者を驚かせたという(上掲「産経新聞」平成29年紙)。

 農林水産業や建築業を中心に海外から安い労働力の受け入れ、北海道独自の入管法制定、授業料の安いさまざまの大学設立などで、人口を1000万人に増やすという概要で、うち200万人は移住者とすべきだと力説したとされる。移住者のほとんどは中国人であろう。

 人口増加の方法として、留学生は北海道に残留する、正式な労働者として受け入れる、北海道から都府県に行くときは日本の入管法に適応させる、札幌に中華街を建設し国際都市の先進地域としての地位を確立するなどであったというから、まるで北海道独立であり、行く行くは中国・北海道自治区や北海道省への画策であろう。

 全体主義の中国であり、こうした根っこは中国共産党の遠大な計画に繋がっているとみられる。中国の意中を知るのはいいとしても、よくも国交省や道開発局が講演させたものである。

 在日中国人のチャイナ・ウォッチャーは、一部中国メディアの間では「北海道は10年後には、中国の32番目の省になると予想されている」ともいうから、ニセコの目論見はミイラ取りがミイラになるようなものではないだろうか。

■ アフリカや南太平洋諸国の惨状

 20世紀末は中国のアフリカ進出に注目が集まっていたが、21世紀に入ると中南米、習近平氏が登場してからは南太平洋の国々に注目が注がれている。

 南太平洋諸国は第2列島線(小笠原諸島~グアム)と第3列島線(ハワイ~米領サモア)間の空白地帯であるが、日米のインド太平洋戦略にとっては重要な地域である。

 そこに中国の魔の手が伸び、併せて台湾が国交を有する17カ国のうちの6か国(キリバス、ソロモン諸島、ツバル、パラオ、マーシャル諸島、ナウル各共和国)があり、台湾の孤立化工作とも重なる。

 しかし、ほとんどの作業員も資材も現地調達ではなく中国からやってくるため、雇用や資材活用による収入などは一向に期待できない。

 それどころか、開発は中国が貸し付けた金で行われるため、年を経るごとに金利が嵩み、ほとんどの国の対中債務が全対外債務の多くを占める状況である。

 また、契約に定めた環境保護規定は悉く反古にされ、乱開発で自然環境が破壊されるが、チャイナ・マネーに依存するフィジー、バヌアツ、トンガなど貧しい島嶼国の政府には中国の横暴を止める力もないという(福島香織「南太平洋に伸びる中国の魔の手」、『正論』令和元年9月号所収)。

 それどころか、こうした悲惨な状況の報道自体が中国の力によって制約されるなど、一旦開発が始まると踏んだり蹴ったりである。

 中国の資本で国家がよみがえると期待した政府の甘い認識が国民を失望させ、契約の見直しや縮小、破棄などに至るケースが増えている。

 ハンバンドタ港などで起きたことがアフリカや南太平洋の国々でも起きようとしている。すなわち、「債務の罠」で土地の譲渡や長期貸与となり、近代版の植民地と騒がれ始めているのだ。

■ おわりに

 こうしたことがアフリカや中南米、南太平洋の島嶼国だけでないことが、ニセコの開発で明確になってきた。

 在日本の中国人70万人余のほとんどが20~30代の若者(卑近な例えでいえば、50個師団に相当)で、本国共産党や在日中国大使館の指示で動くことは長野事件(北京オリンピックのトーチリレーが長野で行われた時の中国人留学生による暴行)や東日本大震災時の一斉引揚げによって証明された。

 また、東日本大震災で退避した中国人に使用を許した学校施設で、防火などの点検を兼ねて関係者が入ろうとしたが中国人の拒否で入口に立つことしかできなかった。

 このような事実からは、日本の土地を外国系資本などにむやみに売ってはならないということである。

 駐中国日本大使館や日本総領事館をはじめ、日本と諸外国の外交施設用地は相互に賃貸であるが、唯一駐日中国大使館と中国総領事館(複数)の敷地だけが、外交の対等主義を逸脱して賃貸ではなく所有となっている。

 鳩山由紀夫氏は首相の時、「日本は日本人だけのものではない」と公言し、中国系資本による北海道をはじめとした土地の買い漁りを促進させた。

 しかし、国際関係に於いては「油断大敵」の諺が何より重要であることを忘れてはならないであろう。

森 清勇

【私の論評】中国による北海道土地買収は、長期的には中国の経済的脅威になるが、短期的には日本の安全保障上の脅威(゚д゚)!

冒頭の記事にもあるように、確かに外国人による北海道の土地買収がとどまるところを知らないです。

太平洋進出を目指している中国は、外国人土地取引に制限がない日本を標的にし、土地や水源等の買収を繰り返しています。

このようなことを中国は日本だけではなく、世界中で繰り返しています。それにしても、なぜ日本を含めて他国はこのようなことをあまりしないのに、中国はなぜこのようなことをするのでしようか。

その理由については、このブログでも以前掲載したとことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国、建国以来最大の危機…香港「独立」問題が浮上、年末に米中貿易戦争が最悪の状態に―【私の論評】ソ連と同じ冷戦敗北の軌道に乗った中国(゚д゚)!
ゴルバチョフ氏
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
ソ連共産党が91年に崩壊したとき、もっとも衝撃を受けたのが中国共産党でした。彼らはただちにソ連崩壊の理由を調べ、原因の多くをゴルバチョフ大統領の責任とみました。 
そのため、中国にはゴルバチョフ氏のような人物が出てこない可能性のほうが高いです。しかし、党指導部はそれだけでは不安が払拭できず、3つの重要な教訓を導き出しました。 
中国はまず、ソ連が失敗した経済の弱点を洗い出し、経済力の強化を目標とした。中国共産党は過去の経済成長策によって、一人当たりの名目国内総生産(GDP)を91年の333ドルから2017年には7329ドルに急上昇させ「経済の奇跡」を成し遂げました。 
他方で中国は、国有企業に手をつけず、債務水準が重圧となり、急速な高齢化が進んで先行きの不安が大きくなってしまいました。これにトランプ政権との貿易戦争が重なって、成長の鈍化は避けられな恒久的しかも、米国との軍拡競争に耐えるだけの持続可能な成長モデルに欠いています。 
第2に、ソ連は高コストの紛争に巻き込まれ、軍事費の重圧に苦しみました。中国もまた、先軍主義の常として軍事費の伸びが成長率を上回っています。 
25年に米国の国防費を抜き、30年代にはGDPで米国を抜くとの予測まであります。ところが、軍備は増強されても、経済の体力が続きません。新冷戦に突入すると、ソ連と同じ壊滅的な経済破綻に陥る可能性が否定できないのです。 
第3に、ソ連は外国政権に資金と資源を過度に投入して経済運営に失敗しています。中国も弱小国を取り込むために、多額の資金をばらまいています。ソ連が東欧諸国の債務を抱え込んだように、習近平政権は巨大経済圏構想「一帯一路」拡大のために不良債権をため込んでいます。 
確かに、スリランカのハンバントタ港のように、中国は、戦略的な要衝を借金のカタとして分捕っているのですが、同時に焦げ付き債務も背負うことになります。これが増えれば、不良債権に苦しんだソ連と同じ道に踏み込みかねないです。
国際投資の常識として、自国よりはるかに成長している国に投資した場合は、利益を得られますが、成長率が自国と同等もしくは、それ以下の国に投資した場合、利益を得られることはありません。 
中国の成長は落ちたといえ、公式には6%程度の成長は一応していることになっています。現在世界を見回してみると、10%以上の成長を維持している国などほとんどありません。中国の「一帯一路」はかつてのソ連のように不良債権の山を生み出すことになりそうです。
ましてや、経済成長率がかなり鈍い日本に中国が投資したとしても、何の儲けにもならないどころか、赤字になります。その中でも、特に北海道に投資したとしても、儲けるという観点からは程遠いです。

そのようなことは、わかりきっているので、米国、イギリス、フランス、ドイツなどの先進国は、日本の土地を大量に購入するなどということはないです。ましてや、日本もそのようなことはしないのです。

