2019年12月28日土曜日

【日本の解き方】令和元年の日本経済を冷やした“最悪のタイミング”での消費増税 景気対策は1度では済まない―【私の論評】すでにあらゆる数値が悪化!政府の景気対策は明らかに後手にまわり、手遅れに(゚д゚)!

【日本の解き方】令和元年の日本経済を冷やした“最悪のタイミング”での消費増税 景気対策は1度では済まない

2019年元旦 初滑り 写真はブログ管理人挿入

 2019年は、新しい元号の令和になり、そのスタートの年だった。平成は経済停滞が続いた年代だったが、令和元年の経済はどうだったのだろうか。

 筆者が重視している雇用について、総務省の失業率で見ると今年1~10月で2・2~2・5%となった。就業者数は6665万~6758万人だった。失業率は低位安定、就業者数は上昇傾向で、雇用は相変わらず良かった。

 景気について、内閣府の景気動向指数の一致指数で見ると、95・3~102・1だった。昨年末から低下傾向であり、そのころに景気の山を迎えていた可能性がある。それ以降は下向きであるが、10月の消費増税はそれをさらに加速させたようだ。

 物価はどうだったのか。総務省の消費者物価指数総合(除く生鮮食品)の対前年同月比は、1~11月で0・3~0・9%だったが、年前半より後半のほうが伸び悩んでいる。特に消費増税の影響が出た10月と11月は0・4%と0・5%だった。

 今回の消費増税は、形式的には消費者物価にプラスの効果となり、その影響は0・7%程度だ。ただ、同時に幼児教育・保育無償化が実施され、物価への影響はマイナス0・5%程度だ。そのプラス、マイナスの結果、10月以降、消費増税の影響は0・2%程度になる。

 これを考慮すると、10月、11月とほとんど物価が上がっておらず、消費増税により19年中のデフレ脱却はあえなく潰れた。

 19年を振り返ると、景気や物価は徐々に悪くなりつつあるが、雇用は相変わらず良かったという評価だ。もっとも雇用は景気に遅れる遅行指数であるので、今後の先行きは暗い。

 ちなみに、内閣府の景気動向指数の先行指数でみると、1月の96・3から始まり、10月の91・6までほぼ一貫して下降している。これも、来年の景気の先行きを不安視するものだ。

 前にも言及したが、この1年の景気足踏みや後退傾向は昨年から見られていたものだ。しかも、日本だけでなく世界経済の環境も、米中貿易戦争や英国の欧州連合(EU)離脱の混迷など、景気に対するマイナス面が多かったので、日本への悪影響も懸念されていた。その中で10月に消費増税が最悪のタイミングで実施された。

 いまさらやってしまったものは仕方ない。消費増税分を吐き出すような景気対策が必要になるだけだ。

 幸いにも、20年1月からの通常国会では冒頭で補正予算が審議される。その経済対策は、(1)災害からの復旧・復興と安全・安心の確保2・3兆円(2)経済の下振れリスクを乗り越えようとする者への重点支援0・9兆円(3)未来への投資等1・1兆円で、合計4・3兆円だ。

 これは、消費増税による増収額(平年ベース)とほぼ見合っており、消費増税分を吐き出したともいえる。今回1回きりではなく、来年度もあと1、2回の景気対策が必要になるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】すでにあらゆる数値が悪化!政府の景気対策は明らかに後手にまわり、手遅れに(゚д゚)!

令和もいよいよ2年目へ。おそらく、民間企業ではすでに仕事納め、明日29日には官公庁も仕事納めです。今頃、新春ムードに浮かれている人も多いかもしれません。しかし、残念ながら、その新春ムードをぶち壊すことになりそうです。

浅草仲見世通りはもう新春ムードだが・・・・・

なぜなら、20年の景気は一層冷え込むことになるからです。この重大事を海外メデイアは一部報道しているところもあるのに、現在日本のメディアは、IR疑惑報道等なでかき消されてしまったのかほとんど報道しません。これは、10月に実施された消費増税の影響があまりに大きく、冒頭の記事で高橋氏が予想するように、来年からの景気の冷え込みは確実なのです。

経産省が11月末に発表した10月の商業動態統計では小売・卸売業が悲惨な状況にあることも明らかになっています。10月の小売業販売額は前年同月比7.1%減で、’14年増税時(4.3%減)のマイナス幅を大きく上回ったのです。

財務省が毎月発表している貿易統計でも、10月の輸出が前年同月比9.2%減、輸入が同14.8%減と大きく低下。11月の速報値でも輸出が7.9%減で輸入が15.7%減と大幅なマイナスです。特に、2か月連続で2桁減を記録している輸入額からは国内需要が大きく低下していることがうかがえます。

経産省が発表した10月の鉱工業生産指数も前月比4.2%減で、3年5か月ぶりの低水準。10月の台風被害で操業停止に追い込まれた工場があった影響もあるでしょうが、日本も含めて世界的に需要が落ち込んでいることを如実に示しています。


