2019年は財務省にとって、消費増税の「悲願」達成の一年だったと言えるだろうが、2020年にはどう動いてくるのか。
結論から言ってしまえば、財務省にとっての'20年は、防戦メインの一年になると予想される。
懸案事項であった消費増税はクリアしたものの、11月以降、財務省は自民党と公明党からの大型補正予算の要求に苦慮していた。景気対策などを盛り込んだ大型補正予算は'20年1月20日から始まる通常国会で審議に入る。
国会 |
もともと、世界経済が不安定な時期に消費増税したのが間違いだった。本コラムでたびたび指摘しているとおり、景気落ち込みの対策には、マイナス金利を活用した公共投資を増やすのがセオリーだ。
国交省の公共投資の採択基準が市場の金利と合わなくなり、結果的に行うべき事業をまったく進められていないのが、景気落ち込みとそれに伴う大型補正予算の拠出の原因になっている。
市場的には「攻め時」であるにもかかわらず、財務省はそれを受け入れられず、防戦一方の姿勢を貫いている。この傾向は、'20年に突入してからも変わらないだろう。
いかなる経済理論においても、マイナス金利下では、国債の大量発行が正当化される。政府にとって「借金」としての負担にならないからだ。ところが財務省は、国債について「将来世代に負担をかけるもの」「財政の硬直化を招くもの」と、絶対悪のように主張し続けてきた。
だが、安倍政権の在任が歴代最長となり、アベノミクスとマイナス金利が長期化するなかで、先の財務省の主張は徐々にウソだとバレ始めている。しかし、プライドの高い財務省官僚は表立ってそれを言うことができない。
'19年度補正予算、そして約102兆円に膨れ上がった'20年度当初予算では、大量国債発行を回避した。この点について財務省は胸をなで下ろしているだろう。ただ、「経済対策にはマイナス金利を利用すべし」ということに他省庁やマスコミが気づくことを恐れている。
適当な財政ネタでマスコミを陽動し、金融機関の疲弊など、マイナス金利に関する弊害情報で誤魔化そうとする。
それに加えて、お決まりの「増税やむなし論」を流すことも忘れない。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「'30年までに15%、'50年までに20%へ増税する必要がある」との見解を示した。こうしたIMFの発言は、財務省から出向した人間が理事に言わせていることもある。
ちなみに、日本のマスコミが同基金のニュースを流すときは、ほとんどIMF理事室がソースだ。ここでの日本語対応でも財務省からの出向者が活躍しており、この意味では、中立的な国際機関と思わないほうがいい。
増税による景気落ち込みのしわ寄せ、そしてこれまで主張してきた理論の矛盾を追及されないための工作で、'20年の財務省は守りを決め込むだろう。
『週刊現代』2019年12月28日・2020年1月4日号より
【私の論評】マイナス金利国債を大量に刷り増せば政府は大儲けできるのに、なぜ増税をしたのか(゚д゚)!