確かにニセコなどには、中国以外の外国の資本も参入していますが、彼らは、海外投資の専門家であり、当然のことながら、いくつかの投資先を世界中にかかえていて、リスクヘッジもした上での参入なのでしょう。中国資本にはそのようなノウハウがあるのかどうか甚だ疑問です。

ちなみに、日本も実はかなり投資はしています。ただし、日本国内はそうでもないのですが海外でかなりの投資をしています。日本はここ20年ほどは、対外純資産が世界一です。ただし、これはあまり自慢できることではないかもしれません。なぜなら、本来は日本国内の景気が良くて、めぼしい投資先があれば、本来国内に投資されていたものが、海外投資にまわっているという背景があるからです。


しかし、これは世界に日本が貸し付けている(お金等の)資産が世界一ということです。日本の場合、この資産のほとんどが、現金もしくはそれにすぐ変えられるものなどがほとんどであり、土地などではありません。

日本の機関投資家などは、外国土地を購入したしても、それは今や優良な資産ではないので、そのようなことはしないのでしょう。

一方、中国では、国内では土地を所有することはできず、土地使用権があるだけという事情もあり、海外に土地を購入したがる富裕層などもいるため、海外で土地を購入するということも活発に行われているのでしょう。

現在の中国共産党幹部の出身は、例外はあるのかどうかは知りませんが、2代、3代と遡れば、大富豪などはいないと思います。そんな彼らは、いわゆる華僑などとは異なり、大規模な国際投資には無知なのでしょう。

だから、世界各地で土地を買い漁るなどのことをしているとみえます。将来的には、北海道の土地等も、何の利益ももたらさず、あるいはもたらしたにしてもわずかのものであり、手放さざるを得なくなることでしょう。だから、長期的にみれば、中国の土地購入は、日本にとっての脅威どころか、かつてのソ連と同じく中国の脅威となる可能性が高いです。

特に中国が米中冷戦等で経済的に破綻した後には、世界中で中国政府や、中国企業によって買い占められた土地などが、手放されることになるでしょう。

ただし、短期的には中国の土地買い占めは、安全保障上の脅威になります。短期とは、いってもここ10年くらいは確実に脅威かもしれません。これに対し日本はその対応が全く出来ていません。GATS協定(サービスの貿易に関する一般協定)の影響が大きいからです。1994年、WTOでGATS協定が締結されましたが、日本は外国人等による土地取引については制限なしで署名をしてしまったのです。

この間違った判断が令和時代の今日においても深刻な影を落としています。米国を始めとする多くの国は、外国人による土地取得は条件付きで可能とし署名をしましたが、当時日本は海外からの投資を呼び込むために市場開放を優先し、安全保障の意識もなく制限なし署名をしたのです。

条約とは国内法の上にある上位概念です。GATS協定に署名をした日本が今になって土地取引に制限をかけると方針転換した場合、30近い条約を今から改正し、それに伴う国内法の整備もしていかなければなりません。当然、相手国からもその見返りを求められますし、国内産業においてあらためて外国との利害調整をしなければならないという、膨大な作業が必要となります。

また条約などを無視して国内法を優先すれば良い、今すぐにでも外国法人の土地取引について規制をかけるべきだというご意見もありますが、国際司法裁判所などに提訴されたとき、果たしてこの裁判に勝訴出来るのかと考えると、現実的には非常に疑わしいところがあるのです。

このような背景から日本でも、外国人の土地取引を制限する方法が他にないものかどうかということを今日まで模索されてきました。

例えばGATS協定にも、安全保障上の例外規定があります。例えば、日本の防衛施設等の隣に外国人が所有をする正体不明の建物等が存在し、スパイ活動や通信傍受など、安全保障上の危険があると「判断」をすれば、条約の例外規定を使いその取引に制限をかけることも可能なのです。

しかし、この制限をかけるための「判断」という責任を取りたく無いのでしょう、これまで各省庁は安全保障上の例外規定を発動しなかったのです。

しかし先般、日本政府は韓国に対して「安全保障上の問題」から、韓国をホワイト国から除外をしたり、特定3品目の韓国への輸出に制限をかけたのです。これは世耕経済産業大臣(当時)の力強いリーダーシップの下、初めてとられた安全保障上問題としての例外措置でした。

そして、米国でも大きな変化が起こっています。

米国が国防権限法を成立させたことです。背景には、「中国製造2025」を掲げ、技術大国としての開発を目標とする中国に対し、トランプ大統領は強固な姿勢を見せています。ファーウェイやハイクビジョン等、中国企業数社とその関連会社をリストに登録し規制をかけていきます。更に規制は登録企業のチップ等を使っている企業との取引にも影響があるというもので、日本企業も無関係ではいられません。

今回注目すべきは、国防権限法で新たに「外資による土地取引規制」が導入されたという点です。安全保障に影響及ぼす可能性があるものを外国人に、売却・貸与・譲渡する際、CFIUS(対米外国投資委員会)が審査することになりました。このCFIUSは土地や建物について外国法人による購入だけではなく、リースや土地使用権の取得も審査対象となる予定です。
日本でも、このCFIUSのような機関を設置すべきです。現在NSS(国家安全保障局)の中に「経済班」を設置する動きがあります。まさに日本版CFIUSともいえます。これは、2020年4月発足を目指しています。

その背景には対日投資など経済分野における安全保障上の課題を解決する必要性を、政府がようやく認識したことがあります。防衛上の課題だけでなく、米中貿易摩擦や次世代5Gの整備をめぐる動きなどに対応する必要があります。

各省庁から審議官、参事官クラス数名の態勢で精鋭を集め、新たな部署を創設し、土地や水源の取引に関わる安全保障上の審査などを取り扱い、安全保障上の問題であると「判断」する責務を負うのです。

これを実現するためには日本版CFIUSの存在・運営根拠となる立法措置も必要になってきます。これを成立させ、我国の外国資本による土地買収問題にピリオドを打つべきです。

ただし、中国人の土地購入は、日本人があまり購入しないということにも原因があると思います。根本的には、デフレで、多くの日本人が土地を購入したり、借りたりして新たな事業を起こそうということが少ないため、土地を外国人にでも売らざるを得ないという背景があると思います。

日本で初めてスキーに挑戦する中国人の子どもたち

日本国内の景気が良くないということも、外国人土地購入問題の背景にあるのはまちがいないです。従来のように、土地転がしなどで、お金を簡単に儲けられるというのも問題でしたが、日本も少なくともデフレから完全に脱却して、景気を良くするべきです。

現象面でいえば、少なくとも、ニセコ等の日本の国際的なスキー場に押し寄せるスキーヤーの約半分くらいが日本人になるべきなのです。日本の国会議員には、単に外国人が日本の土地を購入することを規制するだけではなく、日本が完璧にデフレから脱却することにも努力すべきです。

そうでないと、たとえ無秩序な外国人による土地買収を防ぐことができたとしても、国内ではいたるところで無秩序なインバウンド化が起こり、日本国内にニセコのようなところがたくさん出来上がることになります。

ちなみに、このブログでも以前述べたように最早ニセコは、外国人の、外国人による、外国人のためのリゾートと化していると言って良いです。地元ニセコ町の分析でも、民間消費や観光業の生産額のほとんどが、町外に流出超過だとされています。観光客や投資の増加は、もはや地域の収入には十分つながっていないというわけです。

本年も、このブログも年内の最後の記事となりました。皆様、本年もお世話になりました。良い年をお迎えください。

【関連記事】


2019年12月30日月曜日

2019年の日本経済、やっぱり「消費増税」は最悪の選択―【私の論評】「もりかけ桜」では揺るがなかったが、経済の悪化が安倍政権の政権土台を揺るがすことになる(゚д゚)!