前回増税は3%分で今回は2%分のため、単純計算で景気の落ち込みは前回の3分2程度にとどまるだろうと予想する人もいましたが、実際には前回増税時を上回る落ち込みをみせているのです。

12月6日に発表された総務省の家計調査によると、10月の消費支出は物価変動を除いた実質ベースで前年同月比5.1%減と大きく下落しました。大型台風の影響があったとはいえ、’14年の5%から8%への引き上げ時よりも大きな下落率です。軽減税率の導入やキャッシュレス決済時のポイント還元制度を導入することで、駆け込み需要からの反動減を抑制しておきながら、この水準です。

ポイント還元制度は複雑で手間のかかるものだった・・・・


さらに内閣府が発表した景気動向指数では、景気の現状を示す一致指数が前月比5.6ポイントも下落と、8年7か月ぶりの大きさを記録しています。消費増税の悪影響が想像以上のものだったと言わざるをえません。

一方日経平均株価は9月初めには2万円台で停滞していましたが、12月には2万4,000円台まで大幅高となりました。その要因は、米欧株の主要株価指数が最高値を更新する中で、日本や新興国も含めて世界的な株高となったためです。

過去3ヵ月余りの日経平均株価の大幅高を受けて、バブルではないかとの見方も聞かれます。しかし、2020年も米国を中心に株高トレンドは崩れなければ、バブルの領域まで日本株が上昇しているとは言えないでしょう。

ただ2020年の日本経済は、消費増税による緊縮財政政策の強化によって、ほぼゼロ成長に停滞すると予想します。オリンピック開催で東京を中心に雰囲気は明るくなるかもしれませんが、すでに最近の経済減速の余波で求人数がやや減少するなど、2018年まで好調だった労働市場の減速が始まっています。

2020年は海外からの追い風で株式市場は底堅いでしょうが、家計所得と個人消費の失速によって、景気回復の実感が多くの国民に広がることはないでしょう。経済政策の失敗によって、安倍政権の政治的な求心力がさらに低下し、2019年までは世界で最も安定していたと言える日本の政治情勢が不安定化する展開があるかもしれません。

2020年は海外からの追い風で株式市場は底堅いだろうが・・・・

前回の増税と単純比較はできません。2014年4月の増税は、アベノミクスが始まった直後のことです。これに対して、今回は米中貿易戦争などで世界的に先行き不透明感が強まった時期での増税です。無論、前回のときも世界情勢に関して懸念材料はありましたが、今回ほどではありませんでした。

いまだ政府は景気の基調判断を「緩やかに回復している」として、’12年12月から始まった戦後最長の景気回復は継続中であるとの判断を維持していますが、多くの景気指標を見ると’18年10月にピークをつけていたことがわかります。


実際、この12月に内閣府から発表された’18年度GDP確報値は、速報値の0.7%から0.3%に大幅に下方修正されています。さらに、多くの人が見落としているのがGNI(国民総所得)。こちらは速報値の0.2%から一転してマイナス0.2%に下方修正されているのです。

GNIは文字どおり、国民が1年間に得た所得の合計を示す数値。つまり、’18年度には早くも日本の所得水準は低下に転じて、そこに世界的な景気減速が重なるという最悪のタイミングで増税が実施されてしまったのです。

’20年度の新卒求人倍率は8年ぶりに低下しており、安倍政権がアピールし続けた雇用環境の改善も頭打ちの状況。もはや、緩やかに回復している』と言える材料は尽きているといって良いです。

問題なのは、このような経済環境にありながらまともな経済対策を講じていない点にあります。

12月13日に’19年度補正予算案を臨時閣議決定しましたが、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」と名づけながら、経済の下振れリスクに対処するための重点支援策への投入資金は9000億円どまり、10 月の消費増税では軽減税率や教育無償化に伴う財源を差し引いて、恒久的に2.5兆円の家計負担増になると試算できるのに、まったくその穴埋めができていません。

そもそも補正予算の成立が遅すぎるのです。増税に伴う景気減速が目に見えていたにもかかわらず、10~12月の臨時国会での補正予算成立を目指さず、政府は1月20日に召集される通常国会での早期成立を目指す姿勢です。

仮に1月中に補正予算が成立しても、実際に予算が執行されるのは年度末の3月になってしまいます。つまり、増税から半年も追加対策を打てぬまま時間が過ぎてしまうわけです。

高橋洋一氏が冒頭の記事で主張するように、景気対策を一度で済ますことなく、来年度(’20年度)の補正もすぐさま打たないと景気の下支えは難しいです。政府の対策が後手に回っているのは明らかです。

’20年はオリンピックイヤー。東京五輪直前にテレビをはじめ、家電の駆け込み需要が発生する可能性もありますが、「6月にはキャッシュレス決済のポイント還元制度が終了して消費の落ち込みが一層激しくなり、さらに五輪後にはインバウンド需要が急速に萎むでしょう。

そうして、本格的な景気後退局面入りになるのは明らかです。果たして、いつまで安倍政権は「緩やかに回復している」と言い続けられるのでしょうか。 令和2年の日本は、いまののままでは、経済がかなり落ち込むことを覚悟をすべきです。

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