日本がマイナス金利政策なのは有名ですが、実は日本国債の利回りもマイナスになっていいます。国債の利回りがマイナスということは、購入する側からすると買って満期まで持っていると、払った金額よりも受け取れる金額が小さいということです。
これを売る政府の立場からみると、買い手に売って満期まで待っていると、書い手が払った金額よりも返す金額が少なくてすむということです。マイナス金利分は、政府の丸儲けです。
それにしても、なぜ利回りがマイナスなのに、日本国債は買われるのでしょうか。これについては、以前もこのブログで理由を掲載しました。
結論から言ってしまえば、「他の選択肢よりはマシだから」「長期的には不安だけれど短期的には安心だから」ということだからなのです。
「とりあえず、今日から明日までの運用を考えよう。明日以降のことは明日考えよう」と投資家が考えたとします。「明日までに日本政府が破綻する可能性は非常に小さい」一方で「明日までに円高ドル安で損するリスクは小さくない」ということならば、「とりあえず明日までは国債で運用しよう」ということになりそうです。
明日以降も全く同じことが繰り返されれば、日本人投資家はずっと日本国債を持ち続けることになるでしょう。「長期的には不安だけれど、短期的には安心だ」ということで短期の投資が繰り返され、結果として長期間にわたって投資が続くことになります。
明日以降も全く同じことが繰り返されれば、日本人投資家はずっと日本国債を持ち続けることになるでしょう。「長期的には不安だけれど、短期的には安心だ」ということで短期の投資が繰り返され、結果として長期間にわたって投資が続くことになります。
さらに、日本人投資家から見ると、日本国債は「信用リスクはあるが、為替リスクがないので、相対的に安全な資産だ」と言えるわけですが、外国人から見ると違います。彼らにとっては日本国債は「信用リスクも為替リスクもある、相対的にリスクの大きい資産だ。しかも金利も低い」ということになるからです。
以上のようなことから、日本の機関投資家は、たとえ金利がマイナスであっても、日本国債を買い続けるのです。
そうして、金利がマイナスということはどういうことかといえば、これはもう小学生でもわかることです。
政府の立場からすれば、国債を大量に刷ったにしても、金利がマイナスであれば、買い手に売って満期まで待っていると、買い手が払った金額よりも返す金額が少なくてすむということです。要するに、マイナス金利分丸儲けということになります。
このような理屈は、小学生にかかわらず、マクロ経済などにかな疎い人でもほとんどの人が理解できるでしょう。
マイナス金利の国債を大量に政府が販売すれば、マイナス金利の分は政府が丸儲けということになります。であれば、大量に国債を発行しても、赤字になるはずもくなく、将来世代に付になることもないということは誰でも理解できます。
しかし、緊縮脳におかされた人々は、これでも大量の国債を発行すれば、これを家計と同じ用に考えて、金利分は確かに政府の儲けだが、元金分は政府の借金であると、言うかもしれません。
サイトでみつけた緊縮、反緊縮派の分類 |
こういう人緊縮派の人には、いくら説明してもわからないので、絶望的になります。しかし、良く考えてみてください、もし国債を外国から買ってもらうと、すればそれは確かにすぐに国民の借金となり、将来世代への付ともなります。しかし、現在の日本国債のようにそのほとんどが日本国内の機関投資家が購入するのですから、それは決して将来世代への付にはなりません。
国内で購入される国債は、国内で国債を大量に買うことのできる、機関が購入し、政府にそのお金が渡っているということです。政府はそのお金を元手に様々な事業を行うわけです。
それでも、緊縮派の人たちは、「いや、政府が事業を実施してしまえば、それでお金は消える」と考えるかもしれません。しかし、そうでしょうか、政府が事業を行えば、そのお金が市場に出回り、また税金として政府に戻ってくるのです。ここが、根本的に家計とは異なります。このお金は、日本国内を循環しているだけです。消えることはありません。
これでもわからない人もいるようです。しかし、もう一度考えてみてください。もし、政府がマイナス金利になろうが、なるまいが、国債を一切発行しなかった場合どうなるのか。
日本国内の機関投資家は、日本国内の国債を買えなければ、お金をそのまま溜め込むか、海外に投資することになります。そうなると、日本国内ではその分のお金は循環しなくなるだけの話です。であれば、特にマイナス金利のとき、デフレ気味のときには、政府は大量に国債を発行して、日本国内でお金を循環させたほうが良いという結論になります。ましてや現在の日本は、デフレから脱却しきれていませんし、増税でデフレに舞い戻る可能性が大いにあります。