2019年の日本経済、やっぱり「消費増税」は最悪の選択だったしかし、やってしまったものは仕方ない

「デフレ脱却」はあえなく潰えた

今年は新元号・令和のスタートの年だった。1年間の景気や物価、雇用はどうだったのか。景気を左右した要因は何だったのか。振り返ってみよう。

日本全体の経済(マクロ経済)を見るとき、重要なのは雇用、景気と物価である。

まず雇用について、総務省の失業率で見ると2019年1〜10月で2.2〜2.5%、就業者数では6665〜6758万人だった。失業率は低位安定、就業者数は上昇傾向で、雇用は相変わらず良かった。


景気について、内閣府の景気動向指数の一致指数で見ると、95.3〜102.1。なお、昨年末から低下傾向であり、そのころに景気の山を迎えていた可能性がある。それ以降景気は下向きであるが、10月の消費増税がそれをさらに加速し、後押ししたようだ。


物価はどうだったのか。総務省の消費者物価指数総合(除く生鮮食品)の対前年同月比でみると、1~11月で0.3~0.9%だったが、年前半より後半のほうが伸び悩んでいる。特に、10月の消費増税の影響が出た10月と11月は、0.4%と0.5%。

今回の消費増税により、消費者物価は形式的にプラスの効果となり、その影響は0.7%程度だ。しかし、同時に幼児教育・保育の無償化が実施されている。これは物価にマイナスの効果となるが、その影響は▲0.5%程度だ。これらプラス、マイナスの結果をあわせると、10月以降の消費増税の影響は0.2%程度になる。

これを考慮すると、10月・11月とほとんど物価が上がっていない。消費増税により、「2019年内のデフレ脱却」という目標はあえなく潰えた。


総じて、2019年を振り返ると、景気や物価は徐々に悪くなりつつあるが、雇用は相変わらずよかったという評価だ。もっとも、雇用は景気に遅れる遅行指数であるので、今後の先行きは暗い。

増税分を吐き出す景気対策が必要

ちなみに、内閣府の景気動向指数の先行指数でみると、1月の96.3から始まり10月の91.6までほぼ一貫して下降している。これも、来年の景気の先行きを不安視させる数字だ。

本コラムでは以前にも言及したが、景気足踏みや後退傾向は、2018年から見られていた。しかも、日本だけでなく世界経済の環境も、米中貿易戦争、ブレグジットの混迷などマイナスが多かったので、日本への悪影響が懸念されていたところだ。その中で、10月の消費増税は最悪のタイミングであった。

しかし、やってしまったものは仕方がない。消費増税分を吐き出すような景気対策が必要だ。

幸いにも、来年1月からの通常国会では、冒頭で補正予算が審議される。総額4.5兆円のうち、経済対策は(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保2.3兆円、(2)経済の下振れリスクへの備え0.9兆円、(3)未来への投資など1.1兆円で合計4.3兆円だ。これは、消費増税による増収額(平年ベース)とほぼ見合っており、消費増税を吐き出すものだといえる。これ1回きりではなく、来年度でもあと1、2回の景気対策が必要になるだろう。

さらに、来2020年度予算をみてみよう。2020年度当初予算案の一般会計総額については、102兆6580億円と、2019年度当初予算と比べて1兆2009億円の増加となった。マスコミは「過去最大」と、拡大に否定的なトーンで報じている。

例えば、NHKでは「来年度予算案 過去最大の102兆円超 歳出膨張に歯止めかからず」としている(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191221/k10012223561000.html

新聞各紙の社説でも、同じような報道である。
朝日新聞「100兆円超予算 健全化遠い実態直視を」(https://www.asahi.com/articles/DA3S14302417.html毎日新聞「過去最大の102兆円予算 『身の丈』に合わぬ放漫さ」(https://mainichi.jp/articles/20191221/ddm/005/070/093000c読売新聞「20年度予算案 『100兆円』は持続可能なのか」(https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20191220-OYT1T50394/日経新聞「財政の持続性に不安残す来年度予算案」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53620900Q9A221C1SHF000/産経新聞「来年度予算案 歳出の改革は置き去りか」(https://www.sankei.com/column/news/191221/clm1912210003-n1.html

筆者が大蔵官僚の時代には、来年度予算について課長補佐クラスか課長クラスが各紙の論説委員のところに、エンバーゴ(情報解禁日時)付きの資料をもって事前に説明に行っていた。

その後、各社の社説が出ると、大蔵省幹部が説明した課長補佐クラスか課長クラスを全員集めて、各社の社説を論評したものだ。「この社説はよく書けているな、この社説はダメだ」。もちろん、大蔵省の意向に沿っている社説が「よく書けている」と評価されるわけだが、同時に課長補佐・課長クラスが、どこまでマスコミを丸め込めたかという「仕事ぶり」も評価されているのだ。

おそらく今でも、財務官僚は似たような方法でマスコミに対して事前レクをしているのではないか。だとすれば、各紙の論調が似ているのは事前レクのためではないかと邪推してしまう。その際、「予算の膨張や財政再建の遅れを批判してもかまわない」と財務官僚が説明したら、各紙はそのように社説を書くのではないだろうか。

「過去最高の予算額」は悪いことなのか

しかし、過去最高の予算額は悪いことなのか。予算額は、いうまでもなく名目値である。名目値の経済統計数字は、年々増加し大きくなるのが通例だ。だから、それが過去最高になるのは当然であり、前年を下回っているほうが、むしろ問題だろう。「過去最高」を問題視するのは、デフレ思考そのものであり、それこそが問題だ。

ちなみに、名目GDPと一般会計歳出総額を比較すると、一般会計総額の方が名目GDPより伸びが低い。つまり、安倍政権において年々緊縮度合が高まっている。過去最大の予算が問題なのではなく、名目GDPに対して一般会計総額が相対的に縮小していることのほうが問題だ。


各紙ともに財政再建を気にしているのもおかしい。筆者は、国のバランスシートが健全であることや国の倒産確率が無視できるほど小さいことから、これまで本コラムで何度も、財政再建の必要が乏しいことを書いてきている。各紙はそうした合理的な主張を無視して、財務省の言い分を無批判に信じているかのようだ。

新聞各紙は、軽減税率の恩恵を受けられるので、消費増税に賛成する立場だ。2019年10月の消費増税の結果、来年度予算の歳入では、史上初めて消費税による税収が最も多い税目となった。

消費増税を悲願としてきた財務省にとっては喜ばしいことだろうが、そのせいで景気は落ち込んでおり、景気対策も必要になっている。いったい何のための消費増税だったのか。

「臨時・特別の措置」の意味

来年度予算の歳出総額は102兆6580億円であるが、そのうち、「臨時・特別の措置」1兆7788億円が含まれている。「臨時・特別の措置」とは、消費増税対策でもあるキャッシュレス・ポイント還元事業の2020年度分2703億円や、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(2018年12月14日閣議決定)の2020年度実施分1兆1432億円などが含まれる。

つまり、「臨時・特別の措置」の残りの部分100兆8792億円は「通常分」というわけだ。財務省としては、「臨時・特別の措置」は2020年度限りのものであり、2021年度ではなくなる。そうして財務省は、緊縮財政の姿勢を示しているのだ。

それが色濃く出ているのが、公共事業費だ。2020年度の公共事業費は6兆8571億円だが、その中に、「臨時・特別の措置」7902億円が含まれている。「通常分」は6兆0669億円で、前年から1%程度減っている。

要するに財務省としては、「公共事業費を減額したが、2020年度は『臨時・特別の措置』で膨らんだ」という説明なのだ。

このように「臨時・特別の措置」というのは、財務省が緊縮財政姿勢を示そうとするときに、よく用いられる手法である。

本来であれば、マイナス金利か極めて低い金利環境を反映して、公共事業の採択基準の際の割引率を見直し、公共事業の大幅増を行うのが筋だ。

なにしろ割引率はここ15年も4%で据え置かれており、誰の目から見てもおかしい。現在の金利環境で見直せば、割引率は0.5~1%程度になるので、採択可能な公共事業を3倍増させることも可能だが、来年度当初予算は古い公共投資の採択基準のままなので、公共事業費は伸びていない。

