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岡崎研究所
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国共産党幹部から入手したらしい(もちろん入手元は安全上の理由から秘密だろう)大量の内部文書(全部で403頁、24文書が含まれていると言う)の内容を紹介する記事を11月16日に掲載した。その内容とは、中国共産党による新疆における大規模な弾圧に関するものである。中国共産党が、習近平総書記の指示の下で、大々的にウイグル族の拘束と弾圧を行なっていることを裏付けるものとなっている。
中国共産党旗とウイグル人女性 |
記事によると、現在の新疆におけるウイグル弾圧の大きなきっかけは、2014年の習近平総書記の新疆視察に遡る。その視察前後に、複数の大規模殺傷事件が発生したことを受けて、習近平総書記は一連のスピーチを行なった。習近平は、スピーチの中で、「目には目を、微塵も慈悲を見せてはならない」と話し、新疆において治安を回復するために、強硬路線を取ることを打ち出した。習近平は、イスラム過激主義に対して、「独裁的」手段を用いることも呼びかけている。一方で、習近平はウイグル族を差別してはならず、彼らの信仰の自由と権利を尊重すべきだとも話している。ウイグル族と漢族の間の自然な摩擦に過剰反応したり、中国においてイスラムを完全に消滅させようと考えたりすべきではないとも警告している。とはいえ、習近平が、新疆の弾圧への方向転換を行ったことは間違いない。
この内部文書の米メディアへの流出で、中国共産党が2014年以来、どのような対新疆政策をとってきたかが白日の下にさらされた。細かな解説はしないが、問題点を列挙するだけで、ものごとの深刻さと重大さは理できるであろう。
中国共産党内において少数民族政策について強硬策と柔軟策の2つの路線争いは常にある。習近平は強硬策に舵を切った。新疆問題は、香港問題とともに、中国の政局に影響を及ぼす。
外部と強いコネクションを持つ新疆イスラム教徒の徹底弾圧は不可能だろう。中国の少数民族政策の成否は、生活水準の向上だけではなく、彼らの宗教を含む文化に対する共産党の寛容度、つまり理解と支持がより重要となる。屯田兵を増やし、文化を否定することでは失敗する。アメとムチがいると言うことだが、アメの方が重要だ。中国は内部問題をさらに深刻化させた。
この時期に内部文書が流出したことの意味は大きい。習近平になり、内部の締め付けを強めたにもかかわらず流出した。中国国内の厳しい監視網をかいくぐって香港まで持ち出せたということになる。
ここに大きな「政治」を感じる。つまり、この文書が国際社会に流布することに利益を見出す党内グループがあるということだ。習近平のイメージはさらに損なわれる。2012年のブルームバーグによる習近平ファミリーの不正蓄財疑惑報道より打撃は遙かに大きいだろう。
この内部文書の米メディアへの流出で、中国共産党が2014年以来、どのような対新疆政策をとってきたかが白日の下にさらされた。細かな解説はしないが、問題点を列挙するだけで、ものごとの深刻さと重大さは理できるであろう。
中国共産党内において少数民族政策について強硬策と柔軟策の2つの路線争いは常にある。習近平は強硬策に舵を切った。新疆問題は、香港問題とともに、中国の政局に影響を及ぼす。
外部と強いコネクションを持つ新疆イスラム教徒の徹底弾圧は不可能だろう。中国の少数民族政策の成否は、生活水準の向上だけではなく、彼らの宗教を含む文化に対する共産党の寛容度、つまり理解と支持がより重要となる。屯田兵を増やし、文化を否定することでは失敗する。アメとムチがいると言うことだが、アメの方が重要だ。中国は内部問題をさらに深刻化させた。
この時期に内部文書が流出したことの意味は大きい。習近平になり、内部の締め付けを強めたにもかかわらず流出した。中国国内の厳しい監視網をかいくぐって香港まで持ち出せたということになる。
ここに大きな「政治」を感じる。つまり、この文書が国際社会に流布することに利益を見出す党内グループがあるということだ。習近平のイメージはさらに損なわれる。2012年のブルームバーグによる習近平ファミリーの不正蓄財疑惑報道より打撃は遙かに大きいだろう。
【私の論評】香港・ウイグル人権法の成立により、米中の対立は価値観の対立になりつつある(゚д゚)!