そうして、国債が将来世代への付になるということはありません。これについては、さらに詳しく、以前のこのブログに掲載したので、その記事のリンクを以下に掲載します。
政府、赤字国債3年ぶり増発へ 10兆補正求める与党も容認見込み―【私の論評】マイナス金利の現時点で、赤字国債発行をためらうな!発行しまくって100兆円基金を創設せよ(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、2つの条件、(1.国債が、国内で販売されていること、2.不完全雇用経済であること)を満たしていれば、国債を発行しても将来世代への付にはならないことと、その理由について掲載しました。
そうして、現在の日本は、この2つの条件を満たしており、たとえ国債の金利がマイナスでなくても、国債を発行しても将来世代への付になることはないのです。さらに国債の金利はマイナスなのです。
これは、まさに現状は国債を大量に刷り増すべきであることを示しています。まさに、上の記事でも主張されているように、「市場的には『攻め時』であるにもかかわらず、財務省はそれを受け入れられず、防戦一方の姿勢を貫いている。この傾向は、'20年に突入してからも変わらないだろう」という状況なのです。
仮に、現在のマイナスの国債を、金利がゼロになるまで、刷り続けるとどのくらい国債を刷ることができるのかという高橋洋一氏が試算しています。その試算結果を以下に掲載します。
仮に8年国債で国が資金調達する場合、金利が同じであれば、100兆円調達で年間3000億円、8年で2兆4000億円儲かる。これは8年国債を100兆円発行すると、102兆4000億円の当初資金を調達できることを意味する。このうち100兆円は金庫に入れ、残りの2兆4000億円を使っても何の支障もない。
それにしても、これだけ、大量に国債を刷り増すことが可能なら、なぜ増税をしたのかということに、多くの人が気づくはずです。
しかし、見方を変えると、これは財務省にとっても良い話であると思います。仮に、8年国債を100兆円発行し、102兆4000億円の当初資金を調達し、100兆円は金庫に入れ、残りの2兆4000億円を使い。金庫に入れた,100兆円を特別会計にでも入れれば、財務省としてはこの100兆円を財務省に省益につかえるかもしれません。
無論そこまで、露骨なことをすれば、さすがに政治家や他省庁から苦情がでるかもしれませんが、それにしても、この100兆円の一部は、いわゆる財務省の埋蔵金にできる可能性があります。さらには、経済対策にも使えるのです。やはり、無繆性をモットーとする愚かな役人根性がなせる技なのでしょうか。
それこそ、消費税を増税しなくても、桁外れの埋蔵金を蓄えられる大きなチャンスであるにもかかわらず、財務省がこのようなことをせずに、防戦一方に回っているというのですから、本当に不思議です。
このような姿勢の財務省は、ブログ冒頭の記事にもあるように、増税による景気落ち込みのしわ寄せ、そしてこれまで主張してきた理論の矛盾を追及されないための工作で、'20年の財務省は守りを決め込むのでしょうが、これは逆に言うと、来年は財務省は、増税による景気落ち込みのしわ寄せ、そしてこれまで主張してきた理論の矛盾を追及されることになるということです。
さすがに、国債のマイナス金利については、何を意味するのか、小学生でも理解できることですから、多くの政治家が理解できないはずはありません。来年は、財務省はこれで、かなり叩かれることになるでしよう。これで、財務省は身を滅ぼすことになるかもしれません。
それが、日本でも機動的財政政策ができるようになるきっかけになることを期待したいです。
ちなみに、ここで機動的財政政策とは、景気が悪くなれば、積極財政を実施し、景気が加熱すれば、緊縮財政をするという当たり前の財政政策をするという意味です。
さらに、一つ付け加えると、日本で機動的財政政策ができるようになったとしても、日銀がまともな金融政策を実行しなければ、日本経済はまともになりません。
日銀、景気が悪くなれは、金融緩和をすべきですし、景気が加熱すれば、金融緩和をすべきなのです。
景気が悪いときに、政府がせっかく積極財政を打ったとしても、日銀が金融引き締めをすれば、全く意味がないです。何のために、積極財政をするかといえば、お金の循環を良くするためです、そのときに日銀が通貨領を減らす金融引き締め政策をすれば、逆効果になるのは当然のことです。
平成年間は、デフレであるにもかかわらず、政府は増税などで、緊縮財政を実施し続け、日銀は金融引き締め政策を継続し続けました。
平成年間で、まともな経済対策ができたのは、安倍政権が成立した直後の2013年4月から、8%増税をする直前の2014年3月までのわずか1年間だけでした。
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