15年も割引率を見直さない奇妙さ

ちなみに、アメリカではこの割引率は毎年見直されており、年末に予算管理局が機械的にアップデートしている。2020年度の想定国債実質金利は3年、5年、7年までマイナス金利、10年はゼロ金利である(https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2019/12/M-20-07.pdf)。

実は、筆者は18年前に国交省に出向していたとき、各国の費用分析を比較・調査するために海外出張したことがある。そのとき訪れた各国でも、割引率は随時見直すと言っていた。国交省が15年にわたって割引率を見直さないのは、必要な公共事業を行わなかったという意味で罪深いものだ。

いずれにしても財務省は、割引率の見直しをせずに、「臨時・特別の措置」として公共投資増を計上しただけだ。この意味で、今回の予算案は本質的な仕事になっていない。

文教・科学振興費も若干のマイナスになっている。公共事業費とともに、これらはモノとヒトに対する将来投資である。現在は国債がマイナス金利または超低金利なので増額する絶好のチャンスであるが、その良好な環境を活用しているとは言い難い。

【私の論評】「もりかけ桜」では揺るがなかったが、経済の悪化が安倍政権の政権土台を揺るがすことになる(゚д゚)!
冒頭の記事にもあるとおり、2020年度の歳出総額は102兆6000億円ですが、2019年度予算が101兆4000億円なので前年から約1.2%の増額予算です。まず、政府歳出が経済成長に及ぼす影響をみるために、名目GDP(国内総生産)と比較した伸び率を比較する観点があります。

2013~2018年度の名目GDPは平均約プラス1.8%、そして政府は2020年度約プラス2%の名目経済成長を想定しており、ほぼ変わらないです。2020年度の歳出の伸びが名目経済成長率より低いので、政府歳出は経済成長率を抑制する方向に作用する可能性が高いです。

より厳密に見るために、政府の税収の伸びと歳出の伸びを考えます。2013~2017年度の名目GDPは平均約プラス2.1%、同期間に2014年度の消費税率引き上げ(5%から8%)の影響を除いて税収は平均約3.4%増えました。経済成長率よりも税収の増減率が大きくなるため、2020年度が政府の想定通りの経済成長率なら10月からの消費増税がなくても税収は3%以上増えます。

少なくとも税収(2017年実績106兆8000億円、地方を含めた国全体ベース)がプラス3%以上増え、政府歳出(同121兆8000億円)がプラス1%程度であれば財政収支は改善します。これは、家計・企業などの民間部門から政府に対する支払いが増える緊縮財政です。


2020年度予算案は一般会計の歳出規模が2年連続で100兆円を
                 超えることになったが、この財政政策は実は緊縮財政

さらに2019年10月からの消費増税によって、教育費無償化などの家計への恩恵を含めても恒久的に家計に2~3兆円負担が増えると考えられます。このため、2020年度の税収はさらに1~2%ポイント上乗せされます。この結果、税収と歳出のバランスでみると、2020年度はかなりの緊縮財政になるでしょう。ただ、消費増税で経済成長率がゼロ%前後に落ち込むとみられ、実際の税収の伸びはプラス3%を大きく下回るでしょう。

このため、2020年度予算では、歳出が抑制される中で増税が行われるので緊縮財政が続くと見るのがより正確でしょう。つまり、「過去最大規模」「100兆円」という2つのワードを強調するメディアは的外れです。

12月初旬に政府が発表した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において公的支出は13兆円の規模ですが、これが日本の経済成長率を高める可能性は極めて低いです。実際、同様の大規模対策となった2016年8月の経済対策によって、その後の政府支出の伸びが全く高まりませんでした。


こうなる理由の一つは、補正予算で事業規模が増えても、その影響で当初予算ベースの歳出が減ることです。

さらに、12月の経済対策で公共投資が上積みとなったため、2020年度の予算では公共工事関係費は前年から減額になりました。なお、消費増税によって家計の実質所得が目減りする個人消費への悪影響を、建設業などに恩恵が偏る歳出拡大で対応する政策は資源配分を歪める弊害が大きいです。

このため、当初予算で公共投資を減らすことは問題ではないとしても、個人消費の落ち込みへの手当として、低所得者向けの社会保障関連などの歳出を拡大させる余地が大きいです。

いずれにしても、大規模な経済対策を発表しても、政府による歳出上乗せが実現しなければ、先に述べたとおり2020年は増税によって緊縮財政となります。2%インフレの早期実現のために、金融財政双方において景気刺激的な運営が求められるとすれば、これは大きな問題です。

米国では、著名経済学者であるラリー・サマーズ教授が2013年に長期停滞論を唱え始め、政府による歳出拡大の必要性を訴えています。長期停滞論そのものに対しては懐疑的なところもあります。

ただし、同氏が2013年に主張した後、先進国の中で経済正常化が最も進んだ米国でも、極めて低い金利とインフレ率が長期化したままです。同氏が主張する拡張財政政策には説得力があり、その慧眼に感服せざるを得ないです。

さらに、米国の大物経済学者であるオリビエ・ブランシャール元IMFチーフエコノミストは、国債金利が名目経済成長率を下回る場合に、総需要を増やす財政政策が必要であり、特に日本は長期停滞に陥っているため金融・財政政策でテコ入れする必要がある、と主張しています。

オリビエ・ブランシャール氏

これら米国の一流の経済学者の提言は、日本の経済政策運営には残念ながらほとんど生かされていません。標準的経済理論を軽視した政策運営が続くため、オリンピック・パラリンピックを迎える2020年の日本経済は長期停滞から脱することは極めて難しいでしょう。

そして、従来からこのブログでも指摘していますが、現在の経済政策運営が安倍政権の政治的土台を揺るがすリスクが高まることになるでしょう。

「もりかけ桜」では、結局安倍政権の政治的土台を揺るがされることはありませんでした。特に、「桜を見る会問題」で内閣総辞職になるなどということはあり得ません。しかし経済の悪化は確実に政権土台を揺るがすことになるでしょう。

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【日本の解き方】著名エコノミストが主張する日本の「基礎的財政赤字拡大論」 財政より経済を優先すべきだ ―【私の論評】増税で自ら手足を縛り荒波に飛び込もうとする現世代に、令和年間を担う将来世代を巻き込むのだけは避けよ(゚д゚)!

2019年12月29日日曜日

2020年、ついに財務省の「景気対策のウソ」がバレる可能性―【私の論評】マイナス金利国債を大量に刷り増せば政府は大儲けできるのに、なぜ増税をしたのか(゚д゚)!


攻防の一年

2019年は財務省にとって、消費増税の「悲願」達成の一年だったと言えるだろうが、2020年にはどう動いてくるのか。

結論から言ってしまえば、財務省にとっての'20年は、防戦メインの一年になると予想される。

懸案事項であった消費増税はクリアしたものの、11月以降、財務省は自民党と公明党からの大型補正予算の要求に苦慮していた。景気対策などを盛り込んだ大型補正予算は'20年1月20日から始まる通常国会で審議に入る。

国会

'19年度の補正予算は約4・5兆円で閣議決定した。すったもんだの議論があったが、考えてみれば補正予算は、消費増税による景気落ち込みを防ぐために組まれたものだ。増税を煽ってきた財務省からすれば、「身から出たサビ」と言えるだろう。

もともと、世界経済が不安定な時期に消費増税したのが間違いだった。本コラムでたびたび指摘しているとおり、景気落ち込みの対策には、マイナス金利を活用した公共投資を増やすのがセオリーだ。

国交省の公共投資の採択基準が市場の金利と合わなくなり、結果的に行うべき事業をまったく進められていないのが、景気落ち込みとそれに伴う大型補正予算の拠出の原因になっている。

市場的には「攻め時」であるにもかかわらず、財務省はそれを受け入れられず、防戦一方の姿勢を貫いている。この傾向は、'20年に突入してからも変わらないだろう。

いかなる経済理論においても、マイナス金利下では、国債の大量発行が正当化される。政府にとって「借金」としての負担にならないからだ。ところが財務省は、国債について「将来世代に負担をかけるもの」「財政の硬直化を招くもの」と、絶対悪のように主張し続けてきた。