中国政府はこれまで一貫して、収容施設では希望者に、過激思想に対抗するための教育と訓練を提供していると説明しています。
ところが、BBCパノラマが確認した公文書は収容者の監禁や教化、懲罰の状況を記録しており、中国政府の説明を覆す内容になっています。
これに対し、中国の駐英大使は、文書は偽物だとしています。
収容施設は過去3年間に、新疆ウイグル自治区内で建設されてきました。イスラム教徒のウイグル人を主体に、100万人近くが裁判を経ずに施設内で拘束されているとみられています。
文書は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手しました。
ICIJにはBBCパノラマや英紙ガーディアンなど17の報道機関が参加。今回流出した中国政府の公文書を「中国電報(The China Cables)」と呼んでいます。
文書には、2017年に新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安当局のトップだった朱海侖氏が、収容施設の責任者らに宛てた9ページの連絡文書も含まれています。
その連絡文書では、収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう指示。以下の点を命じています。
- 「絶対に脱走を許すな」
- 「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」
- 「悔い改めと自白を促せ」
- 「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」
- 「生徒が本当に変わるよう励ませ」
- 「宿舎と教室に監視カメラを張り巡らせて死角がないことを(確実にしろ)」
「生徒のベッド、整列場所、教室の座席、技術的作業における持ち場は決められているべきで、変更は厳しく禁じる」
「起床、点呼、洗顔、用便、整理整頓、食事、学習、睡眠、ドアの閉め方などに関して、行動基準と規律要件を徹底せよ」別の文書からは、ウイグル人の拘束と収容の規模がわかります。
ある文書は、2017年のわずか1週間の間に、新疆ウイグル自治区の南部から1万5000人が収容施設に入れられたとしています。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当責任者ソフィー・リチャードソン氏は、流出文書は検察当局に活用されるべきだと話します。
「これは訴追に使える証拠で、甚だしい人権侵害が記録されている。収容者は全員、少なくとも精神的拷問を受けていると言っていいと思う。自分がいつまでそこにいるのか、まったく分からないからだ」流出文書はさらに、収容者は自分の行動や信条や言葉を変えたと示すことができて初めて、解放されるのだと詳細に書いている。
「生徒には悔い改めと自白を促し、彼らの過去の活動が違法で犯罪的で危険な性質のものであることを深く理解させよ」
「浅い理解や悪い態度、反抗心すらうかがえる人には(中略)教育改革を実行し、確実に結果を達成しろ」こうした指示を受けた収容施設について、人権問題に詳しく、ウイグル人組織「世界ウイグル会議」の顧問をつとめる英勅選弁護士のベン・エマーソン氏は、収容者の人格改造が狙いだと話します。
「ひとつの民族コミュニティー全体を対象に作られ実行されている、巨大な集団洗脳計画以外の何かだとみなすのは、非常に難しい。新疆ウイグル自治区にいるイスラム教徒のウイグル人を、個別の文化集団として、地球上から消滅させようとしている。そのために彼らを完全に作り変えることを意図した取り組みだ」文書によると、収容者は「思想変革、学習と訓練、規律の遵守」について点数が与えられます。
収容者の家族との接触の可否や解放時期は、罰と報酬のシステムにより判定されます。解放は、共産党委員会が変革の証拠を得たときだけ検討されます。
流出文書は、中国政府が集団監視と、個人情報の分析に基づいた予測による取り締まりを実行している様子を明らかにしています。
ある文書には、携帯電話にZapyaというデータシェアリングのアプリを入れていることだけを理由に、180万人が要注意人物とされたことが記されています。
当局は、そのうちの4万557人を「一人ひとり」調べるよう命令。「疑いを晴らすことができなければ」彼らに「強制訓練」を受けさせるべきだと述べたといいます。
流出した文書からは、外国の市民権をもつウイグル人の逮捕や、外国で暮らすウイグル人の追跡に関する明確な指示も読み取れます。
世界規模で捕獲網を張り巡らせるため、中国の大使館や領事館が役割を果たしていることも暗示しています。
中国の劉暁明・駐英大使は、中国の施策は新疆ウイグル自治区の人々を守るためであり、同自治区では過去3年間、テロ攻撃は1件も起きていないと述べました。
「当該地域は現在、社会的に安定し、民族集団もまとまっている。人々は満足と安全を以前よりずっと強く感じ、生活を楽しんでいる」
「西側には、そうした事実を完全に無視して新疆について中国を熱心に中傷している人々がいる。彼らは、中国の国内問題に介入し、新疆における中国のテロ対策を妨げ、中国の順調な発展を妨害する口実を作ろうとしている」
米下院本会議は3日、中国・新疆ウイグル自治区の少数派イスラム教徒に対する人権侵害を巡り中国政府当局者に制裁を科す法案を賛成407、反対1の圧倒的多数で可決しました。これを受け、中国外務省はさらなる対抗措置を講じるとの声明を発表しました。詳細は示していません。
中国共産党旗を掲げるウイグル人 |
同法案は9月に全会一致で上院を通過したウイグル族人権法案を修正したものです。採決前に中国共産党機関紙・人民日報系の新聞、環球時報は、中国政府は米企業の制裁につながり得る「信頼できないエンティティー」のリストを公表する可能性があると警告していました。先週には、トランプ大統領の署名により香港人権法が成立しています。
環球時報の胡錫進編集長は3日のツイートで、米当局者へのビザ(査証)発給が制約されたり、新疆ウイグル自治区への立ち入りが禁止されたりする可能性があると指摘しました。
中国は香港人権法への報復措置として、米国の非政府組織(NGO)の一部に制裁を科し、米海軍艦船の香港寄港を当面禁止しました。
人権侵害で中国政府当局者を制裁対象にする法案は議会で超党派の支持を得ています。超党派の支持を得る法案はまれであり、このためトランプ大統領はジレンマに直面しています。議会に反対して有権者の支持を失うこともできないですが、署名をすれば年内の中国との第1段階合意の可能性がさらに後退する可能性があるからです。
下院法案には、ウイグル族抑圧の責任を負う中国当局者への制裁を米大統領に義務付ける条項のほか、ウイグル族や中国市民の通信や動向を制限したり偵察するのに使われ得る機器の輸出規制などが加えられました。
米中の対立は価値観の対決になりつつある |
米中の対立は、もはや完璧に貿易戦争の次元から、価値観の対立になっており、貿易戦争などはそのための一つのツールに過ぎないものとなりました。両者の対立は、中共が中国の体制を変えるか、それができないなら、中国が経済的にも軍事的にも世界の国々対して影響力を行使できなくなるまで弱体化するまで継続することになりそうです。
貿易戦争から、覇権争いへ、覇権争いから価値観の対立へと軸足を移しつつあります。
まさに、このブログで以前から予想していた通りの展開になりました。
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