だが、安倍政権の在任が歴代最長となり、アベノミクスとマイナス金利が長期化するなかで、先の財務省の主張は徐々にウソだとバレ始めている。しかし、プライドの高い財務省官僚は表立ってそれを言うことができない。

'19年度補正予算、そして約102兆円に膨れ上がった'20年度当初予算では、大量国債発行を回避した。この点について財務省は胸をなで下ろしているだろう。ただ、「経済対策にはマイナス金利を利用すべし」ということに他省庁やマスコミが気づくことを恐れている。

適当な財政ネタでマスコミを陽動し、金融機関の疲弊など、マイナス金利に関する弊害情報で誤魔化そうとする。

それに加えて、お決まりの「増税やむなし論」を流すことも忘れない。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「'30年までに15%、'50年までに20%へ増税する必要がある」との見解を示した。こうしたIMFの発言は、財務省から出向した人間が理事に言わせていることもある。

ちなみに、日本のマスコミが同基金のニュースを流すときは、ほとんどIMF理事室がソースだ。ここでの日本語対応でも財務省からの出向者が活躍しており、この意味では、中立的な国際機関と思わないほうがいい。

増税による景気落ち込みのしわ寄せ、そしてこれまで主張してきた理論の矛盾を追及されないための工作で、'20年の財務省は守りを決め込むだろう。

『週刊現代』2019年12月28日・2020年1月4日号より

【私の論評】マイナス金利国債を大量に刷り増せば政府は大儲けできるのに、なぜ増税をしたのか(゚д゚)!

日本がマイナス金利政策なのは有名ですが、実は日本国債の利回りもマイナスになっていいます。国債の利回りがマイナスということは、購入する側からすると買って満期まで持っていると、払った金額よりも受け取れる金額が小さいということです。
これを売る政府の立場からみると、買い手に売って満期まで待っていると、書い手が払った金額よりも返す金額が少なくてすむということです。マイナス金利分は、政府の丸儲けです。
それにしても、なぜ利回りがマイナスなのに、日本国債は買われるのでしょうか。これについては、以前もこのブログで理由を掲載しました。
結論から言ってしまえば、「他の選択肢よりはマシだから」「長期的には不安だけれど短期的には安心だから」ということだからなのです。
「とりあえず、今日から明日までの運用を考えよう。明日以降のことは明日考えよう」と投資家が考えたとします。「明日までに日本政府が破綻する可能性は非常に小さい」一方で「明日までに円高ドル安で損するリスクは小さくない」ということならば、「とりあえず明日までは国債で運用しよう」ということになりそうです。

明日以降も全く同じことが繰り返されれば、日本人投資家はずっと日本国債を持ち続けることになるでしょう。「長期的には不安だけれど、短期的には安心だ」ということで短期の投資が繰り返され、結果として長期間にわたって投資が続くことになります。
さらに、日本人投資家から見ると、日本国債は「信用リスクはあるが、為替リスクがないので、相対的に安全な資産だ」と言えるわけですが、外国人から見ると違います。彼らにとっては日本国債は「信用リスクも為替リスクもある、相対的にリスクの大きい資産だ。しかも金利も低い」ということになるからです。
以上のようなことから、日本の機関投資家は、たとえ金利がマイナスであっても、日本国債を買い続けるのです。
そうして、金利がマイナスということはどういうことかといえば、これはもう小学生でもわかることです。

政府の立場からすれば、国債を大量に刷ったにしても、金利がマイナスであれば、買い手に売って満期まで待っていると、買い手が払った金額よりも返す金額が少なくてすむということです。要するに、マイナス金利分丸儲けということになります。
このような理屈は、小学生にかかわらず、マクロ経済などにかな疎い人でもほとんどの人が理解できるでしょう。
マイナス金利の国債を大量に政府が販売すれば、マイナス金利の分は政府が丸儲けということになります。であれば、大量に国債を発行しても、赤字になるはずもくなく、将来世代に付になることもないということは誰でも理解できます。
しかし、緊縮脳におかされた人々は、これでも大量の国債を発行すれば、これを家計と同じ用に考えて、金利分は確かに政府の儲けだが、元金分は政府の借金であると、言うかもしれません。 
サイトでみつけた緊縮、反緊縮派の分類

こういう人緊縮派の人には、いくら説明してもわからないので、絶望的になります。しかし、良く考えてみてください、もし国債を外国から買ってもらうと、すればそれは確かにすぐに国民の借金となり、将来世代への付ともなります。しかし、現在の日本国債のようにそのほとんどが日本国内の機関投資家が購入するのですから、それは決して将来世代への付にはなりません。
国内で購入される国債は、国内で国債を大量に買うことのできる、機関が購入し、政府にそのお金が渡っているということです。政府はそのお金を元手に様々な事業を行うわけです。
それでも、緊縮派の人たちは、「いや、政府が事業を実施してしまえば、それでお金は消える」と考えるかもしれません。しかし、そうでしょうか、政府が事業を行えば、そのお金が市場に出回り、また税金として政府に戻ってくるのです。ここが、根本的に家計とは異なります。このお金は、日本国内を循環しているだけです。消えることはありません。
これでもわからない人もいるようです。しかし、もう一度考えてみてください。もし、政府がマイナス金利になろうが、なるまいが、国債を一切発行しなかった場合どうなるのか。
日本国内の機関投資家は、日本国内の国債を買えなければ、お金をそのまま溜め込むか、海外に投資することになります。そうなると、日本国内ではその分のお金は循環しなくなるだけの話です。であれば、特にマイナス金利のとき、デフレ気味のときには、政府は大量に国債を発行して、日本国内でお金を循環させたほうが良いという結論になります。ましてや現在の日本は、デフレから脱却しきれていませんし、増税でデフレに舞い戻る可能性が大いにあります。
そうして、国債が将来世代への付になるということはありません。これについては、さらに詳しく、以前のこのブログに掲載したので、その記事のリンクを以下に掲載します。
政府、赤字国債3年ぶり増発へ 10兆補正求める与党も容認見込み―【私の論評】マイナス金利の現時点で、赤字国債発行をためらうな!発行しまくって100兆円基金を創設せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、2つの条件、(1.国債が、国内で販売されていること、2.不完全雇用経済であること)を満たしていれば、国債を発行しても将来世代への付にはならないことと、その理由について掲載しました。

そうして、現在の日本は、この2つの条件を満たしており、たとえ国債の金利がマイナスでなくても、国債を発行しても将来世代への付になることはないのです。さらに国債の金利はマイナスなのです。


これは、まさに現状は国債を大量に刷り増すべきであることを示しています。まさに、上の記事でも主張されているように、「市場的には『攻め時』であるにもかかわらず、財務省はそれを受け入れられず、防戦一方の姿勢を貫いている。この傾向は、'20年に突入してからも変わらないだろう」という状況なのです。

仮に、現在のマイナスの国債を、金利がゼロになるまで、刷り続けるとどのくらい国債を刷ることができるのかという高橋洋一氏が試算しています。その試算結果を以下に掲載します。
仮に8年国債で国が資金調達する場合、金利が同じであれば、100兆円調達で年間3000億円、8年で2兆4000億円儲かる。これは8年国債を100兆円発行すると、102兆4000億円の当初資金を調達できることを意味する。このうち100兆円は金庫に入れ、残りの2兆4000億円を使っても何の支障もない。
それにしても、これだけ、大量に国債を刷り増すことが可能なら、なぜ増税をしたのかということに、多くの人が気づくはずです。

しかし、見方を変えると、これは財務省にとっても良い話であると思います。仮に、8年国債を100兆円発行し、102兆4000億円の当初資金を調達し、100兆円は金庫に入れ、残りの2兆4000億円を使い。金庫に入れた,100兆円を特別会計にでも入れれば、財務省としてはこの100兆円を財務省に省益につかえるかもしれません。

無論そこまで、露骨なことをすれば、さすがに政治家や他省庁から苦情がでるかもしれませんが、それにしても、この100兆円の一部は、いわゆる財務省の埋蔵金にできる可能性があります。さらには、経済対策にも使えるのです。やはり、無繆性をモットーとする愚かな役人根性がなせる技なのでしょうか。

それこそ、消費税を増税しなくても、桁外れの埋蔵金を蓄えられる大きなチャンスであるにもかかわらず、財務省がこのようなことをせずに、防戦一方に回っているというのですから、本当に不思議です。

このような姿勢の財務省は、ブログ冒頭の記事にもあるように、増税による景気落ち込みのしわ寄せ、そしてこれまで主張してきた理論の矛盾を追及されないための工作で、'20年の財務省は守りを決め込むのでしょうが、これは逆に言うと、来年は財務省は、増税による景気落ち込みのしわ寄せ、そしてこれまで主張してきた理論の矛盾を追及されることになるということです。

さすがに、国債のマイナス金利については、何を意味するのか、小学生でも理解できることですから、多くの政治家が理解できないはずはありません。来年は、財務省はこれで、かなり叩かれることになるでしよう。これで、財務省は身を滅ぼすことになるかもしれません。

それが、日本でも機動的財政政策ができるようになるきっかけになることを期待したいです。

ちなみに、ここで機動的財政政策とは、景気が悪くなれば、積極財政を実施し、景気が加熱すれば、緊縮財政をするという当たり前の財政政策をするという意味です。

さらに、一つ付け加えると、日本で機動的財政政策ができるようになったとしても、日銀がまともな金融政策を実行しなければ、日本経済はまともになりません。

日銀、景気が悪くなれは、金融緩和をすべきですし、景気が加熱すれば、金融緩和をすべきなのです。

景気が悪いときに、政府がせっかく積極財政を打ったとしても、日銀が金融引き締めをすれば、全く意味がないです。何のために、積極財政をするかといえば、お金の循環を良くするためです、そのときに日銀が通貨領を減らす金融引き締め政策をすれば、逆効果になるのは当然のことです。

平成年間は、デフレであるにもかかわらず、政府は増税などで、緊縮財政を実施し続け、日銀は金融引き締め政策を継続し続けました。

平成年間で、まともな経済対策ができたのは、安倍政権が成立した直後の2013年4月から、8%増税をする直前の2014年3月までのわずか1年間だけでした。

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2019年12月28日土曜日

【日本の解き方】令和元年の日本経済を冷やした“最悪のタイミング”での消費増税 景気対策は1度では済まない―【私の論評】すでにあらゆる数値が悪化!政府の景気対策は明らかに後手にまわり、手遅れに(゚д゚)!

【日本の解き方】令和元年の日本経済を冷やした“最悪のタイミング”での消費増税 景気対策は1度では済まない

2019年元旦 初滑り 写真はブログ管理人挿入

 2019年は、新しい元号の令和になり、そのスタートの年だった。平成は経済停滞が続いた年代だったが、令和元年の経済はどうだったのだろうか。

 筆者が重視している雇用について、総務省の失業率で見ると今年1~10月で2・2~2・5%となった。就業者数は6665万~6758万人だった。失業率は低位安定、就業者数は上昇傾向で、雇用は相変わらず良かった。

 景気について、内閣府の景気動向指数の一致指数で見ると、95・3~102・1だった。昨年末から低下傾向であり、そのころに景気の山を迎えていた可能性がある。それ以降は下向きであるが、10月の消費増税はそれをさらに加速させたようだ。

 物価はどうだったのか。総務省の消費者物価指数総合(除く生鮮食品)の対前年同月比は、1~11月で0・3~0・9%だったが、年前半より後半のほうが伸び悩んでいる。特に消費増税の影響が出た10月と11月は0・4%と0・5%だった。

 今回の消費増税は、形式的には消費者物価にプラスの効果となり、その影響は0・7%程度だ。ただ、同時に幼児教育・保育無償化が実施され、物価への影響はマイナス0・5%程度だ。そのプラス、マイナスの結果、10月以降、消費増税の影響は0・2%程度になる。

 これを考慮すると、10月、11月とほとんど物価が上がっておらず、消費増税により19年中のデフレ脱却はあえなく潰れた。

 19年を振り返ると、景気や物価は徐々に悪くなりつつあるが、雇用は相変わらず良かったという評価だ。もっとも雇用は景気に遅れる遅行指数であるので、今後の先行きは暗い。

 ちなみに、内閣府の景気動向指数の先行指数でみると、1月の96・3から始まり、10月の91・6までほぼ一貫して下降している。これも、来年の景気の先行きを不安視するものだ。

 前にも言及したが、この1年の景気足踏みや後退傾向は昨年から見られていたものだ。しかも、日本だけでなく世界経済の環境も、米中貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱の混迷など、景気に対するマイナス面が多かったので、日本への悪影響も懸念されていた。その中で10月に消費増税が最悪のタイミングで実施された。

 いまさらやってしまったものは仕方ない。消費増税分を吐き出すような景気対策が必要になるだけだ。

 幸いにも、20年1月からの通常国会では冒頭で補正予算が審議される。その経済対策は、(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保2・3兆円(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援0・9兆円(3)未来への投資等1・1兆円で、合計4・3兆円だ。

 これは、消費増税による増収額(平年ベース)とほぼ見合っており、消費増税分を吐き出したともいえる。今回1回きりではなく、来年度もあと1、2回の景気対策が必要になるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】すでにあらゆる数値が悪化!政府の景気対策は明らかに後手にまわり、手遅れに(゚д゚)!

令和もいよいよ2年目へ。おそらく、民間企業ではすでに仕事納め、明日29日には官公庁も仕事納めです。今頃、新春ムードに浮かれている人も多いかもしれません。しかし、残念ながら、その新春ムードをぶち壊すことになりそうです。

浅草仲見世通りはもう新春ムードだが・・・・・

なぜなら、20年の景気は一層冷え込むことになるからです。この重大事を海外メデイアは一部報道しているところもあるのに、現在日本のメディアは、IR疑惑報道等なでかき消されてしまったのかほとんど報道しません。これは、10月に実施された消費増税の影響があまりに大きく、冒頭の記事で高橋氏が予想するように、来年からの景気の冷え込みは確実なのです。

経産省が11月末に発表した10月の商業動態統計では小売・卸売業が悲惨な状況にあることも明らかになっています。10月の小売業販売額は前年同月比7.1%減で、’14年増税時(4.3%減)のマイナス幅を大きく上回ったのです。

財務省が毎月発表している貿易統計でも、10月の輸出が前年同月比9.2%減、輸入が同14.8%減と大きく低下。11月の速報値でも輸出が7.9%減で輸入が15.7%減と大幅なマイナスです。特に、2か月連続で2桁減を記録している輸入額からは国内需要が大きく低下していることがうかがえます。

経産省が発表した10月の鉱工業生産指数も前月比4.2%減で、3年5か月ぶりの低水準。10月の台風被害で操業停止に追い込まれた工場があった影響もあるでしょうが、日本も含めて世界的に需要が落ち込んでいることを如実に示しています。


前回増税は3%分で今回は2%分のため、単純計算で景気の落ち込みは前回の3分2程度にとどまるだろうと予想する人もいましたが、実際には前回増税時を上回る落ち込みをみせているのです。

12月6日に発表された総務省の家計調査によると、10月の消費支出は物価変動を除いた実質ベースで前年同月比5.1%減と大きく下落しました。大型台風の影響があったとはいえ、’14年の5%から8%への引き上げ時よりも大きな下落率です。軽減税率の導入やキャッシュレス決済時のポイント還元制度を導入することで、駆け込み需要からの反動減を抑制しておきながら、この水準です。

ポイント還元制度は複雑で手間のかかるものだった・・・・


さらに内閣府が発表した景気動向指数では、景気の現状を示す一致指数が前月比5.6ポイントも下落と、8年7か月ぶりの大きさを記録しています。消費増税の悪影響が想像以上のものだったと言わざるをえません。

一方日経平均株価は9月初めには2万円台で停滞していましたが、12月には2万4,000円台まで大幅高となりました。その要因は、米欧株の主要株価指数が最高値を更新する中で、日本や新興国も含めて世界的な株高となったためです。

過去3ヵ月余りの日経平均株価の大幅高を受けて、バブルではないかとの見方も聞かれます。しかし、2020年も米国を中心に株高トレンドは崩れなければ、バブルの領域まで日本株が上昇しているとは言えないでしょう。

ただ2020年の日本経済は、消費増税による緊縮財政政策の強化によって、ほぼゼロ成長に停滞すると予想します。オリンピック開催で東京を中心に雰囲気は明るくなるかもしれませんが、すでに最近の経済減速の余波で求人数がやや減少するなど、2018年まで好調だった労働市場の減速が始まっています。

2020年は海外からの追い風で株式市場は底堅いでしょうが、家計所得と個人消費の失速によって、景気回復の実感が多くの国民に広がることはないでしょう。経済政策の失敗によって、安倍政権の政治的な求心力がさらに低下し、2019年までは世界で最も安定していたと言える日本の政治情勢が不安定化する展開があるかもしれません。

2020年は海外からの追い風で株式市場は底堅いだろうが・・・・

前回の増税と単純比較はできません。2014年4月の増税は、アベノミクスが始まった直後のことです。これに対して、今回は米中貿易戦争などで世界的に先行き不透明感が強まった時期での増税です。無論、前回のときも世界情勢に関して懸念材料はありましたが、今回ほどではありませんでした。

いまだ政府は景気の基調判断を「緩やかに回復している」として、’12年12月から始まった戦後最長の景気回復は継続中であるとの判断を維持していますが、多くの景気指標を見ると’18年10月にピークをつけていたことがわかります。


実際、この12月に内閣府から発表された’18年度GDP確報値は、速報値の0.7%から0.3%に大幅に下方修正されています。さらに、多くの人が見落としているのがGNI(国民総所得)。こちらは速報値の0.2%から一転してマイナス0.2%に下方修正されているのです。

GNIは文字どおり、国民が1年間に得た所得の合計を示す数値。つまり、’18年度には早くも日本の所得水準は低下に転じて、そこに世界的な景気減速が重なるという最悪のタイミングで増税が実施されてしまったのです。

’20年度の新卒求人倍率は8年ぶりに低下しており、安倍政権がアピールし続けた雇用環境の改善も頭打ちの状況。もはや、緩やかに回復している』と言える材料は尽きているといって良いです。

問題なのは、このような経済環境にありながらまともな経済対策を講じていない点にあります。

12月13日に’19年度補正予算案を臨時閣議決定しましたが、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」と名づけながら、経済の下振れリスクに対処するための重点支援策への投入資金は9000億円どまり、10 月の消費増税では軽減税率や教育無償化に伴う財源を差し引いて、恒久的に2.5兆円の家計負担増になると試算できるのに、まったくその穴埋めができていません。

そもそも補正予算の成立が遅すぎるのです。増税に伴う景気減速が目に見えていたにもかかわらず、10~12月の臨時国会での補正予算成立を目指さず、政府は1月20日に召集される通常国会での早期成立を目指す姿勢です。

仮に1月中に補正予算が成立しても、実際に予算が執行されるのは年度末の3月になってしまいます。つまり、増税から半年も追加対策を打てぬまま時間が過ぎてしまうわけです。

高橋洋一氏が冒頭の記事で主張するように、景気対策を一度で済ますことなく、来年度(’20年度)の補正もすぐさま打たないと景気の下支えは難しいです。政府の対策が後手に回っているのは明らかです。

’20年はオリンピックイヤー。東京五輪直前にテレビをはじめ、家電の駆け込み需要が発生する可能性もありますが、「6月にはキャッシュレス決済のポイント還元制度が終了して消費の落ち込みが一層激しくなり、さらに五輪後にはインバウンド需要が急速に萎むでしょう。

そうして、本格的な景気後退局面入りになるのは明らかです。果たして、いつまで安倍政権は「緩やかに回復している」と言い続けられるのでしょうか。 令和2年の日本は、いまののままでは、経済がかなり落ち込むことを覚悟をすべきです。

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2019年12月27日金曜日

ロシアが独自の内部インターネットのテストを開始―【私の論評】インターネット遮断で疲弊する中露(゚д゚)!



ロシア国内のニュース報道によれば、ロシアは世界的なウェブの代替として機能する、国家規模のインターネットシステムのテストを開始した。ロシアがどの段階に達したかは明確ではないが、障害回復力が高く、そして恐らくはより簡単にコントロールできるインターネットが追求されていることは確かだ。

もちろんインターネットというものは、物理的に、仮想的に、そしてますます政治的にインターフェイスしなければならない接続する国同士の世界的なインフラストラクチャの連携網で構成されている。中国など一部の国は、そのインターフェースのローカル側からアクセスできるウェブサイト、アプリ、およびサービスを制御することで、そのインターフェイスを極めて慎重に規制している。

ロシアも徐々にそのアプローチに傾いていて、今年始めにプーチン大統領はRunet(ロシアのインターネット)に関する法律に署名している。Runetは上記のような規制が必要になった場合(あるいは都合が良くなった場合)に、分離された内部インターネットを維持するために必要なインフラストラクチャを構築するためのものだ。

関連記事:暗号化電子メールのプロバイダ、ProtonMailをブロックするロシア

プーチン大統領は今週初めに国営の報道機関であるタス通信に対して、これは純粋に防衛的な措置であると説明した。

その説明によれば、Runetは「主に海外から管理されているグローバルネットワークからの、世界的規模の切断の悪影響を防ぐことのみを目的としています。インターネットから切断されないようにオンにできる自分たちのリソースを持つこと、これがポイントで、主権というものなのです」ということだ。

BBCによって伝えられた、タスとプラウダからのより新しい報告によれば、この動きが理論上のものから実践的なものになったことを示している。いわゆるモノのインターネット(IoT)の脆弱性に関するテストも行われた。もしロシアのIoTデバイスのセキュリティ慣行が米国同様にお粗末なものるなら、それは残念なことだったに違いない。また、ローカルネットが、どのようなものであれ「外部の負の影響」に立ち向かうことができるかどうかも調査された。

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ロシアがここで試みていることは、小規模な仕事ではない。表向きは主権と堅牢なインフラストラクチャについての話だが、米国、ロシア、中国、北朝鮮、および高度なサイバー戦争能力を持つ他の国々との間の緊張関係も間違いなくその一部だ。

世界から切り離されたロシアのインターネットは、現段階ではおそらくほとんど機能しないだろう。ロシアは他の国と同様、常に世界のどこか別の場所にある資源に依存しており、もし国が何らかの理由で殻に閉じこもってしまった場合、インターネットが通常通りに機能するためには、そうした資源の多くを複製する必要があるだろう。

国の一部から他の場所に直接接続する物理インフラストラクチャと同様に、現在は国際接続を介して接続する必要があるDNSも別個のシステムが必要になるだろう。そして、それは単に、ロシアのイントラネットを機能させる基本的な可能性を生み出すために行われる。

堅固な「主権インターネット」が必要になる、という考えに反対するのは難しいが、それは国家インフラへの単純な投資というよりは、紛争への準備だと考えざるを得ない。

とは言うものの、Runetがどのように成長し、どのように使用されるかは、その機能と意図された目的に関するより具体的なレポートを受け取るまでは、推測の範囲を越えることはない。

【私の論評】インターネット遮断で疲弊する中露(゚д゚)!

ロシアは以前から自国のインターネットを海外から独立させる動きを強めており、実際に国全体を海外のインターネットから一時的に遮断する実験を検討中との報道もありました。しかし、こうした「インターネット鎖国」はロシアのインターネットを不便かつ脆弱するだけでなく、国外にも影響を及ぼす可能性があります。

ロシア国旗のビキニ


インターネットインフラには、中央権力と呼べるものがありません。インターネットを機能させるには、全員が相互扶助するしかないのです。結果として海底ケーブルや衛星がパッチワーク状になり、国境を無視して世界全体をつなげています。それゆえ多くの国は、オンラインでいるために自国のコントロールの及ばない国外の設備に頼るほかなくなります。

それでも、国家が自国のインターネット環境に大きな干渉を試みることはたびたびあります。そして、こうした試みがインターネットの遮断につながることも多いです。

例えば、2019年1月に実施されたコンゴ民主共和国の大統領選では、政府が選挙期間中にインターネット通信の遮断に踏み切りました。そしてロシアも国全体を海外のインターネットから一時的に遮断する実験を行なったようです。

大統領選挙で勝利した最大野党のUDPS党首、チセケディ氏

ロシアの国土は広大であるうえ、ネットインフラの高度さもコンゴの比ではありません。インターネットを遮断するとなれば膨大な労力を要すること、そして実行すれば無数の予期せぬ結果につながることも容易に想像がつきます。

ロシア国内のメディアの報道によると、インターネット遮断実験は昨年12月に提出された新法案によるもののようです。この法案は国内の各インターネットサーヴィスプロヴァイダー(ISP)に対して、ロシアのインターネット、すなわちルネット(Runet)の独立性の保障を求めるものです。

規制はロシア国内のISPに対してふたつのことを命じています。ひとつは世界との通信を遮断するための技術を確立すること。もうひとつは、インターネットの通信経路をロシア連邦通信局(Roskomnadzor)の管轄するルーティングポイントを経由するものに組み替えられるようにすることです。

インターネットは米国で発明されました。現在、世界のネットインフラの大部分は米国の企業によって管理されています。

そんななかで、ロシアは単にルネットの独立性を高めようとしているだけかもしれないですが、プーチン大統領がサイバー戦争に向けた「軍拡」をもくろんでいる可能性もあります。あるいは、国民がインターネットを通じて入手する情報を統制しようとしている可能性も否定できません。

詳しい動機はいまだ不明ですが、ロシアが数年にわたってインターネット上での独立性を高めようと準備を進めていることは確かです。実際、ロシアは2014年にはグローバルインターネットから独立する姿勢を表明していました。

しかし、実現に向けた課題はいまだに解決していません。ロシア当局がしなくてはならないことは、大きくふたつです。ひとつは、ロシア国民がロシア内のコンテンツにしかアクセスできないようにすること。もうひとつは、あらゆる接続ポイントをロシア国内に置き、通信経路を国内に限定することです。

ロシアはここ数年、実際にこのふたつに取り組んでいます。2014年には、企業がロシア国民の個人情報を集める際には、データをロシア国内に保存することを要求する法律が制定されました。LinkedInのように、これを拒んだサイトにはロシア国内からアクセスできなくなりました。さらに、ロシアは独自のドメインネームシステム(DNS)を開発したとも報じられています。

しかし、いくら入念に準備を重ねたとしても、世界をつなぐインターネットから実際に独立しようすれば、ほぼ確実に想定外の問題が起こるでしょう。

インターネットプロヴァイダーが、国外のネットインフラすべての信頼性を詳細に把握するのは困難です。プロトコルスタックはすべての階層が複雑な構造をしているため、どこかしらに致命的な問題が発生する可能性があります。

金融機関、医療機関、航空機関などがネット接続不能になるなどの大問題が発生しなかったとしても、多くのウェブサイトが機能を停止する可能性があります。ほとんどのウェブページは複数のサーヴァーに依存して機能しており、これらのサーヴァーは世界中に散らばっている場合もあるからです。

例えば、ニュースサイトのなかにはアマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するクラウドサーヴァーや、グーグルのトラッキングソフトウェア、フェイスブックのコメント用プラグインを利用するものがあります。もちろん、これらのサーヴィスはすべてロシア国外から提供されています。

それぞれが異なる膨大な数のものが集まって、ひとつのウェブページを構成しています。ロシアでウェブサイトを運営しようと考えるなら、その構成要素の所在地をすべて把握する必要があります。

ロシア国外ではどういう影響があるでしょうか。ロシアがグローバルインターネットから分離したとしても、米国が影響を受ける可能性は低いです。しかし、ロシアを経由する通信網を利用している国では問題が起こる可能性があります。ロシア国内を経由する接続はできなくなるかもしれないです。

完全に独立したインターネットを構築しようという試みは、事実上、既存のものよりも脆いインターネットを構築することになってしまうのです。

現行のグローバルインターネットは、通信経路が無数に用意されているため、移動している情報を完全に遮断するのは難しいです。例えば、欧州と米国を結ぶ海底ケーブルが破損したとしても、別の経路を通って米国からフランスへとメールやアプリのメッセージを送信することができます。一方でロシアがつくりあげたいのは、すべての経路を把握し、意のままに遮断できるようなシステムなのです。

そのようなシステムはネットワークの欠陥になります。新しいシステムは、インターネット上でロシアが占める領域の信頼性を損なうものになります。遮断可能なインターネットシステムを構築するということは、意図せず遮断されうるインターネットシステムを導入するのと同じことです。

ロシア政府はこれまで、インターネット上で起こることを国家管理下に置く「インターネット主権」を目指してきました(通信省の実験でも「主権」という言葉が用いられたことに注意)。

その究極形と言える形態が中国の運用する「金盾」であり、実際にロシア政府の最終目標はこうした「壁」を目指していると指摘する識者もいます。

    金盾の概要を解説するダイアグラム 中国のインターネット取締警察官は
    2005年時点で3万人を超えたとされている

もっとも、ロシアのインターネットをグローバル・インターネットから遮断することは上でも述べたように並大抵のことでありません。

たとえ一時期のことであってもロシアの国民生活や経済に与える影響は甚大なものとなるだろうし、平時からトラフィックやインフラを「ロシア化」し、完全管理するとなればインターネット事業者の負担は激増します。

実際、こうした理由からインターネットの「ロシア化」などは不可能だと指摘する専門家は多いです。

こうした事情もあってか、2016年末に通信省が公表した新たな「情報化社会発展戦略」の改定案からは「情報及び通信技術の領域におけるロシア連邦の技術的独立性の達成」という目標が削除されました。

資金不足が理由とされていますが、要するにとても経済的合理性にそぐわないということでしょう。

しかし、私はロシアはこれを強力に推し進めるべきだと思います。なぜなら、これを強力に推し進めれば、時間と労力と資金力がかなり必要になり、ロシアがその分疲弊するからです。

そのため、ロシアがこの度国家規模のインターネットシステムのテストを実施したことは、まことに喜ばしいことです。

中国もこらからさらに金盾をより洗練されたものにすべきです。金盾の運用は、かなりの労力と時間と資金力が必要でしょう。

これからも、インターネットの技術革新は、続きます。それに対して、中国とロシアは莫大なエネルギーと資金をさいてこれらに対応するため、金盾やRunetをアップデートしていかなければならないのてす。

これに比べて、日米欧などでは、インターネットを海外から独立させるなどという馬鹿げたことには、一切労力を使わず、ただし中露のサイバー攻撃には備える体制を整え、ますまますインターネットの技術革新を実行して、中露を疲弊させれば良いのです。

これは、軍拡、宇宙開発でも同じことがいえます。対中露ということで、日米欧等は同盟関係を強化し、それぞれの国の得意分野で中露を出し抜くようにして、同盟全体で中露に脅威を与えつつ、両国を疲弊させるのです。

たとえば、日本が低予算で、月の裏に宇宙船を派遣すれば、中国はこれに対抗するため、大予算で、月の裏にあまり意味のない軍事基地を構築するかもしれません。そうなれば、とてつもなく金食い虫になることでしょう。

米国が、最新鋭空母を構築して、南シナ海に派遣したり、イギリスが空母クイーンエリザベスを南シナ海に派遣すれば、それに対抗して中国もさらに新たな空母を構築するかもしれません。こういうことが、ますます中国を疲弊させます。

このような経済的疲弊が旧ソ連を崩壊に導いた大きな原因の一つともいえます。

そうなれば、今や韓国なみの経済力しかない、ロシアは日米欧側につくようになるかもしれません。そうなれば、中国の壊滅はかなりはやまるかもしれません。

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